FUJI JUNICHI (JP)
JPH09508109A | 1997-08-19 | |||
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JP2000355572A | 2000-12-26 | |||
JPH10505074A | 1998-05-19 | |||
JPH09157201A | 1997-06-17 | |||
JP2000510118A | 2000-08-08 | |||
US5254701A | 1993-10-19 | |||
JPH09508109A | 1997-08-19 | |||
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YAMAMOTO, YASUNORI: "STEREOSELECTIVE ISOMERIZATION OF UNSYMMETRICAL DIALLYL ETHERS TO ALLYL (E)-VINYL ETHERS BY A CATIONIC IRIDIUM CATALYST", SYNTHETIC COMMUNICATIONS, vol. 30, no. 13, 2000, pages 2383 - 2391, XP008144270
GILBERTSON, SCOTT R.: "Rhodium-Catalyzed Asymmetric [4+2] Cycloisomerization Reactions", J. ORG. CHEM., vol. 63, no. 26, 1998, pages 10077 - 10080, XP008144271
"Shin-Jikken Kagaku Kouza", vol. 15, CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN, pages: 685
Tamotsu Otani (JP)
下記一般式(I)又は(II) で示されるアリルエーテル系化合物を、水素の存在下並びに単座トリス(o-置換アリール)ホスファイトおよびロジウム化合物の存在下に異性化することを特徴とする、ビニルエーテル系化合物の製造方法。 |
前記単座トリス(o-置換アリール)ホスファイトの反応液中におけるモル濃度を、原料中の過酸化物の反応液中におけるモル濃度および反応液中におけるロジウム原子のモル濃度の合計に対して0.9~15倍とし、且つ水素圧を0.1~0.9MPa(絶対圧)とした後、反応温度60~180℃にて一酸化炭素の不存在下に実施する、請求項1に記載のビニルエーテル系化合物の製造方法。 |
反応液中におけるロジウム原子のモル濃度が0.01~2ミリモル/リットルである、請求項1または2に記載のビニルエーテル系化合物の製造方法。 |
さらに、沸点が100℃以上の第三級アミンの存在下に行う、請求項1または2に記載のビニルエーテル系化合物の製造方法。 |
単座トリス(o-置換アリール)ホスファイトが、トリス(2-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル)ホスファイトおよびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトの中から選ばれる少なくとも一種である、請求項1または2に記載のビニルエーテル系化合物の製造方法。 |
原料のアリルエーテル系化合物が、不純物としてフラン0.1~7質量%、水0.5~23質量%およびクロトンアルデヒド0.01~5質量%を含む2,5-ジヒドロフランである、請求項1または2に記載のビニルエーテル系化合物の製造方法。 |
本発明は、ビニルエーテル系化合物の製 方法に関し、さらに詳しくは、水素の存在 、単座トリス(o-置換アリール)ホスファイト およびロジウム化合物を用いて2,3-ジヒドロ ランなどのビニルエーテル系化合物を工業 に有利に製造する方法に関する。
アリルエーテル系化合物の異性化による ニルエーテル系化合物の製造方法としては ポリオキシアルキレン鎖含有化合物の存在 にアルカリ金属および/またはアルカリ土類 金属の水酸化物を触媒として用いる方法(特 文献1参照)、パラジウム触媒または白金担持 触媒を用いた、2,5-ジヒドロフランの異性化 よる2,3-ジヒドロフランの連続的製造方法(特 許文献2参照)、第三級ホスフィンと均一系貴 属触媒であるルテニウム触媒またはロジウ 触媒の存在下に2,5-ジヒドロフランを20~100℃ で加熱する方法(特許文献3参照)、ルテニウム 触媒またはロジウム触媒並びにトリフェニル ホスフィンの存在下、アルゴンまたは一酸化 炭素/水素の混合ガス雰囲気下に、アリルエ テル系化合物をエノールエーテル化合物に 性化する方法(特許文献4参照)が知られてい 。
特許文献1に記載の方法では、水を用いてア
ルカリを除去する必要があり、目的物の水側
への損失が懸念される。またこの洗浄水は酸
で中和して廃棄する必要があり、作業が煩雑
なばかりではなく、環境への負荷も懸念され
る。
特許文献2記載の方法は、パラジウムまたは
白金担持触媒を用いるため、触媒との分離は
容易であり、さらに反応器1回通過あたりの
化率を40~60%とすることで2,3-ジヒドロフラン
不均化を抑制し、収率97%以上の高収率を達
している。しかし、原料と生成物の沸点差
小さいため効率的な分離が難しく、20段以
の蒸留塔が必要となり、設備的負担が大き
。また、沸点差が小さいためユーティリテ
ーの使用量も大きくなる。
特許文献3に記載の方法では、2,3-ジヒドロ
ランが収率98%以上で得られている。しかし
本発明者らが特許文献3の実施例4に準じて反
応を行ったところ(本願明細書の比較例2参照)
、原料の2,5-ジヒドロフランにわずかな不純
が混入していると、反応が低収率のまま途
で停止するという問題が生じたため、安定
て2,3-ジヒドロフランを製造するにはさらな
改良の余地がある。
また、特許文献4に記載の方法では、例10 よび11を見てもわかるように、選択率90%以 を達成しているものの、転化率は50%程度に どまっている。実際、特許文献4の例11に準 て反応を行うと、転化率は非常に低くなる( 願明細書の比較例6参照)。さらに、特許文 4には、異性化工程における触媒濃度は、原 のアリルエーテル系化合物に対して0.05~0.2 ル%であると記載されており(第34頁下から1~4 目参照)、遷移貴金属触媒の使用量が多く、 高価な遷移貴金属触媒を使用するには耐えな い。本発明者らが、特許文献4に記載の条件 で、原料を2,5-ジヒドロフランに代えて実験 行なったところ、5回以上の触媒の繰り返し 使用は困難であり、工業的に有利に実施する には、さらなる改良の余地がある。
本発明者は、前記目的を達成するために鋭
研究を重ねた結果、水素の存在下、触媒と
てロジウム化合物と単座トリス(o-置換アリ
ル)ホスファイトとを組み合わせて用いて、
アリルエーテル系化合物を異性化することに
より、
[1]ロジウム化合物の使用量が少なくて済む上
、アリルエーテル系化合物の転化率が高く、
且つ高い選択率でビニルエーテル系化合物を
製造できる、
[2]たとえアリルエーテル系化合物中に不純物
が混入していても、その影響を受けずに高収
率でビニルエーテル系化合物を製造できる、
[3]上記触媒の繰り返し使用が可能であり、さ
らに、第三級アミンの存在下で異性化反応を
行うことにより、高沸分の生成が抑制され、
触媒の繰り返し使用が有利になる、
ことを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の(1)~(6)を提供す
るものである。
(1)下記一般式(I)又は(II)
(式中、R 1
は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R 2
、R 3
およびR 4
は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6
のアルキル基、炭素数3~6のアルケニル基を表
す。また、nは1または2である。)
で示されるアリルエーテル系化合物を、水素
の存在下並びに単座トリス(o-置換アリール)
スファイトおよびロジウム化合物の存在下
異性化することを特徴とする、ビニルエー
ル系化合物の製造方法。
(2)前記単座トリス(o-置換アリール)ホスファ
トの反応液中におけるモル濃度を、原料中
過酸化物の反応液中におけるモル濃度およ
反応液中におけるロジウム原子のモル濃度
合計に対して0.9~15倍とし、且つ水素圧を0.1~0
.9MPa(絶対圧)とした後、反応温度60~180℃にて
酸化炭素の不存在下に実施する、上記(1)に
載のビニルエーテル系化合物の製造方法。
(3)反応液中におけるロジウム原子のモル濃度
が0.01~2ミリモル/リットルである、上記(1)ま
は(2)に記載のビニルエーテル系化合物の製
方法。
(4)さらに、沸点が100℃以上の第三級アミンの
存在下に行う、上記(1)または(2)に記載のビニ
ルエーテル系化合物の製造方法。
(5)単座トリス(o-置換アリール)ホスファイト
、トリス(2-t-ブチルフェニル)ホスファイト
トリス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル)ホスフ
イトおよびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)
スファイトの中から選ばれる少なくとも一
である、上記(1)または(2)に記載のビニルエ
テル系化合物の製造方法。
(6)原料のアリルエーテル系化合物が、不純物
としてフラン0.1~7質量%、水0.5~23質量%および
ロトンアルデヒド0.01~5質量%を含む2,5-ジヒド
ロフランである、上記(1)または(2)に記載のビ
ニルエーテル系化合物の製造方法。
本発明によれば、少量のロジウム化合物 、高転化率および高選択率で前記アリルエ テル系化合物からビニルエーテル系化合物 製造することができる。
本発明では、下記一般式(I)又は(II)
で示されるアリルエーテル系化合物[以下 単にアリルエーテル系化合物と称すること ある。]を、水素の存在下並びに単座トリス( o-置換アリール)ホスファイトおよびロジウム 化合物の存在下に異性化する。
上記一般式(I)および(II)中、R 1
は、炭素数1~6のアルキル基を表し、R 2
、R 3
およびR 4
は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6
のアルキル基、炭素数3~6のアルケニル基を表
す。また、nは1または2である。
R 1
、R 2
、R 3
、R 4
がそれぞれ独立して表す炭素数1~6のアルキル
基としては、例えばメチル基、エチル基、各
種プロピル基(各種とは、直鎖およびあらゆ
分岐鎖を含むことを示す。以下同様。)、各
ブチル基などが挙げられる。
R 2
、R 3
、R 4
がそれぞれ独立して表す炭素数3~6のアルケニ
ル基としては、例えば2-プロペニル基、2-ブ
ニル基、3-ブテニル基、2-ペンテニル基、3-
ンテニル基、4-ペンテニル基、2-ヘキセニル
、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキ
ニル基などが挙げられる。該アルケニル基
、副反応の抑制の観点から、1,2位に炭素-炭
素二重結合が無いアルケニル基が好ましい。
上記一般式(I)において、R 1
としては、メチル基、エチル基またはt-ブチ
基が好ましい。R 2
としては、水素原子が好ましい。R 3
としては、水素原子、メチル基、エチル基、
n-プロピル基または4-ペンテニル基が好まし
。R 4
としては、水素原子が好ましい。
また、上記一般式(II)において、R 3
としては、水素原子が好ましい。R 4
としては、水素原子またはメチル基が好まし
い。また、nとしては、1が好ましい。
アリルエーテル系化合物の具体例としては
例えばアリルエチルエーテル、アリルt-ブ
ルエーテル、2-ブテニルメチルエーテル、2-
ンテニルメチルエーテル、2-ヘキセニルメ
ルエーテル、2,7-オクタジエニルメチルエー
ル、2,5-ジヒドロフラン、3,6-ジヒドロ-2H-ピ
ン、3,6-ジヒドロ-4-メチル-2H-ピランなどが
げられる。
なお、一般式(I)で示されるアリルエーテル 化合物を原料に用いた場合は、以下の一般 (I’)で示されるビニルエーテル系化合物が 的化合物であり、一般式(II)で示されるアリ ルエーテル系化合物を原料に用いた場合は、 以下の一般式(II’)で示されるビニルエーテ 系化合物が目的化合物である(下記一般式中 R 1 ~R 4 は前記定義の通りである。)。
また、本発明で使用する単座トリス(o-置 アリール)ホスファイトは、下記一般式(III) 示されるものである。
上記一般式(III)中、R 5
は、アルキル基またはアリール基を表し、R 6
~R 9
は、それぞれ独立して、水素原子またはアル
キル基を表す。
R 5
が表すアルキル基の炭素数は、好ましくは1~1
0、より好ましくは1~6、さらに好ましくは3~6
ある。R 5
が表すアルキル基の具体例としては、メチル
基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル
基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種
デシル基などが挙げられる。
R 5
が表すアリール基の炭素数は、好ましくは6~1
0である。R 5
が表すアリール基としては、例えばフェニル
基、トリル基などが挙げられる。
R 5
としては、アルキル基が好ましく、t-ブチル
がより好ましい。
R 6
~R 9
がそれぞれ独立して表すアルキル基の炭素数
は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6であ
。R 6
~R 9
がそれぞれ独立して表すアルキル基の具体例
としては、メチル基、エチル基、各種プロピ
ル基、各種ブチル基、各種ヘキシル基、各種
オクチル基、各種デシル基などが挙げられる
。
R 6
~R 9
は、それぞれ水素原子、メチル基、t-ブチル
が好ましい。
単座トリス(o-置換アリール)ホスファイトの
具体例としては、トリス(2-t-ブチルフェニル)
ホスファイト、トリス(3-メチル-6-t-ブチルフ
ニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチル
ェニル)ホスファイト、トリス(2-フェニルフ
ェニル)ホスファイトなどが挙げられる。こ
らの中でも、アリルエーテル系化合物の転
率並びにビニルエーテル系化合物の選択性
よび収率の観点からは、単座トリス(o-置換
リール)ホスファイトとしては、トリス(2-t-
チルフェニル)ホスファイト、トリス(3-メチ
-6-t-ブチルフェニル)ホスファイトおよびト
ス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトか
なる群から選択される少なくとも1種である
ことが好ましい。
このような単座トリス(o-置換アリール)ホス
ファイトをロジウム化合物と合わせて触媒と
して使用することにより、たとえ原料のアリ
ルエーテル系化合物に不純物が含まれていて
も、悪影響を受けずに、ロジウム化合物が少
量でも、ビニルエーテル系化合物を高収率で
製造することが可能となった。
本発明において使用するロジウム化合物と
ては、例えばRh(acac)(CO) 2
、Rh(acac) 3
、[Rh(OAc)(CO) 2
] 2
、Rh(OAc) 3
、Rh 2
(OAc) 2
(1,5-COD) 2
、Rh(CO)(acac)(PPh 3
)、HRh(CO)(PPh 3
) 3
、Rh 4
(CO) 12
[acacはアセチルアセトナト基、Acはアセチル
、CODは1,5-シクロオクタジエン、Phはフェニ
基を表す。]等のロジウム錯体である。これ
の中でも、Rh(acac)(CO) 2
が好ましい。これらのロジウム錯体は、市販
品を用いてもよいし、公知の方法により合成
したものを使用してもよい。
ロジウム化合物は、1種を単独で使用しても
よく、2種以上を併用してもよい。
上記ロジウム化合物は高価であることから
できる限り、得られるビニルエーテル系化
物に対するロジウム化合物の使用量を低減
る必要がある。
本発明では、ロジウム化合物の使用量は、
応液中におけるロジウム原子のモル濃度に
算して示すと、0.01~2ミリモル/リットルの範
囲で実施することが可能であり、必要に応じ
て0.1~1ミリモル/リットルの範囲で実施するこ
とも可能である。
本発明では、前記単座トリス置換アリール
スファイトの反応液中におけるモル濃度を
原料中の過酸化物の反応液中におけるモル
度および反応液中におけるロジウム原子の
ル濃度の合計に対して0.9~15倍とし、且つ水
圧0.1~0.9MPa(絶対圧)とした後、反応温度60~180
にて実施すると、少量のロジウム化合物に
より高い転化率および選択率を得ることが
能となるため、この製造条件で実施するこ
が好ましい。さらに本発明では、副反応抑
の観点から、一酸化炭素の不存在下に実施
ることが好ましい。
なお、反応液中のモル濃度の測定方法とし
は特に制限は無く、例えば、反応器に供給
たアリルエーテル系化合物、各種生成物お
び溶媒(総じて、本明細書では「反応液」と
称する。)の全体積を1リットルとしたときの
座トリス(o-置換アリール)ホスファイトやロ
ジウム化合物の物質量を求めればよい。また
、反応液中におけるアリルエーテル系化合物
中の過酸化物のモル濃度の算出方法は、実施
例に記載の方法に従えばよい。
通常、本発明の原料であるアリルエーテル
化合物、特に2,5-ジヒドロフランなどは、過
酸化物を生じやすい。本発明で使用する単座
トリス(o-置換アリール)ホスファイトは、か
る過酸化物によって酸化される傾向にあり
そのため、安定して反応を実施するために
、原料中の過酸化物の反応液中におけるモ
濃度を考慮して、単座トリス(o-置換アリー
)ホスファイトの使用量を規定するのが好ま
い。
したがって、上記の通り、反応液中の単座
リス(o-置換アリール)ホスファイトのモル濃
度は、原料中の過酸化物の反応液中における
モル濃度および反応液中におけるロジウム原
子のモル濃度の合計に対して0.9~15倍が好まし
く、1~10倍がより好ましく、反応速度および
媒安定性の観点から、1~5倍がさらに好まし
。なお、2,5-ジヒドロフラン中の過酸化物の
反応液中におけるモル濃度の算出方法は、
施例に記載の方法に従えばよい。
本発明は水素の存在下に実施する。水素圧
、上記の通り、好ましくは0.1~0.9MPa(常温下
の絶対圧)であり、コストの観点から、より
ましくは0.11~0.6MPa(常温下での絶対圧)、さら
に好ましくは0.11~0.4MPa(常温下での絶対圧)で
る。なお、反応に不活性な気体、例えばア
ゴンや窒素などを水素と共に用いてもよい
かかる不活性な気体を水素と共に用いる場
は、上記の絶対圧は水素の分圧を意味する
反応温度は、上記の通り、好ましくは60~180
であり、より好ましくは90~160℃、さらに好
しくは90~130℃である。この範囲の場合、触
活性を高く維持でき、高い反応速度となる
め好ましい。前記水素圧にした後、該温度
て反応を実施するため、言うまでもないこ
だが、反応器の昇温後においては、昇温前
りも全圧が上昇している。
本発明における異性化反応においては、反
条件によっては目的化合物以外の副生成物
例えば目的化合物が2,3-ジヒドロフランの場
合、2-ヒドロキシテトラヒドロフランや、そ
脱水素体であるブチロラクトン、またブチ
ラクトンの水和体である4-ヒドロキシブタ
酸などが副生することがある。そこで、こ
らカルボン酸類の悪影響を抑制するために
例えば、トリオクチルアミン等の第三級ア
ンを反応液に添加してもよい。特に、ロジ
ム化合物および単座トリス(o-置換アリール)
スファイトを回収する際、生成物を含む低
点化合物を留去したときに残渣として残る
三級アミン、具体的には、常圧下の沸点100
以上であるトリオクチルアミンなどが好ま
い。
第三級アミンを使用する場合、その使用量
、反応液中の酸濃度に対して、通常、好ま
くは1~2倍モル、より好ましくは1~1.5倍モル
ある。なお、酸濃度測定方法は、実施例に
載の方法に従えばよい。
また、前述の通り、本発明において使用す
ロジウム化合物は高価な遷移貴金属触媒で
ることから、反応において繰り返し使用す
ことが好ましい。
その繰り返し使用する方法としては、例え
、目的とするビニルエーテル系化合物が2,3-
ジヒドロフランである場合、反応終了後の混
合液に含まれている、2,3-ジヒドロフラン、
生物のテトラヒドロフラン、2-ヒドロキシテ
トラヒドロフラン、未反応原料である2,5-ジ
ドロフラン、元々原料に混入しているフラ
、水などを単蒸発により留去し、その残渣
してロジウム化合物、単座トリス(o-置換ア
ール)ホスファイトを得た後、該残渣を再度
原料と混合し反応を実施する方法を挙げる
とができる。
上記ロジウム化合物、単座トリス(o-置換ア
ール)ホスファイトを繰り返し4回以上使用
ることが製造費用の観点から好ましい。
本発明は、溶媒の不在下で実施すること できるが、反応系中で不活性な溶媒の存在 に行ってもよい。かかる溶媒としては、例 ばオクタン、ノナン、デカン等の飽和脂肪 炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等 の芳香族炭化水素;テトラエチレングリコー ジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテ などが挙げられる。これらの溶媒は1種を単 で使用してもよいし、2種以上を併用しても よい。
本発明の実施方式に特に制限は無く、バッ
方式でも連続方式でも実施できる。
例えば、バッチ方式の場合、アリルエーテ
系化合物、ロジウム化合物および単座トリ
(o-置換アリール)ホスファイト、並びに必要
に応じて溶媒および第三級アミンを混合し、
水素の存在下(好ましくは前記水素圧下)、好
しくは前記温度に昇温することにより実施
きる。
反応終了液後、混合液を単蒸発させて触媒
の分離を行い、留出液を精留することによ
、純度の高いビニルエーテル系化合物を取
することができる。
こうして得られるビニルエーテル系化合物
例えば2,3-ジヒドロフランや1,7-オクタジエ
ルメチルエーテルなどは、医農薬原料、ポ
マー原料などの原料や中間体等として有用
ある。
なお、本発明の原料であるアリルエーテル
化合物のうち、例えば2,5-ジヒドロフランは
、特開平9-110850号公報に記載の方法、つまり
ス-2-ブテン-1,4-ジオールを脱水反応に処し
次いで単蒸発する方法により得られる残留
(2,5-ジヒドロフランを含有する。)をそのま
用いることができる。
この場合、原料中に、クロトンアルデヒド
フラン、テトラヒドロフランおよび水など
混入している。2,5-ジヒドロフランとの沸点
差の小さいこれら不純物を除去するためには
、分離能の高い蒸留塔が必要であり、設備的
負担が大きい。また、ユーティリティーの使
用量も大きくなる。単蒸留のみの精製では、
これら不純物は除去できないが、異性化反応
には問題が無いため、本発明では上記方法に
より得られた残留液を使用することが簡便で
あり好ましい。
上記残留液中の不純物の含有量は、通常、
ランが0.1~7質量%、水が0.5~23質量%、クロトン
アルデヒドが0.01~5質量%程度であり、以下、
のような不純物を含有した2,5-ジヒドロフラ
を、「粗2,5-ジヒドロフラン」と称すること
がある。
また、本発明の原料であるアリルエーテル
化合物のうち、例えば2,7-オクタジエニルメ
チルエーテルは、特開2005-95850号公報に記載
方法により得ることができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に
明するが、本発明は、これらの例によって
ら限定されるものではない。なお、各例に
載の圧力は、全て絶対圧である。
また、各例において、反応終了液中の水以
の各成分の濃度は、ガスクロマトグラフィ
により測定し、水の濃度はカールフィッシ
ー法により測定した。
以下に、ガスクロマトグラフィー分析条件
カールフィッシャー法水分測定法、過酸化
価測定法を示す。
[ガスクロマトグラフィー分析]
装置 :GC-9A(株式会社島津製作所製)
使用カラム:CBP-1(50m)(株式会社島津製作所製)
分析条件 :injection temp.50℃、
detection temp.250℃
昇温条件 :50℃で10分保持→15℃/分で昇温→
250℃で10分保持
[カールフィッシャー水分測定法]
装置 :平沼微量水分測定装置AQ-6(平沼産
株式会社製)
発生液 :ハイドラナールアクアライトRO
(シグマアルドリッチジャパン株式
会社製)
対極液 :アクアライトCN(関東化学株式会
製)
サンプル量:1g精秤
[過酸化物価測定法]
過酸化物価測定法としては、「新実験化学
座15、酸化と還元[1-2](日本化学会編)、p.685
第12行目の[定量法A](2)」に記載の方法に準じ
た以下の方法を用いた。
酢酸を10質量%含む2-プロパノール(25~30ml)に
ヨウ化カリウムを飽和した2-プロパノール10m
lと粗2,5-DHF 1~4gを溶解した。5分間以上加熱還
流後、室温に冷却し、水5mlを加えてから0.01N
オ硫酸ナトリウム水溶液で滴定した。
過酸化物価[meq/kg]=10×A×F/W
(A:0.01Nチオ硫酸ナトリウムの滴定量、F:0.01Nチ
オ硫酸ナトリウムのファクター、W:試料の質
)
こうして得られた過酸化物価を比重で割る
とにより、原料中の過酸化物の反応液中に
けるモル濃度(mmol/L)を算出する。
さらに、アリルエーテル系化合物の転化 および反応終了後の混合液に含まれていた 成分の選択率を下記のようにして算出した
[転化率および選択率の算出法]
転化率および選択率は、ガスクロマトグラ
ィー分析を行い、エリア%(溶媒を除く)を用
て算出した。具体的には、下記式にて転化
および各選択率を算出している。
転化率=〔(仕込み時のアリルエーテル系化
物のエリア%-サンプリング時のアリルエーテ
ル系化合物のエリア%)/仕込み時のアリルエー
テル系化合物のエリア%〕×100
選択率=〔サンプリング時の各化合物のエリ
ア%/(仕込み時のアリルエーテル系化合物のエ
リア%-サンプリング時のアリルエーテル系化
物のエリア%)〕×100
なお、エリア%とは、インテグレーターによ
り算出された所定成分のピーク面積の、全成
分または指定した成分の合計に対する比率(%)
を示す。
[酸濃度測定法]
反応液10g程度を精秤し、0.01mol/Lの水酸化ナ
リウム水溶液を用いて、自動滴定装置「AUT-
501」(東亜電波工業株式会社製)による電位差
定にてpH7~11の変極点を測定し、算出した。
<製造例1>粗2,5-ジヒドロフラン(1)の製造
E30N4[商品名、γ-アルミナ(内径2mm、外径5mm、
高さ3.8mmのリング状ペレット)、日揮化学株式
会社製]34gを含有するテフロン(登録商標)製の
袋を、電磁攪拌装置および留出口を備えた内
容積1Lの三口フラスコに固定した。該フラス
に蒸留塔[内径25mm×長さ300mm、ヘリパックNO.2
(東京特殊金網株式会社製)、理論段数20段]を
そして該蒸留塔の上に水冷式還流装置を設
た。
上記フラスコにシス-2-ブテン-1,4-ジオール50
0ml(540g、6.1mol)を仕込み、窒素雰囲気下、攪拌
しながら常圧にて195℃まで昇温させた。2,5-
ヒドロフランおよび低沸点の副生成物(例え
テトラヒドロフラン、水、クロトンアルデ
ドなど)を留出温度83~86℃(常圧)を維持する
うに還流を行い、留出させた。また、フラ
コ内の反応混合液の量を500mlに維持するよう
、シス-2-ブテン-1,4-ジオールを連続的に供給
た。反応開始直後の反応混合液中のシス-2-
テン-1,4-ジオールの濃度は99質量%であった
反応を8時間行い、粗2,5-ジヒドロフラン[以
、粗2,5-ジヒドロフラン(1)と称する。]を753ml
た。
粗2,5-ジヒドロフラン(1)中に含有している各
成分を分析したところ、純度93.3質量%、フラ
1.8質量%、テトラヒドロフラン0.4質量%、ク
トンアルデヒド0.5質量%、水4.0質量%、過酸化
物濃度0.1mmol/L以下(過酸化物価0.1meq/kg以下)で
った。
<製造例2>粗2,5-ジヒドロフラン(2)の製造
反応温度を203℃にする以外、製造例1と同様
に反応を行った。2,5-ジヒドロフランおよび
沸点の副生成物(例えばテトラヒドロフラン
水、クロトンアルデヒドなど)を留出温度93~
96℃(常圧)を維持するように還流を行い、留
させた。本反応を5時間行い、粗2,5-ジヒドロ
フラン[以下、粗2,5-ジヒドロフラン(2)と称す
。]を835ml得た。
粗2,5-ジヒドロフラン(2)中に含有している各
成分を分析したところ、純度85.1質量%、フラ
2.2質量%、テトラヒドロフラン1.0質量%、ク
トンアルデヒド1.1質量%、水9.5質量%、過酸化
物濃度1.14mmol/L(過酸化物価1.2meq/kg)であった。
<製造例3>粗2,5-ジヒドロフラン(3)の製造(
ケールアップ)
SUS304製の直径25.4mm×長さ2000mmサイズの配管
40本並列に溶接した直径600mmの熱交換器に、E
30N4[商品名、γ-アルミナ(内径2mm、外径5mm、高
さ3.8mmのリング状ペレット)、日揮化学株式会
社製]17kgを充填した。熱交換器は配管を用い
蒸留塔(高さ18.87m、塔径300mm、テクノパックA
4(三井物産株式会社製)充填塔、理論段数20段)
と、循環ポンプ(最大吐出量30m 3
/時、帝国ポンプ株式会社製)に接続した。そ
て該蒸留塔の上部に凝縮用の熱交換器(伝熱
面積5m 2
)を設けた。
上記熱交換器と蒸留塔下層部に200Lのシス-2-
ブテン-1,4-ジオール(240kg、2727mol)を仕込み、
素雰囲気下、循環ポンプを用いて15m 3
/時で熱交換器と蒸留塔下層部を循環させな
ら、常圧にて195℃に昇温した。2,5-ジヒドロ
ランおよび低沸点の副生成物(例えばテトラ
ヒドロフラン、水、クロトンアルデヒドなど
)を留出温度83~86℃(常圧)を維持するように、
出させた。またフラスコ内の反応混合液が2
00Lを維持するよう、シス-2-ブテン-1,4-ジオー
を連続的に供給した。反応開始直後の反応
合液中のシス-2-ブテン-1,4-ジオールの濃度
99質量%であった。本反応を28時間行い、粗2,5
-ジヒドロフラン[以下、粗2,5-ジヒドロフラン
(3)と称する。]1142kgを得た。
粗2,5-ジヒドロフラン(3)中に含有している各
成分を分析したところ、純度85.1質量%、フラ
2.2質量%、テトラヒドロフラン1.0質量%、ク
トンアルデヒド1.1質量%、水9.5質量%、過酸化
物濃度1.14mmol/L(過酸化物価1.2meq/kg)、2,5-ジヒ
ロフラン2.3mol相当であった。
<実施例1>
ガス導入口およびサンプリング口を備えた
容積300mlの電磁攪拌式オートクレーブに、
素雰囲気下、Rh(acac)(CO) 2
20.6mg(0.08mmol)、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル
)ホスファイト125.2mg[0.2mmol;原料中の過酸化物
反応液中におけるモル濃度(0.02mmol/L以下)お
び反応液中におけるロジウム原子のモル濃
(0.08mmol/L)の合計に対して2~2.5倍]、製造例1で
得た2,5-ジヒドロフラン(1)200mlを空気に触れな
いようにして仕込み、次いでオートクレーブ
内を水素で置換し、水素圧(絶対圧)を0.25MPaと
した。オートクレーブ内の温度を110℃に上げ
ると、全圧が0.55MPaとなった。この圧力を維
するように水素を供給しながら、4時間反応
せた。得られた混合液をガスクロマトグラ
ィーで分析し、その結果を表1に示した。
<実施例2>
実施例1において、水素圧(絶対圧)を0.4MPa(110
℃に昇温時の全圧が0.7MPa)とした以外、実施
1と同様にして反応および分析を行った。結
を表1に示す。
<実施例3>
実施例1において、水素圧(絶対圧)を0.6MPa(110
℃に昇温時の全圧が0.9MPa)とした以外、実施
1と同様にして反応および分析を行った。結
を表1に示す。
<実施例4>
実施例1において、水素圧(絶対圧)を0.11MPa(11
0℃に昇温時の全圧が0.4MPa)とした以外、実施
1と同様にして反応および分析を行った。結
果を表1に示す。
<実施例5>
実施例4において、反応時間を16時間とした
外、実施例4と同様にして反応および分析を
行った。結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例1において、「オートクレーブ内を水
素で置換し、水素圧(絶対圧)を0.25MPa」とする
代わりに、「オートクレーブ内の窒素圧(絶
圧)を0.25MPa(110℃に昇温時の全圧が0.55MPa)」と
した以外、実施例1と同様にして反応および
析を行った。結果を表1に示す。
<実施例6>
実施例1において、水素圧(絶対圧)を1.0MPa(110
℃に昇温時の全圧が1.3MPa)とした以外、実施
1と同様にして反応および分析を行った。結
を表1に示す。
<実施例7>
実施例1において、「オートクレーブ内を水
素で置換し、水素圧(絶対圧)を0.25MPa」とする
代わりに、「オートクレーブ内を水素および
一酸化炭素で置換し、水素圧(絶対圧)を0.2MPa
よび一酸化炭素圧(絶対圧)を0.2MPa(110℃に昇
時の全圧が0.7MPa)」とした以外、実施例1と
様にして反応および分析を行った。結果を
1に示す。
<実施例8>
実施例1において、「オートクレーブ内を水
素で置換し、水素圧(絶対圧)を0.25MPa」とする
代わりに、「オートクレーブ内を水素および
一酸化炭素で置換し、水素圧(絶対圧)を0.23MPa
および一酸化炭素圧(絶対圧)を0.08MPa(110℃に
温時の全圧が0.6MPa)」とした以外、実施例1と
同様にして反応および分析を行った。結果を
表1に示す。
[注]
2,5DHF:2,5-ジヒドロフラン
2,3DHF:2,3-ジヒドロフラン
F:フラン
THF:テトラヒドロフラン
2HTHF:2-ヒドロキシテトラヒドロフラン
3FTHF:3-ホルミルテトラヒドロフラン
2FTHF:2-ホルミルテトラヒドロフラン
表1から分かるように、常温時の水素圧(絶
圧)が0.1MPa以上の場合、2,5-ジヒドロフランの
転化率は高く、2,3-ジヒドロフランの選択率
良好である(実施例1~8)。特に、常温時の水素
圧(絶対圧)0.1~0.9MPaにした場合(実施例1~5)、2,3-
ジヒドロフランの選択率が非常に高い。水素
圧(絶対圧)が0.11MPaである実施例4では、2,5-ジ
ドロフランの転化率が低下したものの、実
例5のように、反応時間を延ばすことにより
、高い転化率を得ることができた。さらに、
水素圧(絶対圧)が0.1~0.9MPaで、水素と共に一酸
化炭素を使用した場合でも(実施例7および8)
2,5-ジヒドロフランの転化率および2,3-ジヒド
ロフランの選択率共に非常に高い成績を達成
できる。
一方、常温時の水素圧(絶対圧)が0.1MPa未満
場合(比較例1)、2,5-ジヒドロフランの転化率
大幅に低下し、2,3-ジヒドロフランの選択率
も低下した。
<実施例9>
実施例1において、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフ
ニル)ホスファイト125.2mg(0.2mmol)の代わりに
リス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル)ホスファ
ト(3M6BP)107.8mg(0.2mmol)を使用したこと以外、実
施例1と同様にして反応および分析を行った
結果を表2に示す。
<実施例10>
実施例1において、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフ
ニル)ホスファイト125.2mg(0.2mmol)の代わりに
リス(2-t-ブチルフェニル)ホスファイト(2TBP)95
.7mg(0.2mmol)を使用したこと以外、実施例1と同
にして反応および分析を行った。結果を表2
に示す。
<比較例2>
実施例1において、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフ
ニル)ホスファイト125.2mg(0.2mmol)の代わりに
リフェニルホスフィン52.4mg(0.2mmol)を使用し
こと以外、実施例1と同様にして反応および
析を行った。結果を表2に示す。
<比較例3>
実施例1において、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフ
ニル)ホスファイト125.2mg(0.2mmol)の代わりに
リフェニルホスファイト62mg(0.2mmol)を使用し
こと以外、実施例1と同様にして反応および
分析を行った。結果を表2に示す。
<比較例4>
実施例1において、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフ
ニル)ホスファイト125.2mg(0.2mmol)の代わりに
リス(4-メチルフェニル)ホスファイト70.5mg(0.2
mmol)を使用したこと以外、実施例1と同様にし
て反応および分析を行った。結果を表2に示
。
[注]
3M6BP:トリス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル)
スファイト
2TBP:トリス(2-t-ブチルフェニル)ホスファ
ト
2,5DHF:2,5-ジヒドロフラン
2,3DHF:2,3-ジヒドロフラン
F:フラン
THF:テトラヒドロフラン
2HTHF:2-ヒドロキシテトラヒドロフラン
表2から分かるように、単座トリス(o-置換 アリール)ホスファイトを使用した実施例9お び10では、2,5-ジヒドロフランの転化率が高 、且つ2,3-ジヒドロフランの選択率が高い。 一方、ホスファイトのアリール基のオルト位 に置換基を有さない別のリン配位子を用いた 比較例2~4では、2,5-ジヒドロフランの転化率 低下のみならず、2,3-ジヒドロフランの選択 も低下した。
<実施例11>
実施例1において、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフ
ニル)ホスファイト0.2mmol(原料中の過酸化物
反応液中におけるモル濃度および反応液中
おけるロジウム原子のモル濃度の合計に対
て2.5倍)の代わりにトリス(2,4-ジ-t-ブチルフ
ニル)ホスファイト0.08mmol(原料中の過酸化物
の反応液中におけるモル濃度および反応液中
におけるロジウム原子のモル濃度の合計に対
して1倍)とした以外、実施例1と同様にして反
応および分析を行った。結果を表3に示す。
<実施例12>
実施例11において、反応時間を6時間とした
外、実施例11と同様にして反応および分析
行った。結果を表3に示す。
<実施例13>
実施例1において、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフ
ニル)ホスファイト0.2mmolからトリス(2,4-ジ-t-
ブチルフェニル)ホスファイト0.8mmol(原料中の
過酸化物の反応液中におけるモル濃度および
反応液中におけるロジウム原子のモル濃度の
合計に対して10倍)とした以外、実施例1と同
にして反応および分析を行った。結果を表3
示す。
<実施例14>
実施例13において、反応時間を6時間とした
外、実施例13と同様にして反応および分析
行った。結果を表3に示す。
<実施例15>
実施例13において、粗2,5-ジヒドロフラン(1)200
mlを、製造例2で得た粗2,5-ジヒドロフラン(2)20
0mlとした以外、実施例13と同様にして反応お
び分析を行った。結果を表3に示す。
<実施例16>
実施例1において、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフ
ニル)ホスファイト0.2mmolをトリス(2,4-ジ-t-ブ
チルフェニル)ホスファイト2mmol(原料中の過
化物の反応液中におけるモル濃度および反
液中におけるロジウム原子のモル濃度の合
に対して25倍)とした以外、実施例1と同様に
て反応および分析を行った。結果を表3に示
す。
<実施例17>
実施例16において、反応時間を6時間とした
外、実施例16と同様にして反応および分析
行った。結果を表3に示す。
<実施例18>
実施例15において、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフ
ェニル)ホスファイト0.8mmolの代わりにトリス(
3-メチル-6-t-ブチルフェニル)ホスファイト0.02
mmol(原料中の過酸化物の反応液中におけるモ
濃度および反応液中におけるロジウム原子
モル濃度の合計に対して0.25倍)とした以外
実施例15と同様にして反応および分析を行っ
た。結果を表3に示す。
<比較例5>
実施例1において、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフ
ニル)ホスファイトを添加しなかったこと以
外、実施例1と同様に反応を実施した。この
合、全く反応が進行しなかった(表3参照)。
[注]
2,5DHF:2,5-ジヒドロフラン
2,3DHF:2,3-ジヒドロフラン
THF:テトラヒドロフラン
2HTHF:2-ヒドロキシテトラヒドロフラン
表3から分かるように、反応液中における単
座トリス(o-置換アリール)ホスファイトのモ
濃度が、原料中の過酸化物の反応液中にお
るモル濃度および反応液中におけるロジウ
原子のモル濃度の合計に対して、0.9~15倍の
囲内である場合(実施例11~15)は、反応速度お
び選択率が共に優れている。
また、実施例16~18のように、反応液中にお
る単座トリス(o-置換アリール)ホスファイト
モル濃度が、原料中の過酸化物の反応液中
おけるモル濃度および反応液中におけるロ
ウム原子のモル濃度の合計に対して0.9~15倍
範囲を逸脱した場合、2,5-ジヒドロフランの
転化率が低下したが、2,3-ジヒドロフランを
選択率で得ることができた。
また、単座トリス(o-置換アリール)ホスファ
イトを添加しない場合(比較例5)、反応は全く
進行しない結果となった。
<実施例19>
実施例1において、さらにトリオクチルアミ
ン200mg(0.57mmol)を添加した以外、実施例1と同
にして反応および分析を行った。その結果
2,5-ジヒドロフランの転化率が85.3%、2,3-ジヒ
ロフランの選択率が96.4%、テトラヒドロフ
ンの選択率が2.5%、2-ヒドロキシテトラヒド
フランの選択率が1.1%となり、実施例1と比較
して反応速度は若干低下するものの、副生物
である2-ヒドロキシテトラヒドロフランの選
率は低減でき、2,3-ジヒドロフランの選択率
は向上した。
<実施例20>
ガス導入口、サンプリング口および冷却器
先に留出貯槽を備えた内容積140Lであり、攪
拌機およびジャケット付反応器(耐圧2.0MPa)に
窒素雰囲気下、Rh(acac)(CO) 2
10.3g(41.8mmol)、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)
ホスファイト129g(206mmol)、製造例3で得た粗2,5-
ジヒドロフラン(3)30Lおよびトリオクチルアミ
ン80g(228mmol)を空気に触れないようにして仕込
み、次いで反応器内を水素で置換し、水素圧
(絶対圧)を0.20MPaとした。反応器内を120℃に昇
温したところ、全圧が0.5MPaとなった。その後
、フィードポンプにより36L/時にて粗2,5-ジヒ
ロフラン(3)70Lを1.7時間かけて仕込み、反応
内の圧力を維持するように水素を供給しな
ら、1.8時間反応させた。得られた混合液を
スクロマトグラフィー分析した結果を表4に
示す。
ガスクロマトグラフィー分析により反応が
了したことを確認した後、反応器ジャケッ
に25℃の水を通すことで混合液を30℃まで冷
却した。反応器圧力(0.2MPa)を冷却器、留出貯
を経由して放圧した後、窒素雰囲気下、反
器を70℃まで加熱し、反応器内の混合液の
積が10Lになるまで単蒸発を行い、目的物を
む低沸点物を留去した。
次に、再度、反応器に粗2,5-ジヒドロフラン
(3)30Lを仕込み、次いで反応器内を水素で置換
し、水素圧(絶対圧)を0.20MPa、反応器内温度を
120℃まで加温、フィードポンプにより36L/時
て粗2,5-ジヒドロフラン(3)60Lを1.7時間かけて
込み、反応器内の圧力を維持するように水
を供給しながら、1.8時間反応させ、得られ
混合液をガスクロマトグラフィー分析した
かかる反応、分析および留去の繰り返しを
計4回実施した。
蒸留残渣の粘度は、全て30℃にて0.1Pa・s以
であり、取り扱いが容易であった。結果を
4に示す。
[注]
2,5DHF:2,5-ジヒドロフラン
2,3DHF:2,3-ジヒドロフラン
THF:テトラヒドロフラン
2HTHF:2-ヒドロキシテトラヒドロフラン
<実施例21>
ガス導入口およびサンプリング口を備えた
容積300mlの電磁攪拌式オートクレーブに、
素雰囲気下、Rh(acac)(CO) 2
20.6mg(0.08mmol)、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル
)ホスファイト125.2mg(0.2mmol)、製造例1で生成し
た粗2,5-ジヒドロフラン(1)200mlを空気に触れな
いようにして仕込み、次いで水素を流し込ん
で水素圧(絶対圧)を0.25MPa(110℃に昇温時の全
が0.55MPa)とした。オートクレーブ内の圧力を
維持するように水素を供給しながら、4時間
応させた。得られた混合液をガスクロマト
ラフィー分析した結果を表5に示す。
こうして得られた混合液を、リービッヒ冷
管を備えた内容積300mlの3口フラスコに移し
常圧、窒素雰囲気下に70℃まで加熱し、目
物を含む低沸点物を留去して、混合液を30ml
まで濃縮した。得られた触媒を含む濃縮残
を、再度、上記オートクレーブに移してRh(a
cac)(CO) 2
およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフ
ァイトとして使用し、前記同様の反応、分析
および単蒸発の繰り返しを合計4回実施した
4回目の反応後の濃縮液の粘度としては30℃
て0.35Pa・sとなり、やや取り扱いが困難とな
った。得られた混合液をガスクロマトグラフ
ィーで分析した。結果を表5に示す。
[注]
2,5DHF:2,5-ジヒドロフラン
2,3DHF:2,3-ジヒドロフラン
THF:テトラヒドロフラン
2HTHF:2-ヒドロキシテトラヒドロフラン
第三級アミン(トリオクチルアミン)を添 している実施例19および20では、2-ヒドロキ テトラヒドロフランおよびその他の高沸点 合物の選択率は小さく、触媒の繰り返しの 用に耐え得るといえ、製造費用の低減につ がる。また、第三級アミン(トリオクチルア ン)を添加しなかった実施例21では、触媒の り返しの使用により2-ヒドロキシテトラヒ ロフランおよびその他の高沸点化合物がや 増加していく傾向にあるが、高転化率およ 高選択率を得ることができている。
<比較例6>
特許文献4に記載の方法に準じて、ガス導入
口およびサンプリング口を備えた内容積300ml
電磁攪拌式オートクレーブに、トリフェニ
ホスフィン100g(382mmol)を添加し、120℃で加熱
溶融し、製造例1で得た粗2,5-ジヒドロフラン(
1)40g(319mmol)およびHRh(PPh 3
) 3
(CO)5g(5.4mmol)を加え、水素を導入して水素圧(
対圧)0.11MPaに加圧し、120℃にしてから、オー
トクレーブ内の圧力を維持するように水素を
供給しながら10時間反応させた。得られた混
液をガスクロマトグラフィーで分析し、そ
結果を表6に示す。
[注]
2,5DHF:2,5-ジヒドロフラン
2,3DHF:2,3-ジヒドロフラン
F:フラン
THF:テトラヒドロフラン
2HTHF:2-ヒドロキシテトラヒドロフラン
表6から分かるように、特許文献4に記載 た条件では、同様の水素圧としている本明 書の実施例4と比較すると、選択率が低く、 化率を高めた場合にはさらに選択率の低下 招いている。さらに67.5倍ものロジウム触媒 を用いているにもかかわらず、反応速度が低 い。
<実施例22>
ガス導入口およびサンプリング口を備えた
容積300mlの電磁攪拌式オートクレーブに、
素雰囲気下、Rh(acac)(CO)220.6mg(0.08mmol)、トリス
(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト500.8mg[0
.8mmol;原料中の過酸化物の反応液中における
ル濃度(0.02mmol/L以下)および反応液中におけ
ロジウム原子のモル濃度(0.4mmol/L)の合計に対
して10倍]それぞれをトルエン100mlに溶解した
、2,7-オクタジエニルメチルエーテル100mlを
気に触れないようにして仕込んだ。
次いでオートクレーブ内を水素で置換し、
素圧(絶対圧)を0.4MPaとした。オートクレー
内の温度を120℃に上げると全圧が0.5MPaとな
た。この圧力を維持するように水素を供給
ながら、1時間反応させ、得られた混合液を
スクロマトグラフィーで分析した。その結
を表7に示す。
[注]
2,7MODE:2,7-オクタジエニルメチルエーテル
1,7MODE:1,7-オクタジエニルメチルエーテル
7-OEL:7-オクテナール
他の不飽和エーテル類:7-オクテニルメチルエ
ーテル、2,6-オクタジエニルメチルエーテル
ど
飽和エーテル類:n-オクチルメチルエーテ
ル
表7から分かるように、原料のアリルエー テル系化合物として2,7-オクタジエニルメチ エーテルを使用した場合も、少量のロジウ 化合物にて高転化率および高選択率を得る とができた。
本発明によれば、医農薬原料、ポリマー 料などの原料や中間体などとして有用なビ ルエーテル系化合物、例えば2,3-ジヒドロフ ランや1,7-オクタジエニルメチルエーテルな を、工業的に有利に製造することができる