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Patent Searching and Data


Title:
PHARMACEUTICAL CONTAINING PPARΔ AGONIST
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/143254
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide an agent for promoting the growth of meibomian gland epithelial cells and corneal epithelial cells, and a therapeutic agent for eye diseases such as meibomian gland dysfunction and dry eyes. A preparation containing as an active ingredient, [3-[2-[4-isopropyl-2-(4-trifluoromethyl)phenyl-5-thiazolyl]ethyl]-5-methyl-1,2-benzisoxazol-6-yl]oxyacetate, [4-[3-[2-(4-trifluoromethyl)phenyl-4-isopropyl-5-thiazolyl] propionyl]2-methylphenoxy]acetate or [4-[3-[2-(2-hydroxy-4-chlorophenyl)-5-isopropyl-4-oxazolyl]propionyl]-2-methylphenoxy]acetate or a pharmacologically acceptable salt thereof is used as the agent for promoting the growth of meibomian gland epithelial cells or corneal epithelial cells and the therapeutic agent for eye diseases such as meibomian gland dysfunction and dry eyes.

Inventors:
NAKAMURA YOSHIKUNI (JP)
HANANO IKUKO (JP)
INOUE JUN (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/059236
Publication Date:
November 27, 2008
Filing Date:
May 20, 2008
Export Citation:
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Assignee:
SENJU PHARMA CO (JP)
NIPPON CHEMIPHAR CO (JP)
NAKAMURA YOSHIKUNI (JP)
HANANO IKUKO (JP)
INOUE JUN (JP)
International Classes:
C07D263/32; A61K31/421; A61K31/426; A61K31/427; A61P27/02; A61P27/04; A61P27/14; A61P37/08; A61P43/00; C07D277/24; C07D417/06
Domestic Patent References:
WO2003016291A12003-02-27
WO2003033493A12003-04-24
WO2002076177A22002-10-03
WO2005039574A12005-05-06
WO2007061094A12007-05-31
WO2005039574A12005-05-06
WO2002076177A22002-10-03
WO2002069994A22002-09-12
WO1998025598A21998-06-18
WO2003033493A12003-04-24
WO2003016291A12003-02-27
WO2004006826A12004-01-22
Foreign References:
JP2005008570A2005-01-13
JP2002539166A2002-11-19
JP2004175749A2004-06-24
JP2006176499A2006-07-06
JP2001039976A2001-02-13
JP2005008570A2005-01-13
JPH09207959A1997-08-12
Other References:
BEAUREGARD C. ET AL.: "Peroxisome Proliferator-Activated Receptor Agonists Inhibit Interleukin-1beta-Mediated Nitric Oxide Production in Cultured Lacrimal Gland Acinar Cells", JOURNAL OF OCULAR PHARMACOLOGY AND THERAPEUTICS, vol. 19, no. 6, 2003, pages 579 - 587, XP008127428
See also references of EP 2151438A4
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J BIOL CHEM, vol. 275, 2000, pages 2837
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AM J CLIN DERMATOL, vol. 4, no. 8, 2003, pages 523 - 530
T.M. WILLSON ET AL., JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY, vol. 43, no. 4, 2000, pages 528 - 550
J.M. LEHMANN ET AL., THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, vol. 270, no. 22, 1995, pages 12953 - 12956
BONAZZI A. ET AL., J. BIOL. CHEM., vol. 275, no. 4, 2000, pages 2837 - 2844
Attorney, Agent or Firm:
TAKASHIMA, Hajime (1-1 Fushimimachi 4-chome,Chuo-ku, Osaka-shi, Osaka 44, JP)
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Claims:
 [3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩を含有するマイボーム腺上皮細胞の増殖促進剤。
 [3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩を含有する角膜上皮細胞の増殖促進剤。
 [3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩を含有するマイボーム腺機能不全の治療剤。
 [3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩を含有する角膜上皮障害の治療剤。
 [3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩を含有するドライアイの治療剤。
 ドライアイが涙液蒸発亢進型ドライアイである請求項5記載の治療剤。
 マイボーム腺上皮細胞の増殖促進剤を製造するための、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩の使用。
 角膜上皮細胞の増殖促進剤を製造するための、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩の使用。
 マイボーム腺機能不全の治療薬を製造するための、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩の使用。
 角膜上皮障害の治療薬を製造するための、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩の使用。
 ドライアイの治療薬を製造するための、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩の使用。
 ドライアイが涙液蒸発亢進型ドライアイである請求項11記載の使用。
 マイボーム腺上皮細胞の増殖の促進を必要とする対象に、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、マイボーム腺上皮細胞の増殖を促進させる方法。
 角膜上皮細胞の増殖の促進を必要とする対象に、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、角膜上皮細胞の増殖を促進させる方法。
 マイボーム腺機能不全の治療を必要とする対象に、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、マイボーム腺機能不全を治療する方法。
 角膜上皮障害の治療を必要とする対象に、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、角膜上皮障害を治療する方法。
 ドライアイの治療を必要とする対象に、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、ドライアイを治療する方法。
 ドライアイが涙液蒸発亢進型ドライアイである請求項17記載の方法。
Description:
PPARδアゴニスト含有医薬

 本発明は、PPAR(ペルオキシソーム増殖剤 答性受容体;Peroxisome Proliferator-Activated Recepto r)δアゴニストを有効成分として含有する、 イボーム腺上皮細胞または角膜上皮細胞の 殖促進剤に関する。

 マイボーム腺は上下のまぶた(眼瞼)に内包 れた脂質産生腺であり、眼瞼のまつげ(睫毛) より結膜側に位置する開口部から脂質を分泌 する。涙液を構成する油層は、マイボーム腺 から供給される脂質を成分としており、眼表 面からの涙液の蒸発を防いでいる。マイボー ム腺機能不全やマイボーム腺炎患者において は、マイボーム腺の機能が低下して脂質の分 泌量が少なくなるため、涙液蒸発亢進型ドラ イアイ、ドライアイに伴う角結膜上皮障害、 角膜上皮糜爛、角膜潰瘍などを引き起こすこ とが知られている。
 また、角膜は、上皮と外境界板(ボーマン膜 )・実質・内境界板(デスメ膜)・内皮から成り 立っている。角膜は眼球の最前部に位置して いるので、外界の環境の影響を受けやすく、 その結果として種々の障害が生じる。角膜上 皮細胞の創傷または欠損を伴う疾患としては 、ドライアイ症候群、角膜潰瘍、点状表層角 膜症、角膜上皮糜爛、春季カタルやアトピー 性角結膜炎などの角膜病変を伴う眼アレルギ ー性疾患などがあげられる。

 一方、PPARは、殆どの脊椎動物において発現 している核内レセプターの一種であり、細胞 内の糖・脂質代謝や細胞の分化に密接に関与 している転写因子群であるとされている。サ ブタイプとしては、α、δ、γ型が知られてい る。なお、PPARδは、PPARβと表記されることも ある(非特許文献1)。
 PPARの眼組織における分布としては、PPARαお よびβがウサギの角膜上皮細胞に発現してい ことが知られている(非特許文献2)。
 これまでに、主としてPPARγ活性化作用を有 ると考えられる5-[4-(6-メトキシ-1-メチル-1H- ンゾイミダゾール-2-イルメトキシ)ベンジル ]チアゾリジン-2,4-ジオンが、角結膜障害の治 療剤として利用できること(特許文献1および2 )、眼疾患(結膜炎、ドライアイ症候群、角膜 など)の治療においてPPARα、δまたはγアゴ ストが投与されること(特許文献3)が報告さ ている。また、PPARαに関しては、肝臓、腎 などに分布し、脂質代謝・輸送に作用する とが知られており、さらに、そのアゴニス が角膜疾患の治療剤として利用できること 報告されている(特許文献4)。PPARδアゴニス については、これまで、ラット皮脂腺上皮 胞の増殖および分化を促進すること(非特許 献3)、皮膚の創傷治癒を促進すること(非特 文献4)についての報告がある。その他にも 非チアゾリジンジオンPPARリガンドとGLP-1誘 体を投与することによりβ-細胞の増殖を刺 する方法(特許文献5)、PPARγアゴニストであ ピオグリタゾンが白血病細胞や前立腺癌細 などの増殖を阻害すること(特許文献6)など 知られている。

 しかしながら、PPARα、δまたはγの各動物種 および各組織・細胞における発現や機能につ いては不明な点が多く、PPARδアゴニストが、 ヒトの眼疾患に有用であるかについて正確に は知られていない。

国際公開第2005/039574号パンフレット

特開2001-39976号公報

国際公開第2002/076177号パンフレット

特開2005-008570号公報

国際公開第2002/69994号パンフレット

国際公開第1998/25598号パンフレット J Med Chem 2000, 43: 527-550 J Biol Chem 2000, 275: 2837 Molecular Genetic and Metabolism 2001, 74: 362-3 69 Am J Clin Dermatol 2003, 4(8): 523-530

 本発明の課題は、ドライアイなどの眼疾 の根本的な治療となり得るマイボーム腺上 細胞および角膜上皮細胞の増殖を促進しう 薬剤を提供すること、並びに、該促進剤を いたマイボーム腺機能不全、角膜上皮障害 ドライアイ等の眼疾患の治療剤を提供する とである。

 本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意研究を ねた結果、特定のPPARδアゴニストが、マイ ーム腺上皮細胞および角膜上皮細胞の増殖 進作用に優れることを見出し、本発明を完 させるに至った。
 したがって、本発明は以下の内容を少なく も含む。
(1) [3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメ ル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル- 1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸 [4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イ ソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メ ルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロ キシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オ サゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される を含有するマイボーム腺上皮細胞の増殖促 剤。
(2) [3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメ ル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル- 1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸 [4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イ ソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メ ルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロ キシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オ サゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される を含有する角膜上皮細胞の増殖促進剤。
(3) [3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメ ル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル- 1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸 [4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イ ソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メ ルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロ キシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オ サゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される を含有するマイボーム腺機能不全の治療剤
(4) [3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメ ル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル- 1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸 [4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イ ソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メ ルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロ キシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オ サゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される を含有する角膜上皮障害の治療剤。
(5) [3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメ ル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル- 1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸 [4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イ ソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メ ルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロ キシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オ サゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容される を含有するドライアイの治療剤。
(6) ドライアイが涙液蒸発亢進型ドライアイ ある前記(5)記載の治療剤。
(7) マイボーム腺上皮細胞の増殖促進剤を製 するための、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリ ルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチ ]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル] キシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フ ェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピ ニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3- [2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプ ピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチル フェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に 容される塩の使用。
(8) 角膜上皮細胞の増殖促進剤を製造するた の、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロ チル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチ -1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢 、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4- イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2- チルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒド ロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4- キサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキ シ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容され 塩の使用。
(9) マイボーム腺機能不全の治療薬を製造す ための、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフル ロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5- チル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキ 酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニ ル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニ ]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2- ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピ -4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェ ノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容 れる塩の使用。
(10) 角膜上皮障害の治療薬を製造するための 、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチ ル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1, 2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、 [4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イ プロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチ ルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロ シ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキ ゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ] 酸またはそれらの薬理学的に許容される塩 使用。
(11) ドライアイの治療薬を製造するための、 [3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル )フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2- ンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4- [3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソ ロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチル フェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキ -4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサ リル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢 またはそれらの薬理学的に許容される塩の 用。
(12) ドライアイが涙液蒸発亢進型ドライアイ である前記(11)記載の使用。
(13) マイボーム腺上皮細胞の増殖の促進を必 要とする対象に、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-ト リフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エ ル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イ ]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル )フェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロ オニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4 -[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソ ロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メ ルフェノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的 許容される塩の有効量を投与することを含 、マイボーム腺上皮細胞の増殖を促進させ 方法。
(14) 角膜上皮細胞の増殖の促進を必要とする 対象に、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオ ロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メ チル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ 酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニ -4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル] -2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2- ドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル- 4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェ キシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容さ る塩の有効量を投与することを含む、角膜 皮細胞の増殖を促進させる方法。
(15) マイボーム腺機能不全の治療を必要とす る対象に、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフル オロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5- メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキ シ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェ ル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニ ]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2 -ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピ -4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフ ノキシ]酢酸またはそれらの薬理学的に許容 れる塩の有効量を投与することを含む、マ ボーム腺機能不全を治療する方法。
(16) 角膜上皮障害の治療を必要とする対象に 、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチ ル)フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1, 2-ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、 [4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イ プロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチ ルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロ シ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキ ゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ] 酸またはそれらの薬理学的に許容される塩 有効量を投与することを含む、角膜上皮障 を治療する方法。
(17) ドライアイの治療を必要とする対象に、 [3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル )フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2- ンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4- [3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イソ ロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチル フェノキシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキ -4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサ リル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢 またはそれらの薬理学的に許容される塩の 効量を投与することを含む、ドライアイを 療する方法。
(18) ドライアイが涙液蒸発亢進型ドライアイ である前記(17)記載の方法。

 本発明によれば、新規のマイボーム腺上 細胞増殖促進剤または角膜上皮細胞増殖促 剤が提供され、該促進剤は、マイボーム腺 皮細胞および角膜上皮細胞の増殖を促進す 。また、本発明の治療剤は、マイボーム腺 能不全、角膜上皮障害、ドライアイなどの 患の治療・改善に有効に用いることができ 。

図1は、培養ヒト角膜上皮細胞(上段)、 養ウサギ角膜上皮細胞(中段)、および培養 ルマイボーム腺上皮細胞(下段)でのPPARα、δ γのmRNAの発現を示す。

 本発明は、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリ ルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル]エチ ]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6-イル] キシ酢酸、[4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フ ェニル-4-イソプロピル-5-チアゾリル]プロピ ニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸もしくは[4-[3- [2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプ ピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2-メチル フェノキシ]酢酸またはその薬理学的に許容 れる塩(以下総称して、「本発明の化合物」 も称する)を有効成分として含有する、マイ ボーム腺上皮細胞の増殖促進剤を提供する。 該促進剤はマイボーム腺上皮細胞の増殖を促 進するものである。また、本発明は、[3-[2-[4- イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチル)フェ ル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2-ベンズ ソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸、[4-[3-[2-(4- トリフルオロメチル)フェニル-4-イソプロピ -5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノ キシ]酢酸もしくは[4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-ク ロフェニル)-5-イソプロピル-4-オキサゾリル] プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢酸また その薬理学的に許容される塩を有効成分と て含有する、角膜上皮細胞の増殖促進剤を 供する。該促進剤は角膜上皮細胞の増殖を 進するものである。なお、本発明にいう細 増殖促進剤とは、細胞分裂を促進し細胞数 増加させる作用を有するもの、および細胞 を抑制して細胞数を増加させる作用を有す ものの両者を意味する。

 本発明の促進剤に有効成分として含まれ 3-[2-[4-イソプロピル-2-(4-トリフルオロメチ )フェニル-5-チアゾリル]エチル]-5-メチル-1,2- ベンズイソキサゾール-6-イル]オキシ酢酸(CAS No.515138-06-4):

は、国際公開第2003/033493号パンフレット(特 に実施例5)に記載されたPPARδアゴニスト活性 有する化合物である。

 本発明の促進剤に有効成分として含まれ [4-[3-[2-(4-トリフルオロメチル)フェニル-4-イ ソプロピル-5-チアゾリル]プロピオニル]-2-メ ルフェノキシ]酢酸(CAS No.500581-25-8):

は、国際公開第2003/016291号パンフレット(特 に実施例3)に記載されたPPARδアゴニスト活性 有する化合物である。

 本発明の促進剤に有効成分として含まれ [4-[3-[2-(2-ヒドロキシ-4-クロロフェニル)-5-イ ソプロピル-4-オキサゾリル]プロピオニル]-2- チルフェノキシ]酢酸(CAS No.500581-27-1):

は、国際公開第2003/016291号パンフレット(特 に実施例6)に記載されたPPARδアゴニスト活性 有する化合物である。

 これらの化合物の薬理学的に許容される としては、ナトリウム、カリウム等のアル リ金属;カルシウム、マグネシウム等のアル カリ土類金属等との金属塩などがあげられる 。また、本発明の化合物は、その溶媒和物も 含まれる。

 本発明においてPPARδアゴニストとは、PPAR δのリガンド結合ドメイン(LBD)に結合して、 該受容体を活性化し、PPAR標的遺伝子の転写 調節する物質をいう。PPARδアゴニスト活性 、哺乳動物の細胞に内在する他の核受容体 影響を除外するため、LBDと酵母(yeast)のGAL4 のキメラ受容体と、レポーター遺伝子とを いた酵母ツーハイブリッド法により測定す ことができる。具体的な測定方法は、参考 献、T.M. Willson et al., Journal of Medicinal Chem istry, 2000, vol.43, No.4, p.528-550およびJ.M.Lehmann  et al., The Journal of Biological Chemistry, 1995, vol.270, No.22, p.12953-12956に記載のPPAR-GAL4アッ イがあげられる。本発明の化合物は、国際 開第2003/033493号パンフレットの実施例12およ び同2003/016291号パンフレットの実施例51に記 された方法により、PPARδアゴニスト活性を することが確認されている。

 本発明の化合物は、国際公開第2003/033493 パンフレット(特に実施例5)および同2003/016291 号パンフレット(特に実施例3、6)の記載に準 て合成することができる。

 本発明の促進剤において、有効成分の含 量は、通常0.000001~1重量%、好ましくは0.00001~ 1重量%、最も好ましくは0.0001~0.1重量%である

 本発明の促進剤は、上記有効成分に加え 任意の担体を含むことができる。かかる担 としては、例えば、溶媒(例えば、水、アル コールなど)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液 酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、 エン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン 、イプシロンアミノカプロン酸など)、保存 剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベ ゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン クロロブタノール、ベンジルアルコール、 ヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香 エステル類、エデト酸ナトリウム、ホウ酸 ど)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、塩 化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソ ルビトール、ホウ酸、ブドウ糖、プロピレン グリコールなど)などがあげられる。

 本発明の促進剤は、医薬または試験用試薬 どとして、インビボまたはインビトロにお て用いられ得る。
 本発明の促進剤を試験用試薬として使用す 場合、生理学・生物化学分野における試験 試薬として、様々な態様で利用可能である

 医薬として用いる場合、本発明の促進剤 、マイボーム腺上皮細胞の増殖を促進する め、マイボーム腺上皮細胞の損傷または萎 を伴う疾患、およびマイボーム腺上皮細胞 機能が低下することによって生じる疾患の 療剤として有用である。該疾患としてはマ ボーム腺機能不全やマイボーム腺炎などが げられる。さらに、マイボーム腺上皮細胞 、涙液中の脂質成分を分泌し、この脂質は 液の蒸発を防ぎ、涙液層を安定化するもの あるため、本発明の治療剤は涙液中の脂質 常(分泌量減少、成分変化)を伴う疾患に対 て有用である。該疾患としては、涙液蒸発 進型ドライアイがあげられる。

 また、本発明の促進剤は、角膜上皮細胞 増殖を促進するため、角膜上皮細胞の損傷( すなわち、創傷または欠損)を伴う疾患の治 剤としても有用である。本発明の促進剤は 角膜上皮障害、具体的には、シェーグレン 候群、スティーブンス・ジョンソン症候群 眼球乾燥症候群(ドライアイ)等の内因性疾患 に伴う角膜上皮障害;術後、薬剤性、外傷、 膜潰瘍、マイボーム腺炎、コンタクトレン 装用等における外因性疾患に伴う角膜上皮 害;春季カタルやアトピー性角結膜炎等の角 病変を伴う眼アレルギー性疾患に伴う角膜 皮障害の治療剤として有用である。本発明 促進剤は、点状表層角膜症、角膜上皮糜爛 治療にも有用である。さらに、本発明の促 剤は、角膜創傷治癒促進剤としても有用で る。

 さらに、本発明の促進剤は、角膜上皮細 増殖促進作用とマイボーム腺上皮細胞増殖 用を併せ持つことにより、角膜組織に直接 用する効果とマイボーム腺細胞に働くこと より涙液の機能を改善するという効果を発 するため、ドライアイの治療剤として有用 あり、特に涙液蒸発亢進型ドライアイの治 剤として非常に有用である。

 本発明の治療剤において、有効成分の含 量は、通常0.000001~1重量%、好ましくは0.00001~ 1重量%、最も好ましくは0.0001~0.1重量%である

 本発明の促進剤または治療剤の投与対象 しては、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、 ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、 ウシ、ヒツジ、サル等)があげられる。

 本発明の治療剤は、点眼剤、貼付剤、軟 剤、ローション剤、クリーム剤、経口剤等 剤形で用いられ得、上記有効成分に加え、 意の担体、例えば医薬上許容され得る担体 含むことができる。

 本発明の治療剤は、上述の治療効果を奏す 限りその投与経路は特に限定されないが、 ましくは眼局所投与される。眼局所投与用 形には、例えば、点眼剤や眼軟膏剤があげ れる。
 例えば、本発明の治療剤を点眼剤または眼 膏剤として用いる場合、安定剤(例えば、亜 硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、 エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、 アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエ ンなど)、溶解補助剤(例えば、グリセリン、 ロピレングリコール、マクロゴール、ポリ キシエチレン硬化ヒマシ油など)、懸濁化剤 (例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキ プロピルメチルセルロース、ヒドロキシメ ルセルロース、カルボキシメチルセルロー ナトリウムなど)、乳化剤(例えば、ポリビニ ルピロリドン、大豆レシチン、卵黄レシチン 、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソ ルベート80など)、緩衝剤(例えば、リン酸緩 液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝 、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタ ン酸、イプシロンアミノカプロン酸など)、 稠剤(例えば、メチルセルロース、ヒドロキ シエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメ チルセルロース、カルボキシメチルセルロー スなどの水溶性セルロース誘導体、コンドロ イチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリ ウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニ ルアルコール、ポリビニルピロリドン、マク ロゴールなど)、保存剤(例えば、塩化ベンザ コニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン クロルヘキシジン、クロロブタノール、ベ ジルアルコール、デヒドロ酢酸ナトリウム パラオキシ安息香酸エステル類、エデト酸 トリウム、ホウ酸など)、等張化剤(例えば 塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリ 、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、 ドウ糖、プロピレングリコールなど)、pH調 剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、リン 、酢酸など)、清涼化剤(例えば、l-メントー ル、d-カンフル、d-ボルネオール、ハッカ油 ど)、軟膏基剤(白色ワセリン、精製ラノリン 、流動パラフィン、植物油(オリーブ油、椿 、落花生油など)など)などを添加剤として加 えることができる。これら添加剤の添加量は 、添加剤の種類、用途などによって異なるが 、添加剤の目的を達成し得る濃度となるよう に添加すればよい。
 本発明の治療剤を点眼剤または眼軟膏剤と る場合、製剤分野で通常用いられている方 に従って製造すればよく、例えば第14改正 本薬局方、製剤総則、点眼剤の項および眼 膏剤の項に記載された方法に基づき製造す ことができる。

 点眼剤の形態は、水性点眼剤(水性点眼液 、水性懸濁点眼液、粘性点眼液等)、非水性 眼剤(非水性点眼液、非水性懸濁点眼液等)ま たはエマルション点眼剤などが挙げられる。

 点眼剤のpHは、その点眼剤の形態によっ 適宜設定されるが、通常4~8の範囲である。 た、点眼剤が水性点眼液の場合、有効成分 溶解性の観点から、pHは、6~8に設定されるこ とが特に好ましい。

 点眼剤は通常、濾過滅菌、照射滅菌(例え ば、電子線滅菌、紫外線滅菌、ガンマ線滅菌 等)、オートクレーブ滅菌、乾熱滅菌などの 法により無菌化された製剤である。

 点眼剤として製剤化される場合、液剤は 眼への滴下を容易にするための液滴量を制 可能な小径の注液孔を備えた点眼容器に収 されていることが好ましい。該容器の材質 、合成樹脂、ガラス、セルロース、パルプ どが用いられ、有効成分および基剤の性質 使用量によって適宜選択される。スクイズ 及び耐久性の観点から、該容器は合成樹脂 が好ましい。合成樹脂の具体的な材質とし は、ポリエチレン樹脂(例えば、低密度ポリ エチレンまたは高密度ポリエチレン)、ポリ ロピレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合 樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等 挙げられる。

 点眼容器は、別々に成形された容器本体 中栓部材とが嵌合された容器や、容器の成 と同時に液剤が密封充填される一体成形充 容器(例えば、WO2004/006826)等が挙げられる。 体成形充填容器を採用した場合、容器と液 とが一環生産されるため、コスト面または 生面に優れている。点眼容器は、1回ずつ使 い捨てにするユニットドーズ型の容器(例え 、特開平9-207959号)であってもよい。この容 を採用した場合、角膜に対して安全性の高 、防腐剤を配合しない製剤の処方化が可能 なる。また、これらの容器は紫外線遮断性 ィルムで密着包装されていてもよい。また 容器は、紫外線遮断性を高めるため、着色( 色、緑色、青色、黄色等)されていてもよい 。

 本発明は、マイボーム腺上皮細胞の増殖 進を必要とする対象に、本発明の化合物の 効量を投与することを含む、マイボーム腺 皮細胞の増殖促進方法を提供する。当該方 は、マイボーム腺機能不全の治療のために なわれることが望ましい。

 また、本発明は、角膜上皮細胞の増殖促 を必要とする対象に、本発明の化合物の有 量を投与することを含む、角膜上皮細胞の 殖促進方法を提供する。当該方法は、角膜 皮障害の治療のために行なわれることが望 しい。

 また、本発明は、ドライアイを患う患者 、本発明の化合物の有効量を投与すること 含む、ドライアイの治療方法を提供する。

 本発明の化合物の有効量は、投与対象の 齢、体重、状態、治療目的等により一概に 定できないが、本発明の促進剤または治療 をヒトに投与する場合には、通常0.000001~1重 量%、好ましくは0.00001~1重量%、最も好ましく 0.0001~0.1重量%の本発明の化合物を含む溶液 、1日1回~8回、1回に片眼あたり1~2滴、すなわ ち、1回当り約50~200μLの量が例示され、かか 濃度と容量の範囲内の溶液に含まれる化合 の量を有効量として例示することができる

 以下、本発明を詳細に説明するため試験 を挙げるが、本発明はこれらによってなん 限定されるものではない。

(試験例1)
正常ヒト角膜上皮細胞の細胞数増加に対する 効果
1.使用細胞
 正常ヒト角膜上皮細胞(KURABO)を用いた。

2.被験物質溶液の調製方法
 被験物質として、[3-[2-[4-イソプロピル-2-(4- リフルオロメチル)フェニル-5-チアゾリル] チル]-5-メチル-1,2-ベンズイソキサゾール-6- ル]オキシ酢酸(以下、化合物Aと称する)を用 た。化合物Aは、培養液中での最終濃度の200 倍濃度になるようにエタノール(和光純薬)に 解し、使用直前まで-80 ℃で保存した。
 なお、化合物Aによる細胞数増加効果検討の ための細胞培養液として、EpiLife(KURABO)にHCGS 殖添加剤セット(KURABO)に含まれるインスリン 、ハイドロコーチゾン、トランスフェリンを 添加した培養液(基礎培地)を用いた。

3.試験方法
1)細胞培養および化合物Aの添加
 液体窒素中に凍結保存された正常ヒト角膜 皮細胞を解凍し、その細胞数を計数した後 その全量をHCGS増殖添加剤セット(インスリ 、マウス由来上皮成長因子mEGF、ハイドロコ チゾン、トランスフェリン、ウシ脳下垂体 出物)の全てを添加した4 mLのEpiLife(完全培 )中に移してよく懸濁した。この細胞懸濁液 フィブロネクチンコート24ウェルプレート(B ecton Dickinson)に、細胞数が2×10 4 cells/500μL/穴となるように播種した(底面面積 2 cm 2 であるため、1×10 4  cells/cm 2 )。
 細胞播種完了後、培養皿を37℃、5% CO 2 、95% air、100% humidityに設定した培養器内で24 時間培養し、ついで培養液を400μLの基礎培地 (HCGS増殖添加剤のうち、インスリン、ハイド コーチゾン、トランスフェリンを添加したE piLife)に交換した。
 さらにその24時間後、培養液を下記の培養 、各400μLに交換した。
〔1〕基礎培地のみ(無添加群)
〔2〕基礎培地+mEGF(最終濃度:1ng/mL;陽性対照群 )
〔3〕基礎培地+化合物A(最終濃度:0.1nM、1nM、0. 01μM、0.1μM;化合物A添加群)
 なお、全ての培養液中のエタノール濃度を0 .5%に統一させるため、培養液〔1〕および〔2 に対しては1mLあたり5μLのエタノールを添加 した。
2)細胞数測定
 化合物Aによる刺激開始から24時間後、各穴 培養上清を除去し、ついで各穴に10%のCell C ounting Kit-8(DOJINDO)を添加した基礎培地を200μL つ分注した。分注後、培養皿を37℃、5% CO 2 、95% air、100% humidityに設定した培養器内に して2時間加温した。100μLの上清を96穴組織 養用培養皿(Corning)に移した後、各穴の450 nm 吸光度をマイクロプレートリーダー(大日本 住友製薬)を用いて測定し、これを細胞数増 の指標とした。

4.統計学的解析
 無添加群の吸光度の平均値を100%としたとき の、陽性対照群、化合物A添加群の値を算出 、無添加群と化合物A添加群および陽性対照 との比較をDunnettの多重比較検定法(片側)を いて行なった。検定の結果、危険率5%未満 場合を有意と判定した。

5.試験結果
 各群の細胞数増加効果を表1に示した。測定 した吸光度から無添加群の細胞数を100%とし 場合、陽性対照群および化合物A添加群の細 数は無添加群のそれよりも有意に高く、こ らの群では細胞数が増加していることが示 された(p<0.01)。この試験結果より、化合 Aは正常ヒト角膜上皮細胞の細胞数を増加さ ることが明らかとなった。

 

 培養正常ヒト角膜上皮細胞に化合物Aを添 加した際の細胞数の変化を、無添加群の平均 値を100%とした際の値として示している(平均 ±標準偏差、N=3-4)。表中の**は無添加群に対 する有意差(p<0.01)を示す。

(試験例2)
角膜上皮創傷治癒促進作用の検討
1.使用動物
 雄性日本白色種家兎(北山ラベス)を用いた 実験動物の使用にあたっては、動物を用い 生物医学研究に関する原則(International Guiding  Principles for Biomedical Research involving Animals) に従った。

2.被験物質点眼液の調製方法
 被験物質として化合物Aを用いた。化合物A 、0.0005%になるように下記の基剤に溶解した の、または0.005%になるように下記の基剤に 濁したものを点眼液として使用した。
  リン酸二水素ナトリウム二水和物   0.05 g
  塩化ナトリウム           0.45 g
  超純水               適量
  ポリソルベート80          0.05 mL
  水酸化ナトリウム          適量     
  全量                50 mL(pH 7.0)
 なお、化合物A投与群の対照として、薬剤を 含まない上記の基剤点眼群を設定した。

3.実験方法
1)角膜上皮掻爬
 セラクタール(2% xylazine;バイエル):ケタラー ル(5% ketamine;第一三共)=1:1混合液の筋肉内注 (1mL/kg)により動物に全身麻酔を施した後、塩 酸オキシブプロカイン点眼液(ベノキシール 眼液0.4%;参天製薬)を点眼し、眼球を脱臼さ た。直径10mmのトレパンを用いて角膜中央部 角膜上皮上に直径10mmの刻印を施し、実体顕 微鏡下、ハンディルーターを用いて刻印した 円周内の角膜上皮全層を掻爬した。掻爬後、 生理食塩液(大塚製薬工場)を用いて角膜表面 洗浄し、眼球を眼窩内に復位させて角膜上 掻爬処置を完了した。
2)投与
 角膜上皮掻爬当日は1日2回、翌日以降、試 終了までは1日4回、処置眼に対し、化合物A 眼液または点眼液基剤をそれぞれ1回50μLず 、マイクロピペットを用いて点眼した。
3)評価
 全個体の角膜上皮掻爬が完了した時点を試 開始時間(0時間目)とし、その40、48、56、64 間後の角膜上皮欠損面積を定量することに り、角膜上皮の修復を評価した。すなわち 各時点で処置眼に0.1%フルオレセインナトリ ム(和光純薬)溶液を10μL点眼し、ただちにブ ルーフィルターを取り付けたスリットランプ を用いて動物の前眼部写真を撮影することに より、フルオレセイン染色された角膜上皮欠 損領域を記録した。現像された写真をコンピ ュータにデジタル画像として保存し、画像解 析ソフト(Image-Pro Plus)を用いてフルオレセイ 染色された角膜上皮欠損部の面積を測定し 。

4.統計学的解析
 各時点で測定された角膜上皮欠損面積につ て、各個体ごとにその初期値を100%とした際 の値を算出し、これを残存する角膜上皮欠損 の割合とした。各時点での残存角膜上皮欠損 の割合について、基剤点眼群と化合物A点眼 との比較をt検定を用いて行なった。検定の 果、危険率5%未満を有意であると判定した

5.試験結果
 基剤点眼群および0.0005%、0.005% 化合物A点眼 群の測定各時点での残存する角膜上皮欠損の 割合を表2に示す。角膜上皮掻爬の40時間後に 、角膜上皮欠損の割合が0.005% 化合物A点眼群 で有意に小さくなっていることが示された。 また、48時間後では、0.0005%および0.005% 化合 A点眼群で有意に小さくなっていることが示 された。この試験結果から、化合物Aを点眼 ることにより、欠損した角膜上皮の修復が 進されることが明らかとなった。

 

 ウサギ眼に対して角膜上皮掻爬処置を施 た後、残存する角膜上皮欠損の割合(%)を、 個体ごとにその初期値を100%として算出した 値を示している(平均値±標準偏差、N=6)。表 の*は基剤点眼群に対する有意差(p<0.05)を す。

(試験例3)
マイボーム腺上皮細胞の細胞数増加に対する 効果
1.サルマイボーム腺上皮細胞の調
 D-PBS中に保存された摘出サル眼瞼をクリー ベンチ内に移し、以下のとおり、無菌的に 胞調製操作を行なった。
 摘出眼瞼を80%のエタノール中に30秒間浸漬 た後、1%のpenicillin-streptomycin(Invitrogen)を添加 たD-PBS中で3回洗浄し、minimum essential medium(M EM; Invitrogen)中に移した。実体顕微鏡下で眼 のマイボーム腺組織を取り囲む脂肪組織お び筋組織を除去し、これを、0.3U/mL collagenase  A(Roche Diagnostics)および2.4U/mL dispase II(Roche  Diagnostics)を含むMEM中に移して37℃で4時間、つ いで4℃で終夜、振盪した。酵素処理した組 を実体顕微鏡下におき、睫毛および眼瞼結 組織を除去してマイボーム腺組織を単離し 。単離した腺組織に4mLのtrypsin-EDTA(Invitrogen) 添加して37℃で10分間加温した。加温後、こ に10%のFBS(Invitrogen)を含むMEMを5mL加えて酵素 応を停止させ、ついで、21Gの注射針を付け 注射筒で5回、吸引排出を繰り返して組織構 成細胞を分散させた。細胞分散液を、100μm、 ついで、40μmのナイロンフィルター(Cell Strain er; Falcon)に供し、これに含まれる酵素処理で きなかった細胞塊などを除去した。フィルタ ーを通過させた細胞懸濁液は50mLの遠沈管に 収し、室温、1,500回転、5分間の遠心分離に した。遠心分離により得た目的細胞を含む 胞層に、0.5%のbovine serum albumin(BSA; Sigma-Aldri ch)を含むD-PBSを80μL添加して細胞を十分に懸 させた後、これに、20μLのAnti-Fibroblast Microbe ads(Militenyi Biotec)を加えて室温で30分間静置し た。抗体との反応終了後、これに0.5%のBSAを むD-PBSを2mL添加して、再度、室温、1,500回転 5分間の遠心分離に供した。遠心分離により 得た目的細胞を含む細胞層に、0.5%のBSAを含 D-PBSを1mL添加して細胞を十分に懸濁させ、あ らかじめ、カラム洗浄液(2mMのEDTA(同仁化学) よび0.5%のBSAを含むD-PBS)を用いて平衡化して いたLD column(Militenyi Biotec)にこれを滴下し 。ついで、2mLのカラム洗浄液をLD columnに滴 した。細胞懸濁液滴下直後からカラム洗浄 滴下終了までの間、カラムに吸着しなかっ 抗体非標識の目的細胞(非線維芽細胞)を50mL 沈管に回収した。遠沈管に回収した細胞を 室温、1,500回転、5分間の遠心分離に供して 清を除去した。この沈渣を、5mL のDefined Ke ratinocyte Serum Free Mediumに懸濁させ、室温、1, 500回転、5分間の遠心分離に供して上清を除 した。再度、沈渣を3mLのDK-SFMに懸濁させ、 温、1,500回転、5分間の遠心分離に供して上 を除去した後、これを2 mLのDK-SFMに懸濁させ て、コラーゲン処理を施した6ウェル細胞培 用マルチウェルプレートに播種した。播種 た細胞は、Defined keratinocyte-Serum Free Medium(DK -SFM;Invitrogen、添付されたSupplementを調製プロ コルどおりに添加)を用いて、37℃、5% CO 2 、95% air、100% humidityに設定した培養器(SANYO) で培養し、培養液は細胞がサブコンフルエ トに達するまで48時間ごとに新しいものに 換した。

2.被験物質溶液の調製方法
 被験物質として化合物A、[4-[3-[2-(4-トリフル オロメチル)フェニル-4-イソプロピル-5-チア リル]プロピオニル]-2-メチルフェノキシ]酢 (以下、化合物Bと称する)または[4-[3-[2-(2-ヒ ロキシ-4-クロロフェニル)-5-イソプロピル-4- キサゾリル]プロピオニル]-2-メチルフェノ シ]酢酸(以下、化合物Cと称する)を用いた。 験物質は、培養液中での最終濃度の200倍濃 になるようにエタノール(ナカライテスク) 溶解し、使用直前まで-80℃で保存した。
 なお、被験物質による細胞増殖促進効果の 討には、DK-SFMからこれに添付されたsupplement を除いた培養液を基礎培地(basal DK-SFM)として 用いた。また、細胞増殖促進効果確認のため の陽性対照として、基礎培地に添付のsupplemen tを添加した培養液(complete DK-SFM)を用いた。

3.試験方法
1)培養皿のコラーゲン処理
 培養皿使用の前日に、培養皿の各穴に0.01% I型コラーゲン(新田ゼラチン)を50μLずつ分注 して試験直前まで4℃でコーティングを行な た。試験当日、I型コラーゲン溶液を除去し 後、D-PBSを用いて3度、培養皿底面を洗浄し これをコラーゲン処理培養皿として試験に いた。
2)細胞培養および被験物質の添加
 試験には、直径3.5cmの培養皿でサブコンフ エントになるまで培養し、液体窒素中で凍 保存しておいたサルマイボーム腺上皮細胞 用いた。セルバンカー(日本全薬工業)に懸濁 して凍結保存しておいた細胞を解凍した後、 50mL遠沈管に移して10倍量のcomplete DK-SFMを添 した。室温、1,500回転、5分間の遠心分離に して細胞層を回収した後、得られた細胞濃 が3×10 6 細胞/mLとなるように適量のcomplete DK-SFMを添 して細胞を懸濁させた。この細胞懸濁液を コラーゲン処理した96穴組織培養用培養皿の 底面面積(0.32 cm 2 )あたりの細胞数が6×10 4 細胞/cm 2 となるよう、各穴に64μLずつ分注した。細胞 種完了後、培養皿を37℃、5% CO 2 、95% air、100% humidityに設定した培養器内に し、24時間培養した。培養液を100μLのbasal DK -SFMに交換してさらに24時間の培養を行い、次 いで培養皿の各穴の培養液を各100μLの下記培 養液に交換して、その培養皿を培養器内に戻 し、細胞刺激を開始した。
〔1〕基礎培地のみ(basal DK-SFM、無添加群)
〔2〕基礎培地+supplement(complete DK-SFM、陽性対 群)
〔3〕基礎培地+化合物A(最終濃度:0.01μM、0.1μM および1μM;化合物A添加群)
〔4〕基礎培地+化合物B(最終濃度:0.01μM、0.1μM および1μM;化合物B添加群)
〔5〕基礎培地+化合物C(最終濃度:0.01μM、0.1μM および1μM;化合物C添加群)
 なお、全ての培養液中のエタノール濃度を0 .5%に統一させるため、培養液〔1〕および〔2 に対してはそれぞれ1 mLあたり5μLのエタノ ルを添加した。
3)細胞数測定
 初回の細胞刺激の48時間後、培養液を新た 調製した上記〔1〕~〔5〕の培養液に交換し 。その48時間後、もう一度培養液を新たに調 製した上記〔1〕~〔5〕の培養液に交換した。 さらにその48時間後、各穴の培養上清を除去 、ついで各穴に10%のCell Counting Kit-8(DOJINDO) 添加した基礎培地を100μLずつ分注した。分 後、培養皿を37℃、5% CO 2 、95% air、100% humidityに設定した培養器内に して2時間加温した。2時間の加温後、マイク ロプレートリーダー(大日本住友製薬)を用い 450nmの吸光度を測定し、これを細胞数増加 指標とした。

4.統計学的解析
 無添加群の吸光度の平均値を100%としたとき の、陽性対照群、各被験物質添加群の各群の 値を算出し、無添加群と各被験物質添加群お よび陽性対照群との比較をDunnettの多重比較 定法(片側)を用いて行なった。検定の結果、 危険率5%未満の場合を有意と判定した。

5.試験結果
 各群の細胞数増加促進効果を表3に示した。 測定した吸光度から無添加群の細胞数を100% した場合、各被験物質添加群での細胞増殖 、無添加群よりも有意に高く、細胞が増加 ていることが示唆された。細胞数増加促進 果を確認するための陽性対照群では、有意 はないが、細胞数を増加させる傾向が認め れた。この試験結果より、各被験物質はサ マイボーム腺上皮細胞の細胞数を増加させ ことが明らかとなった。

 

 培養サルマイボーム腺上皮細胞に各被験 質またはsupplement(陽性対照)を添加した際の 胞数の変化を、無添加群の平均値を100%とし た際の値として示している(平均値±標準偏差 、N=5または10)。表中の**は無添加群に対する 意差(p<0.01)を示す。

(試験例4)
正常ヒト角膜上皮細胞の細胞数増加に対する 効果
1.使用細胞
 正常ヒト角膜上皮細胞(KURABO)を用いた。
2.被験物質および調製方法
 被験物質として、化合物Bまたは化合物Cを いた。化合物Bおよび化合物Cは、それぞれ培 養液中での最終濃度の200倍濃度になるように エタノール(和光純薬)に溶解し、使用直前ま -80℃で保存した。
 なお、化合物Bおよび化合物Cによる細胞数 加効果検討のための細胞培養液として、EpiLi fe(KURABO)にHCGS増殖添加剤セット(KURABO)に含ま るインスリン、ハイドロコーチゾン、トラ スフェリンを添加した培養液(基礎培地)を用 いた。

3.試験方法
1)細胞培養および被験物質の添加
 液体窒素中に凍結保存された正常ヒト角膜 皮細胞を解凍し、その細胞数を計数した後 その全量をHCGS増殖添加剤セット(インスリ 、マウス由来上皮成長因子mEGF、ハイドロコ チゾン、トランスフェリン、ウシ脳下垂体 出物)の全てを添加した4mLのEpiLife(完全培地) 中に移してよく懸濁した。この細胞懸濁液を フィブロネクチンコート24ウェルプレート(Bec ton Dickinson)に、細胞数が2×10 4 cells/500μL/穴となるように播種した(底面面積 2cm 2 であるため、1×10 4  cells/cm 2 )。細胞播種完了後、培養皿を37℃、5% CO 2 、95% air、100% humidityに設定した培養器内で24 時間培養し、ついで培養液を400μLの基礎培地 (HCGS増殖添加剤のうち、インスリン、ハイド コーチゾン、トランスフェリンを添加したE piLife)に交換した。さらにその24時間後、培養 液を下記の培養液、各400μLに交換した。
〔1〕基礎培地のみ(無添加群)
〔2〕基礎培地+mEGF(最終濃度:1ng/mL;陽性対照群 )
〔3〕基礎培地+化合物B(最終濃度:0.01μM、0.1μM 、1μM;化合物B添加群)
〔4〕基礎培地+化合物C(最終濃度:0.01μM、0.1μM 、1μM;化合物C添加群)
 なお、全ての培養液中のエタノール濃度を0 .5%に統一させるため、培養液〔1〕および〔2 に対しては1mLあたり5μLのエタノールを添加 した。
2)細胞数測定
 化合物Bまたは化合物Cによる刺激開始から24 時間後、各穴の培養上清を除去し、ついで各 穴に10%のCell Counting Kit-8(DOJINDO)を添加した基 礎培地を200μLずつ分注した。分注後、培養皿 を37℃、5% CO 2 、95% air、100% humidityに設定した培養器内に して2時間加温した。100μLの上清を96穴組織 養用培養皿(Corning)に移した後、各穴の450nmの 吸光度をマイクロプレートリーダー(大日本 友製薬)を用いて測定して、これを細胞数増 の指標とした。

4.統計学的解析
 無添加群の吸光度の平均値を100%としたとき の、陽性対照群、化合物Bまたは化合物C添加 の値を算出し、無添加群と化合物Bまたは化 合物C添加群および陽性対照群との比較をDunne ttの多重比較検定法(片側)を用いて行なった 検定の結果、危険率5%未満の場合を有意と判 定した。

5.試験結果
 各群の細胞数増加効果を表4に示した。測定 した吸光度から無添加群の細胞数増加を100% した場合、陽性対照群、化合物B添加群およ 化合物C添加群の細胞数は、無添加群のそれ よりも有意に高く、これらの群では細胞数が 増加していることが示唆された(p<0.01)。こ 試験結果より、化合物Bおよび化合物Cの両 は正常ヒト角膜上皮細胞の細胞数を増加さ ることが明らかとなった。

 培養正常ヒト角膜上皮細胞に化合物Bまた は化合物Cを添加した際の細胞数の変化を、 添加群の平均値を100%とした際の値として示 ている(平均値±標準偏差,N=4)。表中の**は無 添加群に対する有意差(p<0.01)を示す。

(試験例5)
角膜上皮細胞およびマイボーム腺上皮細胞で のPPARsの発現
1.使用細胞
 サルマイボーム腺上皮細胞は(試験例3)と同 の方法で調製、培養したものを用いた。ヒ 角膜上皮細胞(クラボウ)は正常ヒト角膜上 細胞増殖用無血清基礎培地(EpiLife; クラボウ )を用いて37℃、5% CO 2 、95% air、 100% humidityに設定した培養器内で 培養したものを用いた。ウサギ角膜上皮細胞 は、以下の方法で調製、培養したものを用い た。
 安楽死させたウサギから摘出した眼球から 膜を切り出してDulbecco’s phosphate buffered sa line(D-PBS; Invitrogen)中に保存し、これをクリー ンベンチ内に移した。以下の細胞調製操作は 全て無菌的に行なった。
 摘出角膜片を1%のpenicillin-streptomycin(Invitrogen) を添加したD-PBS中で3回洗浄し、minimum essential  medium(MEM; Invitrogen)中に移した。MEM中に浸漬 た角膜片の角膜内皮細胞およびデスメ膜を 科手術用ナイフ(Alcon)で剥離し、剥離後の角 膜片(角膜実質および角膜上皮)を2.4U/mLとなる ようにdispase II(Roche Diagnostics)を添加したMEM 移した。これを37℃で1時間加温し、その後 dispase II処理した角膜片をMEM中に移した。MEM 中に浸漬した角膜片の角膜上皮を眼科用手術 ナイフで剥離し、角膜片残渣(角膜実質)をMEM ら取り除いた。剥離した角膜上皮細胞を含 MEMを50mLの遠沈管に回収し、室温、1,500回転 5分間の遠心分離に供して上清を廃棄するこ とにより、角膜上皮細胞層を得た。角膜上皮 細胞層に1mLのtrypsin-EDTA(Invitrogen)を添加してよ く混合した後、37℃で5分間加温して細胞間の 接着を乖離させた。これに10%のfetal bovine ser um(FBS; Invitrogen)を含むMEMを9mL添加して酵素反 を停止させ、再度、室温、1,500回転、5分間 遠心分離に供して角膜上皮細胞層を得た。 られた角膜上皮細胞層に1mLの正常ウサギ角 上皮細胞増殖用無血清液体培地(RCGM2; クラ ウ)を添加して細胞を懸濁させ、9mLのRCGM2を 加した直径10cmの細胞培養用培養皿(IWAKI)に 種した。播種細胞は37℃、5% CO 2 、95% air、100% humidityに設定した培養器(SANYO) で培養した。培養液は試験当日まで48時間 とに新しいものに交換した。

2.試験方法
1)細胞からの全RNAの抽出
 TRIzol Reagent(Invitrogen)の常法に従って各細胞 らの全RNAを抽出した。
2)抽出全RNAからのcDNA作製
 DNA-free(Ambion)の常法に従って抽出した全RNAの DNase処理を37℃で30分間行ない、ゲノムDNAを除 去した。
 抽出全RNAからのcDNA作製はSuperscript II Reverse  Transcriptase(Invitrogen)の常法に従って行なった 。すなわち、DNase処理した1μgの全RNAから、ラ ンダムプライマー(Invitrogen)を用いてこれらに 相補するcDNAを作製した。
3)PPARs遺伝子の増幅(Polymerase Chain Reaction; PCR)
 PPARs遺伝子のPCRはPlatinum PCR SuperMix(Invitrogen) の常法に従って行なった。PPARsプライマーは 既知のヒト、チンパンジー、カニクイザル ウシ、マウスなどの配列を参考に、PCR産物 約200bpsとなるように設計した。
PPARα:GTAGAATCTGCGGGGACAAG (sense)  (配列番号1)
   :GTTGTGTGACATCCCGACAG (antisense)(配列番号2)
PPARδ:TTCCTTCCAGCAGCTACACA (sense)  (配列番号3)
   :GATCGTACGACGGAAGAAGC (antisense)(配列番号4)
PPARγ:CTCCGTGGATCTCTCCGTAA (sense)  (配列番号5)
   :GATGCAGGCTCCACTTTGAT (antisense)(配列番号6)
 PCR反応は、94℃で2分15秒間反応させた後、94 ℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間の3段 の反応を35回繰り返すことで完了させた。PC Rの反応後の試料を2%のアガロースゲルを用い た電気泳動に供し、ついでゲル内に分離され たDNAをSYBR Gold(Molecular Probes)を用いて染色し 。染色されたDNAをUVトランスイルミネータ 上で発光させ、この画像をデジタルデータ して保存した。

3.試験結果
 電気泳動後の染色されたDNAのバンドを図1に 示す。本試験の結果、ヒト角膜上皮細胞およ びサルマイボーム腺上皮細胞にはPPARα、PPARδ およびPPARγの全てが発現していることが確認 された。なお、ウサギ角膜上皮細胞ではPPARδ の発現のみが確認された。Bonazziらはウサギ 膜上皮細胞にはPPARsのうちPPARαおよびPPARβ(= )が発現すると報告しているが(Bonazzi A. et a l., J. Biol. Chem. (2000); 275 (4): 2837-2844)、そ 報告の中で、彼らは特殊な方法を用いてPPAR αを検出していることから、ウサギ角膜上皮 胞でのPPARα発現量は非常に少ないと推測さ る。

 本発明によれば、新規のマイボーム腺上 細胞増殖促進剤または角膜上皮細胞増殖促 剤が提供され、該促進剤は、マイボーム腺 皮細胞および角膜上皮細胞の増殖を促進す 。また、本発明の治療剤は、マイボーム腺 能不全、角膜上皮障害、ドライアイなどの 患の治療・改善に有効に用いることができ 。

 本出願は、日本で出願された特願2007-13418 3(出願日:2007年5月21日)を基礎としており、そ 内容は本明細書に全て包含されるものであ 。