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Patent Searching and Data


Title:
PROCESS FOR PRODUCTION OF BIODEGRADABLE POLYMER
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/087910
Kind Code:
A1
Abstract:
A biodegradable polymer comprising a poly(hydroxycarboxylic acid) having a branched or crosslinked structure can be produced by using an organic onium salt as a catalyst for dehydrative polycondensation. The organic onium salt catalyst has a higher activity than those of conventional catalysts, and therefore enables the simplification of the production process for the biodegradable polymer and the improvement in production efficiency of the biodegradable polymer. The organic onium salt catalyst can be re-used, and therefore also enables the reduction in cost or waste materials. The biodegradable polymer can impart high strength and high elasticity to a molten product thereof and can also impart rheology properties required for melt molding to the molten product thereof, because the biodegradable polymer has a branched or crosslinked structure.

Inventors:
ABIKO ATSUSHI (JP)
OKA TATSUYA (JP)
IWAHASHI HISAKO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/073584
Publication Date:
July 16, 2009
Filing Date:
December 25, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NAT UNIV CORP KYOTO INST TECH (JP)
ABIKO ATSUSHI (JP)
OKA TATSUYA (JP)
IWAHASHI HISAKO (JP)
International Classes:
C08G63/82; C08L101/16
Domestic Patent References:
WO2008149661A12008-12-11
Foreign References:
JPH07501102A1995-02-02
JPH11240941A1999-09-07
JP2001516374A2001-09-25
JPH10287735A1998-10-27
JPS6392641A1988-04-23
Attorney, Agent or Firm:
TANAKA, Mitsuo et al. (IMP Building 3-7, Shiromi 1-chome, Chuo-ku, Osaka-sh, Osaka 01, JP)
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Claims:
 2官能ヒドロキシカルボン酸からなるA成分と、分子内に3個以上のカルボキシル基を有する3官能以上のカルボン酸、3官能以上のモノヒドロキシカルボン酸、そしてポリヒドロキシポリカルボン酸からなる群から選択されたいずれか1種のB成分とを、有機オニウム塩触媒の存在下で直接脱水重縮合する生分解性ポリマーの製造方法。
 上記2官能ヒドロキシカルボン酸が、乳酸、グリコール酸、ω-ヒドロキシカプリン酸(ε-カプロラクトン)からなる群から選択されたいずれか1種である請求項1記載の製造方法。
 上記3官能以上のカルボン酸が、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、プロペン-1,2,3-トリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-ペンタントリカルボン酸、2-メチルプロパントリカルボン酸、ベンゼン-1,3,5-トリ酢酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸、テトラキス[(カルボキシメトキシ)メチル]メタン(化合物1)、テトラキス[(カルボキシエトキシ)メチル]メタン(化合物2)、ベンゼンペンタカルボン酸、1,2,3,4,5,6-シクロヘキサンヘキサカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、ニトリロ三酢酸、そしてエチレンジアミン四酢酸、からなる群から選択されたいずれか1種である請求項1記載の製造方法。
 上記3官能以上のモノヒドロキシカルボン酸が、リンゴ酸、2-(ヒドロキシメチル)-2-(カルボキメトキシメチル)-1,3-プロパンジイルビスオキシ二酢酸(化合物3)、2-(ヒドロキシメチル)-2-(カルボキメトキシエチル)-1,3-プロパンジイルビスオキシニプロピオン酸(化合物4)からなる群から選択されたいずれか1種である請求項1記載の製造方法。
 上記ポリヒドロキシポリカルボン酸が、酒石酸又は4,4’-ビオキセパン-7,7’-ジオンである請求項1記載の製造方法。
 上記2官能ヒドロキシカルボン酸と、上記3官能以上のカルボン酸又は3官能以上のモノヒドロキシカルボン酸との混合比が、2官能ヒドロキシカルボン酸100
モルに対し、3官能以上のヒドロキシカルボン酸又は3官能以上のモノヒドロキシカルボン酸が0.1~10モルである請求項1記載の製造方法。
 上記2官能ヒドロキシカルボン酸と上記ポリヒドロキシポリカルボン酸の混合比が、2官能ヒドロキシカルボン酸100モルに対し、ポリヒドロキシポリカルボン酸が0.01~10モルである請求項1記載の製造方法。
 上記有機オニウム塩触媒が、ペンタフルオロフェニルアンモニウムトリフラート又はトリフェニルホスホニウムトリフラートである請求項1記載の製造方法。
Description:
生分解性ポリマーの製造方法

 本発明は、生分解性ポリマーの製造方法 関し、さらに詳しくはポリ(ヒドロキシカル ボン酸)からなる生分解性ポリマーの製造方 に関する。

 ポリ-L-乳酸に代表されるポリ(ヒドロキシ カルボン酸)は、機械的特性、物理的性質、 学的性質に優れている上に自然環境下で分 され、最終的には微生物によって水と炭酸 スになるという生分解性の機能を有する生 解性ポリマーであり、近年医療用材料や、 用樹脂代替等、様々な分野で注目されてお 、今後もその需要が大きく伸びることが期 されている。

 例えば、ポリ-L-乳酸は、以下の反応式で すように乳酸の環状ジエステルモノマーで るL-ラクチドの開環重合(ラクチド法)や乳酸 の直接脱水重縮合によって合成されている。

 しかしながら、これらの方法により得ら るポリ-L-乳酸は直鎖ポリエステルであり、 融物に高い強度や弾性が要求される溶融成 においては満足なレオロジー特性が得られ いないのが現状である。

 これに対し、ポリ(ヒドロキシカルボン酸) 、分岐構造や三次元的な架橋構造を付与す ことができれば、溶融物に高い強度や弾性 付与することが可能である。そのため、ポ (ヒドロキシカルボン酸)を分岐構造にする方 法や、架橋成分として分岐構造を有するモノ マーを用い、分岐鎖の末端反応性基同士を反 応させて架橋し3次元的な架橋構造を導入す 方法が提案されている。ポリ(ヒドロキシカ ボン酸)の分岐構造の製造方法としては、例 えば、ポリヒドロキシ化合物を開始剤として ラクトン類を開環重合して星型分岐構造のポ リマーを合成する方法が提案されている(非 許文献1)。また、少なくとも4個のヒドロキ ル基を有するポリヒドロキシル化合物を乳 と混合し、得られた混合物を触媒不存在下 減圧下に加熱して水を除去して低分子量の リ(乳酸)を得、そしてこのポリ(乳酸)を触媒 在下で減圧下に加熱して直接重縮合に付し 重量平均分子量30,000以上を有する星型分岐 造のポリ(乳酸)を得る方法が提案されてい (特許文献1)。この方法では、乳酸の重縮合 応の触媒として酸化アンチモンを用いてい 。また、脂肪族多価アルコール類と脂肪族 塩基酸類とヒドロキシカルボン酸類を有機 媒を含む反応混合物中で直接縮合反応する 法も提案されている(特許文献2)。この方法 は、触媒を使用しても使用しなくてもよく 使用する場合には、触媒として周期表II、III 、IV、V族の金属、その酸化物あるいはその塩 を用いることができることが記載されている 。また、低分子量ポリエステル-プレポリマ をヒドロキシ酸モノマーから生成させ、そ プレポリマーをその末端基と反応するモノ ーと共重合させて高分子量のポリマーを生 させる方法が提案されている(特許文献3)。 の方法では、乳酸の重縮合反応の触媒とし スズ又はチタンのアルキル又はアルコキシ 合物を用いている。

特開平6-313032号公報

特開平7-228675号公報

特表平11-503185号公報 Tadeusz Biela, Andrzei Duda, Stanislaw Penczek.  Macromolecules, 2006, 39, 3710-3713

 しかしながら、非特許文献1の方法では、 開環重合法は直接脱水重縮合法に比べ、一般 に工程数が多く製造プロセスが複雑となると いう問題がある。また、特許文献1から3の方 では、触媒活性が低い、金属系触媒を用い ため触媒の完全除去が困難で製造プロセス 複雑化するという問題がある。

 そこで、本発明は、上記の課題を解決し 製造プロセスの簡易化や製造効率の向上が 能な新規な、生分解性ポリマーの製造方法 提供することを目的とした。

 上記課題を解決するため、本発明者らは鋭 研究した結果、有機オニウム塩を脱水重縮 の触媒として用いることにより上記課題を 決できることを見出して本発明を完成させ ものである。
 本発明の生分解性ポリマーの製造方法は、2 官能ヒドロキシカルボン酸からなるA成分と 分子内に3個以上のカルボキシル基を有する3 官能以上のカルボン酸、3官能以上のモノヒ ロキシカルボン酸、そしてポリヒドロキシ リカルボン酸からなる群から選択されたい れか1種のB成分とを、有機オニウム塩触媒の 存在下で直接脱水重縮合することを特徴とす る。

 上記の製造方法により得られる生分解性ポ マーは、分岐ポリマー又は架橋ポリマーで る。B成分に3官能以上のカルボン酸を用い 場合には、末端にカルボキシル基を有する 型分岐ポリマーが得られる。すなわち、3官 以上のカルボン酸は少なくとも3つの分岐点 を有するコア成分を構成し、2官能ヒドロキ カルボン酸はコア成分の分岐点から放射状 伸びる多数の枝成分となるポリマー鎖を構 する。また、B成分に3官能以上のモノヒドロ キシカルボン酸を用いた場合には、末端にカ ルボキシル基を有する樹枝状あるいはくし形 の多分岐ポリマーが得られる。すなわち、2 能ヒドロキシカルボン酸は主鎖成分となる リマー鎖を構成し、3官能以上のモノヒドロ シカルボン酸は少なくとも2つの分岐点を有 する分岐成分を構成する。
 ここで、本発明においては、星型分岐ポリ ーとは、コア成分と、そのコア成分の分岐 から放射状に伸びる多数の枝成分を有する 岐ポリマーを言い、多分岐ポリマーとは、 鎖成分と、その主鎖成分から樹枝状又はく 形に伸びる枝成分を有する分岐ポリマーを う。

 また、B成分にポリヒドロキシポリカルボン 酸を用いた場合には、2官能ヒドロキシカル ン酸を主鎖成分とし、ポリヒドロキシポリ ルボン酸を架橋成分とする3次元的に架橋さ た架橋ポリマーが得られる。以下、特に断 ない限り、3次元的な架橋構造を有するポリ マーをネットワークポリマーという。
 なお、本発明においては、ポリヒドロキシ リカルボン酸とは、分子中に2個以上の水酸 基と2個以上のカルボキシル基を有する化合 をいう。

 本発明によれば、有機オニウム塩触媒を いることにより、分岐構造又はネットワー 構造を有する生分解性ポリマーを合成する とができる。有機オニウム塩触媒は、従来 触媒に比べ高い活性を有している。それに り、製造工程を簡素化でき、製造効率を向 させることができる。また、本発明に用い 有機オニウム塩触媒は再利用が可能である め、コストの削減や廃棄物の削減が可能と る。また、本発明に用いる触媒は水に対し 安定であるので、市販で入手できる乳酸や リコール酸の水溶液をそのまま用いること できる。このことは、3官能以上の(モノ)ヒ ロキシカルボン酸が通常水以外に溶解性を たないことから反応初期に均一の反応場を 保できる意味から好都合である。また、本 明により得られる生分解性ポリマーは分岐 造やネットワーク構造を有しており、溶融 に高い強度や弾性を付与することが可能で り、溶融成型に要求される所望のレオロジ 特性を付与することができる。

 以下、本発明の実施の形態について説明 るが、本発明はこれに限定されるものでは い。

実施の形態1.
 本実施の形態に係る生分解性ポリマーの製 方法は、2官能ヒドロキシカルボン酸からな るA成分と、分子内に3個以上のカルボキシル を有する3官能以上のカルボン酸又は3官能 上のモノヒドロキシカルボン酸からなるB成 とを、有機オニウム塩触媒の存在下で直接 水重縮合することを特徴とするものである

 ここで、前述の通り、2官能ヒドロキシカ ルボン酸と3官能以上のカルボン酸とを原料 用いた場合には、3官能以上のカルボン酸は なくとも3つの分岐点を有するコア成分を構 成し、2官能ヒドロキシカルボン酸はコア成 の分岐点から放射状に伸びる多数の枝成分 なるポリマー鎖を構成する。また、2官能ヒ ロキシカルボン酸と、3官能以上のモノヒド ロキシカルボン酸とを原料に用いた場合には 、2官能ヒドロキシカルボン酸は主鎖成分と るポリマー鎖を構成し、3官能以上のモノヒ ロキシカルボン酸は少なくとも2つの分岐点 を有する分岐成分を構成する。

 本実施の形態で用いる2官能ヒドロキシカ ルボン酸は、分子中に1個のヒドロキシル基 1個のカルボキシル基を有するものであれば に限定されない。具体例を挙げると、乳酸 グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロ キシ酪酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、2-ヒドロキ -3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪 、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-メチル乳酸 、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシイ カプロン酸、又はカプロラクトン等のラク ン類を開環させたもの、又は反応中に開環 て2官能ヒドロキシカルボン酸となるラクチ 、グリコリド、マンデリド、カプロラクト 、バレロラクトン等のラクトン類、又はこ らの混合物を挙げることができる。

 また、光学異性体が存在する場合には、D 体、L体、そしてラセミ体のいずれを用いて 良い。好ましくは、乳酸、さらに好ましく L-乳酸、グリコール酸、ε-カプロラクトンで ある。L-乳酸は入手が容易であり、またポリ( L-乳酸)を主鎖とすることにより、安全性が高 く、生体適合性が良いポリマーを得ることが できるからである。

 また、2官能ヒドロキシカルボン酸の化学 的等価体として、当量のジオール及びジカル ボン酸を用いることもできる。その場合、ジ オール及びジカルボン酸は特に限定されるも のではなく公知の化合物を用いることができ る。具体例を挙げると、ジオールには、エチ レングリコール、プロピレングリコール、ブ チレングリコール、ジカルボン酸には、コハ ク酸、グルタル酸、アジピン酸等を用いるこ とができる。

 また、3官能以上のカルボン酸は、分子中 に合計3個以上のカルボキシル基を有するも であれば特に限定されない。具体例を挙げ と、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベ ゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカ ボン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、プ ペン-1,2,3-トリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキ ントリカルボン酸、1,3,5-ペンタントリカル ン酸、2-メチルプロパントリカルボン酸、 ンゼン-1,3,5-トリ酢酸、1,4,5,8-ナフタレンテ ラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン 酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,4 -シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロ キサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、テトラヒ ロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸、テトラ ス[(カルボキシメトキシ)メチル]メタン(化合 物1)、テトラキス[(カルボキシエトキシ)メチ ]メタン(化合物2)、ベンゼンペンタカルボン 酸、1,2,3,4,5,6-シクロヘキサンヘキサカルボン 酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、ニトリロ三 酢酸、そしてエチレンジアミン四酢酸からな る群から選択されたいずれか1種を用いるこ ができる。また、上記カルボン酸の酸無水 誘導体などの化学的等価体を用いることも きる。好ましい例としては、1,2,3,4-ブタンテ トラカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカル ン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボ 酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン 、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボ 酸、テトラキス[(カルボキシメトキシ)メチ ]メタン(化合物1)を挙げることができる。

 なお、化合物1と2は、例えば、以下の文献 記載された方法により合成することができ 。
(a) Claude Dupuy, Romain Viguier, Agnes Dupraz, Synth etic Communications, 2001, 31, 1307-1313.
(b) George R. Newcome, Claus D. Weis, Organic Prepar ations and Procedures International, 1996, 28, 242.

 本発明において、上記の2官能ヒドロキシ カルボン酸と上記の3官能以上のカルボン酸 を組み合わせることにより、末端にカルボ シル基を有する所望の星型分岐ポリマーを ることができる。例えば、3つの分岐鎖を与 る組み合わせとしては、L-乳酸、グリコー 酸又はε-カプロラクトンと、1,2,3-ベンゼン リカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン 、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,3-プロ ントリカルボン酸、プロペン-1,2,3-トリカル ン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸 1,3,5-ペンタントリカルボン酸、2-メチルプ パントリカルボン酸又はベンゼン-1,3,5-トリ 酸との組み合わせが好ましい。また、4つの 分岐鎖を与える組み合わせとしては、L-乳酸 グリコール酸又はε-カプロラクトンと、1,4, 5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタ ンテトラカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラ ルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカ ボン酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカル ン酸又はテトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラ ルボン酸との組み合わせが好ましい。

 また、3官能以上のモノヒドロキシカルボ ン酸は、分子中に1個のヒドロキシル基と2個 上のカルボキシル基を有するものであれば に限定されない。具体例を挙げると、リン 酸、2-(ヒドロキシメチル)-2-(カルボキメト シメチル)-1,3-プロパンジイルビスオキシ二 酸(化合物3)、2-(ヒドロキシメチル)-2-(カルボ キメトキシエチル)-1,3-プロパンジイルビスオ キシ二プロピオン酸(化合物4)からなる群から 選択されたいずれか1種を用いることができ 。好ましい例としては、リンゴ酸と化合物3 挙げることができる。また、上記カルボン の酸無水物誘導体などの化学的等価体を用 ることもできる。

 本実施の形態において、上記の2官能ヒド ロキシカルボン酸と上記の3官能以上のモノ ドロキシカルボン酸とを組み合わせること より、末端にカルボキシル基を有する所望 多分岐ポリマーを得ることができる。例え 、モノヒドロキシジカルボン酸を用いた組 合わせとしては、L-乳酸、グリコール酸又は ε-カプロラクトンと、リンゴ酸とが好ましく 、またモノヒドロキシトリカルボン酸を用い た組み合わせとしては、L-乳酸、グリコール 又はε-カプロラクトンと、化合物1とが好ま しい。

 本実施の形態で触媒として用いる有機オ ウム塩は、有機オニウムカチオンとスルホ 酸アニオンとからなり、以下の(1)式で表さ る。

 有機オニウムカチオンとは、孤立電子対を する元素を含む化合物において、孤立電子 にプロトン又は他の陽イオンが配位結合し 生じるカチオンである。式中、R 1 ~R 4 は、それぞれ独立に水素原子、あるいは置換 基を有しても良い直鎖状又は分岐鎖状の脂肪 族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭 化水素基又は複素環基を表す。Aは窒素原子 はリン原子を表す。また、R 1 ~R 4 のうちの1個ないし3個が水素原子であっても い。また、Xは、スルホン酸基を表す。

 直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基 しては、アルキル基、アルケニル基、アル ニル基等を挙げることができる。脂環式炭 水素基としてはシクロアルキル基を挙げる とができる。芳香族炭化水素基としては、 リール基やアラルキル基を挙げることがで る。複素環基としては、含窒素の単環又は 合環化合物を挙げることができる。また、 記脂肪族炭化水素基等の置換基としてはハ ゲン原子を挙げることができる。好ましく フッ素原子である。

 有機オニウムカチオンの具体例として、 えば以下の窒素カチオンを挙げることがで る。トリエチルアンモニウム、トリエチル ンモニウム、エチルジメチルアンモニウム ジエチルメチルアンモニウム、テトラメチ アンモニウム、テトラエチルアンモニウム テトラ-n-プロピルアンモニウム、テトライ プロピルアンモニウム、テトラ-n-ブチルア モニウム等のテトラアルキルアンモニウム アニリニウム、ジフェニルアンモニウム、 トラフェニルアンンモニウム等の芳香族ア モニウム、N,N-ジメチルピロリジウム、N,N- メチルピペリジニウム、N,N-ジメチルモルホ ニウム等の脂環式アンモニウム、ピリジニ ム、ピラゾリウム、N-メチルイミダゾリウ 、N-メチルピリジニウム等の含窒素複素環化 合物を挙げることができる。これら含窒素複 素環化合物にはアルキル基、アラルキル基、 ハロゲン基、アルコキシ基などの置換基が結 合していても良い。好ましくはアニリニウム 、ピラゾリウム、N-メチルイミダゾリウムで る。さらに、アニリニウムは、フッ素置換 、具体的にはペンタフルオロアニリニウム( 又はペンタフルオロフェニルアンモニウム) 好ましい。又は、塩素置換体、具体的には 換位置任意のジクロロアニリニウムや、置 位置任意のトリクロロアニリニウムが好ま い。

 また、リンカチオンについては、以下のも を挙げることができる。
 トリアリールホスホニウム、アリールジア キルホスホニウム、ジアリールアルキルホ ホニウム、トリアルキルホスホニウム等を げることができる。好ましくはトリアリー ホスホニウム、具体的にはトリフェニルホ ホニウムである。

 本実施の形態で用いる有機オニウム塩は、 レンシュテッド酸としてエステル交換反応 触媒するため、そのpKaが小さいほど(酸性が 強いほど)好ましい。そのため、アニオンに スルホン酸を用いる。スルホン酸には、置 基を有しても良い、メタンスルホン酸、エ ンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ドデ ンスルホン酸等のアルキルスルホン酸や、 換基を有しても良い、ベンゼンスルホン酸 p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン 酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベ ンゼンスルホン酸等のアリールスルホン酸を 挙げることができる。好ましくは超強酸であ り、具体例を挙げると、トリフルオロメタン スルホン酸、パーフルオロエタンスルホン酸 、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフル オロヘキサンスルホン酸等のハロゲン化アル キルスルホン酸である。ここで、超強酸とは 100%硫酸よりも強い酸であり、例えば、本発 では、ハメットの酸度関数(H 0 )で表すと、H 0 が-12より小さい酸をいう。例えば、トリフル オロメタンスルホン酸は-14.5、パーフルオロ タンスルホン酸は-14.0、パーフルオロブタ スルホン酸は-13.2、パーフルオロヘキサンス ルホン酸は-12.3である。

 本実施の形態で用いる有機オニウム塩は 上記の窒素カチオン又はリンカチオンと、 ルホン酸アニオンとの組合せであれば特に 定されないが、好ましくはペンタフルオロ ェニルアンモニウムとトリフルオロメタン ルホン酸とからなる、ペンタフルオロフェ ルアンモニウムトリフラート(以下、PFPATと す。)、又はトリフェニルホスホニウムとト リフルオロメタンスルホン酸とからなる、ト リフェニルホスホニウムトリフラート(以下 TPPTと略す。)である。

 本実施の形態で用いる3官能以上のカルボ ン酸の量は、2官能ヒドロキシカルボン酸100 ルに対し、0.1~10モル、より好ましくは0.1~5モ ルである。0.1モルより少ないと、末端のカル ボキシル基が少ないため十分な効果が得られ ず、また10モルより多いと枝成分となるポリ ー鎖が短くなりすぎるからである。

 また、2官能ヒドロキシカルボン酸と3官 以上のカルボン酸(以下、原料という。)に対 する触媒の濃度(触媒/原料)は、0.01~2mo1%、よ 好ましくは0.1~1mo1%である。0.01mo1%より少ない と、高い変換率を得るのに十分な反応性が得 られず、2mo1%より多くしてもそれに見合う効 が得られないからである。

 また、本実施の形態で用いる3官能以上の モノヒドロキシポリカルボン酸の量は、2官 ヒドロキシカルボン酸100モルに対し、0.1~10 ル、より好ましくは0.5~10モルである。0.1モ より少ないと、末端のカルボキシル基が少 いため十分な効果が得られず、また10モルよ り多いと主鎖成分の物性が発揮されないから である。

 また、2官能ヒドロキシカルボン酸と3官 以上のモノヒドロキシポリカルボン酸(以下 原料という。)に対する触媒の濃度(触媒/原 )は、0.01~2mo1%、より好ましくは0.1~1mo1%であ 。0.01mo1%より少ないと、高い変換率を得るの に十分な反応性が得られず、2mo1%より多くし もそれに見合う効果が得られないからであ 。

 溶媒は、脱水縮合反応による生じる水を 沸除去するために使用する。溶媒としては ンゼン、トルエン、キシレン等が使用でき 。使用量は操作性の観点から、反応ヒドロ シカルボン酸類に対して体積比で1~3倍程度 ある。

 反応温度は高い程好ましいが、共沸脱水 る必要があるので、溶媒の共沸温度となる 反応温度は、80~220℃、より好ましくは110~160 ℃である。

 生成ポリマーの分子量は、反応温度と反 時間に依存するので、目的とする分子量、 合温度、触媒の種類、触媒の濃度等により 宜選定することができる。好ましい溶融特 を得るためには、本発明の好ましい分子量 重量平均分子量で3,000~300,000、より好ましく は5,000~150,000である。

 本実施の形態に用いる有機オニウム塩触 は再利用が可能である。即ち、重合後、反 混合物をメタノールで希釈し、ポリマーを 殿させ、ろ過分離後、濾液から溶媒を除去 れば触媒を回収できる。回収した触媒は、 液から溶媒除去後、そのまま次の反応に使 することができる。必要により再結晶する とにより精製して用いることができる。

 なお、本実施の形態により得られる星型 岐ポリマーは、反応の性格上、直鎖状ポリ ーとの混合物として得られるが、コア成分 モル比や反応温度などの反応条件を変える とにより、生成比を制御できる。ここで、 成比はポリマーのカルボン酸末端のモル数 ヒドロキシル基のモル数を比較定量するこ で求められる。カルボキシル基の定量は、 リマーをジアゾメタン処理によりメチルエ テルとし、NMRによりメチル基を定量して行 ことができる。また、ヒドロキシル基はNMR らヒドロキシル基が結合したメチレン基も くはメチン基を定量して行うことができる

 また、本実施の形態により得られる多分 ポリマーは、反応の性格上、樹枝状ポリマ とくし型ポリマーとの混合物として得られ 可能性がある。分光学的に両者を区別する とはできないが、いずれの場合でも、ポリ ーの末端基において、ヒドロキシル基とカ ボキシル基の比率は一定である。ここで、 末端基の比率は、カルボン酸末端のモル数 ヒドロキシル基のモル数を比較定量するこ で求められる。カルボキシル基の定量は、 リマーをジアゾメタン処理によりメチルエ テルとし、NMRによりメチル基を定量して行 ことができる。また、ヒドロキシル基はNMR らヒドロキシル基が結合したメチレン基も くはメチン基を定量して行うことができる

 本実施の形態によれば、有機オニウム塩 媒を用いることにより、2官能ヒドロキシカ ルボン酸と、3官能以上のカルボン酸又は3官 以上のモノヒドロキシカルボン酸とから直 、生分解性分岐ポリマーを合成することが きる。また、3官能以上のモノヒドロキシカ ルボン酸は通常水以外に溶解性を持たない。 しかし、有機オニウム塩触媒は水に対して安 定であるので、市販で入手できる乳酸の水溶 液をそのまま用いることができるので、反応 初期に均一の反応場を確保することができる 。したがって、製造工程を簡素化でき、製造 効率を向上させることができる。また、本発 明に用いる有機オニウム塩触媒は再利用が可 能であるため、コストの削減や廃棄物の削減 が可能となる。

 また、本実施の形態により得られる星型 び多分岐の生分解性ポリマーは、その末端 カルボキシル基を有していることから、他 分子との間に相互作用、例えば共有結合や 形成によるイオン結合を形成することが可 となる。これにより、薬剤等の化学物質と 合させることが容易となり、ドラッグデリ リーへの応用も期待できる。また、ポリマ 鎖の長さや分子量を制御することにより、 融物に高い強度や弾性を付与することが可 である。さらに、分岐構造とすることによ 、ポリマーの結晶性が低下して生分解性が 上する効果も得られる。

実施の形態2.
 本実施の形態に係る生分解性ポリマーの製 方法は、2官能ヒドロキシカルボン酸からな るA成分と、ポリヒドロキシポリカルボン酸 らなるB成分とを、有機オニウム塩触媒の存 下で直接脱水重縮合することを特徴とする のである。

 前述の通り、本実施の形態により得られ 生分解性ポリマーは、2官能ヒドロキシカル ボン酸を主鎖成分とし、ポリヒドロキシポリ カルボン酸を架橋成分とするネットワークポ リマーである。

 本実施の形態で用いる2官能ヒドロキシカ ルボン酸は、実施の形態1と同様のものを用 ることができる。また、2官能ヒドロキシカ ボン酸は、p-ヒドロキシ安息香酸、m-ヒドロ キシ安息香酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸等 芳香環を含む化合物であっても良い。また 光学異性体が存在する場合には、D体、L体 そしてラセミ体のいずれを用いても良い。 ましくは、乳酸又はグリコール酸である。L- 乳酸は入手が容易であり、またポリ(L-乳酸) 主鎖とすることにより、剛性及び引っ張り 度が高く、透明性も高いネットワークポリ ーを得ることができるからである。

 また、実施の形態1の場合と同様に、2官 ヒドロキシカルボン酸の化学的等価体とし 、当量のジオール及びジカルボン酸を用い こともできる。

 また、ポリヒドロキシポリカルボン酸は 分子中に2個以上の水酸基と2個以上カルボ シル基を有するものであれば特に限定され い。具体例を挙げると、酒石酸、4,4’-ビオ セパン-7,7’-ジオン、5,5’-(1-メチルエチリ ン)ビス-2-オキセパノン等を挙げることがで きる。好ましくは、酒石酸、4,4’-ビオキセ ン-7,7’-ジオンである。酒石酸は天然物であ り、安価であることから入手が容易であり、 架橋度を任意に設定できるからである。

 また、ポリヒドロキシポリカルボン酸の 学的等価体として、3官能以上のアルコール 及び3官能以上のカルボン酸を用いることも きる。その場合、3官能以上のアルコール及 3官能以上のカルボン酸は特に限定されるも のではなく、公知の化合物を用いることがで きる。具体例を挙げると、3官能以上のアル ールには、グリセリン、トリメチロールプ パン、トリメチロールブタン、ペンタエリ リトール、イノシトール等を用いることが きる。また、3官能以上のカルボン酸には、 コニチン酸、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸 1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5-ベン ンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタン テトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカル ン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等を用 ることができる。

 本実施の形態において、上記の2官能ヒド ロキシカルボン酸と上記のポリヒドロキシポ リカルボン酸とを組み合わせることにより、 所望の分岐鎖を有するネットワークポリマー を得ることができる。例えば、4つの分岐鎖 与える組み合わせとしては、乳酸-酒石酸、 リコール酸-酒石酸、乳酸-4,4’‐ビオキセ ン-7,7’ジオン、グリコール酸-4,4’-ビオキ パン-7,7’-ジオンを用いることが好ましい。

 本実施の形態で触媒として用いる有機オ ウム塩は、実施の形態1で説明したものと同 様のものを用いることができる。

 また、実施の形態1の場合と同様に、本実 施の形態に用いる有機オニウム塩触媒は再利 用が可能である。即ち、重合後、反応混合物 をメタノールで希釈し、ポリマーを沈殿させ 、ろ過分離後、濾液から溶媒を除去すれば触 媒を回収できる。回収触媒は、濾液から溶媒 除去後、そのまま次の反応に使用することが できる。必要により再結晶することにより精 製して用いることができる。

 本実施の形態で用いるポリヒドロキシポ カルボン酸の量は、2官能ヒドロキシカルボ ン酸100モルに対し、0.01~10モル、より好まし は0.1~1モルである。0.01モルより少なくとも 分な強度や弾性を得ることができず、また 10モルより多いと架橋度が高くなり溶媒に不 溶となり精製することができなくなるからで ある。

 また、2官能ヒドロキシカルボン酸とポリ ヒドロキシポリカルボン酸に対する触媒の濃 度(触媒/ポリヒドロキシポリカルボン酸)は、 0.01~1mo1%、より好ましくは0.1~0.5mo1%である。0.1 mo1%より少ないと高分子量を得るのに長時間 要し、1mo1%より多いと高分子量のものが得ら れないであるからである。

 溶媒は、脱水縮合反応による生じる水を 沸除去するために使用する。溶媒としては ンゼン、トルエン、キシレン等が使用でき 。使用量は操作性の観点から、反応ヒドロ シカルボン酸類に対して体積比で1~3倍程度 ある。

 反応温度は高い程好ましいが、共沸脱水 る必要があるので、溶媒の共沸温度となる 反応温度は、80~200℃、より好ましくは110~163 ℃である。

 生成ポリマーの分子量は、反応温度によ て上限が認められるので、その温度で得ら る上限の分子量が得られる時間重合すれば い。従って、重合時間は、目的とする分子 、重合温度、触媒の種類、触媒の濃度等に 存して適宜選定することができる。好まし 溶融特性を得るためには、本発明の好まし 分子量は重量平均分子量で10000~500000、より ましくは30000~100000である。

 本実施の形態により得られるネットワー ポリマーの架橋度は、用いるポリヒドロキ ポリカルボン酸の割合で調整することがで る。ポリヒドロキシポリカルボン酸は任意 割合で添加することができるが、架橋度が きすぎるとネットワークポリマーはほとん の溶媒に対して不溶になる。

 ここで、本発明における架橋度とは分枝 分となるエステルの含有量であり、溶媒に 溶な物はNMR分析により算出することができ 。また、溶媒に不溶な場合は、仕込み比を 橋度とすることができる。

 本実施の形態により得られるネットワー ポリマーの架橋度は、特に、酒石酸におい は反応温度の選択により変化させる事が可 である。架橋度は反応温度が高くなれば高 なる。反応温度の変化による架橋度の変化 、反応開始から反応開始後48時間、より好 しくは反応開始から反応開始後16時間の範囲 で制御することができる。

 本実施の形態によれば、有機オニウム塩 媒を用いることにより、2官能ヒドロキシカ ルボン酸と、ポリヒドロキシポリカルボン酸 とから直接、ネットワークポリマーを合成す ることができ、従来の触媒に比べ高い活性を 有している。それにより、製造工程を簡素化 でき、製造効率を向上させることができる。 また、有機オニウム塩触媒は再利用が可能で あるため、コストの削減や廃棄物の削減が可 能となる。また、触媒は水に対して安定であ るので、市販で入手できる乳酸やグリコール 酸の水溶液をそのまま用いることができる。 このことは、ポリヒドロキシポリカルボン酸 が通常水以外に溶解性を持たないことから反 応初期に均一の反応場を確保できる意味から 好都合である。

 また、本実施の形態により得られるポリ ステルは、2官能ヒドロキシカルボン酸を主 鎖成分とし、ポリヒドロキシポリカルボン酸 を架橋成分とする生分解性ネットワークポリ マーであり、架橋度や分子量を制御すること により、溶融物に高い強度や弾性を付与する ことが可能である。これにより、溶融成型に 要求される所望のレオロジー特性を付与する ことができる。また、架橋することによりポ リマーの結晶性が低下し、生分解性が向上す る効果も得られる。

 以下、実施例を用いて本発明をさらに詳 に説明するが、本発明は以下の実施例に限 されるものではなく、本発明の範囲内にお て種々の改良及び変形が可能である。

合成例1(PFPATの合成)
 2,3,4,5,6-ペンタフルオロアニリン(東京化成 製) 5.0gをジクロロメタン25ml中に溶解させ、 氷冷しながらトリフルオロメタンスルホン酸 (東京化成社製) 2.4mlをゆっくり滴下し混合、 攪拌した。析出した結晶を吸引ろ過し、ろ過 物をジエチルエーテルで洗い、減圧乾燥した 。やや紫がかった乳白色の結晶が得られた。 収率は79.6%であった。融点は211.5℃であった

合成例2(TPPTの合成)
 200mlナスフラスコ中で塩化メチレン25mlにト フェニルホスフィン(和光純薬社製)2.3gを溶 し、氷冷、攪拌しながらトリフルオロメタ スルホン酸0.9mlを少しずつ滴下した。塩化 チレン/ジエチルエーテル/ヘキサン=2/2/1の溶 媒から析出した結晶を吸引ろ過して減圧乾燥 した。収率78.9%
参考文献:van der Akker, M. Jellinek, Recl. Trav.  Chim. Pays-Bas, 1967, 86, 275-288.

 分析( 1 H-NMR(500MHz)スペクトル測定)
 BRUKERDRX500 spectrometer(ブルカー社製)を使用し た。溶媒には標準化合物としてテトラメチル シラン(TMS)を0.03vol%含むCDC1 3 を用いた。

 分析(ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び分 量分布(Mw/Mn)の測定)
 ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ ー(GPC)により測定した。
 測定にはShimadzu LC- 6 AD pump、RID- 10A RI de tector、Shimadzu CLASS-LC10 Chromatopac data processor Shimadzu DGU-20A3 degasserを使用した。また、カ ラムはTSK-GEL G1000H,G2000HおよびG2500Hを用い、 ーブン温度を40℃としてクロロホルムを流速 1.0ml/minで流した。ポリマー40.0mgに対してクロ ロホルム1mlで試料を作製し、5μlを注入して 定した。重量平均分子量(Mw)及び分子量分布( Mw/Mn)はポリスチレンを標準としてキャリブレ ーションした。

I:ネットワーク構造を有する生分解性ポリマ の合成
実施例1.
実験番号1~5
 90%L-乳酸水溶液30ml、溶媒(トルエン又はエチ ルベンゼン)30ml、酒石酸450mg(酒石酸/L-乳酸比: 1mol%)、触媒としてTPPT120mg(触媒/(L-乳酸+L-酒石 )比:0.1mol%)をフラスコ内で混合した。Dean Sta rk trapを取り付け常圧下で系外に水を留去し がら所定時間共沸脱水操作を行った。実験1 ~3では、反応開始24時間、48時間で溶媒ごと5mL サンプリングした。実験4,5では、24時間に溶 ごと10mLサンプリングした。

実験番号6,7
 90%L-乳酸水溶液3ml、溶媒(トルエン又はエチ ベンゼン)20ml、酒石酸45mg(酒石酸/L-乳酸比:1m ol%)、触媒としてTPPT12mg(触媒/(L-乳酸+L-酒石酸) 比:0.1mol%)をフラスコ内で混合した。Dean Stark trapを取り付け常圧下で系外に水を留去しな ら16時間共沸脱水操作をおこなった。その 、溶媒を除去して無溶媒の状態で130℃で72時 間反応させた。無溶媒の状態で反応し始めて 44時間後に130℃で解析用に少量サンプリング た。

 得られたポリマー溶液から溶媒を留去した 残渣をジクロロメタン(CH 2 Cl 2 )20mlに溶解後、得られた溶液を氷冷したメタ ール(CH 3 OH)150ml中に投入し、ポリマーを沈殿させた。 殿物を吸引ろ過して減圧乾燥した。ろ紙を 過するような粒子径のポリマーについては 心分離機を用いてメタノールとポリマーを 離した後、ジクロロメタン10mlに溶解し、得 られた溶液から溶媒を留去し、減圧乾燥して ポリマーを得た。

 表1に結果を示す。溶媒にトルエンを用いて 24時間、48時間、そして72時間還流した場合( 験番号1,2,3)、溶媒にエチルベンゼンを用い 24時間、48時間還流した場合(実験番号4,5)、 してトルエン中で16時間還流した後、トルエ ンを留去した後無溶媒の状態で130℃で48時間 72時間還流した例(実験番号6,7)を示している 。
 なお、表中のエステル比は、L-酒石酸に関 、カルボキシル基に比べ反応性が低くかっ 2つのヒドロキシル基のエステル化の程度に じて以下のように定義した。
 「none」とは、L-酒石酸の2つのカルボキシル 基のみがエステル化されており、2つのヒド キシル基がフリーの状態をいう。また、「mo no」とは、L-酒石酸の2つのカルボキシル基と1 つのヒドロキシル基がエステル化されており 、1つのヒドロキシル基がフリーの状態をい 。また、「bis」とは、L-酒石酸の2つのカル キシル基と2つのヒドロキシル基がエステル された状態をいう。エステル比は、 1 H-NMRとHH-cosyNMRの測定結果から決定した。

(溶媒の効果)
 溶媒にトルエンとエチルベンゼンを用いた 合、例えば、実験番号1と4、そして実験番 2と5に示すように異なるエステル比が得られ た。また、実験番号6と7に示すように、130℃ 無溶媒で反応させると、溶媒を用いた場合 比べmonoとbisの割合が増加した。これより、 溶媒の影響は反応温度の影響であり、反応温 度を選択することによりエステル比を変化さ せることができることがわかった。また、実 験番号6では実験番号2と5に比べ分子量が大き く増加した。これより、反応温度を高くすれ ば分子量を増加させることができることがわ かった。

(反応時間の効果)
 実験番号1~3、4~5,6~7に示すように、エステル 比は反応時間によってほとんど変化しなかっ た。これに対し、分子量は反応時間とともに 増加し、例えば実験番号1から3に示すように 重量平均分子量が4500から10000,そして13000へ 増加した。

実施例2.
 本実験は、重量平均分子量が1万を超える条 件でも、トルエンやエチルベンゼン等の熱溶 媒に可溶で、合成後ジクロロメタンやクロロ ホルムに全て溶けて精製が可能な条件を見出 すことを目的としたものである。溶媒にトル エンを用い反応時間を24時間とし、L-乳酸とL- 酒石酸の仕込モル比を変化させた以外は、実 施例1と同様の条件で行った。結果を表2に示 。ここで、LLAはL-乳酸、LTAはL-酒石酸を表す 。

 実験番号9(仕込比80/1)および10(仕込比100/1) では、合成後ジクロロメタンやクロロホルム に全て溶けて精製が可能であった。これに対 し、実験番号8では、反応終了後にジクロロ タンやクロロホルムを加えても全容は溶解 なかった。精製は、50mlのジクロロメタンに 解させた後にろ過をして不溶成分を取り除 た後に行った。

実施例3.
 ポリヒドロキシポリカルボン酸の種類の影 について検討した。L-乳酸のみ(LLA:実験番号 1)、L-酒石酸(LTA)に代えて4,4’-ビオキセパン-7 ,7’-ジオン(LLA-BL:実験番号14)を用い、L-乳酸 の仕込モル比(LLA/LTA、LLA/BL)を(1mol%とし、L-乳 酸10mlに対して溶媒を10ml)とした以外は、実施 例1と同様の条件で行った。結果を表3に示す ここで、表中のエステル比は、酒石酸に関 ては、実施例1で説明した通りである。また 、4,4’-ビオキセパン-7,7’-ジオンの場合、実 施例における反応条件では4,4’-ビオキセパ -7,7’-ジオンは開環しヒドロキシル基、カル ボキシル基ともに完全にエステル化されてい る事が確認できた。


*:LLA-LTA:L-乳酸-L-酒石酸
   LLA-BL:L-乳酸-4,4’‐ビオキセパン-7,7’-ジ オン、LLA:L-乳酸

 4,4’‐ビオキセパン-7,7’-ジオンを用い 場合も、L-酒石酸を用いた場合と同様に、ネ ットワークポリマーの合成が可能であった。

実施例4.
 触媒としてTPPTに代えてPFPATを用い、溶媒に ルエンを用い、L-酒石酸の仕込量を変化さ た以外は実施例3と同様の条件で行った。PFPA Tの濃度は、(触媒/(L-乳酸+L-酒石酸)比:0.1mol%) ある。表4に結果を示す。ここで、実験番号1 4はトルエン中で12時間還流したものであり、 実験番号14はL-酒石酸の含有率(分析値)が1モ %である。また、実験番号15、16は、トルエン 中24時間還流したものであり、実験番号15はL- 酒石酸の含有率(分析値)が0.1モル%である。実 験番号17はビスラクトンの含有率(分析値)が0. 1モル%である。


*:LLA-LTA:L-乳酸-L-酒石酸
   LLA-BL:L-乳酸-4,4’-ビオキセパン-7,7’-ジ ン、LLA:L-乳酸

 PFPATを用いた場合、TPPTを用いた場合と比 (例えば実施例の実験番号12)、反応時間が短 くても、エステル比は概ね同等、そして分子 量は増大することがわかった。また、L-酒石 の仕込量を減らしても、反応時間を長くす ことにより、エステル比を変化させ、かつ 子量を増大させることが可能なことがわか た。

II:分岐構造を有する生分解性ポリマーの合成
 以下、実施例5~7が星型分岐ポリマー、そし 実施例8、9が多分岐ポリマーの実施例であ 。
実施例5.
 90%L-乳酸水溶液4g、トルエン8ml、水10ml、ピ メリト酸0.1017g(ピロメリト酸/L-乳酸比:0.1mol%) 、触媒としてTPPT 0.0164g(触媒/L-乳酸比:0.1mol%) フラスコ内で混合して、室温でピロメリト をすべて溶解させた。Dean Stark trapを取り け常圧下で系外に水を留去しながら96時間共 沸脱水操作を行った。

 得られたポリマー溶液から溶媒を留去した 残渣をジクロロメタン(CH 2 Cl 2 )20mlに溶解後、得られた溶液を氷冷したメタ ール(CH 3 OH)200ml中に投入し、ポリマーを沈殿させた。 殿物を吸引ろ過して減圧乾燥した。ろ紙を 過するような粒子径のポリマーについては 心分離機を用いてメタノールとポリマーを 離した後、ジクロロメタン5mlに溶解し、得 れた溶液から溶媒を留去し、減圧乾燥して リマーを得た。

実施例6.
 90%L-乳酸水溶液4g、2-メチル-2-ペンタノール8 ml、ピロメリト酸0.1017g(ピロメリト酸/L-乳酸 :1mol%)、触媒としてTPPT 0.0164g(触媒/L-乳酸比:0 .1mol%)をフラスコ内で混合した。Dean Stark trap を取り付け常圧下で系外に水を留去しながら 18時間共沸脱水操作を行った。その後、系内 ら2-メチル-2-ペンタノールを除去し、トル ン8mlを入れて、常圧下で系外に水を留去し がら24時間共沸脱水操作を行った。その後、 実施例1と同様の方法により、得られたポリ ー溶液からポリマーを分離し減圧乾燥した

実施例7.
 90%L-乳酸水溶液4g、キシレン8ml、1,2,3,4-シク ペンタンテトラカルボン酸0.0985g(1,2,3,4-シク ロペンタンテトラカルボン酸/L-乳酸比:1mol%) 触媒としてTPPT 0.0164g(触媒/L-乳酸比:0.1mol%)を フラスコ内で混合した。Dean Stark trapを取り け常圧下で系外に水を留去しながら48時間 沸脱水操作を行った。その後、実施例1と同 の方法により、得られたポリマー溶液から リマーを分離し減圧乾燥した。

実施例8.
 90%L-乳酸水溶液4g、トルエン8ml、L-リンゴ酸0 .27g(L-リンゴ酸/L-乳酸比:5mol%)、触媒としてPFPA T 0.014g(触媒/(L-乳酸+Lリンゴ酸比):0.1mol%)をフ スコ内で混合した。Dean Stark trapを取り付 常圧下で系外に水を留去しながら24時間共沸 脱水操作を行った。その後、実施例1と同様 方法により、得られたポリマー溶液からポ マーを分離し減圧乾燥した。

実施例9.
 90%L-乳酸水溶液4g、トルエン8ml、L-リンゴ酸0 .054g(L-リンゴ酸/L-乳酸比:5mol%)、触媒としてPFP AT 0.014g(触媒/(L-乳酸+Lリンゴ酸比):0.1mol%)をフ ラスコ内で混合した。Dean Stark trapを取り付 常圧下で系外に水を留去しながら12時間共 脱水操作を行った。その後、実施例1と同様 方法により、得られたポリマー溶液からポ マーを分離し減圧乾燥した。

 表5に、テトラカルボン酸/乳酸のモル比 仕込値と分析値、そしてGPCによる分子量測 の結果を示す。テトラカルボン酸は、実施 5,6ではピロメリト酸、実施例7では1,2,3,4-シ ロペンタンテトラカルボン酸である。

 表6に、L-リンゴ酸/乳酸のモル比の仕込値 と分析値、そしてGPCによる分子量測定の結果 を示す。また、L―リンゴ酸の未反応の水酸 の濃度も示した。

分析1(直鎖状ポリ乳酸とカルボキシル基末端 型ポリ乳酸の生成比の算出)
 実施例5~7のポリマーを各々30mg秤量して、1,4 -ジオキサン:エタノール(=4:1)溶液3mlに溶解さ た後、系内を窒素置換し、攪拌しながら氷 した。ここにトリメチルシリルジアゾメタ  (約10%ヘキサン溶液, 約0.60mol/L)を0.150ml滴 した。滴下終了5分後に、アイスバスを除去 て室温において55分間窒素雰囲気下で反応 せた。

 得られたポリマー溶液から溶媒を留去した 残渣をクロロホルム(CHCl 3 )0.5mlに溶解後、得られた溶液を氷冷したジエ チルエーテル(CH 3 CH 2 OCH 2 CH 3 )10ml中に投入し、ポリマーを沈殿させた。沈 物を吸引ろ過して減圧乾燥した。

 得られたポリマーの 1 H NMRを測定し、ポリ乳酸のアルコール末端側 のメチンプロトン(δ4.35 q J=6.5Hz)とメチルエ テルのメチル基(δ3.74 s)の積分値より直鎖 ポリ乳酸とカルボキシル基末端星型ポリ乳 の生成比を算出した。


注1:アルコール末端δ4.35(1H)、カルボン酸末端 δ3.74(3H)
注2:δ4.35:(((δ3.74í3)-δ4.35)í4)

分析2(多分岐ポリ乳酸の末端基(水酸基、カル ボキシル基)の定量)
 実施例8,9のポリマーを各々30mg秤量して、1,4 -ジオキサン:エタノール(=4:1)溶液3mlに溶解さ た後、系内を窒素置換し、攪拌しながら氷 した。ここにトリメチルシリルジアゾメタ  (約10%ヘキサン溶液, 約0.60mol/L)を0.150ml滴 した。滴下終了5分後に、アイスバスを除去 て室温において55分間窒素雰囲気下で反応 せた。

 得られたポリマー溶液から溶媒を留去し 。残渣をクロロホルム0.5mlに溶解後、得ら た溶液を氷冷したジエチルエーテル10ml中に 入し、ポリマーを沈殿させた。沈殿物を吸 ろ過して減圧乾燥した。

 得られたポリマーの 1 H NMRを測定し、ポリ乳酸の水酸基末端のメチ ンプロトン(δ4.35 q J=6.5Hz)とメチルエステル メチル基(δ3.74 s)の積分値より得られたポ マー中の水酸基末端とカルボキシル基末端 比を算出した。


注1:水酸基末端δ4.35(1H)、カルボキシル基末端 δ3.74(3H)
注2:δ4.35:(((δ3.74í3)-δ4.35)í4)

 実施例5~9の結果から明らかなように、本 明によれば、カルボキシル基を生分解性ポ マーの末端に容易に導入できるので、薬剤 の化学物質と結合させることが容易となり ドラッグデリバリーへの応用も期待できる