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Title:
METHOD FOR PRODUCTION OF POROUS CERAMIC MATERIAL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/111432
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a method for producing a porous ceramic material which can induce the formation of a tissue (e.g., a bone tissue) rapidly and has a practically useful strength. Specifically disclosed is a method for producing a porous ceramic material (11), which comprises the following steps (A) to (D): (A) dispersing a ceramic raw material in a medium to prepare a slurry (21); (B) filling the slurry (21) in a container (31) and inserting the container (31) into a cooling medium (41) at a temperature equal to or lower than the freezing point of the slurry (21) in a given direction to cause the freezing of the slurry (21) in one direction with starting from one end; (C) drying the frozen slurry (21) to form a shaped material; and (D) burning the dried shaped material.

Inventors:
KUWAYAMA TOMOYA (JP)
HOTTA YUJI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/053864
Publication Date:
September 18, 2008
Filing Date:
March 04, 2008
Export Citation:
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Assignee:
KURARAY CO (JP)
KUWAYAMA TOMOYA (JP)
HOTTA YUJI (JP)
International Classes:
C04B38/00; A61L27/00; C04B35/447
Foreign References:
JP2004275202A2004-10-07
JP2004307294A2004-11-04
JP3470759B22003-11-25
JP2003335574A2003-11-25
JP2004275202A2004-10-07
JP2005001943A2005-01-06
JP2004307294A2004-11-04
JP2007062282A2007-03-15
Other References:
THE YOGYO KYOKAI SHI, vol. 93, no. 7, 1985, pages 387
CARBON, vol. 43, 2005, pages 1563
CARBON, vol. 37, 1999, pages 2049
Attorney, Agent or Firm:
TAKASHIMA, Hajime (1-1 Fushimimachi 4-chome, Chuo-ku, Osaka-sh, Osaka 44, JP)
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Claims:
 工程(A):セラミックス原料を媒体に分散させてスラリーを調製する工程、
 工程(B):スラリーを容器に充填した後、該容器をスラリーの凝固点以下の冷媒に一定方向に挿入して、スラリーを一方の端部側から一方向に凍結させる工程、
 工程(C):凍結させたスラリーを乾燥させて成形体を得る工程、及び
 工程(D):乾燥させた成形体を焼成する工程、
を含む、多孔質セラミックス材料の製造方法。
 セラミックスがリン酸カルシウム系セラミックスである、請求項1に記載の多孔質セラミックス材料の製造方法。
 セラミックス原料が、水酸アパタイト及び/またはリン酸三カルシウムである、請求項2に記載の多孔質セラミックス材料の製造方法。
 工程(A)において、スラリーに縮合系高分子を加えた、請求項1~3のいずれか1項に記載の多孔質セラミックス材料の製造方法。
 工程(B)において、スラリー中の媒体の凍結による結晶の成長速度と容器の冷媒への浸漬速度が略等しくなるように当該容器の浸漬速度を制御する、請求項1~4のいずれか1項に記載の多孔質セラミックス材料の製造方法。
 スラリー中の媒体が水であり、工程(B)での、容器の冷媒への浸漬速度が1~200mm/hである、請求項1~5のいずれか1項記載の多孔質セラミックス材料の製造方法。
 スラリー中のセラミックス原料の含量がスラリーの総重量の10~60重量%である、請求項1~6のいずれか1項記載の多孔質セラミックス材料の製造方法。
 工程(A):セラミックス原料を媒体に分散させてスラリーを調製する工程、
 工程(B):スラリーを容器に充填した後、該容器をスラリーの凝固点以下の冷媒に一定方向に挿入して、スラリーを一方の端部側から一方向に凍結させる工程を含み、前記工程(B)において、スラリー中の媒体の凍結による結晶の成長速度と容器の冷媒への浸漬速度が略等しくなるように当該容器の浸漬速度を制御する、セラミックス原料含有スラリー凍結体の製造方法。
 セラミックスがリン酸カルシウム系セラミックスである、請求項8記載のスラリー凍結体の製造方法。
 スラリー中の媒体が水であり、工程(B)での、容器の冷媒への浸漬速度が1~200mm/hである、請求項8又は9記載のスラリー凍結体の製造方法。
 スラリー中のセラミックス原料の含量がスラリーの総重量の10~60重量%である、請求項8~10のいずれか1項記載のスラリー凍結体の製造方法。
 請求項1~7のいずれか1項に記載の方法により製造された、多孔質セラミックス材料。
Description:
多孔質セラミックス材料の製造 法

 本発明は、多孔質セラミックス材料の製 方法に関する。

 セラミックス材料のうちリン酸カルシウ 系セラミックス材料は、骨や歯の主成分で り、優れた生体親和性を有しており、且つ 全性にも優れていることから、人工骨、人 歯根などの医科用あるいは歯科用などの生 内に埋植するインプラント材料、再生医療 どに用いられる細胞培養用の足場、ドラッ デリバリーシステム(DDS)用の薬剤担持材料 どの生体材料として幅広く利用、研究され いる。

 なかでも、骨折や骨腫瘍などの疾患やそ 治療により骨に欠損部や孔ができた場合に 填して修復・治癒させる人工骨に適したセ ミックス材料について、近年、特に盛んに 究開発が行われている。すでに、セラミッ ス材料は広く臨床の場で用いられるが、現 のセラミックス材料は患部埋入後の新生骨 成が材料表層部に限定されることから、ま 強度が充分でなかったことから、傷病の治 までの期間が長くなるなどの欠点を有して る。

 したがって、生体組織が速やかに内部ま 入り込み、組織(新生骨)を迅速に形成し、 つ実用的な強度を有するセラミックスイン ラント材料や細胞培養用の足場などの開発 望まれている。

 このようなセラミックスインプラント材 としては、(1)多数の気孔が三次元的に密に 布し、隣接する気孔同士がそれらを区画す 骨格壁部において相互に連通した連球状開 孔を有するリン酸カルシウム系焼結体(特許 文献1参照)、(2)気孔を有するビーズ形状の多 質セラミックス材料をナイロンワイヤーな で連結して成形する方法(特許文献2参照)な が提案されている。

 また、直径が10~500μmで、一方向に配向し 貫通している気孔を有する焼結体が、イン ラント用材料として適したセラミックス材 であることが開示されている(特許文献3、4 照)。

 一方、水やtert-ブチルアルコールなどの昇 性物質を媒体としたゾルを冷媒中に降下、 漬することにより、媒体の結晶を一方向的 凍結させ、その結晶をテンプレートとした 結体を得、媒体を除去することにより、ハ カム状や、繊維状などの様々な構造体を得 方法が知られている(特許文献5、非特許文献 1~3参照)。

特許第3470759号公報

特開2003-335574号公報

特開2004-275202号公報

特開2005-1943号公報

特開2004-307294号公報 窯業協会誌 93巻(7)、1985年、387ページ Carbon 43巻、2005年、1563ページ Carbon 37巻、1999年、2049ページ

 しかし、特許文献1による方法では、連球 開気孔からなる連通部の孔径が小さく且つ配 向性を持たないため、実際の臨床では組織、 例えば、骨組織(新生骨)の誘導が材料表層部 しか認められない。また、特許文献2の方法 では、焼成の際に収縮が起こるため、所望の 大きさのインプラント材料を得るためには、 焼成後再度成形する必要があり、工程が煩雑 となるうえ、多数のビーズをナイロンワイヤ ーなどで連結するため、実用性が低い。

 また、特許文献3及び4記載の方法では、 発明者らが追試したところ、冷却面の近傍 近ではスラリーの過冷却現象による不均一 が形成され、一方、冷却面から離れるに従 、孔の形成は拡大し、上下間で孔の形状が 均一となる(本明細書の比較例3参照)。これ の理由から、十分な長さの配向連通孔を持 インプラント材料が得られないという問題 を有していることが判明し、結果的には、 許文献3及び4は、血液や骨髄液などの組織液 、体液が該材料内部まで速やかに浸透する材 料についての具体的・実用的な指針にはなり 得ないことが分かった。

 また、非特許文献1~3および特許文献5は、 シリカ、チタニアなどの縮合反応、また、レ チノールとホルムアルデヒドのアセタール化 反応によるゾル-ゲル転移を伴う多孔質体の 造方法であり、多孔質リン酸カルシウム系 料を人工骨として用いる場合、生体への安 性確保の観点から、生体への埋植を企図し 人工骨など用途においては、原料や添加物 変質や不均一化を伴う新たな化学反応を起 す恐れのある製造方法は決して望ましいも ではない。

 本発明は、上記のような事情に鑑みてな れたものであり、その目的とするところは 製造工程中に新たに化学反応を伴うような 料を用いることなく、組織、例えば、骨組 形成を速やかに誘導し、且つ実用的な強度 有する、一方向に配向して貫通している気 を有する多孔質セラミックス材料の効率的 製造方法を提供することにある。

 上記の課題を解決するために、本発明者ら 、以下の特徴をもつ本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)工程(A):セラミックス原料を媒体に分散さ てスラリーを調製する工程、
 工程(B):スラリーを容器に充填した後、該容 器をスラリーの凝固点以下の冷媒に一定方向 に挿入して、スラリーを一方の端部側から一 方向に凍結させる工程、
 工程(C):凍結させたスラリーを乾燥させて成 形体を得る工程、及び
 工程(D):乾燥させた成形体を焼成する工程、
を含む、多孔質セラミックス材料の製造方法 、
(2)セラミックスがリン酸カルシウム系セラミ ックスである、上記(1)記載の多孔質セラミッ クス材料の製造方法、
(3)セラミックス原料が、水酸アパタイト及び /またはリン酸三カルシウムである、上記(2) 載の多孔質セラミックス材料の製造方法、
(4)工程(A)において、スラリーに縮合系高分子 を加えた、上記(1)~(3)のいずれかに記載の多 質セラミックス材料の製造方法、
(5)工程(B)において、スラリー中の媒体の凍結 による結晶の成長速度と容器の冷媒への浸漬 速度が略等しくなるように当該容器の浸漬速 度を制御する、上記(1)~(4)のいずれかに記載 多孔質セラミックス材料の製造方法、
(6)スラリー中の媒体が水であり、工程(B)での 、容器の冷媒への浸漬速度が1~200mm/hである、 上記(1)~(5)のいずれかに記載の多孔質セラミ クス材料の製造方法、
(7)スラリー中のセラミックス原料の含量がス ラリーの総重量の10~60重量%である、上記(1)~(6 )のいずれかに記載の多孔質セラミックス材 の製造方法、
(8)工程(A):セラミックス原料を媒体に分散さ てスラリーを調製する工程、
 工程(B):スラリーを容器に充填した後、該容 器をスラリーの凝固点以下の冷媒に一定方向 に挿入して、スラリーを一方の端部側から一 方向に凍結させる工程を含み、前記工程(B)に おいて、スラリー中の媒体の凍結による結晶 の成長速度と容器の冷媒への浸漬速度が略等 しくなるように当該容器の浸漬速度を制御す る、セラミックス原料含有スラリー凍結体の 製造方法、
(9)セラミックスがリン酸カルシウム系セラミ ックスである、上記(8)記載のスラリー凍結体 の製造方法、
(10)スラリー中の媒体が水であり、工程(B)で 、容器の冷媒への浸漬速度が1~200mm/hである 上記(8)又は(9)記載のスラリー凍結体の製造 法、
(11)スラリー中のセラミックス原料の含量が ラリーの総重量の10~60重量%である、上記(8)~( 10)のいずれかに記載のスラリー凍結体の製造 方法、及び
(12)上記(1)~(7)のいずれかに記載の方法により 造された、多孔質セラミックス材料、に関 る。

 本発明によれば、材料内部までスムーズに 液や骨髄液などの組織液、体液が浸透でき 且つその方向の圧縮強度、及びそれに垂直 方向に対する曲げ強度が高く、特に人工骨 どに適した多孔質セラミックス材料、特に 多孔質リン酸カルシウム系セラミックス材 を簡便に、効率よく製造することができる
 また、それを乾燥、焼成するだけで、上記 多孔質セラミックス材料を得ることができ 、セラミックス原料含有スラリー凍結体を 簡単に、効率よく製造することができる。

本発明で作製した多孔質セラミックス 料の模式図である。 本発明における製造方法の一例を示す 凍結のために用い得る凍結装置の一例 模式図である。 凍結したスラリーの模式断面図(図4(A)) 乾燥後の成型体の模式断面図(図4(B))である 実施例1で作製した材料の断面のSEM観察 像である。 実施例1で作製した材料の断面のSEM観察 像である。 実施例1で作製した材料の断面のSEM観察 像である。 実施例2の材料の気孔径分布を示す図で ある。 比較例3で作製した材料の断面のSEM観察 像である。 比較例3で作製した材料の断面のSEM観 像である。 実施例で作製した材料の細胞侵入性を 評価した光学顕微鏡観察像である。

符号の説明

 11 多孔質セラミックス材料
 12 気孔
 21 スラリー
 31 容器
 41 冷媒
 51 セラミックス原料の粒子
 61 媒体の結晶
 62 気孔
 70 動力源
 71 凍結装置

 以下、本発明をその好適な実施形態に即し 説明する。
 まず、本発明により製造される多孔質セラ ックス材料について説明する。なお、以下 記載において、本発明により製造される多 質セラミックス材料を単に「本発明の多孔 セラミックス材料」、「本発明により得ら る材料」又は「本発明の材料」とも表記す 。

 本発明の多孔質セラミックス材料は、好 しくは多孔質リン酸カルシウム系セラミッ ス材料である。また、本発明の多孔質セラ ックス材料の気孔率は、好ましくは40~90%で り、より好ましくは50~90%であり、さらに好 しくは60~90%である。気孔率が40%以上であれ 、多くの血液や骨髄液などの組織液、体液 材料内に含浸するために、充分な組織、例 ば、骨組織の形成が見込まれる。一方、気 率90%以下であれば、多孔質セラミックス材 は高強度である。

 気孔率はJIS R 1634に準拠して測定される。 体的には、以下のとおりである。評価対象 多孔質セラミックス材料から直径6mm×高さ8m mの円柱状の試験片を切り出す。その試験片 重量及び体積を測定して、以下の式より、 孔率を算出する。
        嵩密度=(試験片の重さ)/(試験片の 体積)
        気孔率=(1-嵩密度/理論密度)×100

 図1は、本発明の多孔質セラミックス材料 の模式図である。本発明の材料では、図1に すように気孔12が一方向に配向している。気 孔12はセラミックス材料11の内部においてセ ミックス物質が存在せずに空間になってい 領域である。気孔が一方向に配向するとは 一軸方向に伸びた気孔が存在してそのよう 気孔の長軸方向が実質的に一方向に揃って ることをいう。より具体的には、セラミッ ス材料中にある一軸方向に伸びた気孔のう の例えば半数以上、好ましくは80%以上の気 の長軸方向が例えば角度30°以内の範囲で揃 ている。ここでいう「角度」とは、任意平 への空孔の長軸の正写影の交差角度のこと ある。

 各々の気孔の配向方向に垂直な断面積は、 ましくは0.05×10 -3 ~100×10 -3 mm 2 であり、より好ましくは0.05×10 -3 ~50×10 -3 mm 2 である。上記範囲内であれば、血液や骨髄液 などの組織液、体液が通過するのに十分な大 きさであり、かつ、毛細管現象により血液や 骨髄液などの組織液、体液が通過し易くなる 。ただし、本発明の課題解決のために、材料 内の全ての気孔が上記断面積をもつことは要 さない。また、血液や骨髄液などの組織液、 体液中に含まれる細胞などが多孔質セラミッ クス材料に侵入するためには、配向方向に垂 直な断面における気孔の短径が少なくとも10 m、好ましくは20μm、より好ましくは30μm以上 あることが好ましい。一方、配向方向に垂直 な断面における気孔の長径は、少なくとも短 径と同じ長さ~500μmの範囲が好ましく、強度 保の観点から30μm~300μmの範囲がより好まし 。

 気孔の長軸方向の長さは、好ましくは5mm 上であり、より好ましくは10mm以上であり、 さらに好ましくは20mm以上、とりわけ好まし は30mm以上である。該長さの上限は特に制限 れない。十分な長さの気孔を有していれば 切断などの加工により、インプラント用材 などを取得し易くなる。ただし、本発明の 題解決のために、材料内の全ての気孔が上 長さをもつことは要さない。

 好適態様では、配向方向に垂直な気孔の断 積が少なくとも配向方向の5mmの長さにわた て0.05×10 -3 ~100×10 -3 mm 2 であり、より好ましくは0.05×10 -3 ~50×10 -3 mm 2 である。この場合、実用上、十分な長さにわ たって良好な血液や骨髄液などの組織液、体 液の浸透が達せられる。本発明の材料中にあ る気孔が全て上記の断面積を有する必要はな い。

 また、本発明の材料は、血液や骨髄液な の組織液、体液の生体組織の速やかな浸入 強度とのバランスの観点から、気孔径が30μ m以上の気孔容積率が30~99%の範囲にあるのが ましく、70~95%の範囲にあるのがより好まし 。なお、ここでいう「気孔径」とは短径の とである。

 気孔の断面積を求めるには、後述する実 例のように、測定対象の多孔質リン酸カル ウム系材料を樹脂中に包埋し、これを配向 方向に対して垂直に薄切し、これを電子顕 鏡などで観察し、着目する気孔に由来する 口面積を順々に測定することで求めること できる。このとき、測定対象の材料を1mm毎 切り出してそれぞれの断面において開口面 を測定することにより、気孔の配向の長さ 向にわたる該気孔の断面積の推移を本発明 目的に適った精度で評価することができる また、気孔の短径及び長径は、例えば、上 した電子顕微鏡観察像を採寸することによ 測定できる。なお、気孔容積率は後述する 施例に記載する方法により測定することが きる。

 上述のように、気孔の配向軸方向の1mm毎 材料を切り出して得られた薄片において気 の開口面積を測定したとき、気孔の開口面 の変化量が最も小さい5mmの長さ(つまり連続 する5個の薄片)における開口面積の最小値に する最大値の比率は好ましくは10倍以内で り、より好ましくは5倍以内である。このよ に、気孔に由来する開口面積、つまり気孔 断面積が配向方向にわたって変動が少ない が、毛細管現象による血液や骨髄液等の当 材料内部への浸透がスムーズとなり、イン ラント材料として好ましい。さらには、上 の範囲内であれば、気孔を形成するセラミ クス層(隣接する空孔の間の壁)がほぼ平行 配列するため、優れた強度の多孔質焼結体 提供される。

 また、本発明の材料は、気孔の配向軸方向 対して垂直方向の第1の切断面、および、第 1の切断面と平行であり第1の切断面から空孔 配向方向に30mm離れた第2の切断面に着目し ときに、第1の切断面および第2の切断面の両 方において、気孔の開口面積の平均値が0.05× 10 -3 ~100×10 -3 mm 2 であるのが好ましく、さらに第1の切断面と 2の切断面の離間距離が35mmである場合に、第 1の切断面および第2の切断面のそれぞれにお る気孔の開口面積の平均値が上記の範囲内 あるのがより好ましい。また、一層好まし 態様では、上述の第1の切断面および第2の 断面の両方において、空孔の開口面積の平 値が1×10 -3 ~100×10 -3 mm 2 である。

 このような十分な長さを有し、配向軸方 での開口面積の変動が少ない、配向連通孔 形成されることで、生体組織が速やかに内 まで入り込み、組織(新生骨)を迅速に形成 得る、インプラント材料を実現できる。

 次に本発明の多孔質セラミックス材料の組 及び製造方法について説明する。
 本発明の多孔質セラミックス材料の製造方 は、セラミックス原料を媒体中に分散させ スラリーを調製するスラリー調製工程(工程 A)、得られたスラリーを容器に充填した後、 容器をスラリーの凝固点以下の冷媒に一定 向(図2(c)又は図3の矢印方向)に挿入して、ス ラリーを一方の端部側から一方向に凍結させ る工程(工程B)、凍結させたスラリーを乾燥さ せて成形体を得る工程(工程C)、乾燥させた成 形体を焼成する工程(工程D)を有する。

 B工程では、スラリーが一方の端部側から 一方向に凍結することで霜柱状の媒体の結晶 が成長し、工程Cにおいて、凍結したスラリ を乾燥させることで、媒体の結晶が昇華し 、マクロ孔を有する成形体が得られる。工 Dでは、この成形体を焼成することにより、 クロ孔を有し、かつセラミックス粒子が緻 に焼結したセラミックス材料が得られる。

 以下、各工程に従って、本発明の製造方法 より詳しく説明する。
 図2(A)はスラリーの調製を模式的に表す。工 程Aに用いるスラリー21は、セラミックス原料 を媒体に分散させて調製することができる。 ここで、「セラミックス原料」とはセラミッ クス材料を製造するための粒子のことであり 、好ましくはリン酸カルシウム系セラミック ス材料を製造するための粒子のことである。 また、スラリー21には好ましくは後述する添 剤が溶解又は分散している。

 リン酸カルシウム系セラミックス原料とし は、例えば、水酸アパタイト、フッ素アパ イト、塩素アパタイト、リン酸三カルシウ 、メタリン酸カルシウム、リン酸四カルシ ム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カ シウム2水和物などが例示され、また、これ らの任意の混合物であっても良い。本発明の 材料では、リン酸カルシウム系セラミックス 原料におけるCa成分の一部が、Sr、Ba、Mg、Fe Al、Y、La、Na、K、Ag、Pd、Zn、Pb、Cd、H、及び この他の希土類から選ばれる一種以上で置 されてもよい。また、(PO 4 )成分の一部が、VO 4 、BO 3 、SO 4 、CO 3 、SiO 4 などから選ばれる一種以上で置換されてもよ い。さらに、(OH)成分の一部が、F、Cl、O、CO 3 、I、Brから選ばれる一種以上で置換されても よい。

 骨形成の点から、リン酸カルシウム系セ ミックス原料は、水酸アパタイト、フッ素 パタイト、塩素アパタイト、または、リン 三カルシウムであることが好ましく、水酸 パタイト、及びリン酸三カルシウムである とがより好ましい。リン酸カルシウム系セ ミックス原料は、天然鉱物由来であっても く、あるいは各種湿式法、乾式法などで化 的に合成されたものであってもよい。

 スラリー中のセラミックス原料の含量と ては、スラリーの総重量に対し、10~60wt%の 囲が好ましく、10~40wt%の範囲がより好ましく 、20~25wt%の範囲がなお好ましい。

 セラミックス原料を分散させるのに用い 媒体としては、後述する凍結乾燥により除 可能な昇華性を有するものが好ましい。例 ば、水、tert-ブチルアルコール、ベンゼン どが挙げられ、好ましくは水である。また 水は精製度の高いものが好ましく、蒸留水 イオン交換水、精製水、滅菌精製水、注射 水などが好適である。

 セラミックス原料は、公知の粉砕造粒手 で粉砕され適宜な粒度分布を持つよう造粒 れる。造粒された粉末の平均粒径は、0.1~40 mの範囲が好ましく、0.5~30μmの範囲がより好 しい。平均粒径が0.1μm以上であれば取り扱 が容易であり、作業性が向上する。一方、 均粒径が40μm以下であれば、スラリー21中に セラミックス原料がよく分散して、安定なス ラリーが得られ易い。

 スラリー21には、スラリーの粘度を増加 せてスラリーの分散性を向上させ、焼成前 セラミックス多孔質成形体の形状を保持し さらに焼結時の結晶粒子成長を制御する目 で、スラリーに添加剤を溶解または分散さ ることが好ましい。添加剤は、前記目的を 成しうる化合物や組成物であれば、特に限 されないが、焼結時に燃焼し、焼失する有 物である縮合系高分子が好ましい。この場 、焼成後に得られるセラミックス材料には 加物に由来する成分が実質的に残存しない とから、生物に対して安全性に優れる。こ ような添加剤としては、例えば、ゼラチン コラーゲン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸 ポリヒドロキシブチラートなどが挙げられ 。また、これらの添加剤は1種又は2種以上を 併用してもよい。なお、本発明の目的を阻害 しない範囲内で、必要に応じてスラリー21に 上記した成分以外の成分を添加してもよい

 スラリーに添加剤を添加する場合、添加 る添加剤の量は、スラリーの総重量に対し 0.1~20wt%が好ましく、3~10wt%がより好ましく、 4~8wt%の範囲がより好ましい。

 スラリー21の調製は公知の方法によるこ ができる。典型的には、媒体に攪拌しなが セラミックス原料と必要に応じて添加剤を えることによってスラリー21が調製される。 スラリー21の脱泡処理を行うことが好ましい この場合、気泡がスラリー中に残らずに、 果として焼結体中に気泡に起因した不所望 孔(欠陥)が形成することが回避できる。脱 処理の方法としては、既知の方法を用いれ よく、例えば、真空中で攪拌しながら脱泡 る方法、遊星混練などによる脱泡する方法 どが挙げられる。

 図2(B)及び図2(C)は、容器中のスラリーを 結する工程(工程B)を模式的に表す。工程Bに いては、工程Aで得られたスラリー21を容器3 1に充填し、該容器31をスラリー21の凝固点以 に冷却した冷媒41に挿入(浸漬)していくこと により、容器内のスラリー21を一方の端部側( すなわち、容器31の挿入方向先端側の端部)か ら一方向に凍結させてスラリーの成形体を得 る。このような凍結の結果、該成形体中に霜 柱状の凝固した媒体の結晶が成長し、一方向 へ配向する。

 図3は、凍結のために用い得る凍結装置の一 例の模式図である。
 当該凍結装置71では、スラリー21を収容した 円筒状容器31が例えば定速モーター等の適当 動力源70に繋がれており、容器31がスラリー の凝固点以下に冷却された冷媒41の上から、 記動力源70を用いて冷媒41に向けて降下し、 冷媒41へ挿入(浸漬)していく。

 容器31を冷媒41に挿入していく速度、すな わち、容器31の冷媒41への浸漬速度は、高い 度と適度な孔径の連通孔を有する多孔質セ ミックス材料が得られるという観点から、 ラリー21中の媒体の凍結による結晶の成長速 度と当該浸漬速度が略等しくなるように制御 することが好ましい。なお、ここでいう「結 晶の成長速度」は、例えば、容器31の側壁に 盛りを付しておき、容器内のスラリー21中 媒体の凍結面の移動速度を算出することで めることができる。

 なお、容器31の複数の高さにおいて、そ 中心部(軸線部)と側壁近傍部に温度センサー を設置し、容器の同一高さにおいて、容器内 の中心部(軸線部)と側壁近傍部でのスラリー 温度がほぼ同じであることも併せて確認し 。すなわち、容器内でスラリーの凍結がほ 均一に面状に進行し、媒体の結晶も面状に 長していることを確認した。

 通常、スラリー21中の媒体に水を用いる 合、容器31の浸漬速度は1~200mm/hの範囲が好ま しく、5~100mm/hの範囲がより好ましく、10~50mm/h の範囲が最も好ましい。容器31の浸漬速度と ラリー21中の媒体の凍結による結晶の成長 度とが著しく異なる場合、例えば、結晶の 長速度よりも浸漬速度が著しく大きい場合 スラリー21は側面、上面などから、不規則に 凍結が進み、媒体の一方向的な凍結体が得ら れない。一方、結晶の成長速度より浸漬速度 が著しく小さい場合、容器31の上部(すなわち 、容器31の挿入方向先端側の端部とは反対側 端部)ほど媒体の結晶の融合が生じ、孔径が 増大した不均一な凍結体となることから、好 ましくない。本発明でいう「容器の浸漬速度 とスラリー中の媒体の凍結による結晶の成長 速度とが略等しい」とは、一方の速度が他方 の速度の概ね50~150%の範囲内にあることであ 、好ましくは80~120%の範囲にあることである

 当該凍結装置71では、容器31が冷媒41に没 ている部分から上方向(すなわち、容器31の 媒41への挿入方向先端側の端部から容器31の 他方側の端部へ向かう方向)へと一方向にス リーが凍結される。冷媒の温度は、スラリ の凝固点よりも低い必要があるが、冷媒41の 温度は、スラリーに用いる媒体の融点から100 ℃低い範囲の温度(すなわち、融点~(融点-100 )の範囲)が好ましく、より好ましくは媒体の 融点から-15~-50℃の範囲(すなわち、(融点-15℃ )~(融点-50℃)の範囲)である。例えば、媒体に を用いる場合、0℃~-100℃の範囲が好ましく より好ましくは-15℃~-50℃の範囲である。ま た、結晶の成長速度は、冷媒の温度に依存し 、冷媒41が低温ほど、結晶の成長速度が大き なり、浸漬する速度を大きくすることがで 、同等形状の媒体の結晶を形成させる場合 生産性を向上できる。なお、スラリーの凝 点は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて容易 測定することができる。

 このように、スラリーを一方向に凍結さ ていくことで(特にスラリー中の媒体の凍結 による結晶の成長速度と容器の浸漬速度が等 しくなるように容器の浸漬速度を制御するこ とで)、スラリーに含まれる媒体が長く一方 に配向した柱状の凝固した媒体成分(霜柱状 凝固した媒体成分)となり、結果として一方 向に長く伸び、長手方向にわたる断面積の変 化が少ない気孔をもつセラミックス焼結体を 得ることができる。

 冷媒41は、スラリーを凝固点以下に冷却 ることができる媒体であれば、特に限定さ るものではなく液体ヘリウム、液体窒素、 体酸素、メタノール、エタノールなどのア コール類、アセトンなどのケトン類、ヘキ ンなどの炭化水素類、イオン性液体などを いることができる。但し、熱交換による冷 の気化、温度上昇などが生じる場合は、適 、冷媒の追加や冷却を行い、冷媒の液面位 、及び温度の制御を行うことが好ましく、 れらの変動を最小限とするためには、浸漬 るスラリーに対し、充分な量の冷媒を用い ことが好ましい。

 冷媒により冷却された冷媒上の雰囲気に り、容器31の冷媒に浸漬していない側壁方 からスラリーが凍結しないように、容器31の 側壁はスラリーが分散している媒体よりも比 熱の大きな素材が好ましく、例えば、ポリエ チレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、 シリコーン樹脂、フッ素樹脂、スチレン樹脂 のような熱絶縁性材料で形成されていること が望ましい。また、容器の側壁の厚さは0.5mm 上であることが好ましい。この場合、収容 れたスラリーが側壁に接する部分から凍結 にくくなり、企図した通り、一方向に配列 た霜柱状の凝固した媒体成分の構造がより いやすくなる。なお、容器31の底部と側壁 材質は同一であっても良く、別の材質であ ても良い。別の材質である場合、容器31の底 部はスラリーが分散している媒体よりも比熱 が小さく熱伝導性の高い金属(例えば、鉄、 、真鍮、ステンレス等)などの素材が好まし 。

 なお、容器の形状は特に限定されるもの はないが、より均一に熱伝導が行える観点 ら、図2、3に示されるような円筒状の容器 好ましく使用される。また、前記で説明し ように、本発明では、容器内でスラリーの 結がほぼ均一に面状に進行し、媒体の結晶 面状に成長させることが重要であるが、容 の径(内径)が大きすぎると、容器内の中心部 (軸線部)と側壁近傍部でのスラリーの冷却度 いが相違して、凍結がほぼ均一に面状に進 しにくくなるおそれがあるので、容器の内 は、円筒状容器である場合、直径が200mm以 であるのが好ましい。また、容器の内径の 限は特に限定はされないが、実質的に気孔 が数十~数百μmの孔を有する成形体を得ると う点から、1mm以上が好ましい。

 上記の凍結装置71(図3)は、スラリー21を充 填した容器31を移動させて、冷媒41へ容器31を 挿入(浸漬)させているが、本発明においては スラリーを充填した容器を固定し、冷媒(冷 媒収容容器)を移動させることで、スラリー 充填した容器を冷媒へ挿入(浸漬)する構成に しても、また、スラリーを充填した容器と冷 媒(冷媒収容容器)の双方を移動させて、スラ ーを充填した容器を冷媒へ挿入(浸漬)する 成にしてもよい。

 工程Cでは凍結したスラリーを乾燥させて 成形体を得る。典型的には、スラリーの入っ た容器をそのまま減圧下にて凍結乾燥を行う 。この操作により霜柱状の凝固した媒体成分 を昇華させ、凝固した媒体成分が存在してい た部分が昇華痕として気孔になる。結果とし て、成形体中に一方向に配向した気孔が形成 される。図4は凍結したスラリー(図4(A))と乾 後の成型体(図4(B))の模式断面図である。凍 したスラリーは、セラミックス原料の粒子51 と、実質的に一方向に配列した凝固した媒体 成分61とが存在している。乾燥後は、凝固し 媒体成分61が存在していた領域に気孔62が形 成される。

 工程Dでは、得られた成形体を焼成する( 2(D))。典型的には、工程Cで得られた成形体 容器31から抜き取り、必要に応じて適当な成 形を行い、それぞれのセラミックスに適した 温度、及び焼結時間で焼成する。焼結(焼成) 際しては、得られる焼結体の機械的強度が 生体内への埋入に適した強度となるように すなわち、手術現場で、加工が可能であり かつ、生体埋入後に破損などが生じない程 となるように、焼結条件を決めることが望 しい。こういった焼結条件は、セラミック の種類、多孔質体の気孔率、平均気孔径、 び気孔の配向性などを考慮して適宜決定す ことができる。また、焼成の際に用いられ エネルギー源としては、特に限定されない 、熱、及びマイクロ波などが一般的に用い れる。なお、焼成温度はセラミック原料の 類によっても異なるが、一般的には、1000~18 00℃が好ましく、1200~1600℃がより好ましい。 成温度が1000℃未満では、焼結による緻密化 が十分進行せずに、強度が低くなる傾向とな り、1800℃を超えると、融解や相転移により の結晶状態へ変化する傾向となる。また、 成時間は通常1~4時間程度が一般的である。

 これらにより霜柱状の凝固した媒体成分 昇華痕を気孔とする多孔質セラミックス焼 体が作製される。この気孔は前述の昇華痕 準じ、焼結体を好ましくは一方向に貫通し 連続孔となる。

 本発明の多孔質セラミックス焼結体(好ま しくは多孔質リン酸カルシウム系セラミック ス焼結体)を人工骨のような多孔質セラミッ ス材料として用いる場合には、所望の形状 成形し、滅菌するのが好ましい。

 ブロック体の形状に成形する方法として 、特に制限されること無く、既知の方法を いればよい。具体的には、機械加工による 形法、乾式成形法、及び湿式成形法などが げられる。一般にセラミックス材料は硬く 脆い素材であるため、セラミックス層の厚 が不均一である従前の多孔質セラミックス 料は、機械加工性が極めて低かった。本発 のセラミックス材料は、上記のように、気 が一方向に配向しており、且つその気孔径 ほぼ均一なため、貫通気孔と貫通気孔との のセラミックス層の厚さもほぼ均一である したがって、従前の多孔質セラミックス材 に比べ、優れた機械加工性を示す。

 また、顆粒状に成形する方法についても 特に制限されること無く、既知の方法を用 ればよい。具体的には、モルダグラインダ 、ボールミル、ジョークラッシャー、ハン ークラッシャーなどの機械的粉砕、乳鉢な での粉砕などが挙げられる。また、粉砕さ た多孔質セラミックス材料をふるいなどで 粒径を揃えてもよい。

 該材料を滅菌する方法についても、特に 限されること無く、既知の方法を用いれば い。具体的には、高圧蒸気滅菌法(オートク レーブ)、γ線滅菌、EOG滅菌、及び電子線滅菌 などが挙げられる。その中でも、高圧蒸気滅 菌法は最も一般的な滅菌法として、汎用され ている。

 このようにして得られた多孔質セラミッ ス材料(好ましくは多孔質リン酸カルシウム 系セラミックス材料)は、人工骨、人工歯根 どの医科用あるいは歯科用などの生体内に 植するインプラント材料、再生医療などに いられる細胞培養用の足場、ドラッグデリ リーシステム(DDS)用の薬剤担持材料などとし て有用である。

 さらには、より高いレベルでの組織、例 ば、骨組織の誘導を目的として、形質転換 長因子(TGF-β1)、骨誘導因子(BMP-2)、及び骨形 成因子(OP-1)などの組織、例えば、骨組織に対 して成長を促す作用のある物質を、本発明の 多孔質セラミックス材料に含浸、吸着、固定 化してもよい。

 以下、実施例を示して本発明をより具体 に説明するが、本発明は以下に記載の実施 によって限定されるものではない。

〔スラリー中の媒体の凍結による結晶の成長 速度の測定方法〕
 スラリーを充填した容器についた目盛りか 、スラリー中の媒体の凍結面の移動速度を 出することで、スラリー中の媒体の凍結に る結晶の成長速度を求めた。また、その際 同時に、スラリーを充填した容器の複数の さにおいて、容器の中心部(軸線部)及び側 近傍に温度センサーを設置し、それぞれの 度がほぼ同一であることを確認した。

〔気孔率の測定方法〕
 気孔率はJIS R 1634に準拠して測定した。具 的には、以下のとおりである。評価対象の 孔質セラミックス材料から直径6mm×高さ8mm 円柱状の試験片を切り出す。その試験片の 量、及び体積を測定して、以下の式より、 孔率を算出した。
        嵩密度=(試験片の重さ)/(試験片の 体積)
        気孔率=(1-嵩密度/理論密度)×100

〔開口面積の測定方法〕
 測定対象の多孔質リン酸カルシウム系セラ ックス材料を樹脂中に包埋し、これを配向 方向に対して垂直に薄切し、これを走査型 子顕微鏡(SEM)で70倍拡大像を観察し、気孔に 由来する開口面積を順々に測定した。平均値 は、0.7mm四方の範囲に存在する空孔の開口面 の平均値を求めた。

〔圧縮強度の測定方法〕
  JIS R 1608 に準拠した。ただし、試験片は 直径6mm×高さ8mmの円柱状試験片を使用した。

〔気孔の長さの測定方法〕
 気孔の長さを求めるには、測定対象のセラ ックス材料を樹脂中に包埋し、これを配向 方向に平行に薄切し、これを走査型電子顕 鏡で20倍拡大像を観察し、気孔の長さを順 に測定した。

〔気孔容積率の測定方法〕
 孔径分布は水銀圧入法(測定範囲:4×10 -3 ~4×10 2 μm)により測定した。ただし、試験片は直径6m m×高さ8mmの円柱状試験片を使用した。気孔容 積率は、水銀圧入法により得られた孔径分布 から算出し、測定範囲における全気孔体積の うち、30μm以上の気孔体積の割合を示す。な 、水銀とヒドロキシアパタイトとの接触角 130°、表面張力を485mN/mとした。

〔実施例1~5〕
 蒸留水中にリン酸カルシウム系原料、及び 加剤を表1の組成で分散・溶解させたスラリ ー21を、内径約16mmの容量15mlのグライナー社( イツ)製遠心チューブ(ポリプロピレン樹脂 )の容器31に10g充填し、4℃に保持された冷蔵 にて3時間冷却した。その容器31を、-20℃に 却したエチルアルコール浴に表1に記載の速 度で浸漬し、霜柱状の氷をスラリー中に形成 させた。このようにして得られた凍結体を真 空中で昇華乾燥させた後、その乾燥体を1200 にて1時間焼結することで、配向した気孔を つセラミックス材料を得た。また、実施例2 で作製したセラミックス材料を水銀圧入法に より、該材料の気孔径分布を測定した。なお 、試験方法はJIS R 1655:2003に準拠した。図8は 、本試験において得られた実験結果を示した ものである。図8から、本発明のセラミック 材料は、孔径50μm付近に単一ピークを有する 気孔径分布を有し、孔径0.1μm以下にはピーク は認められず、セラミックス粒子が緻密に焼 結していることが確認できる。

〔実施例6〕
 エチルアルコール浴の温度を-40℃にした以 は実施例1の方法に従い、表1に記載の各条 で実施した。

〔実施例7~10〕
 内径約25mmの容量50mlのグライナー社(ドイツ) 製遠心チューブ(ポリプロピレン樹脂製)の容 31を用い、容器31にスラリーを36g充填した以 外は実施例1の方法に従い、表1に記載の各条 で実施した。

〔実施例11~16〕
 乾燥体を1100℃にて焼結すること以外は、実 施例1の方法に従い、表1に記載の各条件で実 した。

〔比較例1および2〕
 蒸留水中にリン酸カルシウム系原料、及び 加剤を表1の組成で分散・溶解させたスラリ ー21を、内径16mmの容量15mlのグライナー社(ド ツ)製遠心チューブ(ポリプロピレン樹脂製) 容器31に10g充填し、4℃に保持された冷蔵庫 て3時間冷却した。その容器31を、-80℃のフ ーザー中にて急速に冷却、凍結した。この うにして得られた凍結体を真空中で昇華乾 させた後、その乾燥体を1200℃にて1時間焼 することで、セラミックス材料を得た。

〔比較例3〕
 蒸留水中にハイドロキシアパタイトおよび 加剤であるゼラチンを表1の組成で分散・溶 解させたスラリー21を、直径16mm、高さ20mmの 化ビニル樹脂製のパイプ状容器に4g充填した 。その容器31を液体窒素により冷却した真鍮 円盤状冷却板に配置し、下面からのみ冷却 凍結させることにより、霜柱状の氷をスラ ー中に生成させた。このようにして得られ 凍結体を真空中で昇華乾燥させた後、その 燥体を1200℃にて1時間焼結することで、配 した気孔を持つ高強度のセラミックス材料 得た。

 各実施例及び比較例のセラミックス材料 製造条件及び評価結果を表1~3に示す。表2に おいて、第1の切断面(下側)と第2の切断面(上 )はいずれも気孔の配向方向に垂直であり、 両切断面間の距離は35mmである。

 表1中、HApは水酸アパタイトを、β-TCPはβ のリン酸三カルシウムを意味する。

 上記の実施例1~16の結果より、本発明の製造 方法によって得られた多孔質リン酸カルシウ ム系材料は、人工骨等に用いるのに適した物 性を有することが分かった。なお、同一のス ラリー組成を有し、同一の大きさの容器で冷 却した実施例1~4において、スラリー中の媒体 の凍結による結晶の成長速度を観測したとこ ろ、20mm/hであった。また、エチルアルコール 浴の温度を-40℃にした実施例6では、スラリ 中の媒体の凍結による結晶の成長速度を観 したところ、25mm/hであった。
 実施例1~4および6の中では、特に、スラリー 中の媒体の凍結による結晶の成長速度と浸漬 速度が等しくなるように浸漬速度を制御した 実施例1と6で高い強度と適度な孔径の連通孔 有する材料が得られていることが分かった

 図5は実施例1により調製した材料にエポキ 樹脂を含浸させた試験片の断面のSEM観察像 ある。
 図5(A)及び(B)は、気孔の配向方向に垂直な同 一の断面の観察像(倍率が異なる)であり、図5 (C)は図5(A)及び(B)と平行であって35mm離れた断 の観察像である。なお、図5(A)と図5(C)は倍 :50倍、図5(B)は倍率:25倍である。

 図6、7は実施例1で作製した材料の断面のSEM 察像(倍率:25倍)であり、気孔の配向方向と 行な断面の複数の観察像を連結したもので る。
 図6は上部から8mmにわたり切断した試験片、 図7は、下部から8mmにわたり切断した試験片 観察像であり、それぞれの図において、35mm 上の長さにわたる気孔の存在が見受けられ 。

 図9は比較例3で作製した材料の断面のSEM観 像(倍率:50倍)である。
 図9(A)は、気孔の配向方向に垂直な同一の断 面の観察像であり、図9(B)は図9(A)と平行であ て10mm離れた断面の観察像である。図9(A)と 9(B)を比較すると上部である図9(A)は、下部で ある図9(B)よりも気孔が大きく、上下間で孔 が異なることがわかる。また、図10は比較例 3で作製した材料の断面のSEM観察像(倍率:40倍) であり、気孔の配向方向と平行な断面の複数 の観察像を連結したものである。図10からも 冷却面から離れる上部(図面の上部)ほど気 が拡大していることが分かり、また、冷却 の近傍(図面の下部)では、過冷却現象による と考えられる不均一相が形成されている。

〔細胞侵入性の評価〕
 本材の細胞培養足場としての性能を、以下 方法により細胞の侵入性を見ることにより 価した。
 実施例2により作成し、φ6mm、高さ10mmの円柱 状に成形した試験片を、事前に培地に浸漬し 、多孔体に培地を染み込ませた。試験片の上 部(φ6mm)にヒト骨肉腫由来細胞(MG63)の懸濁液(5 ×10 5 cells)を50μL播種し、37℃で培養した。3日後、 験片を取り出し、2%グルタルアルデヒド溶 により細胞を固定し、気孔の配向方向に平 に、細胞を播種した面が半円状となるよう 分割した。得られた多孔体をギムザ液によ 染色し光学顕微鏡により観察した。

 図11は細胞の進入性評価結果である。ギ ザ液により染色された部分には、細胞の侵 が認められ、細胞を播種した上面から試験 の中心下部にまで細胞が侵入している。な 、細胞は図中の最濃色部分(点状に分散)であ る。

産業上の利用の可能性

 本発明によれば、スラリーに含まれる媒体 長く一方向に配向した柱状の凝固した媒体 分となり、結果として一方向に長く伸び、 手方向にわたる断面積の変化が少ない気孔 もつ多孔質セラミックス焼結体を得ること できる。該多孔質セラミックス焼結体は、 科用あるいは歯科用などの生体内に埋植す インプラント材料、再生医療などに用いら る細胞培養用の足場、ドラッグデリバリー ステム(DDS)用の薬剤担持材料等に利用でき 。
 本出願は日本で出願された特願2007-062282を 礎としており、それらの内容は本明細書に て包含される。