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Title:
SHAPE MEMORY RESIN, SHAPED ARTICLE USING THE SAME AND METHOD OF USING THE SHAPED ARTICLE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/063943
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided is a shape memory resin which is formed from a polylactic acid derivative thereby enabling reduction of an environmental load, has an excellent shape memory property, a high mechanical strength and high toughness, and with which a shaped article with high durability, for example, an electronic part, particularly a wearable appliance capable of freely changing the shape thereof or the like can be shaped; and a shaped article thereof. The shape memory resin of the invention has a three-dimensional structure in which a polylactic acid derivative having two or more functional groups capable of forming a cross-linking site is cross-linked using a flexible polymer having two or more functional groups capable of forming a cross-linking site and having a glass transition temperature (Tg) lower than 30˚C and a linker.

Inventors:
SHIMURA MIDORI (JP)
INOUE KAZUHIKO (JP)
IJI MASATOSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/070686
Publication Date:
May 22, 2009
Filing Date:
November 13, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NEC CORP (JP)
SHIMURA MIDORI (JP)
INOUE KAZUHIKO (JP)
IJI MASATOSHI (JP)
International Classes:
C08G18/42; C08G81/00; C08J5/00; C08L101/16
Domestic Patent References:
WO2005056642A12005-06-23
Foreign References:
JP2007191557A2007-08-02
JP2007063360A2007-03-15
JP2006077126A2006-03-23
JPH1036477A1998-02-10
JP2008222883A2008-09-25
JP2006342298A2006-12-21
JP2007186684A2007-07-26
JP2007284643A2007-11-01
JP2007504330A2007-03-01
Attorney, Agent or Firm:
MIYAZAKI, Teruo et al. (16th Kowa Bldg. 9-20, Akasaka 1-chome, Minato-k, Tokyo 52, JP)
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Claims:
 架橋部位を形成する官能基を2つ以上有するポリ乳酸誘導体を、30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有し架橋部位を形成する官能基を2つ以上有する軟質ポリマー及びリンカーを用いて架橋した三次元構造を有することを特徴とする形状記憶樹脂。
 ポリ乳酸誘導体及び軟質ポリマーの架橋部位を形成する官能基が活性水素を2以上有し、リンカーがポリイソシアネートであることを特徴とする請求項1記載の形状記憶樹脂。
 架橋部位がディールス-アルダー反応により形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の形状記憶樹脂。
 ポリ乳酸誘導体と軟質ポリマーとを質量比95:5~50:50で含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の形状記憶樹脂。
 軟質ポリマーが生分解性であることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の形状記憶樹脂。
 軟質ポリマーがポリブチレンサクシネートを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の形状記憶樹脂。
 請求項1から6のいずれか記載の形状記憶樹脂を用いて、該形状記憶樹脂の分解温度未満で初期形状に成形され、該初期形状が記憶されることを特徴とする成形体。
 形状記憶樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度で初期形状に変形が与えられ、該ガラス転移温度未満の温度に冷却され変形形状が固定されたことを特徴とする請求項7記載の成形体。
 請求項8記載の成形体を、形状記憶樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度に加熱して、初期形状を回復させることを特徴とする成形体の使用方法。
Description:
形状記憶樹脂及びこれを用いた 形体及び成形体の使用方法

 本発明は、環境への負担が少なく、形状 憶性を有し、優れた曲げ強度、破断のびが い成形体を与える形状記憶性樹脂やこれを いた成形体やその使用方法に関する。

 近年、環境問題への関心が高まっている とから、地球温暖化の原因となる二酸化炭 の削減効果や、枯渇資源である石油の代替 料として有効なバイオプラスチック、特に リ乳酸が注目されている。ポリ乳酸は融点 150~180℃と比較的高く、スチレン樹脂同等の 強度を有するため、その普及が大いに期待さ れている。しかし一方で、石油由来樹脂に比 べて価格が高く、環境適合性以外に石油由来 材料を上回る物性を持っていないため、未だ 普及には及んでいない。ポリ乳酸の普及拡大 には、新機能を付与してポリ乳酸の付加価値 を高めることが重要である。

 新機能の一つとして、インテリジェント 能である形状記憶性が挙げられる。形状記 性とは、材料に所定の温度をかけて変形し 後、室温まで冷却することで所望の形に固 することができ、さらに再度加熱すること 、本来の形状に復元する性質をいう。形状 憶性を示す材料として従来から合金材料と 脂材料が知られている。形状記憶性合金は イプ継手や歯列矯正等、形状記憶性樹脂は 収縮チューブ、ラミネート材、締め付けピ 、ギブス等の医療用器具材等に利用されて る。形状記憶性樹脂は形状記憶合金と比べ 、複雑な形状に加工できる、形状回復率が きい、軽量である、自由に着色できる、低 ストである等のメリットが挙げられ、一層 用途拡大が期待されている。

 形状記憶樹脂は、ある温度(ガラス転移温 度(Tg)又は融点(Tm))以上で流動性を帯びる非架 橋部分からなる可逆相と、可逆相が変形する 温度では変形を生じない物理的あるいは化学 的結合部位(架橋点)からなる固定相から構成 れている。

 形状記憶性樹脂の成形体における形状記 のメカニズムは、図1に示すように、以下の 形状記憶の付与、成形体の変形、記憶形状の 回復の3段階による。

 1.成形加工
 形状記憶性樹脂を加熱、溶融、固化して成 加工すると、固定相と可逆相(硬)からなる 期形状(原形)(同図(a)及び部分拡大図(b))に形 され、この初期形状が記憶される。

 2.成形体の変形
 成形体を任意の形状に変形させるには、固 相は溶融させずに可逆相のみを溶融させる 度、つまり可逆相のTgやTm以上に加熱し硬化 状態の可逆相(可逆相(硬))を軟化させ(可逆相( 軟)(同図(c))、この状態で外力を加え任意形状 に変形させる(同図(d))。変形された任意形状 成形体をTgやTm以下に冷却すると、可逆相が 完全に固化して変形が固定化された成形体が 得られる(同図(e))。

 3.記憶形状の回復
 変形した形状が固定された成形体において 、一時的に強制固定されている可逆相によ その変形形状が保たれている。従って加熱 より可逆相が軟化する温度に達すると、可 相はゴム状特性を示して安定状態となり、 の形状を回復する(同図(c))。さらにTgやTm(又 は結晶化温度(Tc))以下に冷却することにより 同図(b)の初期形状の成形体に戻る。

 このような成形体を与える形状記憶樹脂 、固定相の形態の相違によって熱硬化型と 可塑型に分類することができる。形状記憶 能は熱可塑型よりも熱硬化型の方が優れて る(非特許文献1)。なぜなら、熱硬化型は共 結合等の安定な化学的結合により3次元構造 を固定しているため、樹脂の流動を防ぐ効果 が高く、優れた形状回復力や寸法安定性を有 し、回復速度が速い。一方、熱可塑型形状記 憶性樹脂は、結晶部、ポリマーのガラス状領 域、ポリマー同士の絡まり合い、金属架橋等 、主として物理的な結合であり、化学的結合 による熱硬化型に比べて、一般的に結合力が 弱く、形状記憶、形状回復に劣る傾向を有す る。

 ところで、ポリ乳酸を化学的結合で3次元 架橋することで、形状記憶性を付与した例が いくつか報告されている。例えば、活性エネ ルギー線照射によりポリ乳酸を架橋させた形 状記憶樹脂が報告されている(特許文献1)。し かしながら、活性エネルギー線照射での架橋 は完全な3次元構造を取らないため、熱硬化 に比べて形状記憶性能が低い。さらに設備 ストが高く成形に制限がかかるため、大型 形体等の製品化が困難である。

 本発明者らは、既に、熱硬化型と熱可塑 の長所を併せ持つ新材料として、架橋部位 共有結合性の熱可逆性反応を導入した、熱 逆型の形状記憶性樹脂を開発している(特許 文献2)。熱可逆性反応とは、結合が所定の温 で開裂し、冷却時に再結合する反応であり 特許文献2に紹介されている。架橋を熱可逆 性反応により形成した形状記憶樹脂は、熱可 逆性架橋部位の固定相と、樹脂の可逆相によ り、形状記憶性を有する。具体的には、実用 温度域では共有結合で3次元架橋し熱硬化型 して機能するため、優れた形状回復力や寸 安定性を有し、繰返し変形による形状回復 の低下も抑制される。そして、熱可逆性架 部位の結合が開裂する温度に加熱されると 可塑型として機能するため、樹脂が溶融し の型に再成形即ちリサイクルできる。更に リサイクルした樹脂は冷却により架橋部位 再結合し熱硬化型に戻るため、優れた形状 憶能を再現できる。つまり、優れた形状記 性能とリサイクル性という長所を持ち合わ た形状記憶樹脂となる。本発明者らは、こ ような熱可逆反応による架橋部位に、架橋 造の歪みを緩和可能な鎖状構造を導入する とで、更に、強度を向上させた形状記憶性 脂を開発している(特許文献3)。

 しかしながら、このような熱可逆反応の 橋部位を有するポリ乳酸は、機械的強度は られるが充分な靭性が得られない。靭性を 上することができれば、高強度を有し耐久 が要求される製品等にも適用できる。

 高靭性の形状記憶性ポリ乳酸として、例え 、架橋に軟質セグメントを導入したものが られている(特許文献4)が、その強度は耐久 製品に適用できる範囲ではなく、高い耐久 を有する高強度の製品の成形に好適な樹脂 要請されている。

特開平10-147720

WO2005/056642

特願2006-331921

特表2002-504585 唐牛正夫、「形状記憶ポリマーの材料開 発」シーエムシー、第30~43頁、1989年刊 Engleら、J.Macromol.Sci.Re.Macromol.Chem.Phys.、第 C33巻、第3号、第239~257頁、1993年刊

 本発明の課題は、ポリ乳酸誘導体から得 れ、優れた形状記憶性を有し、高強度、高 性を有し、高い耐久性を有する成形体、例 ば電子機器部材、特に、自由に形状を変え れるウエアラブル機器等を成形可能な形状 憶樹脂やその成形体を提供することにある また、生分解性樹脂を用いることにより、 棄処理をする場合においても環境負荷を低 することができる形状記憶樹脂やその成形 を提供することにある。

 本発明者らは、鋭意研究の結果、架橋部 となる官能基を2以上有し、Tgが30℃未満の 質ポリマー及びリンカーを用いて、官能基 2以上有するポリ乳酸誘導体を架橋した三次 構造を有する樹脂は、優れた変形固定能、 状復元能を有し、強度に優れることの知見 得て、かかる知見に基づき本発明を完成す に至った。

 すなわち、本発明は、架橋部位を形成す 官能基を2つ以上有するポリ乳酸誘導体を、 30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有し架橋部位 を形成する官能基を2つ以上有する軟質ポリ ー及びリンカーを用いて架橋した三次元構 を有することを特徴とする形状記憶樹脂に する。

 また、本発明は、上記形状記憶樹脂を用 て、該形状記憶樹脂の分解温度未満で初期 状に成形され、該初期形状が記憶されるこ を特徴とする成形体や、この初期形状に成 された成形体に、形状記憶樹脂のガラス転 温度(Tg)以上の温度で変形が与えられ、該ガ ラス転移温度未満の温度に冷却され変形形状 が固定されたことを特徴とする成形体に関す る。

 本発明の形状記憶性樹脂は、ポリ乳酸誘 体、Tgが30℃未満の軟質ポリマー及びリンカ ーから得られ、優れた形状記憶性を有し、高 強度、高靭性を有し、高い耐久性を有する成 形体、例えば電子機器部材、特に、自由に形 状を変えられるウエアラブル機器等を成形可 能な形状記憶樹脂やその成形体を提供するこ とにある。また、生分解性樹脂を用いること により、廃棄処理をする場合においても環境 負荷を低減することができる。

形状記憶樹脂成形体の形状記憶のメカ ズムを示す図である。

 本発明の形状記憶樹脂は、架橋部位を形 する官能基を2つ以上有するポリ乳酸誘導体 を、30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有し架橋 部位を形成する官能基を2つ以上有する軟質 リマー及びリンカーを用いて架橋した三次 構造を有することを特徴とする。

 [ポリ乳酸誘導体]
 本発明の形状記憶樹脂に用いるポリ乳酸誘 体は、架橋部位を形成する官能基を2つ以上 有し、この官能基を起点として三次元構造を 形成する。ポリマー鎖が形状記憶樹脂におけ る可逆相、架橋部位が固定相を構成する。官 能基が分岐構造を形成可能なものであれば、 ポリ乳酸誘導体は官能基を少なくとも2つ有 ることが必要であり、官能基が分岐構造を 成しないものであれば、ポリ乳酸誘導体は 能基を少なくとも3つ有するか、3官能以上の リンカーを用いることが必要である。これら の架橋部位を形成する官能基はポリ乳酸誘導 体の末端に位置することが、可逆相の形成の 制御が容易なため、好ましい。

 ポリ乳酸誘導体の主成分であるポリ乳酸 、乳酸を重合したものをいい、L-乳酸、D-乳 酸の他に、エステル形成能を有するその他の モノマーを共重合した共重合体であってもい い。かかる共重合体を構成するモノマーとし ては、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪 酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン 酸、ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカ ルボン酸等を挙げることができる。ポリ乳酸 又は共重合体は、乳酸又は乳酸と上記ヒドロ キシカルボン酸の脱水重縮合から製造するこ とができる。また、乳酸の環状2量体である クチド又はラクチドと上記ヒドロキシカル ン酸の環状物を、開環共重合しても製造で る。これらのポリ乳酸及び共重合体は、バ オマス原料から得られるモノマー、オリゴ ー、ポリマー、又はこれらの誘導体若しく 変性体を用いて合成される縮重合物、又は 然物抽出物、若しくはこれらの誘導体や変 体の他、バイオマス原料以外を原料とする 成物であってもよい。廃棄処理する際に環 負荷の低減を図るため、特に、生分解性に れたものが好ましい。

 架橋部位を形成する官能基としては、化 的結合により架橋を形成するものが、形状 憶性の点から好ましく、付加反応、縮合反 、共重合反応等の共有結合を利用するもの 好ましい。かかる官能基としては、具体的 は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、イソ アネート基、アミノ基、エポキシ基等を挙 ることができるが、エステル結合やウレタ 結合を形成するものが好ましい。これらの ち活性水素を有するヒドロキシ基は、リン ーとしてポリカルボン酸、ポリイソシアネ ト等を用いる場合は、特に、好ましい。こ ような官能基は1つの官能基に活性水素基を 有する、例えば、ヒドロキシ基を2以上有す もの等が特に好ましい。

 また、ポリ乳酸の官能基として熱可逆反 性を有するものを好ましいものとして挙げ ことができる。熱可逆反応性を有する官能 により形成される架橋部位が、熱可逆性を し、実用温度において架橋を形成すること より、熱硬化型と熱可塑型の長所を併せ持 、つまり、優れた形状記憶能とリサイクル という長所を持ち合わせた形状記憶樹脂と る。熱可逆反応性官能基としては特に限定 ないが、ディールス-アルダー反応により得 られるディールス-アルダー型結合を形成す ものが好ましい。ディールス-アルダー型結 は疎水性であり、水分等による反応基の失 も起こらないため、エステル結合を多く有 るポリ乳酸等のバイオプラスチックに好適 用いることができる。

 上記ディールス-アルダー型結合を形成す る官能基としては、特に、ディールス-アル ー型結合を形成するフラン基又は、マレイ ド基が好ましい。フランとマレイミドによ 形成されるディール-スアルダー型結合は、 裂温度又は結合温度が150℃付近にあり、こ 温度はポリ乳酸誘導体の軟化温度以上分解 度以下であるため、これらのポリ乳酸誘導 における架橋を熱可逆的に形成し、形状記 樹脂として好適に使用できる。フランとマ イミドにより形成されるディール-スアルダ ー型結合は、以下の式(I)で示される。

 ポリ乳酸誘導体に2以上の官能基を導入する 方法としては、付加反応、縮合反応、共重合 反応等一般的な化学反応を用いることができ る。ポリ乳酸は鎖中にエステル構造を有し、 末端にヒドロキシ基又はカルボン酸基を持つ ことから、特に、エステル交換反応及びエス テル化反応による官能基の導入が有効である 。

 例えば、官能基として末端にヒドロキシ を有するポリ乳酸誘導体を得るには、2つ以 上のヒドロキシ基を有する化合物とポリ乳酸 誘導体とのエステル交換を使用することがで きる。

 かかる2つ以上のヒドロキシ基を有する化 合物として、例えば、エチレングリコール、 プロピレングリコール、ジプロピレングリコ ール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオー 、1,6-ヘキサンジオール等の2価アルコール グリセリン、トリメチロールプロパン、ト メチロールエタン、ヘキサントリオール等 3価アルコール、ペンタエリスリトール、メ ルグリコシド、ジグリセリン等の4価アルコ ール、トリグリセリン、テトラグリセリン等 のポリグリセリン、ジペンタエリスリトール 、トリペンタエリスリトール等のポリペンタ エリスリトール、テトラキス(ヒドロキシメ ル)シクロヘキサノール等のシクロアルカン リオール、ポリビニルアルコールを挙げる とができる。また、アドニトール、アラビ ール、キシリトール、ソルビトール、マン トール、イジトール、タリトール、ズルシ ール等の糖アルコール、グルコース、マン ースグルコース、マンノース、フラクトー 、ソルボース、スクロース、ラクトース、 フィノース、セルロース等の糖類が挙げら る。多価フェノールとしてはピロガロール ハイドロキノン、フロログルシン等の単環 価フェノール、ビスフェノールA、ビスフェ ノールスルフォン等のビスフェノール類、フ ェノールとホルムアルデヒドの縮合物(ノボ ック)等が挙げられる。これらは1種又は2種 上を組み合わせて用いることができる。

 これらのうちヒドロキシ基を有する化合 として、3つ以上ヒドロキシ基を有する化合 物を用いると、3次元架橋構造を形成する架 点を有するポリ乳酸誘導体を形成すること できるので特に好ましい。例えば、ペンタ リスリトールとポリ乳酸誘導体とのエステ 交換により、分子鎖の末端にヒドロキシ基 4つ有するポリ乳酸誘導体を得ることができ 。

 また、2つ以上のヒドロキシ基を持つ化合 物を開始剤としたラクチドの開環重合によっ ても、複数のヒドロキシ基を持つポリ乳酸誘 導体を得ることができる。

 また、官能基として末端にカルボキシル を有するポリ乳酸誘導体とするためには、2 つ以上のカルボキシル基を有する化合物とポ リ乳酸誘導体とのエステル化反応によること ができる。特に酸無水物を用いることにより 、末端にカルボキシル基を有するポリ乳酸誘 導体を容易に調製することができる。かかる 酸無水物としては、無水ピロメリット酸、無 水トリメリット酸、無水フタル酸、ヘキサヒ ドロ無水フタル酸、無水マレイン酸やこれら の誘導体を利用することができる。

 更に、他の官能基をポリ乳酸誘導体に導 するには、目的とする官能基を有する化合 によりポリ乳酸誘導体の上記ヒドロキシ基 カルボキシル基を酸、アルカリ、カルボジ ミド類等の触媒を用いてエステル化する方 によることができる。例えば、架橋部位を ィールス-アルダー型結合により形成する場 合、ジエン基、又はジエノフィル基等の官能 基を有するポリ乳酸誘導体が必要であり、ポ リ乳酸誘導体にジエン基、又はジエノフィル 基を導入する方法としては、目的とするフラ ン基やマレイミド基を有するカルボン酸を、 塩化チオニルやオキサリルクロライド等の酸 塩化物とし、これを用いてポリ乳酸誘導体の ヒドロキシ基をエステル化する方法を挙げる ことができる。

 ポリ乳酸誘導体の数平均分子量としては 100~1,000,000の範囲を挙げることができ、1,000~ 100,000であることが好ましく、より好ましく 2,000~50,000である。ポリ乳酸誘導体の数平均 子量が100以上でれば、形状記憶樹脂におい 機械的特性や加工性に優れ、1,000,000以下で れば、形状記憶性に優れる架橋密度とする とができる。

 [軟質ポリマー]
 本発明の形状記憶樹脂に用いる軟質ポリマ は、30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有し架 部位を形成する官能基を2つ以上有する。軟 質ポリマーは後述するリンカーと共にポリ乳 酸誘導体を架橋させ三次元構造を形成し、形 状記憶樹脂の靭性を向上させる作用を有する 。

 上記軟質ポリマーは、バイオマス原料か 得られるモノマー、オリゴマー、ポリマー 又はこれらの誘導体若しくは変性体を用い 合成される縮重合物、又は天然物抽出物、 しくはこれらの誘導体や変性体や、バイオ ス原料以外を原料とする合成物であっても いが、生分解性であることが、廃棄処理す 際に環境負荷の低減を図ることができるた 、好ましい。軟質ポリマーとしては、具体 には、ポリブチレンサクシネート、ポリブ レンアジペート、ポリエチレンサクシネー 、ポリエチレンアジペート等のジカルボン とジオールからなるポリエステル類、ポリ メチルシロキサン等のポリシロキサン類、 リブタジエン、ポリイソプレン等のポリジ ン類、ポリエチルアクリレート、ポリブチ アクリレート等のポリアクリレート類、ポ エチレングリコール、ポリプロピレングリ ール、トリグリセリン、テトラグリセリン のポリグリセリン、ポリビニルアルコール のポリマーやオリゴマー、ヤシ油系等、ひ し油系等のポリオール類等を挙げることが きる。これらは誘導体や変性体として使用 ることもでき、1種又は2種以上を組み合わ て用いることができる。

 軟質ポリマーとしては、官能基を2つ以上 有するものであり、この官能基を起点として 三次元構造を形成するものである。官能基が 分岐構造を形成可能なものであれば、軟質ポ リマーは官能基を少なくとも2つ有すること 好ましく、ポリ乳酸誘導体が官能基を2つ有 るものであり、且つ、該官能基が分岐構造 形成しないものであれば、軟質ポリマーは 能基を少なくとも3つ有するか、3官能以上 リンカーを用いることが好ましい。これら 架橋部位を形成する官能基は軟質ポリマー 末端に位置することが好ましい。軟質ポリ ーの官能基としては、具体的には、上記ポ 乳酸誘導体における官能基と同様のものを げることができる。

 軟質ポリマーに2以上の官能基を導入する 方法としては、上記ポリ乳酸誘導体に官能基 を導入する方法と同様の方法を採用すること ができる。例えば、軟質ポリマーが、ジカル ボン酸とジオールとから合成されるポリエス テル類の場合、使用するジオールとジカルボ ン酸のモル比ジオール/ジカルボン酸を1より きくすることにより、末端基を総てヒドロ シ基にすることができ、ジオール/ジカルボ ン酸を1より小さくすることにより、末端基 総てカルボキシル基にすることができる。 た、軟質ポリマーと2つ以上のヒドロキシル を有する化合物のエステル交換反応により 末端基にヒドロキシル基を有するポリエス ルが得られる。更に、3官能以上のポリイソ シアネートやエポキシ化合物との反応により 、軟質ポリマーのヒドロキシ基の官能基数を 増やすことができる。

 ポリグリセリン、ポリオール等ヒドロキ ル基を有するポリマーはエステル化、エー ル化等の種々のヒドロキシル基の化学反応 可能である。ポリジエン、ポリアクリレー 等は、官能基を有する重合開始剤や末端封 剤を重合時に用いて、種々の官能基を導入 ることができる。また、これらの樹脂と官 基を持たない樹脂を共重合することも有効 ある。なお、末端部にカルボキシル基を有 る樹脂や未反応のヒドロキシル基を有する 合物は容易に精製除去可能である。

 軟質ポリマーの数平均分子量としては、1 00~1,000,000の範囲を挙げることができ、500~100,0 00であることが好ましく、より好ましくは1,00 0~50,000である。軟質ポリマーの数平均分子量 100以上であれば、形状記憶樹脂において機 的特性や加工性に優れ、1,000,000以下であれ 、形状記憶性に優れる架橋密度とすること できる。

 このような軟質ポリマーは30℃未満のTgを 有する。軟質ポリマーのTgが30℃未満であれ 、軟質ポリマーは30℃未満で柔軟になりゴム 性状を示し、形状記憶樹脂の靭性を向上でき る上、衝撃特性の向上も期待できる。

 ガラス転移温度(Tg)はセイコーインスツル メント社製DSC測定装置(商品名:DSC6000)を用い 、昇温速度10℃/分で行う測定値を採用する とができる。

 [リンカー]
 本発明の形状記憶樹脂に用いるリンカーは ポリ乳酸誘導体又は軟質ポリマーの架橋部 を形成する官能基と結合する少なくとも2つ の官能基を有し、架橋部位を構成するもので ある。ポリ乳酸誘導体又は軟質ポリマーの官 能基が分岐構造を形成しないものである場合 、リンカーの官能基が分岐構造を形成するこ とができるものであること、若しくはリンカ ーが官能基を3つ以上有することが必要であ 。リンカーの官能基としては、ポリ乳酸誘 体又は軟質ポリマーの官能基との組み合わ として、具体的には、ヒドロキシ基とカル キシル基若しくはイソシアネート基、アミ 基とイソシアネート基若しくはカルボキシ 基、エポキシ基とヒドロキシ基若しくはア ノ基若しくはカルボキシル基等の組み合わ を挙げることができる。特に、ポリ乳酸誘 体や軟質ポリマーの官能基がヒドロキシ基 リンカーの官能基がイソシアネート基の組 合わせが好ましい。

 官能基としてイソシアネ-ト基を有するリ ンカーとしては、イソシアネート基を複数有 するポリイソシアネートが好ましく、具体的 には、カルボジイミド変性MDI、ヘキサメチレ ンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチ レンジイソシアネート、トリレンジイソシア ネート、ナフチレンジイソシアネート、リジ ンジイソシアネート、リジントリイソシアネ ート等を挙げることができる。これらのうち 、特に、アミノ酸誘導可能なリジンジイソシ アネートやリジントリイソシアネートは、天 然物由来のリンカーであり、好ましい。

 また、リンカーの官能基として上記ディ ルス-アルダー型結合を形成するフラン基や マレイミド基等熱可逆反応性官能基を挙げる ことができる。

 マレイミド基を有するリンカーとして、 分子中に少なくとも2個以上のアミノ基を有 するポリアミンから合成されたマレイミド誘 導体を挙げることができる。具体的には、1,6 -ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1 ,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、 4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン、ビス(3- ミノプロピル)アミン等の脂肪族ジアミン、P AMAM、ポリアリルアミン、ポリリジン、ポリ ニルアミン等の脂肪族ポリアミン、O,O’-ビ (3-アミノプロピル)ポリエチレングリコール 、O,O’-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリ )ポリジメチルシロキサン等を用いて得られ マレイミド誘導体を挙げることができる。 然由来のアミノ化合物を用いて得られるマ イミド誘導体は環境問題の点から好ましい

 また、官能基を有するマレイミド誘導体 用いることも有効である。例えば、アミノ から得られるマレイミドカルボン酸、マレ ミドカルボン酸とポリオール、ポリエポキ 化合物及びポリアミンとの反応により得ら る多官能マレイミドリンカーを用いること できる。

 フラン基を有するリンカーとしては、フ フリルアルコール、フルフリルアミン、フ フラール、フランメタンチオール、フルフ ルグリシジルエーテル等の官能基を有する ラン誘導体と、それらの官能基と反応可能 官能基を2つ以上有する化合物との反応によ り得られるものを用いることができる。かか る官能基としては、ヒドロキシ基、イソシア ネート基、エポキシ基、カルボン酸基等を挙 げることができる。かかるリンカーとしては 、フルフリルアルコールとポリイソシアネー トとを反応させて得られる多官能フランリン カーを挙げることができる。

 [形状記憶樹脂]
 本発明の形状記憶樹脂は、上記ポリ乳酸誘 体が、軟質ポリマーと共にリンカーにより 橋されて三次元構造を有するものである。 橋は、ポリ乳酸誘導体の官能基が、相互に 接結合し、又は、軟質ポリマー、リンカー しくは軟質ポリマーとリンカーとの結合体 介して結合して形成される。架橋部位の官 基の結合部分が形状記憶樹脂における固定 となり、架橋部位間のポリ乳酸誘導体が可 相となる。

 上記形状記憶樹脂中、ポリ乳酸誘導体と 質ポリマーとの質量比は、95:5~50:50が好まし く、95:5~55:45がより好ましく、95:5~60:40が更に ましい。ポリ乳酸誘導体の質量比が95以下 あれば、得られる成形体が高靭性・低弾性 なり、耐衝撃性や耐落下衝撃性の向上も期 できる。架橋によりポリ乳酸の結晶性が低 し、透明な成形体が得られる。また、ポリ 酸誘導体の質量比が50以上であれば、得られ る成形体が高強度となり耐久性に優れる。一 方、ポリ乳酸誘導体の質量比が50未満の場合 得られる成形体において高靭性だが強度は 下する。しかも、軟質ポリマーが結晶性ポ マーである場合、質量比が50を超えると結 化してしまうため、強度や形状記憶性の低 が起こり透明性も失われるため、好ましく い。リンカーの使用量は、形成する形状記 樹脂の架橋密度に応じて調整することにな 。架橋部位を形成する官能基同士、例えば ヒドロキシル基とイソシアネート基、フラ 基とマレイミド基のモル比が0.9~1.1:1の範囲 なるよう樹脂とリンカーの量を調整するの 、強度の面から好ましい。

 上記架橋は、予め調整した未硬化のポリ 酸誘導体と、軟質ポリマーと、リンカーと 混合し、一部反応させ架橋して重合体組成 (プレポリマー)を調製し、これを架橋・硬 して成形体の成形と同時に形成することが きる。また、未硬化のポリ乳酸誘導体、軟 ポリマー、リンカーとを混合して未硬化組 物(混合組成物)を調製し、架橋・硬化して成 形体の成形と同時に形成することができる。 また、これらの重合体組成物や、未硬化組成 物をクロロホルム等の溶媒に溶解し、キャス トすることで形状記憶樹脂フィルムを調製す ることができる。これらの架橋、硬化には必 要に応じて触媒を用いることができる。例え ば、ヒドロキシ基とイソシアネート基の反応 の場合は、トリエチレンジアミン等の三級ア ミンやジラウリン酸ジブチル錫等の有機金属 化合物の触媒を用いることができる。

 本発明の形状記憶樹脂はTgが30℃以上100℃ 以下であることが好ましく、35℃以上80℃以 であることがより好ましい。形状記憶樹脂 Tgが30℃以上であれば、形状記憶樹脂を用い 成形体において形状を保持することが可能 なる。形状記憶樹脂のTgが100℃以下であれ 、ドライヤーや湯を用いて成形体を容易に 熱し、形状の変形、又は、記憶された初期 状を回復することができるため、実用的で ることから好ましい。また、体に直接接触 は装着して使用する成形体の場合は、Tgが80 以下であることがやけどを防止できるため 好ましい。また、Tgが30℃以上40℃以下であ と、ドライヤーや湯を用いずに体温等で樹 が変形可能となるため、好ましい。形状記 樹脂のTgは、架橋密度を変動させることに り調整することができる。具体的には、ポ 乳酸誘導体や軟質ポリマーの分子量を下げ 、これらの官能基の数を増加し架橋密度を 昇させることにより、形状記憶樹脂のTgを上 昇させることができる。また、ポリ乳酸誘導 体や軟質ポリマーの分子量を上げる、これら の官能基の数を減少し架橋密度を減少させる ことにより、形状記憶樹脂のTgを低下させる とができる。

 また、本発明の形状記憶樹脂は、曲げ強 が50MPa以上であることが好ましい。形状記 樹脂の曲げ強度が50MPa以上であれば、耐久性 に優れた成形体を得ることができる。形状記 憶樹脂の曲げ強度は架橋密度を変動させるこ とにより調整することができる。曲げ強度は 、インストロン社製万能材料試験機(5567型)を 用いて、3点曲げ試験により曲げ強度(最大曲 応力)を測定した測定値を採用することがで きる。

 また、本発明の形状記憶樹脂は、破断の が5%以上であることが好ましい。形状記憶 脂の破断のびが5%以上であれば、靭性に優れ た成形体を得ることができる。形状記憶樹脂 の破断のびは架橋密度を変動させることによ り調整することができる。破断のびは、上記 曲げ強度の測定と同様の測定機を用いて、3 曲げ試験により、破断のびを測定した測定 を採用することができる。

 上記形状記憶樹脂はその特性を損なわな 範囲で、適宜、必要に応じて、無機フィラ 、有機フィラー、補強材、着色剤、安定剤( ラジカル捕捉剤、酸化防止剤等)、抗菌剤、 かび材、難燃剤等の添加剤を含有していて よい。無機フィラーとしては、シリカ、ア ミナ、タルク、砂、粘土、鉱滓等を使用で る。有機フィラーとしては、ポリアミド繊 や植物繊維等の有機繊維を使用できる。補 材としては、ガラス繊維、炭素繊維、ポリ ミド繊維、ポリアリレート繊維、針状無機 、繊維状フッ素樹脂等を使用できる。抗菌 としては、銀イオン、銅イオン、これらを 有するゼオライト等を使用できる。難燃剤 しては、シリコーン系難燃剤、臭素系難燃 、燐系難燃剤、無機系難燃剤等を使用でき 。耐加水分解安定剤としてカルボジイミド 改質剤等を使用できる。

 本発明の成形体は、上記形状記憶樹脂を いて、該形状記憶樹脂の分解温度未満で初 形状に成形され、該初期形状が記憶される そして、形状記憶樹脂のTg以上の温度で初 形状に変形が与えられ、該Tg未満の温度に冷 却され変形形状が固定される。

 上記成形体の製造は、上記形状記憶樹脂 用い、トランスファー成形、RIM成形、圧縮 形、発泡成形、光硬化成形等の成形方法を 用し、ポリ乳酸誘導体の分解温度未満で成 し、記憶される初期形状に成形する方法に ればよい。また、架橋部位が熱可逆性結合 より形成される形状記憶樹脂を用いる場合 、射出成形法等の一般的な熱可塑性樹脂の 形方法も使用することができる。

 本発明の成形体の使用方法について述べ 。初期形状を有する成形体を上記形状記憶 脂のTg以上の温度に加熱して変形を与え、 記形状記憶樹脂のTg未満の温度に冷却して固 定し、変形形状を有する成形体とする。変形 形状を有する成形体においては、上記形状記 憶樹脂のTg以上の温度に加熱されない限り、 形形状が保持される。

 また、変形形状を有する成形体を上記形 記憶樹脂のTg以上の温度に加熱することに り、初期形状を回復させ、上記形状記憶樹 のTg未満の温度に冷却して、回復した初期形 状を固定し、初期形状を有する成形体として 使用することができる。

 また、架橋部位が熱可逆性結合により形 された形状記憶樹脂を用いた成形体におい は、樹脂のTg以上、架橋部位の開裂温度以 の温度に加熱して変形後、樹脂のTg未満の温 度に冷却し固定した変形形状を有するものと する。更に、樹脂のTg以上、架橋部位の開裂 度以下の温度に加熱することにより、形状 回復させることができる。更に、架橋部位 開裂温度以上、樹脂の分解温度未満の温度 加熱することにより、架橋を開裂させ、再 形しリサイクルした成形体として使用する とができる。

 上記成形体は、高耐久性、高靭性が要請 れる電化製品の筐体等の電気・電子機器用 やメガネ、補聴器、ギブス、投票用紙等に 用することができる。廃棄する場合、焼成 ずに、環境に放置することにより、日光や の作用や、バイオサイクルに取り込まれ、 易に生分解される。

 以下に実施例によって本発明を更に詳細 説明するが、本発明の技術的範囲はこれら 限定されない。

 以下、特に明記しない限り、試薬等は市 の高純度品を用いた。また、数平均分子量 、NMRにより測定したヒドロキシ基の濃度か 算出、若しくはゲルパーミエーションクロ トグラム法により測定し、標準ポリスチレ を用いて換算した。

 [実施例1]
[末端ヒドロキシポリ乳酸の合成]
 ポリ乳酸(テラマック:ユニチカ社製)2220gと ルビトール76.8gを210℃で12時間溶融混合しエ テル交換反応を行い、エステル化合物を得 。これをクロロホルム5Lに溶解して得られ 液を、過剰のメタノールに注ぎ再沈殿して 末端ヒドロキシポリ乳酸[R1]を得た。数平均 子量は7300、Tgは46.8℃であった。

 [軟質ポリマー(末端ヒドロキシポリブチレ サクシネート(PBS))の合成]
 無水コハク酸117gと1,4-ブタンジオール128gを1 90℃で4時間加熱後、さらに減圧下2時間加熱 、脱水縮合反応を行い、エステル化合物を た。これをクロロホルム200mLに溶解して得ら れた液を、過剰のメタノールに注ぎ再沈殿し て、末端ヒドロキシポリブチレンサクシネー ト[R2]を得た。数平均分子量は2300、Tgは-40℃ あった。

 得られた上記[R1]と[R2]を表1に示す配合比で 融混合後(170℃)、リンカーとしてリジント イソシアネートを添加した。[R1]と[R2]の末端 ヒドロキシ基とリンカーのイソシアネート基 が同モル量となるよう添加した。さらに、170 ℃で2時間圧縮成形し、ポリ乳酸架橋物のフ ルムを得た。

 得られたポリ乳酸架橋物のフィルムから ンプルを切り出し、曲げ強度、破断伸び、T gを上記方法により測定し、以下の方法によ 形状記憶性の評価を行った。結果を表2に示 。

 [形状記憶性]
 得られたポリ乳酸架橋物のフィルムから2cm 5cm×1.8mmのサンプルを切り出し、このサンプ をTg+20℃で加熱し、サンプルの中央を90°に り曲げて5秒間変形後、常温まで冷却した。 このときのサンプルの形状保持性を角度(A1) より以下の基準により評価した。80°≦A1≦10 0°を○、70°≦A1<80°又は100°<A1≦110°を△ 、0°≦A1<70°又は110°<A1≦180°を×とした

 また、このサンプルを再度Tg+20℃で3分加 した後の形状回復性を角度(A2)により以下の 基準により評価した。170°≦A2≦180°を○、160 °≦A2<170°を△、0°≦A2<160°を×とした。 果を表2に示す。

 [実施例2]
 軟質ポリマーとして、ポリブチレンサクシ ート[R3](ビオノーレ:昭和高分子社製)(数平 分子量=21300、Tg=-32℃)を用いた。

 [R1]と[R3]を表2に示す配合比で溶融混合後(170 ℃)、リンカーとしてリジントリイソシアネ トを添加した。[R1]と[R3]の末端ヒドロキシ基 とリンカーのイソシアネート基が同モル量と なるよう添加した。さらに、170℃で2時間圧 成形することで、ポリ乳酸架橋物を得た。 られたポリ乳酸架橋物の曲げ強度、破断伸 、Tg、形状記憶性の評価を表3に示す。

 [実施例3]
[マレイミド基含有ポリ乳酸の合成]
 β-アラニン25.0g、無水マレイン酸28.9g、THF100 mLを窒素下室温で24時間撹拌後、固形物をろ することでマレアミドプロピオン酸[R4](収率 96%)を得た。次に、[R4]22.1g、オルトリン酸6.11g 、BHT0.0937g、キシレン100mL、トルエン300mL、ジ キサン20mLを量り取り3つ口フラスコ内で3時 還流した。反応温度は116℃であった。これ 室温まで冷却後、溶媒を減圧留去し、得ら た固体をクロロホルムに溶解した。この溶 からクロロホルムを減圧留去後、固体をジ チルエーテルで再結晶化して、マレイミド ルボン酸[R5]を得た。

 [R5]6.25gをクロロホルム90mLに溶解し0℃に冷 した後、二塩化オキサリル12.2gを滴下した。 窒素下室温で5時間撹拌した後、溶媒および 剰の二塩化オキサリルを減圧留去し、マレ ミドカルボン酸クロライド[R6]を得た。[R6]を 少量のクロロホルムに希釈後、[R1]9.14g、ピリ ジン6.59mL、クロロホルム30mLの溶液中に滴下 た。窒素下室温で30分間撹拌した後、反応溶 液をメタノールと水の混合溶媒(メタノール35 0mL、水50mL)に注ぎ、析出した固体をろ過して レイミド修飾ポリ乳酸[R7]を得た。数平均分 子量は7500、Tgは55℃、マレイミド修飾率は6で あった。マレイミド修飾率はポリ乳酸1モル たりのマレイミド基のモル数を示す。

 [フラン基含有ポリブチレンサクシネートの 合成]
 リジンジイソシアネート42.5gとジラウレー ジブチルスズ0.2mLをジオキサン300mLに溶解後 末端ヒドロキシポリブチレンサクシネート[ R2]30.0gを滴下した。80℃で2時間反応後、さら フルフリルアルコール39.3gを滴下し、80℃で 5時間反応を行った。溶媒を減圧留去後、得 れた固体をクロロホルム500mLに溶解し、この クロロホルム液を同量の水で3回洗浄後、硫 マグネシウムで乾燥した。さらにこのクロ ホルム液を過剰のメタノールに注ぎ再沈殿 ることで、フラン変性PBS[R8]を得た。数平均 子量は4400、Tgは-21℃であった。

 [フランリンカーの合成]
 フルフリルアルコール40.0gとジラウレート ブチルスズ0.2mLをジオキサン150mLに溶解した 、リジントリイソシアネート24.2gを滴下し 。60℃で6時間反応後、溶媒を減圧留去し、 られた個体をクロロホルム200mLに溶解した。 このクロロホルム液を水200mLで3回洗浄し硫酸 マグネシウムで乾燥後、クロロホルムを減圧 留去した。得られた粗生成物を酢酸エチルで 再結晶することにより、フランリンカー[R9] 得た。

 [マレイミドリンカーの合成]
 DMF100mLに溶解したトリス(2-アミノエチル)ア ン25mLを75℃に加熱後、DMF250mLに溶解したexo-3 ,6-エポキシ-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水 物100gを1時間かけて滴下し、2時間撹拌した。 さらに無水酢酸200mL、トリエチルアミン10mL、 酢酸ニッケル1gを添加し、3時間撹拌した。撹 拌後、水1Lを加え、溶媒を60℃で減圧留去後 得られた固体をクロロホルムに溶解し、こ クロロホルム液を水洗した。このクロロホ ム液からクロロホルムを減圧留去後、シリ ゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチ ル)で精製した。さらに窒素下トルエンで24時 間還流後、再結晶により3官能マレイミド[R10] (収率52%)を得た。

 得られた上記[R7]と[R8]を表3に示す配合比で 融混合後(160℃)、リンカーとして[R9]又は[R10 ]を添加した。100:0~60:40では、[R7]の末端マレ ミド基と[R8]と[R9]のフラン基が同モル量とな るよう添加した。50:50では、[R7]と[R10]の末端 レイミド基と[R8]のフラン基が同モル量とな るよう添加した。さらに、160℃で圧縮成形後 、100℃で1時間、75℃で20時間加熱して、ポリ 酸架橋物[R11]を得た。曲げ強度、破断伸び Tg、形状記憶性の評価を表4に示す。

 [比較例1]
 [R7]と[R3]を表5に示す配合比で溶融混合後(160 ℃)、リンカーとして[R9]を添加した。[R7]の末 端マレイミド基と[R9]のフラン基が同モル量 なるよう添加した。更に、160℃で圧縮成形 、100℃で1時間、75℃で20時間加熱し、フィル ム状のポリ乳酸架橋物[R12]を得た。得られた リ乳酸架橋物のフィルムについて実施例1と 同様にして、曲げ強度、破断伸び、Tg、形状 憶性の評価を行った。結果を表5に示す。

 実施例1~3から、本発明の形状記憶樹脂の成 体はいずれも破断伸びが大きく靭性に優れ 特に、ポリ乳酸誘導体と軟質ポリマーの質 比が95:5から60:40の間の形状記憶樹脂であれ 、軟質ポリマーの分子量や結合部位の種類 関係なく、曲げ強度が50MPa以上かつ破断伸 が5%以上を示す形状記憶性成形体が得られ、 ポリ乳酸と軟質ポリマーの質量比により、Tg 調整可能であることが分かる。一方、形状 憶樹脂中のポリ乳酸誘導体と軟質ポリマー 質量比が100:0の場合、得られる成形体は高 曲げ強度と優れた形状記憶性を持つが、破 伸びが低い。また、形状記憶樹脂中の軟質 リマーの質量比が高くなると、得られる成 体は破断のびが向上し、強度及び形状記憶 が低下する傾向にあることが分かる。

 比較例1では形状記憶樹脂中のポリ乳酸誘 導体と軟質ポリマーの質量比が何れの場合で あっても、得られる成形体は靭性が向上しな い。ポリ乳酸誘導体の官能基(マレイミド基) 、軟質ポリマーの官能基(ヒドロキシ基もし くはカルボキシル基)が架橋を形成せず、軟 ポリマーが3次元構造に組み込まれていない 形体は靭性を向上させ得ないことが分かる

 [実施例4]
 軟質オリゴマーとして、ひまし油[R13](URIC H -30:伊藤製油株式会社製)(数平均分子量=930、 固点-18℃)を用いた。

 [R1]と[R13]を表6に示す配合比で溶融混合後 (170℃)、リンカーとしてリジントリイソシア ートを添加した。[R1]と[R13]のヒドロキシ基 リンカーのイソシアネート基が同モル量と るよう添加した。さらに、170℃で2時間圧縮 成形し、ポリ乳酸架橋物のフィルムを得た。

 実施例4から、本発明の形状記憶樹脂の成形 体は破断伸びが大きく靭性に優れ、特に、ポ リ乳酸誘導体と軟質ポリマー(ひまし油)の質 比が95:5から50:50の間の形状記憶樹脂であれ 、曲げ強度が50MPa以上かつ破断伸びが5%以上 を示す形状記憶性成形体が得られることが分 かる。実施例1~3と同様に、ひまし油の質量比 が高くなると成形体は強度が低下し、ポリ乳 酸とひまし油の比によりTgが調整可能である

 [実施例5]
[軟質ポリマー(末端ヒドロキシポリブチレン クシネートアジペート(PBSA))の合成]
 コハク酸94g、アジピン酸29gおよび1,4-ブタン ジオール95gを窒素雰囲気下180~220℃で7時間脱 縮合を行った。続いて、減圧下180~220℃で1.0 時間脱グリコール反応を行い、エステル化合 物を得た。これをクロロホルム200mLに溶解し 得られた液を、過剰のメタノールに注ぎ再 殿して、両末端にヒドロキシル基を有する リブチレンサクシネートアジペート[R14]を た。数平均分子量(NMR)は1650、Tgは-45℃であっ た。

 得られた上記[R1]と[R14]を表7に示す配合比で 溶融混合後(170℃)、リンカーとして1,6-ヘキサ メチレンジイソシアネートホモポリマー(TPA-1 00:旭化成ケミカルズ株式会社製)[R15]を添加し た。[R1]と[R14]の末端ヒドロキシ基とリンカー のイソシアネート基が同モル量となるよう添 加した。さらに、170℃で2時間圧縮成形し、 リ乳酸架橋物のフィルムを得た。 

 実施例5から、本発明の形状記憶樹脂の成形 体はいずれも破断伸びが大きく靭性に優れ、 特に、ポリ乳酸誘導体と軟質ポリマー(PBSA)の 質量比が95:5から60:40の間の形状記憶樹脂であ れば、曲げ強度が50MPa以上かつ破断伸びが5% 上を示す形状記憶性成形体が得られること 分かる。また、実施例1~4と同様に、形状記 樹脂中のPBSAの質量比が高くなると、得られ 成形体は強度が低下し、ポリ乳酸とPBSAの比 によりTgが調整可能である。

 本発明は、日本出願の特願2007-298209及び 願2008-064163を基礎として優先権を主張してす る出願であり、これらの基礎出願に含まれる 総ての内容をその内容とするものである。

 このように高強度且つ高靭性の形状記憶 を備えた本発明の成形体は、パーソナルコ ピューターや携帯電話等の電子機器の外装 、ねじ、締め付けピン、スイッチ、センサ 、情報記録装置、OA機器等のローラー、ベ ト等の部品、ソケット、パレット等の梱包 、冷暖房空調機の開閉弁、熱収縮チューブ に使用することができる。他にも、バンパ 、ハンドル、バックミラー等の自動車用部 、ギブス、おもちゃ、めがねフレーム、補 器、歯科矯正用ワイヤー、床ずれ防止寝具 の家庭用部材等として、各種分野に応用す ことができる。