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Title:
PIPE FOR HOT-WATER CIRCULATION AND PROCESS FOR PRODUCING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/051157
Kind Code:
A1
Abstract:
A pipe for hot-water circulation which is made of a modified ethylene/vinyl alcohol copolymer (C). It is characterized in that the modified ethylene/vinyl alcohol copolymer (C) is one obtained by modifying an unmodified ethylene/vinyl alcohol copolymer (A) with an epoxy compound (B) having a double bond, the amount of modification with the epoxy compound (B) having a double bond is 0.1 to 10 mol% based on the monomer units of the ethylene/vinyl alcohol copolymer (A), at least part of the modified ethylene/vinyl alcohol copolymer (C) has been crosslinked, and the copolymer (C) has a gel content of 3 mass% or higher. This pipe for hot-water circulation contains almost no harmful crosslinking agent, retains a high degree of gas-barrier properties, and is excellent in durability, flexing resistance, corrosion resistance, heat resistance, and freeze resistance. It is hence suitable for use in the circulation/supply/discharge of hot water.

Inventors:
YATAGAI EMI (JP)
KUROSAKI KAZUHIRO (JP)
IKEDA KAORU (JP)
WATANABE TOMOYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/068705
Publication Date:
April 23, 2009
Filing Date:
October 16, 2008
Export Citation:
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Assignee:
KURARAY CO (JP)
YATAGAI EMI (JP)
KUROSAKI KAZUHIRO (JP)
IKEDA KAORU (JP)
WATANABE TOMOYUKI (JP)
International Classes:
F16L9/12; C08F8/00; C08F299/00; C08J7/00; C08L23/26; C08L29/04; E04F15/18
Domestic Patent References:
WO2002092643A12002-11-21
WO2003072653A12003-09-04
Foreign References:
JPS638448A1988-01-14
JP2006272569A2006-10-12
JP2005054143A2005-03-03
JP2004292677A2004-10-21
JP2002088214A2002-03-27
JPH11292983A1999-10-26
JPH07331020A1995-12-19
Attorney, Agent or Firm:
NAKATSUKASA, Shigeki et al. (4-9-1 Ima,Okayama-sh, Okayama 75, JP)
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Claims:
 変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)からなる温水循環用パイプであって、変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)は、未変性のエチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)を、二重結合を有するエポキシ化合物(B)で変性して得られたものであり、二重結合を有するエポキシ化合物(B)による変性量がエチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)のモノマー単位に対して0.1~10モル%であり、変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)の少なくとも一部が架橋されていて、かつ、そのゲル分率が3質量%以上であることを特徴とする温水循環用パイプ。
 変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)及び未変性のエチレン-ビニルアルコール系共重合体(D)を含有する樹脂組成物からなる温水循環用パイプであって、変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)は、未変性のエチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)を、二重結合を有するエポキシ化合物(B)で変性して得られたものであり、二重結合を有するエポキシ化合物(B)による変性量がエチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)のモノマー単位に対して0.1~10モル%であり、該樹脂組成物の少なくとも一部が架橋されていて、かつ、そのゲル分率が3質量%以上であることを特徴とする温水循環用パイプ。
 未変性のエチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)のエチレン含有量が5~55モル%であり、かつ、ケン化度が90モル%以上である請求項1又は2に記載の温水循環用パイプ。
 二重結合を有するエポキシ化合物(B)が分子量500以下の一価エポキシ化合物である請求項1~3のいずれか記載の温水循環用パイプ。
 二重結合を有するエポキシ化合物(B)がアリルグリシジルエーテルである請求項4記載の温水循環用パイプ。
 変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)からなる層と、変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)以外の樹脂(F)からなる層を有する多層構造体である請求項1に記載の温水循環用パイプ。
 変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)からなる層を最外層に配置した多層構造体である請求項6に記載の温水循環用パイプ。
 変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)及び未変性のエチレン-ビニルアルコール系共重合体(D)を含有する樹脂組成物からなる層と、変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)以外の樹脂(F)からなる層を有する多層構造体である請求項2に記載の温水循環用パイプ。
 変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)及び未変性のエチレン-ビニルアルコール系共重合体(D)を含有する樹脂組成物からなる層を最外層に配置した多層構造体である請求項8に記載の温水循環用パイプ。
 変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)からなる温水循環用パイプの製造方法であって、未変性のエチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)を二重結合を有するエポキシ化合物(B)で変性して変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)を製造し、変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)を成形してパイプを得てから、変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)の少なくとも一部を架橋させて、かつ、そのゲル分率を3質量%以上にすることを特徴とする温水循環用パイプの製造方法。
 変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)及び未変性のエチレン-ビニルアルコール系共重合体(D)を含有する樹脂組成物からなる温水循環用パイプの製造方法であって、未変性のエチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)を、二重結合を有するエポキシ化合物(B)で変性して変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)を製造し、変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)と未変性のエチレン-ビニルアルコール系共重合体(D)とを混合して樹脂組成物を製造し、該樹脂組成物を成形してパイプを得てから、該樹脂組成物の少なくとも一部を架橋させて、かつ、そのゲル分率を3質量%以上にすることを特徴とする温水循環用パイプの製造方法。
 電子線、X線、γ線、紫外線及び可視光線からなる群から選択される少なくとも1種を照射するか、加熱することにより変性エチレン-ビニルアルコール系共重合体(C)の少なくとも一部を架橋させた請求項10又は11に記載の温水循環用パイプの製造方法。
Description:
温水循環用パイプ及びその製造 法

 本発明は、エチレン-ビニルアルコール系 共重合体(以下EVOHと略記することがある)から 成形される温水循環用パイプに関する。さら に詳しくは、エチレン-ビニルアルコール共 合体の特徴である酸素ガスなどのガスバリ 性に優れ、かつ、耐久性、耐屈曲性、耐腐 性、耐熱性及び耐寒性に優れる温水循環用 イプに関し、かかる温水循環用パイプは、 に温水の循環、供給、排出に用いるのに適 る。

 本発明の温水循環用パイプとは、温水循 法によるセントラルヒーティングや集中フ アヒーティング設備、道路凍結防止用消雪 イプ、住宅等の床暖房パイプ(FHP:Floor Heating  Pipe)などのパイプであり、好ましくは多層 造体であるパイプである。

 道路凍結防止や住宅の床暖房に使用され 温水循環用パイプとしては、従来、鉄、銅 合金などの金属パイプが主に用いられてい 。これらの金属パイプは、施工時に地盤中 あるいは床下に設置させることが多いため 一度設置されるとその後の補修が困難であ 。しかもこれらの設備には、例えば約30年~5 0年というような長期間にわたる耐久性が要 される。しかし、従来の金属パイプは溶接 どが必要なため施工性に劣り、長期間にわ る使用等の劣化が原因で溶接部に漏水など 生じ易く、また、鉄製パイプの場合は特に びなど、腐食しやすいという欠点がある。

 上記の点から、近年、金属パイプに代わ 、継ぎ目が少なく溶接部での漏れの心配の いプラスチックパイプが温水の循環用パイ として用いられるようになっており、例え 、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、ポ ブテンなどのポリオレフィン系材料からな パイプが使用されている。しかしながら、 ラスチックパイプを使用した場合には、金 パイプに比べて、パイプの溶接部などで漏 が少なくなるものの、プラスチックパイプ パイプ壁を通して、大気中の酸素ガスなど 気体がパイプ内に浸透し、これらの気体が イプ内に流れる温水に溶解し、この溶解ガ によって温水循環機器本体等の金属部分が 食する問題があった。

 そのため、プラスチックパイプにガスバ ア性を付与することで、大気中の酸素ガス どの気体がパイプ壁を通して浸透するのを 止することが広く一般的に行われている。 スバリア性を付与する手段としては、アル ニウムなどの金属材料やEVOH、ポリビニルア ルコール、ポリ塩化ビニリデン、及びポリア クリロニトリルなどのガスバリア樹脂材料の 中から、特に酸素バリア性の優れた材料を選 択し、これらの材料からなる層をプラスチッ クパイプの表面に設けることやパイプを構成 するプラスチックの中にこれらの材料を配合 することが挙げられている。

 しかしながら、アルミニウムの層をプラ チックパイプの外側に設けた場合は、曲げ 工を行うとピンホールや破断などが発生し 、ガスバリア性の低下が起こり易いという 題がある。また、ポリビニルアルコール、 リ塩化ビニリデン及びポリアクリロニトリ などのプラスチックは成形加工性が良好で ないため、プラスチックパイプの外側に設 ることが非常に困難という問題もある。

 また、EVOHはポリビニルアルコールやポリ 塩化ビニリデンなどに比べて成形加工性が優 れていることから、プラスチックパイプの最 外層に設けることが既に提案されているが( えば、特許文献1、特許文献2参照。)、それ より得られるパイプは弾性率の高いEVOHを最 層に有していることにより、曲げ加工しに く加工性に劣っている。そのため、場合に っては曲げ加工を行った箇所でキンク(折れ 、曲がり)が生じて温水が流れにくくなった 、歪みによるクラックの発生がおきたりす 。さらには、温水が循環した状態で外気温 の温度差が大きくなり、パイプの表面に結 が発生したりするケースでは、EVOHの最外層 膠着したりするという問題点がある。

 上記問題点を解決するために、本発明者 は、EVOHの改質を目的とした架橋技術に注目 した。EVOHに架橋を施すという技術は従来か 種々検討されている。例えば、特許文献3に エポキシ基及びアリル基を有する化合物をE VOHに配合後、光あるいは熱により架橋すると の記載があるが、特許文献3の実施例の熱水 断温度を見るとその効果は小さく、ほとん 架橋できていない。これはエポキシ基がほ んどEVOHと反応していないことが原因と考え れる。また、当該化合物を製造する際には エポキシ基及びアリル基を有する化合物を 量に配合する必要があるため、これが残存 るいは溶出する等問題となることが懸念さ る。

 特許文献4及び特許文献5にはEVOHは多官能 リル系化合物、多官能(メタ)アクリル系及 多価アルコール及び金属酸化物から選ばれ 少なくとも一種の架橋剤及び架橋助剤を添 し、電子線を照射し、架橋するという記載 あるが、これも添加剤が残存することによ 問題が懸念される。また、架橋剤が溶融混 の段階でEVOHと反応することによりゲル化し 樹脂製造時の工業的な長期運転には問題が った。

 特許文献6にはEVOHにアリルエーテル基を2 以上有する化合物を添加し、電子線を照射 、架橋するという記載があるが、これも添 剤が残存することによる問題があると考え れる。

 特許文献7には架橋剤としてトリアリルシ アヌレート及びトリアリルイソシアヌレート を使用し、これらをEVOHと溶融混練した後に 子線照射しEVOHを架橋する方法が記載されて るが、トリアリルシアヌレート及びトリア ルイソシアヌレートが残存し、溶出等の問 が懸念される。また、トリアリルシアヌレ ト及びトリアリルイソシアヌレートが溶融 練の段階でEVOHと反応することによりゲル化 し長期運転には問題があった。

 特許文献8には、EVOHフィルムを水と接触 せて含水状態にして電子線を照射すること より架橋する方法が記載されている。しか 、この方法の場合、フィルムを長時間水中 浸漬させる必要があり、高速生産が困難で るという問題があった。

 特許文献9には、EVOHに特定のエポキシ化 物を反応させて変性することにより、ガス リア性をなるべく保ちながら柔軟性を改善 ることが記載されている。しかし、変性に り融点が大きく低下する問題点を有し、こ ままでは耐熱性が要求される用途に使用す ことが困難であった。また、特許文献10には 、特許文献9に記載された変性EVOHと未変性のE VOHとからなる樹脂組成物が記載されている。

特開昭61-83035号公報

特開昭61-140691号公報

特開昭63-8448号公報

特開平5-271498号公報

特開平9-157421号公報

特開平9-234833号公報

特開昭62-252409号公報

特開昭56-49734号公報

WO02/092643号

WO03/072653号

 本発明は、このような従来技術の欠点を 決するためになされたものであり、その目 とするところは、有害な架橋剤をほとんど 有せず、従来のエチレン-ビニルアルコール 系共重合体の高度なガスバリア性を維持し、 耐久性、耐屈曲性、耐腐食性、耐熱性及び耐 寒性に優れ、温水の循環・供給・排出に適す る温水循環用パイプを提供することにある。 また、そのような温水循環用パイプを製造す るための好適な製造方法を提供することを目 的とするものである。

 上記目的は、変性エチレン-ビニルアルコ ール共重合体(C)(以下、変性EVOH(C)と称する)か らなる温水循環用パイプであって、変性EVOH(C )は未変性のエチレン-ビニルアルコール共重 体(A)(以下、未変性のEVOH(A)と称する)を、二 結合を有するエポキシ化合物(B)(以下、エポ キシ化合物(B)と称する)で変性して得られた のであり、エポキシ化合物(B)による変性量 未変性のEVOH(A)のモノマー単位に対して0.1~10 ル%であり、変性EVOH(C)の少なくとも一部が 橋されていて、かつ、そのゲル分率が3質量% 以上であることを特徴とする温水循環用パイ プを提供することによって解決される。

 なお、本明細書において「温水」とは、 そのものだけではなく、水にエチレングリ ールなどの添加剤を少量混合した媒体も包 する。そして、「温かい」とは必ずしも30 ~70℃程度の「温水」だけを指すのだけでは く、外気温よりも相対的に温度が高く、氷 融解させるだけの熱量を有するような「温 」も包含する。

 また、上記課題は、変性EVOH(C)及び未変性 のエチレン-ビニルアルコール系共重合体(D)( 下、未変性のEVOH(D)と称する)を含有する樹 組成物からなる温水循環用パイプであって 変性EVOH(C)は未変性のEVOH(A)をエポキシ化合物 (B)で変性して得られたものであり、エポキシ 化合物(B)による変性量が未変性のEVOH(A)のモ マー単位に対して0.1~10モル%であり、該樹脂 成物の少なくとも一部が架橋されていて、 つ、そのゲル分率が3質量%以上であること 特徴とする温水循環用パイプを提供するこ によって解決される。

 上記温水循環用パイプにおいて、未変性 EVOH(A)のエチレン含有量が5~55モル%であり、 つケン化度が90モル%以上であることが好ま い。エポキシ化合物(B)が分子量500以下の一 エポキシ化合物、特に、アリルグリシジル ーテルであることも好ましい。

 本発明の温水循環用パイプは、好適には 変性EVOH(C)からなる層と、変性EVOH(C)以外の 脂(F)(以下、単に樹脂(F)と称する)からなる層 を有する多層構造体からなる。また、好適に は、変性EVOH(C)及び未変性のEVOH(D)を含有する 脂組成物からなる層と、樹脂(F)からなる層 を有する多層構造体からなる。さらに好適 は、本発明の温水循環用パイプは、変性EVOH (C)からなる層、または変性EVOH(C)及び未変性 EVOH(D)を含有する樹脂組成物からなる層を最 層に配置した多層構造体からなる。これら 多層構造体において、樹脂(F)がポリオレフ ン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチ ン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、 リ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポ カーボネート、アクリル樹脂及びポリビニ エステルからなる群から選択された少なく も1種であることが好ましい。また、樹脂(F) がエラストマーであることも好ましい。

 上記課題は、変性EVOH(C)からなる温水循環 用パイプの製造方法であって、未変性のEVOH(A )をエポキシ化合物(B)で変性して変性EVOH(C)を 造し、該変性EVOH(C)を成形してパイプを得て から、変性EVOH(C)の少なくとも一部を架橋さ て、かつ、そのゲル分率を3質量%以上にする ことを特徴とする温水循環用パイプの製造方 法を提供することによっても解決される。

 また、上記課題は、変性EVOH(C)及び未変性 のEVOH(D)を含有する樹脂組成物からなる温水 環用パイプの製造方法であって、未変性のEV OH(A)を、エポキシ化合物(B)で変性して変性EVOH (C)を製造し、該変性EVOH(C)と未変性のEVOH(D)と 混合して樹脂組成物を製造し、該樹脂組成 を成形してパイプを得てから、該樹脂組成 の少なくとも一部を架橋させて、かつ、そ ゲル分率を3質量%以上にすることを特徴と る温水循環用パイプの製造方法を提供する とによっても解決される。

 本発明の温水循環用パイプを得るための 適な製造方法は、押出成形、射出成形、異 成形、押出ブロー成形、共押出ブロー成形 共射出成形、コーティングである。

 上記製造方法において、未変性のEVOH(A)の エチレン含有量が5~55モル%であり、かつケン 度が90モル%以上であることが好ましい。エ キシ化合物(B)が分子量500以下の一価のエポ シ化合物、特にアリルグリシジルエーテル あることも好ましい。

 上記製造方法において、電子線、X線、γ 、紫外線及び可視光線からなる群より選択 れる少なくとも1種を照射するか、加熱を行 うことにより、変性EVOH(C)を架橋させる。ま 、変性EVOH(C)に対して未変性のEVOH(D)を配合し た樹脂組成物を同様に成形、架橋することに よっても温水循環用パイプが提供される。

 すなわち、本発明の目的は、好適には以 のような方法によって達成される。まず、E VOHにエポキシ基および二重結合の両方を有す る化合物を反応させる。このとき、触媒存在 下で加熱して反応させた後、触媒を添加剤に より失活させ、過剰の二重結合を有するエポ キシ化合物を除去することが好ましい。こう して二重結合を有する変性EVOHが製造される 好ましくはこれを溶融成形あるいは溶融コ ティングにより成形した後、電子線、X線、 線、紫外線及び可視光線からなる群より選 される少なくとも1種を照射するか、加熱を うことにより当該変性EVOHを架橋させる。以 上のようにして、高度なガスバリア性を維持 し、耐久性、耐屈曲性、耐腐食性、耐熱性及 び耐寒性に優れた、変性EVOHからなる温水循 用パイプが提供される。また、二重結合を する変性EVOHに対して未変性のEVOHを配合した 樹脂組成物を、同様に成形、架橋することに よってもガスバリア性を保ち、耐久性、耐屈 曲性、耐腐食性、耐熱性及び耐寒性に優れた 温水循環用パイプが提供される。

 本発明により、有害な架橋剤をほとんど 有せず、従来のエチレン-ビニルアルコール 系共重合体の高度なガスバリア性を維持し、 耐久性、耐屈曲性、耐腐食性、耐熱性及び耐 寒性に優れた、温水の循環・供給・排出に適 する温水循環用パイプを提供することができ る。また、そのような温水循環用パイプを製 造するための好適な製造方法を提供すること ができる。

 本発明に用いる変性EVOH(C)は、未変性のEVO H(A)の水酸基に、エポキシ化合物(B)を反応さ たものである。

本発明に用いる未変性のEVOH(A)のエチレン 有量は5~55モル%であることが好ましく、より 好適には20~55モル%、更に好適には25~50モル%で ある。エチレン含有量が5モル%より小さい場 は耐水性に劣り、60モル%より大きい場合は スバリア性に劣る。得られる変性EVOH(C)のエ チレン含有量は、原料の未変性のEVOH(A)のエ レン含有量と同じである。

 未変性のEVOH(A)のケン化度は90モル%以上が 好ましく、好適には98モル%以上、更に好適に は99モル%以上である。ケン化度が90モル%より 小さい場合はガスバリア性及び熱安定性に劣 る。

 また、後述する通り、本発明の変性EVOH(C) は、好適には、未変性のEVOH(A)とエポキシ化 物(B)との反応を押出機内で行わせることに って得られるが、その際に、未変性のEVOH(A) 加熱条件下に晒される。この時に、該EVOH(A) が過剰にアルカリ金属塩及び/又はアルカリ 類金属塩を含有していると、得られる変性EV OH(C)に着色が生じるおそれがある。また、変 EVOH(C)の粘度低下等の問題が生じ、成形性が 低下するおそれがある。また、後述のように 触媒を使用する場合には、触媒を失活させる ため、それらの添加量はできるだけ少ないこ とが好ましい。

 上記の問題を回避するためには、未変性 EVOH(A)が含有するアルカリ金属塩が金属元素 換算値で50ppm以下であることが好ましい。よ 好ましい実施態様では、EVOH(A)が含有するア ルカリ金属塩が金属元素換算値で30ppm以下で り、更に好ましくは20ppm以下である。また 同様な観点から、未変性のEVOH(A)が含有する ルカリ土類金属塩が金属元素換算値で20ppm 下であることが好ましく、10ppm以下であるこ とがより好ましく、5ppm以下であることが更 好ましく、未変性のEVOH(A)にアルカリ土類金 塩が実質的に含まれていないことが最も好 しい。

 本発明に用いる未変性のEVOH(A)の好適なメ ルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は0.1 ~100g/10分であり、好適には0.3~30g/10分、更に好 適には0.5~20g/10分である。但し、融点が190℃ 近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、 融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラ フで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸 にプロットし、190℃に外挿した値で示す。MFR の異なる2種以上の未変性のEVOH(A)を混合して いることもできる。

 本発明に用いるエポキシ化合物(B)は、分 中にエポキシ基を1個及び二重結合1個又は 数個存在するものが好ましい。すなわち、 価エポキシ化合物であることが好ましい。 た、分子量は500以下であることが好ましい エポキシ基を複数個有するものは変性の際 架橋する問題がある。また、上記二重結合 種類としては特に好適には1置換オレフィン あるビニル基であり、次に好適には2置換オ レフィンであるビニレン基あるいはビニリデ ン基である。次に好適には3置換オレフィン ある。4置換オレフィンは反応性に乏しいた 、本発明の目的には適していない。

 また、エポキシ化合物(B)として、過剰に 加したものを容易に変性EVOH(C)から除去でき るものが好ましい。その除去方法としては、 押出機のベントから揮発させて除去すること が現実的である。したがって、沸点が250℃以 下であることが好適であり、200℃以下である ことがより好適である。また、エポキシ化合 物(B)の炭素数が4~10であることが好ましい。 のような二重結合を有するエポキシ化合物 具体例としては、1,2-エポキシ-3-ブテン、1,2- エポキシ-4-ペンテン、1,2-エポキシ-5-ヘキセ 、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、ア ルグリシジルエーテル、メタアリルグリシ ルエーテル、エチレングリコールアリルグ シジルエーテル等が挙げられ、特に好まし はアリルグリシジルエーテルが挙げられる また、押出機のベントから水洗除去するこ も可能であり、この場合、エポキシ化合物( B)が水に可溶であることも好ましい。

 エポキシ化合物(B)と未変性のEVOH(A)の反応 の条件は特に制限されないが、WO02/092643号(特 許文献9)に記載の方法と同様に、押出機中で 変性のEVOH(A)にエポキシ化合物(B)を反応させ ることが好ましい。このとき、触媒を添加す ることが好ましく、その場合、反応後に失活 剤としてカルボン酸塩を添加することが好ま しい。押出機内で、溶融状態の未変性のEVOH(A )に対してエポキシ化合物(B)を添加すること 、エポキシ化合物(B)の揮散を防止できると もに反応量を制御しやすく、好ましい。過 に添加したエポキシ化合物(B)は押出機のベ トから除去可能である。更に、得られたペ ットを温水で洗浄することにより、残存す エポキシ化合物(B)の除去が可能であると同 に、残存触媒も除去可能である。

 使用する触媒は、周期律表第3~12族に属す る金属のイオンを含むものであることが好ま しい。触媒に用いる金属イオンとして最も重 要なことは適度のルイス酸性を有することで あり、この点から周期律表第3~12族に属する 属のイオンが用いられる。これらの中でも 周期律表第3族又は第12族に属する金属のイ ンが適度なルイス酸性を有していて好適で り、亜鉛、イットリウム及びガドリニウム イオンがより好適なものとして挙げられる 中でも、亜鉛のイオンを含む触媒が、触媒 性が極めて高く、かつ得られる変性EVOH(C)の 安定性が優れていて、最適である。

 周期律表第3~12族に属する金属のイオンの 添加量は未変性のEVOH(A)の質量に対する金属 オンのモル数で0.1~20μmol/gであることが好適 ある。多すぎる場合には、溶融混練中に未 性のEVOH(A)がゲル化するおそれがあり、より 好適には10μmol/g以下である。一方、少なすぎ る場合には、触媒の添加効果が十分に奏され ないおそれがあり、より好適には0.5μmol/g以 である。なお、周期律表第3~12族に属する金 のイオンの好適な添加量は、使用する金属 種類や後述のアニオンの種類によっても変 するので、それらの点も考慮した上で、適 調整される。

 周期律表第3~12族に属する金属のイオンを 含む触媒のアニオン種は特に限定されないが 、その共役酸が硫酸と同等以上の強酸である 1価のアニオンを含むことが好ましい。共役 が強酸であるアニオンは、通常求核性が低 のでエポキシ化合物(B)と反応しにくく、求 反応によってアニオン種が消費されて、触 活性が失われることを防止できるからであ 。また、そのようなアニオンを対イオンに することで、触媒のルイス酸性が向上して 媒活性が向上するからである。

 共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価の アニオンとしては、メタンスルホン酸イオン 、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメ タンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸 イオン、トルエンスルホン酸イオン等のスル ホン酸イオン;塩素イオン、臭素イオン、ヨ 素イオン等のハロゲンイオン;過塩素酸イオ ;テトラフルオロボレートイオン(BF 4 - )、ヘキサフルオロホスフェートイオン(PF 6 - )、ヘキサフルオロアルシネートイオン(AsF 6 - )、ヘキサフルオロアンチモネートイオン等 4個以上のフッ素原子を持つアニオン;テトラ キス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオ 等のテトラフェニルボレート誘導体イオン; テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フ ニル)ボレート、ビス(ウンデカハイドライド -7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト(III) オン、ビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカ バウンデカボレート)鉄(III)イオン等のカル ラン誘導体イオンなどが例示される。これ の中でもスルホン酸イオンが好ましく、ト フルオロメタンスルホン酸イオンが特に好 しい。

 上述のように、使用する触媒はその共役 が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオ ンを含むものであることが好適であるが、触 媒中の全てのアニオン種が同一のアニオン種 である必要はない。むしろ、その共役酸が弱 酸であるアニオンを同時に含有するものであ ることが好ましい。

 共役酸が弱酸であるアニオンの例として 、アルキルアニオン、アリールアニオン、 ルコキシド、アリールオキシアニオン、カ ボキシレート並びにアセチルアセトナート びその誘導体が例示される。中でもアルコ シド、カルボキシレート並びにアセチルア トナート及びその誘導体が好適に使用され 。

 触媒中の金属イオンのモル数に対する、 役酸が硫酸と同等以上の強酸であるアニオ のモル数は、0.2~1.5倍であることが好ましい 。上記モル比が0.2倍未満である場合には触媒 活性が不十分となるおそれがあり、より好適 には0.3倍以上であり、更に好適には0.4倍以上 である。一方、上記モル比が1.5倍を超えると 変性EVOH(C)がゲル化するおそれがあり、より 適には1.2倍以下である。前記モル比は最適 は1倍である。なお、原料の未変性のEVOH(A)が 酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩を含む 場合には、それと中和されて消費される分だ け、共役酸が硫酸と同等以上の強酸であるア ニオンのモル数を増やしておくことができる 。

 触媒の調製方法は特に限定されないが、 適な方法として、周期律表第3~12族に属する 金属の化合物を溶媒に溶解又は分散させ、得 られた溶液又は懸濁液に、共役酸が硫酸と同 等以上のスルホン酸等の強酸を添加する方法 が挙げられる。原料として用いる周期律表第 3~12族に属する金属の化合物としては、アル ル金属、アリール金属、金属アルコキシド 金属アリールオキシド、金属カルボキシレ ト、金属アセチルアセトナート等が挙げら る。ここで、かかる金属化合物の溶液又は 濁液に、強酸を加える際には、少量ずつ添 することが好ましい。こうして得られた触 を含有する溶液は押出機に直接導入するこ ができる。

 前記した金属化合物を溶解又は分散させ 溶媒としては有機溶媒、特にエーテル系溶 が好ましい。押出機内の温度でも反応しに く、金属化合物の溶解性も良好だからであ 。エーテル系溶媒の例としては、ジメチル ーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロ ラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、 ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジ メチルエーテル、トリエチレングリコールジ メチルエーテル等が例示される。使用される 溶媒としては、金属化合物の溶解性に優れ、 沸点が比較的低くて押出機のベントでほぼ完 全に除去可能なものが好ましい。その点にお いてジエチレングリコールジメチルエーテル 、1,2-ジメトキシエタン及びテトラヒドロフ ンが特に好ましい。

 また、上述の触媒の調製方法において、 加する強酸の代わりに強酸のエステル、例 ばスルホン酸エステル等を用いても良い。 酸のエステルは、通常強酸そのものより反 性が低いために、常温では金属化合物と反 しないことがあるが、200℃前後に保った高 の押出機内に投入することにより、押出機 において活性を有する触媒を生成すること できる。

 触媒の調製方法としては、以下に説明す 別法も採用可能である。まず、水溶性の前 した金属化合物と、共役酸が硫酸と同等以 のスルホン酸等の強酸とを、水溶液中で混 して触媒水溶液を調製する。なおこのとき 当該水溶液が適量のアルコールを含んでい も構わない。得られた触媒水溶液を未変性 EVOH(A)と接触させた後、乾燥することによっ て触媒が配合された未変性のEVOH(A)を得るこ ができる。具体的には、未変性のEVOH(A)のペ ット、特に多孔質の含水ペレットを前記触 水溶液に浸漬する方法が好適なものとして げられる。この場合には、このようにして られた乾燥ペレットを押出機に導入するこ ができる。

 使用される触媒失活剤は、触媒のルイス としての働きを低下させるものであればよ 、その種類は特に限定されない。好適には ルカリ金属塩が使用される。その共役酸が 酸と同等以上の強酸である1価のアニオンを 含む触媒を失活させるには、当該アニオンの 共役酸よりも弱い酸のアニオンのアルカリ金 属塩を使用することが必要である。こうする ことによって、触媒を構成する周期律表第3~1 2族に属する金属のイオンの対イオンが弱い のアニオンに交換され、結果として触媒の イス酸性が低下するからである。触媒失活 に使用されるアルカリ金属塩のカチオン種 特に限定されず、ナトリウム塩、カリウム 及びリチウム塩が好適なものとして例示さ る。またアニオン種も特に限定されず、カ ボン酸塩、リン酸塩及びホスホン酸塩が好 なものとして例示される。

 触媒失活剤として、例えば酢酸ナトリウ やリン酸一水素二カリウムのような塩を使 しても熱安定性はかなり改善されるが、用 によっては未だ不十分である場合がある。 の原因は、周期律表第3~12族に属する金属の イオンにルイス酸としての働きがある程度残 存しているため、変性EVOH(C)の分解及びゲル に対して触媒として働くためであると考え れる。この点を更に改善する方法として、 期律表第3~12族に属する金属のイオンに強く 位するキレート化剤を添加することが好ま い。このようなキレート化剤は当該金属の オンに強く配位できる結果、そのルイス酸 をほぼ完全に失わせることができ、熱安定 に優れた変性EVOH(C)を与えることができる。 また、当該キレート化剤がアルカリ金属塩で あることによって、前述のように触媒に含ま れるアニオンの共役酸である強酸を中和する こともできる。

 触媒失活剤として使用されるキレート化 として、好適なものとしては、オキシカル ン酸塩、アミノカルボン酸塩、アミノホス ン酸塩などが挙げられる。具体的には、オ シカルボン酸塩としては、クエン酸二ナト ウム、酒石酸二ナトリウム、リンゴ酸二ナ リウム等が例示される。アミノカルボン酸 としては、ニトリロ三酢酸三ナトリウム、 チレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチ ンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレン アミン四酢酸三カリウム、ジエチレントリ ミン五酢酸三ナトリウム、1,2-シクロヘキサ ンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジ アミン二酢酸一ナトリウム、N-(ヒドロキシエ チル)イミノ二酢酸一ナトリウム等が例示さ る。アミノホスホン酸塩としては、ニトリ トリスメチレンホスホン酸六ナトリウム、 チレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸) 八ナトリウム等が例示される。中でもポリア ミノポリカルボン酸が好適であり、性能やコ ストの面からエチレンジアミン四酢酸のアル カリ金属塩が最適である。

 触媒失活剤の添加量は特に限定されず、 媒に含まれる金属イオンの種類や、キレー 剤の配位座の数等により適宜調整されるが 触媒に含まれる金属イオンのモル数に対す 触媒失活剤のモル数の比が0.2~10となるよう することが好適である。比が0.2未満の場合 は、触媒が十分に失活されないおそれがあ 、より好適には0.5以上、更に好適には1以上 である。一方、比が10を超える場合には、得 れる変性EVOHが着色するおそれがあるととも に、製造コストが上昇するおそれがあり、よ り好適には5以下であり、更に好適には3以下 ある。

 触媒失活剤を押出機へ導入する方法は特 限定されないが、均一に分散させるために 、溶融状態の変性EVOH(C)に対して、触媒失活 剤の溶液として導入することが好ましい。触 媒失活剤の溶解性や、周辺環境への影響など を考慮すれば、水溶液として添加することが 好ましい。

 触媒失活剤の押出機への添加位置は、未 性のEVOH(A)とエポキシ化合物(B)とを、触媒の 存在下に溶融混練した後であればよい。しか しながら、未変性のEVOH(A)とエポキシ化合物(B )とを、触媒の存在下に溶融混練し、未反応 エポキシ化合物(B)を除去した後に触媒失活 を添加することが好ましい。前述のように 触媒失活剤を水溶液として添加する場合に 、未反応のエポキシ化合物(B)を除去する前 触媒失活剤を添加したのでは、ベント等で 去して回収使用するエポキシ化合物(B)の中 水が混入することになり、分離操作に手間 かかるからである。なお、触媒失活剤の水 液を添加した後で、ベント等によって水分 除去することも好ましい。

 変性EVOH(C)の製造方法において、触媒失活 剤を使用する場合の好適な製造プロセスとし ては、(1)未変性のEVOH(A)の溶融工程;(2)エポキ 化合物(B)と触媒の混合物の添加工程;(3)未反 応のエポキシ化合物(B)の除去工程;(4)触媒失 剤水溶液の添加工程;(5)水分の減圧除去工程; の各工程からなるものが例示される。

 反応を円滑に行う観点からは、系内から 分及び酸素を除去することが好適である。 のため、押出機内へエポキシ化合物(B)を添 するより前に、ベント等を用いて水分及び 素を除去しても良い。

 エポキシ化合物(B)による変性EVOH(C)の変性 量としては、未変性のEVOH(A)のモノマー単位 対して0.1~10モル%の範囲であり、より好適に 0.3~5モル%の範囲であり、更に好適には0.5~3 ル%の範囲である。変性量が0.1モル%以下の場 合、変性の効果が小さく、また、10モル%を超 える場合、ガスバリア性及び熱安定性が低下 するという欠点がある。

 変性EVOH(C)の好適なメルトフローレート(MF R)(190℃、2160g荷重下)は0.1~100g/10分であり、好 には0.3~30g/10分、更に好適には0.5~20g/10分で る。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温 度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数 を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃ に外挿した値で示す。

 こうして得られた変性EVOH(C)を成形して本 発明の温水循環用パイプが製造される。この とき、変性EVOH(C)以外の樹脂や各種添加物を 合しても構わない。なかでも、変性EVOH(C)に 変性のEVOH(D)を配合した樹脂組成物を成形し て本発明の温水循環用パイプを製造すること が、特に好適な実施態様である。一般に変性 EVOH(C)の製造コストは、未変性のEVOH(D)よりも いので、二重結合濃度の高い変性EVOH(C)と未 変性のEVOH(D)とを混合して所望の二重結合濃 を有する樹脂組成物を製造することが経済 である。前述のような方法によって押出機 で反応させることによって、変性量の大き 変性EVOH(C)を容易に製造できるから、このよ な樹脂組成物が容易に得られる。また、樹 組成物の二重結合濃度を、用途に応じて調 することも容易である。未変性のEVOH(D)とし ては、既に説明した未変性のEVOH(A)と同様の のを使用することができる。

 変性EVOH(C)と未変性のEVOH(D)を含有する樹 組成物における配合質量比(C/D)は特に限定さ れない。該樹脂組成物の二重結合濃度を所望 の範囲にして耐熱水性に優れた温水循環用パ イプを得るためには、比(C/D)の下限値は2/98で あることが好ましく、5/95であることがより ましく、15/85以上であることが更に好ましく 、20/80以上であることが特に好ましい。一方 製造コスト及びバリア性の面からは、比(C/D )の上限値は60/40であることが好ましく、40/60 あることがより好ましい。

 変性EVOH(C)と未変性のEVOH(D)を配合する方 は特に限定されない。溶融混練して配合し も構わないし、溶液中で配合しても構わな 。生産性の観点からは溶融混練することが ましく、例えば変性EVOH(C)と未変性のEVOH(D)の ペレットを用いて溶融混練することが好適な 態様である。

 変性EVOH(C)と未変性のEVOH(D)を含有する樹 組成物における、エポキシ化合物(B)による 性量は、未変性のEVOH(A)のモノマー単位と未 性のEVOH(D)のモノマー単位の合計量に対して 、好適には0.1~10モル%の範囲であり、より好 には0.3~5モル%の範囲であり、更に好適には0. 5~3モル%の範囲である。

 変性EVOH(C)、あるいは変性EVOH(C)と未変性 EVOH(D)を含有する樹脂組成物には必要に応じ 各種添加剤を配合することもできる。この うな添加剤の例としては、増感剤、硬化剤 硬化促進剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線 収剤、帯電防止剤、着色剤、充填材、ある は他の高分子化合物を挙げることができ、 れらを本発明の作用効果が阻害されない範 で配合することができる。添加剤の具体例 しては次のようなものが挙げられる。

 増感剤:ベンゾイン、ベンゾインメチルエ ーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾ インプロピルエーテル、ベンジルジフェニル ジスルフィド、テトラメチルチウラムモノサ ルファイド、アゾビスブチロニトリル、ジベ ンジル、ジアセチル、アセトフェノン、2,2- エトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン 2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサ トン等。

 硬化剤:メチルエチルケトンパーオキサイ ド、シクロヘキサンパーオキサイド、クメン パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド 、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーベ ゾエート等。

 硬化促進剤:2-エチルヘキサン酸コバルト ナフテン酸コバルト、2-エチルヘキサン酸 ンガン、ナフテン酸マンガン等の金属石鹸 、メチルアニリン、ジメチルアニリン、ジ チルアニリン、メチル-p-トルイジン、ジメ ル-p-トルイジン、メチル-2-ヒドロキシエチ アニリン、ジ-2-ヒドロキシエチル-p-トルイ ンなどのアミン又はその塩酸、酢酸、硫酸 リン酸などの塩。

 酸化防止剤:2,5-ジブチル-t-ブチルハイド キノン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、4,4’- チオビス-(6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチ ン-ビス-(4-メチル-6-ブチルフェノール)、オ タデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロ シフェニル)プロピロネート、4,4’-チオビス -(6-t-ブチルフェノール)等。

 可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエ チル、フタル酸ジブチル、ワックス、流動パ ラフィン、リン酸エステル等。

 紫外線吸収剤:エチレン-2-シアノ-3,3’-ジ ェニルアクリレート、2-(2’-ヒドロキシ-5’ -メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’ -ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル )5-クロロトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メト シベンゾフェノン、(2,2’-ジヒドロキシ-4- トキシベンゾフェノン等。

 帯電防止剤:ペンタエリスリトールモノス テアレート、ソルビタンモノパルミテート、 硫酸化オレイン酸、ポリエチレンオキシド、 カーボワックス等。

 着色剤:カーボンブラック、フタロシアニ ン、キナクリドン、アゾ系顔料、酸化チタン 、ベンガラ等。

 充填剤:グラスファイバー、マイカ、セラ イト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウ ム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、モンモリ ロナイト等。

 他の高分子化合物:エチレン-ブテン共重 体、エチレン-プロピレン共重合体等のポリ レフィン;カルボキシル基などの官能基で変 性された変性ポリオレフィン;ポリアミド、 リエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニ デン、ポリ塩化ビニル等。

 上記の目的に応じて必要により添加剤を 加した変性EVOH(C)を含有する樹脂組成物を溶 融成形により本発明の温水循環用パイプに成 形する。このような場合の条件について次に 述べる。

 変性EVOH(C)、あるいは変性EVOH(C)と未変性 EVOH(D)を含有する樹脂組成物を成形し、次い 変性EVOH(C)を架橋させることで、本発明の温 水循環用パイプが得られる。溶融成形する場 合、変性EVOH(C)に添加剤を添加せずそのまま 用してもよいし、変性EVOH(C)と未変性のEVOH(D) や各種添加剤とを押出機に供給して、溶融混 練してそのまま成形してもよい。また溶融混 練して一旦ペレット化してから、成形しても よく、適宜好適な手段が採用される。

 溶融成形における成形温度は、変性EVOH(C) の融点等により異なるが、溶融樹脂温度を約 120℃~250℃とすることが望ましい。

 溶融成形法としては射出成形法、圧縮成 法、押出成形法など任意の成形法が採用で る。このうち押出成形法としては、中空成 法、パイプ押出法、線状押出法、異型ダイ 形法などが挙げられる。

 本発明の温水循環用パイプの好適な実施 様は、多層構造体である。具体的には、変 EVOH(C)からなる層と、変性EVOH(C)以外の樹脂(F )からなる層とを有する多層構造体からなる 水循環用パイプ、または変性EVOH(C)及び未変 のEVOH(D)を含有する樹脂組成物からなる層と 変性EVOH(C)以外の樹脂(F)からなる層とを有す 多層構造体からなる温水循環用パイプであ 。

 このような多層構造体からなる温水循環 パイプの製造方法としては溶融成形が好ま く、例えば共押出成形、共射出成形などが 用される。

 樹脂(F)としては、熱可塑性樹脂であるこ が好適である。例えばポリオレフィン、ポ アミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポ ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化 ニル、ポリアクリロニトリル、ポリカーボ ート、アクリル樹脂及びポリビニルエステ からなる群から選択される少なくとも1種が 例示される。ポリオレフィンとしては、低密 度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密 度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重 体、エチレン-α-オレフィン(炭素数3~20のα- レフィン)共重合体、アイオノマー、ポリプ ピレン、プロピレン(炭素数4~20のα-オレフ ン)共重合体、ポリブテン、ポリメチルペン ンなどのオレフィンの単独もしくは共重合 、又はこれらオレフィンの単独又は共重合 を不飽和カルボン酸又はその無水物あるい エステルでグラフト変性したものなどが例 される。樹脂(F)がエラストマーであること 好ましい。

 多層構造体の層構成は本発明の変性EVOH(C) 層、あるいは変性EVOH(C)と未変性のEVOH(D)を含 する樹脂組成物からなる層をC(C1,C2,・・・) 樹脂(F)層をF(F1,F2,・・・)、必要に応じて設 られる接着剤層をAdとするとき、C/Fの2層構 のみならず、C/F/C、F/C/F、F1/F2/C、F/C/F/C/F、C2 /C1/F/C1/C2、C/Ad/F、C/Ad/F/C、F/Ad/C/Ad/F、F/Ad/C/Ad/C/ Ad/Fなど、任意の構成が可能である。また、 樹脂の密着性を向上させる樹脂を配合した することもある。これらの中でも、温水と 気温との差が大きく、パイプの表面に結露 発生しやすい条件下で用いる場合では、C(C1, C2,・・・)が最外層となる層構成が、パイプ 膠着を防止する観点から特に有用である。

 変性EVOH(C)、あるいは変性EVOH(C)と未変性 EVOH(D)を含有する樹脂組成物を成形品である イプの表面に溶液コーティングして本発明 温水循環用パイプを得る場合、該樹脂組成 をEVOHを溶解する公知の溶媒に溶解又は分散 して用いる。かかる溶媒としては、メタノー ル、エタノール、n-プロパノール、イソプロ ノール、n-ブタノール、2-ブタノール、2-メ ル-2-プロパノール、ベンジルアルコール等 アルコール、及びこれらと水の混合物、ジ チルスルホキシド、ジメチルホルムアミド ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリド 等の溶媒が挙げられる。特に、前記のアル ールと水の混合溶媒が好ましい。

 本発明において変性EVOH(C)又はそれを含む 樹脂組成物が塗布されるパイプの基材として は特に制限はなく、ポリエチレン、ポリプロ ピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の 各種プラスチックが挙げられる。

 変性EVOH(C)又はそれを含む樹脂組成物の溶 液を基材に塗布した後、乾燥を行う。乾燥温 度は30~150℃、好ましくは50~120℃程度の温度で 3秒~5分程度加熱すれば良い。後述の架橋反応 を電子線、X線、γ線、紫外線及び可視光線か らなる群より選択される少なくとも1種を照 することによって行う場合、乾燥条件は低 度又は短時間で行うことが望ましい。

 本発明の温水循環用パイプは、変性EVOH(C) の少なくとも一部が架橋されていて、そのゲ ル分率が3質量%以上となっているものである かかる温水循環用パイプは、前述のように て得られたパイプ中の変性EVOH(C)の少なくと も一部を架橋させることにより製造すること ができる。上記した架橋前のパイプは、空気 中長時間放置することにより架橋させること が可能であるが、通常、架橋前のパイプに、 電子線、X線、γ線、紫外線及び可視光線から なる群より選択される少なくとも1種を照射 るか、加熱を行うことにより、架橋を行う とが望ましい。

 電子線、X線又はγ線を用いる場合、吸収 量が1kGy以上であることが好ましい。より好 適には1kGy~1MGyであり、更に好適には5kGy~500kGy あり、特に好適には10kGy~200kGyである。吸収 量が1MGyより大きい場合EVOHの分解が生じる とに伴い、強度の大幅低下、着色等の問題 生じるため好ましくない。また吸収線量が1k Gyより小さい場合ゲル分率が向上せず、耐熱 性等の目的の性能が得られない。

 このようにして得られた温水循環用パイ の、水-フェノール混合溶媒の不溶解率、す なわちゲル分率が3質量%以上であることが重 である。この不溶解率が3質量%未満の場合 本発明の目的である耐熱水性及び耐熱性等 効果が小さくなる。不溶解率は、好適には5 量%、更に好適には10質量%、特に好適には20 量%以上である。ここで、水-フェノール混 溶媒の不溶解率とは水(15質量%)-フェノール(8 5質量%)の混合溶剤100質量部に成形品としての 温水循環用パイプを1質量部入れ、60℃、12時 加熱溶解した後、濾過し、濾液を蒸発乾固 て算出される。なおここで濾過は溶解した 架橋のEVOHが実質的に100%透過する濾過器材( 紙、濾布、メンブレン)が使用される。なお 、本発明の温水循環用パイプ中にフィラーが 含まれる場合、ゲル分率は上記溶媒の不溶分 を500℃、1時間加熱した後に残る残渣の質量 減じて算出する。温水循環用パイプが多層 造体である場合、変性EVOH(C)層、あるいは変 EVOH(C)と未変性のEVOH(D)を含有する樹脂組成 層のゲル分率が、上記範囲となる。

 本発明の温水循環用パイプは、有害な架 剤をほとんど含有せず、従来のエチレン-ビ ニルアルコール系共重合体の高度なガスバリ ア性を維持し、耐久性、耐屈曲性、耐腐食性 、耐熱性及び耐寒性に優れ、温水の循環・供 給・排出に適する。例えば、温水循環法によ るセントラルヒーティングや集中フロアヒー ティング設備に用いられる道路凍結防止用消 雪パイプ、住宅等の床暖房パイプ(FHP:Floor Hea ting Pipe)などに好適に用いられる。

 以下、実施例にて本発明を更に詳しく説 するが、これらの実施例によって本発明は ら限定されるものではない。なお、評価は 下の方法によって行った。

〔1〕EVOHのエチレン含有量及び変性EVOHの変性 度
 測定に用いる試料を粉砕し、アセトンによ 低分子量成分を抽出した後、120℃、12時間 乾燥させる。上記試料をDMSO-d 6 を溶媒として、 1 H-NMR測定(日本電子社製「JNM-GX-500型」を使用) 行い、得られたスペクトルの内、二重結合 有するエポキシ化合物が反応した変性EVOHの 二重結合のメチン位のピーク(5.9ppm)又は二重 合のメチレン位のピーク(5.2ppm)とEVOHのモノ ー単位に相当するエチレン部分のピーク(1.4 ppm)との面積比より算出した。

〔2〕EVOH及び変性EVOHのメルトフローレート(MF R)
 メルトインデクサL260(テクノ・セブン社製) 用い、荷重2.16kg、温度190℃で樹脂の流出速 (g/10分)を測定した。

〔3〕耐屈曲性(ISO 178)
 測定装置として東洋精機社製オートグラフ 用い、各実施例及び比較例で得た4mm×10mm×80 mm(厚さ×幅×長さ)の試験片を用いて、23℃、50 %RHにおいて、試験速度:2mm/min、支点間距離:64m mの条件で曲げ弾性率(MPa)、曲げ強さ(MPa)、お び最大曲げひずみ(%)を測定した。

〔4〕耐衝撃性評価(ISO 180)
 測定装置として東洋精機社製Izod衝撃試験機 を用い、各実施例及び比較例で得た4mm×10mm×8 0mm(厚さ×幅×長さ)の試験片を用いて、重り:1J の条件で、23℃および-40℃におけるIzod衝撃強 度(kJ/m)を測定し、その値を耐寒性の指標とし た。

〔5〕引張強度(耐熱性評価)
 測定装置として東洋精機社製オートグラフ 用い、各実施例及び比較例で得た厚さ100μm フィルムより15mm×150mm(幅×長さ)の試験片を り出し、23℃・50%RH、100℃で72時間送風乾燥 で加熱後に23℃・50%RHで7日間調湿、125℃で72 時間送風乾燥機で加熱後に23℃・50%RHで7日間 湿、のそれぞれの条件で、引張速度:250mm/min 、支点間距離:50mmの測定条件にて最大引張強 (MPa)を測定した。測定結果を各実施例及び 較例における耐熱性の指標とした。

合成例1
 亜鉛アセチルアセトナート一水和物28質量 を1,2-ジメトキシエタン957質量部と混合し、 合液を得た。得られた前記混合液に攪拌し がらトリフルオロメタンスルホン酸15質量 を添加し、触媒溶液を得た。

 東芝機械社製TEM-35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5) 使用し、スクリュー、3つのベント及び3つ 圧入口を設置した。樹脂フィード口を水冷 、スクリュー回転部分の温度を200℃に設定 、スクリュー回転数300rpmで運転した。樹脂 ィード口からEVOH(エチレン含有量32モル%、MFR 6.0g/10分、カリウム含有量8ppm、リン酸根含有 20ppm、ケン化度99モル%以上)を20.0kg/hrで入れ 第1圧入口からアリルグリシジルエーテルを 2.93kg/hr、上記触媒溶液を0.5kg/hrの割合で添加 た。第2圧入口から酢酸ナトリウム0.82%水溶 を0.6kg/hrの割合で添加した。第1ベントから 圧で過剰のアリルグリシジルエーテルを除 し、第3圧入口から水を1kg/hrの割合で添加し 、第2及び第3のベントから減圧で水及びアリ グリシジルエーテルを除去した。これによ アリルグリシジルエーテル変性量1.7モル%、 MFR2.0g/10分、融点166℃の変性EVOH(EVOH-1)を得た

合成例2
 合成例1で得られた変性EVOH(EVOH-1)と未変性の EVOH(エチレン含有量32モル%、MFR3.8g/10分、ケン 化度99モル%以上)を質量比で30/70の割合でドラ イブレンドし、25mmφ二軸押出機((株)東洋精機 製LABO PLASTOMIL MODEL 15C300)を用い、220℃でス リュー回転数100rpm、押出樹脂量4.5kg/時間の 件で押出してペレット化した。次いで、80℃ で12時間乾燥を行い、変性EVOH(EVOH-2)を得た(ブ レンド後のアリルグリシジルエーテル変性量 は計算上0.5モル%となる)。

合成例3
 合成例1で得られた変性EVOH(EVOH-1)と未変性の EVOH(エチレン含有量44モル%、MFR13.0g/10分、ケ 化度99モル%以上)を質量比で30/70の割合でド イブレンドし、25mmφ二軸押出機((株)東洋精 製LABO PLASTOMIL MODEL 15C300)を用い、220℃でス リュー回転数100rpm、押出樹脂量4.5kg/時間の 件で押出してペレット化した。次いで、80 で12時間乾燥を行い、変性EVOH(EVOH-3)を得た( レンド後のアリルグリシジルエーテル変性 は計算上0.5モル%となる)。

実施例1
(1)合成例2で得られた変性EVOH(EVOH-2)を使用し 射出成形機(東洋精機製)に導入し、シリンダ ー温度200/210/210/200℃、金型温度40℃で10mm×4mm 80mmの試験片を得た。得られた試験片に30kGy( 速電圧2000kV)の電子線を照射し、架橋させた 。このとき、水とフェノールの質量比(水/フ ノール)が15/85である混合溶媒を用いて、60 、12時間加熱溶解試験を行った際の該試験片 の不溶解分の含量、即ち、ゲル分率は35.2%で った。該試験片にノギスでノッチ(ISO2818に づく)を入れ、曲げ弾性率、曲げ強さ、及び 大曲げひずみを測定し23℃、50%RHにおける耐 屈曲性を評価した。測定の結果、曲げ弾性率 は3270MPa、曲げ強さは95MPaであり、従来のEVOH り耐屈曲性が向上していることを確認した

(2)上記(1)と同様にして、電子線を照射し架橋 させた10mm×4mm×80mmの試験片を得た。該試験片 にノギスでノッチ(ISO2818に基づく)を入れ、23 及び-40℃でのIzod衝撃強度の測定を実施し、 耐衝撃性、耐寒性を評価した。測定の結果、 Izod衝撃強度は23℃で6.0kJ/m 2 、-40℃で4.6kJ/m 2 であり、従来のEVOHより各温度における耐衝 性が向上していることを確認した。

(3)合成例2で得られた変性EVOH(EVOH-2)を使用 、ラボプラストミル(東洋精機製)に導入し、 温度C1/C2/C3/Die=175/200/200/210℃、冷却温度80℃と し、厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフ ィルムに30kGy(加速電圧200kV)の電子線を照射し 、架橋させた。次に、該架橋フィルムを幅15m m×長さ150mmの短冊状にカットして試験片を得 上記〔5〕に従ってそれぞれの試験片の最大 引張強度を測定した。最大引張強度は23℃で6 5MPa、100℃で79MPa、125℃で67MPaであり、加熱後 強度の低下は見られず、耐熱性があること わかった。

(4)合成例2で得られた変性EVOH(EVOH-2)を使用し 20φ一軸押出機を用いて220℃にてコートハン ーより溶融押出を行い、厚さ20μmのフィル を得た。このフィルムに30kGy(加速電圧150kV) 電子線を照射してEVOHフィルムを架橋させた 該架橋フィルムの20℃、65%RH下での酸素透過 量(OTR)を測定した結果、0.4cc・20μm/m 2 ・day・atmであった。

(5)合成例2で得られた変性EVOH(EVOH-2)および高 度ポリエチレン「ノバテックHE421」(商品名 株式会社三菱化学製、以下HDPEと称する)およ び接着性樹脂「アドテックスDH422」(商品名、 日本ポリオレフィン株式会社製、以下Adと称 る)を原料とし、それぞれ別の押出機に導入 し、3種3層の円形ダイを用いて、最外層から にEVOH-2/Ad/HDPE(50/30/500μm)の構成からなる層パ イプを共押出成形により製造した。共押出成 形機の構成及び運転条件は下記のとおりであ る。
 押出機1[HDPE]:株式会社プラスチック工学研 所製単軸押出機「GT-32-A型」、スクリュー径: 32mmφ、スクリュー回転数:85rpm、シリンダー設 定温度210℃
 押出機2[変性EVOH]:株式会社東洋精機製作所 単軸押出機「ラボME型CO-NXT」、スクリュー径 :20mmφ、スクリュー回転数:75rpm、シリンダー 定温度:210℃
 押出機3[Ad]:大阪精機工作株式会社製単軸押 機「P25-18AC」、スクリュー径:25mmφ、スクリ ー構成:フルフライト、L/D:18、スクリュー回 転数:0.2rpm、シリンダー設定温度:210℃、ダイ サイズ:外形15mm、冷却温度:105℃

 得られた多層パイプに30kGy(加速電圧200kV)の 子線を照射し、架橋させた。得られた多層 イプの酸素バリア性を、パイプの酸素透過 (OTR)測定の基準であるDIN4726に従って、溶存 素増加速度で評価した。溶存酸素増加速度 小さい方が酸素バリア性は良好である。具 的には、得られた多層パイプに、金属スズ 充填した充填塔を用いて、溶存酸素を除去 た水を循環し、温度70℃で水中の溶存酸素 増加速度を20℃、65%RHの条件下にて測定した その結果、溶存酸素増加速度は0.5mg/l・dayで あった。ここで、増加速度mg/l・dayとは、パ プ中の水1リットル当たりmg/dayの速度で溶存 素の増加があることを示す。すなわち、パ プを含む装置全系の水の体積をV 1 lとし、上記パイプ内の水の体積をV 2 lとし、単位時間当たりの装置内循環水の酸 濃度増加量をBmg/l・dayとした場合、上記の溶 存酸素増加速度(Amg/l・day)とはA=B(V 1 /V 2 )で計算される値を示す。

(6)(5)で得られたパイプを長さ20cmにカット 、5本を束ねて、60℃、80℃、100℃の3種類の 度の温水にそれぞれ7日間浸漬し、膠着度合 を評価した。その結果、パイプの表面には ずれも白化および膠着は見られず、問題な 使用できることを確認した。上記(1)~(6)で得 られた結果を表1、表2及び表3にまとめて示す 。

実施例2
(1)合成例3で得られたEVOH-3を使用した以外は 施例1(1)と同様にして架橋させた試験片を得 。このとき、ゲル分率は33.1%であった。23℃ 、50%RHにおける耐屈曲性を測定した結果、曲 弾性率は3080MPa、曲げ強さは91MPaであり、従 のEVOHより耐屈曲性が向上していることを確 認した。

(2)実施例1(2)と同様にして、架橋させた試 片を使用し、耐衝撃性を評価した。測定の 果、Izod衝撃強度は23℃で9.4kJ/m、-40℃で6.8kJ/m であり、従来のEVOHより各温度における耐衝 性が向上していることを確認した。

(3)実施例1(3)と同様にして、EVOH-3の厚さ100μ mのフィルムを電子線照射し架橋させ、試験 を使用して最大引張強度を測定した。最大 張強度は23℃で67MPa、100℃で72MPa、125℃で71MPa であり、加熱後も強度の低下は見られず、耐 熱性があることがわかった。

(4)実施例1(4)と同様にして、合成例3で得られ 変性EVOH(EVOH-3)を使用して得た架橋フィルム 20℃、65%RH下での酸素透過量(OTR)を測定した 果、1.5cc・20μm/m 2 ・day・atmであった。

(5)合成例3で得られたEVOH-3を使用した以外 実施例1(5)と同様にして電子線を照射し架橋 せた多層パイプを製造し、その溶存酸素増 速度を測定した。その結果、溶存酸素増加 度は0.7mg/l・dayであった。

(6)上記(5)で得られた多層パイプを使用し、 実施例1(6)と同様にして、パイプを長さ20cmに ットし、5本を束ねて、60℃、80℃、100℃の3 類の温度の温水にそれぞれ7日間浸漬し、膠 着度合いを評価した。その結果、パイプの表 面にはいずれも白化および膠着は見られず、 問題なく使用できることを確認した。上記(1) ~(6)で得られた結果を表1、表2及び表3にまと て示す。

比較例1
(1)EVOHとしてエチレン含有量32モル%、ケン化 99モル%以上、MFR1.6g/10分の「エバール」FP101B( 商品名、株式会社クラレ製)を用い、電子線 照射しなかったこと以外は実施例1(1)と同様 して10mm×4mm×80mmの試験片を得た。23℃、50%RH における耐屈曲性を測定した結果、曲げ弾性 率は4080MPa、曲げ強さは120MPaであった。

(2)上記(1)と同様にして10mm×4mm×80mmの試験片 を得、23℃及び-40℃におけるIzod衝撃強度を測 定した結果、23℃で5.2kJ/m、-40℃で3.9kJ/mであ た。

(3)実施例1(3)と同様にして、「エバール」FP 101B(商品名、株式会社クラレ製)の厚さ100μmの フィルムを作成し、電子線を照射しなかった こと以外は実施例1(3)と同様に最大引張強度 測定した。最大引張強度は23℃で19MPaであり 100℃及び125℃ではフィルムが軟化し測定で なかった。

(4)実施例1(4)と同様にして、「エバール」FP101 B(商品名、株式会社クラ
レ製)の厚さ20μmのフィルムを作成し、電子線 を照射しなかったこと以外は実施例1(4)と同 に20℃、65%RH下での酸素透過量(OTR)を測定し 結果、0.4cc・20μm/m 2 ・day・atmであった。

(5)変性EVOH(EVOH-2)の代わりに「エバール」FP1 01B(商品名、株式会社クラレ製)を使用したこ 、および作成した多層パイプに電子線を照 しなかったこと以外は、実施例1(5)と同様に して多層パイプを得、実施例1(5)と同様にし 、その溶存酸素増加速度を測定したところ 0.6mg/l・dayであった。

(6)上記(5)で得られた多層パイプを使用し、 実施例1(6)と同様にして、パイプを長さ20cmに ットし、5本を束ねて、60℃、80℃、100℃の3 類の温度の温水にそれぞれ7日間浸漬し、膠 着度合いを評価した。その結果、60℃ではパ プの表面に白化、膠着は見られなかったが 80℃以上になると、パイプの表面には白化 膠着が発生した。上記(1)~(6)で得られた結果 表1、表2及び表3にまとめて示す。

比較例2
(1)EVOHとしてエチレン含有量44モル%、ケン化 99モル%以上、MFR5.5g/10分の「エバール」EP105B( 商品名、株式会社クラレ製)を用い、電子線 照射しなかったこと以外は実施例1(1)と同様 して10mm×4mm×80mmの試験片を得た。23℃、50%RH における耐屈曲性を測定した結果、曲げ弾性 率は3190MPa、曲げ強さは100MPaであった。

(2)上記(1)と同様にして10mm×4mm×80mmの試験片 を得、23℃及び-40℃におけるIzod衝撃強度を測 定した結果、23℃で6.6kJ/m、-40℃で4.7kJ/mであ た。

(3)実施例1(3)と同様にして、「エバール」EP 105B(商品名、株式会社クラレ製)の厚さ100μmの フィルムを作成し、電子線を照射しなかった こと以外は実施例1(3)と同様に最大引張強度 測定した。最大引張強度は23℃で21MPaであり 100℃及び125℃ではフィルムが軟化し測定で なかった。

(4)実施例1(4)と同様にして、「エバール」EP105 B(商品名、株式会社クラレ製)の厚さ20μmのフ ルムを作成し、電子線を照射しなかったこ 以外は実施例1(4)と同様に20℃、65%RH下での 素透過量(OTR)を測定した結果、1.5cc・20μm/m 2 ・day・atmであった。

(5)変性EVOH(EVOH-2)の代わりに「エバール」EP1 05B(商品名、株式会社クラレ製)を使用したこ 、および作成した多層パイプに電子線を照 しなかったこと以外は、実施例1(5)と同様に して多層パイプを得、実施例1(5)と同様にし その溶存酸素増加速度を測定したところ、1. 1mg/l・dayであった。

(6)上記(5)で得られた多層パイプを使用し、 実施例1(6)と同様にして、パイプを長さ20cmに ットし、5本を束ねて、60℃、80℃、100℃の3 類の温度の温水にそれぞれ7日間浸漬し、膠 着度合いを評価した。その結果、いずれの温 度においても、パイプの表面に白化、膠着が 発生した。上記(1)~(6)で得られた結果を表1、 2及び表3にまとめて示す。