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Patent Searching and Data


Title:
PIEZOELECTRIC PORCELAIN AND PIEZOELECTRIC ELEMENT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/096761
Kind Code:
A1
Abstract:
To provide a piezoelectric porcelain which has a high coercive field value and can be fired at a low temperature of 950°C or below. The composition of the piezoelectric porcelain is expressed by the following general formula; Pbx-a-dBiaM3d{M1b(M21/3Nb2/3)yZr1-b-y-zTiz}O3 (M1 and M2 are at least one of Ni and Zn, M3 is at least one of Ba and Sr), and the above mentioned a, b, d, x, y and z satisfy the inequalities of 0.05≤a≤0.15, 0

Inventors:
SAKAKI CHIHARU (JP)
SHIMOMURA EMI (JP)
SAKAI MOTOYOSHI (JP)
NAKAMURA MOTONORI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/051872
Publication Date:
August 14, 2008
Filing Date:
February 05, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MURATA MANUFACTURING CO (JP)
SAKAKI CHIHARU (JP)
SHIMOMURA EMI (JP)
SAKAI MOTOYOSHI (JP)
NAKAMURA MOTONORI (JP)
International Classes:
C04B35/49; C04B35/493; H01L41/083; H01L41/187; H01L41/39
Domestic Patent References:
WO2006075449A12006-07-20
WO2006075449A12006-07-20
Foreign References:
JP2001328864A2001-11-27
JPH10287469A1998-10-27
JPS60215568A1985-10-28
JPH02301174A1990-12-13
JPH0340965A1991-02-21
JP2004059335A2004-02-26
JP2007041363A2007-02-15
JP2006052107A2006-02-23
JP2004307320A2004-11-04
JPS6289372A1987-04-23
JP2001328864A2001-11-27
Other References:
See also references of EP 2090556A4
Attorney, Agent or Firm:
NISHIZAWA, Hitoshi (Daido Seimei Minami-kan1-2-11 Edobori, Nishi-ku,Osaka-sh, Osaka 02, JP)
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Claims:
 一般式Pb x-a-d Bi a M3 d {M1 b (M2 1/3 Nb 2/3 ) y Zr 1-b-y-z Ti z }O 3 (M1およびM2はそれぞれNiおよびZnの少なくとも一種、M3はBaおよびSrの少なくとも一種)で表わされ、前記a,b,d,x,y,zが、
0.05≦a≦0.15
0<b≦0.075
0≦(a-2b)
0≦d≦0.1
0.97≦x≦1.00
0.020≦y≦0.250
0.398≦z≦0.512
を満たすことを特徴とする圧電磁器。
 請求項1記載の圧電磁器であって、前記a,bが、
0.015≦b≦0.075
0≦(a-2b)≦0.02
を満たすことを特徴とする圧電磁器。
 請求項1または請求項2記載の圧電磁器であって、前記M1はNiであり、前記M2はNiまたはZnの少なくとも一種であることを特徴とする圧電磁器。
 請求項3に記載の圧電磁器であって、Niの偏析が生じていることを特徴とする圧電磁器。
 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の圧電磁器からなる圧電磁器素体と、該圧電磁器素体に内蔵された内部電極と、を有する圧電素子。
Description:
圧電磁器および圧電素子

 本発明は、圧電アクチュエータ、超音波 動子および圧電発音体などに使用される圧 磁器および該圧電磁器を使用した圧電素子 関する。

 圧電アクチュエータ、超音波振動子およ 圧電発音体などの圧電素子に利用される圧 磁器としては、大きな圧電定数を得ること できるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の圧電 器が広く用いられている。さらに、PZT系圧 磁器の特性を改善するため、第三成分を含 三成分系の圧電磁器も多く開発されている

 三成分系の圧電磁器として、PbTiO 3 -PbZrO 3 -Pb(M2 1/3 Nb 2/3 )O 3 (M2はNi,Znなどの2価の金属元素)で表わされる 電磁器が知られている。

 例えば特許文献1には、良好な誘電率温度係 数が得られるとともに焼結性が向上した強誘 電性セラミックスとして、基本組成をPbTiO 3 が43.5mol%、PbZrO 3 が44.0mol%、Pb(Zn 1/3 Nb 2/3 )O 3 が12.5mol%とし、少量のBi及びZnを添加した強誘 電性セラミックスが記載されている。

 また特許文献2には、1150℃未満の温度で焼 可能であり、大きな機械的品質係数を有し 高電界駆動による機械的品質係数の低下が さな圧電磁器組成物として、(Pb u A 1-u ) v {(Zn 1/3 Nb 2/3 ) x Ti y Zr z } 2-v O 3 で表わされる組成物と、MnをMnO 2 に換算して前記組成物に対して0.7~3mol%と、Al Al 2 O 3 に換算して前記組成物に対して0.7~2.4mol%と、S iをSiO 2 に換算して前記組成物に対して0.1~1.5molとを 有し、前記組成式においてAはLa,Nd,PrおよびBi からなる群より選ばれる少なくとも一種の元 素であり、uおよびvは各々、0.92≦u≦0.99、0.97 ≦v≦1.03であり、x、yおよびzは各々、0.06≦x 0.18、0.43≦y≦0.53、0.29≦z≦0.51であり、且つx +y+z=1の関係を満足する圧電磁器組成物が記載 されている。

特開平3-40965号公報

特開2001-181037号公報

 ところで、圧電磁器の歪み量は圧電定数d の絶対値と駆動電界Eの積(|d|×E)で表わされる 。そのため、大きな歪み量を得るためには圧 電定数dを向上させるとともに、駆動電界Eを きくすることが有効である。しかし、圧電 音体のように交流電界を印加する用途の圧 素子においては、抗電界(Ec)以上の電界強度 で駆動すると脱分極が生じてしまうため、駆 動電界Eの値は抗電界Ec以下に制約される。し たがって、交流電界を印加する用途の圧電素 子に使用する圧電磁器は、大きな圧電定数d 有するとともに大きな抗電界Ecを有している ことが好ましい。

 また、圧電素子は圧電磁器と内部電極と 同時に焼成することによって製造される場 がある。その場合、内部電極は圧電磁器の 成温度より高い融点を有する必要があり、 部電極には融点の高いPdなどが含有されて る。しかし、Pdのように融点が高い金属は一 般に高価である。そのため、Pdなどの高価な 属の含有量を減らして原料コストの低減を るためには、圧電磁器の焼成温度を低くす 必要がある。具体的には、比較的安価なAg 95~100%でPdが0~5%程度にまで内部電極中のPdの 率を減じるためには、圧電磁器の焼成温度 950℃程度にまで低下させる必要がある。

 本発明者らの知見によれば、特許文献1に 記載された強誘電性セラミックスは抗電界の 値が十分ではなく、大きな交流電界を印加す ると脱分極が生じてしまうことから、交流を 印加する用途では大きな変位量を得ることが 困難である。さらに焼成温度も1200℃以上で り、内部電極を備える場合には内部電極中 Pdの含有率を高くせざるを得ず、原料コスト の低減が困難である。

 また、特許文献2に記載された圧電磁器組 成物は、低温焼成可能であることを謳ってい るが、1000℃以下の焼成は困難であり、さら る焼成温度の低下が求められていた。

 本発明は上記課題を解決するためになさ たものであり、大きな抗電界の値を有する ともに、950℃以下の低温での焼成が可能な 電磁器を提供することを目的とする。また この圧電磁器を用いた、交流を印加する用 でも大きな変位量を得ることができる圧電 子を提供することを目的とする。

 本発明者らは上記の課題を解決するため 鋭意研究したところ、PZT系の圧電磁器につ て、次のような知見を得た。

 第1に、PZT系圧電磁器のBサイトをアクセ タリッチの組成とすることによって酸素欠 が生成され、高い抗電界が得られることが かった。またBサイトをアクセプタリッチに ることによって焼成時の物質拡散が促進さ ることにより焼結性が向上し、低温での焼 が可能となることもわかった。一方、Bサイ トをアクセプタリッチとすることによって生 成された酸素欠陥がドメインのピン止め効果 を有するため、圧電定数の低下を招くという 問題が生じることもわかった。

 第2に、AサイトのPbの一部を、ドナーとし て作用するBiで置換することにより、より高 抗電界を得られることがわかった。これは ドナーとして作用するBi置換によりAサイト 陥が生成され、Aサイト欠陥が酸素欠陥とチ ャージバランスをとるためにBサイトへのア セプタ元素の固溶が促進され、より多くの クセプタ元素をBサイトに固溶させることが きるためであると考えられる。さらにまた AサイトにBiを置換させることによって、Bサ イトにアクセプタ元素を固溶させることに伴 う圧電定数の低下を補償できることもわかっ た。これは、Bi置換によって形成されたAサイ ト欠陥がドメインの回転を容易にすることに よる。

 第3に、アクセプタ元素として少なくとも Niを固溶させるとともに、Niを偏析させるこ により、焼成条件の変化に対して特性の変 を起こりにくくすることができることがわ った。焼成条件が変化するとBi蒸発量が変化 することから、焼成温度や焼成雰囲気等の焼 成条件がわずかでも変動すると圧電磁器の特 性が大幅に変動するおそれがある。Niを偏析 せるような組成・焼成雰囲気の条件を採用 ることにより、焼成条件の変化によるBi蒸 量の変化が起こっても、Ni偏析量の変化によ って結晶粒内のBiとNiの電荷補償状態を保つ とができるようになるためであると考えら る。

 本発明は上記の知見に基づくものであり、 発明に係る圧電磁器は、一般式Pb x-a-d Bi a M3 d {M1 b (M2 1/3 Nb 2/3 ) y Zr 1-b-y-z Ti z }O 3 (M1およびM2はそれぞれNiおよびZnの少なくとも 一種、M3はBaおよびSrの少なくとも一種)で表 され、前記a,b,d,x,y,zが、0.05≦a≦0.15、0<b≦ 0.075、0≦(a-2b)、0≦d≦0.1、0.97≦x≦1.00、0.020 y≦0.250、0.398≦z≦0.512、を満たすことを特徴 とする。

 また、上記の圧電磁器であって、前記a,b 、0.015≦b≦0.075、0≦(a-2b)≦0.02を満たすこと を特徴とする。

 さらに、上記の圧電磁器であって、前記M 1はNiであり、前記M2はNiまたはZnの少なくとも 一種であることを特徴とする。

 さらに、上記の圧電磁器であって、Niの 析が生じていることを特徴とする。

 また、本発明に係る圧電素子は、上記の ずれかに記載の圧電磁器からなる圧電磁器 体と、該圧電磁器素体に内蔵された内部電 と、を有する。

 本発明によれば、一般式Pb x-a-d Bi a M3 d {M1 b (M2 1/3 Nb 2/3 ) y Zr 1-b-y-z Ti z }O 3 (M1およびM2はそれぞれNiおよびZnの少なくとも 一種、M3はBaおよびSrの少なくとも一種)で表 され、前記a,b,d,x,y,zが、0.05≦a≦0.15、0<b≦ 0.075、0≦(a-2b)、0≦d≦0.1、0.97≦x≦1.00、0.020 y≦0.250、0.398≦z≦0.512を満たすことにより、 高い圧電定数を維持しながら、950℃程度の低 温での焼成が可能であるとともに高い抗電界 を有する圧電磁器を得ることができる。

 さらに、前記a,bが、0.015≦b≦0.075、0≦(a-2 b)≦0.02を満たすことにより、Bi置換比率aとア クセプタ過剰量bとが2:1の近傍となって電荷 ランスが取れることから、焼結性が改善さ る。

 さらに、Niの偏析を生じさせることによ 、焼成雰囲気や焼成温度といった焼成条件 変動しても圧電磁器の特性の変動が起こり くくなり、量産の際に特性のばらつきが抑 され、生産性が向上する。

 また本発明の圧電磁器を圧電素子に用い ことにより、圧電磁器が高い圧電定数とと に大きな抗電界を有するから、交流電界下 の大きな歪み量を得ることができる。また 本発明の圧電磁器は低温での焼成が可能で るから、圧電磁器と同時に焼成される内部 極を有する圧電素子においては、内部電極 のPd含有比率を低減して原料コストの低減 可能となる。

本発明の圧電素子を示す断面図である

符号の説明

  1  圧電素体
  2  内部電極
  3  外部電極

 以下において、本発明を実施するための最 の形態について説明する。本発明に係る圧 磁器は、下記の一般式(A)で表わされる。
 Pb x-a-d Bi a M3 d {M1 b (M2 1/3 Nb 2/3 ) y Zr 1-b-y-z Ti z }O 3
......(A)
 一般式(A)において、M1およびM2は各々Niまた Znのうち少なくとも一種であり、M1とM2は同 元素であっても異なる元素であってもよい 好ましくは、M1がNiであり、M2がNiまたはZnの うち少なくとも一種である。
 また、M3は、BaおよびSrの少なくとも一種で る。

 aはAサイトのBi置換比率を表し、0.05≦a≦0 .15とされる。aが0.05未満であるとBi置換によ 効果が十分に現れず、抗電界と圧電d定数が 下する。一方、aが0.15を超えると焼結性が 化し、結果として圧電定数が低下する。

 bはBサイトのアクセプタ元素M1のモル比率 、すなわちBサイトのアクセプタ過剰量を表 、0<b≦0.075である。また、より好ましくは 0.015≦b≦0.075である。b=0ではアクセプタ過剰 が0であるから本発明の効果は発現しない。 bを0.015以上とすることにより、本発明の効果 がより顕著に発揮される。一方、bが0.075を超 えると抗電界は向上するものの、酸素欠陥に よるドメインのピン止め効果が強く現れるた めに圧電定数が低下し、|d|×Ecの値がかえっ 低下するおそれがある。

 aとbは0≦(a-2b)を満たすように調整される (a-2b)の値が0を下回って負の値となると、Bi 換比率に対するアクセプタ過剰量が大きく りすぎて酸素欠陥が生成されすぎ、絶縁性 低下するからである。

 また、dは、AサイトのM3(BaおよびSrの少な とも一種)置換比率を表し、0≦d≦0.1とされ 。これは、M3の置換量が0であってもしかる き特性を備えた圧電磁器を得ることができ 一方で、0.1までの範囲でM3置換を行うこと より圧電定数を増大させることが可能にな ことによる。ただし、M3の置換量が0.1を超え るとキュリー温度が低下するため、好ましく ない。

 xはAサイト成分のモル比率であり、0.97≦x ≦1.00とされている。xが0.97より小さいと、A イトとBサイトとの比率の化学量論組成から ずれが大きくなりすぎ、圧電定数が低下す 。一方、xが1.00を超えると粒界にAサイト元 であるPbやBiが析出して絶縁性が低下する。

 y、zは、Bサイトの各成分すなわち、(M2 1/3 Nb 2/3 )、Zr及びTiのモル比率を表しており、モルフ トロピック相境界の近傍の組成とすること より高い圧電定数を得ることができる。よ て、0.020≦y≦0.250、かつ、0.398≦z≦0.512とさ れている。

 また、本発明に係る圧電磁器においては 0≦(a-2b)≦0.02とすることにより、AサイトのB i置換比率とBサイトのアクセプタ過剰量とが 気的にバランスし、より大きな|d|×Ecの値を 得ることができる。

 さらにまた、本発明に係る圧電磁器にお ては、Niの偏析が生じていることが好まし 。Niの偏析を生じさせることにより、焼成雰 囲気や焼成温度といった焼成条件が変動して も圧電磁器の特性の変動が起こりにくくなり 、量産の際に特性のばらつきが抑制される。 特性のばらつきが抑制されることにより、焼 成後に特性値を測定して選別を行う必要がな くなり、生産性が大きく向上する。Niを偏析 せるためには、本発明の範囲内でAサイトの モル比率xを小さくしたり、焼成時の酸素分 を高めることが有効であるが、Niを偏析させ る手段はこれに限定されない。

 図1は本発明に係る圧電素子を示す断面図 である。圧電素子は、上記の圧電磁器からな る圧電素体1と、圧電素体1に内蔵された内部 極2(2a,2b)と、圧電素体1の表面に形成され、 部電極2と電気的に接続している外部電極3(3 a,3b)と、からなる。圧電素体1は図に矢印Pで す方向に分極処理されている。内部電極2はP dの比率が5重量%以下のAg/Pd合金またはAgから り、圧電磁器からなる圧電素体1と同時焼成 れたものである。外部電極3aに接続する内 電極2aと、外部電極3bに接続する内部電極2b が、厚み方向に交互に設けられている。

 この圧電素子は、外部電極3a,3b間に電圧 印加することにより、分極方向Pと略平行な 向に電界が発生し、圧電横効果により、図 Sで示した方向に歪みを生じる。

 次に、本発明の圧電磁器および圧電素子の 造方法について説明する。
 まず出発原料として、Pb 3 O 4 、Bi 2 O 3 、ZrO 2 、TiO 2 、NiO、ZnO、Nb 2 O 5 、SrCO 3 、およびBaCO 3 を準備し、これらの原料粉末を前記の一般式 (A)を満たすように秤量して混合する。この混 合原料を750℃~930℃で仮焼し、仮焼粉末を得 。仮焼粉末と溶剤とバインダーを混合して ラミックスラリーを作製し、このセラミッ スラリーを用いてドクターブレード法など 周知の方法によってセラミックグリーンシ トを作製する。セラミックグリーンシート 厚みは、10μm~100μm程度の間で適宜設定する とが可能である。

 次にセラミックグリーンシートを所望の イズにカットまたは打ち抜きし、金属粉末 バインダーを含有する電極ペーストを印刷 て内部電極パターンを形成する。電極ペー トに含まれる金属粉末はAgまたはAg/Pd合金を 用いることが好ましく、Ag/Pd合金を用いる場 には、原料コスト低減の観点から、Pdの含 比率を5重量%以下とすることが好ましい。

 内部電極パターンが形成されたセラミッ グリーンシートを数層から数十層程度積層 、プレスすることによってセラミック積層 を形成する。このセラミック積層体を脱脂 、さらに880℃~1050℃程度、好ましくは880℃~9 50℃程度で焼成することにより、内部電極を 蔵する圧電素子を得る。この圧電素子を所 の寸法になるように研磨し、スパッタ法や 極ペーストの焼付けなどの方法により外部 極を形成する。さらに外部電極間に1.0~5.0kV/ mmの直流電界を印加することによって分極処 を行い、圧電素子が完成する。

 本発明に係る圧電素子は、使用している 電磁器の|d|×Ecの値が大きいため、交流電界 が印加される用途で大きな変位量を得ること ができる。また、低温での焼成が可能である ことから、内部電極中のPdの含有率を減らす とが可能であり、原料コストを低減するこ ができる。

 なお、本発明の圧電磁器によれば、共焼 が可能な内部電極材料として、Ag/Pdなどの 料に限らず、さらに安価なAgを用いることも 可能であり、内部電極材料の面からも、原料 コストの低減を図ることができる。

 次に、本発明の具体的な実施例について説 する。
 まず出発原料として、Pb 3 O 4 、Bi 2 O 3 、ZrO 2 、TiO 2 、NiO、ZnOおよびNb 2 O 5 を準備し、これらの原料粉末を一般式(B)の範 囲で所定の組成を満たすように秤量して混合 した。
 Pb x-a Bi a {Ni b (Ni c/3 Zn (1-c)/3 Nb 2/3 ) y Zr 1-b-y-z Ti z }O 3 ......(B)
 この混合原料を800℃~850℃で仮焼し、仮焼粉 末を得た。仮焼粉末と溶剤としての水とバイ ンダーとを混合してセラミックスラリーを作 製し、このセラミックスラリーを用いてドク ターブレードによって厚さ約50μmのセラミッ グリーンシートを作製した。

 次にセラミックグリーンシートを打ち抜 し、Ag、あるいはAg/Pd合金からなる金属粉末 とバインダーを含有する電極ペーストを印刷 して内部電極パターンを形成した。Ag/Pd合金 のAgとPdの比率(重量比)はPdが5~20重量%(残部 Ag)の範囲内で所定の比率とした。

 内部電極パターンが形成されたセラミッ グリーンシートを9層積層し、プレスするこ とによってセラミック積層体を形成した。こ のセラミック積層体を脱脂し、所定温度の窒 素中で8時間焼成することにより、圧電焼結 を得た。この圧電焼結体を所定の寸法にな ように研磨し、蒸着法によってAgからなる外 部電極を表裏面に形成した。さらに外部電極 間に3.0kV/mmの直流電界を印加することによっ 分極処理を行った。分極後、圧電焼結体を 13.0mm×横3.0mm×厚さ0.6mmの寸法にカットし、 面に蒸着法で外部電極を形成し、圧電素子 完成した。

 各試料の組成、焼成温度、内部電極Ag/Pd比 (重量比)を表1に示す(なお、表1において、Ag/ Pd比を10/0と記載した実施例25,26では内部電極 してAgを使用している)。
 なお、表1において試料番号に*が付されて るものは本発明の範囲外の比較例である(表2 においても同じ)。

 得られた各試料につき、強誘電体テスター( ラジアント・テクノロジー社製RT600HVS)を使用 してバーチャルグランド方式により電界に対 する分極のヒステリシス曲線を測定した。そ して、このヒステリシス曲線から抗電界(Ec) 求めた。さらに接触式変位計を使用して各 料に500V/mmの電界を印加したときの圧電横効 の変位量を測定し、変位量と電界から圧電 数|d 31 |を算出した。さらに、圧電定数|d 31 |と抗電界Ecの積(|d 31 |×Ec)を求めた。測定結果を表2に示す。

 試料1はb=0となっていて本発明の範囲から外 れているため、抗電界Ecが1.20kV/mmと低く、そ 結果、|d 31 |×Ecの値が336×10 -6 と低くなった。試料2はaの値が0.170と本発明 上限値を超えているとともに、bの値も0.080 本発明の上限値を超えているため、抗電界 高くなっているものの、圧電定数|d 31 |が198pm/Vと大きく低下した結果、|d 31 |×Ecの値が337×10 -6 と低くなった。試料11はaの値が0.030と本発明 下限値を下回るとともに、zの値が0.389と本 明の範囲外となっているため、抗電界が1.10 kV/mmと低くなった結果、|d 31 |×Ecの値が341×10 -6 と低くなった。試料12はxの値が1.010と本発明 上限値を超えているために絶縁性が低下し 圧電磁器を分極することができなかった。 方、試料16はxの値が0.960と本発明の下限値 下回ったため、圧電定数|d 31 |の値が166pm/Vと大幅に低下した結果、|d 31 |×Ecの値が257×10 -6 と低くなった。試料17は(a-2b)の値が-0.012と本 明の下限値を下回ったために絶縁性が低下 、圧電磁器を分極することができなかった

 なお、Bサイトの(Ni c/3 Zn (1-c)/3 Nb 2/3 )のモル比率yが、本発明の上限値を超える試 24では、低温焼結が困難で|d 31 |の低下を招き、結果的に|d 31 |×Ecが低下した。

 これに対して、本発明の範囲内にある試料3 ~10,13~15,18~23、25~27では、大きな|d 31 |×Ecの値を得ることができた。試料22は本発 の範囲内ではあるが(a-2b)の値が0以上0.02以下 の範囲から外れているため、焼結性が低下し て圧電定数|d 31 |が255pm/Vと低下した結果、本発明の範囲内の の他の試料と比較して|d 31 |×Ecの値が低下した。

 また、本発明の範囲内にあり、且つ、0≦(a- 2b)≦0.02の要件を満たす試料3~10,13~15,18~21、25~2 7では、高い抗電界と高い圧電定数を両立す ことができ、395×10 -6 以上の大きな|d 31 |×Ecの値を得ることができた。なお、試料23 、yの値が本発明の範囲の上限の0.25であった ため、上述のように圧電定数と|d 31 |×Ecの値は良好であったが、抗電界がやや低 なっている。

 なお、試料1~21について圧電素子の断面を 鏡面研磨してWDXマッピングを行い、Ni偏析の 無を調べたところ、試料18と19でNi偏析が確 されたが、それ以外の試料ではNi偏析は確 されなかった。

 また、c=1の試料25およびc=0の試料26では、い ずれも高い|d 31 |×Ecが得られることが確認されているが、こ とき、内部電極としてAg電極が用いられて ることから、例えば、c=0~1の範囲においては 、共焼結可能な内部電極材料として、Ag/Pdな の材料以外にも、Agを用いることが可能で ることがわかる。なお、試料25および26の特 から、Ag電極を内部電極として用いた場合 も十分な特性が得られることがわかる。

 また、Bサイトの成分のモル比率yに注目し 試料1~27の特性を見た場合、yの値を0.020≦y≦ 0.250の範囲とすることにより、良好な特性が られていることがわかる。
 また、Bサイトの成分のモル比率zに注目し 試料1~27の特性を見た場合、zの値を0.398≦z≦ 0.512の範囲とすることにより、高い|d 31 |×Ecが得られていることがわかる。

 次に本発明の第2の実施例について説明する 。実施例1と共通する部分については説明を 略する。
 まず、実施例1と同様の方法で、前述の一般 式(B)の範囲で所定の組成比率となるように原 料粉末を秤量して混合および仮焼を行い、仮 焼粉末を作製した。さらにこの仮焼粉末を用 いて、実施例1と同様の方法で、圧電素子を 製した。その際、焼成温度は900℃とし、各 成について1気圧の空気中(酸素濃度20%)、窒 中(酸素濃度0.5%)および酸素中(酸素濃度100%) それぞれ焼成を行った試料を用意した。

 各試料について実施例1と同様の方法で圧電 定数|d 31 |を測定した。さらに、空気中で焼成を行っ 試料を基準として、窒素中または酸素中で 成を行った場合の圧電定数|d 31 |の変化率を求めた。また、圧電素子の断面 鏡面研磨し、Ni元素に対してWDXマッピングを 行うことによってNi偏析の有無を調べた。

 各試料の組成、焼成温度、内部電極のAg/Pd 率を表3に、測定結果を表4にそれぞれ示す。 表4において「圧電定数|d 31 |atAir」の欄は空気中で焼成したときの圧電定 数|d 31 |の値を示している。また、表3および4におい て試料番号に*を付した試料28は本発明の範囲 外の比較例である。

 表4に示すように、本発明の範囲外の試料28 、空気中で焼成したときの圧電定数|d 31 |が252pm/Vと小さいことが確認された。また、 成雰囲気を窒素雰囲気としたときの|d 31 |変化率が-13%、焼成雰囲気を酸素雰囲気とし ときの|d 31 |変化率が-11%と、焼成雰囲気が変化すること よって圧電定数|d 31 |が大きく低下することがわかった。
 また、本発明の範囲内の試料29の場合、空 中で焼成したときの圧電定数|d31|が313pm/Vと いことが確認された。ただし、Ni偏析が生じ ていない試料29の場合、焼成雰囲気を窒素雰 気としたときの|d 31 |変化率が-21%と、焼成雰囲気中の酸素分圧が 下することによって圧電定数|d 31 |が大きく低下することが確認された。

 これに対して本発明の範囲内で且つNi偏析 生じている試料30では、空気中で焼成したと きの圧電定数|d 31 |が310pm/Vと高いうえ、窒素雰囲気中で焼成し ときの|d 31 |変化率が3%、焼成雰囲気を酸素雰囲気とした ときの|d 31 |変化率が-1%と、焼成雰囲気を変化させても 電定数|d 31 |が変化しにくく、焼成条件のばらつきに対 ても安定した圧電定数|d 31 |を得ることができた。

 次に、本発明の第3の実施例について説明 する。実施例1と共通する部分については説 を省略する。

 まず出発原料として、Pb 3 O 4 、Bi 2 O 3 、ZrO 2 、TiO 2 、NiO、ZnO、Nb 2 O 5 、およびSrCO 3 を用意し、下記の一般式(C)の範囲で、表5に すような組成比率となるように原料粉末を 量して混合および仮焼を行い、仮焼粉末を た。
  (Pb x-a-d Bi a Sr d ){Ni b (Ni c/3 Zn (1-c)/3 Nb 2/3 ) y Zr 1-b-y-z Ti z }O 3  ......(C)
 なお、表5において試料番号に*を付した試 34は本発明の範囲外の比較例である。
 さらにこの仮焼粉末を用いて、実施例1と同 様の方法で、圧電素子(試料)を作製した。

 また、出発原料として、Pb 3 O 4 、Bi 2 O 3 、ZrO 2 、TiO 2 、NiO、ZnO、Nb 2 O 5 、およびBaCO 3 を用意し、(前記SrCO 3 に代えてBaCO 3 を用いている)、下記の一般式(D)の範囲で、 6に示すような組成比率となるように原料粉 を秤量して混合および仮焼を行い、仮焼粉 を得た。
  (Pb x-a-d Bi a Ba d ){Ni b (Ni c/3 Zn (1-c)/3 Nb 2/3 ) y Zr 1-b-y-z Ti z }O 3  ......(D)
 さらにこの仮焼粉末を用いて、実施例1と同 様の方法で、圧電素子(試料)を作製した。

 上記一般式(C)で表される表5の仮焼粉末を用 いて作製した各圧電素子(試料)について、実 例1と同様の方法で抗電界(Ec)と、圧電定数(| d 31 |)を調べた。また、圧電定数|d 31 |と抗電界Ecの積(|d 31 |×Ec)を求め、さらに、キュリー点Tcを求めた なお、キュリー点Tcは、インピーダンスア ライザで比誘電率εrの温度特性を測定し、 比誘電率εrの極大温度を算出して求めた。
 その結果を表7に示す。
 なお、表7において試料番号に*を付した試 34は本発明の範囲外の比較例である。

 また、上記一般式(D)で表される表6の仮焼粉 末を用いて作製した各圧電素子(試料)につい 、実施例1と同様の方法で抗電界(Ec)と、圧 定数(|d 31 |)を調べた。また、圧電定数|d 31 |と抗電界Ecの積(|d 31 |×Ec)を求め、さらに、キュリー点Tcを求めた なお、キュリー点Tcは、インピーダンスア ライザで比誘電率εrの温度特性を測定し、 比誘電率εrの極大温度を算出して求めた。 の結果を表8に示す。

 表7では、Sr置換量(d)を変えた試料番号31~36 各試料の特性変化を示している。
 Srの置換量を5mol%(d=0.05)とした試料32は、Srを 置換していない試料31と比較すると、|d 31 |×Ecが大きく変化していないにもかかわらず |d 31 |が約20%以上向上していることが確認された

 また、Sr置換量が0~10mol%(d=0~0.10)の範囲の試 31~33では、Sr置換量が増えるにつれて|d 31 |が向上するが、Sr置換量を11mol%(d=0.11)とした 料34ではキュリー温度が150℃よりも下がっ おり、実使用上あまり好ましくないことが かる。

 また、試料35(d=0.05)および試料36(d=0.10)も試 32、33と同様、Srを置換していない試料31と比 較して、|d 31 |が向上することが確認された。
 以上の結果より、高い|d 31 |を実現するためには、Sr置換量を0mol%~10mol%(d= 0~0.10)の範囲とすることが望ましいことがわ る。

 また、表8では、Ba置換量(d)を変えた試料37(d =0.05)および試料38(d=0.10)の特性を示している
 試料37および試料38のように、Aサイトの一 をBa置換した場合にも、Sr置換の場合と同様 、|d 31 |が約20%以上向上することがわかった。この 果より、Ba置換の場合にも、Sr置換の場合と 様の効果が得られることが確認された。

 上述のように、本発明によれば、高い圧電 数を維持しつつ、950℃程度の低温での焼成 可能であるとともに高い抗電界を有する圧 磁器を得ることができる。
 また本発明の圧電磁器を圧電素子に用いる とにより、交流電界下での大きな歪み量を ることが可能で、経済性に優れた圧電素子 提供することができる。
 したがって、本発明は、圧電磁器やそれを いた圧電素子の分野に広く適用することが きる。