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Patent Searching and Data


Title:
METHOD OF STERILIZING POUCHED FLUID FOOD
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/022596
Kind Code:
A1
Abstract:
A flexible pouch is filled with fluid food contents at a filling ratio such that in a graph showing the relationship between sterilization time and head space gas amount wherein the axis of ordinate and the axis of abscissas represent the sterilization time and the head space gas amount, respectively, the sterilization time becomes constant without dependence upon the head space gas amount. The pouch after the filling is hermetically sealed and subjected to sliding sterilization in nonbound condition.

Inventors:
ARAKI SOJI (JP)
TAGUCHI YOSHIFUMI (JP)
TAKAI TAIZOU (JP)
HATANO YASUSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/064109
Publication Date:
February 19, 2009
Filing Date:
August 06, 2008
Export Citation:
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Assignee:
TOYO SEIKAN KAISHA LTD (JP)
ARAKI SOJI (JP)
TAGUCHI YOSHIFUMI (JP)
TAKAI TAIZOU (JP)
HATANO YASUSHI (JP)
International Classes:
A23L3/00; A23L3/14; B65B55/02; B65B55/14
Foreign References:
JPH0838131A1996-02-13
JPH061330A1994-01-11
JPH03277261A1991-12-09
JP2001231521A2001-08-28
JPS575678A1982-01-12
JPH03236753A1991-10-22
JPH0372860A1991-03-28
JPS611371A1986-01-07
JPH09221108A1997-08-26
JP2008017726A2008-01-31
JPH06339225A1994-12-06
Other References:
See also references of EP 2177116A4
"Basis and Application of Retort Foods", KABUSHIKI KAISHA, pages: 76 - 80
Attorney, Agent or Firm:
SAKAMOTO, Tohru et al. (Arakawa Building35-5, Nishishinbashi 2-chome, Minato-ku Tokyo 03, JP)
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Claims:
パウチ詰め流動性食品の殺菌方法であって、殺菌釜内温度が殺菌温度(Tr℃)に達してから、該密封済みパウチの(1)式から求められる殺菌レベル(F(Tr℃))が
 F(Tr℃)=∫ 0 T 10 (Ti―Tr)/10 dt・・・(1)
 (式中Tiは殺菌を開始してからt分後のパウチ内の最冷点での温度、dtは微小時間)
F(Tr℃)=10分に達するまでの時間を殺菌時間として、予め指標として求められる該密封済みパウチ内のヘッドスペースを0%としたときの殺菌時間(T(0%))とヘッドスペース10%としたときの殺菌時間(T(10%))とが(2)式を満たすように、摺動式殺菌における加速度、殺菌釜内の圧力、流動性食品の粘度、内容物の充填率を調整して可撓性パウチに流動性食品を充填密封し摺動式殺菌することを特徴とするパウチ詰め流動性食品の殺菌方法。
 1≦T(0%)/T(10%)≦1.2 ・・・(2)
該密封済みパウチを殺菌機内の棚に非拘束状態で載置し、該摺動式殺菌の加速度を0.1~0.3Gの範囲で該殺菌機を摺動させることを特徴とする請求項1記載のパウチ詰め流動性食品の殺菌方法。
該流動性食品の充填量を、可撓性パウチの満注内容積を100容量%としたとき、流動性食品の充填量が30~70容量%に調整することを特徴とする請求項1または2記載のパウチ詰め流動性食品の殺菌方法。
該ヘッドスペース量を該流動性食品の容積に対して0~5%に相当する範囲に調整することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のパウチ詰め流動性食品の殺菌方法。
該ヘッドスペース量を該流動性食品の容積に対して2~20%に相当する範囲に調整することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のパウチ詰め流動性食品の殺菌方法。
該流動性食品が殺菌開始温度に達したとき、B型粘度計を用いて50rpmの条件で測定または算出した粘度が0.2~4500mPa・s以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のパウチ詰め流動性食品の殺菌方法。
パウチ詰め流動食品の殺菌方法であって、該流動性食品は殺菌温度での粘度がB型粘度計を用いて50rpmの条件で測定または算出して0.2~4500mPa・sであり、該流動性食品を可撓性パウチに該パウチの満注内容積を100容量%としたとき内容量30~60容量%にして充填し密封し、摺動式殺菌することを特徴とするパウチ詰め流動性食品の殺菌方法。
該密封済みパウチを殺菌機内の棚に非拘束状態で載置し、該摺動式殺菌の加速度を0.1~0.3Gの範囲で該殺菌機を摺動させることを特徴とする請求項7記載のパウチ詰め流動性食品の殺菌方法。
該密封済みパウチ内のヘッドスペース量が、該流動性食品の容積に対して2~20%に相当することを特徴とする請求項7または8記載のパウチ詰め流動食品の殺菌方法。


                  
                  
                  
                  
Description:
パウチ詰め流動性食品の殺菌方

 本発明は、飲料等の液状食品やカレー等 粘調な流動性食品あるいは経腸栄養剤等の 動性食品を可撓性パウチに充填、密封し摺 式殺菌を行う場合の殺菌方法に関する。

背景技術
一般に容器詰め食品を殺菌する場合、殺菌時 間は容器内の最も温度が上がらない箇所であ るコールドスポット(最遅速加熱点、最冷点) 呼ばれる箇所の殺菌値(F 0 値)が必要値に達するまでの時間によって決 される。従って、内容物が受ける温度履歴 るいはF 0 値は、最も熱伝達がよい容器壁近傍では過剰 となり、容器内の各部の温度履歴の差が殺菌 時間の長時間化および内容物の品質低下の原 因となっている。昇温時間・殺菌時間・冷却 時間のトータルの殺菌時間は、容器材質と形 状、内容物の充填量とヘッドスペースガス量 、内容物の熱伝達性、粘度など、種々の因子 に依存するため、缶詰、ビン詰め、パウチ詰 めなどそれぞれについて、殺菌時間の短縮な どの生産性向上と内容物劣化防止の両面から 様々な殺菌方式が検討されてきた。

パウチ詰め流動性食品を殺菌する場合、一 般には静置式殺菌機と呼ばれる殺菌機が用い られる。しかし、パウチのヘッドスペースガ ス量が多いとガスが熱伝達を妨げるために殺 菌時間が長くなり生産効率が悪くなるので、 ヘッドスペースガスをなるべく少なくして殺 菌を行っている。また反対に、回転式殺菌に おいては、回転によってパウチ内のヘッドス ペースガスが移動して内容物を強制的に攪拌 することにより、内容物の熱伝達を促進し殺 菌時間の短縮が図られている。このため一般 に回転式殺菌における殺菌時間はヘッドスペ ースガス量に依存すると考えられており、殺 菌時間を短縮するためにヘッドスペース内の ガス量を正確に計量することが求められてい る。加えて、回転式殺菌を行う場合には回転 機構部のスペースを必要とするとともに殺菌 機内でパウチが移動することを防止するため 、治具などを用いてパウチを拘束したり専用 の載置棚を用いたりするが、この方法では載 置できる数量が少なくなり生産効率が低下し たり、専用載置棚を用いるためにコスト高と なり経済性を欠くこととなる。

 内容量1~10kg特に1~5kgの大型パウチ詰業務 調理食品を殺菌するに際しては、パウチ内 ヘッドスペースガス量のバラツキが生じ易 、目標としているガスの充填量より不足す と殺菌不足の危険性が生じ、逆にガスの充 量が多すぎると殺菌が過剰になり品質劣化 大きくなることから、パウチ内に正確に定 のガスを充填することが重要な課題となっ いる。

 しかし既存の充填機により各パウチに内 物を充填する際には、パウチの可撓性によ パウチ形状を一定に保つことが難しいため ッドスペースガス量にかなりのばらつきが じるのが現実であり、各パウチについて均 な量のヘッドスペースガスを充填すること 困難である。したがって各パウチに均一に 量のヘッドスペースガスを充填するために 特別の装置を設けるとともに、ヘッドスペ スガスが各パウチに正確に充填されたか否 について各パウチのヘッドスペース量を非 壊状態で検査するために特別な検査装置が 要になる。

 特開平9-221108号公報は、ガス充填中にパ チからのガス漏れを防止し、パウチ内に定 のガスが充填できて正確なヘッドスペース 有するパウチ詰め食品を得る装置および方 を開示している。

発明の開示
 本発明は上記従来のパウチ詰め食品の殺菌 法における問題点にかんがみなされたもの あって、パウチ詰め食品を積載した殺菌棚 前後または左右に往復運動させるパウチ食 の摺動式殺菌(特開2008-17726号公報参照)にお て、パウチ内への内容物充填時および充填 におけるヘッドスペースガス量の厳密な管 を行うことなく、また、このための既存の 填装置のみを使用して殺菌時間の短縮がで 、かつパウチ内における内容物の温度履歴 差を小さく抑え、品質低下を防止できる新 な殺菌方法を提供するものである。

 本発明者等は種々実験と研究を重ねた結 、パウチ内への流動性食品の充填率をある 囲内としてある特定の条件下で摺動式殺菌 行うと、パウチ内の流動性食品が移動して ウチが波打つ現象が生じ、ヘッドスペース ス量にほとんど依存することなく殺菌時間 短縮されてほぼ一定になることを発見し、 発明に到達した。ここで示す流動性食品の 填率とは、後述する方法で求められる可撓 パウチに充填密封可能な最大体積(満注内容 積)と実際の充填体積の割合をいう。

 本発明の上記目的を達成する第1の構成は、 パウチ詰め流動性食品の殺菌方法であって、 殺菌釜内温度が殺菌温度(Tr℃)に達してから 該密封済みパウチの(1)式から求められる殺 レベル(F(Tr℃))が
 F(Tr℃)=∫ 0 T 10 (Ti―Tr)/10 dt ・・・(1) 
 (式中Tiは殺菌を開始してからt分後のパウチ 内の最冷点での温度、dtは微小時間)
F(Tr℃)=10分に達するまでの時間を殺菌時間と て、予め指標として求められる該密封済み ウチ内のヘッドスペースを0%としたときの 菌時間(T(0%))とヘッドスペース10%としたとき 殺菌時間(T(10%))とが(2)式を満たすように、 動式殺菌における加速度、殺菌釜内の圧力 流動性食品の粘度、内容物の充填率を調整 て可撓性パウチに流動性食品を充填密封し 動式殺菌することを特徴とするものである

 1≦T(0%)/T(10%)≦1.2 ・・・(2)
そして、上記内容を好適に実現するためには 、摺動式殺菌における摺動式殺菌の加速度、 殺菌釜の釜内圧力、流動性食品の粘度、可撓 性パウチへの充填率などの要因を、一つまた は複数組み合わせてある特定の条件とするこ とにより達成することができる。

 本発明の第2の構成は、該密封済みパウチ を殺菌機内の棚に非拘束状態で載置し、該摺 動式殺菌の加速度を0.1~0.3Gの範囲で該殺菌機 摺動させることを特徴とする第1の構成のパ ウチ詰め流動性食品の殺菌方法である。

 本発明の第3の構成は、該流動性食品の充 填量を、可撓性パウチの満注内容積を100容量 %としたとき、流動性食品の充填量が30~70容量 %に調整することを特徴とする第1または第2の 構成のパウチ詰め流動性食品の殺菌方法であ る。

 本発明の第4の構成は、該ヘッドスペース 量を、該流動性食品の容積に対して0~5%に相 する範囲に調整することを特徴とする構成1~ 3のいずれかのパウチ詰め流動性食品の殺菌 法である。

 また、本願でいうヘッドスペース量のパ センテージ(%)は室温での該流動性食品の容 100%に対してのものである。

 本発明の第5の構成は、該ヘッドスペース 量を、該流動性食品の容積に対して2~20%に相 する範囲に調整することを特徴とする構成1 ~3のいずれかのパウチ詰め流動性食品の殺菌 法である。

 本発明の第6の構成は、該流動性食品が殺 菌開始温度に達したとき、B型粘度計を用い 50rpmの条件で測定または算出した粘度が0.2~45 00mPa・s以下であることを特徴とする構成1~5の いずれかのパウチ詰め流動性食品の殺菌方法 である。

 本発明の第7の構成は、パウチ詰め流動食 品の殺菌方法であって、該流動性食品は殺菌 温度での粘度がB型粘度計を用いて50rpmの条件 で測定または算出して0.2~4500mPa・sであり、該 流動性食品を可撓性パウチに該パウチの満注 内容積を100容量%としたとき内容量30~60容量% して充填し密封し、摺動式殺菌することを 徴とするパウチ詰め流動性食品の殺菌方法 ある。

 本発明の第8の構成は、該密封済みパウチ を殺菌機内の棚に非拘束状態で載置し、該摺 動式殺菌の加速度を0.1~0.3Gの範囲で該殺菌機 摺動させることを特徴とする構成7のパウチ 詰め流動性食品の殺菌方法である。

 本発明の第9の構成は、該密封済みパウチ 内のヘッドスペース量が、該流動性食品の容 積に対して2~20%に相当することを特徴とする 成7または8のパウチ詰め流動食品の殺菌方 である。

 本発明の第1の構成によれば、図9に示す うに、一定の充填率になるように充填量を 整しながら可撓性パウチに流動性食品を秤 充填し、次いでヘッドスペース量を調整し 密封し、殺菌レベルF(Tr℃)=10分に達するまで の時間を殺菌時間として、予め指標として求 められるヘッドスペースを0%としたときの殺 時間(T(0%))とヘッドスペース10%としたときの 殺菌時間(T(10%))とが1≦T(0%)/T(10%)≦1.2を満たす 条件を基にして、摺動式殺菌における加速度 、殺菌釜内の圧力、流動性食品の粘度、内容 物の充填率を調整して摺動式殺菌を行うこと により、パウチの可撓性に起因してパウチ内 の流動性食品が移動し、攪拌が十分に行われ るため、ヘッドスペースガス量が流動性食品 の容積に対して所定の範囲内においてはヘッ ドスペースガス量にほとんど依存することな く必要な殺菌時間が短縮されてほぼ一定とな り、パウチ内のどの箇所においても内容物温 度がほぼ一定となるので、パウチによってヘ ッドスペースガス量にばらつきがあっても殺 菌時間が不足する危険性がなくなる。

 本発明では、殺菌釜内温度が殺菌温度(Tr℃) に達してから、
該密封済みパウチの(1)式から求められる殺菌 レベル(F(Tr℃))が
    F(Tr℃)=∫ 0 T 10 (Ti―Tr)/10 dt      (1)
F(Tr℃)=10分に達するまでの時間を殺菌時間と て、
予め指標として求められる該密封済みパウチ 内のヘッドスペースを0%としたときの殺菌時 (T(0%))とヘッドスペース10%としたときの殺菌 時間(T(10%))とが(2)式を満たす条件を基にして 摺動式殺菌することを特徴とするパウチ詰 流動性食品の殺菌方法である。

    1 ≦ T(0%)/T(10%) ≦ 1.2    (2)

 本発明では、パウチ内への流動性食品の充 率をある範囲内としてある特定の条件下で 動式殺菌を行うと、パウチ内の流動性食品 移動してパウチが波打つ現象が生じ、ヘッ スペース量にほとんど依存することなく殺 時間が短縮されてほぼ一定になる。本発明 等は、本発明に適する条件を予め求めるた に、加熱殺菌分野で最も認知度が高く、パ ソナルコンピュータなどで殺菌中リアルタ ムに自動計算ができる(1)式が利用できるこ を種々検討を重ね認めたのである。ここで (1)式を殺菌開始時点からT分後まで積分し求 められるパウチ内のコールドスポット(最遅 加熱点、最冷点)の殺菌レベルがF(Tr℃)=10分 達するまでの時間を殺菌時間として、予め 標として求めたヘッドスペースを0%としたと きの殺菌時間(T(0%))とヘッドスペース10%とし ときの殺菌時間(T(10%))とが(2)式を満たす条件 を基にして、摺動式殺菌することにより、本 発明の目的が達成されることを意味するので ある。

 すなわち、(1)式は、Tr=121℃のとき、ボツリ ス菌に対する殺菌効果であるF 0 値を計算するための基本式となるが(株式会 幸書房発行「レトルト食品の基礎と応用」20 05年3月10日改訂第1版76頁~80頁参照)、本発明で は、(1)式は121℃といった特定の殺菌温度に限 定されるものではなく、殺菌温度Tr℃は65~135 、135℃以上といった範囲で必要に応じて適 設定できる。また、ボツリヌス菌のZ=10℃(18 ゜F)を用いたものの、特定の菌を意識したも ではなく、一般的に用いられているボツリ ス菌を対象とした式として利用しただけで る。なお、ここでZ値とは微生物の致死時間 や致死率の1/10または10倍の変化に対応する過 熱温度の変化量である。また、実際の生産時 の殺菌レベルF(Tr℃)についても、10分に限定 るものではなく、(2)式の内容を満たすよう 摺動式殺菌における加速度、殺菌釜内の圧 、流動性食品の粘度、内容物の充填率を一 または複数組み合わせて調節した条件であ ば10分より短くても長くてもよく、必要に応 じて適宜設定すればよい。殺菌釜内を加熱す るときの昇温条件についても、実際の生産条 件に応じて適宜設定できる。例えば、昇温を 同じ勾配で昇温する1段加熱方式としてもよ 、途中で勾配を変化させ昇温する1段加熱方 とすることもできる。また、内容物の旨味 機能性成分を残すために行われる2段加熱方 式をとってもよい。すなわち、釜内温度を最 終殺菌温度とするまでに、内容物の品質を落 とさないレベルの温度まで昇温し、その温度 で一定時間保持して内容物を昇温した後、そ の後最終殺菌温度まで昇温する方式をとって もよい。

 従って、本発明では、F(Tr℃)=10分に達す までの時間を殺菌時間として、予め指標と て求められるヘッドスペースを0%としたとき の殺菌時間(T(0%))とヘッドスペース10%とした きの殺菌時間(T(10%))が(2)式を満たす条件を基 にして、予め摺動式殺菌する条件を決定し、 実際の殺菌を行うことにより、本発明の課題 を解決するものである。

 本発明によれば、(2)式の内容を満たすよう 摺動式殺菌における加速度、殺菌釜内の圧 、流動性食品の粘度、内容物の充填率を一 または複数組み合わせて調節した条件で摺 式殺菌を行うことにより、内容物の攪拌を す条件となりパウチ内においてパウチ壁近 と中心部付近のコールドスポットとの温度 歴の差を小さくすることができる。また、 動式殺菌を行うことによりパウチ内での各 所での殺菌値(F 0 値)のばらつきが小さく押さえられるためにF 0 値の確認は数ヵ所でよく、先の条件から外れ る場合は数10ヵ所を測定する必要があったこ から比較して作業性が格段に向上する。更 、充填時、充填後におけるヘッドスペース ス量の厳密な管理の必要がなく、既存の設 のみを使って殺菌時間を短縮することがで 、高品質のパウチ食品を安定して生産する とができる。

 本発明はあらゆるサイズのパウチに適用 能であるが、内容量1~10kg、特に1~5kgのいわ る大型パウチ製品への適用が効果が大きく ましい。

 本発明の第2の構成によれば、該密封済み パウチを殺菌機内の棚に非拘束状態で載置し 、該摺動式殺菌の加速度を0.1~0.3Gの範囲で該 菌機を摺動させることにより、該流動性食 が充分に攪拌される一方、摺動による殺菌 上でのパウチの移動が抑えられるため、パ チ拘束治具や専用の載置棚を用いる必要が く、治具を用いることによって起こる生産 率の低下や、専用載置棚にかかるコストを えることができる。なお、水平方向への摺 は、クランクなどを用いた公知の方法を用 ることができる。

  本発明の第3の構成によれば、該流動性 品の充填量を、可撓性パウチの満注内容積 100容量%としたとき、流動性食品の充填量を 30~70容量%に調整することにより、摺動殺菌中 にパウチの可撓性に起因してパウチ内の流動 性食品が移動してパウチの波打ちが起こり、 流動性食品の攪拌が十分に行われるため、ヘ ッドスペースガス量にほとんど依存すること なく必要な殺菌時間が短縮されてほぼ一定と なり、パウチ内のどの箇所においても内容物 温度がほぼ一定となるので、パウチによって ヘッドスペースガス量にばらつきがあっても 殺菌時間が不足する危険性がなくなる。また その他の効果においても第1の構成と同様の 果を奏することができる。

  本発明の第4の構成によれば、該ヘッド ペース量を、該流動性食品の容積に対して0 ~5%に相当する範囲に調整することにより、こ の範囲内においては必要な殺菌時間が静置式 殺菌やヘッドスペース量が少ない場合には回 転式殺菌に比べても顕著に短縮され、さらに 必要な殺菌時間がヘッドスペース量によらず ほぼ一定となり、パウチ内のどの箇所におい ても内容物温度がほぼ一定となる効果を確実 に奏することができる。

  本発明の第5の構成によれば、該ヘッド ペース量を該流動性食品の容積に対して2~20 %に相当する範囲に調整することにより、こ 範囲内においてはヘッドスペースガス量に 存することなく必要な殺菌時間が静置式殺 に比べて短縮されてほぼ一定となり、パウ 内のどの箇所においても内容物温度がほぼ 定となる効果を確実に奏することができる

本発明の第6の構成によれば、該流動性食 が殺菌開始温度に達したとき、B型粘度計を いて50rpmの条件で測定または算出した粘度 0.2~4500mPa・s以下であることにより、ヘッド ペースガス量が流動性食品の容積に対して 定の範囲内であればヘッドスペースガス量 ほとんど依存することなく必要な殺菌時間 短縮されてほぼ一定となり、パウチ内のど 箇所においても内容物温度がほぼ一定とな ので、パウチによってヘッドスペースガス にばらつきがあっても殺菌時間が不足する 険性がなくなる。

 本発明の第7の構成によれば、該流動性食 品は殺菌温度での粘度がB型粘度計を用いて50 rpmの条件で測定または算出して0.2~4500mPa・sで あり、該流動性食品を可撓性パウチに該パウ チの満注内容積を100容量%としたとき内容量30 ~60容量%にして充填し密封し、摺動式殺菌す ことによって、パウチの可撓性に起因して ウチ内の流動性食品が移動して外観上パウ の波打ちが起こり、流動性食品の攪拌が十 に行われるため、必要な殺菌時間が短縮さ る。また、流動性食品の粘度や充填率など もよるが、例えば、流動性食品の粘度や充 率が低い場合には、ヘッドスペースガス量 ほとんど依存することなく殺菌時間が短縮 れてほぼ一定となり、パウチ内のどの箇所 おいても内容物温度がほぼ一定となるので パウチによってヘッドスペースガス量にば つきがあっても殺菌時間が不足する危険性 なくなる。

 本発明の第8の構成によれば、第7の構成 おいて、該密封済みパウチを殺菌機内の棚 非拘束状態で載置し、該摺動式殺菌の加速 を0.1~0.3Gの範囲で該殺菌機を摺動させること により、第2の構成の効果を合わせ奏するこ ができる。

 本発明の第9の構成によれば、第7の構成 おいて、該密封済みパウチ内のヘッドスペ ス量が、該流動性食品の容積に対して2~20%に 相当することにより、第5の構成の効果を合 せ奏することができる。

は、本発明の方法を実施するための装 の1例を示す断面図である。 は、実施例1における内容物の温度の測 定箇所10点の位置である。 は、実施例1における内容物の温度変化 とレトルト釜内温度の変化である。 は、比較例1における内容物の温度の測 定箇所12点の位置である。 は、比較例1における内容物の温度変化 とレトルト釜内温度の変化である。 は、摺動式レトルト殺菌における充填 と殺菌時間の関係を示すグラフである。 は、摺動式レトルト殺菌における充填 と殺菌時間の関係を示すグラフである。 は、各種流動性食品の粘度と殺菌時間 関係を静置式殺菌と摺動式殺菌を対比して すグラフである。 は、殺菌温度に達するまでの時間とヘ ドスペース量の関係を示すグラフである。 は、図6のヘッドスペース量0~5%の範囲 拡大したグラフである。 は、図6のヘッドスペース量2~10%の範囲 を拡大したグラフである。

発明を実施するための最良の形態
 以下添付図面を参照して本発明の実施形態 ついて説明する。 
 本発明の殺菌方法は可撓性材料からなるパ チ、内容量1~10kg特に1~5kgの大型パウチに流 性食品を充填し密封して摺動式殺菌を行う 合に好適である。

パウチとしては可撓性の材料からなるもの であれば特に限定はないが、通常大型パウチ として使用される外層側からPET(ポリエチレ テレフタレート)層、ナイロン層、アルミ箔 、ポリプロピレン層からなる4層構成のパウ チが適用される。また、パウチ形態としては 、平パウチやスタンディングパウチ、または 異形パウチなどが適用できる。

 流動性食品としては、飲料等の低・中・ 粘度の液状食品、カレー、ポタージュスー 等の肉や野菜などの具材を含む粘調な流動 食品、おかゆなどの粒子状固形物を含む粘 な流動性食品等を含む。摺動式レトルトに いて上記の効果を収めるには、摺動条件や 菌条件を一定とした場合、殺菌温度に達す までに粘度がどこまで下がっているかが重 である。殺菌温度に達したときの粘度が50rp mの条件で測定または算出した粘度で4500mPa・s 以下の範囲内にある流動性食品の場合は、充 填量をパウチの満注内容積に対して室温付近 で測定して30~70容量%にすれば、ヘッドスペー ス量が室温での流動性食品の容積に対して2~2 0%に相当する範囲内でヘッドスペース量の変 にほとんど依存することなく殺菌時間を一 にすることができることがわかった。なお 充填率が60~70容量%の場合は、2容量%未満の ッドスペースガスにおいて殺菌時間の変動 比較的に大きく、殺菌時間を一定にするこ が困難である場合が認められた。

 殺菌温度に達したときの粘度が50rpmの条 で測定または算出した粘度で4500mPa・sを超え ると内容物の粘度が高すぎて摺動式殺菌の際 の波打ちが弱く、内容物攪拌効果が充分に得 られないため殺菌時間短縮効果が少ない。

本発明に好適に用いられる流動性食品の粘 度としては、殺菌温度に達したとき、B型粘 計を用いて50rpmの条件で測定または算出した 粘度が、4500mPa・s以下が好ましく、2500mPa・s 下がより好ましく、1500mPa・s以下が殺菌時間 短縮の効果が大きくさらに好ましい。また、 内容物の粘度が非常に低い場合には内容物が 熱対流を生じるため摺動式殺菌の静置式殺菌 に対する殺菌時間の短時間化という面では効 果は少ないことから、下限は、0.2mPa・s以上 好ましく、10mPa・s以上がより好ましい。な 、粉体食品や固体食品は摺動による攪拌効 が期待できないので本発明の殺菌方法を適 するには不適な場合があるが、カレーなど ように、流動性食品の一部に固形食品が含 れていても問題はない。

 ヘッドスペースガス量の変動に大きく依存 ず所定のF 0 値を得るための殺菌時間が一定となる充填率 は、パウチの剛性、内容物の粘度、殺菌温度 、摺動条件(加速度、回数、摺動ストローク) により異なるが、実験の結果、上記のとお 、充填率が30~70容量%の範囲内では、ヘッド ペースガス量が変動しても従来に比べて大 に殺菌時間が短縮できることがわかった。

 パウチに内容物を充填密封した際に形成 れるヘッドスペースは大気であってもよく 内容物の酸化劣化を防止する場合には、例 ば、窒素ガスの他、炭酸ガスやアルゴンガ またはこれらの混合ガスを用いて適宜ガス 換充填することができる。このヘッドスペ スガス量は、内容物充填量の20%以下、望ま くは10%以下に設定されることが一般的であ 。ヘッドスペースガス量が20%を越えると、 ス置換を行ったとしても内容物に対する酸 の影響が無視出来ないレベルになる。また 充填殺菌後の製品を詰める際に大きなカー ンが必要になり、積載効率が低下して経済 を欠くこととなる。

 摺動式殺菌を行う装置としては、従来か 使用されているクランク式または偏心カム の摺動式レトルト装置を使用することがで る。

 図1は本発明の方法を実施するための装置 の一例を示す断面図であり、クランク方式に よる殺菌棚摺動機構を示す。A1はレトルト本 、A2はレール等の支持台である。この支持 A2の上には車輪A3を介して可動台A4が装架さ 、この可動台A4上に流動性食品詰めパウチを 多数並べて収容した殺菌棚(トレー)A5が多段 積載されている。A6は覗き窓であり、レトル ト本体A1に装備されている。A10はモーター、A 11はモーターA10で駆動されるクランク機構で り、クランク機構A11の他端はレトルト本体A 1のシール機構A9を介して可動棚A4から突出さ た駆動軸A8に連結されている。

 駆動時にモーターA10を駆動すればクラン 機構A11によって可動台A4が摺動し往復運動 ることにより、殺菌棚に収容されたパウチ の流動性食品が移動して波打ち、攪拌が行 れる。この流動性食品詰めパウチの波打ち 象は、覗き窓A6から目視で確認することが出 来る。

 摺動式レトルトは加速度が攪拌効果の要 の1つである。しかし、その加速度にも包材 の耐久性や実生産を考慮すれば適正な範囲が あると考えられた。

 そのため、適正な加速度を導きだすため 下の条件にて実験を行った。

ラミネート構成:外層側からPET、ナイロン、 ルミ箔、ポリプロピレン 4層構成
パウチサイズ:240mm×350mm×65mm(横×縦×折込み幅 )
内容物:トマトソース(市販業務用トマトソー 大型パウチ入りをリパック、粘度40℃-1040mPa ・s、60℃-880mPa・s、80℃-724mPa・s)
充填量:2kg(充填率45%)
内容物温度:内容物を40℃でパウチ容器に充填 し、試験に供する。

上記条件のパウチ製品において、ストローク と回転数を変化させることにより加速度(G)を 変動させ(表1参照)、その加速度による包材の 波打ちの度合いおよび包材の整列乱れを観察 した。観察した結果を表2に示す。

×:加速度が弱く、『容器の波打ちもごく僅か であった』または『撹拌効果が見られない』
◎:加速度が適正で、『容器の波打ちが適当 起こり』または『撹拌効果がありながら』 包材が大きく動くことがない
○:加速度が強く、『容器の波打ちが大きく こり』または『大きな撹拌効果が期待でき 』が、製品によっては包材の整列乱れを生 る
△:加速度が大変強く、包材の整列乱れおよ ダメージを伴う
 実験の結果、加速度が0.1G未満では容器の波 打ちが極僅かであり、十分な攪拌効果を得ら れないと判断された。(もしくは、温度測定 行った結果、効果を得られなかった。)
また、そのまま加速度を上げていくと、包材 の波打ちは大きくなり、比例して内容物の攪 拌効果が得られた。しかし、加速度が0.3Gを えると包材が殺菌棚上を大きく動き、整列 れを起こす、または包材と殺菌棚との摩擦 ら擦り傷の発生、包材の屈曲によるアルミ 層のクラック(擬似ピンホール)の発生が起こ ることが判った。

 したがって、十分な攪拌効果が発揮され しかも製品の種類を問わず包材の乱れや擦 傷を生じるおそれのない加速度の範囲は0.1G ~0.3Gである。

 次に充填率とヘッドスペースガス量およ 殺菌時間短縮効果との関係を検証するため 下の実験方法で実験を行った。

 殺菌方式   摺動式熱水シャワーレトルト 式
 摺動方式     クランク方式
 摺動速度     60回/分
 ストローク    75mm
 加速度      0.18G
 摺動パターン   連続摺動
 摺動方向:水平
パウチ積載方向:パウチ長手方向を摺動方向 同一方向とした
 殺菌条件     121℃-0.23MPa(温度・圧力)
 昇温時間設定(室温→殺菌温度)   12分
 冷却時間設定(殺菌温度→30℃)  12分
 終了温度     30℃
 内容物      カレー(市販業務用カレー大 型パウチ詰めをリパック、粘度40℃-3230mPa・s 60℃-2300mPa・s、80℃-1800mPa・s)
      * 粘度計はB型粘度計を用いて50rpmの 条件で測定。

        殺菌温度121℃での粘度は1120mPa sと推定される(後述の説明を参照)。

 ラミネート構成:外側から PET、ナイロン、 ルミ箔、ポリプロピレン 4層構成
 パウチサイズ   240mm×350mm×65mm(横×縦×折 み幅)
  また満注内容積と充填率は次の方法によ 決定した。

(1)満注内容積
 パウチ容器に内容物の充填を行うとき、容 をインパルスシーラーなどによって密封(シ ール)が可能である最大の内容積を満注内容 とした。

(2) 充填率の測定方法(スタンディングパウチ の場合)
イ.パウチ風袋の重さを計量し、記録してお た。

ロ.パウチのトップシール部を2cm程度残し シールした。

ハ.パウチを自立させた状態でトップシー 部の残した部分から、パウチに20℃±5℃の水 を溢れるまで充填した。

ニ.残した部分の端を折り込み、水を噛み みながらシールした。

ホ.充填後のパウチ全体の重量を計量し、 の重量から風袋重量を差し引き、その容器 満注内容積とした。

なお、平パウチは自立しないため、トップ シールの端部を保持してぶら下げた状態でハ と同様にして水充填し、測定する。

 パウチにカレーを2kg充填(充填率45%)、ヘッ スペース量5.0%
(約100ml)として、先に示した殺菌条件で摺動 レトルト殺菌し、コールドスポットとなる 能性のある10箇所(図2)について内容物の温度 変化を測定した。そして、最もF 0 値が上がらなかった箇所のF 0 値が10となった時点で冷却工程に入った。測 された内容物の温度変化とレトルト釜内温 の変化を図3に示した。

  摺動式殺菌においては、殺菌棚の往復 動により、殺菌棚に載置されたパウチ内の 動性食品が移動してパウチが波打つ現象が じ、このパウチの波打ちによって流動性食 内容物が攪拌されて殺菌が均一に行われる のであるが、従来の温度測定治具(特公昭63-3 9225号公報参照)を使用する場合は、殺菌棚に 置きしたパウチの上下両面が治具により拘 されるため、摺動によるパウチの波打ちが 束され、波打ちによる内容物の攪拌効果が 殺されてしまうという問題が生じる。その め、本実施例では、殺菌棚に横置きしたパ チ上面の動きを温度測定治具により拘束し いようにして内容物の温度を測定した。

 実施例1では、図3に示されるように、内 物の移動に伴いパウチが波打ち、そのとき 内容物の攪拌効果によって、容器内の各箇 が万遍なく同じように温度変化している。 らに、温度が110℃を超えると、内容物の粘 も下がり、攪拌効果が向上し、各品温が収 していくことが分かる。

比較例1

 パウチにカレーを3kg充填(充填率70%)とした は、実施例1と同様に、先に示した殺菌条件 摺動式レトルト殺菌を行った。なお、内容 の温度測定はコールドスポットとなる可能 のある12箇所(図4)について測定した。また 実施例1と同様に、最もF 0 値が上がらなかった箇所のF 0 値が10となった時点で冷却工程に入った。測 された内容物の温度変化とレトルト釜内温 の変化を図5に示した。

 比較例1では、図5に示されるように、昇 過程での容器内の各箇所の温度変化が大き ばらついている。また、詳細に見ると各箇 の温度は大きく上下しており、コールドス ットの位置が容器内で動いていることが推 される。そのため、温度が110℃を超えても 品温の収束はあまりよくないことが分かる

 実施例1と比較例1について、殺菌が終わっ 時点での各測定点の最終F 0 値を表3に示した。

 実施例1ではF 0 値の最大値と最小値の差(レンジ)は1.5とバラ キはほとんどなく、良好な結果を示した。 方、比較例1ではレンジは21.7とバラツキは きく、F 0 値が最も大きいところでは33.1という値を示 た。

 一般に、F 0 値は内容物の温度がおよそ110℃以上で値が高 くなり、殺菌状態に入ったことを意味する。 図3に見られるように、実施例1では測定した 部の温度は、110℃以上となったときには、 の測定点もほぼ同じような値に収束してお 、静置式レトルトと同様に、温度測定のみ 最冷点のF 0 値を評価できる。しかし、図5に見られるよ に、比較例1では、測定した各部の温度が110 以上となっても、なお収束が悪く、かつ温 が上下しており、最冷点のF 0 値を把握することが難しい。従って、温度測 定のみでは最冷点でのF 0 値を評価できてないと考えられる。そこで、 図5において各部の温度で最も低い値を示し ところをなめらかな曲線でたどり、それを 冷点での温度変化として、F 0 値を推定すると、必要なF 0 値にはほとんど達しておらず、殺菌時間を更 に伸ばす必要がある。比較例1において、必 な殺菌時間はこの方式で85分程度と推定され た。

 前記実施例1、比較例1の結果を踏まえ、 適充填量及びヘッドスペースガス量と殺菌 間の関係を検証するため、供試パウチに対 て各充填率によって充填量及びヘッドスペ スガス量を変化させて摺動式・静置式によ レトルト殺菌を行い、殺菌時間の比較を行 た。ここでいう各充填率とは、供試パウチ 満注内容積を100容量%とした時の各容量%であ る。

 前記実施例1と同様に供試パウチにカレーを 充填率30%相当の1305ml充填し、ヘッドスペース ガス量を0%(0ml),7.7%(100ml),15.3%(200ml)に調節した ンプルを、前記実施例1と同様の殺菌条件で 摺動式レトルト殺菌を行った。ヘッドスペー スガス量と殺菌時間の関係を求めた結果を図 6に示す。図中の殺菌時間とは、前記実施例1 同様に数点の内容物温度測定で最も低い値 最冷点での温度変化とし、最冷点がF 0 =10に達するまでの殺菌時間とした。図6より T(0%)/T(10%)=1.06として求められた。

 前記実施例1と同様に供試パウチにカレー を充填率40%相当の1740ml充填し、ヘッドスペー スガス量を0%(0ml),5.7%(100ml),11.5%(200ml)に調節し サンプルを、前記実施例1と同様の殺菌条件 で摺動式レトルト殺菌を行った。結果を図6 示す。図6より、T(0%)/T(10%)=1.06として求めら た。

 前記実施例1と同様に供試パウチにカレー を充填率50%相当の2175ml充填し、ヘッドスペー スガス量を0%(0ml),4.6%(100ml),9.2%(200ml),13.8%(300ml) 調節したサンプルを、前記実施例1と同様の 殺菌条件で摺動式レトルト殺菌を行った。結 果を図6に示す。図6より、T(0%)/T(10%)=1.11とし 求められた。

実験例1

 前記実施例1と同様に供試パウチにカレー を充填率60%相当の2610ml充填し、ヘッドスペー スガス量を0%(0ml),3.8%(100ml),7.7%(200ml),11.5%(300ml) 調節したサンプルを、前記実施例1と同様の 殺菌条件で摺動式レトルト殺菌を行った。結 果を図6に示す。図6より、T(0%)/T(10%)=1.32とし 求められた。このように実験例1ではT(0%)/T(10 %)≧1.2となったが、後述するようにヘッドス ース量が2~20%の範囲であるならば、ヘッド ペース量のバラツキがあっても殺菌時間を じにすることができるという効果が認めら る。

比較例2

 前記実施例1と同様に供試パウチにカレー を充填率70%相当の3000ml充填し、ヘッドスペー スガス量を0%(0ml),3.3%(100ml),6.7%(200ml),10%(300ml)に 調節したサンプルを、前記実施例1と同様の 菌条件で摺動式レトルト殺菌を行った。結 を図6に示す。図6より、T(0%)/T(10%)=1.41として められた。

比較例3,4

 前記実施例1と同様に供試パウチにカレー を充填率70%相当の3000ml充填し、ヘッドスペー スガス量を0%(0ml),1.7%(50ml),3.3%(100ml),6.7%(200ml),10 %(300ml)に調節したサンプルを、実施例1と同様 の殺菌条件で静置式レトルト殺菌(比較例3)お よび回転式レトルト殺菌(比較例4)を行った。 結果を図6に示す。

 図6において、充填率70容量%パウチの摺動式 殺菌時間は、同一充填率パウチの静置式殺菌 時間と比べると殺菌時間短縮効果が見られる 。その時間短縮効果は、ヘッドスペース量が 0~5%の範囲においてはヘッドスペースガス量 多少依存する傾向が見られるものの、ヘッ スペースガス量が5~20%の範囲においてはヘッ ドスペースガス量に依存しておらず、ヘッド スペースの違いによる殺菌時間の変動幅は20% 以内であることがわかる。実施例1~4のように 、充填率が30~50容量%のものは、ヘッドスペー ス量に依存することなく殺菌時間の短縮効果 が見られるため内容物の品質上優れたものと なり、特に好ましい。また、前記充填量にお いては殺菌時間の変動幅が20%以内(1≦T(0%)/T(10 %)≦1.2)となり、ヘッドスペースガス量の管理 のために特別な装置を設ける必要がない。ま た、実験例1のように、50容量%を越え60容量% 内の場合は、内容物充填量の2~20%に相当する 範囲のヘッドスペース量の場合には殺菌時間 の変動幅が20%以下になっているため、ヘッド スペース量の調整をほとんどすることなく、 殺菌時間が一定となる。1≦T(0%)/T(10%)≦1.35の 件を満たしていた。また、1≦T(0%)/T(10%)≦1.2 の条件を満たす充填量30~50容量%の場合は、1 の測定箇所での温度変化が小さく数箇所の 度測定でF 0 値を容易に求めることができるため、熱電対 管理の負担も軽減することができる。なお、 図6ではヘッドスペースガス量を流動性食品 容積に対して0~約15%の範囲内におけるF 0 =10までの殺菌時間を示したが、ヘッドスペー スガス量が10%~20%の範囲においても、10%近傍 値とほぼ変わらずに推移した。

 図10は、図6のヘッドスペース量0~5%の範囲 を拡大したものである。パウチ詰め食品にお いては、内容物の酸化劣化の防止や積載効率 を向上させることなどを目的に、ヘッドスペ ースガス量は少なくする方向で設定するのが 望ましい。本発明の第4の構成の殺菌方法に れば、ヘッドスペースガス量を僅かな量に た場合においても、殺菌時間を短縮するこ ができる。

 図11は、図6のヘッドスペース量2~10%の範 を拡大したものである。パウチ製品の充填 場合、ヘッドスペースを0mlに調整するため は内容物をシール部に噛み込みながらシー する必要があり、実生産では、シールの安 性からそのような方法の適用が困難となる 合がある。図11で明らかなようにヘッドスペ ース量が2~20%好ましくは2~10%の範囲内であれ 、ヘッドスペース量にバラツキがあっても 菌時間を同じにすることができる。そのた 、本発明の第5の構成の殺菌方法によれば、 少のヘッドスペースを設けつつ、特にヘッ スペース量の調整を厳しく行わずに通常の 填装置で充填したパウチ製品であっても殺 時間の短時間化を図ることができる。

 充填率が30%未満のものおいては、パウチ 対する内容積が少なすぎるために製品形態 外観上問題があることから商品価値が損な れるか、または充填量が低すぎてコストパ ォーマンスが悪く、製品として成り立たな 。また、パウチの厚みが非常に薄くなるた に静置式殺菌においても殺菌時間が短くな 、摺動式殺菌の殺菌時間短縮効果があまり 待されない。

 ここまで240mm×350mm×65mmサイズのパウチでの 験結果をもとに説明してきたが、本発明の 果は、他サイズたとえば内容量1~5kg程度が 填できる大型パウチ詰め業務用調理食品を 菌する際においても有効である。またF 0 値を10以外の食品殺菌に適用される範囲での に変更した場合においても、同様の効果が られた。実施例2~4、実験例1においては、パ ウチサイズを一定にして内容量を変動させる 実験から、殺菌時間がヘッドスペースガス量 に依存することなくほぼ一定であり殺菌時間 短縮の効果が得られる充填率として30~60容量% という値を得たが、実際のパウチの製品化の 際は先に内容量が決まっている場合も多い。 その場合は、本発明の構成や作用効果を逸脱 しない範囲で内容量から適正なパウチサイズ を導き出して対応すればよい。更に、実施例 ではレトルト殺菌中連続的に摺動をさせてい たが、本発明の効果が得られる範囲であれば 間欠的に摺動させても良いし、内容物の粘度 変化に併せて途中で摺動回数を可変しても良 い。また、殺菌中の釜内圧力は、実施例1~4、 実験例1では殺菌前のヘッドスペース量から 化しないように一定の圧力に設定したが、 生産においては、より望ましいヘッドスペ ス量になるように釜内圧力を適宜一定ない 変動させて調整することができる。レトル 殺菌中のレトルト釜内の圧力はゲージ圧で-0 .07MPaから+1.0MPaの範囲内で、特に0MPaから+0.5MPa の範囲が好ましい。この圧力が0MPa未満であ と、バキューム装置を必要とし、+0.5Mpaを超 ると安全性を確保するために装置コストが くなる。

 次に、内容物を代えて実験した。前記実 例1と同一の供試パウチに麻婆豆腐の素を充 填率70%で充填し、ヘッドスペースガス量を0% 6.7%、10%に調節したサンプルを、前記実施例 1と同様の殺菌条件で摺動式レトルト殺菌し 。結果を図7に示す。図7より、T(0%)/T(10%)=1.14 して求められた。

供試内容物:麻婆豆腐の素(市販業務用麻婆豆 の素大型パウチ入りをリパック、粘度40℃-1 500mPa・s、60℃-1210mPa・s、80℃-1010mPa・s)
* 粘度計はB型粘度計を用いて50rpmの条件で測 定。

殺菌温度121℃での粘度は670mPa・sと推定さ る(後述の説明参照)。

比較例5

 実施例5と同様に供試パウチに麻婆豆腐の 素を充填率45%で充填し、ヘッドスペースガス 量を0%、5%、10%に調節したサンプルを、実施 75と同様の殺菌条件で静置式レトルト殺菌し た。結果を図7に示す。

比較例6

 実施例5と同様に供試パウチに麻婆豆腐の 素を充填率70%で充填し、ヘッドスペースガス 量を0%、1.7%、3.3%、6.7%、10%に調節したサンプ を、実施例5と同様の殺菌条件で静置式レト ルト殺菌した。結果を図7に示す。

  図7において、充填率70%パウチの摺動式 菌の殺菌時間は、同一充填率パウチおよび4 5%充填率パウチの静置式殺菌の殺菌時間に比 て殺菌時間短縮効果が見られる。その殺菌 間は、ヘッドスペース量が0%~10%の全範囲に いてヘッドスペース量に依存せずほぼ一定 ある。またヘッドスペースの違いによる殺 時間の変動幅は20%以内(1≦T(0%)/T(10%)≦1.2)で る。内容物がカレーの場合は充填率70%では ヘッドスペース量によって多少殺菌時間の いが見られたが、麻婆豆腐の素の場合は充 率70%でもほぼ一定であった。この違いは、 菌温度における内容物の粘度が影響してい ものと考えている。

 次に種々の流動性食品について、前期実施 1と同様に供試パウチに各種内容物を充填率 45%で充填し、ヘッドスペースガス量を0mlに調 節し殺菌を行い、各食品の粘度と殺菌時間短 縮効果の関係について摺動式殺菌と静置式殺 菌を比較した。結果を表4、表5および図8に示 す。図8において、横軸は食品名と121℃にお る粘度を示し、縦軸はF 0 =10までの殺菌時間と静置式殺菌に対する摺動 式殺菌の殺菌時間短縮率を示す。なお、本実 施例のように殺菌温度が100℃を超えており、 殺菌中の内容物粘度を測定することが困難な 場合、andradeの粘度式(η∝exp(E/RT)、η:粘性率 E:流動の活性化エネルギー、R:気体定数、T: 対温度(°K))を用いて殺菌中の内容物の粘度 算出した。

粘度は100℃以下の少なくとも2点以上の温度 B型粘度計を用いて50rpmの条件で測定し、計 により推定したものである。本実施例では 40℃、60℃、80℃の該条件での測定結果から 121℃の粘度を計算により算出し推定した。



            
 以上の結果から、最も粘度の高いホワイト ースでは静置式殺菌に対する摺動式殺菌の 菌時間短縮効果がほとんどないが、次に粘 の高いコーンスープの1.1倍希釈のものでは 20%の殺菌時間短縮効果が見られた。そして 1.3倍希釈のものは殺菌時間短縮効果が顕著 なり、1.5倍希釈ものではさらにこの効果が 大することがわかる。一方、内容物が水の 合は、粘度が低く静置式殺菌でも殺菌時間 短くて済み、摺動式殺菌の殺菌時間短縮効 は少なかった。このことから摺動式殺菌に る殺菌時間短縮効果は、殺菌時間開始温度 達したときの流動性食品の殺菌時の粘度が4 500mPa・s以下が好ましく、2500mPa・s以下がより 好ましく、さらには1500mPa・s以下が特に好ま い。また下限は、0.2mPa・s以上が好ましく、 10mPa・s以上がより好ましいことがわかる。

 なお、以上の実施例、実験例および比較例 は、最冷点でのF 0 値が10分となった時点で冷却工程に入るよう したが、実際に本発明を実施するに当たっ は10分より短くても長くてよく、内容物毎 必要な殺菌価となるまでの時間とするとよ 。