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Title:
FERTILITY RESTORER GENE AND FERTILITY RESTORATION METHOD FOR CW-TYPE MALE STERILE CYTOPLASM OF RICE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/113249
Kind Code:
A1
Abstract:
Mainly provided is a technique for directly identifying the genotype at locus Rf17 based on the specific base sequence data thereof. Also provided is a technique for artificially constructing a fertility restoration line. A method of restoring the fertility of CW-type cytoplasmic male sterile rice by inhibiting or reducing the expression of a gene comprising the base sequence represented by SEQ ID NO:2 in the above-described rice; and a method of determining the presence or absence of gene Rf17, which is a fertility restorer gene for CW-type cytoplasmic male sterility, comprising identifying a single nucleotide polymorphism (SNP) in the base at the 1812 position of the base sequence represented by SEQ ID NO:1 in the rice to be examined.

Inventors:
TORIYAMA KINYA (JP)
FUJII SOTA (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/000753
Publication Date:
September 17, 2009
Filing Date:
February 21, 2009
Export Citation:
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Assignee:
UNIV TOHOKU (JP)
TORIYAMA KINYA (JP)
FUJII SOTA (JP)
International Classes:
A01H5/00; A01H1/00; C12N15/09; C12Q1/68
Foreign References:
US20040123343A12004-06-24
US20070020621A12007-01-25
US4458066A1984-07-03
Other References:
FUJII, S. ET AL., RETROGRADE REGULATION OF NUCLEAR GENE EXPRESSION IN CW-CMS OF RICE PLANT MOLECULAR BIOLOGY, vol. 63, 2007, pages 405 - 417
"Dai 45 Kai Proceedings of the Annual Meeting of the Japanese Society of Plant Physiologists", 20 March 2004, article TOMOHIKO KAZAMA ET AL.: "Ine Saiboshitsu Yusei Funen Nensei Kaifuku Idenshi ni yoru B-atp6RNA no Tensha Go Yokusei", pages: 147, XP008140890
YOSHITAKA OHASHI ET AL.: "Boro-gata Saiboshitsu Yusei Funen Ine no Nensei Kaifuku Keito ni Tokuiteki na Yaku cDNA no Kaiseki", BREEDING SCIENCE, vol. 48, no. 2, November 1998 (1998-11-01), pages 186
SOTA FUJII; KINYA TORIYAMA: "Molecular mapping of the fertility restorer gene for ms-CW-type cytoplasmic male sterility of rice", THEOR. APPL. GENET., vol. 111, 2005, pages 696 - 701
CARRUTHERS, COLD SPRING HARBOR SYMP. QUANT. BIOL., vol. 47, 1982, pages 411 - 418
ADAMS, J. AM. CHEM. SOC., vol. 105, 1983, pages 661
BELOUSOV, NUCLEIC ACID RES., vol. 25, 1997, pages 3440 - 3444
FRENKEL, FREE RADIC. BIOL. MED., vol. 19, 1995, pages 373 - 380
BLOMMERS, BIOCHEMISTRY, vol. 331, 1994, pages 7886 - 7896
J NARANG, METH. ENZYMOL., vol. 68, 1979, pages 90
BROWN, METH. ENZYMOL., vol. 68, 1979, pages 109
BEAUCAGE, TETRA. LETT., vol. 22, 1981, pages 1859
SAMBROOK; MANIATIS: "Molecular Cloning-A Laboratory Manual", 1989, COLD SPRING HARBOR LABORATORY PRESS
"Molecular cloning third.ed", 2001, COLD SPRING HARBOR LAB.PRESS
AUSUBEL, F. M. ET AL.: "Current Protocols in Molecular Biology", JOHN WILEY & SONS
See also references of EP 2258165A4
Attorney, Agent or Firm:
ABE, MASAHIRO (JP)
Masahiro Abe (JP)
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Claims:
CW型細胞質雄性不稔性のイネにおいて、配列番号2に示す塩基配列から成る遺伝子の発現を抑制又は減少することにより、該イネの稔性を回復させる方法。
CW型細胞質雄性不稔性に対する稔性回復系統の第4染色体由来のゲノム断片であり、配列番号1に示す塩基配列における少なくとも1611~4835番目の塩基配列を有する核酸を含むゲノム断片をCW型細胞質雄性不稔性のイネに導入することにより稔性を回復する、請求項1記載の方法。
ゲノム断片が配列番号1に示す全塩基配列から成る、請求項2記載の方法。
RNA干渉法を用いて配列番号2の遺伝子発現を抑制することにより、CW型細胞質雄性不稔性のイネの稔性を回復させる、請求項1記載の方法。
配列番号2に示す塩基配列から成る遺伝子又はその3’非翻訳領域における100~500個の連続した塩基配列及びその相補配列を含み、細胞内でRNA干渉を誘導し得る二重鎖RNAを発現するベクターをCW型細胞質雄性不稔性のイネに導入することによりRNA干渉を誘導する、請求項4記載の方法。
配列番号2に示す塩基配列における638~815番目の連続した塩基配列及びその相補配列を含み、細胞内でRNA干渉を誘導し得る二重鎖RNAを発現するベクターを用いる、請求項5記載の方法。
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法により稔性が回復したイネ。
請求項7記載のイネを用いて一代雑種品種を育種する方法。
請求項8記載の育種方法によって得られる一代雑種品種から採種されたF1種子。
被検定イネにおいて配列番号1に示す塩基配列の第1812番目の塩基における一塩基多型(SNP)を同定することなら成る、CW型細胞質雄性不稔性に対する稔性回復遺伝子であるRf17遺伝子の有無の識別方法。
CAPS法により一塩基多型(SNP)を同定する、請求項10記載の方法。
切断認識配列 GT(A)AACを持つ制限酵素を使用する、請求項11記載の方法。
制限酵素がMaeIIIである、請求項12記載の方法。
請求項10~13のいずれか一項に記載の方法に使用するキット。
Description:
イネCW型雄性不稔細胞質に対す 稔性回復遺伝子及び稔性回復方法

 本発明は、CW型細胞質雄性不稔性のイネ 稔性を回復させる方法、稔性回復遺伝子の 無の識別方法等に関する。高等植物に存在 る細胞質雄性不稔性(Cytoplasmic Male Sterility;  以下「CMS」ともいう)とは、ミトコンドリア 伝子の変異が原因で受精能力のある花粉の 成が阻害され、種子が稔らないもので、い つかのCMSでは、核にコードされている稔性 復遺伝子(Rf)の働きによって花粉稔性が回復 ることが知られている。

一代雑種育種法はハイブリッド品種育種法と も呼ばれ、両親の優れた形質を合わせ持ち、 かつ、雑種強勢を示す品種が育種できるため 、品種育成に利用されている。多量にかつ経 済的にF 1 種子を採種するために、イネにおけるハイブ リッド品種の種子生産には、細胞質雄性不稔 性を利用した三系法が利用されている。三系 法とは、雄性不稔系統を保有する系統である 不稔系統、稔性回復系統、および、核遺伝子 は不稔系統と同一であって不稔細胞質を保有 しない系統である維持系統を利用する方法を いう。これらの3系統を用いて、(i)不稔系統 回復系統の花粉を交配させることによりハ ブリッド種子を獲得することができ、(ii)一 、不稔系統に維持系統の花粉を交配するこ により不稔系統を維持することができる。

三系法を用いたハイブリッド品種に育成に は世界的にBT型雄性不稔細胞質とWA型雄性不 細胞質が用いられてきたが、本発明に関わ CW型雄性不稔細胞質は、稔性回復遺伝子Rf17( 特許文献1)の具体的な構造及び機能等が明 かでなかったため、これまで利用されてこ かった。しかし、これまで用いられてきた 性不稔細胞質のみでは遺伝資源が限られて るため品種崩壊の危険があるので、新規な 性不稔細胞質の利用開発が望まれている。

従来、植物体中でのRf17遺伝子座の遺伝子型 推定するためには、まず、検定交配を行っ 交配種子から植物体(F1)を育成し、次いでF1 物を自殖させてその種子形成率が一定以上( えば90%以上)である個体の出現頻度を調査す る必要があった。DNAマーカーを用いた遺伝子 型の判定は行うことはできなかった。
Sota Fujii and Kinya Toriyama (2005) Molecular  mapping of the fertility restorer gene for ms-CW-type  cytoplasmic male sterility of rice. Theor. Appl. Ge net. 111:696-701

 三系法でCW型雄性不稔細胞質を利用するに たっては、回復系統のイネを育種する各過 でイネがRf17遺伝子を保有すること、また、 終段階ではRf17遺伝子をホモで保有すること を確認する必要が有る。
 従って、本発明の主な目的は、Rf17遺伝子座 の遺伝子型をその具体的な塩基配列情報に基 づき、直接同定する技術を提供すること、及 び、人為的に稔性回復系統を作成する技術を 提供すること等である。

 本発明者らは、CW型雄性不稔細胞質に対 る稔性回復遺伝子Rf17を含む塩基配列として 列番号1に示す配列を決定した。さらに、塩 基配列2に示した遺伝子の発現を抑制するこ により、CW型細胞質雄性不稔イネの稔性を回 復させることに成功し、本発明を完成した。

 即ち、本発明は以下の態様に係るものであ 。
[態様1]CW型細胞質雄性不稔性のイネにおいて 配列番号2に示す塩基配列から成る遺伝子の 発現を抑制又は減少することにより、該イネ の稔性を回復させる方法。
[態様2]CW型細胞質雄性不稔性に対する稔性回 系統の第4染色体由来のゲノム断片であり、 配列番号1に示す塩基配列における少なくと 1611~4835番目の塩基配列を有する核酸を含む ノム断片をCW型細胞質雄性不稔性のイネに導 入することにより稔性を回復する、態様1記 の方法。
[態様3]ゲノム断片が配列番号に1示す全塩基 列から成る、態様2記載の方法。
[態様4]RNA干渉法を用いて配列番号2の遺伝子 現を抑制することにより、CW型細胞質雄性不 稔性のイネの稔性を回復させる、態様1記載 方法。
[態様5]配列番号2に示す塩基配列から成る遺 子又はその3’非翻訳領域における100~500個の 連続した塩基配列及びその相補配列を含み、 細胞内でRNA干渉を誘導し得る二重鎖RNAを発現 するベクターをCW型細胞質雄性不稔性のイネ 導入することによりRNA干渉を誘導する、態 4記載の方法。
[態様6]配列番号2に示す塩基配列における638~8 15番目の連続した塩基配列及びその相補配列 含み、細胞内でRNA干渉を誘導し得る二重鎖R NAを発現するベクターを用いる、態様5記載の 方法。
[態様7]態様1~6のいずれか一項に記載の方法に より稔性が回復したイネ。
[態様8]態様7記載のイネを用いて一代雑種品 を育種する方法。
[態様9]態様8記載の育種方法によって得られ 一代雑種品種から採種されたF1種子。
[態様10]被検定イネにおいて配列番号1に示す 基配列の第1812番目の塩基における一塩基多 型(SNP)を同定することなら成る、CW型細胞質 性不稔性に対する稔性回復遺伝子であるRf17 伝子の有無の識別方法。
[態様11]CAPS法により一塩基多型 (SNP; single nu cleotide polymorphism)を同定する、態様10記載の 法。
[態様12]切断認識配列 GT(A)AACを持つ制限酵素 使用する、態様11記載の方法。
[態様13]制限酵素がMaeIIIである、態様12記載の 方法。
[態様14]態様10~13のいずれか一項に記載の方法 に使用するキット。

本発明によって、CW型雄性不稔に対する稔 回復は、ORF11の発現減少によることが明ら になった。更に、CW型雄性不稔に対する稔性 回復に効果がある塩基配列を同定することに 成功し、稔性を回復させることが可能となっ た。

相補性試験で稔性が回復した遺伝子断 に存在する遺伝子の模式図。 RNA干渉を誘導するベクターを導入した 質転換植物における花粉のデンプンの分解 有無を示す写真。稔性回復系統(CWR)とORF11の RNA干渉ベクターを導入した個体(RNAi ORF11_3)で はデンプンの分解が見られるが、雄性不稔系 統(CWA)とPPR2のRNA干渉ベクターを導入した個体 (RNAi PPR2_1)ではデンプンの分解が見られなか た。 PCR法を用いたCAPSマーカーによるRf17遺 子型の判定を示す電気泳動の写真。稔性回 系統(CWR)は370 bpのバンドを生じたが、稔性 復力を持たない品種(台中65号, T65)は276と84  bpのバンドを生じた。

本発明者は、常法に従いマップベースクロ ーニング法により、イネの第4染色体におけ 、CW型雄性不稔細胞質に対する稔性回復遺伝 子Rf17を含むゲノム領域(配列番号1)を特定す ことに成功し、更に、配列番号2に示される 伝子の発現を抑制又は減少することにより CW型細胞質雄性不稔イネの稔性を回復する とに成功した。尚、配列番号2に示す塩基配 から成る遺伝子(ORF11)の機能は未知である。

尚、マップベースクローニング法は 単離 しようとする遺伝子の近傍に位置するDNAマ カーを利用して、遺伝子が存在するゲノム 域を絞り込む方法であり、染色体歩行法と 呼ばれ、遺伝子の翻訳産物や機能が推定で ない場合の遺伝子単離法の一つである。こ 手法は従来から一部の動植物における遺伝 単離に利用されてきたが、計画的に実験用 離集団を作出できる植物においてより有効 活用されている。本発明おけるマップベー クローニングでは、日本晴型イネのゲノム 列(http://rgp.dna.affrc.go.jp/J/index.html)を利用し 。

 本明細書の実施例に記載のように、本発 者は、配列番号2に示す塩基配列から成る遺 伝子の発現を抑制又は減少する方法として、 CW型細胞質雄性不稔性に対する稔性回復系統 第4染色体由来のゲノム断片であり、配列番 号1に示す塩基配列における少なくとも1611~483 5番目(最初の塩基を1番目とする)の塩基配列 有する核酸を含むゲノム断片をCW型細胞質雄 性不稔性のイネに導入することを見出した。 このようなゲノム断片の例としては、配列番 号1に示す全塩基配列を挙げることが出来る

 更に、上記ゲノム断片の例として、配列 号1に示す塩基配列又はその一部からなる核 酸と相補的な塩基配列からなる核酸とストリ ンジェントな条件下でハイブリダイズする核 酸、及び、上記核酸と約80%以上、好ましくは 約95%以上である配列相同性を示す塩基配列か らなる核酸であって、CW型細胞質雄性不稔性 ネの稔性を回復させることのできるものも まれる。

 ここで、ハイブリダイゼーションは、例 ば、Molecular cloninng third.ed.(Cold Spring Harbor Lab.Press,2001)に記載の方法等、当業界で公知 方法あるいはそれに準じる方法に従って行 ことができる。また、市販のライブラリー 使用する場合、添付の使用説明書に記載の 法に従って行うことができる。

 本明細書において、「ストリンジェント 条件下」とは、例えば、温度60℃~68℃にお て、ナトリウム濃度150~900mM、好ましくは600~9 00mM、pH6~8であるような条件を挙げることがで きる。

 従って、配列番号1で示される塩基配列又 はその一部からなる核酸と相補的な塩基配列 からなる核酸とハイブリダイズできる核酸と しては、例えば、該核酸の全塩基配列との相 同性の程度が、全体の平均で、約80%以上、好 ましくは約95%以上、より好ましくは99%以上で ある塩基配列を含有する核酸等を挙げること ができる。

尚、2つの塩基配列又はアミノ酸配列にお る配列相同性を決定するために、配列は比 に最適な状態に前処理される。例えば、一 の配列にギャップを入れることにより、他 の配列とのアラインメントの最適化を行う その後、各部位におけるアミノ酸残基又は 基が比較される。第一の配列におけるある 位に、第二の配列の相当する部位と同じア ノ酸残基又は塩基が存在する場合、それら 配列は、その部位において同一である。2つ 配列における配列相同性は、配列間での同 である部位数の全部位(全アミノ酸又は全塩 基)数に対する百分率で示される。

 上記の原理に従い、2つの塩基配列におけ る配列相同性は、例えば、Karlin及びAltschulの ルゴリズム(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268、199 0及びProc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877、1993)により 決定される。このようなアルゴリズムを用い たBLASTプログラムやFASTAプログラムは、主に えられた配列に対し、高い配列相同性を示 配列をデータベース中から検索するために いられる。これらは、例えば米国National Cent er for Biotechnology Informationのインターネット のウェブサイトにおいて利用可能である。

 上記のような塩基配列の配列相同性を示 ような核酸は、上記のようにハイブリダイ ーションを指標に得ることもでき、ゲノム 基配列解析等によって得られた機能未知のD NA群又は公共データベースの中から、本技術 野の研究者か通常用いている方法により、 えば、前述のBLASTソフトウェアを用いた検 により発見することも容易である。さらに 本発明遺伝子は種々の公知の変異導入方法 よって得ることもできる。

CW型細胞質雄性不稔性のイネにおいて、配 番号2に示す塩基配列から成る遺伝子の発現 を抑制又は減少する方法としては、その他、 当業者に公知の任意の手段を使用することが 出来る。例えば、アンチセンスRNA法、及び、 本明細書の実施例に記載されているように、 RNA干渉法を用いて配列番号2の遺伝子発現を 制することにより、CW型細胞質雄性不稔性の イネの稔性を回復させることが可能である。

 即ち、例えば、配列番号2に示す塩基配列 から成る遺伝子の発現を抑制又減少させるこ とができるようにRNA干渉を誘導し得る二重鎖 RNAを発現するよう適宜設計されたベクターを CW型細胞質雄性不稔性のイネに導入すること RNA干渉を誘導することが出来る。このよう ベクターとして、例えば、配列番号2に示す 塩基配列から成る遺伝子又はその3’非翻訳 域における100~500個、好ましくは、150~200個の 連続した塩基対からなる塩基配列及びその相 補配列を含み、細胞内でRNA干渉を誘導し得る 二重鎖RNAを発現するベクターを挙げることが 出来る。その一例として、本明細書の実施例 に記載された、配列番号2に示す塩基配列に ける638~815番目(最初の塩基を1番目とする)の 続した178塩基長から成る塩基配列及びその 補配列を含み、細胞内でRNA干渉を誘導し得 二重鎖RNAを発現するベクターがある。

 上記ベクターは、当業者に公知の適当な 伝子工学的な手段を用いて、上記DNAをベク ー内に連結することにより調製することが きる。該ベクターには、宿主細胞中で本発 の遺伝子を発現することのできる適当なプ モーター及びその他の各種制御配列(例えば 、エンハンサー配列、ターミネーター配列、 ポリアデニル化配列等を含むことが出来る。

 CW型細胞質雄性不稔性のイネにおいて配 番号2に示す塩基配列から成る遺伝子の発現 抑制又は減少するために使用するゲノム領 又は上記ベクターは、当業者に公知の適当 方法、例えば、アグロバクテリウム法、凍 融解法及びエレクトロポレーション法等に り、目的のイネに導入させることが出来る

 その結果、CW型細胞質雄性不稔性のイネ おいて稔性が回復する。従って、かかる稔 が回復したイネを用いて一代雑種品種を育 し、F1種子を採種することが可能となる。

 本発明は更に、被検定イネにおける配列 号1に示す塩基配列の第1812番目の塩基にお るSNP(A/T)を同定することなら成る、CW型細胞 雄性不稔性に対する稔性回復遺伝子であるR f17遺伝子または該遺伝子を含むゲノム領域の 有無の識別する方法に係るものである。

 このようなSNPの同定は当業者に公知の任 の方法で行なうことができる。例えば、塩 配列決定法、SSCP(single strand conformation polym orphism)法、対立遺伝子特異的増幅法(Allele spec ific amplification: ASA)、プライマー伸長法(primer  extension)、タクマン法、侵入法、dot-blot-SNP法 、FRIP(Fluorogenic Ribonuclease Protection)法、及び TILLING(Targeting Induced Local Lesion in Genome)法 を挙げることが出来る。

更に、本明細書の実施例に記載されている ようなCAPS(Cleaved Amplified Polymorphic Sequence)法 ある。該方法は、SNPがある位置で制限酵素 識部位が出来るようにプライマーを設計し ポリアクリルアミドゲルでPCR-RFLP分析する のである。この方法の利点は、安定な結果 得られやすく、検査をする人やサンプルの 態、DNA抽出方法などによって結果が左右さ にくいことである。更に、手法も比較的簡 でDNAシーケンサ等の高価な解析装置や技術 必要としない。

 以上の各SNP同定法に使用する、プライマ 、マーカーまたはプローブ等は、各測定原 に応じて、上記データベース及び本明細書 開示された配列番号1又は2で表されるDNA配 情報に基づき当業者が容易に設計し調製す ことが出来る。例えば、CAPS法におけるPCRで 用するプライマーの長さは、通常、数十bp 度、例えば、10~30bpの長さを有する。

例えば、プライマー、マーカーまたはプロ ーブ等として使用する各種のオリゴヌクレオ チド(オリゴDNA)は、当業者に公知の方法、例 ば、Carruthers(1982)Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 47:411-418; Adams(1983)J. Am. Chem. Soc. 105:66 1; Belousov(1997)Nucleic Acid Res. 25:3440-3444; Frenke l(1995)Free Radic. Biol. Med. 19:373-380; Blommers(1994 )Biochemistry 33:7886-7896; Narang(1979)Meth. Enzymol. 6 8:90; Brown(1979)Meth. Enzymol. 68:109; Beaucage(1981)Te tra. Lett. 22:1859; 米国特許第4,458,066号)に記載 されているような周知の化学合成技術により 、in vitroにおいて合成することもできる。又 、検出のために、当業者に公知の任意の標識 物質を結合させることが出来る。

尚、被検定イネとしては、例えば、イネの 任意の一部(例えば、種子、葉及び茎等)を挙 ることが出来る。これら試料からのDNAの抽 及び調製は、当業者に公知の方法で行うこ ができる。試料から調製されるDNAの種類に に制限はないが、ゲノムDNA及びcDNA等を挙げ ることが出来る。これらはその性質、並びに 、試料の種類・性質等に応じた当業者に公知 の適当な方法で抽出・精製することが出来る 。例えば、ゲノムDNAの場合には、CTAB法、ボ ル法、及び必要に応じて、アミラーゼ又は ロテアーゼなど処理を伴う酵素法を使用す こともできる。

更に、被検定イネから抽出したDNAの量が検 出に十分であれば、特に増幅することなく、 以後の操作に供することが出来る。通常は、 PCR(Polymerase Chain Reaction)法又はRT-PCR法、並び 、その他のICAN(Isothermal and chimeric primer-init iated amplification of nucleic acids)法、NASABA(Nuclei c acid sequence based amplification)法、TMA(Transcript ion-mediated amplification)法およびSDA(Strand Displace ment Amplification)法等の当業者に公知の任意の 伝子増幅法により適当な量に増幅した後に SNP同定を実施することもできる。

本発明は、更に、Rf17遺伝子の有無の識別 法に使用するキットに係る。SNP分析の種類 に応じて、該キットは各SNP同定法に使用す 、プライマー、マーカーまたはプローブ等 含む。更に、DNA増幅用の各種プライマーセ ト及び/又はマーカー、制限酵素、その他、 業者に公知の他の要素又は成分、例えば、 種試薬、酵素、緩衝液、並びに反応プレー (容器)等の中からその構成・目的等に応じ 、適宜、必要なものを含むことが出来る。

以下、本発明を実施例によって詳細に説明 するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例 の記載によって何ら限定して解釈されるもの ではない。なお、本明細書において使用され る用語は特に言及しない場合には、当該技術 分野において通常使用される意味で用いられ ている。

又、特に記載のない場合には、各操作は、 例えば、Sambrook and Maniatis, in Molecular Cloning -A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory P ress, New York, 1989; Molecular cloning third.ed.(Cold  Spring Harbor Lab.Press,2001); Ausubel, F. M. et al ., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley  & Sons, New York, N.Y, 1995等に記載されて る、当業者に公知の標準的な遺伝子工学及 分子生物学的技術に従い実施することが出 る。又、本明細書中に引用された文献の記 内容は本明細書の開示内容の一部を構成す ものである。

配列番号1に記載したゲノム断片 CW型CMS系統に導入することによる稔性回復
 CW型CMSに対する稔性回復系統(CWR系統)を材料 とし、Rf17のマッピングを行ったところ、第4 色体の77 kbの範囲に存在することがわかり 当該領域の塩基配列を決定した。このゲノ 領域を7個の断片に分けて、サブクローニン グし、それぞれのゲノム断片をアグロバクテ リウム法によりCW型CMS系統へ遺伝子導入して 得られた形質転換植物の種子稔性稔性を調 した。ゲノム断片No.5を導入した形質転換植 物において稔性が回復した個体が得られた( 1)。再分化系統44系統の中で4個体について稔 性が回復した。これらの4個体の種子稔性は れぞれ79.3, 23.1, 25.3, 68.1%であった。ゲノム 断片No.5の塩基配列を配列番号1に示す。

この断片には、PPR遺伝子と機能未知の遺伝 子(ORF11と名付けた)の2つの遺伝子が予測され (図1)。CMS系統と稔性回復系統で発現を比較 ると、PPR遺伝子の発現には差がなく、ORF11 はCMS系統で発現が高いが稔性回復系統で発 が低かった。ORF11の発現減少は稔性が回復し た形質転換系統の次世代についても観察され た。塩基配列をCMS系統と回復系統で比較する と、PPR遺伝子の内部に1塩基置換があり、稔 回復系統でストップコドンが生じていた(図1 )。1塩基置換の場所はORF11の5’上流域に相当 るため、この変異により稔性回復系統でORF1 1の発現が減少したと考えられる。これより 稔性回復は,機能不明の遺伝子であるORF11の 現減少であると結論した。以上の結果より 配列番号1に記載した塩基配列を有するゲノ 断片をCW型細胞質雄性不稔系統に導入する とにより、稔性を回復させることができる とが明らかとなった。

因みに、「PPR」とはpentatricopeptide repeatの で、35アミノ酸からなる保存配列の繰り返し をもつタンパク質のことで、PPRタンパク質は オルガネラのRNAに結合してRNAのプロセッシン グや安定化、翻訳の制御を行っていると考え られている。

配列番号2の遺伝子発現を抑制す ことによる稔性回復
 CW型CMSに対する稔性回復遺伝子Rf17のマッピ グを行い、77 kbの候補領域に14個の候補遺 子を見いだした。CMS系統と稔性回復系統で 型解析を行ったところ、アミノ酸変異を生 る遺伝子はPPR遺伝子(図1のPPR2遺伝子)1個のみ であり、稔性回復系統(CWR)のアリルでストッ コドンが生じていた。14個の候補遺伝子そ ぞれについて発現解析を行ったところ、CMS 統と稔性回復系統(CWR)で差が見られた遺伝子 はORF11遺伝子のみであった。ORF11遺伝子のコ ド領域、その5’及び3’非翻訳領域を含む塩 基配列を配列番号2に示す。配列番号2におけ 638 ~815番目(最初の塩基を1番目とする)に相 する塩基配列、または、配列番号1における 772 ~1505番目(最初の塩基を1番目とする)に相 する塩基配列(PPR2遺伝子に対応)を、それぞ 配列番号3及び4、並びに配列番号5及び6に示 たプライマーを用いてPCR法により増幅し、 れぞれセンスおよびアンチセンス方向でpAND Aベクターのユビキチンプロモーターの下流 連結してRNA干渉を誘導するベクターに作成 た。これらのベクターをアグロバクテリウ 法によりCW型CMS系統に遺伝子導入して花粉の 形態と種子稔性を調査した。その結果、ORF11 RNA干渉ベクターを導入した7系統においてORF 11の発現が30~77%に減少し、その中の4系統にお いて、回復系統に特徴的な花粉のデンプン分 解を示し(図2)、さらに、種子稔性が部分的に 回復し、2~3%の種子稔性を示した。他方、PPR2 RNA干渉ベクターを導入した6系統においてPPR 2の発現が27~75%に減少したが、CMS系統と同様 花粉のデンプン分解は見られず(図2)、種子 性は0%であった。
 以上の結果より、ORF11の発現抑制によりCW型 CMSの稔性を回復できることを明らかにした。

PCRを用いたRf17遺伝子型の判定
 稔性回復遺伝子Rf17を含む配列番号1に記載 た塩基配列と、公開されている日本晴の塩 配列を比較すると、配列番号1に記載した塩 配列の1812番目が稔性回復系統(CWR)ではTであ るが、稔性回復力が無い日本晴ではAである この変異を簡便に判定するため、CAPSマーカ を作成した。配列番号7及び8に示した2種類 プライマーを用いてPCRを行い、増幅断片を 限酵素MaeIII で処理してから電気泳動を行 と、稔性回復系統(CWR)は370 bpのバンドを生 るが、稔性回復力を持たない品種は276 bpと8 4 bpのバンドを生じる(図3)。
 以上より、CAPSマーカーを用いてRf17の有無 簡便に判定できることを明らかにした。な 、制限酵素はMaeIIIに限定されるものではな 、切断認識配列 GT(A)AACを持つ制限酵素が利 できる。

 本発明により、CW型雄性不稔細胞質を用 た三系法によるハイブリッド品種の育成が 能となる。