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Title:
PROPHYLACTIC AGENT FOR HEART FAILURE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/123095
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is an agent capable of preventing the thickening of a heart wall. Also disclosed is a prophylactic agent for heart failure or a functional food which is expected to have a prophylactic activity on heart failure, which comprises the agent capable of inhibiting the thickening of a heart wall. The agent capable of inhibiting the thickening of a heart wall comprises Xaa-Pro-Pro as an active ingredient.

Inventors:
HIROTA TATSUHIKO (JP)
OHKI KOHJI (JP)
NAKAMURA TEPPEI (JP)
TAKANO TOSHIAKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/055072
Publication Date:
October 16, 2008
Filing Date:
March 19, 2008
Export Citation:
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Assignee:
CALPIS CO LTD (JP)
HIROTA TATSUHIKO (JP)
OHKI KOHJI (JP)
NAKAMURA TEPPEI (JP)
TAKANO TOSHIAKI (JP)
International Classes:
A61K38/00; A23L1/305; A23L33/10; A23L33/17; A23L33/19; A61K35/20; A61K35/74; A61K35/747; A61K36/06; A61K38/01; A61K38/02; A61K38/06; A61K38/17; A61P9/00; A61P9/04; A61P9/10; A61P43/00; C07K5/08; C07K14/47; C12P21/06
Domestic Patent References:
WO2007013426A12007-02-01
WO1999016862A11999-04-08
WO2007094342A12007-08-23
Foreign References:
JP2782142B21998-07-30
Other References:
YAMAMOTO Y.: "Koatsuzai no Ichizuke 6) Angiotensin Henkan Koso (ACE) Sogaizai", MEDICINE AND DRUG JOURNAL, vol. 33, no. 2, 1997, pages 646 - 650
See also references of EP 2130546A4
AM J HYPERTENS., vol. 10, no. 8, August 1997 (1997-08-01), pages 913 - 20
J. CLIN. INVEST., vol. 77, 1986, pages 1993 - 2000
SAISHIN IGAKU, vol. 48, 1993, pages 1404 - 1409
J. DAIRY SCI., vol. 78, 1995, pages 777 - 78
J.DAIRY SCI., vol. 78, 1995, pages 1253 - 1257
AM. J. CLIN. NUTR., vol. 64, 1996, pages 767 - 771
YAMAMOTO, N. ET AL., BIOCHEM., vol. 114, 1993, pages 740
TWINING, S., ANAL. BIOCHEM., vol. 143, 1984, pages 3410
SAISHIN IGAKU, vol. 48, 1993, pages 1404 - 1409
J. DAIRY SCI., vol. 78, 1995, pages 777 - 783
Attorney, Agent or Firm:
KUMAKURA, Yoshio et al. (Shin-Tokyo Bldg. 3-1, Marunouchi 3-chome, Chiyoda-k, Tokyo 55, JP)
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Claims:
 Xaa Pro Proを有効成分として含有する、心臓壁肥厚抑制剤。
 Xaa Pro ProがVal Pro Pro及び/又はIle Pro Proである、請求項1に記載の心臓壁肥厚抑制剤。
 Xaa Pro Proが獣乳カゼイン加水分解物又はその濃縮物に由来する、請求項1又は2に記載の心臓壁肥厚抑制剤。
 獣乳カゼイン加水分解物が、獣乳カゼインを麹菌により発酵させて得られる発酵物である、請求項3に記載の心臓壁肥厚抑制剤。
 獣乳カゼイン加水分解物が、獣乳カゼインを麹菌由来酵素により分解して得られる分解物である、請求項3に記載の心臓壁肥厚抑制剤。
 麹菌由来酵素が、アスペルギルス・オリゼ由来の酵素である、請求項5に記載の心臓壁肥厚抑制剤。
 Xaa Pro Proが乳タンパク質を含む原料をラクトバチルス・ヘルベティカス種に属する菌により発酵させて得られる発酵物に由来する、請求項1又は2に記載の心臓壁肥厚抑制剤。
 ラクトバチルス・ヘルベティカス種に属する菌が、ラクトバチルス・ヘルベティカスCM4株(FERM BP-6060)である、請求項7に記載の心臓壁肥厚抑制剤。
 請求項1~8のいずれかに記載の心臓壁肥厚抑制剤を有効成分として含む、心肥大予防剤。
 請求項1~8のいずれかに記載の心臓壁肥厚抑制剤を有効成分として含む、心不全予防剤。
 請求項1~8のいずれかに記載の心臓壁肥厚抑制剤を含む、機能性食品。
 心不全予防のための効能を表示した、請求項11に記載の機能性食品。
Description:
心不全予防剤

 本発明は、心臓壁肥厚の抑制作用を有する 効成分、該有効成分を含む心肥大予防剤お び心不全予防剤、ならびに該有効成分を含 心肥大および心不全の予防効果が期待でき 機能性食品に関する。
 また、本発明は心臓壁肥厚を抑制する方法 関する。さらに本発明は心肥大および心不 を予防する方法に関する。

(背景技術)
 近年、一部の国では喫煙、高血圧、高血糖 高脂血症など、心疾患を引き起こすとされ 危険因子をかかえる人が多くなっており、 不全の患者数は増加する傾向にある。また これらの病態は人間だけに限られず、犬や その他コンパニオンアニマルやペットアニ ルなど人間と密接な関係を有する動物にも 加する傾向にある。
 心不全の病態、分類、経過はさまざまなの 、簡単に定義することはできないものの、 縮期心不全と拡張期心不全の大きく2つのタ イプに大別でき、この2つが同時に起こる場 もある。収縮期心不全は、心臓が正常に収 できなくなるために生じる。心臓は血液を りこむが、心筋が弱くなっているため、満 された血液を充分に押し出すことができず その結果、全身や肺に送られる血液量が少 くなり、心臓、特に左心室が肥大し得る。 方、拡張期心不全は、心臓の壁がかたく厚 なり、心臓が血液を充分にためることがで なくなるために発症する。その結果、血液 左心房内や肺の血管内にたまり、うっ血を こし得る。このように、一般に心不全とは 心臓のポンプ機能が不全に陥ったために、 臓が充分な量の血液を送り出せなくなるこ をいい、心不全によって、血流量の減少、 脈や肺の中への血液の滞留など、心臓の機 をさらに低下させる他の変化が生じ得る。

 心不全に至る原疾患として、例えば、高血 、大動脈狭窄症等による圧負荷の増大、弁 症等による容量負荷の増大等によって心臓 が肥厚する、心肥大が挙げられる。一方で 心筋梗塞の発症後に損傷組織において自発 な機能回復反応として心臓壁肥厚が形成さ ることもある。また、心筋症等、原因不明 心筋障害が起こることによっても心臓壁が 大する。心臓への機械的負荷が持続するこ により心筋の収縮力が次第に低下して心機 の低下を招き、ついには心室性不整脈、心 虚血、冠動脈疾患、うっ血性心不全へと至 。
 これらのことから、心臓壁の肥厚抑制作用 有する化合物は、心肥大や心不全の予防お び治療に有用である。

 心臓壁肥厚改善の方法としては、例えば、 血圧等による心肥大の場合、原因である高 圧症を治療することにより心臓壁肥厚も改 される場合があるが、その作用は満足でき ものではなく、しかも降圧剤には全く効果 ないものもある(Am J Hypertens.1997 Aug;10(8):913 ~20)。また、高血圧症が改善された場合であ ても、心臓壁肥厚が改善しない状態で残る 合が多く、このような場合においては、な も心不全発症の危険性がある。
 心不全治療に有効な薬剤として、アンジオ ンシンIから昇圧作用を有するアンジオテン シンIIへ変換する酵素(即ち、アンジオテンシ ン変換酵素; ACE)を阻害する物質で降圧作用 有する、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(A CEI)、例えば、エナラプリルが挙げられる。 た、降圧剤は血圧を下げると同時に腎障害 進行が改善されることが報告されている(J.  Clin. Invest, 77, 1993-2000,1986)。しかし一方では 、種々の原疾患から誘発される心不全に対し て、ACE阻害剤は必ずしもすべての症例に有効 なわけでなく、むしろ降圧に伴い急性腎不全 をきたす危険もあり慎重な投与が必要である ことが指摘されており(最新医学、48:1404 ~1409 , 1993)、すなわち降圧剤が心不全の予防に不 分なばかりか、むしろ腎不全を誘発する可 性がある。
 一方、カゼイン等の食品素材に由来するペ チドにACE阻害活性のあることが報告されて り、これらが血圧降下作用を有することが られているが、心臓壁肥大抑制作用を有す か否かは直接示されていない(特許第2782142 公報、J. Dairy Sci. 1995, 78:777-78、J.Dairy Sci. 1995, 78:1253-1257, Am. J. Clin. Nutr. 1996, 64:767- 771)。また、ACE阻害による心不全の予防また 治療効果は前記のように限定的であるため ACE阻害に因らない疾患の予防または治療が まれる。

(発明の開示)
 本発明により、ACE阻害活性に依存せずに、 臓壁の肥厚抑制作用を有する化合物又は組 物が提供される。
 さらに、本発明により、前記化合物又は組 物を含む心不全予防剤が提供される。
 また本発明により、前記化合物又は組成物 含む、心不全の予防効果が期待できる機能 食品が提供される。
 さらに本発明により、前記化合物または組 物を対象者に投与することを含む、心臓壁 肥厚を抑制する方法が提供される。
 また本発明により、前記化合物または組成 を対象者に投与することを含む、心不全を 防する方法が提供される。
 また本発明は、前記化合物または組成物の 心臓壁の肥厚を抑制するための医薬の製造 おける使用でもある。特に、本発明は、前 化合物または組成物の、心肥大予防用医薬 造における使用でもある。また、本発明は 前記化合物または組成物の、心不全予防用 薬の製造における使用でもある。

 本発明者等は、Xaa Pro Pro(Xaaは任意の天然 アミノ酸)という特定の構造を有するトリペ チドが心臓壁肥厚の抑制作用を有すること 見出し、心不全の予防に役立つ医薬及び機 性食品を発明するに至った。その具体的な 容は、以下の通りである。
 本発明は、Xaa Pro Proを有効成分として含有 する心臓壁の肥厚抑制剤を提供する。
 また本発明は、上述のような心臓壁の肥厚 制作用を有する心肥大予防剤を提供する。
 また本発明は、上述のような心臓壁の肥厚 制作用を有する心不全予防剤を提供する。
 また本発明は、上述のような心臓壁の肥厚 制剤を含む機能性食品を提供する。
 本発明は、Xaa Pro ProまたはXaa Pro Proを含 組成物を対象者に投与することを含む、心 壁の肥厚を抑制する方法を提供する。
 また、本発明は、Xaa Pro ProまたはXaa Pro Pr oを含む組成物を対象者に投与することを含 、心肥大を予防する方法をも提供する。
 また、本発明は、Xaa Pro ProまたはXaa Pro Pr oを含む組成物を対象者に投与することを含 、心不全を予防する方法を提供する。
 さらに、本発明は、Xaa Pro ProまたはXaa Pro Proを含む組成物の、心臓壁の肥厚を抑制す 医薬の製造における使用でもある。特に、 発明は、Xaa Pro ProまたはXaa Pro Proを含む組 成物の心肥大防用医薬の製造における使用で もある。また、本発明はXaa Pro ProまたはXaa  Pro Proを含む組成物の、心不全予防用医薬の 造における使用でもある。

 好ましくは、Xaa Pro ProがVal Pro Pro及び/又 Ile Pro Proである。
 本発明の別の態様においては、有効成分Xaa Pro Proが、獣乳カゼイン加水分解物又はその 濃縮物に由来する。
 本発明のさらに別の態様においては、有効 分Xaa Pro Proが、乳タンパク質を含む原料を ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)種に属する菌により発酵させて得ら れる発酵物に由来する。
 好ましくは、ラクトバチルス・ヘルベティ ス種に属する菌がラクトバチルス・ヘルベ ィカスCM4株(FERM BP-6060)である。

(発明を実施するための最良の形態)
 本発明の心臓壁肥厚抑制剤は、Xaa Pro Proと いう構造のトリペプチドを有効成分として含 有する。ここで「剤」とは薬剤に限定される ものではなく、例えば、医薬組成物または食 品組成物などの組成物、あるいは、例えば食 品添加剤などの化合物をいう。本発明でいう 「心臓壁肥厚抑制剤」とは、心臓壁肥厚病変 の進行を抑えとどめる作用を有するか、心臓 壁肥厚病変を改善する作用を有するか、ある いは心臓壁肥厚発症の予防効果を有する化合 物又は組成物をいう。
 本発明の有効成分Xaa Pro ProのXaaは、任意の 天然のアミノ酸でよい。具体的には、Val Pro Pro(バリン-プロリン-プロリン)、Ile Pro Pro( ソロイシン-プロリン-プロリン)、Ser Pro Pro( セリン-プロリン-プロリン)、Leu Pro Pro(ロイ ン-プロリン-プロリン)などが挙げられ、好 しくはVal Pro Pro、Ile Pro Proであり、より ましくはVal Pro Proである。また有効成分と て、Val Pro Pro及びIle Pro Proといった1種以 のトリペプチドXaa Pro Proの組合せを含んで いてもよい。
 有効成分Xaa Pro Proは有機化学的に合成した トリペプチドであってもよく、また天然由来 のトリペプチドであってもよい。

 トリペプチドXaa Pro Proの有機化学的合成法 としては、固相法(Boc法、Fmoc法)や液相法とい った一般的な方法を用いることができ、例え ば、島津製作所製のペプチド合成装置(PSSM-8 )といったペプチド自動合成装置を用いて合 したものであってもよい。ペプチド合成の 応条件等については、当業者の技術常識に づき、選択する合成方法や所望のトリペプ ドXaa Pro Proに合せて、適切な反応条件等を 任意で設定することができる。
 あるいは、天然由来のものとしては、獣乳 ゼイン加水分解物又はその濃縮物に由来す ものであってもよく、タンパク質を含む食 原料を麹菌や乳酸菌といった菌類によって 酵させて得られる発酵物に由来するもので ってもよい。
 獣乳カゼイン加水分解物又はその濃縮物や 乳タンパク質を含む原料をラクトバチルス ヘルベティカス種に属する菌により発酵さ て得られる発酵物を用いる場合は、本発明 有効成分であるトリペプチドXaa Pro Pro以外 に遊離アミノ酸を含んでいても良く、更に、 前記ペプチド及び遊離アミノ酸の他に、例え ば市販の獣乳カゼイン、乳タンパク質に通常 含まれる、脂質、灰分、炭水化物、食物繊維 、水分等が含まれていても良く、また、必要 に応じてこれらのうちの適当な成分の一部若 しくは全部を除去しても良い。

 本発明の有効成分Xaa Pro Proは、Xaa Pro Pro 特にVal Pro Pro及びIle Pro Proが得られる酵素 群を用いて、獣乳カゼインを加水分解する方 法、獣乳カゼインを麹菌により発酵する方法 により得られる、獣乳カゼイン加水分解物又 はその濃縮物に由来するものであってもよい 。
 獣乳カゼインとしては、例えば、牛乳、馬 、山羊乳、羊乳等のカゼインが挙げられ、 に牛乳カゼインが好ましく使用できる。
 獣乳カゼインを加水分解又は発酵する際の ゼイン濃度は、特に限定されないが獣乳カ イン分解物を効率良く生産するために、1~19 重量%が好ましい。

 前記酵素群としては、例えば、Xaa Pro Pro X aa配列のカルボキシ末端のPro Xaa残基間が切 可能なペプチダーゼを含む酵素群(X)が好ま く挙げられる。
 酵素群(X)は、活性中心にセリンを持つ、セ ンタイプのプロティナーゼもしくは、活性 心に金属を持つ金属プロティナーゼを含む とが好ましい。金属プロティナーゼとして 、中性プロテアーゼI、中性プロテアーゼII びロイシンアミノペプチダーゼ等が挙げら 、これらの少なくとも1種を更に含むことが 、所望の加水分解物を効率良く、且つ短時間 で、更には1段階反応で得ることができる点 好ましい。また前記Pro Xaa配列が切断可能な ペプチダーゼとしては、等電点が酸性域を示 す酵素であることが好ましい。

 前記酵素群又は酵素群(X)としては、例えば アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)等 麹菌由来の酵素群が挙げられる。このよう 酵素群は、適当な培地で菌体を培養し、生 される酵素を水抽出した酵素群等が挙げら 、特に、アスペルギルス・オリゼ由来の酵 群のうちの等電点が酸性域を示す酵素群が ましく挙げられる。
 アスペルギルス・オリゼ由来の酵素群とし は、市販品を利用することができ、例えば スミチームFP、LP又はMP(以上、登録商標、新 日本化学(株)製)、ウマミザイム(登録商標、 野エンザイム(株)製)、Sternzyme B11024、PROHIDROX Y AMPL(以上、商品名、株式会社樋口商会製)、 オリエンターゼONS(登録商標、阪急バイオイ ダストリー(株)製)、デナチームAP(登録商標 ナガセ生化学社製)等が挙げられ、特に、ス チームFP(登録商標、新日本化学(株)製)の使 が好ましい。
 これら市販の酵素群を用いる場合には、通 、至適条件が設定されているが、前記カゼ ン加水分解物が得られるように条件、例え 、使用酵素量や反応時間等を、用いる酵素 に応じて適宜変更して行なうことができる

 前記獣乳カゼインを加水分解する際の酵素 の添加量は、例えば、獣乳カゼインを溶解 た水溶液に、酵素群/獣乳カゼインが重量比 で1/1000以上、好ましくは1/1000~1/10、特に好ま くは1/100~1/10、更に好ましくは1/40~1/10の割合 となるような量である。
 反応条件は、使用する酵素群に応じて目的 カゼイン加水分解物が得られるように適宜 択できるが、温度は、通常25~60℃、好まし は45~55℃であり、pHは、3~10、好ましくは5~9、 特に好ましくは5~8である。また、酵素反応時 間は、通常2~48時間、好ましくは7~15時間であ 。
 酵素反応の終了は、酵素を失活させること より行なうことができ、通常、60~110℃で酵 を失活させ、反応を停止させることができ 。
 酵素反応停止後、必要に応じて沈澱物を、 心分離除去や各種フィルター処理により除 することが好ましい。
 また、必要に応じて、得られる加水分解物 ら苦味や臭味を有するペプチドを除去する ともできる。このような苦味成分や臭味成 の除去は、活性炭又は疎水性樹脂等を用い 行なうことができる。例えば、得られた加 分解物中に、使用したカゼイン量に対して 性炭を1~20重量%添加し、1~10時間反応させる とにより実施できる。使用した活性炭の除 は、遠心分離や膜処理操作等の公知の方法 より行なうことができる。
 このようにして得られた獣乳カゼイン加水 解物又はその濃縮物を含む反応液は、その ま飲料等の液体製品に添加して機能性食品 利用することができる。また、獣乳カゼイ 加水分解物の汎用性を高めるために、前記 応液を濃縮後、乾燥し粉末の形態とするこ もできる。

 獣乳カゼイン加水分解物又はその濃縮物 含まれるXaa Pro Proの含有割合は、獣乳カゼ イン加水分解物又はその濃縮物中のペプチド 及び遊離アミノ酸の合計量に対して通常1重 %以上、好ましくは1~5重量%である。該含有割 合を1重量%以上とすることにより、より高い 用が期待される。また、獣乳カゼイン加水 解物又はその濃縮物中に含まれるIle Pro Pro 又はVal Pro Proの含有割合は、獣乳カゼイン 水分解物又はその濃縮物中のペプチド及び 離アミノ酸の合計量に対して、それぞれ単 で0.3重量%以上であっても、Ile Pro Pro及びVal  Pro Proの合計量が0.3重量%以上であっても、 い効果が期待される。更に、Ile Pro Pro及び Val Pro Proのそれぞれを0.3重量%以上含有する 合には、より高い効果が期待される。

 また、本発明の有効成分Xaa Pro Proは、乳タ ンパク質を含む原料をラクトバチルス・ヘル ベティカス種に属する菌により発酵させて得 られる発酵物に由来するものであってもよい 。
 ラクトバチルス・ヘルベティカス種に属す 菌は、ラクトバチルス・ヘルベティカス種 独で発酵に用いるのが好ましいが、本発明 所望の効果を損なわない範囲で他の乳酸菌 を含んでいても良い。
 ラクトバチルス・ヘルベティカス種に属す 菌としては、Ile Pro Pro及び/又はVal Pro Pro 高生産しうるプロティナーゼ生産菌が好ま い。例えば、Twiningらの方法(Twining, S. Anal. Biochem. )143 3410(1984))をもとにしたYamamotoらの 方法(Yamamoto, N.ら J.Biochem. )(1993) 114, 740)に じて測定したU/OD590の値が400以上を示す菌株 が好ましい。
 そのような好ましい菌株としては、例えば ラクトバチルス・ヘルベティカスCM4株(通商 産業省工業技術院生命工学工業技術研究所、 日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号、郵便番 号305(現、産業技術総合研究所特許生物寄託 ンター、日本国茨城県つくば市東1-1-1 つく センター中央第6、郵便番号305-8566)、受託番 号:FERM BP-6060,寄託日1997.8.15)(以下、CM4株と称 )が挙げられる。このCM4株は、特許手続上の 微生物寄託の国際的承認に関するブタペスト 条約の下に上記寄託番号で登録されており、 この株は既に特許されている。

 乳タンパク質を含む原料をラクトバチルス ヘルベティカス種に属する菌により発酵さ て得られる発酵物は、ラクトバチルス・ヘ ベティカス種に属する菌株を含む発酵乳ス ーターを乳タンパク質を含む原料に添加し 発酵温度等の発酵条件を適宜選択して発酵 せることにより得ることができる。
 また、このようにして得られた発酵物の濃 物等を凍結乾燥、噴霧乾燥等により粉末と て用いてもよい。

 ラクトバチルス・ヘルベティカス種に属す 菌は、あらかじめ前培養しておき充分に活 の高いスターターとして用いることが好ま い。初発菌数は、好ましくは10 5 ~10 9 個/ml程度である。
 乳タンパク質を含む原料をラクトバチルス ヘルベティカス種に属する菌により発酵さ て得られる発酵物は、例えば、特定保健用 品等の機能性食品に利用するに際して、風 を良好にし、嗜好性を良好とするために、 記ラクトバチルス・ヘルベティカス種に属 る菌株に酵母を併用して発酵させることも きる。酵母の菌種は特に限定されないが、 えば、サッカロマイセス・セレビシェ(Saccha romyces cerevisiae)等のサッカロマイセス属酵母 が好ましく挙げられる。酵母の含有割合は その目的に応じて適宜選択することができ 。

 乳タンパク質を含む原料としては、例えば 牛乳、馬乳、羊乳、山羊乳等の動物乳、及 豆乳等の植物乳、これらの加工乳である脱 乳、還元乳、粉乳、コンデンスミルクが挙 られ、牛乳、豆乳、これらの加工乳が好ま く、牛乳又はその加工乳が特に好ましい。
 乳の固形分濃度は特に限定されないが、例 ば、脱脂乳を用いる場合の無脂乳固形分濃 は、通常3~15重量%程度であり、生産性的に 6~15重量%が好ましい。
 前記発酵は、通常静置若しくは撹拌発酵に り、例えば、発酵温度25~45℃、好ましくは30 ~45℃、発酵時間3~72時間、好ましくは12~36時間 で、乳酸酸度が1.5%以上になった時点で発酵 停止する方法により行なうことができる。

 乳タンパク質を含む原料をラクトバチルス ヘルベティカス種に属する菌により発酵さ て得られる発酵物中に含まれるXaa Pro Pro、 好ましくはIle Pro Pro及び/又はVal Pro Proの含 有割合は、該発酵物の凍結乾燥物100g中に換 して10mg以上が好ましく、より好ましくは15mg 以上である。
 本発明の心臓壁肥厚抑制剤の投与量又は摂 量としては、1日あたり、ヒトの場合、有効 成分Xaa Pro Pro、好ましくはVal Pro Pro及び/又 はIle Pro Proを、通常10μg~10g、好ましくは1mg~5 g、さらに好ましくは3mg~1g程度含む用量であ 、1日に何回かに分けて投与又は摂取しても い。
 心臓壁肥厚抑制剤の投与又は摂取期間は、 与又は摂取するヒト又は動物の年齢やその トや動物の心不全の危険因子に対する環境 を考慮して種々調整することができ、例え 通常1日以上、好ましくは7日~365日間とする とが出来る。

 また本発明の心不全予防剤は、上述のよう トリペプチドを有効成分とする。
 本発明の心不全予防剤の投与量又は摂取量 しては、1日あたり、ヒトの場合、有効成分 Xaa Pro Pro、好ましくはVal Pro Pro及び/又はIle  Pro Proを、通常10μg~10g、好ましくは1mg~5g、 らに好ましくは3mg~1g程度含む用量であり、1 に何回かに分けて投与又は摂取しても良い
 心不全予防剤の投与又は摂取期間は、投与 は摂取するヒト又は動物の年齢やそのヒト 動物の心不全の危険因子に対する環境等を 慮して種々調整することができ、例えば、 常1日以上、好ましくは7日~365日間とするこ ができる。
 また本発明の心肥大予防剤は、上述のよう トリペプチドを有効成分とする。本発明の 肥大予防剤の投与量又は摂取量、および投 又は摂取の期間は本発明の心不全予防剤と 等である。
 本発明の心臓壁肥厚抑制剤、心肥大の予防 並びに心不全の予防剤の投与又は摂取の方 は、経口的であるのが好ましい。

 本発明の心臓壁肥厚抑制剤、心肥大の予防 並びに心不全の予防剤を医薬として用いる 合の形態は、経口投与用の製剤の形態とす ことができる。例えば、錠剤、丸剤、硬カ セル剤、軟カプセル剤、マイクロカプセル 散剤、顆粒剤、液剤等が挙げられる。
 医薬として製造する場合は、例えば、適宜 要に応じて、製薬的に許容される担体、ア ュバント、賦形剤、補形剤、防腐剤、安定 剤、結合剤、pH調節剤、緩衝剤、増粘剤、 ル化剤、保存剤、抗酸化剤等を用い、一般 認められた製剤投与に要求される単位用量 態で製造することができる。

 本発明の食品は、本発明の心臓壁肥厚抑制 を有効成分として含み、例えば、心臓壁肥 抑制作用、心肥大の予防および心不全の予 といった効能を有する特定保健用食品等の 能性食品とすることができる。
 このような効能を得るための摂取量は、食 、例えば機能性食品が、日常的、連続的又 断続的に長期間摂取することを鑑みると、 トの場合、1日あたり、有効成分Xaa Pro Pro 量として、あるいはVal Pro Pro及び/又はIle P ro Proの量として、通常10μg~10g、好ましくは1m g~5g、さらに好ましくは3mg~1g程度であり、1日 たりの摂取回数に応じて、食品、例えば機 性食品における1回あたりの摂取量を前記量 より更に低くすることも可能である。
 有効成分Xaa Pro Proを含む獣乳カゼイン加水 分解物又はその濃縮物をそのまま用いる際に は、ヒトの場合、1日あたり、該加水分解物 はその濃縮物を通常1mg~100g、特に100mg~10g程度 摂取するのが好ましい。
 有効成分Xaa Pro Proを含む発酵物の凍結乾燥 物をそのまま用いる際には、ヒトの場合、1 あたり、該発酵物の凍結乾燥物を乾燥量と て、通常1~100g、特に2~50g程度摂取するのが好 ましい。
 本発明の食品、例えば機能性食品の摂取期 は、特に限定されず、長期間摂取すること 好ましいが、上記効能を得るために、例え 、通常1日以上、好ましくは7日~365日間とす ことができる。

 本発明の食品、例えば機能性食品は、本発 の有効成分Xaa Pro Pro、好ましくはVal Pro Pr o及び/又はIle Pro Proを含む心臓壁肥厚抑制剤 を含み、例えば、上述のようにして得た獣乳 カゼイン加水分解物又はその濃縮物や乳タン パク質を含む原料の発酵物をそのまま、ある いは粉末状や顆粒状にして各種食品に添加す ることができる。また必要に応じて、ラクト バチルス・ヘルベティカス以外の乳酸菌の発 酵物や、食品に用いる他の成分、例えば、糖 類、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル 、フレーバー、例えば、各種炭水化物、脂質 、ビタミン類、ミネラル類、甘味料、香料、 色素、テクスチュア改善剤等又はこれらの混 合物等の添加物を添加し、栄養的バランスや 風味等を改善してもよい。
 本発明の食品、例えば機能性食品は、固形 、ゲル状物、液状物の何れの形態とするこ ができ、例えば、乳酸菌飲料等の発酵乳製 、各種加工飲食品、乾燥粉末、錠剤、カプ ル剤、顆粒剤等が挙げられ、更には各種飲 、ヨーグルト、流動食、ゼリー、キャンデ 、レトルト食品、錠菓、クッキー、カステ 、パン、ビスケット、チョコレート等とす ことができる。
 以下、実施例を用いて本発明をより詳細に 明するが、本発明の範囲は実施例に限られ い。

(実施例)
[ペプチド合成例]
 本発明の有効成分Ile Pro Pro及びVal Pro Pro 、以下に示す有機化学合成法(Fmoc法)により 成した。合成は島津製作所製のペプチド自 合成装置(PSSM-8型)を用いた固相法によって行 った。
 固相担体として2-クロロトリチル(2-Chlorotrity l)タイプのポリスチレン樹脂であって、アミ 基をフルオレニルメチルオキシカルボニル (以下Fmocと略す)で保護されたプロリンが結 した樹脂50mgを使用した(島津製作所社製 登 録商標SynProPep Resin)。前記アミノ酸配列に従 て、アミノ基がFmoc基で保護されたFmoc-Ile、F moc-Pro及びFmoc-Valを100μmolずつ、常法に従い、 プチド配列通り順次反応させてペプチド結 樹脂を得た。
 次にこのペプチド結合樹脂を1mlの反応液A(10 容量%酢酸、10容量%トリフルオロエタノール 80容量%ジクロロメタン)に懸濁し、室温で30~6 0分間反応させてペプチドを樹脂から切離し 後、反応液Aをガラスフィルターで濾過した 濾液の溶媒を減圧除去後、直ちに1mlの反応 B(82.5%容量トリフルオロ酢酸、3%容量エチル チルスルフィド、5%容量純水、5%容量チオア ニソール、2.5%容量エタンジチオール、2%容量 チオフェノール)を加え、室温で6時間反応さ て側鎖保護基を外した。これに無水エーテ 10mlを加えてペプチドを沈殿させ、3000回転 5分間遠心して分離した。その沈殿を無水エ テルにて数回洗浄した後、窒素ガスを吹き けて乾燥した。このようにして得られた未 製の合成ペプチド全量を、0.1N塩酸水溶液2ml に溶解した後に、C18の逆層カラムを用いたHPL Cで、以下の条件に従って精製した。

 ポンプ:形式L6200インテリジェントポンプ( 日立製作所)、検出機:形式L4000UV検出器(日立 作所)にて215nmの紫外部吸収を検出カラム:マ クロボンダスフェアー5μC18(ウォーターズ社 製)、溶出液:A液;0.1重量%TFA水溶液、B液;0.1重 %TFA入りアセトニトリル(B/A+B)×100(%):0→40%(60 )、流速:1ml/分。最大吸収を示した溶出画分 分取し、これを凍結乾燥することにより目 とする合成ペプチドIle Pro Pro及びVal Pro Pro をそれぞれ5.7mg、6.5mg得た。精製ペプチドを 自動タンパク質一次構造分析装置(形式PPSQ-10 、島津製作所製)により、ペプチドのN末端か 分析し、さらにアミノ酸分析装置(形式800シ リーズ、日本分光社製)にて分析した結果、 計通りであることが確認できた。

[獣乳カゼイン加水分解物の調製例]
 牛乳由来カゼイン(日本NZMP社製)1gを約80℃に 調整した蒸留水99gに加えて充分に撹拌した後 、1N水酸化ナトリウム(和光純薬社製)溶液を 加してpH7.0とし、また温度を20℃に調整して 質溶液を調製した。
 得られた基質溶液にアスペルギルス・オリ 由来であり、少なくとも金属プロテアーゼ セリンプロテアーゼ、中性プロテアーゼI、 中性プロテアーゼII及びロイシンアミノペプ ダーゼを含む市販の酵素(登録商標「スミチ ームFP」、新日本化学工業社製)を、酵素/カ インの重量比が1/25となるように添加して、5 0℃で14時間反応させた。続いて、110℃で10分 のオートクレーブを行い、酵素を失活させ カゼイン酵素分解物溶液を得た。次に、得 れた酵素分解物溶液をスプレードライヤー より乾燥し、粉末を調製した。
 得られた粉末中の含有成分の分析を行なっ 。タンパク質はケルダール法で測定し、ア ノ酸はアミノ酸分析装置にて測定した。ま 、該タンパク質量からアミノ酸を引いた量 ペプチド量とした。更に、脂質は酸分解法 、灰分は直接灰化法で、水分は常圧加熱乾 法でそれぞれ測定した。尚、100%から各成分 を引いた残りを炭水化物量とした。その結果 、アミノ酸は35.8重量%、ペプチドは45.7重量% 水分は6.6重量%、脂質は0.2重量%、灰分は4.1重 量%及び炭水化物は7.6重量%であった。

 <ペプチド構成アミノ酸の測定>
 上記で調製した粉末を適量の蒸留水に溶解 、自動ペプチド分析機(商品名PPSQ-10(株)島津 製作所製)を用いて解析し、粉末中においてN 端側から順に如何なるアミノ酸が位置する を調べた。尚、自動ペプチド分析機は遊離 ミノ酸を検出しない。
 また、5残基目のアミノ酸の合計は120pmol、6 基目のアミノ酸の合計は100pmolであった。こ れらの結果より、前記粉末中に含まれるペプ チドのほとんどがジペプチド及びトリペプチ ドであることが判った。また、2残基目のア ノ酸がProであるペプチドの割合が49.5%と顕著 に上昇していた。更に3残基目のアミノ酸がPr oであるペプチドの割合も29.8%と多かった。
 従って、前記粉末には、Xaa Pro Proが多く含 まれており、これらペプチドは生体内プロテ アーゼによる酵素分解作用に対する抵抗性が 高いペプチドであると推定できる。

 <酵素分解物中に含まれるペプチドの測定 >
 上記酵素分解物の粉末について、各種の化 合成標準ペプチドを用いて、常法に従い、 粉末に含まれる表1に示すトリペプチド量を 求めた。結果を表1に示す。

 [表1]

 また、前記粉末を蒸留水で希釈溶解した 液中のペプチド及び遊離アミノ酸量が8.15mg/ mlであり、ペプチド量が4.57mg/mlであり、該ペ チド中のXaa Pro量が514.5μgであったので、粉 末中のペプチド及び遊離アミノ酸の合計量に 対するXaa Proの割合は6.3重量%であり、更に、 該ペプチド中のXaa Pro Pro量が116.5μgであった ので、粉末中のペプチド及び遊離アミノ酸の 合計量に対するXaa Pro Proの割合は1.4重量%で ることを確認した。

[CM4発酵乳飼料の調製例]
 乳タンパク質を含む原料をCM4株により発酵 せて得られる発酵乳を用い、本発明の有効 分Xaa Pro Proを含む動物飼料を調製した。
 市販の脱脂粉乳を固形率9%(w/w)となるように 蒸留水で溶解し、オートクレーブで105℃、10 間、高温加熱殺菌した後、室温まで冷却し CM4株スターター発酵液(菌数5×10 8 個/ml)を3%(v/w)接種して、37℃で24時間、静置状 態で発酵させCM4発酵乳を得た。
 得られたCM4発酵乳を80℃達温殺菌後、凍結 燥により粉末を得た。得られた凍結乾燥粉 と市販の粉末飼料(商品名「CE-2」、日本クレ ア株式会社製)を、質量比10:90で混合し、固型 飼料を作成し、CM4発酵乳飼料とした。この飼 料には、CM4発酵乳由来のVal Pro Proが34.1mg/kg びIle Pro Proが17.1mg/kg含まれていた。

[試験1:Val Pro Pro(VPP)の左心室壁の肥厚抑制効 果]
 トリペプチドVal Pro Pro(VPP)の左心室壁の肥 抑制効果について、試験を行った。
 7週齢、雄のWistar系ラット(日本エスエルシ 株式会社)を一群9~12匹として計3群で試験を った。一週間馴化飼育した後、一酸化窒素 成阻害剤であるNG-ニトロ-L-アルギニンメチ エステル塩酸塩(L-NAME、Sigma社製)を1g/Lの濃度 で溶解した飲水、L-NAMEとVPPをそれぞれ1g/Lと0. 3g/Lの濃度で溶解した飲水、L-NAMEとアンギオ ンシン変換酵素(ACE)阻害剤であるエナラプリ ルをそれぞれ1g/Lと0.5mg/Lの濃度で溶解した飲 を8週間自由摂取させた。ここでエナラプリ ルの投与量はVPPとACE阻害活性が同等になるよ うに設定した。
 ラットはジエチルエーテル麻酔下で放血致 させ、心臓を摘出後、10%中性緩衝ホルマリ 液にて固定した。固定した心臓から右心室 中隔、左心室および冠動脈を含むように心 の下部を水平に切断し、輪状の組織片を作 した。組織片をパラフィン包埋した後3.0~3.5 μmの厚さでミクロトームにより薄切を行った 。各ラットについて、2~5の切片を作製した。 薄切した切片をヘマトキシリン・エオジン染 色し、左心室壁の厚さを測定した。心室壁の 厚さの測定は、1の切片について顕微鏡下で 均的な厚さがあると思われる複数点の厚さ 接眼マイクロメーターにより実測し、その 均の厚さをその切片の測定値として、統計 理を行った。厚さの測定および評価は、各 ンプル名を知らされない病理学者が行った
 得られた結果を図1に示す。L-NAMEのみを与え た群に比べ、L-NAME及びVPPを与えた群では左心 室壁の厚さが減少しており、VPPにより左心室 壁の肥厚が抑えられ、心不全の予防に有効で あることが示された。また、同等のACE阻害活 性となるように投与量を設定したエナラプリ ルでは効果が認められなかったことから、本 効果がACE阻害によらないものであることが確 認された。

[試験2:Val Pro Pro(VPP)の右心室壁の肥厚抑制効 果]
 トリペプチドVal Pro Pro(VPP)の右心室壁の肥 抑制効果についても確認するため、試験1と 同様に試験し、測定および評価した。
 得られた結果を図2に示す。L-NAMEのみを与え た群に比べ、L-NAME及びVPPを与えた群では右心 室壁の厚さが減少していた。したがって、VPP により右心室壁の肥厚も抑えられ、心不全の 予防に有効であることが示された。試験1と 様、エナラプリルでは効果が認められなか たので、本効果がACE阻害によらないもので ることが確認された。

[試験3:Ile Pro Pro(IPP)の左心室壁の肥厚抑制効 果]
 トリペプチドIle Pro Pro(IPP)についても心室 の肥厚抑制効果を試験した。
 7週齢、雄のWistar系ラット(日本エスエルシ 株式会社)を一群9~11匹として計3群で試験を った。一週間馴化飼育した後、L-NAME(Sigma社 )を1g/Lの濃度で溶解した飲水、L-NAMEとIPPをそ れぞれ1g/Lと0.3g/Lの濃度で溶解した飲水、L-NAM Eとアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤であ るエナラプリルをそれぞれ1g/Lと0.5mg/Lの濃度 溶解した飲水を8週間自由摂取させた。ここ でエナラプリルの投与量はIPPとACE阻害活性が 同等になるように設定した。
 ラットはジエチルエーテル麻酔下で放血致 させ、心臓を摘出後、10%中性緩衝ホルマリ 液にて固定した。固定した心臓から右心室 中隔、左心室および冠動脈を含むように心 の下部を水平に切断し、輪状の組織片を作 した。組織片をパラフィン包埋した後3.0~3.5 μmの厚さでミクロトームにより薄切を行った 。各ラットについて、2~5の切片を作製した。 薄切した切片をヘマトキシリン・エオジン染 色し、左心室壁の厚さを測定した。心室壁の 厚さの測定は、1の切片について顕微鏡下で 均的な厚さがあると思われる複数点の厚さ 接眼マイクロメーターにより実測し、その 均の厚さをその切片の測定値として、統計 理を行った。厚さの測定および評価は、各 ンプル名を知らされない病理学者が行った
 得られた結果を図3に示す。L-NAMEのみを与え た群に比べ、L-NAME及びIPPを与えた群では左心 室壁の厚さが減少しており、IPPによっても左 心室壁の肥厚が抑えられ、心不全の予防に有 効であることが示された。また、同等のACE阻 害活性となるように投与量を設定したエナラ プリルでは効果が認められなかったことから 、本効果がACE阻害によらないものであること が確認された。

[試験4:Ile Pro Pro(IPP)の右心室壁の肥厚抑制効 果]
 トリペプチドIle Pro Pro(IPP)の右心室壁の肥 抑制効果についても確認するため、試験3と 同様に試験し、測定および評価した。
 7週齢、雄のWistar系ラット(日本エスエルシ 株式会社)を一群9~12匹として計3群で試験を った。一週間馴化飼育した後、L-NAME(Sigma社 )を1g/Lの濃度で溶解した飲水、L-NAMEとIPPをそ れぞれ1g/Lと0.3g/Lの濃度で溶解した飲水、L-NAM Eとアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤であ るエナラプリルをそれぞれ1g/Lと0.5mg/Lの濃度 溶解した飲水を8週間自由摂取させた。ここ でエナラプリルの投与量はIPPとACE阻害活性が 同等になるように設定した。
 ラットはジエチルエーテル麻酔下で放血致 させ、心臓を摘出後、10%中性緩衝ホルマリ 液にて固定した。固定した心臓から右心室 中隔、左心室および冠動脈を含むように心 の下部を水平に切断し、輪状の組織片を作 した。組織片をパラフィン包埋した後3.0~3.5 μmの厚さでミクロトームにより薄切を行った 。各ラットについて、2~5の切片を作製した。 薄切した切片をヘマトキシリン・エオジン染 色し、右心室壁の厚さを測定した。心室壁の 厚さの測定は、1の切片について顕微鏡下で 均的な厚さがあると思われる複数点の厚さ 接眼マイクロメーターにより実測し、その 均の厚さをその切片の測定値として、各個 の心室壁の厚さを決定した。厚さの測定お び評価は、各サンプル名を知らされない病 学者が行った。
 心室壁の肥厚の判定は、L-NAMEを加えずに、 常の水道水で飼育した同じ週齢のラット6匹 の心室壁の厚さを測定して、その平均を基準 値とした。基準値より心室壁の厚さが大きい ものを肥厚あり、同じもしくはそれ未満の厚 さのものを正常として、肥厚ありと正常のラ ットの数から尤度比検定による比較を行った 。その結果を以下の表2に示す。

 [表2]ラット右心室壁の肥厚の判定結果
**:p<0.01

 得られた結果により、IPPによっても右心 壁の肥厚が抑えられることが明らかになり IPPも心不全の予防に有効であることが明ら となった。また、同等のACE阻害活性となる うに投与量を設定したエナラプリルでは効 が認められなかったことから、本効果がACE 害によらないものであることが確認された

[試験5:Ile Pro Pro(IPP)の心臓中隔壁の肥厚抑制 効果]
 トリペプチドIle Pro Pro(IPP)の心臓中隔壁の 厚抑制効果についても確認するため、試験3 と同様に試験し測定および評価した。
 得られた結果を図4に示す。L-NAMEのみを与え た群に比べ、L-NAME及びIPPを与えた群では心臓 中隔壁の厚さが減少しており、IPPにより心臓 中隔壁の肥厚が抑えられ、心不全の予防に有 効であることが示された。また、同等のACE阻 害活性となるように投与量を設定したエナラ プリルでは効果が認められなかったことから 、本効果がACE阻害によらないものであること が確認された。

 本発明の心臓壁肥厚抑制剤は、アンジオテ シン変換酵素(ACE)阻害剤に抑制作用が認め れない場合においても、有効性を示すこと ら、ACE阻害活性に因らない心肥大や心不全 予防用及び/又は治療用の医薬、特に予防剤 して非常に有用である。また、有効成分が 品等に由来する天然に存在するトリペプチ であるため、副作用の心配が少なく、且つ い効力を有する医薬の提供が期待される。
 また本発明の心臓壁肥厚抑制剤を飲料や食 に用いるか又は添加することにより、安全 つ日常的に摂取しつつ、心肥大および心不 を予防する効果が期待できる機能性食品が 供される。

参考文献
1.特許第2782142号公報
2.Am J Hypertens.1997 Aug;10(8):913~20
3.J. Clin. Invest. 77, 1993-2000, 1986
4.最新医学、48:1404 ~1409, 1993
5.J. Dairy Sci. 1995, 78:777-783
6.J.Dairy Sci. 1995, 78:1253-1257
7.Am. J. Clin. Nutr. 1996, 64:767-771

試験1のVal Pro Pro(VPP)のラット左心室壁 の肥厚抑制効果について試験した結果を示す 。L-NAME投与群は一群11匹、L-NAME及びエナラプ ル投与群は一群9匹、L-NAME及びVPP投与群は一 群12匹で試験を行い、グラフは平均値±標準 差で表した。片側t-検定により比較を行った 。図中の記号(*)は、有意差(p<0.05)を示す。 試験2のVal Pro Pro(VPP)のラット右心室壁 の肥厚抑制効果について試験した結果を示す 。L-NAME投与群は一群11匹、L-NAME及びエナラプ ル投与群は一群9匹、L-NAME及びVPP投与群は一 群12匹で試験を行い、グラフは平均値±標準 差で表した。片側t-検定により比較を行った 。図中の記号(*)は、有意差(p<0.05)を示す。 試験3のIle Pro Pro(IPP)のラット左心室壁 の肥厚抑制効果について試験した結果を示す 。L-NAME投与群は一群9匹、L-NAME及びエナラプ ル投与群は一群9匹、L-NAME及びIPP投与群は一 11匹で試験を行い、グラフは平均値±標準誤 差で表した。片側t-検定により比較を行った 図中の記号(#)は、有意差(p<0.1)を示す。 試験5のIle Pro Pro(IPP)のラット心臓中隔 壁の肥厚抑制効果について試験した結果を示 す。L-NAME投与群は一群9匹、L-NAME及びエナラ リル投与群は一群9匹、L-NAME及びIPP投与群は 群11匹で試験を行い、グラフは平均値±標準 誤差で表した。片側t-検定により比較を行っ 。図中の記号(*)は、有意差(p<0.05)を示す