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Patent Searching and Data


Title:
MICROORGANISM DETECTION METHOD AND MICROORGANISM DETECTION KIT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/022558
Kind Code:
A1
Abstract:
A living cell of a microorganism in a sample can be detected by the following steps a) to h): a): adding a crosslinking agent to the sample, wherein the crosslinking agent is capable of crosslinking DNA upon being irradiated with light having a wavelength of 350 to 700 nm; b) irradiating the sample containing the crosslinking agent with light having a wavelength of 350 to 700 nm; c) removing the crosslinking agent from the light-irradiated sample; d) adding a culture medium to the sample from which the crosslinking agent has been removed, and incubating the mixture; e) adding a crosslinking agent to the incubated sample, wherein the crosslinking agent is capable of crosslinking DNA upon being irradiated with light having a wavelength of 350 to 700 nm; f) irradiating the sample containing the crosslinking agent with light having a wavelength of 350 to 700 nm; g) extracting DNA from the sample, and amplifying a target region in the extracted DNA by a nucleic acid amplification method; and h) analyzing an amplification product.

Inventors:
YOSHIDA SHINICHI (JP)
SOEJIMA TAKASHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/063865
Publication Date:
February 19, 2009
Filing Date:
August 01, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV KYUSHU (JP)
MORINAGA MILK INDUSTRY CO LTD (JP)
YOSHIDA SHINICHI (JP)
SOEJIMA TAKASHI (JP)
International Classes:
C12Q1/68; C12N15/09
Domestic Patent References:
WO2002052034A12002-07-04
Foreign References:
JP2003530118A2003-10-14
JP2003530118A2003-10-14
Other References:
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RUDI K. ET AL.: "Development and application of new nucleic acid-based technologies for microbial community analyses in foods.", INTERNATIONAL JOURNAL OF FOOD MICROBIOLOGY, vol. 78, 2002, pages 171 - 180, XP008107479
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See also references of EP 2077334A4
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TSUGUNORI NOTOMI; TORU NAGATANI, BIO INDUSTRY, vol. 18, no. 2, 2001, pages 15 - 23
ARCH. PATHOL. LAB. MED., vol. 124, 2000, pages 1649 - 1652
BARANY, F.: "Ligase Chain Reaction", PROC. NATL. ACAD. SCI. USA, vol. 88, 1991, pages 189 - 193
RICHARD P. SPENCE ET AL., J. CLIN. MICROBIOL., vol. 46, no. 5, 2008, pages 1620 - 1627
MANIATIS T.; FRITSCH E.F.; SAMBROOK, J.: "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", 2001, COLD SPRING HARBOR LABORATORY PRESS
NOGVA ET AL.: "Application of 5'-nuclease PCR for quantitative detection of Listeria monocytogenes in pure cultures, water, skim milk, and unpasteurized whole milk", APPL. ENVIRON. MICROBIOL., vol. 66, 2000, pages 4266 - 4271, XP002242217, DOI: doi:10.1128/AEM.66.10.4266-4271.2000
NOGVA ET AL.: "Application of the 5' -nuclease PCR assay in evaluation and development of methods for quantitative detection of campylobacter jejuni", APPL. ENVIRON. MICROBIOL., vol. 66, 2000, pages 4029 - 4036, XP002194991, DOI: doi:10.1128/AEM.66.9.4029-4036.2000
Attorney, Agent or Firm:
KAWAGUCHI, Yoshiyuki et al. (4-10 Higashi Nihonbashi 3-chome, Chuo-k, Tokyo 04, JP)
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Claims:
 被検試料中の微生物の生菌を検出するための方法であって、以下の工程を含む方法:
a)前記被検試料に、350nm~700nmの波長の光照射によりDNAを架橋する架橋剤を添加する工程、
b)架橋剤を添加した被検試料に350nm~700nmの波長の光照射処理を行う工程、
c)光照射処理した被検試料に含まれる架橋剤を除去する工程、
d)架橋剤を除去した被検試料に培地を添加して保温する工程、
e)保温した被検試料に再び350nm~700nmの波長の光照射によりDNAを架橋する架橋剤を添加する工程、
f)架橋剤を添加した被検試料に350nm~700nmの波長の光照射処理を行う工程、
g)前記被検試料からDNAを抽出し、抽出されたDNAのターゲット領域を核酸増幅法により増幅する工程、及び
h)増幅産物を解析する工程。
 前記増幅産物の解析を、微生物の標準試料を用いて作成された微生物量及び増幅産物との関連を示す標準曲線を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
 前記核酸増幅法が、PCR法、LAMP法、SDA法、LCR法、又はDNAマイクロアレイ法である請求項1又は2に記載の方法。
 前記PCR法をリアルタイムPCR法により行い、PCRと増幅産物の解析を同時に行うことを特徴とする請求項3に記載の方法。
 前記被検試料が、食品、血液試料、尿試料、髄液試料、滑液試料、胸水試料、工業用水、市水、地下水、河川水又は雨水のいずれかである請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
 前記架橋剤が、エチジウムモノアザイド(ethidium monoazide)、エチジウムジアジド(ethidium diazide)、プソラーレン(psolaren)、4,5',8-トリメチルプソラーレン(4,5',8-trimethyl psolaren)、及び8-メトキシプソラーレン(8-methoxy psolaren)から選択される請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
 前記ターゲット領域が50~5000塩基の領域である請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
 前記微生物が病原性細菌である請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
 前記ターゲット領域が病原遺伝子である請求項8に記載の方法。
 被検試料中の微生物の生菌を核酸増幅法により検出するためのキットであって、下記の要素を含むキット:
 350nm~700nmの波長の光照射によりDNAを架橋する架橋剤、培地、及び
 検出対象の微生物DNAのターゲット領域を核酸増幅法により増幅するためのプライマー。
 前記核酸増幅法が、PCR法、LAMP法、SDA法、LCR法、又はDNAマイクロアレイ法である請求項10に記載のキット。
 前記架橋剤が、エチジウムモノアザイド(ethidium monoazide)、エチジウムジアジド(ethidium diazide)、プソラーレン(psolaren)、4,5',8-トリメチルプソラーレン(4,5',8-trimethyl psolaren)、及び8-メトキシプソラーレン(8-methoxy psolaren)から選択される請求項10又は11に記載のキット。
Description:
微生物検出法及び微生物検出キ ト

 本発明は、食品や生体試料中に含まれる 生物、工業用水や市水等の環境中に含まれ 微生物の検出法、及び微生物検出キットに する。さらに詳しくは、食品や生体試料、 業用水や市水等の環境中に含まれる微生物 生菌の選択的な検出が可能な検出法及び微 物検出キットに関する。

 食品や生体試料、又は環境中の一般生菌 の測定には、従来、平板培養法が用いられ きた。しかし、平板培養法は結果が得られ までに2日間程度の時間を要する。

 食品の殺菌技術や加工技術が向上したこ により、微量であっても被検試料中に存在 る微生物の生死の状態を識別するニーズが まっている。特に、食品衛生検査や臨床検 領域においては、細菌の迅速検出法として PCR法により各細菌の特異遺伝子を視覚的に えられる量まで増幅し、各細菌の存在の有 を判別及び定量する試みがなされている。 かし、細菌のDNAにターゲットを当てた場合 被検試料に元来含まれている死菌のバック ラウンドまで検出されるため、PCRで陽性判 がでた場合、必ずしも生きた細菌の存在を 唆しているとは限らなかった。そのために 食品衛生や臨床検査の分野では、PCRは高感 ・迅速でありながら普及していないのが現 であった。

 最近では、mRNAをターゲットにして、逆転写 酵素によりcDNAを作製後、各細菌の特異プラ マーを用いてPCRを行い、被検試料中の生菌 みを検出・定量する試みがなされている。 かし、この方法では死菌のmRNAの逆転写その のが阻害されるわけではなく、10 4 cfu/ml又は10 4 cfu/g以上の死菌が被検試料に含まれている場 、死菌のバックグラウンドを検出してしま ため、生死の判別法としては十分なものと 言えなかった。

 具体的には、PCR法を利用した細菌等の微 物の生死を判別する方法としては、特許文 1又は特許文献2に記載の方法が開示されて る。しかしながら、これらのPCR法を利用し 細菌等の微生物の生死を判別する方法には 下に示すような問題が残されていた。

 前記特許文献1の技術は、100℃、10~30分の高 長時間加熱殺菌が施された一部のボイル(煮 沸)食品中における死菌や、エタノール殺菌 ホルムアルデヒト殺菌を施した食品中の微 物の識別を例示しているが、特に後者につ ては実際そのような殺菌処理を施されてい 食品は存在しない。また、現在食品業界で 流な殺菌方法である低温保持殺菌(LTLT殺菌) 高温短時間(HTST殺菌)または超高温瞬間加熱 菌(UHT殺菌)を施された食品中の生きた微生物 のみの検出や、抗生物質投与を受けた感染症 患者における臨床検体中の生きた特定病原菌 等の検出は想定されていない。また、特許文 献1の技術では、被検試料中に死菌バックグ ウンドが10 4 cfu/ml以上の濃度で存在する食品や臨床検体の 場合、死菌由来のPCR最終増幅産物量が検出限 界以上になり、被検試料のPCR陽性反応が生菌 由来か死菌由来かの識別が不可能である。

 また、前記特許文献2の技術は、死細胞のRNA /DNAモル比が生細胞のそれと比較して相対的 低下することを利用した生菌と死菌を識別 る方法を開示したものである。この方法は トータルRNAを抽出し逆転写反応を利用して ンプリメンタリーDNAを作製し、その後PCRを ってそのCt値を算出し、別途作製した検量線 によりRNAのモル濃度を求め、一方で、このRNA に相当する染色体DNAの領域をPCRにより増幅し てCt値を求め、前記検量線より染色体DNAのモ 濃度を算出することにより、RNA/DNAのモル比 を求めるものである。すなわち、上記操作は 、煩雑なトータルRNA抽出を行う必要があり、 逆転写反応-PCRという2ステップを伴うために 定量性や迅速性で通常のDNAをターゲットに たPCRより劣る。更に、生菌ではRNAが連続的 産生される一方、死菌由来のRNAは早期に分 されるため安定性に欠ける。また、高濃度 死菌を含む食品や臨床検体においてはその1 /10濃度の生菌しか検出できない。したがって 、迅速、高感度、且つ精確性を要求される食 品衛生検査や臨床検査においては適用が困難 であった。

特表2003-530118号公報

国際公開第2002/052034号パンフレット

 本発明は、食品や生体試料中に含まれる 生物の生菌(Live cell)(Viable-and-Culturable cell) 死菌(Dead cell)や損傷菌(Injured cell又はViable-bu t-Non Culturable cell;「VNC cell」)に比べて選択 に検出する方法、すなわち、培養法の特性 そのまま引き継いだ迅速代替検出法、及び 方法を実施するためのキットを提供するこ を課題とする。

 本発明者らは、種々の殺菌方法に適用可 な、検出感度が高い食品衛生検査に適した 生物の生死の判別法、及び病院や臨床現場 おいて感染症患者における特定病原菌の検 も可能な方法について鋭意検討したところ 被検試料中の微生物の生菌及び損傷菌を判 する方法において、被検試料を350nm~700nmの 長の光照射によりDNAを架橋する架橋剤で処 して350nm~700nmの波長を有する光照射を行い、 一旦、前記架橋剤を除去した後、被験試料中 に含まれる微生物の培養に適した培地を添加 して一定時間保温し、再度、前記架橋剤で処 理して350nm~700nmの波長を有する光照射を行い 次いで、微生物中の染色体DNAを選択的に核 増幅反応により増幅することによって、前 判別を迅速に行うことかできることを見い し、本発明を完成するに至った。

 すなわち、本発明は、被検試料中の微生物 生菌を検出するための方法であって、以下 工程を含む方法を提供する。
a)前記被検試料に、350nm~700nmの波長の光照射 よりDNAを架橋する架橋剤を添加する工程、
b)架橋剤を添加した被検試料に350nm~700nmの波 の光照射処理を行う工程、
c)光照射処理した被検試料に含まれる架橋剤 除去する工程、
d)架橋剤を除去した被検試料に培地を添加し 保温する工程、
e)保温した被検試料に再び350nm~700nmの波長の 照射によりDNAを架橋する架橋剤を添加する 程、
f)架橋剤を添加した被検試料に350nm~700nmの波 の光照射処理を行う工程、
g)前記被検試料からDNAを抽出し、抽出されたD NAのターゲット領域を核酸増幅法により増幅 る工程、及び
h)増幅産物を解析する工程。

 前記方法は、前記増幅産物の解析を、微生 の標準試料を用いて作成された微生物量及 増幅産物との関連を示す標準曲線を用いて うことを好ましい態様としている。
 また、前記方法は、前記核酸増幅法が、PCR 、LAMP法、SDA法、LCR法、又はDNAマイクロアレ イ法であることを好ましい態様としている。

 また前記方法は、前記PCR法をリアルタイ PCR法により行い、PCRと増幅産物の解析を同 に行うことを好ましい態様としている。

 また前記方法は、前記被検試料が、食品 血液試料、尿試料、髄液試料、滑液試料、 水試料、工業用水、市水、地下水、河川水 は雨水のいずれかであることを好ましい態 としている。

 また前記方法は、前記架橋剤が、エチジ ムモノアザイド(ethidium monoazide)、エチジウ ジアジド(ethidium diazide)、プソラーレン(psola ren)、4,5',8-トリメチルプソラーレン(4,5',8-trime thyl psolaren)、及び8-メトキシプソラーレン(8-m ethoxy psolaren)から選択されることを好ましい 様としている。

 また前記方法は、前記ターゲット領域が5 0~5000塩基の領域であることを好ましい態様と している。

 また前記方法は、前記微生物が病原性細 であることを好ましい態様としている。こ 態様においては、前記ターゲット領域が病 遺伝子であることが好ましい。

 また本発明は、被検試料中の微生物の生菌 核酸増幅法により検出するためのキットで って、下記の要素を含むキットを提供する:
 350nm~700nmの波長の光照射によりDNAを架橋す 架橋剤、培地、及び
 検出対象の微生物DNAのターゲット領域を核 増幅法により増幅するためのプライマー。
 前記キットは、前記核酸増幅法が、PCR法、L AMP法、SDA法、LCR法、又はDNAマイクロアレイ法 であることを好ましい態様としている。

 また前記キットは、前記架橋剤が、エチ ウムモノアザイド(ethidium monoazide)、エチジ ムジアジド(ethidium diazide)、プソラーレン(ps olaren)、4,5',8-トリメチルプソラーレン(4,5',8-tr imethyl psolaren)、及び8-メトキシプソラーレン( 8-methoxy psolaren)から選択されることを好まし 態様としている。

架橋剤(EMA)の単回処理及び多段階処理 よるリステリア菌(生菌及び損傷菌)のhlyA-PCR 最終増幅産物バンド強度を示す電気泳動写 。生:リステリア生菌損:リステリア損傷菌 架橋剤(EMA)の単回処理及び多段階処理 よるエンテロバクター・サカザキ菌(生菌及 損傷菌)のompA-PCRの最終増幅産物バンド強度 示す電気泳動写真。生:エンテロバクター・ サカザキ菌生菌損:エンテロバクター・サカ キ菌損傷菌 架橋剤(EMA)の単回処理及び多段階処理 よるエンテロバクター・サカザキ菌(生菌及 損傷菌)のMMS-PCRの最終増幅産物バンド強度 示す電気泳動写真。生:エンテロバクター・ カザキ菌生菌損:エンテロバクター・サカザ キ菌損傷菌 架橋剤(EMA)の単回処理及び多段階処理 よるサルモネラ菌(生菌及び損傷菌)のinvA-PCR 最終増幅産物バンド強度を示す電気泳動写 。生:サルモネラ菌生菌損:サルモネラ菌損 菌 架橋剤(EMA)の単回処理及び多段階処理 よるサルモネラ菌(生菌及び損傷菌)のenterotox in-PCRの最終増幅産物バンド強度を示す電気泳 動写真。生:サルモネラ菌生菌損:サルモネラ 損傷菌

 次に、本発明の好ましい実施形態について 細に説明する。ただし、本発明は以下の好 しい実施形態に限定されず、本発明の範囲 で自由に変更することができるものである 尚、本明細書において百分率は特に断りの い限り質量による表示である。
 本発明の方法においては、その検出の対象 して、結果的に増幅することが可能であれ 、核酸全般、具体的には1本鎖DNA、2本鎖DNA 1本鎖RNA、及び2本鎖RNAを例示することができ 、中でもDNAを検出対象とすることが好ましく 、2本鎖DNAが特に好ましい。

<1>本発明の方法
 本発明の方法は、被検試料中の微生物の生 を検出するための方法であって、以下の工 を含む方法である。
a)前記被検試料に、350nm~700nmの波長の光照射 よりDNAを架橋する架橋剤を添加する工程、
b)架橋剤を添加した被検試料に350nm~700nmの波 の光照射処理を行う工程、
c)光照射処理した被検試料に含まれる架橋剤 除去する工程、
d)架橋剤を除去した被検試料に培地を添加し 保温する工程、
e)保温した被検試料に再び350nm~700nmの波長の 照射によりDNAを架橋する架橋剤を添加する 程、
f)架橋剤を添加した被検試料に350nm~700nmの波 の光照射処理を行う工程、
g)前記被検試料からDNAを抽出し、抽出されたD NAのターゲット領域を核酸増幅法により増幅 る工程、及び
h)増幅産物を解析する工程。

 本明細書において、「被検試料」とは、そ 中に存在する微生物の生菌を検出する対象 あり、核酸増幅法による染色体DNAの特定領 の増幅によって存在を検出することが可能 ものであれば特に制限されないが、食品、 液試料、尿試料、髄液試料、滑液試料、胸 試料、工業用水、市水、地下水、河川水、 は雨水等が挙げられる。特に、食品として 、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果汁飲 、乳酸菌飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮 原液及び調製用粉末を含む);アイスクリーム アイスシャーベット、かき氷等の氷菓;加工 乳、乳飲料、発酵乳、バター等の乳製品;経 栄養食品、流動食、育児用ミルク、スポー 飲料;特定保健用食品、健康補助食品等の機 性食品等が好ましい。本発明においては、 検試料は、前記のような製品又は生体試料 のものであってもよく、これを希釈もしく 濃縮したもの、又は本発明の方法による処 以外の前処理をしたものであってもよい。 記前処理としては、加熱処理、濾過、遠心 離等が挙げられる。
 また、被検試料中に存在する微生物以外の 胞、タンパク質コロイド粒子、及び脂肪等 夾雑物は、酵素処理等によって除去又は低 させてもよい。前記被検試料中に存在する 生物以外の細胞としては、被検試料が乳、 製品、乳又は乳製品を原料とする食品であ 場合には、ウシ白血球及び乳腺上皮細胞等 挙げられる。また、被検試料が血液試料、 試料、髄液試料、滑液試料又は胸水試料等 生体試料の場合には、赤血球、白血球(顆粒 球、好中球、好塩基球、単球、リンパ球等) 及び血小板等が挙げられる。
 前記酵素としては、前記夾雑物を分解する とができ、かつ、検出対象の微生物の生菌 損傷しないものであれば特に制限されない 、例えば、脂質分解酵素及びタンパク質分 酵素が挙げられる。前記酵素は、1種類の酵 素を単独で用いてもよいし、2種又はそれ以 の酵素を併用してもよいが、脂質分解酵素 びタンパク質分解酵素の両方を用いること 好ましい。
 脂質分解酵素としては、リパーゼ、フォス ァターゼ等が、タンパク質分解酵素として プロテイナーゼK、プロナーゼ等が挙げられ る。

 「微生物」は、本発明の方法により検出 れる対象であり、核酸増幅法により検出す ことが可能であって、かつ、架橋剤の微生 に対する作用が生菌と死菌や損傷菌とで異 るものであれば、特に制限されないが、好 しくは細菌、糸状菌、酵母等が挙げられる 細菌としては、グラム陽性菌及びグラム陰 菌のいずれもが含まれる。グラム陽性菌と ては、ブドウ球菌(スタフィロコッカス・エ ピダーミディス(Staphylococcus epidermidis))等のス タフィロコッカス属細菌、ストレプトコッカ ス属細菌、リステリア・モノサイトゲネス(Li steria monocytogenes)等のリステリア属細菌、バ ラス・セレウス(Bacillus cereus)等のバチラス 細菌、マイコバクテリウム属細菌、ボツリ ス菌(クロストリジウム・ボツリヌム)、ウェ ルシュ菌(クロストリジウム・パーフリンジ ンス)等のクロストリジウム属細菌等が挙げ れる。また、グラム陰性菌としては、エシ リヒア・コリ(Escherichia coli)等のエシェリヒ ア属細菌、エンテロバクター・サカザキ(Enter obacter sakazakii)等のエンテロバクター属細菌 シトロバクター・コーセリ(Citrobacter koseri) のシトロバクター属細菌、クレブシェラ・ キシトカ(Klebsiella oxytoca)等のクレブシェラ 細菌に代表される腸内細菌群、サルモネラ 細菌、ビブリオ属細菌、シュードモナス属 菌等が挙げられる。

 本発明において「生菌」(Live cell)とは、 般に好適な培養条件によって培養した際に 殖が可能であって、その微生物が有する代 活性を示す状態(Viable-and-Culturable state)であ 、細胞壁の損傷はほとんど無い微生物をい 。なお、ここでいう代謝活性とはATP活性や ステラーゼ活性を例示することができる。

 「死菌」(Dead cell)とは、好適な培養条件 よって培養した場合であっても増殖は不可 であって、代謝活性を示さない状態(Dead)の 生物である。また、細胞壁の構造は維持さ ているものの、細胞壁自体は高度に損傷を けており、ヨウ化プロピジウムのような弱 過性の核染色剤等が細胞壁を透過する状態 ある。

 「損傷菌」(Injured cell又はViable-but-Non Cult urable cell)とは、人為的ストレス又は環境的 トレスにより損傷を受けているために、一 に好適な培養条件によって培養した場合で っても、増殖は困難であるが、その微生物 有する代謝活性は、生菌と比較すると低下 ているものの死菌と比較すると有意に活性 有する状態の微生物である。

 特に、食品衛生検査や臨床検査において 穏和な加熱処理や抗生物質投与により、損 菌の状態を呈した細菌の検出が注目されて り、本発明においては、生菌の検出のみな ず、生菌と死菌又は損傷菌との識別も可能 微生物の検出方法を提供するものである。

 尚、生菌、損傷菌及び死菌の菌数単位は 通常、いずれも細胞数(cells)/mlで表される。 生菌の細胞数は、好適な平板培地上で好適な 条件で培養したときのコロニー形成数(cfu/ml(c olony forming units / ml))で近似させることがで きる。また、損傷菌の標準試料は、例えば、 生菌懸濁液を加熱処理、例えば沸騰水中で加 熱処理することにより調製することができる が、その場合は、損傷菌の細胞数は、加熱処 理する前の生菌懸濁液のcfu/mlで近似させるこ とができる。尚、損傷菌を調製するための沸 騰水中での加熱時間は、微生物の種類により 異なるが、例えば実施例に記載された細菌で は、50秒程度で損傷菌を調製することができ 。さらに、損傷菌の標準試料は、抗生物質 理によっても調製することができるが、そ 場合は、損傷菌の細胞数は、生菌懸濁液を 生物質で処理した後、抗生物質を除去し、 視光(波長600nm)の透過度、すなわち濁度を測 定し、生菌数濃度が予め判っている生菌懸濁 液の濁度と比較することにより、好適な平板 培地上で好適な条件で培養したときのコロニ ー形成数(cfu/ml)で近似させることができる。

 尚、本発明の方法は、生菌の検出が目的 あり、生菌と区別される微生物は、損傷菌 あっても死菌であってもよい。

 本発明において、「生菌の検出」とは、被 試料中の生菌の有無の判別及び生菌の量の 定のいずれをも含む。また、生菌の量とは 絶対的な量に限られず、対照試料に対する 対的な量であってもよい。
 以下、本発明の方法を工程毎に説明する。

(1)ステップa)
 被検試料を350nm~700nmの波長の光照射によりDN Aを架橋する架橋剤で処理する。
 本発明に用いる架橋剤とは、染色体DNAにイ ターカレートし、350nm~700nmの波長の光照射 より染色体DNAに共有結合してDNAの分子間を 橋するものである。

 前記架橋剤は、生菌と、損傷菌又は死菌 びウシ白血球等の体細胞、白血球、血小板 に対する作用が異なるものであることが好 しく、より具体的には、生菌の細胞壁より 損傷菌もしくは死菌の細胞壁、又はウシ白 球等の体細胞、白血球、血小板等の細胞膜 対して透過性が高いものであることが好ま い。

 前記架橋剤としては、エチジウムモノア イド(ethidium monoazide)、エチジウムジアジド( ethidium diazide)、プソラーレン(psolaren)、4,5',8- リメチルプソラーレン(4,5',8-trimethyl psolaren: PMA)、及び8-メトキシプソラーレン(8-methoxy pso laren)等が挙げられる。架橋剤は、1種類を単 で用いてもよいし、2種又はそれ以上を併用 てもよい。

 架橋剤による処理の条件は、適宜設定する とが可能であり、例えば、検出対象の微生 の生菌及び死菌もしくは損傷菌の懸濁液に 種々の濃度の架橋剤を加えて、種々の時間 いた後、遠心分離等によって菌体を分離し 核酸増幅法で分析することによって、生菌 死菌もしくは損傷菌を区別しやすい条件を 定することができる。さらに、検出対象の 生物の生菌、及びウシ白血球等の体細胞又 血小板等の懸濁液に、種々の濃度の架橋剤 加えて、所定時間放置した後、遠心分離等 よって菌体及び前記各種細胞を分離し、核 増幅法で分析することによって、生菌と各 細胞を区別しやすい条件を決定することが きる。このような条件として、具体的には エチジウムモノアザイドでは終濃度1~100μg/m l、4~10℃、5分~48時間、エチジウムジアジドで は終濃度1~100μg/ml、4~10℃、5分~48時間、プソ ーレンでは終濃度1×10 -5 ~10μg/ml、25~37℃、5分~48時間、4,5',8-トリメチ プソラーレンでは終濃度1×10 -5 ~10μg/ml、25~37℃、5分~48時間、8-メトキシプソ ーレンでは終濃度1×10 -5 ~10μg/ml、25~37℃、5分~48時間が挙げられる。

(2)ステップb)
 次に、架橋剤を添加した被検試料に350nm~700n mの波長の光照射処理を行う。
 上記架橋剤は、生菌の細胞壁よりも死菌及 損傷菌の細胞壁の方が透過しやすい。した って、前記に示す作用時間内であれば生菌 細胞壁は実質的に透過せず、損傷菌もしく 死菌または死細胞になっている体細胞の細 膜は透過すると考えられる。また、生きた 細胞でも細胞膜のみを有し、細胞壁を有さ いことから前記架橋剤は透過すると考えら る。その結果、架橋剤は、体細胞の死細胞 び死菌並びに損傷菌の細胞内に進入し、続 て、染色体DNAと無秩序に共有結合し、もし はインターカレートし、350nm~700nmの波長の 照射を行うことによりDNAの分子間を架橋し 染色体DNA内に歪みが生じる結果、染色体DNA 破壊(断片化・切断)されると推定される。
 350nm~700nmの波長の光とは、少なくとも350nm~70 0nmの波長の光を含んでいればよく、単波長光 であってもよく、複合光であってもよい。ま た、すべての成分が350nm~700nmの範囲内にあっ もよく、350nmよりも短波長の光、及び/又は7 00nm以上の長波長の光を含んでいてもよいが 強度分布におけるピークが350nm~700nmの範囲内 にあることが好ましい。尚、光照射のみによ って微生物の染色体DNAを切断する程の短波長 の成分は含まないことが好ましい。

 生菌よりも損傷菌や死菌の染色体DNAが優 的に破壊されると、生菌では染色体DNAのタ ゲット領域が核酸増幅法により増幅される に対し、損傷菌や死菌ではターゲット領域 破壊(切断)される結果、核酸増幅反応が阻 され、生菌を損傷菌や死菌に比べて選択的 検出することができる。

 本発明の好ましい態様は、前記架橋剤が チジウムモノアザイドであり、エチジウム ノアザイドを添加した被検試料に350nm~700nm 波長の光線を照射する工程を含む。エチジ ムモノアザイド(EMA)は、微生物の生菌の細胞 壁よりも損傷菌や死菌の細胞壁を透過しやす い。したがって、EMAは生菌の細胞壁は実質的 に透過せず、損傷菌や死菌の細胞壁や死細胞 になっている体細胞の細胞膜は透過すると考 えられる。尚、血液中の白血球、血小板が生 細胞の場合、EMAは滅菌水や低張な塩溶液下で 前記細胞の細胞膜をより透過する。EMAは、体 細胞の死細胞及び損傷菌並びに死菌の細胞内 に進入して核内DNAに無秩序にインターカレー トした後、350nm~700nmの波長の光照射によりイ ターカレートしたEMAのみがナイトレンに変 され、核内DNAに共有結合し、DNAの分子間を 橋する。そして、染色体DNAの各塩基および オキシリボースに対して至るところで共有 合したEMAにより、染色体DNA内に大きな歪み 生じ、その結果、染色体DNAが破壊(断片化) れると推定される。

 エチジウムモノアザイド以外の架橋剤で っても、微生物の生菌の細胞壁よりも損傷 や死菌の細胞壁を透過しやすく、350nm~700nm 波長の光線(長波長紫外線、又は可視光線)を 照射することによりDNAを架橋し、染色体DNAを 破壊するものであれば、本発明に使用するこ とができる。

 EMAによる処理の条件は、適宜設定するこ が可能であり、例えば、検出対象の微生物 生菌、及び損傷菌や死菌の懸濁液に、種々 濃度のEMAを加えて、種々の時間置いた後、 視光を照射して、必要に応じて遠心分離等 よって菌体を分離し、核酸増幅法により分 することによって、生菌と死菌及び損傷菌 を区別しやすい条件を決定することができ 。また、光照射の条件も、照射時間を変え 上記の実験を行うことにより、好ましい条 を決定することができる。光照射の条件と て具体的には、被検試料から10~50cmの距離か ら100~750Wの前記波長の光を5分~2時間照射する 件が挙げられる。光照射は、低温下で、例 ば試料を氷冷して行うことが好ましい。

(3)ステップc)
 光照射処理した被検試料から、被験試料中 含まれる未反応の架橋剤を除去する。
 この工程は、ステップb)の後に速やかに行 ことが好ましい。架橋剤を除去する方法と ては、被検試料を遠心分離して、微生物を む沈殿と架橋剤を含む上清とを分離し、上 を除去する方法が挙げられる。この場合、 橋剤を除去した後、適宜、洗浄剤で微生物 洗浄する工程を追加することも可能である

(4)ステップd)
 続いて、架橋剤を除去した被検試料に培地 添加して保温する。
 培地は、被験試料中に含まれる微生物の培 に適した培地であることが好ましく、液体 地を使用することが特に好ましい。具体的 は、ブイヨン培地、ペプトン培地、ブレイ ハート インフュージョン(BHI)ブロス等を例 示することができる。保温は、対象の微生物 の増殖に適した温度、例えば当該微生物の至 適培養温度またはそれに準ずる温度であるこ とが好ましい。対象微生物の至適培養温度は 、例えば、対象微生物を種々の温度で培養し 、微生物が最も増殖する温度を選択すること によって、決定することができる。例えば、 上記で例示した細菌では、通常20℃~43℃、好 しくは25℃~37℃、より好ましくは30℃~37℃で ある。また、被検試料中の微生物が増殖する 限り、保温時間は特に制限されないが、具体 的には例えば、0.5~48時間、好ましくは1~24時 、より好ましくは2~3時間である。微生物を む被検試料を培地中で保温することにより 架橋剤が取り込まれず、染色体DNAが破壊さ なかった生菌は、培地中での保温により培 されて増殖し、被検試料中の生菌の有無の 別及び生菌の量の決定における検出感度の 上が期待される。

(5)ステップe),f)
 ステップe),f)は、それぞれ前記ステップa),b) と同様である。
 前記ステップd)を行うことによって、被験 料中の生菌については、増殖することが期 されることから、ステップd)の後に、さらに 、ステップe),f)を実施することによって、生 とそれ以外の菌との検出感度の差を高める とが可能である。これによって、被検試料 の生菌、損傷菌または死菌の有無の判別及 生菌の量の決定において飛躍的な検出感度 向上が可能となる。ステップe)で添加する 橋剤は、ステップa)で添加した架橋剤と同じ であってもよいし、異なるものであってもよ い。

 本発明の特に好ましい態様は、被検試料に し、架橋剤添加及び光照射処理と遠心分離 による架橋剤除去、並びに培地の添加、及 保温、さらに再び架橋剤添加及び光照射処 、を連続的に行うことであるが、前記一連 処理を行った後、さらに複数回、架橋剤除 、培地の添加、及び保温、さらに再び架橋 添加及び光照射処理、を行うことによって さらなる検出感度の向上も可能である。具 的には、ステップa)及びb)の後、ステップc) d)、e)及びf)を2回、又はそれ以上繰返せばよ い。
 後記実施例及び比較例において、ステップa ),b)のみを行い、ステップe),f)を行わないこと を「単回処理」、ステップa),b)に加えて、ス ップe),f)を行うことを「多段階処理」とい ことがある。

(6)ステップg)
 ステップa~f)で処理された被検試料からDNAを 抽出し、抽出されたDNAのターゲット領域を核 酸増幅法により増幅する。核酸増幅法として は、PCR法(White,T.J. et al., Trends Genet., 5, 185( 1989))、LAMP法(Loop-Mediated Isothermal Amplification: 規遺伝子増幅法(LAMP法)の原理と応用 、納富 継宣、長谷哲、BIO INDUSTRY, Vol.18, No.2, 15-23, 2001)、SDA法(Strand Displacement Amplification:Edward  L. Chan, Ken Brandt, Karen Olienus, Nick Antonishyn, Greg B. Horsman., Performance characteristics of the Becton Dickinson ProbeTec System for direct detection  of Chlamydia trachomatis and Neisseria gonorrhoeae i n male and female urine specimens in comparison with  the Roche Cobas system. Arch. Pathol. Lab. Med., 1 24:1649-1652, 2000)、LCR法(Ligase Chain Reaction:Barany , F., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.88, p.189-193,  1991)、DNAマイクロアレイ法(Validation of Virule nce and Epidemiology DNA Microarray for Identification  and Characterization of Staphylococcus aureus Isolate s: Richard P. Spence, et al., J. Clin. Microbiol.,  Vol.46, No.5, p.1620-1627, 2008)等がそれぞれ例示 れる。なお、本発明においては、PCR法を利 することが特に好ましいが、これに制限さ ない。

 被検試料からのDNAの抽出は、抽出されたD NAが核酸増幅反応における鋳型として機能し る限り特に制限されず、一般的に用いられ いる微生物のDNAの抽出法にしたがって行う とができる。

 DNAの抽出法は、例えば、Maniatis T., Fritsch  E.F., Sambrook, J.: Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 3rd edn. Cold Spring Harbor, NY: Cold Sprin g Harbor Laboratory Press, 2001に記載されている

 本発明において「ターゲット領域」とは 染色体DNAのうち、本発明に用いるプライマ を用いた核酸増幅法により増幅され得る領 であり、検出対象の微生物を検出すること できるものであれば特に制限されず、目的 応じて適宜設定することができる。例えば 被検試料に検出対象の微生物と異なる種類 細胞が含まれる場合には、ターゲット領域 、検出対象の微生物に特異的な配列を有す ことが好ましい。また、目的によっては、 数種の微生物に共通する配列を有するもの あってもよい。さらに、ターゲット領域は 一であっても、複数であってもよい。検出 象の微生物に特異的なターゲット領域に対 するプライマーセットと、広汎な微生物の 色体DNAに対応するプライマーセットを用い と、検出対象の微生物の生菌量と、多数種 微生物の生菌量を、同時に測定することが きる。ターゲット領域の長さとしては、通 50~5000塩基、好ましくは50~2000塩基、特に好 しくは50~500塩基が挙げられる。

 核酸の増幅に用いるプライマーは、各種 酸増幅法の原理に基づいて、適宜設定する とが可能であって、上記ターゲット領域を 異的に増幅することができるものであれば に制限されない。

 また、検出対象の微生物が病原性細菌で る場合には、ターゲット領域としては病原 伝子が挙げられる。病原遺伝子としては、 ステリア属細菌のリステリオリシンO(hlyA)遺 伝子、サルモネラ属細菌のenterotoxin(エンテロ トキシン)遺伝子やinvasion(invA)遺伝子、病原性 大腸菌O-157のベロ毒素遺伝子、エンテロバク ー属細菌のouter-membrane-proteinA(ompA)遺伝子(エ テロバクター・サカザキ菌)及びmacromolecular synthesis(MMS)オペロン(エンテロバクター・サ ザキ菌)、黄色ブドウ球菌エンテロトキシン 伝子、バチルス・セレウス菌のセレウリド( 嘔吐毒素)遺伝子やエンテロトキシン遺伝子 ボツリヌス菌の各種毒素遺伝子等が挙げら る。また、病原遺伝子に対応するプライマ としては、例えば、リステリア菌のhlyA遺伝 に対応する配列番号1及び2に示すプライマ セット、エンテロバクター・サカザキ菌のom pA遺伝子に対応する配列番号3及び4に対する ライマーセット、及びエンテロバクター・ カザキ菌のMMSオペロンに対応する配列番号5 び6に対するプライマーセットが挙げられる 。

 複数種の微生物に共通するプライマーを いると、被検試料中の複数種の微生物の生 を検出することができる。また、特定の細 に特異的なプライマーを用いると、被検試 中の特定の菌種の生菌を検出することがで る。

 核酸増幅反応の条件は、各核酸増幅法(PCR 法、LAMP法、SDA法、LCR法等)の原理に則った特 的な増幅が起る限り特に制限されず、適宜 定することができる。

(7)ステップh)
 続いて、核酸増幅法により増幅した増幅産 を解析する。
 解析法は、核酸増幅産物の検出又は定量が 能なものであれば特に制限されず、電気泳 法等が例示される。尚、核酸増幅法にPCR法 用いた場合は、リアルタイムPCR法(Nogva et a l./ Application of 5'-nuclease PCR for quantitative d etection of Listeria monocytogenes in pure cultures,  water, skim milk, and unpasteurized whole milk. Appl.  Environ. Microbiol., vol.66, 2000, pp.4266-4271、 No gva et al./ Application of the 5'-nuclease PCR assay  in evaluation and development of methods for quanti tative detection of campylobacter jejuni. Appl. Enviro n. Microbiol., vol.66, 2000, pp.4029-4036)を利用す ことが可能である。
 電気泳動法によれば、核酸増幅産物の量、 びその大きさを評価することができる。ま 、リアルタイムPCR法によれば、迅速にPCR増 産物の定量を行うことができる。
 リアルタイムPCR法を採用する場合、一般に 幅サイクル数1~10までは蛍光強度の変化はノ イズレベルでありゼロに等しいので、それら を増幅産物ゼロのサンプルブランクと見なし 、それらの標準偏差SDを算出し、そのSD値に10 を乗じた値をスレッショールド値とし、その スレッショールド値を最初に上回るPCRサイク ル数をサイクルスレッショールド値(Ct値)と う。従って、PCR反応溶液に初期のDNA鋳型量 多い程、Ct値は小さな値となり、鋳型DNA量が 少ない程、Ct値は大きな値となる。また、鋳 DNA量が同じでも、その鋳型内のPCRのターゲ ト領域に切断が生じている割合が多くなる 、同領域のPCR反応のCt値は大きな値となる

 また、増幅産物の有無は、増幅産物の融解 度(TM)パターンを解析することによっても行 うことができる。
 上記の各方法は、本発明の方法における諸 件の最適化に際しても使用することができ 。

 本発明の方法によって生菌を検出する場 、核酸増幅産物の解析は、同定されている 生物の標準試料を用いて作成された微生物 及び増幅産物との関連を示す標準曲線を用 ると、生菌の有無又は定量の精度を高める とができる。標準曲線は予め作成しておい ものを用いることができるが、被検試料と 時に標準試料について本発明の各ステップ 行って作成した標準曲線を用いることが好 しい。また、予め微生物量とDNA量との相関 調べておけば、その微生物から単離されたD NAを標準試料として用いることもできる。

 尚、本発明による生菌の検出が生菌の量 決定を含む場合、ステップd)で生菌が増殖 るため、被検試料中の生菌の量を決定する は、この増殖の程度を考慮する必要がある そのためには、例えば、上記のように微生 の標準試料を用いて微生物量と増幅産物と 関連を示す標準曲線を作成しておけばよい

<2>本発明のキット
 本発明のキットは、被検試料中の微生物の 菌を核酸増幅法により検出するためのキッ であって、架橋剤、培地、及び検出対象の 生物DNAのターゲット領域を核酸増幅法によ 増幅するためのプライマーを含む。

 前記核酸増幅反応は、PCR法、LAMP法、SDA法 、又はLCR法であることが好ましい。なお、上 記キットにおいて、架橋剤や培地は、本発明 の方法で説明したものと同様である。

 本発明のキットの好ましい態様は、架橋 が、エチジウムモノアザイド(ethidium monoazid e)、エチジウムジアジド(ethidium diazide)、プソ ラーレン(psolaren)、4,5',8-トリメチルプソラー ン(4,5',8-trimethyl psolaren)、及び8-メトキシプ ラーレン(8-methoxy psolaren)から選択されるこ が好ましく、特にエチジウムモノアザイド 使用することが好ましい。

 本発明のキットは、さらに、希釈液、架 剤反応用の反応液、本発明の方法を記載し 説明書等を含めることもできる。

 次に実施例を示して本発明を更に具体的 説明するが、本発明は以下の実施例に限定 れるものではない。

〔実施例1〕
1.試料の調製-リステリア・モノサイトゲネス (生菌及び損傷菌)懸濁液の調製
 グラム陽性細菌であるリステリア・モノサ トゲネス(Listeria monocytogenes JCM 2873;以下、 リステリア」と略記することがある)を、ブ レイン・ハート・インフュージョン(BHI)ブロ を用いて30℃で培養し、対数増殖期の培養 40mlを4℃で8,000×g、15分間冷却遠心分離し、 清を除去した。菌体に生理食塩水40mlを加え よく攪拌し、同様に冷却遠心分離し、上清 除去した後、菌体に10mlの生理食塩水を加え 、生菌懸濁液とした。この生菌懸濁液の生菌 数を標準寒天平板培地により測定したところ 、1.3×10 8 cfu/mlであった。

 また、上記生菌懸濁液1mlを1.5mlマイクロ ューブに入れ、沸騰水に50秒浸積後、氷水に より急冷して損傷菌懸濁液を調製した。尚、 この懸濁液中の細胞には少数の生菌及び死菌 も一部含まれると考えられるが、主に損傷菌 であるため、単に「損傷菌」と記載する。尚 、本発明の方法は本来生菌を検出する方法で あり、生菌と区別される微生物は、損傷菌で あるか死菌であるかは問わない。

2.試験方法
2-1)多段階処理(本発明の方法)
 前記で調製したリステリアの生菌懸濁液及 損傷菌懸濁液に対し、エチジウムモノアザ ド(EMA)を終濃度0、又は100μg/mlで添加し、遮 下4 ℃、5分放置後、各懸濁液を氷上に置き 、懸濁液から20 cmの距離に設置した500 Wの可 視光線(FLOOD PRF: 100V、500 W、岩崎電気社製、 波長:500~700nm)を5分間照射した。その後、4 ℃ で15,000 × g、10分間冷却遠心分離し、上清を 除去し、同容量の生理食塩水を加え撹拌後、 4 ℃で15,000 × g、10分間冷却遠心分離を行い 上清を除去後、同容量のブレイン・ハート・ インフュージョン(BHI)ブロスを加え、30 ℃に より2時間インキュベーションした。

 1回目のEMA処理時、EMA濃度 0の生菌及び損 傷菌懸濁液にはEMAを再度加えず、EMA濃度100  g/mlの生菌及び損傷菌懸濁液にはEMAを終濃度1 0 μg/ml、又は、25 μg/mlで再度添加し、遮光 4 ℃、5分放置後、各懸濁液を氷上に置き、 濁液から20 cmの距離に設置した500 Wの可視 線を5分間照射した。

2-2)単回処理(比較例1)
 1.で調製したリステリアの生菌懸濁液及び 傷菌懸濁液に対し、エチジウムモノアザイ (EMA)を終濃度 0、10、又は25 μg/mlで添加し、 遮光下4 ℃、5分放置後、各懸濁液を氷上に き、懸濁液から20 cmの距離に設置した500 W 可視光線(FLOOD PRF: 100V、500 W、岩崎電気社 、波長:500~700nm)を5分間照射した。

2-3)PCR試験に供する各細菌懸濁液の調製
 前記2-1)及び2-2)で処理されたリステリアの 菌及び損傷菌の各懸濁液の入ったマイクロ ューブを4 ℃で15,000 × g、10分間冷却遠心 離した。上清を除去後、1 mlの生理食塩水を 加えよく撹拌し、同様の冷却遠心処理を行っ た(洗浄処理)。更に1回同様の洗浄処理を行っ た後、ペレットに10 μlのTEバッファー(10 mM リス塩酸緩衝液、1 mM EDTA・2Na)を加えよく 拌した。

3.リステリア菌の病原遺伝子(short DNA)をター ットにしたPCR
3-1)病原遺伝子リステリア・リステリオリシ O(hlyA)遺伝子増幅
 細菌からの染色体DNAの溶出及びPCR反応を連 して自動的に行えるG&gサイエンス社(神 川県横浜市)製ダイレクトバッファーMIXを使 し、PCRマスターミックス(全量50.5 μl)を調 した。本バッファーMIXにはPCR反応に利用す 細菌由来の鋳型DNAに細菌由来のタンパク質 吸着することを阻止する成分(界面活性剤)、 及び、DNAポリメラーゼに細菌由来の多糖類が 吸着することを阻止する成分(界面活性剤)を んでおり、それ以外にリアルタイムPCR反応 必要な組成を含んでいる。PCRマスターミッ スの詳細は下記の通りである。

・G&gサイエンス社ダイレクトバッファーMI X: 42 μl
・(5U/μl) Ex-Taq (宝酒造社製、カタログ番号:R R001B): 0.5 μl
・(10 pmol/μl) 配列番号1 (hlyA-F) DNA: 4 μl
・(10 pmol/μl) 配列番号2 (hlyA-R) DNA: 4 μl

 尚、前記試薬の全てを足し合わせると全 50.5 μlになるが、G&gサイエンス社ダイレ クトバッファーMIXには、全量50.5 μlのPCRマス ターミックスにおいて必要成分が下記の終濃 度になるように予め調製されている。

・Ex-Taq Buffer (宝酒造社製、カタログ番号: R R001B): 1 ×
・dNTP mixture (宝酒造社製、カタログ番号:RR00 1B): 0.2 mM each
・SYBA Green (BMA社製、カタログ番号:50513): 0.4  ×

3-2)hlyA遺伝子増幅用PCRサーマルサイクルプ ファイル

3-3)PCR反応
 前記2-3)で調製した各試験懸濁液の5μlを前 3-1)で調製したPCRマスターミックス(50.5 μl) 添加した。ネガテイブコントロールとして TEバッファー5μlを用いた。

 3-2)で示したPCRサーマルサイクルプロファ イルに従い、リアルタイムPCR装置i Cycler(バ オラッド社製、機種番号:iQ)を用いてPCR反応 行った。

4.PCR増幅産物のアガロースゲル電気泳動
 前記3-3)のPCR増幅産物を3 %アガロースゲル 用いて電気泳動した。電気泳動終了後、ア ロースゲルを1μg/mlエチジウムブロマイド水 液に20分間浸漬し、次いでイオン交換水で2 洗浄した後、UVトランスイルミネーター(波 254 nm)によりhlyA遺伝子増幅産物の増幅度合 を観察した。

5.試験結果
 リステリアの生菌及び損傷菌に対して、多 階処理を行った後hlyA遺伝子をターゲットに したPCRを行いアガロースゲル電気泳動した結 果を図1(多段階処理レーン)に示し、そのPCR最 終増幅産物のバンド強度を数値化したものを 表2に示す。また、リステリアの生菌及び損 菌に対して、単回処理を行った後hlyA遺伝子 ターゲットにしたPCRを行いアガロースゲル 気泳動した結果を図1(単回処理レーン)に示 、そのPCR最終増幅産物のバンド強度を数値 したものを表3に示す。表中におけるバンド 強度は、バンドの濃淡をバイオラッド社製GS- 700 Imaging Densitometer(デンシトメーター:測定 長600nm)を用いて、電気泳動方向にバンドを キャンした際の測定値である。

 多段階処理においてEMA未添加の場合、リ テリアの生菌と損傷菌ともにhlyA遺伝子増幅 産物と推察されるバンドが検出され、生菌の みを特異的に検出することができなかった。 しかし、多段階処理でEMAを添加した場合(EMA  100 μg/ml-インキュベーション-EMA 25、又は10  μg/ml)、生菌ではバンドは明瞭に検出された 、損傷菌ではバンドは殆ど、もしくは全く 出されなくなった。従って、多段階処理に り生菌のみ選択的に検出することがPCRによ 可能となった。同様に表2に示すように、バ ド強度を数値化したデータからも多段階処 により113 bpという短い遺伝子をターゲット にしたPCRにおいても、明瞭に生菌と損傷菌の 識別が可能となった。

 一方、単回処理においてEMA未添加の場合 PCRによりhlyA遺伝子増幅産物と推察されるバ ンドがリステリアの生菌と損傷菌共に検出さ れ、生菌のみを選択的に検出することができ なかった。また、単回処理でEMAを10 μg/ml添 した場合、生菌と損傷菌ともにhlyA遺伝子増 産物と推察されるバンドが検出され、生菌 みを特異的に検出することができなかった 単回処理でEMAを25 μg/ml添加した場合、生菌 及び損傷菌ともにhlyA遺伝子増幅産物と推察 れるバンドが殆ど消失に近い形まで減少し 生菌のみを特異的に検出することは不可能 あった。表3においても、単回処理により113 bpという短い遺伝子(hlyA)をターゲットにした PCRでは生菌と損傷菌の明瞭な識別は不可能で あった。

6.考察
 特定病原細菌に焦点を当て生菌と損傷菌(死 菌も含めて)との識別を迅速に行う場合、病 細菌のみ特異的に検出するため、及び、更 定量的リアルタイムPCRにより試験液中の細 数を定量するため、80~200塩基という短い遺 子領域をターゲットとする傾向がある。比 例1に示される単回処理の場合、10 μg/mlより 高濃度のEMAを用いて処理すると、損傷菌だけ でなく生菌の細胞壁も透過し、生菌及び損傷 菌の染色体DNAを至る所で細菌内酵素に依存せ ず直接的に2本鎖を切断するので、生菌のみ 特異的に検出することができないと考えら る。又、単回処理でEMAを10 μg/ml又はそれ以 の濃度で作用させた場合、EMAは損傷菌の細 壁を透過しにくく、高頻度で染色体DNAが切 を受けている可能性は低い。したがって、P CRターゲット領域が短い場合、全ての損傷菌 胞の染色体DNAのターゲット領域が切断され とは限らず、その結果、PCRは完全に抑制さ ないと考えられる。

 一方、多段階処理においては、EMAを1回作 用させた後、EMAが多少生菌を透過し生菌数が 減少したとしても、培養に適した培地中でイ ンキュベーションすることにより、生菌数を 元の数値に戻したり、生菌の拡散ポンプを回 復させたり、未反応EMAを菌体外に排出させる ことが可能であるため、作用させるEMAの1回 の濃度は100 μg/ml等の高濃度が可能であり、 損傷菌の染色体DNAは高濃度EMAにより極めて激 しく切断を至る所で受けることになり、その 後の培地中でのインキュベーションを行って も生菌とは異なり細胞数を増やすことは不可 能である。そのような状況下、5分等の短時 では生菌の細胞壁には殆ど透過しない濃度 例えば10 μg/mlで再度EMAを作用させれば、損 菌の細胞壁のみにEMAが透過し、染色体DNAの なる切断を促し、損傷菌のみPCR最終増幅産 のバンドが検出されないものと考えられる

〔実施例2〕
1.試料の調製-エンテロバクター・サカザキ( 菌及び損傷菌)懸濁液の調製
 グラム陰性細菌であるエンテロバクター・ カザキ(Enterobacter sakazakii ATCC 6538P;以下、 サカザキ」と略記することがある)を、ブレ ン・ハート・インフュージョン(BHI)ブロス 用いて37℃で培養し、対数増殖期の培養液5ml を4℃で8,000×g、15分間冷却遠心分離し、上清 除去した。菌体に生理食塩水5mlを加えてよ 攪拌し、同様に冷却遠心分離し、上清を除 した後、菌体に5mlの生理食塩水を加え更に1 0倍希釈し生菌懸濁液とした。この生菌懸濁 の生菌数を標準寒天平板培地により測定し ところ、8.38 ± 0.25 log 10 cfu/mlであった。

 また、上記生菌懸濁液1mlを1.5mlマイクロ ューブに入れ、沸騰水に2分浸積後、氷水に り急冷して損傷菌懸濁液を調製した。尚、 の懸濁液中の細胞には少数の生菌及び死菌 一部含まれると考えられるが、主に損傷菌 あるため、単に「損傷菌」と記載する。尚 本発明の方法は本来生菌を検出する方法で り、生菌と区別される微生物は、損傷菌で るか死菌であるかは問わない。

2.試験方法
2-1)多段階処理(本発明の方法)
 前記で調製したサカザキの生菌懸濁液及び 傷菌懸濁液に対し、エチジウムモノアザイ (EMA)を終濃度0、10、25又は100μg/mlで添加し、 遮光下4 ℃、10分放置後、各懸濁液を氷上に き、懸濁液から20 cmの距離に設置した500 W 可視光線(FLOOD PRF: 100V、500 W、岩崎電気社 、波長:500~700nm)を5分間照射した。その後、4  ℃で15,000 × g、10分間冷却遠心分離し、上 を除去し、同容量の生理食塩水を加え撹拌 、4 ℃で15,000 × g、10分間冷却遠心分離を い上清を除去後、同容量のブレイン・ハー ・インフュージョン(BHI)ブロスを加え、37  により2時間インキュベーションした。

 1回目のEMA処理時、EMA濃度 0の生菌及び損 傷菌懸濁液にはEMAを再度加えず、EMA濃度10、2 5、又は100 μg/mlの生菌及び損傷菌懸濁液には EMAを終濃度10 μg/mlで再度添加し、遮光下4  、10分放置後、各懸濁液を氷上に置き、懸濁 液から20 cmの距離に設置した500 Wの可視光線 を5分間照射した。

2-2)単回処理(比較例2)
 1.で調製したサカザキの生菌懸濁液及び損 菌懸濁液に対し、エチジウムモノアザイド(E MA)を終濃度 0、10、25又は100 μg/mlで添加し、 遮光下4 ℃、10分放置後、各懸濁液を氷上に き、懸濁液から20 cmの距離に設置した500 W 可視光線(FLOOD PRF: 100V、500 W、岩崎電気社 、波長:500~700nm)を5分間照射した。

2-3)PCR試験に供する各細菌懸濁液の調製
 前記2-1)及び2-2)で処理されたサカザキの生 及び損傷菌の各懸濁液の入ったマイクロチ ーブを4 ℃で15,000 × g、10分間冷却遠心分 した。上清を除去後、1 mlの生理食塩水を加 えよく撹拌し、同様の冷却遠心処理を行った (洗浄処理)。更に1回同様の洗浄処理を行った 後、ペレットに初期容量と同容量の滅菌水を 加えよく撹拌した。

3.サカザキのouter-membrane-proteinA(ompA)遺伝子及 macromolecular synthesis (MMS)オペロン(short DNA)を ターゲットにしたPCR
3-1)ompA遺伝子及びMMS遺伝子増幅
 細菌からの染色体DNAの溶出及びPCR反応を連 して自動的に行えるG&gサイエンス社(神 川県横浜市)製ダイレクトバッファーMIXを使 し、PCRマスターミックス(全量25.25 μl)を調 した。本バッファーMIXにはPCR反応に利用す 細菌由来の鋳型DNAに細菌由来のタンパク質 吸着することを阻止する成分(界面活性剤) 及び、DNAポリメラーゼに細菌由来の多糖類 吸着することを阻止する成分(界面活性剤)を 含んでおり、それ以外にリアルタイムPCR反応 に必要な組成を含んでいる。PCRマスターミッ クスの詳細は下記の通りである。

 ompA遺伝子検出用PCRマスターミックスの各成 分を下記に示す。
・G&gサイエンス社ダイレクトバッファーMI X: 21 μl
・(5U/μl) Ex-Taq (宝酒造社製、カタログ番号:R R001B): 0.25 μl
・(10 pmol/μl) 配列番号3 (ompA-F) DNA: 2 μl
・(10 pmol/μl) 配列番号4 (ompA-R) DNA: 2 μl

 MMS遺伝子検出用PCRマスターミックスの各成 を下記に示す。
・G&gサイエンス社ダイレクトバッファーMI X: 21 μl
・(5U/μl) Ex-Taq (宝酒造社製、カタログ番号:R R001B): 0.25 μl
・(10 pmol/μl) 配列番号5 (MMS-F) DNA: 2 μl
・(10 pmol/μl) 配列番号6 (MMS-R) DNA: 2 μl

 尚、前記試薬の全てを足し合わせると全 25.25 μlになるが、G&gサイエンス社ダイ クトバッファーMIXには、全量25.25 μlのPCRマ ターミックスにおいて必要成分が下記の終 度になるように予め調製されている。

・Ex-Taq Buffer (宝酒造社製、カタログ番号: R R001B): 1 ×
・dNTP mixture (宝酒造社製、カタログ番号:RR00 1B): 0.2 mM each
・SYBA Green (BMA社製、カタログ番号:50513): 0.4  ×

3-2)ompA遺伝子及びMMS遺伝子増幅用PCRサーマ サイクルプロファイル

3-3)PCR反応
 前記2-3)で調製した各試験懸濁液の2μlを前 3-1)で調製したPCRマスターミックス(25.25 μl) 添加した。ネガテイブコントロールとして 滅菌水2.5 μlを用いた。

 3-2)で示したPCRサーマルサイクルプロファ イルに従い、リアルタイムPCR装置i Cycler(バ オラッド社製、機種番号:iQ)を用いてPCR反応 行った。

4.PCR増幅産物のアガロースゲル電気泳動
 前記3-3)のPCR増幅産物を2 %アガロースゲル 用いて電気泳動した。電気泳動終了後、ア ロースゲルを1μg/mlエチジウムブロマイド水 液に20分間浸漬し、次いでイオン交換水で2 洗浄した後、UVトランスイルミネーター(波 254 nm)によりhlyA遺伝子増幅産物の増幅度合 を観察した。

5.試験結果
 サカザキの生菌及び損傷菌に対して、多段 処理を行った後ompA遺伝子をターゲットにし たPCRを行いアガロースゲル電気泳動した結果 を図2(多段階処理レーン)に示し、そのPCR最終 増幅産物のバンド強度を数値化したものを表 5に示す。また、サカザキの生菌及び損傷菌 対して、単回処理を行った後ompA遺伝子をタ ゲットにしたPCRを行いアガロースゲル電気 動した結果を図2(単回処理レーン)に示し、 のPCR最終増幅産物のバンド強度を数値化し ものを表6に示す。表中におけるバンド強度 は、バンドの濃淡をバイオラッド社製GS-700 I maging Densitometer(デンシトメーター:測定波長60 0nm)を用いて、電気泳動方向にバンドをスキ ンした際の測定値である。更に、多段階処 及び単回処理の各リアルタイムPCRカーブの ち上がりのサイクル数(Ct値)を表7に示す。
 同様にMMS遺伝子に関して、多段階処理後のP CR最終増幅産物をアガロース電気泳動した結 を図3(多段階処理レーン)、そのPCRバンドを 値化したものを表8に、単回処理の電気泳動 結果を図3(単回処理レーン)に示し、そのPCRバ ンドを数値化したものを表9に示す。更に、 段階処理及び単回処理の各リアルタイムPCR ーブの立ち上がりのサイクル数(Ct値)を表10 示す。

 多段階処理においてEMA未添加の場合、サ ザキの生菌と損傷菌ともにompA遺伝子及びMMS 遺伝子増幅産物と推察されるバンドが検出さ れ、生菌のみを特異的に検出することができ なかった。一方、多段階処理でEMAを添加した 場合(EMA 10 μg/ml-インキュベーション-EMA 10  μg/ml)、生菌ではバンドは明瞭に検出された 、損傷菌ではバンドは全く検出されなくな た(損傷菌の場合、ターゲット遺伝子より短 バンドが存在するが、これはプライマーダ マーである)。従って、多段階処理により生 菌のみ選択的に検出することがPCRにより可能 となった。同様に表5及び表8に示すように、 ンド強度を数値化したデータからも多段階 理により469 bp及び78 bpという比較的短い、 又は極めて短い遺伝子をターゲットにしたPCR においても、明瞭に生菌と損傷菌の識別が可 能となった。

 尚、表7の各Ct値も考慮すると、単回処理EMA 25 μg/mlにおいても生菌と損傷菌の識別が可 となっているが、生菌のCt値が20.9 ± 0.6と っており、多段階処理(EMA 10/10 μg/ml)の生 のCt値15.9 ± 0.4と比較して5.0程度大きくな ており、すなわち、単回処理の場合、生死 識別が可能となっても、生菌の検出限界が 段階処理より、およそ2 log 10  cells/ml程度劣るため、低濃度のサカザキを 出することができなかった。

6.考察
 MMS遺伝子(78 bp)という極めて短い遺伝子を ーゲットにしたPCRの場合、比較例2に示され 単回処理では、10 μg/mlのEMAを用いて処理し たときは、EMAが損傷菌にのみ選択的に透過し 、損傷菌の染色体DNAを至る所で細菌内酵素に 依存せず直接的にEMAが2本鎖を切断する。し し、損傷菌数が10 8  cfu/mlレベルの高濃度であると、全ての損傷 のターゲットMMS遺伝子領域に切断が入って るとは言えず、その結果、EMAの濃度が高く も単回処理においては損傷菌のPCR最終増幅 物は陰性とならなかったと解釈される。又 単回処理でEMAを10 μg/ml又はそれ以下の濃度 で作用させた場合、EMAは損傷菌の細胞壁を透 過しにくく、高頻度で染色体DNAが切断を受け ている可能性は低い。したがって、PCRターゲ ット領域が短い場合、全ての損傷菌細胞の染 色体DNAのターゲット領域が切断されるとは限 らず、その結果、PCRは完全に抑制されないと 考えられる。

 一方、多段階処理においては、EMAを1回作 用させた後、EMAが多少生菌を透過し生菌数が 減少したとしても、培養に適した培地中でイ ンキュベーションすることにより、生菌数を 元の数値に戻したり、生菌の拡散ポンプを回 復させたり、未反応EMAを菌体外に排出させる ことが可能である。一方、損傷菌の染色体DNA はEMAにより激しく切断を至る所で受けてはい るが、PCR増幅対象遺伝子が短い場合、全ての 染色体DNAの本領域に切断が入っているとは限 らないが、更に、その後の培地中でのインキ ュベーションを行っても生菌とは異なり細胞 数を増やすことは不可能である。そのような 状況下、例えば10 μg/mlで再度EMAを作用させ ば、損傷菌の細胞壁のみにEMAが透過し、染 体DNAの更なる切断を促し、損傷菌のみPCR最 増幅産物のバンドが検出されないものと考 られる。

〔実施例3〕
1.試料の調製-サルモネラ・エンテリテイデイ ス(生菌及び損傷菌)懸濁液の調製
 グラム陰性細菌であるサルモネラ・エンテ テイデイス(Salmonella enteritidis IIP 604 ;以下 、「サルモネラ」と略記することがある)を ブレイン・ハート・インフュージョン(BHI)ブ ロスを用いて37℃で培養し、対数増殖期の培 液5mlを4℃で8,000×g、15分間冷却遠心分離し 上清を除去した。菌体に生理食塩水5mlを加 てよく攪拌し、同様に冷却遠心分離し、上 を除去した後、菌体に5mlの生理食塩水を加 更に10倍希釈し生菌懸濁液とした。この生菌 懸濁液の生菌数を標準寒天平板培地により測 定したところ、8.06 ± 0.02 log 10 cfu/mlであった。

 また、上記生菌懸濁液1mlを1.5mlマイクロ ューブに入れ、沸騰水に2分浸積後、氷水に り急冷して損傷菌懸濁液を調製した。尚、 の懸濁液中の細胞には少数の生菌及び死菌 一部含まれると考えられるが、主に損傷菌 あるため、単に「損傷菌」と記載する。尚 本発明の方法は本来生菌を検出する方法で り、生菌と区別される微生物は、損傷菌で るか死菌であるかは問わない。

2.試験方法
2-1)多段階処理(本発明の方法)
 前記で調製したサルモネラの生菌懸濁液及 損傷菌懸濁液に対し、エチジウムモノアザ ド(EMA)を終濃度0、10、25又は100μg/mlで添加し 、遮光下4 ℃、10分放置後、各懸濁液を氷上 置き、懸濁液から20 cmの距離に設置した500 Wの可視光線(FLOOD PRF: 100V、500 W、岩崎電気 製、波長:500~700nm)を5分間照射した。その後 4 ℃で15,000 × g、10分間冷却遠心分離し、 清を除去し、同容量の生理食塩水を加え撹 後、4 ℃で15,000 × g、10分間冷却遠心分離 行い上清を除去後、同容量のブレイン・ハ ト・インフュージョン(BHI)ブロスを加え、37  ℃により2時間インキュベーションした。

 1回目のEMA処理時、EMA濃度 0の生菌及び損 傷菌懸濁液にはEMAを再度加えず、EMA濃度10、2 5、又は100 μg/mlの生菌及び損傷菌懸濁液には EMAを終濃度10 μg/mlで再度添加し、遮光下4  、10分放置後、各懸濁液を氷上に置き、懸濁 液から20 cmの距離に設置した500 Wの可視光線 を5分間照射した。

2-2)単回処理(比較例3)
 1.で調製したサルモネラの生菌懸濁液及び 傷菌懸濁液に対し、エチジウムモノアザイ (EMA)を終濃度 0、10、25又は100 μg/mlで添加し 、遮光下4 ℃、10分放置後、各懸濁液を氷上 置き、懸濁液から20 cmの距離に設置した500 Wの可視光線(FLOOD PRF: 100V、500 W、岩崎電気 製、波長:500~700nm)を5分間照射した。

2-3)PCR試験に供する各細菌懸濁液の調製
 前記2-1)及び2-2)で処理されたサルモネラの 菌及び損傷菌の各懸濁液の入ったマイクロ ューブを4 ℃で15,000 × g、10分間冷却遠心 離した。上清を除去後、1 mlの生理食塩水を 加えよく撹拌し、同様の冷却遠心処理を行っ た(洗浄処理)。更に1回同様の洗浄処理を行っ た後、ペレットに初期容量と同容量の滅菌水 を加えよく撹拌した。

3.サルモネラのinvasion gene(invA)遺伝子及びenter otoxin遺伝子(共にshort DNA)をターゲットにした PCR
3-1)invA遺伝子及びenterotoxin遺伝子増幅
 細菌からの染色体DNAの溶出及びPCR反応を連 して自動的に行えるG&gサイエンス社(神 川県横浜市)製ダイレクトバッファーMIXを使 し、PCRマスターミックス(全量25.25 μl)を調 した。本バッファーMIXにはPCR反応に利用す 細菌由来の鋳型DNAに細菌由来のタンパク質 吸着することを阻止する成分(界面活性剤) 及び、DNAポリメラーゼに細菌由来の多糖類 吸着することを阻止する成分(界面活性剤)を 含んでおり、それ以外にリアルタイムPCR反応 に必要な組成を含んでいる。PCRマスターミッ クスの詳細は下記の通りである。

 invA遺伝子検出用PCRマスターミックスの各成 分を下記に示す。
・G&gサイエンス社ダイレクトバッファーMI X: 21 μl
・(5U/μl) Ex-Taq (宝酒造社製、カタログ番号:R R001B): 0.25 μl
・(10 pmol/μl) invA-F DNA: 2 μl
・(10 pmol/μl) invA-R DNA: 2 μl
 invA-F: サルモネラ菌invA遺伝子検出用Primer S et SIN-1 (製品コード:S018; TakaraBio)
 invA-R:サルモネラ菌invA遺伝子検出用Primer Set  SIN-2 (製品コード:S018; TakaraBio)

 MMS遺伝子検出用PCRマスターミックスの各成 を下記に示す。
・G&gサイエンス社ダイレクトバッファーMI X: 21 μl
・(5U/μl) Ex-Taq (宝酒造社製、カタログ番号:R R001B): 0.25 μl
・(10 pmol/μl) enterotoxin-F DNA: 2 μl
・(10 pmol/μl) enterotoxin-R DNA: 2 μl
 enterotoxin-F: サルモネラ菌エンテロトキシン 遺伝子検出用Primer Set STN-1 (製品コード:S019;  TakaraBio)
 enterotoxin-R: サルモネラ菌エンテロトキシン 遺伝子検出用Primer Set STN-2 (製品コード:S019;  TakaraBio)

 尚、前記試薬の全てを足し合わせると全 25.25 μlになるが、G&gサイエンス社ダイ クトバッファーMIXには、全量25.25 μlのPCRマ ターミックスにおいて必要成分が下記の終 度になるように予め調製されている。

・Ex-Taq Buffer (宝酒造社製、カタログ番号: R R001B): 1 ×
・dNTP mixture (宝酒造社製、カタログ番号:RR00 1B): 0.2 mM each
・SYBA Green (BMA社製、カタログ番号:50513): 0.4  ×

3-2)invA遺伝子及びenterotoxin遺伝子増幅用PCR ーマルサイクルプロファイル

3-3)PCR反応
 前記2-3)で調製した各試験懸濁液の2μlを前 3-1)で調製したPCRマスターミックス(25.25 μl) 添加した。ネガテイブコントロールとして 滅菌水2.5 μlを用いた。

 3-2)で示したPCRサーマルサイクルプロファ イルに従い、リアルタイムPCR装置i Cycler(バ オラッド社製、機種番号:iQ)を用いてPCR反応 行った。

4.PCR増幅産物のアガロースゲル電気泳動
 前記3-3)のPCR増幅産物を2 %アガロースゲル 用いて電気泳動した。電気泳動終了後、ア ロースゲルを1μg/mlエチジウムブロマイド水 液に20分間浸漬し、次いでイオン交換水で2 洗浄した後、UVトランスイルミネーター(波 254 nm)によりhlyA遺伝子増幅産物の増幅度合 を観察した。

5.試験結果
 サルモネラの生菌及び損傷菌に対して、多 階処理を行った後invA遺伝子をターゲットに したPCRを行いアガロースゲル電気泳動した結 果を図4(多段階処理レーン)に示し、そのPCR最 終増幅産物のバンド強度を数値化したものを 表12に示す。また、サルモネラの生菌及び損 菌に対して、単回処理を行った後invA遺伝子 をターゲットにしたPCRを行いアガロースゲル 電気泳動した結果を図4(単回処理レーン)に示 し、そのPCR最終増幅産物のバンド強度を数値 化したものを表13に示す。表中におけるバン 強度は、バンドの濃淡をバイオラッド社製G S-700 Imaging Densitometer(デンシトメーター:測定 波長600nm)を用いて、電気泳動方向にバンドを スキャンした際の測定値である。更に、多段 階処理及び単回処理の各リアルタイムPCRカー ブの立ち上がりのサイクル数(Ct値)を表14に示 す。
 同様にenterotoxin遺伝子に関して、多段階処 後のPCR最終増幅産物をアガロース電気泳動 た結果を図5(多段階処理レーン)、そのPCRバ ドを数値化したものを表15に、単回処理の電 気泳動結果を図5(単回処理レーン)に示し、そ のPCRバンドを数値化したものを表16に示す。 に、多段階処理及び単回処理の各リアルタ ムPCRカーブの立ち上がりのサイクル数(Ct値) を表17に示す。

 多段階処理においてEMA未添加の場合、サ モネラの生菌と損傷菌ともにinvA遺伝子及び enterotoxin遺伝子増幅産物と推察されるバンド 検出され、生菌のみを特異的に検出するこ ができなかった。しかし、多段階処理でEMA 添加した場合(EMA 10 μg/ml-インキュベーシ ン-EMA 10 μg/ml)、生菌ではバンドは明瞭に検 出されたが、損傷菌ではバンドは全く検出さ れなくなった。従って、多段階処理により生 菌のみ選択的に検出することがPCRにより可能 となった。同様に表12及び表15に示すように バンド強度を数値化したデータからも、多 階処理により378 bp及び264 bpという比較的短 い遺伝子をターゲットにしたPCRにおいて明瞭 に生菌と損傷菌の識別が可能となった。

 又、表14の各Ct値も考慮すると、単回処理EMA  25 μg/ml及び100 μg/mlにおいても生菌と損傷 の識別が可能となっているが、生菌のCt値 それぞれ18.2 ± 0.3、27.7 ± 3.8となっており 、多段階処理(EMA 10/10 μg/ml)の生菌のCt値16.0 ± 3.5と比較して2.2及び11.7程度大きくなって おり、すなわち、単回処理の場合、生死の識 別が可能となっても、生菌の検出限界が多段 階処理より、およそ1 log 10  cells/ml又は4 log 10  cells/ml程度劣るため、低濃度のサカザキを 出することができなかった。

6.考察
 invA及びenterotoxin遺伝子(378 bp及び284 bp)とい う短い遺伝子をターゲットにしたPCRの場合、 比較例3に示される単回処理では、10 μg/mlのE MAを用いて処理したときは、EMAが損傷菌の染 体DNAを至る所で細菌内酵素に依存せず直接 にEMAが2本鎖を切断してPCRを抑制している。 しかし、生菌においては、EMA濃度が高くなる とCt値が上昇し、生菌の検出限界の低下を招 ている。

 一方、多段階処理においては、EMAを1回作 用させた後、EMAが多少生菌を透過し生菌数が 減少したとしても、培養に適した培地中でイ ンキュベーションすることにより、生菌数を 元の数値に戻したり、生菌の拡散ポンプを回 復させたり、未反応EMAを菌体外に排出させる ことが可能である。一方、損傷菌の染色体DNA はEMAにより激しく切断を至る所で受けてはい るがPCR増幅対象遺伝子が短い場合、全ての染 色体DNAの本領域に切断が入っているとは限ら ないが、更に、その後の培地中でのインキュ ベーションを行っても生菌とは異なり細胞数 を増やすことは不可能である。そのような状 況下、例えば10 μg/mlで再度EMAを作用させれ 、損傷菌の細胞壁のみにEMAが更に透過し、 色体DNAの更なる切断を促し、損傷菌のみPCR 終増幅産物のバンドが検出されないものと えられる。更に、表14及び17のCt値により評 しても、多段階処理の方が、途中に培地中 のインキュベーションを導入しているため 結果的に生菌の検出限界も向上させ、これ より低濃度の生菌のみの検出を可能とする とが結論付けられる。

 以上により、本発明の方法(多段階処理)に いて、グラム陰性細菌としてエンテロバク ー・サカザキ、サルモネラ、更にグラム陽 細菌としてリステリアの80~500塩基程度の合 5つの短い遺伝子をターゲットとしてPCRを行 た場合、いずれのケースにおいても10 8  cellsの損傷菌(死菌も含む)のPCR最終増幅産物 が検出されず、生菌のPCR最終増幅産物が検出 されたことから、最大10 5 ~10 7  cells/mlの各種病原細菌・損傷菌や死菌を含 牛乳においても、生菌を特異的に検出する とが可能である。更に、本実施例2に示すよ にサカザキに特異的に存在するが必ずしも 原性とは直接には関与していないMMS遺伝子 用いても、多段階処理により短い遺伝子を ーゲットにしたPCRにおいて、生菌と損傷菌 識別を可能としており、本願が病原細菌の をターゲットしたものではなく病原細菌を め腐敗菌などの一般細菌にも適用可能なこ を示唆している。したがって、食品衛生検 のO-157、サルモネラ、リステリア、エンテ バクター・サカザキ、カンピロバクター・ ェジュニ、黄色ブドウ球菌、セレウス菌、 ツリヌス菌、ウェルシュ菌等のグラム陰性 菌及びグラム陽性細菌の検査として広く適 することが可能と考える。

 また、菌血症で肝機能障害を有する患者の 合、血液中に病原細菌の生菌及び抗生物質 傷菌が10 4  cells/ml以上の高濃度で存在する可能性もあ 、そのようなケースにおいても本発明によ 病原細菌の生菌のみを検出できることが期 される。又、結核患者の抗結核剤による治 経過観察に適用する場合、主として喀痰が 査材料になるが、結核患者の治療前におけ 結核菌の生菌数は10 8 ~10 9  cells/gの場合が相当数を占め、それら患者の 治療後期には抗結核剤による損傷結核菌が10 7 ~10 8  cells/gの濃度で存在する。そのような状況下 、培養可能な生きた結核菌を定量することが 培養法の迅速代替法として期待されるが、本 発明によりPCRを結核患者の治療経過診断に応 用することが可能となると考える。

[参考例1]食品からの被検試料の調製
 本発明の被検試料の1つである食品として、 牛乳中に微生物が混入していた場合を想定し た被検試料の調製法を以下に例示する。

 牛乳に、終濃度が1~5mM、特に2mMとなるよ にEDTA溶液、及び終濃度が0.1~0.5%、特に0.1%と るようにTween80をそれぞれ添加し、10,000×gに て、10分間、4℃により冷却遠心分離した。な お、終濃度10~20U/mlのリパーゼ(シグマ社製E.C.3 .1.1.3)を添加し、30~37℃により30分~1時間処理 た後、終濃度が20U/mlとなるようにプロテイ ーゼKを(シグマ社製E.C.3.4.21.64)添加して30分~1 時間放置することが好ましい。液表面の脂肪 層及び中間部の水層を除去し、沈渣を回収し た。この沈渣には、細菌、乳腺上皮細胞、ウ シ白血球等の体細胞が含まれており、10,000×g 以上で遠心分離した場合は、プロテイナーゼ Kにより不完全に分解したミセルタンパク質 解物(カゼインミセル不完全分解物)も含まれ る。ここで、カゼインミセル不完全分解物は 疎水性の高いα、β-カゼインのサブミセルと えられる。

 前記沈渣に当初と同容量の生理食塩水を 加して懸濁した後、100×gにて、5分間、4℃ 冷却遠心分離し、微生物等が存在する上清 回収した。

[参考例2]血液からの被検試料の調製(1)
 ヘパリン加血液に同容量の生理食塩水を加 、10,000×gにて、5分間、4℃で遠心分離し、 清は除去し、沈渣を回収した。この沈渣に 、細菌、血小板、単球やリンパ球等の単核 、顆粒球、及び赤血球が含まれていた。

[参考例3]血液からの被検試料の調製(2)
 ヘパリン加血液に同容量の生理食塩水を加 、100×gにて、5分、4℃で冷却遠心分離し、 漿と血球成分(単球やリンパ球等の単核球、 びに顆粒球及び赤血球)に分離し、微生物が 存在する血漿を回収した。

[参考例4]血液からの被検試料の調製(3)
 ヘパリン加血液に同容量の生理食塩水を加 た。滅菌試験管に、まず2倍希釈されたヘパ リン加血液と同容量のFicoll-Paque[アマシャム イオサイエンス社製;Ficoll 400 (フィコール40 0)は5.7g/100ml、ジアトリゾエートナトリウムは 9g/100mlである。比重1.077g/ml]を充填し、その後 、前記の2倍希釈されたヘパリン加血液を、 験管を斜めに傾けながらゆっくりと重層し 。続いて、100×g、5分間、4℃で冷却遠心分離 し、微生物が存在する上清を回収した。なお 、Ficoll-Paqueに2倍希釈されたヘパリン加血液 重層するする前に、終濃度10~20U/mlのリパー (シグマ社製E.C.3.1.1.3)溶液を添加した後、10~5 0U/mlのデオキシリボヌクレアーゼI(シグマ社 、EC 3.1.21.1)溶液を添加し、30~37℃により30分 ~1時間処理後、終濃度10~20U/mlとなるようにプ テイナーゼK(シグマ社製E.C.3.4.21.64)を添加し 、30~37℃により30分~1時間処理することが好ま しい。

[参考例5]血液からの被検試料の調製(4)
 滅菌試験管に、予めヘパリン加血液の1/2容 となるようにMonopoly TM [アマシャムバイオサイエンス社製; Ficoll(フ コール)とMetrizoate(メトリゾエート)の混合液 、比重1.115g/ml]添加しておき、試験管を傾け がらゆっくりとヘパリン加血液を重層した その後、100×g、5分、4℃で冷却遠心分離し、 細菌が存在する上清を回収した。

 本発明により、核酸増幅法による簡易か 迅速な食品及び生体試料、工業用水や市水 の環境中の生菌・損傷菌・死菌の判別が可 となる。本発明の方法及びキットは、自主 査に応用可能であり、経済性にも優れてい 。