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Title:
PROCESS FOR MANUFACTURING PLATINUM RESISTANCE THERMOMETER
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/143221
Kind Code:
A1
Abstract:
[PROBLEMS] To provide a process for manufacturing a platinum resistance thermometer being stable with a less resistance value variation over service temperature range through clarification of a quantitative mechanism of resistance value variation with respect to the oxidation/reduction of platinum resistance wire. [MEANS FOR SOLVING PROBLEMS] The process comprises the step (S1) of enclosing a purge gas containing an inert gas and oxygen in a protection tube provided with a thermosensitive part of platinum resistance wire; the step (S2) of raising the internal temperature of the protection tube to a temperature region in which the platinum is in reduced form at a partial pressure of oxygen in the purge gas as determined from platinum oxide formation free energy; the step (S3) of replacing the purge gas with an inert gas wherein oxygen is 1 kPa or below; and the step (S4) of sealing the protection tube under the replaced condition.

Inventors:
YAMAGUCHI TORU (JP)
KIMURA HIDEO (JP)
YONESHITA KAZUYA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/059156
Publication Date:
November 27, 2008
Filing Date:
May 19, 2008
Export Citation:
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Assignee:
YAMATAKE CORP (JP)
YAMAGUCHI TORU (JP)
KIMURA HIDEO (JP)
YONESHITA KAZUYA (JP)
International Classes:
G01K1/10; G01K7/18
Foreign References:
JP2001296186A2001-10-26
JPH02121302A1990-05-09
JPH07201521A1995-08-04
JP2001291607A2001-10-19
JP2001343291A2001-12-14
Other References:
See also references of EP 2151674A4
Attorney, Agent or Firm:
YANAGINO, Takao et al. (15-5 Miyahara 1-chome,Yodogawa-ku, Osaka-shi, Osaka, JP)
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Claims:
 白金抵抗線又は白金抵抗膜よりなる感温部を保護管内に設けてなる白金抵抗温度計の製造方法であって、白金抵抗線又は白金抵抗膜よりなる感温部を設けた保護管内に、不活性ガスと酸素とを含むパージガスを封入し、白金の酸化物生成自由エネルギーから求められる前記パージガス中の酸素の分圧における白金の還元状態の温度領域まで、保護管内部温度を上げた後、前記パージガスを、酸素が1kPa以下の不活性ガスに置換してなることを特徴とする白金抵抗温度計の製造方法。
 前記不活性ガスに置換した状態で前記保護管を封止することにより、前記酸素が1kPa以下の分圧における白金の酸化物生成自由エネルギーから求められる白金の還元状態の温度領域まで安定して使用可能とした請求項1記載の白金抵抗温度計の製造方法。
 前記不活性ガスに置換されたパージガスの状態で、前記パージガス中の1kPa以下の酸素の分圧における白金の酸化物生成自由エネルギーから求められるPtO 2 の酸化状態の温度領域まで保護管内部温度を下げた後、前記パージガスを、酸素を含むガスとし、前記白金抵抗線又は白金抵抗膜の表面をPtO 2 に充分酸化させ、さらに前記パージガスの酸素分圧を、当該白金抵抗温度計の使用温度領域で前記PtO 2 の酸化状態の温度領域に収まるような分圧に調整した状態で前記保護管を封止することにより、当該酸化状態の温度領域で安定して使用可能とした請求項1記載の白金抵抗温度計の製造方法。
 前記白金抵抗線又は白金抵抗膜の表面をPtO 2 に酸化させるために、前記酸素を含むガスとして、前記パージガスを酸素100%のガスとした請求項3記載の白金抵抗温度計の製造方法。
 前記白金の還元状態の温度領域及び前記PtO 2 状態の温度領域を、それぞれ酸化物生成自由エネルギーに基づく白金の酸化ポテンシャル相図を用いて求めた請求項1~4の何れか1項に記載の白金抵抗温度計の製造方法。
 前記置換によりパージされる酸素1kPa以下の不活性ガスを、酸素が略0%又は微量含んだ不活性ガスとした請求項1~5の何れか1項に記載の白金抵抗温度計の製造方法。
 前記酸素が略0%の不活性ガスとして、所定の高純度不活性ガスを更に酸素ゲッター内を通過させて得たものを用いた請求項6記載の白金抵抗温度計の製造方法。
 請求項1~7の何れか1項に記載の製造方法により作製してなる白金抵抗温度計。
Description:
白金抵抗温度計の製造方法

 本発明は、保護管(シース)内のパージガ 中の酸素濃度やアニール等の処理温度の最 化を行うことにより抵抗値変化が少なく極 て安定な特性をもつ白金抵抗温度計を構成 きる製造方法に関する。

 標準用白金抵抗温度計は、0.001℃以下の 現性や精度が要求される温度標準の研究又 国際温度目盛(ITS-90)において、標準抵抗値か ら温度を定める二次温度計として50年来使用 れている。図13は、特許文献1に記載されて る従来の標準用白金抵抗温度計1の基本構造 を示している。通常、感温部2を構成する高 度白金線20の汚染を防止するために、石英や サファイアなどのガス不透過性の保護管3が 用され、該保護管3の内部にアルゴン85%-酸素 15%などの意図的に酸素を添加した混合ガスが パージされている。このパージガスG中の少 の酸素は、感温部2の白金線20を汚染から守 ために存在し、その量について明解な基準 無く、メーカごとに過去の経験に基づいて められ、それぞれ異なるものであった。

 しかしながら、この酸素の添加により、3 00℃-500℃において、パージガス中の酸素によ る白金抵抗線の酸化で抵抗値が徐々に増加し 、0.001℃(1mK)相当以上の変化を生じる。また その酸化による抵抗値変化は、600℃を超え と可逆的に消去され、酸化する以前の抵抗 に戻る。したがって、この2つの温度領域に たがって標準用白金抵抗温度計を用いた場 、300℃-500℃の温度領域では白金線の抵抗値 が徐々に増加していく不安定さがあり、さら に600℃以上の温度領域で使用するとその抵抗 値増加分が除去される結果、再度300℃-500℃ 温度領域で使用すると、抵抗値と温度との 係に再現性がなくなってしまうという問題 あった。

 これらの対策として、従来、標準用白金 抗温度計を上記の二つの領域で使用するの はなく、それぞれの温度領域に固有の白金 抗温度計を用いるという使い分けを行った 、各温度計ごとに特性(抵抗値ドリフト)を 認しながらその使用条件とメンテナンス(再 ニールなど)をして使用していた。これらは 、白金抵抗線の酸化・還元の定量的な抵抗値 変化のメカニズムが解明しておらず、標準用 白金抵抗温度計を製造する上で、パージガス 中の酸素濃度の白金抵抗線の変化に対する知 見が欠如していたためである。以上の問題は 、標準用に限らず、準標準用や工業用の白金 抵抗温度計についても同様であり、白金の酸 化による不確かさは、白金抵抗温度計を使っ た温度測定の分野では議論されてこなかった し、ITS-90の白金抵抗温度計領域の補間式では 完全に無視されている。抵抗値に対する酸化 の影響は、精密な温度測定では無視できない 。

特開2001-343291号公報

 そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解 しようとするところは、白金抵抗線の酸化 還元の定量的な抵抗値変化のメカニズムを 明し、使用温度領域において抵抗値変化の ない安定した白金抵抗温度計を得るための 造方法を提供する点にある。

 本発明は、前述の課題解決のために、鋭 検討した結果、白金抵抗温度計の抵抗値の 化と白金の酸化ポテンシャル相図との関係 ついて知見を得、白金抵抗温度計の抵抗線 酸化・還元の定量的な抵抗値変化について メカニズムを以下のとおり解明した。

 図1は、酸素分圧が0.1kPaおよび10kPaのときの 化白金PtO 2 ,PtOの酸化反応の酸化物生成自由エネルギー(G ibbsの自由エネルギー)を算出した白金の酸化 関する酸化ポテンシャル相図であり、Chemica l Reaction and Equilibrium Software with Extensive Th ermochemical Database,Outokumpu HSC Chemistry for Windo w,Ver.5.0により計算した。酸化白金は、ほかに もPt 3 O 4 などがあるが、この種の酸化白金は酸化物生 成自由エネルギーがPtO 2 やPtOに比べて十分大きく、白金抵抗温度計の 抵抗値の変化に直接は影響しないので省略し た。図1の酸化ポテンシャル相図では、酸化 境の白金が300℃近傍のある温度での平衡状 ではPtO 2 が形成され、これらの温度より高温ではPtOが 形成されるということをエネルギーバランス で示している。これらの化学的な相転移によ り、白金線の抵抗はこれらの温度近傍で変化 することが分かる。この酸化膜が白金線の表 面に限定されていれば、抵抗変化は平衡状態 での抵抗値の変化に比べて小さいであろうこ とが推測できる。

 白金抵抗温度計のシース内に密封されてい パージガス中の酸素は、従来から白金線を の金属性不純物による汚染から守るため必 といわれ、室温で5kPa程度の分圧の酸素が白 金抵抗温度計シースに入れられており、図1 酸化ポテンシャル相図によれば、室温の平 状態でPtO 2 、300℃から450℃でPtOに変化し、それ以上の温 度で白金と酸素に還元されることとなる。白 金と酸素の集合の平衡状態は酸化物生成自由 エネルギーで特性が決まり、酸化物生成自由 エネルギーは温度tと酸素の分圧pにより決ま 。白金抵抗温度計内の酸素の分圧は、通常 約10kPa以下に調整されており、ほとんどの 金抵抗温度計の酸化特性はこの図の二つの 圧線の間にある。

 PtO 2 の化学反応は、下記式(1)になると考えられる 。また、その反応の酸化物生成自由エネルギ ーδG PtO2 (T,p)は、下記式(2)で表される。ここで、pは酸 素分圧、K PtO2 (T)は温度Tでの化学平衡定数であり、Rは気体 数である。この式は、δG PtO2 (T,p)<0の温度領域ではPtO 2 が安定で、化学反応は酸素が供給される限り 、反応式(1)の右方向に常に進行することを示 している。また、約400℃以上では、別の相転 移があり、PtOの化学反応は、下記式(3)になる と考えられ、その反応の酸化物生成自由エネ ルギーδG PtO (T,p)は、下記式(4)で表される。これもまた、 素分割pと温度Tに依存する。この反応の方 もδG PtO (T,p)の符号で決まる。約500℃以上では、δG PtO (T,p)>0となり、PtOはPtとO 2 に分解する。

 Pt+O 2 =PtO 2   ・・・(1)
 δG PtO2 (T,p)=-RTln(K PtO2 (T)/p)  ・・・(2)
 Pt+1/2O 2 =PtO  ・・・(3)
 δG PtO (T,p)=-RTln(K PtO (T)/p 1/2 )  ・・・(4)

 また、300℃以下では、上記反応はδG PtO2 (T,p)とδG PtO (T,p)の大小で決まり、δG PtO2 (T,p)がδG PtO (T,p)より小さければ、PtO 2 が安定である。このため、PtOが安定なのは、 400℃近傍の狭い温度領域である。つまり、図 1のPtO 2 の線とクロスする部分からδG PtO (T,p)=0までの温度領域のみである。

 平衡状態においては、約10kPaの酸素ガス 封じてあれば1/10K程度の抵抗値の増加に寄与 するはずであるが、室温での平衡化の速度は 非常に遅く、また白金線表面の酸化膜が内部 への酸化の拡散を制限すると推定されること から、実際の抵抗値の増加は平衡状態の抵抗 値までになることはない。しかしながら、酸 化白金は時間とともに増加して抵抗値のドリ フトとして観測される。また、この酸化の反 応速度は高温で大きくなる。よって、抵抗値 のドリフトは精密温度測定の際の不確かさと なり、特に300℃以上においては測定の不確か さとして考慮する必要がある。

 図1に示す酸化物生成自由エネルギーは、 酸素分圧と温度に依存して白金の酸化・還元 反応が制御されることを示し、ある分圧の二 つの曲線が交差する点で相変化が発生してお り、白金抵抗温度計が平衡状態であるとすれ ば、抵抗変化はこれらの曲線に基づいて推定 できることが分かるが、本発明者は、白金抵 抗温度計について白金線のパージガス中の酸 素による酸化還元の特性(抵抗値変化)を調べ 実験を行い、平衡状態とはならない実際の 定についても、図1の酸化ポテンシャル相図 の酸化物生成自由エネルギーの線に沿って酸 化・還元反応が生じ、白金抵抗温度計の抵抗 値が変化することを確認した。

 実験に用いた白金抵抗温度計は、図13に す従来からの白金抵抗温度計と同様、石英 ース内の石英巻き枠に白金線が単コイル状 巻かれた構造の白金抵抗温度計であり、シ ス内の酸素分圧を調整できるように改造し 。実験には3本の白金抵抗温度計を使用し、 れらは600℃以上の温度で約10時間保ち、感 部の白金線を還元させた。各白金抵抗温度 のパージガス中の酸素分圧は、それぞれ略2k Pa(Y002)、2kPa(Y003)、略8kPa(S4742)に設定し,これら を200℃から500℃,600℃の適当な温度で、16時間 から24時間加熱し、8時間ごとに水の三重点で の抵抗値を測定した。

 図2は、各白金抵抗温度計のある温度におけ る酸化還元による白金抵抗温度計の抵抗値( 平衡状態ではない)ドリフト量を計測したも であり、横軸は晒した温度、縦軸は還元し ときからの抵抗値の変化を温度に換算した である。抵抗値は約350℃~400℃の温度で2つ 相に分離されており、PtO 2 からPtOへ相転移していることが分かる。つま り、白金の二つの酸化相で各白金抵抗温度計 の酸素分圧において図1と同様の酸化ポテン ャル相図を作成した場合に、交差する二つ 曲線の交点の両側に相当する。また、約450 ~530℃で抵抗値が減少しており、PtOからPtへ 転移していることが分かる。これは、同じ 各白金抵抗温度計の酸素分圧において図1と 様の酸化ポテンシャル相図を作成した場合 、PtOの曲線とエネルギー0の線との交点の両 側に相当する。図2から、各白金抵抗温度計 抵抗変化には二つのステップがあり、これ の白金抵抗温度計間の特性差は主に酸素分 にある。

 この実験から、平衡状態ではない実際の測 環境下においても、白金は図1の酸化ポテン シャル相図に従って酸素と反応していること が確認された。すなわち、白金からPtO 2 ,PtO 2 からPtO、PtOからPtという反応が、図1の酸化物 生成自由エネルギーの線に沿って起こってお り、シース内の酸素分圧により抵抗値変化の 特性が影響を受けることが確認された。抵抗 値の増加の理由としては、PtO 2 が2PtOへ化学変化することにより白金の伝導 子の数が減少すること、および温度上昇に る化学変化の促進が原因と考えられる。

 図3は、実験により得られた200℃から570℃で の酸化還元による初期のドリフトの変化を示 しており、縦軸は個々の温度でのドリフトレ イトの標準不確かさを示している。ドリフト レイトは、PtO 2 の領域では遅く、PtOの領域では速い。このこ とから、PtOの温度域での酸化は、PtO 2 の温度域より速いと考えられる。また、酸化 は既に200℃以下でも進んでいることを示して いる。

 本発明者は、以上のとおり白金抵抗温度計 パージガス中の酸素と白金線とが、白金の 化ポテンシャル相図に従って反応しており パージガス中の酸素の分圧によってその抵 値変化の特性が決まるといった知見に基づ 、さらに種々の条件下における実験、検討 重ねた結果、白金の還元温度まで内部温度 上げてアニールした上で、パージガス中の 素を分圧1kPa以下に調整することで、全温域 にわたって極めて安定な白金抵抗温度計を実 現でき、更に、白金表面をPtO 2 に充分酸化させることで、パージガスの酸素 量を、使用温度領域で上記PtO 2 の酸化状態になるような分圧であれば、必ず しも1kPaに抑えることなく、当該使用温度領 において安定して使用できる白金抵抗温度 を実現できることを見出し、本発明を完成 るに至った。

 すなわち本発明は、白金抵抗線又は白金 抗膜よりなる感温部を保護管内に設けてな 白金抵抗温度計の製造方法であって、白金 抗線又は白金抵抗膜よりなる感温部を設け 保護管内に、不活性ガスと酸素とを含むパ ジガスを封入し、白金の酸化物生成自由エ ルギーから求められる前記パージガス中の 素の分圧における白金の還元状態の温度領 まで、保護管内部温度を上げた後、前記パ ジガスを、酸素が1kPa以下の不活性ガスに置 換してなることを特徴とする白金抵抗温度計 の製造方法を提供する。尚、本出願において パージガスの酸素分圧とは、室温下での分圧 をいう。

 ここで、前記不活性ガスに置換した状態 前記保護管を封止することにより、前記酸 が1kPa以下の分圧における白金の酸化物生成 自由エネルギーから求められる白金の還元状 態の温度領域まで安定して使用可能とするこ とが好ましい。

 あるいは、前記不活性ガスに置換されたパ ジガスの状態で、前記パージガス中の1kPa以 下の酸素の分圧における白金の酸化物生成自 由エネルギーから求められるPtO 2 の酸化状態の温度領域まで保護管内部温度を 下げた後、前記パージガスを、酸素を含むガ スとし、前記白金抵抗線又は白金抵抗膜の表 面をPtO 2 に充分酸化させ、さらに前記パージガスの酸 素分圧を、当該白金抵抗温度計の使用温度領 域で前記PtO 2 の酸化状態の温度領域に収まる(PtOが生成し じめる温度より低い温度となる)ような分圧 調整した状態で前記保護管を封止すること より、当該酸化状態の温度領域で安定して 用可能とすることが好ましい。

 ここで、前記白金抵抗線又は白金抵抗膜の 面をPtO 2 に酸化させるために、前記酸素を含むガスと して、前記パージガスを酸素100%のガスとし 白金抵抗線又は白金抵抗膜の表面をPtO 2 により充分に酸化させ、当該酸化状態の安定 化を図ることが好ましい。

 また、前記白金の還元状態の温度領域及び 記PtO 2 状態の温度領域を、それぞれ酸化物生成自由 エネルギーに基づく白金の酸化ポテンシャル 相図を用いて求めることが好ましい。

 さらに、前記置換によりパージされる酸 1kPa以下の不活性ガスを、酸素が略0%又は微 含んだ不活性ガスとすることが好ましい。

 より具体的には、前記酸素が略0%の不活 ガスとして、所定の高純度不活性ガスを更 酸素ゲッター内を通過させて得たものを用 ることが好ましい。

 また、本発明は、上記した製造方法によ 作製した標準用白金抵抗温度計をも提供す 。

 以上にしてなる本願発明は、白金抵抗線 は白金抵抗膜よりなる感温部を設けた保護 内に、不活性ガスと酸素とを含むパージガ を封入し、白金の酸化物生成自由エネルギ から求められる前記パージガス中の酸素の 圧における白金の還元状態の温度領域まで 保護管内部温度を上げた後、前記パージガ を、酸素が1kPa以下の不活性ガスに置換する ので、酸素を含んだ清浄な高温雰囲気下で、 白金抵抗線等の純度(抵抗比)のアップと白金 抗線の残留歪取りアニールが行われ、抵抗 が安定する素地ができた上で、パージガス 酸素分圧を1kPa以下とすることで、温度にか かわらず抵抗変化の少ない安定した特性が得 られる。

 とくに、酸素1kPa以下の不活性ガスに置換 した状態で保護管を封止したことにより、酸 化・還元の両領域からなる広範囲の使用温度 領域において、具体的には、低温域から酸素 1kPa以下の当該パージガスの分圧における白 の酸化物生成自由エネルギーから求められ 還元状態の温度領域(高温域)まで、抵抗値変 化が小さく、計測の再現性もあり、安定して 使用できる信頼性の高い白金抵抗温度計を提 供できる。

 また、上記のごとく酸素1kPa以下の不活性ガ スに置換した状態で保護管を封止するかわり に、前記不活性ガスに置換されたパージガス の状態で、当該酸素分圧における白金の酸化 物生成自由エネルギーから求められるPtO 2 の酸化状態の温度領域まで保護管内部温度を 下げた後、前記パージガスを酸素を含むガス とし、前記白金抵抗線又は白金抵抗膜の表面 をPtO 2 に充分酸化させ、さらに前記パージガスの酸 素分圧を、当該白金抵抗温度計の使用温度領 域で前記PtO 2 の酸化状態の温度領域に収まるような分圧に 調整した状態で前記保護管を封止することに より、当該酸化状態の温度領域においては、 PtOに状態変化することなく抵抗値変化が少な く、安定して使用できる白金抵抗温度計を提 供できる。

 また、白金の還元状態の温度領域及びPtO 2 状態の温度領域は、それぞれ酸化物生成自由 エネルギーに基づく白金の酸化ポテンシャル 相図を用いて効率よく求めることができる。

 また、パージされる酸素1kPa以下の不活性ガ スとしては、より好ましくは酸素が略0%又は 量(10Pa程度以下の分圧)の不活性ガスとする とで、当該置換ガスで保護管を封止する場 にはより抵抗値の安定した白金抵抗温度計 提供でき、封止する前に更に酸化させる上 のケースにあっては、酸化温度まで降温さ る際のPtO領域での酸化反応スピードが抑え れるため、PtOの発生を抑えて純粋なPtO 2 として酸化させることができ、抵抗値を安定 化させることが可能となる。

 また、酸素略0%の不活性ガスについては 酸素0.2ppm~数ppmを含む高純度不活性ガスを、 にスポンジチタンなどの酸素ゲッター内を 過させることで、効率よく得ることができ 。

酸素分圧0.1kPaおよび10kPaの白金の酸化 生成自由エネルギーを算出した酸化ポテン ャル相図。 ある温度における酸化還元による抵抗 金抵抗温度計の抵抗値ドリフト量を計測し 図。 200℃から570℃での酸化還元による初期 リフト変化量を示す図。 実施例1、比較例1を420℃で100時間以上 400℃で100時間以上保って抵抗値を測定した 果を示す図。 実施例1、比較例1を230~420℃の温度領域 1000時間以上使用した後、480℃及び510℃で等 温還元させた際の抵抗値を測定した結果を示 す図。 実施例2、3、比較例2~4の230℃における 抗値変化を測定した結果を示す図。 実施例2、3、比較例2、3の420℃における 抵抗値変化を測定した結果を示す図。 100℃における各白金抵抗温度計の抵抗 変化を測定した結果を示す図。 150℃における各白金抵抗温度計の抵抗 変化を測定した結果を示す図。 各白金抵抗温度計を420℃で約15時間保 た後、白金線を十分酸化させるために冷却 て抵抗値を測定した結果を示す図。 第1実施形態の製造手順を示すフロー 。 第2実施形態の製造手順を示すフロー 。 従来からの白金抵抗温度計を示す説明 図。

 次に、本発明の実施形態を添付図面に基 き詳細に説明する。

 図11は、第1実施形態の製造手順を示すス ップ図、図12は第2実施形態の製造手順を示 ステップ図であり、図13は従来からと同じ 表的な白金抵抗温度計の構造を示している 尚、以下の各実施形態においては、図13に示 したように十字状の巻枠4に直状の白金抵抗 20を巻き付けることによりコイル状に形成し た単コイル巻きで感温部を構成した構造の白 金抵抗温度計を例にして説明するが、本発明 の白金抵抗温度計の構造については何ら限定 されず、例えばスパイラル状にした2本の石 細管内に白金線をコイル状に挿入したもの 、コイル状にした白金抵抗線を十字状の石 製巻枠に形成した溝にコイル状に巻き込ん 二重コイル型の感温部を有するものなど、 来から公知の種々の構造を採用できる。

 また白金抵抗線を設ける代わりに、白金 抗膜を蒸着形成したもので感温部を構成し ものなど、白金抵抗線または白金抵抗膜か なる感温部を保護管内に備えてパージガス 封止する構造のものであれば、どのような 造でもよく、その構成部材(保護管等)の素 についても従来から用いられている素材を く適用でき、標準用、準標準用、工業用な その用途も特に限定されない。パージガス 用いる不活性ガスとしては、アルゴンや窒 、ヘリウム、ネオンなどが好適に用いられ が特に限定されない。

 まず、第1実施形態に係る白金抵抗温度計 の製造方法を、図11及び図13に基づき説明す 。

 本実施形態の製造方法は、白金抵抗線20 りなる感温部2を設けた保護管3内に、不活性 ガスと酸素とを含むパージガスGを封入する ス封入工程S1と、白金の酸化物生成自由エネ ルギーから求められる前記パージガスG中の 素の分圧における白金の還元状態の温度領 まで、保護管3の内部温度を上げる昇温工程S 2と、前記パージガスGを、酸素が1kPa以下の不 活性ガスに置換するガス置換工程S3と、この 換した状態で保護管3を封止する封止工程S4 を少なくとも備えており、これにより酸素1 kPa以下の分圧における白金の酸化物生成自由 エネルギーから求められる白金の還元状態の 温度領域まで安定して使用可能としたことを 特徴としている。

 ガス封入工程S1から昇温工程S2までのパー ジガスには、保護管内の各部、特に白金抵抗 線表面に付着している不純物を酸化除去する ために適当な量の酸素が含まれており、昇温 工程S2が終了した後、上記1kPa以下の酸素分圧 の不活性ガスに置換して酸素濃度を調整する のである。昇温工程S2は、封入されている前 パージガスの酸素分圧と、上記白金の酸化 生成自由エネルギーに基づく白金の酸化ポ ンシャル相図とより求められるPt還元温度 域までの昇温を行い、酸素を含んだ清浄な 温雰囲気下で上記不純物の除去とともに白 抵抗線表面の酸化物から酸素を除去還元し クリアな白金線にすると同時に、白金抵抗 の残留歪取りアニールとしての効果により 金抵抗線の抵抗比を上げ、いわゆる白金線 「純度」をアップさせるために行われる。 のガス封入工程S1から昇温工程S2は複数回、 り返し行ってもよい。また、昇温工程S2の めのガス封入工程S1よりも以前の段階で、よ り低温でのアニールやガス置換を繰り返して 前処理を行っておくことがより好ましい実施 例である。

 そして、昇温工程S2を終了した後、ガス 換工程S3において最終封じるパージガスに置 換することとなるが、本発明ではこのパージ ガスの酸素分圧を1kPa以下に抑えることで、 化・還元の両温度領域にまたがって使用し も抵抗値変化が小さく再現性の高い白金抵 温度計が得られるのである。酸素分圧は、 ましくは微量、具体的には10Pa以下、より好 しくは1Pa以下、さらに好ましくは0.1Pa以下 設定され、より望ましくは、例えば所定の 純度不活性ガスを更に酸素ゲッター内を通 させて得た略0%の酸素濃度に設定される。

 次に、第2実施形態に係る白金抵抗温度計 の製造方法を、図12及び図13に基づき説明す 。

 本実施形態の製造方法は、白金抵抗線20よ なる感温部2を設けた保護管3内に、不活性ガ スと酸素とを含むパージガスGを封入するガ 封入工程S1と、白金の酸化物生成自由エネル ギーから求められる前記パージガスG中の酸 の分圧におけるPt還元状態の温度領域まで内 部温度を上げる昇温工程S2と、パージガスGを 酸素が1kPa以下の不活性ガスに置換するガス 換工程S3と、置換されたパージガスGの状態 、前記パージガスG中の1kPa以下の酸素の分圧 における白金の酸化物生成自由エネルギーか ら求められるPtO 2 の酸化状態の温度領域まで保護管内部温度を 下げる降温工程S4と、パージガスGに酸素を含 ませて白金抵抗線20の表面をPtO 2 に酸化させる酸化工程S5と、パージガスGの酸 素分圧を、当該白金抵抗温度計1の使用温度 域で前記PtO 2 の酸化状態の温度領域に収まるような分圧に 調整するガス調整工程S6と、酸素分圧を調整 た状態で、保護管3を封止する封止工程S7と 少なくとも備えている。

 本実施形態では、上記第1実施形態と同様、 酸素を含むガス雰囲気で還元領域まで昇温を 行い、白金線に付着している不純物の除去、 PtOなどの表面の還元、残留歪取りアニールに よる純度アップさせた後、PtO 2 領域まで温度を下げる際に通過するPtO領域に おいて、白金線表面にできるだけPtOを生じさ せないために、酸素分圧を低く設定した状態 でPtO 2 まで降温させるといった手順を採用している 。具体的には、昇温後のガス置換工程S3にお て、酸素分圧が1kPa以下の低酸素量のガスに 置換し、その状態で降温させている。この際 の酸素分圧はできるだけ低い方がPtO領域を速 やかに通過でき、好ましくは微量、具体的に は10Pa以下、より好ましくは1Pa以下、さらに ましくは0.1Pa以下に設定され、より望ましく は、例えば所定の高純度不活性ガスを更に酸 素ゲッター内を通過させて得た略0%の酸素濃 に設定される。

 降温工程S4において、PtO 2 領域は、前記置換された低酸素量ガスの酸素 分圧と酸化物生成自由エネルギーに基づく白 金の酸化ポテンシャル相図から求められ、さ らにPtO領域をより速やかに通過させるべく、 その降温速度が速くなるように冷却すること が好ましい。そして、酸化工程S5においては PtO 2 領域まで降温させた状態で、酸素濃度の高い パージガスに置換して白金線表面を十分に酸 化させるが、その際の酸素濃度はほぼ100%濃 のガスを用いることが好ましい。

 そして、封止前の最終のガス調整工程S6に いては、上記第1実施形態の場合と異なりパ ジガス中の酸素分圧は1kPa以下に設定するの ではなく、使用温度領域が上記PtO 2 の領域に収まる(PtOに状態変化しない)分圧と るためには、パージガスの酸素分圧を1kPaよ り大きく設定することが必要がある。例えば 、低温から300℃近くまでの温度領域を使用領 域とするのであれば、図1に示した白金の酸 ポテンシャル相図から酸素分圧は10kPa程度以 上に調整される。

 以上、本発明の実施形態について説明し が、本発明はこうした実施例に何ら限定さ るものではなく、本発明の要旨を逸脱しな 範囲において種々なる形態で実施し得るこ は勿論である。

(実験1)
 上記第1実施形態の製造方法により作製した 実施例1の白金抵抗温度計と、酸素分圧のみ 更した比較例1の白金抵抗温度計とを用いて 高温域での酸化・還元特性を調べる実験を った。実施例1の酸素分圧は約0.1Paの微量で り、比較例1の酸素分圧は室温で4kPaである ガス置換前の還元・アニールの温度は670℃ 10時間行った。実施例1は高純度アルゴン(酸 分圧約0.1Pa程度)をパージガスとして置換し ものであり、比較例1は酸素分圧を室温で4kP aになるように、アルゴンとともに全圧が約90 0℃で100kPa以下程度、室温で約25kPa程度となる ように調整した。

 まず、各白金抵抗温度計を420℃で100時間以 、400℃で100時間以上保ち、定期的に室温に 却して水の三重点で各温度における抵抗値 測定した。測定結果を図4に示す。比較例1(4 kPa)では、420℃及び400℃でのさらした時間と もに抵抗値が増加しつつある。図1の酸化ポ ンシャル相図から分かるようにこの温度領 でδG PtO (T,p)が負であり、シース内のO 2 を消費して、白金線の中でPtOになって広がっ ている。一方、実施例1(約0.1Pa)では、420℃及 400℃において、抵抗値がほぼ1mK以内で一定 維持されている。酸素分圧約0.1Paでは、δG PtO およびδG PtO2 ともに420℃および400℃で正となり、白金線は 酸化していない。この2本の白金抵抗温度計 差の結果は、シース内の酸素分圧が抵抗値 変化に大きく寄与していることを示し、酸 分圧約0.1Paでは酸化に対しては極めて安定で あり、400℃以上の温度域の精密測定にも適し ていることが分かる。

 次に、上記酸化特性の抵抗変化の測定の後 実施例1(約0.1Pa)、比較例1(4kPa)を230~420℃の温 度領域で1000時間以上使用した後、480℃及び51 0℃で等温還元の測定を行った。等温還元の 果を図5に示す。比較例1は、酸化ポテンシャ ル相図において480℃でδG PtO (T)がほぼδG PtO (T)=0の線を横切っており、抵抗値は図5に示す ようにほぼ一定でPtOとPtが平衡している。し し、510℃ではδG PtO (T)>0となり、PtOが還元されることにより抵 値が急激に減少していることが分かる。一 、実施例1の抵抗値は、480℃及び510℃で一定 である。以上の実験1の結果、酸素分圧4kPaの 金抵抗温度計では大きな抵抗値変化を酸化 還元で示すが、酸素分圧が低い約0.1Paの白 抵抗温度計では、どのような温度でも安定 あることが分かる。

(実験2)
 次に、上記第1実施形態の製造方法に従って 作製され、最終調整する酸素分圧をより細か く複数に設定した実施例、比較例の白金抵抗 温度計を用いて等温酸化特性を調べる実験を 行った。酸素分圧の異なる5種の白金抵抗温 計として実施例2(約0.1Pa)、実施例3(0.8kPa)、比 較例2(2kPa)、比較例3(4kPa)、比較例4(8kPa)を用意 し、それぞれガス置換前の還元・アニールの 温度は670℃で10時間行った。各白金抵抗温度 のカッコ内の数値は、それぞれ室温での酸 分圧である。図6は、230℃における各白金抵 抗温度計の抵抗値変化、図7は、420℃におけ 各白金抵抗温度計(比較例4を除く)の抵抗値 化を測定した結果を示している。

 図6に示すように、実施例2(約0.1Pa)、実施 3(0.8kPa)のような低酸素分圧では、230℃での リフトは比較的小さいが、比較例2(2kPa)、比 較例3(4kPa)、比較例4(8kPa)では、230℃の低温で え安定ではない。特に、比較例3(4kPa)や比較 例4(8kPa)は大きく、60mKまたはそれ以上の抵抗 化となってしまう。一方、図7に示すように 、実施例2(約0.1Pa)、実施例3(0.8kPa)の低酸素分 では、420℃でさえ安定していることが分か 。比較例2(2kPa)は、420℃では比較的安定した が、230℃で抵抗値ドリフトが見られた。この ことは、酸素分圧は酸化に非常に敏感である ことを示している。酸素分圧は、使われる温 度領域によって調整する必要があり、全温度 領域で可能な白金抵抗温度計は1kPa以下の低 素分圧に調整する必要があることが分かる

 実験1、2から分かるように、白金抵抗温度 の抵抗値のドリフトが、酸化物生成自由エ ルギーにより制御されているPtO 2 とPtOの化学反応による限り、高い酸素分圧の 白金抵抗温度計は400℃以上で使うとき大きな 抵抗値の変化を示す。一方、低い酸素分圧、 例えば1kPa以下の白金抵抗温度計では、白金 が汚染されない限り酸化に対しては安定で る。結論として、シース内の酸素は1kPaより くすべきであり、もし広い温度領域で使う ら、好ましくは測定毎に600℃以上の還元領 まで還元して使うべきである。

(実験3)
 次に、充分な酸化を行うことによる安定度 ついて実験を行った。まず、低温域での酸 特性を調べる実験を行うべく、3種の白金抵 抗温度計Y002(2kPa)、Y003(2kPa)、S4742(8kPa)を用意 、それぞれ650℃で約15時間還元した後、100℃ 及び150℃で、3日~4日間保った。白金抵抗温度 計の抵抗値を水の三重点で定期的に測定した 。図8は、100℃における各白金抵抗温度計の 抗値変化、図9は、150℃における各白金抵抗 度計の抵抗値変化を測定した結果を示して る。抵抗値はこの温度でも、図1のPtO 2 の曲線に従って、ゆっくりドリフトしている 。抵抗値の変化から、酸化白金は白金線表面 の数層と推定される。しかし、抵抗値は連続 的に増加しており、酸化層は拡大している。

 酸化ポテンシャル相図に従うなら、白金の 化による白金抵抗温度計の抵抗値のドリフ は避けられないが、酸化によるドリフトは 室温ではそれほど速くはない。もし、白金 抗温度計がある酸化状態に制御できるなら 限られた温度用域では長期にわたって安定 を確保できるであろう。この観点から、充 酸化させた白金線の安定度を測った。結果 図10に示す。この実験では、上記3本の白金 抗温度計を、420℃で約15時間保ち、その後 白金線を十分酸化させるために、-20℃/h程度 のスピードでゆっくり冷却させた。その後、 水の三重点での抵抗値を測定した。最初の数 時間はドリフトが見られたが、その後、抵抗 は安定してきた。この実験3の結果により、 分に酸化させた白金線は比較的安定であり 使用温度領域で上記PtO 2 酸化状態となる分圧であれば1kPa以上でも安 して使用できることが分かる。