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Title:
WOVEN FABRIC FOR AIR BAG AND PROCESS FOR PRODUCING THE WOVEN FABRIC
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/084334
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a woven fabric for an air bag which has excellent low air permeability under a high pressure difference, has a lowered combustion rate, and is lightweight and inexpensive. The woven fabric for an air bag comprises a base fabric having a cover factor of 1800 to 2500 and a resin composition deposited on the base fabric. The woven fabric for an air bag is characterized in that a resin composition is present among single yarn fibers in the obverse and reverse surfaces in the base fabric, the amount of the resin composition deposited is 10 to 25 g/m2, the resin composition contains a resin and a magnesium compound, the magnesium compound is selected from magnesium hydroxide, magnesium oxide, or a mixture composed of magnesium hydroxide and magnesium oxide, and the woven fabric with the resin composition deposited thereon has a mass of 100 parts by mass at 30°C and has a mass of not more than 60 parts by mass at 400°C when the fabric is heated from 30°C to 400°C at a temperature rise rate of 10°C/min.

Inventors:
KURAMOTO TAKAHIRO (JP)
TSURUTA TAKASHI (JP)
ISODA HIDEO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/070740
Publication Date:
July 09, 2009
Filing Date:
November 14, 2008
Export Citation:
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Assignee:
TOYO BOSEKI (JP)
KURAMOTO TAKAHIRO (JP)
TSURUTA TAKASHI (JP)
ISODA HIDEO (JP)
International Classes:
D06M15/643; D03D1/02; D06M11/44; D06M101/34
Foreign References:
JP2007196993A2007-08-09
JP2001287610A2001-10-16
JPH05185889A1993-07-27
JP2007169816A2007-07-05
JP2003328244A2003-11-19
JP2003278083A2003-10-02
JP2006249655A2006-09-21
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Claims:
 カバーファクターが1,800~2,500である織物基布に樹脂組成物を付着させてなるエアバッグ用織物であって、
 織物基布の表面および裏面の単糸繊維間に樹脂組成物が存在し、樹脂組成物の付着量が10~25g/m 2 であり、
 樹脂組成物は、樹脂とマグネシウム化合物を含み、マグネシウム化合物は、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、あるいはそれらの混合物から選択され、
 樹脂組成物を付着させた織物は、30℃での織物の質量を100質量部とし、昇温速度10℃/minで30℃から400℃まで昇温させたとき、400℃での織物の質量が60質量部以下であることを特徴とするエアバッグ用織物。
 樹脂組成物を付着させた織物の溶剤抽出量が0.1~1.2質量%であることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ用織物。
 樹脂組成物に対するマグネシウム化合物の含有量が33~60質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグ用織物。
 樹脂がシリコーン系樹脂であり、かつ樹脂が水系エマルジョンの状態で含まれる、樹脂組成物の水系分散液を、織物基布に付着、乾燥させてなる請求項1または2に記載のエアバッグ用織物。
 樹脂組成物の水系分散液の粘度が10~100mPa・sの範囲であり、樹脂組成物が含浸処理により織物基布に付着、乾燥させてなる請求項4に記載のエアバッグ用織物。
 FMVSS302法で測定した際の平均燃焼速度が60mm/min以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグ用織物。
 織物を構成する経糸と緯糸の素材がナイロン66であり、20kPaの差圧下での通気度が5×10 -2 L/cm 2 /min以下である請求項1または2に記載のエアバッグ用織物。
 カバーファクターが1,800~2,500である織物基布に、樹脂組成物の水系分散液を、含浸処理により付着、乾燥、熱処理して得られるエアバッグ用織物の製造方法であって、
 樹脂組成物の水系分散液は、水系樹脂のエマルジョン、マグネシウム化合物、及び水を含み、マグネシウム化合物は、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、あるいはそれらの混合物から選択され、樹脂組成物の固形分に対するマグネシウム化合物の含有量が33~60質量%であり、粘度が10~100mPa・sの範囲に調整され、
 織物基布に樹脂組成物を10~25g/m 2 の量で付着させ、織物基布の表面および裏面の単糸繊維間に樹脂組成物を存在させることを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。
 前記の乾燥、熱処理の工程において、樹脂組成物を付着させた織物は、少なくとも1つのチャンバーを有する加工炉で、160~200℃、15~120秒の範囲で乾燥、熱処理され、さらに加工炉における織物の表面の最高温度が125℃以上となるように加工炉を通過させて、溶剤抽出量を0.1~1.2質量%となるように調整することを特徴とする請求項8に記載のエアバッグ用織物の製造方法。
 水系樹脂がシリコーン系樹脂であり、樹脂組成物がさらに架橋剤を含み、熱処理時にシリコーン系樹脂を架橋させることを特徴とする請求項8または9に記載のエアバッグ用織物の製造方法。
 FMVSS302法で測定した際の平均燃焼速度が60mm/min以下となるように、マグネシウム化合物の含有量、樹脂組成物の付着量、あるいは水系分散液の粘度の少なくともいずれかを調整することを特徴とする請求項8または9に記載のエアバッグ用織物の製造方法。
 織物を構成する経糸と緯糸の素材がナイロン66であり、20kPaの差圧下での通気度が5×10 -2 L/cm 2 /min以下となるように、カバーファクター、樹脂組成物の付着量、あるいは水系分散液の粘度の少なくともいずれかを調整することを特徴とする請求項8または9に記載のエアバッグ用織物の製造方法。
Description:
エアバッグ用織物及びその製造 法

 本発明は、高差圧下での低通気性に優れ かつ燃焼速度が低減された、軽量で安価な アバッグ用織物及びその製造方法に関する

 近年、自動車安全部品の一つとして急速 装着率が向上しているエアバッグは、自動 の衝突事故の際、衝撃をセンサーが感知し インフレーターから高温、高圧のガスを発 させ、このガスによってエアバッグを急激 展開させて、運転者や同乗者の身体、特に 部がハンドル、フロントガラス、ドアガラ 等に衝突することを防止し保護する目的で 用される。エアバッグの膨張は、点火装置 着火剤、窒素ガス供給剤等を軽金属容器内 収納したインフレーターと称されるガス噴 装置からのガス噴射によって行われるが、 の際には短時間ではあるものの、通常約300~ 700℃の高温ガスがエアバッグ中にインフレー ターから発生する。

 従来、これらの目的には、コーティング 行わないノンコート布や、コーティングを ったコート布等から、用途に応じて好適な が使用されてきた。

 しかしながら、ノンコート布では、通気 が高いため、適用される範囲が限られてい 問題がある。また、コート布は通気度が低 エアバッグとして好適な布ではあるが、基 が重く、柔軟性に劣り、また製造コストも いため、採用されるのは通気度が低く要求 れる範囲に限られてきた。

 最近、大手自動車メーカーでは、側面衝 時に乗員への衝撃を緩和するSRSサイドエア ッグと、SRSカーテンシールドエアバッグを 車に標準装備するとの発表があった。SRS(Sup plemental Restraint System:乗員保護補助装置)サイ ドエアバッグは、シートに内蔵されたエアバ ッグが展開、乗員の胸への衝撃を緩和する目 的で使用され、SRSカーテンシールドエアバッ グはフロントピラーからルーフサイド部に格 納されたエアバッグがカーテン状に展開し、 サイドガラスやピラーおよび電信柱などの車 外物からも乗員を保護する目的で使用される 。

 これらの側面衝突用エアバッグでは、従 の前面衝突用エアバッグに比べ、基布の面 も広く、軽量で、高差圧下での低通気性と 納性がさらに優れていることが要求される さらに、需要の拡大にともない、低コスト の供給が市場から強く望まれている。

 本出願人は、このような需要の拡大も考慮 、低コストで、軽量でかつ通常の繊維間に 布するレベルでは到達できていなかった差 100kPaという高圧下で低通気性能を有するエ バッグに適した樹脂加工織物を提案した(例 えば、特許文献1参照)。具体的には、カバー ァクターの値が2,000~2,500である高密度織物 基布に、シリコーン樹脂の水系エマルジョ を含浸、乾燥、熱処理して、5~25g/m 2 の樹脂を単糸繊維間に付着させることが記載 されている。しかしながら、燃焼速度の低減 に関しては更なる改善の余地があった。

特開2007-46193号公報

  一方、「コーティング布帛の軽量化のた には塗布量を減らしたい。しかし、シリコ ンの塗布量を減少すると燃焼速度が大きく り、FMVSS302が要求する燃焼速度の上限レベル を超える」という、シリコーンコーティング 布帛固有の問題が知られていた(例えば、特 文献2の第5頁第1行-3行)。

国際公開第2002-061200号公報

 特許文献2では、前記の従来の問題点を具体 的に解決する方法として、下記(1)及び(2)に示 す2種の塗布の組合せにより、シリコーンを5~ 25g/m 2 塗布し架橋処理する、シリコーンコーティン グ布帛の製造方法が開示されている(第15頁第 13行-第19頁第16行)。
(1)粘度が0.1~5Pa・sの低粘度シリコーン組成物 らなるドープを固形分で1~21g/m 2 付与すること(ドープ付与)。
(2)粘度が10~500Pa・sの液状シリコーン組成物を 4~24g/m 2 付与すること(皮膜コーティング)。

 しかしながら、特許文献2に記載の方法で は、2段階のコーティング処理が必要であり 操作も煩雑になり生産性も低下する。その め、安価なエアバッグ用織物の提供という 場の要求に対応することができない。

 また、前記の従来の問題点を改善する方法 して、シリコーン樹脂中に吸熱特性を有す 化合物を加え、ナイフコート方式で布帛に 脂を5~35g/m 2 の量で被覆し、燃焼時の熱量を低減させる方 法が知られている(例えば、特許文献3参照)。 また、吸熱特性を有する化合物の表面を高級 脂肪酸系処理剤又はシラン系処理剤で処理す ることにより、難燃性、高温ガス耐性をより 向上できることが記載されている(特許文献3 請求項2、段落0015を参照)。なお、通気度に する具体的な開示は無い。

 吸熱特性を有する化合物としては、含水系 機化合物が好ましく、具体的には水酸化ア ミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸、リ 酸コバルト(II)八水和物、酢酸コバルト(II) 水和物、リン酸クロム(III)六水和物、ビス( 酸)鉄(III)アンモニウム-二水和物、ヨウ化リ ウム三水和物、リン酸水素マグネシウム三 和物、リン酸マグネシウム八水和物、ビス( 硫酸)バナジウム(III)カリウム-二水和物、硫 亜鉛七水和物等が例示されている(特許文献3 の段落0010を参照)。

特開平9-3778号公報

 また、燃焼速度を低減するために、油剤量 低減することが検討されている(例えば、特 許文献4を参照)。

特開2004-183152号公報

 特許文献4には、カバーファクターが2,050~2,3 00の範囲内における合成繊維織物の少なくと 片面に5~25g/m 2 の付着量の樹脂が被覆されたエアバッグ用基 布に関する発明が記載され、樹脂が被覆され た基布の残留油分量が0.1%以下であることが 燃性面で必要であること(段落0016)、基布の 留油分量を0.1%以下にするためには、樹脂を 覆する前の合成繊維織物の残留油分量を0.1 量%以下にすることが好ましいこと(段落0019) が記載されている。しかしながら、塗布され る樹脂中の硬化反応不足によるモノマー、オ リゴマーなどの低分子量の化合物が燃焼性に 影響することは記載も示唆もなく、何ら配慮 がされていなかった。

 本発明の目的は、従来技術では解決でき いない、高差圧下での低通気性に優れ、か 燃焼速度が低減された、軽量で安価なエア ッグ用織物を提供することにある。

 本発明者らは、樹脂に配合させる難燃剤 種類、樹脂と難燃剤を含む樹脂組成物の存 状態を検討した結果、ある特定の組合せに いて、織物基布への樹脂の付着量を低減し も燃焼速度を低減することができるという 従来の技術常識では予期できなかった特異 な燃焼挙動を示すことに着目した。

 具体的には、高密度織物基布の表面およ 裏面の単糸繊維間に、樹脂中に特定のマグ シウム化合物を特定量含有させた樹脂組成 を存在させることにより、樹脂組成物の付 量が少なくても、高差圧下での低通気性と 量性に優れ、さらに燃焼速度を顕著に低減 せることができることを見出し、本発明を 成させた。

 本発明のエアバッグ用織物(第1発明)は、以 の構成よりなる。
 すなわち、カバーファクターが1,800~2,500で る織物基布に樹脂組成物を付着させてなる アバッグ用織物であって、織物基布の表面 よび裏面の単糸繊維間に樹脂組成物が存在 、樹脂組成物の付着量が10~25g/m 2 であり、樹脂組成物は、樹脂とマグネシウム 化合物を含み、マグネシウム化合物は、水酸 化マグネシウム、酸化マグネシウム、あるい はそれらの混合物から選択され、樹脂組成物 を付着させた織物は、30℃での織物の質量を1 00質量部とし、昇温速度10℃/minで30℃から400 まで昇温させたとき、400℃での織物の質量 60質量部以下であることを特徴とするエアバ ッグ用織物である。

 第1の発明において、より好ましい実施形 態は、(a)樹脂組成物を付着させた織物の溶剤 抽出量が0.1~1.2質量%であることを特徴とする アバッグ用織物、(b)樹脂組成物に対するマ ネシウム化合物の含有量が33~60質量%である アバッグ用織物、(c)樹脂がシリコーン系樹 であり、かつ樹脂が水系エマルジョンの状 で含まれる、樹脂組成物の水系分散液を、 物基布に付着、乾燥させてなるエアバッグ 織物、(d)樹脂組成物の水系分散液の粘度が1 0~100mPa・sの範囲であり、樹脂組成物が含浸処 理により織物基布に付着、乾燥させてなる(c) に記載のエアバッグ用織物である。

 また、前記のエアバッグ用織物は、(e)FMVSS30 2法で測定した際の平均燃焼速度が60mm/min以下 であり、(f)織物を構成する経糸と緯糸の素材 がナイロン66であり、20kPaの差圧下での通気 が5×10 -2 L/cm 2 /min以下、であることが好ましい。

 また、本発明のエアバッグ用織物の製造方 (第2発明)は、以下の構成よりなる。
 すなわち、カバーファクターが1,800~2,500で る織物基布に、樹脂組成物の水系分散液を 含浸処理により付着、乾燥、熱処理して得 れるエアバッグ用織物の製造方法であって 樹脂組成物の水系分散液は、水系樹脂のエ ルジョン、マグネシウム化合物、及び水を み、マグネシウム化合物は、水酸化マグネ ウム、酸化マグネシウム、あるいはそれら 混合物から選択され、樹脂組成物の固形分 対するマグネシウム化合物の含有量が33~60質 量%であり、粘度が10~100mPa・sの範囲に調整さ 、織物基布に樹脂組成物を10~25g/m 2 の量で付着させ、織物基布の表面および裏面 の単糸繊維間に樹脂組成物を存在させること を特徴とするエアバッグ用織物の製造方法で ある。

 第2の発明において、より好ましい実施形 態は、(g)前記の乾燥、熱処理の工程において 、樹脂組成物を付着させた織物は、少なくと も1つのチャンバーを有する加工炉で、160~200 、15~120秒の範囲で乾燥、熱処理され、さら 加工炉における織物の表面の最高温度が125 以上となるように加工炉を通過させて、溶 抽出量を0.1~1.2質量%となるように調整する と、(h)水系樹脂がシリコーン系樹脂であり 樹脂組成物がさらに架橋剤を含み、熱処理 にシリコーン系樹脂を架橋させることであ 。

 また、前記のエアバッグ用織物の製造方法 おいて、(i)FMVSS302法で測定した際の平均燃 速度が60mm/min以下となるように、マグネシウ ム化合物の含有量、樹脂組成物の付着量、あ るいは水系分散液の粘度の少なくともいずれ かを調整すること、(j)織物を構成する経糸と 緯糸の素材がナイロン66であり、20kPaの差圧 での通気度が5×10 -2 L/cm 2 /min以下となるように、カバーファクター、 脂組成物の付着量、あるいは水系分散液の 度の少なくともいずれかを調整することが ましい。

 本発明によれば、エアバッグ用基布とし 必要な機械的特性を保持しつつ、低コスト 高差圧下でも低通気性に優れるエアバッグ 織物を提供することができる。また、自動 用の燃焼速度試験(FMVSS302法)において、平均 燃焼速度が60mm/min以下を達成させるエアバッ 用織物を提供することができる。さらに、 記のようなエアバッグ用織物を安価で効率 に得ることができる製造方法を提供するこ ができる。

「織物表面の樹脂組成物の存在率」を 価するための織物の経糸方向の断面の切断 置を示す模式図である。 「織物表面の樹脂組成物の存在率」を 価するための切断面の模式図である。 実施例8で得られた織物の経糸方向の断 面のSEM写真である。 図3の織物の経糸方向の断面の表面付近 を拡大したSEM写真である。 実施例8において、織物基布に樹脂組成 物を付着させる前の織物の表面のSEM写真であ る。 実施例8において、織物基布に樹脂組成 物を付着させた後の織物の表面のSEM写真であ る。 本発明の実施例1(水酸化マグネシウム) 比較例1(ブランク)、比較例3(水酸化アルミ ウム)における、織物の熱重量分析の減量曲 である。 本発明の実施例1(水酸化マグネシウム) 実施例3(酸化マグネシウム)の織物の熱重量 析の減量曲線である。

符号の説明

    1:切断面
    2:経糸方向
    3:織物表面の最小繰り返し単位
    4:織物の厚み
    5:実施例1(樹脂組成物:樹脂+水酸化マグ シウム)
    6:実施例3(樹脂組成物:樹脂+酸化マグネ ウム)
    7:比較例1(樹脂組成物:樹脂のみ)
    8:比較例3(樹脂組成物:樹脂+水酸化アル ニウム)

(基布)
 まず、本発明のエアバッグ用織物に適した 布の特徴を詳細に説明する。
 本発明で織物基布に使用する合成繊維とし は、例えば、ナイロン66、ナイロン6、ナイ ン46、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド繊維 、アラミド繊維のような芳香族ポリアミド繊 維、ポリエチレンテレフタレートやポリブチ レンテレフタレートなどのポリエステル繊維 が使用される。

 繊維はマルチフィラメント糸条の形態で いることが、高密度織物を製織しやすく、 張強力や引裂強力を大きくする上で好まし 。他の繊維としては、全芳香族ポリエステ 繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリ ェニレンサルファイド繊維、ポリエーテル トン繊維等が挙げられる。経済性を勘案す と、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が に好ましく、さらにエアバッグの展開時の 温ガスによる耐溶融性能を考慮すると、ポ アミド繊維が好ましく、特にナイロン66が ましい。

 これらの繊維は、その一部または全部が 利用された原材料より得られるものでもよ 。これらの合成繊維には、原糸製造工程や 加工工程での工程通過性を向上させるため 、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安 剤、平滑剤、帯電防止剤、増粘剤、他の難 剤等を含有していても何ら問題はない。ま 、この合成繊維糸条は、着色糸条であって 何ら問題はない。

 合成繊維糸条を用いて製織を行う際に、カ ーファクターは重要な指標である。
 カバーファクターが低いと、エアバッグと て必要な物理的特性(引張強力や引裂強力) 低下する。また、通気度に関しても、カバ ファクターが大きな影響を与える。カバー ァクターは、大きい方が低通気性の点から ましいが、大きすぎると、製織が困難にな 、あるいは硬くなり収納性が低下する。樹 加工後の織物のカバーファクターの下限は 1,800、好ましくは2,000、より好ましくは2,200 ある。一方、樹脂加工後の織物のカバーフ クターの上限は、2,500、好ましくは2,450、よ 好ましくは2,400である。なお、本発明に記 のカバーファクターは、下記式から算出す 。
 カバーファクター=√(経糸繊度[dtex])×(経糸 度[本/2.54cm])
         +√(緯糸繊度[dtex])×(緯糸密度[ /2.54cm])

 使用する原糸の総繊度は、100~600dtexであ ことが好ましい。原糸の総繊度の下限は、14 0dtexがより好ましく、特に好ましくは300dtexで ある。一方、原糸の総繊度の上限は、500dtex より好ましく、特に好ましくは470dtexである 原糸の総繊度が100dtex未満の場合は、エアバ ッグとして要求される引張強力及び引裂強力 が不足する場合がある。一方、原糸の総繊度 が600dtexを超える場合には、強力の点では問 はないが、収納性が低下する場合がある。

 また、該織物を構成する単糸繊度は7dtex 下であることが好ましく、より好ましくは6d tex以下、更に好ましくは4dtex以下である。単 繊度が7dtexを超えると、織物の柔軟性が損 われる場合がある。

 また、単糸繊度を小さくすることにより 単糸繊維間距離を小さくすることができ、 じカバーファクターであれば、通気度を低 させることができる。また、単糸繊度を小 くすると、繊維の表面積を大きくすること できるため、高差圧下での樹脂の界面破壊 抑えることができる。

 本発明で、織物基布に用いられる熱可塑 繊維糸条の沸水収縮率は6~15%であることが ましい。また、沸水収縮率の下限は8%である ことがより好ましい。沸水収縮率が15%より大 きいと、収縮後の織物の厚さが厚くなると同 時に、経緯方向の糸の間に隙間を生じてしま い、収納性に劣るだけでなく通気度の低減効 果も損なわれる場合がある。沸水収縮率が6% り小さいと、織物の織密度が高くならず、 物の通気度が低下するおそれがある。沸水 縮率は、下限が7%、上限が13%であることが らに好ましい。沸水収縮率は、JIS L-1095 9.24 法に準じて測定する。

 本発明における樹脂加工に用いる織物基 としては、樹脂加工前に精練、セット処理 行っても、行わなくてもよい。樹脂加工前 精練、セット処理、加熱処理を行う場合は 例えば、60~200℃の範囲で実施する。低通気 の点から、160℃以下で処理することが好ま い。熱処理は、例えばヒートセッターある は沸水バスなどの加熱手段を用い、経、緯 向のオーバーフィードを2~15%に制御するこ が可能な加工機を用い、残留収縮率を所定 範囲に制御すればよい。また、上記処理を わず、樹脂加工を行うことは本発明におい 更に良い効果を生み出す。

 製織に用いる織機は、例えば、エアージ ットルーム、レピアルーム、ウォータージ ットルームなどが例示されるが、特にウォ タージェットルームが好ましい。ウォータ ジェットルームを用いることにより、繊維 含まれている油剤等が洗浄され、精練工程 施すことなくコーティング布として使用す ことができる。

 該織物の厚みは、エアバッグとした際の 納性の点から、0.32mm以下であることが好ま く、より好ましくは0.30mm以下、特に好まし は0.29mm以下である。織物の厚みは、薄いほ が収納性に優れ好ましい。織物の厚みを薄 するためには、単糸繊度を小さくすること 有効な手段であるが、一方、単糸繊度を小 くすると織物の強力が低下するという問題 ある。そのため、織物の厚みの下限は、織 の強力の低下を抑える点から、0.22mmが好ま く、より好ましくは0.25mmである。

(樹脂組成物)
 本発明において、織物基布の表面及び裏面 単糸繊維間に付着させる樹脂組成物は、樹 とマグネシウム化合物を含む。

 それ以外の樹脂組成物の成分としては、 えば、樹脂が水系シリコーン樹脂エマルジ ンの場合には、樹脂を熱処理により硬化さ る架橋剤、織物を構成するフィラメントと 密着性を向上させる接着助剤、例えばシラ カップリング剤などが挙げられる。

 樹脂は、織物の通気度を低減させること 主目的とするが、マグネシウム化合物を担 するバインダーとしての機能も有する。樹 としては、例えば、ポリウレタン系、ポリ ステル系、ポリアミド系、アクリル系、シ コーン系、ポリエチレン系、スチレンブタ エン系、ニトリルブタジエン系等のエラス マー樹脂が挙げられるが、基布への接着力 樹脂の伸度等を考慮すると、ポリウレタン 、アクリル系、シリコーン系の樹脂が好ま い。これらの樹脂の中でも、基布の柔軟性 点から、シリコーン系樹脂が特に好ましい

 また、基布に樹脂組成物を付着させるた には、水系分散液の状態で付着、乾燥、必 に応じて熱処理することが、環境面のみな ず、本発明の効果を得るために好ましい。 のような点から、樹脂も水系エマルジョン 状態で用いることが好ましい。水系エマル ョンを用いると、織物の両面の単糸繊維間 樹脂組成物を存在させやすくなる。シリコ ン樹脂の水系エマルジョンを用いる場合に 、付加重合型ポリオルガノシロキサンを含 する水系エマルジョンが好ましい。

 また、本発明では、樹脂組成物を構成す マグネシウム化合物として、水酸化マグネ ウム、酸化マグネシウム、あるいはそれら 混合物を使用する。

 水酸化マグネシウムを用いる場合、その 度が酸化マグネシウム換算で60質量%以上で ることが好ましく、さらに好ましくは65質 %以上である。酸化マグネシウムもこれに準 る。本発明に記載のマグネシウム化合物の 有量は、不純物も含む含有量を意味する。

 水酸化マグネシウムは、海水とアルカリを 応させる方法、酸化マグネシウムと水を作 させる方法、あるいは天然の鉱床から産出 れた鉱石を粉砕する方法により製造される コストの点から、海水とアルカリを反応さ る方法が好ましい。例えば、海水を精製し シリカや炭酸イオンなどの不純物を除去し 後、精製した石灰乳を加えて水酸化マグネ ウムを析出させ、この析出物を洗浄・濃縮 ろ過・乾燥して、水酸化マグネシウム微粒 を製造する方法が挙げられる。
 また、酸化マグネシウムは、例えば、前記 水酸化マグネシウムを焼成することにより られる。

 そのため、水酸化マグネシウムや酸化マグ シウム中には、それらの製造時に使用する 料由来の未反応物が、不純物として微量残 する。例えば、マグネシウム化合物を焼成 た後の不純物の成分は、CaO、SO 3 、Cl、SiO 2 などが挙げられる。

 このマグネシウム化合物は、樹脂組成物 水分散液を調整する際に、樹脂とともに均 に分散させた状態で、織物に付着、乾燥さ る。このように、樹脂組成物中にマグネシ ム化合物を分散させることで、基布を構成 る合成繊維に、マグネシウム化合物を多く 触させることができる。

 本発明では、樹脂組成物中にマグネシウ 化合物を分散させた構造にすることにより 通気度の低減効果だけではなく、マグネシ ム化合物による燃焼試験時の熱による合成 維の分解も促進し、結果として燃焼速度の 減にも寄与することを見出した点が、本発 の新規な技術思想である。

 このような基布を構成する樹脂の熱分解 媒としての作用効果は、特定のマグネシウ 化合物を使用した場合に発現する特有の燃 挙動であり、例えば、水酸化アルミニムを いた場合には、熱分解触媒としての作用効 は発現しない。このことは、図7の熱減量曲 線から明確である。

 図7の熱減量曲線に示されているように、 水酸化マグネシウムを含む樹脂組成物を付着 させた織物(符号5;実施例1)では、樹脂のみを 着させた織物(符号7;比較例1)よりも織物の 量の減少が早いことが分かる。一方、水酸 アルミニウムを含む樹脂組成物を付着させ 織物(符号8;比較例3)は、樹脂のみを付着させ た織物(符号7;比較例1)とほぼ同じ熱減量曲線 示していることがわかる。

 また、酸化マグネシウムも、水酸化マグ シウムと同様に、合成繊維の熱分解を促進 る作用効果を示すことが図8の熱減量曲線に 示されている。

 本発明では、水酸化マグネシウム、酸化 グネシウム、あるいはそれらの混合物が付 された基布を加熱処理した場合、30℃での 量を100質量部とした際に、400℃での質量は60 質量部以下となるように、マグネシウム化合 物を配合、配置させることが重要である。な お、30℃から400℃への昇温速度は10℃/minであ 。

 上記の熱減量特性を有する本発明のエアバ グ用織物における「燃焼速度が低減するメ ニズム」は、次のように考えられる。
 (1)水酸化マグネシウムや酸化マグネシウム 、一定の温度(およそ300℃)以上となると、 布を構成する樹脂の熱分解触媒としての役 を果たし、燃焼時の炎の温度(およそ500℃)よ りも低い温度において基布の分解を促進させ る。
 (2)この分解により、基布内に含まれている 可燃物」が、燃焼時の炎が到達する前に低 子化され系外に放出される。このため、燃 が継続しなくなり、燃焼速度を低減するこ ができる。

 より低い温度において、分解が多く進む 難燃性は達成されるが、実使用時の温度範 での織物基布の強力等も考慮し、30℃での 量を100質量部とした際に、加熱時の質量は30 0℃時点で90質量部以上であることが好ましい 。また、400℃では60質量部以下、好ましくは5 5質量部以下である。400℃での質量が20質量部 以下となるようにすることは、展開試験時の 熱による強力低下も懸念されるため好ましく ない。このような点から、400℃での質量は、 25質量部以上であることが好ましく、より好 しくは30質量部以上である。

 本発明では、前記の30℃での質量を100質 部とした際に、400℃での質量を60質量部以下 とするための手段の1つとして、樹脂組成物 対するマグネシウム化合物の含有量が33~60質 量%であることが好ましい。

 樹脂組成物中のマグネシウム化合物の質量 をa、それ以外の樹脂を含む固形分の質量比 をbとした場合、マグネシウムの含有量(質量% )は、「a/b」または「a/(a+b)」で表現され、下 式を満足することが好ましい。なお、「a+b は100質量%である。
 50≦(a/b)×100≦150
 33≦(a/(a+b))×100≦60

 なお、樹脂組成物を付着、乾燥、熱処理 せた後の織物から、樹脂組成物中のマグネ ウム元素を定量する方法としては、例えば 蛍光X線分析法や、ICP(Inductively coupled plasma, 誘導結合プラズマ)発光分析法が挙げられる なお、ICP発光分析法を用いる場合には、試 を灰化した後、残留物を酸で溶解して溶液 する。また、マグネシウム化合物が、水酸 マグネシウム、酸化マグネシウム、あるい それらの混合物であることを同定するため は、例えば、質量分析などの公知の方法を いればよい。また、マグネシウム化合物の 性および定量には、例えば、ICP-MS(誘導結合 ラズマ質量分析装置)を用いることができる 。

 通気度と燃焼速度の低減効果をいずれも 上させる点から、樹脂組成物に対するマグ シウム化合物の含有量の下限を33質量%とす ことが好ましく、より好ましくは37質量%と 、特に好ましくは41質量%とする。一方、皮 を十分に形成させ、通気度の低下や剥れを 制する点から、樹脂組成物に対するマグネ ウム化合物の含有量の上限を60質量%とする とが好ましく、より好ましくは58質量%とし より好ましくは56質量%とする。

 マグネシウム化合物の含有量を「a/b」で 現する場合も、上記の式の下限と上限の技 的意義は上記の「a/(a+b)」の場合と同様であ る。

 また、使用するマグネシウム化合物(水酸 化マグネシウム、酸化マグネシウム)は、18℃ の水に対し、5mg/L以上溶解することが好まし 。水系樹脂を使用する際に、僅かでも溶解 るマグネシウム化合物を使用することで、 グネシウム化合物の分散性を改善すること できる。マグネシウム化合物の溶解量は、 形分を溶解させた溶液から固形分を除去し 後、水分だけを除去(蒸発)させて残った固 分の質量を測定することで算出することが きる。

 また、本発明において、マグネシウム化合 は樹脂中に粒子として存在する。
 マグネシウム化合物粒子の平均粒径は、樹 中の分散性の向上の点から、2μm以下である ことが好ましく、より好ましくは1μm以下で り、さらに好ましくは0.5μm以下である。マ ネシウム化合物の平均粒径は、走査型電子 微鏡を用いて写真撮影した後、マグネシウ 化合物の粒子をランダムに100点以上測定し それぞれの長径を求める。この長径の平均 により算出する。

 (マグネシウム化合物の表面処理剤)
 また、本発明では、マグネシウム化合物粒 は表面処理を行っていないものを選択して 用することが好ましい。マグネシウム化合 粒子の表面を、高級脂肪酸系処理剤、シラ 系処理剤、界面活性剤で処理したものを使 した場合、前記で説明した本発明の難燃機 である「マグネシウム化合物による有機樹 の熱分解」が、マグネシウム化合物粒子の 面処理剤により妨げられるため、難燃効果 低減するからである。また、水系で使用す 場合は、マグネシウム化合物粒子に表面処 を行うと、逆に分散性を悪化させるため好 しくない。

 (溶剤抽出量)
 本発明において、燃焼速度をさらに低減す ために、織物基布に樹脂組成物を付着させ 後の織物の溶剤抽出量は、0.1~1.2質量%であ ことが好ましい。この溶剤抽出量には、樹 組成物を付着させる前から含まれる、「紡 油剤」や「整経油剤」等も含まれるが、注 すべきは樹脂組成物を付着させた後に新た 抽出される化合物である。樹脂が熱硬化型 脂の場合、樹脂の硬化反応が不十分である 、残留モノマーやオリゴマー等、比較的分 量が低い化合物が、溶剤により抽出される この樹脂中に残存する低分子量の化合物を 減させることが、本発明においてさらに優 た難燃効果を発現させるための重要な要因 1つであることを見出した。このことは、前 で説明した本発明の難燃機構である「マグ シウム化合物による有機樹脂の熱分解」が 樹脂の硬化反応時に未反応あるいは反応不 により残存する、比較的分子量の低い化合 により妨げられ、難燃効果が低減するため あると考えられる。

 樹脂由来の低分子量の化合物が多量に存 し、溶剤抽出量が1.2質量%を越える場合には 、樹脂皮膜の形成が不十分となると同時に、 この樹脂由来の低分子量の化合物により、上 述した難燃機構が妨げられ、難燃性のさらな る改良効果が得られなくなる。樹脂が付着さ れた織物の溶剤抽出量は、1.0質量%以下がさ に好ましく、特に好ましくは0.9質量%以下で る。溶剤抽出量は少ない方が好ましいが、 糸時や整経時に付与される油剤、及び樹脂 来の低分子量の化合物を含め、0.2質量%以上 の範囲であれば実用上問題なく、好ましくは 0.3質量%以上である。

 溶剤抽出量を低減させるためには、樹脂 硬化反応を促進させることが好ましい。樹 の硬化反応を促進する方策としては、触媒 を調整する方法、樹脂の反応箇所(例えば、 架橋点)を増やす加工剤を使用する方法、該 脂を付着させた織物の熱処理時間を調整す 方法が挙げられる。樹脂組成物を付着させ 織物に熱処理する際、織物の表面の最高温 は、125℃以上が好ましく、より好ましくは13 0℃以上である。樹脂組成物を付着させた織 に熱処理する際の温度が高すぎると、織物 布の合成繊維が溶融して、強力が低下する 合があるため、熱処理温度は、220℃以下が ましく、より好ましくは200℃以下、さらに ましくは180℃以下である。

(基布への樹脂組成物の付着)
 樹脂組成物を織物に付着させる方法として 、例えば、ナイフコート、コンマコート、 イコート、グラビアロールコート、キスロ ルコート、スプレー法、ディップ法(含浸法 )等が挙げられる。使用する樹脂組成物の水 分散液の粘度、織物への樹脂組成物の含浸 態を考慮して適切な設備を選択すればよい

 織物基布の表面及び裏面の単糸繊維間に付 させる樹脂組成物の量は、低通気性と燃焼 度の低減の点から、10~25g/m 2 に制御する。樹脂組成物の付着量の下限は、 12g/m 2 が好ましく、より好ましくは15g/m 2 である。一方、樹脂組成物の付着量の上限は 、22g/m 2 が好ましく、20g/m 2 が特に好ましい。なお、この樹脂組成物の付 着量は、樹脂組成物の組成により比重が異な るので、上記の範囲内で適切な範囲に制御す ることが好ましい。

 樹脂組成物の付着量が10g/m 2 より少ない場合には、皮膜の形成が十分でな く、低い通気度を得ることが困難になる。一 方、樹脂組成物の付着量が25g/m 2 を超える場合には、低通気性の点からは好ま しいが、基布の目付が増し、重くなるととも に、収納性が低下する。

 織物基布の表面及び裏面の単糸繊維間に付 させる樹脂組成物の量は、樹脂組成物を付 させる前の織物基布の目付けと、樹脂組成 を付着させた後の織物との目付けの差から 出し、「g/m 2 」の単位で示す。

 本発明においては、前記の樹脂組成物を 織物基布の表面及び裏面の単糸繊維間に、 定量、存在させることが重要である。単糸 維間に樹脂組成物を存在させることで、基 の表層の上にのみ樹脂層が存在する場合に べ、より少ない樹脂組成物の付着量で通気 を低減させる効果が得られる。

 図6は、織物基布に樹脂組成物を付着させ た後の織物の表面のSEM写真(実施例8)を示す。 図4は、実施例8で得られた織物の経糸方向の 面の表面付近を拡大したSEM写真であり、織 基布の表面の単糸繊維間の隙間が樹脂組成 で埋められていることが観察される。

 織物基布の表面及び裏面の単糸繊維間に 脂組成物を存在させる方法としては、上述 た樹脂組成物の付着方法を用いて、1回のコ ートで完了させることが、工程の短縮化が可 能となり、低コストの点から好ましい。例え ば、グラビアロールコート、キスロールコー ト、スプレー法、ディップ法(含浸法)を用い 、樹脂組成物の水系分散液の粘度を調整す ことにより、基布の両面の単糸繊維間に樹 組成物を比較的容易に付着させる、実質的 両面コートが可能となる。

 樹脂組成物は水系分散液として織物に基 に付着させることが好ましく、樹脂組成物 水系分散液の粘度は、10~100mPa・sの範囲が好 ましく、より好ましくは、下限が20mPa・sであ り、上限は50mPa・sである。

 樹脂組成物の水系分散液の粘度を10~100mPa sの範囲に調整することが、織物基布の表面 及び裏面のごく近傍の単糸繊維間に、樹脂組 成物を効率よく偏在化させる点から有効であ る。さらに、織物基布に上記の粘度範囲に調 整した樹脂組成物の水系分散液を付着させる 方法として、ディップ法(含浸法)を用いると さらに効率よく安価なエアバッグ用織物を ることができる。織物基布の表面及び裏面 ごく近傍の単糸繊維とは、織物基布を構成 るマルチフィラメントの表面及び裏面から 部に垂直方向から1~2本目に位置する単糸繊 を意味する。

 さらに、前記の難燃機構を発揮し、燃焼 度を平均60mm/min以下とするために、織物中 存在する樹脂組成物の状態は非常に大切で る。本発明において、前記のマグネシウム 合物が織物の単糸繊維内にできるだけ多く 在させることが重要である。このために織 内の樹脂組成物の存在状態が重要となる。

 樹脂組成物を付着させた織物の断面写真 おいて、後述する「織物表面の樹脂組成物 存在率」が小さい方が好ましい。織物表面 樹脂組成物の存在率とは、織物を構成する ルチフィラメントの単糸繊維内への樹脂組 物の含浸の程度を示す指標であり、織物表 の樹脂組成物の存在率が小さいほど、織物 部に樹脂組成物が含浸されている程度が大 いことを意味する。

 織物表面の樹脂組成物の存在率は、5質量 %以下であることが好ましく、より好ましく 4質量%以下、特に好ましくは3.5質量%以下で る。樹脂組成物が所定の付着量にも関わら 、織物表面に5質量%より多く存在しているこ とは、樹脂組成物が織物内部に含浸されてい ないことを示し、難燃機構を発揮することが 困難になる。

 織物表面の樹脂組成物の存在率を5質量% 下にするためには、特定の粘度を有する樹 組成物の水系分散液を、織物基布に含浸処 させた後、ゴムロールで構成されたマング で絞る方法を用いることが最も好ましい。

 織物基布に樹脂組成物を付着させた際、 着された樹脂は、経糸、緯糸の交差部分に 在して存在することが多い。しかし、通気 や燃焼速度の低減効果を得るためには、繊 -繊維間に膜を形成すれば十分であり、交差 部分に偏在する樹脂組成物の付着量は少なけ れば少ない方が好ましい。

 織物の強度を低減させない範囲で、単糸 度を細くすることは、樹脂組成物を織物の 糸、緯糸の交差部分に偏在させずに、樹脂 成物の付着量を低減する効果があり、好ま い実施形態である。この理由は、単糸繊度 細くなると繊維-繊維間の空隙が小さくなり 、樹脂が毛細管現象により内部まで浸透する ため、樹脂組成物の偏在が小さくなると考え られる。また、同様の効果は張力をかけて単 糸を引き揃えることでも見られる。

 エアバックの展開後に圧力保持性を要求 れるようなエアバック用織物は、高圧負荷 掛かることで、膜の破壊、単糸と樹脂との 着面の剥離などにより、通気度が増大する とは好ましくない。したがって、20kPa以上 大きい差圧での通気度の評価が好ましい。

 本発明のエアバッグ用織物は、20kPaの圧力 織物に与えた時の通気度が、5×10 -2 L/cm 2 /min以下であることが好ましい。通気度が5.0× 10 -2 L/cm 2 /minよりも高いと、低通気用エアバッグ用織 として好ましくない。好ましくは3.0×10 -2 L/cm 2 /min以下、より好ましくは1.0×10 -2 L/cm 2 /min以下である。エアバッグの機能として、 気度は小さいほうが好ましいが、軽量性、 納性の点から、20kPaの差圧下での通気度の下 限は、5.0×10 -4 L/cm 2 /minが好ましい。通気度を5.0×10 -4 L/cm 2 /minよりも小さくしようとすると、織物基布 付着させる樹脂組成物の量を多くすること 必要になり、軽量性、収納性の点で好まし ない。

 また、100kPaの圧力を織物に与えた時の通気 の上限は、1.0L/cm 2 /minであることが好ましい。一方、100kPaの差 下での通気度の下限は、軽量性、収納性、 ストの点から、1×10 -2 L/cm 2 /minが好ましい。

 100kPaの圧力下における織物の通気度を1×10 -2 L/cm 2 /minよりも低くするために、繊維の使用量を やして、織物のカバーファクターを高くす 、あるいは樹脂組成物の付着量を多くする 、織物の柔軟性の低下、質量の増加ととも 、エアバッグとした際の収納性が低下し、 造コストも高くなる。これらのことを考慮 ると、100kPaの圧力下における通気度の下限 、5.0×10 -2 L/cm 2 /minがより好ましく、特に好ましくは1.0×10 ‐1 L/cm 2 /minである。

 一方、100kPaの圧力下における織物の通気度 、1.0L/cm 2 /minよりも大きい場合、ノンコート布との通 度の差が小さくなり、側面衝突用のサイド アバッグやカーテンシールドエアバッグな 、より低通気度が要求されるエアバッグに 用するには不十分である。100kPaの圧力下に ける織物の通気度の上限は、0.8L/cm 2 /minがより好ましい。

 本発明のエアバッグ用織物は、カバーファ ターが1800~2500である織物基布に、特定の樹 組成物の水系分散液を、含浸処理により、 物基布に樹脂組成物を付着、乾燥、熱処理 せることにより得られる。この乾燥、熱処 の際に、樹脂組成物を付着させた織物は、 なくとも1つのチャンバーを有する加工炉で 、160~200℃、15~120秒の範囲で乾燥、熱処理さ 、さらに加工炉における織物の表面の最高 度が125℃以上となるように加工炉を通過さ て、織物基布に樹脂組成物を10~25g/m 2 の量で付着させ、かつ溶剤抽出量を0.1~1.2質 %となるように調整し、織物基布の表面およ 裏面の単糸繊維間に樹脂組成物を存在させ 方法を採用することが好ましい。

 本発明のエアバッグ用織物の製造に際し 、樹脂組成物を付着させた織物は、少なく も1つのチャンバーを有する加工炉を用いて 、乾燥、熱処理を行うが、加工炉は複数のチ ャンバーを配していることが好ましい。

 織物基布に樹脂組成物の水系分散液を付 させた後、この水系分散液を乾燥、硬化さ る方法としては、熱風、赤外線、マイクロ ェーブ等など、一般に用いられる加熱方法 使用される。水系分散液中の気泡の形成を 避するためには、第一のチャンバーの設定 度を100℃以下に制御することが好ましく、 り好ましくは80~100℃、更に好ましくは90~100 での予備乾燥を行うことである。第二のチ ンバーでは、140~220℃、好ましくは150~200℃ さらに好ましくは160~190℃で、樹脂組成物の 化(安定固着)を行う。付着させた樹脂組成 が硬化するのに十分な温度に達していれば 2つの温度領域でなく、さらにチャンバーを 分化しても構わない。加工炉における樹脂 工織物の表面の最高温度を125℃以上となる うに、加工炉を通過する樹脂加工織物の速 を調整すれば、硬化のために必要な時間は 樹脂組成物の付着量、付着された材料上へ 熱伝導性に応じて、15~120秒の範囲内で適宜 整すればよい。

 上記の乾燥、硬化が行われているチャン ーに織物が通過中に、織物を経糸方向また 緯糸方向のいずれかに少なくとも固定、あ いは伸張させると、より低い通気度が得ら る。経糸方向の伸張は、送り出し速度と巻 取り速度の少なくとも一方を変更できる装 を用い、速度の差により発現することがで 、速度差比(%)が伸張率となる。

 緯糸方向の伸張量は、織物の端部を把持 、幅変更のできる装置を用い、把持後必要 量を緯糸方向に移動させることで伸張率を 更することができる。また、織物の糸が有 ている収縮率も重要な伸張因子となりうる 乾燥、加工時において両方向を同時に伸張 る必要はなく、少なくともいずれか一方を 張することで低通気度を達成することがで る。

 燃焼速度は、FMVSS302法により評価される 一般的には、FMVSS302法において、平均燃焼速 度が100mm/min以下であることが必要とされるが 、平均燃焼速度は60mm/min以下が好ましく、よ 好ましくは50mm/min以下である。

 次に、実施例を用いて、本発明をさらに しく説明する。なお、実施例中における各 評価は、下記の方法を用いた。

(1)繊度
 JIS L-1095 9.4.1記載の方法で測定した。
(2)フィラメント数
 繊維糸条の断面写真よりフィラメント数を えた。
(3)沸水収縮率
 JIS L-1095 9.24記載の方法で測定した。
(4)織物の密度
 JIS L-1096 8.6.1記載の方法で測定した。
(5)厚さ
 JIS L-1096 8.5.1記載の方法で測定した。

(6)残留収縮率
 JIS L-1096 8.64.4記載の方法で標線を書き加え た試料を準備し、150℃×30分間、張力を掛け い状態でオーブンに入れ、常温に戻し標線 を測定した。測定値は、JIS L-1909 9記載の方 法を用い収縮した側をプラスとした。

(7)樹脂組成物の付着量
 織物基布に樹脂組成物を付着させる際と同 条件に設定した加工機を用い、樹脂組成物 付着させない条件で、織物を処理した。こ 織物基布の目付けA(g/m 2 )をJIS L-1096 8.4.2を用いて測定した。一方、 物基布に樹脂組成物を付着させる加工を行 、樹脂組成物を付着させた織物の目付けB(g/m 2 )を上記と同様の方法で測定を行った。両者 目付けの差(B-A)を樹脂組成物の付着量(g/m 2 )とした。

(8)溶剤抽出量
 JIS L-1096 8.36.1 A法に準拠して測定した。溶 剤抽出量の測定手順は下記の通りである。
 樹脂加工を行った基布約5gを採取し、絶乾 量W(g)を求めた。ソックスレー抽出機に基布 、フラスコに100ml~120mlのノルマルヘキサン 入れ、水浴上で抽出液が弱く沸騰を保つ程 に4時間加熱した。なお、4時間加熱後、ソッ クスレー抽出機中にたまった溶液もフラスコ に加えた。
 フラスコ内容物を5ml以下に濃縮(揮発)した 、あらかじめ絶乾質量A0(g)を求めたはかり瓶 に移した。抽出に用いたフラスコは、約40℃ ノルマルヘキサンで洗浄し、洗液をはかり に加えた。水浴上でノルマルヘキサンを揮 させた後、その残分の絶乾質量A1(g)を測定 た。次いで、溶剤抽出量E0を次の式によって 算出した。
 E0(%)=((A1-A0)/W)×100

(9)樹脂組成物の水系分散液の粘度
 JIS K-7117記載の方法を用いB型粘度計で測定 た。
(10)通気度
 20kPa、並びに100kPaの差圧下での通気度を、 圧通気度測定機(OEMシステム(株)製)を用いて 定した。

(11)加熱下の質量測定(400℃での質量)
 熱天秤装置(TA instruments社製、Q50)を用い、 料を約10mg採取し、30℃から400℃までの温度 囲にかけて、昇温速度10℃/minで質量の変化 測定した。なお、測定は空気雰囲気下で行 た。30℃での試料の質量を100質量部として、 該当温度での質量(質量部)を評価した。
(12)燃焼速度
 FMVSS302法を用いて燃焼速度を測定した。経 方向及び緯糸方向にそれぞれn=5で測定し、 定結果の平均値を燃焼速度(mm/min)とした。

(13)織物表面の樹脂組成物の存在率
 織物の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用 て写真撮影し、樹脂組成物の存在状態を評 した。なお、切断面は、図1に示すような経 上の凸の部分の頂点に直行する位置である SEM写真から、図2に示すような経糸断面に見 られる織物の最小繰り返し単位内を10等分し 10等分された箇所の樹脂組成物の厚みを測 し、その平均値を求めた。なお、表面、裏 で樹脂組成物の存在率が異なるときは、樹 組成物の厚みの厚い方の測定値を使用する 織物の厚さTaから樹脂組成物の厚みTbを割り した値を「織物表面の樹脂組成物の存在率( %);(Tb/Ta)×100」とした。

(14)炉内の織物の表面の最高温度
 乾燥炉に樹脂加工織物を通過させる前に、 ーモラベル(理化学機器製)を樹脂加工織物 表面に貼付し、乾燥炉を通過した後、サー ラベルの色の変化を観測した。炉内の織物 表面の最高温度は、サーモラベルが示す変 部分の最高温度(℃)とした。

実施例1
 総繊度が350dtex、108フィラメント、強度が8.3 cN/dtex、沸水収縮率が9.0%のナイロン66のマル フィラメントを用い、ウォータージェット ームにて平織組織を製織し、95℃の温水で収 縮加工後、130℃で乾燥させて、織物基布を得 た。得られた加工前の織物基布の物性を表1 示す。

 次いで、次の組成からなる樹脂組成物の水 分散液Bを、上記の織物基布に含浸処理させ た後、ゴムロールで構成されたマングルで絞 り、表1に示す温度、時間、伸長率の条件で 工を行った。なお、表1に示す加工時伸張率 0%とは、固定のみを行ったことを示す。加 後の織物の物性は、表1に示す通りである。 物に付着されている樹脂組成物の付着量は 加工後の織物の重さから加工前の基布の重 を引き、算出した。測定用試料は、20cm×20cm を切り出し、加工前と加工後の織物の質量を 測定した。次いで、それらの質量の差を25倍 じて、樹脂組成物の付着量(g/m 2 )を算出した。

(樹脂組成物の水系分散液B)
 (1)配合液Aの調整
  (a)水系シリコーンエマルジョン 83質量部
     (ワッカーシリコーン社製、Dehesive 457 ;固形分濃度 50質量%)
  (b)オルガノポリシラキサン   12質量部
     (ワッカーシリコーン社製、Closslinker  V72;固形分濃度 50質量%)
 (c)シランカップリング剤     5質量部
     (ワッカーシリコーン社製、Silane HF86)

 配合液Aの調整において、(a)と(b)を混合さ せることで、付加重合型のシリコンゴムの水 系エマルジョンとなる。(c)は、接着性を改善 させるための接着助剤である。上記の(a)、(b) 、(c)を混合し、配合液Aを調整した。

 (2)マグネシウム化合物
 マグネシウム化合物として、水酸化マグネ ウム(ナカライテスク社製、無処理品、化学 用、純度95%)を用いた。

(3)樹脂組成物の水系分散液Bの調整
 配合液A100質量部に対し、上記の水酸化マグ ネシウムを44質量部混合し、分散させた。配 液Aの固形分の質量に対し、水酸化マグネシ ウムの質量は84質量%である。また、樹脂組成 分に対する水酸化マグネシウムの含有量は、 46質量%である。この樹脂組成物の水系分散液 Bの粘度(B型粘度計で測定)は、30mPa・sであっ 。

 実施例1で得られた加工後の織物は、断面 のSEM写真から、織物基布の表面および裏面の 単糸繊維間に効率よく樹脂組成物が存在して いることが確認され、高差圧下での低通気性 に優れ、かつ燃焼速度も低く、エアバッグ用 織物として好ましいものであった。

実施例2
 総繊度が350dtex、72フィラメント、強度が8.4c N/dtex、沸水収縮率が9.4%のナイロン66のマルチ フィラメントを用い、ウォータージェットル ームにて平織組織を製織し、95℃の温水で収 加工後、130℃で乾燥させて、織物基布を得 。得られた加工前の織物基布の物性を表1に 示す。

 次いで、実施例1と同じ組成の樹脂組成物 の水系分散液Bを、上記の織物基布に含浸処 させた後、ゴムロールで構成されたマング で絞り、表1に示す温度、時間、伸長率の条 で加工を行った。加工後の織物の物性は、 1に示す通りである。また、織物に付着され ている樹脂組成物の付着量は、実施例1と同 にして求めた。

 実施例2で得られた加工後の織物は、実施 例1で得られた加工後の織物と比べ、単糸繊 (dpf)が太くなったものの、実施例1と同様に 断面のSEM写真から、織物基布の表面および 面の単糸繊維間に効率よく樹脂組成物が存 していることが確認された。また、高差圧 での低通気性に優れ、かつ燃焼速度も低く エアバッグ用織物として好ましいものであ た。

実施例3
 実施例1と同じナイロン66のマルチフィラメ トを用い、ウォータージェットルームにて 織組織を製織し、95℃の温水で収縮加工後 130℃で乾燥させて、織物基布を得た。得ら た加工前の織物基布の物性を表1に示す。

 次いで、下記の組成からなる樹脂組成物 水系分散液Cを用い、上記の織物基布に含浸 処理させた後、ゴムロールで構成されたマン グルで絞り、表1に示す温度、時間、伸長率 条件で加工を行った。加工後の織物の物性 、表1に示す通りである。また、織物に付着 れている樹脂組成物の付着量は、実施例1と 同様にして求めた。

(樹脂組成物の水系分散液Cの調整)
 配合液A100質量部に対し、酸化マグネシウム (ナカライテスク社製、無処理品、化学用、 度95%)を44質量部混合し、分散させた。配合 Aの固形分の質量に対し、酸化マグネシウム 質量は84質量%である。また、樹脂組成分に する酸化マグネシウムの含有量は、46質量% ある。この樹脂組成物の水系分散液Cの粘度 (B型粘度計で測定)は、25mPa・sであった。

 実施例3は、実施例1に対して、マグネシウ 化合物として酸化マグネシウムを用いた例 ある。
 しかしながら、実施例3で得られた加工後の 織物は、断面のSEM写真から、織物基布の表面 および裏面の単糸繊維間に効率よく樹脂組成 物が存在していることが確認され、高差圧下 での低通気性に優れ、かつ燃焼速度も低く、 エアバッグ用織物として好ましいものであっ た。

実施例4
 実施例1と同じナイロン66のマルチフィラメ トを用い、ウォータージェットルームにて 織組織を製織し、95℃の温水で収縮加工後 130℃で乾燥させて、織物基布を得た。得ら た加工前の織物基布の物性を表1に示す。

 次いで、下記の組成からなる樹脂組成物 水系分散液Dを用い、上記の織物基布に含浸 処理させた後、ゴムロールで構成されたマン グルで絞り、表1に示す温度、時間、伸長率 条件で加工を行った。加工後の織物の物性 、表1に示す通りである。また、織物に付着 れている樹脂組成物の付着量は、実施例1と 同様にして求めた。

(樹脂組成物の水系分散液Dの調整)
 配合液A100質量部に対し、水酸化マグネシウ ム(ナカライテスク社製、無処理品、化学用 純度95%)を30質量部混合し、分散させた。配 液Aの固形分の質量に対し、水酸化マグネシ ムの質量は57質量%である。また、樹脂組成 に対する水酸化マグネシウムの含有量は、3 6質量%である。この樹脂組成物の水系分散液D の粘度(B型粘度計で測定)は、20mPa・sであった 。

 実施例4は、実施例1に対して、樹脂組成物 の水酸化マグネシウムの含有量を少なくし 例である。
 しかしながら、樹脂組成物中の水酸化マグ シウムの含有量を所定の範囲としたため、 施例4で得られた加工後の織物は、断面のSEM 写真から、織物基布の表面および裏面の単糸 繊維間に効率よく樹脂組成物が存在している ことが確認され、高差圧下での低通気性に優 れ、かつ燃焼速度も低く、エアバッグ用織物 として好ましいものであった。

実施例5
 総繊度が470dtex、144フィラメント、強度が8.4 cN/dtex、沸水収縮率が9.3%のナイロン66のマル フィラメントを用い、ウォータージェット ームにて平織組織を製織し、95℃の温水で収 縮加工後、130℃で乾燥させて、織物基布を得 た。得られた加工前の織物基布の物性を表1 示す。

 次いで、下記の組成からなる樹脂組成物 水系分散液Eを用い、50cm×50cmに切り出した 記の織物基布に含浸処理させた後、ゴムロ ルで構成されたマングルで絞った。さらに 経緯が固定できる枠に、加工後の織物の経 を表1に記載の長さに伸張させて、50cm×50cmの 織物を固定した。次いで、第1チャンバー及 第2チャンバーを有する加工炉の温度を調整 、表1に記載の温度、時間、伸長率で加工を 行った。表1に、加工時伸長率が緯糸方向で フリー」との記載があるが、これは緯糸方 の固定を行わずに加工を行ったことを意味 る。加工後の織物の物性は、表1に示す通り ある。また、織物に付着されている樹脂組 物の付着量は、実施例1と同様にして求めた 。

(樹脂組成物の水系分散液Eの調整)
 配合液A100質量部に対し、水酸化マグネシウ ム(ナカライテスク社製、無処理品、化学用 純度95%)を60質量部混合し、分散させた。配 液Aの固形分の質量に対し、水酸化マグネシ ムの質量は114質量%である。また、樹脂組成 分に対する水酸化マグネシウムの含有量は、 53質量%である。この樹脂組成物の水系分散液 Eの粘度(B型粘度計で測定)は、60mPa・sであっ 。

 実施例5は、実施例1に対して、ナイロン66の マルチフィラメントの総繊度を太く、織密度 を低くし、さらに樹脂組成物中の水酸化マグ ネシウムの含有量を多くした例である。
 しかしながら、樹脂組成物中の水酸化マグ シウムの含有量を所定の範囲としたため、 施例5で得られた加工後の織物は、断面のSEM 写真から、織物基布の表面および裏面の単糸 繊維間に効率よく樹脂組成物が存在している ことが確認され、高差圧下での低通気性に優 れ、かつ燃焼速度も低く、エアバッグ用織物 として好ましいものであった。

実施例6
 実施例6は、実施例5と同じ原糸を用い、織 度のみを実施例5よりも低くして、カバーフ クターを小さくしたこと、および樹脂組成 の水系分散液を実施例1で用いた水系分散液 Bに変更したこと以外は、実施例5と同様にし 加工織物を製造した例である。
 しかしながら、カバーファクターを所定の 囲としたため、実施例6で得られた加工後の 織物は、断面のSEM写真から、織物基布の表面 および裏面の単糸繊維間に効率よく樹脂組成 物が存在していることが確認され、高差圧下 での低通気性と燃焼速度の低減効果は低下し たものの、実用上使用可能なレベルであり、 エアバッグ用織物として好ましいものであっ た。

実施例7
 総繊度が350dtex、108フィラメント、強度が8.3 cN/dtex、沸水収縮率が9.0%のナイロン66のマル フィラメントを用い、ウォータージェット ームにて平織組織を製織し、95℃の温水で収 縮加工後、130℃で乾燥させて、織物基布を得 た。得られた加工前の織物基布の物性を表1 示す。

 次いで、下記の組成からなる樹脂組成物 水系分散液Fを用い、50cm×50cmに切り出した 記の織物基布に含浸処理させた後、ゴムロ ルで構成されたマングルで絞った。さらに 経緯が固定できる枠に、加工後の織物の経 を表1に記載の長さに伸張させて、50cm×50cmの 織物を固定した。次いで、第1チャンバー及 第2チャンバーを有する加工炉の温度を調整 、表1に記載の温度、時間、伸長率で加工を 行った。加工後の織物の物性は、表1に示す りである。また、織物に付着されている樹 組成物の付着量は、実施例1と同様にして求 た。

(樹脂組成物の水系分散液Fの調整)
 配合液A100質量部に対し、水酸化マグネシウ ム(ナカライテスク社製、無処理品、化学用 純度95%)を70質量部混合し、分散させた。配 液Aの固形分の質量に対し、水酸化マグネシ ムの質量は133質量%である。また、樹脂組成 分に対する水酸化マグネシウムの含有量は、 57質量%である。この樹脂組成物の水系分散液 Eの粘度(B型粘度計で測定)は、70mPa・sであっ 。

 実施例7は、実施例1に対して、織密度を下 てカバーファクターを小さくし、さらにさ に樹脂組成物中の水酸化マグネシウムの含 量を多くした例である。
 しかしながら、樹脂組成物中の水酸化マグ シウムの含有量を所定の範囲としたため、 施例7で得られた加工後の織物は、断面のSEM 写真から、織物基布の表面および裏面の単糸 繊維間に効率よく樹脂組成物が存在している ことが確認され、高差圧下での低通気性に優 れ、かつ燃焼速度も低く、エアバッグ用織物 として好ましいものであった。

 表1より、本発明の各実施例で得られた加 工後の織物は、低通気度、燃焼速度のいずれ も目標値を達成していることが分かる。また 、各実施例で得られた加工後の織物の質量を 、室温で100質量部とした際に、400℃に加熱し た時点で60質量部以下であり、マグネシウム 合物を織物に付着させることによる「難燃 果」が発現したため、燃焼速度が低減して ると考えられる。

比較例1
 実施例2において、樹脂組成物の水系分散液 として、マグネシウム化合物を混合させず、 配合液Aのみからなる、水系シリコーンエマ ジョンを水系分散液Aとして用い、実施例1と 同じ条件で加工を行ったこと以外は、実施例 2と同様にして加工織物を作製した。
 樹脂組成物中にマグネシウム化合物を含有 ていないため、燃焼速度が高くなり、エア ッグ用織物として不十分であった。これは 加工後の織物の質量を、室温で100質量部と た際に、400℃で88質量部もあり、400℃にお る質量減少が小さく、マグネシウム化合物 よる「難燃効果」の寄与がなかったためと えられる。

比較例2
 実施例2において、樹脂組成物の水系分散液 を下記に示す水系分散液Gに変更し、実施例1 同じ条件で加工を行ったこと以外は、実施 2と同様にして加工織物を作製した。

(樹脂組成物の水系分散液Gの調整)
 配合液A100質量部に対し、水酸化アルミニウ ム(ナカライテスク社製、無処理品、化学用 純度95%)を44質量部混合し、分散させた。配 液Aの固形分の質量に対し、水酸化アルミニ ムの質量は84質量%である。また、樹脂組成 に対する水酸化アルミニウムの含有量は、4 6質量%である。この樹脂組成物の水系分散液G の粘度(B型粘度計で測定)は、28mPa・sであった 。

 比較例2は、マグネシウム化合物の代わりに 水酸化アルミニウムを用いた例である。
 そのため、比較例2で得られた加工織物は、 燃焼速度が高く、エアバッグ用織物として不 十分であった。これは、水酸化アルミニウム では、加工後の織物の質量を室温で100質量部 とした際に、400℃で92質量部もあり、400℃に ける質量減少が小さく、水酸化アルミニウ による「難燃効果」の寄与が少なかったた と考えられる。

比較例3
 実施例2において、樹脂組成物の水系分散液 を下記に示す水系分散液Hに変更し、実施例1 同じ条件で加工を行ったこと以外は、実施 2と同様にして加工織物を作製した。

(樹脂組成物の水系分散液Hの調整)
 配合液A100質量部に対し、水酸化マグネシウ ム(ナカライテスク社製、無処理品、化学用 純度95%)を16質量部混合し、分散させた。配 液Aの固形分の質量に対し、水酸化マグネシ ムの質量は30質量%である。また、樹脂組成 に対する水酸化マグネシウムの含有量は、2 3質量%である。この樹脂組成物の水系分散液H の粘度(B型粘度計で測定)は、23mPa・sであった 。

 比較例3は、実施例2に対して、樹脂組成物 の水酸化マグネシウムの含有量を、かなり なくした例である。
 そのため、比較例3で得られた加工織物は、 燃焼速度が高く、エアバッグ用織物として不 十分であった。これは、水酸化マグネシウム の含有量が少なすぎたため、加工後の織物の 質量を室温で100質量部とした際に、400℃で85 量部もあり、400℃における質量減少が小さ 、水酸化マグネシウムによる「難燃効果」 寄与が少なかったためと考えられる。

比較例4
 実施例5において、樹脂組成物の水系分散液 を下記に示す水系分散液Iに変更し、実施例1 同じ条件で加工を行ったこと以外は、実施 5と同様にして加工織物を作製した。

(樹脂組成物の水系分散液Iの調整)
 配合液A100質量部に対し、水酸化マグネシウ ム(ナカライテスク社製、無処理品、化学用 純度95%)を84質量部混合し、分散させた。配 液Aの固形分の質量に対し、水酸化マグネシ ムの質量は160質量%である。また、樹脂組成 分に対する水酸化マグネシウムの含有量は、 62質量%である。この樹脂組成物の水系分散液 Iの粘度(B型粘度計で測定)は、150mPa・sであっ 。

 比較例4は、実施例5に対して、樹脂組成物 の水酸化マグネシウムの含有量を、かなり くした例である。
 そのため、比較例4で得られた加工織物は、 燃焼速度の低減という点では優れていたが、 通気度が高く、エアバッグ用織物として不十 分であった。これは、水酸化マグネシウムの 含有量が多すぎたため、樹脂組成物の被膜が 十分に形成されず、通気度を低減する効果が 減少しためと考えられる。

比較例5
 実施例2において、樹脂組成物の水系分散液 を下記に示す水系分散液Jに変更し、フロー ィングナイフコートを用いて織物基布の片 に塗布したこと以外は、実施例2と同様にし 加工織物を作製した。

(樹脂組成物の水系分散液Jの調整)
 配合液A100質量部に対し、増粘剤として水溶 性高分子であるカルボキシメチルセルロース (ナカライテスク社製)を0.5質量部、水酸化マ ネシウム(ナカライテスク社製、無処理品、 化学用、純度95%)を44質量部混合し、分散させ た。配合液Aの固形分の質量に対し、水酸化 グネシウムの質量は84質量%である。また、 脂組成分に対する水酸化マグネシウムの含 量は、46質量%である。この樹脂組成物の水 分散液Jの粘度(B型粘度計で測定)は、300mPa・s であった。

 比較例5は、実施例2に比べ、樹脂組成物の 系分散液の粘度を10倍も高く調整した例であ る。
 そのため、比較例5で得られた加工織物は、 織物内に樹脂が含浸せず、織物の表面上への 樹脂組成物の存在率が高く、マグネシウム化 合物とナイロン繊維との接触量が少なくなっ た。その結果、本発明による「難燃効果」の 寄与が減少し、マグネシウム化合物の難燃効 果が十分に発揮できず、燃焼速度が低減しな かったと考えられる。

実施例8
 総繊度が350dtex、108フィラメント、強度が8.3 cN/dtex、沸水収縮率が9.0%のナイロン66のマル フィラメントを用い、ウォータージェット ームにて平織組織を製織し、95℃の温水で収 縮加工後、130℃で乾燥させて、織物基布を得 た。得られた加工前の織物基布の物性を表3 示す。

 次いで、次の組成からなる樹脂組成物の水 分散液Bを、上記の織物基布に含浸処理させ た後、ゴムロールで構成されたマングルで絞 り、表3に示す温度、時間、伸長率の条件で 工を行った。なお、表3に示す加工時伸張率 0%とは、固定のみを行ったことを示す。加 後の織物の物性は、表3に示す通りである。 物に付着されている樹脂組成物の付着量は 加工後の織物の重さから加工前の基布の重 を引き、算出した。測定用試料は、20cm×20cm を切り出し、加工前と加工後の織物の質量を 測定した。次いで、それらの質量の差を25倍 じて、樹脂組成物の付着量(g/m 2 )を算出した。

(樹脂組成物の水系分散液B)
 (1)配合液Aの調製
  (a)水系シリコーンエマルジョン 83質量部
     (ワッカーシリコーン社製、Dehesive 457 ;固形分濃度 50質量%)
  (b)オルガノポリシラキサン   12質量部
     (ワッカーシリコーン社製、Closslinker  V72;固形分濃度 50質量%)
  (c)シランカップリング剤     5質量部
     (ワッカーシリコーン社製、Silane HF86)

 配合液Aの調整において、(a)と(b)を混合さ せることで、付加重合型のシリコンゴムの水 系エマルジョンとなる。(c)は、接着性を改善 させるための接着助剤である。上記の(a)、(b) 、(c)を混合し、配合液Aを調製した。

 (2)マグネシウム化合物
 マグネシウム化合物として、水酸化マグネ ウム(ナカライテスク社製、無処理品、化学 用、純度95%)を用いた。

 (3)樹脂組成物の水系分散液Bの調製
 配合液A100質量部に対し、上記の水酸化マグ ネシウムを44質量部混合し、分散させた。配 液Aの固形分の質量に対し、水酸化マグネシ ウムの質量は84質量%である。また、樹脂組成 物に対する水酸化マグネシウムの含有量は、 46質量%である。この樹脂組成物の水系分散液 Bの粘度(B型粘度計で測定)は、30mPa・sであっ 。

 実施例8において、織物基布に樹脂組成物 を付着させる前の織物の表面のSEM写真を図5 示す。また、織物基布に樹脂組成物を付着 せた後の織物の表面のSEM写真を図6に示す。

 実施例8で得られた加工後の織物は、図3 よび図4に示す断面のSEM写真から、織物基布 表面および裏面の単糸繊維間に効率よく樹 組成物が存在していることが確認され、高 圧下での低通気性に優れ、かつ燃焼速度も く、エアバッグ用織物として好ましいもの あった。

実施例9
 総繊度が350dtex、72フィラメント、強度が8.4c N/dtex、沸水収縮率が9.4%のナイロン66のマルチ フィラメントを用い、ウォータージェットル ームにて平織組織を製織し、95℃の温水で収 加工後、130℃で乾燥させて、織物基布を得 。得られた加工前の織物基布の物性を表3に 示す。

 次いで、実施例8と同じ組成の樹脂組成物 の水系分散液Bを、上記の織物基布に含浸処 させた後、ゴムロールで構成されたマング で絞り、表3に示す温度、時間、伸長率の条 で加工を行った。加工後の織物の物性は、 3に示す通りである。また、織物に付着され ている樹脂組成物の付着量は、実施例8と同 にして求めた。

 実施例9で得られた加工後の織物は、実施 例8で得られた加工後の織物と比べ、単糸繊 (dpf)が太くなったものの、実施例8と同様に 断面のSEM写真から、織物基布の表面および 面の単糸繊維間に効率よく樹脂組成物が存 していることが確認された。また、高差圧 での低通気性に優れ、かつ燃焼速度も低く エアバッグ用織物として好ましいものであ た。

実施例10
 実施例8と同じナイロン66のマルチフィラメ トを用い、ウォータージェットルームにて 織組織を製織し、95℃の温水で収縮加工後 130℃で乾燥させて、織物基布を得た。得ら た加工前の織物基布の物性を表3に示す。

 次いで、下記の組成からなる樹脂組成物 水系分散液Cを用い、上記の織物基布に含浸 処理させた後、ゴムロールで構成されたマン グルで絞り、表3に示す温度、時間、伸長率 条件で加工を行った。加工後の織物の物性 、表3に示す通りである。また、織物に付着 れている樹脂組成物の付着量は、実施例8と 同様にして求めた。

(樹脂組成物の水系分散液Cの調製)
 配合液A100質量部に対し、酸化マグネシウム (ナカライテスク社製、ナカライ規格一級 EP 純度98%、無処理品)を44質量部混合し、分散 せた。配合液Aの固形分の質量に対し、酸化 マグネシウムの質量は84質量%である。また、 樹脂組成物に対する酸化マグネシウムの含有 量は、46質量%である。この樹脂組成物の水系 分散液Cの粘度(B型粘度計で測定)は、25mPa・s あった。

 実施例9は、実施例8に対して、マグネシ ム化合物として酸化マグネシウムを用いた である。実施例9で得られた加工後の織物は 断面のSEM写真から、織物基布の表面および 面の単糸繊維間に効率よく樹脂組成物が存 していることが確認され、高差圧下での低 気性に優れ、かつ燃焼速度も低く、エアバ グ用織物として好ましいものであった。

実施例11
 実施例8と同じナイロン66のマルチフィラメ トを用い、ウォータージェットルームにて 織組織を製織し、95℃の温水で収縮加工後 130℃で乾燥させて、織物基布を得た。得ら た加工前の織物基布の物性を表3に示す。

 次いで、下記の組成からなる樹脂組成物 水系分散液Dを用い、上記の織物基布に含浸 処理させた後、ゴムロールで構成されたマン グルで絞り、表3に示す温度、時間、伸長率 条件で加工を行った。加工後の織物の物性 、表3に示す通りである。また、織物に付着 れている樹脂組成物の付着量は、実施例8と 同様にして求めた。

(樹脂組成物の水系分散液Dの調製)
 配合液A100質量部に対し、水酸化マグネシウ ム(ナカライテスク社製、無処理品、化学用 純度95%)を30質量部混合し、分散させた。配 液Aの固形分の質量に対し、水酸化マグネシ ムの質量は57質量%である。また、樹脂組成 に対する水酸化マグネシウムの含有量は、3 6質量%である。この樹脂組成物の水系分散液D の粘度(B型粘度計で測定)は、20mPa・sであった 。

 実施例11は、実施例8に対して、樹脂組成 中の水酸化マグネシウムの含有量を少なく た例である。実施例11で得られた加工後の 物は、断面のSEM写真から、織物基布の表面 よび裏面の単糸繊維間に効率よく樹脂組成 が存在していることが確認され、高差圧下 の低通気性に優れ、かつ燃焼速度も低く、 アバッグ用織物として好ましいものであっ 。

実施例12
 総繊度が470dtex、144フィラメント、強度が8.4 cN/dtex、沸水収縮率が9.3%のナイロン66のマル フィラメントを用い、ウォータージェット ームにて平織組織を製織し、95℃の温水で収 縮加工後、130℃で乾燥させて、織物基布を得 た。得られた加工前の織物基布の物性を表3 示す。

 次いで、下記の組成からなる樹脂組成物 水系分散液Eを用い、50cm×50cmに切り出した 記の織物基布に含浸処理させた後、ゴムロ ルで構成されたマングルで絞った。さらに 経緯が固定できる枠に、加工後の織物の経 を表3に記載の長さに伸張させて、50cm×50cmの 織物を固定した。次いで、第1チャンバー及 第2チャンバーを有する加工炉の温度を調整 、表1に記載の温度、時間、伸長率で加工を 行った。表3に、加工時伸長率が緯糸方向で フリー」との記載があるが、これは緯糸方 の固定を行わずに加工を行ったことを意味 る。加工後の織物の物性は、表3に示す通り ある。また、織物に付着されている樹脂組 物の付着量は、実施例8と同様にして求めた 。

(樹脂組成物の水系分散液Eの調製)
 配合液A100質量部に対し、水酸化マグネシウ ム(ナカライテスク社製、無処理品、化学用 純度95%)を60質量部混合し、分散させた。配 液Aの固形分の質量に対し、水酸化マグネシ ムの質量は114質量%である。また、樹脂組成 物に対する水酸化マグネシウムの含有量は、 53質量%である。この樹脂組成物の水系分散液 Eの粘度(B型粘度計で測定)は、60mPa・sであっ 。

 実施例12は、実施例8に対して、ナイロン6 6のマルチフィラメントの総繊度を太く、織 度を低くし、さらに樹脂組成物中の水酸化 グネシウムの含有量を多くした例である。 施例5で得られた加工後の織物は、断面のSEM 真から、織物基布の表面および裏面の単糸 維間に効率よく樹脂組成物が存在している とが確認され、高差圧下での低通気性に優 、かつ燃焼速度も低く、エアバッグ用織物 して好ましいものであった。

実施例13
 実施例13は、実施例12と同じ原糸を用い、織 密度のみを実施例12よりも低くして、カバー ァクターを小さくしたこと、および樹脂組 物の水系分散液を実施例8で用いた水系分散 液Bに変更したこと以外は、実施例12と同様に して加工織物を製造した例である。実施例13 得られた加工後の織物は、断面のSEM写真か 、織物基布の表面および裏面の単糸繊維間 効率よく樹脂組成物が存在していることが 認され、高差圧下での低通気性と燃焼速度 低減効果は低下したものの、実用上使用可 なレベルであり、エアバッグ用織物として ましいものであった。

実施例14
 総繊度が350dtex、108フィラメント、強度が8.3 cN/dtex、沸水収縮率が9.0%のナイロン66のマル フィラメントを用い、ウォータージェット ームにて平織組織を製織し、95℃の温水で収 縮加工後、130℃で乾燥させて、織物基布を得 た。得られた加工前の織物基布の物性を表3 示す。

 次いで、下記の組成からなる樹脂組成物 水系分散液Fを用い、50cm×50cmに切り出した 記の織物基布に含浸処理させた後、ゴムロ ルで構成されたマングルで絞った。さらに 経緯が固定できる枠に、加工後の織物の経 を表1に記載の長さに伸張させて、50cm×50cmの 織物を固定した。次いで、第1チャンバー及 第2チャンバーを有する加工炉の温度を調整 、表3に記載の温度、時間、伸長率で加工を 行った。加工後の織物の物性は、表3に示す りである。また、織物に付着されている樹 組成物の付着量は、実施例8と同様にして求 た。

(樹脂組成物の水系分散液Fの調製)
 配合液A100質量部に対し、水酸化マグネシウ ム(ナカライテスク社製、無処理品、化学用 純度95%)を70質量部混合し、分散させた。配 液Aの固形分の質量に対し、水酸化マグネシ ムの質量は133質量%である。また、樹脂組成 物に対する水酸化マグネシウムの含有量は、 57質量%である。この樹脂組成物の水系分散液 Eの粘度(B型粘度計で測定)は、70mPa・sであっ 。

 実施例14は、実施例8に対して、織密度を げてカバーファクターを小さくし、さらに らに樹脂組成物中の水酸化マグネシウムの 有量を多くした例である。実施例14で得ら た加工後の織物は、断面のSEM写真から、織 基布の表面および裏面の単糸繊維間に効率 く樹脂組成物が存在していることが確認さ 、高差圧下での低通気性に優れ、かつ燃焼 度も低く、エアバッグ用織物として好まし ものであった。

実施例15
 実施例14と同様の織物、樹脂組成物を用い 樹脂加工時の条件を変更して、エアバッグ 織物を得た。
 実施例14に記載の樹脂組成物の水系分散液F 用い、50cm×50cmに切り出した上記の織物基布 に含浸処理させた後、ゴムロールで構成され たマングルで絞った。さらに、経緯が固定で きる枠に、加工後の織物の経緯を表3に記載 長さに伸張させて、50cm×50cmの織物を固定し 。次いで、第1チャンバー及び第2チャンバ を有する加工炉の温度を調整し、表3に記載 温度、時間、伸長率で加工を行った。加工 の織物の物性は、表3に示す通りである。ま た、織物に付着されている樹脂組成物の付着 量は、実施例8と同様にして求めた。

 実施例15は、樹脂加工時の熱処理条件とし 、第1チャンバーの温度を180℃に設定した。 れにより実施例14に対して、樹脂加工織物 十分な温度を付与したため、溶剤抽出量が 減し、これに伴い燃焼速度も低減した例で る。
 また、樹脂組成物中の水酸化マグネシウム 含有量が、本発明で規定する範囲内である め、実施例15で得られた加工後の織物は、 面のSEM写真から、織物基布の表面および裏 の単糸繊維間に効率よく樹脂組成物が存在 ていることが確認された。そのため、高差 下での低通気性に優れ、かつ燃焼速度も低 、エアバッグ用織物として好ましいもので った。

 表3より、本発明の各実施例で得られた加 工後の織物は、低通気度、燃焼速度のいずれ も目標値を達成していることが分かる。また 、各実施例で得られた加工後の織物の質量を 、30℃で100質量部とした際に、400℃に加熱し 時点で60質量部以下であり、マグネシウム 合物を織物に付着させることによる「難燃 果」が発現したため、燃焼速度が低減して ると考えられる。

比較例6
 実施例9において、樹脂組成物の水系分散液 として、マグネシウム化合物を混合させず、 配合液Aのみからなる、水系シリコーンエマ ジョンを水系分散液Aとして用い、実施例8と 同じ条件で加工を行ったこと以外は、実施例 9と同様にして加工織物を作製した。樹脂組 物中にマグネシウム化合物を含有していな ため、燃焼速度が高くなり、エアバッグ用 物として不十分であった。これは、加工後 織物の質量を、30℃で100質量部とした際に、 400℃で88質量部もあり、400℃における質量減 が小さく、マグネシウム化合物による「難 効果」の寄与がなかったためと考えられる

比較例7
 実施例9において、樹脂組成物の水系分散液 を下記に示す水系分散液Gに変更し、実施例8 同じ条件で加工を行ったこと以外は、実施 9と同様にして加工織物を作製した。

(樹脂組成物の水系分散液Gの調製)
 配合液A100質量部に対し、水酸化アルミニウ ム(ナカライテスク社製、無処理品、化学用 純度97%)を44質量部混合し、分散させた。配 液Aの固形分の質量に対し、水酸化アルミニ ムの質量は84質量%である。また、樹脂組成 に対する水酸化アルミニウムの含有量は、4 6質量%である。この樹脂組成物の水系分散液G の粘度(B型粘度計で測定)は、28mPa・sであった 。

 比較例7は、マグネシウム化合物の代わり に水酸化アルミニウムを用いた例である。そ のため、比較例7で得られた加工織物は、燃 速度が高く、エアバッグ用織物として不十 であった。これは、水酸化アルミニウムで 、加工後の織物の質量を30℃で100質量部とし た際に、400℃で92質量部もあり、400℃におけ 質量減少が小さく、水酸化アルミニウムは 難燃効果」にほとんど寄与しなかったため 考えられる。

比較例8
 実施例9において、樹脂組成物の水系分散液 を下記に示す水系分散液Hに変更し、実施例8 同じ条件で加工を行ったこと以外は、実施 9と同様にして加工織物を作製した。

(樹脂組成物の水系分散液Hの調製)
 配合液A100質量部に対し、水酸化マグネシウ ム(ナカライテスク社製、無処理品、化学用 純度95%)を16質量部混合し、分散させた。配 液Aの固形分の質量に対し、水酸化マグネシ ムの質量は30質量%である。また、樹脂組成 に対する水酸化マグネシウムの含有量は、2 3質量%である。この樹脂組成物の水系分散液H の粘度(B型粘度計で測定)は、23mPa・sであった 。

 比較例8は、実施例9に対して、樹脂組成 中の水酸化マグネシウムの含有量を、かな 少なくした例である。そのため、比較例8で られた加工織物は、燃焼速度が高く、エア ッグ用織物として不十分であった。これは 水酸化マグネシウムの含有量が少なすぎた め、加工後の織物の質量を30℃で100質量部 した際に、400℃で85質量部もあり、400℃にお ける質量減少が小さく、水酸化マグネシウム による「難燃効果」の寄与が少なかったため と考えられる。

比較例9
 実施例12において、樹脂組成物の水系分散 を下記に示す水系分散液Iに変更し、表4に記 載の条件で加工を行ったこと以外は、実施例 12と同様にして加工織物を作製した。

(樹脂組成物の水系分散液Iの調製)
 配合液A100質量部に対し、水酸化マグネシウ ム(ナカライテスク社製、無処理品、化学用 純度95%)を84質量部混合し、分散させた。配 液Aの固形分の質量に対し、水酸化マグネシ ムの質量は160質量%である。また、樹脂組成 物に対する水酸化マグネシウムの含有量は、 62質量%である。この樹脂組成物の水系分散液 Hの粘度(B型粘度計で測定)は、150mPa・sであっ 。

 比較例9は、実施例12に対して、樹脂組成 中の水酸化マグネシウムの含有量を、かな 多くした例である。そのため、比較例9で得 られた加工織物は、燃焼速度の低減という点 では優れていたが、通気度が高く、エアバッ グ用織物として不十分であった。これは、水 酸化マグネシウムの含有量が多すぎたため、 樹脂組成物の被膜が十分に形成されず、通気 度を低減する効果が減少しためと考えられる 。

比較例10
 実施例9において、樹脂組成物の水系分散液 を下記に示す水系分散液Jに変更し、フロー ィングナイフコートを用いて織物基布の片 に加工を行ったこと以外は、実施例9と同様 して加工織物を作製した。

(樹脂組成物の水系分散液Jの調製)
 配合液A100質量部に対し、増粘剤として水溶 性高分子であるカルボキシメチルセルロース (ナカライテスク社製)を0.5質量部、水酸化マ ネシウム(ナカライテスク社製、無処理品、 化学用、純度95%)を44質量部混合し、分散させ た。配合液Aの固形分の質量に対し、水酸化 グネシウムの質量は84質量%である。また、 脂組成物に対する水酸化マグネシウムの含 量は、46質量%である。この樹脂組成物の水 分散液Jの粘度(B型粘度計で測定)は、300mPa・s であった。

 比較例10は、実施例9に比べ、樹脂組成物 水系分散液の粘度を10倍も高く調整した例 ある。そのため、比較例10で得られた加工織 物は、織物内に樹脂が含浸せず、織物の表面 上への樹脂組成物の存在率が高く、マグネシ ウム化合物とナイロン繊維との接触量が少な くなった。その結果、本発明による「難燃効 果」の寄与が減少し、マグネシウム化合物の 難燃効果が十分に発揮できず、燃焼速度が低 減しなかったと考えられる。

比較例11
 実施例9において、使用する基布、樹脂組成 物は同一としたが、加工条件として、第2チ ンバーの温度を120℃とし、炉内の樹脂加工 物の最高温度を110℃に変更した例である。
 比較例11では、加工温度が低いため、樹脂 硬化反応が不十分であったため、溶剤抽出 が多くなった。この結果、本発明の「難燃 果」が、硬化反応の不足による樹脂中の低 子量の化合物によって阻害され、マグネシ ム化合物の難燃効果が十分に発揮できず、 焼速度が低減しなかったと考えられる。

 本発明のエアバッグ用織物は、20kPaの高 差圧下においても低い通気度が得られ、燃 速度が低く、軽量で収納性にも優れた安価 織物を提供できるため、自動車安全部品の つとして急速に着装率が向上しているエア ッグにおいて、運転者や助手席の乗員に用 る前面衝突用エアバッグだけでなく、より 通気度と収納性が要求されるサイドエアバ グやカーテンシールドエアバッグなどの側 衝突用エアバッグにも広い範囲で使用する とができ、産業上の寄与は大きい。