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Patent Searching and Data


Title:
NOVEL HYDROGEN-PRODUCING BACTERIUM
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/111608
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide a hydrogen-producing bacterium, which is excellent in hydrogen yield and hydrogen production rate, and can be used for industrially producing hydrogen by using biomass as a production source. That is, it is intended to provide a bacterium belonging to the genus Clostridium, characterized in that hydrogen is produced in an amount of 60 mmol or more per hour in 1 L of a culture medium using glucose as a substrate by a batch culture at 47˚C and pH 6.0 using YNU anaerobic culture, and a method for producing hydrogen, characterized by using the bacterium belonging to the genus Clostridium.

Inventors:
TANISHO SHIGEHARU (JP)
NISHIYAMA HIROKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/054485
Publication Date:
September 18, 2008
Filing Date:
March 12, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NAT UNIV CORP YOKOHAMA NAT UNI (JP)
TANISHO SHIGEHARU (JP)
NISHIYAMA HIROKI (JP)
International Classes:
C12N1/20; C12N15/09; C12P3/00; C12R1/145
Other References:
KAJI M. ET AL.: "The hydA gene encoding the H(2)-evolving hydrogenase of Clostridium perfringens: molecular characterization and expression of the gene", FEMS MICROBIOL. LETT., vol. 181, no. 2, 1999, pages 329 - 336, XP007914308, DOI: doi:10.1111/j.1574-6968.1999.tb08863.x
HAYASE M.: "Clostridium absonum no Bunri to Sono Baiyo Oyobi Seikagakutek Seijo ni Tsuite", JOURNAL OF THE JUZEN MEDICAL SOCIETYY, vol. 85, no. 5/6, 1976, pages 502 - 510
SACKS L.E. AND OLSON A.C.: "Growth of Clostridium perfringens straisn on alpha-galactosides", J. FOOD SCI., vol. 44, no. 6, 1979, pages 1756 - 1764
NICHE P.F. ET AL.: "Gas production by Clostridium perfringens as a measure of the fermentability of carbohydrates and processed cereal-legume foods", FOOD MICROBIOL., vol. 11, no. 1, 1994, pages 21 - 29, XP024007729, DOI: doi:10.1006/fmic.1994.1004
Attorney, Agent or Firm:
SHIGA, Masatake et al. (Marunouchi Chiyoda-k, Tokyo 20, JP)
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Claims:
 YNU嫌気培地で、47℃、pH6.0の条件で回分培養することにより、グルコースを基質として、1Lの培養液で1時間当たり60mmol以上の水素を生産することを特徴とするクロストリジウム属菌。
 クロストリジウム・ペルフリンゲンスであることを特徴とする、請求項1記載のクロストリジウム属菌。
 水素生産の最適温度が、47~50℃であることを特徴とする、請求項1記載のクロストリジウム属菌。
 細胞増殖の最適温度が、44~47℃であることを特徴とする、請求項1記載のクロストリジウム属菌。
 ラフィノース分解能を有することを特徴とする、請求項1記載のクロストリジウム属菌。
 クロストリジウム・ペルフリンゲンスHN001 NITE BP-318であることを特徴とする、請求項1記載のクロストリジウム属菌。
 請求項1記載のクロストリジウム属菌を用いることを特徴とする、水素生産方法。
 請求項1~6のいずれか記載のクロストリジウム属菌の、水素生産への使用。
Description:
新規水素発生菌

 本発明は、クロストリジウム(Clostridium)属 菌に属する新規水素発生菌、及び該水素発生 菌を用いた水素生産方法に関する。

 近年、化石燃料等と異なり、燃焼しても二 化炭素等やその他の環境汚染物質の排出が とんどない、クリーンなエネルギーであり また、再生可能なエネルギーであること等 ら、石油等の化石燃料に代わるエネルギー して、水素燃料が注目されている。このた 、より効率よく水素を生成する方法に関す 研究が世界中で盛んに行われている。
 水素は様々な生成源から生成可能であるが リサイクルの観点から、バイオマスを生成 として生産することが好ましい。バイオマ からの水素生産方法として、主に熱化学的 法と微生物による生物学的方法があるが、 物学的方法が好ましい。通常、バイオマス 、有機性廃棄物やサトウキビ等のエネルギ 作物であり、含水量が多いため、高温ガス 等の熱化学的方法では、コストが過大とな ためである。

 バイオマスから水素を生産する際に用い れる微生物は、主に、光合成細菌と発酵細 に分けられる。光合成細菌は、光エネルギ を用いることにより、バイオマス中の有機 を、完全に水と炭酸ガスにまで分解できる 、日中のみしか利用できないだけでなく、 夕は光エネルギーが足りないという欠点が る。一方、発酵細菌は、密閉された容器内 も水素生産が可能であり、生ゴミや廃糖蜜 の含水率の高いバイオマスからの水素生産 適している。また、光合成細菌による水素 産よりも水素生産速度が速い。このため、 業上は主に、発酵細菌を用いた水素生産法 用いられる。

 バイオマスからの水素生産に用いられる 気性発酵細菌として、クロストリジウム・ チリクム(Clostridium butyricum)等のクロストリ ウム属菌や、エンテロバクター・アエロゲ ス(Enterobacter aerogenes)等のエンテロバクター (Enterobacter)属菌等がある(例えば、非特許文献 1参照。)。クロストリジウム属菌を用いてバ オマスから水素生産を行う方法として、例 ば、(1)有機材料から水素を発生させる水素 造方法において、上記有機材料を投入する 入工程と、クロストリジウム属の微生物を 入する微生物投入工程と、上記有機材料と 記微生物とを反応させ水素を生成する反応 程と、を具備し、この反応工程中に、反応 分解を促進させるため上記有機材料と上記 生物を撹拌する撹拌工程を設けることを特 とする水素製造方法が開示されている(例え ば、特許文献1参照。)。その他、エンテロバ ター属菌を用いてバイオマスから水素生産 行う方法として、例えば、(2)原料液として 油脂をメチルエステル化して得られる生成 からメチルエステルを除去して得られるバ オディーゼル廃液を含むものを用い、少な ともその表面に微生物を固定可能な担体が 在する条件下で、エンテロバクター属菌に って発酵させる発酵工程を含むことを特徴 する水素およびエタノールの製造方法が開 されている(例えば、特許文献2参照。)。

 クロストリジウム属菌やエンテロバクター 菌等は、通常、30~38℃で水素を生産する水 発生菌である。これに対し、65~80℃で水素を 生産する高温水素発生菌を用いた高温水素発 酵法がある。クロストリジウム属菌等を用い た水素生産法に比較して、高温水素発酵法で は、水素収率が向上され、また雑菌による基 質の汚染を防止しやすい、という利点を有し ている。例えば、サーモトガ・マリチマ(Therm otoga maritima)は、80℃の回分培養で、理論上の 最大水素収率である4mol/mol-gulcoseを達成して る(例えば、非特許文献2参照。)。このよう 、高温での高い水素収率は、乳酸等の好ま くない副産物の代謝が抑制されているから あると考えられている。
de Vrije and Classen (2003)“Dark hydrogen ferm entations” in Bio-methane and Bio-hydrogen、p103~121

特開2001-157595号公報

特開2006-180782号公報 Schroder et al.(1994)Archives of microbiology 161 :p460~470

 食品廃棄物等のバイオマス中には、水素発 菌による水素生産を阻害する様々な物質が まれているため、バイオマスから水素を生 するために用いられる水素発生菌は、水素 率と水素生産速度に優れていることが望ま い。
 しかしながら、30~38℃で水素を生産する既 のエンテロバクター属菌等は、水素収率及 水素生産速度が十分ではなく、工業的にバ オマスを生成源として水素を生産するため 用いることは非常に困難である。

 一方、65~80℃で水素を生産する高温水素 生菌は、水素収率は優れているが、水素生 速度が非常に遅いため、やはり、工業的利 には適さない。例えば、サーモトガ・マリ マは、80℃、1Lの回分培養液で1時間当たりの 水素生産速度が10mmol/L・hに過ぎない(例えば 非特許文献2参照。)。このような、高温での 水素生産速度の遅さは、菌の細胞密度が低い からであると考えられている。

 本発明は、工業的にバイオマスを生成源と て水素を生産するために用いることができ 、水素収率及び水素生産速度に優れた水素 生菌を提供することを目的とする。
 また、本発明は、該水素発生菌を用いる水 生産方法を提供することを目的とする。

 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭 研究した結果、30~38℃と65~80℃の間の中温に おいて水素生産を行うことにより、水素収率 及び水素生産速度の双方を向上させ得ると考 え、50℃前後において水素を良好に生産する とができる水素発生菌を見出し、本発明を 成させた。

 すなわち、本発明は、以下の態様に関する
(1) YNU嫌気培地で、47℃、pH6.0の条件で培養す ることにより、グルコースを基質として、1L 培養液で1時間当たり60mmol以上の水素を生産 することを特徴とするクロストリジウム(Clost ridium)属菌。
(2) クロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clo stridium perfringens)であることを特徴とする前 (1)記載のクロストリジウム属菌。
(3) 水素生産の最適温度が、47~50℃であるこ を特徴とする前記(1)又は(2)記載のクロスト ジウム属菌。
(4) 細胞増殖の最適温度が、44~47℃であるこ を特徴とする前記(1)~(3)いずれか記載のクロ トリジウム属菌。
(5) ラフィノース分解能を有することを特徴 する前記(1)~(4)いずれか記載のクロストリジ ウム属菌。
(6) 菌株が、クロストリジウム・ペルフリン ンスHN001(NITE BP-318)である前記(1)~(5)いずれ 記載のクロストリジウム属菌。

(7) 前記(1)~(6)いずれか記載のクロストリジウ ム属菌を用いることを特徴とする水素生産方 法。
  (7)に係る水素生産方法においては、前記 ロストリジウム属を47~50℃で培養することが 好ましい。また、用いる培養液のpHは、5.8~6.5 であることが好ましく、6.0~6.2であることが に好ましい。

(8) 前記(1)~(6)いずれか記載のクロストリジ ウム属菌の、水素生産への使用。

 本発明のクロストリジウム属菌は、水素 率に劣ることなく、水素生産速度が非常に い水素発生菌である。したがって、本発明 クロストリジウム属菌、及び、本発明の水 生産方法を用いることにより、バイオマス 生成源とした場合においても、従来に無く 率よく水素を生産することができる。また 温度維持に大量のエネルギーを必要とする 温水素発酵法に比べて、より少ないエネル ーで温度維持が可能であることから、経済 にも好ましい。

クロストリジウム・ペルフリンゲンス HN001株の増殖に対する温度の影響を表したも である。図1Aは、縦軸を培養液1L当たりの乾 燥菌体重量(g/L)、横軸を培養時間(h)として、 温度における乾燥菌体重量の経時変化の測 結果を示した図である。◆が32℃条件下、 が37℃条件下、△が41℃条件下、×が44℃条件 下、●が47℃条件下、及び、▲が50℃条件下 結果を示している。 クロストリジウム・ペルフリンゲンス HN001株の増殖に対する温度の影響を表したも である。図1Bは、特に、各温度における最 増殖速度を算出した結果を表したものであ 。 図2Aは、実施例1において、各培養温度 における水素収率を示したものである。 図2Bは、各培養温度における培養液1L たりの最大水素生産速度を示したものであ 。

 本発明におけるYNU嫌気培地は、表1に示す 組成からなる培地であり、嫌気性細菌の培養 に適した培地である。各試薬は、通常市販さ れているものを用いることができる。例えば 、日本製薬社製のカゼインペプトン、和光純 薬工業社製のDried Yeast Extract-S、純正化学社 のL-システイン塩酸塩―水和物、純正化学 製のメルカプト酢酸、及び、和光純薬工業 製のD(+)-グルコースを用いることができる。 グルコースの濃度は、培養条件等により、適 宜決定することができる。また、カゼインペ プトンに代えて、カザミノ酸を用いてもよい 。

 本発明のクロストリジウム属菌、特にク ストリジウム・ペルフリンゲンスは、YNU嫌 培地で、47℃、pH6.0の条件で回分培養するこ とにより、グルコースを基質として、1Lの培 液で1時間当たり60mmol以上の水素を生産する ことを特徴とする水素発生菌である。50℃前 で水素生産を行うことにより、30~38℃の場 よりも、水素発酵の反応速度が速くなり、 り効率よく水素を生産できると考えられる めである。また、水素生産速度が、1Lの培養 液で1時間当たり60mmol以上であるような、水 生産能の優れた水素発生菌であれば、多種 様な物質を含むバイオマスを生成源とした 合であっても、従来に無く大量の水素を生 することができるためである。水素生産能 、水素生産速度として、1Lの培養液で1時間 たり60mmol以上であれば、特に限定されない 、80mmol以上であることが好ましく、100mmol以 であることが特に好ましい。

 本発明のクロストリジウム属菌は、例え 以下の方法により得ることができる。まず 自然界から採取した試料から菌株を分離し 該菌株の中から、50℃前後の温度条件にお て、水素生産速度として、1Lの培養液で1時 当たり60mmol以上である水素生産能を有する 株を選択することにより、本発明のクロス リジウム属菌を得ることができる。

 以下、さらに詳細に説明する。
1.菌株の取得
 下水排水等から採取した液や泥等の試料を 表2に示す組成のABCM半流動培地(栄研化学株 会社製)の高層培地に植え付けた後、50℃の 温槽で培養してガス発生の活発な試料を選 した。該選別した試料を、ABCM寒天培地(栄 化学株式会社製)に塗布し、50℃で嫌気培養 てコロニーを得た。さらに該コロニーから 菌した菌を、同様に嫌気培養することによ 、純粋単離された菌株を得た。該純粋単離 れた菌株を、YNU嫌気培地に植え付け、50℃の 恒温槽でさらに培養することにより、ガスを 活発に生産する菌株を選別した。さらに、該 選別した菌株の中から、水素生産能が、水素 生産速度として、1Lの培養液で1時間当たり60m mol以上である菌株を選別し、このうち1株をHN 001と名付け、水素生産能についてさらに詳細 に検討した。なお、水素生産速度は後記実施 例1に記載の方法で行った。

2.HN001株の同定及び生化学的性状
 HN001株の遺伝学的性質を調べるため、HN001株 の16S rDNAの塩基配列を常法により同定した。 該塩基配列を配列表の配列番号1に示す。国 塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)上で、 塩基配列について相同性検索を行ったとこ 、クロストリジウム・ペルフリンゲンス AT CC 13124と98%の相同性を有していた。従って、 HN001株はクロストリジウム・ペルフリンゲン に属する微生物と推定された。

 さらに、偏性嫌気性菌の同定キットであ アピケンキAPI20A(ビオメリューS.A.社製、輸 販売元:日本ビオメリュー社製)を用いて、製 造者のマニュアルに従い、HN001株の生化学的 状を調べた。具体的には、基質が含有され いる各チューブに、HN001株の菌浮遊液を分 し、24時間嫌気培養する。その後、各チュー ブの色調変化から、アポラボソフト(ビオメ ューS.A.社製)を用いて、HN001株の糖分解能等 判断した。

 表3は、アピケンキAPI20Aを用いた独立した 5回の実験の、アポラボソフトによる解析結 をまとめたものである。表には、各菌株の 待される測定結果も併せて記載した。表中 段は、各チューブに含有されている基質を している。INDはトリプトファン、UREは尿素 GLUはブドウ糖、MANはマンニット、LACは乳糖 SACは白糖、MALは麦芽糖、SALはサリシン、XYL キシロース、ARAはアラビノース、GELはゼラ ン、ESCはエスクリンクエン酸鉄、GLYはグリ リン、CELはセロビオース、MNEはマンノース MLZはメレジトース、RAFはラフィノース、SOR ソルビット、RHAはラムノース、及びTREはト ハロースをそれぞれ示している。

 この結果、HN001株は、クロストリジウム ペルフリンゲンスと同様に、グルコース分 能、スクロース分解能、マルトース分解能 及びマンノース分解能を有していた。一方 HN001株は、公知のクロストリジウム・ペルフ リンゲンスと異なり、ラフィノース分解能を 有していたが、ラクトース分解能及びトレハ ロース分解能を有していなかった。アポラボ ソフトによる判定では、HN001株は、生化学的 状においては、クロストリジウム・ペルフ ンゲンスよりも、アクチノマイシス・ヴィ コサス(Actinomyces viscosus)に近いと判断され 。

 遺伝学的性質から、HN001株はクロストリ ウム・ペルフリンゲンス菌種であることが 認された。また、相同性が98%であり、完全 一致している既知微生物が検索されなかっ こと、及び、生化学的性状において、ラフ ノース分解能を有するが、ラクトース分解 及びトレハロース分解能を有さなかったこ から、公知の菌株とは異なる性質を有する とが明らかである。

 そこで、出願人は、2007年2月23日に、HN001 を、独立行政法人製品評価技術基盤機構特 微生物寄託センター(〒292-0818日本国千葉県 更津市かずさ鎌足2-5-8)に、国内寄託(受託番 号:NITE P-318;原寄託)として寄託した。さらに 出願人は、2008年3月3日に、該原寄託につい 、同国際寄託機関にブダペスト条約上の国 寄託への移管申請を行い、2008年3月7日付で 寄託についての受託証(受託番号:NITE BP-318) 発行された。

3.増殖の至適温度
 クロストリジウム・ペルフリンゲンスHN001 の増殖に対する温度の影響を調べるために 32、37、41、44、47、及び50℃の各温度条件下 培養した。
 具体的には、まず、クロストリジウム・ペ フリンゲンスHN001株を、pH6.0のABCM半流動培 の高層培地入りの試験管に植菌した後、30℃ で16時間嫌気培養したものを前培養液として 製した。350mLのpH6.0のYNU嫌気培地に、該前培 養液を8mLずつ、それぞれ添加した後、各温度 条件下でそれぞれ培養し、培養液中の菌体量 の経時変化を観測した。培養は、30rpmの攪拌 度で行った。また、培養液中の菌体量の測 は、各培養液を遠心処理することにより、 殿物として菌体を回収した後、該沈殿物の 燥重量を測定することにより行った。

 図1は、クロストリジウム・ペルフリンゲン スHN001株の増殖に対する温度の影響を表した のである。図1Aは、各温度における乾燥菌 重量の経時変化の測定結果を示した図であ 。縦軸は培養液1L当たりの乾燥菌体重量(g/L) あり、横軸は培養時間(h)である。◆が32℃ 件下、□が37℃条件下、△が41℃条件下、× 44℃条件下、●が47℃条件下、及び、▲が50 条件下の結果を示している。図1Bは、該測定 結果から、各温度における最大増殖速度を算 出した結果を表したものである。この結果か ら、クロストリジウム・ペルフリンゲンスHN0 01株の増殖温度は、44~47℃であることが好ま いことが明らかである。
 なお、クロストリジウム・ペルフリンゲン HN001株は、51℃では増殖が確認されたが、53 では増殖が確認されなかった。この結果か 、クロストリジウム・ペルフリンゲンスHN00 1株は、32℃~51℃において増殖可能であること が分かった。

3.水素生産能の測定
 クロストリジウム・ペルフリンゲンスHN001 を、16mLのABCM半流動培地の高層培地入りの試 験管に植菌し、30℃で16時間嫌気培養した。 の後、高温に順化させるため、該試験管を45 ℃で30分間嫌気培養したものを前培養液とし 。該前培養液を、pH6.0のYNU嫌気培地、若し は、グルコース濃度を2.0%として調製したpH6. 0のYNU嫌気培地に、それぞれ植菌し、後記実 例1と同様に、47℃で回分培養を行い、水素 生産させた。生産された水素量を、後記実 例1に記載の方法により測定し、水素収率(mol /mol-monosaccharide)と最大水素生産速度を算出し 。ここで、水素収率とは、1molの単糖から生 産された水素のモル数を示したものである。 また、最大水素生産速度は、培養液1L当たり 最大水素生産速度(mmol/Lh)と、該培養液中の 燥菌体重量1g当たりの最大水素生産速度(mmol /gh)の2種類で示した。

 得られたクロストリジウム・ペルフリン ンスHN001株の水素収率及び最大水素生産速 を、代表的な公知の水素発生菌と比較した 該比較の結果を表4に示す。なお、HN001株以 の菌株の水素収率等は、非特許文献1を元に 載したものである。文献上に対応するデー が記載されていなかった箇所は空欄とした

 クロストリジウム・ペルフリンゲンスHN00 1株は、47℃、pH6.0の条件で回分培養した場合 、水素収率が2.4であった。すなわち、1molの グルコースから2.4molの水素を生産することが できる菌株であった。また、培養液1L当たり 最大水素生産速度が、160mmol/Lhであり、培養 液中の乾燥菌体重量1g当たりの最大水素生産 度が、44mmol/ghであった。

 一方、表記載の他の菌株では、培養液1L たりの最大水素生産速度は、エンテロバク ー・アエロゲネスHU-101mAY-2の58mmol/Lhが最も速 く、培養液中の乾燥菌体重量1g当たりの最大 素生産速度は、エンテロバクター・クロア エ(Enterobacter cloacae)IIT-BT08の29mmol/Lhが最も速 かった。文献値との比較であり、各実験条件 が異なることから、単純に比較することはで きないものの、クロストリジウム・ペルフリ ンゲンスHN001株は、公知の他の水素発生菌よ も、最大水素生産速度が非常に速いことが らかである。また、水素収率も十分に良好 ある。したがって、クロストリジウム・ペ フリンゲンスHN001株、すなわち、本発明の ロストリジウム属菌は、公知の他の水素発 菌よりも、はるかに優れた水素生産能を有 ていることが明らかである。

 上記のことから、本発明のクロストリジ ム属菌、特にクロストリジウム・ペルフリ ゲンスとしては、YNU嫌気培地で、47℃、pH6.0 の条件で回分培養することにより、グルコー スを基質として、1Lの培養液で1時間当たり60m mol以上の水素を生産することを特徴とする水 素発生菌が用いられる。さらに、本発明のク ロストリジウム属菌の水素生産能は、水素生 産速度として、1Lの培養液で1時間当たり80mmol 以上であることがより好ましく、100mmol以上 あることが特に好ましい。これら範囲の水 生産能を有するクロストリジウム属菌を用 ることにより、従来に無く効率よく水素を 産することができる。

 また、本発明のクロストリジウム属菌は 上記培養条件において、その水素生産速度 1Lの培養液で1時間当たり60mmol以上であれば その上限は特に限定されず、より高い水素 産速度を有している方が好ましいが、上述 方法により得られる本発明のクロストリジ ム属菌は、通常、同条件下において、60~250m molの水素生産速度を有する。また、好ましい 該水素生産速度の範囲としては、80~200mmol、 り好ましくは100~180mmol、最も好ましくは100~16 0mmolの範囲である。

4.水素生産の至適温度
 前記3.水素生産能の測定と同様に前培養液 調製した。pH6.0又は6.5のYNU嫌気培地を350mL入 た500mL容のフラスコに、該前培養液を8mLず 、それぞれ添加した後、後記実施例1と同様 、30rpmの攪拌速度で回分培養を行い、水素 生産させた。培養温度は、41、44、47及び50℃ でそれぞれ行った。また、自動調節によって pHを一定に保った。生産された水素量を、後 実施例1に記載の方法により測定し、水素収 率と培養液1L当たりの最大水素生産速度を算 した。

 表5は、各培養温度における水素収率と培 養液1L当たりの最大水素生産速度を示したも である。pH6.0とpH6.5のいずれにおいても、41 において最大水素生産速度は最も遅かった 、それぞれ59.8mmol/Lhと41.1mmol/Lhであった。こ れらの値は、他の培養温度における最大水素 生産速度に比較すると遅いものの、表4との 較から明らかであるように、十分に良好な 大水素生産速度である。したがって、クロ トリジウム・ペルフリンゲンスHN001株は、47~ 50℃において、良好に水素を生産し得ること 明らかである。

 また、表5より明らかであるように、最大 水素生産速度はpH6.0とpH6.5のいずれにおいて 47℃で最速となり、水素収率はpH6.0とpH6.5の ずれにおいても50℃が最高となった。つまり 、クロストリジウム・ペルフリンゲンスHN001 、すなわち、本発明のクロストリジウム属 の水素生産は、47℃~50℃が最も適している とが明らかである。また、増殖の至適温度 44~47℃であることから、増殖速度は、必ずし も水素生産速度と比例しないことがわかった 。

 本発明のクロストリジウム属菌は、下水 水等から採取した液や泥等、すなわちバイ マス中に元々生息していた菌の中から、水 発生能、特に水素生産速度に優れた菌を選 して得られたものである。したがって、本 明のクロストリジウム属菌は、バイオマス 生成源とした場合においても、従来に無く 率よく、大量の水素を生産することができ 。

 本発明のクロストリジウム属菌は、通常 クロストリジウム属菌の培養に用いられて る方法により、培養することができる。嫌 培養をすることが好ましい。回分培養(batch culture)であってもよく、連続培養(continuous cu lture)であってもよい。コンタミネーションの リスクが軽減され、かつ、特別な装置等も必 要ないため、少量の水素を生産させる場合に は、回分培養であることが好ましい。一方、 培養環境を常に一定に保ちやすく、生産性が 安定するため、工業的な生産等の大量に水素 を生産する場合には、連続培養であることが 好ましい。連続培養を行う場合には、本発明 のクロストリジウム属菌を、通常用いられて いる担体等に固定してもよい。

 本発明のクロストリジウム属菌の培養に いられる培養液は、特に限定されるもので なく、市販されている嫌気性細菌用の培地 の、通常、クロストリジウム属菌の培養に いられている培養液を用いることができる 該培地として、例えば、ABCM半流動培地やYNU 嫌気培地がある。培養液のグルコースの濃度 は、培養条件等により、適宜決定することが できる。また、培養温度は本発明のクロスト リジウム属菌が培養可能な温度であれば特に 限定されるものではないが、44~47℃であるこ が好ましい。

  本発明のクロストリジウム属菌を常法 より培養することにより、効率よく水素を 産することができる。水素生産時の培養液 、通常、クロストリジウム属菌の培養に用 られている培養液であれば、特に限定され ものではないが、YNU嫌気培地であることが ましい。また、本発明のクロストリジウム 菌であれば、本発明の効果を損なわない限 、生ごみ等の食品廃棄物その他産業廃棄物 培養液の原料とすることもできる。このよ な原料を用いた場合であっても、本発明の ロストリジウム属菌によれば、従来にない 率で水素を生産することができる。

 また、水素生産時の培養温度は、その水 生産効率の観点から、47~50℃であることが ましい。また、水素生産時の培養液のpHは、 特に限定されないが、5.8~6.5であることが好 しく、6.0~6.2であることが特に好ましい。

 また、水素生産時の培養液又は当該発酵 地としての食品廃棄物等に含まれる糖成分 しては、本発明のクロストリジウム属菌に る水素発酵の基質となるものであれば特に 定されないが、例えば、グルコース、マル ース、スクロース等の単糖類、デンプン等 多糖類等が挙げられる。これら水素発酵の 質となる成分の濃度は、培養条件等により 適宜決定可能であるが、培養液中0.5~5重量% あることが好ましく、1.5~2.5重量%であるこ がより好ましい。

さらに、水素生産時のその他培養条件は、 本発明の効果を損なわない限り特に限定され るものでもないが、上記培養温度、培養液等 の条件も含めて、水素生産速度が、60~250mmol/L ・h、好ましくは80~200mmol/L・h、さらに好まし は100~180mmol/L・hとなる範囲で本発明のクロ トリジウム属菌を培養することが好ましい

 次に実施例を示して本発明をさらに詳細 説明するが、本発明は以下の実施例に限定 れるものではない。

 クロストリジウム・ペルフリンゲンスHN00 1株を、16mLのABCM半流動培地の高層培地入りの 試験管に植菌し、30℃で16時間嫌気培養した その後、高温に順化させるため、該試験管 45℃で30分間嫌気培養したものを前培養液と た。pH6.0のYNU嫌気培地を350mL入れた500mL容の ャーファーメンターに、8mLの該前培養液を 加し、30rpmの攪拌速度で回分培養を行った 培養温度は、それぞれ、32、37、41、44、47、 は50℃とした。また、自動調節によってpHを 一定に保った。

 生産された水素ガスは、10%水酸化ナトリ ム水溶液を通して、二酸化炭素を除去した 、水上置換法によりメスシリンダーに回収 て定量した。ガスクロマトグラフィーを用 た分析により、回収したガスが水素ガスで ることを確認した。生産された水素量から 水素収率と培養液1L当たりの最大水素生産 度を算出した。

 図2Aは各培養温度における水素収率を、 2Bは各培養温度における培養液1L当たりの最 水素生産速度をそれぞれ示したものである 47℃における最大水素生産速度は約135mmol/Lh あった。また、最大水素生産速度は47℃が も速かったが、水素収率は32℃と50℃付近で くなる傾向が観察された。

 実施例1の結果から、クロストリジウム・ ペルフリンゲンスHN001株、すなわち、本発明 クロストリジウム属菌は、YNU嫌気培地で、4 7℃、pH6.0の条件で回分培養することにより、 グルコースを基質として、1Lの培養液で1時間 当たり60mmol以上の水素を生産すること、及び 、水素生産時の培養温度は、47℃~50℃が最も していることが明らかである。

 YNU嫌気培地のpHを、5.5、6.0、6.5、及び7.0 し、かつ、培養温度を47℃のみとした以外は 、全て実施例1と同様にして、各培養から生 された水素量を測定し、水素収率と培養液1L 当たりの最大水素生産速度を算出した。

 表6は、各pHにおける水素収率と培養液1L たりの最大水素生産速度をそれぞれ示した のである。水素収率と最大水素生産速度の ずれもpH6.0で最大であった。pH6.5においても 最大水素生産速度は80.4mmol/Lhであり、60mmol/L hを大きく上回っていたことから、水素生産 の培養液のpHは、5.8~6.5であることが好まし 、6.0~6.2であることが特に好ましいことが明 かである。

 本発明のクロストリジウム属菌は、非常 優れた水素生産能を有しているため、バイ マス等を生成源とした水素の製造分野で利 が可能である。