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Title:
POLYCRYSTALLINE MgO SINTERED COMPACT, PROCESS FOR PRODUCING THE POLYCRYSTALLINE MgO SINTERED COMPACT, AND MgO TARGET FOR SPUTTERING
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/096384
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed are a polycrystalline MgO sintered compact, which has a sintered density close to the theoretical density, has good mechanical properties and thermal conductivity and can reduce the contamination of an atmosphere by gas evolution, and a process for producing the MgO sintered compact. The polycrystalline MgO sintered compact has such a unique crystal anisotropy that a large proportion of a (111) plane is aligned on a plane to which a uniaxial pressure has been applied. The polycrystalline MgO sintered compact is obtained by a process comprising the step of subjecting an MgO material powder having a particle diameter of not more than 1 μm to uniaxial pressure sintering and the step of then performing heat treatment in an atmosphere having an oxygen content of not less than 0.05% by volume at a temperature of 1273 K or above for 1 min or longer.

Inventors:
NAGANO MITSUYOSHI (JP)
TAKASU MASANOBU (JP)
ARITA YO (JP)
SANO SATORU (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/051259
Publication Date:
August 06, 2009
Filing Date:
January 27, 2009
Export Citation:
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Assignee:
NIPPON TUNGSTEN (JP)
UBE MAT IND LTD (JP)
NAGANO MITSUYOSHI (JP)
TAKASU MASANOBU (JP)
ARITA YO (JP)
SANO SATORU (JP)
International Classes:
C04B35/053; C23C14/34
Foreign References:
JPH11139862A1999-05-25
JPH10158826A1998-06-16
JP2006069811A2006-03-16
Attorney, Agent or Firm:
KOHORI, Susumu et al. (1-1 Hakataekimae 1-chome, Hakata-k, Fukuoka-shi Fukuoka 11, JP)
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Claims:
 MgO原料粉末を一軸加圧焼結する工程を経て得られる多結晶MgO焼結体であって、多結晶MgO焼結体中のMgOのX線回折による強度比が、式(1)で表される(111)面の比率α(111)の値に関し、一軸圧力を加えた面の値をαV(111)、一軸圧力を加えた面に垂直な面の値をαH(111)としたときに、αV(111)/αH(111)>1.5である多結晶MgO焼結体。
 α(111)={-0.4434(Ra)2+1.4434*Ra} … (1)
 ここで、Ra=I(111)/(I(111)+I(200))
     I(111):MgOの(111)面のX線回折強度
     I(200):MgOの(200)面のX線回折強度
 平均結晶粒子径が30μm以下である請求項1に記載の多結晶MgO焼結体。
 MgO純度が99.99%以上である請求項1または請求項2に記載の多結晶MgO焼結体。
 請求項1から請求項3のいずれかに記載の多結晶MgO焼結体からなるスパッタリング用MgOターゲット。
 請求項1に記載の多結晶MgO焼結体を製造する方法であって、粒径が1μm以下のMgO原料粉末を一軸加圧焼結する工程と、この一軸加圧焼結する工程の後に、酸素が0.05体積%以上存在する雰囲気下にて1273K以上の温度で1分間以上熱処理する工程とを含む多結晶MgO焼結体の製造方法。
 MgO原料粉末がMg(OH) 2 を0.01~0.2質量%含有する請求項5に記載の多結晶MgO焼結体の製造方法。
 MgO原料粉末の不純物濃度が0.01質量%未満である請求項5または請求項6に記載の多結晶MgO焼結体の製造方法。
 一軸加圧焼結する工程で印加する圧力が5MPa以上である請求項5から請求項7のいずれかに記載の多結晶MgO焼結体の製造方法。
Description:
多結晶MgO焼結体及びその製造方 、並びにスパッタリング用MgOターゲット

 本発明は、MgO原料粉末を焼結して得られ 多結晶MgO焼結体(以下、単に「MgO焼結体」と いう。)及びその製造方法、並びにMgO焼結体 用いたスパッタリング用MgOターゲットに関 る。

 MgOは、優れた熱伝導率、耐熱性、化学的 定性、耐酸化性及び絶縁性を備える材料で ることから、耐熱用途を始めとして様々な 途に使用されている(特許文献1、2参照)。

 このMgOは比較的焼結性が良好であり、普 焼結でも相対密度で99%近傍までの緻密さを ることができる。しかしながら、理論密度 で焼結密度を上げることは難しく、焼結体 はマイクロポアや数μmに及ぶポア、すなわ 気孔が残存する。焼結密度向上(気孔低減) ために焼結温度を上げることが考えられる 、焼結密度向上を最優先に焼結温度を上げ ことは結晶粒子の成長を促進することとな 、粗大な結晶粒子の中に気孔が残存し、こ 気孔はその後の高温高圧によるHIP処理でも 滅させることは困難である。

 このように、従来のMgO焼結体は、その焼 密度が十分でなく、焼結密度を上げようと ると粒成長が生じることから、とくに治工 や断熱板などの構造用部材として適用する は以下の問題がある。

1)機械的性質の低下
(1)強度の低下
 強度には、曲げ強度、圧縮強度、せん断強 などがあるが、いずれも焼結体内部の残存 孔に依存する。また、焼結時の粒成長によ 粗大粒子も破壊の起点になりやすい。気孔 粒成長による強度不足は構造用部材として 使用において、破損、欠損といった致命的 損傷を引き起こす。

(2)硬さの低下
 気孔と粒成長の存在は、硬さを低下させる 因にもなるため、耐摩耗性の低下につなが 、摩耗に起因する寿命低下を引き起こす。

2)面粗度の低下
 焼結体内部に気孔と粒成長があることは面 度が低下することを意味する。構造用部材 しての用途において、使用面での高い面粗 が要求される用途は多い。面粗度が低いと (1)摺動面での気孔が欠けの起源となって面 度の低下を助長し、寿命が低下する、(2)面 度の低下により、摩擦係数が増大し、異常 熱や相手材との反応、凝着などの問題が発 する、などの問題が生じる。

3)熱伝導率の低下
 MgOには熱伝導率が高いという特性があるが それを損なう要素の一つに気孔の存在があ 。すなわち、粒界に気孔や不純物があると 伝導が妨げられ、本来の熱伝導率が得られ い。よって、高い熱伝導率を得るためには 孔を減らす、言い換えれば、焼結体の相対 度を理論密度近くまで上げることが必要で る。

4)ガス発生による雰囲気の汚染
 焼結体中に存在する気孔の中には焼結雰囲 のガスが封入される。たとえば、大気焼結 は窒素ガスや二酸化炭素、酸素などの大気 分、Arや窒素ガス雰囲気焼結ではこのよう 雰囲気ガスが気孔として封入されることに る。このガスは焼結体が高温度域で使用さ て粒界が軟化すると焼結体から噴出される とくに半導体製造などの微量の不純物でも 容されない用途では致命的な欠陥となる。

 一方、MgO焼結体は、スパッタリング用ター ットとしても多用されているが(特許文献3 4参照)、このターゲット用途においても、ス パッタリング時の割れや剥離を防止する上で 、その機械的性質や熱伝導性の向上は重要で あり、またスパッタリング装置内の雰囲気の 汚染を防止する上で、焼結体からのガス発生 を低減することも重要である。

特開平7-133149号公報

特開2006-169036号公報

特開平10-158826号公報

特開2005-330574号公報

 本発明が解決しようとする課題は、焼結 度が理論密度に近く、機械的性質及び熱伝 率が良好で、ガス発生による雰囲気の汚染 低減できるMgO焼結体及びその製造方法を提 することにある。

 本発明のMgO焼結体は、MgO原料粉末を一軸加 焼結する工程を経て得られるMgO焼結体であ て、MgO焼結体中のMgOのX線回折による強度比 が、式(1)で表される(111)面の比率α(111)の値に 関し、一軸圧力を加えた面の値をαV(111)、一 圧力を加えた面に垂直な面の値をαH(111)と たときに、αV(111)/αH(111)>1.5であることを 徴とするものである。
 α(111)={-0.4434(Ra)2+1.4434*Ra} … (1)
 ここで、Ra=I(111)/(I(111)+I(200))
     I(111):MgOの(111)面のX線回折強度
     I(200):MgOの(200)面のX線回折強度

 すなわち、本発明は、上記課題を解決す ために、MgO焼結体に独自の結晶異方性を持 せるようにしたものである。より具体的に 、普通焼結で得られる通常のMgO焼結体は(200 )面が主体となり、結晶粒子の成長が見られ のに対し、一軸加圧焼結を採用し、その圧 を加えた面に(111)面を増加させることによっ て焼結密度を理論密度に近づけることができ 、機械的性質等を向上させることができると いう知見に基づき完成されたものである。

 なお、一軸加圧焼結時の温度を上げたり 保持時間を長くすることによって結晶粒子 粗大化してαV(111)が増加し、αV(111)/αH(111)の 値が大きくなるが、結晶粒子の粗大化は強度 や硬さの低下を招き、例えば耐摩耗部材とし ての性能を損なうこととなる。したがってαV (111)/αH(111)は20以下であることが好ましい。

 MgO焼結体は固相焼結体であることから、 晶粒子径が大きくなるにしたがって強度や さが低下する。したがって、とくに構造用 材としての特性を確保するためには、平均 晶粒子径は30μm以下であることが好ましく 20μm以下であることがより好ましい。

 また、MgO焼結体の純度は、クリーン環境 での汚染に影響を与えるため、極力高くす ことが肝要であり、好ましくは99.99%以上と る。

 本発明のMgO焼結体は、構造用部材のほか パッタリング用ターゲットとして好適に使 できる。MgOターゲットのスパッタリングは 次電子放出が支配的であることから、結晶 としては(111)面が多い方がスパッタリング 率が向上する。本発明のMgO焼結体は上述の おり、一軸圧力を加えた面に(111)面が多く配 向しているため、二次電子放出が促進され、 スパッタリング効率が向上する。

 このような結晶異方性を有する本発明のM gO焼結体は、粒径が1μm以下のMgO原料粉末を一 軸加圧焼結し、その後、酸素が0.05体積%以上 在する雰囲気下にて1273K以上の温度で1分間 上熱処理することによって得ることができ 。

 すなわち、上述のような結晶異方性を有 る本発明のMgO焼結体を得るには、以下に詳 するように(1)MgO原料粉末の微細化、(2)一軸 圧焼結、(3)酸素雰囲気熱処理が必須である

(1)MgO原料粉末の微細化
 MgOは易焼結性セラミックスであり単体でも 結できるので結晶粒子が成長しやすいが、 料の段階で微細な粉末を使用することによ て通常形成する(200)面が多い結晶から(111)面 を増加させることが可能になる。MgO原料粉末 の粒径は1μm以下であれば異方性の促進は可 となるが、0.5μm以下が好ましい。

(2)一軸加圧焼結
 焼結時に圧力を加えると焼結性が改善され 通焼結よりも焼結温度を下げることができ 。焼結温度を下げることができれば、結晶 成長を抑制でき、微細結晶からなる緻密な 結体を得ることができる。さらに、一軸加 焼結により、焼結時に一軸方向に圧力を加 ると、その一軸圧力を加えた面に(111)面が 加し、本発明の結晶異方性が発現する。こ 結晶異方性を確実に発現するためには5MPa以 の圧力をかけることが好ましい。加圧方法 ついては、焼結時にプレス体上にウェイト どで5MPa以上の荷重を加える方法でもよいが 、ホットプレス法を用いることが望ましい。 なお、MgO焼結体中の気孔をより確実になくす ためには、一軸加圧焼結を行った後、さらに HIP焼結を行うことが好ましい。

(3)酸素雰囲気熱処理
 還元雰囲気下で焼結されたMgO焼結体では一 が酸素欠陥状態にある結晶となり、色調も 白色を呈する不均一な組織となっている。 の酸素欠陥は本発明が目的とする(111)面の 晶形成を妨げる要因となる。よって、焼結 、酸素雰囲気下で熱処理を行うことにより MgO原料粉末の微細化と一軸加圧焼結により られた独自の結晶異方性を促進することが きる。雰囲気の酸素濃度は0.05体積%以上であ れば、残りは窒素ガスやアルゴンなどの非酸 化性ガスでもよい。好ましくは、雰囲気の酸 素濃度は0.1体積%以上とする。熱処理の温度 1273K以上で少なくとも1分間以上の保持が必 で、好ましくは、1673K以上の温度で1時間以 の熱処理を行えば酸素欠陥を消滅させて(111) 面の結晶形成を促進できる。

 また、本発明において使用するMgO原料粉末 、Mg(OH) 2 を0.01~0.2質量%含有するものであることが好ま しい。Mg(OH) 2 は焼結を活性化する挙動を有しており、焼結 段階で吸着水分や結晶水を連続的に放出して MgOに変化するため、MgO焼結体の純度を低下さ せることなく、焼結密度を上げることができ る。ただし、Mg(OH) 2 の含有量が0.2質量%を超えるとMg(OH) 2 を焼結過程で完全に脱水することが難しく、 焼結体内部に気孔が残存しやすくなる。一方 、Mg(OH) 2 の含有量が0.01質量%未満では、焼結を活性化 る効果が得られない。

 MgO原料粉末中の不純物は、焼結性あるいは 結体特性を阻害したり、クリーン環境下で 汚染に関与するため、極力少なくすること 肝要であり、好ましくは不純物濃度は0.01質 量%未満とする。なお、Mg(OH) 2 は、MgO原料粉末の不純物ではないため、上記 の不純物濃度はMg(OH) 2 を除いたものである。

 本発明のMgO焼結体は、一軸圧力を加えた に(111)面が多く存在するという独自の結晶 方性を有するようにしたことで、焼結体中 気孔が少なくなり、焼結密度を理論密度近 まで向上させることができる。すなわち、 方的に結晶が成長する普通焼結に比べ、焼 時に一軸圧力を加えることにより結晶成長 異方性が生じ、これによって気孔が粒界に って外に出やすくなり、結晶の再配列によ て緻密化が可能となる。その結果、以下の 果を奏する。

1)機械的性質の向上
(1)強度及び靱性の向上
 気孔率の低減はMgO焼結体の強度の向上に大 く寄与する。とくに曲げ強度の向上には、 孔を始めとする内部欠陥の除去と結晶粒子 微細化が最も効果が高く、本発明により曲 強度を大幅に向上させることができる。ま 、破壊靭性も同時に向上し、従来のMgO焼結 では対応できなかった、高強度・高靱性が 求される構造用部材の用途にも適用できる

(2)耐摩耗性(硬さ)の向上
 構造用部材には、強度、靭性とともに、耐 耗性(硬さ)が要求されることが多い。従来 MgO焼結体は結晶粒子径が大きいことによる 強度が原因で、耐摩耗部品などの用途には 用されることはなかった。しかしながら、 晶粒子径が小さく、強度が改善された本発 のMgO焼結体は耐摩耗性が向上し、さらに結 粒子が微細でその結合強度が向上している め、ブラスト摩耗評価においても、異方性 ない従来の常圧焼結MgO焼結体よりも優れた 性が得られる。

2)熱伝導率の向上
 熱伝導率は焼結体内部のMgO純度、気孔率、 晶粒界の状態等に依存し、とくに気孔が存 すると熱伝導率が低下する。本発明のMgO焼 体では、緻密化による気孔率の低減の効果 熱伝導率が向上する。よって、総体的に、 来の普通焼結MgO焼結体よりも熱伝導性に優 る焼結体が得られる。

3)ガス発生の低減
 気孔率の低減により、気孔に封入されるガ 量も低減し、使用時に焼結体から噴出する ス量を低減でき、雰囲気の汚染を低減でき

 さらに、本発明のMgO焼結体は、一軸圧力 加えた面に(111)面が多く配向しているため スパッタリング用ターゲットとして使用す と、二次電子放出が促進され、スパッタリ グ効率が向上する。

 以下、実施例に基づき本発明の実施の形 を説明する。

 主成分として、平均粒子径が0.2μmのMgO(酸 化マグネシウム)粉末を、メタノール溶媒中 てナイロンボールを入れたナイロンポット にて20時間分散混合し、MgOスラリーを得た。 得られたMgOスラリーをナイロンポットから取 り出した後、アルコール系のバインダーを添 加して、クローズドスプレードライヤーによ り窒素雰囲気中で造粒混合を行った。

 得られた造粒粉を金型プレスで成形する とにより、各種評価用試料の成形体を得、 成形体を大気雰囲気中1673Kの温度で常圧焼 (一次焼結)した後、Arガス雰囲気中1773Kの温 でホットプレス装置にて焼結時に20MPaの圧力 を加えながらホットプレス焼結(二次焼結)し 焼結体を得た。

 一部の焼結体に対しては、焼結体の緻密 をさらに上げて気孔をなくす目的で、1673K~1 823Kの温度域、Arガスを用いて圧力100MPaでHIP焼 結(三次焼結)を行った。

 その後、焼結時に不活性ガス雰囲気で還 された焼結体を、酸素が18体積%存在する酸 雰囲気中1823Kの温度で5時間酸化処理し、還 された箇所の酸化処理を行った。得られた 結体を研削加工して所定サイズの試料を作 し、各評価に供した。

 比較試料として、常圧焼結のみで作製した 料(以下「普通焼結品」という。)、焼結後 酸素雰囲気熱処理を行わなかった試料、及 Mg(OH)  2 を原料粉末とした試料を作製し、各評価に供 した。

 表1に各試料の処理工程とX線回折による結 異方性の評価結果を示す。

 表1において、○印はその焼結あるいは酸 素雰囲気熱処理を行ったことを示す。また、 結晶異方性については、前記の式(1)で表され る(111)面の比率α(111)の値に関し、基準面とし てホットプレス圧力、すなわち一軸圧力を加 えた面の値をαV(111)、一軸圧力を加えた面に 直な面の値をαH(111)として、αV(111)/αH(111)の 値で評価した。すなわち、αV(111)/αH(111)の値 大きいほど、一軸圧力を加えた面に(111)面 多く存在し、結晶異方性が大きいというこ であり、αV(111)/αH(111)>1.5が本発明の条件 ある。なお、一軸加圧焼結を行っていない 較試料については、基準面の値をαV(111)、そ の面に垂直な面の値をαH(111)としてαV(111)/αH( 111)の値を求めた。

 表1からホットプレス焼結(HP焼結)工程と 素雰囲気熱処理工程を含んで作製された本 明のMgO焼結体(本発明品)は、いずれもαV(111)/ αH(111)の値が1.5を超えており、独自の結晶異 性を有していることがわかる。また、本発 品の平均結晶粒子径は、いずれも10μm程度 あった。

 なお、本実施例において本発明品ではす て常圧焼結(一次焼結)を行っているが、こ 常圧焼結(一次焼結)は省略することもできる 。

 表2に表1に示した各試料の評価結果を示す

 各試料の評価としては、密度(最終到達密 度、相対密度)、気孔率、曲げ強度、硬さを 定し、これらの測定結果に基づいて、構造 部材としての特性を総合的に評価した。構 用部材としての特性について表2では、十分 使用できるものを◎、条件によっては使用 きるものを△、使用できないものを×で示 た。

 また、おもにスパッタリング用ターゲッ 材としての特性を評価するために、不純物 着性、真空度低下、割れを評価した。

 不純物付着性については、各試料を30×30×5m m t に加工し、純水溶媒中に入れて超音波をかけ 、パーティクルカウンターで混入した不純物 や粒子脱落を調査した。表2では不純物付着 粒子脱落が無いまたは微量なものを◎、少 付着または少量脱落するものを△、大量に 着または脱落が多いもの×で示した。真空度 低下については、各試料を30×30×5mm t に加工し、加熱可能な真空容器に入れて温度 を毎分1Kで昇温し、気孔に吸着した揮発性不 物や封入されたガスが粒界を通じて放出さ ることによる真空度の低下を観察した。表2 では真空度の低下が見られないまた低下が僅 かなものを◎、真空計の範囲内の低下がある ものを△、真空計の範囲外まで低下するもの を×で示した。割れについては、ターゲット して使用した後、割れを確認した。表2では 割れていないものを◎、割れることがあるが 頻度が少ないものを△、割れの頻度が大きい ものを×で示した。

 以下、表2に示す評価結果について解説す る。

(1)密度と気孔率
 本発明品は普通焼結品に比べて焼結密度が く、気孔が極めて少ないことがわかる。普 焼結品(試料No.9~11)は相対密度で95%程度であ ことから焼結体中にはかなり気孔が残って り、曲げ強度の大幅な差として現れている 曲げ強度の低下は構造用部材や耐摩耗部材 しての用途において致命的な欠陥となる。 発明品では相対密度が99%以上の緻密で微細 結晶組織を有する焼結体が得られ、普通焼 品に比べて優れた機械的性質を示している

(2)曲げ強度
 曲げ強度は構造用部材として、使用中の破 やチッピングに対する抵抗として重要な特 である。その向上にはさまざまな方法があ 。効果のあるものとして、(ア)気孔率の低 、(イ)結晶粒子の微細化、(ウ)結晶異方性に る強化、などがある。本発明品ではこの三 素のすべてが改善の方向に有利な効果を出 ており、普通焼結品を始めとした比較品に べ、曲げ強度が向上している。

(3)硬さ
 硬さは曲げ強度同様に、構造用部材として 摩耗性を改善するためには重要な機械的性 の一つである。これを向上させるための要 は曲げ強度の場合と同様で、本発明品では 普通焼結品を始めとした比較品に比べ、硬 が向上している。

(4)構造用部材としての特性
 本発明品は、上述のとおりの機械的性質の 上によって、これまで使用できなかった構 用部材としての用途にも応用することがで る。

(5)スパッタリング用ターゲットとしての特性
 ターゲット中に気孔があると不純物粒子を り込みやすく、半導体製造用などの不純物 ないことが重要な用途には使えないが、本 明品のように気孔が実質的に皆無であれば 純物粒子の付着や混入、あるいは真空度の 下がなく、スパッタリング用ターゲットと て好適に使用できる。ターゲット中の気孔 実質的に皆無になることは機械的性質の改 と同時にターゲットに内在するガスが実質 に皆無になることを意味する。ターゲット スパッタリングの進行に伴って摩耗し、そ に伴って内部が露出する。このとき気孔が れば、それが開放されてガスが噴出し、ス ッタリング装置内の雰囲気が汚染されるこ となる。気孔に封入されたガスは焼結段階 の環境に存在するガスであり、大気雰囲気 結では酸素、窒素などが、非酸化雰囲気で アルゴンや窒素などが封入されることとな 。その量はターゲットの気孔率に依存して り、本発明では0.5%以下の気孔率を達成して いるので、従来品に比較して60分の1以下のガ ス量になり、装置内の不純物汚染が飛躍的に 改善できる。また、ターゲットは使用時にそ の表面が加熱されると同時に、裏面側は冷却 されるため、熱衝撃を受けている状態にあり 、この熱衝撃により割れやすい傾向にある。 熱衝撃抵抗は曲げ強度及び熱伝導率に比例し 、熱膨張係数に反比例するため、本発明によ れば、ターゲットの割れに対する抵抗力を向 上させることができる。

 さらに、MgOターゲットのスパッタリング 二次電子放出が支配的であり、結晶面では( 111面)が多いほうが有利となる。しかしなが 、従来の普通焼結で製造したMgOターゲット (200)面が主体であり、二次電子放出の観点で は不向きな材料であった。本発明では微細粉 末を利用して焼結段階での加圧によってスパ ッタリング面に(111)面を多く形成させること でき、二次電子放出が促進され、スパッタ ング効率が向上する。すなわち、本発明品 、スパッタリング面における(111)面の結晶 比率が高く、このことが緻密化による気孔 の削減及び二次電子放出の促進というター ットとして有用な効果を奏する。

 表3には、酸素雰囲気熱処理前後の結晶形成 の違いを示す。表3に示すように、酸素雰囲 熱処理により、ホットプレス圧力(一軸圧力) を加えた面のαV(111)の値が増加しており、(111 )面の比率が増加していることがわかる。

 本発明のMgO焼結体は、電子部品製造用の 温冶工具、あるいは炉壁や断熱板などの構 用部材に好適に利用できるほか、スパッタ ング用ターゲットにも好適に利用できる。