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Title:
ORGANIC FIELD EMITTING ELEMENT AND METHOD FOR MANUFACTURING ORGANIC DEVICE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/099926
Kind Code:
A1
Abstract:
Increase of a driving voltage of an organic field emitting element when a constant current is carried and deterioration of luminance when electricity is carried are suppressed, and a driven service life is lengthened. The organic field emitting element is composed of a substrate, an anode and a cathode arranged on the substrate and a plurality of organic layers arranged between the anode and the cathode. The organic layers include at least a first layer formed by polymerizing a polymerizable compound, and a second layer, which is arranged adjacent to the first layer and contains a polymerization initiator.

Inventors:
OGATA TOMOYUKI (JP)
OKABE KAZUKI (JP)
IIDA KOICHIRO (JP)
YABE MASAYOSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/052546
Publication Date:
August 21, 2008
Filing Date:
February 15, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MITSUBISHI CHEM CORP (JP)
OGATA TOMOYUKI (JP)
OKABE KAZUKI (JP)
IIDA KOICHIRO (JP)
YABE MASAYOSHI (JP)
International Classes:
H01L51/50; H05B33/10
Foreign References:
JP2001303038A2001-10-31
JP2004103401A2004-04-02
JP2003073666A2003-03-12
JP2001297882A2001-10-26
JPH09153641A1997-06-10
JPH0785973A1995-03-31
JPH10270171A1998-10-09
JP2002100478A2002-04-05
JP2002100482A2002-04-05
Other References:
ADVANCED MATERIALS, vol. 18, 2006, pages 948 - 954
Attorney, Agent or Firm:
SANADA, Tamotsu (10-31 Kichijoji-honcho 1-chome,Musashino-shi, Tokyo 04, JP)
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Claims:
 基板と、該基板上に設けられた陽極及び陰極と、該陽極と該陰極との間に配置された複数の有機層とを備えた有機電界発光素子であって、
 該複数の有機層が、重合性化合物を重合して形成される第1の層と、該第1の層に隣接して設けられる、重合反応開始剤を含有する第2の層とを少なくとも含んでなる
ことを特徴とする、有機電界発光素子。
 該複数の有機層が、更に、発光層を含んでなり、
 該発光層、該第1の層、該第2の層が、この順に配置される
ことを特徴とする、請求項1記載の有機電界発光素子。
 該第1の層が正孔輸送層であり、該第2の層が正孔注入層である
ことを特徴とする、請求項2記載の有機電界発光素子。
 該第2の層における重合反応開始剤の含有率が0.1重量%以上である
ことを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の有機電界発光素子。
 重合性化合物を重合して形成される第1の層と、該第1の層に隣接して設けられ、重合反応開始剤を含有する第2の層とを少なくとも含む、複数の有機層を備えた有機デバイスを製造する方法において、
 重合反応開始剤を含有する組成物を成膜して、該第2の層を形成する工程と、
 該重合性化合物を含有する組成物を成膜して、該重合性化合物を含有する層を形成する工程と、
 該重合性化合物を重合させて、該第1の層を形成する工程とを備える
ことを特徴とする、有機デバイスの製造方法。
 該有機デバイスが、基板と、該基板上に設けられた陽極及び陰極とを更に備えた、有機電界発光素子であって、
 該第1の層及び該第2の層を含む該複数の有機層を、該陽極と該陰極との間に形成することを特徴とする、請求項5記載の有機デバイスの製造方法。
 基板と、該基板上に設けられた陽極及び陰極と、該陽極と該陰極との間に配置された発光層と、重合性化合物を重合して形成される重合層と、該重合層に対して該発光層とは反対側で隣接するとともに重合反応開始剤を含有する隣接層とを備えた有機電界発光素子であって、
 XPS法により算出した該隣接層の該重合層側表面部に含まれる該重合反応開始剤以外の成分の分子数に対する、XPS法により算出した該隣接層の該重合層側表面部に含まれる該重合反応開始剤の分子数の割合(%)(QA)と、XPS法により算出した該重合層の発光層側表面に含まれる該重合反応開始剤以外の成分の分子数に対する、XPS法により算出した該重合層の発光層側表面部に含まれる該重合反応開始剤の分子数の割合(%)(QB)との比(QB/QA)が、
 QB/QA < 0.5
であることを特徴とする、有機電界発光素子。
Description:
有機電界発光素子及び有機デバ スの製造方法

 本発明は、重合性化合物を重合して形成 れる層を有する有機電界発光素子と、重合 化合物を重合して形成される層を有する有 デバイスの製造方法に関する。

 近年、有機薄膜を用いた電界発光素子(有 機電界発光素子)の開発が行なわれている。 機電界発光素子における有機薄膜(有機層)の 形成方法としては、真空蒸着法と湿式成膜法 が挙げられる。

 真空蒸着法は積層化が容易であるため、陽 及び/又は陰極からの電荷注入の改善、励起 子の発光層封じ込めが容易であるという利点 を有する。
 一方、湿式成膜法は、真空プロセスが要ら 、大面積化が容易で、1つの層(塗布液)に様 な機能を有する複数の材料を混合して入れ ことが容易である、等の利点がある。

 しかしながら、湿式成膜法は積層化が困難 あるため、真空蒸着法による素子に比べて 動安定性に劣り、一部を除いて実用レベル 至っていないのが現状である。
 特に、湿式成膜法での有機層の積層化は、 機溶剤と水系溶剤とを使用する等の手法に り、二層の積層は可能であるが、三層以上 積層化は困難であった。

 このような有機層の積層化における課題を 決するために、例えば特許文献1では、エポ キシ基を有するジアミン化合物を含有する溶 液を成膜した後、重合させることにより、有 機電界発光素子の有機層を形成する工程が開 示されている。
 また、例えば非特許文献1では、オキセタン 基を有するジアミン化合物を含有する溶液を 成膜した後、重合させることにより、有機電 界発光素子の正孔輸送層を形成する工程が開 示されている。
 これらの方法によれば、湿式成膜法により 溶剤性を備えた有機層を形成することがで 、2層以上の有機層を積層することが可能で ある。

特開平7-85973号公報 Advanced Materials 2006, 18, 948-954.

 しかしながら、上記の特許文献1及び非特 許文献1に記載の技術のように、重合性化合 を重合させて有機層を形成する場合、重合 化合物と共に重合反応開始剤が使用される 、この重合反応開始剤が通電時に分解され 発生した生成物等が、発光層への電荷注入 発光層内での電荷移動の妨げとなり、得ら る素子の定電流通電時の駆動電圧が上昇し り、通電時の輝度安定性が低下したりして 駆動寿命が短くなるという課題があった。

 本発明は、上述の課題に鑑みてなされたも である。
 即ち、本発明の目的は、重合性化合物を重 して形成される層を有する有機電界発光素 であって、定電流通電時の駆動電圧の上昇 通電時の輝度の低下が少なく、駆動寿命に れた有機電界発光素子を提供することであ 。
 また、本発明の別の目的は、重合性化合物 重合して形成される層を有する有機デバイ を製造する方法であって、主たる機能を発 する層の化学的安定性が向上した有機デバ スの製造方法を提供することである。

 本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検 した結果、以下の知見を得た。即ち、重合 化合物を含有する組成物を成膜し、重合性 合物を重合して有機層を形成する際に、通 は重合性化合物とともに組成物中に含有さ る重合反応開始剤を、あえて重合性化合物 重合して形成される層とは異なる層に含有 せたところ、意外にも重合性化合物の重合 進行して有機層が形成されるとともに、上 課題が解消された素子が得られることを見 し、本発明に到達した。

 即ち、本発明の要旨は、基板と、該基板 に設けられた陽極及び陰極と、該陽極と該 極との間に配置された複数の有機層とを備 た有機電界発光素子であって、該複数の有 層が、重合性化合物を重合して形成される 1の層と、該第1の層に隣接して設けられる 重合反応開始剤を含有する第2の層とを少な とも含んでなることを特徴とする、有機電 発光素子に存する(請求項1)。

 ここで、該複数の有機層が、更に発光層 含んでなり、該発光層、該第1の層、該第2 層が、この順に配置されることが好ましい( 求項2)。

 また、該第1の層が正孔輸送層であり、該 第2の層が正孔注入層であることが好ましい( 求項3)。

 また、該第2の層における重合反応開始剤 の含有率が、0.1重量%以上であることが好ま い(請求項4)。

 また、本発明の別の要旨は、重合性化合 を重合して形成される第1の層と、該第1の に隣接して設けられ、重合反応開始剤を含 する第2の層とを少なくとも含む、複数の有 層を備えた有機デバイスを製造する方法に いて、重合反応開始剤を含有する組成物を 膜して、該第2の層を形成する工程と、該重 合性化合物を含有する組成物を成膜して、該 重合性化合物を含有する層を形成する工程と 、該重合性化合物を重合させて、該第1の層 形成する工程とを備えることを特徴とする 有機デバイスの製造方法に存する(請求項5)

 ここで、該有機デバイスが、基板と、該 板上に設けられた陽極及び陰極とを更に備 た、有機電界発光素子であって、該第1の層 及び該第2の層を含む該複数の有機層を、該 極と該陰極との間に形成することが好まし (請求項6)。

 本発明のさらに別の要旨は、基板と、該 板上に設けられた陽極及び陰極と、該陽極 該陰極との間に配置された発光層と、重合 化合物を重合して形成される重合層と、該 合層に対して該発光層とは反対側で隣接す とともに重合反応開始剤を含有する隣接層 を備えた有機電界発光素子であって、XPS法 より算出した該隣接層の該重合層側表面部 含まれる該重合反応開始剤以外の成分の分 数に対する、XPS法により算出した該隣接層 該重合層側表面部に含まれる該重合反応開 剤の分子数の割合(%)(QA)と、XPS法により算出 した該重合層の発光層側表面に含まれる該重 合反応開始剤以外の成分の分子数に対する、 XPS法により算出した該重合層の発光層側表面 部に含まれる該重合反応開始剤の分子数の割 合(%)(QB)との比(QB/QA)が、0.5未満であることを 徴とする、有機電界発光素子に存する(請求 項7)。

 本発明によれば、重合性化合物を重合して 成される層を有する有機電界発光素子であ て、定電流通電時の駆動電圧の上昇や通電 の輝度の低下が少なく、駆動寿命に優れた 機電界発光素子を得ることができる。
 また、本発明によれば、重合性化合物を重 して形成される層を有する有機デバイスを 造する方法であって、主たる機能を発現す 層の化学的安定性が向上した有機デバイス 、容易に且つ効率的に製造することができ 。

本発明の一実施形態に係る有機電界発 素子の層構成を模式的に示す断面図である 本発明の好ましい態様を説明するため 有機電界発光素子の層構成を部分的に示す 式的な断面図である。 本発明の実施例で製造した有機電界発 素子の層構成を模式的に示す断面図である

符号の説明

 1 基板
 2 陽極
 3 正孔注入層
 4 正孔輸送層
 5 発光層
 6 正孔阻止層
 7 電子注入層
 8 陰極
 9 電子輸送層
 100 有機電界発光素子

 以下、本発明を詳細に説明するが、本発 は以下の説明に限定されるものではなく、 の要旨の範囲内において種々に変更して実 することができる。

[I.基本構成]
 本発明の有機電界発光素子は、基板と、前 基板上に設けられた陽極及び陰極と、前記 陽極と陰極との間に配置された複数の有機 とを備える。
 そして、複数の有機層のうち2層が、重合性 化合物を重合して形成される層(これを「第1 層」という。)、及び、重合反応開始剤を含 有する層(これを「第2の層」という。)であっ て、これらが隣接して設けられることを特徴 としている。

 〔I-1.重合性化合物〕
 本発明において「重合性化合物」とは、重 性基を有する有機化合物である。ここで「 合性基」とは、近傍に位置する他の分子の 一又は異なる基と反応して、新規な化学結 を生成する基のことをいう。例えば、熱及 /又は活性エネルギー線の照射により、ある いは、増感剤などの他分子からエネルギーを 受け取ることにより、近傍に位置する他の分 子の同一又は異なる基と反応して新規な化学 結合を生成する基が挙げられる。

 重合性化合物は、その構造によって、繰 返し単位を有するものと有しないものとに けられる。本発明に係る重合性化合物は前 重合性基を有する化合物であればよく、特 制限があるものではない。中でも、高純度 が容易な点で繰り返し単位を有さない重合 化合物が好ましく、また、成膜性に優れる で繰り返し単位を有する重合性化合物が好 しい。したがって、重合性化合物は、重合 基を有するモノマー(単量体)、並びにこれ のモノマーが重合してなるオリゴマー及び リマーのいずれであってもよい。なお、本 細書では便宜上、「オリゴマー」とは重合 が2から20程度の低重合体をいい、「ポリマ 」とは重合度が20を超える高重合体をいうも のとする。

 重合性基としては、制限されるものではな が、不飽和二重結合、環状エーテル、ベン シクロブタン等を含む基が好ましい。
 中でも、重合性基としては、不溶化し易い いう点から、下記重合性基群Tから選ばれる 基が好ましい。

・重合性基群T:

 上記式中、R 91 ~R 95 は、各々独立に、水素原子又はアルキル基を 表わす。
 Ar 91 は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基 又は置換基を有してもよい芳香族複素環基を 表わす。

 とりわけ、重合性基としては、電気化学 耐久性に優れるという点から、下記重合性 群T’から選ばれる基であることが好ましい 。

・重合性基群T’

 重合性化合物は、高純度化が容易な点、 び、性能のぶれを小さくできる点で、繰り し単位を有さない重合性化合物であること 好ましい。また、成膜性が優れる点で、繰 返し単位を有する重合性化合物であること 好ましい。

 重合性化合物の具体例としては、トリアリ ルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、フ オレン誘導体、2,4,6-トリフェニルピリジン 導体、C 60 誘導体、オリゴチオフェン誘導体、フタロシ アニン誘導体、ポルフィリン誘導体、縮合多 環芳香族誘導体、金属錯体誘導体等が挙げら れる。

 中でも、電気化学的安定性及び電荷輸送性 高いという理由から、下記式で表わされる 分構造と重合性基とを有する化合物が特に ましい。

 特に好ましい重合性化合物のうち、繰り返 単位を有さないものの具体例としては、以 に示す構造の化合物が挙げられる。

 一方、特に好ましい重合性化合物のうち、 り返し単位を有するものの具体例としては 以下に示す構造の化合物が挙げられる。

 なお、重合性化合物は、何れか一種を単 で使用してもよく、二種以上を任意の比率 び組み合わせで併用してもよい。

 本発明に係る重合性化合物が繰り返し単位 有さない場合、重合性化合物の重量平均分 量は、通常300以上、好ましくは500以上、ま 、通常5000以下、好ましくは2500以下の範囲 ある。繰り返し単位を有さない重合性化合 の重量平均分子量が小さ過ぎると電荷輸送 が低下する場合があり、大き過ぎると溶解 が低下する場合がある。
 一方、本発明に係る重合性化合物が繰り返 単位を有する場合、重合性化合物の重量平 分子量は、通常500以上、好ましくは2000以上 、より好ましくは4000以上、また、通常2,000,00 0以下、好ましくは500,000以下、より好ましく 200,000以下の範囲である。繰り返し単位を有 する重合性化合物の重量平均分子量がこの下 限値を下回ると、重合性化合物の成膜性が低 下する可能性があり、また、重合性化合物の ガラス転移温度、融点および気化温度が低下 するため耐熱性が著しく損なわれる可能性が ある。また、重量平均分子量がこの上限値を 超えると、不純物の高分子量化によって重合 性化合物の精製が困難となる可能性がある。

 なお、この重量平均分子量はSEC(サイズ排 除クロマトグラフィー)測定により決定され 。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなる 、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶 出時間から算出した校正曲線を用いて、サン プルの溶出時間を分子量に換算することによ って、重量平均分子量及び数平均分子量が算 出される。

 〔I-2.重合反応開始剤〕
 本発明において「重合反応開始剤」とは、 又は光等の活性エネルギー線の照射により 解し、重合性化合物の重合反応の開始を促 する活性種のことをいう。重合反応開始剤 例を挙げると、カチオン、ラジカル、アニ ン等を生成する化合物、光等の活性エネル ー線の照射によって生成した励起エネルギ を効率よく重合性化合物へと伝達する化合 などが挙げられる。

 重合反応開始剤としては、例えば、有機 酸化物、フェニルアルキルケトン、有機オ ウム塩等が挙げられる。これらの中では、 機オニウム塩が好ましい。

 具体的に、有機過酸化物の例としては、 酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化 ウロイル、過酸化t-ジブチル等が挙げられ 。

 フェニルアルキルケトンの具体例として 、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製  ルガキュア651、イルガキュア184、ダロキュ 1173等が挙げられる。

 有機オニウム塩の例としては、有機ヨー ニウム塩、有機スルホニウム塩等が挙げら る。中でも、強い酸化力と高い溶解性とを 立する点から、下記式(I-1)~(I-3)で表わされ 有機オニウム塩が特に好ましい。

 上記式(I-1)~(I-3)中、R 11 、R 21 及びR 31 は、各々独立に、A 1 ~A 3 と炭素原子で結合する有機基を表わす。R 12 、R 22 、R 23 及びR 32 ~R 34 は、各々独立に、任意の基を表わす。R 11 ~R 34 のうち隣接する2以上の基が、互いに結合し 環を形成していてもよい。
 A 1 ~A 3 は何れも周期表第3周期以降の元素であって A 1 は長周期型周期表の第17族に属する元素を表 し、A 2 は長周期型周期表の第16族に属する元素を表 し、A 3 は長周期型周期表の第15族に属する元素を表 す。
 Z 1 n1- ~Z 3 n3- は、各々独立に、対アニオンを表わす。
 n1~n3は、各々独立に、対アニオンのイオン を表わす。)

 上記式(I-1)~(I-3)中、R 11 、R 21 及びR 31 は、各々独立に、A 1 ~A 3 と炭素原子で結合する有機基を表わし、R 12 、R 22 、R 23 及びR 32 ~R 34 は、各々独立に、任意の置換基を表わす。R 11 ~R 34 のうち隣接する2以上の基が、互いに結合し 環を形成していてもよい。

 R 11 、R 21 及びR 31 としては、A 1 ~A 3 との結合部分に炭素原子を有する有機基であ れば、本発明の趣旨に反しない限り、その種 類は特に制限されない。R 11 、R 21 及びR 31 の分子量は、それぞれ、その置換基を含めた 値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範 である。R 11 、R 21 及びR 31 の好ましい例としては、正電荷を非局在化さ せる点から、アルキル基、アルケニル基、ア ルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素 環基が挙げられる。中でも、正電荷を非局在 化させるとともに熱的に安定であることから 、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好 ましい。

 芳香族炭化水素基としては、5又は6員環 単環又は2~5縮合環由来の1価の基であり、正 荷を当該基上により非局在化させられる基 挙げられる。その具体例としては、ベンゼ 環、ナフタレン環、アントラセン環、フェ ントレン環、ペリレン環、テトラセン環、 レン環、ベンズピレン環、クリセン環、ト フェニレン環、アセナフテン環、フルオレ 環等の由来の一価の基が挙げられる。

 芳香族複素環基としては、5又は6員環の 環又は2~4縮合環由来の1価の基であり、正電 を当該基上により非局在化させられる基が げられる。その具体例としては、フラン環 ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチ フェン環、ピロール環、ピラゾール環、ト アゾール環、イミダゾール環、オキサジア ール環、インドール環、カルバゾール環、 ロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環 ピロロピロール環、チエノピロール環、チ ノチオフェン環、フロピロール環、フロフ ン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサ ール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾ ミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、 リダジン環、ピリミジン環、トリアジン環 キノリン環、イソキノリン環、シノリン環 キノキサリン環、フェナントリジン環、ベ ゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾ ン環、キナゾリノン環、アズレン環等の由 の一価の基が挙げられる。

 アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状 は環状のアルキル基であって、その炭素数 通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6 以下のものが挙げられる。具体例としては、 メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロ ル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチ 基、シクロヘキシル基等が挙げられる。

 アルケニル基としては、炭素数が通常2以 上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙 げられる。具体例としては、ビニル基、アリ ル基、1-ブテニル基等が挙げられる。

 アルキニル基としては、炭素数が通常2以 上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙 げられる。具体例としては、エチニル基、プ ロパルギル基等が挙げられる。

 R 12 、R 22 、R 23 及びR 32 ~R 34 の種類は、本発明の趣旨に反しない限り特に 制限されない。R 12 、R 22 、R 23 及びR 32 ~R 34 の分子量は、それぞれ、その置換基を含めた 値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範 である。R 12 、R 22 、R 23 及びR 32 ~R 34 の例としては、アルキル基、アルケニル基、 アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複 素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリーロ キシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基 、アリーロキシカルボニル基、アルキルカル ボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリール チオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル 基、アリールスルホニル基、シアノ基、水酸 基、チオール基、シリル基等が挙げられる。 中でも、R 11 、R 21 及びR 31 と同様、電子受容性が大きい点から、A 1 ~A 3 との結合部分に炭素原子を有する有機基が好 ましく、例としては、アルキル基、アルケニ ル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳 香族複素環基が好ましい。特に、電子受容性 が大きいとともに熱的に安定であることから 、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好 ましい。

 アルキル基、アルケニル基、アルキニル基 芳香族炭化水素基、芳香族複素環基として 、R 11 、R 21 及びR 31 について先に説明したものと同様のものが挙 げられる。

 アミノ基としては、アルキルアミノ基、 リールアミノ基、アシルアミノ基等が挙げ れる。

 アルキルアミノ基としては、炭素数が通 1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下 のアルキル基を1つ以上有するアルキルアミ 基が挙げられる。具体例としては、メチル ミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミ 基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。

 アリールアミノ基としては、炭素数が通 3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下 、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は 香族複素環基を1つ以上有するアリールアミ ノ基が挙げられる。具体例としては、フェニ ルアミノ基、ジフェニルアミノ基、トリルア ミノ基、ピリジルアミノ基、チエニルアミノ 基等が挙げられる。

 アシルアミノ基としては、炭素数が通常2 以上、また、通常25以下、好ましくは15以下 アシル基を1つ以上有するアシルアミノ基が げられる。具体例としては、アセチルアミ 基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。

 アルコキシ基としては、炭素数が通常1以 上、また、通常12以下、好ましくは6以下のア ルコキシ基が挙げられる。具体例としては、 メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙 げられる。

 アリールオキシ基としては、炭素数が通 3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下 、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は 香族複素環基を有するアリールオキシ基が げられる。具体例としては、フェニルオキ 基、ナフチルオキシ基、ピリジルオキシ基 チエニルオキシ基等が挙げられる。

 アシル基としては、炭素数が通常1以上、 また、通常25以下、好ましくは15以下のアシ 基が挙げられる。具体例としては、ホルミ 基、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げら る。

 アルコキシカルボニル基としては、炭素 が通常2以上、また、通常10以下、好ましく 7以下のアルコキシカルボニル基が挙げられ る。具体例としては、メトキシカルボニル基 、エトキシカルボニル基等が挙げられる。

 アリールオキシカルボニル基としては、 素数が通常3以上、好ましくは4以上、また 通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化 素基又は芳香族複素環基を有するものが挙 られる。具体例としては、フェノキシカル ニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が げられる。

 アルキルカルボニルオキシ基としては、 素数が通常2以上、また、通常10以下、好ま くは7以下のアルキルカルボニルオキシ基が 挙げられる。具体例としては、アセトキシ基 、トリフルオロアセトキシ基等が挙げられる 。

 アルキルチオ基としては、炭素数が通常1 以上、また、通常12以下、好ましくは6以下の アルキルチオ基が挙げられる。具体例として は、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げら れる。

 アリールチオ基としては、炭素数が通常3 以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、 好ましくは14以下のアリールチオ基が挙げら る。具体例としては、フェニルチオ基、ナ チルチオ基、ピリジルチオ基等が挙げられ 。

 アルキルスルホニル基及びアリールスル ニル基の具体例としては、メシル基、トシ 基等が挙げられる。

 スルホニルオキシ基の具体例としては、 シルオキシ基、トシルオキシ基等が挙げら る。

 シリル基の具体例としては、トリメチル リル基、トリフェニルシリル基など挙げら る。

 以上、R 11 、R 21 、R 31 、R 12 、R 22 、R 23 、及びR 32 ~R 34 として例示した基は、本発明の趣旨に反しな い限りにおいて、更に他の置換基によって置 換されていてもよい。置換基の種類は特に制 限されないが、例としては、上記R 11 、R 21 、R 31 、R 12 、R 22 、R 23 、及びR 32 ~R 34 としてそれぞれ例示した基の他、ハロゲン原 子、シアノ基、チオシアノ基、ニトロ基等が 挙げられる。中でも、耐熱性及び電子受容性 の妨げにならない観点から、アルキル基、ア ルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、 アリールオキシ基、芳香族炭化水素基、芳香 族複素環基が好ましい。

 式(I-1)~(I-3)中、A 1 ~A 3 は、何れも周期表第3周期以降(第3~第6周期)の 元素であって、A 1 は、長周期型周期表の第17族に属する元素を わし、A 2 は、第16族に属する元素を表わし、A 3 は、第15族に属する元素を表わす。

 中でも、電子受容性及び入手容易性の観点 ら、周期表の第5周期以前(第3~第5周期)の元 が好ましい。即ち、A 1 としてはヨウ素原子、臭素原子、塩素原子の うち何れかが好ましく、A 2 としてはテルル原子、セレン原子、硫黄原子 のうち何れかが好ましく、A 3 としてはアンチモン原子、ヒ素原子、リン原 子のうち何れかが好ましい。

 特に、電子受容性、化合物の安定性の面か 、式(I-1)におけるA 1 が臭素原子又はヨウ素原子である化合物、又 は、式(I-2)におけるA 2 がセレン原子又は硫黄原子である化合物が好 ましく、中でも、式(I-1)におけるA 1 がヨウ素原子である化合物が特に好ましい。

 式(I-1)~(I-3)中、Z 1 n1- ~Z 3 n3- は、各々独立に、対アニオンを表わす。対ア ニオンの種類は特に制限されず、単原子イオ ンであっても錯イオンであってもよい。但し 、対アニオンのサイズが大きいほど負電荷が 非局在化し、それに伴い正電荷も非局在化し て電子受容能が大きくなるため、単原子イオ ンよりも錯イオンの方が好ましい。

 n1~n3は、各々独立に、対アニオンZ 1 n1- ~Z 3 n3- のイオン価に相当する任意の正の整数である 。n1~n3の値は特に制限されないが、何れも1又 は2であることが好ましく、1であることが特 好ましい。

 Z 1 n1- ~Z 3 n3- の具体例としては、水酸化物イオン、フッ化 物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨ ウ化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオ ン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオ ン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨ ウ素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオ ン、次亜塩素酸イオン、リン酸イオン、亜リ ン酸イオン、次亜リン酸イオン、ホウ酸イオ ン、イソシアン酸イオン、水硫化物イオン、 テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオ ロリン酸イオン、ヘキサクロロアンチモン酸 イオン;酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオ 、安息香酸イオン等のカルボン酸イオン;メ ンスルホン酸イオン、トリフルオロメタン ルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;メト キシイオン、t-ブトキシイオン等のアルコキ イオンなどが挙げられる。

 特に、対アニオンZ 1 n1- ~Z 3 n3- としては、化合物の安定性、溶剤への溶解性 の点で、下記式(I-4)~(I-6)で表わされる錯イオ が好ましく、サイズが大きいという点で、 電荷が非局在化し、それに伴い正電荷も非 在化して電子受容能が大きくなるため、下 式(I-6)で表わされる錯イオンが更に好まし 。

 式(I-4)及び(I-6)中、E 1 及びE 3 は、各々独立に、長周期型周期表の第13族に する元素を表わす。中でもホウ素原子、ア ミニウム原子、ガリウム原子が好ましく、 合物の安定性、合成及び精製のし易さの点 ら、ホウ素原子が好ましい。

 式(I-5)中、E 2 は、長周期型周期表の第15族に属する元素を わす。中でもリン原子、ヒ素原子、アンチ ン原子が好ましく、化合物の安定性、合成 び精製のし易さ、毒性の点から、リン原子 好ましい。

 式(I-4)及び(I-5)中、Xは、フッ素原子、塩 原子、臭素原子などのハロゲン原子を表わ 、化合物の安定性、合成及び精製のし易さ 点からフッ素原子、塩素原子であることが ましく、フッ素原子であることが特に好ま い。

 式(I-6)中、Ar 61 ~Ar 64 は、各々独立に、芳香族炭化水素基又は芳香 族複素環基を表わす。芳香族炭化水素基、芳 香族複素環基の例示としては、R 11 、R 21 及びR 31 について先に例示したものと同様の、5又は6 環の単環又は2~4縮合環由来の1価の基が挙げ られる。中でも、化合物の安定性、耐熱性の 点から、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジ ン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジ ン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノ リン環等に由来の1価の基が好ましい。

 Ar 61 ~Ar 64 として例示した芳香族炭化水素基、芳香族複 素環基は、本発明の趣旨に反しない限りにお いて、更に別の置換基によって置換されてい てもよい。置換基の種類は特に制限されず、 任意の置換基が適用可能であるが、電子吸引 性の基であることが好ましい。

 Ar 61 ~Ar 64 が有してもよい置換基として好ましい電子吸 引性の基を例示するならば、フッ素原子、塩 素原子、臭素原子等のハロゲン原子;シアノ ;チオシアノ基;ニトロ基;メシル基等のアル ルスルホニル基;トシル基等のアリールスル ニル基;ホルミル基、アセチル基、ベンゾイ ル基等の、炭素数が通常1以上、通常12以下、 好ましくは6以下のアシル基;メトキシカルボ ル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数 通常2以上、通常10以下、好ましくは7以下の アルコキシカルボニル基;フェノキシカルボ ル基、ピリジルオキシカルボニル基等の、 素数が通常3以上、好ましくは4以上、通常25 下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基 は芳香族複素環基を有するアリールオキシ ルボニル基;アミノカルボニル基;アミノスル ホニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフ オロエチル基等の、炭素数が通常1以上、通 10以下、好ましくは6以下の直鎖状、分岐鎖 又は環状のアルキル基にフッ素原子、塩素 子などのハロゲン原子が置換したハロアル ル基、などが挙げられる。

 中でも、Ar 61 ~Ar 64 のうち少なくとも1つの基が、フッ素原子又 塩素原子を置換基として1つ又は2つ以上有す ることがより好ましい。特に、負電荷を効率 よく非局在化する点、及び、適度な昇華性を 有する点から、Ar 61 ~Ar 64 の水素原子がすべてフッ素原子で置換された パーフルオロアリール基であることが特に好 ましい。パーフルオロアリール基の具体例と しては、ペンタフルオロフェニル基、ヘプタ フルオロ-2-ナフチル基、テトラフルオロ-4-ピ リジル基等が挙げられる。

 式(I-4)~(I-6)で表わされる錯イオンの分子 は、通常100以上、好ましくは300以上、更に ましくは400以上、また、通常5000以下、好ま くは3000以下、更に好ましくは2000以下の範 である。該化合物の分子量が小さ過ぎると 正電荷及び負電荷の非局在化が不十分なた 、電子受容能が低下する場合があり、また 該化合物の分子量が大き過ぎると、該化合 自体が電荷輸送の妨げとなる場合がある。

 以下に式(I-4)~(I-6)で表わされる錯イオン 具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定 れるものではない。

 なお、重合反応開始剤は、何れか一種を 独で使用してもよく、二種以上を任意の比 及び組み合わせで併用してもよい。

 重合反応開始剤の分子量は、通常100以上 好ましくは200以上、また、通常10000以下、 ましくは3000以下の範囲である。重合反応開 剤の分子量が小さ過ぎると塗膜形成時の揮 性が高過ぎる場合があり、大き過ぎると溶 への溶解性が低くなる場合がある。

 〔I-3.有機層〕
 本発明において「有機層」とは、有機化合 を含有する層をいう。
 本発明の有機電界発光素子において、有機 とは、陽極及び陰極の間に配置される各層 いう。
 本発明の有機電界発光素子における有機層 例としては、正孔注入層、正孔輸送層、発 層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層 が挙げられる。

 これらの有機層のうち、重合性化合物を重 して形成される層(第1の層。重合層に相当 る)、及び、重合反応開始剤を含有する層(第 2の層)に相当する層は、隣接して構成される 層であれば、制限されるものではなく、何 の層であってもよい。
 これらの有機層のうち隣接する二層を第1の 層及び第2の層として形成することにより、 電流通電時の駆動電圧の上昇や通電時の輝 の低下が少なく、駆動寿命に優れた有機電 発光素子を得ることができる。

 第1の層には重合反応開始剤を含まないこ とが好ましい。前記の本発明の利点をより安 定して得るようにするためである。なお、第 1の層の形成に用いる組成物が重合反応開始 を含んでいない場合、第1の層も重合反応開 剤を含んでいないものとする(後述する正孔 輸送層用組成物成膜工程を参照。)

 但し、重合反応開始剤が発光層に与える 響を低減し、上述した定電流通電時の駆動 圧の上昇防止や通電時の輝度の低下防止、 動寿命の延長等の効果を顕著に得る観点か は、第2の層は、発光層からできるだけ離れ た位置に存在することが好ましい。

 具体的には、図2に模式的に示すように、第 2の層3が第1の層4を挟んで発光層5と反対側に 在すること、即ち、発光層5、第1の層4、第2 の層3がこの順に配置されることが好ましい この場合、発光層5と第1の層4とは隣接して てもよいが、発光層5と第1の層4との間に、 意の一又は二以上の層(図示せず)が介在して いてもよい。
 特に、第1の層4が正孔輸送層であり、第2の 3が正孔注入層であることが好ましい。

 ところで、このように第2の層3が第1の層( 重合層)4に対して発光層5とは反対側で隣接し ている層(以下、「隣接層」ということがあ )となっている場合、後述のように定義され 比QB/QAは、0.5未満であることが好ましく、0. 2以下であることがより好ましい。この上限 を超えると、第1の層4を形成する際に進行す る重合反応、もしくは、第1の層の成膜時に なうベークによって第2の層3から第1の層4に 動してくる重合反応開始剤が有機電界発光 子の特性に大きな影響を与え、その影響を 視できなくなる可能性があるからである。 お、前記の比QB/QAの下限は、理想的には0で る。

 ここで、QAとは、XPS法により算出した第2 層3の第1の層側表面部3sに含まれる重合反応 開始剤以外の成分の分子数に対する、XPS法に より算出した第2の層3の第1の層側表面部3sに まれる重合反応開始剤の分子数の割合(%)の とをいう。また、QBとは、XPS法により算出 た第1の層4の発光層側表面4sに含まれる重合 応開始剤以外の成分の分子数に対する、XPS により算出した第1の層4の発光層側表面部4s に含まれる重合反応開始剤の分子数の割合(%) のことをいう。したがって、前記の比QB/QAは 前記の割合QAに対する割合QBの比のことをい う。

 前記のQA及びQBは、以下の測定方法により測 定できる。
 [QA及びQBの測定方法]
 ・サンプルの用意
 QAの測定に用いるサンプルとしては、測定 対象となる有機電界発光素子の隣接層を形 するための材料(通常は組成物。湿式成膜法 形成する場合は塗布液ともいう)を用意し、 この材料を有機電界発光素子の製造方法と同 様にして(例えば、25mm×37.5mmのITO基板上に30nm 厚さで)成膜し、得られた層をQA測定用サン ルとしてQAを測定する。
 また、QBの測定に用いるサンプルとしては 測定の対象となる有機電界発光素子の重合 を形成するための材料(通常は組成物。湿式 膜法で形成する場合は塗布液ともいう)を用 意し、この材料を有機電界発光素子の製造方 法と同様にして前記のQA測定用サンプルの上 (例えば、20nmの厚さで)成膜し、得られた層 QB測定用サンプルとしてQBを測定する。

 ・XPS法による測定
 XPS法による測定に際しては、例えばULVAC-PHI 製の走査型X線光電子分光装置QUANTUM2000を用 ることができる。X線源としてはモノクロメ ータを通したAlのKα線(エネルギー 1486.6eV)を いることができる。QUANTUM2000では、X線の入 方向に対する検出器の方向が45°であるため 、試料表面からの光電子の取り出し角度は45 となる。XPS測定試料ホルダーに取り付ける めに、試料基板の中央部は10mm四方程度に裁 する。試料を試料ホルダーにセットする際 試料ホルダーへは、帯電を軽減するために 1~2mmφの穴の開いたモリブデン製マスクで押 さえるようにセットする。測定領域は上記の 穴の中央部とし、300μm四方の領域について測 定を行う。

 解析にはULVAC-PHI社製multipak ver8.0を用い、 各元素の最も強いピークの面積を感度補正係 数で除することで各元素の原子数に比例した 量を求め、この値を用いてQA、およびQBを計 する。QA、およびQBは、(各層表面部の重合反 応開始剤の分子数)/(各層表面部の重合反応開 始剤以外の成分の分子数)を示す。QA、及びQB 、各層表面をXPS法によって測定した場合に ける、2種以上の原子に由来するピーク面積 から下記に例示する手法により算出すること ができる。ここで、算出に用いる原子の種類 としては、一つが少なくとも重合反応開始剤 に含まれる原子を選択し、他の一つが少なく とも重合反応開始剤以外の成分(母材)に含ま る原子を選択することにより、通常の手法 よりQA、QBを算出可能である。また、ここで 重合反応開始剤以外の成分(母材)として繰り し単位を有する化合物の場合は、繰り返し 位の分子量(繰り返し単位を複数含む場合は 、それらの平均分子量)を母材の分子量とし 算出する。こうするほうが、各層表面部の 合反応開始剤以外の成分の重合性基の数当 りの、各層表面部の重合反応開始剤以外の 分の分子数に対応した数値を表すことがで るからである。

 例えば、炭素とフッ素の最も強い光電子ピ クの強度をそれぞれIC、IFとし、それぞれの 感度係数をSC、SFとすれば、炭素とフッ素の 子数比Qは
  Q = (IC/SC)/(IF/SF)
と計算される。計算された原子数の比と、層 の中に含まれる重合反応開始剤および母材の 分子構造とから、当該層の表面における重合 反応開始剤と母材の分子数の比を求めること ができる。

 ・測定の具体例
 以下、XPS法による重合反応開始剤の測定の として、下記化合物CBP及び化合物F4TCNQから る膜を挙げて説明する。前記の要領でXPS法 より測定された炭素原子とフッ素原子との ーク強度比が仮にC:F=12:1であれば、この膜 表面に存在する化合物CBP及び化合物F4TCNQの は化合物F4TCNQ:化合物CBP=1:1ということになり 、この場合の化合物F4TCNQの存在比を100%と定 する。仮にC:F=21:1であれば化合物F4TCNQ:化合 CBP=1:2ということになり、化合物F4TCNQの存在 は50%ということになる。

 なお、第1の層は、重合性化合物由来の成 分(重合性化合物を重合させてなる化合物を い、例えば、重合性化合物を重合させてな 重合体をいう)の他に、その他の成分を含有 ていてもよい。その他の成分の種類は制限 れず、通常は第1の層の機能に応じて適宜選 択される。なお、第1の層はその他の成分と て、何れか一種を単独で含有してもよく、 種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有 ていてもよい。

 第1の層が重合性化合物由来の成分以外に その他の成分を含有する場合、第1の層にお るその他の成分の含有率は、第1の層の機能 よっても異なるが、一般的には、通常0.001 量%以上、好ましくは0.01重量%以上、また、 常50重量%以下、好ましくは10重量%以下の範 である。その他の成分の含有率が少な過ぎ と、その他の成分の使用による効果が発現 ない場合があり、多過ぎると、重合性化合 由来の成分の機能を阻害する場合がある。

 また、第2の層も、重合反応開始剤に加え て、その他の成分を含有していてもよい。そ の他の成分の種類は制限されず、通常は第2 層の機能に応じて適宜選択される。なお、 2の層はその他の成分として、何れか一種を 独で含有してもよく、二種以上を任意の組 合わせ及び比率で含有していてもよい。

 第2の層における重合反応開始剤の含有率 は、第2の層の機能によっても異なるが、一 的には、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量 %以上、また、通常50重量%以下、好ましくは30 重量%以下の範囲である。重合反応開始剤の 有率が少な過ぎると、第1の層の形成時にお る重合反応が十分に進行しない場合があり 多過ぎると、第2の層の本来の機能を阻害す る場合がある。

 なお、本発明の有機電界発光素子を構成 る基板、陽極、陰極、及び各有機層(正孔注 入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電 子輸送層、電子注入層等)の詳細については 述する。

 〔I-4.本発明の効果が得られる理由〕
 本発明の有機電界発光素子が上述の効果を する理由は定かではないが、以下のように 測される。

 上述の従来技術文献のうち、特許文献1で は、エポキシ樹脂の硬化剤として2級アミン 用いており、非特許文献1では、オキセタン の重合反応開始剤として有機ヨードニウム を使用している。これらの文献に記載の方 により製造された有機電界発光素子は、有 層に硬化剤又は重合反応開始剤が残留して り、特に発光層及び/又は発光層に隣接する 層に含有される硬化剤や重合反応開始剤、或 いはこれらの硬化剤や重合反応開始剤が通電 時に分解することによって発生した生成物が 、発光層の主成分たる化合物と反応すること により、有機電界発光を消光し、結果として 通電時の輝度安定性が低い、いわゆる駆動寿 命の短い素子となるものと考えられる。

 これに対して、本発明の有機電界発光素 では、重合反応開始剤が、重合性化合物を 合して形成される層(第1の層)ではなく、こ に隣接する層(第2の層)に含有されている。 うした構成により、重合性化合物を重合し 形成される層に重合反応開始剤を含有させ 場合と類似した効果が得られる。その結果 定電流通電時の駆動電圧の上昇や通電時の 度の低下が少なく、駆動寿命に優れた有機 界発光素子が得られるものと推測される。

 また、本発明の有機電界発光素子の好ま い構成においては、重合反応開始剤が発光 に近い層(第1の層、正孔輸送層)ではなく、 光層から離れた層(第2の層、正孔注入層)に 有されている。その結果、発光層への重合 応開始剤の溶解若しくは物質移動により、 機電界発光素子の特性や寿命に悪影響を及 す活性種(例えばラジカル種)等の発生を抑 ることができ、その結果、上述した定電流 電時の駆動電圧の上昇防止や通電時の輝度 低下防止、駆動寿命の延長等の効果がより 著に得られるものと推測される。

 〔I-5.有機デバイス〕
 なお、本発明の有機電界発光素子が有する 述の構成は、有機電界発光素子以外の有機 バイスにも適用することが可能である。

 本発明において「有機デバイス」とは、外 から供給されたエネルギーを、他のエネル ー及び/又は有効な仕事に変換する機能を持 つ構造体であり、主たる機能を発現する部分 が有機物により構成されているものをいう。
 有機デバイスの例としては、有機電界発光 子、有機トランジスタ、有機太陽電池、有 発光トランジスタ、有機磁性デバイス、有 ダイオード、有機アクチュエーター(モータ ー等)、有機センサー(圧力、温度、湿度セン ー等)等が挙げられる。

 以下、本発明の有機電界発光素子が有する 述の構成を適用した有機デバイス、即ち、 数の有機層を備えるとともに、複数の有機 のうち2層が、重合性化合物を重合して形成 される層(第1の層)、及び、重合反応開始剤を 含有する層(第2の層)であって、これらが隣接 して設けられた有機デバイスを、「本発明の 有機デバイス」という。
 なお、本発明の有機デバイスは通常、上述 た本発明の有機電界発光素子と同様に、前 複数の有機層の他に、基板と、基板上に設 られた陽極及び陰極とを備え、前記の陽極 陰極との間に前記複数の有機層が配置され 構成を有する。

 〔I-6.有機デバイスの製造方法〕
 本発明の有機デバイスを製造する方法は特 制限されないが、少なくとも以下の工程(1)~ (3)を備えた方法(これを以下「本発明の製造 法」という。)により製造することが好まし 。
(1)重合反応開始剤を含有する組成物を成膜し て、第2の層を形成する工程(以下適宜「正孔 入層用組成物成膜工程」という。)。
(2)重合性化合物を含有する組成物を成膜して 、重合性化合物を含有する層を形成する工程 (以下適宜「正孔輸送層用組成物成膜工程」 いう。)。
(3)重合性化合物を重合させて、第1の層を形 する工程(以下適宜「重合工程」という。)。

 本発明の製造方法における、上記工程(1)~ (3)の詳細(例えば、(1)正孔注入層用組成物成 工程における、重合反応開始剤を含有する 成物の組成や成膜の手法、(2)正孔輸送層用 成物成膜工程における、重合性化合物を含 する組成物の組成や成膜の手法、(3)重合工 における、重合性化合物の重合の手法等)は 限されず、任意である。

 また、本発明の製造方法は、上記工程(1)~(3) に加えて、一又は二以上のその他の工程を備 えていてもよい。その他の工程の実施時期は 任意である。
 本発明の製造方法における、上記工程(1)~(3) の詳細や、その他の工程の有無や詳細につい ては、製造対象となる本発明の有機デバイス に応じて適宜選択すればよい。

 本発明の製造方法を有機デバイスの製造 用いることにより、主たる機能を発現する (第1の層及び/又は第2の層)の化学的安定性 向上した有機デバイスを、容易に且つ効率 に製造することが可能となる。

 但し、本発明の製造方法は、有機デバイ の中でも特に、有機電界発光素子の製造に いることが好ましく、具体的には、第1の層 が正孔輸送層であり、第2の層が正孔注入層 あることが特に好ましい。これにより、定 流通電時の駆動電圧の上昇や通電時の輝度 低下が少なく、駆動寿命に優れた有機電界 光素子を得ることが可能となる。

[II.実施形態]
 以下、本発明の有機デバイス及び本発明の 造方法の詳細について、有機電界発光素子 例にとって具体的に説明する。

 〔II-1.有機電界発光素子の構成〕
 図1は、本発明の一実施形態に係る有機電界 発光素子の層構成を模式的に示す断面図であ る。図1に示す有機電界発光素子100は、基板1 上に、陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、 機発光層5、正孔阻止層6、電子注入層7及び 極8を、この順に積層することにより構成さ れる。
 本実施形態の場合、正孔輸送層4が、重合性 化合物を重合して形成される層(第1の層、重 層)に該当し、正孔注入層3が、重合反応開 剤を含有する層(第2の層、隣接層)に該当す ことになる。

 〔II-2.基板〕
 基板1は、有機電界発光素子100の支持体とな るものである。
 基板1の材料は制限されないが、例としては 、石英、ガラス、金属、プラスチック等が挙 げられる。これらの材料は何れか一種を単独 で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わ せ及び比率で併用してもよい。
 基板1の形状も制限されないが、例としては 、板、シート、フィルム、箔等、或いはこれ らの二種以上を組み合わせた形状等が挙げら れる。
 中でも、基板1としては、ガラス板や、ポリ エステル、ポリメタクリレート、ポリカーボ ネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の 板が好ましい。

 なお、基板1の材料として合成樹脂を使用 する場合には、ガスバリア性に留意すること が望ましい。基板1のガスバリア性が低過ぎ と、基板1を通過した外気により、有機電界 光素子100が劣化する場合がある。よって、 成樹脂からなる基板1の少なくとも片面に、 緻密なシリコーン酸化膜等を設けてガスバリ ア性を確保する、等の手法を講じることが好 ましい。

 基板1の厚さは制限されないが、通常1μm 上、好ましくは50μm以上、また、通常50mm以 、好ましくは3mm以下の範囲が望ましい。基 1が薄過ぎると機械的強度が低くなる場合が り、厚過ぎると素子の重量が増加し過ぎる 合がある。

 なお、基板1は単一の層からなる構成とし てもよいが、複数の層が積層された構成とし てもよい。後者の場合、複数の層は同一の材 料からなる層であってもよいが、異なる材料 からなる層であってもよい。

 〔II-3.陽極〕
 基板1の上には、陽極2が形成される。
 陽極2は、後述する有機発光層5側の層(正孔 入層3又は有機発光層5等)への正孔注入の役 を果たすものである。

 陽極2の材料は、導電性を有する材料であれ ば任意であるが、例としては、アルミニウム 、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の 金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等 金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属 カーボンブラック、或いは、ポリ(3-メチル オフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等 導電性高分子等が挙げられる。
 これらの陽極2の材料は、何れか一種を単独 で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わ せ及び比率で併用してもよい。

 陽極2を形成する手法は制限されないが、 通常はスパッタリング法、真空蒸着法等が用 いられる。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化 銅等の金属ハロゲン化物の微粒子、カーボン ブラック等の炭素材料の微粒子、導電性金属 酸化物の微粒子、導電性高分子の微粉末等の 材料を用いる場合には、これらの材料を適当 なバインダー樹脂溶液に分散させ、基板1上 塗布することにより、陽極2を形成すること できる。

 更に、導電性高分子を材料として用いる 合は、電解重合により基板1上に直接、薄膜 を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗 したりする等の手法により、陽極2を形成す こともできる(Applied Physics Letters,1992年,Vol.6 0,pp.2711参照)。

 陽極2の厚みは、陽極2に求められる透明性 より異なる。
 陽極2に透明性が求められる場合は、陽極2 よる可視光の透過率を、通常60%以上、好ま くは80%以上とすることが望ましい。この場 、陽極2の厚みは、通常5nm以上、好ましくは1 0nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500 nm以下の範囲が望ましい。陽極2が薄過ぎると 電気抵抗が大きくなる場合があり、厚過ぎる と透明性が低下する場合がある。

 一方、陽極2が不透明でよい場合、例えば 、陽極2が基板1を兼ねる場合、陽極2の厚さは 基板1と同様、通常1μm以上、好ましくは50μm 上、また、通常50mm以下、好ましくは30mm以下 の範囲が望ましい。陽極2が薄過ぎると機械 強度が低くなる場合があり、厚過ぎると素 の重量が増加し過ぎる場合がある。

 なお、陽極2は単一の層からなる構成として もよいが、複数の層が積層された構成として もよい。後者の場合、複数の層は同一の材料 からなる層であってもよいが、異なる材料か らなる層であってもよい。
 更には、陽極2を上述の基板1と一体に形成 、陽極2が基板1を兼ねる構成としてもよい。

 なお、陽極2の形成後、陽極2に付着した 純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調 して正孔注入性を向上させることを目的と て、陽極2表面に対して、紫外線(UV)処理、オ ゾン処理、プラズマ処理(例えば酸素プラズ 処理、アルゴンプラズマ処理等)等の処理を なうことが好ましい。

 〔II-4.正孔注入層〕
 陽極2の上には、正孔注入層3が形成される
 正孔注入層3は、陽極2から有機発光層5へ正 を輸送する層である。本実施形態において 、正孔注入層3は、重合反応開始剤を含有す る層(第2の層、隣接層)に該当する。

 正孔注入層3は、上述の重合反応開始剤を 含有するとともに、通常は電子受容性化合物 、正孔輸送剤等を含有する。

 正孔輸送剤(以下「正孔輸送性化合物」と 言う場合がある。)は、従来、有機EL素子にお ける正孔注入・輸送性の薄膜形成材料として 利用されてきた各種の化合物の中から、適宜 選択することが可能である。中でも、溶剤溶 解性の高いものが好ましい。

 なお、正孔輸送性化合物は、4.5eV以上5.5eV以 下のイオン化ポテンシャルを有する化合物で あることが好ましい。なお、イオン化ポテン シャルは、物質のHOMO(最高被占分子軌道)レベ ルにある電子を真空準位に放出するのに必要 なエネルギーで定義され、光電子分光法で直 接測定されるか、電気化学的に測定した酸化 電位を基準電極に対して補正しても求められ る。後者の方法の場合は、例えば、飽和甘コ ウ電極(SCE)を基準電極として用いたとき、下 式で表される(“Molecular Semiconductors”, Sprin ger-Verlag, 1985年, pp.98)。
    イオン化ポテンシャル = 酸化電位(vs.S CE)+4.3eV

 正孔輸送性化合物は、低分子化合物であ ても高分子化合物であってもよいが、高分 化合物であることが好ましい。

 正孔輸送性化合物の例としては、芳香族 ミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポル ィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体等 挙げられる。中でも、非晶質性、溶剤への 解度、可視光の透過率の点から、芳香族ア ン化合物が好ましい。

 芳香族アミン化合物の中でも、正孔輸送 化合物としては、特に芳香族三級アミン化 物が好ましい。なお、ここでいう芳香族三 アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造 有する化合物であって、芳香族三級アミン 来の基を有する化合物も含む。

 芳香族アミン化合物の種類は制限されず 低分子化合物であっても高分子化合物であ てもよいが、表面平滑化効果の点から、重 平均分子量が1000以上、100万以下の高分子化 合物であることが好ましい。

 高分子の芳香族アミン化合物(以下「芳香 族アミン高分子化合物」と言う場合がある。 )の好ましい例としては、下記式(I)で表わさ る繰り返し単位を有する芳香族三級アミン 分子化合物が挙げられる。

(式(I)中、Ar 1 及びAr 2 は各々独立して、置換基を有していてもよい 芳香族炭化水素基、又は、置換基を有してい てもよい芳香族複素環基を表わす。Ar 3 ~Ar 5 は各々独立して、置換基を有していてもよい 2価の芳香族炭化水素基、又は、置換基を有 ていてもよい2価の芳香族複素環基を表わす Xは、下記の連結基群X1の中から選ばれる連 基を表わす。)

・連結基群X1:

(式中、Ar 11 ~Ar 28 は各々独立して、置換基を有していてもよい 芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わ す。R 1 及びR 2 は各々独立して、水素原子又は任意の置換基 を表わす。)

 前記式(I)において、Ar 1 ~Ar 5 及びAr 11 ~Ar 28 としては、任意の芳香族炭化水素環又は芳香 族複素環由来の、1価又は2価の基が適用可能 ある。即ち、Ar 1 、Ar 2 、Ar 16 、Ar 21 及びAr 26 は、それぞれ1価の基が適用可能であり、Ar 3 ~Ar 5 、Ar 11 ~Ar 15 、Ar 17 ~Ar 20 、Ar 22 ~Ar 25 、Ar 27 及びAr 28 は、それぞれ2価の基が適用可能である。こ らは各々同一であっても、互いに異なって てもよい。また、任意の置換基を有してい もよい。

 前記の芳香族炭化水素環としては、例え 、5又は6員環の単環又は2~5縮合環が挙げら る。その具体例としては、ベンゼン環、ナ タレン環、アントラセン環、フェナントレ 環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環 ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニ ン環、アセナフテン環、フルオランテン環 フルオレン環などが挙げられる。

 前記の芳香族複素環としては、例えば、5 又は6員環の単環又は2~4縮合環が挙げられる その具体例としては、フラン環、ベンゾフ ン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環 ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール 、オキサジアゾール環、インドール環、カ バゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロ ピラゾール環、ピロロピロール環、チエノ ロール環、チエノチオフェン環、フロピロ ル環、フロフラン環、チエノフラン環、ベ ゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾ ル環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環 ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環 トリアジン環、キノリン環、イソキノリン 、シノリン環、キノキサリン環、フェナン リジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミ ン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、ア レン環などが挙げられる。

 また、Ar 3 ~Ar 5 、Ar 11 ~Ar 15 、Ar 17 ~Ar 20 、Ar 22 ~Ar 25 、Ar 27 、Ar 28 としては、上に例示した1種類又は2種類以上 芳香族炭化水素環及び/又は芳香族複素環由 来の2価の基を2つ以上連結して用いることも きる。

 また、Ar 1 ~Ar 5 及びAr 11 ~Ar 28 の芳香族炭化水素環及び/又は芳香族複素環 来の基は、本発明の趣旨に反しない限りに いて、更に置換基を有していてもよい。置 基の分子量としては、通常400以下、中でも25 0以下程度が好ましい。置換基の種類は特に 限されないが、例としては、下記の置換基 Wから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる なお、置換基は、1個が単独で置換していて よく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率 で置換していてもよい。

[置換基群W]
 メチル基、エチル基等の、炭素数が通常1以 上、通常10以下、好ましくは8以下のアルキル 基;ビニル基等の、炭素数が通常2以上、通常1 1以下、好ましくは5以下のアルケニル基;エチ ニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下 、好ましくは5以下のアルキニル基;メトキシ 、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上、通 常10以下、好ましくは6以下のアルコキシ基; ェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキ 基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以 上、通常25以下、好ましくは14以下のアリー オキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシ ルボニル基等の、炭素数が通常2以上、通常 11以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボ ニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ 等の、炭素数が通常2以上、通常20以下、好 しくは12以下のジアルキルアミノ基;ジフェ ルアミノ基、ジトリルアミノ基、N-カルバゾ リル基等の、炭素数が通常10以上、好ましく 12以上、通常30以下、好ましくは22以下のジ リールアミノ基;フェニルメチルアミノ基等 の、炭素数が通常6以上、好ましくは7以上、 常25以下、好ましくは17以下のアリールアル キルアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基等 、炭素数が通常2以上、通常10以下、好まし は7以下のアシル基;フッ素原子、塩素原子等 のハロゲン原子;トリフルオロメチル基等の 炭素数が通常1以上、通常8以下、好ましくは 4以下のハロアルキル基;メチルチオ基、エチ チオ基等の、炭素数が通常1以上、通常10以 、好ましくは6以下のアルキルチオ基;フェ ルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ 等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上 、通常25以下、好ましくは14以下のアリール オ基;トリメチルシリル基、トリフェニルシ ル基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは 3以上、通常33以下、好ましくは26以下のシリ 基;トリメチルシロキシ基、トリフェニルシ ロキシ基等の、炭素数が通常2以上、好まし は3以上、通常33以下、好ましくは26以下のシ ロキシ基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基 の、炭素数が通常6以上、通常30以下、好ま くは18以下の芳香族炭化水素環基;チエニル 、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上、好 ましくは4以上、通常28以下、好ましくは17以 の芳香族複素環基。

 上述した基の中でも、Ar 1 及びAr 2 としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、 正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナ フタレン環、フェナントレン環、チオフェン 環、ピリジン環由来の1価の基が好ましく、 ェニル基、ナフチル基が更に好ましい。

 また、上述したものの中でも、Ar 3 ~Ar 5 としては、耐熱性、酸化還元電位を含めた正 孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフ タレン環、アントラセン環、フェナントレン 環由来の2価の基が好ましく、フェニレン基 ビフェニレン基、ナフチレン基が更に好ま い。

 前記式(I)において、R 1 及びR 2 としては、水素原子又は任意の置換基が適用 可能である。これらは互いに同一であっても よく、異なっていてもよい。置換基の種類は 、本発明の趣旨に反しない限り特に制限され ないが、適用可能な置換基を例示するならば 、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基 、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳 香族炭化水素基、芳香族複素環基が挙げられ る。これらの具体例としては、先に置換基群 Wにおいて例示した各基が挙げられる。

 正孔注入層の材料として用いられる芳香 三級アミン高分子化合物の重量平均分子量 本発明の効果を著しく損なわない限り任意 あるが、通常1000以上、好ましくは2000以上 より好ましくは3000以上、また、通常50万以 、好ましくは20万以下、より好ましくは10万 下である。

 正孔注入層3中の芳香族三級アミン高分子 化合物の割合は、本発明の効果を著しく損な わない限り任意であるが、正孔注入層3全体 対する重量比の値で、通常10重量%以上、好 しくは30重量%以上、また、通常99.9重量%以下 、好ましくは99重量%以下である。なお、2種 上のポリマーを併用する場合には、これら 合計の含有量が上記範囲に含まれるように ることが好ましい。

 一方、低分子の芳香族三級アミン化合物( 以下「芳香族三級アミン低分子化合物」と言 う場合がある。)のうち、正孔輸送性化合物 して好ましい具体例としては、下記式(III)で 表わされるビナフチル系化合物が挙げられる 。

 式(III)中、Ar 51 ~Ar 58 は各々独立に、置換基を有していてもよい芳 香族炭化水素基、又は置換基を有していても よい芳香族複素環基を表わす。Ar 51 とAr 52 、Ar 55 とAr 56 は、各々結合して環を形成していてもよい。 Ar 51 ~Ar 58 の具体例、好ましい例、有していてもよい置 換基の例及び好ましい置換基の例は、それぞ れ、Ar 1 ~Ar 5 について先に例示したものと同様である。

 u及びvは、各々独立に、0以上、4以下の整数 を表わす。但し、u+v≧1である。特に好まし のは、u=1かつv=1である。
 Q 1 及びQ 2 は各々独立に、直接結合又は2価の連結基を わす。

 式(III)中のナフタレン環は、-(Q 1 NAr 53 Ar 57 (NAr 51 Ar 52 ))及び-(Q 2 NAr 54 Ar 58 (NAr 55 Ar 56 ))に加えて、任意の置換基を有していてもよ 。また、これらの置換基-(Q 1 NAr 53 Ar 57 (NAr 51 Ar 52 )及び-(Q 2 NAr 54 Ar 58 (NAr 55 Ar 56 )は、ナフタレン環の何れの位置に置換して てもよいが、中でも、式(III)におけるナフタ レン環の、各々4-位、4’-位に置換したビナ チル系化合物がより好ましい。

 また、式(III)で表わされる化合物におけ ビナフチレン構造は、2,2’-位に置換基を有 ることが好ましい。2,2’-位に結合する置換 基としては、置換基を有していてもよいアル キル基、置換基を有していてもよいアルコキ シ基、置換基を有していてもよいアルケニル 基、置換基を有していてもよいアルコキシカ ルボニル基等が挙げられる。

 なお、式(III)で表わされる化合物におい 、ビナフチレン構造は2,2’-位以外に任意の 換基を有していてもよく、該置換基として 、例えば、2,2’-位における置換基として前 掲した各基等が挙げられる。式(III)で表わさ る化合物は、2-位及び2’-位に置換基を有す ることにより、2つのナフタレン環がねじれ 配置になるため、溶解性が向上すると考え れる。

 式(III)で表わされるビナフチル系化合物 分子量は、通常500以上、好ましくは700以上 また、通常2000以下、好ましくは1200以下の範 囲である。

 以下に、本発明において正孔輸送性化合 として適用可能な、式(III)で表わされるビ フチル系化合物の好ましい具体例を挙げる 、本発明で適用可能なビナフチル系化合物 これらに限定されるものではない。

 その他、本発明における正孔輸送性化合 として適用可能な芳香族アミン化合物とし は、有機EL素子における正孔注入・輸送性 層形成材料として利用されてきた、従来公 の化合物が挙げられる。例えば、1,1-ビス(4- -p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン等 の第3芳香族アミンユニットを連結した芳香 ジアミン化合物(特開昭59-194393号公報);4,4’- ス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェ ルで代表される2個以上の3級アミンを含み2 以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した 香族アミン(特開平5-234681号公報);トリフェニ ルベンゼンの誘導体でスターバースト構造を 有する芳香族トリアミン(米国特許第4923774号 細書);N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチル ェニル)ビフェニル-4,4’-ジアミン等の芳香 ジアミン(米国特許第4764625号明細書);α,α,α ,α’-テトラメチル-α,α’-ビス(4-ジ-p-トリル アミノフェニル)-p-キシレン(特開平3-269084号 報);分子全体として立体的に非対称なトリフ ェニルアミン誘導体(特開平4-129271号公報);ピ ニル基に芳香族ジアミノ基が複数個置換し 化合物(特開平4-175395号公報);エチレン基で3 芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジ ミン(特開平4-264189号公報);スチリル構造を する芳香族ジアミン(特開平4-290851号公報);チ オフェン基で芳香族3級アミンユニットを連 したもの(特開平4-304466号公報);スターバース ト型芳香族トリアミン(特開平4-308688号公報); ンジルフェニル化合物(特開平4-364153号公報) ;フルオレン基で3級アミンを連結したもの(特 開平5-25473号公報);トリアミン化合物(特開平5- 239455号公報);ビスジピリジルアミノビフェニ (特開平5-320634号公報);N,N,N-トリフェニルア ン誘導体(特開平6-1972号公報);フェノキサジ 構造を有する芳香族ジアミン(特開平7-138562 公報);ジアミノフェニルフェナントリジン誘 導体(特開平7-252474号公報);ヒドラゾン化合物( 特開平2-311591号公報);シラザン化合物(米国特 第4950950号明細書);シラナミン誘導体(特開平 6-49079号公報);ホスファミン誘導体(特開平6-256 59号公報);キナクリドン化合物等が挙げられ 。これらの芳香族アミン化合物は、必要に じて2種以上を混合して用いてもよい。

 また、本発明における正孔輸送性化合物 して適用可能な芳香族アミン化合物のその の具体例としては、ジアリールアミノ基を する8-ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯 が挙げられる。上記の金属錯体は、中心金 がアルカリ金属、アルカリ土類金属、Sc、Y V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Al、Ga、In、 Si、Ge、Sn、Sm、Eu、Tbの何れかから選ばれ、配 位子である8-ヒドロキシキノリンはジアリー アミノ基を置換基として1つ以上有するが、 ジアリールアミノ基以外に任意の置換基を有 することがある。

 また、本発明における正孔輸送性化合物 して適用可能なフタロシアニン誘導体又は ルフィリン誘導体の好ましい具体例として 、ポルフィリン、5,10,15,20-テトラフェニル-2 1H,23H-ポルフィリン、5,10,15,20-テトラフェニル -21H,23H-ポルフィリンコバルト(II)、5,10,15,20-テ トラフェニル-21H,23H-ポルフィリン銅(II)、5,10, 15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィリン亜鉛 (II)、5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィ リンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20-テトラ (4-ピリジル)-21H,23H-ポルフィリン、29H,31H-フタ ロシアニン銅(II)、フタロシアニン亜鉛(II)、 タロシアニンチタン、フタロシアニンオキ ドマグネシウム、フタロシアニン鉛、フタ シアニン銅(II)、4,4’,4’’,4’’’-テトラ ザ-29H,31H-フタロシアニン等が挙げられる。

 また、本発明における正孔輸送性化合物 して適用可能なオリゴチオフェン誘導体の ましい具体例としては、α-セキシチオフェ 等が挙げられる。

 なお、正孔輸送性化合物として適用可能 芳香族アミン化合物(上述した芳香族三級ア ミン高分子化合物及び式(III)で表わされるビ フチル系化合物を除く。)、フタロシアニン 誘導体、ポルフィリン誘導体、及びオリゴチ オフェン誘導体の分子量は、通常200以上、好 ましくは400以上、より好ましくは600以上、ま た、通常5000以下、好ましくは3000以下、より ましくは2000以下、更に好ましくは1700以下 特に好ましくは1400以下の範囲である。分子 が小さ過ぎると耐熱性が低くなる傾向があ 一方で、正孔輸送性化合物の分子量が大き ぎると合成及び精製が困難となる傾向があ 。

 正孔注入層3は、上述の各種の正孔輸送性 化合物(正孔輸送剤)のうち何れか一種を単独 含有していてもよく、二種以上を任意の組 合わせ及び比率で含有していてもよい。

 正孔注入層3における正孔輸送剤の含有率 は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上 、また、通常99.9重量%以下、好ましくは90重 %以下の範囲である。

 重合反応開始剤の詳細や具体例、好適な例 については上述した通りである。
 重合反応開始剤は、何れか一種を単独で用 てもよく、二種以上を任意の組み合わせ及 比率で併用してもよい。

 正孔注入層3における重合反応開始剤の含有 率は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以 上、また、通常50重量%以下、好ましくは30重 %以下の範囲である。重合反応開始剤の含有 率が少な過ぎると、隣接する層(通常は正孔 送層4)の重合反応が十分に進行しない場合が あり、多過ぎると、正孔輸送性化合物の正孔 輸送能力を阻害する場合がある。
 また、正孔輸送剤に対する重合反応開始剤 比率は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1 量%以上、また、通常100重量%以下、好ましく は60重量%以下の範囲が望ましい。

 電子受容性化合物の例としては、オニウ 塩、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン 金属、ルイス酸、有機酸、アリールアミン ハロゲン化金属との塩、及び、アリールア ンとルイス酸との塩等が挙げられる。これ の電子受容性化合物は、正孔注入性材料と 合して用いられ、正孔注入性材料を酸化す ことにより正孔注入層の導電率を向上させ ことができる。

 オニウム塩の例としては、重合反応開始 の例として上述した各種の有機オニウム塩 挙げられる。

 トリアリールホウ素化合物の例としては 下記一般式(IV)で表わされるホウ素化合物が 挙げられる。下記一般式(IV)で表わされるホ 素化合物は、ルイス酸であることが好まし 。また、このホウ素化合物の電子親和力は 通常4eV以上、好ましくは5eV以上である。

 一般式(IV)において、Ar 1 ~Ar 3 は、各々独立に、置換基を有することがある フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビ フェニル基等の5又は6員環の単環、又はこれ が2~3個縮合及び/又は直接結合してなる芳香 族炭化水素環基;或いは置換基を有していて よいチエニル基、ピリジル基、トリアジル 、ピラジル基、キノキサリル基等の5員又は6 員環の単環、又はこれらが2~3個縮合及び/又 直接結合してなる芳香族複素環基を表わす

 Ar 1 ~Ar 3 が有していてもよい置換基の例としては、ハ ロゲン原子;アルキル基;アルケニル基;アルコ キシカルボニル基;アルコキシ基;アリールオ シ基;アシル基;ハロアルキル基;シアノ基等 挙げられる。

 特に、Ar 1 ~Ar 3 の少なくとも1つが、ハメット定数(σ m 及び/又はσ p )が正の値を示す置換基であることが好まし 、Ar 1 ~Ar 3 が、何れもハメット定数(σ m 及び/又はσ p )が正の値を示す置換基であることが特に好 しい。このような、電子吸引性の置換基を することにより、これらの化合物の電子受 性が向上する。また、Ar 1 ~Ar 3 が何れも、ハロゲン原子で置換された芳香族 炭化水素基又は芳香族複素環基であることが 更に好ましい。

 一般式(IV)で表わされるホウ素化合物の好 ましい具体例としては、下記の式6-1~式6-17で わされる化合物が挙げられる。但し、一般 (IV)で表わされるホウ素化合物は、下記の式 6-1~式6-17で表わされる化合物に限定されるも ではない。

 中でも、以下に示す化合物が特に好まし 。

 上述の電子受容性化合物は、何れか一種 単独で用いてもよく、二種以上を任意の組 合わせ及び比率で併用してもよい。

 正孔輸送剤に対する電子受容性化合物の 率は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量% 上、また、通常100重量%以下、好ましくは60 量%以下の範囲が望ましい。

 なお、重合反応開始剤及び電子受容性化合 として、それぞれ別の異なる化合物を用い もよいが、重合反応開始剤及び電子受容性 合物の機能を兼ね備えた化合物を用いても い。
 重合反応開始剤及び電子受容性化合物の機 を兼ね備えた化合物を用いることにより、 合反応開始剤及び電子受容性化合物として れぞれ別の異なる化合物を用いる場合と比 て、正孔輸送剤に対する重合反応開始剤及 電子受容性化合物の比率をより多くするこ が可能となる。
 また、後述のように溶剤を用いて正孔注入 3を形成する場合でも、重合反応開始剤と電 子受容性化合物の双方について個別に溶解性 を検討する必要がなく、溶剤の選定が容易に なる。

 重合反応開始剤及び電子受容性化合物の機 を兼ね備えた化合物の例としては、有機オ ウム塩等が挙げられる。なお、これらは何 か一種を単独で用いてもよく、二種以上を 意の組み合わせ及び比率で併用してもよい
 また、重合反応開始剤及び電子受容性化合 の機能を兼ね備えた一種又は二種以上の化 物と、一種又は二種以上の重合反応開始剤 及び/又は、一種又は二種以上の電子受容性 化合物とを併用することも可能である。

 正孔注入層3は、正孔注入層3を構成する成 (重合反応開始剤、電子受容性化合物、正孔 送剤等)を含有する組成物(以下適宜「正孔 入層用組成物」という場合がある。)を成膜 ることにより形成される。
 即ち、正孔注入層3を形成する工程は、上述 の(1)正孔注入層用組成物成膜工程に該当する 。

 正孔注入層用組成物は、正孔注入層3の構 成成分である、重合反応開始剤、電子受容性 化合物及び正孔輸送剤を含有するとともに、 通常は溶剤を含有する。

 溶剤としては、正孔注入層用組成物中の 成分を良好に溶解でき、且つ、これらの成 と好ましからぬ化学反応を生じないもので れば、その種類に制限はない。中でも、重 反応開始剤から生じるフリーキャリア(カチ オンラジカル)を失活させる可能性のある失 物質又は失活物質を発生させるものを含ま い溶剤が好ましい。

 好ましい溶剤の例としては、エーテル系溶 及びエステル系溶剤が挙げられる。
 エーテル系溶剤の具体例としては、エチレ グリコールジメチルエーテル、エチレング コールジエチルエーテル、プロピレングリ ール-1-モノメチルエーテルアセタート(Propyl eneglycol-1-monomethylether acetate:以下適宜「PGMEA」 と略する。)等の脂肪族エーテル;1,2-ジメトキ シベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニ ール、フェネトール、2-メトキシトルエン、 3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2, 3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソー ル等の芳香族エーテルなどが挙げられる。こ れらのエーテル系溶剤は何れか一種を単独で 用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ 及び比率で用いてもよい。

 エステル系溶剤の具体例としては、酢酸エ ル、酢酸n-ブチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチ ル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロ オン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香 エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチ ル等の芳香族エステルなどが挙げられる。こ れらのエステル系溶剤は、何れか一種を単独 で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わ せ及び比率で用いてもよい。
 また、一種又は二種以上のエーテル系溶剤 、一種又は二種以上のエステル系溶剤とを 任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

 また、上述のエーテル系溶剤及びエステ 系溶剤以外に使用可能な溶剤としては、例 ば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳 族炭化水素系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミ 、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶 ;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。こ れらは何れか一種を単独で用いてもよく、二 種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いて もよい。また、これらの溶剤のうち一種又は 二種以上を、上述のエーテル系溶剤及びエス テル系溶剤のうち一種又は二種以上と組み合 わせて用いてもよい。特に、ベンゼン、トル エン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤は 、酸化剤とポリマーを溶解する能力が低いた め、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤と混 合して用いることが好ましい。

 正孔注入層用組成物における溶剤の含有 は、通常1重量%以上、好ましくは70重量%以 、また、通常99.999重量%以下、好ましくは99 量%以下の範囲が望ましい。

 正孔注入層用組成物における正孔輸送剤 含有率は、通常0.001重量%以上、好ましくは0 .1重量%以上、また、通常99重量%以下、好まし くは20重量%以下の範囲が望ましい。

 正孔注入層用組成物における重合反応開 剤の含有率は、通常0.00001重量%以上、好ま くは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量% 上、また、通常50重量%以下、好ましくは5重 %以下、より好ましくは1重量%以下の範囲が ましい。

 正孔注入層用組成物における電子受容性 合物の含有率は、通常0.00001重量%以上、好 しくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量 %以上、また、通常50重量%以下、通常5重量%以 下、より好ましくは1重量%以下の範囲が望ま い。

 更に、正孔注入層用組成物は、その他の 分を含有していてもよい。その他の成分の としては、レベリング剤、消泡剤等が挙げ れる。

 レベリング剤の例としては、シリコーン 界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げ れる。レベリング剤は、何れか一種を単独 用いてもよく、二種以上を任意の組み合わ 及び比率で併用してもよい。

 正孔注入層用組成物中におけるレベリン 剤の含有率は、通常0.0001重量%以上、好まし くは0.001重量%以上、また、通常1重量%以下、 ましくは0.1重量%以下の範囲である。レベリ ング剤の含有率が少な過ぎるとレベリング不 良となる場合があり、多過ぎると膜の電気特 性を阻害する場合がある。

 消泡剤の例としては、シリコーンオイル 脂肪酸エステル、リン酸エステル等が挙げ れる。消泡剤は、何れか一種を単独で用い もよく、二種以上を任意の組み合わせ及び 率で併用してもよい。

 正孔注入層用組成物中における消泡剤の 有率は、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.0 01重量%以上、また、通常1重量%以下、好まし は0.1重量%以下の範囲である。消泡剤の含有 率が少な過ぎると消泡効果がなくなる場合が あり、多過ぎると膜の電気特性を阻害する場 合がある。

 上述の各成分を混合して正孔注入層用組成 を調製した後、これを上述の陽極2上に成膜 する。
 成膜の手法は制限されないが、通常は湿式 膜法が用いられる。湿式成膜法の種類は制 されないが、正孔注入層用組成物の成分や 地となる陽極2の性質等に応じて、スピンコ ート法、スプレー法等の塗布法や、インクジ ェット法、スクリーン法等の印刷法等を任意 に選択して用いることが可能である。

 湿式成膜法により成膜を行なった場合、成 後に乾燥処理等を行なう。
 乾燥処理の手法は特に制限されないが、例 しては自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等が げられる。また、加熱乾燥と減圧乾燥とを み合わせて実施してもよい。

 加熱乾燥を行なう場合、その手法の例とし は、ホットプレート、オーブン、赤外線照 、電波照射等が挙げられる。
 加熱乾燥を行なう場合、加熱温度としては 通常は室温以上、好ましくは50℃以上、ま 、通常300℃以下、好ましくは260℃以下の範 が望ましい。なお、加熱乾燥時の温度は一 でもよいが、変動してもよい。

 減圧乾燥を行なう場合、乾燥時の圧力とし は、通常は常圧以下、好ましくは10kPa以下 より好ましくは1kPa以下の範囲が望ましい。
 乾燥処理の時間は、通常1秒以上、好ましく は10秒以上、より好ましくは30秒以上、また 通常100時間以下、好ましくは24時間以下、よ り好ましくは3時間以下の範囲が望ましい。

 正孔注入層3の厚さは制限されないが、通 常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常10 00nm以下、好ましくは500nm以下の範囲が望まし い。正孔注入層3が薄過ぎると正孔注入性が 十分となる場合があり、厚過ぎると抵抗が くなる場合がある。

 なお、正孔注入層3は単一の層からなる構 成としてもよいが、複数の層が積層された構 成としてもよい。後者の場合、複数の層は同 一の材料からなる層であってもよいが、異な る材料からなる層であってもよい。

 〔II-5.正孔輸送層〕
 正孔注入層3の上には、正孔輸送層4が形成 れる。
 正孔輸送層4は、陽極2、正孔注入層3の順に 入された正孔を有機発光層5に注入する機能 を有すると共に、発光層5から電子が陽極2側 注入されることによる発光効率の低下を抑 する機能を有する。本実施形態において、 孔輸送層4は、重合性化合物を重合して形成 される層(第1の層、重合層)に該当する。

 正孔輸送層4は、正孔輸送層4の原料となる 合性化合物を含有する組成物(以下適宜「正 輸送層用組成物」という場合がある。)を成 膜し、更に、この重合性化合物を重合させる ことにより形成される。
 即ち、正孔輸送層4を形成する工程は、上述 の(2)正孔輸送層用組成物成膜工程及び(3)重合 工程に該当する。

 正孔輸送層用組成物は、正孔輸送層4の原 料成分である、重合性化合物を含有するとと もに、通常は溶剤を含有する。

 重合性化合物の詳細や具体例、好適な例等 ついては上述した通りである。
 重合性化合物は、何れか一種を単独で用い もよく、二種以上を任意の組み合わせ及び 率で併用してもよい。

 溶剤としては、正孔輸送層用組成物中の各 分を良好に溶解でき、且つ、これらの成分 好ましからぬ化学反応を生じないものであ ば、その種類に制限はない。例としては、 ルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘ シルベンゼン等の芳香族化合物;1,2-ジクロ エタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼ ン等の含ハロゲン溶剤;エチレングリコール メチルエーテル、エチレングリコールジエ ルエーテル、プロピレングリコール-1-モノ チルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エ テル、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメト シベンゼン、アニソール、フェネトール、2- メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4- トキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2 ,4-ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等 のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル 、乳酸エチル、乳酸n-ブチル等の脂肪族エス ル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、 安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸 イソプロピル、安息香酸プロピル、安息香酸 n-ブチル等のエステル系溶剤等の有機溶剤等 挙げられる。中でもトルエン、キシレン、 チシレン、シクロヘキシルベンゼン等が好 しい。
 これらの溶剤は、何れか一種を単独で用い もよく、二種以上を任意の組み合わせ及び 率で併用してもよい。

 正孔輸送層用組成物中における溶剤の含有 は、通常1重量%以上、好ましくは20重量%以 、また、通常99.999重量%以下、好ましくは70 量%以下の範囲が望ましい。
 正孔輸送層用組成物中における正孔輸送剤 含有率は、通常0.01重量%以上、好ましくは0. 05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、 た、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以 、より好ましくは10重量%以下の範囲が望ま い。

 更に、正孔輸送層用組成物は、その他の成 を含有していてもよい。
 その他の成分の例としては、電子受容性化 物や正孔輸送層4の溶解性を低下させ、正孔 輸送層4上へ他の層を塗布することを可能と る重合反応を促進するための添加物等が挙 られる。
 重合反応を促進する添加物の例としては、 ルキルフェノン化合物、アシルホスフィン キサイド化合物、メタロセン化合物、オキ ムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム などの重合反応開始剤や重合促進剤、縮合 環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリ ルケトン化合物などの光増感剤等が挙げら る。
 これらの添加物は、何れか一種を単独で用 てもよく、二種以上を任意の組み合わせ及 比率で併用してもよい。
 ただし、正孔輸送層を第1の層として有機電 界発光素子を作製する場合、定電流通電時の 駆動電圧の上昇や通電時の輝度の低下を防止 し、優れた駆動寿命を得る点から、正孔輸送 用組成物は重合反応開始剤を含まないことが 好ましい。

 上述の各成分を混合して正孔輸送層用組成 を調製した後、これを上述の正孔注入層3上 に成膜する。
 成膜の手法は制限されないが、通常は湿式 膜法が用いられる。湿式成膜法の種類は制 されないが、正孔輸送層用組成物の成分や 地となる正孔注入層3の性質等に応じて、ス ピンコート法、スプレー法等の塗布法や、イ ンクジェット法、スクリーン法等の印刷法等 を任意に選択して用いることが可能である。

 正孔輸送層用組成物を正孔注入層3上に成 膜した後、重合性化合物を重合させ、正孔輸 送層4を形成する。重合性化合物を重合させ ことにより、重合性化合物が重合反応を起 し、反応後の膜(正孔輸送層4)の溶解性が低 する。これによって、正孔輸送層4の上に引 続き有機発光層5を形成した場合にも、形成 された正孔輸送層4が有機発光層用組成物(後 )に溶解しないようになる。

 重合性化合物を重合させる手法としては 成膜された正孔輸送層用組成物(これを以下 「正孔輸送層用組成物膜」という。)を加熱 る手法、正孔輸送層用組成物膜に活性エネ ギー線を照射する手法が挙げられる。

 加熱により重合を行なう場合、加熱の手法 制限されないが、例としてはホットプレー 、オーブン、赤外線照射、マイクロ波照射 が挙げられる。これらの手法は、何れか一 を単独で用いてもよく、二種以上を任意の み合わせで併用してもよい。
 加熱温度は、通常は室温以上、好ましくは5 0℃以上、また、通常300℃以下、好ましくは26 0℃以下の範囲が望ましい。なお、加熱時に ける温度は一定であってもよいが、変動し もよい。
 加熱時間は通常1秒以上、好ましくは10秒以 、より好ましくは30秒以上、また、通常100 間以下、好ましくは24時間以下、より好まし くは3時間以下の範囲が望ましい。

 一方、活性エネルギー線の照射により重合 行なう場合、活性エネルギー線としては、 外線、電子線(主として光励起により重合反 応開始剤を分解し重合反応を誘起する)、赤 線、マイクロ波(主として加熱により重合反 開始剤を分解し、かつ重合反応速度を増加 せる)等が挙げられる。これらの活性エネル ギー線は、何れか一種を単独で用いてもよく 、二種以上を任意の組み合わせで併用しても よい。
 活性エネルギー線を照射する手法としては 超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロ ンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤 光源を直接用いて照射する方法、あるいは 述の光源を内蔵するマスクアライナ、コン ア型光照射装置を用いて照射する方法、マ ネトロンにより発生させたマイクロ波を照 する装置、いわゆる電子レンジを用いて照 する方法等が挙げられる。

 活性エネルギー線の照射量は、正孔輸送層 組成物膜表面における積算エネルギー換算 、通常1mJ/cm 2 以上、好ましくは10mJ/cm 2 以上、また、通常100J/cm 2 以下、好ましくは30J/cm 2 以下の範囲が望ましい。
 活性エネルギー線の照射時間としては、上 の照射量となるように適宜設定すればよい 、通常0.1秒以上、好ましくは1秒以上、また 、通常10時間以下、好ましくは1時間以下の範 囲が望ましい。

 上述の加熱及び活性エネルギー線の照射は 正孔注入層3が含有する重合反応開始剤及び 正孔輸送層用組成物が含有する重合性化合物 の種類に応じて、適宜選択すればよい。
 なお、加熱又は活性エネルギー線の照射を 独で実施してもよく、加熱と活性エネルギ 線の照射とを組み合わせて実施してもよい
 また、活性エネルギー線の照射を行なう場 には、一種の活性エネルギー線を単独で照 してもよく、二種以上の活性エネルギー線 同時に、或いは個別に照射してもよい。

 重合工程時の圧力は制限されないが、通常 常圧下或いは減圧下で行なわれる。
 重合工程時の雰囲気も制限されないが、通 は大気中、或いは窒素等の不活性雰囲気中 行なわれる。中でも、得られる正孔輸送層4 の内部に含有される水分及び/又は表面に吸 する水分の量を低減するために、窒素ガス 囲気等の水分を含まない雰囲気で行なうこ が好ましい。同様の目的で、加熱及び/又は 性エネルギー線の照射を組み合わせて複数 程により行なう場合には、少なくとも有機 光層5の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等 の水分を含まない雰囲気で行なうことが特に 好ましい。

 重合工程の実施後、残留溶剤低減のため、 に乾燥処理を行なってもよい。
 乾燥処理を行なう場合、その手法は制限さ ないが、例としては自然乾燥、加熱乾燥、 圧乾燥等が挙げられる。また、加熱乾燥と 圧乾燥とを組み合わせて実施してもよい。
 加熱乾燥を行なう場合、その手法の例とし は、ホットプレート、オーブン、赤外線照 、電波照射等が挙げられる。

 加熱乾燥を行なう場合、加熱温度としては 通常は室温以上、好ましくは50℃以上、ま 、通常300℃以下、好ましくは260℃以下の範 が望ましい。なお、加熱乾燥時の温度は一 でもよいが、変動してもよい。
 減圧乾燥を行なう場合、乾燥時の圧力とし は、通常は常圧以下、好ましくは10kPa以下 より好ましくは1kPa以下の範囲が望ましい。
 乾燥処理の時間は、通常1秒以上、好ましく は10秒以上、より好ましくは30秒以上、また 通常100時間以下、好ましくは24時間以下、よ り好ましくは3時間以下の範囲が望ましい。

 正孔輸送層4の厚さは制限されないが、通 常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常10 00nm以下、好ましくは500nm以下の範囲が望まし い。正孔輸送層4が薄過ぎると素子の発光効 が低下する場合があり、厚過ぎると素子電 が高くなる場合がある。

 なお、正孔輸送層4は単一の層からなる構 成としてもよいが、複数の層が積層された構 成としてもよい。後者の場合、複数の層は同 一の材料からなる層であってもよいが、異な る材料からなる層であってもよい。

 〔II-6.有機発光層〕
 正孔輸送層4の上には、有機発光層5が形成 れる。
 有機発光層5は、電界を与えられた電極間に おいて、陽極2から正孔注入層3及び正孔輸送 4を通じて注入された正孔と、陰極8から電 注入層7、正孔阻止層6を通じて注入された電 子との再結合により励起されて、主たる発光 源となる層である。

 有機発光層5は、少なくとも、発光の性質 を有する材料(発光材料)を含有するとともに 好ましくは、正孔輸送の性質を有する材料( 正孔輸送性化合物)、或いは、電子輸送の性 を有する材料(電子輸送性化合物)とを含有す る。更に、有機発光層5は、本発明の趣旨を 脱しない範囲で、その他の成分を含有して てもよい。これらの材料としては、後述の うに湿式成膜法で有機発光層5を形成する観 から、何れも低分子系の材料を使用するこ が好ましい。

 発光材料としては、任意の公知の材料を 用可能である。例えば、蛍光発光材料であ てもよく、燐光発光材料であってもよいが 内部量子効率の観点から、好ましくは燐光 光材料である。

 なお、溶剤への溶解性を向上させる目的 、発光材料の分子の対称性や剛性を低下さ たり、或いはアルキル基などの親油性置換 を導入したりすることも、好ましい。

 青色発光を与える蛍光色素としては、例 ば、ペリレン、ピレン、アントラセン、ク リン、p-ビス(2-フェニルエテニル)ベンゼン びそれらの誘導体等が挙げられる。緑色蛍 色素としては、例えば、キナクリドン誘導 、クマリン誘導体等が挙げられる。黄色蛍 色素としては、例えば、ルブレン、ペリミ ン誘導体等が挙げられる。赤色蛍光色素と ては、例えば、DCM(4-(dicyanomethylene)-2-methyl-6-( p-dimethylaminostyryl)-4H-pyran)系化合物、ベンゾピ ン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオ サンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテ 等が挙げられる。

 燐光発光材料としては、例えば、長周期 周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周 期表」という場合には、長周期型周期表を指 すものとする。)第7~11族から選ばれる金属を む有機金属錯体が挙げられる。

 燐光性有機金属錯体に含まれる、周期表 7~11族から選ばれる金属として、好ましくは 、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、 レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、 金等が挙げられる。これらの有機金属錯体と して、好ましくは下記式(VI)又は式(VII)で表わ される化合物が挙げられる。

            ML (q-j) L″ j     (VI)
(式(VI)中、Mは金属を表わし、qは上記金属の 数を表わす。また、L及びL″は二座配位子を 表わす。jは0、1又は2の数を表わす。)

(式(VII)中、M 7 は金属を表わし、Tは炭素原子又は窒素原子 表わす。R 92 ~R 95 は、それぞれ独立に置換基を表わす。但し、 Tが窒素原子の場合は、R 94 及びR 95 は無い。)

 以下、まず、式(VI)で表わされる化合物につ いて説明する。
 式(VI)中、Mは任意の金属を表わし、好まし ものの具体例としては、周期表第7~11族から ばれる金属として前述した金属が挙げられ 。

 また、式(VI)中、二座配位子Lは、以下の部 構造を有する配位子を示す。
 上記Lの部分構造において、環A1は、置換基 有していてもよい、芳香族炭化水素基又は 香族複素環基を表わす。

 該芳香族炭化水素基としては、5又は6員 の単環又は2~5縮合環が挙げられる。具体例 しては、ベンゼン環、ナフタレン環、アン ラセン環、フェナントレン環、ペリレン環 テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環 クリセン環、トリフェニレン環、アセナフ ン環、フルオランテン環、フルオレン環由 の1価の基などが挙げられる。

 該芳香族複素環基としては、5又は6員環 単環又は2~4縮合環が挙げられる。具体例と ては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフ ン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、 ラゾール環、イミダゾール環、オキサジア ール環、インドール環、カルバゾール環、 ロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環 ピロロピロール環、チエノピロール環、チ ノチオフェン環、フロピロール環、フロフ ン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサ ール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾ ミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、 リダジン環、ピリミジン環、トリアジン環 キノリン環、イソキノリン環、シノリン環 キノキサリン環、フェナントリジン環、ベ ゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾ ン環、キナゾリノン環、アズレン環由来の1 の基などが挙げられる。

 また、上記Lの部分構造において、環A2は 置換基を有していてもよい、含窒素芳香族 素環基を表わす。

 該含窒素芳香族複素環基としては、5又は 6員環の単環又は2~4縮合環由来の基が挙げら る。具体例としては、ピロール環、ピラゾ ル環、イミダゾール環、オキサジアゾール 、インドール環、カルバゾール環、ピロロ ミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロ ピロール環、チエノピロール環、フロピロ ル環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサ ール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾ ミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、 リダジン環、ピリミジン環、トリアジン環 キノリン環、イソキノリン環、キノキサリ 環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾ ル環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナ リノン環由来の1価の基などが挙げられる。

 環A1又は環A2がそれぞれ有していてもよい 置換基の例としては、ハロゲン原子;アルキ 基;アルケニル基;アルコキシカルボニル基; ルコキシ基;アリールオキシ基;ジアルキルア ミノ基;ジアリールアミノ基;カルバゾリル基; アシル基;ハロアルキル基;シアノ基;芳香族炭 化水素基等が挙げられる。

 また、式(VI)中、二座配位子L″は、以下 部分構造を有する配位子を示す。但し、以 の式において、「Ph」はフェニル基を表わす 。

 中でも、L″としては、錯体の安定性の観 点から、以下に挙げる配位子が好ましい。

 式(VI)で表わされる化合物として、更に好 ましくは、下記式(VIa)、(VIb)、(VIc)で表わされ る化合物が挙げられる。

(式(VIa)中、M 4 は、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属 価数を表わし、環A1は、置換基を有してい もよい芳香族炭化水素基を表わし、環A2は、 置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素 環基を表わす。)

(式(VIb)中、M 5 は、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属 価数を表わし、環A1は、置換基を有してい もよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環 を表わし、環A2は、置換基を有していてもよ い含窒素芳香族複素環基を表わす。)

(式(VIc)中、M 6 は、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属 価数を表わし、jは、0、1又は2を表わし、環 A1及び環A1″は、それぞれ独立に、置換基を していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香 複素環基を表わし、環A2及び環A2″は、それ れ独立に、置換基を有していてもよい含窒 芳香族複素環基を表わす。)

 上記式(VIa)~(VIc)において、環A1及び環A1″ 好ましい例としては、フェニル基、ビフェ ル基、ナフチル基、アントリル基、チエニ 基、フリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾ リル基、ピリジル基、キノリル基、イソキ リル基、カルバゾリル基等が挙げられる。

 上記式(VIa)~(VIc)において、環A2及び環A2″ 好ましい例としては、ピリジル基、ピリミ ル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾ アゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベン イミダゾール基、キノリル基、イソキノリ 基、キノキサリル基、フェナントリジル基 が挙げられる。

 上記式(VIa)~(VIc)で表わされる化合物が有 ていてもよい置換基としては、ハロゲン原 ;アルキル基;アルケニル基;アルコキシカル ニル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;ジ ルキルアミノ基;ジアリールアミノ基;カルバ ゾリル基;アシル基;ハロアルキル基;シアノ基 等が挙げられる。

 なお、これら置換基は互いに連結して環 形成してもよい。具体例としては、環A1が する置換基と環A2が有する置換基とが結合す るか、又は、環A1″が有する置換基と環A2″ 有する置換基とが結合することにより、一 の縮合環を形成してもよい。このような縮 環としては、7,8-ベンゾキノリン基等が挙げ れる。

 中でも、環A1、環A1″、環A2及び環A2″の 換基として、より好ましくは、アルキル基 アルコキシ基、芳香族炭化水素基、シアノ 、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ジアリ ルアミノ基、カルバゾリル基が挙げられる

 また、式(VIa)~(VIc)におけるM 4 ~M 6 の好ましい例としては、ルテニウム、ロジウ ム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム 、イリジウム、白金又は金が挙げられる。

 上記式(VI)及び(VIa)~(VIc)で示される有機金 錯体の具体例を以下に示すが、下記の化合 に限定されるものではない。

 上記式(VI)で表わされる有機金属錯体の中 でも、特に、配位子L及び/又はL″として2-ア ールピリジン系配位子、即ち、2-アリール リジン、これに任意の置換基が結合したも 、及び、これに任意の基が縮合してなるも を有する化合物が好ましい。

 また、国際特許公開第2005/019373号パンフ ットに記載の化合物も、発光材料として使 することが可能である。

 次に、式(VII)で表わされる化合物について 明する。
 式(VII)中、M 7 は金属を表わす。具体例としては、周期表第 7~11族から選ばれる金属として前述した金属 挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウ 、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、 スミウム、イリジウム、白金又は金が挙げ れ、特に好ましくは、白金、パラジウム等 2価の金属が挙げられる。

 また、式(VII)において、R 92 及びR 93 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原 子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル 基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコ キシカルボニル基、カルボキシル基、アルコ キシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミ ノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオ キシ基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環 基を表わす。

 更に、Tが炭素原子の場合、R 94 及びR 95 は、それぞれ独立に、R 92 及びR 93 と同様の例示物で表わされる置換基を表わす 。また、Tが窒素原子の場合は、R 94 及びR 95 は無い。

 また、R 92 ~R 95 は、更に置換基を有していてもよい。置換基 を有する場合、その種類に特に制限はなく、 任意の基を置換基とすることができる。
 更に、R 92 ~R 95 のうち任意の2つ以上の基が互いに連結して を形成してもよい。
 また、同一分子中に存在するR 92 同士、R 93 同士、R 94 同士及びR 95 同士は、同じでもよく、異なっていてもよい 。

 式(VII)で表わされる有機金属錯体の具体 (T-1、T-10~T-15)を以下に示すが、下記の例示物 に限定されるものではない。また、以下の化 学式において、Meはメチル基を表わし、Etは チル基を表わす。

 発光材料として用いる化合物の分子量は 通常10000以下、好ましくは5000以下、より好 しくは4000以下、更に好ましくは3000以下、 た、通常100以上、好ましくは200以上、より ましくは300以上、更に好ましくは400以上の 囲である。分子量が低過ぎると、耐熱性が しく低下したり、ガス発生の原因となった 、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり 或いはマイグレーションなどによる有機電 発光素子のモルフォロジー変化を招いたり る場合がある。分子量が高過ぎると、有機 合物の精製が困難となったり、溶剤に溶解 せる際に時間を要したりする場合がある。

 なお、有機発光層5は、上に説明した各種 の発光材料のうち、何れか一種を単独で含有 していてもよく、二種以上を任意の組み合わ せ及び比率で併有していてもよい。

 低分子系の正孔輸送性化合物の例として 、前述の正孔輸送層の正孔輸送性化合物と て例示した各種の化合物の他、4,4’-ビス[N- (1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニルに 表される、2個以上の3級アミンを含み2個以 の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香 ジアミン(特開平5-234681号公報)、4,4’,4”-ト リス(1-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニ アミン等のスターバースト構造を有する芳 族アミン化合物(Journal of Luminescence, 1997年, Vol.72-74, pp.985)、トリフェニルアミンの四量 から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communic ations, 1996年, pp.2175)、2,2’,7,7’-テトラキス- (ジフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレ 等のスピロ化合物(Synthetic Metals, 1997年, Vol. 91, pp.209)等が挙げられる。

 低分子系の電子輸送性化合物の例として 、2,5-ビス(1-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾー (BND)や、2,5-ビス(6’-(2’,2”-ビピリジル))-1, 1-ジメチル-3,4-ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や 、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9-ジメチ -4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP、 ソクプロイン)、2-(4-ビフェニリル)-5-(p-ター シャルブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾー (tBu-PBD)や、4,4’-ビス(9-カルバゾール)-ビフ ニル(CBP)等がある。

 これら正孔輸送性化合物や電子輸送性化 物は発光層においてホスト材料として使用 れることが好ましいが、ホスト材料として 体的には以下のような化合物を使用するこ ができる。

 有機発光層5の形成法としては、湿式成膜 法、真空蒸着法が挙げられるが、上述したよ うに、均質で欠陥がない薄膜を容易に得られ る点や、形成のための時間が短くて済む点、 更には、本発明の有機化合物による正孔輸送 層4の不溶化の効果を享受できる点から、低 子系の材料を用いて湿式成膜法で有機発光 5を形成することが好ましい。湿式成膜法に り有機発光層5を形成する場合、上述の材料 を適切な溶剤に溶解させて有機発光層用組成 物(有機発光層5を構成する成分を含有する組 物。塗布溶液ともいう)を調製し、それを上 述の形成後の正孔輸送層4の上に塗布・成膜 、乾燥して溶剤を除去することにより形成 る。その形成方法としては、前記正孔輸送 の形成方法と同様である。

 有機発光層5の厚さは制限されないが、通 常5nm以上、好ましくは20nm以上、また、通常10 00nm以下、好ましくは100nm以下の範囲が望まし い。有機発光層5が薄過ぎると発光効率が低 したり、寿命が短くなる場合があり、厚過 ると素子の電圧が高くなる場合がある。

 なお、有機発光層5は単一の層からなる構 成としてもよいが、複数の層が積層された構 成としてもよい。後者の場合、複数の層は同 一の材料からなる層であってもよいが、異な る材料からなる層であってもよい。

 〔II-7.正孔阻止層〕
 有機発光層5の上には、正孔阻止層6が形成 れる。
 正孔阻止層6は、有機発光層5の上に、有機 光層5の陰極8側の界面に接するように積層さ れるが、陽極2から移動してくる正孔が陰極8 到達するのを阻止する役割と、陰極8から注 入された電子を効率よく有機発光層5の方向 輸送することができる化合物より形成され 。

 正孔阻止層6を構成する材料(正孔阻止材 )に求められる物性としては、電子移動度が く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャ プ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項 準位(T1)が高いことが挙げられる。

 このような条件を満たす正孔阻止材料と ては、例えば、ビス(2-メチル-8-キノリノラ ),(フェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル -8-キノリノラト),(トリフェニルシラノラト) ルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2-メ ル-8-キノラト)アルミニウム-μ-オキソ-ビス-( 2-メチル-8-キノリラト)アルミニウム二核金属 錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘 導体等のスチリル化合物(特開平11-242996号公 )、3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5(4-tert-ブ チルフェニル)-1,2,4-トリアゾール等のトリア ール誘導体(特開平7-41759号公報)、バソクプ イン等のフェナントロリン誘導体(特開平10- 79297号公報)が挙げられる。更に、国際公開第 2005-022962号公報に記載の2,4,6位が置換された リジン環を少なくとも1個有する化合物も、 孔阻止材料として好ましい。

 正孔阻止材料の具体例としては、以下に げる構造の化合物が挙げられる。

 これらの正孔阻止材料は、何れか一種を 独で用いてもよく、二種以上を任意の組み わせ及び比率で併用してもよい。

 正孔阻止層6も、正孔注入層3や有機発光 5と同様、湿式成膜法を用いて形成すること できるが、通常は真空蒸着法により形成さ る。真空蒸着法の手順の詳細は、後述の電 注入層7の場合と同様である。

 正孔阻止層6の厚さは制限されないが、通 常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、また、通常1 00nm以下、好ましくは50nm以下の範囲が望まし 。正孔阻止層6が薄過ぎると正孔阻止能力不 足による発光効率の低下が生じる場合があり 、厚過ぎると素子の電圧が高くなる場合があ る。

 なお、正孔阻止層6は単一の層からなる構 成としてもよいが、複数の層が積層された構 成としてもよい。後者の場合、複数の層は同 一の材料からなる層であってもよいが、異な る材料からなる層であってもよい。

 〔II-8.電子注入層〕
 正孔阻止層6の上には、電子注入層7が形成 れる。
 電子注入層7は、陰極8から注入された電子 効率良く有機発光層5へ注入する役割を果た 。

 電子注入を効率よく行なうために、電子注 層7を形成する材料は、仕事関数の低い金属 が好ましい。例としては、ナトリウムやセシ ウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウ ムなどのアルカリ土類金属等が用いられる。
 この場合、電子注入層7の厚さは、通常0.1nm 上、好ましくは0.5nm以上、また、通常5nm以 、好ましくは2nm以下の範囲が望ましい。

 更に、後述するバソフェナントロリン等の 窒素複素環化合物や8-ヒドロキシキノリン アルミニウム錯体などの金属錯体に代表さ る有機電子輸送材料に、ナトリウム、カリ ム、セシウム、リチウム、ルビジウム等の ルカリ金属をドープする(特開平10-270171号公 、特開2002-100478号公報、特開2002-100482号公報 などに記載)ことにより、電子注入・輸送性 向上し優れた膜質を両立させることが可能 なるため好ましい。
 この場合、電子注入層7の厚さは、通常5nm以 上、好ましくは10nm以上、また、通常200nm以下 、好ましくは100nm以下の範囲が望ましい。

 これらの電子注入層7の材料は、何れか一 種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の 組み合わせ及び比率で併用してもよい。

 電子注入層7は、湿式成膜法或いは真空蒸 着法により、正孔阻止層6上に積層すること より形成される。

 湿式成膜法の詳細は、上述の正孔注入層3及 び有機発光層5の場合と同様である。
 一方、真空蒸着法の場合には、真空容器内 設置されたるつぼ又は金属ボートに蒸着源 入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10 -4 Pa程度にまで排気した後、るつぼ又は金属ボ トを加熱して蒸発させ、るつぼ又は金属ボ トと向き合って置かれた基板1上の正孔阻止 層6上に電子注入層7を形成する。

 電子注入層7としてのアルカリ金属の蒸着 は、クロム酸アルカリ金属と還元剤をニクロ ムに充填したアルカリ金属ディスペンサーを 用いて行なう。このディスペンサーを真空容 器内で加熱することにより、クロム酸アルカ リ金属が還元されてアルカリ金属が蒸発され る。

 有機電子輸送材料とアルカリ金属とを共蒸 する場合は、有機電子輸送材料を真空容器 に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を 当な真空ポンプで10 -4 Pa程度にまで排気した後、各々のるつぼ及び ィスペンサーを同時に加熱して蒸発させ、 つぼ及びディスペンサーと向き合って置か た基板上に電子注入層7を形成する。
 このとき、通常は電子注入層7の膜厚方向に おいて均一に共蒸着されるが、膜厚方向にお いて濃度分布があっても構わない。

 なお、電子注入層7は単一の層からなる構 成としてもよいが、複数の層が積層された構 成としてもよい。後者の場合、複数の層は同 一の材料からなる層であってもよいが、異な る材料からなる層であってもよい。

 〔II-9.陰極〕
 電子注入層7の上には、陰極8が形成される
 陰極8は、有機発光層5側の層(電子注入層7又 は有機発光層5など)に電子を注入する役割を たす。

 陰極8の材料としては、前記の陽極2に使用 れる材料を用いることが可能であるが、効 良く電子注入を行なうには、仕事関数の低 金属が好ましい。仕事関数の低い金属の例 しては、スズ、マグネシウム、インジウム カルシウム、アルミニウム、銀等、又はそ らの合金が挙げられる。合金の例としては マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジ ウム合金、アルミニウム-リチウム合金等が げられる。
 これらの陰極8の材料は、何れか一種を単独 で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わ せ及び比率で併用してもよい。

 陰極8の厚さは制限されないが、通常は陽極 2と同様である。
 なお、陰極8は単一の層からなる構成として もよいが、複数の層が積層された構成として もよい。後者の場合、複数の層は同一の材料 からなる層であってもよいが、異なる材料か らなる層であってもよい。

 〔II-10.その他〕
 以上、本発明の有機デバイス及び本発明の 造方法の詳細について、図1に示す有機電界 発光素子100を例として説明したが、本発明の 有機デバイス及び本発明の製造方法の詳細は 、上記説明によって限定されるものではない 。

 例えば、本発明の有機デバイスが有機電界 光素子である場合、その構成は、図1に示す 有機電界発光素子100の構成に制限されるもの ではなく、有機電界発光素子100の構成に対し て任意の変更を加えたものであってもよい。
 変更の例としては、有機電界発光素子100が する各層の積層順の変更や、一又は二以上 層の省略、一又は二以上の層の付加等が挙 られる。

 積層順の異なる構成の例としては、基板1 に対し他の各層を有機電界発光素子100とは逆 の順に積層した構成、即ち、基板1上に陰極8 電子注入層7、正孔阻止層6、有機発光層5、 孔輸送層4、正孔注入層3及び陽極2をこの順 積層した構成等が挙げられる。

 一部の層を省略した構成の例としては、 孔阻止層6を省略し、有機発光層5と電子注 層7とを隣接して設けた構成等が挙げられる

 別の層を付加した構成の例としては、正 注入の効率を更に向上させ、かつ、有機層 体の陽極2への付着力を改善させる目的で、 陽極2と正孔注入層3との間に陽極バッファ層 設けた構成や、低仕事関数金属から成る陰 を保護する目的で、陰極8の上に更に、仕事 関数が高く大気に対して安定な金属層(例え アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム 金、白金等からなる層)を設けた構成等が挙 られる。

 また、本発明の有機デバイスは、有機電 発光素子に制限されず、その他の有機デバ スであってもよい。その他の有機デバイス 例としては、上述したように、有機トラン スタ、有機太陽電池、有機発光トランジス 、有機磁性デバイス、有機ダイオード、有 アクチュエーター(モーター等)、有機セン ー(圧力、温度、湿度センサー等)等が挙げら れる。何れの有機デバイスであっても、基板 上の陽極と陰極との間に配置された複数の有 機層のうち隣接する2層が、重合性化合物を 合して形成される層(第1の層)、及び、重合 応開始剤を含有する層(第2の層)として形成 れていればよい。

 また、本発明の製造方法も、図1の有機電 界発光素子100について詳述した方法に制限さ れない。少なくとも、上述の(1)正孔注入層用 組成物成膜工程、(2)正孔輸送層用組成物成膜 工程、(3)重合工程を備えてさえいれば、その 他は製造対象となる本発明の有機デバイスの 構成に応じて、適宜変更を加えて実施するこ とが可能である。

 以下、本発明について、実施例を用いて に詳細に説明するが、本発明はその要旨を えない限り、以下の実施例に限定されるも ではない。

[実施例1]
 17.5mm×35mm(厚さ0.7mm)サイズのガラス基板を、 界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水 による水洗、超純水による超音波洗浄、超純 水による水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾 燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった 。

 このガラス基板上に、重合反応開始剤を含 する層を、以下の手順で湿式成膜法により 成した。
 即ち、正孔輸送剤として、下記式P-1に示す 造の芳香族アミノ基を有する高分子化合物( 重量平均分子量:29400、数平均分子量:12600。以 下「化合物(P-1)」という。)と、電子受容性化 合物兼重合反応開始剤として、下記式A-1に示 す構造の化合物(以下「化合物(A-1)」という。 )とを含有する塗布液(組成物)を用い、下記の 条件でスピンコートを行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境    大気中
   塗布液溶剤   安息香酸エチル
   塗布液濃度   化合物(P-1)  2.0重量%
           化合物(A-1)  0.8重量%
   スピナ回転数  1500rpm
   スピナ回転時間 30秒
   乾燥条件    230℃×3時間

 上記のスピンコートにより、膜厚30nmの均 一な薄膜(重合反応開始剤を含有する層)が形 された。

 続いて、上記薄膜(重合反応開始剤を含有す る層)上に、重合性化合物を含有する層を、 下の手順で湿式成膜法により形成した。
 即ち、重合性化合物として、下記式H-1に示 構造の化合物(以下「化合物(H-1)」という。) を含有する塗布液を用い、下記の条件でスピ ンコートを行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境     大気中
   溶剤       キシレン
   塗布液濃度    化合物(H-1)  2重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒

 得られたスピンコート膜に対し、大気中、 圧水銀ランプを用いてUV光を積算光量で5J/cm 2 (365nm光のエネルギー値)照射した。その後、 気中200℃で1時間加熱することにより、2層の 合計の厚さが60nmの均一な積層薄膜(重合反応 始剤を含有する層と重合性化合物を含有す 層とが積層された薄膜)を得た。

 この積層薄膜が形成された基板をスピン ーターにセットし、キシレン0.2mLを膜状に 下し、大気中、23℃で10秒間静置した。その 、1500rpm×30秒のスピンコート動作を行ない 溶剤を乾燥させた。その後、膜厚を測定し ところ、60nmであった。このようにして、生 した膜がキシレンに対し溶解しないことが 認された。

[実施例2]
 重合反応開始剤を含有する層の形成時に、 ピンコート膜に対し、高圧水銀ランプを用 てUV光を積算光量で5J/cm 2 (365nm光のエネルギー値)照射した後、大気中18 0℃で1時間加熱したこと以外は、実施例1と同 様の条件により、2層の合計の厚さが60nmの均 な積層薄膜(重合反応開始剤を含有する層と 重合性化合物を含有する層とが積層された薄 膜)を得た。

 この積層薄膜が形成された基板をスピン ーターにセットし、キシレン0.2mLを膜状に 下し、大気中23℃で10秒間静置した。その後 1500rpm×30秒のスピンコート動作を行ない、 剤を乾燥させた。その後、膜厚を測定した ころ、60nmであった。このようにして、生成 た膜がキシレンに対し溶解しないことが確 された。

[実施例3]
 重合反応開始剤を含有する層の形成時に、 ピンコート膜に対し、高圧水銀ランプを用 てUV光を積算光量で5J/cm 2 (365nm光のエネルギー値)照射した後、大気中15 0℃で1時間加熱したこと以外は、実施例1と同 様の条件により、2層の合計の厚さが60nmの均 な積層薄膜(重合反応開始剤を含有する層と 重合性化合物を含有する層とが積層された薄 膜)を得た。

 この積層薄膜が形成された基板をスピン ーターにセットし、キシレン0.2mLを膜状に 下し、大気中23℃で10秒間静置した。その後 1500rpm×30秒のスピンコート動作を行ない、 剤を乾燥させた。その後、膜厚を測定した ころ、60nmであった。このようにして、生成 た膜がキシレンに対し溶解しないことが確 された。

[比較例1]
 17.5mm×35mm(厚さ0.7mm)サイズのガラス基板を、 界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水 による水洗、超純水による超音波洗浄、超純 水による水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾 燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった 。

 このガラス基板上に、重合性化合物を含有 る層を、以下の手順で湿式成膜法により形 した。
 即ち、重合性化合物として上記化合物(H-1) 含有する塗布液を用い、下記の条件でスピ コートを行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境     大気中
   溶剤       キシレン
   塗布液濃度    化合物(H-1)  2重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒

 得られたスピンコート膜を大気中、200℃ 1時間加熱することにより、膜厚30nmの均一 薄膜(重合性化合物を含有する層)を得た。

 この薄膜が形成された基板をスピンコー ーにセットし、キシレン0.2mLを膜状に滴下 、大気中23℃で10秒間静置した。その後、1500 rpm×30秒のスピンコート動作を行ない、溶剤 乾燥させた。その後、膜厚を測定したとこ 、0nmであり、全ての膜が溶解したことが明 かになった。

[参考例1]
 17.5mm×35mm(厚さ0.7mm)サイズのガラス基板を、 界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水 による水洗、超純水による超音波洗浄、超純 水による水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾 燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった 。

 このガラス基板上に、重合性化合物及び重 反応開始剤を含有する層を、以下の手順で 式成膜法により形成した。
 即ち、重合性化合物として上記化合物(H-1) 、重合反応開始剤としてチバ・スペシャリ ィ・ケミカル製イルガキュア651とを含有す 塗布液を用い、下記の条件でスピンコート 行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境     大気中
   溶剤       キシレン
   塗布液濃度    化合物(H-1)   1.9重量%
            イルガキュア651  0.1重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒

 得られたスピンコート膜に対し、大気中、 圧水銀ランプを用いてUV光を積算光量で5J/cm 2 (365nm光のエネルギー値)照射した。その後、 気中180℃で1時間加熱することにより、膜厚3 0nmの均一な薄膜(重合性化合物及び重合反応 始剤を含有する層)を得た。

 この薄膜が形成された基板をスピンコー ーにセットし、キシレン0.2mLを膜状に滴下 、大気中23℃で10秒間静置した。その後、1500 rpm×30秒のスピンコート動作を行ない、溶剤 乾燥させた。その後、膜厚を測定したとこ 、30nmであった。このようにして、生成した がキシレンに対し溶解しないことが確認さ た。

[参考例2]
 重合性化合物及び重合反応開始剤を含有す 層の形成時に、スピンコート膜に対し、高 水銀ランプを用いてUV光を積算光量で5J/cm 2 (365nm光のエネルギー値)照射した後大気中150 で1時間加熱したこと以外は、後述する比較 2と同様の条件により、膜厚30nmの均一な薄 (重合性化合物及び重合反応開始剤を含有す 層)を得た。

 この薄膜が形成された基板をスピンコー ーにセットし、キシレン0.2mLを膜状に滴下 、大気中23℃で10秒間静置した。その後、1500 rpm×30秒のスピンコート動作を行ない、溶剤 乾燥させた。その後、膜厚を測定したとこ 30nmであった。このようにして、生成した膜 キシレンに対し溶解しないことが確認され 。

[結果]
 以上の結果から、重合反応開始剤を含む層 重合性化合物を含む層が隣接するように層 形成した実施例1~3では、重合反応開始剤と 合性化合物の両者を含む層を形成した参考 1,2と同等の、重合反応による膜の耐溶剤性 上効果が得られることが明らかとなった。

[実施例4]
 重合性化合物を含有する層の形成条件を以 のように変更した以外は、実施例1と同様の 条件により、重合反応開始剤を含有する層と 重合性化合物を含有する層とが積層された薄 膜を得た。

 即ち、重合性化合物として、下記式H-2に す構造の化合物(以下「化合物(H-2)」という )を含有する塗布液を用い、下記の条件でス ピンコートを行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境     大気中
   溶剤       キシレン
   塗布液濃度    化合物(H-2)  2重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒

 得られたスピンコート膜に対し、大気中、 圧水銀ランプを用いてUV光を積算光量で2J/cm 2 (365nm光のエネルギー値)照射した。その後、 気中150℃で1時間加熱することにより、2層の 合計の厚さが69nmの均一な積層薄膜(重合反応 始剤を含有する層と重合性化合物を含有す 層とが積層された薄膜)を得た。

 この積層薄膜が形成された基板をスピン ーターにセットし、キシレン0.2mLを膜状に 下し大気中23℃で10秒間静置した。その後、1 500rpm×30秒のスピンコート動作を行ない、溶 を乾燥させた。その後、膜厚を測定したと ろ69nmであった。このようにして、生成した がキシレンに対し溶解しないことが確認さ た。

[実施例5]
 17.5mm×35mm(厚さ0.7mm)サイズのガラス基板を、 界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水 による水洗、超純水による超音波洗浄、超純 水による水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾 燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった 。

 このガラス基板上に、重合反応開始剤を含 する層を、以下の手順で湿式成膜法により 成した。
 即ち、正孔輸送剤として上記化合物(P-1)、 合反応開始剤として上記化合物(A-1)、及び、 重合反応開始剤としてチバ・スペシャリティ ・ケミカル製イルガキュア651を用い、下記の 条件でスピンコートを行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境    大気中
   塗布液溶剤   安息香酸エチル
   塗布液濃度   化合物(P-1)   2.0重量%
           化合物(A-1)   0.8重量%
           イルガキュア651  0.2重量%
   スピナ回転数  1500rpm
   スピナ回転時間 30秒
   乾燥条件    230℃×3時間

 上記のスピンコートにより、膜厚30nmの均 一な薄膜(重合反応開始剤を含有する層)が形 された。

 次いで、上記薄膜(重合反応開始剤を含有す る層)上に、重合性化合物を含有する層を、 下の手順で湿式成膜法により形成した。
 即ち、重合性化合物として、上記化合物(H-2 )を含有する塗布液を用い、下記の条件でス ンコートを行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境     大気中
   溶剤       キシレン
   塗布液濃度    化合物(H-2)  2重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒

 得られたスピンコート膜に対し、大気中、 圧水銀ランプを用いて、UV光を積算光量で5J /cm 2 (365nm光のエネルギー値)照射した。その後、 気中180℃で1時間加熱することにより、2層の 合計の厚さが69nmの均一な積層薄膜(重合反応 始剤を含有する層と重合性化合物を含有す 層とが積層された薄膜)を得た。

 この積層薄膜が形成された基板をスピン ーターにセットし、キシレン0.2mLを膜状に 下し、大気中23℃で10秒間静置した。その後 1500rpm×30秒のスピンコート動作を行ない、 剤を乾燥させた。その後、膜厚を測定した ころ、69nmであった。このようにして、生成 た膜がキシレンに対し溶解しないことが確 された。

[参考例3]
 17.5mm×35mm(厚さ0.7mm)サイズのガラス基板を、 界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水 による水洗、超純水による超音波洗浄、超純 水による水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾 燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった 。

 このガラス基板上に、重合性化合物及び重 反応開始剤を含有する層を、以下の手順で 式成膜法により形成した。
 即ち、重合性化合物として上記化合物(H-2) 、重合反応開始剤としてチバ・スペシャリ ィ・ケミカル製イルガキュア651とを含有す 塗布液を用い、下記の条件でスピンコート 行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境     大気中
   溶剤       キシレン
   塗布液濃度    化合物(H-2)   1.9重量%
            イルガキュア651  0.1重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒

 得られたスピンコート膜に対し、大気中、 圧水銀ランプを用いてUV光を積算光量で5J/cm 2 (365nm光のエネルギー値)照射した。その後、 気中180℃で1時間加熱することにより、膜厚3 9nmの均一な薄膜(重合性化合物及び重合反応 始剤を含有する層)を得た。

 この薄膜が形成された基板をスピンコー ーにセットし、キシレン0.2mLを膜状に滴下 、大気中23℃で10秒間静置した。その後、1500 rpm×30秒のスピンコート動作を行ない、溶剤 乾燥させた。その後、膜厚を測定したとこ 、30nmであった。このようにして、生成した がキシレンに対し溶解せず、化学的安定性 向上していることが確認された。

[結果]
 以上の結果から、重合反応開始剤を含む層 重合性化合物を含む層とを隣接するように 層形成した実施例4及び実施例5では、重合 応開始剤と重合性化合物の両者を含む層を 成した参考例3と同等の、重合反応による膜 耐溶剤性向上効果が得られることが明らか なった。

[実施例6]
 図3に示す構造を有する有機電界発光素子を 以下の方法で作製した。
 ガラス基板1の上にインジウム・スズ酸化物 (ITO)透明導電膜を150nmの厚さに堆積したもの( 容真空社製、スパッタ成膜品;シート抵抗15 )を、通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸 ッチングを用いて2mm幅のストライプにパタ ニングして、陽極2を形成した。

 この陽極2をパターン形成したITO基板1を アセトンによる超音波洗浄、純水による水 、イソプロピルアルコールによる超音波洗 の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最 に紫外線オゾン洗浄を行なった。

 この陽極2上に、正孔注入層3を、以下の手 で湿式成膜法により形成した。
 正孔注入層3の材料として、上記化合物(P-1) び上記化合物(A-1)を含有する塗布液を用い 下記の条件でスピンコートを行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境    大気中
   塗布液溶剤   安息香酸エチル
   塗布液濃度   化合物(P-1)  2.0重量%
           化合物(A-1)  0.8重量%
   スピナ回転数  1500rpm
   スピナ回転時間 30秒
   乾燥条件    230℃×3時間

 上記のスピンコートにより、陽極2上に、 膜厚30nmの均一な薄膜(正孔注入層3)が形成さ た。

 続いて、この正孔注入層3上に正孔輸送層4 、以下の手順で湿式成膜法により形成した
 正孔輸送層4の材料として、上記化合物(H-2) 含有する塗布液を用い、下記の条件でスピ コートを行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境     窒素グローブボックス
   溶剤       キシレン
   塗布液濃度    化合物(H-2)  1重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒

 得られたスピンコート膜を窒素グローブ ックス中、200℃で1時間加熱することにより 、膜厚18nmの均一な薄膜(正孔輸送層4)を得た

 続いて、この正孔輸送層4上に発光層5を、 下の手順で湿式成膜法により形成した。
 発光層5の材料として、下記式E-1及び式E-1に 示す構造の化合物(それぞれ以下「化合物(E-1) 」及び「化合物(E-2)」という。)と、下記式D-1 に示す構造のイリジウム錯体(以下「化合物(D -1)」という。)とを含有する塗布液を用い、 記の条件でスピンコートを行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境    窒素グローブボックス中
   溶剤      キシレン
   塗布液濃度   化合物(E-1)   1.0重量%
           化合物(E-2)   1.0重量%
           化合物(D-1)   0.1重量%
   スピナ回転数  1500rpm
   スピナ回転時間 30秒
   乾燥条件    130℃×60分(減圧下)

 上記のスピンコートにより、膜厚40nmの均 一な薄膜(発光層5)が形成された。

 上述の発光層5までの各層を成膜した基板を 、窒素グローブボックスに連結されたマルチ チャンバー型真空蒸着装置の有機層蒸着チャ ンバー内に、大気に曝すことなく搬入し、装 置内を真空度3.8×10 -5 Paまで排気した後、正孔阻止層6及び電子輸送 層9を以下の手順で真空蒸着法により成膜し 。

 即ち、上述の発光層5上に、下記式HB-1に示 構造のピリジン誘導体(以下「化合物(HB-1)」 いう)を、蒸着速度0.07~0.1nm/秒で5nmの膜厚と るように積層し、正孔阻止層6を形成した。 蒸着時の真空度は3.5×10 -5 Paであった。

 続いて、正孔阻止層6の上に、下記式ET-1に す構造のアルミニウムの8-ヒドロキシキノリ ン錯体(以下「化合物(ET-1)」という)を、同様 蒸着することにより、電子輸送層9を形成し た。蒸着時の真空度は3.1~3.2×10 -5 Pa、蒸着速度は0.09~0.11nm/秒、膜厚は30nmとした 。

 上記の正孔阻止層6及び電子輸送層9を真 蒸着する時の基板温度は室温に保持した。

 ここで、電子輸送層9までの各層を形成した 素子を、上述のマルチチャンバー型真空蒸着 装置の有機層蒸着チャンバーから金属蒸着チ ャンバーへと真空中で搬送し、陰極蒸着用の マスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマ スクを、陽極2のITOストライプとは直交する うに素子に密着させて、装置内の真空度が4. 0×10 -5 Pa以下になるまで排気した後、電子注入層7と 陰極8からなる2層型陰極を、以下の手順で真 蒸着法により形成した。

 先ず、電子輸送層9上に、フッ化リチウム(Li F)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0 .015~0.014nm/秒、真空度4.9~5.2×10 -5 Paで、0.5nmの膜厚となるように成膜し、電子 入層7を形成した。

 次に、電子注入層7上に、アルミニウムを、 同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸 着速度0.1~1.3nm/秒、真空度7.5~9.1×10 -5 Paで、膜厚85nmとなるように成膜し、陰極8を 成させた。
 以上の2層型陰極の蒸着時の基板温度は室温 に保持した。

 陰極8までの各層を形成して得られた素子 を、窒素雰囲気中で、外周部に紫外線硬化性 樹脂(スリーボンド社製FPD用シール剤3124)を幅 約1mmで塗布し中心に吸湿剤(ダイニック社製 機EL用水分ゲッター剤HD-S050914W-40)を貼付した ガラス板と、吸湿剤貼付面及び素子蒸着面が それぞれ内側になるように貼り合わせた。そ の後、紫外線硬化性樹脂塗布部周辺にのみ紫 外光を照射して樹脂を硬化させた。

 以上の手順により、2mm×2mmのサイズの発 面積部分を有する有機電界発光素子(実施例6 の素子)が得られた。

 この実施例6の素子に、電流密度250mA/cm 2 の直流を連続通電したところ、通電開始時に 30080cd/m 2 、通電20秒後に24470cd/m 2 の緑色発光を示した。

 また、実施例6の素子の発光スペクトルを 測定したところ、その極大波長は513nmであり イリジウム錯体(D-1)からのものと同定され 。

 また、実施例6の素子の色度はCIE(x,y)=(0.31, 0.62)であった。

[比較例2]
 正孔輸送層4を以下に示す方法で成膜した他 は、実施例6と同様にして有機電界発光素子 作製した。

 実施例6と同様の方法で正孔注入層3を成 したITO基板上に、重合性化合物として化合 (H-2)、及び、重合反応開始剤としてチバ・ス ペシャリティ・ケミカル製イルガキュア651を 含有する塗布液を用い、以下の手順で湿式成 膜法によりスピンコートを行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境     窒素グローブボックス
   溶剤       キシレン
   塗布液濃度    化合物(H-2)   0.95重量%
            イルガキュア651  0.05重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒

 得られたスピンコート膜に対し、窒素グロ ブボックス中、高圧水銀ランプを用いてUV を積算光量で5J/cm 2 (365nm光のエネルギー値)照射した。その後、 気中、120℃で1時間加熱することにより、膜 18nmの均一な薄膜(正孔注入層3)を得た。

 以上の手順により、2mm×2mmのサイズの発 面積部分を有する有機電界発光素子(比較例2 の素子)が得られた。

 この実施例6の素子に、電流密度250mA/cm 2 の直流を連続通電したところ、通電開始時に 29720cd/m 2 、通電20秒後に21170cd/m 2 の緑色発光を示した。

 また、実施例6の素子の発光スペクトルを 測定したところ、その極大波長は512nmであり イリジウム錯体(D-1)からのものと同定され 。

 また、実施例6の素子の色度はCIE(x,y)=(0.30, 0.63)であった。

[結果]
 下記表1に、実施例6及び比較例2の素子の発 特性をまとめた。

 表1から明らかなように、重合反応開始剤 を含有する正孔注入層と、重合性化合物を含 有する正孔輸送層を積層した実施例6の素子 、重合反応開始剤と重合性化合物の両者を 有する正孔輸送層を有する比較例2の素子よ も、連続通電時の輝度低下が少なく、より 定な素子であることが分かる。

[実施例7]
 37.5mm×25mm(厚さ0.7mm)サイズのガラス基板を、 界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水 による水洗、超純水による超音波洗浄、超純 水による水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾 燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった 。

 このガラス基板上に、重合反応開始剤を含 する層を、以下の手順で湿式成膜法により 成した。
 即ち、正孔輸送材として前記化合物(P-1)と 電子受容性化合物兼重合反応開始剤として 記化合物(A-1)とを含有する塗布液を用い、下 記の条件でスピンコートを行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境    大気中
   塗布液溶剤   安息香酸エチル
   塗布液濃度   化合物(P-1)  2.0重量%
           化合物(A-1)  0.8重量%
   スピナ回転数  1500rpm
   スピナ回転時間 30秒
   乾燥条件    230℃×3時間

 上記のスピンコートにより、膜厚30nmの均 一な薄膜(重合反応開始剤を含有する層)が形 された。

 続いて、上記薄膜(重合反応開始剤を含有す る層)上に、重合性化合物を含有する層を、 下の手順で湿式成膜法により形成した。
 即ち、重合性化合物として、下記構造式H-3 示す化合物(重量平均分子量100000;以下「化 物(H-3)」という。)を含有する塗布液を用い 下記の条件でスピンコートを行なった。

  スピンコート条件:
    塗布環境     窒素中
    溶剤       トルエン
    塗布液濃度    化合物(H-3)  1.0重量%
    スピナ回転数     1500rpm
    スピナ回転時間    30秒

 得られたスピンコート膜に対し、窒素中2 00℃で1時間加熱することにより、2層の合計 厚さが80nmの均一な積層薄膜(重合反応開始剤 を含有する層と重合性化合物を含有する層と が積層された薄膜)を得た。

 この積層薄膜が形成された基板をスピン ーターにセットし、キシレン0.2mLを膜状に 下し、大気中、23℃で10秒間静置した。その 、1500rpm×30秒のスピンコート動作を行ない 溶剤を乾燥させた。その後、膜厚を測定し ところ、80nmであった。このようにして、形 した膜がキシレンに対し溶解しないことが 認された。

[比較例3]
 37.5mm×25mm(厚さ0.7mm)サイズのガラス基板を、 界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水 による水洗、超純水による超音波洗浄、超純 水による水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾 燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった 。

 このガラス基板上に、重合性化合物を含有 る層を、以下の手順で湿式成膜法により形 した。
 即ち、重合性化合物として化合物(H-3)を含 含有する塗布液を用い、下記の条件でスピ コートを行なった。

  スピンコート条件:
    塗布環境     窒素中
    溶剤       トルエン
    塗布液濃度    化合物(H-3)  1.0重量%
    スピナ回転数     1500rpm
    スピナ回転時間    30秒

 得られたスピンコート膜に対し、窒素中2 00℃で1時間加熱することにより、膜厚50nmの 一な薄膜(重合性化合物を含有する層のみが 層された膜)を得た。

 この薄膜が形成された基板をスピンコー ーにセットし、キシレン0.2mLを膜状に滴下 、大気中23℃で10秒間静置した。その後、1500 rpm×30秒のスピンコート動作を行ない、溶剤 乾燥させた。その後、膜厚を測定したとこ 、30nmであり、形成された重合性化合物の膜 完全に不溶化していないことが明らかにな た。

[実施例8]
 図3に示す有機電界発光素子を以下の方法で 作製した。
 ガラス基板の1上にインジウム・スズ酸化物 (ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの( 容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフ ォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用 いて2mm幅のストライプにパターニングして、 陽極2を形成した。

 この陽極2をパターン形成したITO基板1を 界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純 による水洗、超純水による超音波洗浄、超 水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾 させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。

 この陽極2上に、正孔注入層3を、以下の手 で湿式成膜法により形成した。
 まず、化合物(P-1)、化合物(A-1)、重合反応開 始剤として下記構造式(A-2)に示す化合物(以下 「化合物(A-2)」という)、および安息香酸エチ ルを含有する塗布液を調製した。この塗布液 を用い、下記条件で陽極2上にスピンコート 行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境    大気中
   塗布液溶剤   安息香酸エチル
   塗布液濃度   化合物(P-1)  2.0重量%
           化合物(A-1)  0.8重量%
           化合物(A-2)  0.2重量%
   スピナ回転数  1500rpm
   スピナ回転時間 30秒
   乾燥条件    230℃×1時間

 上記のスピンコートにより、陽極2上に、 膜厚30nmの均一な薄膜(正孔注入層3)が形成さ た。

 続いて、この正孔注入層3上に正孔輸送層4 、以下の手順で湿式成膜方により形成した
 正孔輸送層4の材料として、以下の構造式(H- 4)に示す有機化合物(重量平均分子量91700;以下 「化合物(H-4)」という)を含有する塗布液を調 製した。この塗布液を用い、以下の条件でス ピンコートを行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境     窒素中
   溶剤       トルエン
   塗布液濃度    化合物(H-4)  0.4重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒

 得られたスピンコート膜を窒素中、200℃ 1時間加熱することにより、膜厚20nmの均一 薄膜(正孔輸送層4)を得た。

 続いて、この正孔輸送層4上に発光層5を、 下の手順で湿式成膜法により形成した。
 発光層5の材料として前記の化合物(E-1)、化 物(E-2)及び化合物(D-1)を用いて塗布液を調製 した。この塗布液を用い、下記の条件でスピ ンコートを行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境    窒素中
   溶剤      キシレン
   塗布液濃度   化合物(E-1)   1.8重量%
           化合物(E-2)   0.2重量%
           化合物(D-1)   0.1重量%
   スピナ回転数  1500rpm
   スピナ回転時間 30秒
   乾燥条件    130℃×1時間

 上記のスピンコートにより、膜厚40nmの均 一な薄膜(発光層5)が形成された。

 上述の発光層5までの各層を成膜した基板を 真空蒸着装置内に移し、油回転ポンプにより 装置の粗排気を行った後、装置内の真空度が 2.4×10 -4 Pa以下になるまでクライオポンプを用いて排 した後、前記の化合物(HB-1)を、蒸着速度0.7~ 0.8Å/秒で5nmの膜厚となるように積層し、正 阻止層6を形成した。蒸着時の真空度は2.4~2.7 ×10 -4 Paであった。

 続いて、正孔阻止層6の上に、前記の化合物 (ET-1)を、同様に蒸着することにより、電子輸 送層9を形成した。蒸着時の真空度は0.4~1.6×10 -4 Pa、蒸着速度は1.0~1.5Å/秒、膜厚は30nmとした

 ここで、電子輸送層9までの蒸着を行った素 子を、一度前記真空蒸着装置内より大気中に 取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅 のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のIT Oストライプとは直交するように素子に密着 せて、別の真空蒸着装置内に設置し、有機 と同様にして装置内の真空度が6.4×10 -4 Pa以下になるまで排気した。

 先ず、電子輸送層9上に、フッ化リチウム(Li F)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0 .1~0.4Å/秒、真空度3.2~6.7×10 -4 Paで、0.5nmの膜厚となるように電子輸送層9の に成膜し、電子注入層7を形成した。

 次に、電子注入層7上に、アルミニウムを、 同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸 着速度0.7~5.3Å/秒、真空度2.8~11.1×10 -4 Paで、膜厚80nmとなるように成膜し、陰極8を 成した。
 以上の2層の蒸着時の基板温度は室温に保持 した。

 引き続き、素子が保管中に大気中の水分等 劣化することを防ぐため、以下に記載の方 で封止処理を行った。
 窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズ のガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性 樹脂(株式会社スリーボンド製30Y-437)を塗布し 、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック 式会社製)を設置した。この上に、陰極形成 終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シ トと対向するように貼り合わせた。その後 光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外 を照射し、樹脂を硬化させた。

 以上のようにして、2mm×2mmのサイズの発 面積部分を有する有機電界発光素子が得ら た。得られた素子の特性を表2に示す。

[比較例4]
 正孔輸送層4を以下に示す方法で形成した他 は、実施例8と同様にして図3に示す有機電界 光素子を作製した。

 重合性基を有する化合物(H-4)、および、重 反応開始剤として下記構造式(A-3)に示す化合 物(以下「化合物(A-3)」という)を含有する塗 液を調製し、下記の条件でスピンコートに り成膜して、膜厚20nmの薄膜(正孔輸送層4)を 成した。

  スピンコート条件:
   塗布環境     窒素中
   溶剤       トルエン
   塗布液濃度    化合物(H-4)   0.4重量%
            化合物(A-3)   0.08重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒
   乾燥条件     200℃×1時間

 以上のようにして、2mm×2mmのサイズの発 面積部分を有する有機電界発光素子が得ら た。得られた素子の特性を表2に示す。

 表2から明らかなように、重合反応開始剤 を含有する正孔注入層と、重合性化合物を含 有する正孔輸送層を積層した実施例8の有機 界発光素子は、重合性化合物と重合反応開 剤の両者を含有する正孔輸送層を積層した 較例4の素子と比較して、効率が高く、駆動 における輝度低下が小さく、より安定な素 が得られていることが分かる。

[実施例9]
 正孔注入層3を以下に示す方法で形成した他 は、実施例8と同様にして図3に示す有機電界 光素子を作製した。

 化合物(P-1)、化合物(A-1)、重合反応開始剤 である化合物(A-3)、および安息香酸エチルを 有する塗布液を調製し、下記の条件で陽極2 上にスピンコートにより成膜して、膜厚30nm 薄膜(正孔注入層3)を形成した。

  スピンコート条件:
   塗布環境     大気中
   溶剤       安息香酸エチル
   塗布液濃度    化合物(P-1)   2.0重量%
            化合物(A-1)   0.8重量%
            化合物(A-3)   0.2重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒
   乾燥条件     230℃×1時間

 以上のようにして、2mm×2mmのサイズの発 面積部分を有する有機電界発光素子が得ら た。得られた素子の特性を表3に示す。

[比較例5]
 正孔輸送層4を以下のように形成したほかは 、実施例9と同様にして図3に示す有機電界発 素子を作製した。

 重合性基を有する化合物(H-4)、および重 反応開始剤である化合物(A-3)を含有する塗布 液を調製し、下記の条件でスピンコートによ り成膜して、膜厚20nmの薄膜(正孔輸送層4)を 成した。

  スピンコート条件:
   塗布環境     窒素中
   溶剤       トルエン
   塗布液濃度    化合物(H-4)   0.4重量%
            化合物(A-3)   0.08重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒
   乾燥条件     200℃×1時間

 以上のようにして、2mm×2mmのサイズの発 面積部分を有する有機電界発光素子が得ら た。得られた素子の特性を表3に示す。

 表3から明らかなように、重合反応開始剤 を含有する正孔注入層と、重合性化合物を含 有する正孔輸送層を積層した実施例9の有機 界発光素子は、重合性化合物と重合反応開 剤の両者を含有する正孔輸送層を積層した 較例5の素子と比較して、効率が高く、駆動 における輝度低下が小さく、より安定な素 が得られていることが分かる。

[実施例10]
 正孔注入層3を以下に示す方法で形成したほ かは、実施例8と同様にして図3に示す有機電 発光素子を作製した。

 下記構造式(P-2)に示す高分子化合物(重量 均分子量46000;以下「化合物(P-2)」という)、 合反応開始剤である化合物(A-3)、および安 香酸エチルを含有する塗布液を調製し、下 の条件で陽極2上にスピンコートにより成膜 て、膜厚30nmの薄膜(正孔注入層3)を得た。

  スピンコート条件:
   塗布環境     大気中
   溶剤       トルエン
   塗布液濃度    化合物(P-2)   0.7重量%
            化合物(A-3)   0.15重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒
   乾燥条件     230℃×1時間

 以上のようにして、2mm×2mmのサイズの発 面積部分を有する有機電界発光素子が得ら た。得られた素子の特性を表4に示す。

[比較例6]
 正孔輸送層4を以下に示す方法で形成したほ かは、実施例10と同様にして図3に示す有機電 界発光素子を作製した。

 重合性基を有する化合物(H-4)、および重 反応開始剤として化合物(A-3)を含有する塗布 液を調製し、下記の条件でスピンコートによ り成膜して、膜厚20nmの薄膜(正孔輸送層4)を 成した。

  スピンコート条件:
   塗布環境     窒素中
   溶剤       トルエン
   塗布液濃度    化合物(H-4)   0.4重量%
            化合物(A-3)   0.08重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒
   乾燥条件     200℃×1時間

 以上のようにして、2mm×2mmのサイズの発 面積部分を有する有機電界発光素子が得ら た。得られた素子の特性を表4に示す。

 表4から明らかなように、重合反応開始剤 を含有する正孔注入層と、重合性化合物を含 有する正孔輸送層を積層した実施例10の有機 界発光素子は、重合性化合物と重合反応開 剤の両者を含有する正孔輸送層を積層した 較例6の素子と比較して、効率が高く、駆動 時における輝度低下が小さく、より安定な素 子が得られていることが分かる。

[実施例11]
 正孔注入層3を以下に示す方法で形成したほ かは、実施例8と同様にして図3に示す有機電 発光素子を作製した。

 化合物(P-1)、化合物(A-1)、重合反応開始剤と して下記構造式(A-4)に示す化合物(以下、「化 合物(A-4)」という)、および安息香酸エチルを 含有する塗布液を調製した。この塗布液を下 記の条件で陽極2上にスピンコートにより成 して、膜厚30nmの薄膜(正孔注入層3)を得た。

  スピンコート条件:
   塗布環境     大気中
   溶剤       安息香酸エチル
   塗布液濃度    化合物(P-1)   2.0重量%
            化合物(A-1)   0.8重量%
            化合物(A-4)   0.2重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒
   乾燥条件     230℃×1時間

 以上のようにして、2mm×2mmのサイズの発 面積部分を有する有機電界発光素子が得ら た。得られた素子の特性を表5に示す。

[比較例7]
 正孔輸送層4を以下に示す方法で形成したほ かは、実施例11と同様にして図3に示す有機電 界発光素子を作製した。

 重合性基を有する化合物(H-2)、および重 開始剤として化合物(A-3)を含有する塗布液を 調製し、下記の条件でスピンコートにより成 膜して、膜厚20nmの薄膜(正孔輸送層4)を形成 た。

  スピンコート条件:
   塗布環境     窒素中
   溶剤       トルエン
   塗布液濃度    化合物(H-2)   0.4重量%
            化合物(A-3)   0.08重量%
   スピナ回転数   1500rpm
   スピナ回転時間  30秒
   乾燥条件     200℃×1時間

 以上のようにして、2mm×2mmのサイズの発 面積部分を有する有機電界発光素子が得ら た。得られた素子の特性を表5に示す。

 表5から明らかなように、重合反応開始剤 を含有する正孔注入層と、重合性化合物を含 有する正孔輸送層を積層した実施例11の有機 界発光素子は、重合性化合物と重合反応開 剤の両者を含有する正孔輸送層を積層した 較例7の素子と比較して、同一発光輝度を与 える駆動電圧が低く、かつ駆動時における輝 度低下が小さくより安定な素子が得られてい ることが分かる。

[実施例12]
 (QA測定用試料の作製)
 37.5mm×25mm(厚さ0.7mm)サイズのITO基板を、界面 活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水によ る水洗、超純水による超音波洗浄、超純水に よる水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥さ せ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。

 このガラス基板上に、重合反応開始剤を含 する層を、以下の手順で湿式成膜法により 成した。
 即ち、化合物(P-1)と、電子受容性化合物兼 合反応開始剤として化合物(A-1)とを含有する 塗布液を用い、下記の条件でスピンコートを 行なった。

  スピンコート条件:
   塗布環境    大気中
   塗布液溶剤   安息香酸エチル
   塗布液濃度   化合物(P-1)  2.0重量%
           化合物(A-1)  0.8重量%
   スピナ回転数  1500rpm
   スピナ回転時間 30秒
   乾燥条件    230℃×3時間

 上記のスピンコートにより、膜厚30nmの均 一な薄膜(重合反応開始剤を含有する層)が形 された。これをQA測定用試料とする。

 (XPS測定によるQAの算出)
 上記のように作製したQA測定用試料につい 、ULVAC-PHI社製の走査型X線光電子分光装置QUAN TUM2000を用いて以下のようにXPS測定を行った
 まず、25mm×37.5mmサイズの基板の中央部10mm四 方程度を裁断して切り出し、1~2mmφの穴の開 たモリブデン製マスクを用いてQA測定用試料 を試料ホルダーにセットした。測定用のX線 としてはモノクロメータを通したAlのKα線( ネルギー 1486.6eV)を用い、加速電圧は16kV、 力は34Wとして、測定を行った。

 測定されたデータについて、ULVAC-PHI社製m ultipak ver8.0を用いて解析を行い、炭素とフッ 素の最も強いピークの面積を感度補正係数で 除することで、炭素とフッ素の原子数に比例 した量を求めた。この計算された化合物(P-1) 分子量(繰り返し単位を有する化合物なので 繰り返し単位の分子量を用いた)と化合物(A-1) の分子量から、QA測定用試料(重合開始剤を含 有する層)の表面部における化合物(P-1)の分子 数(繰り返し単位の数)に対する化合物(A-1)の 合QAが44.60%と算出された。

 (QB測定用試料の作製)
 QA測定用試料の薄膜(重合反応開始剤を含有 る層)上に、重合性化合物を含有する層を、 以下の手順で湿式成膜法により形成した。

 即ち、重合性化合物として化合物(H-3)を 有する塗布液を用い、下記の条件でスピン ートを行なった。

  スピンコート条件:
    塗布環境     窒素中
    溶剤       トルエン
    塗布液濃度    化合物(H-3)  0.4重量%
    スピナ回転数   1500rpm
    スピナ回転時間  30秒
    乾燥条件     230℃×1時間

 以上により、2層の合計の厚さが50nmの均 な積層薄膜(重合反応開始剤を含有する層と 合性化合物を含有する層とが積層された薄 )を得た。これをQB測定用試料とする。

 (XPS測定によるQBの算出)
 上記のように作製したQB測定用試料につい 、QAの測定と同様の要領でXPS測定を行った。 ただし、化合物(H-3)は複数の繰り返し単位を する化合物のために、化合物(H-3)の分子量 しては繰り返し単位の平均分子量、すなわ 各繰り返し単位をその数の割合に応じて重 付けした量を用いた。この結果、QB測定用試 料(重合性化合物を含有する層)の表面部にお る化合物(H-3)の分子数(繰り返し単位の数)に 対する化合物(A-1)の割合QBが13.26%と算出され 。
 以上より、QB/QAの値は0.30と算出された。

 本発明の蛍光体の用途は特に制限されず、 常の蛍光体が用いられる各種の分野に使用 能であるが、近紫外光を用いて励起した場 でも高い発光強度が維持されるという特性 生かして、近紫外LED等の励起光源との組み わせにより、長寿命且つ省エネルギーの発 装置を実現する目的に適している。
 また、本発明の発光装置は、通常の発光装 が用いられる各種の分野に使用可能である 、中でも画像表示装置や照明装置の光源と てとりわけ好適に用いられる。

 以上、本発明を特定の態様を用いて詳細に 明したが、本発明の意図と範囲を離れるこ なく様々な変更が可能であることは当業者 明らかである。
 なお本出願は、2007年2月15日付で出願された 日本特許出願(特願2007-34466)に基づいており、 その全体が引用により援用される。