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Title:
SPECTACLE LENS EVALUATING METHOD, SPECTACLE LENS DESIGNING METHOD USING SAME, SPECTACLE LENS MANUFACTURING METHOD, SPECTACLE LENS MANUFACTURING SYSTEM, AND SPECTACLE LENS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/057709
Kind Code:
A1
Abstract:
Adequate evaluation, designing, and manufacturing are possible by more adequately considering the visual performance. A spectacle lens is evaluated by using a vision function containing a factor representing the physiological astigmatism. The physiological astigmatism is an astigmatism in a phenomenon of an increase of the vision when there is a slight astigmatism in a region where the power of accommodation is lower than that in the region representing the range of the positive relative power of accommodation where the power of accommodation increases among the relative powers of accommodation possible with the convergence unchanged.

Inventors:
YAMAKAJI TETSUMA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/069792
Publication Date:
May 07, 2009
Filing Date:
October 30, 2008
Export Citation:
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Assignee:
HOYA CORP (JP)
YAMAKAJI TETSUMA (JP)
International Classes:
G01M11/02; G01M11/00; G02C13/00
Domestic Patent References:
WO2003057021A12003-07-17
WO2003057038A12003-07-17
WO2000062116A12000-10-19
WO2006014624A22006-02-09
WO2004018988A12004-03-04
WO2002088828A12002-11-07
WO2002088828A12002-11-07
WO2004018988A12004-03-04
Foreign References:
JP2005516717A2005-06-09
JPH1172754A1999-03-16
JP2004102248A2004-04-02
JP2003504665A2003-02-04
JP2000186978A2000-07-04
JP2000111846A2000-04-21
JP2001209012A2001-08-03
Other References:
"The Relationship between Refractive Error and Visual Acuity at Three Age Levels", AMERICAN JOURNAL OF OPTOMETRY AND ARCHIVES OF AMERICAN ACADEMY OF OPTOMETRY, 1961, pages 194 - 198
KLEINSTEIN: "Uncorrected Visual Acuity and Refractive Error", OPTOMETRIC MONTHLY, November 1981 (1981-11-01), pages 31 - 32
TADAO TSURUTA: "Light, past and present 3: Changes of Age-Accommodation Curves", SCIENCE OF VISION, vol. 19, no. 3, December 1988 (1988-12-01), pages 101 - 105
See also references of EP 2211159A4
Attorney, Agent or Firm:
TSUNODA, Yoshisue et al. (1-64-8 Sasazuka, Shibuya-k, Tokyo 73, JP)
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Claims:
 生理的乱視を表わす因子を含む視力関数を用いて、眼鏡レンズを評価する
 眼鏡レンズ評価方法。
 前記視力関数が、相対調節力を因子に含むものであり、且つ、前記相対調節力を示す因子が、前記生理的乱視を表す因子をさらに含むものである
 請求項1に記載の眼鏡レンズ評価方法。
 前記視力関数は、小数点視力、または分数視力をVとしたとき、log 10 (1/V)で定義される(logMAR)の単位で表したものである
 請求項1又は2に記載の眼鏡レンズ評価方法。
 前記調節力又は相対調節力を因子に含む視力関数は、眼球の屈折力エラーと視力との関係を複数の被検者について実測したデータと、輻輳と調節力との関係について複数の被検者について実測したデータと、年齢と調節力に関して複数の被検者について実測したデータと、に基づいて導いたものである
 請求項1乃至3のいずれかに記載の眼鏡レンズ評価方法。
 前記眼球の屈折力エラーと視力との関係を複数の被検者について実測したデータとして、Petersによって実測された年齢別の視力測定値のデータを用いる
 請求項4に記載の眼鏡レンズ評価方法。
 前記輻輳と調節力との関係について複数の被検者について実測したデータとして、Dondersによって考案されたDonders図を用いる
 請求項4に記載の眼鏡レンズ評価方法。
 前記輻輳と調節力との関係について複数の被検者について実測したデータとして、前記Donders図に設定される短時間呈示での輻輳限界を示す領域内にあるデータを用いる
 請求項6に記載の眼鏡レンズ評価方法。
 前記短時間呈示する時間は、0.05秒以上0.7秒以下である
 請求項7に記載の眼鏡レンズ評価方法。
 前記輻輳と調節力との関係について複数の被検者について実測したデータとして、前記Donders図に設定される2本のDonders曲線によって挟まれる領域内にある領域であって、挟まれる領域の中心領域2/3以内の領域内、又は前記Donders図に設定される1本の直線であるDonders線を中心として前記Donders曲線で挟まれる領域の2/3以内の領域内にあるデータを用いる
 請求項6に記載の眼鏡レンズ評価方法。
 前記輻輳と調節力との関係について複数の被検者について実測したデータとして、前記Donders図に設定される2本のDonders曲線によって挟まれる領域内にある領域であって、挟まれる領域の中心領域1/3以内の領域内、又は前記Donders図に設定される1本の直線であるDonders線を中心として前記Donders曲線で挟まれる領域の1/3以内の領域内にあるデータを用いる
 請求項6に記載の眼鏡レンズ評価方法。
 前記年齢と調節力に関して複数の被検者について実測したデータとして、Duane作成の図、Hofstetter作成の図、又はLandolt作成の図の少なくともいずれか一つを用いる
 請求項4に記載の眼鏡レンズ評価方法。
 前記眼鏡レンズが、カスタムメイドの眼鏡レンズである請求項1乃至11のいずれかに記載の眼鏡レンズ評価方法。
 前記視力関数は、パワーエラーを相対調節力により相殺する因子を含む
 請求項1乃至12のいずれかに記載の眼鏡レンズ評価方法。
 前記視力関数は、年齢により増加する係数、または個人差に応じた相対調節力に応じて減少する係数を持つ非点収差を因子として含む
 請求項1乃至13のいずれかに記載の眼鏡レンズ評価方法。
 前記視力関数として、下記数1を用いる
 請求項1乃至14のいずれかに記載の眼鏡レンズ評価方法。
 但し、(1)式において、α、PE、AA(PRA,NRA)、bk、ASは下記のものとする。
 α:0.25≦α≦0.65とされ、視覚機能の1つである視力を、主に視覚機能の1つである相対調節力、光学収差であるPE,ASに関係づける係数
 PE:パワーエラー(度数誤差)
 AA(PRA,NRA):相対調節力を主要な項目とする関数で、生理的乱視の現象を表現する補正項を含む
 bk:0.6≦bk≦1.1であり、年齢が若いほど乱視方向に視力が上がる現象を表現し、年齢により増加する係数、または個人差に応じた相対調節力に応じて減少する特徴を持つ補正係数
 AS:非点収差
 生理的乱視を表わす因子を含む視力関数を評価関数として用いて最適化計算を行うステップを含む
 眼鏡レンズ設計方法。
 生理的乱視を表わす因子を含む視力関数を評価関数として用いて最適化計算を行い、前記最適化計算により求めた光学設計値に基づいて眼鏡レンズを製造する工程を含む
 眼鏡レンズ製造方法。
 眼鏡レンズの発注側に設置されて前記眼鏡レンズの発注に必要な処理を行う機能を有する発注側コンピュータと、前記発注側コンピュータからの情報を受け取って、前記眼鏡レンズの受注に必要な処理を行う機能を有する製造側コンピュータと、がネットワークで接続された眼鏡レンズ製造システムであって、
 前記発注側コンピュータは、生理的乱視を表わす因子を含む前記眼鏡レンズの設計に必要な情報を前記製造側コンピュータに送信し、
 前記製造側コンピュータは、
 前記発注側コンピュータから送信された生理的乱視を表わす因子を含むデータを入力するデータ入力部と、
 前記入力されたデータに基づいて、眼鏡レンズの複数の評価点についての光学性能値を視力関数として計算する視力関数計算部と、
 前記視力関数計算部で計算された視力関数を評価関数として、前記光学性能値の最適化を図る評価関数最適化部と、
 前記視力関数を所定の閾値と比較して、前記光学性能値を評価する視力関数評価部と、
 前記視力関数評価部において評価した結果、前記視力関数の値が所定の視力に達しない場合に、眼鏡レンズの設計データを修正する設計データ修正部と、
 前記視力関数評価部の評価を前記眼鏡レンズの各評価点について終了した結果から、設計データを決定する光学設計値決定部と、
 前記光学設計値決定部における最終的な設計データをレンズ加工するための装置へ供給する設計データ出力部と、を有する
 眼鏡レンズ製造システム。
 前記発注側コンピュータが送信する生理的乱視を表わす因子を含む前記眼鏡レンズの設計に必要な情報として、相対調節力の測定値又は年齢の少なくともいずれかを用いる
 請求項18に記載の眼鏡レンズ製造システム。
 生理的乱視を表す因子を含む視力関数を評価関数として用いて最適化計算を行って求めた光学設計値に基づいて構成された
 眼鏡レンズ。
 
Description:
眼鏡レンズ評価方法、これを用 た眼鏡レンズ設計方法、眼鏡レンズ製造方 、眼鏡レンズ製造システム及び眼鏡レンズ

 本発明は、眼鏡レンズを設計、製造する あたりその性能の評価に用いる眼鏡レンズ 価方法と、これを用いた眼鏡レンズ設計方 、眼鏡レンズ製造方法、眼鏡レンズ製造シ テム及び眼鏡レンズに関する。

 従来は、眼鏡装用者個々人ごとにカスタ メイド(特注生産、「オーダーメイド(受注 産)」ともいう。)される個別眼鏡レンズであ っても、既製品である通常(汎用)眼鏡レンズ あっても、一般に、その光学性能は、以下 ようにして求められていた。すなわち、眼 レンズの3次元形状、装用状態パラメータ、 処方度数、及び、明視する処方距離を持つ物 体面等によって定められる光学系を想定し、 この光学系において、物体面から出た光線又 は光束が眼鏡レンズを通過する軌跡を公知の 光学計算方法等によって追跡し、その軌跡が 好ましいとされる軌跡にどの程度近いか等に よってその性能を求めるものであった。また 、眼鏡レンズの設計は、その性能評価を行い ながら目的の性能に近いレンズを求めて設計 していくというものであった(特許文献1参照) 。

 例えば、特許文献2には、波面光学に基づい て、精度の高い光学計算による眼鏡レンズ設 計がなされ、その光学性能について言及され 、かつ、モニター結果について定性的に記載 されている。また、眼鏡レンズとしての累進 レンズは、個別の調節力に対応する付加力を 処方度数として持っており、その付加力に対 応した設計がなされているゆえに個別眼鏡レ ンズの一種である。特許文献3には、この累 レンズを試験装用したモニターによって、 視度数や非点収差の値を変えて評価させ、 の評価結果に基づいて設計する点が記載さ ている。

特開2000-186978号公報

特開2000-111846号公報

特開2001-209012号公報

 上述の従来の眼鏡レンズの評価方法や設 方法は、主として、眼鏡レンズのレンズ面 3次元形状等により定まる光学性能に基づく ものであり、装用する人間の視力以外の視覚 機能との関係が評価の因子として適切に用い られているとはいえないものであった。すな わち、人間の視覚機能との関係としては、光 学性能と、眼鏡レンズを試験装用したモニタ ーの評価結果との相関だけが問題とされてい た。そしてこの相関から、光学性能に対応し てモニターの評価結果も良かった場合にはそ れで良い眼鏡レンズであると評価する方法が 主なものであった。

 本発明は、眼鏡レンズの評価、設計及び 造をする際に、本発明者が初めて着目した 力以外の視覚機能を評価のパラメータに取 入れることにより、光学性能と装用する人 の視覚機能との関係を評価の因子として適 に用い、より適切な評価、設計及び製造を ることを可能にする眼鏡レンズ評価方法、 鏡レンズ設計方法、眼鏡レンズ製造方法、 鏡レンズ製造システム及び眼鏡レンズを提 することを目的とする。

 上述の課題を解決するため、本発明の眼鏡 ンズ評価方法は、生理的乱視を表わす因子 含む視力関数を用いて、眼鏡レンズを評価 る。
 但し、前記生理的乱視とは、輻輳が変化し い状態で可能な調節力である相対調節力の ち調節力が増加する実性相対調節力の範囲 示す領域より調節力が下である領域で、わ かな乱視がある場合に視力が向上する現象 おける前記乱視のことをいう。

 また、本発明による眼鏡レンズ評価方法は 前記視力関数が、相対調節力を因子に含む のであり、且つ、前記相対調節力を示す因 が、前記生理的乱視を表す因子をさらに含 ものであることが好ましい。
 但し、前記相対調節力とは、注視点の輻輳 保ったまま明視可能な範囲をディオプター 表現したものをいう。

 本発明による眼鏡レンズ設計方法は、生 的乱視を表わす因子を含む視力関数を評価 数として用いて最適化計算を行うステップ 含む。

 本発明による眼鏡レンズ製造方法は、生 的乱視を表わす因子を含む視力関数を評価 数として用いて最適化計算を行い、前記最 化計算により求めた光学設計値に基づいて 鏡レンズを製造する工程を含む。

 本発明による眼鏡レンズ製造システムは、
 眼鏡レンズの発注側に設置されて前記眼鏡 ンズの発注に必要な処理を行う機能を有す 発注側コンピュータと、前記発注側コンピ ータからの情報を受け取って、前記眼鏡レ ズの受注に必要な処理を行う機能を有する 造側コンピュータと、がネットワークで接 された眼鏡レンズ製造システムであって、
 前記発注側コンピュータは、生理的乱視を わす因子を含む前記眼鏡レンズの設計に必 な情報を前記製造側コンピュータに送信し
 前記製造側コンピュータは、
 前記発注側コンピュータから送信された生 的乱視を表わす因子を含むデータを入力す データ入力部と、
 前記入力されたデータに基づいて、眼鏡レ ズの複数の評価点についての光学性能値を 力関数として計算する視力関数計算部と、
 前記視力関数計算部で計算された視力関数 評価関数として、前記光学性能値の最適化 図る評価関数最適化部と、
 前記視力関数を所定の閾値と比較して、前 光学性能値を評価する視力関数評価部と、
 前記視力関数評価部において評価した結果 前記視力関数の値が所定の視力に達しない 合に、眼鏡レンズの設計データを修正する 計データ修正部と、
 前記視力関数評価部の評価を前記眼鏡レン の各評価点について終了した結果から、設 データを決定する光学設計値決定部と、
 前記光学設計値決定部における最終的な設 データをレンズ加工するための装置へ供給 る設計データ出力部と、を有する
 構成とされる。

 更に、本発明による眼鏡レンズは、生理 乱視を表わす因子を含む視力関数を評価関 として用いて最適化計算を行って求めた光 設計値に基づいて構成される。

 本発明者の研究によれば、従来の眼鏡レ ズの評価・設計は、患者の調節力、特に相 調節力については考慮されておらず、結局 患者に相対調節力がないものとして行って たことがわかった。しかし、通常の患者に 調節力や相対調節力があるので、従来の評 ・設計は必ずしも最適なものではない。眼 レンズの評価・設計においては、視力関数 生理的乱視を表わす因子、好ましくは相対 節力をも因子に含むものを用いることによ 、より適切な評価・設計が可能になること 判明した。

眼球の屈折力エラーと視力との関係を すPeters図を示す図である。 眼球の屈折力エラーと視力との関係を すPeters図を示す図である。 眼球の屈折力エラーと視力との関係を すPeters図を示す図である。 眼球の屈折力エラーと視力との関係を すPeters図における5-15才のデータをサンプリ ングして模式的に示す図である。 図4のデータを原点対称として得られる 視力関数を示す図である。 図4に示す5-15才のPeters図を、横軸PE(パ ーエラー)、縦軸AS(非点収差)の座標に変換し た図である。 図6を基に作成した視力関数を示す図で ある。 図7をS-C座標に変換した図である。 図4に示す5-15才のPeters図から、生理的 視のみを取り出して示す図である。 年齢と調節力の関係を示すDuane図を示 図である。 輻輳と調節力との関係を示すDonders図 示す図である。 Donders図を基にして作成した5-15才の爽 領域を示す図である。 Donders図を基にして作成した25-35才の爽 快領域を示す図である。 Donders図を基にして作成した45-55才の爽 快領域を示す図である。 Donders図を基にして作成した75才の爽快 領域を示す図である。 本発明の実施の形態に係る眼鏡レンズ 設計方法のフローチャートを示す図である。 本発明の実施の形態に係る眼鏡レンズ 製造システムの概略構成図である。 本実施形態の眼鏡レンズ製造システム における製造側コンピュータの機能を説明す るための機能ブロック図である。 第1の眼鏡レンズを、年齢10才の場合に ついて、本実施の形態に係る視力関数にて評 価したlogMAR図である。 第1の眼鏡レンズを、年齢30才の場合に ついて、本実施の形態に係る視力関数にて評 価したlogMAR図である。 第1の眼鏡レンズを、年齢50才の場合に ついて、本実施の形態に係る視力関数にて評 価したlogMAR図である。 第1の眼鏡レンズを、年齢75才の場合に ついて、本実施の形態に係る視力関数にて評 価したlogMAR図である。 第2の眼鏡レンズを、年齢10才の場合に ついて、本実施の形態に係る視力関数にて評 価したlogMAR図である。 第2の眼鏡レンズを、年齢30才の場合に ついて、本実施の形態に係る視力関数にて評 価したlogMAR図である。 第2の眼鏡レンズを、年齢50才の場合に ついて、本実施の形態に係る視力関数にて評 価したlogMAR図である。 第2の眼鏡レンズを、年齢75才の場合に ついて、本実施の形態に係る視力関数にて評 価したlogMAR図である。 第3の眼鏡レンズを、年齢10才の場合に ついて、本実施の形態に係る視力関数にて評 価したlogMAR図である。 第3の眼鏡レンズを、年齢30才の場合に ついて、本実施の形態に係る視力関数にて評 価したlogMAR図である。 第3の眼鏡レンズを、年齢50才の場合に ついて、本実施の形態に係る視力関数にて評 価したlogMAR図である。 第3の眼鏡レンズを、年齢75才の場合に ついて、本実施の形態に係る視力関数にて評 価したlogMAR図である。 第4の眼鏡レンズを、遠方で、年齢10才 の場合について、本実施の形態に係る視力関 数にて評価したlogMAR図である。 第4の眼鏡レンズを、遠方で、年齢30才 の場合について、本実施の形態に係る視力関 数にて評価したlogMAR図である。 第4の眼鏡レンズを、遠方で、年齢50才 の場合について、本実施の形態に係る視力関 数にて評価したlogMAR図である。 第4の眼鏡レンズを、遠方で、年齢75才 の場合について、本実施の形態に係る視力関 数にて評価したlogMAR図である。 第4の眼鏡レンズを、近方で、年齢10才 の場合について、本実施の形態に係る視力関 数にて評価したlogMAR図である。 第4の眼鏡レンズを、近方で、年齢30才 の場合について、本実施の形態に係る視力関 数にて評価したlogMAR図である。 第4の眼鏡レンズを、近方で、年齢50才 の場合について、本実施の形態に係る視力関 数にて評価したlogMAR図である。 第4の眼鏡レンズを、近方で、年齢75才 の場合について、本実施の形態に係る視力関 数にて評価したlogMAR図である。 Peters図の形式で示した相対調節力がな い視力関数を示す図である。 Peters図の形式で示した生理的乱視がな く相対調節力がある視力関数を示す図である 。 Peters図の形式で示した生理的乱視があ り相対調節力もある本実施の形態に係る視力 関数を示す図である。 図39の視力関数を使用し設計した従来 形式で表現した非球面係数を示す図である 図40の視力関数を使用し設計した従来 形式で表現した非球面係数を示す図である 図41の視力関数を使用し設計した従来 形式で表現した非球面係数を示す図である 図42に示す非球面係数にて得られたレ ズの視力分布を示す図である。 図43に示す非球面係数にて得られたレ ズの視力分布を示す図である。 図44に示す非球面係数にて得られたレ ズの視力分布を示す図である。

 以下、本発明の実施の形態に係る眼鏡レン 評価方法を説明し、併せて実施の形態に係 眼鏡レンズ設計方法、眼鏡レンズ製造方法 眼鏡レンズ製造システム及び眼鏡レンズを 明する。以下の項目順に説明する。
[1]眼鏡レンズ評価方法
 1:視力関数の全般的説明
 2:調節力0の視力関数の作成
 3:相対調節力の観点からのPeters図の解釈
 4:年齢別のDonders図の作成
 5:視力関数の作成
 (1)爽快領域
 (2)眼鏡レンズ調節効果
 (3)視力関数をレンズ後方頂点で定義してい 点に関する説明
 (4)非点収差ASと視力劣化との関係
 (5)実性相対調節力の生理的乱視
[2]眼鏡レンズ設計方法及び製造方法
[3]眼鏡レンズ製造システム
[4]実施例

[1]眼鏡レンズ評価方法
1:視力関数の全般的説明
 本願発明の実施の形態に係る眼鏡レンズ評 方法は、視力関数を用いてカスタムメイド 眼鏡レンズを評価するものであり、視力関 が、生理的乱視を因子に含むものであり、 ましくは調節力又は相対調節力を因子に含 ものである。より具体的には、本願の視力 数は、例えば、パワーエラー(PE)、非点収差 (AS)、相対調節力(AA)、年齢または相対調節力 変数とする非点収差関数(非点収差に年齢増 加とともに減少する乱視視力(以下、加齢減 乱視視力ともいう)に対応する補正係数(bk)を 乗ずる)を含む関係式により算出し、これら 加えて生理的乱視に対応する補正係数を含 ものである。視力関数の概略は、パワーエ ーと相対調節力との差分(A)を2乗したもの(A 2 )に、年齢又は相対調節力を変数とする非点 差関数(B)を2乗したもの(B 2 )を加算し、この加算値の1/2乗((A 2 +B 2 ) 1/2 )に視力との比例係数を乗じた関数である。

 具体的には、下記の数1の(1)式で表される 視力関数が用いられる。

 但し、(1)式において、αは、視覚機能の1つ ある視力を、主に視覚機能の1つである相対 調節力、光学収差であるパワーエラーPE、非 収差ASに関係づける係数であって、
 0.25≦α≦0.65
の範囲の係数であり、望ましくは0.48±0.03付 の係数である。

 また(1)式の平方根中の第1項は、パワーエラ ーPEを相対調節力AAにより相殺(マイナス)する 項であり、公知の光学収差の1つであるパワ エラー(度数誤差)である。
 AA(PRA,NRA)は、視覚機能の1つである相対調節 を主要な項目とする関数であり、望ましく 生理的乱視の現象を表現する補正項を含ん 関数である。

 平方根中の第2項中のbkは、年齢が若いほど 視方向に視力が上がる現象を表現し、年齢 より増加する係数、または個人差に応じた 対調節力に応じて減少する特徴を持つ補正 数で、
 0.6≦bk≦1.1
である。
 ASは、公知の光学収差の1つである非点収差 あるものとする。

 また、視力を(logMAR)単位で表現した場合、 数点視力、または分数視力との関係は、小 点視力、または分数視力をVとしたとき、以 の公知式
  視力(logMAR単位)=log 10 (1/V)
で定義された関係を持つ。分数視力、小数点 視力及びlogMAR単位で示す視力は下記の表1に す関係となる。

 ここで、眼鏡レンズの評価では、眼鏡レ ズの各点について、周知の光線追跡法を用 て非点収差等の必要な光学性能値を求め、 の光学性能値を上記(1)式で示した視力関数 式に代入して眼鏡レンズの各点における視 関数の値を求める。そして、この視力関数 値から眼鏡レンズの各点の光学性能を評価 ることが一般的に行われている。なお、こ 場合、光線追跡法を行う際に、評価対象た 眼鏡レンズの特定は、その眼鏡レンズの3次 元曲面形状、屈折率、アッベ数、S度数、C度 、乱視角、プリズム度、プリズム角、レン 前傾角、あおり角、PD(両眼の瞳の距離)、明 視する処方距離、VR(眼球回旋点と眼鏡レンズ 後方頂点との距離)その他の情報に基づいて されるものである。

 また、一般に眼鏡レンズの設計方法とし は、何らかの評価関数を用いて最適化計算 行いながら設計する設計方法が知られてい が、本発明の実施の形態に係る眼鏡レンズ 計方法では、この評価関数として上記(1)式 示される視力関数を用いるものである。さ に、本発明の実施の形態に係る眼鏡レンズ 、上記眼鏡レンズ設計方法によって設計さ た眼鏡レンズである。

 なお、上記最適化計算は眼鏡レンズの設計 は周知の技術であるが、本発明の実施の形 を説明する前提として、一応概略的に説明 ておく。
 例えば、単焦点非球面レンズの設計を例に ると、基本的な設計仕様として、レンズの 材に関するデータと処方に関する仕様とが えられる。更に付加的な仕様としてプラス ンズの場合には中心厚といった事項を入れ この仕様と中心厚を満足し、かつ、光学収 ができるだけ少なくなるように、レンズの 面と後面の屈折面形状の組み合わせを計算 より求めていく。この屈折面は、所定の関 で数式化された面として表現されており、 鏡レンズを定義する複数のパラメータから 成される。そのパラメータには、素材の屈 率、レンズ外径、前面及び後面の曲率半径 中心厚、非球面円錐係数、高次非球面係数 がある。これらのパラメータを、レンズ設 目的に応じて固定的なファクターと可変的 ファクターに区分し、可変的ファクターは 数パラメータとして取り扱う。

 そして、光線追跡法や波面追跡法を用い 、この屈折面上での光軸からの距離が異な 複数の評価点をレンズ面に設定し、その評 点における光学的収差を評価関数(メリット 関数)として表す。そして、その評価関数が 小になるように、減衰最小自乗法などの最 化計算の手法を用いて計算する。その際、 記屈折面の可変パラメータを操作しながら 適化のシミュレーションが繰り返し実施さ 、評価関数値が目標とする値になったとこ で、屈折面の最終形状が決定される。本実 の形態に係る眼鏡レンズ設計方法では、上 評価関数(メリット関数)として(1)式を用いて いる。

 なお、本発明の眼鏡レンズ評価方法に用 る視力関数としては、眼球の屈折力エラー 視力との関係を複数の被検者について実測 たデータと、輻輳と調節力との関係につい 複数の被検者について実測したデータと、 齢と調節力に関して複数の被検者について 測したデータと、に基づいて導かれる。以 これら複数の被検者、具体的には数百~千人 を超える多数の被検者について実測したデー タに基づいて上記の視力関数を導く過程を具 体的に説明する。

2:調節力0の視力関数の作成
 上記(1)式は、以下のようにして求めたもの ある。まず、図1~図3に示されるPeters図から 用レンズのための視力関数を求め、次いで この汎用レンズのための視力関数をより一 化することにより、カスタムメイド用レン のための相対調節力を含む視力関数を求め 。なお、ここで、Peters図とは、Petersによっ 、実測された年齢別の視力測定値のデータ グラフにしたものである(”The Relationship Be tween Refractive Error And Visual Acuity At Three Ag e Levels”, the American Journal Of Optometry And A rchives Of American Academy Of Optometry, (1961)pp.194 -198参照)。すなわち、眼球の屈折力エラーと 力との関係を多数の被検者について実測し データによって作成されたグラフである。 の縦軸が非点収差、横軸が球面度数である 視力は分数視力表示である。

 図1~図3に示されるPeters図をみると、これ の図は、レンズの収差(PE(パワーエラー)、AS (非点収差))と、正規化した視力との関係を表 しているものである。したがって、この関係 自体が視力関数となっているということがで きる。そこで、この関係を関数形で表すと、 下記の数2で示す式(2)で表すことができる。

 これをより具体的な関数形で表すために 視力をlogMARで表現すると、下記の数3で示す 式(3)で表すことができる。

 なお、ここで、正規化した視力とは、眼 によって矯正する前の視力を矯正後の視力 除した値である。補正係数bkの説明は後述 る。

 以下、上記(3)式の視力関数の誘導につい より具体的に説明する。図1~図3に示されるP eters図を見ると、年齢別に3つの図に分けられ ている。Peters自身の上記論文では、3つの図 違いについて何も記述してないが、Petersの 文の解説論文としてKleinstein ”Uncorrected Visu al Acuity and Refractive Error” (Optometric Monthly,  Nov. (1981), pp. 31-32にはその差が調節力にあ るとの記述がある。しかし、汎用レンズの設 計要素として調節力を入れるわけにはいかな い。その理由は、設計時にどのような人が眼 鏡レンズを装用するか分からないため、調節 力を想定することができないからである。す なわち汎用レンズの設計では、調節力は0で ければならない。

 そのため、調節力0の図を作成した。簡単に 説明すると、3つの年齢の図から調節力0の図 外挿した。以下、具体的に誘導した方法を べる。まず調節力0の図はどの様な図である かを検討した。3つの図を詳細に観察する。 節力と年齢は密接に関係しているのは、年 ―調節図より判明している。そこで次の傾 が見られる。
a.図の原点より左の図はどの年齢でも変化が ないこと。
b.原点より右の図は年齢とともに左側に近づ ていくこと。
c.図が原点から縦軸(非点収差)に向かって右 傾いていること。またその傾きは平均度数(S 度数+C度数/2)(すなわちC=-2Sの曲線)であること 。

 以上のことを考慮して、Peters図には調節力0 すなわち年齢75才の図はないが、調節力0のPet ers図が仮にあった場合においても図の左側部 分は変化がないと仮定した。すると、乱視が ないS度数軸のマイナス部分の分数視力は、 れをlogMAR単位で表現すると、S度数と比例関 があることが分かった。すなわち、その比 係数をαとすると、下式が成立する。
 S度数軸上の視力(logMAR単位)=α×S度数
 ここで、αは0.25≦α≦0.65の範囲の係数であ 望ましくは0.48±0.03付近の係数である。

 次に、調節力0の図は近似的ではあるが傾 きが(S度数+C度数/2)の楕円曲面となっている とが、容易に想定できる。ここで年齢が増 、調節力が0になった視力関数を、Peters図の( S度数+C度数/2)の線に対称の楕円面と仮定する 。さらに、(S度数+C度数/2)の傾き分の回転座 変換を想定すると、Peters図を以下(4)式で近 表現できる。

 上記(4)式において、比例定数αは上述され 値であり、S,CはそれぞれS度数、C度数である 。bkは、理由はわからないが、視力関数の相 調節力が大きいほど、または、年齢が若い ど乱視方向に視力があがる傾向を表現する 正係数である。
 具体的には、Peters図より読み取って、以下 bkにするとPeters図の乱視上部に近似した視 hが得られる。

  10才:bk=0.738474±0.05
  30才:bk=0.778894±0.05
  50才:bk=0.859321±0.05
 年齢と調節力の関係から75才においてbk=1.00 0.05と仮定する係数であり、数値限定として
 0.6≦bk≦1.1
の範囲となる。

 以上の考察によりPeters図から調節力0、すな わち75才の場合のbkを(4)式に代入した式を誘 した。Peters図はPetersの論文に記載された測 法にて作成された。その意味するところは 図のS、C度数の眼鏡をはずした場合の視力を 測定したものであるから、逆に、正視の人( 常の視力を有する人)が-S度数、-C度数の眼鏡 を掛けた場合に相当する視力を表現している 、ということである。
 すなわち-S度数、-C度数の眼鏡をかけた場合 とは、正視の人が眼鏡レンズを装用した時、 眼鏡の任意の注視線での透過光線の収差とし て-S度数、-C度数の収差があった場合に相当 る。

 ここで-S度数、-C度数の収差を公知の収差の 表現としてPE(パワーエラー)、AS(非点収差、 イナス表現)に変換を試みる。-S度数、-C度数 の収差とは、レンズ各軸の度数として(-S)度 、(-S-C)度数を持つ収差である。さらに当業 の公知の度数変換の手法より、各軸は(-S-C) 数、-S=(-S-C)+C度数となり、(-S-C)度数の乱視C 数のレンズに相当する。すると(PE,AS)と(S,C) は以下の関係が成り立つ。
  PE=-S-C/2
  AS=C

 よって上記数4で示す(4)式に代入して(3)式 が誘導される。この(3)式は、レンズの収差(PE (パワーエラー)、AS(非点収差))と正規化した 節力が0の視力の関係を表現している。上式 解釈は、輻輳角0の視力関数は、Peters図とPE= S+C/2の線で符号が逆転している。しかし(4)式 はS,Cの符号が逆転しても関数形は同一とな ていることに注意したい。言い換えると視 関数はPeter図を表現した式からPE=S+C/2の符号 を変えることにより一義的に得られる。また 逆も成立し、Peters図を表現した関数と視力関 数は数学的には同値関係を持つ。

 以上の変換の様子を模式的に図4~図8に示 。図4においては、上述したPeters図における 5-15才のデータをサンプリングして模式的に す図である。一方、図4のデータを原点対称 した図を図5に示す。すなわち図5はPeters図 原点対称として得られる視力関数である。 して、図4に示す5-15才のPeters図を、横軸PE、 軸ASの座標に変換した図が図6である。図6を 基に作成した視力関数は図7に示す図となる S-C座標に変換すると図8に示す図となる。

 なお、図4に示す5-15才のPeters図から、後 する生理的乱視のみを取り出すと、図9に示 図となる。図4~図9において視力は小数視力 表示する。

3:相対調節力の観点からのPeters図の解釈
 これに対して、本実施の形態に係る眼鏡レ ズ評価方法で用いる視力関数は、レンズを して明視する距離(FU輻輳角で距離を表現す )と、個別の相対調節力(RA)と、眼鏡レンズ 収差(PE(パワーエラー)と、AS(非点収差))と、 要素とした正規化した視力が求められる視 関数である。そこで、これを式で表現する 、

 ここで上記(2)式はPeters図の測定から明ら なように輻輳角FU=0、また、汎用レンズの設 計に使用するため相対調節力RA=0である。こ (5)式は、FU=0、RA=0では(2)式、つまりその具体 式である(3)式になることが要請される。

 以下(2)式の具体式である(3)式の関係と同様 (5)式に対応する具体的な式の求め方を説明 る。まずPeters図については、前記Kleinstein、 ”Uncorrected Visual Acuity and Refractive ErrorA”(1 981)の論文中で、調節力の違いが3つの図の違 の理由と説明されている。しかし、年齢と 節力に関して複数の被検者について実測し データを見ると、調節力の違いとだけでは 明できない。このようなデータとして、Duan eによって作成されたDuane図(例えば、鶴田匡 「光の今昔3 年令・調節曲線の変遷(「視覚 科学」第19巻第3号、1988年12月第101~105頁)」 照)を図10に示す。この図10からわかるように 、調節力の標準値(個別では大きなバラツキ ある)は0才~53.3才までは、一般的に以下の公 式で表現されている。
  調節力=14-0.23×年齢

 なお、年令と調節力に関して複数の被検 について実測したデータとしては、その他 えば、HofstetterによるHofstetter図やLandoltによ Landolt図(それぞれ上記鶴田氏による文献参 )を利用することが可能である。

 調節力が年齢に対し上述の関係であると ると、例えば10才では、調節力は11.7ディオ ター(以下11.7D)である。Peters図の5-15才の図 見ると、乱視がない、すなわち、横軸上で 視(20/20)可能な範囲は図より読み取ると、2.37 5Dしかない。あまりに量が異なりすぎる。

 本発明者は長くその理由を探索してきた そしてついに、Petersの測定法から輻輳がな ことが明らかであることに気づき、その理 を解明した。すなわち、Petersの10才の図に ける2.375Dの部分は、調節力ではなく、注視 が遠点の相対調節力であることを発見した 相対調節力の定義は、注視点の輻輳を保っ まま、明視可能な範囲をディオプターで表 したものである。上述したKleinsteinの説明は 切な修正が必要であったことになる。そこ いままで説明の都合で調節力として説明し きたが、以下調節力と相対調節力を区別し 説明を続ける。その符号について説明する 、調節力がプラスになる時、すなわち眼球 晶体の厚が増す時、調節力はプラスの定義 あり、また業界では同じ状態の時、相対調 力は実性相対調節力と定義され絶対値は同 であるがマイナスで定義される。

 次に、相対調節力の検討から、注視点が遠 (FU=0)で個別の相対調節力の測定値から視力 数を求める。3つのPeters図から年齢と相対調 節力が密接な関係を持つことは明らかである 。そのため、年齢―相対調節力の関係図を調 査したが発見できなかった。そこで、年齢― 相対調節力の関係図は、年齢―調節力図と値 は異なるが、類似した性質を持つものと仮定 した。すなわち、個別では大きなバラツキ、 大数では年齢と強い相関があると仮定した。 具体的には公知の年齢―調節力の関係式とし て以下の式がある。
  年齢<53.3    調節力=14-0.23×年齢
  年齢53.3~75  調節力=6.0-0.08×年齢
  75才以上      調節力=0

 すでに、段落[0040]において、10、30、50才のb k、さらに75才の仮定した補正係数bkを示した そこで年齢と調節力の関係と同様に、53.3才 において直線接続で連続になり、75才で1.00±0 .05になるような挙動をするとの仮定の基で、 bkを以下の式で表現した。下式では説明の都 上75才で1.0にした。
  年齢<53.3    bk=0.8262+0.1129×年齢/53.3
  年齢53.3~75  bk=0.9391+0.0609×(年齢-53.3)/21.7
  75才以上      bk=1

 Peters図から読み取った相対調節力(RA)を年齢 と調節力との関係と同様に53.3才において直 接続で連続になり、75才で0になるような挙 をするとの仮定の下で、以下の式で表現し 。Peters図における相対調節力は、後述する 性相対調節力に絶対値は等しい。実性相対 節力の定義上、符号は負とした。
  年齢<53.3    実性相対調節力=年齢/40-2. 625
  年齢53.3~75  実性相対調節力=1.2925×(年齢-7 5)/21.7
  75才以上      実性相対調節力=0

 よって相対調節力(RA)は個々人では大きな ばらつきはあるが、平均化すると年齢(Age)の 数となり、(5)式はこの場合下記の数6で示す (6)式となる。

 すなわち、遠方視(注視点が遠点(FU=0))で Peters図は、年齢が決まると相対調節力が決 る、年齢に関して連続な関数として表現可 である。具体化するには、3つの図から相対 節力を因子とする補間関数を求める必要が る。説明の都合上遠方視(注視点が遠点(FU=0) )の具体的な視力関数を求める前に、レンズ 通して明視する任意の距離(FU)における視力 数の求め方を説明する。

4:年齢別のDonders図の作成
 先ず、輻湊と調節力との関係について複数 被検者について実測したデータを用意する このデータとして、Dondersによって考案され 、畑田豊彦氏によって作成されたDonders図が 用可能である。図11に示されるDonders図は当 者においては、公知の図である。図11におい て、横軸が注視点までの距離(単位;cm:輻輳角 単位であり、眼球から注視点までの距離で 輳角を表す)、縦軸は調節量(単位;ディオプ ー)の調節可能な範囲を示した図である。図 では、注視点が、原点を通る45度の直線であ Donders線と呼称される直線にて表現され、ま た、注視点から輻輳を変化させないで明視可 能な範囲をDonders曲線と呼称される2本の曲線( 図11においてはDonders上曲線及びDonders下曲線 して示す)によって挟まれる領域として示さ ている。

 横軸一定、すなわち、輻輳一定で、Donders線 から上のDonders曲線までの長さを、実性相対 節力(PRA:定義はマイナス量)、下は、虚性相 調節力(NRA:定義はプラス量)と定義されてい 。式で表現すると
  PRA=Donders線-Donders上曲線
  NRA=Donders線-Donders下曲線

 このDonders図において輻輳角0、すなわち 横軸の原点は、調節0であり、Donders線に乗っ ている。原点における実性相対調節力(PRA)は 定義から、上述のPeters図の相対調節力と同 ものである。図より、約-2Dと読み取れる。 述するが、Dondes図の相対調節力とPeters図の 対調節力は定量的には定義した基準位置が なる。しかし、相互に変換可能な量である で、同じ相対調節力としておく。図11のDonde rs図は残念ながら、年齢別の図でもなく、ま 相対調節力の違いを表現していない。また 齢別のDonders図を調査したが発見できなかっ た。

 そのため、年齢別のDonders図を次のように 作成する。上述のDonders図からは、段落[0061] も記述したが、原点の実性相対調節力は約-2 Dと読み取れる。すると、年齢-実性相対調節 の関係は、Peters図(輻輳角0)から下式のよう なることは段落[0055]ですでに示した。

  年齢<53.3    実性相対調節力=年齢/40-2. 625
  年齢53.3~75  実性相対調節力=1.2925×(年齢 75)/21.7
  75才以上      実性相対調節力=0

 上記実性相対調節力を表す式における実性 対調節力の値として、-2Dを代入すると、年 は約25才となる。したがって、Donders図は、2 5才の相対調節力を持った人の測定値を元に 成されたことが推定される。そこで25才のDon ders図を基準に、年齢別のDonders図を作成する すなわちDonders図より任意の輻輳角の実性相 対調節力を読み取り、次のイ及びロを仮定す る。
ア.任意の年齢の関数でもある任意の輻輳角 相対調節力は、年齢比と任意の輻輳角の相 調節力の掛け算であること。
イ.年齢比は、Donders図から読み取った実性相 調節力とPeters図から読み取った実性相対調 力の比であること。
 具体的な式では下記の数7となる。

 すると上式は、下記の数8に示す式となる 。

 さらに、補正量としては、微小であるが Peters図とDonders図の相対調節力の基準位置の 違いの補正を行う。Peters図の基準位置は、S 数、C度数の基準位置と同じくレンズ後方頂 である。Donders図の基準位置は眼球回旋点で ある。そこでPeters図の実性相対調節力をDonder s図の基準位置に合わせる補正を行う。LVRを 眼鏡後方頂点から眼球回旋点の距離>0とす ると年齢比は下記数9で示す式で表される。

 年齢比を使用し、任意の年齢で任意の輻輳 の相対調節力を求めると下式となる。
  任意の年齢で任意の輻輳角の実性相対調 力=年齢比×任意の輻輳角の実性相対調節力
  任意の年齢で任意の輻輳角の虚性相対調 力=年齢比×任意の輻輳角の虚性相対調節力

 輻輳角が0か小さい場合、眼球から注視点ま での距離に対してLVRは小さいので、補正はわ ずかである。しかし輻輳角が2とか10くらいに なると、上記補正は有効になる。なお、この 場合、年齢別Donders曲線の上端は、
  年齢<53.3    調節力=14-0.23×年齢
  年齢53.3~75  調節力=6.0-0.08×年齢
  75才以上      調節力=0
で制限される。すなわち、75才の正視の人のD onders図は調節力から上端が0、相対調節力0、 なわち、ほぼ原点のみ明視可能ということ なる。ほぼとは、焦点深度等が他の要素と るためその要素を考慮すると0ではない。

5:視力関数の作成
 以上説明した調節力0の視力関数と年齢別Don ders図とを利用して、上述した式(1)を作成す 。相対調節力が0のときは、式(3)になる要請 あるため、式(3)に類似した式となる。まず 眼鏡レンズより発生する収差、すなわちパ ーエラーPEと非点収差ASのうち、生体側の相 対調節力により相殺可能な収差はパワーエラ ーPEであり、非点収差は相殺できない。そこ (3)式中のPEを相対調節力によりパワーエラ が増減可能になるよう式(3)のPEの項を相対調 節力の関数AAを使用する(PE-AA)の形とした。具 体的には下記の数10で示す(1d)式となる。

 段落[0043]で説明したように、視力関数とP eters図とは、PE=0のところで反転した同型の関 係にある。そこでPEで反転した視力関数がPete rs図になるように、相対調節力の関数AAを適 な形に定義することによって視力関数を作 できる。

 ここの説明での視力関数の性質をまとめる 2つある。
(i)実性相対調節力、および虚性相対調節力が 0になると、(3)式になること。
(ii)相対調節力の関数AAを適当な形に定義する ことによって輻輳角0における、年齢10、30、5 0才のPeters図とPEで反転した視力関数と一致す ること。

 なお、視力関数は上記数10で示す(1d)式で される関数形に限ったものではない。下記 数11、数12で示す(1e)式、(1f)式のように簡単 誘導にて変形可能である。しかし、相対調 力を含む関数であることには変わりがない

 さらに、具体的な相対調節力AAの関数形を める。パワーエラーPEの範囲を3つの領域に 割し、それぞれにAAの形を求める。
1の領域:有効実性相対調節力(PRAeとする)以下
    AA=有効実性相対調節力
2の領域:有効実性相対調節力以上であり有効 性相対調節力(NRAeとする)以下
    AA=PE
3の領域:有効虚性相対調節力以上
    AA=有効虚性相対調節力

 ここで2の領域は、眼鏡レンズにより発生 したパワーエラーPEを相対調節力により相殺 能な範囲である。補足説明すると有効実性 対調節力、有効虚性相対調節力が0の場合、 どの領域もAA=0となる。ここで上記の1~3の領 を決めるAAが有効実性相対調節力と有効虚性 相対調節力である場合と、単に実性相対調節 力と虚性相対調節力である場合との視力関数 の違いを生理的乱視の現象と定義する。上記 範囲での有効実性相対調節力、有効虚相相対 調節力における生理的乱視現象を表現する「 有効」を以下説明する。

 以下、次の項目について順次説明する。
(1)爽快領域
(2)眼鏡レンズ調節効果
(3)視力関数をレンズ後方頂点で定義している 点に関する説明
(4)非点収差ASと視力劣化との関係
(5)実性相対調節力の生理的乱視

(1)爽快領域
 輻輳角一定(FU)の元で、Donders線から上下のDo nders曲線までの相対調節力は、調節限界値の 定であり、限界値付近は不快感、眼性疲労 生じることが知られている。その許容範囲 人により、また同一人でも体調により大き 異なることが知られている。しかし、短時 呈示の輻輳限界の範囲であれば設計に適し いる。ここで、短時間呈示の輻輳限界とは 指標を短時間(0.05~0.7秒の範囲)呈示した時、 相対調節可能、または相対輻輳可能範囲をい う(畑田豊彦著 NHK放送科学基礎研究所 昭和4 9年4月23日発行 視覚情報研究会 資料5-3号  5頁参照)。

 短時間呈示の輻輳限界は、相対調節力の2 /3程度である。また、相対調節力(ここではDon ders上曲線とDonders下曲線の領域)の1/3程度以内 が爽快領域(Area of Comfort、別名:Percival領域) 呼ばれ、さらに設計に適している。設計に この爽快領域を使用する。この2/3から1/3を 快領域係数とし、前述の実性相対調節力、 び虚性相対調節力に掛けることで補正する なお、ここで、相対調節力の1/3程度以内で る爽快領域とは、前記2本のDonders曲線によっ て挟まれる領域内にある領域であって、挟ま れる領域の中心領域1/3以内の領域内、また望 ましくはDonders線を中心として前記Donders曲線 挟まれる領域の1/3以内の領域である。更に 挟まれる領域の中心領域1/4以内の領域内、 り望ましくはDonders線を中心として前記Donder s曲線で挟まれる領域の1/4以内の領域として よい。より具体的には、以下の領域をいう

 すなわち、図11において、縦軸に平行な 意の直線が、Donders線に交わる点をd0、Donders 曲線と交わる点をd1、Donders下曲線と交わる をd2、とそれぞれする。そのとき、d0とd1と 結ぶ線分d0d1上で、d0からd1に向かってd0d1/3 れた点をd11とし、d0とd2とを結ぶ線分d0d2上で 、d0からd2に向かってd0d2/3離れた点をd12と、 れぞれしたとき、点d11が描く曲線と、点d12 描く曲線とによって挟まれる領域のことを う。

 上述した年齢別のDonders図における爽快領 域を示すと、図12~図15に示すようになる。図1 2においては、5-15才の人の爽快領域、図13に いては、25-35才の人の爽快領域、図14におい は45-55才の人の爽快領域、図15においては75 の人の爽快領域を示す。この例では、相対 節力の1/3以内を爽快領域とする場合を示す 上述したように75才の正視の人は、調節力 ら上端が0、相対調節力0、すなわち、ほぼ原 点のみ明視可能ということになる。

(2)眼鏡レンズ調節効果
 以上の相対調節力の説明は裸眼時の説明で り、眼鏡装用により、調節の効果が裸眼に 較して変化する公知の効果「眼鏡レンズの 節効果」が補正として必要である。その補 量を、眼鏡レンズの調節効果の補正係数と る。LVRを、眼鏡後方頂点から眼球回旋点の 離>0とし、眼鏡レンズの度数を、Doav(S度 、またはS+C度数、または平均度数S+C/2)とす と、補正係数は下記の数13に示す式(8)で表さ れる。

 この補正係数を前述の実性相対調節力、お び虚性相対調節力に掛けることで補正する

(3)視力関数をレンズ後方頂点で定義している 点に関する説明
 視力関数はレンズ後方頂点で定義している め、その説明が必要であり、また、それに って基準位置の補正を行うことが必要にな ので、それらの説明をする。説明に入る前 相対調節力のここまでの補正等すなわち、 齢比、爽快領域係数、眼鏡レンズの調節効 の補正係数をまとめるため相対調節力を補 相対調節力とする。補正実性相対調節力(PRA d)と補正虚性相対調節力(HNRAd)は下式になる。

 補正実性相対調節力(PRAd)=年齢比×爽快領域 数×眼鏡レンズの調節効果の補正係数×PRA・ ・・(9)
 補正虚性相対調節力(NRAd)=年齢比×爽快領域 数×眼鏡レンズの調節効果の補正係数×NRA・ ・・(10)

 この補正相対調節力は、基準位置である 球回旋点で定義されているため、視力関数 基準位置である眼鏡レンズ後方頂点に基準 置を換算する。換算した相対調節力を有効 対調節力とする。有効実性相対調節力(PRAe) 有効虚性相対調節力(NRAe)は下記の数14及び 15で示す(11)式及び(12)式になる。

 有効実性相対調節力(PRAe)と有効虚性相対 節力(NRAe)を使用しAAの関数を求める。以上 説明により視力関数(1)式の関数形が得られ ことがわかる。

(4)非点収差ASと視力劣化との関係
 非点収差ASが大きくなると視力劣化を補正 る。以降の補正は視力関数をPeters図にさら 合致するために行う。具体的に説明すると パワーエラーPEで符号が逆転した視力関数を 、縦軸C度数、横軸S度数表示で、さらにまた 力関数はlogMAR単位のため、小数点視力で変 し、Peters図と比較した。実施例等での視力 数はすべてその表示である。ここで、比較 た結果Peters図にさらに合致する目的で補正 数ckを導入する。非点収差ASが大きいほど視 力が劣化する傾向を表現する補正係数とする 。はじめに計算中間値をc0とする。ここで、b kは段落[0040]で説明した視力関数の非点収差AS にかかる年齢の関数である。c0は下記の数1で 示す(13)式で表される。

 ckは次式で表す。
 絶対値c0より絶対値ASが小さく、またASが負 とき、下記の数17で示す(14)式で表される。

 その他の領域のときは、
  ck=0  ・・・(15)
となる。このckは、有効実性相対調節力(PRAe) 有効虚性相対調節力(NRAe)に掛けることで補 する。このckは、Peters図の左側部分、すな ち相対調節力がわずか(0.3D以下)でも働いて ることから調節力の依存性は少なく、単に 点収差ASに依存した性質を持っている。その ため生理的乱視現象のような光学的に奇妙な 現象とは区別する。また相対調節力がない場 合、以下(19)(20)式でわかるように、ckは0と同 である。

(5)実性相対調節力の生理的乱視
 次に、実性相対調節力の生理的乱視の補正 説明する。ckpを生理的乱視(すなわち実性相 対調節力以下の領域でわずかな乱視がある方 が、視力が良い現象。原因はわかっていない 。)を説明する補正係数とする。前述の図9はP eters図(5-15才)においてこの生理的乱視現象を 出したものである。この図9からわかるよう に、約-0.75Dで視力がよくなっている。生理的 乱視現象を説明する代表値として、生理的乱 視現象により、この特異に視力が良い非点収 差値(約-0.75D)を導入する。計算中間値をc1と る。c1は下記の数18で示す(16)式で表される。

 なお、c1は、年齢に応じ0~1.2の範囲とする。
 この計算中間値c1を使い、非点収差ASの絶対 値が生理的乱視の絶対値より大きく、かつ非 点収差ASの絶対値がc0より小さいときのckpを める。下記の数19で示す(17)式となる。

 また、逆に、絶対値が小さく、かつ非点 差ASが負の場合を求める。下記の数20で示す (18)式となる。

 その他の領域ではckp=0とする。
 このckpをckに加え、有効実性相対調節力(PRAe )を掛けた値を求める関数AAとする。同様に虚 性相対調節力側でckpに対応するckmは、Peters図 では遠方視の場合虚性相対調節力が非常に小 さい値(0.3D以下)のためと理解できるが、単に ckmは0となる。同じくckmにckを加え有効虚性相 対調節力を掛けた値を関数AAとする。
  AA=(ck+ckp)×PRAe・・・(19)
  AA=(ck+ckm)×NRAe・・・(20)
 PRAe、NRAeの係数の数値限定としてck+ckpは、 表値(約-0.75D)で最大となる特徴を持ち、0~2.2 範囲、ckは0~1の範囲である。以上により段 番号[0054]から簡単に誘導できるよう年齢の 数である実性相対調節力(PRA)、有効虚性相対 調節力(NRA)の関数として関数AAが求まった。(1 d)式のAAと置換すると上記数1で示す(1)式とな 。

 また(1)式中のAA、bkは年齢の関数に限定され るものではない。相対調節力(RA)は個々人で 大きなばらつきはあるが、平均化すると年 (Age)の関数であるため、個々人の個別設計を 行うには、実性相対調節力(PRA)及び虚性相対 節力(NRA)を実測し(1)式にて設計するほうが より適切な設計となる。具体的には、ck,ckp,c kmをPRA,NRAの関数として求めればよい。ck、ckp ckm等は年齢の関数のため簡単な計算により 齢を消去すれば(1)式は、年齢とは独立なPRA, NRAの関数を得ることが出来る。具体的にはbk 以下の式となる。
 bk=1-0.07×(PRAの絶対値とNRAの絶対値の大きい )
 このbkと上記式(13)及び式(14)によりc0、ckを る。

 また実性相対調節力側のC1は、年齢別に 記の数21で示す各式で表される。

 c1の数値限定としては、実性相対調節力、 性相対調節力に応じて0~1.2の範囲である。
 また虚性相対調節力側は同様であり、また 下ckp、ckmの計算も同様である。
 よって年齢ではなく、PRA,NRAによる関数AA、 らに(1)式を得る。
 以上より生理的乱視を含む、より適切な個 設計のための視力関数を得た。

 なお、以上の例においては、相対調節力 び年齢を用いて生理的乱視を表わす補正係 を導出したが、生理的乱視を表わす補正係 を導出する方法はこの例に限定されるもの はなく、例えば上述のPeters図における測定 法と同様の測定方法により、直接的に生理 乱視を測定し、この測定値から補正係数を 出することも可能である。

[2]眼鏡レンズ設計方法及び製造方法
 次に、本発明による眼鏡レンズ設計方法の 施の形態について説明する。本実施の形態 係る眼鏡レンズ設計方法は、生理的乱視を 子に含む視力関数を評価関数として用いて 適化計算を行うステップを含む。具体的に 、例えば図16に本形態の眼鏡レンズ設計方 のフローチャートを示すように、先ず、下 の情報を入力する(ステップS1)。

a.レンズの素材に関するデータ
 具体的には、眼鏡レンズの3次元的形状、屈 折率、アッベ数等である。
b.処方に関する使用に基づく形状データ
 処方度数としてS度数、C度数、乱視角、プ ズム度、プリズム角、また明視する処方距 等である。
c.中心厚
 プラスレンズの場合入力する。
d.眼や顔の形状に関するデータ
 具体的には、レンズ前傾角、あおり角、PD( 眼の瞳の距離)、VR(眼球回旋点と眼鏡レンズ 後方頂点との距離)等である。
e.調節力及び相対調節力測定値
f.年齢、及び年齢によって決まる補正係数(ck ckp、ckm等)

 そして、これらの情報を上記(1)式に代入し 視力関数を計算する(ステップS2)。具体的に は、眼鏡レンズの各評価点について、周知の 光線追跡法等を用いて非点収差等の必要な光 学性能値を求め、その値を上記(21)式の視力 数に代入する。視力関数はlogMARの単位で表 し、すなわち小数視力での1.0(正視)はlogMAR単 位で0.0となる。
 次に、計算した視力関数すなわち評価関数 値が最小となるように減衰最小自乗法等の 適化計算を行う。具体的には、例えば予め 定した閾値以下であるかを判断する(ステッ プS3)。
 ここで、視力関数の値が閾値以下ではない 合(ステップS3のNoの場合)は、光学的収差を 正するように形状データ、具体的には屈折 の可変パラメータ等を補正する(ステップS4) 。
 視力関数の値が閾値以下である場合(ステッ プS3のYesの場合)は、レンズ全面の評価が終了 したかどうかを判断する(ステップS5)。

 レンズ全面での評価を終了しておらず、他 評価点の計算が残っている場合(ステップS5 Noの場合)は、ステップS1に戻り、レンズの の位置での光学性能値を入力する。
 予め定めておいた全ての評価点における評 を終了した場合(ステップS5のYesの場合)は、 評価を終了し、レンズ全面の光学設計値を決 定する(ステップS6)。

 以上のステップにより、本実施の形態に係 眼鏡レンズ設計方法が終了する。
 なお、ステップS1において入力する情報は 記の情報に限定されるものではなく、その の情報を入力して視力関数の計算に加味す ことも可能である。
 また、決定した光学設計値に基づいてレン を加工することによって、眼鏡レンズが製 される。このとき、メーカー独自の形状パ メータや、又は工場(製造装置)によって定 られた補正係数等の形状パラメータを加味 てもよいことはもちろんである。

 そして、この後、決定した光学設計値に づいてレンズの表面の裏面を加工すること よって、眼鏡レンズを製造することができ 。

[3]眼鏡レンズ製造システム
 次に、本発明による眼鏡レンズ製造システ の一実施の形態について説明する。図17は 実施の形態に係る眼鏡レンズ製造システム 概略構成図である。
 図17に示すように、このシステム10では、眼 鏡店100側に、眼鏡レンズ注文者の視力や調節 力、また相対調節力を測定する測定装置101と 、測定装置によって測定された値を含む各種 の情報を入力し、眼鏡レンズの発注に必要な 処理を行う機能を有する発注側コンピュータ 102とを有する。

 一方、受注側である例えばレンズメーカ2 00には、この発注側コンピュータ102から出力 れる情報を受信するために、インターネッ 等の通信回線300に接続された製造側コンピ ータ201が設けられる。この製造側コンピュ タ201は、眼鏡レンズの受注に必要な処理を う機能を有すると共に、図16で説明したよ な眼鏡レンズ設計方法を行う機能を持って る。すなわち、発注側コンピュータ102から 注される、眼鏡レンズの設計に必要な情報 は、生理的乱視を表わす因子を含む情報、 体的には例えば相対調節力の測定値や年齢 含まれる。また、生理的乱視を直接測定す 場合はその測定値が含まれる。そして製造 コンピュータ201は、生理的乱視を表わす因 を含む視力関数を評価関数として用いて最 化計算を行って、光学設計値を決定すると もに、この光学設計値に基づいて眼鏡レン を製造するための製造情報をレンズ加工装 202に出力する。

 なお、製造側コンピュータ201に入力され 情報は、上述したように図16のステップS1に 示される情報に限定されるものではなく、そ の他の情報を入力して視力関数の計算に加味 することも可能である。また、決定した光学 設計値に基づいてレンズを加工することによ って眼鏡レンズが製造されるわけであるが、 このとき、メーカー独自の形状パラメータや 、工場(製造装置)によって定められた補正係 等の形状パラメータを加味してもよいこと もちろんである

 図18は、本実施形態の眼鏡レンズ製造シス ムの核となる製造側コンピュータ201の機能 説明するための機能ブロック図である。
 図18に示すように、製造側コンピュータ201 、発注側コンピュータ102から送信される各 データを入力するデータ入力部203と、この 力データに基づいて視力関数を計算する視 関数計算部204と、この視力関数を評価関数 してその最適化を計算する評価関数最適化 205と、この視力関数の値を所定の閾値と比 する視力関数評価部206を備える。更に、視 関数評価部206において評価した結果、光学 能の修正が必要な場合に設計データ、例え レンズ形状データを修正する設計データ修 部207と、各評価点の評価を終了したときに 学設計値を決定する光学設計値決定部208と この光学設計値に基づく設計データをレン 加工装置202に出力する設計データ出力部209 備えている。

 図17に示される眼鏡店100の測定装置101は、 鏡レンズ注文者の視力や調節力、また相対 節力を測定し、これを発注側コンピュータ10 2で所定の処理を加えて、通信回線300を介し レンズメーカ200に送る。
 レンズメーカ200のコンピュータ201(製造側コ ンピュータ)は、データ入力部203で受信した レンズの素材に関するデータや仕様に基づ 形状データ、目や顔の形状に関するデータ 入力するとともに相対調整力の測定値等を 力する。

 そして、視力関数計算部204で、入力デー を視力関数の式(21)に代入して、視力関数を 計算する。視力関数が計算されると、評価関 数最適化部205で、今度は計算した視力関数を 評価関数として、眼鏡レンズの各評価点につ いて、非点収差等の必要な光学性能値が求め られ、この評価関数から各評価点における最 適な光学性能値が求められる。この最適化の 計算は、減衰最小自乗法等によって行われる 。

 次に、視力関数評価部206において、視力 数計算部204で計算した視力関数の値が予め 定した閾値と比較される。この視力関数評 部206の比較結果に基づいて、すなわち、視 関数の値が予め設定した値に達しない場合 は、設計データ修正部207で、所望の視力値 得られるように、眼鏡レンズの設計データ 修正される。光学設計値決定部208で、各評 点の光学設計値が決定される。そして、予 定めておいた全ての評価点における評価が 了した段階で、決定されたレンズ全面の光 設計値が、設計データ出力部209から、図17 示されるレンズ加工装置202に送られる。

 レンズ加工装置202としては、レンズの前 又は後面、或いは両面の曲率を入力データ 基づいて、例えば自動的にレンズを切削、 磨加工を行う通常の眼鏡レンズ製造装置が 用される。レンズ加工装置202は、眼鏡レン 製造装置として周知の装置であるから、そ 装置の具体的な説明は省略する。

[4]実施例
 次に、上記実施の形態に係る眼鏡レンズ評 方法で評価した場合と、従来の眼鏡レンズ 価方法(すなわち相対調節力を考慮しない評 価方法)で評価した場合とを比較する。次の 序で説明する。
1:実施例1
 第1の眼鏡レンズ(調節力を考慮しないで設 した例)の評価
2:実施例2
 第2の眼鏡レンズ(凹面のみを本実施の形態 眼鏡レンズ設計方法により設計した例)の評
3:実施例3
 第3の眼鏡レンズ(凹面のみを本実施の形態 眼鏡レンズ設計方法で設計した例で、対象 体は輻輳角FU=2.5(眼前約40cm)の近用レンズ)の 価
4:実施例4
 第4の眼鏡レンズ(累進レンズ処方値、S度数0 .00、C度数0.00、加入度2.0の累進レンズ)の評価

1:実施例1
 まず、従来の相対調節力を考慮してない視 関数(すなわち、本実施形態に係る視力関数 における年齢75才以上の視力関数)によって設 計した両面非球面の第1の眼鏡レンズを、本 施の形態に係る相対調節力を含んだ視力関 にて評価した。年齢別に10、30、50、75才の+6. 00DのlogMAR図をそれぞれ、評価10、評価30、評 50及び評価75として、それぞれ図19、図20、図 21及び図22に示した。なお、これらの図及び 述する図23~図38において、縦軸は水平方向の 眼球回旋角度、横軸は垂直方向の眼球回旋角 度であり、図の円形内に区切り線で示された 領域に付与された数値は、本実施例による視 力関数の値(logMAR表示であり、0.0が正視)を示 ものである。

 なお、上記両面非球面レンズのその他の主 設計パラメータは下記の通りである。
 VR(眼球回旋点と眼鏡レンズ後方頂点との距 )=27
 輻輳角FU=0
 屈折率1.67
 アッベ数32

 まず、図22に示す75才の評価75の評価は、7 5才以上は相対調節力がないので、従来の評 と同じである。年齢が若くなるほど視野も くなっているが、わずかである。ここでは あたりまえのことだが同一のレンズでも、 価関数が異なると、レンズ性能が異なるこ を強調したい。

2:実施例2
 次に、上述の第1の眼鏡レンズについて、比 較を容易にするため、凸面は従来のままで同 一にし、凹面のみを本実施の形態に係る視力 関数を用いて最適化を行い、+6.00Dの第2の眼 レンズを、10、30、50、75才で設計した。その 結果をそれぞれ、設計10、設計30、設計50、設 計75として、それぞれ図23、図24、図25及び図2 6に示す。やはり、図26に示す設計75は第1のレ ンズの評価75と同一であった。図23~図25に示 設計10、設計30及び設計50で気付くのは、評 10~評価50と大きく異なり、単焦点レンズでは 、珍しいことだが、視力の観点から大きく改 善されていることである。また同時に大きく 影響される点から、相対調節力は個人差が大 きいため、個別に実測する必要があり、単に 年齢のみからの推定値では最適化の観点から 不十分なことが理解できる。このことからも 、本実施の形態に係る眼鏡レンズ評価方法、 眼鏡レンズ設計方法が、カスタムメイドの個 別眼鏡レンズの評価、設計の目的を満たして いることが、理解できる。

3:実施例3
 次に、凸面は従来のままで同一にし、凹面 みを本実施の形態に係る視力関数を用いて 適化を行った。この例では、対象物体は輻 角FU=2.5(眼前約40cm)の近用レンズ、+6.00Dの眼 レンズである。相対調節力の目安として、1 0、30、50、75才での設計結果の例を、近設計10 、近設計30、近設計50、近設計75として、それ ぞれ図27、図28、図29及び図30に示す。上記第1 、第2のレンズの場合のいわば評価しただけ 結果と異なり、視力の観点から視野の広い 善がなされている。また、上記第2のレンズ 異なり、75才において視力が異なることに 意したい。

 視力の点のみから同一の年齢を比較すると
 第3の眼鏡レンズ>第2の眼鏡レンズ>第1 眼鏡レンズ
となる。同一の年齢で第3の眼鏡レンズと第2 眼鏡レンズとの違いはわずかで、同じレン を使用しても不都合はないと誤解するかも れない。視力の観点からは同じでも、設計 件が近用レンズ輻輳角FU=2.5、第2のレンズは 輻輳角FU=0と異なるため、異なったレンズで ることに注意がいる。そのため、凸面は同 としたが、凹面のカーブは中心では0.01程度 か異ならないが、周辺に向かってのカーブ 化が大きく異なり、第2のレンズと第3のレ ズとは異なるレンズであることが理解でき 。

4:実施例4
 次に、累進レンズ処方値、S度数0.00、C度数0 .00、加入度2.0の第4の眼鏡レンズの評価を行 た。遠方物体輻輳角FU=0、近方物体輻輳角FU=2 .0で、10、30、50、75才、屈折力等の条件はお じである。その例を遠方で、評価累進遠10、 評価累進遠30、評価累進遠50、評価累進遠75と してそれぞれ図31、図32、図33及び図34に示す また、近方で評価累進近10、評価累進近30、 評価累進近50、評価累進近75として、それぞ 図35、図36、図37及び図38に示す。短時間での 比較では、遠方では同じ、近方ではひどく異 なる印象である。良く図を観察すると、遠方 では、年齢が若い、すなわち相対調節力が大 きいほど、視力の観点からわずかに視野が広 いところが見受けられる。しかしこの程度の 図なら、通常の累進比較の平均度数分布に似 た図である。しかし、近方では、これは同じ レンズの評価かとは考えられないほどの評価 の違いを見せる。図を見慣れていないと、解 釈すら難しい。

 そこで、簡単に説明する。視力関数の遠 視輻輳角FU=0では、相対調節力のうち調節力 が増加する方向であり、実性相対調節力はあ るが、逆に調節力を減少させる、すなわち虚 性相対調節力はないに等しい。そのため、累 進遠方では、調節力を増加することにより、 視力を増加する範囲が大変少ないといえる。 逆にいうと相対調節力にしても調節力にして も、増加能力が豊富なら累進レンズは必要が ないという理屈となる。次に、近方視では、 今度は実性、虚性とも年齢が若い、すなわち 相対調節力が大きい人ほど、瞬間的に相対調 節力を増加、減少可能な範囲が大きいため、 眼鏡レンズのその調節により視力が出る部分 が大きい。

 よって75才では視力の出る範囲が、前述 図15に示すように、図の上で点ほど小さいが 、10才が装用する場合、図12に示すように、 性相対調節力が大きく、本実施の形態にお る爽快領域(瞬間的に調節可能な領域)が大き く、すなわち累進レンズの調節を緩めること により視力を得る部分が大きくなるので、殆 どの累進部分で視力が出て、広視野となるわ けである。以上が近方で全く異なる図となる 理由である。

 なお、生理的乱視が視力に大きく効いて ると考えられる。累進レンズは、単焦点レ ズと異なり、相対調節力以外に、調節力に 対応しているため設計改善は複雑である。 かし上述の第1の眼鏡レンズの評価において 、相対調節力の違いで評価が異なる場合、実 施例2、実施例3のように、大きく視力の観点 ら改善できる。同様に原理的に本特許を使 して累進レンズの主に近用部であるが改善 能である。

 このような生理的乱視の効果の有無につい 簡単に記述する。まず図39、図40、図41でそ ぞれPeters図の形式で、従来の視力関数すな ち相対調節力がない視力関数、生理的乱視 なく相対調節力がある視力関数、生理的乱 があり相対調節力もある本発明の視力関数( それぞれ小数視力で表示)である。
 図から明白であるが図39と図40では相対調節 力により図40は横軸に沿って大きく視力ので 範囲が広がっている。次に図40と図41の比較 であるが、図40の横軸+3.00D付近から縦軸-0.75D 横軸に沿ってさらに大きく視力の出る範囲 広がっていることが明白である。現象の理 は進んでないがこの部分を生理的乱視現象 定義したのは前述のとおりであり、本発明 趣旨である。以上視力の出る範囲が広いほ 設計の自由度は広がり、より適切なすなわ 光学計算では最適化によりより視力のでる 計範囲が広いレンズが設計可能となること 周知の通りである。

 そこで屈折率1.76、径70、度数+6.00Dを、図39 図40、図41の視力関数をそれぞれ使用し設計 た場合、従来の形式(国際公開WO2002/088828、 際公開WO2004/018988)で表現した非球面係数を図 42、図43、図44として得た。
 またその非球面係数にて得られたレンズの 力分布(logMAR表示)をそれぞれ図45、図46、図4 7として示す。図45~47において、横軸は任意の 方向における眼球回旋角を示す。図45~図47か 明白であるが、視力の出る順に、すなわち 45より図46、図46より図47に示す例のほうが 正視(logMAR表示で0.0)に近い範囲が広がってい ることがわかる。
 以上の例から、相対調節力を表す因子、さ に生理的乱視を表す因子が視力関数に用い れることによって、視力を向上させる領域 広げることが可能となる効果が得られるこ が明らかである。

 ところで上述の実施の形態はカスタムメ ドの眼鏡レンズを主として対象としている 、相対調節力および/または生理的乱視を平 均屈折力や乱視屈折力等と同様に取り扱い、 各相対調節力に対応した眼鏡レンズを予めス トックしておき受注に応じてピックアップす ることも好適である。

 この場合、ストックするためのレンズ種 の分類は年齢に応じた生理的乱視の平均値 用いることが好ましい。例えば年齢に応じ 4種類のレンズを用意する。分類は10~20才、2 1~40才、41~59才、さらに60~75才用の4分類とし、 各年齢帯それぞれの平均的な生理的乱視に対 応したレンズをストックする。受注時の処方 は年齢または相対調節力を含み、サプライヤ ーは処方に対応したレンズをストックよりピ ックアップしてユーザーに納品する。但し生 理的乱視または相対調節力には個人差がある ので可能であればユーザーの生理的乱視また は相対調節力を特定し、ユーザーの年齢に関 わらず他の年齢帯からピックアップしてもよ い。

 このように、各年齢帯に応じた生理的乱 を因子に含む視力関数を用いて評価・設計 て製造したレンズをストックしておくこと 、より短期間でユーザーにレンズを納品す ことが可能となるという利点を有する。

 本発明は、眼鏡レンズの光学性能の評価 設計・製造に広く利用することができる。