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Title:
ELECTRON SOURCE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/008399
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided is an electron source of high efficiency and continuous high output, which operates at the room temperature while applying an exciter and which can operate in a low vacuum without needing any high voltage. The electron source is an indirect transition type semiconductor, which is made of a semiconductor material having a high bound energy as the exciter. The electron source includes an active layer (5) made of an indirect transition type semiconductor, and electrodes (8) for injecting an electric current into the active layer (5). The free exciter production efficiency is 10 % or more. The free exciter is changed into free electrons on a negative electronic affinity surface (7) formed on the active layer (5) or the active region, and the free electrons are continuously emitted.

Inventors:
TAKEUCHI DAISUKE (JP)
MAKINO TOSHIHARU (JP)
YAMASAKI SATOSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/062264
Publication Date:
January 15, 2009
Filing Date:
July 07, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NAT INST OF ADVANCED IND SCIEN (JP)
TAKEUCHI DAISUKE (JP)
MAKINO TOSHIHARU (JP)
YAMASAKI SATOSHI (JP)
International Classes:
H01J1/308; H01J1/30
Domestic Patent References:
WO2006135092A12006-12-21
WO1993015522A11993-08-05
WO2006135093A12006-12-21
Foreign References:
JP2006134723A2006-05-25
JPH06187902A1994-07-08
JP2000260301A2000-09-22
JPS5713647A1982-01-23
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Claims:
 p型半導体層と、前記p型半導体層に接して形成された励起子の束縛エネルギーが高い間接遷移型半導体で構成された活性層と、前記活性層に接して形成されたn型半導体層とを備え、その活性層が負の電子親和力表面を有しており、前記p型半導体層とn型半導体層のそれぞれに接して、あるいは低抵抗層を介して形成した電極から構成されていることを特徴とする電子源。
 基板上に低抵抗層を形成し、さらに、低抵抗層の一部に、p型半導体層と、前記p型半導体層に接して形成された励起子の束縛エネルギーが高い間接遷移型半導体で構成された活性層と、前記活性層に接してn型半導体層が形成された構造を備え、その活性層が負の電子親和力表面を有しており、n型半導体層と低抵抗層の一部に接して、あるいは低抵抗層を介して形成した電極から構成されていることを特徴とする電子源。
 p型層、n型層が逆の構造である請求項1から2に記載した電子源。
 励起子の束縛エネルギーが高い間接遷移型半導体がダイヤモンドである請求項1から3に記載した電子源。
 基板、p型半導体層、n型半導体層がダイヤモンドである請求項1から4に記載した電子源。
 低抵抗層がダイヤモンドである請求項1から5に記載した電子源。
 p型半導体層とn型半導体層と活性層がマイクロ波プラズマCVD法により形成されたダイヤモンドであることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の電子源。
 活性層がアンドープダイヤモンドで構成されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の電子源。
 p型半導体層がホウ素ドープダイヤモンドで構成されており、n型半導体層がリンドープダイヤモンドで構成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電子源。
 活性層を構成するアンドープダイヤモンド中のホウ素濃度およびリン濃度が
1×10 15 cm -3 以下であることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の電子源。
 アンドープダイヤモンドで構成された活性層の膜厚が100nm以下であることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれかに記載の電子源。
 活性層が、メタンと水素と酸素とを原料ガスとするマイクロ波プラズマCVD法により形成されることを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれかに記載の電子源。
 活性層が、水素終端ダイヤモンド表面により形成されることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれかに記載の電子源。
 活性層が、水酸基終端ダイヤモンド表面により形成されることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれかに記載の電子源。
 活性層がダイヤモンド単結晶{001}表面に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の電子源。
 活性層がダイヤモンド単結晶{111}表面に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の電子源。
 活性層がダイヤモンド単結晶{011}表面に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の電子源。
Description:
電子源

 本発明は、高効率に高密度な励起子を活 層において生成できる間接遷移型半導体が 負の電子親和力表面において高効率に励起 を電子に変換し、連続放出することを利用 た電子源に関するものである。

 電子源(陰極)は、熱電子放出型(thermionic emis sion; TE)と電界放出型(field emission; FE)、その 者の中間となる熱電子電界放出型(thermionic  field emission; TFE)に分類される。TEには金属や LaB 6 、BaOなどが、FEには金属やCs、CsOを被覆し形 として針状に尖らせたものが使用される。La B 6 などは、動作原理からTFEに分類されたりもす る。

 TEではビーム電流を大きくとりたいとき、 るいは輝度を高めたいときは、陰極放出電 密度(emission current density)Jcを高くする必要 ある。TEでJcを決める要因は、
  (A) 陰極材料とその処理(仕事関数が決ま )
  (B) 陰極温度Tc
  (C) 陰極前面での電界強度Ec
  (D) 真空の質(表面状態すなわち仕事関数 左右する)
である。

 JcはTcを高めると急激に増加するが、一方 で陰極物質の蒸発速度が増加して寿命が短く なる。寿命を犠牲にして飽和電流密度Js(Jc< Js)を高くとるとき(高輝度電子ビーム装置)も れば逆に寿命を長くとる(>10年)ためにJsを 抑える場合(人工衛星用電子管)もある。また 作真空度と残留ガスの種類や加速電圧も寿 に影響を及ぼす。

 Jcを高めるにはJsを高くとらなければならな いが、忘れてはならないのはEcを十分高くと ことである。せっかくJsを高くしても陰極 面での電界強度Ecが低ければJcは高くとれな 。LaB 6 陰極を用いるときなどは、とくにこの注意が 必要である。実際には外部印加電圧Vaをあま 高くとれないので陰極を針状に尖らせてEc 大きくする。LaB 6 陰極がTFE動作と呼ばれる所以でもある。

 FEでは陰極表面に10 7 V/cm程度の電界を印加すると電界放出が起こ 。材料はタングステンが最も多く、それを0. 1μm~1μmの局率半径を持つように整形する。結 晶方位によって仕事関数φは4.3~5.7eVと変化す が平均4.5eVである。電界放出を安定に行う めには10 -8 Pa程度の超高真空が必要である。陰極の温度 高め残留ガス分子の吸着やイオン衝撃によ 変形を防ぐと10 -6 Pa程度でも安定な放出が可能となる。このと にはある特定の結晶軸方向の成長(build-up)が 起こりやすくなる。このbuild-upは温度と印加 界だけでなく残留ガス成分にも敏感である

 FEにおいて高いJcを安定に取り出すために は上記のことがらに注意が必要である。Jcの 限値は抵抗加熱による急激な温度上昇と空 電荷で決まる。超高真空技術の進歩によっ 、FE陰極が実用化されているが、注意すべ ことは陰極から引き出す電流を増加させる きには、真空度をそれに応じて高めておく 要がある。真空度と放出電流の積が、ある 度を超えると電流の不安定性が増加する。

 FE電子銃は輝度が高いが、ビーム電流を大 くとるのは得意ではない。輝度が高いのはJc が高いことと仮想クロスオーバー面での局率 半径r c が小さいことによる。r c とIが小さいので照射系の設計がTE電子銃と異 なった取り扱いが必要である。具体的には、 Iを変えるには発散角α c かJcか、どちらかを変えねばならない。絞り 用いてα c を変える時には、これによってr c が変わり、Jcが一定であっても輝度が一定で くなるなど複雑である。

 FEでは陰極近傍の電流密度が非常に高い め、ベルシェ効果によって異常速度分散が こり、同じ全放出電流でもTEよりビーム径が 発散する。

 TEでは放出される電子の速度分布関数がマ スウェル分布に沿って初速度分布を持って ることに注意する必要がある。実際には表 の状態その他で崩れることもあるが、タン ステンに対しては実証されている。FEのとき にはマクスウェル分布ではないが、実行温度 T eff でその分布幅を表す。kT eff ~9.3×10 -9 Ec(V/cm)/[φ(eV)] 1/2 (eV)である。たとえば、φ=4.5eV、Ec=4×10 7 V/cmとすると、kT eff ~0.2eVである。

 上記のような長所・短所を考慮して、各 途において最適な材料・構造を用いて様々 電子源が開発されている。特に、真空障壁( 仕事関数φあるいは電子親和力χ)、およびそ に伴うTc、Ecが制限要素であるが、これら制 限を破るものとして期待されるのが、真空障 壁を負にする考え方である。すでにGaAsなど は擬似的にこの状態を得たパルス動作の光 起電子銃源が試作されているが、劣化やセ ウムを使用することなどの問題が残されて る。

 半導体であるダイヤモンドの表面を水素 端することによって、負の電子親和力が実 できることが明らかになっている。そして n形ダイヤモンド半導体と組み合わせれば、 伝導帯の自由電子にとって真空障壁が負の状 態が得られると考えられた。

 しかし、実際にはこの構造だけでは電子 容易に放出されないことが報告されている (非特許文献1、2参照)問題点としてはすでに 物理的考察から指摘されており、負の電子親 和力を持つn形ダイヤモンド半導体表面では 由電子の放出を阻止する内部電界が作用し いると指摘されている。

 ダイヤモンドは炭素材料としてもともと( 正の)電子親和力が小さいため、様々なダイ モンドを用いた電子源が提案されている。 の電子親和力を有する構造も提案されてい 。その場合、伝導帯を電子が輸送されるも 、あるいはエネルギーロスのない弾道電子 用いるものに大別される。しかし、段落0013 述べたように、n形ではなくp形あるいはi形 あるため、電流注入、およびキャリア輸送 点で原理的・技術的に困難な問題があった 光励起以外、ダイヤモンドの負の電子親和 を利用する固体素子の現実的な技術提案は い。

 したがって、これらの特徴を生かした電 源はフォトカソード以外では技術的アイデ が手詰まりとなっている。実際に、これ以 の知的財産情報は公開されていないし、学 的にも報告は無い。

 一方、ダイヤモンドは室温で5.47eVという きなバンドギャップを持ち、室温以上の高 下でも高効率に自由励起子が生成される特 を有する。また、前記した負の電子親和力 持つ表面から、この自由励起子に由来する 電子放出が容易に高効率で得られる。(非特 許文献1、3参照)。

 また、最近のダイヤモンド半導体合成技 、プロセス技術の向上によって、AlGaNにお て困難とされるp型ドーピングはもちろんの と、ダイヤモンドで困難とされてきたn型ド ーピングについても、最近キャリア移動度の 高いものが実現されている。pn接合について 、整流比が6桁以上の良好な電気特性を兼ね 備えたものが既に作製されている(非特許文 4、5参照)。そしてpin接合についても、すで 成功した報告が出ている(非特許文献6参照)

 また、ダイヤモンドは単元素から構成さ ていることにより、前記したAlGaN系化合物 導体に特有な構造欠陥等の問題もない。さ に、ダイヤモンドは、その機械的、化学的 および熱的特性(半導体材料中で最高の熱伝 率を持つ)に加え、優れた半導体特性や光学 特性を兼ね備えている。このように、ダイヤ モンドの励起子を用いる素子は、AlGaN系と比 して有利な点が多い。

 ところで、現在までに実用化されている 起子を応用する素子のほとんどは発光素子 あり、直接遷移型半導体で構成されている 直接遷移型半導体では、結晶の同じ対称点( γ点)での自由電子正孔対の直接再結合を発光 原理としているため、その再結合時間はnsオ ダー以下と短い。このため、自由電子正孔 は結晶中の欠陥等による発光あるいは非発 センターに捕獲される前に、直接再結合す 確率が高く、結晶中の欠陥等による発光あ いは非発光センター濃度をある程度抑制で れば内部量子効率を100%近くまで大きくする ことが可能である。

 一方、間接遷移型半導体では、自由電子 よび自由正孔は結晶中の異なった対称点に 在し、再結合するにはフォノンの介在を必 とするため、再結合時間は直接遷移型半導 と比較して3~6桁程度長くなる。(非特許文献 7参照)このため、間接遷移型半導体では、自 電子正孔対は直接再結合する前に結晶中の 陥等による発光あるいは非発光センターに 獲される確率が極めて高く、内部量子効率 1よりもかなり小さい値しかとれなくなる。 (非特許文献8参照)この理由により、従来の間 接遷移型半導体を用いた発光素子は不純物原 子を用いた外因的発光センターを利用するも のが一部あるものの、高効率発光素子には直 接遷移型半導体が主役を果たしてきた。ダイ ヤモンドも間接遷移型半導体であるために、 紫外線領域の波長の発光材料としては上記し た1)および2)の優位性を持ちつつも、内部量 効率を実用レベルまで向上させるのは困難 されている。

 先に述べた非特許文献6では、この課題を 解決できることを示している。つまり、ダイ ヤモンドのpn接合界面を活性領域とする、あ いはpin接合のi層を活性層として、そこに高 密度な自由励起子を電流注入によって形成で きることが示されている。(非特許文献9参照)

 しかし、この励起子を用いた電子源は、動 原理に対する理解の欠如、用いるべき材料 構造の不確定によって、これまで提案され いなかった。
D. Takeuchi, et al., APL, 86, 152103 (2005) T. Yamada, et al., APL, 87, 234107 (2005) D. Takeuchi, et al.: phys. stat. sol. (a) 203,  3100 (2006) S. Koizumi, et. al.: Science 292, 1899 (2001) T. Makino, et. al., Jpn. J. Appl. Phys. 44, L 1190 (2005) T.Makino, et al., 45, L1042 (2006) A.Fujii, et. al., J. Lumin., 94-95, 355 (2001) K.Horiuchi, et. al., Jpn. J. Appl. Phys., 36,  L1505 (1997) M.Nagai, et. al., Phys. Rev. Lett., 68, 081202R  (2003)

 本発明は、上記に鑑み提案されたもので り、励起子駆動でありながら、高い励起子 成効率と高濃度生成可能な材料・構造、お び原理上、電子放出にエネルギー的制限の い負の電子親和力表面を持つ、高効率電子 を提供することを目的とする。

 本発明は、励起子の束縛エネルギーが高 半導体材料で構成される間接遷移型半導体 あって、間接遷移型半導体による活性層あ いはpn接合による活性領域を形成し、活性 あるいは活性領域に電流注入する電極を有 る自由励起子生成効率が10%以上であり、そ 活性層あるいは活性領域に形成した負の電 親和力表面で自由励起子を自由電子に変換 連続放出させることを特徴とする電子源で る。

 また、本発明は、励起子の束縛エネルギ が高い半導体材料がダイヤモンドであり、 板上にp型半導体層と、前記p型半導体層に して形成されたn型半導体層とを備え、前記p 型半導体層とn型半導体層との界面を活性領 とし、その活性領域が負の電子親和力表面 有し、前記p型半導体層とn型半導体層のうち のいずれか一つ、あるいは両方が間接遷移型 半導体で構成されており、前記p型半導体層 n型半導体層のそれぞれに接して、あるいは 抵抗層を介して形成した電極から構成され いることを特徴とする電子源である。

 さらに、本発明の電子源は、p型半導体層と 、前記p型半導体層に接して形成された間接 移型半導体で構成された活性層と、前記活 層に接して形成されたn型半導体層とを備え その活性層が負の電子親和力表面を有し、 記p型半導体層とn型半導体層のそれぞれに して、あるいは低抵抗層を介して形成した 極から構成することができる。
 さらに、本発明においては、基板、p型半導 体層、n型半導体層をダイヤモンドとするこ ができる。

 また、本発明は、基板上に低抵抗層を形成 、さらに、低抵抗層の一部に、p型半導体層 と、前記p型半導体層に接して形成された間 遷移型半導体で構成された活性層と、前記 性層に接してn型半導体層が形成された構造 備え、その活性層が負の電子親和力表面を し、n型半導体層と低抵抗層の一部に接して 形成した電極からなる電子源である。
 さらに、本発明においては、基板、低抵抗 、p型半導体層、活性層、n型半導体層をダ ヤモンドとすることができる。
 また、本発明は、p型半導体層とn型半導体 と活性層がマイクロ波プラズマCVD法により 成されたダイヤモンドとすることができる
 さらに、本発明においては、活性領域ある は活性層がアンドープダイヤモンドで構成 ることができる。

 また、本発明は、電子源のp型半導体層がホ ウ素ドープダイヤモンドで構成されており、 n型半導体層がリンドープダイヤモンドで構 することができる。
 さらに、本発明においては、電子源の活性 域あるいは活性層を構成するアンドープダ ヤモンド中のホウ素濃度およびリン濃度が1 ×10 15 cm -3 以下とすることができる。
 また、本発明は、電子源のアンドープダイ モンドで構成された活性領域あるいは活性 の膜厚が100nm以下とすることができる。

 また、本発明は、電子源の活性領域ある は活性層が水素終端ダイヤモンド表面、ま は水酸基終端ダイヤモンド表面で構成する とができる。

 さらに、本発明においては、電子源の活性 域あるいは活性層が、メタンと水素と酸素 子を含んだガスとを原料ガスとするマイク 波プラズマCVD法により形成することができ 。
 また、本発明は、電子源の活性領域あるい 活性層が、メタンと水素と酸素とを原料ガ とするマイクロ波プラズマCVD法により形成 ることができる。
 さらに、本発明においては、電子源のp型半 導体層を基板であるダイヤモンド単結晶{001} 面、単結晶{111}表面、単結晶{011}に形成され ていることを特徴としている。

 さらに本発明ではp型、n型が逆の構造と ることができる。

 本発明では、加熱、および高電界印加を 要としない室温で初速度分布が0.025eV程度の 安定した連続電子放出が可能となる。これは 、従来固体内の電子を外部(真空)へ取り出す に用いられた原理とは異なる方法を用いる めである。すなわち、励起子の束縛エネル ーが室温で安定なほど大きな固体内で電流 入により自由励起子を高効率に生成し、そ を負の電子親和力表面を構成して取り出す 法である。本発明に適した材料は、励起子 束縛エネルギーが大きく励起子密度が大き 取れる間接遷移型半導体であり、かつ負の 子親和力を形成できる材料である。

 本発明は、従来のどの種類の電子源とも なる原理・構造を持ち、従来の電子源が持 本質的な問題、すなわち高出力・高輝度の 求と熱的・高電界環境起因による劣化のト ードオフに縛られない高効率な電子源を作 できる画期的な発明である。また、本発明 は、活性層材料に水素終端ダイヤモンドを いた場合、自由励起子がそこに拡散する場 のみならず、活性層内で自由励起子が再結 発光、あるいは欠陥や不純物準位に束縛さ 再結合発光しても、波長が282nm以下の深紫 線であれば、活性層に構成した負の電子親 力表面にて高効率に表面電子励起を誘導し 電子放出させる事が可能となる。

 従って、自由励起子の高い生成効率(10-100 %)と負の電子親和力表面の高い電子放出能(> ;10%)から、従来にない1-10%以上の高い量子効 を持つ固体電子源となる。もともとエネル ー制御性の高い電子源の幅広い応用にすべ 適用可能であり、照明、殺菌・浄水、分析 の各種情報センシング、医療分野、のみな ず、巨大な電力系統スイッチ・バスの超小 化などのパワーエレクトロニクスへの応用 電子放出を真空以外の溶液・ガス雰囲気中 も可能なため微小領域(マイクロチャネル)化 学反応制御、等への応用が実現可能となる。 そして従来にない連続NEA電子源を実現できる 。さらにNEA面からの面電子源としても実現で きる。

実施の形態の電子源に用いる自由励起 の寿命に関する遷移過程を模式的に示した であって、(a)は注入電流密度が小さい場合 (b)は注入電流密度が大きい場合を示した図 ある。 実施の形態の電子源に用いる負の電子 和力表面を実証する、全光電子放出率の励 光エネルギー依存性を示した図。 実施の形態の電子源に用いる負の電子 和力表面を実証する、全光電子放出率の励 光エネルギー依存性を示した図。 実施の形態の電子源に用いる負の電子 和力表面と自由励起子による電子放出の際 エネルギー関係を模式的に示した図。 実施例1の電子源構成を例示した断面図 である。 実施例2の電子源構成を例示した断面図 である。 実施例3の電子源構成を例示した断面図 である。 実施例2のpin接合の不純物濃度の深さ方 向分布を示した図である。 実施例2の励起子生成起因の発光特性を 示した図である。 実施例2の発光積分強度の注入電流依 性を示し、図1の遷移過程の妥当性を示した である。 実施例3の電子放出電流の注入電流依 性を示した図である。

符号の説明

図5の符号の指し示す内容は以下のとおりで る。
1  ダイヤモンドNEA電子源
2  p型単結晶ダイヤモンド基板
3  アンドープダイヤモンド半導体層
4  n型ダイヤモンド半導体層
5  電極
6  ダイヤモンドNEA電子放出面
7  コレクタ電極
図6の符号の指し示す内容は以下のとおりで る。
1  ダイヤモンドNEA電子源
2  電気伝導性を持たない単結晶基板ダイヤ ンド
3  p+型ダイヤモンド半導体層
4  p型ダイヤモンド半導体層
5  アンドープダイヤモンド半導体層
6  n型ダイヤモンド半導体層
7  ダイヤモンドNEA電子放出面
8  電極
9  コレクタ電極
図7の符号の指し示す内容は以下のとおりで る。
1  ダイヤモンドNEA電子源
2  電気伝導性を持たない単結晶基板ダイヤ ンド
3  p+型ダイヤモンド半導体層
4  p型ダイヤモンド半導体層
5  ダイヤモンド半導体pn接合空乏層(励起子 性層)
6  n型ダイヤモンド半導体層
7  ダイヤモンドNEA電子放出面
8  電極
9  コレクタ電極

 以下に、この発明の実施の形態について、 細に説明する。まず励起子生成構造である 一般に半導体材料中に生成される電子・正 対は、高温であれば自由電子および自由正 として存在するが、低温では、空間的に接 した電子正孔対、すなわち励起子の状態の が安定となる。この励起子は、直接遷移型 るいは間接遷移型の半導体を問わず存在可 で、不純物原子等の外因的要素にも依らな 、半導体材料固有の性質である。実際に励 子が安定に存在できるか否かは、励起子の 縛エネルギーと、それを解離する熱エネル ーの関係で決定する。従来の半導体での励 子は、束縛エネルギーが小さいために、低 かつ低密度でしか存在できない。一方、ダ ヤモンドは室温で5.47eVの広いバンドギャッ を持つ間接遷移型半導体であり、下記の表1 に示す様に、他の半導体材料と比較して自由 励起子の束縛エネルギーが80meVと大きく、し がって室温下でも安定して自由励起子が存 することが可能である。実際、気相成長法( CVD法)により合成された高品質ダイヤモンド 膜では、欠陥準位等によるキャリアの再結 が抑制され、カソードルミネッセンスやフ トルミネッセンス測定において、室温で波 235nmに自由励起子発光スペクトルが観測され ている。また、表1に示す様に、他の半導体 料と比較してダイヤモンドの自由励起子の ーア半径は、1.5nmと小さく、したがって高密 度に励起子を生成することが可能(臨界励起 密度(モット密度)が約6×10 19 cm -3 )という特徴を有している。

 効率の議論は、半導体発光素子に関する議 を応用できる。一般に、発光素子の発光効 ηは下記の数式1で表される。ここで、η int は内部量子効率を、η ext は取り出し効率を、η v は電圧効率を表す。このうち、η ext とη v の因子は発光素子の作製プロセスに依存する 因子であり、半導体材料やその発光機構の原 理的可能性を判断するのはη int の因子である。

 また、内部量子効率η int は下記の数式2で表される。ここで、τ r は注目する発光過程の発光寿命を、τ nr はそれ以外の遷移過程(非発光過程、欠陥関 の発光過程、等を含む)の寿命を表す。η int を大きくするためには、τ r がτ nr に比べてできるだけ小さい材料を選ぶか、も しくはτ nr が長くなるように材料合成・素子作製技術を 向上させる必要がある。

 直接遷移型半導体では、結晶の同じ対称点( γ点)で自由電子正孔対が再結合できるので、 τ r が短く、η int は大きい値をとることが可能となる。一方、 間接遷移型半導体では、自由電子および自由 正孔は結晶中の異なった対称点に存在し、再 結合するにはフォノンの介在を必要とするた め、τ r は直接遷移型半導体と比較して3~6桁程度長く なる。このため、間接遷移型半導体では自由 電子正孔対の再結合寿命は欠陥準位等による 非発光過程で支配され、η int は1よりもかなり小さい値しかとれなくなる この理由により、Si等の間接遷移型半導体で は、発光素子への応用が困難とされている。
 しかし、励起子を構成している電子正孔対 空間的に近接しているので、間接遷移型半 体であっても、直接再結合して発光する確 が大きくなる。すなわち、τ r が短くなる。実際、自由電子正孔対の再結合 を発光機構とする典型的な間接遷移型半導体 のτ r は100~1000μs程度であるが、励起子状態からの 結合を発光機構とするダイヤモンドでは、 2μs程度と、2桁短いことが報告されている( 特許文献7参照)。これが、ダイヤモンドが の間接遷移型半導体と比較して大きい内部 子効率η int を持っている理由の一つである。

 さらに、ダイヤモンドの様に高密度に励起 を生成可能な場合は、τ nr を実効的に長くして、η int をさらに向上させることが可能である。以下 に添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。 図1は、ダイヤモンド発光素子に電流を注入 、定常状態になった場合の遷移過程を模式 に示した図である。図1(a)は注入電流密度が さい場合、図1(b)は注入電流密度が大きい場 合を示している。図1中の矢印の太さは遷移 率の大きさを模式的に表している。(矢印が いほど遷移確率が大きい。)ダイヤモンド発 光素子の活性層に注入された小数キャリア( 由電子および自由正孔)のほとんどは、10ps以 下の短い時間で、よりエネルギーの安定な励 起子を形成する(非特許文献9)。形成された励 起子は、2μs程度の発光寿命で直接再結合す (過程1)か、あるいは欠陥等に起因した深い 位に捕獲される(過程2)。深い準位に捕獲さ た電子あるいは正孔は輻射的もしくは非輻 的に遷移していく(過程3)。

 図1(a)の注入電流密度が小さい場合、すなわ ち、ダイヤモンド発光素子の活性領域に安定 に生成された励起子の密度が、欠陥等に起因 した深い準位の密度より小さい場合を考える 。この場合、過程2は過程1よりも短いnsオー ーの寿命を持っていると考えられ、したが て励起子からの遷移確率は過程1よりも過程2 の方が支配的となる。これは、励起子発光の 内部量子効率η int が小さいことを意味している。次に図1(b)の 入電流密度が大きい場合、すなわち、生成 れた励起子の密度が、深い準位の密度より きくなった場合を考える。過程3の遷移寿命 励起子の直接再結合寿命と同程度かもしく 長いとする(実際、フォトルミネセンス測定 において、深い準位からの発光寿命は1.7sと う非常に長い報告例もある(非特許文献8参照 ))と、深い準位は、励起子を構成していた電 あるいは正孔で埋め尽くされる状態が実現 る。この状態は、実効的に過程2の遷移が飽 和したこと、すなわち過程2の遷移寿命が非 に長くなったことを意味している。厳密に 自由正孔と深い準位の励起準位とを考慮し 詳細な過程を用いて正確に説明されるが、 本概念を上記の通りである。

 実効的に過程2の遷移が飽和すると、励起子 は全て過程1の発光過程を経由することにな ので、励起子発光の内部量子効率η int は、間接遷移型半導体といえども直接遷移型 半導体の内部量子効率(数十%)に匹敵する値に なるはずである。この様にダイヤモンドに特 有な高密度励起子状態を利用することにより 、τ nr を実効的に長くし、励起子からの発光に関す る内部量子効率η int を、数十%まで向上させることが原理的に可 である。
 したがって、電子放出に寄与する自由励起 生成の量子効率は10%以上と考えられる。

 一方、負の電子親和力の構造について説 する。水素終端ダイヤモンド表面に紫外線 照射した場合の、光電子放出に関する量子 率(相対値)をとったものが図2である。図2は 水素終端IIa形アンドープダイヤモンドの(001) 結晶表面の励起光エネルギー対全光電子放 率特性を示す。室温でのダイヤモンドのバ ドギャップ5.47eVに対し、1eV以上低い4.4eV付 から急激に光電子放出率が立ち上がるのが かる。さらに、5.27eVから2桁以上立ち上がる 図3に、このバンドギャップ励起付近の詳細 図を示す。図3は水素終端IIa形アンドープダ ヤモンドの(001)単結晶表面の励起光エネルギ ー対全光電子放出率特性を示す。四つの立ち 上がりが確認できる。すなわち、低い励起光 エネルギーから、5.26eV、5.315eV、5.485eV、5.54eV ある。最大値と最小値、中央の二値、それ れの平均Egxは5.40eVであり、丁度ダイヤモン 中の自由励起子の基底状態と一致する。ま 、両組み合わせに対するエネルギー差はそ ぞれ0.14eVと0.085eVで、これらは丁度、それぞ れダイヤモンド中のTOフォノン、およびTAフ ノンの、ダイヤモンド伝導帯底の運動量空 位置(X点方向0.76)における値と一致する。す わち、ここで得られている放出された光電 は、光吸収の際に自由励起子生成を伴って ることを意味する。

 上記の内容を矛盾なく説明できる、水素 端表面付近のエネルギーバンド構造が図4で ある。特徴は、真空準位が結晶内部の伝導帯 底の下にある負の電子親和力表面となってい ることと、ダイヤモンド表面に固有の表面非 占有準位が水素終端構造によってダイヤモン ドのエネルギーギャップ中に下がってきてい ることである。(非特許文献1)[0041]で述べた4.4 eVからの光吸収は、結晶内部の価電子帯頂上 同じエネルギー位置の表面占有準位頂上か 、前期の表面非占有準位への励起によって こる。さらに、信号は真空中に電子が放出 れて初めて検出されうるわけであるから、4 .4eVは、価電子帯頂上と真空準位とのエネル ー差に相当する。ダイヤモンドのバンドギ ップが5.47eVであるから、約1.1eVの負の電子親 和力が形成できていることがこれで証明され る。そして、この負の電子親和力表面に自由 励起子が来ることによって、実際に電子放出 が得られている。

 [0042]で述べた電子放出原理は、外部からの 外光ではなく、結晶内部で自由励起子を生 する、あるいは自由励起子の励起エネルギ 相当の紫外光が発生し、負の電子親和力表 に到達することによっても起こりうること 自明である。さらに、自由励起子の励起エ ルギー未満の紫外光でも、4.4eV以上のエネ ギーを有していれば電子放出が起こること 自明である。すなわち、結晶内部の欠陥や 純物に自由励起子が束縛され、発光する場 でも、その光エネルギーが4.4eV以上であれば 電子源動作可能となる。
 上記の実施の形態を踏まえつつ、以下に本 明の実施例を示し、さらに詳細に説明する

 図5に、電子源1の実施例1を示す。p型半導 体層と、前記p型半導体層に接して形成され 励起子の束縛エネルギーが高い間接遷移型 導体で構成された活性層と、前記活性層に して形成されたn型半導体層とを備え、その 性層が負の電子親和力表面を有しており、 記p型半導体層とn型半導体層のそれぞれに して、あるいは低抵抗層を介して形成した 極から構成されていることを特徴とする電 源である。

 図5の電子源1の実施例1における作製プロセ は以下のとおりである。p型ダイヤモンド半 導体結晶2に、マイクロ波プラズマCVD法によ 、水素希釈した濃度0.025%のメタンガスを用 て励起子活性層となる高品質なアンドープ イヤモンドホモエピタキシャル薄膜3を形成 る。基板温度は800℃、マイクロ波電力は750W 、ガス流量は400sccm、ガス圧力は25Torr、合成 間は6時間で合成した。さらに、n型ダイヤモ ンド半導体ホモエピタキシャル薄膜4を形成 る。(001)面での合成の場合は、メタン濃度0.4 %、フォスフィンのメタンに対する濃度5%、基 板温度900℃で、他はアンドープ膜形成条件に 準拠した。合成時間は6時間である。その後 フォトリソグラフィーにより金マスクを蒸 し、CF 2 HガスによりICPプラズマでエッチングする。 なるマスクパターンで二回行い、図5の形状 形成した。さらにフォトリソグラフィーを い、電極5をEB蒸着した。電極はチタンを用 、白金をキャップ層とした。最後に、全体 マイクロ波プラズマCVD装置で水素化し、フ トリソグラフィーによって活性層3の表面6 みレジストで覆いながら、レジストが残る 件で酸素プラズマに暴露し、活性層の負の 子親和力表面6を形成した。電極7は電子放出 電流用のコレクタ電極であり、電子源とは独 立な系である。

 図6に、電子源1の実施例2を示す。基板上 低抵抗層を形成し、さらに、低抵抗層の一 に、p型半導体層と、前記p型半導体層に接 て形成された励起子の束縛エネルギーが高 間接遷移型半導体で構成された活性層と、 記活性層に接してn型半導体層が形成された 造を備え、その活性層が負の電子親和力表 を有しており、n型半導体層と低抵抗層の一 部に接して、あるいは低抵抗層を介して形成 した電極から構成されていることを特徴とす る電子源である。

 図6の電子源1の実施例2における作製プロセ は以下のとおりである。Ib型ダイヤモンド(0 01)基板2の上に、低抵抗層となる高濃度ボロ ドープp + ダイヤモンド半導体薄膜層3を形成した。こ 低抵抗層3は、マイクロ波プラズマCVD法によ 、水素希釈した濃度0.6%のメタンガスと、ジ ボランのメタンに対する濃度を8000ppmとし、 イクロ波電力は1200W、ガス流量は400sccm、ガ 圧力は50Torr、合成時間は12時間で合成した。 基板温度は推定800-900℃程度である。次に高 質p型ダイヤモンド半導体層4となるボロンド ープホモエピタキシャルダイヤモンド薄膜を 同装置によって合成した。この場合、すでに 同じ合成装置真空槽内で高濃度のボロンを用 いているため、ジボラン濃度は0%として残留 ロンをドープする方法でよい。

 次にマイクロ波プラズマCVD法により、水 希釈した濃度0.025%のメタンガスを用いて励 子活性層となる高品質なアンドープダイヤ ンドホモエピタキシャル薄膜5を形成する。 基板温度は800℃、マイクロ波電力は750W、ガ 流量は400sccm、ガス圧力は25Torr、合成時間は6 時間で合成した。さらに、n型ダイヤモンド 導体ホモエピタキシャル薄膜6を形成する。( 001)面での合成の場合は、メタン濃度0.4%、フ スフィンのメタンに対する濃度5%、基板温 900℃で、他はアンドープ膜形成条件に準拠 た。合成時間は6時間である。その後、フォ リソグラフィーにより金マスクを蒸着し、C F2HガスによりICPプラズマでエッチングする。 異なるマスクパターンで二回行い、図6の形 を形成した。さらにフォトリソグラフィー 行い、電極8をEB蒸着した。電極はチタンを い、白金をキャップ層とした。最後に、全 をマイクロ波プラズマCVD装置で水素化し、 ォトリソグラフィーによって活性層5の表面7 のみレジストで覆いながら、レジストが残る 条件で酸素プラズマに暴露し、活性層の負の 電子親和力表面7を形成した。電極9は電子放 電流用のコレクタ電極であり、電子源とは 立な系である。

 図7に、電子源1の実施例3を示す。基板上 低抵抗層を形成し、さらに、低抵抗層の一 に、p型半導体層と、前記p型半導体層に接 て形成された励起子の束縛エネルギーが高 間接遷移型半導体で構成された活性層と、 記活性層に接してn型半導体層が形成された 造を備え、その活性層が負の電子親和力表 を有しており、n型半導体層と低抵抗層の一 部に接して、あるいは低抵抗層を介して形成 した電極から構成されていることを特徴とす る電子源である。

 図7の電子源1の実施例3における作製プロセ は以下のとおりである。Ib型ダイヤモンド(0 01)基板2の上に、低抵抗層となる高濃度ボロ ドープp + ダイヤモンド半導体薄膜層3を形成した。こ 低抵抗層3は、マイクロ波プラズマCVD法によ 、水素希釈した濃度0.6%のメタンガスと、ジ ボランのメタンに対する濃度を8000ppmとし、 イクロ波電力は1200W、ガス流量は400sccm、ガ 圧力は50Torr、合成時間は12時間で合成した。 基板温度は推定800-900℃程度である。次に高 質p型ダイヤモンド半導体層4となるボロンド ープホモエピタキシャルダイヤモンド薄膜を 同装置によって合成した。この場合、すでに 同じ合成装置真空槽内で高濃度のボロンを用 いているため、ジボラン濃度は0%として残留 ロンをドープする方法でよい。さらに、n型 ダイヤモンド半導体ホモエピタキシャル薄膜 6を形成する。自動的に励起子活性層となるpn 接合界面5が形成される。

 n型ダイヤモンド薄膜6は(001)面での合成の 場合は、メタン濃度0.4%、フォスフィンのメ ンに対する濃度5%、基板温度900℃で、マイク ロ波電力は750W、ガス流量は400sccm、ガス圧力 25Torr、合成時間は6時間で合成した。アンド ープ膜形成条件に準拠した。合成時間は6時 である。その後、フォトリソグラフィーに り金マスクを蒸着し、CF2HガスによりICPプラ マでエッチングする。異なるマスクパター で二回行い、図6の形状を形成した。これで 、活性層5は表面を持つ。さらにフォトリソ ラフィーを行い、電極8をEB蒸着した。電極 チタンを用い、白金をキャップ層とした。 後に、全体をマイクロ波プラズマCVD装置で 素化し、フォトリソグラフィーによってp型 4と活性層5の表面7のみレジストで覆いなが 、レジストが残る条件で酸素プラズマに暴 し、活性層の負の電子親和力表面7を形成し た。電極9は電子放出電流用のコレクタ電極 あり、電子源とは独立な系である。

 例えば図6において、高圧合成単結晶基板ダ イヤモンド2の(001)表面に、マイクロ波プラズ マCVDによりホウ素(B)を高濃度に添加したp + 型ダイヤモンド半導体低抵抗層3の膜厚は1μm ある。その上のp型ダイヤモンド半導体層4 膜厚は1.3μmである。その上にマイクロ波プ ズマCVDにより活性層としてのアンドープダ ヤモンド半導体層5を0.1μmの膜厚で合成し、 の上にマイクロ波プラズマCVDによりリン(P) 添加したn型ダイヤモンド半導体層6の膜厚 0.7μmである。これでpin接合を形成している 各層のマイクロ波プラズマCVDによる合成条 を表2にまとめて示す。アンドープダイヤモ ド半導体層5の合成では、合成ガス中に酸素 を混ぜることにより、不純物元素の合成膜中 への混入を防いでいる。ここで、酸素ガスの 代わりに、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO 2 )、オゾン(O 3 )、水(H 2 O)、等の酸素原子(O)を含んだガスを用いても い。

 また、p型半導体層4の合成では、マイクロ プラズマCVDを行う真空容器内に残留してい ジボラン(B 2 H 6 )を不純物ガスとして用いている。図8に、p + 型、p型、i型、n型の各層の不純物リンおよび ホウ素の不純物濃度の深さ方向分布を、2次 オン質量分析法により見積もった結果を示 。p + 型ダイヤモンド半導体層3のB濃度は3×10 20 cm -3 、p型ダイヤモンド半導体層4のB濃度は2×10 17 cm -3 、n型ダイヤモンド半導体層6のP濃度は1×10 18 cm -3 である。活性層としてのアンドープダイヤモ ンド半導体層5は、p型半導体層4中の不純物元 素であるB、あるいはn型半導体層6中の不純物 元素であるPの拡散がなく、図6に示すように 純物濃度は2次イオン質量分析(SIMS)法での検 出限界以下となっており、膜厚は正確に100nm 形成されている。

 より高分解能のSIMS法によりアンドープダイ ヤモンド半導体層5中の不純物濃度を測定し 結果、B濃度は6×10 14 cm -3 以下に、P濃度は1×10 15 cm -3 以下に抑制されている。この積層膜をドライ エッチングにより直径200μmの円柱形状でp + 型ダイヤモンド半導体層3までメサ加工する メサ加工した円柱形状の中央、直径100μmを 柱形状でn型ダイヤモンド半導体層6をアンド ープダイヤモンド半導体層5までドライエッ ングし、アンドープダイヤモンド半導体層5 表面を形成する。構造全体を、マイクロ波 ラズマCVD装置で水素100%のプラズマに曝し、 水素終端する。中央アンドープダイヤモンド 半導体層5表面に保護膜を施した後、他の表 をドライプロセスにて酸化する。p + 型ダイヤモンド半導体層3の表面でメサ構造 接しない領域とn型ダイヤモンド半導体層6の 表面にそれぞれ、電子ビーム蒸着により、ま ずチタン(Ti)を30nm成膜し、続いて白金(Pt)を300 nm成膜し、420℃で30分間熱処理することで金 電極8、10を形成した。なお、放出電子を収 するコレクタ電極を9に示す。

 図9に、本発明の実施例2である電子源の イヤモンドpin構造部分に、中央のメサ構造 施す前にて室温において順方向電流を注入 た時の発光特性を示す。印加電圧が24V、28V おいて注入電流はそれぞれ20mA、65mAである。 室温において波長240nm付近に自由励起子の直 再結合による鋭い発光が明確に観測されて るのがわかる。一方、波長400nm付近をピー とした欠陥等に起因した深い準位からのブ ードな発光については、自由励起子発光の ーク強度の10分の1以下に抑制されている。

 図10に、自由励起子の直接再結合による発 の積分強度I exciton (●印)と欠陥等に起因した深い準位からのブ ードな発光の積分強度I deep (○印)の注入電流依存性を示す。注入電流の 加に伴い、I exciton は単調に増加していくのに対して、I deep は飽和する傾向がみられている。I deep が飽和する傾向が見られ始める電流値は、25m A程度と小さい。これは、図1に示した過程2の 遷移の飽和が生じていることを意味している 。これは、本発明の実施例2である電子源の 陥等に起因した深い準位の密度を小さく抑 たアンドープダイヤモンド半導体層5(活性層 )が、自由励起子の生成・蓄積・直接再結合 有効に働いていることを意味している。

 図11に、本発明の実施例3である電子源のダ ヤモンドpn構造において、単純なメサ構造 施した後で、300℃において高真空中で順方 電流を注入し、このメサ構造から約100mm離れ た電極に外部印加電圧300Vとした時の電子放 電流特性を示す。図11は外部印加電圧300V、30 0℃、10 -8 Torr雰囲気中での電子放出電流特性を示す。
 印加電圧が自由励起子の再結合による鋭い 光を明確に形成する付近で、電子放出電流 立ち上がる。なお、室温動作でも電子放出 流が得られる。

 以上の様に、本発明では、ダイヤモンド 特異な材料物性(負の電子親和力表面と励起 子を経由した電子放出過程、高密度励起子状 態)と、この材料物性を最大限引き出すため pnあるいはpin接合構造の形成、さらに間接遷 移型半導体による励起子の長寿命化を逆手に 取った原理(高密度励起子状態)により、室温 おいても励起子利用における高い内部量子 率を持った電子源を実現できる。この電子 の実現により、あらゆる電子ビーム応用へ 展開が可能であり、白色照明、殺菌・浄水 電子ビーム応用分析・電力スイッチング素 ・高輝度電子銃・高輝度X線装置、マイクロ 流路内局所化学反応用カソード等の各種情報 センシング、医療、等の幅広い分野への応用 が可能となる。