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Patent Searching and Data


Title:
METHOD FOR PRODUCING γδT CELL POPULATION
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/111430
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a method for producing a γδT cell population, which is characterized by involving the step of culturing a cell population containing a γδT cell in the presence of the following components (a) and (b): (a) a fibronectin, a fibronectin fragment or a mixture thereof; and (b) a γδT cell-activating factor. A γδT cell produced by the method can be suitably used in an immunotherapy or the like. Therefore, the method is expected to make a significant contribution to the medical field.

Inventors:
IDENO MITSUKO (JP)
SAKAI FUMIYO (JP)
ENOKI TATSUJI (JP)
KATO IKUNOSHIN (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/053855
Publication Date:
September 18, 2008
Filing Date:
March 04, 2008
Export Citation:
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Assignee:
TAKARA BIO INC (JP)
IDENO MITSUKO (JP)
SAKAI FUMIYO (JP)
ENOKI TATSUJI (JP)
KATO IKUNOSHIN (JP)
International Classes:
A61P31/04; A61P31/06; A61P31/12; A61P33/06; A61P35/00; A61P37/02; C12N5/02; C12N5/0783; C12N5/10; C12N15/09; C07K14/78
Domestic Patent References:
WO2005019450A12005-03-03
Other References:
FERLAZZO V. ET AL.: "In vitro effects of aminobisphosphonates on Vgamma9Vdelta2 T cell activation and differentiation", INT. J. IMMUNOPATHOL. PHARMACOL., vol. 19, no. 2, April 2006 (2006-04-01) - June 2006 (2006-06-01), pages 309 - 317
KATO Y. ET AL.: "Requirement of species-specific interactions for the activation of human gamma delta T cells by pamidronate", J. IMMUNOL., vol. 170, no. 7, 1 April 2003 (2003-04-01), pages 3608 - 3613
KUNZMANN V. ET AL.: "Stimulation of gammadelta T cells by aminobisphosphonates and induction of antiplasma cell activity in multiple myeloma", BLOOD, vol. 96, no. 2, 15 July 2000 (2000-07-15), pages 384 - 392, XP002223785
Attorney, Agent or Firm:
HOSODA, Yoshinori (P.O. Box 26 OMM Building 5th Floor,7-31, Otemae 1-chome,Chuo-ku, Osaka-shi, Osaka, JP)
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Claims:
 γδT細胞を含有する細胞集団を、(a)フィブロネクチン、フィブロネクチンフラグメントまたはそれらの混合物、および(b)γδT細胞活性化因子の存在下で培養する工程を包含することを特徴とする、γδT細胞集団の製造方法。
 フィブロネクチン、フィブロネクチンフラグメントまたはそれらの混合物の存在下で培養する工程が、IL-2の存在下で実施される請求項1記載の製造方法。
 フィブロネクチンフラグメントが、配列表の配列番号1~8で表されるアミノ酸配列を少なくとも1つ含んでなるポリペプチド(m)であるか、または前記いずれかのアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加したアミノ酸配列を少なくとも1つ含んでなるポリペプチドであって、前記ポリペプチド(m)と同等な機能を有するポリペプチド(n)である請求項1または2に記載の製造方法。
 フィブロネクチンフラグメントが、配列表の配列番号5~8で表されるアミノ酸配列のいずれをも含むポリペプチドである請求項3記載の製造方法。
 フィブロネクチンフラグメントが、配列表の配列番号9~22いずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである請求項3記載の製造方法。
 γδT細胞活性化因子が、ビスフォスフォン酸系化合物、および/またはピロリン酸モノエステル系化合物である請求項1~5いずれか1項に記載の製造方法。
 ビスフォスフォン酸系化合物が、パミドロネート、アレンドロネート、ゾレドロネート、リセドロネート、ネリドロネート、イバンドロネート、インカドロネート、オルバドロネート、ソルバドロネート、ミノドロネート、EB1053、エチドロネート、クロドロネート、チルドロネートおよびメドロネートからなる群より選択される少なくとも1つの化合物である請求項6記載の製造方法。
 ピロリン酸モノエステル系化合物が、イソペンテニルピロリン酸、2-メチル-3-ブテニル-1-ピロリン酸および4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブテニル-1-ピロリン酸からなる群より選択される少なくとも1つの化合物である請求項6記載の製造方法。
 さらに細胞集団に外来遺伝子を導入する工程を包含する請求項1~8いずれか1項に記載の製造方法。
 外来遺伝子をレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはシミアンウイルスベクターを用いて導入する請求項9記載の製造方法。
 請求項1~10いずれか1項に記載の方法により得られるγδT細胞集団。
 請求項1~10いずれか1項に記載の方法により得られるγδT細胞集団を有効成分として含有する医薬。
 被験体に、有効量の請求項1~10いずれか1項に記載の方法により得られるγδT細胞集団を投与する工程を含む疾患の治療方法又は予防方法。
 医薬の製造のための、請求項1~10いずれか1項に記載の方法により得られるγδT細胞集団の使用。
 養子免疫療法における使用のための請求項1~10いずれか1項に記載の方法により得られるγδT細胞集団。
 
Description:
γδT細胞集団の製造方法

 本発明は、医療分野において有用なγδT 胞集団を製造する方法に関する。

 生体は主として免疫応答により異物から られており、免疫システムはさまざまな細 とそれが作り出す可溶性の因子によって成 立っている。なかでも中心的な役割を果た ているのが白血球、特にリンパ球である。 のリンパ球はBリンパ球(以下、B細胞と記載 ることがある)とTリンパ球(以下、T細胞と記 載することがある)という2種類の主要なタイ に分けられ、いずれも抗原を特異的に認識 、これに作用して生体を防御する。

 T細胞は、αβT細胞とγδT細胞の2つのサブ ループに分類される。αβT細胞は、主要組 適合性複合体(MHC)IまたはII分子に結合する抗 原ペプチドを認識するαβT細胞レセプターを し、これらはT細胞の約90から98%を占めると われている。一方、γδT細胞は、γδT細胞レ セプターを有し、これらはT細胞の3~5%を占め と言われている。

 γδT細胞は、細菌およびウイルス感染に する防御ならびに自己免疫において重要な 割を果たし、感染性疾患(例えば、結核、サ モネラ症、マラリア等)に感染した際に増殖 することが知られている。γδT細胞は抗原提 細胞によるMHC分子の提示なしに、抗原との 接の相互作用によって、それらの抗原性リ ンドを認識することが知られている。すな ち、γδT細胞は活性化されると強力なMHC非 束型の細胞傷害活性を発揮し、特に各種タ プの細胞の殺傷、とりわけ病原性細胞の殺 に効果的である。

 癌の病態において、外科手術、化学療法 放射線療法に次ぐ第4の治療法として、免疫 療法が近年関心を集めている。免疫療法は本 来ヒトが有する免疫力を利用するため、患者 への肉体的負担が他の治療法と比べて軽いと 言われている。免疫療法には体外で誘導した 末梢血リンパ球やT細胞等から種々の方法で 大培養して得られるリンフォカイン活性化 胞、NKT細胞、γδT細胞などを移入する療法、 体内での抗原特異的CTLの誘導を期待する樹状 細胞移入療法やペプチドワクチン療法、Th1細 胞療法、さらにこれら細胞に種々の効果を期 待できる遺伝子を体外で導入して体内に移入 する免疫遺伝子治療法などが知られている。

 γδT細胞をex vivoまたはin vitroで製造する 方法については、これまでにもいくつかの報 告があり、例えばインターロイキン-12および CD2リガンド存在下でのリンパ系細胞の第一培 養、およびT細胞マイトジェン、インターロ キン-2存在下での第二培養を含む方法が開示 されている(例えば、特許文献1)。また、γδT 胞を活性化する化合物についても種々検討 れており、例えばホスホハロヒドリン類や スホエポキシド類、ビスホスホネート化合 、イソペンテニルピロリン酸等が知られて る(例えば、特許文献2~4、非特許文献1)。

 フィブロネクチンは動物の血液中、培養 胞表面、組織の細胞外マトリックスに存在 る分子量25万の巨大な糖タンパク質であり 多彩な機能を持つことが知られている。そ ドメイン構造は7つに分けられており(以下、 第1図参照)、またそのアミノ酸配列中には3種 類の類似の配列が含まれており、これら各配 列の繰返しで全体が構成されている。3種類 類似の配列はI型、II型、III型と呼ばれ、こ うち、III型は71~96個のアミノ酸残基で構成さ れており、これらのアミノ酸残基の一致率は 17~40%である。フィブロネクチン中には14のIII の配列が存在するが、そのうち、8番目、9 目、10番目(以下、それぞれIII-8、III-9、III-10 称する)は細胞結合ドメインに、また12番目 13番目、14番目(以下、それぞれIII-12、III-13 III-14と称する)はヘパリン結合ドメインに含 されている。また、III-10にはVLA(very late act ivation antigen)-5結合領域が含まれており、こ コア配列はRGDSである。また、ヘパリン結合 メインのC末端側にはIIICSと呼ばれる領域が 在する。IIICSには25アミノ酸からなるVLA-4に して結合活性を有するCS-1と呼ばれる領域が 存在する(例えば、非特許文献2~4)。

 免疫療法の中で、体外で誘導したCTLや末梢 リンパ球等からIL-2と抗CD3抗体の作用により 拡大培養して得られるリンフォカイン活性化 細胞を移入する療法において、体外で誘導し た抗原特異的CTLを拡大培養する際に細胞傷害 活性をいかに維持するか、リンパ球を体外で いかに効率よく拡大培養できるか等の問題に ついては、フィブロネクチンやそのフラグメ ントを使用することによる効果が、既に本発 明者らにより検討されてきた(例えば、特許 献5~7)。
Kunzmann V. 他5名, Blood,2000年,Vol.96,No.2,p384 -392 Deane F. Momer著,1988年発行,FIBRONECTIN, ACADEM IC PRESS INC.,P1~8 Kimizuka F. 他8名,J. Biochem.,1991年,Vol.110,No. 2,p284-291 Hanenberg H. 他5名,Human Gene Therapy,1997年,Vo l.8,No.18,p2193-2206

国際公開第99/46365号パンフレット

国際公開第00/12516号パンフレット

国際公開第00/12519号パンフレット

米国特許第5,639,653号

国際公開第03/016511号パンフレット

国際公開第03/080817号パンフレット

国際公開第2005/019450号パンフレット

 本発明の目的は、生体への投与に有効な δT細胞集団の製造方法を提供することにあ 。

 本発明の第1の発明は、γδT細胞を含有す 細胞集団を、(a)フィブロネクチン、フィブ ネクチンフラグメントまたはそれらの混合 、および(b)γδT細胞活性化因子の存在下で 養する工程を包含することを特徴とする、γ δT細胞集団の製造方法に関する。本発明の第 1の発明において、フィブロネクチン、フィ ロネクチンフラグメントまたはそれらの混 物の存在下で培養する工程とは、IL-2の存在 で実施されることが例示される。また、フ ブロネクチンフラグメントとしては、配列 の配列番号1~8で表されるアミノ酸配列を少 くとも1つ含んでなるポリペプチド(m)である か、または前記いずれかのアミノ酸配列にお いて1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠 、挿入もしくは付加したアミノ酸配列を少 くとも1つ含んでなるポリペプチドであって 前記ポリペプチド(m)と同等な機能を有する リペプチド(n)が例示される。また、フィブ ネクチンフラグメントとしては、配列表の 列番号5~8で表されるアミノ酸配列のいずれ も含むポリペプチドが例示される。また、 ィブロネクチンフラグメントとしては、配 表の配列番号9~22いずれかで表されるアミノ 酸配列からなるポリペプチドが例示される。 また、本発明の第1の発明において、γδT細胞 活性化因子としては、ビスフォスフォン酸系 化合物、および/またはピロリン酸モノエス ル系化合物が例示され、ビスフォスフォン 系化合物としては、パミドロネート、アレ ドロネート、ゾレドロネート、リセドロネ ト、ネリドロネート、イバンドロネート、 ンカドロネート、オルバドロネート、ソル ドロネート、ミノドロネート、EB1053、エチ ロネート、クロドロネート、チルドロネー およびメドロネートからなる群より選択さ る少なくとも1つの化合物が、またピロリン モノエステル系化合物としては、イソペン ニルピロリン酸、2-メチル-3-ブテニル-1-ピ リン酸および4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブテニ ル-1-ピロリン酸からなる群より選択される少 なくとも1つの化合物が例示される。また、 発明の第1の発明は、さらに細胞集団に外来 伝子を導入する工程を包含するγδT細胞集 の製造方法が例示される。当該外来遺伝子 レトロウイルスベクター、アデノウイルス クター、アデノ随伴ウイルスベクター、レ チウイルスベクターまたはシミアンウイル ベクターを用いて導入することが出来る。

 本発明の第2の発明は、本発明の第1の方 により得られるγδT細胞集団に関する。

 本発明の第3の発明は、本発明の第1の方 により得られるγδT細胞集団を有効成分とし て含有する医薬に関する。

 本発明の第4の発明は、被験体に、有効量 の本発明の第1の方法により得られるγδT細胞 集団を投与する工程を含む疾患の治療方法又 は予防方法に関する。

 本発明の第5の発明は、医薬の製造のため の、本発明の第1の方法により得られるγδT細 胞集団の使用に関する。

 本発明の第6の発明は、養子免疫療法にお ける使用のための本発明の第1の方法により られるγδT細胞集団に関する。

 本発明により、拡大培養率が高いγδT細 集団の製造方法が提供される。当該製造方 により得られるγδT細胞集団は、高い細胞傷 害活性を有することから、細胞医療による疾 患の治療に極めて有用である。

 本発明は、(a)フィブロネクチン、フィブ ネクチンフラグメントまたはそれらの混合 、および(b)γδT細胞活性化因子の存在下でγ δT細胞を含有する細胞集団を培養することに より、極めて拡大培養率が高く、さらに高い 細胞傷害活性を有するγδT細胞集団が得られ ことを見出し、完成するに至ったものであ 。

 なお、本明細書において、本発明の製造 法により得られるγδT細胞集団とは、γδT細 胞を高比率に含むT細胞集団を意味する。ま 、ここで高比率とは、本発明の製造方法に されるγδT細胞を含有する細胞集団と比較し てγδT細胞比率が高いことを意味する。

 以下、本発明を具体的に説明する。

(1)本発明に使用されるフィブロネクチンおよ びフィブロネクチンフラグメント
 本明細書中に記載のフィブロネクチンは、 然から得られたもの、または人為的に合成 れたもののいずれでもよい。フィブロネク ンは、例えば、ルオスラーティ E.ら〔Ruosla hti E., et al.、ジャーナル・オブ・バイオロ カル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)、第256巻 第14号、第7277~7281頁(1981)〕の開示に基づき 天然起源の物質から実質的に純粋な形態で 造することができる。ここで、本明細書に 載された実質的に純粋なフィブロネクチン は、これらが天然においてフィブロネクチ と一緒に存在する他のタンパク質を本質的 含有していないことを意味する。

 なお、フィブロネクチンは多くのスプラ シングバリアントの存在が知られているが 本発明に使用されるフィブロネクチンとし は、本発明の所望の効果を発現するもので れば、いずれのバリアントも使用すること できる。例えば、血漿由来のフィブロネク ンの場合、細胞結合ドメインの上流に存在 るED-Bと呼ばれる領域、細胞結合ドメインと ヘパリン結合ドメインの間に存在するED-Aと ばれる領域が欠失していることが知られて るが、このような血漿由来のフィブロネク ンも本発明に使用することができる。上記 フィブロネクチンは、それぞれ単独で、も くは複数の種類のものを混合して本発明に 用することができる。

 本発明において、フィブロネクチンフラ メントとは、フィブロネクチンのアミノ酸 列の一部(例えば、3アミノ酸以上、好まし は10アミノ酸以上、より好ましくは20アミノ 以上)を含む人為的に製造されたフラグメン ト(改変型フィブロネクチンフラグメントと いう)を意味する。当該フィブロネクチンフ グメントには、当該フィブロネクチンのア ノ酸配列の一部が、1個もしくは数個含まれ ていれば特に限定はなく、天然型フィブロネ クチンの一部の断片そのものや、当該断片と フィブロネクチン以外に由来するアミノ酸配 列を含むフラグメントが包含される。なお、 本発明に使用できるフィブロネクチンフラグ メント、ならびに該フラグメントの調製に関 する有用な情報は、キミヅカ F.ら〔Kimizuka F . et al.、ジャーナル・オブ・バイオケミス リー(J. Biochem.)、第110巻、284~291頁(1991)〕、 ーンブリット A.R.ら〔Kornbrihtt A. R., et al. EMBO ジャーナル(EMBO J.)、第4巻、第7号、1755 ~1759(1985)〕、およびセキグチ K.ら〔Sekiguchi K ., et al.、バイオケミストリー(Biochemistry)、 25巻、第17号、4936~4941(1986)〕等より得ること できる。また、フィブロネクチンをコード る核酸配列又はフィブロネクチンのアミノ 配列については、Genbank Accession No. NM_002026 、NP_002017に開示されている。

 本発明において、フィブロネクチンフラ メントとしては、例えば、III-8(配列表の配 番号1で表されるアミノ酸配列)、III-9(配列 の配列番号2で表されるアミノ酸配列)、III-10 (配列表の配列番号3で表されるアミノ酸配列) 、III-11(配列表の配列番号4で表されるアミノ 配列)、III-12(配列表の配列番号5で表される ミノ酸配列)、III-13(配列表の配列番号6で表 れるアミノ酸配列)、III-14(配列表の配列番 7で表されるアミノ酸配列)、およびCS-1(配列 の配列番号8で表されるアミノ酸配列)のい れかの領域を構成するアミノ酸配列を少な とも1つ含んでなるポリペプチド(m)(第1図参 )や、前記いずれかのアミノ酸配列において1 もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿 入もしくは付加したアミノ酸配列を少なくと も1つ含んでなるポリペプチドであって、前 ポリペプチド(m)と同等な機能を有するポリ プチド(n)が例示される。フラグメントの長 としては、例えば、アミノ酸残基数として20 ~1000が好ましく、100~800がより好ましい。なお 、本明細書において、複数個とは数個を含む 概念であり、2~12個が好ましく、2~10個がより ましく、2~8個がさらに好ましく、以下にお ても同様である。

 また、当該フラグメントとしては、細胞 着活性および/またはヘパリン結合活性を有 するものが好適に使用できる。細胞接着活性 は、本発明で使用されるフラグメント(その 胞結合ドメイン)と細胞との結合を公知の方 を使用してアッセイすることにより調べる とができる。例えば、このような方法には ウイリアムズ D.A.らの方法〔Williams D. A.,et  al.、ネイチャー(Nature)、第352巻、第438~441頁( 1991)〕が含まれる。当該方法は、培養プレー に固定化したフラグメントに対する細胞の 合を測定する方法である。また、ヘパリン 合活性は、本発明に使用されるフラグメン (そのヘパリン結合ドメイン)とヘパリンと 結合を公知の方法を使用してアッセイする とにより調べることができる。例えば、上 のウイリアムズ D.A.らの方法において、細 に換えてヘパリン、例えば標識ヘパリンを 用することにより、同様の方法でフラグメ トとヘパリンとの結合の評価を行うことが きる。

 さらにフィブロネクチンフラグメントと ては、C-274(配列表の配列番号9で表されるア ミノ酸配列)、H-271(配列表の配列番号10で表さ れるアミノ酸配列)、H-296(配列表の配列番号11 で表されるアミノ酸配列)、CH-271(配列表の配 番号12で表されるアミノ酸配列)、CH-296(配列 表の配列番号13で表されるアミノ酸配列)、C-C S1(配列表の配列番号14で表されるアミノ酸配 )、およびCH-296Na(配列表の配列番号15で表さ るアミノ酸配列)からなる群より選択される ポリペプチドが例示される。

 上記のCH-271、CH-296、CH-296Na、C-274、C-CS1の フラグメントはVLA-5に結合する活性を有す 細胞結合ドメインを有するポリペプチドで る。また、C-CS1、H-296、CH-296、CH-296NaはVLA-4に 結合する活性を有するCS-1を有するポリペプ ドである。さらに、H-271、H-296、CH-271、CH-296 よびCH-296Naはヘパリン結合ドメインを有す ポリペプチドである。なお、CH-296Naは血漿由 来のフィブロネクチンにおける細胞結合ドメ インからCS-1までを含むポリペプチドである

 本発明においては、上記の各ドメインが 変されたフラグメントも使用することがで る。フィブロネクチンのヘパリン結合ドメ ンは3つのIII型配列(III-12、III-13、III-14)によ て構成されている。前記III型配列のうちの つもしくは二つを欠失したヘパリン結合ド インを含むフラグメントも本発明に使用す ことが可能である。例えば、フィブロネク ンの細胞結合部位(VLA-5結合領域、Pro1239~Ser15 15)と一つのIII型配列とが結合したフラグメン トであるCHV-89(配列表の配列番号16で表される アミノ酸配列)、CHV-90(配列表の配列番号17で されるアミノ酸配列)、CHV-92(配列表の配列番 号18で表されるアミノ酸配列)、あるいは二つ のIII型配列とが結合したフラグメントである CHV-179(配列表の配列番号19で表されるアミノ 配列)、CHV-181(配列表の配列番号20で表される アミノ酸配列)が例示される。CHV-89、CHV-90、CH V-92はそれぞれIII-13、III-14、III-12を含むもの あり、CHV-179はIII-13とIII-14を、CHV-181はIII-12と III-13をそれぞれ含んでいる。

 また、上記の各フラグメントにさらにア ノ酸を付加したフラグメントも本発明に使 することができる。当該フラグメントは、 えば、上記各フラグメントに所望のアミノ を付加することにより製造可能である。例 ば、H-275-Cys(配列表の配列番号21で表される ミノ酸配列)は、フィブロネクチンのヘパリ ン結合ドメインを有し、かつC末端にシステ ン残基を有するフラグメントである。

 また、フィブロネクチンフラグメントと ては、配列表の配列番号1~8で表されるアミ 酸配列を重複して含むポリペプチドを使用 ることもできる。例えば、前述のヘパリン 合ドメイン及びCS-1ドメインを重複して含む ポリペプチドであるH296-H296(配列表の配列番 22で表されるアミノ酸配列)が好適に使用さ る。

 なお、本発明に使用されるフラグメント しては、本発明の所望の効果が得られる限 、上記に例示した天然のフィブロネクチン アミノ酸配列の少なくとも一部を含むフラ メントと同等な機能を有する、当該フラグ ントを構成するポリペプチドのアミノ酸配 に1もしくは複数個のアミノ酸の置換、欠失 、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を 有するポリペプチドからなるものであっても よい。

 アミノ酸の置換等は、本来のポリペプチ の機能が維持され得る範囲内で該ポリペプ ドの物理化学的性状等を変化させ得る程度 ものであるのが好ましい。例えば、アミノ の置換等は、本来のポリペプチドの持つ性 (例えば、疎水性、親水性、電荷、pK等)を実 質的に変化させない範囲の保存的なものが好 ましい。例えば、アミノ酸の置換は、1.グリ ン、アラニン;2.バリン、イソロイシン、ロ シン;3.アスパラギン酸、グルタミン酸、ア パラギン、グルタミン;4.セリン、スレオニ ;5.リジン、アルギニン;6.フェニルアラニン チロシンの各グループ内での置換であり、 ミノ酸の欠失、付加、挿入は、ポリペプチ におけるそれらの対象部位周辺の性質に類 した性質を有するアミノ酸の、対象部位周 の性質を実質的に変化させない範囲での欠 、付加、挿入が好ましい。

 なお、本発明に使用されるフラグメント 遺伝子工学的に取得した場合、例えば大腸 などを宿主として製造する場合は、大腸菌 来のメチオニンペプチダーゼ等の影響によ 、N末端のメチオニンが欠失される場合があ るが、このようなポリペプチドも本発明にお いて使用することができる。すなわち、配列 表の配列番号15および21に記載のポリペプチ のN末端のメチオニンが欠失したポリペプチ も本発明においては好適に使用できる。

 アミノ酸の置換等は種間や個体差に起因 て天然に生ずるものであってもよく、また 人工的に誘発されたものであってもよい。 工的な誘発は公知の方法により行えばよく 特に限定はないが、例えば、公知の手法に り、天然のフィブロネクチン由来の前記領 や所定のフラグメントをコードする核酸に いて1もしくは複数個の塩基が置換、欠失、 付加もしくは挿入された所定の核酸を作製し 、それを使用して、天然のフィブロネクチン 由来の前記領域や所定のフラグメントと同等 な機能を有する、当該フラグメント等を構成 するポリペプチドのアミノ酸配列に置換等を 有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを製 造することができる。

 また、本明細書において「同等な機能を する」とは、上記のフィブロネクチン、ま はフィブロネクチンフラグメントを使用し 得られる、γδT細胞集団の拡大培養率、も くは得られるγδT細胞の細胞傷害活性が、比 較対照の上記のフィブロネクチン、またはフ ィブロネクチンフラグメントの非存在下で得 られるγδT細胞集団よりも高いことをいう。 記作用は後述の実施例1~7に記載の方法等に じて適宜確認することができる。また、ア ノ酸の置換等を有するポリペプチドからな フラグメントとしては、細胞接着活性およ /またはヘパリン結合活性を有するものが好 適であり、CS-1ドメインを有するものも好適 ある。細胞接着活性およびヘパリン結合活 は、それらの前記活性測定方法に準じて評 することができる。

 アミノ酸の置換等を有するポリペプチド らなるフラグメントとして、例えば、2つの 異なるドメイン間にリンカーとして1以上の ミノ酸が挿入されたフラグメントも本発明 使用することができる。

 また、本発明に使用されるフィブロネク ンまたはフィブロネクチンフラグメントと ては、本発明の所望の効果が得られる限り 上記に例示した天然のフィブロネクチンや のアミノ酸配列の少なくとも一部を含むフ グメントと同等な機能を有する、当該フィ ロネクチンまたはフィブロネクチンフラグ ントを構成するポリペプチドのアミノ酸配 と50%以上の同一性を有するポリペプチド、 ましくは70%以上の同一性を有するポリペプ ド、より好ましくは90%以上の同一性を有す ポリペプチド、さらに好ましくは95%以上の 一性を有するペプチドが使用できる。なお 同一性の算出には、例えばDNASIS Pro Ver.2.6( カラバイオ(株)製)を用いることができる。

 なお、本発明において、最も好適に使用 れるフィブロネクチンフラグメントとして 、アミノ酸配列中に少なくともIII-12(配列表 の配列番号5で表されるアミノ酸配列)、III-13( 配列表の配列番号6で表されるアミノ酸配列) III-14(配列表の配列番号7で表されるアミノ 配列)およびCS-1(配列表の配列番号8で表され アミノ酸配列)のすべてを含む、すなわちヘ パリン結合ドメインとCS-1ドメインの両方を むポリペプチドが挙げられ、さらに好適に 前述のCH-296、H296-H296もしくはそれらと同等 機能を有する、当該フラグメントを構成す ポリペプチドのアミノ酸配列に1もしくは複 個のアミノ酸の置換、欠失、挿入もしくは 加を有するアミノ酸配列を有するポリペプ ドが挙げられる。

 本明細書中に記載のフィブロネクチンフ グメントは、例えば、米国特許第5,198,423号 細書の記載に基づいて遺伝子組換え体より 造することもできる。例えば、上記のH-271( 列番号10)、H-296(配列番号11)、CH-271(配列番号 12)、CH-296(配列番号13)の各フラグメントなら にこれらを取得する方法は当該特許明細書 詳細に記載されている。また、CH-296Na(配列 号15)とその製造方法については国際公開第20 05/019450号パンフレットに記載されている。ま た、上記のC-274(配列番号9)フラグメントは米 特許第5,102,988号明細書に記載された方法に り得ることができる。さらに、C-CS1(配列番 14)フラグメントは日本特許第3104178号明細書 に記載された方法により得ることができる。 上記CHV-89(配列番号16)、CHV-90(配列番号17)、CHV- 179(配列番号19)の各フラグメントは、日本特 第2729712号明細書に記載された方法により得 ことができる。また、CHV-181(配列番号20)フ グメントは国際公開第97/18318号パンフレット に記載された方法に準じて得ることができる 。CHV-92(配列番号18)フラグメントは、日本特 第2729712号明細書および国際公開第97/18318号 ンフレットを参照し、それらの文献に記載 れたプラスミドに基づいて定型的にプラス ドを構築し、該プラスミドを用いて遺伝子 学的に取得することができる。また、H296-H29 6(配列番号22)フラグメントは、これらの文献 情報をもとに、定型的にプラスミドを構築 、該プラスミドを用いた遺伝子工学的に取 することができる。

 これらのフラグメントまたはこれらのフラ メントから定型的に誘導できるフラグメン は、〒305-8566日本国茨城県つくば市東1丁目1 番地1中央第6 独立行政法人 産業技術総合研 究所 特許生物寄託センターに下記受託番号 もとで寄託された微生物を用いて製造する あるいは各微生物の保持するプラスミドを 知の方法により改変することにより製造す こともできる;
FERM BP-2264(H-271をコードするプラスミドを保 する大腸菌;寄託日 1989年1月30日)、
FERM BP-2800(CH-296をコードするプラスミドを保 する大腸菌;寄託日 1989年5月12日)、
FERM BP-2799(CH-271をコードするプラスミドを保 する大腸菌;寄託日 1989年5月12日)、
FERM BP-7420(H-296をコードするプラスミドを保 する大腸菌;寄託日 1989年5月12日)、
FERM BP-1915(C-274をコードするプラスミドを保 する大腸菌;寄託日 1988年6月17日)、
FERM BP-5723(C-CS1をコードするプラスミドを保 する大腸菌;寄託日 1990年3月5日)、
FERM BP-10073(CH-296Naをコードするプラスミド;寄 託日 2004年7月23日)
FERM P-12182(CHV-89をコードするプラスミドを保 する大腸菌;寄託日 1991年4月8日)、
FERM P-12183(CHV-179をコードするプラスミドを保 有する大腸菌;寄託日 1991年4月8日)。
FERM P-20602(H296-H296をコードする核酸を含有す プラスミド;寄託日 2005年7月22日)。

 フィブロネクチンは巨大な糖タンパク質 あるため、天然起源のタンパク質を調製し 使用することは産業上および医薬品製造上 必ずしも容易ではない。また、フィブロネ チンは多機能タンパク質であることから、 の使用の状況によっては、本発明の方法に 果を示す領域とは異なる領域に起因する不 合が起こることも考えられる。これらのこ から、本発明においては、入手、取り扱い 容易さ、安全面の観点から、好適にはフィ ロネクチンフラグメントを使用することが ましい。また、高い拡大培養率を実現する いう観点からも、前述のフィブロネクチン ラグメントを使用することが好ましい。ま 、本発明に使用されるフィブロネクチンフ グメントの分子量としては、特に限定はな が、例えば1~230kD、好適には1~200kD、より好 には5~190kD、さらに好適には5~180kD、さらによ り好適には10~180kDである。当該分子量は、例 ば、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に より測定することができる。

 なお、本発明のフィブロネクチンフラグ ントを構成するポリペプチドのアミノ酸配 において、フィブロネクチン由来のポリペ チドのアミノ酸配列以外のアミノ酸配列部 は、本発明の所望の効果の発現を阻害しな 限り任意であり、特に限定されるものでは い。

(2)γδT細胞集団の製造方法
 以下、本発明のγδT細胞集団の製造方法に いて具体的に説明する。本発明はγδT細胞を 高比率に含有する細胞集団を製造する方法で ある。本発明の方法は、前述の(a)フィブロネ クチン、フィブロネクチンフラグメントまた はそれらの混合物(以下、(a)成分と称するこ がある)、および(b)γδT細胞活性化因子(以下 (b)成分と称することがある)の存在下でγδT 胞を含む細胞集団を培養する工程を含有す ことを特徴とする。本発明の製造方法はγδ T細胞の拡大培養率が高く、また当該方法に り得られるγδT細胞集団は、高い細胞傷害活 性を有するという、極めて有用な性質を有す る。なお、本願明細書において「それらの混 合物」とは、フィブロネクチン及び前記した フィブロネクチンフラグメントからなる群よ り選択される2種以上の混合物を意味し、フ ブロネクチン及び1種以上の前記フィブロネ チンフラグメントの混合物、もしくは2種以 上の前記フィブロネクチンフラグメントの混 合物を意味する。

 本発明の製造方法に使用される、γδT細 を含有する細胞集団としては、PBMC、造血幹 胞、臍帯血単核球等が例示される。なお、 願明細書においてPBMCとは、末梢血由来単核 球を意味し、例えば、採血によって得られた 血液や、成分採血によって得られた成分採血 液から比重遠心などの方法により分離・取得 することができる。ただし、PBMCの取得に際 ては、特に限定されるものではなく組織液 骨髄液などに含まれる前躯細胞等も利用で る。また、前記γδT細胞を含む細胞集団とし ては、γδT細胞を含む血球系細胞であれば本 明に使用でき、例えば、末梢血液、臍帯血 の血液や、血液から赤血球や血漿等の成分 除去したもの、骨髄液等を使用することが きる。また、γδT細胞集団を含む細胞集団 しては、生体から採取されたもの、あるい 生体外での培養を経て得られたもの、例え 本発明の方法により得られたγδT細胞集団を そのままもしくは凍結保存したもののいずれ も使用することができる。また、例えば生体 から得られたPBMC、造血幹細胞、臍帯血単核 等から種々の分離操作を経て得られたγδT細 胞や、後述のγδT細胞活性化因子による刺激 付与することによってγδT細胞比率が高め れたT細胞集団を使用することもできる。な 、本発明においては、γδT細胞を構成細胞 一部として含む細胞集団を使用することに り、γδT細胞の高比率な拡大培養を実施でき ることから、本発明に使用されるγδT細胞を 有する細胞集団としては、前記のPBMC、造血 幹細胞、臍帯血単核球が好ましい。

 本発明において、γδT細胞活性化因子と ては、γδT細胞を活性化、もしくは増殖する 作用を有する公知のものが使用できる。特に 限定はないが、例えば、パミドロネート、ア レンドロネート、ゾレドロネート、リセドロ ネート、ネリドロネート、イバンドロネート 、インカドロネート、オルバドロネート、ソ ルバドロネート、ミノドロネート、EB1053、エ チドロネート、クロドロネート、チルドロネ ート、メドロネート等のビスホスフォン酸系 化合物、イソペンテニルピロリン酸、2-メチ -3-ブテニル-1-ピロリン酸、4-ヒドロキシ-3- チル-2-ブテニル-1-ピロリン酸等のピロリン モノエステル系化合物、3-(ブロモメチル)-3- タノール-1-イル-2リン酸(BrHPP)、3-(ヨードメ ル)-3-ブタノール-1-イル-2リン酸(IHPP)、3-(ク ロメチル)-3-ブタノール-1-イル-2リン酸(ClHPP) 、3-(ブロモメチル)-3-ブタノール-1-イル-3リン 酸(BrHPPP)、3-(ヨードメチル)-3-ブタノール-1-イ ル-3リン酸(IHPPP)、α,γ-ジ-[3-(ブロモメチル)-3- ブタノール-1-イル]-3リン酸(diBrHTP)、α,γ-ジ-[3 -(ヨードメチル)-3-ブタノール-1-イル]-3リン酸 (diIHTP)等のホスホハロヒドリン類、3,4-エポキ シ-3-メチル-1-ブチル-2リン酸(Epox-PP)、3,4-エポ キシ-3-メチル-1-ブチル-3リン酸(Epox-PPP)、α,γ- ジ-3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブチル-3リン酸(di-E pox-TP)等のホスホエポキシド類、1-ヒドロキシ -3-(メチルペンチルアミノ)プロピリデン-バイ ホスホン酸等のアミノバイホスホネート系化 合物、またpan-δモノクローナル抗体等のγδ のT細胞レセプター(γδTCR)に結合活性を有す 抗体等が例示される。

 本発明のγδT細胞集団の製造方法におい 、製造されるγδT細胞集団を得るための総培 養日数としては、例えば2~60日間、好適には4~ 40日間、より好適には6~30日間とすることが好 ましい。また、本発明のγδT細胞集団の製造 法において実施される、上記(a)成分、およ (b)成分の存在下でのγδT細胞集団を含む細 集団の培養は、特に好適には全培養期間中 少なくとも初期段階において上記(a)成分、 よび(b)成分の存在下に培養を実施すること 好適であり、より好適には少なくとも培養 始時に本発明の有効成分の存在下での培養 実施していることが好ましい。なお、本発 の有効成分の存在下での培養は培養期間中 全期間であってもよく、また任意の一部の 間であってもよい。すなわち、γδT細胞の製 造工程の一部に前記工程を含むものであれば 本発明に包含される。好適には(a)成分、およ び(b)成分の存在下での培養を、培養開始時か ら少なくとも6時間以上、より好ましくは12時 間以上、さらに好ましくは24時間以上実施す ことが好ましい。また、本発明のγδT細胞 製造方法における、これらの(a)成分および(b )成分の存在下での培養工程以外の培養は、 記(a)成分もしくは(b)成分のいずれかの存在 、または上記(a)成分および(b)成分の非存在 で実施することもできる。例えば上記(a)成 および(b)成分の存在下での2~7日間の培養工 により得られた細胞集団を、(a)成分もしく (b)成分の存在下、または上記(a)成分および(b )成分の非存在下でさらに4~14日間培養するこ ができる。

 本発明において、(a)成分の培養中の濃度 しては、特に限定はなく、例えば0.0001~500μg /mL、特に0.001~500μg/mLが好適である。なお、当 該培養中の(a)成分の濃度とは、培地中に溶解 させるか、もしくは適当な担体に固定化して 培地中に存在させた際の濃度を意味する。

 本発明において、(b)成分の培養中の濃度 しては、使用されるγδT細胞活性化因子に り適宜設定でき、特に限定されるものでは いが、例えば0.001~1000μM、好適には0.005~100μM 特に好適には0.01~50μMが例示される。

 本発明のγδT細胞集団の製造方法において 用される培地は、特に限定はなく、γδT細胞 の拡大培養に必要な成分を混合して作製され た公知の培地を使用することができ、たとえ ば市販の培地を適宜選択して使用することが できる。これらの培地はその本来の構成成分 以外にサイトカイン類、適当なタンパク質、 その他の成分を含んでいてもよい。サイトカ イン類としては、例えばIL-2、IL-7、IL-12、IFN- 、IFN-α、IFN-β、IL-15等が例示され、好適には 、IL-2を含有する培地が使用される。IL-2(サイ トカイン類一般)の培地中の濃度としては、 に限定はないが、例えば、好適には0.01~1×10 5 U/mL、より好適には0.1~1×10 4 U/mLである。また、適当なタンパク質として 、CD3リガンドやCD28リガンド、例えば抗CD3抗 や抗CD28抗体が例示される。当該成分の培地 中の濃度は、所望の効果が得られれば特に限 定されるものではない。しかしながら、本発 明においては、後述の実施例にも記載のとお り、抗CD3抗体の非存在下でも高いγδT細胞比 で拡大培養を実現することができる。すな ち、本発明において、好ましくは抗CD3抗体 存在下での培養が実施される。また、その の成分としては、T細胞の活性化に寄与する 各種マイトジェン等が例示される。

 さらに、培養においては、培地中に血清 血漿を添加することもできる。これらの培 中への添加量は特に限定はないが、0%(v/v)超 ~20%(v/v)が例示され、また培養段階に応じて使 用する血清や血漿の量を変更することができ る。例えば、血清又は血漿濃度を段階的に減 らして使用することもできる。なお、血清又 は血漿の由来としては、自己(培養する細胞 由来が同じであることを意味する)もしくは 自己(培養する細胞と由来が異なることを意 味する)のいずれでも良いが、好適には安全 の観点から自己由来のものが使用できる。 た、培地中に血清や血漿を添加せずに培養 実施することもできる。

 本発明のγδT細胞集団の製造は、通常、上 の(a)フィブロネクチン、フィブロネクチン ラグメントまたはそれらの混合物、および(b )γδT細胞活性化因子の存在下に、所定の成分 を含む培地中で行なわれる。本発明において 使用される培養開始時の細胞数としては、特 に限定はないが、例えば好適には1cell/mL~1×10 8 cells/mL、より好適には1cell/mL~5×10 7 cells/mL、さらに好適には1cell/mL~2×10 7 cells/mLが例示される。また、培養条件に特に 定はなく、通常の細胞培養に使用される条 を使用することができる。例えば、20~40℃ 好ましくは37℃で、CO 2 等の存在下で培養することができる。また、 適当な時間間隔で細胞培養液を新鮮な培地を 加えて希釈するか、培地を交換するか、もし くは細胞培養用器材を交換することができる 。

 本発明のγδT細胞集団の製造方法において 用される細胞培養用器材としては、特に限 はないが、例えば、シャーレ、フラスコ、 ッグ、大型培養槽、バイオリアクター等を 用することができる。なお、バッグとして 、細胞培養用CO 2 ガス透過性バッグを使用することができる。 また、工業的に大量のγδT細胞集団を製造す 場合には、大型培養槽を使用することがで る。また、培養は開放系、閉鎖系のいずれ も実施することができるが、好適には得ら るγδT細胞集団の安全性の観点から閉鎖系 培養を行うことが好ましい。

 なお、上記のフィブロネクチン、フィブ ネクチンフラグメントまたはそれらの混合 、γδT細胞活性化因子、サイトカイン類、 当なタンパク質やその他成分は培地中に溶 して共存させる他、適切な固相、例えばシ ーレ、フラスコ、バッグ等の細胞培養用器 (開放系のもの、および閉鎖系のもののいず をも含む)、またはビーズ、メンブレン、ス ライドガラス等の細胞培養用担体に固定化し て使用してもよい。それらの固相の材質は細 胞培養に使用可能なものであれば特に限定さ れるものではない。前記担体は、細胞培養時 に細胞培養用器材中の培養液に浸漬して使用 される。前記成分を前記担体に固定化する場 合、その固定化量は所望の効果が得られれば 特に限定されるものではない。

 上記成分の固相への固定化方法としては 特に限定はないが、例えば、適当な緩衝液 中でこれらの物質を固相と接触させること より固定化することができる。例えば、フ ブロネクチンフラグメントの固相への固定 については、国際公開第97/18318号パンフレ ト、ならびに国際公開第00/09168号パンフレッ トに記載の方法によっても固定化を実施する ことができる。

 前記の種々の成分を固相に固定化してお ば、本発明の方法によりγδT細胞集団を得 後、該T細胞集団と固相とを分離するのみで 有効成分等と該T細胞集団とを容易に分離す ることができ、該T細胞集団への有効成分等 混入を防ぐことができる。

 また、本発明の製造方法により得られた δT細胞集団を用いて、さらにγδT細胞を高比 率に含有するγδT細胞集団、もしくはγδT細 のみを分離することもできる。分離操作と ては、特に限定はないが、例えばセルソー ー、磁気ビーズ、カラム等を用いて公知の 法で分離することが出来る。

 また、本発明の方法により製造されたγδ T細胞をクローン化することにより、安定し γδT細胞として維持することもできる。また 、本発明の方法により得られたγδT細胞集団 用いて、さらに本発明の方法や公知の方法 より培養することで新たにγδT細胞集団を ることもできる。

 本発明の方法により製造されるγδT細胞 団の投与により効果を示す疾患、すなわち 発明の方法により製造されるγδT細胞集団に 感受性を示す疾患としては、特に限定はない が、例えば、癌、白血病、悪性腫瘍、肝炎や 、インフルエンザ、HIV等のウイルス、細菌、 真菌が原因となる感染性疾患、例えば結核、 MRSA、VRE、深在性真菌症が例示される。また 後述のようにさらに遺伝子治療用の外来遺 子を導入した場合は、目的の各種遺伝子疾 等に対しても効果を示す。また、本発明の 法により製造されるγδT細胞集団は、骨髄移 植や放射線照射後の感染症予防、再発白血病 の寛解を目的としたドナーリンパ球輸注等に も利用できる。

 さらに本発明は、上記の本発明の製造方法 得られたγδT細胞集団を提供する。また、 発明は、当該T細胞集団を有効成分として含 する医薬(治療剤)を提供する。当該T細胞集 を含有する前記医薬は免疫療法への使用に しており、例えば養子免疫療法又はドナー ンパ球輸注用の医薬として使用できる。免 療法においては、患者の治療に適したγδT 胞集団が、例えば注射や点滴による静脈、 脈、皮下、腹腔内等の投与方法によって患 に投与される。当該医薬は前述の疾患やド ーリンパ球輸注での使用において非常に有 である。当該医薬は製薬分野で公知の方法 従い、例えば、本発明の方法により調製さ た当該T細胞集団を有効成分として、公知の 経口投与に適した有機または無機の担体、 形剤、安定剤等と混合し、点滴剤、注射剤 として調製できる。なお、医薬における本 明のγδT細胞集団の含有量、医薬の投与量 当該医薬に関する諸条件は公知の免疫療法 従って適宜、決定できる。例えば、医薬に ける本発明のγδT細胞集団の含有量としては 、特に限定はないが、例えば、好適には1×10 3 ~1×10 11 cells/mL、より好適には1×10 4 ~1×10 10 cells/mL、さらに好適には1×10 5 ~1×10 9 cells/mLが例示される。また、本発明の医薬の 与量としては、特に限定はないが、例えば 成人一日あたり、好適には1×10 5 ~1×10 12 cells/日、より好ましくは、1×10 6 ~5×10 11 cells/日、さらに好ましくは1×10 6 ~1×10 11 cells/日が例示される。さらに、当該医薬によ る免疫療法と、公知の薬剤投与による薬剤治 療や放射線治療、外科的手術による治療との 併用を行なうこともできる。また、当該医薬 の投与には、前述のγδT細胞活性化因子を同 に投与することにより、生体に投与された δT細胞のより高い治療効果が期待できる。 お、本発明の別の態様として、本発明の製 方法により得られたγδT細胞集団および前述 のγδT細胞活性化因子のいずれをも含む医薬 ットが提供される。

 本発明のγδT細胞集団の製造方法におい 、当該T細胞に外来遺伝子を導入する工程を らに包含することができる。すなわち、本 明は、その一態様として、当該T細胞集団に 外来遺伝子を導入する工程をさらに含むγδT 胞集団の製造方法を提供する。なお、「外 遺伝子」とは、遺伝子導入対象のγδT細胞 人為的に導入される遺伝子のことを意味し 遺伝子導入対象のγδT細胞と同種由来のもの も包含される。

 本発明の製造方法を行うことにより、培 されるγδT細胞の増殖能が増強されるが、 発明のγδT細胞の製造方法を、遺伝子の導入 工程と組み合わせることにより、遺伝子の導 入効率の上昇が期待される。

 外来遺伝子の導入手段には特に限定はな 、公知の遺伝子導入方法により適切なもの 選択して使用することができる。遺伝子導 の工程は、γδT細胞集団の製造の際、任意 時点で実施することができる。例えば、前 T細胞集団の製造と同時もしくは途中で、あ いは該工程の後に実施するのが、作業効率 観点から好適である。

 前記の遺伝子導入方法としては、ウイル ベクターを使用する方法、該ベクターを使 しない方法のいずれもが本発明に使用でき 。それらの方法の詳細についてはすでに多 の文献が公表されている。

 前記ウイルスベクターには特に限定はな 、通常、遺伝子導入方法に使用される公知 ウイルスベクター、例えば、レトロウイル ベクター、レンチウイルスベクター、アデ ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベ ター、シミアンウイルスベクター、ワクシ アウイルスベクターまたはセンダイウイル ベクター等が使用される。特に好適には、 イルスベクターとしては、レトロウイルス クター、アデノウイルスベクター、アデノ 伴ウイルスベクター、レンチウイルスベク ーまたはシミアンウイルスベクターが使用 れる。上記ウイルスベクターとしては、感 した細胞中で自己複製できないように複製 を欠損させたものが好適である。また、遺 子導入の際にレトロネクチン(登録商標、タ カラバイオ社製)などの遺伝子導入効率を向 させる物質を用いることもできる。

 レトロウイルスベクターならびにレンチ イルスベクターは、当該ベクターが導入さ る細胞の染色体DNA中に該ベクターに挿入さ ている外来遺伝子を安定に組み込むことが き、遺伝子治療等の目的に使用されている 当該ベクターは分裂、増殖中の細胞に対す 感染効率が高いことから、本発明における 造の工程において遺伝子導入を行うのに好 である。

 ウイルスベクターを使用しない遺伝子導 方法としては、本発明を限定するものでは いが、例えば、リポソーム、リガンド-ポリ リジンなどの担体を使用する方法やリン酸カ ルシウム法、エレクトロポレーション法、パ ーティクルガン法などを使用することができ る。この場合にはプラスミドDNA、直鎖状DNAや RNAに組み込まれた外来遺伝子が導入される。

 本発明においてγδT細胞集団に導入され 外来遺伝子には特に限定はなく、前記細胞 導入することが望まれる任意の遺伝子を選 ことができる。このような遺伝子としては 例えば、タンパク質(例えば、酵素、サイト イン類、レセプター類等)をコードするもの の他、アンチセンス核酸やsiRNA(small interfering  RNA)、リボザイムをコードするものが使用で きる。また、遺伝子導入された細胞の選択を 可能にする適当なマーカー遺伝子を同時に導 入してもよい。

 前記の外来遺伝子は、例えば、適当なプ モーターの制御下に発現されるようにベク ーやプラスミド等に挿入して使用すること できる。また、効率のよい遺伝子の転写を 成するために、プロモーターや転写開始部 と協同する他の調節要素、例えば、エンハ サー配列やターミネーター配列がベクター に存在していてもよい。また、外来遺伝子 相同組換えにより導入対象のT細胞の染色体 へ挿入することを目的として、例えば、該染 色体における該遺伝子の所望の標的挿入部位 の両側にある塩基配列に各々同一性を有する 塩基配列からなるフランキング配列の間に外 来遺伝子を配置させてもよい。導入される外 来遺伝子は天然のものでも、または人工的に 作製されたものでもよく、あるいは起源を異 にするDNA分子がライゲーション等の公知の手 段によって結合されたものであってもよい。 さらに、その目的に応じて天然の配列に変異 が導入された配列を有するものであってもよ い。

 導入する遺伝子としては、標的細胞の表 抗原を認識するTCRをコードする遺伝子や、 的細胞の表面抗原に対する抗体の抗原認識 位を有し、かつTCR複合体の部分領域(CD3やそ の部分領域等)を含むキメラレセプターをコ ドする遺伝子が例示される。ここでTCRとし は対象となる疾患に応じてαβ型、γδ型にか かわらず、適切なTCRを選択することができる 。

 また、例えば、癌等の患者の治療に使用 れる薬剤に対する耐性に関連する酵素をコ ドする遺伝子をγδT細胞に導入して該T細胞 薬剤耐性を付与することができる。そのよ なγδT細胞を用いれば、免疫療法と薬剤療 とを組み合わせることができ、従って、よ 高い治療効果を得ることが可能となる。薬 耐性遺伝子としては、例えば、多剤耐性遺 子(multidrug resistance gene)が例示される。

 一方、前記の態様とは逆に、特定の薬剤 対する感受性を付与するような遺伝子をγδ T細胞集団に導入して、該薬剤に対する感受 を付与することもできる。かかる場合、生 に移植した後のT細胞を当該薬剤の投与によ て除去することが可能となる。薬剤に対す 感受性を付与する遺伝子としては、例えば チミジンキナーゼ遺伝子が例示される。

 本発明はまた、被験体に、有効量の前述 方法により得られるγδT細胞集団を投与す ことを含む、疾患の治療方法又は予防方法 提供する。本明細書中において被験体とは 特に限定はないが、好ましくは本発明の方 により製造されるT細胞集団を投与される前 に記載するような疾患、すなわち当該T細胞 集団に感受性を示す疾患の患者を示す。また 、当該治療方法としては養子免疫療法又はド ナーリンパ球輸注療法が例示される。なお、 当該T細胞集団とともに、前述のγδT細胞活性 化因子を患者に投与することもできる。

 また、本明細書中において有効量とは、 述の方法により得られるγδT細胞集団を上 被験体に投与した場合に、該T細胞集団を投 していない被験体と比較して、治療もしく 予防効果を発揮する該T細胞集団の量である 。具体的な有効量としては、投与形態、投与 方法、使用目的および被験体の年齢、体重、 症状等によって適宜設定され一定ではないが 、好ましくは、上記の医薬の投与量と同様に すればよい。投与方法にも限定はなく、例え ば、上記の医薬と同様に、点滴や注射等によ り投与すればよい。

 また、本発明は、医薬の製造のための前 の方法により得られるγδT細胞集団の使用 提供される。当該医薬の製造方法は前述の 薬と同様に行われる。また、当該医薬の投 される疾患についても、特に限定はないが 前述の医薬と同様である。また、当該医薬 しては、養子免疫療法用又はドナーリンパ 輸注用の医薬が例示される。

 また、本発明は、養子免疫療法又はドナ リンパ球輸注への使用のための前記γδT細 集団の使用も提供される。本使用における 記γδT細胞集団の使用量には限定はないが、 例えば、医薬における前記γδT細胞集団の含 量として例示される量が挙げられる。

 以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体 に説明するが、本発明はこれらの記載に何 限定されるものではない。
調製例1 CH-296の調製
 CH-296(フィブロネクチンの細胞結合ドメイン 、ヘパリン結合ドメインおよびCS-1ドメイン らなるポリペプチド)はEscherichia coli HB101/pCH 102(FERM BP-2800)を用い、これを米国特許第5,198, 423号明細書の記載に基づいて調製した。

調製例2 H296-H296の作製
 本明細書に記載の操作のうち、プラスミド 調製、制限酵素消化などの基本的な操作に いては2001年、コールド スプリング ハー ー ラボラトリー発行、T.マニアティス(T.Mani atis)ら編集、モレキュラー クローニング:ア ラボラトリー マニュアル第3版(Molecular Cloni ng : A Laboratory Manual 3rd ed.)に記載の方法に よった。

(1)発現ベクターの構築
(i)H-296発現ベクターの構築
 配列表の配列番号13記載のCH-296のアミノ酸 列のN末端側よりアミノ酸278~574(塩基番号835~1 725)よりなるポリペプチドをH-296とし、このH-2 96が2つ連結した変異体タンパク質(H296-H296)を 現させるため、以下のようにして発現ベク ーを構築した。以下、図2を参照。

 まず、配列表の配列番号13記載のCH-296の 基配列(国際公開第03/080817パンフレット参照) より、配列表の配列番号23及び24に記載の塩 配列を有する合成プライマーH296-NcoF及びH296- HindRをDNA合成機(Applied Biosystems社製、Expesite 8 909(型番))で合成し、常法により精製した。上 記合成プライマーH296-NcoFは、制限酵素NcoIの 識配列を塩基番号11~16に、さらにCH-296のアミ ノ酸配列(配列番号13)のアミノ酸番号278~283に 当する塩基配列を塩基番号13~30にもつ合成DN Aである。また、合成プライマーH296-HindRは、 限酵素HindIIIの認識配列を塩基番号11~16に、 らにCH-296のアミノ酸配列(配列番号13)のアミ ノ酸番号570~574に相当する塩基配列を塩基番 20~34にもつ合成DNAである。

 上記合成プライマーを用いて、PCRを行った PCRの反応条件を以下に示す。
 すなわち、鋳型DNAとしてpCH102 約0.1μg、5μL 10×Ex Taq buffer(タカラバイオ社製)、5μLのdNT P混合液(タカラバイオ社製)、10pmolの合成プラ イマーH296-NcoF、10pmolの合成プライマーH296-Hind R、0.5UのTaKaRa Ex Taq(タカラバイオ社製)を加 、滅菌水を加えて全量を50μLとした。前記反 応液をTaKaRa PCR Thermal Cycler SP(タカラバイオ 社製)にセットし、94℃ 1分、55℃ 1分、72℃  3分を1サイクルとする30サイクルの反応を行 った。

 反応終了後、該反応液5μLを1.0%(w/v)アガロ ースゲル電気泳動に供し、目的の約0.9kbpのDNA フラグメントを確認した。残りのPCR反応液を 電気泳動し、そのフラグメントを回収・精製 し、エタノール沈殿を行なった。エタノール 沈殿後の回収DNAを10μLの滅菌水に懸濁し、制 酵素NcoI(タカラバイオ社製)及び制限酵素Hind III(タカラバイオ社製)で2重消化し、1.0%(w/v)ア ガロース電気泳動によりそのNcoI-HindIII消化物 を抽出精製し、NcoI-HindIII消化DNA断片を得た。

 次に国際公開第99/27117号パンフレットの 施例1~6記載の方法に従い、pCold04NC2ベクター 調製した(これ以降、このpCold04NC2ベクター pCold14ベクターとする)。

 次に上記pCold14ベクターを上記NcoI-HindIII消 化DNA断片を調製した時に用いたのと同じ制限 酵素で切断し、末端を脱リン酸処理したもの を調製し、上記NcoI-HindIII消化DNA断片と混合し 、DNAライゲーションキット(タカラバイオ社 )を用いて連結した。その後、ライゲーショ 反応液20μLを用いて大腸菌JM109を形質転換し 、その形質転換体を1.5%(w/v)濃度の寒天を含む LB培地(アンピシリン50μg/mL含む)上で生育させ た。

 目的のDNA断片が挿入されたプラスミドは シークエンシングすることにより確認し、 の組み換えプラスミドをpCold14-H296とした。 のpCold14-H296は、CH-296のアミノ酸番号278~574の アミノ酸配列をコードする塩基配列を含むプ ラスミドである。

(ii)H296-H296発現ベクターの構築
 次に、国際公開第03/080817パンフレットで公 されている塩基配列より、配列表の配列番 25記載の塩基配列を有する合成プライマーH2 96-NcoRをDNA合成機で合成し、常法により精製 た。上記合成プライマーH296-NcoRは、制限酵 NcoIの認識配列を塩基番号10~15に、さらにCH-29 6のアミノ酸配列(配列番号13)のアミノ酸番号5 74~569に相当する塩基配列を塩基番号17~34にも 合成DNAである。上記合成プライマーと配列 の配列番号26記載のNC2ベクターの5’UTR部分 アニ-リングするプライマー(NC2-5’UTR)を用 てPCRを行った。PCRの反応条件を以下に示す

 すなわち、鋳型DNAとしてpCold14-H296約0.1μg 10μLの10×pyrobest buffer(タカラバイオ社製)、8 μLのdNTP混合液(タカラバイオ社製)、20pmolのNC2 -5’UTR、20pmolの合成プライマーH296-NcoR、5Uのpy robest DNA polymerase(タカラバイオ社製)を加え 滅菌水を加えて全量を100μLとした。前記反 液をTaKaRa PCR Thermal Cycler SP(タカラバイオ 製)にセットし、96℃ 1分、68℃ 4分を1サイ ルとする30サイクルの反応を行なった。

 反応終了後、該反応液5μLを1.0%(w/v)アガロ ースゲル電気泳動に供し、目的の約0.9kbpのDNA フラグメントを確認した。残りのPCR反応液を Bio radカラムにより回収・精製し、エタノー 沈殿を行なった。エタノール沈殿後の回収D NAを39μLの滅菌水に懸濁、全量50μLとした反応 液で制限酵素NcoI(タカラバイオ社製)消化し、 1.0(w/v)%アガロース電気泳動によりそのNcoI-NcoI 消化物を抽出精製し、NcoI-NcoI消化DNA断片を得 た。

 次に、(i)で調製したpCold14-H296を制限酵素N coIで消化し、末端を脱リン酸処理したものを 調製し、上記NcoI-NcoI消化DNA断片と混合し、DNA ライゲーションキット(タカラバイオ社製)を いて連結した。その後、ライゲーション反 液20μLを用いて大腸菌JM109を形質転換し、そ の形質転換体を1.5%(w/v)濃度の寒天を含むLB培 (アンピシリン50μg/mL含む)上で生育させた。

 目的のDNA断片が挿入されたプラスミドは シークエンシングすることにより確認し、 の組み換えプラスミドをpCold14-H296-H296とし 。当該プラスミドは、plasmid pCold14-H296-H296と 命名、表示され、2005年7月22日より独立行政 人産業技術総合研究所特許生物寄託センタ (日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6 (郵便番号305-8566))にFERM P-20602として寄託され ている。このpCold14-H296-H296は、CH-296のアミノ 番号278~574のアミノ酸配列をコードする塩基 配列が、間にアミノ酸“A”を挟んで2つ連結 た形で含むプラスミドである。当該タンパ 質のアミノ酸配列を配列表の配列番号22に す。

(2)発現、精製
 上記(1)で調製したpCold14-H296-H296を用いて大 菌BL21を形質転換し、その形質転換体を1.5%(w/ v)濃度の寒天を含むLB培地(アンピシリン50μg/m L含む)上で生育させた。生育したコロニーを3 0mLのLB液体培地(アンピシリン50μg/mL含む)に植 菌し、37℃で一晩培養した。全量を3Lの同LB培 地に植菌し、37℃で対数増殖期まで培養した なお、この培養の際には、5L容ミニジャー ァーメンター(Biott社製)を使用し、120rpm、Air= 1.0l/minの条件で行なった。前記培養後、15℃ で冷却した後、IPTG(タカラバイオ社製)を終 度1.0mMになるように添加し、そのまま15℃で2 4時間培養して発現誘導させた。その後菌体 遠心分離により集め、約40mLの細胞破砕溶液[ 50mM Tris-HCl(pH7.5),1mM EDTA,1mM DTT,1mM PMSF,50mM NaC l]に再懸濁した。超音波破砕により菌体を破 し、遠心分離(11,000rpm 20分)により上清の抽 液と沈殿とに分離した。これを2LのbufferA[50m M Tris-HCl(pH7.5),50mM NaCl]で透析を行い、その約 40mLを用いてさらにイオン交換クロマトによ 精製を以下のように行なった。

 すなわち、樹脂容積にして100mL分のSP-Sepha rose(アマシャムファルマシア社製)をbufferA[50mM  Tris-HCl(pH7.5),50mM NaCl]で飽和させたカラム(φ4 cm×20cm)を準備し、これに透析後のサンプルを アプライした。その後、250mLのbufferAと250mLのb ufferB[50mM Tris-HCl(pH7.5),1M NaCl]で50mMから1Mの塩 ナトリウムの濃度勾配により目的タンパク の溶出を行なった。5mLずつ分画を行い、10%( w/v)アクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGE(以下SD S-PAGEと記載)により、分子量約64.6kDaの目的タ パク質を多く含む画分、約100mLを回収し、2l のbufferAで透析を行なった。

 次に、樹脂容積にして50mL分のQ-Sepharose(ア マシャムファルマシア社製)をbufferAで飽和さ たカラム(φ3cm×16cm)を準備し、これに透析後 のサンプルをアプライした。その後、250mLのb ufferAと250mLのbufferBで50mMから1Mの塩化ナトリウ ムの濃度勾配により目的タンパク質の溶出を 行なった。10%SDS-PAGEにより目的タンパク質の を多く含む画分を調べたところ、非吸着画 に多く含まれ、この約100mLを回収し、2lのbuf fer D[50mM 炭酸ナトリウム緩衝液 pH9.5]で透析 を行なった。

 その後、セントリコン-10(ミリポア社製) 約20倍の5mLまで濃縮を行い、さらに10%SDS-PAGE 確認したところ、分子量約64.6kDaの目的タン パク質がほぼ単一バンドで検出され、これを H296-H296とした。その後、MicroBCAキット(ピアー ス社製)を使用して、タンパク質濃度を測定 たところ、2.16mg/mLであった(分子量から計算 て、約33.4μM)。また、N末端解析を行なった ころ、メチオニンは消化されており、N末端 はAlaであった。

実施例1 パミドロネートおよびIsopentenyl pyrop hosphate(IPP)を用いたγδT細胞集団の拡大培養
(1)PBMCの分離および保存
 インフォームド・コンセントの得られたヒ 健常人ドナーより成分採血または50mL採血を 実施後、採血液をリン酸緩衝生理食塩水(NEXEL L社製またはシグマ社製、以下、PBSと記載)で2 倍希釈し、Ficoll-paque(GEヘルスケアバイオサイ エンス社製)上に重層して600×gで20分間遠心し た。中間層の末梢血単核球細胞(以下、PBMCと 載)をピペットで回収、洗浄した。採取した PBMCは90%(v/v)FBS(MPバイオメディカルズ社製)/10%( v/v)DMSO(シグマ社製)からなる保存液あるいは8% (w/v)ヒト血清アルブミン(製剤名 ブミネート: Baxter社製、以下、HSAと記載)を含むCP-1(極東製 薬社製)とRPMI1640培地(シグマ社製)の等量混合 からなる保存液に懸濁し、液体窒素中にて 存した。γδT細胞拡大培養時にはこれら保 PBMCを37℃水浴中にて急速融解し、10μg/mL DNas e(カルビオケム社製)、10%(v/v)humanAB型血清(Cambr ex社製)、2mM L-グルタミン(Cambrex社製)、100μg/m L 硫酸ストレプトマイシン(明治製菓社製)を むRPMI1640培地(以下、10HRPMI+L-Glnと記載)また 10μg/mL DNase、10%(v/v)humanAB型血清を含むIscove s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM)(インビトロジ ン社製)(以下、10HIMDMと記載)で洗浄後、トリ パンブルー染色法にて生細胞数を算出して各 実験に供した。

(2)フィブロネクチンフラグメント(CH-296およ H296-H296)の固定化
 以下の実験で使用する培養器材にフィブロ クチンフラグメント(以下FNフラグメントと 載)(CH-296およびH296-H296)を固定化した。すな ち24穴細胞培養プレート(ベクトン・ディッ ンソン社製またはコーニング社製)にCH-296( 濃度 25μg/mL)またはH296-H296(終濃度 3μg/mL)を む2.20%(w/v)クエン酸ナトリウム二水和物、0.8 0%(w/v)クエン酸一水和物、2.20%(w/v)ブドウ糖(全 てナカライテスク社製)からなるpH5.0緩衝液( 下ACD-A液(pH5.0)と記載)を240μLずつ添加した。

 これらの培養器材を室温で5時間以上イン キュベートした。使用直前にはこれらの培養 器材からCH-296またはH296-H296を含むACD-A液(pH5.0) を吸引除去後、各ウェルをPBSで2回、RPMI1640培 地で1回洗浄し各実験に供した。対照として 何も固定化していないプレートを使用した

(3)γδT細胞集団の拡大培養
 10HRPMI+L-Glnまたは10HIMDMに1×10 6 cells/mLとなるように実施例1-(1)で調製したPBMC 懸濁し細胞液を調製後、何も固定化してい いプレートまたは実施例1-(2)で調製したCH-29 6またはH296-H296固定化プレートに上記細胞液 1mL/ウェルずつ添加した。終濃度20U/mLとなる うにIL-2(製剤名 プロロイキン:カイロン社 )を添加後、パミドロン酸二ナトリウム(パミ ドロネート 製剤名 アレディア注:NOVARTIS社 )(終濃度 5μM)またはIsopentenyl pyrophosphateアン モニウム塩溶液(IPP)(シグマ社製)(終濃度 5μM) を添加した。これらのプレートを5%CO 2 中37℃で培養した(培養0日目)。

 培養開始4日目には、各ウェルに終濃度20U /mLとなるようにIL-2を添加した。この際、CH-29 6またはH296-H296刺激条件については何も固定 していない新しいプレートに細胞液全量を し変えた。

 培養開始7日目、11日目には、0.5×10 6 cells/mLとなるように培養用の培地で希釈し、 も固定化していない6穴または12穴細胞培養 レート(ベクトン・ディッキンソン社製また はコーニング社製)に移し変えた後、各ウェ に終濃度20U/mLとなるようにIL-2を添加した。 養開始後14日目まで培養を継続した。

(4)γδTCR発現T細胞比率の解析
 実施例1-(1)で調製したPBMCおよび実施例1-(3) 調製した培養開始後14日目の細胞についてγ T細胞比率をフローサイトメトリー(Cytomics FC 500:ベックマンコールター社製)で解析した。 なわちPBMCまたは培養開始後14日目の細胞をP BSで洗浄した後、細胞を0.1%(w/v)牛血清アルブ ン(シグマ社製、以下、BSAと記載)を含むPBS( 下、0.1%(w/v)BSA/PBSと記載)中に懸濁し、FITC標 マウス抗ヒトγδTCR抗体(ベクトン・ディッ ンソン社製)およびPC5標識マウス抗ヒトCD3抗 (ベックマンコールター社製)を添加した。 様に各細胞集団の一部には、ネガティブコ トロールとしてFITC標識マウスIgG1/RD1標識マ スIgG1/PC5標識マウスIgG1(ベックマンコールタ 社製)を添加した。各々の抗体を添加後、氷 上で30分インキュベートした。インキュベー 後、細胞を0.1%(w/v)BSA/PBSで洗浄し、再度PBSに 懸濁した。これらの細胞をフローサイトメト リーに供し、γδTCRおよびCD3陽性細胞群をγδT 細胞としγδT細胞の割合を算出した。その結 、γδT細胞比率はそれぞれPBMCが8.9%、培養開 始後14日目の細胞は30.7~52.0%であった。

(5)γδT細胞の拡大培養率
 実施例1-(3)で調製した培養開始後14日目の細 胞についてトリパンブルー染色法にて生細胞 数を計測し、実施例1-(4)で測定したγδT細胞 率測定結果を用いて、培養開始時のγδT細胞 数と比較しての拡大培養率を下記の式に従っ て算出した。

式(1):
γδT細胞の拡大培養率=(培養開始14日目の生細 胞数×培養開始14日目のγδT細胞比率)/(培養開 始時の生細胞数×培養開始時のγδT細胞比率)

 その結果を表1に示す。

 

 表1に示されるように、γδT細胞拡大培養 期にCH-296またはH296-H296を固定化した培養器 を使用した群においては、対照群と比較し 、培養中のγδT細胞拡大培養率が高い結果 得られた。この効果は刺激剤や培養用培地 よらず得られた。これらの結果から拡大培 初期にCH-296またはH296-H296を共存させること より、培養後に得られるγδT細胞が多くなる ことが明らかとなった。

実施例2 パミドロネートを用いて培養したγ T細胞集団の拡大培養率
(1)γδT細胞集団の拡大培養
 0.25%(w/v)HSAを含むIMDMに2×10 6 cells/mLとなるように実施例1-(1)で調製したPBMC 懸濁し細胞液を調製後、何も固定化してい いプレートまたは実施例1-(2)で調製したH296- H296固定化プレートに上記細胞液を1mL/ウェル つ添加した。各ウェルにパミドロネートを 濃度5μMとなるように添加した。これらのプ レートを5%CO 2 中37℃で培養した(培養0日目)。培養開始2日目 には、各ウェルに終濃度100U/mLとなるようにIL -2を添加した。培養開始3日目には、各ウェル から培養上清を半量除去後、20%(v/v)humanAB型血 清を含むIMDMを500μL/ウェルずつ添加し(humanAB 血清 終濃度10%(v/v))、さらに終濃度100U/mLと るようにIL-2を添加した。培養開始5日目には 、各群とも0.6から0.9×10 6 cells/mLとなるように10HIMDMにより希釈後、終濃 度100U/mLとなるようにIL-2を添加した。培養開 8日目および11日目には、各群とも1.0×10 6 cells/mLとなるように10HIMDMにより希釈後、何も 固定化していない6穴または12穴細胞培養プレ ートに移し変え、各ウェルに終濃度100U/mLと るようにIL-2を添加した。培養開始後14日目 で培養を継続した。

(2)γδT細胞比率の解析
 実施例1-(4)と同様の方法で、実施例1-(1)で調 製したPBMCおよび実施例2-(1)で調製した培養開 始後14日目の細胞についてγδT細胞比率をフ ーサイトメトリーで解析した。その結果、γ δT細胞比率はそれぞれPBMCが8.9%、培養開始後1 4日目の細胞は96.0~96.7%であった。

(3)γδT細胞の拡大培養率
 実施例2-(1)で調製した培養開始後14日目の細 胞についてトリパンブルー染色法にて生細胞 数を計測し、実施例1-(5)と同様の方法で培養 始時のγδT細胞数と比較しての拡大培養率 算出した。
結果を表2に示す。

 

 表2に示されるように、γδT細胞拡大培養 期にH296-H296を固定化した培養器材を使用し 群においては、対照群と比較して、γδT細 拡大培養率が高い結果が得られた。

実施例3 パミドロネートを用いて培養したγ T細胞集団の細胞傷害活性測定
(1)γδT細胞集団の拡大培養
 実施例1-(2)で調製したCH-296固定化プレート 使用する以外は実施例2と同様の方法で、培 を実施した。

(2)γδT細胞比率の解析
実施例1-(4)と同様の方法で、実施例1-(1)で調 したPBMCおよび実施例3-(1)で調製した培養開 後14日目の細胞についてγδT細胞比率をフロ サイトメトリーで解析した。その結果、γδ T細胞比率はそれぞれPBMCが8.9%、培養開始後14 目の細胞は96.0~96.9%であった。

(3)γδT細胞の拡大培養率
 実施例3-(1)で調製した培養開始後14日目の細 胞についてトリパンブルー染色法にて生細胞 数を計測し、実施例1-(5)と同様の方法で培養 始時のγδT細胞数と比較しての拡大培養率 算出したところ、CH-296を固定化した培養器 を使用した群においては、対照群と比較し 、培養中のγδT細胞拡大培養率が高いことを 確認した。

(4)細胞傷害活性の測定
 実施例3-(1)で調製した培養開始後14日目の細 胞について、細胞傷害活性を測定した。細胞 傷害活性は、Calcein-AMを用いた細胞傷害活性 定法〔リヒテンフェルズ R.ら(Lichtenfels R.et al.)、J. Immunol. Methods、第172巻、第2号、第227 ~239頁(1994)〕にて評価した。すなわちK562細胞( ヒューマンサイエンス研究資源バンク JCRB001 9)、Daudi細胞(ヒューマンサイエンス研究資源 ンク JCRB9071)を1~2×10 6 cells/mLとなるよう5%(v/v)FBSを含むRPMI1640培地に 濁後、終濃度25μMとなるようにCalcein-AM(同仁 化学研究所社製)を添加し、37℃で1時間培養 た。細胞をCalcein-AMを含まない培地にて洗浄 、Calcein標識標的細胞とした。

 実施例3-(1)で調製した培養開始後14日目の細 胞をエフェクター細胞として3×10 6 cells/mLとなるように5%(v/v)humanAB型血清、0.1mM N EAA mixture、1mM Sodium pyruvate(全てCambrex社製)、 2mM L-グルタミン、100μg/mL硫酸ストレプトマ シンを含むRPMI1640培地(以下5HRPMIと記載)で希 後、96穴細胞培養プレート(ベクトン・ディ キンソン社製またはコーニング社製)の各ウ ェルに100μL/ウェルずつ分注しておき、これ にCalcein標識標的細胞が1×10 5 /mLとなるように調製したCalcein標識標的細胞 100μL/ウェルずつ添加した。この際、Calcein標 識標的細胞(T)に対するエフェクター細胞(E)の 比をE/T比として示し、E/T比30について測定を った。上記細胞懸濁液の入ったプレートを4 00×gで1分間遠心後、5%CO 2 インキュベーター内で37℃で4時間インキュベ ートした。その後、各ウェルから培養上清100 μLを採取し、蛍光プレートリーダー(Mithras LB  940 : ベルトールド社製)(励起485nm/測定535nm) によって培養上清中に放出されたCalcein量を 定した。「細胞傷害活性(%)」は以下の式に たがって算出した。

式(2):
細胞傷害活性(%)=
{(各ウェルの測定値-最小放出量)/(最大放出量 -最小放出量)}×100

 上式において最小放出量はCalcein標識標的 細胞のみ含有するウェルのCalcein放出量であ 、Calcein標識標的細胞からのCalcein自然放出量 を示す。また、最大放出量はCalcein標識標的 胞に0.1%(v/v)界面活性剤Triton X-100(ナカライテ スク社製)を加えて細胞を完全破壊した際のCa lcein放出量を示している。細胞傷害活性測定 結果を表3に示す。

 

 表3に示されるように、γδT細胞拡大培養 期にCH-296を固定化した培養器材を使用した においては、対照群に比較して細胞傷害活 が高かった。すなわち、γδT細胞拡大培養 期にCH-296を固定化した培養器材を使用した 養細胞は、細胞傷害活性がより高いγδT細胞 であることが明らかとなった。

実施例4 パミドロネートを用いて培養したγ T細胞集団の拡大培養率
(Yssel’s培地を用いた培養)
(1)γδT細胞集団の拡大培養
 実施例2-(1)と同様の方法でγδT細胞集団の拡 大培養を行った。ただし、培養用基本培地と してはIMDMの代わりにYssel’s Mediumと同一組成 の自製培地(以下Yssel’s培地と記載)を使用し 培養開始5日目には、各ウェルに10%(v/v)humanAB 型血清を含むYssel’s培地 1mLを添加し、細胞 を希釈した。

(2)γδT細胞比率の解析
 実施例1-(4)と同様の方法で、実施例1-(1)で調 製したPBMCおよび実施例4-(1)で調製した培養開 始後14日目の細胞についてγδT細胞比率をフ ーサイトメトリーで解析した。その結果、γ δT細胞比率はそれぞれPBMCが8.9%、培養開始後1 4日目の細胞は89.7~94.3%であった。

(3)γδT細胞の拡大培養率
 実施例4-(1)で調製した培養開始後14日目の細 胞についてトリパンブルー染色法にて生細胞 数を計測し、実施例1-(5)と同様の方法で培養 始時のγδT細胞数と比較しての拡大培養率 算出した。その結果を表4に示す。

 

 表4に示されるように、γδT細胞拡大培養 期にCH-296を固定化した培養器材を使用した においては、対照群と比較して、γδT細胞 大培養率が高い結果が得られた。

実施例5 ゾレドロネートを用いて培養したγ T細胞集団の拡大培養率
(1)FNフラグメント(H296-H296)の固定化
 実施例1-(2)と同様の方法でFNフラグメントの 固定化を行った。ただし、固定化プレートは 6穴細胞培養プレートを用い、H296-H296(終濃度3 μg/mL)を含むACD-A液(pH5.0)を1.2mLずつ添加した。
(2)γδT細胞培養集団の拡大培養
 0.25%(w/v)HSAを含むRPMI1640培地に1×10 6 cells/mLとなるように実施例1-(1)で調製したPBMC 懸濁し細胞液を調製後、何も固定化してい いプレートまたは実施例5-(1)で調製したH296- H296固定化プレートに上記細胞を5mL/ウェルず 添加した。各ウェルにはゾレドロン酸水和 (ゾレドロネート 製剤名 ゾメタ注射液:NOVA RTIS社製)を終濃度1μMとなるよう添加した。こ れらのプレートを5%CO 2 中37℃で培養した(培養0日目)。

培養開始より48時間後に、プレートより細胞 剥がし15mL遠心チューブ(コーニング社製)に 収し、250×gで4分間遠心した。上清(ゾレド ネートを含む)を除去した後、10HRPMI+L-Glnを用 いて1×10 6 cells/mLに調整し、何も固定化していない12穴 胞培養用プレートに添加した。各ウェルに 濃度100U/mLとなるようIL-2を添加した。

培養4日目に、1×10 6 cells/mLとなるように培養用の培地で希釈し、 ウェルに終濃度100U/mLとなるようIL-2を添加 た。

培養7日目、10日目には、0.5×10 6 cells/mLとなるよう培養用の培地で希釈し、何 固定化していない6穴細胞培養用プレートに 移し変えた。各ウェルに終濃度100U/mLとなる うIL-2を添加した。培養開始後14日目まで培 を継続した。

 (3)γδT細胞比率の解析
  実施例1-(4)と同様の方法で、実施例1-(1)で 製したPBMCおよび実施例5-(2)で調製した培養 始後14日目の細胞についてγδT細胞比率をフ ローサイトリーで解析した。その結果、γδT 胞比率はそれぞれPBMCが6.2%、培養開始後14日 目の細胞は89.3~91.3%であった。
 (4)γδT細胞の拡大培養率
  実施例5-(2)で調製した培養開始後14日目の 胞についてトリパンブルー染色法にて生細 数を計測し、実施例1-(5)と同様の方法で培 開始時のγδT細胞数と比較しての拡大培養率 を算出した。その結果を表5に示す。

 

 表5に示されるように、γδT細胞拡大培養 期にH296-H296を固定化した培養器材を使用し 群においては、対照群と比較して、培養中 γδT細胞拡大培養率が高い結果が得られた

実施例6
 実施例1、2、3又は4において、パミドロネー トに代えて、アレンドロネート、リゼドロネ ート、ネリドロネート、イバンドロネート、 インカドロネート、オルバドロネート、ソル バドロネート、ミノドロネート、EB1053、エチ ドロネート、クロドロネート、チルドロネー ト、メドロネート等のビスフォスフォン酸系 化合物を用いた場合、同様の結果が得られる 。

実施例7
 実施例1において、IPPに代えて、2-メチル-3- テニル-1-ピロリン酸、4-ヒドロキシ-3-メチ -2-ブテニル-1-ピロリン酸等のピロリン酸モ エステル系化合物を用いた場合、同様の結 が得られる。

調製例
 本発明の医薬の調製例を以下に示す。
 実施例1~7に記載の方法を基としたγδT細胞 団の大量調製を行った後、1×10 4 ~10 11 cellsの調製γδT細胞集団を0.5~500mLの生理食塩 に懸濁し、注射剤もしくは点滴剤として用 る。
 あるいは、調製後のγδT細胞集団を49.5% RPMI 1640、34.0% CP-1、16.5% ブミネート溶液(ブミネ ト:25%ヒト血清アルブミン溶液)からなる凍 保存溶液に懸濁した状態で液体窒素または-8 0℃中で凍結保存する。凍結保存γδT細胞集団 は、37.0℃湯浴中で急速融解後、そのままも くは10~500mLの生理食塩水に懸濁した状態で注 射剤もしくは点滴剤として用いる。
 この医薬は、実施例3で示した細胞傷害活性 を示し、前記の各疾患の治療に有効である。 また、この医薬は、養子免疫療法による前記 の各疾患の治療に有効である。

 本発明により、γδT細胞集団の製造方法 提供される。当該方法により得られるγδT細 胞は、例えば、免疫療法に好適に使用される 。従って、本発明の方法は、医療分野への多 大な貢献が期待される。

フィブロネクチンのドメイン構造を示 模式図である。 H296-H296の作製法を示す図である。

SEQ ID NO:1 ; Partial region of fibronectin named I II-8.
SEQ ID NO:2 ; Partial region of fibronectin named I II-9.
SEQ ID NO:3 ; Partial region of fibronectin named I II-10.
SEQ ID NO:4 ; Partial region of fibronectin named I II-11.
SEQ ID NO:5 ; Partial region of fibronectin named I II-12.
SEQ ID NO:6 ; Partial region of fibronectin named I II-13.
SEQ ID NO:7 ; Partial region of fibronectin named I II-14.
SEQ ID NO:8 ; Partial region of fibronectin named C S-1.
SEQ ID NO:9 ; Fibronectin fragment named C-274.
SEQ ID NO:10 ; Fibronectin fragment named H-271.
SEQ ID NO:11 ; Fibronectin fragment named H-296.
SEQ ID NO:12 ; Fibronectin fragment named CH-271.
SEQ ID NO:13 ; Fibronectin fragment named CH-296.
SEQ ID NO:14 ; Fibronectin fragment named C-CS1.
SEQ ID NO:15 ; Fibronectin fragment named CH-296Na.
SEQ ID NO:16 ; Fibronectin fragment named CHV-89.
SEQ ID NO:17 ; Fibronectin fragment named CHV-90.
SEQ ID NO:18 ; Fibronectin fragment named CHV-92.
SEQ ID NO:19 ; Fibronectin fragment named CHV-179.
SEQ ID NO:20 ; Fibronectin fragment named CHV-181.
SEQ ID NO:21 ; Fibronectin fragment named H-275-Cys.
SEQ ID NO:22 ; Fibronectin fragment named H296-H296.
SEQ ID NO:23 ; Primer H296-NcoF.
SEQ ID NO:24 ; Primer H296-HindR.
SEQ ID NO:25 ; Primer H296-NcoR.
SEQ ID NO:26 ; Primer NC2-5' UTR.