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Title:
PROCESS FOR PRODUCING COLLOIDAL CRYSTAL AND COLLOIDAL CRYSTAL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/145031
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided is a process for producing colloidal crystals from which a large single crystal reduced in lattice defects and unevenness can be easily produced at low cost without fail. The process for colloidal crystal production comprises: preparing a colloidal polycrystal dispersion in which colloidal crystals precipitate at a given temperature (preparation step); introducing into a vessel the colloidal polycrystal dispersion in the state of containing fine colloidal polycrystals precipitated (introduction step); and dissolving the colloidal polycrystals and then recrystallizing the dissolved polycrystals (recrystallization step).  The crystals thus obtained have fewer lattice defects and less unevenness than the original polycrystals.

Inventors:
YAMANAKA JUNPEI (JP)
SHINOHARA MARIKO (JP)
TOYOTAMA AKIKO (JP)
YOSHIZAWA KOKI (JP)
ONDA SACHIKO (JP)
YONESE MASAKATSU (JP)
UCHIDA FUMIO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/058500
Publication Date:
December 03, 2009
Filing Date:
April 30, 2009
Export Citation:
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Assignee:
UNIV NAGOYA CITY (JP)
FUJI CHEMICAL KK (JP)
YAMANAKA JUNPEI (JP)
SHINOHARA MARIKO (JP)
TOYOTAMA AKIKO (JP)
YOSHIZAWA KOKI (JP)
ONDA SACHIKO (JP)
YONESE MASAKATSU (JP)
UCHIDA FUMIO (JP)
International Classes:
B01J19/00; C01B33/18; G02B5/18
Foreign References:
JP2008093654A2008-04-24
JP2001079384A2001-03-27
JPH11319539A1999-11-24
JP2004089996A2004-03-25
JP2008093654A2008-04-24
JP2004375594A2004-12-27
Other References:
See also references of EP 2295137A4
B. J. ACKERSON; N. A. CLARK, PHYS. REV., vol. A 30, 1984, pages 906
T. PALBERG; W. MOENCH; J. SCHWARZ; P. LEIDERER, J. CHEM. PHYS., vol. 102, 1995, pages 5082
J. M. WEISSMAN; H. B. SUNKARA; A. S. TSE; S. A. ASHER, SCIENCE, vol. 274, 1996, pages 959
N. WAKABAYASHI; J. YAMANAKA; M. MURAI; K. ITO; T. SAWADA; M. YONESE, LANGMUIR, vol. 22, 2006, pages 7936 - 7941
T. KANAI; T. SAWADA; I. MAKI; K. KITAMURA, JPN. J. APPL. PHYS., vol. 42, 2003, pages L655
A. TOYOTAMA; J. YAMANAKA; M. YONESE; T. SAWADA; F. UCHIDA, J. AM. CHEM. SOC., vol. 129, 2007, pages 3044
Attorney, Agent or Firm:
AOYAMA Yo (JP)
Akira Aoyama (JP)
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Claims:
 所定の温度でコロイド多結晶が融解するコロイド多結晶分散液を用意する準備工程と、
 該コロイド多結晶分散液を容器に収容する収容工程と、
 該容器内のコロイド多結晶分散液の一部の領域又は全部の領域の温度をコロイド結晶が析出しない温度とした後、再びコロイド結晶が析出する温度に変化させることによってコロイド多結晶を再結晶させる再結晶工程と、
 を有することを特徴とするコロイド結晶の製造方法。
 前記再結晶工程で、温度調節手段によりコロイド多結晶分散液の一部をコロイド結晶が融解する温度に設定して融解領域を形成させ、該融解領域を移動させるゾーンメルト法によって再結晶させることを特徴とする請求項1記載のコロイド結晶の製造方法。
 融解領域の移動は前記温度調節手段と前記容器との相対移動を可能とする移動手段によって行なうことを特徴とする請求項2記載のコロイド結晶の製造方法。
 収容工程において、コロイド多結晶分散液は略平行に対面する2つの壁の間に充填されることを特徴とする請求項1又は3に記載のコロイド結晶の製造方法。
 コロイド多結晶分散液には温度変化によって解離度が変化する弱酸又は弱塩基が添加されており、温度変化によるpHの変化によってコロイド結晶が析出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のコロイド結晶の製造方法。
 コロイド多結晶分散液のコロイド粒子はシリカ粒子であり、分散媒は水であり、弱塩基はピリジン及び/又はピリジン誘導体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のコロイド結晶の製造方法。
 コロイド結晶を成長させた後、ゲル化により固化することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のコロイド結晶の製造方法。
 前記再結晶工程では、温度調節手段により容器の一端側から冷却又は加熱してコロイド多結晶分散液中のコロイド多結晶を融解させた後、該温度調節手段による冷却又は加熱を停止して再結晶させることを特徴とする請求項1記載のコロイド結晶の製造方法。
 請求項1乃至8のいずれか1項のコロイド結晶の製造方法によって得られたコロイド結晶。
 吸収スペクトル及び反射スペクトルにおける半値幅は10nm以下であることを特徴とする請求項9記載のコロイド結晶。
 回折波長の空間不均一性は0.2%以下であることを特徴とする請求項9又は10記載のコロイド結晶。
 回折波長の空間不均一性が0.2%以下であり、該回折波長での透過率が厚さ1mmにおいて0.1%以下であり、結晶格子面の層数が3000層以上であり、最大径が1cm以上の単結晶からなることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項記載のコロイド結晶。
Description:
コロイド結晶の製造方法及びコ イド結晶

 本発明は、コロイドの技術分野に属し、 らに詳しくは、温度変化により結晶化する ロイド多結晶分散液を利用したコロイド結 の製造方法及びそれを用いて製造されたコ イド結晶に関する。

 コロイドとは、数nmから数μmの大きさを するコロイド粒子が媒質中に分散している 態をいい、塗料や医薬品の分野等で幅広い 業的用途を持つ。

 適切な条件を選ぶと、コロイド粒子はコロ ド分散液中で規則正しく配列し、“コロイ 結晶”と呼ばれる構造を形成する。このコ イド結晶には2つのタイプが存在する。第一 は、粒子間に特別な相互作用が無いコロイド 系(剛体球系)において、粒子体積分率が約0.5( 濃度=50体積%)以上の条件で形成される結晶で る。これは、巨視的な球を限られた空間に め込んでいくと、規則配列する現象に似て る。第二は、荷電したコロイド粒子の分散 (荷電コロイド系)において、粒子間に働く 電相互作用により形成される結晶構造であ 。例えば、表面に解離基を持つ高分子(ポリ チレン、ポリメチルメタクリレートなど)製 の粒子やシリカ粒子(SiO 2 )を、水などの極性媒体に分散したコロイド で結晶が形成される。静電相互作用は長距 に及ぶため、粒子濃度の低い(粒子間の距離 長い)、粒子体積分率が約0.001程度でも結晶 生成し得る。

 コロイド結晶は、通常の結晶と同様に、 磁波をBragg回折する。その回折波長は、製 条件(粒子濃度と粒径)を選ぶことで可視光領 域に設定できる。このため、フォトニック材 料をはじめとする光学素子などへの応用展開 が、国の内外で現在盛んに検討されている。 現在、光学材料製造法の主流は、多層薄膜法 およびリソグラフィー法である。いずれの手 法も周期精度に優れるが、前者では1次元、 者では1又は2次元周期構造しか得られない。 微粒子の堆積によって得られる3次元結晶構 (オパール構造)では、粒径の揃った粒子を用 いると、面間隔の均一性は良好となる。しか し単結晶性のよい領域は10周期程度に限られ マクロな3次元構造(すなわち大きなコロイ 単結晶)の構築は微粒子の堆積法では困難で る。

 通常、コロイド結晶は1mm角程度の微結晶 集合した多結晶体として得られるが、光学 子として利用する場合には、cmオーダーの 結晶が必要とされることも多い。また、コ イド結晶には通常、さまざまな格子欠陥や 均一性が存在し、このことが光学素子とし の利用を阻むこともある。以上のことから (1)高品質(すなわち格子欠陥や不均一性がで るだけ存在しないこと)であって、(2)大きな 単結晶を製造することができる、コロイド結 晶の製造方法の確立が求められている。

 荷電コロイド系由来のコロイド結晶の生 を制御する手法としては、これまでに、イ ン性高分子ラテックス/水分散系に対して、 0.1mm程度のギャップを持つ平行平板間におい 、荷電コロイド多結晶のせん断配向により 結晶を得る手法(非特許文献1)や、電場を付 して結晶化する方法(非特許文献2)が報告さ ている。しかし、これらの方法では前者の 合、せん断場印加のために特殊な装置が必 とされること、また後者については、電極 応により不純物イオンが生じ、これが結晶 を妨げること、等の難点がある。この他に 荷電コロイド結晶を高分子ゲルで固化し、 度変化によるゲルの体積変化を利用して結 面間隔を制御した報告(非特許文献3)がある 、煩雑な工程が必要であり、また、無秩序 粒子配列状態からの結晶の生成は試みられ いない。

 また、本発明者らは、荷電コロイド分散 に特定の電離物質を共存させ、温度変化に りコロイド結晶を形成させるという、コロ ド結晶の製造方法を開発している(特許文献 1)。この方法によれば、各種の荷電コロイド から、特殊な装置や複雑な工程を必要とせ に比較的簡単にコロイド結晶を製造するこ ができる。しかし、この方法では1cmを超え ような大型の単結晶を製造することは困難 ある。

 大型の単結晶を得ることのできるコロイ 結晶の製造方法として、本発明者らは、pH ともに電荷数が増加して結晶化するシリカ ロイド粒子/水系を用い、試料の一端から塩 を拡散させる新規手法により、長さ数cmに する柱状結晶や、1辺が約1cmの立方体状結晶 いう世界最大級のコロイド結晶の製造に成 している(非特許文献4、特許文献2)。しかし 、この方法は、結晶成長に極めて時間がかか るという欠点がある。また、分光測定により 、こうして得られた大型結晶の格子面間隔に は、大域的な不均一(傾斜及びゆらぎ)が存在 ることが明らかになった。これは、拡散現 に本質的な塩基濃度の時間・空間的な不均 性、および拡散の乱れ等に起因すると思わ る。時間とともに面間隔の不均一性は減少 るものの、塩基濃度がほぼ一様になっても 面間隔には10%程度の分布が存在する。この め、光学素子として用途が制限される。

 このため、本発明者らはさらに鋭意研究を ね、大型で格子欠陥や不均一性の少ない単 晶を容易かつ安価に製造することができる ロイド結晶の製造方法を開発した(特許文献 3)。この方法では、シリカコロイドにピリジ を添加したコロイド分散液を用意しておく ピリジンは温度によって解離度が変化する め、コロイド分散液は温度が高くなるとシ カ粒子の電荷密度が大きくなり、コロイド 晶が析出する性質を有することとなる。こ コロイド分散液をコロイド結晶が析出して ない状態で容器に入れる。そして、容器の 端側を温めて局所的に該コロイド結晶が析 する温度に設定する。さらにコロイド結晶 析出する温度に設定された範囲を徐々に拡 させて、コロイド結晶を成長させる。こう て得られたコロイド結晶は、極めて大きな 結晶となり、しかも格子欠陥や不均一性も ないものとなった。このため、吸収スペク ル及び反射スペクトルにおける半値幅を20nm 以下という極めて狭い範囲に設定することが できた。また、回折波長の空間不均一性も2.0 %以下と極めて高品質なものとすることがで た。ここで空間不均一性とは、反射分光や 過分光によって測定されたコロイド結晶の 折波長の空間的な分布の標準偏差を、回折 長の加重平均値で除した値を100分率表示し ものである(以下同じ)。
B. J. Ackerson and N. A. Clark, Phys. Rev. A 30, 906, (1984) T. Palberg, W. Moench, J. Schwarz and P. Leide rer, J. Chem. Phys. 102, 5082, (1995) J. M. Weissman, H. B. Sunkara, A. S. Tse and S. A. Asher, Science, 274, 959, (1996) N. Wakabayashi, J. Yamanaka, M. Murai, K. Ito, T.Sawada, and M.Yonese Langmuir ,22,7936-7941,(2006)

特開平11-319539号公報

特開2004-89996号公報

特開2008-93654号公報

 上記特許文献3に記載のコロイド結晶の製 造方法では、コロイド分散液からコロイド結 晶が析出する温度が、ピリジンの濃度のみな らず、僅かなイオン性の不純物によっても変 化するため、再現性良くコロイド結晶を析出 させるには、薬品や溶媒の純度や、容器の洗 浄等に細心の注意が必要であるという問題が あった。本発明は、こうした従来の実情に鑑 みてなされたものであり、大型で、格子欠陥 や不均一性の少ないコロイド結晶を容易かつ 安価であって確実に製造することができる、 コロイド結晶の製造方法を提供することを解 決すべき課題としている。

 本発明のコロイド結晶の製造方法は、所 の温度でコロイド多結晶が融解するコロイ 多結晶分散液を用意する準備工程と、該コ イド多結晶分散液を容器に収容する収容工 と、該容器内のコロイド多結晶分散液の一 の領域又は全部の領域の温度をコロイド結 が析出しない温度とした後、再びコロイド 晶が析出する温度に変化させることによっ コロイド多結晶を再結晶させる再結晶工程 を有することを特徴とする。

 本発明のコロイド結晶の製造方法では、 ず準備工程において、所定の温度で該コロ ド多結晶が融解するコロイド多結晶分散液 用意する。そして、収容工程において、コ イド多結晶が析出しているコロイド多結晶 散液を容器に収容する。さらに、再結晶工 において、容器内のコロイド多結晶分散液 一部の領域又は全部の領域の温度をコロイ 結晶が析出しない温度とした後、再びコロ ド結晶が析出する温度に変化させる。すな ち、前もってコロイド多結晶が析出してい コロイド多結晶分散液を用いて、これを融 後再結晶させるため、確実に再結晶を行う とができる。このため、薬品や溶媒の純度 、容器の洗浄等にそれほどの注意を払わな ても、再現性良くコロイド結晶を析出させ ことができる。また、発明者らの試験結果 よれば、こうして得られたコロイド結晶は 極めて大きな単結晶となり、しかも格子欠 や不均一性も少ないものとなった。

 従って、本発明のコロイド結晶の製造方 によれば、大型で、格子欠陥や不均一性の ないコロイド結晶を容易かつ安価であって 実に製造することができる。

 本発明のコロイド結晶の製造方法におい 、再結晶工程では、温度調節手段によりコ イド多結晶分散液の一部をコロイド結晶が 解する温度に設定して融解領域を形成させ 該融解領域を移動させるゾーンメルト法に って再結晶させることができる。この方法 よれば、巨大なコロイド単結晶を容易に製 することができる。しかも、コロイド多結 分散液中に不純物コロイド粒子が存在して る場合、コロイド単結晶中に不純物コロイ 粒子が入ることが阻止されるという効果も する。

 ここで、融解領域の移動は温度調節手段と 器との相対移動を可能とする移動手段によ て行なうことができる。融解領域の移動を のようにして行なえば、融解領域の相対移 速度を遅くして融解状態から結晶状態への 結晶をゆっくりさせて単結晶の大型化を図 たり、融解領域の相対移動速度を速くして 結晶を速く作製したりして、再結晶化の制 が容易となる。このため、目的に応じてコ イド結晶の品質と製造の効率化とのバラン を図ることが可能となる。
 なお、融解領域の移動は、容器を移動させ ことによって行なってもよいし、温度調節 段を移動させることによって行なってもよ し、容器及び温度調節手段の双方を移動さ ることによって行なってもよい。
 また、融解領域の移動速度については、コ イド多結晶分散液の組成や融解領域の温度 によって適宜選択すればよいが、通常10mm/ 以下が好ましく、さらに好ましいのは2mm/分 下である。融解領域の移動速度が速すぎる 、大きなコロイド単結晶が析出し難くなる らである。

 また、収容工程において、コロイド多結 分散液は略平行に対面する2つの壁の間に充 填されていることが好ましい。こうであれば 、容器内での自由な対流が起こり難くなるた め、コロイド結晶の成長が乱され難くなり、 さらに大型で、格子欠陥や不均一性の少ない 単結晶を製造することができる。この場合に おいて、コロイド分散系の温度を変化させる 方向としては、壁に平行の方向あるいは壁に 垂直な方向のどちらでもよい。また、エチレ ングリコール、グリセリンなどの高粘性液体 をコロイド分散媒として用いても、対流は起 こりにくくなるため、同様の効果が得られる 。

 所定の温度においてコロイド多結晶が融解 るコロイド多結晶分散液とするための方法 して、温度変化によって解離度が変化する 酸又は弱塩基を添加しておくことが挙げら る。例えば、弱塩基であるピリジンの解離 は昇温と共に増加する(電気伝導度測定によ り決定した、ピリジンの無塩水溶液における pK b 値は、10及び50℃において9.28および8.53であり 、温度と共に直線的に減少した)。従って、 リジンをシリカコロイド分散系のようなコ イド分散系に共存させた場合、昇温に伴い ロイド粒子の有効表面電荷密度σ e 値が増加すると考えられる。しかも、種々の 温度における上記の解離は、通常の使用条件 において系の温度変化に要する時間よりもは るかに短時間で平衡状態となる。すなわち、 σ e 値は試料温度により一義的に決まり、それま での温度履歴等に依らないため、コロイド多 結晶分散液の融解及び再結晶化が熱可逆的に 起こる。

 以下に、温度変化によって解離度が変化す 弱塩基、弱酸および塩を例示するがこれら 限定されるものではない。好ましい弱塩基 しては、例えば、ピリジンおよびピリジン 導体(モノメチルピリジン、ジメチルピリジ ン、トリメチルピリジン等)が挙げられ、こ らは温度上昇とともに解離度が増加する。 れらのピリジンまたはピリジン誘導体は、 リカ粒子の結晶化に対して好適なpK b 値を有し、またpK b 値の温度による変化が充分に大きいという理 由から本発明において用いられるのに特に好 ましい。弱塩基としては、この他に、ウラシ ル、キノリン、トルイジン、アニリン(及び れらの誘導体)等も使用することができ、こ らも昇温とともに解離度が増加する。

 一方、弱酸としては、水溶液中で温度上 とともに解離度が減少する酸、例えば、ギ 、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロル酢酸 リン酸、シュウ酸、マロン酸等を挙げるこ ができる。一方、ホウ酸や炭酸のように、 温とともに解離度が増加するような酸を用 ることもできる。さらに、上記のごとき弱 基と弱酸の中和により得られる塩も解離度 温度依存性があり、本発明における弱電離 質として使用できる。温度に依存して解離 が増加するか減少するかは、当該酸と塩基 強さの大小関係に依る。

 また、弱酸や弱塩基を単独で用いるので なく、弱酸-強塩基の混合系や、弱塩基-強 の混合系等も用いることができる。

 また、所定の温度においてコロイド結晶 析出するコロイド多結晶分散液とするため 方法として、媒体の誘電率の温度変化を利 することもできる。すなわち、コロイド粒 間の静電相互作用は誘電率の減少とともに 加するが、通常の液体の誘電率は温度とと に減少するため、加熱により誘電率を変化 せてコロイド結晶を析出させることもでき 。

 また、コロイド多結晶分散液のコロイド 子はシリカ粒子であり、分散媒は水であり 弱塩基はピリジン及び/又はピリジン誘導体 とすることができる。このようなコロイド多 結晶分散液により、確実に大型で、格子欠陥 や不均一性の少ない単結晶を製造することが できる。

 また、コロイド多結晶分散液に強塩基を 加しても、所定の温度でコロイド結晶を析 させることができる。強塩基の解離度に対 る温度依存性は低いと考えられるが、それ もかかわらず、強塩基を添加してもコロイ 結晶を析出することができるのは、温度変 による該コロイド多結晶分散液の誘電率の 化や、温度変化によるコロイド粒子表面の 能基の解離度の変化によるものと考えられ 。さらには、コロイド多結晶分散液に何も 加しなくても、温度を変化させてコロイド 結晶分散液の誘電率や、コロイド粒子表面 官能基の解離度を変化させることにより、 ロイド結晶を析出させることができる。

 また、コロイド結晶を成長させた後、ゲ 化により固化することもできる。このよう 、ゲル化によりコロイド結晶を固化すれば 温度をコロイド結晶が析出しない温度に戻 たとしても、コロイド結晶の構造を保持す ことができる。また、コロイド結晶の機械 強度を飛躍的に高めることができる。さら 、ゲル化したコロイド結晶は、ゲルマトリ ス固有の特性を併せ持つ材料となる。例え ゲル化したコロイド結晶を機械的に圧縮さ て、変形させた場合、結晶格子面間隔も変 するため、回折波長を制御することができ 材料となる。ゲル化したコロイド結晶は、 体の種類、温度やpHなどの物理的・化学的 境に応答して膨潤したり収縮したりする。 た、特定の分子と特異的に結合する官能基 導入すると、その分子種の濃度に依存して 積が変化する。こうした性質を利用し、回 波長のシフトを測定することにより、温度 pH、様々な分子種等のセンシングが可能とな る。

 ゲル化の方法としては、コロイド多結晶 散液に光硬化性樹脂を分散させておき、コ イド結晶を析出させた後に、光を照射して ル化する方法などが挙げられる。この場合 おいて、光硬化性ゲル化剤は、イオンの発 の少ない材料を選択することが好ましい。 オンの発生する光硬化性ゲル化剤を用いた 合、コロイド多結晶分散液中に分散してい 荷電コロイドの表面電位が変化して、コロ ドの状態変化が起きる可能性があるからで る。このような、イオン発生の少ない光硬 性ゲル化剤としては、ゲルモノマー、架橋 及び光重合開始剤を含む溶液等が挙げられ 。ゲルモノマーとしては、アクリルアミド びその誘導体などのビニル系モノマー、架 剤としては、N,N’-メチレンビスアクリルア ミド、また光重合開始剤としては、2,2’-ア ビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピ オンアミド]等が挙げられる。この他、アジ 系感光基をポリビニルアルコールにペンダ トした水溶性の感光性樹脂等も用いること できる。

 本発明のコロイド結晶の製造方法におい 、再結晶工程では、温度調節手段により容 の一端側から冷却又は加熱してコロイド多 晶分散液中のコロイド多結晶を融解させた 、該温度調節手段による冷却又は加熱を停 して再結晶させることもできる。

 本発明者らの試験結果によれば、このよ なコロイド結晶の再結晶化方法を用いても 型で、格子欠陥や不均一性の少ないコロイ 結晶を確実に製造することができる。また この方法によれば、ゾーンメルト法のよう 融解領域を移動させる必要はないため、装 が簡単となり、ひいてはコロイド結晶の製 コストを低廉化することができる。

 本発明の製造方法で得られたコロイド結 は、吸収スペクトル及び反射スペクトルに ける半値幅を10nm以下という極めて狭い範囲 に設定することができる。また、回折波長の 空間不均一性も0.2%以下とすることができる ここで空間不均一性とは、反射分光や透過 光によって測定されたコロイド結晶の回折 長の空間的な分布の標準偏差を、回折波長 加重平均値で除した値を100分率表示したも である(以下同じ)。

 また、本発明の製造方法では、回折波長 400~800nmの範囲内であり、該回折波長の不均 性が0.2%以下であり、該回折波長での透過率 が厚さ1mmにおいて0.1%以下であり、結晶格子 の層数が3000層以上であり、最大径が1cm以上 単結晶からなるコロイド結晶を得ることが きる。

 このようなコロイド結晶では、回折波長 400~800nmの範囲内であるため、可視光の回折 可能となる。また、回折波長の空間不均一 が0.2%以下であり、回折する波長の精度が極 めて高い。また、回折波長での透過率が0.1% 下であることから、回折の効率も極めてよ 。こうした特性から、フォトニック結晶と て光通信コネクタ、光増幅等の光電子素子 カラー映像機器、高出力レーザー、化粧品 装飾品分野等へ適用することができる。

コロイド多結晶分散液の融解試験から求めた ピリジン濃度と融点T m 及び凝固点T f との関係を示すグラフである。 コロイド多結晶分散液の融解曲線を求 るための実験装置の模式図である。 コロイド多結晶分散液の融解曲線を示 グラフである。 ゾーンメルト法によるコロイド結晶の 出に使用した装置の模式図である。 ゾーンメルト法によるコロイド結晶の 出前後の写真である。 ペルチェ素子の移動速度を変えた場合 、コロイド結晶の外観及び結晶サイズを示 図である。 ゾーンメルト法によるコロイド結晶の 結晶化を行なった場合の、セル表面温度を 外線式サーモグラフィー装置で測定した結 を示す写真である。 ゾーンメルト法による不純物排除試験 の写真である。 コロイド結晶について蛍光画像を撮影 た写真の蛍光輝度分布を測定したグラフで る。 ゾーンメルト法による再結晶化の原理 を示す図である。 実施例3のコロイド結晶の製造方法に いた装置の模式図である。 再結晶を行なった後のコロイド結晶の 写真である。 一方向からの冷却後に冷却を停止して コロイド結晶を析出させる方法における経過 時間と各部における温度との関係を示すグラ フである。 ピリジン濃度が47.5μMOL/L、シリカコロ ドの体積分率(φ)を0.035として再結晶を行な た後のコロイド結晶の写真及び多結晶領域 び再結晶領域の透過スペクトルを示すグラ である。 コロイド多結晶分散液中のピリジン濃 度と半値幅との関係を示すグラフである。 再結晶領域のコッセル線解析で得られ た回折像である。 実施例3-3においてゲル化されたコロイ ド結晶の写真である。 実施例3-3におけるゾーンメルト法が適 用されていない部分とゾーンメルト法が適用 された部分の透過スペクトルである。

 1、C…石英セル(容器)
 2,12…熱電対
 3…水槽(温度調節手段)
 4…自動X軸ステージ(移動手段)
 5…基台
 6…ステージ
 7…ステッピングモータ
 9…ペルチェ素子
 10…凸部材
 11a,b…断熱部材

 本発明において用いられるコロイド多結晶 散液の例として特に好ましいのは、シリカ 粒子が水に分散された系である。このシリ 微粒子は水中に分散されると、その表面を っている弱酸性のシラノール基(Si-OH)のOHの 部が解離してSi-O - となるとともに、その周囲に対イオンと呼ば れるプラスイオン(H + )が分布する。この系にピリジンのような電 物質を添加するとシラノール基の解離度が 化し、粒子の有効表面電荷密度σ e が変化するこのように有効表面電荷密度σ e が比較的容易に制御できるという特性はシリ カ粒子のメリットであり、これを利用してコ ロイド結晶を調製することができる。

 しかし、本発明のコロイド結晶の製造方 において用いられるコロイド多結晶分散液 、シリカ-水系に限られるものではなく、表 面に弱酸または弱塩基に由来する電荷を有す るコロイド粒子が液体媒質に分散され、上述 したような弱電離物質を添加すると該電離物 質が液体媒質中で解離(電離)するとともに、 ロイド粒子表面の電荷が変化し得るような の他のイオン性コロイド分散系にも適用で る。

 すなわち、コロイド粒子として、表面に 酸を有するものであればシリカと同様に使 可能であり、例えば、酸化チタン微粒子や ルボキシ変成ラテックス(表面にカルボキシ ル基を有するラテックス)等を使用すること できる。さらに、表面に弱塩基を持つもの あれば、弱酸を添加することにより、シリ +ピリジン系と類似の機能を発現させること でき、これに該当するコロイド粒子として 酸化アルミニウムやアミノ基を有するラテ クス等を挙げることができる。また、粒子 表面が上記のような性質を持っておればよ ため、シリカや酸化チタン層などで表面を ートした粒子についても、本発明は適用で る。

 また、弱酸と弱塩基の両方をもつ球状タ パク質や粘土鉱物から成るコロイド系にも 用可能である。さらに、アミノ基を有する ランカップリング剤を用いてシリカ粒子表 に弱塩基を導入するなどの表面修飾法によ 、種々の弱酸や弱塩基が粒子表面に導入さ た各種のコロイド粒子を含むコロイド多結 分散液にも本発明は適用できる。

 また、分散媒に関しては、コロイド粒子 面の解離基(電荷付与基)及び添加した弱電 物質(弱酸、弱塩基、塩)が解離できるような 高い誘電率を呈することができれば、水以外 の液体も使用可能である。例えば、フォルム アミド類(例えば、ジメチルフォルムアミド) アルコール類(例えば、エチレングリコール 類)を使用することができる。これらはコロ ド粒子および添加する弱電離物質の組合せ よってはそのまま使用することもできるが 一般的には水との混合物として使用するの 好ましい。

 弱酸や弱塩基を添加するコロイド多結晶 散液は、市販のコロイド用粒子を水などの 当な分散媒に分散させたり、ゾル-ゲル法な どにより合成したものを用いればよいが、一 般に、コロイド結晶は微量の塩(イオン性不 物)の存在によってその生成が阻害されるた 、コロイド分散系の調製にあたっては充分 脱塩を行うことが好ましい。例えば、水を いる場合には、まず精製水に対して、用い 水の電気伝導度が使用前の値と同程度にな まで透析を行い、次に充分に洗浄したイオ 交換樹脂(陽イオンおよび陰イオン交換樹脂 の混床)を試料に共存して少なくとも1週間保 ことにより、脱塩精製を行う。

 さらに、コロイド粒子の粒径およびその 布にも注意を払う必要がある。コロイド粒 の粒子径は600nm以下であることが好ましく さらに好ましくは300nm以下である。粒子径が 600nmを超えるような大きな粒子径のコロイド 子の場合には、重力の影響で沈降し易くな からである。また、コロイド粒子の粒子径 標準偏差は、15%以内が好ましく、さらに好 しくは10%以下である。標準偏差が大きくな と、結晶が生じにくく、また結晶を生じて 、格子欠陥や不均一性が増し、高品質のコ イド結晶が得られ難くなる。

 弱電離物質を添加することによって、温度 化でコロイド結晶を生成させるコロイド多 晶分散液の場合、荷電コロイド系における 晶化を支配するコロイド粒子間の静電的相 作用は、該粒子の有効表面電荷密度(σ e )のみならず、粒子の体積分率(φ)や添加塩濃 (Cs)によっても影響される。したがって、コ ロイドの結晶化が起こる温度や弱電離物質の 添加量は、当初のコロイド分散系のφやCsに って異なる。例えば、弱電離物質としてピ ジン(Py)を添加する場合、一定温度およびφ 件下で比較したとき、一般に、Cs値が高いほ どピリジン濃度の高い条件で結晶化が起こる 。

 一般的には、φ(コロイド粒子の体積分率) として0.01~0.05程度とし、Cs(添加塩濃度)は2~10 mol/L程度となるようにコロイド分散系を調製 し、これに弱電離物質を添加する。このため には、コロイド粒子の比重をピクメーター法 などにより求め、この値を用いて精製したコ ロイド分散系のコロイド粒子のφ値を絶乾法 より決定することができる。そして、この ロイド分散系に精製した水などの液体媒質 加えて希釈することにより、所定のφ値を する分散系を調製することができる。φ値は 、コロイド結晶が望まれる特性に応じた結晶 面間隔を有するように算出する。また、必要 に応じ、NaClなどの低分子塩水溶液を添加し Cs値を制御する。

 以上のコロイド多結晶分散液の調製にあた ては、イオン性不純物による汚染を可能な り避ける必要がある。この点において、塩 性不純物が水中に溶出するようなソーダ石 ガラス等は、粒子のσ e 値を増加させるため、ガラス容器を用いる場 合には、石英ガラスのような塩基性不純物が 水中に溶出しないガラスの容器の方が好まし い。また空気中の二酸化炭素は水に溶解して 炭酸を生じるため、窒素等の雰囲気下で調製 を行うことが望ましい。さらに、コロイドの 結晶化に用いる容器、器具類は精製水(電気 導度 0.6μS/cm以下)で充分洗浄したのち使用 る。

 以上のように調製したコロイド系を加熱 たは冷却し、結晶の有無を確認し、結晶化 度を評価することができる。結晶生成の確 には、イリデセンスの観察の他、X線散乱法 、光学顕微鏡法および分光光度法(反射また 透過スペクトル測定)等が適用できる。

 本発明のコロイド結晶の製造方法では、単 外部から系を加熱または冷却するという簡 な手段により、熱可逆的にコロイド粒子の 晶化を生じさせることができる。この結晶 は、ピリジン等の弱電離物質の濃度を変化 せることにより制御できるが、その際、弱 離物質の濃度はNaOHのような強塩基を添加す る場合のように厳密である必要もない。すな わち、添加した弱電離物質の濃度に比べその 解離種の濃度がごく少量であるため、弱電離 物質濃度に対するコロイド粒子の表面電荷密 度(σ e )の変化が強塩基を添加した場合より緩やか あり、ある程度の濃度範囲が許容されるこ が利点である。
 また、弱電離物質の濃度を変化させること 、結晶化温度を容易に調節出来る。すでに ピリジンを用いたシリカ/水系のコロイドで は、2~60℃の範囲で調整出来ることを確認し いる。

 また、本発明においては系を密閉系に保 ことができるため、イオン性不純物による 染を防いで高性能のコロイド結晶を得るこ ができる。かくして、本発明は、光応答特 を制御できる光学素子などの製造に、広範 応用が期待される。

 本発明のコロイド結晶の製造方法は、表 に電荷を有するコロイド粒子、該コロイド 子を分散させる分散媒、および該分散媒中 おいて解離度が温度変化とともに変化する 電離物質を含むコロイド系を利用し、これ 外部から温度変化を与えてコロイド結晶を 成させることができる。このような弱電離 質含有コロイド系は温度変化により可逆的 結晶化し物性が変化するので、この性質を 用して、コロイド結晶の製造以外にも応用 ることが可能である。

 例えば、温度変化により物性が変わるこ を利用した新規な感熱性材料(感熱性塗料、 温度センサーなど)の開発が可能となる。ま 、昇温によりコロイド系が結晶化するよう 系を用いれば、系の粘性は温度とともに増 することが期待される。一方、通常の単純 体においては、一般に粘性は温度増加にと ない単調に減少する。このような特異な粘 -温度特性を利用して、例えば従来の応力伝 系に用いられる液体(クラッチ用のオイルな ど)の温度特性の改善などへの応用も期待さ る。

 以下、本発明をさらに具体化した実施例 ついて詳細に述べる。

<コロイド多結晶分散液の調製>
 コロイド多結晶分散液は次のようにして調 した。
 日本触媒社製シリカコロイド粒子KE-W10(直径 0.11±0.01μm 比重2.1)を半透膜による透析及び オン交換樹脂によるイオン交換法を用いて 製した。こうしてイオンが除かれたシリカ ロイドを体積分率(φ)=0.050となるように調整 、ピリジンを所定の濃度となるように添加 て、コロイド多結晶分散液とした。このコ イド多結晶分散液は、室温において強く振 混ぜたときには白濁した液となるが、その ま静置すると1分以内にキラキラと干渉色で 輝く微細なコロイド多結晶が肉眼によって観 察された。

<コロイド多結晶分散液の融解試験>
 こうして得られたコロイド多結晶分散液に いて、コロイド結晶の融解試験を行なった すなわち、コロイド多結晶分散液を内法が さ1mm、幅1cm、長さ4.5cmの石英セル内に充填 、恒温槽内に入れ、全体の温度を低下させ がら融点を測定した。融点に達したかどう は肉眼による観察で行った。すなわち、コ イド結晶が融解すると、キラキラと干渉色 輝くコロイド多結晶状態から、輝く点が散 する固液共存状態を経て白濁した溶融状態 変化する。そして、融解状態から固液共存 態へ移行するときの温度を融点T m 、固液共存状態から結晶状態へ移行するとき の温度を凝固点T f とし、さまざまなピリジン濃度で融点T m 及び凝固点T f を測定した。

 その結果、図1に示すように、T m 及びT f は添加したピリジンの濃度に依存し、ピリジ ンの濃度が高いほどT m 及びT f が低下し、ピリジンの添加量によってT m 及びT f の値を制御できることが分かった。

 さらに、以下に示す溶融試験を行った。す わち、図2に示すように、上記コロイド多結 晶分散液を充填した石英セル1を水平方向に 定し、上面側に多数の熱電対2を幅方向の中 部分であって長さ方向に等間隔で設置し、 部の温度を計測可能とした。そして、石英 ル1の一端側を図示しない冷却水循環装置に 接続された水槽3に接触させて所定温度(0℃、 3℃、7℃)の冷水を循環させながら、一端側か ら他端側へコロイド結晶を融解させた。コロ イド結晶の融解の様子は肉眼によって明確に 確認することができた。すなわち、水槽3を 英セル1に接触させる前は、セル全体が干渉 が観察される結晶領域であったのに対し、 槽3を石英セル1の一端に接触させた後は、 ロイド結晶が融解した白濁した状態の融解 域が一端側から他端側に広がっていくのが 察された。さらに、融解領域と結晶領域の には光る点が散在し、液晶状態と考えられ 固液共存領域が認められた。そして、融解 域と固液共存領域との境界の温度を融点T m 、固液共存領域と結晶領域との境界の温度を 凝固点T f として測定した。

 その結果、図3に示す融解曲線(図中のLは水 3からの距離を示す)が得られた。各T m の値は図1で得られたT m の値からの計算値とよい一致を示した。

<ゾーンメルト法によるコロイド結晶の析 >
(実施例1-1)
 実施例1-1では以下に示すゾーンメルト法に って微細なコロイド多結晶から巨大なコロ ド単結晶を調製した。
 まず、日本触媒社製シリカコロイド粒子KE-W 10(直径0.11±0.01μm 比重2.1)を半透膜による透 及びイオン交換樹脂によるイオン交換法を いて精製した。こうしてイオンが除かれた リカコロイドを体積分率(φ)=0.050となるよう 調整し、ピリジンを50μmol/Lとなるように添 して、コロイド多結晶分散液とした。この ロイド多結晶分散液は、室温で静置すると ラキラと輝く微細なコロイド多結晶が肉眼 よって観察された。なお、このコロイド多 晶分散液を別途石英セルに入れ、微細なコ イド多結晶を析出させてから冷却し、コロ ド結晶が融解する温度を測定したところ、1 0℃であった。

 この微細なコロイド多結晶が分散されてい コロイド多結晶分散液を、図4に示す、内法 が厚さ1mm、幅1cm、長さ4.5cmの石英セルC内に充 填し、市販の自動X軸ステージ4に、水平面と 行になるように石英セルCを設置した。この 自動X軸ステージ4は基台5上に矩形のステージ 6が設けられており、基台5の一端にステッピ グモータ7が取り付けられている。ステージ 6はステッピングモータ7の駆動により、図示 ないラック-ピニオン機構を介して長手方向 に移動可能とされており、図示しない制御装 置によってステッピングモータ7を制御する とにより、ステージ6は所定の速度で一方向 移動可能とされている。
 また、自動X軸ステージ4を跨ぐようにして 字形状の治具8が設置されており、治具8の中 央下側にはペルチェ素子9が下側を冷却側と るように取り付けられている。ペルチェ素 9の下面側中央にはアルミ製で薄板状の凸部 10が、ペルチェ素子9と当接しつつ下方に突 して設置されている。凸部材10の幅方向は 英セルCの幅方向と同じとされており、凸部 10の先端は石英セルCと接触している。ペル ェ素子9は図示しない電源からの電力の供給 により、下面側が所定の温度となるように冷 却可能とされている。また凸部材10と僅かな 間を介して断熱部材11a、bが対面して両側に 設けられている。さらに、凸部材10の先端近 には熱電対12が取り付けられている。

 この自動X軸ステージ4のステージ6にコロ ド多結晶分散液を入れた石英セルCを取り付 けたところ、取り付け後1分以内にコロイド 晶が析出するのが肉眼で観察された。こう てコロイド結晶が析出した後、ペルチェ素 9に電力を供給するとともに、制御装置によ てステッピングモータ7を駆動し、ステージ 6を2mm/分の速度で一方向に移動させた。これ より、ペルチェ素子9の冷却面に当接した凸 部材10が冷却され、石英セルCの凸部材10と対 する部分が所定の温度に冷却される。そし ステージ6とともに石英セルCが移動するこ によって、石英セルCの冷却される部分を2mm/ 分の速度で一方向に移動させた。

 図5に再結晶前と、ゾーンメルト法によっ て再結晶させた後との様子を示す。この写真 から、再結晶前には微細な多結晶が数多く観 察されたものが、再結晶化後には均質な干渉 色となり、単結晶化が進んだことが分かった 。さらに、こうして得られたコロイド結晶の 反射スペクトル及び吸収スペクトルをファイ バー分光法により測定した。その結果、その 半値幅は再結晶前には6.33nmだったものが、再 結晶化後には5.28nmとなり(回折波長は結晶化 後共に554nm)、再結晶化により結晶の光学特 が向上することが分かった。

 得られたコロイド単結晶の結晶格子面の層 をBragg式より次のように算定した。すなわ 、Bragg式より2d・sinθ=N・λ/n r (ここでdは格子面の間隔、θは入射光と格子 のなす角、Nは自然数、λは回折波長、n r は試料の屈折率)となる。実施例1の測定では θ=90°(sinθ=1)、N=1であり、n r =φn シリカ粒子 +(1-φ)n (n シリカ粒子 =1.46、n =1.33)と近似できる。φ=0.050ではn r =1.45となり、d=λ/(2nr)=191nmと算出される。この ため、厚さ1mmの結晶中では結晶格子面の数は 約5200(層)となり、層数も極めて多いことが分 かった。

 また、場所による回折波長の違いを調べ ところ、回折波長の変動もごく僅か(1nm以下 )であり、その空間不均一性は反射スペクト 測定で0.04%:透過スペクトル測定で0.05%と算出 され、極めて優れた均一性を有することが分 かった。さらには、厚さ1mmにおける回折波長 での透過率は0.009であり、回折格子として優 た性能を示すことが分かった。また、回折 長から少し外れた波長での透過率は大きく 回折波長以外では優れた透明性を有するこ が分かった。

(実施例1-2~1-4)
 実施例1-2~1-4では、ペルチェ素子9の移動速 を実施例1-1の場合と異なる速度(すなわち、 施例1-2では18mm/分、実施例1-3では30mm/分、実 施例1-4では42mm/分)でコロイド結晶を調製した 。その他の調製条件は実施例1-1と同様である 。結果を図6に示す。この図より、冷却部分( なわちコロイド多結晶の融解域)の移動速度 νが大きくなるほど、結晶サイズが小さくな ことが分かった。

 また、実施例1-1(すなわちν=2mm/分)のコロ ド結晶調製において、ペルチェ素子9と反対 側のセル表面温度を赤外線式サーモグラフィ ー装置(NEC/Avio社製TH6300型)を用いて測定した 結果を図7に示す。図7(a)は5分毎の温度分布 画像を示す。また、図7(b)は図7(a)の各画像中 に示した横線上の位置x(セル左端からの距離) と温度との関係を示した図である。図7(a)に いて、15℃以下の最も暗く見える部分はペル チェ素子9であり、これに接触している部分 コロイド結晶の融解域である。

 また、同様の表面温度測定を実施例1-4(ν= 42mm/分)、実施例1-3(ν=30mm/分)及び実施例1-2(ν=1 8mm/分)についても行った。その結果、ペルチ 素子9と接触している側と反対側のセル表面 の温度は、実施例1-4で23℃、実施例1-3で22℃ 実施例1-2で18℃であった。

<ゾーンメルト法による不純物排除実験>
(実施例2-1)
 実施例2-1では、蛍光ポリスチレン粒子を模 不純物とし、ゾーンメルト法による不純物 子の排除試験を行なった。以下にその試験 法を詳述する。
 すなわち、精製したシリカコロイド(粒径=10 0nm、粒子濃度=5vol%)にピリジン50μmol/Lを添加 た分散液に、モデル不純物として蛍光ポリ チレン微粒子(粒径=100nm)を粒子濃度=0.02vol%と なるように加えた。このように調製したコロ イド多結晶分散液は、1mm以下の微結晶の集合 体であった。このコロイド多結晶分散液を1× 1×4.5cmの石英セルに入れ、実施例1-1で用いた ーンメルト装置を用い、25℃において、凸 材10の先端が3℃となるようにペルチェ素子9 制御しながら、速さ2mm/分でセルの右端から 左向きに約3cm移動させて、ゾーンメルト処理 を行なった。こうして得られたコロイド結晶 の外観を図8に示す。図中に矢印で示した部 がゾーンメルト処理を施した部分であり、 ロイド単結晶が析出していることが分かる ゾーンメルト処理を施した部分の左側端に 、多結晶領域が残存していた。さらに、蛍 顕微鏡を用いて蛍光粒子の分布を調べた結 を図8に示す。図8の上側の図に示す(a)(多結 領域)、(b)(境界領域)及び(c)(再結晶領域)にお ける蛍光顕微鏡像が図8の下の図である。(a) は明瞭な蛍光が観測されたが、(c)ではほと ど観察されなかった。以上の結果から、単 晶部分から模擬不純物である蛍光粒子が排 されたことが分かった。

(実施例2-2)
 実施例2-2では、蛍光ポリスチレン微粒子(粒 径=100nm)を粒子濃度=0.0005vol%となるように加え 、ピリジン濃度は55μmol/Lとした。その他の条 件は実施例2-1と同様であり、詳細な説明を省 略する。

 こうして得られたコロイド結晶について 1mm間隔で蛍光画像を撮影し,画像解析ソフト を用いて蛍光輝度を測定した。結果を図9に す。この図からゾーンメルト処理後は、ゾ ンメルト処理前に比べて、再結晶領域の輝 が減少し,境界部分で輝度が極大を持つこと 明らかになった。すなわち、ゾーンメルト 理によって蛍光ポリスチレン粒子は再結晶 分から排除され、境界に集積することが分 った。

 以上の結果は、従来シリコン等の単結晶 得るのに利用されていたゾーンメルト法が コロイド結晶系においても適用できること 意味するものである。すなわち、結晶グレ ン境界は結晶内部よりも融点が低いため、 ーンメルト法によりコロイド多結晶を冷却 て微小な結晶グレインを融解させ、再び加 して結晶化させた場合、周囲の結晶配向と じ配向を持つ結晶が再構築されて、単結晶 が進行する(図10参照)。また、その他の結晶 欠陥(例えば空孔、双晶欠陥など)についても 同様に、融解/再結晶化を行なうゾーンメル ト法によって、除去することができると推測 される。

<一方向からの冷却後に冷却を停止してコ イド結晶を析出させる方法によるコロイド 晶の調製>
(実施例3)
 実施例3では、コロイド多結晶からなるコロ イド多結晶分散液を充填した石英セルを一方 向から冷却した後、冷却を停止して再結晶さ せ、微細なコロイド多結晶から巨大なコロイ ド単結晶を調製した。
 結晶化用コロイド多結晶分散液におけるシ カコロイドの体積分率(φ)を0.035とし、ピリ ン濃度は50μmol/Lとした。コロイド多結晶分 液を調製するための他の条件は実施例1と同 様であり、説明を省略する。こうして得られ たコロイド多結晶分散液を実施例1の場合と 様の石英セルに充填し、図11に示すように石 英セル20を水平方向に固定し、上面側に4つの 熱電対21を幅方向の中央部分において当接さ 、各部の温度を計測可能にセットした。そ て、石英セル20の一端側を図示しない冷却 循環装置に接続された水槽22に接触させて0 とし、一端側から他端側へコロイド結晶を 解させた後、水槽22を石英セル20から離して びコロイド結晶を析出させた。熱電対21は 水槽22から距離が2.5mm、7.5mm、12.5mm及び17.5mm 位置に設置した。また、熱電対21からの信号 はA/Dコンバータ23でデジタル化し、デジタル ータとしてパソコン24に取り込んだ。

 コロイド結晶の析出の様子を肉眼で観察 たところ、コロイド結晶の融解の様子が肉 によって明確に確認できた。すなわち、水 22による冷却を停止したところ、水槽22に近 い側にはコロイド結晶が融解した白濁した状 態の融解領域認められ、水槽22から遠い側に コロイド結晶が融解しておらず干渉色が観 される結晶領域が認められた。

 こうしてコロイド結晶を析出させた場合 写真を図12に示し、各部の温度を図13に示す (図13中のmmは水槽22からの距離を示す)。図12 示すように、コロイド多結晶が融解-再結晶 た均質な干渉色を示す単結晶化領域と、コ イド多結晶が融解せずにそのまま残った領 とが明確に区別できた。また、再結晶した 分及び再結晶しなかった部分について反射 ペクトルを測定したところ、どちらも中心 長は620nmであったが、その半値幅は再結晶 なかった部分は5.47nmであったのに対し、再 晶部分では4.64nmと小さくなり、優れた光学 性質を持つことが分かった。

 また、透過スペクトルを測定したところ 図14に示すように、再結晶しなかった部分 場所ごとにスペクトルが異なっていたのに し、再結晶領域ではどこでもほぼ同じスペ トルが得られ、光学的な均質性に優れてい ことが分かった。

 さらに、コロイド多結晶分散液中のピリ ン濃度を40μmol/L、47.5μmol/L及び50μmol/Lと変 て同様に試験を行ない、多結晶領域及び再 晶領域の反射スペクトルを測定した。その 果、図15に示すように、ピリジン濃度が低い ほど、半値幅が小さくなった。

 また、ピリジン濃度が50μmol/Lのコロイド 結晶分散液を用いて調製したコロイド再結 領域のコッセル線解析を行った。コッセル とは、元来、X線を単結晶物質に照射したと き、結晶内部で2次的に発生した特性X線が点 源として働き、その光を様々な結晶格子面 回折することにより得られる特徴的な回折 ターンを指すものであり、コッセル線の解 により、結晶格子の配向や格子構造が決定 きる。この方法を上記のコロイド結晶に応 し、澤田らの方法(T. Kanai, T. Sawada, I. Maki , K. Kitamura. Jpn. J. Appl. Phys., vol. 42, p. L6 55 (2003))にならってコッセル線解析を行なっ 。コロイド結晶は格子面間隔が光の波長の ーダーのため、X線ではなくレーザー光を用 いた。点光源と同等なものとして試料セルと レーザー光源の間に光拡散板を設け、円錐状 に広がった入射光を得た。(コッセル線解析 置の模式図はA.Toyotama, J.Yamanaka, M.Yonese, T.Sa wada, F.Uchida、J.Am.Chem.Soc. vol.129, p.3044 (2007) Supporting Informationに記載されている)。この 法によれば、コロイド結晶に入射した円錐 の光のうち、回折により除かれた部分が影 なって観察される。図16に、このようにして 得られた単結晶のコッセル線写真を示す。中 央のリング状のパターンはセル壁面に平行に 配向した、BCC{110}面からの回折であり、また ングの周囲にあるパターンは、BCC{200}面に るものであることが結論される(A.Toyotama, J.Y amanaka, M.Yonese, T.Sawada, F.Uchida、J.Am.Chem.Soc. v ol.129, p.3044 (2007))。この図から分かるように 、よく配向した単結晶が形成されていること が支持された。

<コロイド結晶のゲル化>
(実施例3-1~3-3)
 上記の方法で調製したコロイド結晶を、公 の方法(特願2004-375594:ゲル固定化コロイド結 晶(発明者:山中淳平、村井雅子、山田浩司、 崎宙志、内田文生、澤田勉、豊玉彰子、伊 研策、瀧口義浩、平博仁 (特願2004-375594)  願人:宇宙航空研究開発機構、富士化学(株)) より固定化した。

 すなわち、まずN-メチロールアクリルアミ (以下「N-MAM」という)と、N,N’-メチレンビス アクリルアミド(以下「Bis」という)と、2,2’- アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プ ピオンアミド](以下「PA」という)と、シリ コロイド分散液と、ピリジンとを所定の割 で混合したシリカコロイド多結晶分散液を 意する。ここで、Bisは架橋剤としての役割 担い、PAは、光重合開始剤としての役割を担 う。シリカコロイド多結晶分散液の組成は、 シリカコロイドの体積分率(φ)を0.05、ピリジ 濃度を42.5μmol/Lとし、Bisは5mmol/L、PAは50μg/ml 、
N-MAMは195~390mmol/L(すなわち実施例3-1は195mmol/L 実施例3-2はmmol/L、実施例3-3は390mmol/L)とした

 こうして得られたシリカコロイド多結晶分 液を実施例1-1で用いたセルに入れて、暗室 でゾーンメルト法によりコロイド単結晶を 、さらにコロイド単結晶に紫外線を照射し N-MAMを重合させた。
 その結果、表1に示すように、N-MAMの濃度が いほど硬いゲル状態になることが分かった( 表中○は硬いゲル状態を示し、△は柔らかい ゲル状態を示し、×は流動状態でゲル化して ないことを示す)。

 実施例3-3のゲル化されたコロイド結晶の 真を図17に示す。ここで、ゾーンメルト法 よってコロイド多結晶の再結晶が行なわれ いるのは、右端から左へ15mmまでの間であり その間においては、ほぼ単一色からなる干 色が認められた。これに対し、ゾーンメル 法によるコロイド多結晶の再結晶が行なわ ていない部分は、様々な色からなるコロイ 多結晶が認められた。さらに、こうして得 れたゲル化したコロイド結晶の透過スペク ルを測定したところ、図18に示すように、 ーンメルト法が適用されていない部分の測 結果(a)では、測定箇所によってスペクトル 大きく異なるのに対し、ゾーンメルト法が 用されている部分の測定結果(b)では、ほぼ 一のスペクトルが得られ、ゾーンメルト法 適用により、コロイド結晶の単結晶化が進 していることが分かった。

 この発明は、上記発明の実施例の説明に ら限定されるものではない。特許請求の範 の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到で る範囲で種々の変形態様もこの発明に含ま る。