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Patent Searching and Data


Title:
BALL FOR CONSTANT VELOCITY JOINT AND METHOD FOR PRODUCING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/150928
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a ball (16) for a constant velocity joint, and a method for producing the same.  The ball (16) for a constant velocity joint is produced via a quenching step for heating a spherical body consisting of a material corresponding to a high carbon chromium bearing steel regulated by Japanese Industrial Standards (JIS) to 840-900°C and then cooling the spherical body under such a condition as 10-25 vol.% of austenite remains up to a first part (32) where the depth from the surface (30) is 0.1 mm, a step for tempering the spherical body at 150°C or more, and a step for shot peening the spherical body and imparting a compression residual stress of -1000 MPa or more to a region reaching second part (34) where the depth from the surface (30) is 0.2 mm.

Inventors:
MURAKAMI TAKAFUMI (JP)
SHIBATA NAOTO (JP)
OSAKO SHUNTA (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/059404
Publication Date:
December 17, 2009
Filing Date:
May 22, 2009
Export Citation:
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Assignee:
HONDA MOTOR CO LTD (JP)
MURAKAMI TAKAFUMI (JP)
SHIBATA NAOTO (JP)
OSAKO SHUNTA (JP)
International Classes:
F16D3/20; C21D6/00; C21D7/06; C21D9/36
Foreign References:
JP2002122145A2002-04-26
JP2005314794A2005-11-10
JP2007182607A2007-07-19
JP2006275171A2006-10-12
JPH05215144A1993-08-24
JPH02168022A1990-06-28
Attorney, Agent or Firm:
CHIBA Yoshihiro et al. (JP)
Takehiro Chiba (JP)
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Claims:
 等速ジョイント(10)を構成する外輪部材(12)と内輪部材(14)との間に介在され、前記外輪部材(12)から前記内輪部材(14)に、又はその逆方向に回転力を伝達する等速ジョイント用ボール(16)であって、
 日本工業規格に規定される高炭素クロム軸受鋼相当材を素鋼として形成され、
 表面(30)からの深さが0.1mmである第1部位(32)から0.2mmである第2部位(34)に至る領域の圧縮残留応力が-1000MPa以上を示し、
 且つ前記表面(30)から前記第1部位(32)にわたって、金属組織内にオーステナイトが10~25体積%存在することを特徴とする等速ジョイント用ボール(16)。
 請求項1記載の等速ジョイント用ボール(16)において、前記第1部位(32)での圧縮残留応力が-1150MPa以上であることを特徴とする等速ジョイント用ボール(16)。
 請求項1又は2記載の等速ジョイント用ボール(16)において、前記第1部位(32)での圧縮残留応力が前記第2部位(34)に比して大きいことを特徴とする等速ジョイント用ボール(16)。
 請求項1~3のいずれか1項に記載の等速ジョイント用ボール(16)において、日本工業規格に規定されるSUJ2相当材からなることを特徴とする等速ジョイント用ボール(16)。
 請求項1~4のいずれか1項に記載の等速ジョイント用ボール(16)において、前記表面(30)でのCスケールのロックウェル硬度が62~68であることを特徴とする等速ジョイント用ボール(16)。
 等速ジョイント(10)を構成する外輪部材(12)と内輪部材(14)との間に介在され、前記外輪部材(12)から前記内輪部材(14)に、又はその逆方向に回転力を伝達する等速ジョイント用ボール(16)の製造方法であって、
 日本工業規格に規定される高炭素クロム軸受鋼相当材からなる球体に対し、840~900℃に加熱した後、表面(30)から深さが0.1mmである第1部位(32)までオーステナイトが10~25体積%残留する条件下で冷却を行う焼入れ処理工程と、
 焼入れ処理が施された前記球体に対し、150℃以上で焼戻し処理を施す焼戻し処理工程と、
 焼戻し処理が施された前記球体に対してショットピーニング処理を施し、前記第1部位(32)から、前記表面(30)からの深さが0.2mmである第2部位(34)に至る領域に-1000MPa以上の圧縮残留応力を付与するショットピーニング処理工程と、
 を有することを特徴とする等速ジョイント用ボール(16)の製造方法。
 請求項6記載の製造方法において、高炭素クロム軸受鋼相当材として日本工業規格に規定されるSUJ2相当材を選定することを特徴とする等速ジョイント用ボール(16)の製造方法。
Description:
等速ジョイント用ボール及びそ 製造方法

 本発明は、等速ジョイントを構成する外 部材と内輪部材との間に介在される等速ジ イント用ボール及びその製造方法に関する

 自動車車体には、内燃機関等のエンジン らの駆動力をタイヤまで伝達するべく、複 個の回転軸と、回転軸同士の間に介装され 等速ジョイントとを有する駆動力伝達機構 搭載される。例えば、ドライブシャフトと ブとは、外輪部材と内輪部材との間に等速 ョイント用ボール(以下、転動ボールともい う)が介在されたバーフィールド型等速ジョ ントを介して互いに変位自在に連結されて る。

 近年、自動車の燃料消費率を向上させる 的で、自動車車体、ひいては該自動車車体 構成する各種の部材を軽量化することが種 検討されている。この観点から、バーフィ ルド型等速ジョイントにも一層の軽量化、 言すれば、小型化が希求されている。

 しかしながら、小型の部材は一般的に剛 が低い。すなわち、バーフィールド型等速 ョイントを構成する外輪部材や転動ボール を小型化した場合、その耐久性が低下する とになる。これを回避するべく、特開2000-14 5804号公報では、外輪部材及び内輪部材のボ ル溝の表面粗さを10~30μmに設定するとともに 、化成処理を施した後、さらに潤滑剤皮膜を 形成することが提案されている。

 一方、転動ボールの長寿命化に関しては 特開2002-122145号公報に、転動ボールの材質 して軸受鋼ないし軸受鋼相当材を採用する ともに、この転動ボールに窒化処理を施し 表面残留オーステナイト量を増加させ、そ 後、耐圧砕荷重処理を施すことが有効であ との開示がある。

 ここで、特開2002-122145号公報記載の従来 術において、耐圧砕荷重処理を施す理由は 窒化処理が施されたのみの転動ボールでは 砕荷重が低下して、却って割れが生じ易く るためである(段落[0005]参照)。なお、該特開 2002-122145号公報には、耐圧砕荷重処理の具体 として、焼戻し処理を180~230℃の温度範囲で 行うことが挙げられている。すなわち、この 場合、窒化処理時に硬度が上昇することに伴 って脆性が高くなるので、上記の温度範囲で 焼戻し処理を行うことによって表面硬度をHRC (Cスケールのロックウェル硬度)で60~64に下げ ようにしている。

 本発明者らの鋭意検討によれば、特開2000 -145804号公報及び特開2002-122145号公報に記載さ れるような対処を行うと、転動ボールの表面 から剥離が起こる場合が認められた。換言す れば、特開2000-145804号公報及び特開2002-122145 公報記載の従来技術では、転動ボールの耐 性を確保することが容易ではない。

 また、特開2002-122145号公報記載の従来技 では、転動ボールの表面硬度を低下させる うにしているが、転動ボールには耐摩耗性 希求されることから、本来、転動ボールの 面硬度は高い方が望ましい。表面硬度が高 方が、耐摩耗性が良好となるからである。

 本発明者らは、SUJ2等の安価な鋼材からな る等速ジョイント用ボールを小型化すると割 れ等の欠陥が発生し易くなる原因につき究明 する過程で、前記欠陥が生じた部位の金属組 織に、ナイタール腐食液を用いた際に白色を 呈する白色組織が生成しているとの知見を得 た。そして、白色組織が、鋼材に含まれる炭 素が減少することに起因して生成することか ら、欠陥が発生する理由が、金属組織(鋼材) 含まれる炭素が減少して強度・靭性が低下 たためであると推察した。

 等速ジョイント用ボールは、等速ジョイ トを介して連結された回転軸が回転動作す 際、外輪部材のボール溝、又は内輪部材の ール溝に対して摺接する。換言すれば、転 ボールと、外輪部材及び内輪部材との間で 対的な転がり・滑りが生じ、これに伴って ん断応力とともに摩擦熱が発生する。本発 者らは、このようにしてせん断応力及び摩 熱が発生することによって、炭素が減少す と考えた。

 そこで、等速ジョイント用ボールに大き 圧縮残留応力を付与することが想起される この場合、前記の転がり・滑りに伴ってせ 断応力が生じると、圧縮残留応力がこれを 収するからである。しかしながら、例えば 等速ジョイント用ボールの表面の圧縮残留 力を-1000MPaと大きくしても、欠陥が生じる とを回避することは困難である。

 本発明者らは、この理由につき鋭意検討 重ねる過程で、等速ジョイント用ボールの 面からの深さが0.1~0.2mmである部位に集中し 欠陥が発生しているとの知見を得た。この 見から、ヘルツ応力の理論と同様に、表面 りも内部でせん断応力が最大となっている の結論に達した。

 そこで、表面からの深さが0.1~0.2mmの部位 圧縮残留応力を-1000MPa以上としたところ、 速ジョイント用ボールの表面から剥離が起 ることが認められるようになった。この点 つき、本発明者らは、等速ジョイント用ボ ルの表面からの深さが0.02~0.03mmの間、特に0.0 25mm近傍で、亀裂が生じているとの知見を得 。この知見から、本発明者らは、表面から 深さが0.1~0.2mmの部位の圧縮残留応力が大き なったことに伴い、亀裂の起点が等速ジョ ント用ボールの極最表面に移動したと推察 、さらなる鋭意検討を重ね、本発明をする 至った。

 本発明の主たる目的は、安価な材質から るにも関わらず、耐久性及び耐摩耗性に優 る等速ジョイント用ボールを提供すること ある。

 本発明の別の目的は、上記した等速ジョ ント用ボールを製造することが可能な等速 ョイント用ボールの製造方法を提供するこ にある。

 本発明の一実施形態によれば、等速ジョイ トを構成する外輪部材と内輪部材との間に 在され、前記外輪部材から前記内輪部材に 又はその逆方向に回転力を伝達する等速ジ イント用ボールであって、
 日本工業規格に規定される高炭素クロム軸 鋼相当材を素鋼として形成され、
 表面からの深さが0.1mmである第1部位から0.2m mである第2部位に至る領域の圧縮残留応力が- 1000MPa以上を示し、
 且つ前記表面から前記第1部位にわたって、 金属組織内にオーステナイトが10~25体積%存在 する等速ジョイント用ボールが提供される。

 ここで、本発明における「-1000MPa以上」 、-1000MPaよりも絶対値が大きい負の数値であ ることを意味する。すなわち、例えば、-1200M Paは-1000MPaよりも大きい圧縮残留応力であり 一方、-950MPaは-1000MPaよりも小さい圧縮残留 力である。

 また、「高炭素クロム軸受鋼」とは、日 工業規格であるJIS G 4805に規定されるSUJ1~SU J5の中のいずれかと同等の組成を有する鋼材 指称する。

 上記したように、金属組織からの炭素の 少、ひいてはせん断応力の作用は、等速ジ イント用ボールの表面からの深さが0.1~0.2mm ある部位で最も大きくなると推察される。 こで、表面からの深さが0.2mmである部位に ける圧縮残留応力を-1000MPa以上と大きくする 。これにより、該等速ジョイント用ボールと 外輪部材及び内輪部材との間に相対的な転が り・滑りが生じて該等速ジョイント用ボール の内部にせん断応力が発生した際、該せん断 応力が前記圧縮残留応力によって効果的に吸 収され、その結果、炭素が減少することが抑 制される。

 このことから諒解されるように、所定の さの圧縮残留応力を大きくすることにより 炭素が減少すること、ひいては強度や靭性 低下して欠陥が発生することを回避するこ ができる。このため、等速ジョイント用ボ ルの材質として安価な鋼材を採用すること 可能となるので、耐久性に優れる等速ジョ ント用ボールを低コストで作製することも きる。

 その一方で、表面から第1部位(表面から 深さが0.1mmである部位)に至るまでの金属組 中に、オーステナイトを10~25体積%含ませる オーステナイトは、パーライトやマルテン イトに比して軟質な析出物であり、従って 表面から第1部位にかけての靭性が向上する これにより、剥離の原因となる亀裂が表面 傍に発生することが抑制される。すなわち 剥離が起こることが回避され、その結果、 久性が確保された転動ボールとなる。

 しかも、金属組織中にオーステナイトを1 0~25体積%含ませて靭性を向上させたことによ 、該転動ボールの表面硬度が高い場合であ ても剥離が起こり難くなる。例えば、この 動ボールでは、表面硬度をHRCで62~68とする とも可能である。

 そして、これにより、耐摩耗性も確保さ る。

 なお、一般的な転動ボールでは、亀裂は 表面から前記第1部位の間の領域で発生し易 い傾向にある。このため、表面からの深さが 0.1mmである部位の圧縮残留応力は、深さが0.2m mである部位に比して大きいことが好ましい このように表面側の方の圧縮残留応力を大 くすることにより、該表面側に亀裂が発生 ることを抑制することができるからである

 表面からの深さが0.1mmである部位の圧縮 留応力は、例えば、-1150MPa以上に設定すれば よい。

 本発明の別の一実施形態によれば、等速ジ イントを構成する外輪部材と内輪部材との に介在され、前記外輪部材から前記内輪部 に、又はその逆方向に回転力を伝達する等 ジョイント用ボールの製造方法であって、
 日本工業規格に規定される高炭素クロム軸 鋼相当材からなる球体に対し、840~900℃に加 熱した後、表面から深さが0.1mmである第1部位 までオーステナイトが10~25体積%残留する条件 下で冷却を行う焼入れ処理工程と、
 焼入れ処理が施された前記球体に対し、150 以上で焼戻し処理を施す焼戻し処理工程と
 焼戻し処理が施された前記球体に対してシ ットピーニング処理を施し、前記第1部位か ら、前記表面からの深さが0.2mmである第2部位 に至る領域に-1000MPa以上の圧縮残留応力を付 するショットピーニング処理工程と、
 を有する等速ジョイント用ボールの製造方 が提供される。

 このような過程を経ることにより、上記 たように、表面から内部にわたって欠陥が 生し難く、耐久性に優れた等速ジョイント ボールを得ることが可能となる。

 以上のように、本発明においては、等速 ョイント用ボールにおける欠陥発生の原因 なる白色組織が生成し易い部位(表面からの 深さ0.1~0.2mm)の圧縮残留応力を大きくするこ で、該等速ジョイント用ボールと外輪部材 び内輪部材との間に相対的な転がり・滑り 生じたときに該部位に発生したせん断応力 吸収するとともに、表面~表面からの深さ0.1m mの部位の金属組織中にオーステナイトを10~25 体積%含ませ、靭性を大きくするようにして る。このため、内部で白色組織が生成する とが抑制され、且つ極表面で剥離が生じる とが回避されるので、安価な鋼材であって 欠陥が発生し難くなる。

 換言すれば、表面からの深さが0.1~0.2mmで る部位の圧縮残留応力を-1000MPa以上と大き し、且つ極表面の金属組織中のオーステナ ト量を多くしたことにより、安価な高炭素 ロム軸受鋼相当材からなる等速ジョイント ボールであっても、耐久性に優れるものを 成することができる。

 なお、高炭素クロム軸受鋼相当材の好適 例としては、SUJ2相当材を挙げることができ る。SUJ2相当材は安価であるので、コスト的 有利となる。

図1は、本実施の形態に係る等速ジョイ ント用ボール(転動ボール)が組み込まれて構 されたバーフィールド型等速ジョイントの 略断面図である。 図2は、図1の転動ボールの要部拡大断 図である。 図3は、本実施の形態に係る転動ボール 、及び比較例1、2の転動ボールにおける表面 らの深さと圧縮残留応力との関係を示すグ フである。 図4は、本実施の形態に係る転動ボール 、及びSUJ2からなる転動ボールにおける表面 ら深さ0.5mmに至るまでの金属組織中のオース テナイト量を示すグラフである。 図5は、本実施の形態に係る転動ボール 、表面~深さ0.1mmに至る領域のオーステナイト 量が10%を下回る転動ボール、及びSUJ2からな 転動ボールのワイブル確率プロットである

 以下、本発明に係る等速ジョイント用ボ ル及びその製造方法につき好適な実施の形 を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明 る。

 図1は、バーフィールド型等速ジョイント (以下、単に等速ジョイントともいう)10の概 断面図である。この等速ジョイント10は、外 輪部材12と、内輪部材14とを有し、これら外 部材12と内輪部材14との間に、本実施の形態 係る転動ボール16(等速ジョイント用ボール) が介在されている。

 外輪部材12は、軸部18と、開口した筒状部 20とを有し、該筒状部20の湾曲した内壁には 互いに等角度で離間した6個のボール溝22a~22f が設けられている。

 筒状部20の内部には、前記内輪部材14がリ テーナ24に保持された状態で挿入されている ここで、内輪部材14には、直径方向外方に 出するように湾曲した外周面を切り欠くよ にして、外輪部材12のボール溝22a~22fと同数 のインナ側ボール溝26a~26fが設けられている また、一端面から他端面にかけて貫通孔27 設けられている。この貫通孔27には、ドライ ブシャフトDSが嵌合される。

 一方、リテーナ24には、該リテーナ24の内 壁から外壁まで貫通した窓28が設けられてい 。前記転動ボール16は、この窓28に収容され るとともに、外輪部材12のボール溝22a~22fと内 輪部材14のインナ側ボール溝26a~26fに挿入され ている。

 ここで、前記転動ボール16の表面近傍の 面を拡大して図2に示す。該図2中の参照符号 30、32、34は、それぞれ、転動ボール16の表面 該表面30からの深さが0.1mmである第1部位、 表面30からの深さが0.2mmである第2部位を表す 。また、参照符号Oは、転動ボール16の中心で ある。

 図3に、直径が19/32インチである転動ボー 16の表面30からの深さと圧縮残留応力との関 係をグラフにして示す。本実施の形態に係る 転動ボール16において、表面30、第1部位32、 2部位34における圧縮残留応力は、それぞれ -1200MPa、-1180MPa、-1020MPaであり、いずれも-1000 MPa以上である。また、図3から諒解されるよ に、第1部位32から第2部位34にわたる部位の 縮残留応力も-1000MPa以上を示す。

 なお、この場合、転動ボール16は、高炭 クロム軸受鋼の1種であるSUJ2を素鋼として形 成されている。

 このような構成の転動ボール16が組み込 れた前記等速ジョイント10(図1参照)は、自動 車車体に搭載されて駆動力伝達機構を構成し 、エンジンからの駆動力をタイヤまで伝達す る役割を果たす。

 自動車が走行する際に運転者がステアリ グを操作することで進路変更が行われたり 凹凸が大きな道路を通過したりすることに い、ドライブシャフトDSが変位する。この め、等速ジョイント10では、転動ボール16が 輪部材12のボール溝22a~22f、内輪部材14のイ ナ側ボール溝26a~26fに摺接する。すなわち、 動ボール16と、外輪部材12及び内輪部材14と 間で相対的な転がり・滑りが生じ、せん断 力とともに摩擦熱が発生する。

 このせん断応力及び摩擦熱は、特に、転 ボール16の第1部位32から第2部位34(図2参照) わたる部位に負荷を及ぼす。この負荷によ 、該部位の金属組織から炭素が減少する。

 炭素が減少した金属組織は、ナイタール 食液で腐食させた際に白色を呈する、いわ る白色組織となる。この白色組織は脆性で り、従って、剥離や亀裂の原因となる。

 しかしながら、本実施の形態においては 図3に示されるように、第1部位32から第2部 34にわたって圧縮残留応力が-1000MPa以上に設 されている。圧縮残留応力がこのように大 い部位では、前記のせん断応力が作用した 、該せん断応力が吸収される。従って、炭 が減少して白色組織となる組織変化が起こ 難くなる。

 すなわち、本実施の形態によれば、転動 ール16の第2部位34に大きな圧縮残留応力を め付与したことに伴って表面30からの深さが 0.1mm(第1部位32)から0.2mm(第2部位34)にわたる部 の圧縮残留応力を大きくし、これにより該 位にせん断応力を吸収させるようにしたの 、この部位に白色組織が生成することを抑 することができる。

 第2部位34よりも深い部位では、白色組織 元々生成し難い。従って、第1部位32から第2 部位34にわたる部位の圧縮残留応力を大きく ることのみで、転動ボール16全体にわたっ 、剥離や亀裂の原因である白色組織が生成 ることを回避することができる。

 そして、このように白色組織が生成する とを回避するようにした結果、SUJ2のような 安価な鋼材からなる転動ボール16であっても 剥離や亀裂が生じることが防止される。す わち、長寿命を示す転動ボール16を低コス で作製することが可能となる。

 ここで、転動ボール16の表面30から深さ0.5 mmに至るまでの金属組織中のオーステナイト を、一般的なSUJ2からなる転動ボールにおけ る表面から深さ0.5mmに至るまでの金属組織中 オーステナイトと併せて図4に示す。この図 4から諒解されるように、SUJ2からなる転動ボ ルでは、オーステナイト量は最大でも約9体 積%である。これに対し、本実施の形態に係 転動ボール16では、表面30におけるオーステ イト量は約16体積%であり、第1部位32では14.8 体積%である。さらに、深さ0.5mmに至るまで、 オーステナイト量は14体積%を超える。

 このように、転動ボール16は、SUJ2からな 転動ボールに比して、表面30から第1部位32 至るまでの領域の金属組織中に存在するオ ステナイト量が多い。オーステナイトは、 ーライトやマルテンサイトに比して軟質で るため、オーステナイト量が多いこの領域 は靭性が向上する。このため、極表面、す わち、表面30~第1部位32までの領域に、剥離 原因である亀裂が発生し難い。

 その上、この転動ボール16は、表面30の靭 性が大きいので、表面硬度を大きくすること ができる。具体的には、HRCで62~68とすること 可能である。これにより、表面30の耐摩耗 も確保される。

 この転動ボール16は、以下のようにして 造することができる。

 先ず、SUJ2相当材(素鋼)からなる球体に対 て焼入れ処理を施す。すなわち、該球体を8 40~900℃に加熱し、その後、この球体を冷却す る。ここで、この冷却は、該球体の表面30か 深さ0.1mmである第1部位32に至る領域に、オ ステナイトが10~25体積%残留する条件下で行 。

 通常、素鋼の金属組織中にはパーライト 存在する。このパーライトは、前記加熱に ってオーステナイトに変化する。一般的に オーステナイトは、後過程の冷却時にマル ンサイトに変態するが、本実施の形態にお ては、冷却速度を小さくしてマルテンサイ 析出開始温度(Ms点)に到達するまでの時間を 遅くする。これにより、冷却後に金属組織中 に残留するオーステナイト量を多くすること ができる。

 なお、実際の冷却速度は、転動ボール16 直径に応じて設定すればよい。

 次に、前記球体に対し、150℃以上で焼戻 処理を施す。これにより、前記焼入れ処理 よって形成された金属組織が安定化する。

 次に、前記球体に対して圧縮残留応力を 与する。この付与にあたっては、例えば、 開昭61-270331号公報又は特開平11-19828号公報 記載された公知の処理方法・装置を用いる うにすればよい。すなわち、焼入れ・焼戻 が施された転動ボール16を複数個バレルに収 容し、次に、バレルを回転させて転動ボール 16とバレルの内壁、又は転動ボール16同士を 突させるようにすればよい。この衝突が繰 返されることにより、転動ボール16に圧縮残 留応力が付与される。

 転動ボール16において、圧縮残留応力が 大となる深さは、転動ボール16の直径寸法や 処理条件に応じて変化する。例えば、直径が 3/8インチの転動ボール16に対し、特開平11-1982 8号公報に記載の装置を用いて処理を行う場 、バレルと軸線が同一であり且つ該バレル 逆方向に回転する支持軸の回転数を50rpm、処 理時間を90分としたとき、表面30からの深さ 0.1mmの部位(第1部位32)の残留圧縮応力が最大 なり、その値はおよそ-960MPaである。また、 前記支持軸の回転数を65rpm、処理時間を90分 したとき、表面30からの深さが0.15mmの部位の 残留圧縮応力が最大となり、その値はおよそ -1000MPaである。

 このことから諒解されるように、支持軸 回転数を上昇させることによって、転動ボ ル16における圧縮残留応力の最大値と、こ 最大値をとる深さとを制御することが可能 なる。例えば、図3に示すように、直径19/32 ンチの転動ボール16における第1部位32及び第 2部位34の各圧縮残留応力を-1180MPa、-1020MPaと るには、支持軸の回転数を50rpmに設定し、回 転時間を2.5時間とすればよい。

 前記図3には、支持軸の回転数を低くし、 直径が19/32インチであり且つ表面30からの深 が0.1mm、0.2mmである部位の各圧縮残留応力が- 870MPa、-500MPaである比較例1、同一直径で且つ 面からの深さが0.1mm、0.2mmである部位の各圧 縮残留応力が-510MPa、-380MPaである比較例2の転 動ボールにおける表面からの深さと圧縮残留 応力との関係が併せて示されている。すなわ ち、比較例1、2の転動ボールにおいては、白 組織が生成し易い部位の圧縮残留応力は、- 1000MPa以下である。

 この図3から、本実施の形態に係る転動ボ ール16と、比較例2の転動ボールとで表面の圧 縮残留応力が略同等であるにも関わらず、両 ボールの耐久性に著しい差があることも分か る。このことから、第2部位34における圧縮残 留応力を-1000MPa以上とし、これにより白色組 が生成し易い第1部位32から第2部位34にわた て圧縮残留応力を大きくすることで、転動 ールの耐久性が向上することが認められる

 図5は、本実施の形態に係る転動ボール16 表面からの深さが0.1mm~0.2mmに至る領域の圧 残留応力が転動ボール16と略同等ではあるも のの表面~深さ0.1mmに至る領域のオーステナイ ト量が10%を下回る転動ボールA、及びSUJ2から る転動ボールBのワイブル確率プロットであ り、横軸は時間である。この図5から、転動 ールB、転動ボールA、転動ボール16の順で寿 が長期化していることが明らかである。

 以上のように、本実施の形態によれば、 久性に優れた転動ボール16を得ることがで る。

 なお、上記した実施の形態においては、S UJ2を素鋼として作製された転動ボール16を例 して説明したが、転動ボール16の材質はSUJ2 限定されるものではなく、高炭素クロム軸 鋼相当材であればよい。すなわち、SUJ1相当 材であってもよく、SUJ3相当材、SUJ4相当材又 SUJ5相当材であってもよい。