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Title:
PROCESS FOR PRODUCTION OF NUCLEUS-HYDROGENATED AROMATIC VINYL /(METH)ACRYLATE COPOLYMERS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/020096
Kind Code:
A1
Abstract:
A process for the production of hydrogenated polymers by hydrogenating aromatic rings of aromatic vinyl/ (meth)acrylate copolymers, which comprises conducting repeatedly one or more times the operation consisting of the step (1) of adding a solution of an aromatic vinyl/(meth)acrylate copolymer in a solvent to a reactor filled with a solvent and a supported palladium catalyst in a hydrogen atmosphere at a rate of 0.01 to 15g/h in terms of the copolymer per unit mass (g) of the supported palladium catalyst to hydrogenate the copolymer and the step (2) of recovering a hydrogenated polymer from 30 to 90% by mass of the obtained reaction mixture, either leaving the residue of the reaction mixture in the reactor or returning it to the reactor, and adding a fresh solution of the copolymer in a solvent to the resulting reactor at a rate of 0.01 to 15g/h in terms of the copolymer per unit mass (g) of the supported palladium catalyst to hydrogenate the copolymer and by which hydrogenated polymers having high transparency can be produced safely and stably.

Inventors:
KUSHIDA YASUHIRO (JP)
SUGANO YUUICHI (JP)
YAMAUCHI TATSUYA (JP)
SATO HIDEYUKI (JP)
SHIMA YOSHIKAZU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/063961
Publication Date:
February 12, 2009
Filing Date:
August 04, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MITSUBISHI GAS CHEMICAL CO (JP)
KUSHIDA YASUHIRO (JP)
SUGANO YUUICHI (JP)
YAMAUCHI TATSUYA (JP)
SATO HIDEYUKI (JP)
SHIMA YOSHIKAZU (JP)
International Classes:
C08F8/04; C08F212/06; C08F220/10; G11B7/2533
Foreign References:
JP2006291184A2006-10-26
JP2006089713A2006-04-06
JPH01132603A1989-05-25
JPH0475001A1992-03-10
JP2007254733A2007-10-04
JP2004513190A2004-04-30
JP2001098017A2001-04-10
JPH0381301A1991-04-05
JPH0376706A1991-04-02
JP3094555B22000-10-03
JP2004149549A2004-05-27
JP2003138078A2003-05-14
JP2725402B21998-03-11
JPH0794496B21995-10-11
JP2006089713A2006-04-06
DE1131885B1962-06-20
JPH11504959A1999-05-11
JP3200057B22001-08-20
JP2002521509A2002-07-16
JP2002521508A2002-07-16
JPH01213306A1989-08-28
JP2000095815A2000-04-04
JP2003529646A2003-10-07
JP2002249515A2002-09-06
JP2001527095A2001-12-25
JP2890748B21999-05-17
US4629767A1986-12-16
US20020107423A12002-08-08
Other References:
See also references of EP 2177541A4
Attorney, Agent or Firm:
OHTANI, Tamotsu (Bridgestone Toranomon Bldg.6F. 25-2, Toranomon 3-chome, Minato-k, Tokyo 01, JP)
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Claims:
 芳香族ビニル化合物/(メタ)アクリレート系共重合体の芳香環を水素化することによる水素化ポリマーの製造方法において、(1)溶媒およびパラジウム担持触媒を仕込んだ反応器へ、水素雰囲気下、前記共重合体の溶媒溶液を、共重合体換算で、パラジウム担持触媒の単位質量(g)当たり0.01~15g/時となるように添加して水素化反応を行った後、(2)得られた反応混合液の30~90質量%から水素化ポリマーを得、残りの反応混合液を反応器に残しまたは戻し、新たに共重合体の溶媒溶液を、共重合体換算で、パラジウム担持触媒の単位質量(g)当たり0.01~15g/時となるように反応器へ添加して水素化反応を行なうという操作を1回以上繰り返し行なう、水素化ポリマーの製造方法。
 水素化を反応温度150~250℃および水素圧5~15MPaで行なう、請求項1に記載の水素化ポリマーの製造方法。
 共重合体の溶媒溶液を添加し終えた時点での共重合体および水素化ポリマーの濃度の合計が1~40質量%である、請求項1または2に記載の水素化ポリマーの製造方法。
 共重合体の溶媒溶液を添加し終えた後、攪拌を0.1~24時間行なう、請求項1~3のいずれかに記載の水素化ポリマーの製造方法。
 共重合体の構成単位において、芳香族ビニル化合物の構成単位に対する(メタ)アクリレート由来の構成単位のモル比が0.25~4である、請求項1~4のいずれかに記載の水素化ポリマーの製造方法。
 共重合体の重量平均分子量が10,000~1,000,000である、請求項1~5のいずれかに記載の水素化ポリマーの製造方法。
 芳香環の水素化率が70%以上である、請求項1~6のいずれかに記載の水素化ポリマーの製造方法。
 芳香族ビニル化合物がスチレンであり、(メタ)アクリレートがメタクリル酸メチル80~100モル%およびアクリル酸アルキルエステル0~20モル%からなる、請求項1~7のいずれかに記載の水素化ポリマーの製造方法。
 パラジウム担持触媒の担体が酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムである、請求項1~8のいずれかに記載の水素化ポリマーの製造方法。
 パラジウム担持触媒中のパラジウム含有率が0.01~5質量%である、請求項1~9のいずれかに記載の水素化ポリマーの製造方法。
 溶媒がカルボン酸エステルである、請求項1~10のいずれかに記載の水素化ポリマーの製造方法。
 前記操作(1)によって得られた反応混合液を反応器から抜き取る形態とし、このとき、パラジウム担持触媒を分離して反応系内に残す、請求項1~11に記載の水素化ポリマーの製造方法。
 請求項1~12のいずれかに記載の製造方法によって得られる水素化ポリマー。
 請求項13に記載の水素化ポリマーを含有する光学材料組成物。
Description:
核水素化された芳香族ビニル化 物/(メタ)アクリレート系共重合体の製造方

 本発明は、パラジウム担持触媒の存在下 芳香族ビニル化合物/(メタ)アクリレート系 重合体の芳香環を水素化(核水素化)するこ による水素化ポリマーの製造方法に関する

 近年、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、 チレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、環 ポリオレフィン樹脂をはじめとする非晶性 ラスチックは様々な用途で用いられており 特にその光学的特徴により、光学レンズ、 ディスク基板等の光学材料としての需要が い。この種の光学材料においては高い透明 のみならず、高耐熱性、低吸水性、機械物 等のバランスに優れた高度な性能が要求さ ている。

 従来用いられてきた材料は、これらの要 をすべて備えているわけではなく、解決す き問題点をそれぞれ有している。例えば、 リスチレンは力学的に脆い、複屈折が大き 、透明性が劣るという欠点がある。ポリカ ボネートは耐熱性に優れるが、これも複屈 が大きく、透明性もポリスチレンとほぼ同 である。ポリメタクリル酸メチルは、透明 は高いが吸水率が極めて高いため寸法安定 に乏しく耐熱性が低いことが問題である。 リスチレンを核水素化したポリビニルシク ヘキサンは透明性に優れるが、機械強度が い、耐熱安定性に乏しい、他材料との接着 にも乏しいという問題がある(特許文献1~3参 照)。密着性を改良させる方法として、ポリ チレンの核水素化物や共役ジエン-ポリスチ ンの二重結合および芳香環を水素化したも や飽和炭化水素樹脂を混合する方法(特許文 献4参照)があるが、操作が煩雑である。また スチレンのようなビニル芳香族化合物と無 マレイン酸のような不飽和二塩基酸を共重 したのち、芳香環の30%以上を核水素化する 法が開示されている(特許文献5参照)が、ポ スチレンに比べ透明性および複屈折が改良 れるものの、アクリル系の樹脂に比べ、光 特性が見劣りする。また、メタクリル酸メ ル(以下、MMAと称する。)とスチレンとの共 合体(以下、MS樹脂と称する。)は高透明性を し、かつ寸法安定性、剛性、比重等のバラ スに優れた樹脂であるが、複屈折が大きい いう問題がある。一方、MS樹脂を核水素化 た樹脂(以下、MSHと称する。)は、低複屈折性 、低吸水性、透明性、耐熱性、機械物性、耐 候性、耐光性等のバランスに優れていること が確認されている(特許文献6参照)。

 芳香族ポリマーの核水素化については既 知られているが(特許文献7参照)、透明性の い樹脂を得るには核水素化率を上げる必要 あり、ほぼ100%の核水素化率でないと、高透 明性の樹脂が得られないとされてきた。これ は、核水素化率が低い場合、ブロック化物を 形成し全光線透過率を損なうためである。芳 香族ポリマーのみならず、共役ジエン重合体 などポリマーの水素化に関する例も多く知ら れており、Pd、Pt、Rh、Ru、Re、Niなどの金属を 活性炭や酸化アルミニウム、シリカ、珪藻土 などの担体に担持してなるものが主に用いら れている。しかしながら、高分子量であるこ とから反応しにくく、高い核水素化率や高い 反応速度を得ることが難しく、また、繰り返 し反応により触媒活性低下が起こりやすい点 も知られている。それらを改善するため、触 媒担体の種類や細孔構造や粒径の工夫がなさ れている。例えば、100μm未満のシリカ担体上 に担持したパラジウム担持触媒を用いること で、核水素化率70%程度の核水素化ポリスチレ ンを得る方法(特許文献1参照)や、600Åを超え る大きな細孔を有するシリカ担体に担持した 白金触媒やロジウム触媒により、核水素化ポ リスチレンを得る方法(特許文献8参照)が知ら れている。同様に、孔体積の95%以上が450Åの 細孔を有する多孔質担体にVIII族金属を担持 、その金属表面積が担体表面積の75%以内で る触媒を用い、芳香族部位の水素化は低め 抑え、エチレン系不飽和部位を高い水素化 で水素化する方法も知られている(特許文献9 参照)。

 また、シリカや酸化アルミニウムに担持 たVIII族金属であって、100~1000Å孔径の孔容 が総孔容積の70~25%である場合に、分子量の 下なくポリスチレンが完全に水素化される している文献(特許文献10参照)や、VIII亜族 金属をシリカ、酸化アルミニウムの担体に 持させたもので、100~1000Åの孔容積が15%未満 である低分子量化合物のための市販の水素化 触媒をエーテル系の酸素含有炭化水素の存在 下に使用したとき、分子量の低下を伴わずに 、ポリスチレンを完全に水素化することがで きるとした文献(特許文献11参照)がある。ま 、チタニアや酸化ジルコニウムなどのIVa族 素の酸化物に担持した金属触媒により、ア リロニトリル-ブタジエン共重合体などの共 ジエン系の水素化反応を行い、再使用の際 も高い活性を得ているが、共役ジエン系に 定されたものであり、芳香族の水素化に対 ての言及はない(特許文献12参照)。一方、孔 直径100~100000nmである部分の孔容積が全体の50~ 100%を占める大きな細孔容積をもつ担体上に ルカリ金属やアルカリ土類金属を添加した 、白金属成分の90%以上を、担体径の外表面 ら深さ方向に担体径の1/10以内の表層部に担 した触媒により、芳香族-共役ジエンポリマ ーの芳香環を含む不飽和結合を効率良く水素 化でき、金属成分の溶出も抑制できる方法が 開示されている(特許文献13参照)。

 また、重合反応液をそのまま活性アルミ による触媒毒除去後に反応させることによ 反応性を改善する方法(特許文献14参照)や、 生産性を上げるべく固定層での反応線速度を 改善する方法(特許文献15参照)が開示されて る。

 高分子反応の場合、核水素化反応は溶媒 影響も大きく、一般的には、炭化水素、ア コール、エーテル、エステルなどが反応溶 として用いられている(特許文献16参照)。し かし、炭化水素やアルコールは樹脂溶解度が 低い、エーテル類のうち、例えば1,4-ジオキ ンは発火点が低い、テトラヒドロフランは 環反応が起こりやすく不安定という問題が る。エステルは安全かつ比較的安定であり 速やかに反応が進行するものの、核水素化 によっては樹脂の白濁化が起こるという問 がある。そこで、エステルにアルコールを 加することにより、安全、安定かつ速やか 透明度の高い核水素化された芳香族系ポリ ーを得る方法が開示されているが、2つの溶 系を併用することになり、分離操作が煩雑 なる。また、エーテル溶媒にアルコールや を添加することにより、低核水素化率でも 透明性を維持する方法が開示されているが( 特許文献17参照)、事由が明確でなく使用範囲 が限定されているため、適用できない場合が 多い。

特許第3094555号公報

特開2004-149549号公報

特開2003-138078号公報

特許第2725402号公報

特公平7-94496号公報

特開2006-89713号公報

西独国特許第1131885号明細書

特表平11-504959号公報

特許第3200057号公報

特表2002-521509号公報

特表2002-521508号公報

特開平1-213306号公報

特開2000-95815号公報

特表2003-529646号公報

特開2002-249515号公報

特表2001-527095号公報

特許第2890748号公報

 上記のように、高い光学特性を有する芳 族系の水素化ポリマーを得るには、問題点 数多くある。特に、芳香族ビニル化合物と( メタ)アクリレートとの共重合体の芳香環を 素化したポリマーは、高透明性、低複屈折 高耐熱性、高表面硬度、低吸水性、低比重 どの優れた特性を有しているが、安全、か 速やかに、また、長期にわたって安定的に い透明性を有する水素化ポリマーを得るた の有用な方法は今のところ得られていない

 しかして、本発明は、核水素化された透 度の高い芳香族ビニル化合物/(メタ)アクリ ート系共重合体を、安全、かつ長期間にわ って安定的に製造する方法を提供する。

 本発明者らは、上記目的を達成するため 鋭意検討を重ねた結果、芳香族ビニル化合 /(メタ)アクリレート系共重合体の芳香環を 素化することによる水素化ポリマーの製造 法において、(1)溶媒およびパラジウム担持 媒を仕込んだ反応器へ、水素雰囲気下、前 共重合体の溶媒溶液を、該共重合体の供給 度が一定範囲になるように添加して水素化 応を行った後、(2)得られた反応混合液の30~9 0質量%から水素化ポリマーを得、残りの反応 合液を反応器に残しまたは戻し、新たに共 合体の溶媒溶液を一定供給速度にて反応器 添加して水素化反応を行なうという操作を なうことにより、高透明性、低複屈折、高 熱性、高表面硬度、低吸水性、低比重など 優れた特性をもった水素化ポリマーを、安 、かつ長期間にわたって、安定的に繰り返 得られることを見出し、本発明に至った。

 すなわち本発明は、
 [1]芳香族ビニル化合物/(メタ)アクリレート 共重合体の芳香環を水素化することによる 素化ポリマーの製造方法において、(1)溶媒 よびパラジウム担持触媒を仕込んだ反応器 、水素雰囲気下、前記共重合体の溶媒溶液 、共重合体換算で、パラジウム担持触媒の 位質量(g)当たり0.01~15g/時となるように添加 て水素化反応を行った後、(2)得られた反応 合液の30~90質量%から水素化ポリマーを得、 りの反応混合液を反応器に残しまたは戻し 新たに共重合体の溶媒溶液を、共重合体換 で、パラジウム担持触媒の単位質量(g)当た 0.01~15g/時となるように反応器へ添加して水 化反応を行なうという操作を1回以上繰り返 し行なう、水素化ポリマーの製造方法、
 [2]水素化を反応温度150~250℃および水素圧5~1 5MPaで行なう、上記[1]に記載の水素化ポリマ の製造方法、
 [3]共重合体の溶媒溶液を添加し終えた時点 の共重合体および水素化ポリマーの濃度の 計が1~40質量%である、上記[1]または[2]に記 の水素化ポリマーの製造方法、
 [4]共重合体の溶媒溶液を添加し終えた後、 拌を0.1~24時間行なう、上記[1]~[3]のいずれか に記載の水素化ポリマーの製造方法、
 [5]共重合体の構成単位において、芳香族ビ ル化合物の構成単位に対する(メタ)アクリ ート由来の構成単位のモル比が0.25~4である 上記[1]~[4]のいずれかに記載の水素化ポリマ の製造方法、
 [6]共重合体の重量平均分子量が10,000~1,000,000 である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の水素 ポリマーの製造方法、
 [7]芳香環の水素化率が70%以上である、上記[ 1]~[6]のいずれかに記載の水素化ポリマーの製 造方法、
 [8]芳香族ビニル化合物がスチレンであり、( メタ)アクリレートがメタクリル酸メチル80~10 0モル%およびアクリル酸アルキルエステル0~20 モル%からなる、上記[1]~[7]のいずれかに記載 水素化ポリマーの製造方法。
 [9]パラジウム担持触媒の担体が酸化ジルコ ウムおよび/または酸化アルミニウムである 、上記[1]~[8]のいずれかに記載の水素化ポリ ーの製造方法。
 [10]パラジウム担持触媒中のパラジウム含有 率が0.01~5質量%である、上記[1]~[9]のいずれか 記載の水素化ポリマーの製造方法、
 [11]溶媒がカルボン酸エステルである、上記 [1]~[10]のいずれかに記載の水素化ポリマーの 造方法、
 [12]前記操作(1)によって得られた反応混合液 を反応器から抜き取る形態とし、このとき、 パラジウム担持触媒を分離して反応系内に残 す、上記[1]~[11]のいずれかに記載の水素化ポ マーの製造方法、
 [13]上記[1]~[12]のいずれかに記載の製造方法 よって得られる水素化ポリマー、
 [14]上記[13]に記載の水素化ポリマーを含有 る光学材料組成物、
である。

 本発明の方法により、透明度の高い核水 化された芳香族ビニル化合物/(メタ)アクリ ート系共重合体(水素化ポリマー)を、安全 かつ、長期間にわたって安定的に製造する とができる。また、本発明により得られる 水素化された芳香族ビニル化合物/(メタ)ア リレート系共重合体は、高透明性、低複屈 、高耐熱性、高表面硬度、低吸水性、低比 、高転写性、優れた離型性を示す。特に光 材料として優れた特性を有しており、光学 ンズ、光導光板、光拡散板、光ディスク基 材料、前面パネル等の広範な用途に用いる とができる。

 本発明は、上記の通り、芳香族ビニル化 物/(メタ)アクリレート系共重合体の芳香環 水素化することによる水素化ポリマーの製 方法である。

(モノマー成分)
 本発明で使用する芳香族ビニル化合物とし は、例えばスチレン;α-メチルスチレン、α- エチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチ スチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチル チレン、p-tert-ブチルスチレンなどのアルキ スチレン(アルキル基部位の炭素数は、好ま しくは1~5である。);p-ヒドロキシスチレン;p- トキシスチレン、m-ブトキシスチレン、p-ブ キシスチレンなどのアルコキシスチレン(ア ルコキシ基部位の炭素数は、好ましくは1~5で ある。);o-クロロスチレン、m-クロロスチレン 、p-クロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、 2,6-ジクロロスチレンなどのハロゲン化スチ ン;ビニルナフタレン;ビニルアントラセンな どが挙げられる。これらの中でも、スチレン が好ましい。

 本発明で使用する(メタ)アクリレートとし は、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ) クリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル (メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸アル ルエステル(アルキル基部位の炭素数は、好 しくは1~20、より好ましくは1~10、さらに好 しくは1~5である。);(メタ)アクリル酸シクロ キシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルな の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル または環式飽和炭化水素エステル(いずれも 環形成炭素数は、好ましくは5~20、より好ま くは5~10である。);(メタ)アクリル酸(2-ヒド キシエチル)、(メタ)アクリル酸(2-ヒドロキ プロピル)、(メタ)アクリル酸(2-ヒドロキシ-2 -メチルプロピル)などの(メタ)アクリル酸ヒ ロキシアルキルエステル(アルキル基部位の 素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~1 0、さらに好ましくは1~5である。);(メタ)アク ル酸(2-メトキシエチル)、(メタ)アクリル酸( 2-エトキシエチル)などの(メタ)アクリル酸ア コキシアルキルエステル(アルキル基部位の 炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~ 10、さらに好ましくは1~5である。また、アル キシ基部位の炭素数は、好ましくは1~10、よ り好ましくは1~5、さらに好ましくは1または2 ある。);(メタ)アクリル酸フェニルなどの( タ)アクリル酸フェニルエステル;(メタ)アク ル酸ベンジルなどの(メタ)アクリル酸アリ ルアルキルエステル(アリール基部位の炭素 は、好ましくは6~10である。また、アルキル 基部位の炭素数は、好ましくは1~5である。);2 -(メタ)アクロイルオキシエチルホスホリルコ リンなどのリン脂質構造を有する(メタ)アク ル酸エステルなどを挙げることができる。( メタ)アクリレートは1種を単独で使用しても いし、2種以上を併用してもよい。
 これらの中でも、透明性、複屈折、耐熱性 表面硬度、吸水性、比重、転写性、離型性 どのバランスの観点からは、メタクリル酸 ルキルエステル80~100モル%およびアクリル酸 アルキルエステル0~20モル%の組み合わせで使 することが好ましい。この場合のメタクリ 酸アルキルエステルとしては、メタクリル メチルが好ましく、アクリル酸アルキルエ テルとしては、アクリル酸メチル、アクリ 酸エチルが好ましい。なお、(メタ)アクリ ートとしては、特にメタクリル酸メチルを 独で使用することが好ましい。

 さらに、上記の芳香族ビニル化合物および( メタ)アクリレートと併せて、その他のモノ ー成分を使用してもよい。その他のモノマ 成分としては、例えばN-メチルマレイミド、 N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド N-ブチルマレイミドなどのN-アルキルマレイ ド(アルキル基部位の炭素数は、好ましくは 1~5である。);N-シクロヘキシルマレイミドな のN-シクロアルキルマレイミド(環形成炭素 は、好ましくは5~10である。);N-フェニルマレ イミド、N-メチルフェニルマレイミドなどのN -(アルキル)アリールマレイミド(環形成炭素 は、好ましくは6~10である。);N-メトキシマレ イミドなどのN-アルコキシマレイミド(アルコ キシ基部位の炭素数は、好ましくは1~5である 。);N-カルボキシフェニルマレイミドなどのN- カルボキシアリールマレイミド(環形成炭素 は、好ましくは6~10である。)などが挙げられ る。
 これらのその他のモノマー成分の使用量は 全モノマー成分に対して好ましくは0~10質量 部であり、より好ましくは0~5質量部である。

(芳香族ビニル化合物/(メタ)アクリレート系 重合体の製造方法)
 前記芳香族ビニル化合物と(メタ)アクリレ トを含むモノマー成分を共重合させる方法 は特に制限は無く、ラジカル重合法、イオ 重合法、配位重合法などの公知の方法を用 ることができるが、工業的にはラジカル重 法が簡便であり好ましい。かかるラジカル 合法としては、塊状重合法、溶液重合法、 化重合法、懸濁重合法など、公知の方法を 宜選択することができる。例えば、塊状重 法や溶液重合法の例としては、モノマー成 、連鎖移動剤および重合開始剤(並びに溶液 合法の場合にはさらに溶媒)を混合したモノ マー組成物を完全混合槽に連続的に供給し、 100~180℃で重合する連続重合法などがある。 液重合法で使用する溶媒としては、例えば ルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチ シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸 チルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチ ルエチルケトンなどのケトン系溶媒;テトラ ドロフラン、1,4-ジオキサンなどのエーテル 溶媒;メタノールやイソプロパノールなどの アルコール系溶媒などが挙げられる。なお、 重合後の反応混合液を完全混合槽から抜き出 してから脱揮押出機や減圧脱揮槽に導入し、 揮発分(モノマー成分および溶媒など)を脱揮 ることにより、芳香族ビニル化合物/(メタ) クリレート系共重合体(以下、単に共重合体 と称することがある。)を得ることができる

 該共重合体の構成単位においては、芳香族 ニル化合物由来の構成単位(Bモル)に対する( メタ)アクリレート由来の構成単位(Aモル)の ル比(A/B)は、共重合体の機械的強度および水 素化反応によるガラス転移温度向上の観点か ら、0.25~4であることが好ましく、0.5~2である とがより好ましい。
 なお、共重合体の各構成単位の割合は、重 率が100%であれば仕込みモノマー成分の組成 比と一致するが、実際には重合率50~80%で製造 する場合が多く、反応性の高いモノマー成分 ほどポリマーに取り込まれ易いため、モノマ ー成分の仕込み組成と共重合体の構成単位の 組成にズレが生じる。そのため、仕込みモノ マー成分の組成比を適宜調整する必要がある 。

 以上のようにして得られる共重合体の重 平均分子量としては、10,000~1,000,000が好まし く、50,000~700,000がより好ましく、100,000~500,000 さらに好ましく、130,000~250,000が特に好まし 。10,000未満または1,000,000を超える共重合体 本発明の方法によって核水素化することが きるが、重量平均分子量が上記範囲内であ 共重合体の方が、機械強度が十分であり、 用性に耐え得ること、および粘度が適度で り、取扱いが容易であることより好ましい なお、本明細書において、重量平均分子量 、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ (GPC)により、テトラヒドロフランを溶媒と てポリスチレン換算で求めた値である。

(芳香族ビニル化合物/(メタ)アクリレート系 重合体の芳香環の水素化方法)
 本発明では、以上の様にして得られる共重 体を水素化する際に、以下の(1)および(2)の 作に従うことによって、透明度の高い核水 化された芳香族ビニル化合物/(メタ)アクリ ート系共重合体(水素化ポリマー)を、安全 かつ、長期間にわたって安定的に製造する とができる。
(1):溶媒およびパラジウム担持触媒を仕込ん 反応器へ、水素雰囲気下、前記共重合体の 媒溶液を、共重合体換算で、パラジウム担 触媒の単位質量(g)当たり0.01~15g/時となるよ に添加して水素化反応を行った後、
(2):得られた反応混合液の30~90質量%から水素 ポリマーを得、残りの反応混合液を反応器 残しまたは戻し、新たに共重合体の溶媒溶 を、共重合体換算で、パラジウム担持触媒 単位質量(g)当たり0.01~15g/時となるように反 器へ添加して水素化反応を行なうという操 を1回以上繰り返し行なう。

(操作(1)について)
 水素化反応には、反応速度の観点から、パ ジウム担持触媒を使用する。
 パラジウムの前駆体としては特に制限は無 が、例えば塩化パラジウム、硝酸パラジウ 、酢酸パラジウム、トリス(ジベンジリデン アセトン)ジパラジウム、テトラキス(トリフ ニルホスフィン)パラジウムなどの公知の0 または2価のパラジウム化合物を用いること できる。
 触媒担体としては、例えば活性炭、酸化ア ミニウム(Al 2 O 3 )、シリカ(SiO 2 )、シリカ-アルミナ(SiO 2 -Al 2 O 3 )、珪藻土、チタニア、酸化ジルコニウムな が挙げられる。これらの中でも、反応速度 よび核水素化率の観点から、酸化ジルコニ ムまたは酸化アルミニウムが好ましく、均 な水素化反応を進行させて水素化ポリマー 透明度を高くするという観点から、酸化ジ コニウムがより好ましい。なお、ポリマー の芳香環が均質に水素化されているという は、分子量分布を有するポリマーにおいて 高分子量のポリマー成分も低分子量のポリ ー成分と同様な核水素化率となっているこ である。
 また、触媒担体として酸化ジルコニウムや 化アルミニウムを用いた場合には、パラジ ム担持触媒を繰り返し使用した場合におい も活性の低下が非常に少ないという特徴を する。触媒担体としては、担持パラジウム 分散度や水素化能の観点から、20~3000Åの孔 を多く持つものが好ましく、比表面積は10m 2 /g以上であることが好ましい。さらに、パラ ウム担持触媒の担体粒径は、通常、0.1~1000μ mであり、好ましくは1~500μm、より好ましくは 5~200μmである。この範囲であれば水素化反応 のパラジウム担持触媒の分離が容易であり 且つ反応速度が十分となる。

 パラジウム担持触媒の調製方法に特に制 は無いが、例えば、酢酸パラジウムなどの ラジウム前駆体をアセトン、アセトニトリ または1,4-ジオキサンなどの有機溶剤に溶解 させた後、前記触媒担体に含浸させ、溶媒分 を揮発させて乾燥・焼成することにより、高 分散にパラジウムが担持された触媒を得るこ とができる。また、塩化パラジウムの塩酸水 溶液や塩化ナトリウム水溶液、または硝酸パ ラジウムの水溶液や塩酸水溶液から調製する こともできるし、酢酸パラジウムの塩酸水溶 液や有機溶剤の溶液から調製することも可能 である。

 パラジウム担持触媒中のパラジウムの含 率は、通常0.01~50質量%の範囲であり、好ま くは0.01~20質量%、さらに好ましくは0.1~5質量% であり、特に好ましくは0.1~1質量%である。特 に、酸化ジルコニウムまたは酸化アルミニウ ムを触媒担体として用いた場合、高分散にパ ラジウムを担持させることが可能であり、ま た、単位パラジウム当たりの反応速度が非常 に大きいため、高価なパラジウムの担持量を 低減することができる。なお、パラジウムの 分散度の測定方法としては、一酸化炭素のパ ルス吸着法など既知の方法を採ることができ る。

 水素化反応で使用する溶媒としては、水 化反応前後の共重合体の溶解性および水素 溶解性が良好であり、水素化される部位を たないものが好ましく、かつ反応が速やか 行なわれるものを選択する。また、反応後 溶媒の脱揮を想定した場合、溶媒の発火点 高いことが重要となる。このような観点か 、カルボン酸エステル化合物が好ましい。

 該カルボン酸エステル化合物としては、下 一般式(I)で示される脂肪族のカルボン酸エ テルが好ましい。
   R 1 COOR 2   (I)
 一般式(1)中、R 1 は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イ プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n- キシル基などの炭素数1~6のアルキル基であ 。また、R 2 は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n- チル基などの炭素数1~4のアルキル基である

 一般式(I)で示される脂肪族のカルボン酸 ステルの具体例としては、酢酸メチル、酢 エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸ペンチル、プ ピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プ ピオン酸-n-プロピル、プロピオン酸-n-ブチ 、n-酪酸メチル、イソ酪酸メチル、n-酪酸-n- ブチル、n-吉草酸メチル、n-ヘキサン酸メチ などが用いられるが、特に、酢酸メチル、 酸エチル、プロピオン酸メチル、イソ酪酸 チル、n-酪酸メチルが好ましく、イソ酪酸メ チルがより好ましい。

 本発明における水素化反応は、共重合体を 媒に溶解させた溶媒溶液(以下、原料液と称 する。)を用いて行う。該原料液における共 合体の濃度は、好ましくは1~50質量%、より好 ましくは1~40質量%、さらに好ましくは3~30質量 %、特に好ましくは5~20質量%である。この範囲 であれば、生産性が高く、触媒活性も長期間 維持することができ、さらに、水素化反応が 均質に行なわれ、水素化ポリマーの透明性が 高くなる傾向にある。ポリマー内の芳香環は 均質に水素化されていると、核水素化率があ る程度低くても、高い全光線透過率を得やす いという利点がある。
 また、水素化反応は、共重合体と担持触媒 の接触効率の観点から、懸濁床にて実施す ことが好ましい。反応器としては、攪拌式 型反応器が好ましい。

 水素化反応における水素圧は、好ましくは3 ~30MPaであり、より好ましくは5~15MPaである。 た、反応温度は、好ましくは50~250℃であり より好ましくは100~250℃であり、さらに好ま くは150~250℃である。
 水素圧が上記範囲内であれば、反応速度が 分高く、高耐圧の反応容器が不要であり、 済的にも好ましい。また、反応温度が上記 囲内であれば、反応速度が十分高く、重合 の分解が生じ難い。

 本発明では、原料液の反応器への供給速 を、共重合体換算で、パラジウム担持触媒 単位質量(g)当たり0.01~15g/時(好ましくは0.1~10 g/時、より好ましくは0.5~10g/時、さらに好ま くは0.5~5g/時)にする必要がある。0.01g/時未満 では、共重合体の供給に長時間を要するため 、生産性が低下する。一方、15g/時を超える 、水素化反応が均質に行なわれず、水素化 リマーの透明性が低下し、さらに触媒活性 低下が早いため、長期間安定して反応を継 することが困難となる。

 共重合体の反応器での滞留時間は、0.1~24 間であり、好ましくは1~20時間である。この 範囲であれば、生産性に優れ、共重合体の水 素化反応が均質に進行する。

(操作(2)について)
 本発明では、以上の様にして水素化反応を 施した後、得られた反応混合液の30~90質量%( 好ましくは50~90質量%、より好ましくは65~85質 %)(但し、パラジウム担持触媒を除く。)のみ を反応器から抜き取るか、またはパラジウム 担持触媒を含む全反応混合液を抜き取ってか らその30~90質量%(好ましくは50~90質量%、より ましくは65~85質量%)(但し、パラジウム担持触 媒を除く。)のみから水素化ポリマーを分離 得する。そして、残りの反応混合液を反応 へ残し(またはパラジウム担持触媒と共に反 器へ戻し)、新しい原料液を反応器へ前記規 定速度で供給する。この操作を繰り返し行な うことにより、長期間にわたり、高透明度、 高耐熱性、高表面硬度、低吸水性、低比重と いう特性を持つ水素化ポリマーを工業的に製 造することが可能となる。
 この操作においても、反応液中の共重合体 水素化ポリマーの濃度の合計は、好ましく 1~50質量%を維持し、より好ましくは1~40質量% 、さらに好ましくは3~30質量%、特に好ましく 5~20質量%を維持する。反応液中の共重合体 よび水素化ポリマーの濃度が高過ぎると、 応速度が低下および溶液粘性の上昇による 扱い性が低下する傾向にあり、また、均質 つ高核水素化率の水素化ポリマーを得難く る。一方、それらの濃度が低過ぎると、生 性および経済性が悪化する傾向にある。反 液中の共重合体および水素化ポリマーの濃 の合計を上記濃度範囲にすることにより、 応を繰返しても触媒活性の低下が少ないた 、高透明性、低複屈折、高耐熱性、高表面 度、低吸水性、低比重などの優れた特性を った水素化ポリマーが、安全、かつ長期間 わたって安定的に得られる。

 上記操作(2)にて、反応器から抜き取った 応混合液は、着色、機械物性への影響など 観点から、濾過や遠心分離などの公知の手 により、パラジウム担持触媒の残存量を好 しくは10ppm以下、より好ましくは1ppm以下ま 少なくすることが好ましい。なお、触媒金 成分の溶出を防ぐ観点から、担持触媒の除 操作は窒素ガス雰囲気下など、非酸化性雰 気下で行うことが好ましい。

 また、上記操作(2)にて、反応器から抜き った反応混合溶液から水素化ポリマーを分 取得する方法に特に制限は無いが、例えば1 )抜き取った反応混合溶液から適宜担持触媒 分離してから濃縮した後、押出機により溶 状態で押し出すことによりペレット化する 法、2)抜き取った反応混合溶液から適宜担持 触媒を分離してから溶媒を十分に蒸発させて 塊状物を得た後、ペレット化する方法、3)抜 取った反応混合溶液から適宜担持触媒を分 してから、貧溶媒を混合することにより得 れる沈殿物をペレット化する方法、4)抜き った反応混合溶液から適宜担持触媒を分離 てから、熱水と接触させて塊状物を得た後 ペレット化する方法などを利用できる。

 本発明で得られる水素化ポリマーは、核水 化率が低い場合、ブロック化物を形成し、 光線透過率を損なうため、透明性の高いポ マーを得るためには高核水素化率であるこ が求められる。また、工業的な観点から、 定した品質のポリマーを得る必要があり、 期間にわたる水素化ポリマーの製造におい 、核水素化率を一定にすることが望ましい
 本発明によると、上記操作(2)を繰り返し行 っても、核水素化率70%以上の水素化ポリマ が得られ、条件によっては、80%以上、90%以 、さらには95%以上の水素化ポリマーを得る とができる。さらに具体的には、本発明に れば、操作(2)を10回繰り返して行なっても 80%以上、条件によっては90%以上の核水素化 を得ることができる。

 本発明の方法によって得られる水素化ポ マーは、上記操作(2)を10回以上、さらには14 回繰り返して行なっても、可視光領域の光線 を良好に透過し、外観の透明性を維持してい る。3.2mm厚の成型品の全光線透過率(JIS K7105 規定する方法で測定。)は、上記操作(2)を10 以上、さらには14回繰り返して行なった場合 でも、90%以上(詳細には91~92%)であり優れてい 。これだけの全光線透過率を有していれば ポリマー内の芳香環は均質に水素化されて り、光学材料用途に適している。

 本発明の方法によって得られる水素化ポリ ーは、例えば適宜、酸化防止剤、着色剤、 型剤、界面活性剤、抗菌剤等の添加剤など 混合し、光学材料組成物とすることができ 。得られる光学材料組成物は熱可塑性を有 ているため、押し出し成型や射出成型、シ ト成型体の二次加工成型など、種々の熱成 によって精密かつ経済的に光学物品を製造 ることが可能である。
 光学物品の具体的な用途としては、各種導 版や導光体、ディスプレイ前面パネル、プ スチックレンズ基板、光学フィルター、光 フィルム、照明カバー、照明看板などが挙 られる。

  以下、本発明を実施例により更に具体 に説明するが、本発明は以下の実施例によ 特に限定されるものではない。なお、各評 方法を以下に記す。

(パラジウム金属の分散度の測定)
 パラジウム金属の分散度は、一酸化炭素の ルス吸着法により測定した。なお、一酸化 素/パラジウム金属=1として算出した。
(水素化ポリマーの水素化率の測定)
 核水素化率は、水素化反応前後のUVスペク ル測定における260nmの吸収減少率で評価した 。
(水素化ポリマーの全光透過率の測定)
 全光線透過率はJIS K7105に準拠し、色度・濁 度測定器「COH-300A」(日本電色工業株式会社製 )を用いて、3.2mm厚の平板を透過法で測定した 。
 なお、試験片の加熱成形品は、各例で得ら た水素化ポリマーを、減圧下、80℃にて4時 乾燥させた後、鏡面加工した金型の中に入 、東邦プレス製作所の油圧成型機を用いて 210℃および10MPaで圧縮加熱成型することに って得た。

実施例1
(パラジウム担持触媒の調製)
 酢酸パラジウム0.0527g(0.235mmol)をアセトン30g 溶解させた後、乾燥した酸化ジルコニウム 体「NNC-100」(商品名、第一稀元素化学工業 式会社製)4.975gを加え、40℃で攪拌しながら 浸させた。60℃で減圧しながらアセトンを留 去した後、120℃で4時間乾燥させ、さらに400 で3時間焼成処理することにより、パラジウ 含有率0.5質量%のPd/ZrO 2 触媒を調製した。得られた担持触媒のパラジ ウム金属の分散度は64%であった。
(核水素化反応)
(1):200mlオートクレーブに、イソ酪酸メチル( 下、IBMと称する。)25gおよび前記の0.5質量%Pd/ ZrO 2 触媒0.5gを仕込み、水素圧9MPaおよび温度200℃ 昇圧・昇温した。その後、水素圧9MPaおよび 温度200℃を維持しながら、メタクリル酸メチ ル(MMA)とスチレンからなる共重合体「MS600」( 品名、MMA/スチレン=6/4、重量平均分子量170,0 00、新日鐵化学株式会社製)7.5gをIBM67.5gに溶解 した原料液(10質量%MS600-IBM溶液)75gを、前記担 触媒の単位質量(g)当たり、共重合体換算で3 .0g/時の速度となるようにオートクレーブに 給した。供給終了後、さらに15時間攪拌した 。
(2):反応終了後、降温および落圧させた後、 られた反応混合液(前記担持触媒を除く。)の 75質量%に相当する75gを反応容器内のフィルタ ーを通して抜液し、過剰のメタノール中へ滴 下し、水素化ポリマーを回収した。得られた 水素化ポリマーの核水素化率は99.5%であった
 引き続き、オートクレーブを再び水素圧9MPa および温度200℃に昇圧・昇温し、前記同様、 原料液(10質量%MS600-IBM溶液)75gを、前記担持触 の単位質量(g)当たり、共重合体換算で3.0g/ の速度となるようにオートクレーブに供給 、供給終了後、さらに15時間攪拌した。
 同様にして、(2)の操作を計14回繰り返し行 た。14回目の核水素化率は91.1%であった。こ とき、いずれの反応液中にもパラジウムの 出は見られなかった(0.01ppm以下)。
 また、得られた水素化ポリマーの加熱成型 の全光線透過率は、いずれも92%であった。
 結果を表1に示す。

実施例2
 実施例1において、原料液の供給速度を、共 重合体換算で、前記担持触媒の単位質量(g)当 たり3.0g/時とする代わりに、10g/時としたこと 以外は、実施例1と同様にして実験を行った
 (2)の操作を計14回繰り返し行った結果を表1 示す。
 なお、このとき、いずれの反応液中にもパ ジウムの溶出は見られなかった(0.01ppm以下) また、得られた水素化ポリマーの加熱成型 の全光線透過率は、いずれも91~92%であった

比較例1
 実施例1において、原料液の供給速度を、共 重合体換算で、前記担持触媒の単位質量(g)当 たり3.0g/時とする代わりに、90g/時としたこと 以外は、実施例1と同様にして実験を行った
 (2)の操作を計8回繰り返し行った結果を表3 示す。また、8回目に得られた水素化ポリマ の加熱成型品の全光線透過率は84%に低下し 。

比較例2
 実施例1において、原料液の供給速度を、共 重合体換算で、前記担持触媒の単位質量(g)当 たり3.0g/時とする代わりに、20g/時としたこと 以外は、実施例1と同様にして実験を行った
 (2)の操作を計9回繰り返し行った結果を表3 示す。また、9回目に得られた水素化ポリマ の加熱成型品の全光線透過率は84%に低下し 。

比較例3
(パラジウム担持触媒の調製)
 実施例1と同様にして、パラジウム含有率0.5 質量%のPd/ZrO 2 触媒を調製した。得られた担持触媒のパラジ ウム金属の分散度は64%であった。
(核水素化反応)
(1):200mlオートクレーブに、イソ酪酸メチル( 下、IBMと称する。)25gおよび前記の0.5質量%Pd/ ZrO 2 触媒0.5gを仕込み、水素圧9MPaおよび温度200℃ 昇圧・昇温した。その後、水素圧9MPaおよび 温度200℃を維持しながら、メタクリル酸メチ ル(MMA)とスチレンからなる共重合体「MS600」( 品名、MMA/スチレン=6/4、重量平均分子量170,0 00、新日鐵化学株式会社製)7.5gをIBM67.5gに溶解 した原料液(10質量%MS600-IBM溶液)75gを、前記担 触媒の単位質量(g)当たり、共重合体換算で3 .0g/時の速度となるようにオートクレーブに 給した。供給終了後、さらに15時間攪拌した 。
(2):反応終了後、降温および落圧させた後、 られた反応混合液(前記担持触媒を除く。)の 100質量%に相当する100gを反応容器内のフィル ーを通して抜液し、過剰のメタノール中へ 下し、水素化ポリマーを回収した。得られ 水素化ポリマーの核水素化率は99.5%であっ 。
 引き続き、IBM25gをオートクレーブに供給し 後、オートクレーブを再び水素圧9MPaおよび 温度200℃に昇圧・昇温し、前記同様、原料液 (10質量%MS600-IBM溶液)75gを、前記担持触媒の単 質量(g)当たり、共重合体換算で3.0g/時の速 となるようにオートクレーブに供給し、供 終了後、さらに15時間攪拌した。
 同様にして、(2)の操作を計2回繰り返し行っ た結果を表5に示す。
 このとき、いずれの反応液中にもパラジウ の溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
 また、得られた水素化ポリマーの加熱成型 の全光線透過率は、いずれも91~92%であった

実施例3
(パラジウム担持触媒の調製)
 酢酸パラジウム0.0105g(0.047mmol)をアセトン30g 溶解させた後、乾燥した酸化ジルコニウム 体「NNC-100」(商品名、第一稀元素化学工業 式会社製)4.995gを加え、40℃で攪拌しながら 浸させた。60℃で減圧しながらアセトンを留 去した後、120℃で4時間乾燥させ、さらに400 で3時間焼成処理することにより、パラジウ 含有率0.1質量%のPd/ZrO 2 触媒を調製した。得られた担持触媒のパラジ ウム金属の分散度は69%であった。
(核水素化反応)
(1):200mlオートクレーブに、IBM25gおよび前記の 0.1w質量%Pd/ZrO 2 触媒1.0gを仕込み、水素圧9MPaおよび温度200℃ 昇圧・昇温した。その後、水素圧9MPaおよび 温度200℃を維持しながら、実施例1に記載の 重合体「MS600」7.5gをIBM67.5gに溶解した原料液 (10質量%MS600-IBM溶液)75gを、前記担持触媒の単 質量(g)当たり、共重合体換算で1.5g/時の速 となるようにオートクレーブに供給した。 給終了後、さらに15時間攪拌した。
(2):反応終了後、降温および落圧させた後、 られた反応混合液(前記担持触媒を除く。)の 75質量%に相当する75gを反応容器内のフィルタ ーを通して抜液し、過剰のメタノール中へ滴 下し、水素化ポリマーを回収した。得られた 水素化ポリマーの核水素化率は99.0%であった
 引き続き、オートクレーブを再び水素圧9MPa および温度200℃に昇圧・昇温し、前記同様、 原料液(10質量%MS600-IBM溶液)75gを、前記担持触 の単位質量(g)当たり、共重合体換算で1.5g/ の速度となるようにオートクレーブに供給 、供給終了後、さらに15時間攪拌した。
 同様にして、(2)の操作を計11回繰り返し行 た結果を表6に示す。
 このとき、いずれの反応液中にもパラジウ の溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
 また、得られた水素化ポリマーの加熱成型 の全光線透過率はいずれも91~92%であった。

比較例4
 実施例3において、原料液の供給速度を、共 重合体換算で、前記担持触媒の単位質量(g)当 たり1.5g/時とする代わりに、90g/時としたこと 以外は、実施例3と同様にして実験を行った
 (2)の操作を計7回繰り返し行った結果を表7 示す。また、7回目に得られた水素化ポリマ の加熱成型品の全光線透過率は84%に低下し 。

実施例4
(パラジウム担持触媒の調製)
 酢酸パラジウム0.0527g(0.235mmol)をアセトン30g 溶解させた後、乾燥した酸化アルミニウム 体「GB-01」(商品名、水澤化学工業株式会社 )4.975gを加え、40℃で攪拌しながら含浸させ 。60℃で減圧しながらアセトンを留去した 、120℃で4時間乾燥させ、さらに400℃で3時間 焼成処理することにより、パラジウム含有率 0.5質量%のPd/Al 2 O 3 触媒を調製した。得られた担持触媒のパラジ ウム金属の分散度は79%であった。
(核水素化反応)
(1):200mlオートクレーブに、IBM25gおよび前記の 0.5質量%Pd/Al 2 O 3 触媒2.0gを仕込み、水素圧9MPaおよび温度200℃ 昇圧・昇温した。その後、水素圧9MPaおよび 温度200℃を維持しながら、実施例1に記載の 重合体「MS600」7.5gをIBM67.5gに溶解した原料液 (10質量%MS600-IBM溶液)75gを前記担持触媒の単位 量(g)当たり、共重合体換算で0.75g/時の速度 なるようにオートクレーブに供給した。供 終了後、さらに15時間攪拌した。
(2):反応終了後、降温および落圧させた後、 られた反応混合液(前記担持触媒を除く。)の 75質量%に相当する75gを反応容器内のフィルタ ーを通して抜液し、過剰のメタノール中へ滴 下し、水素化ポリマーを回収した。得られた 水素化ポリマーの核水素化率は99.0%であった
 引き続き、オートクレーブを再び水素圧9MPa および温度200℃に昇圧・昇温し、前記同様、 原料液(10質量%MS600-IBM溶液)75gを、前記担持触 の単位質量(g)当たり、共重合体換算で0.75g/ の速度となるようにオートクレーブに供給 、供給終了後、さらに15時間攪拌した。
 同様にして、(2)の操作を計2回繰り返し行っ た結果を表8に示す。
 このとき、いずれの反応液中にもパラジウ の溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
 また、得られた水素化ポリマーの加熱成型 の全光線透過率はいずれも91%であった。

比較例5
 実施例4において、原料液の供給速度を、共 重合体換算で、前記担持触媒の単位質量(g)当 たり0.75g/時とする代わりに、90g/時としたこ 以外は、実施例4と同様にして実験を行った
 (2)の操作を計2回繰り返し行った結果を表9 示す。
 また、0回目に得られた水素化ポリマーの加 熱成型品の全光線透過率は91%、2回目の場合 90%であったが、3回目の場合は85%まで低下し 。

 以上の結果から、本発明の製造方法に従う (実施例1~4参照)、透明性の高い水素化ポリ ーを、安全、かつ長期間にわたって安定的 製造できることがわかる。
 一方、原料液の供給速度が、共重合体換算 、パラジウム担持触媒の単位質量(g)当たり1 5g/時を超えると(比較例1、2、4および5)、水素 化ポリマーを長期間にわたって安定的に製造 できることができず、また、全光線透過率も 低下してしまい、光学材料用途の使用に耐え ないものとなることがわかる。
 また、比較例3より、操作(1)にて得られた反 応混合液を全て抜き取って水素化ポリマーを 得る操作を採った場合、同じ担持触媒を用い て繰り返し核水素化反応を実施すると、わず か1、2回で大幅に核水素化率が低下すること わかる。

 本発明により得られる、核水素化された 香族ビニル化合物/(メタ)アクリレート系共 合体は、高透明性、低複屈折、高耐熱性、 表面硬度、低吸水性、低比重、高転写性、 れた離型性を示し、特に光学材料として優 た特性を有しており、光学レンズ、光導光 、光拡散板、光ディスク基板材料、前面パ ル等の広範な用途に利用可能である。