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Title:
ASTAXANTHIN-PRODUCING BACTERIUM, BACTERIAL CULTURE, ASTAXANTHIN-CONTAINING COMPOSITION AND METHOD OF PRODUCING ASTAXANTHIN
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/129934
Kind Code:
A1
Abstract:
A bacterium belonging to the genus Erythrobacter which is capable of producing a composition containing 35% by mass or more of adonixanthin and 5% by mass or more of astaxanthin; an Erythrobacter JPCC O species the base sequence of 16SrDNA of which is the base sequence represented by SEQ ID NO:1 or a base sequence having a 96% or higher homology with the base sequence represented by SEQ ID NO:1; a bacterial culture obtained by culturing the above-described bacterium; an astaxanthin-containing composition collected from the above-described bacterium; and a method of producing astaxanthin which comprises the step of culturing the above-described bacterium.

Inventors:
MATSUMOTO MITSUFUMI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/056782
Publication Date:
October 30, 2008
Filing Date:
April 04, 2008
Export Citation:
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Assignee:
ELECTRIC POWER DEV CO (JP)
MATSUMOTO MITSUFUMI (JP)
International Classes:
C12N1/20; C12N15/09; C12P23/00; C12R1/01
Foreign References:
JP2006191919A2006-07-27
Other References:
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See also references of EP 2157168A4
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WANG, C.-W. ET AL., BIOTECHNOLOGY AND BIOENGINEERING, vol. 62, no. 3, 1999, pages 235 - 241
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ERYTHROBACTER JPCC 0 SP. STRAIN
Attorney, Agent or Firm:
SHIGA, Masatake et al. (Marunouchi Chiyoda-k, Tokyo 20, JP)
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Claims:
 産生する組成物中に占めるアドニキサンチン含有量が35質量%以上、アスタキサンチン含有量が5質量%以上であるエリスロバクター属。
 16SrDNAの塩基配列が、配列番号1に示す塩基配列か、又は配列番号1に示す塩基配列と96%以上の相同性を有する塩基配列であるエリスロバクターJPCC O種。
 産生する組成物中に占めるアドニキサンチン含有量が35質量%以上、アスタキサンチン含有量が5質量%以上である請求項2に記載のエリスロバクターJPCC O種。
 エリスロバクターJPCC O種1884株(受託番号NITE BP-341)である請求項2に記載のエリスロバクターJPCC O種。
 請求項1~4のいずれか一項に記載の細菌を培養して得られる細菌培養物。
 請求項1~4のいずれか一項に記載の細菌から採取された、アスタキサンチンを含有する組成物。
 請求項1~4のいずれか一項に記載の細菌を培養する工程を有するアスタキサンチンの製造方法。
Description:
アスタキサンチン産生細菌、細 培養物、アスタキサンチン含有組成物およ アスタキサンチンの製造方法

 本発明は、アスタキサンチン産生能を有す エリスロバクター(Erythrobacter)属の細菌、前 細菌を用いて得られる細菌培養物およびア タキサンチン含有組成物、並びに該細菌を いるアスタキサンチンの製造方法に関する
 本願は、2007年4月12日に、日本に出願された 特願2007-104711号に基づき優先権を主張し、そ 内容をここに援用する。

 カロチノイド色素であるアスタキサンチ は、マダイ、サケなどの魚類、カニやエビ どの甲殻類に広く分布している。また、微 物が生産する例として、緑藻Heamatococcuspluvia lisが最も有名である。その他にも、赤色酵母 Xanthophyllomyces dendrohous (旧Phaffia rhodozyma)が挙 げられる。Heamatococcus pluvialisが生産するアス タキサンチン量は43mg/g dry weight程度である とが知られている(非特許文献1)。また、赤 酵母Xanthophyllomyces dendrohous(旧Phaffia rhodozyma) おいては、0.4mg/g dry weightの産生量が報告 れている(非特許文献2)。

 原核細胞である細菌は、広い基質利用能 を有し、簡単な培養で高い生育速度を示し 上記酵母のような厚い細胞壁を有しないこ から、有用物質生産において最も期待され 微生物の1つである。細菌におけるアスタキ サンチン生産では、Escherichia coliの遺伝子組 え体により、1.4mg/g dry weightが達成されて る(非特許文献3)。また、Bacillus firmusを用い 方法では、0.05mg/g dry weightが達成されてい (非特許文献4)。更に海洋細菌Paracoccus sp.MBIC 1143において、0.14mg/g dry weightが報告されて る(非特許文献5)。しかしながらこれらの遺 子組替え体によるアスタキサンチンの生産 、現在のところ発現量の点などにおいて問 がある。

 一方で、天然物からの分離によるアスタ サンチン製造では、オキアミや甲殻類から 出するため、抽出効率が低い為に抽出量が く、コストが高くなるという問題がある。 た、天然資源の減少から資源の確保の点で 商業的に問題がある。

 アスタキサンチンは、多くの生理活性を しておりサプリメント食品などで販売され いる。また、タイやサケなどの養殖魚では その色調をより天然のものに近づけるため 、アスタキサンチンを配合した飼料(色揚げ 飼料)が用いられている。

 近年の天然資源の減少により養殖による 然資源の生産が期待されている。魚介類の 口種苗生産において対象魚種に対して高い 料効果や付加価値を添加する飼料が求めら ている。タイやニジマスなどの体色の鮮や さが必要となる魚種には、アスタキサンチ などの色素を配合した飼料が使用されてい 。

 色揚げ用飼料添加物としてのアスタキサ チンは、カロリーピンク(合成アスタキサン チン)としてロッシュ社から販売されている 、トレーサビリティーの問題や天然物志向 中で、天然物アスタキサンチンが注目を受 ている。これまで、色揚げ用天然物アスタ サンチンは、緑藻Heamatococcus pluvialisや赤色 母Xanthophyllomyces dendrohousが利用されているが 、着色が十分でないなどの問題があった。緑 藻Heamatococcus pluvialisや赤色酵母Xanthophyllomyces dendrohousは、自身の細胞壁が厚く対象魚種に いて消化・吸収率が低い。このため、吸収 が高い新たな微生物が求められている。

 細菌は、細胞壁が薄く増殖が速い特徴を持 ている。そこで、アスタキサンチンを産生 る細菌が検索され、フラボバクテリウム属 アルカリゲネス属、シュードモナス属、ア テロモナス属、ピポモナス属、カリオファ ン属、エリスロバクター属、パラコッカス がすでに知られている。
リー及びソー(Lee,Y.-K.and Soh,C.-W.)、「ジ ーナル・オブ・ファイコロジー(J.Phycol.)」、 米国、1991年、第27巻、第3号、p.575-577 フローレス-コテラら(Flores-Cotera,L.B.et al. )、アプライド・マイクロバイオロジー・ア ド・バイオテクノロジー(Appl.Microbiol.Biotechnol .)、米国、2001年、第55巻、第2号、p.341-347 ワンら(Wang,C.-W.et al.)、バイオテクノロ ー・アンド・バイオエンジニアリング(Biotech nol.Bioeng.)、米国、1999年、第62巻、第3号、p.235 -241 ヨコヤマら(Yokoyama et al.)、バイオサイ ンス・バイオテクノロジー・アンド・バイ ケミストリー(Bioscience,Biotechnology,and Biochemist ry)、米国、1994年、第58巻、第10号、p.1842-1844 ペインら(Pane,L.et al.)、ジャーナル・オ ・バイオロジー・リサーチ(J.Biol.Res.)、米国 1996年、第22巻、p.303-308

 本発明は、酵母や藻類のような厚い細胞 を有さず、アスタキサンチンを産生できる 菌、前記細菌を用いて得られる細菌培養物 よびアスタキサンチン含有組成物、並びに 記細菌を用いるアスタキサンチンの製造方 を提供することを課題とする。

 上記課題を解決する為に、本発明の第1の態 様(aspect)は、産生する組成物中に占めるアド キサンチン含有量が35質量%以上、アスタキ ンチン含有量が5質量%以上であるエリスロ クター(Erythrobacter)属である。
 本発明の第2の態様(aspect)は、16SrDNAの塩基配 列が、配列番号1に示す塩基配列か、又は配 番号1に示す塩基配列と96%以上の相同性を有 る塩基配列であるエリスロバクター(Erythroba cter)JPCC O種である。
 前記エリスロバクター(Erythrobacter)JPCC O種は 、産生する組成物中に占めるアドニキサンチ ン含有量が35質量%以上、アスタキサンチン含 有量が5質量%以上であってもよい。
 前記エリスロバクター(Erythrobacter)JPCC O種は 、エリスロバクター(Erythrobacter)JPCC O種1884株( 受託番号NITE BP-341)であってもよい。
 本発明の第3の態様(aspect)は、前述したいず かの細菌を培養して得られる細菌培養物で る。
 本発明の第4の態様(aspect)は、前述したいず かの細菌から採取された、アスタキサンチ を含有する組成物である。
 本発明の第5の態様(aspect)は、前述したいず かの細菌を培養する工程を有するアスタキ ンチンの製造方法である。

 本発明の新規の細菌及びその培養物を使 すれば、有用色素であるアスタキサンチン 産生を行うことが可能である。さらに本発 のアスタキサンチン含有組成物、アスタキ ンチンの産生方法によれば、有用色素であ アスタキサンチンを効率的に産生すること 可能になり、従来のアスタキサンチン含有 料よりもアスタキサンチン含有量の多い色 げ用餌料等の飼料を効率よく調製できる。

エリスロバクターJPCC O種1884株(受託番 NITE BP-341)の分子系統解析の結果を示す分子 系統樹である。

 以下、本発明について詳しく説明する。 下、「エリスロバクター(Erythrobacter)JPCC O種 1884株(受託番号NITE BP-341)」のことを「エリス ロバクターJPCC O種1884株」又は「JPCC O 1884株 」と略記することがある。また、本発明にお いて、アスタキサンチンとは、その構造異性 体(シス体)も含むものとする。また、以下「 造異性体」とは、ずべて「シス体」のこと 指す。

<エリスロバクターJPCC O種1884株の獲得>
 海洋環境やマングローブ林より採取した海 、泥、水などからアスタキサンチンを産生 る微生物の獲得を試みた。酵母エキスを5.0g /l、ペプトンを1.0g/l、グルコースを5.0g/lをと るようにそれぞれ人工海水(千寿製薬)に添 して作製した寒天プレートに、100μlのサン ルを塗布した。

 25℃の条件下で7~10日間静置培養を行い、 レンジ、赤色のコロニーを形成する海洋微 物を獲得した。これらの微生物を単菌化す ため、5mlの上記成分を含む液体培地中に獲 した海洋微生物を植菌し、震とう培養(150rpm )を行い生育させ、寒天プレートに塗布し、 ロニーを形成させる操作を繰り返すことで 菌化した。

 約800株の海洋細菌からなる菌体粉末0.3mg らクロロホルム:メタノール=1:1(v:v)の溶液で 素を抽出し、アスタキサンチンのスクリー ングを行った。

 アスタキサンチンの有無については、TLC( 薄層クロマトグラフィー)を用いて評価した その結果、アスタキサンチンをはじめとす 各種カロチノイド色素を産生する株を同定 、エリスロバクターJPCC O種1884株を獲得した 。

 エリスロバクターJPCC O種1884株は、国内 託として2007年3月19日付けで、独立行政法人 業技術総合研究所特許生物寄託センター(日 本国千葉県木更津かずさ鎌足2-5-8)へ寄託した (受託番号NITE P-341 原寄託)。そして、上記原 寄託について2008年2月29日にブダペスト条約 基づく寄託への移管請求が当局により受領 れ、受託番号NITE BP-341が付与されている。 

<エリスロバクターJPCC O種1884株の同定>
 エリスロバクターJPCC O種1884株の同定は、 式会社テクノスルガに委託して実施した。 記方法で獲得した検体を用いて、「形態的 質」、「培養的性質」、「生理学的性質」 「糖類からの酸生成/ガス酸性」および「そ 他の生理学的性質」を確認し、「塩基配列 の同定および系統解析を行った。「形態的 質」を表1に、「培養的性質」を表2に、「 理学的性質」を表3に、「糖類からの酸生成/ ガス酸性」を表4に、「その他の生理学的性 」を表5に、「16SrDNAの塩基配列」を配列番号 1にそれぞれ示す。

 なお、表1~5において、(1)ゼラチン液化、グ ム染色性については、文献「BARROW,(G.I.) and FELTHAM,(R.K.A):Cowan and Steel’s Manual for the Id entification of Medical Bacteria.3rd edition.1993,Cambri dge University Press.」を参考にした。
 また、(2)リトマス・ミルクでの培養条件、M Rテスト、デンプンの加水分解、クエン酸の 用、無機窒素源の利用、カタラーゼ、オキ ダーゼ、O-Fテスト(酸化/発酵)、糖類からの 生成/ガス酸性については、文献「坂崎利一 吉崎悦郎、三木寛二:新細菌培地学講座・下 ,第二版.1998,近大出版,東京」を参考にした。
 また、(3)硝酸塩の還元、脱窒反応、VPテス 、インドール産生、硫化水素の生成、ウレ ーゼ活性、その他の生理学的性質について 、「細菌同定キットAPI20E,(bioMerieux,France)」を 使用した。

[規則26に基づく差替え 23.04.2008]

[規則26に基づく差替え 23.04.2008]

[規則26に基づく差替え 23.04.2008]

(塩基配列)
 エリスロバクターJPCC O種1884株(受託番号NITE  BP-341)の16SrDNAを、公知の方法により同定し 結果、配列番号1に示す塩基配列であること 判った。

(系統解析)
 解析ソフトウェアとしてCLUSTAL W(THOMPSON(J.D.) ,HIGGINS(D.G.) and GIBSON(T.J.),Nucleic Acids Research,1 994,22:4673-4680.参照)、MEGA ver3.1(KUMAR,(S.),TAMURA,(K .) and NEI,(M.),Briefings in Bioinformatics,2004,5,150-1 63.参照)を用い、得られた16SrDNAの塩基配列を アポロンDB細菌基準株データベース(株式会 テクノスルガ)、国際塩基配列データベース (GenBank/DDBJ/EMBL)から取得した塩基配列情報と 合して、分子系統解析を行った。
 その結果得られた分子系統樹を図1に示す。

 得られた検体は、α-プロテオバクテリア(α- Proteobacteria)に属する桿菌で、カタラーゼおよ びオキシダーゼを有する偏性好気性細菌であ る。
 BLAST(ALTSCHUL,(S.F.),MADDEN,(T.F.),SCHAFFER,(A.A.),ZHANG, (J.),ZHANG,(Z.),MILLER,(W.),and LIPMAN,(D.J.),Nucleic Acid s Research,1997,25:3389-3402.参照)を用いた細菌基 株データベースに対する相同性検索の結果 前記検体の16SrDNAの塩基配列は、エリスロバ ター アクイマリス(Erythrobacter aquimaris)SW-110 株の16SrDNAの塩基配列に対し、97.8%と最も高い 相同性を示した。また、国際塩基配列データ ベースに対する相同性検索においても、前記 検体は、エリスロバクター由来の16SrDNAの塩 配列に対し高い相同性を示した。このこと ら、前記検体は、エリスロバクター属に含 れる可能性が高いと考えられた。
 分子系統解析の結果、前記検体は、エリス バクターの基準種であるエリスロバクター ロンガス(Erythrobacter longus)と系統枝を形成し 、エリスロバクター ロンガスの系統枝にお るブートストラップ値は81%と比較的高く、 の外側に位置するエリスロバクター アク マリスの系統枝におけるブートストラップ も80%を示すことから、これら3株の位置は比 的安定していると考えられた。このことか 、前記検体は、エリスロバクターに含まれ 既知種ではエリスロバクター ロンガスや リスロバクター アクイマリスに近縁と考え られる。しかし、前記検体の16SrDNAの塩基配 は、これら2種の16SrDNAの塩基配列と完全には 一致しておらず、前記検体とこれら2種の系 枝と、他のエリスロバクターに属する種の 統枝を比較すると、前記検体がこれら2種の ちらかと同種となる可能性は低いと考えら た。
 以上より、分子系統解析の結果、前記検体 エリスロバクター属の新種(エリスロバクタ ーJPCC O種1884株(受託番号NITE BP-341)であると 断された。

<アスタキサンチン産生細菌、細菌培養物 アスタキサンチン含有組成物およびアスタ サンチンの製造方法>
 本発明の細菌は、16SrDNAの塩基配列が、配列 番号1に示す塩基配列か、又は配列番号1に示 塩基配列と96%以上の相同性を有する塩基配 であるエリスロバクターJPCC O種の細菌を包 含する。このような細菌は、エリスロバクタ ーJPCC O種1884株(受託番号NITE BP-341)と同種の であると考えられるからである。16SrDNAの塩 配列が、配列番号1に示す塩基配列と96%以上 の相同性を有する塩基配列であるエリスロバ クターJPCC O種の細菌には、例えば、エリス バクターJPCC O種1884株(受託番号NITE BP-341)の1 6SrDNAの塩基配列に対して、化学物質を作用さ せる手法や遺伝子組み換え等の公知の手法で 変異を導入することで得られた細菌も包含さ れる。
 また、産生する組成物中に占めるアドニキ ンチン含有量が35質量%以上、アスタキサン ン含有量が5質量%以上であるエリスロバク ー属に属する細菌も本発明の細菌である。 記するように、このような色素を高含有量 産生する細菌は、利用価値が高い。

 本発明のアスタキサンチンの製造方法は、 記本発明の細菌(以下、「本細菌」と略記す ることがある)を培養する工程を有する。
 本細菌を用いてアスタキサンチンを製造す 方法を、以下に例示する。
 本細菌を培養するための培地は、本細菌の 育に必要な炭素源、窒素源、無機塩、微量 素(ビタミン、微量金属)等を含むものであ ば特に限定されない。
 より具体的には、炭素源として、例えば、 ルコース、シュークロース等の糖類、エタ ールやグリセロールなどのアルコール類を げることができる。添加量は、添加する炭 源にもよるが、概ね0.5~3.0質量%程度とすれ 良い。

 窒素源としては、例えば、硝酸ナトリウ 、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、 酸カリウム、塩化アンモニウム、尿素など 硝酸体窒素、アンモニア窒素体のいずれか することができる。添加量は添加する窒素 にもよるが、概ね0.01~0.1質量%程度とすれば い。

 無機塩類としては、例えば、塩化ナトリ ム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩 カリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ素化 リウム、塩化ストロンチウム、ホウ酸、ケ 酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、リン酸 カリウム、リン酸二カリウム、リン酸一ナ リウム、リン酸二ナトリウム、塩化鉄、塩 マンガン、硫酸マンガン、塩化マグネシウ 、硫酸銅などを用いることができる。添加 は、添加する無機塩の種類にもよるが、0.00 1~0.01質量%程度とすれば良い。

 また、特殊な必要物質として、酵母エキス ペプトン、トリプトンなどを用いることが きる。これら特殊な必要物質の添加量は添 する物質にもよるが、0.01~0.5質量%程度とす ば良い。
 その他、本発明の効果を損なわない範囲に いて、培地にはその他の成分を含有させて 良い。
 本細菌の培養に用いる培地として、市販品 用いても良く、好ましいものとして、例え 、マリンブロス培地(Difco社製)が挙げられる 。

 本細菌の培養を行う際は、培地は公知の方 に従って滅菌しておくことが好ましい。
 培地のpHは、6.0~8.0に調整することが好まし 。そして、培養温度は20~35℃であることが ましい。培養時間は特に限定されないが、 常、2~4日であることが好ましい。培養法と ては、震とう培養または通気培養が好まし 。そして、培養中に培地は撹拌することが ましい。培地への植菌量は特に限定されな が、0.1~5容量%であることが好ましい。

 次いで、培養された本細菌からアスタキ ンチンを得る。例えば、本細菌を培養して られる細菌培養物から直接、または遠心分 により回収された沈殿物より、有機溶媒で スタキサンチンを抽出することができる。 菌培養物は、凍結乾燥などの手法により乾 菌体としてから溶媒抽出に供しても良い。 こで用いる溶媒は、アスタキサンチンが十 に溶解するものであれば良く、一種の溶媒 単独で用いても良いし、複数種の溶媒を混 した混合溶媒でも良い。

 より具体的には、極性の高いアセトン、メ ノール、酢酸エチルや、ヘキサン、ジクロ メタン、クロロホルムなどの非極性溶媒を 独で、または混合して用いることができる 特に好ましい溶媒として、クロロホルムお びメタノールの混合溶媒が挙げられる。こ らの混合比は特に限定されるものではない 、クロロホルム:メタノール=0.5:1.5~1.5:0.5(v/v) であることが好ましい。
 さらに、シリカゲルなどの充填剤、抽出に いたものと同様の溶媒を用いて、カラムク マトグラフィーによりアスタキサンチンを 製しても良い。

 得られた組成物中の成分は、例えば、そ 分析データを公知化合物の分析データと比 することで同定できる。分析法としては、 造に関するデータが取得できるものであれ いずれでも良く、例えば、HPLC、IR、NMR、LC/M Sなど通常汎用される分析法で良い。また、 えば、HPLCにより分析時に検量線を作成して けば、得られた組成物中の各成分の含有量 定量できる。

 本細菌から採取される組成物には、本細菌 産生した成分として、アスタキサンチン以 にも、β-カロチンがアスタキサンチンに変 される過程で生じる種々の有用なカロチノ ド色素が含有される。前記組成物中に含有 れる色素として、具体的には、アスタキサ チン、アドニキサンチン、ゼアキサンチン アドニルビン、カンタキサンチン、ハイド エキネノン、β-クリプトキサンチン、エキ ノン、β-カロチンなどが挙げられる。
 なかでも、アスタキサンチンは、産生され 全色素中の含有量が5質量%以上と高濃度で る。また、通常のアスタキサンチン産生能 有する細菌が産生するアスタキサンチンは ほとんどがトランス体であるのに対し、本 菌が産生するアスタキサンチンには、シス が10質量%以上含まれている。
 さらに、アドニキサンチンも、産生される 色素中の含有量が35質量%以上と特に高濃度 ある。
 したがって、本細菌から採取された組成物 、通常のアスタキサンチン産生能を有する 菌が産生する組成物よりも有用性が高い。

 本細菌を培養して得られる培養物、また 本細菌の乾燥菌体、凍結菌体、溶媒抽出物 もしくは粉砕・破砕処理物を、動物プラン トンの培養物へ添加して捕食させ、これを 収することにより、アスタキサンチンを製 することもできる。この製造方法によれば アスタキサンチン等のカロチノイド色素が 縮された飼料を提供することも可能になる

 前記動物プランクトンとしては、例えば ワムシ、アルテミア、ミジンコなどを挙げ ことができる。これらの動物プランクトン 、本細菌を捕食させることにより生物学的 縮が行われ、その結果得られる動物プラン トンの培養物は、従来の細菌の培養によっ 産生されるアスタキサンチン等のカロチノ ド色素に比較して、格段に濃縮されたもの あり、その利用価値は高い。

 動物プランクトンによる濃縮を利用した スタキサンチン等の製造方法により得られ 飼料は、養殖魚において好適に用いること できる。稚魚の中にはカロチノイド色素を 有する甲殻類プランクトンを摂餌している のがあり、この摂餌により魚の色が影響さ ることが知られている。従って、これらの 魚類を養殖する際に、上記方法で製造され 飼料を色揚げ用飼料として給餌すると、動 プランクトンにより濃縮されたカロチノイ 色素等を給餌することが可能になることに り、従来よりも効率的に魚の色揚げを行う とができる。

 以下、具体的実施例により、本発明につい さらに詳しく説明する。ただし、本発明は 以下に示す実施例に何ら限定されるもので ない。
(エリスロバクターJPCC O種1884株の培養物から のアスタキサンチンを含むカロチノイド色素 の分離)
 エリスロバクターJPCC O種1884株(受託番号NITE  BP-341)の生育に必要な全ての栄養素を含むマ リンブロス培地(Difco社製)を調製し、121℃で10 分間滅菌処理した。次いで、1L三角フラスコ この培地を250ml分取したのち、この株を5ml 菌して、150rpmで撹拌しながら30℃で3日間培 を行った。この培養液を遠心分離し、凍結 燥を行い、0.5gの乾燥菌体を得た。この菌体 クロロホルム:メタノール=1:1(v:v)溶液を加え て色素を抽出後、シリカゲルをクロロホルム :メタノールの移動相に再懸濁させ、充填し オープンカラム(口径30mm、全長600mm)を用いて 色素の分離を行った。

 この株から抽出された色素は5つの画分に 分けられた。そして各フラクション(フラク ョン1~5)を分取し、HPLC(カラム:口径4.6mm、全 250mm)により分析した結果、フラクション2中 、公知のアスタキサンチンと同じベクトル 示す物質の存在が確認された。さらに、LC/M Sを用いた分析においても、公知のアスタキ ンチンのデータと一致するデータが得られ 。

 フラクション2と同様に、その他のフラク ション(フラクション1、3、4および5)を分取し 、HPLCおよびLC/MSを用いて分析した。その結果 、アスタキサンチン、アドニキサンチン、ゼ アキサンチン、アドニルビン、アスタキサン チン構造異性体、アドニキサンチン構造異性 体、カンタキサンチン、ハイドロエキネノン 構造異性体、β-クリプトキサンチン、エキネ ノン、エキネノン構造異性体、β-カロチン、 β-カロチン構造異性体の存在が確認された。

 この株から抽出された主なカロチノイド 素の含有量は、乾燥菌体1g当りでアスタキ ンチン0.114mg/g、アドニキサンチン0.656mg/g、 アキサンチン0.059mg/g、アドニルビン0.019mg/g アスタキサンチン構造異性体0.016mg/g、アド キサンチン構造異性体0.149mg/g、カンタキサ チン0.007mg/g、ハイドロエキネノン構造異性 0.065mg/g、β-クリプトキサンチン0.006mg/g、エ ネノン0.165mg/g、エキネノン構造異性体0.001mg/ g、β-カロチン0.064mg/g、β-カロチン構造異性 0.001mg/gであり、カロチノイド色素の総量は1. 322mg/gであった。

 本発明は、サプリメント食品や飼料(色揚 げ飼料)の製造に利用可能である。