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Title:
HEAT-SHIELDING COATING MATERIAL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/101876
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a heat-shielding coating material having a lower thermal conductivity than that of rare-earth-stabilized zirconia. Specifically disclosed is a heat-shielding coating material mainly composed of a compound represented by compositional formula (1): Ln1-xTaxO1.5+x [wherein x fulfils the following formula: 0.13≤x≤0.24; and Ln represents at least one element selected from the group consisting of Sc, Y and lanthanoid elements]. Also specifically disclosed is a heat-shielding coating material mainly composed of a compound represented by compositional formula (2): Ln1-xNbxO1.5+x [wherein x fulfils the following formula: 0.13≤x≤0.24; and Ln represents at least one element selected from the group consisting of Sc, Y and lanthanoid elements]. Further specifically disclosed is a heat-shielding coating material mainly composed of a cubic compound having a fluorite structure and represented by compositional formula (3):Ln3NbO7 [wherein Ln represents at least one element selected from the group consisting of Sc, Y and lanthanoid elements].

Inventors:
NAGANO ICHIRO (JP)
TORIGOE TAIJI (JP)
AKIYAMA KATSUNORI (JP)
SHIDA MASATO (JP)
MORI KAZUTAKA (JP)
TSURU YASUHIKO (JP)
OKADA IKUO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/051785
Publication Date:
August 20, 2009
Filing Date:
February 03, 2009
Export Citation:
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Assignee:
MITSUBISHI HEAVY IND LTD (JP)
NAGANO ICHIRO (JP)
TORIGOE TAIJI (JP)
AKIYAMA KATSUNORI (JP)
SHIDA MASATO (JP)
MORI KAZUTAKA (JP)
TSURU YASUHIKO (JP)
OKADA IKUO (JP)
International Classes:
F01D5/28; C23C4/10; F02C7/00
Foreign References:
JP2006298695A2006-11-02
Other References:
R.D. SHANNON, ACTA CRYSTALLOGR., vol. A32, 1976, pages 751
See also references of EP 2186919A4
Attorney, Agent or Firm:
FUJITA, Takaharu et al. (3-1 Minatomirai 3-chome, Nishi-ku, Yokohama-sh, Kanagawa 12, JP)
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Claims:
 組成式(1):
  Ln 1-x Ta x O 1.5+x
(ただし、0.13≦x≦0.24、LnはSc、Y及びランタノイド元素からなる群より選択される1種類または2種類以上の元素を表す)
で表される化合物を主体として含む遮熱コーティング材料。
 組成式(2):
  Ln 1-x Nb x O 1.5+x
(ただし、0.13≦x≦0.24、LnはSc、Y及びランタノイド元素からなる群より選択される1種類または2種類以上の元素を表す)
で表される化合物を主体として含む遮熱コーティング材料。
 前記Lnの平均イオン半径が、1.04Å未満である請求項1に記載の遮熱コーティング材料。
 前記Lnの平均イオン半径が、1.04Å未満である請求項2に記載の遮熱コーティング材料。
 組成式(3):
  Ln 3 NbO 7
(ただし、LnはSc、Y及びランタノイド元素からなる群より選ばれる1種類又は2種類以上の元素を表す)
で表されるフルオライト構造を有する立方晶の化合物を主体として含む遮熱コーティング材料。
 前記Lnの平均イオン半径rが、1.01Å≦r<1.053Åである化合物を主体として含む請求項5に記載の遮熱コーティング材料。
 前記Lnの平均イオン半径rが、1.032Å≦r<1.048Åである化合物を主体として含む請求項5に記載の遮熱コーティング材料。
 前記化合物の熱伝導率が、1.2W/mK以下である請求項5に記載の遮熱コーティング材料。
 請求項1から8のいずれかに記載の遮熱コーティング材料を備えた機器部品。
Description:
遮熱コーティング材料

 本発明は、発電用ガスタービンの動翼、 翼、燃焼器、およびジェットエンジンなど 高温環境下で使用される機器部品に適用可 な遮熱コーティング材料に関する。

 ガスタービンやジェットエンジンなどの 効率化のために、その燃焼ガスは高温化の 途をたどっている。金属製部品を高温(例え ば1700℃級ガスタービンで翼最高表面温度は 1350℃)から保護するため、部品の表面には遮 熱コーティング(Thermal Barrier Coating:TBC)が施 れている。この遮熱コーティングの材料と ては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等の 希土類安定化ジルコニアをはじめとする低熱 伝導性のセラミックスが用いられている。遮 熱コーティングは、金属製部品である基材上 に減圧プラズマ溶射等で金属接合層を施した 後、金属接合層上に大気圧プラズマ溶射によ り施工される。

 大気圧プラズマ溶射によって金属製部品 に施された遮熱コーティングは、緻密な組 ではなく、内部に多数の気孔を有している 図1に遮熱コーティングの組織の模式図を示 す。同図に示すように、遮熱コーティング材 1の組織中には、径が数十μmに及ぶ大気孔2、 が数μm程度の小気孔3、幅の狭い線状の気孔 4,5など、さまざまな形状の気孔が存在してい る。遮熱コーティング材1自体が低熱伝導性 セラミックスであるのと同時に、内部に存 するこのような多数の気孔2~5によって材料 断熱性能が保たれており、基材である金属 部品の高温環境下での使用が可能となって る。

 希土類安定化ジルコニアは、気孔が無視で る緻密な焼結体で評価した場合に熱伝導率 2.2W/mKとセラミック材料の中でも低く、また 線膨張係数が大きく更に靭性が高い。そのた め、希土類安定化ジルコニアは、遮熱コーテ ィング材料として好適である。
 近年、遮熱性向上に対するニーズが高まっ いるが、希土類安定化ジルコニアを遮熱コ ティングに使用する場合、遮熱性を更に向 させるためにはコーティング膜を厚くする 要があった。しかし、膜が厚くなることに り、膜の割れや剥離が生じやすくなるとい 問題があった。そこで、膜厚を変えること く高い遮熱性を有する遮熱コーティングを 現するために、より低い熱伝導性を有する 料の開発、例えば、熱伝導率が約半分とな ような材料の開発が望まれている。

 低熱伝導性を有する材料としては、例え 特許文献1に、希土類安定化ジルコニア及び 希土類安定化ジルコニア-ハフニアに酸化ラ タンを0.1~10mol%添加した低熱伝導率の遮熱コ ティング材料が開示されている。

 特許文献2に、低熱伝導率を有する遮熱コー ティング材料として、Ln 3 Nb 1-x Ta x O 7 (ただし、0≦x≦1、LnはSc、Y及びランタノイド 元素からなる群より選択される1種類または2 類以上の元素を表す)で表される化合物を主 体として含む材料が開示されている。

特開2004-270032号公報

特開2006-298695号公報

 特許文献2の遮熱コーティング材料は、室 温から高温に到るまで相転移が無く、使用温 度域での相安定性が良好である。また、希土 類安定化ジルコニアと同等、あるいは希土類 安定化ジルコニアより高い融点を有し、希土 類安定化ジルコニアより低熱伝導性を示す。 このため、遮熱コーティング材料として有望 である。しかし、より高い遮熱性を達成する には、更に低い熱伝導性を示す遮熱コーティ ング材料が望まれている。

 本発明は、上記課題を解決するためにな れたものであって、希土類安定化ジルコニ よりも熱伝導率が低い遮熱コーティング材 を提供することを目的とする。

 上記課題を解決するために、本発明者らが 究を重ねた結果、Ln 1-x Ta x O 1.5+x 、または、Ln 1-x Nb x O 1.5+x (LnはSc、Y及びランタノイド元素からなる群よ り選択される1種類または2種類以上の元素)で 表され、0.13≦x≦0.24を満たす化合物が、希土 類安定化ジルコニアと同程度の線膨張係数を 示し、かつ、低熱伝導性を有することを明ら かにした。さらに、Lnの平均イオン半径rがr&l t;1.04Åである場合に、高温から低温(室温)に けての相転移が無く、機械的強度面での安 性を有する遮熱コーティングが得られるこ を見出した。

 すなわち、本発明は、組成式(1):
  Ln 1-x Ta x O 1.5+x
(ただし、0.13≦x≦0.24、LnはSc、Y及びランタノ イド元素からなる群より選択される1種類ま は2種類以上の元素を表す)で表される化合物 を主体として含む遮熱コーティング材料を提 供する。

 また、本発明は、組成式(2):
  Ln 1-x Nb x O 1.5+x
(ただし、0.13≦x≦0.24、LnはSc、Y及びランタノ イド元素からなる群より選択される1種類ま は2種類以上の元素を表す)
で表される化合物を主体として含む遮熱コー ティング材料を提供する。

 組成式(1)または組成式(2)で表される化合 は、酸素欠陥が不規則化することによりフ ノンによる散乱が増加するため、従来の希 類安定化ジルコニアと比較して低熱伝導率 有する。従って、従来の希土類安定化ジル ニアのように膜を厚くして遮熱性を向上さ る必要がなく、現行と同程度の膜厚であっ も、希土類安定化ジルコニアよりも遮熱性 高い遮熱コーティングとすることが可能と る。

 x≦0.24とすると、従来のLn 3 TaO 7 及びLn 3 NbO 7 (x=0.25)よりも酸素欠損が多く導入されるため 、フォノンによる散乱効果がより高くなり 熱伝導性が更に低下する。ただし、x<0.13 あると、固溶限を超えてLn 2 O 3 が析出するため、熱伝導率が増大する。従っ て、xの値は、0.13≦x≦0.24とされ、好ましく 0.15≦x≦0.23、より好ましくは0.18≦x≦0.22と れる。

 上記発明において、前記Lnの平均イオン 径が、1.04Å未満であることが好ましい。Ln 平均イオン半径が1.04Å未満である場合、組 式(1)または組成式(2)の化合物は、高温から 温(室温)にかけての相転移が無い。このた 、例えばタービンの発停時など急激な温度 化が与えられる場合においても、相転移に う急激な体積変化が発生せず、遮熱コーテ ングの割れや剥離が発生するのを防止する とができる。なお、本発明におけるイオン 径の値は、R. D. Shannon, Acta Crystallogr., A32, 751 (1976)に依る。

 なお、本発明の遮熱コーティング材料は 原材料としての遮熱コーティング材料を意 するとともに、機器部品の表面に形成され 遮熱コーティングをも含む。

 上記の遮熱コーティング材料を備えた機 部品は、遮熱性が高く、急激な温度変化が えられる場合においても割れや剥離が発生 にくい遮熱コーティングを備えるため、高 での使用に耐え得る機器部品となる。機器 品とは、発電用ガスタービンの動翼、静翼 燃焼器、及びジェットエンジンなどが挙げ れる。

 また、上記課題を解決するために、本発明 らが研究を重ねた結果、Ln 3 NbO 7 (LnはSc、Y及びランタノイド元素からなる群よ り選ばれる1種類または2種類以上の元素)で表 される化合物の中でも、特にフルオライト構 造を有する立方晶の化合物が、希土類安定化 ジルコニアと同程度の線膨張係数を示し、か つ低熱伝導率を有することを明らかにした。 さらに、Ln 3 NbO 7 で表される化合物の結晶構造はモル分率で算 術平均した希土類元素Lnの平均イオン半径に 存して変化し、Lnの平均イオン半径rが1.01Å ≦r<1.053Åにおいて化合物Ln 3 NbO 7 がフルオライト構造となり、より低い熱伝導 率を有することを見出した。ここで、イオン 半径の値は、R. D. Shannon, Acta Crystallogr.,A32, 751 (1976)に依った。

 すなわち、本発明は、組成式(3):
  Ln 3 NbO 7
(ただし、LnはSc、Y及びランタノイド元素から なる群より選ばれる1種類又は2種類以上の元 を表す)
で表されるフルオライト構造を有する立方晶 の化合物を主体として含む遮熱コーティング 材料を提供する。
 このように、組成式(3)で表されるフルオラ ト構造を有する立方晶の化合物は、酸素欠 が不規則化することによりフォノンによる 乱が増加するために、従来の希土類安定化 ルコニアに比べ低熱伝導率となる。

 この場合、前記Lnの平均イオン半径rが1.01 Å≦r<1.053Å、より好ましくは1.032Å≦r<1 .048Åであれば、組成式(3)で表される化合物 フルオライト構造となり、組成式(3)で表さ る化合物を含む遮熱コーティング材料は、 り低い熱伝導率を有する。

 熱伝導率の誤差は±0.1W/mKと考えられるため 化合物Ln 3 NbO 7 の熱伝導率が1.2W/mK以下であれば、従来の希 類安定化ジルコニアの1/2の熱伝導率を有す 遮熱コーティング材料が達成できる。その め、遮熱コーティングに用いる場合、従来 希土類安定化ジルコニアのように膜を厚く て遮熱性を向上させる必要がなく、現行と 程度の膜厚であっても、希土類安定化ジル ニアよりも遮熱性の高い遮熱コーティング することが可能となる。

 なお、本発明の遮熱コーティング材料は 原材料としての遮熱コーティング材料を意 するとともに、機器部品の表面に形成され 遮熱コーティング材料をも含む。

 本発明によれば、遮熱コーティング材料 上記組成式(1)、組成式(2)または組成式(3)で される化合物を主体として含むことにより 従来の希土類安定化ジルコニアに比べ低熱 導率とすることができる。これにより、遮 性を向上させるとともに、割れや剥離が発 しにくい遮熱コーティング膜を提供するこ ができる。本発明の遮熱コーティング材料 、例えば1700℃級ガスタービンに使用すれば 、高温環境下での金属製部材の耐久性が向上 するため、ガスタービンの高効率化を実現す ることが可能となる。

遮熱コーティングの組織の模式図であ 。 組成式Yb 1-x Ta x O 1.5+x におけるxの値と熱伝導率との関係を示すグ フである。 組成式Y 1-x Ta x O 1.5+x におけるxの値と熱伝導率との関係を示すグ フである。 Lnの平均イオン半径と熱伝導率との関 を示すグラフである。

符号の説明

 1 遮熱コーティング材
 2 数十μm径の大気孔
 3 数μm径の小気孔
 4 線状気孔
 5 線状気孔

 以下に、本発明の遮熱コーティング材料 かかる第1の実施形態を説明する。

 本発明の遮熱コーティング材料は、Ln 1-x Ta x O 1.5+x またはLn 1-x Nb x O 1.5+x で表される化合物を主体として含む。Lnは、S c、Y及びランタノイド元素(La、Ce、Pr、Nd、Pm Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)の中か 選択される1種類または2種類以上の元素を表 す。

 Ln 1-x Ta x O 1.5+x またはLn 1-x Nb x O 1.5+x は、従来の希土類安定化ジルコニアと比べて 低い熱伝導率を示す。これは、構造中の酸素 欠陥が不規則化することによりフォノンによ る散乱が増加するためと考えられる。特に、 xの値が、0.13≦x≦0.24である場合、LnとTaまた Nbとが固溶化して、酸素欠陥がさらに増加 て不規則性が高まるので、熱伝導率が低い 熱コーティング材料となる。好ましくは0.15 x≦0.23、より好ましくは0.18≦x≦0.22とする 、熱伝導率をさらに低下させることができ 。

 Ln 1-x Ta x O 1.5+x またはLn 1-x Nb x O 1.5+x の結晶構造は、Lnの平均イオン半径rがr<1.04 Åにおいて、高温から低温においての相転移 がない。このため、高温で運転する機器の発 停時など、急激に温度が変化する場合でも、 相転移に伴う急激な体積変化が無いために、 遮熱コーティングの割れや剥離が発生するの を防止することができる。

 r<1.04Åを満たす元素としては、Lu,Yb,Tm,E r,Ho及びYが挙げられる。特に、Yb,Er,Yはクラー ク数が大きい元素であるので、遮熱コーティ ング材料として好適である。組成式(1)または 組成式(2)におけるLnとして、Lu,Yb,Tm,Er,Ho及びY 中から1種類が選択されても良く、2種類以 が選択されても良い。あるいは、Lu,Yb,Tm,Er,Ho 及びYの中から1種類または2種類以上の元素が 選択され、更に、その他のr≧1.04Åとなる元 の中から1種類または2種類以上の元素が選 されても良い。この場合は、選択された元 の平均イオン半径がr<1.04Åを満たすよう 、組成比を適宜設定する必要がある。

 組成式(1)または組成式(2)で表される化合 を含む遮熱コーティングは、大気圧プラズ 溶射法や電子ビーム蒸着法などにより、金 接合層を介して金属製部品(機器部品)上に 成される。遮熱性を向上させるために膜厚 厚くすることは有効であるが、遮熱コーテ ングの割れや剥離が生じやすくなる。その め、遮熱コーティングの膜厚は0.3~0.5mm程度 適当である。組成式(1)または組成式(2)で表 れる化合物は、熱伝導率が低いため、膜を くすることなく高温環境下での使用に耐え る高い遮熱性を有する遮熱コーティングと ることができる。

 以下、実施例1を示して本発明を具体的に 説明する。ただし、本発明はこれらに限定さ れるものではない。

 (実施例1)
 原料粉末としてTa 2 O 5 、Yb 2 O 3 、Y 2 O 3 を用い、所望の組成となるよう秤量し、ボー ルミルを用いて固相混合した。混合粉末を乾 燥させた後、1400℃で仮焼した。仮焼粉を粉 X線回折により同定したところ、未反応原料 分は残っておらず、すべての試料で単相に っていることを確認した。

 各試料を1600℃で焼成し、その焼結体から 直径10mmφ、厚さ1mmの円盤状試料を切出し、レ ーザーフラッシュ法により熱伝導率を測定し た。

 図2に、Yb 1-x Ta x O 1.5+x の組成と熱伝導率の関係を示す。同図におい て、横軸は組成式Yb 1-x Ta x O 1.5+x におけるxの値、縦軸は熱伝導率である。x=0.2 付近で熱伝導率が最小(約0.8W/mK)となった。0.1 3≦x≦0.24で、熱伝導率が1.1W/mK以下となり、 来のYSZの熱伝導率の1/2以下となり、Yb 3 TaO 7 (x=0.25)よりも低下した。特に、0.15≦x≦0.23で 熱伝導率1.0W/mK、0.18≦x≦0.22では熱伝導率0.9 W/mK以下を達成できた。

 図3に、Y 1-x Ta x O 1.5+x の組成と熱伝導率の関係を示す。同図におい て、横軸は組成式Y 1-x Ta x O 1.5+x におけるxの値、縦軸は熱伝導率である。化 物Yb 1-x Ta x O 1.5+x の場合と同様に、x=0.2付近で熱伝導率が最小( 約0.8W/mK)となり、0.13≦x≦0.24で熱伝導率1.1W/mK 以下が得られた。

 化合物Yb 1-x Ta x O 1.5+x 、化合物Y 1-x Ta x O 1.5+x 、及び比較材としてYSZ(8mol%Y 2 O 3 添加ZrO 2 )の平均線膨張係数を表1に示す。

 本発明の化合物は、従来のYSZと同等の線 張係数を示した。

 NbはTaと同族の元素であるため、組成式Ln 1-x Nb x O 1.5+x で表される化合物の場合も、同様に0.13≦x≦0 .24において熱伝導率が低く、従来のYSZと同等 の線膨張係数を有する。

 以下に、本発明の遮熱コーティング材料 かかる第2の実施形態を説明する。

 本発明の遮熱コーティング材料は、組成 (3)で表される化合物を主体として含む。Ln 、Sc、Y及びランタノイド元素(La、Ce、Pr、Nd Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)の中か 選択される1種類または2種類以上の元素を表 す。

 化合物Ln 3 NbO 7 は、Lnの平均イオン半径rに対応して結晶構造 が変化する。ここで、Lnの平均イオン半径rは 、Lnを構成する各元素のイオン半径をモル分 で算術平均した値とする。Lnの平均イオン 径rが1.053Å以上の場合では化合物Ln 3 NbO 7 の結晶構造は斜方晶となり、Lnの平均イオン 径rが1.053Å未満の場合はフルオライト構造 有する立方晶となる。

 フルオライト構造を有する立方晶のLn 3 NbO 7 は、従来の希土類安定化ジルコニアと比べて 低い熱伝導率を示す。これは、構造中の酸素 欠陥が不規則化することによりフォノンによ る散乱が増加するためと考えられる。特に、 Lnが2種類以上の元素から構成されると、さら に不規則性が高まる。これによりフォノン散 乱がより増加するので、低熱伝動率の遮熱コ ーティング材料が達成できるので有効である 。

 特に、Lnの平均イオン半径rが1.01Å≦r<1.05 3Åであるとき、化合物Ln 3 NbO 7 は低熱伝導率を示し遮熱性に優れたコーティ ング材料となるので好ましい。さらに、Lnの 均イオン半径rが1.032Å≦r<1.048Åであれば 、化合物Ln 3 NbO 7 の熱伝導率は1.1W/mK以下と、YSZと比較して熱 導率が1/2以下となるため、遮熱コーティン 材料としてより好適である。

 化合物Ln 3 NbO 7 を含む遮熱コーティングは、大気圧プラズマ 溶射法や電子ビーム蒸着法などにより、金属 接合層を介して金属製部品(機器部品)上に形 される。遮熱性を向上させるために膜厚を くすることは有効であるが、遮熱コーティ グの割れや剥離が生じやすくなるために、 熱コーティングの膜厚は0.3~0.5mm程度が適当 ある。本発明の化合物Ln 3 NbO 7 の熱伝導率が1.2W/mK以下であれば、膜を厚く ることなく高温環境下での使用に耐え得る い遮熱性を有する遮熱コーティングとする とができる。

 以下、実施例2を示して本発明をより具体的 に説明する。ただし、本発明はこれらに限定 されるものではない。
 (実施例2)
 Lnの平均イオン半径が1.053Å未満となるよう に、Lnに相当する元素の種類と比率を適宜選 した。原料粉末としてNb 2 O 5 、Sc 2 O 3 、Y 2 O 3 及び3価のランタノイド酸化物(La 2 O 3 、Ce 2 O 3 等)を用い、所望の組成となるよう秤量しボ ルミルを用いて固相混合した。混合粉末を 燥させた後、1400℃で仮焼した。その仮焼粉 粉末X線回折により同定したところ、未反応 原料成分は残っておらず、すべての試料で単 相になっていることを確認した。
 それらの試料を1600℃で焼成し、その焼結体 から直径10mmφ、厚さ1mmの円盤状試料を切出し 、レーザーフラッシュ法により熱伝導率を測 定した。

 (比較例)
 Lnの平均イオン半径が1.053Å以上となるよう にLnに相当する元素の種類、比率を適宜選択 た。実施例2と同様にして試料を作製し、粉 末X線回折による同定及びレーザーフラッシ 法による熱伝導率の測定を行った。

 実施例2及び比較例で作製した試料について 、Lnの平均イオン半径、結晶構造及び熱伝導 を表2に示す。比較としてイットリア安定化 ジルコニア(YSZ)の熱伝導率を表2中に記載した 。
 また、Lnの平均イオン半径と熱伝導率との 係を図4に示す。

 表2に示すように、Lnの平均イオン半径が1 .053Å未満の化合物はフルオライト構造を有 、1.3W/mK以下の低い熱伝導率を示した。一方 Lnの平均イオン半径が1.053Å以上の化合物は 結晶構造が斜方晶となり、熱伝導率が1.4W/mK 上と、フルオライト構造を有する化合物よ も大きくなった。

 また、図4に示すように、Lnの平均イオン 径rが1.01Å≦r<1.053Åで、熱伝導率が低い ルオライト構造の化合物が確実に得られた 特に1.032Å≦r<1.048Åの場合に、熱伝導率1 .1W/mK以下を達成できた。

 表3に実施例2の化合物(Nd 0.5 Yb 2.5 NbO 7 )とYSZの平均線膨張係数を示す。実施例2の化 物は従来のYSZと同程度の線熱膨張係数を示 た。

 熱伝導率が1.2W/mK以下の化合物Ln 3 NbO 7 を遮熱コーティングに用いれば、高い遮熱性 を有する遮熱コーティングとなる。これを、 例えば1700℃級ガスタービンに使用すれば、 温環境下での金属製部材の耐久性が向上す ので、ガスタービンの高効率化を実現する とが可能となる。