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Title:
STABLE BICARBONATE ION-CONTAINING DRUG SOLUTION
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/044919
Kind Code:
A1
Abstract:
The invention relates to a stable bicarbonate ion-containing drug solution, particularly a bicarbonate-containing drug solution for dialysis in which the stability has been improved by the presence of a phosphate ion. Further, the invention relates to a drug solution for acute blood purification, particularly a dialysate and a substitution liquid for acute blood purification to be mixed before use containing the drug solution. Still further, the invention relates to a dialysate and a substitution liquid for acute blood purification to be mixed before use in which the formation of insoluble fine particles or precipitates is prevented for a long time after mixing and with which hypokalemia and hypophosphatemia are not caused.

Inventors:
ODA SHIGETO (JP)
SADAHIRO TOMOHITO (JP)
NAKAMURA MASATAKA (JP)
TANAKA SYUICHI (JP)
TOKUOKA SHOGO (JP)
OTANI HIROYA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/068192
Publication Date:
April 09, 2009
Filing Date:
October 06, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV CHIBA NAT UNIV CORP (JP)
FUSO PHARMACEUTICAL IND (JP)
ODA SHIGETO (JP)
SADAHIRO TOMOHITO (JP)
NAKAMURA MASATAKA (JP)
TANAKA SYUICHI (JP)
TOKUOKA SHOGO (JP)
OTANI HIROYA (JP)
International Classes:
A61K33/42; A61K31/7004; A61K33/10; A61K33/14; A61P7/08
Domestic Patent References:
WO1983000293A11983-02-03
Foreign References:
JP2003104869A2003-04-09
JP2005028108A2005-02-03
JPH11197240A1999-07-27
JPH033504B21991-01-18
Other References:
KATAYAMA H. ET AL.: "High flow CHDF, High volume CHF", INTENSIVE & CRITICAL CARE MEDICINE., vol. 18, no. 1-2, 2006, pages 224 - 228
BAIRD H.A. ET AL.: "Studies of the solubility of calcium salts. I. The solubility of calcium carbonate in salt solutions and biological fluids", J BIOL CHEM, vol. 71, no. 3, 1927, pages 723 - 781, XP008132289
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JAPANESE JOURNAL OF CLINICAL MEDICINE, vol. 62, 2004, pages 397 - 402
EARNEST DL ET AL., TRANS. AM. SOC. ARTIF. INTERN. ORGANS, vol. 14, 1968, pages 434 - 437
MODERN MEDICAL LABORATORY, vol. 19, no. 2, 1991
Attorney, Agent or Firm:
TANAKA, Mitsuo et al. (IMP Building 3-7, Shiromi 1-chome, Chuo-ku, Osaka-sh, Osaka 01, JP)
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Claims:
 リン酸イオンを含有する、安定な炭酸水素イオン配合用時混合型薬液。
 リン酸イオンを含有することにより炭酸水素イオンとカルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオンの共存による不溶性微粒子や沈澱の生成が抑制された、請求項1に記載の薬液。
 カリウムイオンおよびリン酸イオンを含有することにより、低カリウム血症および低リン血症を生じない、請求項1または2に記載の用時混合型急性血液浄化用薬液。
 酢酸イオンを含有しないことにより、酢酸不耐症患者に適用可能な、請求項1~3のいずれかに記載の薬液。
 少なくともナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含むA液と、少なくともナトリウムイオン、塩素イオンおよび水を含むB液からなる炭酸水素イオン配合用時混合型薬液であって、その少なくとも一方にリン酸イオンおよび/またはカリウムイオンを配合した、混合時長時間にわたり不溶性微粒子や沈澱の生成が抑制された、請求項3または4に記載の薬液。
 A液がナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオン、炭酸水素イオンおよび水を含み、そしてB液がナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオン、リン酸イオン、ブドウ糖および水を含む、請求項5に記載の薬液。
 A液が炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムおよび水を含み、B液が塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、リン酸二水素ナトリウム、ブドウ糖および水を含む、請求項6に記載の薬液。
 A液がナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオンおよび水を含み、そしてB液がナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオン、ブドウ糖および水を含む、請求項5に記載の薬液。
 A液が炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムおよび水を含み、B液が塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ブドウ糖および水を含む、請求項8に記載の薬液。
 A液が炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムおよび水を含み、B液が塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、リン酸二水素ナトリウム、ブドウ糖および水を含む、請求項8に記載の薬液。
 A液およびB液の混合液のリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dLの範囲内である、請求項3~10のいずれかに記載の薬液。
 A液およびB液の混合液のカリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lの範囲内である、請求項3~11のいずれかに記載の薬液。
 A液1000mL中に、塩化ナトリウム(NaCl)4.640g、塩化カリウム(KCl)0.298g、炭酸水素ナトリウム(NaHCO 3 )5.377gおよび水が含まれ、そしてB液1000mL中に、塩化ナトリウム(NaCl)7.598g、塩化カリウム(KCl)0.298g、塩化カルシウム(CaCl 2 ・2H 2 O)0.368g、塩化マグネシウム(MgCl 2 ・6H 2 O)0.203g、リン酸二水素ナトリウム(NaH 2 PO 4 ・2H 2 0)0.403g、ブドウ糖(C 6 H 12 O 6 )2.00gおよび水が含まれることを特徴とする、用時混合型急性血液浄化用薬液。
 A液1000mL中に、塩化ナトリウム(NaCl)4.382g、塩化カリウム(KCl)0.298g、炭酸水素ナトリウム(NaHCO 3 )5.377g、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO 4 ・12H 2 0)0.925gおよび水が含まれ、そしてB液1000mL中に、塩化ナトリウム(NaCl)7.706g、塩化カリウム(KCl)0.298g、塩化カルシウム(CaCl 2 ・2H 2 O)0.368g、塩化マグネシウム(MgCl 2 ・6H 2 O)0.203g、ブドウ糖(C 6 H 12 O 6 )2.00gおよび水が含まれることを特徴とする用時混合型急性血液浄化用薬液。
 A液およびB液の混合液が急性血液浄化療法の透析液または補充液として哺乳動物(ヒトを含む)に投与された場合、急性血液浄化療法開始から24時間の間にわたって、該哺乳動物の血漿中カリウムイオン濃度が正常範囲内であり、かつ、血漿中リン酸イオン濃度の増減が急性血液浄化療法開始時と比べて有意に変動しない、請求項3~14のいずれかに記載の薬液。
 A液およびB液の混合液が急性血液浄化療法の透析液または補充液として酢酸不耐症の哺乳動物(ヒトを含む)に投与された場合、該哺乳動物が酢酸不耐症状を起こさない、請求項4~15のいずれかに記載の薬液。
 隔壁により上室と下室に区分けされ、かつ、当該下室の底部に密閉された開口部を備えた容器であって、当該下室には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオンおよび炭酸水素イオンを含有するA液を充填し、当該上室には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオンおよびブドウ糖を含有するB液を充填してなり、上下室のいずれか一方または両方にリン酸イオンを含有し、用時、上記隔壁を破壊もしくは剥離してA液とB液を混合するようにした、用時混合型急性血液浄化用薬液充填容器。
 上室の頂部に容器の係止手段を設けた、請求項17に記載の薬液充填容器。
 上室と下室の容積が同等となるように隔壁を設けた、請求項17または18に記載の薬液充填容器。
 容器が軟質の透明プラスチック製である、請求項17~19のいずれかに記載の薬液充填容器。
 A液が炭酸水素ナトリウム、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムを含む水溶液からなり、B液が塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、およびブドウ糖を含む水溶液からなり、上下室のいずれか一方または両方にリン酸イオンを含有する、請求項17~20のいずれかに記載の薬液充填容器。
 必須成分として炭酸水素イオンとカルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオンを含有する透析用薬液において、リン酸イオンを含有させたことを特徴とする、不溶性微粒子や沈澱の生成が長時間にわたって抑制された安定な薬液。
 必須成分である炭酸水素イオンとカルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオンを別々に含有し、用時混合して使用する透析用薬液であって、炭酸水素イオンを含む薬液とカルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオンを含む薬液の少なくとも一方にリン酸イオンを含有させたことを特徴とする、請求項22記載の薬液。
炭酸水素イオンとカルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオンを含む薬液、または炭酸水素イオンを含む薬液とカルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオンを含む薬液の少なくとも一方に、さらにカリウムイオンを含有させたことを特徴とする、低カリウム血症および低リン血症を生じない、請求項22または23に記載の薬液。
 酢酸イオンを含有しないことにより、酢酸不耐症患者に適用可能な、請求項22~24のいずれかに記載の薬液。
 混合後のリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dLの範囲内であるようにリン酸イオンを含有させた、請求項22~25のいずれかに記載の薬液。
 混合後のカリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lの範囲内であるようにカリウムイオン濃度を含有させた、請求項23~26のいずれかに記載の薬液。
 用時混合すべき薬液が、少なくともナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含むA液と、少なくともナトリウムイオン、塩素イオンおよび水を含むB液からなる、請求項23~27のいずれかに記載の薬液。
 A液がナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオン、炭酸水素イオンおよび水を含み、そしてB液がナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオン、リン酸イオン、ブドウ糖および水を含む、請求項28に記載の薬液。
 A液がナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオンおよび水を含み、そしてB液がナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオン、ブドウ糖および水を含む、請求項28に記載の薬液。
 A液およびB液の混合液が急性血液浄化療法の透析液または補充液として哺乳動物(ヒトを含む)に投与された場合、急性血液浄化療法開始から24時間の間にわたって、該哺乳動物の血漿中カリウムイオン濃度が正常範囲内であり、かつ、血漿中リン酸イオン濃度の増減が急性血液浄化療法開始時と比べて有意に変動しない、請求項23~30のいずれかに記載の薬液。
Description:
安定な炭酸水素イオン含有薬液

 本発明は、安定な炭酸水素イオン含有薬 、特にリン酸イオンの存在により安定性を 上させた炭酸水素塩含有透析用薬液に関す 。また、本発明は、当該薬液からなる急性 液浄化用薬液、特に用時混合型急性血液浄 用透析液および補充液に関する。なおまた 本発明は、混合後も長時間にわたり不溶性 粒子や沈澱の生成が抑制される、低カリウ 血症および低リン血症を生じない用時混合 の急性血液浄化用透析液および補充液に関 る。

急性心不全、急性腎不全、急性肝不全、術 後肝不全、敗血症、熱傷、中毒、劇症肝炎、 急性膵炎などにより体内に急激に毒物や病因 物質が蓄積すると、体液の恒常性が著しく損 なわれる。このような急性疾患あるいは慢性 疾患の急性憎悪に対しては、緊急に血液・体 液を浄化して生体の恒常性を保ち、病態を改 善することが求められるため、急性血液浄化 療法が試みられる。

 急性血液浄化療法は、主に救命救急・集 治療領域において経験的に発展してきた血 浄化法であり、透析、濾過、吸着または分 により血液から不要あるいは有毒な物質を 去する療法である(非特許文献1)。

 急性血液浄化療法の具体的な治療法とし は、持続的血液透析(CHD)、持続的血液濾過(C HF)、持続的血液透析濾過(CHDF)、血液透析(HD) 血液吸着(HA)、血漿吸着(PA)、血漿交換(PE)、 血球除去療法(LC)などの血液体外循環による 液浄化法が挙げられる。近年は適用の拡大 病態解明の進展などにより、CHDFやPEが主流 なっている(非特許文献2)。

 急性血液浄化療法では拡散や限外濾過、 密濾過、吸着の原理を利用して有害物質を 去することから、大量の透析液や補充液を 用する。

 急性血液浄化療法に使用する透析液・補 液の必要条件は、(1)不要物質や余剰物質を 下させることが可能なこと、(2)必要物質や 足物質が補充できること、(3)有害な物質が まれていないか、問題とならないほど低濃 であること、(4)生体内にある必要な物質を 常値下限濃度より低下させないこと、(5)生 内に取り込まれて代謝される物質は、代謝 に負荷とならない量であること、(6)浸透圧 血液に近い値であること、(7)安定していて 取扱いが簡便であることなどが挙げられる 慢性腎不全の治療用として市販されている 工腎臓用透析液(キンダリー(登録商標)液:扶 桑薬品工業)や濾過型人工腎臓用補液(サブラ ド(登録商標)-B、サブラッド(登録商標)-BS:扶 桑薬品工業)は、これらの条件を満たし、か 入手が容易であることから、急性血液浄化 法時の透析液・補充液にも用いられている

 これらの透析液・補充液の多くは、炭酸水 ナトリウムが配合されている。従って、時 の経過と共に補充液中のカルシウムイオン よびマグネシウムイオンと炭酸水素イオン 反応し、不溶性の炭酸塩の微粒子や沈殿が じる。そこで、カルシウムイオン(Ca 2+ )およびマグネシウムイオン(Mg 2+ )を含む溶液(本明細書において「B液」と呼ぶ )と炭酸水素イオン(HCO 3 - )を含む溶液(本明細書において「A液」と呼ぶ )とが別々に収納された、用時混合型の製剤 して供給されている(特許文献1)。

特開2005-28108 救急・集中治療,第18巻,第1・2号:3-4,2006 日本臨牀,第62巻(増刊):397-402,2004

 市販されている透析液・補充液の成分組成 一例は、ナトリウムイオン(Na + ):132~143mEq/L、カリウムイオン(K + ):2.0~2.5mEq/L、カルシウムイオン(Ca 2+ ):2.5~3.5mEq/L、マグネシウムイオン(Mg 2+ ):1.0~1.5mEq/L、塩素イオン(Cl - ):104~114.5mEq/L、炭酸水素イオン(HCO 3 - ):0~35.0mEq/L、酢酸イオン(CH 3 COO - ):3.5~40mEq/L、ブドウ糖:0~200mg/dLを含むものであ る。

 例えば、上記のサブラッド(登録商標)-BSは 隔壁を介して連結する上下二室を有する複 容器にB液とA液が収容されており、B液(上室) は1010mL中に
 塩化ナトリウム(NaCl)    7.88g
 塩化カルシウム(CaCl 2 ・2H 2 O) 519.8mg
 塩化マグネシウム(MgCl 2 ・6H 2 O)205.4mg
 酢酸ナトリウム(CH 3 COONa)  82.8mg
 ブドウ糖(C 6 H 12 O 6 )      2.02g および
 氷酢酸(CH 3 COOH)       360.0mg
を含み(pH:3.8~3.9、浸透圧比:0.9~1.0)、そしてA液 (下室)は1010mL中に
 塩化ナトリウム(NaCl)    4.460g
 塩化カリウム(KCl)      0.30g および
 炭酸水素ナトリウム(NaHCO 3 )  5.940g
を含んでいる(pH:7.9~8.5、浸透圧比:0.9~1.0)。

 使用前に上下室間の隔壁を開通してA液と B液を混合し、下室側から投与する。このよ な複室容器を使用するのは、同時に配合す と変質が予想される薬剤、すなわちカルシ ムイオンやマグネシウムイオンと炭酸水素 オンを個別に収納するためである。

 他にも炭酸水素イオンが配合される薬液 しては、腹膜透析液、重曹(重炭酸)リンゲ 液、および高カロリー輸液などがあり、そ 多くは炭酸水素イオンとカルシウムイオン マグネシウムイオンとの反応を避けるため 複室容器に分画収容されている(例えば、特 平11-197240号公報を参照)。

 しかしながら、これらの透析液・補充液 、慢性腎不全患者を対象とした電解質濃度 調整されており、急性血液浄化が必要とさ る患者に適合させた処方ではないため、急 血液浄化療法においては不具合が生じる場 があった。

 例えば、市販の透析液・補充液のカリウ イオン濃度は、高カリウム血症の是正のた 、2.0~2.5mEq/Lと低く設定されており、透析前 清カリウムイオン値が4.0mEq/L未満のような 性血液浄化症例の場合では、カリウムの除 にアシドーシスの改善が加わるため、急速 血清カリウムイオン値の低下をきたし、不 脈誘発やジギタリス中毒の危険性がある。

 また、市販の透析液・補充液は、慢性腎 全患者向けに処方されていることから、高 ン血症を改善するために、リン成分を全く まない。そのため、透析前血清リン酸イオ 値が3.0mg/dL以下を呈するような急性血液浄 症例では、低リン血症となり免疫能の低下 重篤な場合には意識消失に至る危険性があ た。

 このため、市販の透析液・補充液を用い 急性血液浄化療法では、低カリウム血症や リン血症を防ぐために、血液回路からカリ ムイオンやリン酸イオンを補給して電解質 成を補正しなければならないという問題点 あった。

 また、透析液のアルカリ化剤(血液緩衝剤 )は古くは酢酸塩が使用されていた。酢酸は 析膜から血中に移行し、炭酸水素イオンに 謝されるが、ダイアライザーの大面積、高 能化により、生体の処理能力を超える量の 酸が負荷されるようになり、血圧低下、気 不快、頭痛、嘔気などの酢酸不耐症状が発 するようになった(Earnest DL et al.:Trans. Am.  Soc. Artif. Intern. Organs 14:434-437, 1968)。現在 アルカリ化剤として酢酸塩に代わって炭酸 素塩が用いられるようになったが、pHの安定 化のためになお少量の酢酸が含有されている 。従って、酢酸不耐症状を避けるために、酢 酸塩を全く含有しない透析液・補充液が求め られていた。

 これらの課題は、従来の透析液・補充液 カリウムイオン濃度を高め、リン酸イオン 配合し、また、酢酸イオンを生成する化合 を使用しないことによって解決できるので ないかと考えられるが、透析液・補充液は 生体の生理状態に微妙かつ重大な影響を及 す可能性のあるものであるから、そのよう 変更により直ちに所期の効果が得られるか か定かではない。しかも、よく知られてい ように、リン酸イオンは炭酸水素イオンと 様、カルシウムイオンやマグネシウムイオ と反応してリン酸塩の不溶性沈殿を形成す ものであるから、透析液・補充液中にリン イオンを含有させた場合、安定な薬液が得 れるとは考え難い。

 さらに前述のように、炭酸水素ナトリウ を含有する薬液では、炭酸水素イオンとカ シウムイオンやマグネシウムイオンとを長 間にわたって安定に共存させることが困難 ある。このため、炭酸水素イオンを含む薬 と、カルシウムイオンやマグネシウムイオ を含む薬液を別々に分けて調製し、患者に 与する直前に両薬液を混合する作業を行っ いる。しかしながら、混合後においても時 の経過とともに溶液中の炭酸水素イオンが 酸ガスとなって放出されるため、pHが上昇 、7.5を越えたあたりから不溶性の微粒子や 晶が生成するようになる。とりわけ、急性 液浄化療法では、炭酸水素イオンとカルシ ムイオンやマグネシウムイオンとを長時間 存させて血液浄化を行うため、炭酸カルシ ムや炭酸マグネシウムのような不溶性微粒 や沈澱の発生が大きな問題となる。

 最近、炭酸水素イオンとカルシウムイオ やマグネシウムイオンとを共存させた一剤 薬液に関する発明が開示されている(特許第 3003504号)。これは、クエン酸および/またはク エン酸イオンを“pH調整剤”として使用する とでpHを7.0~7.8に調整し、不溶性微粒子の発 を防止し、かつ安定な電解質輸液を提供す というものである。

 このように、クエン酸は輸液製剤のpH調 剤として使用されているが、特に注意すべ ことは、クエン酸による副作用(クエン酸中 、クエン酸のキレート作用によるカルシウ イオン濃度の低下など)が発生しないように 、かつpH調整作用のみを発揮するように使用 れなければならないことである。クエン酸 毒の症状としては、血圧低下、心機能抑制 心電図異常などが見られ、これらはクエン による血液中のカルシウムイオン濃度の低 が原因であることが報告されている(検査と 技術,第19巻,第2号,1991)。特に、血管内に直接 与される輸液製剤にあっては、投与量が1~2L を超える場合も珍しくなく、また、急性血液 浄化療法においては数十Lの液置換を伴うこ もあることから、使用量が多くなるにつれ 体内にクエン酸が多量に投与されることに り、それによってクエン酸中毒の発生やク ン酸のキレート作用による血液中カルシウ イオン濃度の低下などを起こす可能性があ 、安全性に問題がある。

 本発明者らは、上記の課題を解決すべく 々研究を重ねた結果、カリウムイオンとリ 酸イオンをそれぞれ一定範囲の濃度に保持 ることにより、低カリウム血症や低リン血 の発症を防ぐことができる安定性の良好な 性血液浄化用薬液を提供できることを見出 た。また、当該薬液において、酢酸イオン 生成するような酢酸化合物を使用しないこ により、酢酸不耐症状を生じない、安定性 良好な急性血液浄化用薬液を提供できるこ を見出した。当該薬液中には、カルシウム オンやマグネシウムイオンが存在するにも わらず、リン酸イオンを含有させても不溶 のリン酸塩を生じない。また、リン酸イオ の存在により、炭酸水素イオンとカルシウ イオンやマグネシウムイオンが共存し、pH 7.5を超えるような長時間後であっても、不 性炭酸塩の生成が抑制される。これらの効 は、全く予想しなかった効果である。本発 は、これらの知見に基づいて完成されたも である。

 従って、本発明は、炭酸水素イオンとカル ウムイオンおよび/またはマグネシウムイオ ンが共存する薬液に対してリン酸イオンを含 有させたことを特徴とする、長時間にわたり 不溶性微粒子や沈澱の生成が抑制された安定 な薬液を提供する。
 本発明はまた、従来の透析液・補充液と比 して、カリウムイオン濃度が高く、リン酸 オンを含有することを特徴とする、長時間 わたり不溶性微粒子や沈澱の生成が抑制さ た安定な急性血液浄化用薬液を提供する。
 上記急性血液浄化用薬液中のカリウムイオ 濃度は3.5~5.0mEq/Lに保持され、リン酸イオン 度は2.3~4.5mg/dLの範囲に保持されることが好 しい。カリウムイオン濃度を上記の範囲に 持するのは、低カリウム血症の発症を防ぐ めである。リン酸イオン濃度を上記の範囲 保持するのは、低リン血症の発症を防ぐと 時に、薬液の安定性を維持するためである 少なくとも上記の範囲では、リン酸イオン 度が高いほど、長時間にわたって薬液の安 性が維持される傾向が認められる。また、 該薬液において、酢酸イオンを含有しない のとすることが酢酸不耐症の防止のために ましい。

 本発明の薬液には、炭酸水素イオンとカ シウムイオンおよび/またはマグネシウムイ オンが必須成分として含まれるから、リン酸 イオンが存在していても、なおその間の反応 で不溶性の微粒子や沈澱が形成される可能性 を残している。従って、好ましくは炭酸水素 イオンを含む水溶液とカルシウムイオンおよ び/またはマグネシウムイオンを含む水溶液 別々に収容し、用時、両者を合して混合液 することが好ましい。通常は、複室容器の 室に収容されるA液中に炭酸水素イオンを含 させ、上室に収容されるB液中にカルシウム イオンおよび/またはマグネシウムイオンを 有させる。カリウムイオンとリン酸イオン 、両者同時にまたは別々に、A液とB液のいず れかまたは両方に含有させることができる。

 本発明により得られる急性血液浄化用透 液・補充液は、低カリウム血症や低リン血 を生じることがなく、従って急性血液浄化 法施行中に電解質を補正する必要がない。 た、酢酸イオンを含有しない場合、酢酸不 症症例においても安全に使用することがで る。さらに本発明により得られる用時混合 の炭酸水素イオン配合薬液は、混合後も炭 カルシウムおよび/または炭酸マグネシウム のような不溶性微粒子や沈澱の生成が長時間 にわたって抑制されるので、長時間の血液浄 化を伴う急性血液浄化療法に好適に用いられ る。

図1は、連通可能な隔壁を備えたダブル バッグ型の複室容器を表す。

符号の説明

 1 本発明の薬液を収容する複室容器、
 2 破壊もしくは剥離可能な連通可能な隔壁
 3 下室(A室:投与側)、
 3’上室(B室)、
 4 加熱溶着部、
 5 ゴム製等の密栓を備えた投与用口部、
 6 薬剤投入用の口部。

 本発明の一つの実施態様において、B液中 にリン成分、好ましくはリン酸イオンまたは リン酸塩が含まれていることを特徴とする用 時混合型薬液、特に用時混合型急性血液浄化 用透析液または補充液が提供される。好まし い実施態様において、少なくともナトリウム イオン、炭酸水素イオンおよび水を含むA液 、少なくともナトリウムイオン、塩素イオ 、リン酸イオンおよび水を含むB液からなる 時混合型薬液、特に用時混合型急性血液浄 用透析液または補充液が提供される。

 本発明の他の実施態様において、A液がナ トリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオ ン、炭酸水素イオンおよび水を含み、そして B液が、ナトリウムイオン、カリウムイオン カルシウムイオン、マグネシウムイオン、 素イオン、リン酸イオン、ブドウ糖および を含む用時混合型薬液、特に用時混合型急 血液浄化用透析液または補充液が提供され 。

 他の実施態様において、A液が炭酸水素ナ トリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムお よび水を含み、そしてB液が塩化ナトリウム 塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグ シウム、リン酸二水素ナトリウム、ブドウ および水を含む用時混合型薬液、特に用時 合型急性血液浄化用透析液または補充液が 供される。

 他の実施態様において、A液がナトリウム イオン、カリウムイオン、塩素イオン、炭酸 水素イオン、リン酸イオンおよび水を含み、 そしてB液がナトリウムイオン、カリウムイ ン、カルシウムイオン、マグネシウムイオ 、塩素イオン、ブドウ糖および水を含む用 混合型薬液、特に用時混合型急性血液浄化 透析液または補充液が提供される。

 他の実施態様において、A液が炭酸水素ナ トリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、 リン酸水素二ナトリウムおよび水を含み、そ してB液が塩化ナトリウム、塩化カリウム、 化カルシウム、塩化マグネシウム、ブドウ および水を含む用時混合型薬液、特に用時 合型急性血液浄化用透析液または補充液が 供される。

 他の実施態様において、A液が炭酸水素ナ トリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムお よび水を含み、そしてB液が塩化ナトリウム 塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ブド 糖および水を含み、そしてさらにA液、B液の 少なくともいずれか一方にリン酸化合物を含 む用時混合型薬液、特に用時混合型急性血液 浄化用透析液または補充液が提供される。

 他の実施態様において、上記の薬液のい れかであって、A液およびB液の混合液のカ ウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lの範囲内である 時混合型薬液、特に用時混合型急性血液浄 用透析液または補充液が提供される。

 他の実施態様において、上記の薬液のい れかであって、A液およびB液の混合液のリ 酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dLの範囲内である用 混合型薬液、特に用時混合型急性血液浄化 透析液または補充液が提供される。

 他の実施態様において、A液1000mL中に、塩化 ナトリウム(NaCl)4.640g、塩化カリウム(KCl)0.298g 炭酸水素ナトリウム(NaHCO 3 )5.377gおよび水が含まれ、そしてB液1000mL中に 塩化ナトリウム(NaCl)7.598g、塩化カリウム(KCl )0.298g、塩化カルシウム(CaCl 2 ・2H 2 O)0.368g、塩化マグネシウム(MgCl 2 ・6H 2 O)0.203g、リン酸二水素ナトリウム(NaH 2 PO 4 ・2H 2 0)0.403g、ブドウ糖(C 6 H 12 O 6 )2.00gおよび水が含まれる用時混合型薬液、特 に用時混合型急性血液浄化用透析液または補 充液が提供される。

 他の実施態様において、A液1000mL中に、塩化 ナトリウム(NaCl)4.382g、塩化カリウム(KCl)0.298g 炭酸水素ナトリウム(NaHCO 3 )5.377g、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO 4 ・12H 2 0)0.925gおよび水が含まれ、そしてB液1000mL中に 、塩化ナトリウム(NaCl)7.706g、塩化カリウム(KC l)0.298g、塩化カルシウム(CaCl 2 ・2H 2 O)0.368g、塩化マグネシウム(MgCl 2 ・6H 2 O)0.203g、ブドウ糖(C 6 H 12 O 6 )2.00gおよび水が含まれる用時混合型薬液、特 に用時混合型急性血液浄化用透析液または補 充液が提供される。

 本発明の好ましい実施態様において、A液 およびB液の混合液が急性血液浄化療法の透 液および/補充液として哺乳動物(ヒトを含む )に投与された場合、急性血液浄化療法開始 ら24時間の間にわたって、該哺乳動物の血漿 中カリウムイオン濃度が正常範囲内であり、 かつ、血漿中無機リン酸イオン(iP)濃度の増 が急性血液浄化療法開始時と比べて有意に 動しない、用時混合型薬液、特に用時混合 急性血液浄化用透析液または補充液が提供 れる。

 さらなる実施態様において、A液およびB の混合液が急性血液浄化療法の透析液およ /補充液として酢酸不耐症の哺乳動物(ヒトを 含む)に投与された場合、該哺乳動物が酢酸 耐症状を起こさない用時混合型薬液、特に 時混合型急性血液浄化用透析液または補充 が提供される。

 本発明の好ましい実施態様において、隔 により上室と下室に区分けされ、かつ、当 下室の底部に密閉された開口部を備えた容 であって、当該下室には、ナトリウムイオ 、カリウムイオン、塩素イオンおよび炭酸 素イオンを含有するA液を充填し、当該上室 には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、 カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩 素イオンおよびブドウ糖を含有するB液を充 してなり、上下室のいずれか一方または両 にリン酸イオンを含有し、用時、上記隔壁 破壊もしくは剥離してA液とB液を混合するよ うにした、用時混合型薬液、特に用時混合型 急性血液浄化用透析液または補充液用容器が 提供される。上記隔壁は、好ましくは、易剥 離性を有する。

 さらなる実施態様において、上記の薬液 填容器であって、さらに、上室の頂部に容 の係止手段を設けた、薬液充填容器が提供 れる。ここで、容器の係止手段とは、例え 吊り下げ用の穴である。

 さらなる実施態様において、上記の薬液 填容器のいずれかであって、さらに、上室 下室の容積が同等となるように隔壁を設け 、薬液充填容器が提供される。

 さらなる実施態様において、上記の薬液 填容器のいずれかであって、さらに、該容 が軟質の透明プラスチック製である、薬液 填容器が提供される。

 さらなる実施態様において、上記の薬液 填容器のいずれかであって、さらに、A液が 炭酸水素ナトリウム、塩化カリウムおよび塩 化ナトリウムを含む水溶液からなり、B液が 化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシ ム、塩化マグネシウム、およびブドウ糖を む水溶液からなり、上下室のいずれか一方 たは両方にリン酸化合物を含有する、薬液 填容器が提供される。

 本発明の用時混合型薬液を収容する容器 、2つ以上の薬液収容室を有する。例えば、 本発明の用時混合型薬液を収容する容器は、 上室(B室)と下室(A室:投与側)の間が連通可能 隔壁で隔てられている容器である。上室は 投与の際に上側に配置される薬液収容室で り、例えば図1における3’である。連通可能 な隔壁の形態は特に制限はなく、例えば易剥 離性を有するような弱溶着によりシール形成 された隔壁、クリップ等で挟むことにより形 成された隔壁、破断等により開通可能となる ような連通部材を備えた隔壁などが挙げられ る。これらのうち、特に易剥離的に熱溶着さ れた隔壁部(弱シール部)でシール分画された 器が簡便性の点で好適に用いられる。易剥 性の熱溶着された隔壁部を備える容器は、 方の薬液収納室を外部から押圧することに りシール部が剥離し、薬液が無菌的に混合 れる。

 弱シール部は、対向する2枚のフィルムシ ートを剥離可能に接合して構成されるもので 、従来の複室容器(例えば、ダブルバッグ)の 造方法で採用されている方法によって接合 ることができる。例えば、弱シール部の張 合わせ面に混合樹脂を使用したり、弱シー 部の位置に混合樹脂片を挟み加熱溶着した 、弱シール部の加熱温度を完全溶着温度よ も低く設定したりする方法などが挙げられ 。

 弱シール部を備えたダブルバッグ型の複 容器の例を図1に示す。図1において、1は本 明の薬液を収容する複室容器、2は破壊もし くは剥離可能な弱シール部、3は下室(A室:投 側)、3’は上室(B室)、4は加熱溶着部を表す

 容器1は、一方の端にゴム製等の密栓を備 えた投与用口部5を、他端には薬剤投入用の 部6を備えている。図示の複室容器1は上下の 2室に区画されているが、これに限定される のではなく、3室以上であってもよい。また 複室容器や各薬剤収納室の形状、弱シール の太さや形状についても何ら制限されるも ではない。2室もしくはそれ以上の室の区画 は、通常は1本の弱シール部によって仕切ら るが、2本またはそれ以上の弱シール部によ て仕切ることも可能である。

 本発明の用時混合型薬液を収容する複室 器のフィルムシートに使用する素材として 、通常の医薬品用輸液容器に使用される合 樹脂が用いられる。例えば、低密度ポリエ レン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリ チレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビ ニル共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニ ル、ポリブタジエン、ポリアミド、エチレン -メタクリレート共重合体、エチレンプロピ ン系エラストマー、およびこれらの混合物 の単層または積層フイルムが用いられる。 れらのフイルムは、ブロー成形法、インフ ーション法、Tダイ成形法、多層形成法、共 出法等、公知の方法により成形される。

 連通可能な隔壁で仕切られた複数の薬剤 納室のそれぞれに異なる薬剤が収容された 態の複室容器自体は、従来から知られてい 方法によって製造することができる。簡単 説明すると以下の通りである。

 内層低密度ポリエチレン(0.1mm)、中間層エ チレンプロピレン系エラストマー(0.3mm)、外 高密度ポリエチレン(0.1mm)の3層からなる積層 フィルムシートを共押出法によって作製する 。この積層フィルムシート2枚を所定の大き に裁断し、口部5を薬剤収容室に連通した状 で挟み込み、口部6を除く外周部4および連 可能な隔壁2を加熱溶着する。

 こうして製造された複室容器に、本発明の 時混合型薬液を充填することも、従来から られている方法によって実施することがで る。例えば、まず、薬剤収納室3へ、A液1000m L(塩化ナトリウム(NaCl)4.640g、塩化カリウム(KCl )0.298g、炭酸水素ナトリウム(NaHCO 3 )5.377g含有)を口部5より注入して、ゴム栓体で 密封する。次に、薬剤収納室3’へ、B液1000mL( 塩化ナトリウム(NaCl)7.598g、塩化カリウム(KCl)0 .298g、塩化カルシウム(CaCl 2 ・2H 2 O)0.368g、塩化マグネシウム(MgCl 2 ・6H 2 O)0.203g、リン酸二水素ナトリウム(NaH 2 PO 4 ・2H 2 0)0.403g、ブドウ糖(C 6 H 12 O 6 )2.00g含有)を口部6より注入し、その後、注入 6を加熱溶着する。そして、日本薬局方の最 終滅菌法の指標に準じ、110℃、30分間の高圧 気滅菌処理を施して、最終製品とする。

 あるいは、A液1000mL(塩化ナトリウム(NaCl)4.382 g、塩化カリウム(KCl)0.298g、炭酸水素ナトリウ ム(NaHCO 3 )5.377g、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO 4 ・12H 2 0)0.925g含有)を口部5より注入して、ゴム栓体 密封する。次に、薬剤収納室3’へ、B液1000mL (塩化ナトリウム(NaCl)7.706g、塩化カリウム(KCl) 0.298g、塩化カルシウム(CaCl 2 ・2H 2 O)0.368g、塩化マグネシウム(MgCl 2 ・6H 2 O)0.203g、ブドウ糖(C 6 H 12 O 6 )2.00g含有)を口部6より注入し、その後、注入 6を加熱溶着する。そして、日本薬局方の最 終滅菌法の指標に準じ、110℃、30分間の高圧 気滅菌処理を施して、最終製品とする。

 図1の複室容器に薬液が収納された後に、 加熱滅菌が施される。加熱方法としては、高 圧蒸気滅菌、熱水スプレー滅菌、熱水シャワ ー滅菌、熱水浸漬滅菌などが適用される。滅 菌条件は、滅菌方法により適宜選択されるが 、一般に100~130℃、好ましくは105~120℃で、15~3 0分間加熱される。

 このようにして薬液が無菌的に収納され 複室容器は、外気との接触を避けるため、 ス非透過性の包材からなる外装容器内に密 収納することが好ましい。かかる目的で使 されるガス非透過性の包材には、エチレン- ビニルアルコール共重合体フイルム等、多く の種類が知られており、これらを適宜使用す ることができる。さらに、外装内を無酸素状 態とするために、脱酸素剤を複室容器ととも に収納したり、窒素ガスや炭酸ガスなどを充 填してもよい。さらにピンホールを検知する 目的で酸素検知剤などを同梱してもよい。

 本明細書で言う「不溶性微粒子や沈澱の 成が長時間にわたって抑制される」とは、 与対象に適用すべき最終薬液の調製後、た えば上記A液とB液の混合後、少なくとも27時 間にわたり不溶性微粒子や沈澱の生成が抑制 されること、またはpHが7.5以上になっても不 性微粒子や沈澱の生成が抑制されることを 味する。

 本明細書において使用される「用時混合 薬液」なる用語は、A液およびB液からなり A液およびB液を混合した後に使用される薬液 を意味する。

 「急性血液浄化用薬液」なる用語は、急性 液浄化療法において使用される透析液また 補充液を意味する。急性血液浄化療法は、 分野において通常使用される意義と同一で る。なお、「補充液」は「補液」、「置換 」と呼ばれることもある。
 また、「用時混合型急性血液浄化用薬液」 る用語は、用時混合型薬液のうち、急性血 浄化療法において使用される透析液または 充液を意味する。

 本明細書において使用される「A液」なる 用語は、少なくともナトリウムイオン、炭酸 水素イオンおよび水を含む薬液を意味する。 好ましくは、A液は、ナトリウムイオン、カ ウムイオン、塩素イオン、炭酸水素イオン よび水を含む。

 「B液」なる用語は、少なくともカルシウム イオンおよび/またはマグネシウムイオンな びに水を含む薬液を意味する。好ましくは B液は、ナトリウムイオン、カルシウムイオ 、マグネシウムイオン、塩素イオン、ブド 糖および水を含む。
 なお、「A液」、「B液」は、用時溶解して 剤とするような固形剤でもよい。

 上記したように、本発明の薬液は、カリ ムイオンとリン酸イオンを含むことを特徴 しているが、カリウム源としては、水溶液 でカリウムイオンを与える化合物、たとえ 塩化カリウムのような無機カリウム塩、乳 カリウム、グルコン酸カリウムのような有 酸カリウム塩などから選択して使用するこ ができる。また、リン源としては、水溶液 でリン酸イオンを与える化合物、たとえば ン酸、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナ リウム、リン酸水素二ナトリウムなどから 択して使用することができる。カリウム源 リン源を兼ねるカリウムイオンとリン酸イ ンを含む化合物、例えばリン酸カリウム、 ン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウ などの使用も考慮されてよい。

 本発明薬液中のカリウムイオン濃度は、 常、3.5~5.0mEq/Lであり、好ましくは3.5~4.5mEq/L ある。また、リン酸イオン濃度は、通常、2 .3~4.5mg/dL、好ましくは2.5~4.0mg/dL(特に3.0mg/dL以 )である。本発明は、上記したように、通常 、A液とB液の二液に分けて調製されるが、カ ウムイオンもリン酸イオンも両液を合した き、混合液中で上記の濃度となるように適 調整すればよい。

 次に、下記の実施例により本発明をさらに しく説明するが、これらの実施例は本発明 技術的範囲の限定を意図するものではない また、下記の実施例において、次の機器お び試薬を使用した。
・ダイアライザー(APS-08MD、膜面積0.7m 2 、Lot No.01Z182082、旭化成メディカル)
・持続濾過用血液回路(JCH-26S、Lot No.012942、 ベ循研)
・血液浄化装置(JUN-505、シリアルNo.UA034、ウ 循研)
・送液ポンプ(Masterflex L/S、コール・パーマ )
・送液ポンプ(Watson Marlow 505Di、シリアルNo.B0 0005470、B00005471、ワトソン・モーロー)
・シリンジポンプ(テルフュージョンシリン ポンプSTC-521、シリアルNo.8063084、テルモ)
・ポリグラフシステム(RM-7000、日本光電)
  血圧測定用アンプAP-641G
  血圧トランスジューサ(ライフキット、DX-3 12、Lot No.107087)
  生体電気用アンプAB-621G
  生体電気用入力箱JB-640G
  カプラ用アンプAA-601H
  呼吸/脈波カプラAR-650H
  温度測定ユニットAW-601H
  温度カプラAW-650H
・吸入麻酔器
・汎用血液ガス分析装置(アイ・スタット ア ナライザー300F、扶桑薬品工業)
・汎用血液ガス分析装置(アイ・スタット カ ートリッジEG7 + 、Lot No.M02164B、扶桑薬品工業)
・乾式臨床化学分析装置(富士ドライケム3030 富士メディカルシステム)
・乾式臨床化学分析装置(富士ドライケム800 富士メディカルシステム)
・微量高速遠心機(MX-150、トミー精工)
・濾過型人工腎臓用補液(サブラッド-BS、Lot  No.02D11A、扶桑薬品工業)
・乳酸リンゲル液(ラクトリンゲル液“フソ ”、扶桑薬品)
・イソフルラン
・タウロコール酸ナトリウム(和光純薬工業)
・ベンジルペニシリンカリウム(注射用ペニ リンGカリウム50万単位、Lot No.7QC02P、明治製 菓)
・ヘパリンナトリウム(ヘパリンナトリウム 射液、Lot No.02G08A、扶桑薬品工業)

<急性膵炎モデル動物の作製>
 雄性ビーグル犬(体重10kg前後、日本農産)21 を扶桑薬品工業株式会社内の大動物施設の 育室(温度23±5℃、湿度50±20%RH、換気15~20回/hr 、照明12時間(7:00~19:00))においてステンレス飼 育ケージに1頭ずつ収容して飼育した。飼料 固形飼料(CREA Dog Diet CD-5M(商標)、日本クレ )を使用し、約300g/日を摂取させた。飲料水 上水道水を使用し、飼育期間中自由に飲水 せた。

 イソフルラン吸入麻酔下でビーグル犬を 位に固定し、腹部を切開し、総胆管を露出 せ、クレンメで閉塞した。十二指腸を切開 、小十二指腸乳頭よりポリエチレン製チュ ブ(PE50、ベクトン・ディッキンソン)を副膵 に挿入し、逆行性に3%タウロコール酸ナト ウム生理食塩液溶液を1.0mL/kg/5minで注入し、 性膵炎を惹起した。

 モデル作製術中および術後には適切な輸 を適切量投与した。

 術後、感染防止のためにベンジルペニシ ンカリウム注射液(50万単位/動物)を1日1回2 間、筋肉内投与することにより急性膵炎モ ル動物を作製した。

実施例1
(i)上室液(B液)の調製・充填・密封
 下記の表1に記載の成分分量を量り、日局注 射用水にブドウ糖、塩化ナトリウム、塩化カ リウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム 、リン酸二水素ナトリウムを順次加えて溶解 し、粗濾過し、濾液に注射用水を加えて定量 とした。得られた液を1000mL/1000mLの無色プラ チック製ダブルバッグの上室に精密フィル ーで無菌濾過後充填し、充填口をシール溶 により密封した。本明細書において、表1の 方にて作製された薬液を「実施例1の上室液 (B液)」と称する。
表1

(ii)下室液(A液)の調製・充填・密封
 下記の表2に記載の成分分量を量り、日局注 射用水に塩化ナトリウム、塩化カリウムおよ び炭酸水素ナトリウムを順次加えて溶解した 後、粗濾過し、濾液に注射用水を加えて定量 とした。得られたA液を、(i)において上室液 充填され、そして密封された1000mL/1000mLの無 プラスチック製ダブルバッグの下室に精密 ィルターで無菌濾過後充填し、ポート部に ム栓体を挿入後、閉塞により密封し、ゴム 体ヘッド部にオーバーシールを溶着した。 明細書において、表2の処方にて作製された 薬液を「実施例1の下室液(A液)」と称する。
表2

実施例2
(i)上室液(B液)の調製・充填・密封
 下記の表3に記載の成分分量を量り、日局注 射用水にブドウ糖、塩化ナトリウム、塩化マ グネシウムおよび塩化カルシウムを順次加え て溶解し、塩酸を添加した後、粗濾過し、濾 液に注射用水を加えて定量とした。得られた 液を1000mL/1000mLの無色プラスチック製ダブル ッグの上室に精密フィルターで無菌濾過後 填し、充填口をシール溶着により密封した 本明細書において、表3の処方にて作製され 薬液を「実施例2の上室液(B液)」と称する。
表3

(ii)下室液(A液)の調製・充填・密封
 下記の表4に記載の成分分量を量り、日局注 射用水に塩化ナトリウム、塩化カリウム、リ ン酸水素二ナトリウムおよび炭酸水素ナトリ ウムを順次加えて溶解した後、粗濾過し、濾 液に注射用水を加えて定量とした。得られた A液を、(i)において上室液が充填され、そし 密封された1000mL/1000mLの無色プラスチック製 ブルバッグの下室に精密フィルターで無菌 過後充填し、ポート部にゴム栓体を挿入後 閉塞により密封し、ゴム栓体ヘッド部にオ バーシールを溶着した。本明細書において 表4の処方にて作製された薬液を「実施例2 下室液(A液)」と称する。
表4

比較例
(i)上室液(B液)の調製・充填・密封
 下記の表5に記載の成分分量を量り、日局注 射用水に塩化カルシウム、塩化マグネシウム 、酢酸ナトリウム、ブドウ糖および氷酢酸を 順次加えて溶解し、粗濾過後、濾液に注射用 水を適量加えて、全量を1010mLとした。得られ た液を1010mL/1010mLの無色プラスチック製ダブ バッグの上室に精密フィルターで無菌濾過 充填し、充填口をシール溶着により密封し 。本明細書において、表5の処方にて作製さ た薬液を「比較例の上室液(B液)」と称する 「比較例の上室液」は、濾過型人工腎臓用 液である「サブラッド(登録商標)-BS」(扶桑 品工業)のB液と同一の組成である。
表5

(ii)下室液(A液)の調製・充填・密封
 下記の表6に記載の成分分量を量り、日局注 射用水に塩化ナトリウム、塩化カリウムおよ び炭酸水素ナトリウムを順次加えて溶解した 後、粗濾過し、濾液に注射用水を加えて定量 とした。得られたA液を、(i)において上室液 充填され、そして密封された1010mL/1010mLの無 プラスチック製ダブルバッグの下室に精密 ィルターで無菌濾過後充填し、ポート部に ム栓体を挿入後、閉塞により密封し、ゴム 体ヘッド部にオーバーシールを溶着した。 明細書において、表6の処方にて作製された 薬液を「比較例の下室液(A液)」と称する。「 比較例の下室液」は、濾過型人工腎臓用補液 である「サブラッド(登録商標)-BS」のA液と同 一の組成である。
表6

<定性試験>
 「実施例1の上室液(B液)」と「実施例1の下 液(A液)」の混合調整液(本明細書において「 施例1の混合液」と呼ぶ。)、「実施例2の上 液(B液)」と「実施例2の下室液(A液)」の混合 調整液(本明細書において「実施例2の混合液 と呼ぶ。)、および「比較例の上室液(B液)」 と「比較例の下室液(A液)」の混合調整液(本 細書において「比較例の混合液」と呼ぶ。) 糖・電解質濃度(理論値)を表7に示す。
表7

<CHDF試験>
(方法1)
 ビーグル犬急性膵炎モデル(3頭)を膵炎惹起2 日後に動物の体重を測定し、その後、イソフ ルランによる吸入麻酔を行った。右大腿動脈 に血圧トランスジューサに接続したカニュー レを、直腸に直腸温プローブを挿入し、各々 血圧および体温をモニターした。心電図の測 定は第II誘導で行った。左大腿動脈から右大 静脈に採血用ポートをつけた動静脈シャン (中央部で取り外し可能)を作製した。血液 固防止のため適正量のヘパリンナトリウム 射液(ヘパリン)を動静脈シャントの採血部よ り投与し、その後血液回路内に持続注入した 。ヘパリン投与5分後にブラッドアクセスと 液回路(JCH-26S、ウベ循研)およびダイアライ ー(APS-08MD、旭化成メディカル)とを接続した

(方法2)
 方法1に続いて、血液流量20mL/min、透析液(実 施例1の混合液)流量1200mL/hr、補充液(実施例1 混合液)流量300mL/hr、濾液(実施例1の混合液) 量1500mL/hr、除水量ゼロの条件でCHDFを24時間 った。CHDF開始の0、3、6、9、12、15、18、21お び24時間後に、採血用ポートからヘパリン 血液1.5mLを採取した(脱血側静脈血)。採取し ヘパリン加血液につき、各種機器分析を行 た。

 また、透析液および補充液を「比較例の 合液」に換えて、同様にCHDFを施行し、各種 機器分析を行った。

 検査項目:pH、PCO 2 (mmHg)、PO 2 (mmHg)、HCO 3 - (mmol/L)、tCO 2 (mmol/L)、sO 2 (%)、BE(mmol/L)、Hct(%)、Hb(g/dL)、Na + (mEq/L)、K + (mEq/L)、Cl - (mEq/L)、Ca 2+ (mEq/L)、Mg 2+ (mEq/L)、Lac(mEq/L)、Ca(mg/dL)、Mg(mg/dL)、iP(mg/dL)、G PT(U/L)、LDH(U/L)、AMY(U/L)、BUN(mg/dL)、ALB(g/dL)、GLU (mg/dL)。結果を表8に示す。値は、ビーグル犬3 頭の平均値を表している。
表8

(結果)
 CHDF開始後のカリウム濃度の低下は、実施例 1の混合液の方が比較例よりも緩やかであり 低カリウム血症を生じにくいことが示唆さ た。
 また、CHDF開始後の無機リン(iP)濃度の低下 同様に実施例1の混合液の方が比較例よりも やかであり、低リン血症を生じにくいこと 示唆された。
 その他の測定値は両者間で差はなかった。
 以上のことから、本発明の急性血液浄化用 充液は低カリウム血症や低リン血症の発生 良好に抑制できることが示唆された。

<安定性試験>
 急性血液浄化用剤の開放系におけるpH及び 状(色調及び澄明性)をリン酸水素二ナトリウ ムの濃度を変化させて測定した。

(1.試験検体)
1-1.塩化ナトリウム77.0625g、塩化カリウム2.9804 g、塩化カルシウム・2水和物3.6827g、塩化マグ ネシウム・6水和物2.0315g、ブドウ糖20.0015g及 1mol/L塩酸2mLを取り、水を加えて2Lとする。(5 濃度B原液)
1-2.塩化ナトリウム43.8236g、塩化カリウム2.9797 g及び炭酸水素ナトリウム53.7711gを取り、水を 加えて2Lとした。(5倍濃度A原液)
1-3.リン酸水素二ナトリウム・12水和物3.5804g 取り、水を加えて100mLとした。(リン酸二水 ナトリウム溶液)
1-4.リン酸二水素ナトリウム・12水和物0.1153g 取り、5倍濃度A原液100mL及び水を加えて500mL し、炭酸ガスをバブリングしてpHを約7.5にし た(A液-1)。5倍濃度B原液100mL及び水を加えて500 mLとした(B液-1)。A液-1 及びB液-1各500mLを静か 混合した(P 1mg/dL)炭酸ガスをバブリングし 混合後のpHを約7.25にした。
1-5.リン酸水素二ナトリウム・12水和物0.2312g 取り、5倍濃度A原液100mL及び水を加えて500mL し、炭酸ガスをバブリングしてpHを約7.5にし た(A液-1)。5倍濃度B原液100mL及び水を加えて500 mLとした(B液-1)。A液-1 及びB液-1各500mLを静か 混合した(P 1mg/dL)。炭酸ガスをバブリング て混合後のpHを約7.25にした。
1-6.リン酸二水素ナトリウム液0、1、2.5、5mLを 取り、5倍濃度A原液100mL及び水を加えて500mLと し、炭酸ガスをバブリングしてpHを約7.5にし (A液-2~5)。5倍濃度B原液100mL及び水を加えて50 0mLとしたものを4個用意した(B液-2)。A液-2 及 B液-2各500mLを静かに混合した(P 1mg/dL)炭酸ガ スをバブリングして混合後のpHを約7.25にした 。A液-3~5も同様に試験液を調製した。(リン酸 イオン 0、0.1、0.25、0.5mEq/L)

(2.試験実施日)
2007年7月9日~12日(リン酸イオン 1mg/dL、2mg/dL)
2007年7月9日~13日(リン酸イオン 0、0.1、0.25、0 .5mEq/L)

(3.試験方法)
3-1.それぞれの試験検体を1Lプラスチック製ボ トルに静かに注ぎ、回転子(9mm)で緩やかに攪 した。
3-2.pH及び性状(澄明性)を測定した。

(4.試験結果)
4-1.リン酸イオン 1mg/dL(0.32mEq/L)、2mg/dL(0.65mEq/L )
表9

4-2.リン酸イオン0、0.1、0.25、0.5mEq/L
表10

(5. 考察)
 上記表9および表10の結果から、薬液にリン イオンを含有させることにより、沈澱の生 が顕著に抑制され、0.1mEq/L(0.31mg/dL)の低濃度 であっても、ある程度の沈澱生成の抑制が認 められることが理解できる。

 なお、別途、リン酸イオンを含有しない 液と、リン酸イオンを濃度4mg/dLで含有する 液との対比実験を行ったところ、7日間でpH 7.23~7.29から7.89~7.94までほぼ直線的に上昇し その間にリン酸イオン不含有薬液では不溶 微粒子の粒径も数も顕著に増加したが、リ 酸イオン含有薬液ではpHの上昇にもかかわ ず、不溶性微粒子の増加は実質的に認めら なかった。

本発明により、リン酸イオンを配合した炭 酸水素ナトリウムを含有する用時混合型の薬 液が提供される。また、本発明により、急性 血液浄化用透析液および補充液、特に低カリ ウム血症および低リン血症を生じない急性血 液浄化用透析液および補充液が提供される。 さらにまた、本発明により、混合後長時間に わたり、不溶性微粒子や沈澱の生成が抑制さ れる用時混合型の急性血液浄化用透析液およ び補充液が提供される。