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Patent Searching and Data


Title:
ELECTRON SOURCE AND ELECTRON BEAM APPARATUS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/044871
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided is an electron source which outputs a stable electron beam even when vibration is applied from the external to an apparatus which uses the electron source. The electron source is provided with an insulator (5); two conductive terminals (4) arranged at an interval on the insulator (5); a long filament (3) stretched between the conductive terminals (4); and a needle-like cathode (1) having an electron discharging section attached to the filament (3). The vertical cross-section shape of the filament (3) in the axis direction has a long direction and a short direction, and the maximum length in the long direction is 1.5 times or more but not more than 5 times the maximum length in the short direction.

Inventors:
NONOGAKI RYOZO (JP)
TERUI YOSHINORI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/068077
Publication Date:
April 09, 2009
Filing Date:
October 03, 2008
Export Citation:
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Assignee:
DENKI KAGAKU KOGYO KK (JP)
NONOGAKI RYOZO (JP)
TERUI YOSHINORI (JP)
International Classes:
H01J1/15; H01J37/06; H01J1/16
Foreign References:
JPS55148339A1980-11-18
JPS4827623Y11973-08-15
JPH0541057U1993-06-01
JP2005339922A2005-12-08
JP2004265614A2004-09-24
JP2005332677A2005-12-02
JP2005222945A2005-08-18
JPS55148339A1980-11-18
JPS4827623A1973-04-12
Other References:
D. TUGGLE, J. VAC. SCI. TECHNOL., vol. 16, 1979, pages 1699
See also references of EP 2197015A4
Attorney, Agent or Firm:
SONODA, Yoshitaka et al. (53rd Floor Shinjuku Mitsui Building, 1-1, Nishi-Shinjuku 2-chome, Shinjuku-k, Tokyo 53, JP)
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Claims:
絶縁碍子と、
前記絶縁碍子に間隔を空けて配置された2つの導電端子と、
前記導電端子の間に張られている長尺のフィラメントと、
前記フィラメントに取り付けられた電子放射部を有する針状の陰極とを備える電子源であって、
前記フィラメントの軸方向に対する垂直断面形状が長方向と短方向を有し、
長方向の最大長がその短方向の最大長の1.5倍以上5倍以下であって、
前記フィラメントの断面形状の長方向が、前記フィラメントと前記導電端子を取り付けた2か所の位置と、前記陰極のある位置の3点で形成される平面の法線に対して±10°以下となるように、前記フィラメントが張られている電子源。
前記フィラメントの断面形状が、長方形、楕円形、菱形又は長方形の短辺を半円形にした形のいずれかである、請求項1記載の電子源。
前記フィラメントの断面積が0.01mm 2 以上0.015mm 2 以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子源。
前記フィラメントの長さが3mm以上8mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子源。
前記フィラメント間の角度が30°以上120°以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子源。
 前記フィラメントが、タングステン、モリブデン、レニウム、タンタル、イリジウムから選ばれた金属、又はこれらの元素を少なくとも1種選択した合金である請求項1に記載の電子源。
前記陰極がタングステン又はモリブデンからなり、直径が0.1mm~0.15mm、全長が1.0mm~1.8mmの円柱と、先端部の電子放射部分の直径が2μm以下である円錐とを組み合わせた形状であることを特徴とする請求項1に記載の電子源。
前記陰極が、タングステン又はモリブデンの<100>方位の単結晶から主としてなり、前記陰極の一部にCa、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf又はランタノイド系列から選ばれた金属元素の酸化物を拡散源として有する、請求項1に記載の電子源。
前記陰極の太さが0.1mm~0.5mm、全長が1mm~2mmの円柱状または四角柱状と、先端部の電子放射部分が平坦であり、その直径が2μm~100μmである円錐とを組み合わせた形状であることを特徴とする請求項1に記載の電子源。
請求項1に記載の電子源を有する、電子ビーム装置。
Description:
電子源及び電子ビーム装置

 本発明は、針状の陰極を設けた電子源、 び、この電子源を利用した走査型電子顕微 、走査型透過電子顕微鏡、オージェ電子分 装置、電子線露光機、ウェハ検査装置など 電子ビーム装置に関する。

 近年、熱陰極よりも長寿命で、より高輝 の電子ビームを得るために、タングステン 結晶の針状電極にジルコニウムと酸素の被 層を設けた陰極を用いた電子源が用いられ いる(以下、ZrO/W電子源と記す。)(非特許文 1参照)。

 ZrO/W電子源は、軸方位が<100>方位から なるタングステン単結晶の針状の陰極に、ジ ルコニウムと酸素からなる拡散源を設け、ジ ルコニウム及び酸素を拡散することにより被 覆層(以下、ZrO被覆層という。)を形成し、該Z rO被覆層によってタングステン単結晶の(100) の仕事関数を4.5eVから約2.8eVに低下させたも である。さらに、ZrO/W電子源は、陰極の先 部に形成された(100)面に相当する微小な結晶 面のみが電子放出領域であるので、従来の熱 陰極よりも高輝度の電子ビームが得られ、し かも長寿命であるという特徴を有する。上記 陰極による電子源の供給を安定させるために 、陰極先端の形状を適切に加工する技術も知 られている(特許文献1参照)。

 また、上記被覆層をバリウムと酸素によ て構成する技術も知られている(特許文献2 特許文献3及び特許文献4参照)。

 ZrO/W電子源は、図7に示すように、絶縁碍 5に固定された導電端子4に張ったタングス ン製の加熱用フィラメント3の一部に電子ビ ムを放射するタングステンの<100>方位 針状の陰極1が溶接等により固定されている 陰極1の一部には、ジルコニウムと酸素の拡 散源2が設けられている。図示していないが 極1の表面はZrO被覆層で覆われている。

 ZrO/W電子源の陰極1の先端部は、サプレッ ー電極と引き出し電極の間に配置されてい 。陰極1はフィラメント3により1800K程度に通 電加熱されるとともに、陰極1には引出電極 対して負の高電圧が印加され、更にサプレ サー電極には陰極1に対して数百ボルトの負 電圧が印加され、フィラメント3からの熱電 子を抑制する。

 このようなZrO/W電子源は、低加速電圧で いられる測長SEMやウェハ検査装置などに広 用いられているが、比較的高倍率でSEM像を る際、装置周辺からの振動によりノイズが 生し、分解能が得られず、測長などを行う とができない場合がある。ZrO/W電子源のフィ ラメント3は、導電端子4との接合部2箇所と陰 極1の3点で形成される面に対して垂直方向に 動しやすく、その振動は固有の周波数を持 ている。外部からの振動の周波数がこの固 周波数に一致すると、フィラメントが共鳴 動を起こし、ノイズを引き起こしてしまう とがわかっている。

 一方、本発明とは分野及びその用途が全 異なるが、テレビの受像管等に用いられる うな電子放出領域の大きな平面状の陰極を える電子源(特許文献5及び特許文献6参照)に おいては、そもそも、微少な振動によってノ イズが発生するといった特性の低下は問題視 されていない。

 また、このような電子放出領域の大きな平 状の陰極を備える電子源の場合、陰極を固 しやすいよう、幅の広いフィラメントが用 られる。一般的にこれらの電子源の動作温 は1000K程度と低く、幅の広いフィラメント 用いても比較的小さい電流で加熱維持が可 となる。
D. Tuggle, J. Vac. Sci. Technol.16, p1699(1979)

特開2005-339922号公報

特開2004-265614号公報

特開2005-332677号公報

特開2005-222945号公報

特開昭55-148339号公報

実案公告昭48-27623号公報

 特に電子放出領域が100μm程度以下の針状 陰極を備える電子源は、動作温度が1700K以 と高いため、フィラメント断面積が大きい 、動作温度までの加熱を著しく困難にする いう問題があることから、通常は断面積の さい細線状のフィラメントが用いられる。 の結果、フィラメントの剛性が弱くなり、 動の影響を受けやすい。この振動を抑制す ため、装置に防振構造を設けることにより 対処することが試みられているが、完全に 振しないようにするためには、装置として がかりなものになってしまうという問題が る。

 フィラメントを太くして剛性を高めるこ で、振動振幅はある程度抑制することが可 であるが、前述のように、フィラメントを くすることによってその断面積が増加し、 電加熱に必要な電流が増大してしまうとい 課題がある。電子ビーム装置の許容電流量 応じた通電加熱電流の制限があるので、単 太くすることはできない。

〈発明の経緯〉
 本発明者は、鋭意検討した結果、フィラメ トの振動し易い方向が、フィラメントと導 端子を取り付けた2か所の位置と陰極の3点 形成される面に対して垂直な方向であるこ を見出し、フィラメントの断面積を増加さ ることなく、通電加熱に必要な電流の増加 抑えながら、この振動し易い方向のフィラ ントの剛性を高める形状について検討し、 発明に至ったものである。

 すなわち、本発明の目的は、外部より振 を受けても安定した電子線を与える電子源 び電子ビーム装置を提供することにある。

 本発明によれば、絶縁碍子と、絶縁碍子 間隔を空けて配置された2つの導電端子と、 導電端子の間に張られている長尺のフィラメ ントと、フィラメントに取り付けられた電子 放射部を有する針状の陰極と、を備える電子 源であって、上記フィラメントの軸方向に対 する垂直断面形状が長方向と短方向を有し、 長方向の最大長がその短方向の最大長の1.5倍 以上5倍以下であって、フィラメントの断面 状の長方向が、フィラメントと導電端子を り付けた2か所の位置と、陰極のある位置の3 点で形成される平面の法線に対して±10°以下 となるように、フィラメントが張られている 電子源が提供される。

 本発明によれば、電子源が実用に供され ときに、装置周辺からの振動により電子源 共振してノイズを発生することが防止され かつ、フィラメントの通電加熱に必要な電 の増加を抑えることができるという効果が られる。

本発明の実施形態に係る電子源の構造 (a)及びフィラメント3の軸方向に対する垂直 断面を拡大した模式図(b) 本発明の実施形態に係る電子源の構造 (図1の電子源を陰極の方向から見た図)。 本発明の実施形態に係る電子源のフィ メント部分の構造図。 本発明の実施形態に係る電子源の他の 造図(図1の電子源を陰極の方向から見た図) 本発明の実施形態に係る電子源の陰極 概略図。 電子源の共振振幅の評価装置の構成図 比較例に係る、従来公知の電子源の構 図(電子源を陰極の方向から見た図)。

符号の説明

 1:陰極
 2:拡散源
 3:フィラメント
 4:導電端子
 5:絶縁碍子
 6:電子源
 7:レーザー変位計
 8:加速度センサ
 9:振動板
 10:振動発生器
 11:レーザー光
 a:フィラメント断面の長方向の長さ
 b:フィラメント断面の短方向の長さ
 L:フィラメントの長さ
 θ:フィラメント間の角度
 m:陰極の太さ
 n:陰極の全長
 s:陰極の電子放射部分の直径

〈実施形態〉
 以下、図面を参照しながら本発明の具体的 実施態様について説明する。
 本実施形態に係る電子源は、図1(a)に示すよ うに、絶縁碍子5と、絶縁碍子5に間隔を空け 配置された2つの導電端子4と、導電端子4の に張られている長尺のフィラメント3と、フ ィラメント3に取り付けられた電子放射部を する針状の陰極1と、を備える電子源であっ 、上記フィラメント3の軸方向に対する垂直 断面形状が長方向と短方向を有し、長方向の 最大長がその短方向の最大長の1.5倍以上5倍 下であって、フィラメント3の断面形状の長 向が、フィラメント3と導電端子を取り付け た2か所の位置と、陰極のある位置の3点で形 される平面の法線に対して±10°以下となる うに、フィラメント3が張られている。

 ここで、図1は本発明の実施形態に係る電 子源の構造図(図1(a))及びフィラメント3の軸 向に対する垂直断面の拡大図(図1(b))である 図1(a)において、2は陰極1に設けられた拡散 である。

[フィラメント]
 先ず、本実施形態に係る電子源のフィラメ ト3について説明する。フィラメント3は、 1(b)に示すように、フィラメント3の軸方向に 対する垂直断面形状が長方向と短方向とを有 する。

 本実施形態では、フィラメント3の軸方向 に対する垂直断面形状を、図1(b)に示すよう 長方形を例に挙げて説明するが、その断面 状は、上述の長短方向の最大長の比率を維 できるものであれば適宜採用できる。他の 面形状としては、楕円形、菱形又は長方形 短辺を半円形にした形がある。

 フィラメント3の断面形状が図1(b)に示す うな長方形の場合には、長方向の最大長は 方形の長辺、短方向の最大長は長方形の短 に相当する。また、フィラメント3の断面形 が楕円形や菱形の場合には、長方向の最大 とは断面形状の中心(重心)を通る線分のう で、最も長い線分のことを指し、短方向の 大長とは、断面形状の中心(重心)を通る線分 のうちで、最も短い線分のことを指す。

 フィラメント3の断面形状の長方向の最大 長(図1(b)のa)及び短方向の最大長(図1(b)のb)に いては、フィラメントの通電加熱用電源に ける電流及び電圧の制限内で、実使用温度 で加熱可能な長さを選定する必要がある。

 フィラメント3の断面については、長方向 の最大長が短方向の最大長の1.5倍以上5倍以 であることが好ましい。フィラメント3の断 をこのような比率にすることにより、適切 電流で加熱を行うことができ、かつ装置周 からの振動による電子源の共振によって生 るノイズの発生を効果的に防止することが きる。

 例えば、フィラメント3の断面積が同じで あっても、短方向の最大長bに対する長方向 最大長aの比を5倍以下に設定すると、フィラ メントの表面積の増加に伴う加熱時の輻射損 失による加熱に必要な電流の増加を抑制する ことができる。また、1.5倍以上に設定すると 、充分な振動防止の効果を発揮する。即ち、 短方向の最大長bに対する長方向の最大長aの が、1.5倍以上5倍以下であることにより、上 記本願発明特有の効果を奏することができる 。

 また、短方向の最大長bに対する長方向の 最大長aの比は、この下限として好ましい比 2倍であり、上限として好ましい比は4倍であ る。このような比率にすることにより、装置 周辺からの振動による電子源の共振によって 生じるノイズの発生を防止しつつも、安定し た加熱を行うことができ、より安定した電子 線を得ることができる。

(フィラメントの断面積)
 上記フィラメント3の断面積(フィラメント3 軸方向に対する垂直断面の面積)は、0.01mm 2 以上0.015mm 2 以下であることが好ましい。さらに好ましく は、フィラメント3の断面積は、0.011mm 2 以上0.013mm 2 以下である。

 フィラメント3の断面積が0.015mm 2 以下であれば、陰極1と導電端子4間に熱勾配 生じ、適切な電流で加熱を行うことができ 。また、フィラメント3の断面積が0.01mm 2 以上であれば、陰極1の振動を抑制すること できる。さらに、フィラメント3の断面積が 0.011mm 2 以上0.015mm 2 以下である場合には、従来の断面が円状のフ ィラメントを用いた電子源とほぼ同程度のフ ィラメント電流で動作温度までの加熱が可能 となり、置き換えが容易という効果を得るこ とができる。

(フィラメントの長さ)
 また、上記フィラメント3の長さが3mm以上8mm 以下であることが好ましい。ここで、上記フ ィラメント3の長さとは、図3に示すように、 ィラメント3の一方の端部から陰極1とフィ メント3との接点までの長さLのことをいう。

 フィラメント3の長さが8mm以下であれば陰 極1の振動を抑制することができる。また、 ィラメント3の長さが3mm以上であれば、適切 電流で加熱を行うことができる。

 さらに好ましくは、上記フィラメント3の長 さが4mm以上6mm以下である。フィラメント3の さが、4mm 2 以上6mm 2 以下である場合には、従来の断面が円状のフ ィラメントを用いた電子源とほぼ同じ長さで あり、構造的に置き換えが容易という効果を 得ることができる。

(フィラメント間の角度)
 上記フィラメント3間の角度は、30°以上120° 以下であることが好ましい。ここで、上記フ ィラメント3間の角度とは、図3に示すように フィラメント3と導電端子4を取り付けた2か の位置と、陰極1のある位置の3点で形成さ る平面において、V字に折り曲げられたフィ メント3が形成する角度θを意味する。

 フィラメント3間の角度が30°以上であれ 、導電端子4の間隔を十分確保することがで る。また、フィラメント3間の角度が120°以 であれば、針状の陰極がサプレッサー電極 設けられた穴から突き出した構造の電子源 容易に作製することができる。

 さらに好ましくは、フィラメント3間の角 度は45°以上90°以下である。フィラメント3間 の角度が45°以上90°以下であれば、従来の断 が円状のフィラメントを用いた電子源とほ 同じ角度であり、構造的に置き換えが容易 いう効果を得ることができる。

 本実施形態においては、図1又は図2に示 ように、1本のフィラメントをV字に折り曲げ て形成したフィラメント3について説明した しかし、フィラメント3は、図4に示すように 、同じ長さの2本のフィラメントによって陰 1を挟み込むような構造であってもよい。

 このように、フィラメント3が2本のフィ メントからなる場合、上記フィラメント3の さとは、1本のフィラメントの長さを意味す る。また、上記フィラメント3間の角度とは 上記の定義と同様に、2本のフィラメントの す角度を意味する。

 本実施形態の電子源では、フィラメント3 がタングステン、モリブデン、レニウム、タ ンタル、イリジウムから選ばれた金属、又は これらの元素を少なくとも1種選択した合金 あることが好ましい。

[陰極]
 次に、本実施形態に係る電子源の陰極1につ いて説明する。陰極1は、図5の(a)に示すよう 、太さmが0.1mm~0.15mm、全長nが1.0mm~1.8mmの円柱 と、先端部の電子放射部分の直径sが2μm以下 ある円錐を組み合わせた針状のものが好ま い。先端部の形状は、平坦な形状であって よいし、略球面状となっていてもよい。

 このような針状の先端形状にして電子放 を微小領域に制限することで、より高輝度 電子放射が達成される。また、このような 状の陰極の場合、その材料としては、特に ングステン又はモリブデンが好ましい。さ に、陰極1は、タングステン又はモリブデン の<100>方位の単結晶からなり、陰極の一 にCa、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、又はラ タノイド系列から選ばれた元素の酸化物を 散源として有していることが好ましいが、 れに制限されるものではない。

 また、大きな角電流密度が必要な用途で 、陰極1は、図5の(b)に示すように、太さmが0 .1mm~0.5mm、全長nが1mm~2mmの円柱状または四角柱 状と、先端の電子放射部分が平坦であり、そ の直径sが2μm~100μmである円錐とを組み合わせ た形状であってもよい。

[製造方法]
 次に、本実施形態に係る電子源の製造方法 ついて説明する。

(フィラメントの作製)
 先ず、フィラメントの軸方向に対する垂直 面形状が長方向と短方向を有し、長方向の 大長がその短方向の最大長の1.5倍以上5倍以 下のフィラメント3を得る方法としては、板 の金属板を短冊状に切断する方法がある。 のような方法により、均質で精度の高い断 形状が長方形のフィラメントを得ることが きる。

 また、断面が円形状のワイヤを圧延ロー ー等で圧延することで、断面形状が長方向 短方向を持つ楕円形のワイヤを得る方法が る。このような方法は、容易にかつ大量に 理できるので好ましい。

(電子源の作製)
 本実施形態の電子源を作製するためには、 記フィラメントをV字のごとく曲げ、絶縁碍 子5に固定された導電端子4に、溶接により取 付ける。取り付けに際しては、前記フィラ ントの断面形状の長方向は、フィラメント3 の導電端子4との接合部2箇所と陰極1との3点 形成される平面に対して、垂直となるよう 取り付ける。

 ここで、上記平面は、2箇所の接合部の中 心と単結晶陰極の中心とを通る平面である。 また、上記フィラメントの断面形状の長方向 と上記平面とは直交するが、この長方向は、 上記平面の法線に対して±10°以下、好ましく は±5°以下の傾きを構成してもよい。

 次に、フィラメント3の頂部に、電子ビー ムを放射するタングステンの<100>方位の 結晶からなる陰極1を溶接等により固定する 。

 次に、陰極1の先端部を電解研磨により尖鋭 化し、その中央部側面にジルコニウム源を形 成して約10 -4 Paの酸素存在下で加熱して陰極1の先端部にま でジルコニウムと酸素を拡散させ(以降、酸 処理という。)、しかる後に各種の電極を取 付けて約10 -7 Paの真空下で電圧を印加することで、陰極1の 先端部の形状を形成させるものである。

 当該構造を採用することで、外界からの 動によるV字のごとく張ったフィラメント3 面に対して垂直方向の振動によるノイズの 生を極めて小さく押さえることができ、フ ラメントの通電加熱に必要な電流の増加を えることができ、電子ビーム装置の許容電 量内に抑えることができるという効果が得 れる。

 上記電子源は、走査型電子顕微鏡、走査 透過電子顕微鏡、オージェ電子分光装置、 子線露光機、ウェハ検査装置などの電子ビ ム装置に採用することができる。当該電子 を用いた電子ビーム装置では、その外側に 振構造などを設けることなく高分解能が得 れ、低いコストで高信頼性を達成すること できるという格別の効果が得られる。

〈作用効果〉
 以下、上記実施形態に係る電子源及び電子 ーム装置の作用効果について説明する。

 上記実施形態によれば、絶縁碍子5と、絶 縁碍子5に設けられている一対の導電端子4と 導電端子4間に張られているフィラメント3 、フィラメント3の一部に接合されている電 放射部を有する針状の陰極1とを備える電子 源であって、上記フィラメント3の軸方向に する垂直断面形状が短方向の最大長b及び長 向の最大長aを有し、短方向の最大長bに対 る長方向の最大長aの比が1.5倍以上5倍以下で あり、フィラメント3の断面形状の長方向が フィラメント3及び一対の導電端子4の2か所 位置と、陰極1との3点で形成される平面に対 して略垂直となるようにフィラメントが張ら れている電子源が提供される。

 上記の構成により、フィラメント3の断面 積を大きくすることなく、フィラメント3及 一対の導電端子4の2か所の位置と、陰極1と 3点で形成される平面に対して略垂直方向に 動し難い形状となり、剛性を上げることが きる。そして、上記電子源を用いた装置は 装置周辺からの振動により電子源が共振し ノイズを発生することが防止され、また、 ィラメントの通電加熱に必要な電流の増加 抑えることができるという効果が得られる

 上記フィラメント3の断面形状は、上述の 長短方向の最大長の比率を維持できるもので あれば適宜採用でき、具体的には、長方形、 楕円形、菱形又は長方形の短辺を半円形にし た形であってもよい。

 フィラメント3の断面形状が長方形の場合 には、板状の金属板を短冊状に切断すること によって均質で精度の高いフィラメントが得 られる。また、フィラメント3の断面形状が 円形の場合には、断面が円形状のワイヤを 延ローラー等で圧延することで容易かつ大 に処理することができる。

 また、上記フィラメント3の断面積が0.01mm 2 以上0.015mm 2 以下であってもよい。このようにすれば、適 切な電流で加熱を行うことができ、かつ、陰 極1の振動を抑制することができる。

 また、上記フィラメントの長さが3mm以上8 mm以下でであってもよい。このようにすれば 適切な電流で加熱を行うことができ、かつ 陰極1の振動を抑制することができる。

 また、上記フィラメント間の角度が30°以 上120°以下であってもよい。フィラメント3間 の角度が30°以上であれば、導電端子4の間隔 十分確保することができるとともに、針状 陰極がサプレッサー電極に設けられた穴か 突き出した構造の電子源を容易に作製する とができるという効果を得ることができる

 さらには、上記フィラメント3がタングス テン、モリブデン、レニウム、タンタル、イ リジウムから選ばれた金属、又はこれらの元 素を少なくとも1種選択した合金であること 、高融点材料であり好ましい。

 また、上記陰極がタングステン又はモリ デンからなり、直径(太さm)が0.1mm~0.15mm、全 nが1.0mm~1.8mmの円柱状であり、先端部の電子 射部分の直径sが2μm以下であってもよい。 のようにすることで、より高い輝度の安定 た電子源を得ることができる。

 さらには、上記陰極1はタングステン又は モリブデンの<100>方位の単結晶から主と てなり、陰極1の一部にCa、Sr、Ba、Sc、Y、La Ti、Zr、Hf、又はランタノイド系列から選ば た金属元素の酸化物を拡散源2とすることが 好ましい。陰極1及び拡散源2に上記の金属元 を用いることによって、長時間安定に高輝 の電子放射が得られ、好ましい特性の電子 を得ることができる。

 また、上記陰極の太さmが0.1mm~0.5mm、全長n が1mm~2mmの円柱状または四角柱であり、先端 の電子放射部分が平坦であり、その直径sが2 μm~100μmであってもよい。このようにするこ で、より大きな角電流密度を得ることがで る。

 上記電子源は、走査型電子顕微鏡、走査 透過電子顕微鏡、オージェ電子分光装置、 子線露光機、ウェハ検査装置などの電子ビ ム装置に適用することができる。上記電子 を用いた装置は、装置周辺からの振動によ 電子源が共振してノイズを発生することが 止される。また、フィラメントの通電加熱 必要な電流の増加を抑えることができ、電 ビーム装置の許容電流量内に抑えることが きるという効果が得られる。

 以上、図面を参照して本発明の実施形態 ついて述べたが、これらは本発明の例示で り、上記以外の様々な構成を採用すること できる。

 また、上記電子ビーム装置は、陰極を保 しているフィラメントに加熱電流を流すこ によって放出される不要な熱電子を抑制す ためのサプレッサー電極を備えたものであ てもよい。このようなサプレッサー電極を えた電子ビーム装置は、不要な熱電子の放 が抑制され、余剰な電子が引き出し電極等 照射されることにより、誘発される真空劣 や放電損傷が起こりにくくなるとともに、 一性の高い電子ビームが得られるという効 を有するので好ましい。

(実施例1)
 直径0.125mmのタングステン製フィラメントを 圧延することにより、断面の長方向の長さが 0.22mm、短方向の長さが0.07mmのフィラメントを 得た。従って、長方向の長さは短方向の長さ の約3倍である。また、フィラメントの断面 は0.012mm 2 であった。

 そして、上記タングステン製フィラメン をV字のごとく曲げた。ここで、V字状に加 するに際しては、上記断面の長方向が上記 ィラメントを曲げることにより形成される に対して略垂直となるようにした。また、V 状に加工したフィラメント間の角度を60°と した。

 その後、上記フィラメントを絶縁碍子に ウ付けされた一対の導電端子間に、スポッ 溶接により固定した。そして、<100>方 の単結晶タングステン陰極をフィラメント スポット溶接により取り付けた。さらに、 極の電子放射部とは異なる端部を、絶縁碍 中央部に固定された金属端子にスポット溶 により固定した。

 次に、陰極の先端部を電解研磨により尖鋭 した。次に、水素化ジルコニウムを粉砕し 酢酸イソアミルと混合しペースト状にした のを陰極の一部に塗布し、約10 -4 Paの酸素存在下で加熱して酸素処理を行い、 1及び図2に示す構造の電子源を得た。ここ 、フィラメントの一方の端部から陰極とフ ラメントとの接点までの長さは5mmとした。

 図6は電子源の共振振幅の評価装置の構成 図である。この図に示す構成で、加速度セン サ8(PCB社製「352B型」)とレーザー変位計7(キー エンス社製「LK-G30」)を有する振動板9に、前 電子源6のV字に張ったフィラメントによっ 形成される仮想面が振動板9と平行になるよ に前記電子源6を設置した。そして、振動発 生器10により、所定周波数の正弦波振動を振 板9に加えたときの陰極の振動変位をレーザ ー変位計7でモニタした。

 振動板9の周波数を変えたときに前記陰極の 振動変位の振幅が最大になる周波数Fの振幅W( m)を、加速度センサ8で測定された加速度A(m/s 2 )で割った規格化振幅W/A(m/m/s 2 )で電子源6の共振振幅を評価した。

 さらに、ZrO/W電子源の適正動作温度であ 1800Kまで真空中で通電加熱したときのフィラ メント電流を測定した。

(実施例2)
 直径0.150mmのタングステン製フィラメントを 圧延することにより、断面の長方向の長さが 0.26mm、短方向の長さが0.09mmのフィラメントを 得た。従って、長方向の長さは短方向の長さ の約3倍である。また、フィラメントの断面 は0.018mm 2 であった。それ以外は、実施例1と同様にし 電子源を作製し、上記の評価を行った。

 以上のように、実施例1及び2では、様々 断面積のフィラメントを有する電子源につ て評価を行った。その結果を表1に示す。

(実施例3)
 フィラメントの一方の端部から陰極とフィ メントとの接点までの長さを3mmとした以外 、実施例1と同様の電子源を作製し、上記の 評価を行った。

(実施例4)
 フィラメントの一方の端部から陰極とフィ メントとの接点までの長さを8mmとした以外 、実施例1と同様の電子源を作製し、上記の 評価を行った。

 以上のように、実施例3及び4では、様々 長さのフィラメントを有する電子源につい 評価を行った。その結果を表1に示す。

(実施例5)
 直径0.125mmのタングステン製フィラメントを 圧延することにより、断面の長方向の長さが 0.18mm、短方向の長さが0.09mmのフィラメントを 得た。従って、長方向の長さは短方向の長さ の約2倍である。それ以外は、実施例1と同様 して電子源を作製し、上記の評価を行った

(実施例6)
 直径0.125mmのタングステン製フィラメントを 圧延することにより、断面の長方向の長さが 0.25mm、短方向の長さが0.06mmのフィラメントを 得た。従って、長方向の長さは短方向の長さ の約4倍である。それ以外は、実施例1と同様 して電子源を作製し、上記の評価を行った

 以上のように、実施例5及び6では、フィ メント断面の長方向の長さと短方向の長さ 比率を角度を変えた電子源について評価を った。その結果を表1に示す。

(比較例1)
 従来構造の図7に示す構造で、即ち、前記実 施例において、断面の直径が0.125mmの円形状 フィラメントを用いていること以外は実施 1と同様の方法で作製した電子源について、 施例1と同様に共振試験及び1800K加熱時のフ ラメント電流測定を実施した。その結果を 2に示す。

(比較例2)
 前記比較例1において、断面の直径が0.15mmの 円形状のフィラメントを用いていること以外 は比較例1と同様の方法で作製した電子源に いて、実施例と同様の評価を行った。その 果を表2に示す。

(比較例3)
 直径0.125mmのタングステン製フィラメントを 圧延することにより、断面の長方向の長さが 0.31mm、短方向の長さが0.05mmのフィラメントを 得た。従って、長方向の長さは短方向の長さ の約6倍である。それ以外は、実施例1と同様 電子源を作製し、同様の評価を行った。そ 結果を表2に示す。

〈考察〉
 上記実施例1~6及び比較例1~3を、各n=3で試験 た結果を表1及び表2に示す。

 実施例の共振周波数Fは比較例1に比べて くなり、規格化振幅W/Aが比較例1と比較して しく抑制されていることが確認された。ま 、実施例の1800K加熱に必要なフィラメント 流は、比較例1に対して若干大きくなってい ものの3A以下であり、実用上問題ないレベ である。

 一方、比較例2の規格化振幅W/Aは比較例1 対して約半分に減少しているものの、比較 2の1800K加熱に必要なフィラメント電流は3Aを 超えており、実用上の大きな制約となってし まう。

 比較例1と比較例2を比べると、フィラメ トの断面の面積を大きくした場合には規格 振幅は抑制されるものの、1800K加熱時のフィ ラメント電流が増大してしまう。しかし、本 実施例による電子源は、ほぼ同じ断面積の円 形のフィラメントを有する電子源(比較例1)よ りも規格化振幅を抑制することができるとい う顕著な効果を有する。

 以上のように、本発明の実施例1~6に係る 子源は、フィラメントの断面積を大きくせ とも、充分な剛性を確保し、装置周辺から 振動により電子源が共振してノイズが発生 ることを防止できる。

 さらには、フィラメントの断面形状の長 向の最大長がその短方向の最大長の1.5倍以 5倍以下に設定されているため、適切な電流 によって加熱を行うことができる。