FUJIOKA MASAAKI (JP)
TANAKA YOICHI (JP)
MINAGAWA MASANORI (JP)
HOSHINO MANABU (JP)
FUJIOKA MASAAKI (JP)
TANAKA YOICHI (JP)
MINAGAWA MASANORI (JP)
JP2006342421A | 2006-12-21 | |||
JPH03232923A | 1991-10-16 | |||
JPH09263828A | 1997-10-07 | |||
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JPH08188823A | 1996-07-23 |
Masatake Shiga (JP)
引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板の製造方法であって、 質量%で、 C :0.030%以上、0.055%以下、 Mn:3.0%以上、3.5%以下、 Al:0.002%以上、0.10%以下、 P :0.01%以下、 S :0.0010%以下、 N :0.0060%以下、 Mo:0.03%以下、 Si:0.09%以下、 V :0.01%以下、 Ti:0.003%以下、 B :0.0003%以下、 Nb:0.003%以下 を含み、溶接割れ感受性指数Pcm値が0.20~0.24%であり、焼入れ性指数DI値が1.00~2.60であり、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]、[Al]、[B]を、それぞれC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Al、Bの質量%で表した含有量としたとき、前記Pcm値が以下のように示され、前記DI値が以下のように示される鋼片または鋳片を、 Pcm=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15+[V]/10+5[B] DI=0.367([C] 1/2 )(1+0.7[Si])(1+3.33[Mn])(1+0.35[Cu])(1+0.36[Ni])(1+2.16[Cr])(1+3.0[Mo])(1+1.75[V])(1+1.77[Al]) 950℃~1100℃に加熱する工程と; 850℃以上の温度範囲での累積圧下率を70~90%とする第1圧延工程と; 前記1圧延工程の後、780~830℃の範囲での累積圧下率を10~40%とし、780℃以上で行う第2圧延工程と; 前記2圧延工程の後、700℃以上から冷却速度が8~80℃/secとなる加速冷却を開始する工程と; 室温~350℃で前記加速冷却を停止する工程と;を含むことを特徴とする高張力厚鋼板の製造方法。 |
前記鋼片または鋳片が、さらに、質量%で、 Cu:0.05%以上、0.20%以下、 Cr:0.05%以上、1.00%以下、 の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の高張力厚鋼板の製造方法。 |
前記鋼片または鋳片が、さらに、質量%で、 Mg:0.0005%以上、0.01%以下、 Ca:0.0005%以上、0.01%以下 の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の高張力厚鋼板の製造方法。 |
板厚12mm以上かつ40mm以下の厚鋼板を製造することを特徴とする請求項1に記載の高張力厚鋼板の製造方法。 |
本発明は、予熱フリーの高溶接性と溶接継
の低温靭性に優れる引張強さ780MPa以上の高
力厚鋼板を、高価なNiを使用せず、かつ、
延後の再加熱焼戻し熱処理を必要としない
い生産性と低コストのもとに製造する方法
関する。
本出願は、2009年3月13日に日本に出願された
特願2009-061630号と、2008年4月1日に日本に出願
れた特願2008-095021号とを基礎出願とに基づ
優先権を主張し、それらの内容をここに援
する。
建設機械、産業機械、橋梁、建築、造船 どの溶接構造部材として用いられる引張強 780MPa以上の高張力鋼板には、母材の高強度 高靭性の両立に加えて、構造部材の高強度 ニーズの増大、寒冷地での使用増加に伴い 予熱フリーの高溶接性と溶接継手低温靭性 求められる。そしてこれらの特性を全て満 し、かつ、廉価で、短工期で製造可能な780M Pa以上の厚鋼板が板厚40mm程度まで要求される ようになってきた。すなわち、(a)母材高強度 ・高靭性、(b)2.0kJ/mm以下の小入熱溶接時の予 フリー化、(c)溶接継手の低温靭性、の3つの 特性全てを、廉価成分系で、短工期+廉価製 プロセスにて満足する必要がある。
高溶接性を付与した780MPa以上の高張力厚鋼
の従来の製造方法としては、例えば、特許
献1~3に開示があるように、鋼板の圧延直後
オンラインで直接焼入れを行い、その後に
戻し処理を行う、直接焼入れ、焼戻しによ
方法がある。
非調質での780MPa以上の高張力厚鋼板の製造
法に関しては、例えば、特許文献4~8に開示
あり、いずれも再加熱焼戻し熱処理が省略
きる点では製造工期、生産性に優れる製造
法である。このうち、特許文献4~7は、鋼板
圧延後の加速冷却を途中で停止する、加速
却-途中停止プロセスによる製造方法であり
、特許文献8は圧延後空冷で室温まで冷却す
製造方法である。
しかしながら、特許文献1~3に開示の従来 術では、再加熱焼戻し熱処理が必要となり 製造工期、生産性、製造コストに問題があ ため、再加熱焼戻し熱処理が省略できるい ゆる非調質の製造方法への要求が強い。ま 、特許文献4に開示された製造方法では、そ の実施例に記載があるように溶接時に50℃以 での予熱が必要であり、予熱フリーの高溶 性を満足する事ができない。さらに、特許 献5に開示された製造方法では0.6%以上のNi添 加が必要なため高価な成分系となり製造コス ト上問題がある。特許文献6に開示された製 方法では、実施例に記載の板厚15mmまでしか 造できず、板厚40mmまでの板厚要求を満足で きない。さらに、板厚15mmにおいても、C含有 が少なく溶接継手のミクロ組織が粗粒とな 十分な溶接継手低温靭性が得られない問題 ある。特許文献7に開示された製造方法では 、実施例に記載があるように1.0%程度のNi添加 が必要なため高価な成分系となり製造コスト 上問題がある。特許文献8に開示された製造 法は、実施例に記載の板厚12mmまでしか製造 きず、板厚40mmまでの板厚要求を満足できな い。さらに、その圧延条件の特徴としてフェ ライトとオーステナイトの二相温度範囲で累 積圧下率16~30%の圧延を行うため、フェライト 粒が粗大化しやすく板厚12mmの製造において 強度、靭性が低下しやすい問題がある。
以上のように、母材の高強度と高靭性、 溶接性、溶接継手の低温靭性の全てを、高 合金元素のNi無添加で、かつ、圧延冷却後 再加熱焼戻し熱処理を省略した上で満足可 な高張力厚鋼板の製造方法は、需要家の要 が強いにもかかわらず、未だ発明されてい いのが現状である。
母材強度780MPa級の厚鋼板では、予熱フリー
に及ぼす板厚の影響は非常に大きい。板厚1
2mm未満では予熱フリー化が容易に達成できる
。これは板厚12mm未満であれば水冷時の鋼板
冷却速度を板厚中心部でも100℃/sec以上と大
くする事が可能である。この場合、少ない
金元素添加量で母材組織をベイナイトやマ
テンサイト組織とすることができ、780MPa級
母材強度が得られる。合金元素添加量が少
いので予熱しなくても溶接熱影響部の硬さ
低く抑える事ができ、予熱フリーでも溶接
れを防止できる。
一方で、板厚が厚くなると、水冷時の冷却
度は必然的に小さくなる。このため薄手鋼
と同一成分では焼入れ不足から厚手鋼板の
度は低下し、780MPa級の強度を満足できなく
る。特に冷却速度が最も小さくなる板厚中
部(1/2t部)での強度低下が顕著である。冷却
度が8℃/secを下回るような板厚40mmを超える
手鋼板になると母材強度確保に合金元素の
量添加が必須となり、予熱フリー化は極め
困難となる。
そこで、本発明は、母材の高強度と高靭 、高溶接性、溶接継手の低温靭性の全てを 高価合金元素のNi無添加で、かつ、圧延冷 後の再加熱焼戻し熱処理を省略した上で満 可能な、溶接性と低温靭性に優れる引張強 780MPa以上の高張力厚鋼板の製造方法を提供 ることを一つの目的とする。
尚、本発明が対象とする具体的な鋼板の特
は、以下のとおりである。
(a)母材の板厚中心部において、引張強さ780M
Pa以上、好ましくは1000MPa以下、降伏応力685MPa
以上、-80℃でのシャルピー吸収エネルギーが
100J以上。
(b)室温におけるy形溶接割れ試験時の溶接割
れ防止のための必要予熱温度が25℃以下また
、予熱不要。
(c)溶接入熱3.0kJ/mmでのサブマージアーク溶
(SAW)継手の溶接熱影響部(HAZ部)のシャルピー
収エネルギーが-50℃で60J以上
また、本発明が対象とする鋼板の板厚は、1
2~40mmである。
本発明者らは上述した課題を解決するた に、Ni無添加の成分系で圧延後直接焼入れ よる製造を前提に、母材、溶接継手につき 多くの検討を行った。解決が困難であった 題は2つあり、1つは、Ni無添加での溶接継手 温靭性の確保である。この課題に対し、溶 入熱3.0kJ/mm程度でのサブマージアーク溶接(S AW)継手の熱影響部(HAZ)靭性における添加成分 影響につき種々検討を行った。この結果、C 添加量を0.03%以上、0.055%以下に厳格に規制し 焼入れ性指数DI値で評価し得る鋼の焼入れ を1.00以上、2.60以下の最適範囲とし、その上 さらに、Mo、V、Si、Ti、Bの5元素を5元素とも 加しない場合に限り、Ni無添加で、-50℃で良 好な溶接継手靭性が得られることを新規に知 見した。
さらに、被覆アーク、TIGまたはMIG溶接等 入熱量2.0kJ/mm以下の小入熱溶接時の予熱フ ーの実現に向け、新規知見に基づき、Ni、お よび、Mo、V、Si、Ti、Bの5元素を添加せず、上 述のC量、DI値の範囲を満足する成分にて溶接 性に関する検討を行った。この結果、Pcm値で 評価し得る溶接割れ感受性指数を0.24%以下に 制する事で、y形溶接割れ試験時の溶接割れ 防止のための必要予熱温度を25℃以下または 予熱不要とする事ができ、予熱フリー化が 能となる事がわかった。
しかしながら、解決が困難であった課題 もう1つは、Pcm値0.24%以下を前提にした場合 、板厚40mmまでの板厚方向全厚に亘る母材強 度・靭性の両立であった。これに対し、Mnを3 .0%以上と多量に添加し、一般に組織の微細化 を通して高強度・高靭性を得るのに有効とさ れるNbを逆に添加せず、Pcm値にて0.20%以上を 足するようにした。この上で、さらに、圧 条件をオーステナイト再結晶温度域である85 0℃以上と、未再結晶温度域である780~830℃の 2つの温度域での、夫々の累積圧下率を厳格 に規制した。さらに、圧延直後に700℃以上か ら室温以上350℃以下まで冷却速度8℃/sec以上 80℃/sec以下にて冷却した。この条件で、初 て、板厚40mmまでの板厚方向全厚に亘る母材 強度・靭性の両立、具体的には、引張強さ780 MPa以上、降伏応力685MPa以上、-80℃でのシャル ピー吸収エネルギーが100J以上を満足可能と ることを新規に知見した。
本発明は、以上のような新規知見に基づき
されたものであって、その要旨は次のとお
である。
(1)引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板の製造
法であって、質量%で、C :0.030%以上、0.055%
下、Mn:3.0%以上、3.5%以下、Al:0.002%以上、0.10%
下、P :0.01%以下、S :0.0010%以下、N :0.0060%以
下、Mo:0.03%以下、Si:0.09%以下、V :0.01%以下、Ti
:0.003%以下、B :0.0003%以下、Nb:0.003%以下を含み
、溶接割れ感受性指数Pcm値が0.20~0.24%であり
焼入れ性指数DI値が1.00~2.60であり、残部Feお
び不可避的不純物からなる成分組成を有し
[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]、[Al]
、[B]を、それぞれC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V
Al、Bの質量%で表した含有量としたとき、前
記Pcm値が以下のように示され、前記DI値が以
のように示される鋼片または鋳片を、
Pcm=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15+[V
]/10+5[B]
DI=0.367([C] 1/2
)(1+0.7[Si])(1+3.33[Mn])(1+0.35[Cu])(1+0.36[Ni])(1+2.16[Cr])
(1+3.0[Mo])(1+1.75[V])(1+1.77[Al])
950℃~1100℃に加熱する工程と;850℃以上の温
範囲での累積圧下率を70~90%とする第1圧延工
程と;前記1圧延工程の後、780~830℃の範囲での
累積圧下率を10~40%とし、780℃以上で行う第2
延工程と;前記2圧延工程の後、700℃以上から
冷却速度が8~80℃/secとなる加速冷却を開始す
工程と;室温~350℃で前記加速冷却を停止す
工程と;を含むことを特徴とする高張力厚鋼
の製造方法。
(2)前記鋼片または鋳片が、さらに、質量%で
Cu:0.05%以上、0.20%以下、Cr:0.05%以上、1.00%以下
、の1種または2種を含有することを特徴とす
(1)に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
(3)前記鋼片または鋳片が、さらに、質量%で
Mg:0.0005~0.01%、Ca:0.0005~0.01%の1種または2種を含
有することを特徴とする(1)に記載の高張力厚
鋼板の製造方法。
(4)板厚12mm以上かつ40mm以下の厚鋼板を製造す
ことを特徴とする(1)に記載の高張力厚鋼板
製造方法。
本発明によれば、高強度化ニーズの強い 設機械、産業機械、橋梁、建築、造船など 溶接構造物の構造部材として好適な、予熱 リーの溶接性に優れる引張強さ780MPa以上の 厚12mm以上40mm以下の高張力厚鋼板を、高価 Niを使用せず、かつ、圧延後の再加熱焼戻し 熱処理を必要としない高い生産性と低コスト のもとに製造することができ、その工業界へ の効果は極めて大きい。
本発明鋼は、建設機械、産業機械、橋梁、
築、造船などの溶接構造物の構造部材とし
、板厚12mm以上40mm以下の厚鋼板の形態で用
られるものである。なお、ここで、予熱フ
ーとは、室温において、被覆アーク、TIGま
はMIG溶接等を用いた、2.0kJ/mm以下の入熱量の
溶接によって、JISZ3158「y形溶接割れ試験」を
行った際、溶接割れ防止ための必要予熱温度
が、25℃以下である、または予熱が全く必要
ないことをいう。
以下に、本発明における各成分および製造
法の限定理由を説明する。
Cは、本発明において重要な元素であり、母
材強度・靭性、高溶接性、溶接継手低温靭性
を全て満足するためには、0.030~0.055%に厳格に
規制する必要がある。C添加量が0.030%を下回
と、母材および溶接熱影響部にて冷却時の
態温度が高温となりフェライト組織が生成
るため母材強度・靭性および溶接継手靭性
低下する。C添加量が0.055%を超えると、溶接
の必要予熱温度が25℃を超えて予熱フリー
満足できず、また、溶接熱影響部が硬くな
ため溶接継手靭性も満足できない。
Mnは、本発明において重要な元素であり 母材強度・靭性の両立のために、3.0%以上の 量の添加が必要である。3.5%を超えて添加す ると中心偏析部において靭性に有害な粗大な MnSが生成し、板厚中心部の母材靭性の低下を もたらすので、上限を3.5%とする。
Alは、脱酸元素として0.002%以上の添加が 要である。0.10%を超えて添加すると粗大なア ルミナ介在物が生成し、靭性を低下させる場 合があるのでその上限を0.10%とする。なお、A l添加量の下限値を0.020%に制限してもよい。 た、Al添加量の上限値を0.08%又は0.05%に制限 てもよい。
Pは、母材および溶接継手の低温靭性を低下
させるため含有しない事が望ましい。不可避
的に混入する不純物元素としての許容値は0.0
1%以下である。なお、Pの許容量を0.009%以下に
制限してもよい。
Sは、Mnを多量に添加する本発明方法におい
は粗大なMnSを生成して母材および溶接継手
靭性を低下させるため、含有しない事が望
しい。本発明では高強度と高靭性の両立に
効な高価なNiを使用しないので、粗大なMnS
有害性は大きく、不可避的に混入する不純
元素としての許容値は0.0010%以下であり、厳
な規制が必要である。
Nは0.0060%を超えて添加すると、母材および
接継手靭性を低下させるので、その上限を0.
0060%とする。
Mo、Si、V、Ti、Bの5元素は含有しないことが
ましいが、不可避的に混入する不純物元素
しての上限値は、Mo:0.03%、Si:0.09%、V:0.01%、Ti
:0.003%、B:0.0003%である。
Mo、Si、V、Ti、Bは、本発明において特に重
な意味を持つ元素であり、これら5元素が5元
素とも上記上限値未満である場合に限り、Ni
添加で、-50℃で良好な溶接継手靭性が得ら
る。これら5元素のうち1元素でも上記上限
を超えると、HAZ部に脆化組織である島状マ
テンサイトを含む粗大なベイナイト組織、
るいは有害な介在物であるTiNが生成する。
れに対し、5元素とも上記上限値未満である
合に限り、島状マルテンサイトを含む粗大
ベイナイト組織もTiNもどちらも生成しない
が、溶接継手の低温靭性が良好となる理由
考えられる。本発明では高強度と高靭性の
立に有効な高価なNiを使用しないので、島
マルテンサイトを含む粗大なベイナイト組
やTiNの有害性は大きく、これら5元素は含有
ないことが望ましい。
Nbは、本発明において重要な元素であり 添加すると母材の強度・靭性が得られない 一般にNbは組織の微細化を通して高強度・高 靭性を得るのに有効とされる。しかしながら 、本発明のようにC含有量が少なくMnを多量に 添加する成分系では、Nbを添加する事により 延時の歪みが過剰に蓄積され、圧延中およ その後の冷却中に局所的にフェライト組織 、島状マルテンサイトを含む粗大なベイナ ト組織が生成するため、母材の高強度・高 性が得られない。Nbは含有しないことが望 しいが、不可避的に混入する不純物元素と ての上限値は0.003%である。
なお、Mo、V、Ti、NbはNiと同様に高価な元 であるので、これら高価元素を添加せずに 好な特性が得られる本発明は、単にNi無添 とする以上に大きな合金コスト低減メリッ がある。
Cuは、母材強度の確保のためにPcm値、DI値の
規制範囲内で添加しても良い。この効果を得
るためには、0.05%以上の添加が必要である。
かしながら、Ni無添加でCuを0.20%以上添加す
と、鋼片、鋼板の表面割れの発生による製
工期、生産性、製造コストが問題となる懸
があるため、その上限を0.20%とする。不可
的に混入するCuの含有量は、具体的には0.03%
下である。
Crは、母材強度の確保のためにPcm値、DI値の
規制範囲内で添加しても良い。この効果を得
るためには、0.05%以上の添加が必要である。
かしながら、1.00%を超えて添加すると母材
び溶接継手の靭性が低下するので、その上
を1.00%とする。不可避的に混入するCrの含有
は、具体的には0.03%以下である。なお、Cr添
加量の上限値を0.50%又は0.30%に制限してもよ
。
MgおよびCaの1種または2種を添加すること より、微細な硫化物や酸化物を形成して母 靭性および溶接継手靭性を高めることがで る。この効果を得るためにはMgあるいはCaは それぞれ0.0005%以上の添加が必要である。し し、0.01%を超えて過剰に添加すると粗大な硫 化物や酸化物が生成するためかえって靭性を 低下させることがある。したがって、添加量 をそれぞれ0.0005%以上、0.01%以下とする。なお 、Ca添加量の上限値を0.005%又は0.002%に制限し もよい。
本発明では、Niは添加しない。しかし、Ni がスクラップ原料等から不可避的に混入する 場合は、含有していても高コストとはならな いため本発明の範囲内である。不可避的に混 入するNiの含有量は、具体的には0.03%以下で る。
溶接割れ感受性指数Pcm値は0.24%以下にしな
と溶接時の予熱をフリーにできないので、
の上限を0.24%以下とする。Pcm値が0.20%未満と
ると、母材の高強度・高靭性を満足できな
ので、その下限を0.20%とする。
ここで、Pcm=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/2
0+[Mo]/15+[V]/10+5[B]であり、[C] 、[Si]、[Mn]、[Cu]
[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]、[B]は、それぞれC、Si、M
n、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bの質量%で表した含有量
を意味する。
焼入れ性指数DI値は1.00未満ではHAZ部の焼入
性が不十分となり、脆化組織である島状マ
テンサイトを含む粗大なベイナイト組織が
成し、溶接継手低温靭性が低下する。この
め1.00を下限とする。DI値が2.60を超えるとHAZ
部の組織そのものが低靭性のマルテンサイト
を多く含むようになり溶接継手低温靭性が低
下するため、その上限を2.60とする。なお、DI
値の上限を2.00、1.80又は1.60に制限してもよい
。
ここで、DI=0.367([C] 1/2
)(1+0.7[Si])(1+3.33[Mn])(1+0.35[Cu])(1+0.36[Ni])(1+2.16[Cr])
(1+3.0[Mo])(1+1.75[V])(1+1.77[Al])
ここで、[C]、[Si]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]
[V]、[Al]は、それぞれC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、M
o、V、Alの質量%で表した含有量を意味する。
入れ性指数DI値の各元素の係数は新日鉄技
第348号(1993)、11ページに記載のものである。
次に、成分組成以外の製造方法について述
る。
鋼片または鋳片の加熱温度は、圧延に必要
950℃以上とする必要がある。1100℃を超える
とオーステナイト粒が粗大化して靭性が低下
する。特に、本発明のNi無添加では加熱時の
期オーステナイト粒を細粒にしておかない
、良好な母材靭性が得られない。本発明のC
含有量が少なくNbを添加しない成分系では、
溶CやNbCによるオーステナイト粒成長抑制効
果が小さく加熱時の初期オーステナイト粒が
粗大化しやすいので、加熱温度の上限は1100
に厳格に規制する必要がある。
オーステナイト再結晶温度域での累積圧 率は、オーステナイト粒を十分に等方的に 粒化して、母材の高強度・高靭性を得るた に70%以上とする必要がある。本発明鋼の十 なオーステナイト再結晶温度域は850℃以上 ある。このため、850℃以上での累積圧下率 70%以上とする必要がある。ここで、累積圧 率とは、850℃以上での圧延の総圧下厚を、 延開始厚すなわち鋼片または鋳片厚で除し% 表示したものである。累積圧下率が90%を超え ると圧延時間が長時間となり生産性が低下す るため、その上限を90%とする。
オーステナイト未再結晶温度域での累積圧
率は、母材の高強度・高靭性を得るために1
0%以上とする必要がある。本発明鋼の十分な
ーステナイト未再結晶温度域は780~830℃であ
る。このため、780~830℃での累積圧下率を10%
上とする必要がある。ここで、累積圧下率
は、780~830℃での圧延の総圧下厚を、780~830℃
での圧延開始厚で除し%表示したものである
累積圧下率が40%を超えると過剰な圧延歪の
積により局所的にフェライト組織や、島状
ルテンサイトを含む粗大なベイナイト組織
生成し、母材の高強度・高靭性が得られな
ので、その上限を40%とする。
同じように、圧延温度が780℃を下回ると過
な圧延歪の蓄積により局所的にフェライト
織や、島状マルテンサイトを含む粗大なベ
ナイト組織が生成し、母材の高強度・高靭
が得られないので、圧延温度の下限を780℃
規制する。
圧延後の加速冷却の開始温度は、700℃未満
場合、局所的にフェライト組織や、島状マ
テンサイトを含む粗大なベイナイト組織が
成し、母材の高強度・高靭性が得られない
で、その下限温度を700℃とする。
加速冷却の冷却速度が8℃/sec未満の場合、
所的にフェライト組織や、島状マルテンサ
トを含む粗大なベイナイト組織が生成し、
材の高強度・高靭性が得られないので、そ
下限値を8℃/secとする。上限は水冷により安
定して実現可能な冷却速度である80℃/secとす
る。
加速冷却の停止温度が350℃より高いと、 に板厚30mm以上の厚手材の板厚中心部におい て、焼入れ不足による島状マルテンサイトを 含む粗大なベイナイト組織が生成し、母材の 高強度・高靭性が得られないので、停止温度 の上限を350℃とする。この時の停止温度とは 、冷却終了後に鋼板が復熱した時の鋼板表面 温度とする。停止温度の下限は室温であるが 、鋼板の脱水素の点で、より好ましい停止温 度は100℃以上である。
表1~3に示す成分組成の鋼を溶製して得ら た鋼片を、表4~7に示す製造条件にて板厚12~4 0mmの鋼板とした。これらのうち表4の1~21は本 明例であり、表5~7の22~73は比較例である。 中、下線で示す数字と記号は、成分または 延条件等の製造条件が特許範囲を逸脱して るか、あるいは特性が下記の目標値を満足 ていないものである。尚、表1~3のNi量は不可 避的不純物元素としての含有量である。
これらの鋼板についての母材強度(母材降伏
応力、母材引張強さ)、母材靭性、溶接性(必
予熱温度)、溶接継手低温靭性(溶接熱影響
靭性)の評価結果を表4~7に示す。
母材強度は、JISZ2201に規定の、1A号全厚引張
試験片あるいは4号丸棒引張試験片を採取し
JISZ2241に規定の方法で測定した。引張試験片
は板厚20mm以下では1A号全厚引張試験片を採取
し、板厚20mm超では4号丸棒引張試験片を板厚
1/4部(1/4t部)と板厚中心部(1/2t部)より採取し
。
母材靭性は、板厚中心部から圧延方向に直
な方向にJISZ2202に規定の衝撃試験片を採取
、JISZ2242に規定の方法で-80℃でのシャルピー
吸収エネルギー(vE-80)を求めて評価した。
溶接性は、14~16℃にて、JISZ3158に規定の方法
で、入熱1.7kJ/mmで被覆アーク溶接を行い、ル
ト割れ防止に必要な予熱温度を求めて評価
た。
溶接熱影響部靭性は、ルートギャップを有
る角度20°のV型開先を用いて入熱量3.0kJ/mmの
SAW溶接(電流500A、電圧30V、速度30cm/min)を行い
板厚中心部(1/2t部)よりノッチ底が溶融線(フ
ュージョン・ライン)をできるだけ多く含む
うにJISZ2202に規定の衝撃試験片を採取して、
-50℃での吸収エネルギー(vE-50)にて評価した
各特性の目標値はそれぞれ母材降伏応力 685MPa以上、母材引張強さが780MPa以上、母材 性(vE-80)が100J以上、必要予熱温度が25℃以下 、溶接熱影響部靭性がvE-50にて60J以上とした
本発明例1~21は、いずれも母材降伏応力が 685MPa以上、母材引張強さが780MPa以上、母材靭 性(vE-80)が100J以上、必要予熱温度が25℃以下 溶接熱影響部靭性がvE-50にて60J以上である。
これに対して、以下の比較例は母材の降 応力や引張強さが不足する。すなわち、比 例22はC添加量が少ないため、比較例25はMn添 加量が少ないため、比較例32、33はNbが添加さ れているため、比較例44、45はPcm値が低いた 、比較例55、56は850℃以上での累積圧下率が7 0%を下回るため、比較例57、58は780~830℃での 積圧下率が10%を下回るため、比較例59、60は7 80~830℃での累積圧下率が40%を上回るため、比 較例61、62、69は圧延終了温度が780℃を下回る ため、比較例63、64、70は水冷開始温度が700℃ を下回るため、比較例65、66、71は冷却速度が 8℃/secを下回るため、比較例67、68、72、73は 却停止温度が350℃を上回るため、母材の降 応力や引張強さが不足する。
以下の比較例は母材靭性が不足する。比 例26はMn添加量が多いため、比較例27はP添加 量が多いため、比較例28はS添加量が多いため 、比較例29はCr添加量が多いため、比較例32、 33はNbが添加されているため、比較例36、37はT iが添加されているため、比較例38はAl添加量 多いため、比較例41、42、43はそれぞれ、Mg Ca、N添加量が多いため、比較例44、45はPcm値 低いため、比較例53、54は加熱温度が高いた め、比較例55、56は850℃以上での累積圧下率 70%を下回るため、比較例59、60は780~830℃での 累積圧下率が40%を上回るため、比較例61、62 69は圧延終了温度が780℃を下回るため、比較 例63、64、70は水冷開始温度が700℃を下回るた め、比較例65、66、71は冷却速度が8℃/secを下 るため、比較例67、68、72、73は冷却停止温 が350℃を上回るため、母材靭性が不足する
比較例23はC添加量が多いため、比較例46 47、49はPcm値が高いため、必要予熱温度が25 を上回り、予熱フリーを満足しない。
また、以下の比較例は、溶接継手低温靭 (溶接熱影響部靭性)を満足しない。すなわ 、比較例22はC添加量が少ないため、比較例23 はC添加量が多いため、比較例24はSiが添加さ ているため、比較例27、28はそれぞれP、S含 量が多いため、比較例30、31はMoが添加され いるため、比較例34、35はVが添加されてい ため、比較例36、37はTiが添加されているた 、比較例38はAl添加量が多いため、比較例39 40はBが添加されているため、比較例41、42、4 3はそれぞれ、Mg、Ca、N添加量が多いため、比 較例44、45はDI値が低いため、比較例48、49はDI 値が高いため、比較例50、51、52はMo、V、Si、T i、Bのいずれかの3~4元素が添加されているた 、いずれも溶接継手低温靭性を満足しない なお、比較例49は、Ni無添加鋼にCuが0.20%を えて添加されていたため、スラブ鋼片表面 微細な割れを生じ、熱間圧延前に部分的に 面を数mm研削する必要が生じ、生産性が低下 した。
本発明によれば、高強度化ニーズの強い 設機械、産業機械、橋梁、建築、造船など 溶接構造物の構造部材として好適な、予熱 リーの溶接性に優れる引張強さ780MPa以上の 厚12mm以上40mm以下の高張力厚鋼板を、高価 Niを使用せず、かつ、圧延後の再加熱焼戻し 熱処理を必要としない高い生産性と低コスト のもとに製造することができ、その工業界へ の効果は極めて大きい。