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Patent Searching and Data


Title:
OIL-BASED LUBRICANT FOR FORGING, FORGING METHOD, AND COATING APPARATUS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/123201
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is an oil-based lubricant characterized by having a flash point within the range of 70-170˚C and a kinematic viscosity at 40˚C of 4-40 mm2/s. This oil-based lubricant is also characterized by containing no water and no emulsifying agent. Also disclosed are a forging method using the oil-based lubricant and a coating apparatus.

Inventors:
OHIRA HIROBUMI (JP)
NAKAMURA HITOMI (JP)
SUGISAWA MUNENORI (JP)
NARUOKA ATSUSI (JP)
TANI MASAHIKO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/055460
Publication Date:
October 16, 2008
Filing Date:
March 24, 2008
Export Citation:
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Assignee:
AOKI SCIENCE INST CO LTD (JP)
TOYOTA MOTOR CO LTD (JP)
SHIMANO KK (JP)
OHIRA HIROBUMI (JP)
NAKAMURA HITOMI (JP)
SUGISAWA MUNENORI (JP)
NARUOKA ATSUSI (JP)
TANI MASAHIKO (JP)
International Classes:
C10M171/00; B21J3/00; C10M101/02; C10M105/32; C10M105/76; C10M107/50; C10M129/10; C10M133/12; C10N20/00; C10N20/02; C10N30/00; C10N30/06; C10N40/24; C10N50/04
Domestic Patent References:
WO2006025368A12006-03-09
Foreign References:
JP2007009020A2007-01-18
JP2006182806A2006-07-13
JPS601293A1985-01-07
JPH01299895A1989-12-04
Other References:
IZAWA R. ET AL.: "Development of next-generation Water Free Die Lubricant and small amount spray application", DIE CASTING, no. 122, 2005, pages 7 - 14, XP008101373
OHIRA H. ET AL.: "Quality and Performance Features of Next Generation type Water Free Mold Release Agent", ALUTOPIA, vol. 37, no. 6, June 2007 (2007-06-01), pages 29 - 39, XP008101462
PLASTICITY AND WORK, vol. 18, no. 202, pages 1977 - 11
See also references of EP 2055764A4
Attorney, Agent or Firm:
SUZUYE, Takehiko et al. (1-12-9 Toranomon, Minato-ku, Tokyo 01, JP)
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Claims:
引火点が70℃~170℃の範囲であるとともに、40℃における動粘度が4~40mm 2 /sであり、かつ水や乳化剤を含有していないことを特徴とする油性鍛造用潤滑剤。
(a)40℃における動粘度が2~10mm 2 /sで引火点が70℃~170℃の範囲の溶剤を60~90質量部、(b)40℃における動粘度が50~100mm 2 /s未満の鉱油及び/又は合成油を1~5質量部、(c)40℃における動粘度が200mm 2 /s以上のエステル基油を1~5質量部、(d)40℃における動粘度が150mm 2 /s以上のシリコーン油を15質量部以下、(e)潤滑性能を有する添加剤を5.1~10質量部を含むことを特徴とする請求項1記載の油性鍛造用潤滑剤。
濡れ性向上剤を更に0.1~3質量部を含むことを特徴とする請求項2記載の油性鍛造用潤滑剤。
酸化防止剤を更に含むことを特徴とする請求項3記載の油性鍛造用潤滑剤。
酸化防止剤として、アミン系、フェノール系、クレゾール系酸化防止剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上を0.2~2質量部含むことを特徴とする請求項4記載の油性鍛造用潤滑剤。
親油性を付与した白色粉体を1~5質量部含むことを特徴とする請求項4記載の油性鍛造用潤滑剤。
請求項2乃至6のいずれかに記載の油性鍛造用潤滑剤を用いて鍛造を行うことを特徴とする鍛造方法。
請求項2乃至6のいずれかに記載の油性鍛造用潤滑剤を金型にスプレーするための吐出機構と、この吐出機構と電気的に接続され,吐出機構から吐出する油性鍛造用潤滑剤の量を制御する吐出条件制御機構と、金型の温度を制御する温度制御機構を具備することを特徴とする塗布装置。
Description:
鍛造用油性潤滑剤、鍛造方法及 塗布装置

 本発明は、アルミニウム、マグネシウム 亜鉛およびそれぞれの合金等の非鉄金属,あ るいは鉄の鍛造時に塗布する油性型潤滑剤に 関する。また、本発明は、前記油性型潤滑剤 を用いた鍛造方法及び塗布装置に関する。

 周知の如く、鍛造は、製品化する金属材 を圧縮で変形させる手法である。この手法 自由鍛造と型鍛造の2種類に大別できる。金 型なしで、鉄材を叩いて作られる刀は、自由 鍛造の良い例である。一方、金型を使い、製 品の均質化を図って行なうのは、型鍛造であ る。エンジン部品のクランク軸は、前記型鍛 造の良い例と言える。また、変形に必要な圧 縮力を低減するため被鍛材(以降、ワークと す)を加熱し、軟化させることがある。ワー の材質に応じ、加熱する温度が異なる。加 の程度によって、一般に、冷間鍛造、温間 造、熱間鍛造と分類されるが、数字による 確な区分はない。

 冷間鍛造は、ワークの再結晶温度以下(通 常、室温)で実施され、寸法精度が極めて高 。従って、後加工処理なしで、製品化が可 の場合が多い。冷間鍛造は小型製品に適し いる。熱間鍛造は再結晶温度以上で実施さ 、大型製品に適応されている。しかし、ワ クの表面に酸化皮膜が生成し、結晶粗大化 ため、製品の割れが起り易い。

 金属を変形させるので、ワークは高圧で 縮される。ワークと金型間に潤滑剤がない 態では、ワークと金型間でカジリや凝着を こす。従って、カジリや凝着防止のため、 型に潤滑剤が使われている。

 一般に、冷間鍛造では、物理吸着により 滑膜は形成しやすい。一方、熱間鍛造の高 では、潤滑成分のライデンフロスト現象(突 沸の一種)のためワークに付着しにくい。ま 、付着しても物理吸着力が弱く、潤滑膜の 成が難しくなる。水を媒体とした潤滑剤の 合は、100℃以下では水が乾燥せず潤滑でき いが、中間温度で潤滑膜を形成しやすい。 般に、潤滑膜として、次の形態がある。

 1)黒鉛皮膜:水乳化型、油性分散型の2種類の 潤滑剤。 
 2)白色粉体:雲母、窒化ホウ素、または、メ ミンシアヌレートの水乳化型。 
 3)ガラス系:コロイド状珪酸と芳香族カルボ 酸のアルカリ金属塩混合系(特開昭60-1293号 報)で、水に希釈されて使われるタイプ。 
 4)水溶性高分子系:水を含有(特開平1-299895号 報)。

 黒鉛は、低温から高温まで優れた潤滑性 示す。しかし、黒鉛の場合、作業環境は黒 粉体で汚れ、劣悪である。特に、油に黒鉛 混合したタイプの潤滑剤は著しい汚れの原 になる。白色粉体が主体の潤滑剤は作業環 を黒鉛ほどには悪化させないが、それでも 体含有量が多いと作業現場を汚す。しかも 白色粉体は黒鉛に比べ潤滑性に劣る。また 白色粉体は、粉体が硬いと金型表面を傷め 型寿命を短くするきらいがある。

 ガラス系及び高分子系潤滑剤は厚い皮膜 形成できるが、黒鉛に比べ潤滑性は劣り、 寿命が短い。また、前記潤滑剤は装置周り ガラス膜や高分子膜を形成し、白色粉体ほ ではないが、清掃工程が必要で作業効率が い。

 黒鉛及び白色粉体系潤滑剤は水または油 分散されているので、貯蔵時の分離問題や プレー時の詰まり問題が常に付きまとう。 ガラス系は、塗布するノズル付近で乾燥が きる。特に、作業中断が長いと乾燥が助長 れ、ノズルの詰りが起こる。その結果、作 を再開する時、塗布量が低下する。従って 潤滑能力が不足するので、不良品が発生す 。水乳化系潤滑剤は金型の冷却性が良いが 廃水処理が必要となる。

 また、金型面が200℃を超えると、水に包 れた潤滑剤ミストが金型面で沸騰する。そ 結果、潤滑剤の金型への付着効率が悪くな 、潤滑剤を多量に塗布しなければならなく る。即ち、水溶性潤滑剤の潤滑膜形成は温 に大きく依存するので、シビアーな金型温 の制御が不可欠である。

 水は100℃以下では蒸発しないので、乳化 の潤滑剤は冷間鍛造には不向きである。一 、乳化型の潤滑剤は温間・熱間鍛造に使え 。しかし、水が金型を冷却し、ワークが金 を加熱する。この加熱・冷却サイクルを繰 返すと、金型にクラックが発生する。金型 修理が必要となり、修理回数が増えると、 価な金型の廃棄に至る。水が金型の寿命を めている。また、成形工程中でワーク温度 低下が著しい場合は、高圧での成形が必要 なり、金型寿命を縮める要因となっている

 潤滑剤の塗布方法に関し、多量に塗布す とサイクルタイムが伸びるとの問題がある 水溶性の潤滑剤の場合、大量に塗布するの 、生産効率の点で好ましくない。また、大 塗布による潤滑剤の飛散に起因して、作業 境の悪化及び潤滑剤補充頻度の増加などの 題も挙げられる。更に、ワークの加熱工程 生産性の低下を招く場合がある。従来の水 性潤滑油を使った生産工程は、ワークの昇 後は多様であり、荒地成形工程と仕上成形 程と予備成形工程の3工程と各種ある。その 際、成形工程が進むと共にワークの温度が低 下するので、変形抵抗が増加し成形が困難に なる。特に、水溶性潤滑剤の場合は塗布量が 多いので、型が冷却され、温度低下が加速さ れる。その対策として、再昇温工程を加える 場合がある。しかし、再昇温工程はサイクル タイム,スペース,ランニングコスト等、生産 率の低下を招いている。

 上述したように、従来の潤滑剤には、以下 述べる問題点があった。 
 1)水ガラス系の潤滑剤の場合、ノズルの詰 により塗布量が低下する。そして、これに 因して鍛造製品の品質のバラツキを招く。 
 2)潤滑剤として黒鉛を用いた場合、作業環 が黒色粉体で汚れる。 
 3)水溶性の潤滑剤を用いた場合、大量に塗 する。従って、生産効率の低下を招くとと に、金型寿命の低下、作業環境の低下を招 。 
 4)成形工程中に再昇温工程を加えた場合、 産効率の低下を招く。

 本発明は上述した課題を解決するために されたもので、ノズルの詰りによる塗布量 低下に起因する鍛造製品の品質のバラツキ 低減でき、しかも水を含まない油性鍛造用 滑剤を提供することを目的としている。

 また、本発明は、従来と比べて少量吹き けを可能にして、生産効率の向上、金型寿 の延長を図るとともに、作業環境の低下を 制しえる鍛造方法及び塗布装置を提供する とを目的とする。

 (1) 本発明の油性鍛造用潤滑剤は、引火点 70℃~170℃の範囲であるとともに、40℃におけ る動粘度が4~40mm 2 /sであり、かつ水や乳化剤を含有していない とを特徴とする。 
 (2) 本発明の油性鍛造用潤滑剤は、前記(1) おいて、(a)40℃における動粘度が2~10mm 2 /sで引火点が70℃~170℃の範囲の溶剤を60~90質 部、(b)40℃における動粘度が50~100mm 2 /s未満の鉱油及び/又は合成油を1~5質量部、(c) 40℃における動粘度が200mm 2 /s以上のエステル基油を1~5質量部、(d)40℃に ける動粘度が150mm 2 /s以上のシリコーン油を15質量部以下、(e)潤 性能を有する添加剤を5.1~10質量部を含むこ を特徴とする。

 (3) 本発明の油性鍛造用潤滑剤は、前記(1) は(2)において、濡れ性向上剤を更に0.1~3質量 部を含むことを特徴とする。 
 (4) 本発明の油性鍛造用潤滑剤は、前記(2) は(3)において、酸化防止剤を更に含むこと 特徴とする。 
 (5) 本発明の油性鍛造用潤滑剤は、前記(4) おいて、酸化防止剤が、アミン系、フェノ ル系、クレゾール系酸化防止剤からなる群 ら選ばれる1種又は2種以上を0.2~2質量部含む とを特徴とする。

 (6) 本発明の油性鍛造用潤滑剤は、前記(2) 至(5)のいずれかにおいて、親油性を付与し 白色粉体を1~5質量部含むことを特徴とする  
 (7) 本発明の鍛造方法は、前記油性鍛造用 滑剤を用いて鍛造を行うことを特徴とする  
 (8) 本発明の塗布装置は、油性鍛造用潤滑 を金型にスプレーするための吐出機構と、 の吐出機構と電気的に接続され,吐出機構か 吐出する油性鍛造用潤滑剤の量を制御する 出条件制御機構と、金型の温度を制御する 度制御機構を具備することを特徴とする。

 A.上記(1),(2)記載の油性鍛造用潤滑剤によれ 、次に述べる効果を有する。 
 A-1) 水が配合されていないため、下記a~cの 果を有する。 
 a.ライデンフロスト現象を起こさず、付着 率が高い。その結果、少量塗布が可能とな 。 
 b.急冷作用を起こさず、金型寿命を延長で る。 
 c.排水がなくなり、排水処理が不要である  
 A-2) 少量塗布のため冷却が少ない。従って 多数の成形工程がある場合のワーク温度低 を少なく出来る。その結果、再昇温工程を 除できる場合、及び生産効率を大幅に向上 きる場合がある。

 A-3) 揮発性が高いので、金型面からの垂れ れが殆どなく、付着効率が高い。高温に効 のある成分を多量に付着でき、高温潤滑性 確保できる。その結果、カジリや凝着を低 でき、生産効率の改善に貢献できる。 
 A-4) 黒鉛が配合されていないので、作業環 がよい。

 B.上記(3)の「濡れ向上剤」を配合すること より、更に付着効率が向上する。その結果 更なる少量塗布に貢献できる。 
 C.上記(4),(5)の「酸化防止剤」を加えること より、高温での潤滑剤の劣化が遅れる。従 て、より高温で潤滑剤を使用可能であり、 温耐久性が高まる。その結果、初期の金型 度を高められるので、次の効果がもたらさ る。 
 C-1) 工程数が多い場合、後の工程での必要 重を下げられるので、金型の寿命が延びる  
 C-2) 工程の中間で、再昇温工程を削減でき 生産効率を改善できる。

 D.上記(6)の「親油性を付与した白色粉体」 配合することにより、更に高温耐久性を向 できる。その結果、上記のC項に述べる効果 更に高まる。 
 E.上記(7)の鍛造方法を適用することにより 上記のA~D項の効果が得られる。 
 F.上記(8)の塗布装置により、よく制御され 塗布が可能となる。その結果、更なる少量 布がより確実になる。

図1は付着量を測定するための塗布装置 を工程順に示す説明である。 図2Aは、試験片の摩擦力を計測するた の方法の一工程を示す説明図である。 図2Bは、試験片の摩擦力を計測するた の方法の他の工程を示す説明図である。 図3Aは、本発明に係る塗布装置の概略 な全体図である。 図3Bは、図3Aの塗布装置の一構成であ スプレーユニットの平面図である。 図3Cは、同塗布装置における潤滑剤の れを説明するための図である。 図4は、リング圧縮試験の概略的な説明 図である。

 以下、本発明について具体的に説明する。
 (1).請求項1に、「引火点が70℃~170℃の範囲 あるとともに、40℃における動粘度が4~40mm 2 /sであり、かつ水や乳化剤を含有していない とを特徴とする油性鍛造用潤滑剤」と記載 ている。その理由を(1-1)~(1-3)項に説明する

 (1-1) 引火点を70℃~170℃の範囲としたのは、 次のような理由による。 
 金型面で厚い油膜を形成するには、速乾性 ペンキに見られるように、一旦付着した成 が金型から垂流れないよう早急に溶剤を気 させるほうが良い。従って、蒸発速度の速 方が良い。しかし、あまり蒸発速度が速い 水溶性潤滑剤で発生しているライデンフロ ト現象を起こす懸念がある。従って、ガソ ンのような蒸発の速すぎるものは好ましく い。また、蒸発が速いと、引火点が低くな ので、火災の危険が高くなる。従って、自 車用燃料の軽油の引火点(70℃)以上が実用的 であるので、本組成物として70℃以上の引火 とした。

 (1-2) 「40℃における動粘度が4~40mm 2 /s」としたのは、次の理由による。即ち、4mm 2 /s未満では、潤滑剤の粘度が下がり、過ぎ塗 用ポンプの磨耗耐久性に悪影響がある。ま 、40mm 2 /sを超えると、潤滑剤の粘度が上がり、本組 物をスプレーで適正に塗布できない。 
 (1-3) 「水や乳化剤を含有していない」とし たのは、水自体には潤滑性が無いので、潤滑 性に水は不要であることが主な理由である。 むしろ水は潤滑性への弊害が多い。即ち、水 を排除することでライデンフロスト問題を避 けられる。その結果、付着効率が高まり、最 終的には少量塗布が可能となる。水のライデ ンフロスト温度は150~200℃ほどであり、沸騰 起こし、付着効率を低下させる。一方、油 の潤滑剤のライデンフロスト温度は約150℃ く、高温まで付着効率が良い。そのため、 量塗布となり、金型寿命を延長できる。更 、排水が無く、環境負荷を激減できる。

 (2).請求項2に「(a)40℃における動粘度が2~10mm 2 /sで引火点が70℃~170℃の範囲の溶剤を60~90質 部、(b)40℃における動粘度が50~100mm 2 /s未満の鉱油及び/又は合成油を1~5質量部、(c) 40℃における動粘度が200mm 2 /s以上のエステル基油を1~5質量部、(d)40℃に ける動粘度が150mm 2 /s以上のシリコーン油を15質量部以下、(e)潤 性能を有する添加剤を5.1~10質量部)を含む」 記載した。この理由を(2-1)~(2-4)に述べる。

 (2-1) (a)成分は高揮発・低粘度成分であり、 金型面で蒸発する部分である。なお、人体へ の影響を考慮し、アルコール、エステル、ケ トン等の極性の強い溶剤は使うべきではない 。極性に弱い石油系でかつ殆どが飽和分の溶 剤や低粘度鉱油が好ましい。この例としては 、例えば硫黄分が1ppm以下の高度に精製され 飽和系の溶剤や低粘度の合成油が挙げられ 。 
 上記(a)で「40℃における動粘度が2~10mm 2 /s」とするのは、次の理由による。即ち、2mm 2 /s未満では、潤滑剤全体の粘度が下がり、過 塗布用ポンプの磨耗耐久性に悪影響がある また、10mm 2 /sを超えると、潤滑剤全体の粘度が上がり、 組成物をスプレーで適正に塗布できない。 た、上記(a)成分で配合割合を60~90質量部と たのは、揮発性を最適化するためである。 方、温度の高い金型の場合、潤滑剤の気化 を抑えるため引火点は高い方が良いが、粘 も高くなる。あまり粘度が高いと潤滑剤の プレー状態が悪化するので、上に述べるよ な引火点と粘度の上限がある。 
 なお、上記の(a)成分では、前記溶剤に、低 度の鉱油及び/又は低粘度の合成油を加えて 計60~90質量部としてもよい。また、(a)成分が 剤のみの場合、溶剤は2種類以上用いてもよ い。

 (2-2) 40℃における動粘度が50~100mm 2 /s未満の(b)成分である鉱油/又は合成油および (c)40℃における動粘度が200mm 2 /s以上のエステル基油は、塗布後、金型面に 着する。その結果、室温~300℃の領域での潤 滑膜を厚くし、潤滑膜を保持する役割を担う 。特に、エステル基油は酸化安定性が良く、 高温まで油膜を保持する。実際の金型温度に て、潤滑剤が塗布されてから溶湯が流れ込む までの数秒間は付着した油が垂流れない程度 の粘度が前記成分には必要である。 
 金型全面の平均温度を150℃と想定し、(b)成 と(c)成分の混合物の40℃における動粘度が10 0mm 2 /s以上になることを期待している。また、(b) 分および(c)成分の配合量が少ないと、金型 での潤滑膜が薄くなる。逆に、前記配合量 多すぎると、潤滑剤粘度の上昇によるスプ ー状態の不安定化や鍛造製品へのこびり付 (色残り)問題になることがある。これらの 題に対応するため、(b)成分の配合量を1~5質 部とし、酸化安定性の良い(c)成分も1~5質量 とする。上記(b)成分としては、例えば石油 鉱油、合成油、シリンダー油が挙げられる (c)成分としては、例えばジエステル、トリ ステル、トリメリテート・エステルやコン レックス・エステルが挙げられる。

 (2-3) 上記の(d)成分であるシリコーン油は高 温時の潤滑性を確保するもので、「40℃にお る動粘度が150mm 2 /s以上のシリコーン油を15質量部以下」とし いる。(d)成分も金型に付着し、約250℃~400℃ 高温で潤滑性を維持する。(d)成分は、(b)や( c)成分より高温の領域で潤滑性を維持するこ が期待されるので、40℃における動粘度は15 0mm 2 /s以上が好ましい。 
 なお、(d)成分のシリコーン油はジメチル・ リコーンを含めたどの市販のシリコーン油 も良い。しかし、塗装する場合は塗装が載 にくい場合があり、塗布量によってはジメ ル・シリコーンが好ましくない場合がある 塗装する場合、シリコーン油としては、例 ばアルキル・アラルキルまたはジメチルよ 長鎖のアルキル基を有するアルキル・シリ ーン油が好ましい。(d)成分を「15質量部以 」としたのは、15質量部を超えると金型にシ リコーン又はシリコーン分解物が堆積し、鋳 造製品の形状に悪影響を及ぼすからである。 なお、金型を低中温(250℃未満)で使用する場 、(e)成分として潤滑性能を有する添加剤を 加する。従って、シリコーン油は必ずしも 要ではなく、高温(250℃以上)で使用する場 は分解しにくいシリコーン油を用いる必要 ある。

 (2-4) 上記の(e)成分である潤滑性能を有す る添加剤は低中温度の潤滑性を確保するもの である。この添加剤としては、例えばナタネ 油、大豆油、ヤシ油、パーム油、牛油、豚脂 等の動植物油脂、脂肪酸エステル、ヤシ油脂 肪酸、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン 酸、パルチミン酸、牛脂脂肪酸等の高級脂肪 酸の一価アルコールエステル又は多価アルコ ールエステルに加え、有機モリブデン、油溶 性の石鹸、油性ワックスが挙げられる。有機 モリブデンとしては、例えばMoDDCやMoDTCが好 しい。アルミニウムとリン分が反応する可 性のあるMoDDPやMoDTPはあまり好ましくない。 溶性の石鹸としては、例えばCaまたはMgのス ルフォネート塩、フィネート塩、サリシレー ト塩が挙げられる。また、油溶性の石鹸とし ては、溶解性に難点はあるが、有機酸金属塩 が挙げられる。

 (3).請求項3に「濡れ性向上剤を更に0.1~3質 量部を含む」と記載した。金型の濡れ性を向 上することで、付着効率を向上できる。この 濡れ性向上剤としては、例えばアクリル・コ ポリマー又は引火点が100℃以下のアクリル変 性ポリシロキサンが挙げられる。濡れ性向上 剤は0.1質量部未満では効果は出ず、3質量部 超えると向上度合いがあまり増えない。

 (4).請求項4に「酸化防止剤を更に含む」と 載している。酸化防止剤の効果は、数秒油 の劣化を遅らせる程度である。しかし、そ 間に、鍛造が完了すれば、酸化防止効果の ることになる。高温に耐えられる組成と少 塗布の組合せで、予備成形時のワーク初期 度を高められる。その結果、本成形時のワ クの温度を高く保てるので、再昇温工程の 除が可能となる。 
 この成分である酸化防止剤としては、請求 5に述べるように、アミン系、フェノール系 、クレゾール系酸化防止剤からなる群から選 ばれる1種又は2種以上を含むことが出来る。

 また、前記アミン系酸化防止剤としては 例えば、モノノニルジフェニルアミン等の ノアルキルジフェニルアミン系、4,4’-ジブ チルフェニルアミン、4,4’-ジペンチルジフ ニルアミン、4,4’-ジヘキシルジフェニルア ン、4,4’-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4 ’-ジオクチルジフェニルアミン、4,4’-ジノ ルジフェニルアミン等のジアルキルジフェ ルアミン系、テトラブチルジフェニルアミ 、テトラヘキシルジフェニルアミン、テト オクチルジフェニルアミン、テトラノニル フェニルアミン等のポリアルキルジフェニ アミン系、a-ナフチルアミン、フェニル-a- フチルアミン、ブチルフェニル-a-ナフチル ミン、ペンチルフェニル-a-ナフチルアミン ヘキシルフェニル-a-ナフチルアミン、ヘプ ルフェニル-a-ナフチルアミン、オクチルフ ニル-a-ナフチルアミン等が挙げられる。

 前記フェニル系酸化防止剤としては、例 ば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、 2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、4,4-メ レンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2- メチレンビス(4-エチル-6-ブチルフェノール) 高分子量単環フェノリック、多環ターシャ ーブチル・フェノール、BHT(Butylated Hydroxy To luene)、BHA(Butylated Hydroxy Anisole)が挙げられる

 前記クレゾール系酸化防止剤としては、 えば、ジターシャリーブチルパラクレゾー 、2-6-ジーターシャリーブチル・ジメチルア ミノ-p-クレゾールが挙げられる。上述した酸 化防止剤のうち、BHTとアルキルジフェニルア ミン系の混合物が好ましい。

 (5).請求項6で「親油性を付与した白色粉 」と限定したのは、白色粉体を配合すると 油分や酸化防止剤が消耗した後でも、焼き を防止することが望めるからである。しか 、油性潤滑剤に粉体を混合すると沈降し易 なる。「粉体に親油性」を与えることで、 降を防止できる。この粉体としては、例え 有機粘土、脂肪酸で変性した炭酸カルシュ ムや軽石が挙げられる。この成分の量を「1~ 5質量部」としたのは、少量だと焼付き防止 が低く、多量だと沈降を起こし兼ねないか である。また、多ければ多いほど、作業環 の汚染が増える為である。

 (6).本発明においては、防錆剤、界面活性 剤、防腐剤、消泡剤、及びその他の添加剤( えば、極圧添加剤、粘度指数向上剤、清浄 散剤、着色剤、香料剤)を適宜配合して使用 ることができる。

 (7).請求項8に、「請求項2乃至6のいずれか に記載の油性鍛造用潤滑剤を金型にスプレー するための吐出機構と、この吐出機構と電気 的に接続され,吐出機構から吐出する油性鍛 用潤滑剤の量を制御する吐出条件制御機構 、金型の温度を制御する温度制御機構を具 する」と記載した。本開発品である少量塗 型の潤滑剤組成物を塗布する際は、従来の 溶性潤滑剤の10分の1から20分の1程度の塗布 となる。吐出機構には、霧化させるスプレ 部を有し、かつ、少量塗布に適した小径の プレーノズルを使うとよい。少量塗布を達 することで、サイクルタイムの短縮による 産性の向上、作業環境の悪化の防止や潤滑 補充頻度の低減も可能となる。潤滑剤の配 で少量塗布を可能とするばかりでなく、塗 方法を改善することで、少量塗布をより確 なものにできる。更に少量塗布の精度を高 るため、金型部分への過剰な塗布を避け、 質な油膜を形成するための塗布方法を次の うにする。

 (7-1) 吐出機構には、ON,OFFのニードル弁を 具備させる。その結果、金型の潤滑が必要な 部位にのみ精度よく塗布可能となる。配合に よる少量塗布に加え、塗布方法の最適化によ り、空気中への飛散の低減を実現できる。ま た、塗布速度を速めることで、生産性も向上 できる。

 (7-2) 吐出条件制御機構は、液圧とパイロ ットエアー圧で塗布状態を調整する機構であ る。また、塗布が完了次第、直ちにワークを 投入できる機構にする。その結果、スプレー 時間の短縮とワークを投入するタイミングの 短縮により、サイクルタイムを短縮でき、生 産効率を更に向上できる。例えば、吐出用ロ ボット・ティーチィング・プログラムの変更 により動きを速めることもできる。

 (7-3) 金型温度制御機構は、金型温度を熱 電対で計測し、金型に埋め込んだカートリッ ジ・ヒーターで金型温度を制御する機構であ る。特に予備成形時の型温度を200~250℃と、 来よりも100℃ほど高めに設定することで、 の後のワーク温度を高く保ち、成形荷重を 減でき、再昇温工程を省略できる場合があ 。よって、生産効率を高めることが可能に る。

 (実施例) 
 以下、本発明の具体的な実施例及び比較例 ついて説明する。しかし、本発明はこの配 、この油性潤滑剤に限定されるものではな 、絞り加工の用途に使われる油性型潤滑剤 も広く活用できる。

 (A)製造方法 
 まず、撹拌機を付帯する加熱可能なステン ス製釜に、高粘度鉱油、シリコーン油、菜 油、有機モリブデン、濡れ性向上剤、酸化 止剤を下記表4に示す質量%で混合した。つ いて、40℃に加温し、30分間攪拌した。次に これらの混合物に溶剤を表4に示す質量%添 した。更に、再度10分間攪拌して、油性潤滑 剤を製造した。

 (B)引火点の測定 
 JIS-K-2265に沿って、ペンスキーマルテン法で 測定した。 
 (C)粘度測定方法 
 JIK-2283に沿って40℃の粘度を測定した。 
 (D)付着量の測定方法 
 (D-1)準備 
 試験片としての鉄板(SPCC、100mm×100mm×1mm厚さ )を200℃,30分間オーブンで空焼きし、デシケ ターで一晩放冷した。その後、鉄板の質量 0.1mg単位まで計測した。

 (D-2)油性潤滑剤の塗布 
 図1は、付着量を測定するための塗布装置を 示す。図中の符番1は付着試験機の台を示す 電源・温度調節器2は、前記台1の一部上に設 けられている。ヒーター3を内蔵した鉄板架 4は、電源・温度調節器2の近くの台1上に設 られている。鉄板支持金具5は鉄板架台4の一 端側に設けられ、試験片(鉄板)6は前記鉄板支 持金具5の内側に配置されている。熱電対7a,7b は、前記ヒーター3、鉄板支持金具5に夫々接 されている。試験片6には、塗布用スプレー ノズル8から潤滑剤9がスプレーされるように っている。

 図1の塗布装置の操作は次のとおりである。  
 まず、塗布装置((株)山口技研製)の電源・温 度調節装置2を所定の温度に設定し、ヒータ 3で鉄板支持金具5を加熱する。ここで、熱電 対7aが設定温度に達したら、鉄板支持金具5に 試験片としての鉄板6を置き、熱電対7bを鉄板 6に密着させる。この後、鉄板6の温度が所定 温度に達したとき、スプレーノズル8から所 定の量の潤滑剤9を鉄板6に塗布する。その後 鉄板6を取り出し、空気中で垂直に一定時間 立てて放冷し、鉄板6から垂れ流れる油分を り捨てる。

 (D-3)付着量の測定方法 
 付着物の乗った鉄板6を所定の温度、所定の 時間オーブンに置いた後、取り出して空冷し 、デシケーターで一定時間放冷する。その後 、付着物の付いた鉄板6の質量を0.1mg単位まで 計測し、空試験と試験片の質量変化から付着 物量を算出する。

 (D-4)試験条件 
 下記表1に示す。

 (E)摩擦力の測定方法: 
 (E-1)摩擦試験方法 
 図2A,図2Bは、試験片の摩擦力を計測するた の方法を工程順に示す図である。図2A,図2Bの 摩擦試験の操作方法は次のとおりである。メ ックインターナショナル製の自動引張試験機 (商品名:LubテスターU)の摩擦測定用鉄板(SKD-61 、200mm×200mm×34mm)11は、図2Aのように熱電対12 を内蔵している。市販のヒーターで鉄板11を 熱する。この熱電対の指示が所定に達した ら、摩擦測定用鉄板11を垂直に立てる。前 付着性試験に示す条件で塗布ノズル13から潤 滑剤14を塗布する。

 直ちに、摩擦測定用鉄板11を図2Bのように 試験機架台15上に水平に置く。また、メック ンターナショナル製リング(S45C製、内径75mm 外径100mm、高さ50mm)16を中央に乗せる。続い 、そのリング16中に陶芸用溶解炉に溶かし あるアルミ溶湯(ADC-12、温度670℃)17を90cc注ぐ 。その後、40秒間放冷し、固化させる。更に 直ちに固化したアルミニウム(ADC-12)上に8.8kg の鉄製重し18を静かに乗せ、リング16を同装 のギヤーで矢印X方向に引っ張りながら、摩 力を計測する。

 (E-2)摩擦力測定条件 
 塗布条件は表1と同じ。摩擦力測定条件は、 下記表2の通り。

 (F)高圧下での摩擦試験:リング圧縮試験 
 図3A~図3Cは、リング圧縮試験の概略的な説 図である
 (F-1) 試験方法 
 試験方法は、日本塑性加工学会冷間鍛造分 会・温間鍛造研究班の文献(塑性と加工 Vol- 18, No.202 1977-11 )に述べられているリング圧 試験に準拠した試験方法である。

 (F-2)試験条件 
 試験条件は下記表3に示すとおりである。

 (G)成分と試験測定結果: 
 下記表4は、実施例1~4と比較例1~3の組成と付 着及び摩擦試験の測定結果を示す。

 但し、表4において、 
 *1 :石油系溶剤:シェルゾールTM(シェル・ケ カルズ・ジャパン製の商品名) 
 *2 :鉱油:ジョモ500SN(ジャパン・エナジー製 商品名、パラフィン基油) 
 *3 :高粘度鉱油:ブライトストック(ジャパン ・エナジー製の商品名、パラフィン基油) 
 *4 :エステル基油:Priolube 2046(ユニケマ製の 品名) 
 *5 :シリコーンTN:Release agent TN(旭化成ワッ ー製の商品名) 
 *6 :シリコーン1H:Wacker AK-10000 (旭化成ワッ ー製の商品名) 
 *7 :菜種油(名糖油脂工業) 
 *8 :有機モリブデン(MoDTC):アデカ 165(旭電化 工業製の商品名) 
 *9 :極圧剤:硫化エステル(大日本インキ製の 商品名) 
 *10 :油溶性金属石鹸:Infinium M7101(Infinium 製 商品名) 
 *11 :フェノール系酸化防止剤:ラスミットBHT (第一工業製薬製の商品名) 
 *12 :アミン系酸化防止剤:HiTEC 569 (アフト ・ケミカル製の商品名) 
 *13: ガラマイト 1958:(Southem Cray Products製の 商品名) 
 *14 :TMC-1001A(イーブンキール製の商品名、水 ガラス系)、20倍の水に希釈した液 
 *15 : WF:ホワイトルブ(大平化学産業製の商 名、水ガラス系)、7倍の水に希釈した液 
 *16 :WFR-3R:本出願人が製造している油性の鋳 造用離型剤:(青木科学製の商品名) 
 *17 :濡れ性向上剤、EFKA-3778(ウィルバーエリ ス製の商品名)
 (G-1)測定結果-1:付着と摩擦試験:同一塗布量 較 
 表4中の実施例1,2,3は油性の鍛造用潤滑油、 較例1、2は水溶性の鍛造潤滑剤、比較例3は 性の鋳造用離型剤である。比較例1及び比較 例2と同一塗布量で比較した付着量で見ると 実施例1~3は350℃で9~15mgレベルに対し、比較 1,2は0レベルと顕著に差が有った。即ち、実 例では厚い油膜が形成されているが、比較 の場合は薄い油膜しか形成されていない。 の結果、摩擦試験で示すように、実施例の 合は350℃まで焼付かないが、比較例1は300℃ で、比較例2の場合は350℃で焼付が発生して る。実施例の油性潤滑剤は付着が多く、厚 油膜が形成され、焼付にくく、水溶性潤滑 より優れている。

 (G-2)測定結果-2:付着と摩擦試験:同量の有効 分比較 
 下記表5は、実施例3、比較例1,2の塗布量と 擦の試験結果などを示す。

 表5中の実施例3、比較例1、比較例2の組成 は、表4と同じである。比較例の場合、鍛造 作業現場では、希釈して使っている。表4の 着量と摩擦力は、希釈された比較例と原液 実施例の比較である。作業現場的な「同一 布量比較」ではなく、より妥当な比較とす ための「同量の有効成分量比較」で潤滑剤 良否を検討した。比較例1の場合は7倍希釈 ので「7倍の塗布量」とし、比較例2の場合は 20倍希釈なので「20倍の塗布量」とし、実施 の「希釈なしの0.3cc塗布」と比較した。その 結果を表5に示す。

 付着量で見ると、比較例1は3mgレベル、比 較例2は4mgレベルであり、実施例3の9mgレベル り遥かに少ない。摩擦力で見ると、比較例1 は「焼付発生」、比較例2は6kgfレベルであり 実施例3は4~5レベルと低かった。同量有効成 分比較の結果でも、やはり実施例3の方が付 量及び摩擦力で優れていた。

 (G-3)測定結果-3:リング圧縮試験-1:油性対水 性の比較 
 下記表6は、比較例2,3,4のリング圧縮試験の 定結果を示す。

 図4は、リング圧縮試験機の概略的な説明 図を示す。図中の符番21,22は、夫々下ダイセ ト、上ダイセットを示す。ダイ23は下ダイ ット21上に配置され、試験片25は前記ダイ23 上に潤滑剤24を介して配置される。パンチ( 側)26は上ダイセット22の下面に配置され、潤 滑剤24は前記パンチ26の下面に塗布されてい 。

 こうした構成のリング圧縮試験機を使い 高圧下での摩擦を評価した。試験の概要は 上ダイセット22に固定されたパンチ26の下面 に潤滑剤24を塗布する。下ダイセット21に固 されたダイ23に潤滑剤24を塗布し、試験片25 乗せる。その後、矢印Aの方向に圧力を掛け 試験片25を変形させる。変形した試験片25の 内径縮小率から摩擦係数を読み取った。全て 比較例ではあるが、比較例3は実施例の潤滑 に近い組成の油性離型剤(表4参照)である。 潤滑の場合は、0.4と高い摩擦係数であるが 水溶性潤滑剤の比較例2の場合は0.167と低い 油性の比較例3の場合は0.095と更に低かった 実施例(油性)をこの条件では試験をしてはい ないが、油性の比較例3から推定し、油性潤 剤が有効と推測される。

 (G-4)測定結果―4:リング圧縮試験-2:実施例と 比較例 
 下記表7は、実施例3、比較例1,2,4のリング圧 縮試験の測定結果を示す。 
 上記表3に示すように、(G-3)項の条件より過 な条件(圧縮率を50から60%へ高め、リングの 径を10から30mmへ)で摩擦係数を検討した。水 溶性の比較例(摩擦係数が0.11)と油性の実施例 (摩擦係数が0.12)は、ほぼ同等のレベルであっ た。

 (G-5)測定結果-5:実機評価―A 
 下記表8は、実施例3,4及び比較例2の測定結 を示す。

 本出願者所有の実機―Aを使って、つぶし 曲げ成形(予備成形)時の潤滑性を評価した。 お、表8において、評価条件は、金型温度:25 0~280℃、荷重設定値:1600KN、ワーク温度:470~490 、素材:A6061合金である。

 評価に使った本発明に係る塗布装置の概 は、図3A,3B,3Cに示すとおりである。ここで 図3Aは同塗布装置の概略的な全体図である。 図3Bは図3Aの塗布装置の一構成であるスプレ ユニットの平面図である。図3Cは同塗布装置 における潤滑剤の流れを説明するための図で ある。

 塗布装置は、互に対向する上ダイセット3 1,下ダイセット32と、これらのダイセット31,32 の内側に夫々配置された上金型33及び下金型3 4を有している。カートリッジヒーター35a,35b 、上金型33、下金型34に夫々埋め込まれてい る。潤滑剤36を金型にスプレーするためのス レーロボット(吐出機構)37は、上金型33及び 金型34の近く配置されている。前記カート ッジヒーター35a,35bは昇温ユニット38に電気 に接続され、温度が調整されている。温度 御ユニット40は、前記上金型33,下金型34に埋 込まれた熱電対39a,39bの夫々と電気的に接続 されている。

 図3Bに示すように、前記スプレーロボッ 37は、スプレー出口に油性潤滑剤を供給する ための流路41とエアーを供給するための流路4 2が形成されたマニホールド43を備えている。 また、マニホールド43は、エアー圧により図 の右方向に押されるニードル弁44を備えて る。金型に埋め込まれた熱電対39a,39bに電気 に接続された昇温ユニット38により上金型33 及び下金型34の温度が調整されている。そし 、所定の温度に上金型33及び下金型34を加温 後、スプレーロボット37から潤滑剤36が上金 33及び下金型34に塗布される。その後、ワー が下金型33にセットされ成形を開始する。

 図3Cにおいて、符番45は油性潤滑剤タンク 、符番46は加圧ユニット、符番47はレギュレ ター、符番48は流量計を示す。油性潤滑剤タ ンク45に収容された油性潤滑剤は、加圧ユニ ト46によりレギュレーター47、流量計48を経 流路41に送られる。

 なお、吐出機構は、マニホールド43と、 性潤滑剤やエアーをマニホールド43に形成さ れた流路41,42に夫々供給するためのポンプ等 加圧ユニット46と、流量計48により構成され ている。また、吐出条件制御機構は、スプレ ーユニット37のニードル弁44と、これを駆動 る図示しない駆動源により構成されている 更に、温度制御機構は、カートリッジヒー ー35a,35bと、熱電対39a,39bと、昇温ユニット38 、温度制御ユニット40により構成されてい 。

 このように、本発明に係る塗布装置は、 性鍛造用潤滑剤を上金型33及び下金型34にス プレーするための吐出機構37と、この吐出機 37と電気的に接続され,吐出機構37から吐出 る油性鍛造用潤滑剤の量を制御する吐出条 制御機構と、金型の温度を制御する温度制 機構を具備している。

 つぶし曲げ成形の際の平均面圧は120MPa、 大すべり距離は50mmであった。評価結果を上 記表8にまとめる。水溶性の比較例2と同じ荷 を掛けた場合、実施例3での平均ワーク厚さ が44.1mmと比較例より1.5mm厚かった。同じ力で 大きく塑性変形するほうが潤滑性能は良い( ワーク厚みが少ない)。しかし、目標ワーク さは43~45mmであり、実施例3の潤滑性は実用範 囲内である。実施例3の塗布量は3.2ccと比較例 2の約1/20の量であり、実施例3は少量塗布でも 成形可能である。また、粉体含有の実施例4 場合でも、比較例2の約1/10の量の塗布量であ った。ワーク厚さは44.7mmであったが、目標ワ ーク厚さは43~45mmの範囲内であり成型可能で る。

 また、塗布液中の蒸発分を除去した有効 分%から計算で求めた有効成分量は、実施例 3で0.73g、比較例で1.21gであり、実施例3は40%ほ ど付着効率良いと言える。更に、実施例3の 徴として、次のことが観察された。比較例2 場合、1ショット目は2ショット目以降に比 潤滑性が悪かったが、実施例3の場合は1ショ ット目から安定した潤滑性が得られた。これ により、生産開始時の1ショット目の不良品( わゆる捨打ち)を防止できる。即ち、実施例 3は生産効率の向上に貢献できる。また、実 例3は固形成分を含まないので、連続的な鍛 品の生産時に装置周りを汚すことがない。

 一方、比較例2の場合、連続成形すると、 固形分がどんどん堆積する。時に生産を中断 し、金型や装置周りの清掃が必要となる。加 えて、比較例2を使うと、吐出待機中に塗布 スプレーのノズル部分に固形分が固着し、 布量が不安定となる。その結果、製品の品 が悪化してくる。対策として、時折、生産 中断しノズルを清掃しているのが現状であ 。しかし、実施例3の場合、固形物を含まな ので、製品の品質のバラツキがなく、かつ 生産を中断することもない。

 即ち、比較例2に比べ、油性の実施例3の 滑性は同等または若干劣るが、許容できる 囲である。一方、油性の実施例3の顕著な特 は、使用量の大幅な低減と比較例の固形分 よる問題点を解消できる点である。

 (G-6)測定結果-6:実機評価-B 
 下記表9は、実施例2,3及び比較例1,2の測定結 果を示す。

評価条件は、金型温度:200℃、ワーク温度:4 00℃、素材:アルミ2000番系である。

 (G-5)項の実機―Aによる評価に加え、本開 品の効果を他の装置でも確認するため、本 願者所有の実機―Bによる評価も実施した。 平均面圧350MPa、最大すべり距離:40mmの条件で った。表9に、厚み「20.2mm」の鍛造製品を生 産するための塗布条件と評価結果を示す。実 施例、比較例共にカジリや凝着がなく、成形 が出来た。しかしながら、比較例と比べた実 施例には、長短がある。長所としては、実施 例は少量塗布のため冷却性が殆んど無いので 成形前後のワーク温度低下度が少ない。その 結果、予備成形から本成形へ移る際に再昇温 工程を挟む必要が無く、1回の加温で連続成 が可能となる。

 即ち、実施例は、連続成形に適しており 大きな特徴である。短所としては、成形に 要な荷重が高いことである。比較例2、比較 例1、実施例2、実施例3の順で成形荷重が大き くなり、比較例2が最も低く、良好である。 施例の場合、「20.2mm」の厚みとするため、 イセット間の距離を縮めることで、対応し 。表9に見られるように、塗布した有効成分 と必要な荷重に関係があり、実施例3のよう に有効成分量が少ないと(油膜が厚さ薄い)と 必要な荷重は高くなる模様である。逆に言 ば、塗布した有効成分の最も多い比較例2が 最も少ない荷重で20.2mmの製品を成形したと推 定する。

 即ち、油性の実施例は成形能力が有りカ リや凝着を起こさず、連続成形に適してい が、高い荷重が必要である。しかしながら 油性の潤滑剤には、「再昇温工程の削減」 よる生産効率の向上、及び、G-5項に述べる うな長所の「装置汚れなし」、「スプレー ズル詰りなし」等があり、生産効率の向上 期待できる。

 (G-7)測定結果-7:まとめ
 (G-1)から(G-6)までに述べた試験結果のまとめ として、比較例を基準にした油性潤滑剤であ る実施例の長短を下に述べる。 
 1.付着効率が良い。水が配合されていない でライデンフロストが起こりにくく、付着 率が高いと考える。 
 2.同じ摩擦・潤滑性を与えるのに必要な塗 量は1/10以下である。これは付着効率が高い けでなく、金属の潤滑に優れた成分を含ん いるからである。

 3.実機の評価でも同等の潤滑性を与えるた の塗布量は少なかった。その結果、液残り( 滑剤が金型上から揮発せずに液体として存 すること)に起因する欠肉不具合の低減が期 待できる。また、装置及びノズル周りの清掃 頻度の低減も期待できる。 
 4.塗布量が少ないので金型を冷却せず、予 成形中のワークの温度低下が少ない。その め、適用している成形工程によっては、予 成形後の再昇温工程を省ける場合がある。 ち、連続成形に向いている。

 5.高圧下でのリング圧縮試験では、ほぼ同 の潤滑性を示している。一方、実機では、 干成形荷重が高かった。塗布量が少ないこ もこの一因と推測する。 
 6.装置・金型での堆積は起こりにくい。こ は、固形分を含まないためである。従って 装置及び装置周りの清掃がないので、生産 率が良い。

 7.固形分を含まない潤滑剤であるので塗 量は均一であり、かつ、スプレーノズルを まらせない。その結果、次の効果をもたら ものと期待できる。水溶性潤滑剤ではノズ 詰りによる塗布量低下に起因する潤滑膜切 、凝着やワークの金型へのハリツキが起こ ていた。また、水溶性潤滑剤では液遮断部 の固形物の堆積のため液を遮断できない状 がしばしば発生していた。そのため、多量 潤滑油塗布による欠肉欠陥も発生していた 油性潤滑油は、固形物を含まないので、こ ような問題が起こらず、生産効率を向上で る。一方、少量の親油性を付与した白色粉 を混合した場合でも、成形性は確保できる とが確認された。少量であれば作業環境の 染は従来の潤滑剤より少ないと考えられる また、親油性を付与した粉体であるので分 性が良く、液遮断部位に堆積することも少 いと推測される。

 8.少量塗布であるので、サイクルタイムの 縮が可能である。波及効果ではあるが、水 含まないので金型を冷却することがなく、 型での熱疲労が発生せず、金型寿命が大幅 伸びることが期待される。 
 9.高温潤滑性があるので、金型温度を高め れる。その結果、成形工程数の多い場合、 の工程での成形荷重を下げられるので、第2 程以降の金型の寿命が延びる。 
 10.水を含まない潤滑剤であるので廃水処理 不要である。

 11. 塗布方法の改善により、均質な塗布、 量の塗布が効果を発揮し、上記の1-10項に述 る成果と相乗効果を発揮した。加えて、「 機―B評価」の場合は、本成形に入る前の再 昇温工程を削除できた。 
 12.本開発品の更なる長所として、潤滑剤補 頻度の低減も可能となり、また、固形物を まないためタンクの攪拌も不要となった。

本発明の油性潤滑剤は、非鉄金属あるいは 鉄を鍛造する際の塗布に適し、金型表面の潤 滑にも適している。また、油性型潤滑剤を使 っている絞り加工にも適している。