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Patent Searching and Data


Title:
FUEL ADDITIVE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/090980
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a fuel additive containing a ferrocene component composed of ferrocene and/or a ferrocene derivative, a lecithin and an organic salt component composed of an organic nitrate and/or an organic barium salt. The fuel additive can be divided into a solid component containing the ferrocene component and the lecithin, and a liquid component containing the organic salt component. The solid component is contained in an amount of 1-20% by mass, and the liquid component is contained in an amount of 80-99% by mass. The fuel additive is used in such an amount that, in a fuel, the ferrocene derivative has a concentration of 1-50 ppm, the lecithin has a concentration of 0.01-400 ppm, and the organic nitrate has a concentration of 1-4200 ppm and/or the organic barium salt has a concentration of 0.15-630 ppm in terms of Ba.

Inventors:
KURODA TAICHI (JP)
MATSUBAYASHI HISASHI (JP)
ARAKAWA ERI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/050427
Publication Date:
July 23, 2009
Filing Date:
January 15, 2009
Export Citation:
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Assignee:
TAIHOKOHZAI CO LTD (JP)
KURODA TAICHI (JP)
MATSUBAYASHI HISASHI (JP)
ARAKAWA ERI (JP)
International Classes:
C10L1/30; C10L1/26; C10L10/02
Foreign References:
JP4131748B12008-08-13
JP2003518549A2003-06-10
JPH10219262A1998-08-18
Attorney, Agent or Firm:
MATOBA, Motonori (MR Building 3F30-17, Hongo 1-chom, Bunkyo-ku Tokyo 33, JP)
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Claims:
 フェロセン及び/又はフェロセン誘導体から成るフェロセン系成分と、レシチンと、有機硝酸塩及び/又は有機バリウム塩から成る有機塩系成分と、を含有することを特徴とする燃料添加剤。
 上記フェロセン系成分とレシチンを含む固体状成分と、上記有機塩系成分を含む液体状成分とに区分され、
 上記固体状成分を1~20質量%、上記液体状成分を80~99質量%の割合で含有することを特徴とする請求項1に記載の燃料添加剤。
 上記固体状成分が、78~99質量%の上記フェロセン系成分と、0.9~20質量%のレシチンと、0.1~2質量%の水分から成り、
 上記液体状成分が、20~60質量%の有機硝酸塩及び/又は10~30質量%のBa濃度が30質量%である有機バリウム塩と、10~90質量%の有機溶媒から成ることを特徴とする請求項2に記載の燃料添加剤。
 フェロセン及び/又はフェロセン誘導体から成るフェロセン系成分と、レシチンと、有機硝酸塩及び/又は有機バリウム塩から成る有機塩系成分と、有機溶媒を含有する液体状燃料添加剤であって、
 上記フェロセン系成分を0.5~5質量%、上記レシチンを1~40質量%、上記有機塩系成分を25~70質量%、上記有機溶媒を残部質量%の割合で含有することを特徴とする液体状燃料添加剤。
 燃料中において、上記フェロセン系成分の濃度が1~50ppm、上記レシチンの濃度が0.01~400ppm、上記有機硝酸塩の濃度が1~4200ppm及び/又は上記Ba濃度が30質量%である有機バリウム塩の濃度が0.5~2100ppmとなるように使用されることを特徴する請求項1~4のいずれかの項に記載の燃料添加剤。
Description:
燃料添加剤

 本発明は、フェロセン系成分を含有する 料添加剤に係り、更に詳細には、レシチン 所定の有機塩系成分を更に含み、優れた燃 促進、煤塵減少、NOx低減、及び黒煙・白煙 減などを実現し得る燃料添加剤に関する。

 フェロセンとその誘導体は、各種液体燃料 の添加剤として従来から使用されている。 えば、特許文献1には、フェロセン及びその 誘導体と、それを溶解する液体有機キャリヤ ーである芳香族系溶剤、脂肪族系溶剤及び/ は石油系溶剤とから成る燃料添加剤組成物 存在下における液体炭化水素の改良燃焼方 が記載されている。
 また、特許文献2には、ディーゼルエンジン のコンディショニング方法として、燃料に20~ 30ppmのフェロセンを添加することで、燃焼室 の炭素含有付着物が除去され、運行距離当 りの燃料消費が5%程減少することが示され いる。

 更に、特許文献3には、重質残留油から成る 内燃機関用燃料油に対する添加剤として、フ ェロセンとその誘導体とを他の添加物質を配 合することなく、直接燃料に1~100ppm添加して ンジンとその付属機器の炭素質付着物を減 させる方法が提案されている。

特開平2-132188号公報

米国特許第4389220号明細書

特許第3599337号明細書

 しかし、これらの発明に使用されているフ ロセン及びフェロセン誘導体は、芳香族系 剤、脂肪族系溶剤及び石油系溶剤への溶解 が非常に低いという欠点を有している。
 フェロセンは一般に固体状であり、特に固 状フェロセンを溶解させるには、固体の大 さにも依存するが、かなりの攪拌力と時間 必要とする。僅かな添加量でも簡単には溶 ず、燃料に添加する前に予め溶解しなけれ 内燃機関にトラブルが発生するため、攪拌 付き溶解タンクで溶剤に溶かしてから燃料 添加しているのが現状である。

 本発明は、このような従来技術の有する 題に鑑みてなされたものであり、その目的 するところは、フェロセン及び/又はフェロ セン誘導体が添加剤や燃料中で容易に安定溶 解することができ、燃焼促進効果を有意に発 揮し得る高機能化燃料添加剤を提供すること にある。

 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭 検討を重ねた結果、フェロセン及び/又はフ ェロセン誘導体をレシチンと併用するととも に、有機硝酸塩や有機バリウム塩などを加え ることにより、安定溶解性と優れた燃焼促進 効果が得られることを見出し、本発明を完成 するに至った。

 即ち、本発明の燃料添加剤は、フェロセ 及び/又はフェロセン誘導体から成るフェロ セン系成分と、レシチンと、有機硝酸塩及び /又は有機バリウム塩から成る有機塩系成分 、を含有することを特徴とする。

 また、本発明の燃料添加剤の好適形態は、 記フェロセン系成分とレシチンを含む固体 成分と、上記有機塩系成分を含む液体状成 とに区分され、
 上記固体状成分を
 1~20質量%、上記液体状成分を80~99質量%の割 で含有することを特徴とする。

 更に、本発明の燃料添加剤の他の好適形態 、上記固体状成分が、78~99質量%の上記フェ セン系成分と、0.9~20質量%のレシチンと、0.1 ~2質量%の水分から成り、
 上記液体状成分が、20~60質量%の有機硝酸塩 び/又は10~30質量%のBa濃度が30質量%である有 バリウム塩と、10~90質量%の有機溶媒から成 ことを特徴とする。

 また、本発明の他の燃料添加剤は、フェロ ン及び/又はフェロセン誘導体から成るフェ ロセン系成分と、レシチンと、有機硝酸塩及 び/又は有機バリウム塩から成る有機塩系成 と、有機溶媒を含有する液体状燃料添加剤 あって、
 上記フェロセン系成分を0.5~5質量%、上記レ チンを1~40質量%、上記有機塩系成分を25~70質 量%、上記有機溶媒を残部質量%の割合で含有 ることを特徴とする。

 更にまた、本発明の燃料添加剤の更に他 好適形態は、燃料中において、上記フェロ ン系成分の濃度が1~50ppm、上記レシチンの濃 度が0.01~400ppm、上記有機硝酸塩の濃度が1~4200p pm及び/又は上記Ba濃度が30質量%である有機バ ウム塩の濃度が0.5~2100ppmとなるように使用 れることを特徴する。

発明の実施するための最良の形態

 以下、本発明の燃料添加剤につき詳細に 明する。なお、本明細書において、「%」は 特記しない限り質量百分率を表すものとする 。

 上述の如く、本発明の燃料添加剤は、フェ セン及び/又はフェロセン誘導体から成るフ ェロセン系成分と、レシチンと、有機硝酸塩 及び/又は有機バリウム塩から成る有機塩系 分と、を含有する。
 また、通常は、フェロセン系成分とレシチ は固体状の形態をとって固体状成分の構成 素となり、有機塩系成分は液体状の形態を って液体状成分の構成要素となる。

[燃料添加剤の構成成分]
 以下、本発明の燃料添加剤の構成成分につ て説明する。
(1)フェロセン及びフェロセン誘導体
 フェロセンは、正式にはビス(シクロペンタ ジエニル)鉄といい、またジシクロペンタジ ニル鉄とも称される。本発明で用いるフェ セン誘導体は、ジシクロペンタジエニル環 アルキル基等の置換基を有する構造の化合 であり、例えばエチルフェロセン、ブチル ェロセン、アセチルフェロセン、2,2-ビスー チルフェロセニルプロパン等を挙げること できる。

 フェロセンとその誘導体(以下、「フェロ セン類」ともいう。)の製造方法は、例えば 米国特許第2650756号明細書、米国特許第2769828 号明細書、米国特許第2834796号明細書、米国 許第2898360号明細書、米国特許第3035968号明細 書、米国特許第3238158号明細書、米国特許第34 37634号明細書等に開示されている。

 本発明において、フェロセン系成分は、 粉末状、粗粒子状、ペレット状等の固体で っても、液体であってもよく、本発明の燃 添加剤の形態によって適宜に選択すること できる。それについては後に詳述する。

 フェロセン系成分を含有することで、本発 の燃料添加剤は、燃焼促進作用、煤塵減少 用、NOx低減作用等を発揮することができる
 特に、内燃機関であるディーゼルエンジン は、この燃焼促進作用により、弁、ピスト リング及び燃焼室への付着物の形成を抑制 るクリーニング効果が見られる。この付着 は、エンジンの出力を低下させ、また付着 た部品の磨耗を増大させるので、付着物の 成を抑制することは、ディーゼルエンジン 安定運転を実現するものである。
 更に、燃焼促進、煤塵減少、NOx低減等の燃 改質による燃焼時の過剰な空気の抑制によ 、数%のレベルでの燃料消費量の削減が実現 できる。

(2)レシチン
 レシチンは、グリセロリン脂質及びスフィ ゴリン脂質を主成分とする動植物リン脂質 ある。
 各種の植物油、例えば大豆油、菜種油、米 か油、パーム油、ヒマワリ油、ヤシ油、綿 油、トウモロコシ油、落花生油、アマニ油 サフラワー油及びオリーブ油等の精製工程 得られる。通常、植物油を1~50%含んでおり この植物油の含有量や、植物油中の飽和酸 不飽和酸との比率に応じて、常温で液体と 体のものが存在する。また、近年は、油分 出・真空乾燥することによって、液体レシ ンから粉末レシチンが製造されている。

 本発明において、レシチンは、通常、微 末状等の固体であるが、液体であってもよ 、意図する燃料添加剤の形態に応じて適宜 選択することができる。これについては後 詳述する。

(3)有機硝酸塩
 有機硝酸塩としては、硝酸2-エチルヘキシ 、硝酸アミル、硝酸イソアミル、硝酸ブチ 、硝酸イソブチル、硝酸第一ヘキシル、硝 第二ヘキシル、硝酸シクロヘキシル、硝酸 クチル、硝酸ヘプチル、硝酸-2-エトキシエ ル、硝酸イソプロピル、及び2,2-ジニトロプ パン等を挙げることができ、これらは一般 にセタン価向上剤として使用される原料で る。
 合成方法はアルコールと硝酸とのエステル である。2,2-ジニトロプロパンは一般的には 2-ニトロプロパンの硝酸による硝化で製造さ る。

(4)有機バリウム塩
 有機バリウム塩としては、石油スルホン酸 リウム、ドデシルベンゼンスルホン酸バリ ム、並びに脂肪酸バリウム塩としてのアマ 油脂肪酸バリウム、ヤシ油脂肪酸バリウム オレイン酸バリウム及びナフテン酸バリウ 等がある。
 なお、有機バリウム塩におけるBa濃度は適 変更できるが、燃料添加剤としては安価で 濃度のバリウム塩が望ましいので、過塩基 バリウム(高塩基性バリウムとも称される。) が多く使用されている。
 本発明では、Ba濃度が30%の有機バリウム塩 好ましく使用できるが、通常、過塩基性バ ウムは高粘度状態であるため、一部溶剤を ませて流動性を維持している。

 過塩基性バリウムの一般的な製造方法は、 下の通りである。
 まず、油溶性スルホン酸、油溶性カルボン 及びこれらの金属塩及びアミノ塩等の油溶 分散剤と、鉱物潤滑油や合成潤滑油等の非 発性溶剤と、石油ナフサ、ヘキサン、ヘプ ン及びオクタン等のプロセス溶媒と、水と 混合物を調製する。
 次いで、この混合物に合計必要量の約55~90% 塩基性バリウム化合物のアルコール溶液(脂 肪族1価アルコール、3ないし4の炭素原子を有 するエーテルアルコール等)を加える。そし 、加温状態(75~95℃)を維持しながら、得られ 混合物に炭酸ガス(CO 2 )を通じる。この炭酸化された混合物に、上 必要量の残量の塩基性バリウム化合物のア コール溶液を加えて揮発性物質を除去する そして、炭酸化して過塩基性バリウムを得 。

[燃料添加剤の形態]
 本発明の燃料添加剤は、固体状ないしは液 状の形態をとることができるが、具体的に 、固体と液体の混合系、及び液体系の形態 とることができる。

(1)固体と液体の混合系
(i)固体状成分
 上述のように、本発明において、固体状成 はフェロセン系成分とレシチンを含むが、7 8~99%のフェロセン系成分と、0.9~20%のレシチン と、0.1~2%の水分を含むことが好ましい。
 レシチンの含有量が0.9%未満では、フェロセ ン系成分が燃料に溶解し難いことがあり、レ シチンを20%を超えて含有させても、フェロセ ン系成分の溶解性を向上する機能が飽和する 。

 フェロセン系成分は、常温において固体の 態であることが好ましく、例えば、微粉末 、粗粒子状及びペレット状などの形態を挙 ることができる。この場合、その粒径は0.1m m~15mmであることが好ましく、より好ましくは 0.5mm~5mmである。
 フェロセンの粒径が0.5mm未満では、飛散の めに作業性に劣ることがあり、15mmを超える 、解膠性が低下して溶解性が下がる可能性 ある。

 一方、レシチンも、常温において固体状、 体的には粉末状の形態であることが好まし 、粒子径が1mm以下の微粉末状の形態をとる とが更に好ましい。このような微粉末状形 であれば、フェロセン系成分との混合がよ 均一になり、造粒に便利である。
 また、かかる粉末状レシチンは吸湿性が高 、少量の水分を混合することで造粒に適す 粘着性を生じるが、水分が0.1%未満では、十 分な粘着性が生じない可能性があり、2%を超 ると、水分が過剰となり粉末状フェロセン 成分と粉末状レシチンが塊状化するおそれ ある。

(ii)液体状成分
 上述のように、本発明において、液体状成 は有機塩系成分、即ち有機硝酸塩及び有機 リウム塩の少なくとも一方を含むが、有機 酸塩を20~60%及び/又は有機バリウム塩(Ba濃度 30%もの)を10~30%、有機溶媒を10~90%の割合で含 することが好ましい。
 有機硝酸塩を単独使用する場合、その含有 が20%未満では、燃焼促進、煤塵減少及び白 減少効果の低下を生じることがあり、60%を えると、その効果は飽和に達するので、経 的にも好ましくない。また、有機バリウム (Ba濃度30%もの)を単独使用する場合、その含 有量が10%未満では、燃焼促進、煤塵減少、NOx 減少及び黒煙減少効果の低下を生じることが あり、30%を超えると、その効果も有機硝酸塩 と同様に頭打ちになる。
 有機溶媒の含有量が10%未満では、高粘度に って燃料添加剤としてのハンドリング性が 下したり、高濃度によって燃料油に注入す 場合の注入ポンプの制御が煩わしくなるこ があり、90%を超えると、有効成分量が低過 て本来の目的である燃焼促進、煤塵減少、 び黒煙・白煙低減などの効果が低減するこ がある。

 なお、有機溶媒としては、トルエンやアル ールなどの各種極性溶媒、植物油及び鉱物 を使用できるが、取扱い性やコストの観点 らは、鉱物油を用いることが好ましい。
 この場合、鉱物油としては、炭化水素系の 油、軽油及び灯油等を例示できる。例えば 船舶用の大型ディーゼルエンジン等の燃料 して用いられるC重油に対しては、A重油、B 油、軽油、灯油等を好ましく用いることが き、更に好ましくはA重油を用いることがで きる。
 また、有機バリウム塩としては、通常、炭 根と有機酸と有機溶媒を含むものが市販さ ており、本発明では、Ba濃度が30%のものを 適に使用することができるが、このような 機バリウム塩としては、上記液体状成分に いて、BaがBa換算で3~9%となるように含まれて いれば十分であり、必ずしもBa濃度30%である 機バリウム塩を使用する必要はない。

 本発明の燃料添加剤において、上述の固体 成分と液体状成分とは、固体状成分を1~20% 液体状成分を80~99%の割合で含まれることが ましい。
 固体状成分が1%未満では、フェロセンの持 燃焼促進効果が得られないことがあり、20% 超えると、それ以上の効果が期待できず、 た、高価になるので好ましくない。また、 体状成分が80%未満では、固体状成分との相 効果が得られ難いことがあり、99%を超える 、液体状成分の機能に近くなり且つ固体状 分との相乗効果が得られ難いことがある。

 なお、本発明の燃料添加剤において、上述 固体状成分と液体状成分とは常時混合状態 共存させておく必要はなく、使用時におい 両成分を混合してもよい。
 例えば、本発明の燃料添加剤を船舶の内燃 関やプラントのボイラーなどに使用する場 、燃料又は鉱物油入りサービスタンクに、 記固体状成分と上記液体状成分(この場合、 鉱物油を省略することも可能である)を投入 溶解させて使用することができる。また、 料又は鉱物油入りサービスタンクに固体状 分を溶解させ、その配管ラインに上記液体 成分(この場合、鉱物油を省略することも可 である)をポンプ注入して使用することも可 能である。

(2)液体系(液体状燃料添加剤)
 上述の固体状成分と液体状成分は、現場操 条件などに応じてその混合割合を現場で任 に変更できるのに対し、この液体状燃料添 剤(液体系)は、有効成分割合を最も代表的 割合で混合溶解した一液タイプであり、し も安定な分散状態ないしは溶解状態を維持 、運搬や取扱い性に優れるものである。
 詳細には、フェロセン及び/又はフェロセン 誘導体から成るフェロセン系成分と、レシチ ンと、有機硝酸塩及び/又は有機バリウム塩 ら成る有機塩系成分と、有機溶媒を含み液 状をなす燃料添加剤とすることができる。
 この場合、フェロセン系成分の含有量は0.5~ 5%、レシチンの含有量は1~40%、有機塩系成分 含有量は25~70%、鉱物油などの有機溶媒の含 量は残部%とすればよい。レシチンが1%未満 は、フェロセン系成分が有機溶媒、特に鉱 油に溶解し難いことがあり、レシチンを40% で含有させても、鉱物油に対するフェロセ 系成分の溶解性向上効果が飽和する。

 なお、この液体状燃料添加剤において、 ェロセン系成分、レシチン、有機溶媒及び 物油の材質や性状は、上述の固体と液体と 混合系の場合と同様であるので、その説明 省略する。

[構成成分の効能]
 本発明の燃料添加剤における各種構成成分 効能の詳細は必ずしも明らかではないが、 時点では、以下のようなものであると思わ る。

(1)レシチンの効能
 本発明において、レシチンは主に次の効能 有する。
(i)燃料に対するフェロセン類(フェロセン系 分)の溶解性及び溶解度の向上。
(ii)燃料油中のスラッジの分散。
(iii)粒子状(固体状)成分の製造における造粒 のバインダー機能。
(iv)粒子状(固体状)成分の燃料又は溶媒への投 入時における解膠機能。
(v)液体状燃料添加剤におけるフェロセン類の 鉱物油に対する溶解性の向上。
 以下、上記の各効能について説明する。

(i)燃料に対するフェロセン類の溶解性及び溶 解度の向上
 上述のようにフェロセン類は、各種燃料に する溶解性及び溶解度が低いという欠点を している。
 ここで「燃料」としては、ディーゼルエン ン、油燃焼炉及びボイラー装置等の燃料油 して用いられるA重油、灯油や軽油等の軽質 油、重質油、重質残渣油、潤滑油、廃油及び これらの混合油、更にこれらのエマルション 燃料、また石炭等の固体燃料等を挙げること ができるが、形状が気体以外の燃料であれば これらに限定されるものではない。

 例えば、フェロセン単独の場合、ベンゼン トルエン及びキシレン以外の芳香族系溶剤 、脂肪族系溶剤等の石油系溶剤への溶解度 非常に低く、20℃において最大3%濃度までし か溶解しない。また、長期的に安定な溶液の フェロセン濃度は、せいぜい2.5%程度である 重油等の燃料にフェロセンを溶解した場合 同様である。
 しかし、所定量のレシチンを添加すること よって、フェロセンを5%濃度まで溶解する とが可能となり、その溶液の安定性は幅広 温度域で良好となる。
 A重油に対するフェロセン最大溶解度とレシ チン添加量との関係を表1に示す。

 このように溶解促進作用を有するレシチ の添加により、各種燃焼設備の燃料又は燃 添加剤自体にフェロセン類を容易に溶解さ て安定な溶液を得ることができるので、燃 機関にフェロセン類を均一な微粒子状で噴 することが可能となる。その結果、フェロ ン類の持つ効能を十分に発揮させることが きるようになる。

 なお、レシチンは親油性部分と親水性部分 有するため、界面活性剤として働くことが られているが、本発明では、レシチンの親 性部分の働きにより溶解性等が向上するも と考えられる。即ち、燃料にフェロセン類 レシチンを溶解すると、フェロセン類の表 にレシチンの親油性部分の一部が速やかに 着し、それ以外の親油性部分がフェロセン の表面で親油性を増強することによって、 料油への溶解性及び溶解度の向上に寄与す と考えられる。
 これらの効能は、親油性の強い非イオン系 面活性剤などの他の界面活性剤には見られ 、レシチン固有の特異的なものである。

(ii)燃料油中のスラッジの分散機能。
 この機能は、上述のフェロセン類の溶解促 機能とは異なり、レシチン自体が燃料添加 として働き、ディーゼルエンジンを始めと る燃焼設備の長期安定運転に寄与するもの ある。

 スラッジは、特に重質系の燃料油中に存 する不溶物であり、沈降しやすいためにス レーナーの閉塞トラブルや燃焼不良の原因 なるものである。その発生は、原油の精製 程における熱処理や、接触分解、熱分解等 よって、釜残油中に残存する炭化水素が、 化、重合、縮合されて水素分の少ない高分 の炭化水素に変化することに起因する。

 上述の変化は、炭化水素→マルテン→ア ファルテン→カーベン→カーボイド→カー ンの順に起こり、これらの高分子は、最初 巨大な分子のコロイドとして重油中に存在 る。該コロイドは、カーベンやカーボイド のC/H比の極めて高い炭化水素を核としてそ 周りをいくらかのアスファルテンが囲み、 らにその周りを順次C/H比の低い高分子炭化 素が覆うものと考えられる。

 このようなコロイド粒子として重油中に 在するアスファルト性物質は、安定したコ イド状で分散して浮遊していれば、沈殿す ことはなく、ストレ-ナの閉塞や燃焼不良等 の問題を起こすことはない。しかし、このコ ロイド粒子は極性を持ち、吸着性がある。そ のため、加熱、異種の油等との混合、長時間 の貯蔵などにより平衡状態が崩れると、コロ イド粒子同士が次々に結合や会合を行い、大 きな粒子の集合体(ミセルコロイド)となり、 殿してスラッジが形成される。

 具体的には、上記コロイド粒子を有する 油に軽質分が加えられた場合、コロイド表 部の高分子炭化水素やマルテンは溶解され が、アスファルテンやカーボイド等は不飽 であり、極性を有するために、互いに結合 て巨大なアスファルテン粒子が析出し、ス ッジが形成される。また、熱が加えられた 合、コロイド表層部は溶解し、更に温度上 により粘度が低下することで粒子運動が盛 になり、アスファルテン同士が衝突する機 が多くなることで結合・会合してスラッジ 形成される。

 レシチンは、これらのカーボンやアスフ ルテン質等のスラッジの結合や会合内に浸 及び吸着し、界面活性剤として働くことに って、その分散力でスラッジを細分化する 能を有する。また、この機能により異種燃 の混合や加熱によるコロイド粒子の結合等 防ぐことでスラッジの析出沈殿を防止する 果をも有する。

(iii)粒子状成分の製造における造粒時のバイ ダー機能。
 上述のように、粒子状成分(固体状成分)を 粒する際にレシチンは少量の水分と混合さ ることで造粒に適する粘着性を生じ、バイ ダーとしての役割を担う。

(iv)粒子状成分の解膠作用。
 粒子状成分に含まれるレシチンは、燃料添 剤を燃料に投入した際に粒子を砕けやすく る解膠作用を有する。砕かれた添加剤は、 にレシチンの溶解性向上作用により非常に 解しやすくなる。

(v)液体状燃料添加剤におけるフェロセン類の 鉱物油に対する溶解性の向上。
 フェロセン類は、鉱物油に対する溶解度が 常に低く、約2.5%の濃度までしか溶解しない 。しかし、所定量のレシチンを添加すること によって、フェロセンを5%の濃度まで溶解す ことが可能となり、その溶液の安定性は幅 い温度域で良好となる。

(2)有機硝酸塩の効能
 有機硝酸塩はセタン価向上剤として使用さ るが、その効能には、デイ―ゼルエンジン 燃焼において着火温度を下げる効果、着火 れ(燃料の噴霧から着火までの時間)を改善 未燃分の減少させる効果等がある。

 硝酸アルキル(硝酸第一ヘキシル)を例にと と、以下のように、硝酸アルキル(硝酸第一 キシル)は、まず前炎段階で二酸化窒素(NO 2 )とアルコキシ基(RO)に分解(自己分解)する。
  RONO 2 →RO・+ NO 2
 二酸化窒素(NO 2 )は、燃料油分子中の水素を奪って連鎖反応 開始させるアルキル基(R)と亜硝酸(HNO 2 )を生成する。
  RH+NO 2 →R・+HNO 2
 そして、亜硝酸(HNO 2 )は酸素と反応してHO 2 基を生じ、二酸化窒素(NO 2 )を反応系内に戻す。
  HNO 2 +O 2 →HO 2 ・+NO 2
 亜硝酸はまた、高温にて分解して非常に反 性の高いOH基を生成する。
    HNO 2 →OH・+NO
 生成したアルキル基(R)及びアルコキシ基(RO) は容易に次の反応に進み、酸化生成物や遊離 基を生成する。
 過酸化物がセタン価向上剤として上述のデ ―ゼルエンジンの燃焼において着火温度を げる効果、着火遅れ(燃料の噴霧から着火ま での時間)を改善し未燃分の減少させる作機 等があるのは、アルコキシ基が迅速に生成 れるからである。
 硝酸アルキルの炭化水素の部分が重要な役 を演ずるのは、アルコキシ基の分解の容易 を別にしても、分子中のNO 2 の部分と炭化水素の部分の間にかなりの相互 反応が起こっているためと推定される(石油 品添加剤 桜井俊雄編著67~69頁参照)。

(3)有機バリウム塩の効能
 有機バリウム塩は燃焼促進剤として使用さ ている。その効能は以下の通りである。

(i)環状化阻止機能
 有機バリウム塩のバリウムは非常に電子密 が高く、炭素、水素が環状化する上で立体 害となるため、未燃カーボンの基本体がベ ゼンを形成するのを阻止する。

(ii)酸化バリウム(BaO)の酸素逓伝体(Oxygen Carrie r)としての機能
 有機バリウム塩は燃焼中に際しBaO 2 となり、下記の反応により活性酸素を放ち、 この酸素が炭素と水素の完全燃焼に役立つ。 即ち、酸化触媒作用を持つ金属化合物、特に 、有機バリウム塩を添加することにより、煤 塵の主体をなす未燃カーボンの量を大幅に減 少させることができる。また、合わせてNOxの 低減の効果を有する。
  火炎外層域での酸化触媒作用(酸素の逓伝 用)の反応式
  C+BaO+O 2 →BaO 2 +1/2O 2 +C→ BaO+CO 2
 また、有機金属塩、特に有機バリウム塩は 非常に活性に富み、燃料油のスラッジに対 て優れた分散効果を有し、ストレージタン やサービスタンク内でのスラッジの沈降を 止し、燃料配管、加熱器及びストレーナー でのスラッジの付着、閉塞を防止する。

[燃料添加剤の用量]
(フェロセン系成分、レシチン、有機硝酸塩 び有機バリウム塩の燃料中での濃度)
 本発明の燃料添加剤は、船舶や発電設備等 使用されるディーゼルエンジン、油燃焼炉 びボイラー装置等に用いる各種燃料におい 、フェロセン系成分の濃度が1~50ppm、レシチ ンの濃度が0.01~400ppm、有機硝酸塩1~4200ppm及び/ 又は有機バリウム塩はBa換算で0.15~630ppm(Ba濃 30%の有機バリウム塩については0.5~2100ppm)と るように添加して使用することが好ましい

 更に詳しくは、通常は、フェロセン系成分 濃度について、油燃焼炉及びボイラー装置 は1~10ppm、ディーゼルエンジンでは10~50ppmと るように連続注入して用いることが好まし 。
 但し、燃焼機関の状態によっては、目的と る燃焼促進作用、煤塵減少作用、NOx低減、 煙・白煙低減作用等を大幅に改善させよう する場合に、この連続注入量の数~数十倍量 を一時的に短時間注入することができる。

 上記レシチンの濃度は、燃料油及び燃料 加剤自体に対し、フェロセン系成分を容易 安定的に溶解させるのに有利な濃度であり 特に重質系の燃料油では、更にスラッジを 散させるのに有利な濃度で、燃焼設備の長 安定運転に寄与することができる。

 上述のように、有機塩系成分については、 舶や発電設備等で使用されるディーゼルエ ジン油燃焼炉及びボイラー装置等に用いる 種燃料において、有機硝酸塩が1~4200ppm若し は有機バリウム塩(Ba濃度30%)が0.5~2100ppm、又 有機硝酸塩が1~4200ppmで且つ有機バリウム塩( Ba濃度30%)が0.5~2100ppmとなるように添加して使 することが好ましい。
 有機塩系成分の一方のみを使用する場合、 機硝酸塩の添加量が1ppm未満か又は有機バリ ウム塩の添加量(Ba濃度30%)が0.5ppm未満では、 焼促進効果が殆ど得られず、有機硝酸塩を42 00ppm超か又は有機バリウム塩(Ba濃度30%)を2100pp m超添加しても燃焼促進効果は頭打ちとなる

 有機塩系成分のより好ましい添加量は、有 硝酸塩が200~2000ppm及び/又は有機バリウム塩( Ba濃度30%)が100~1000ppmである。
 特に、ディーゼルエンジン起動時に頻繁に られる煤塵に起因する黒煙対策には、有機 リウム塩1000ppm以上が有効であり、また、潤 滑油に起因すると思われる白煙対策には、有 機硝酸塩2000ppm以上が有効である。
 これらの対策には超高添加量を必要とする め、30分から1時間程度の一時的な対応策が 果的であり、有機塩系成分を燃料等で溶解 せずに配管ラインにポンプで直接注入して タンクへのフェロセン・レシチン系の燃料 加剤の投入と併用する。

 有機硝酸塩はセタン価向上剤として使用さ るが、船舶や発電設備等で使用されるディ ゼルエンジン油燃焼炉及びボイラー装置等 用いる各種燃料において、その効能は、デ ―ゼルエンジンの燃焼において着火温度を げる効果、着火遅れ(燃料の噴霧から着火ま での時間)を改善し未燃分の減少させる効果 どとして現れる。
 一方、有機バリウム塩は燃焼中に際しBaO 2 となり、上述の反応により活性酸素を放出し 、この酸素が炭素と水素の完全燃焼に役立つ 。即ち、酸化触媒(燃焼促進)機能を発揮して 煤塵の主体をなす未燃カーボンの量を大幅 減少させることができる。また、燃料油中 スラッジ分散効果をも併有する。

 本発明は、スラッジ分散効果を有するレシ ンを用いることにより、フェロセン類の燃 油及び燃料添加剤中への安定な高濃度溶解 実現するものであり、フェロセン類自体が する燃焼促進効果を十分に発揮させること できる。
 また、有機硝酸塩及び/又は有機バリウム塩 を添加することにより、有機硝酸塩によるデ イ―ゼルエンジンの燃焼において着火温度を 下げる効果、着火遅れ(燃料の噴霧から着火 での時間)を改善して未燃分の減少させる効 、つまり燃焼初期の未燃分を減少する効果 得ることができる。更に、有機バリウム塩 酸化触媒として機能し、煤塵の主体をなす 燃カーボンの減少及びスラッジ分散効果を 揮する。

 このように、本発明においては、フェロ ン及び/又はフェロセン誘導体から成るフェ ロセン系成分と、レシチンと、有機硝酸塩及 び/又は有機バリウム塩から成る有機塩成分 を併用することによる相乗効果が得られ、 成分の持つ効能以上の燃焼促進、煤塵減少 びNOx低減等の利点が強化されたものと推察 る。

 船舶等での長期連続運転に際してはコスト も考慮する必要があり、一般にフェロセン 成分と有機塩系成分の経済コストが比較的 いため、各種燃料に対してフェロセン系成 の添加量が低い場合は有機塩系燃焼促進剤 添加量を高く、逆にフェロセン系成分の添 量が高い場合は有機塩系燃焼促進剤の添加 を低い状態で使用するのがより好ましい。
 例えば、フェロセン系成分が1~10ppmの低添加 量の場合、有機硝酸塩を200ppm以上及び/又は 機バリウム塩(Ba濃度30%)を100ppm以上で使用す のが経済的である。
 また、フェロセン類が25~50ppm以上の場合、 機硝酸塩を1~200ppm及び/又は有機バリウム塩(B a濃度30%)を0.5~100ppmで使用するのが経済的であ る。
 有機塩系成分の添加量が1000ppm以上の超高添 加量は、上述の一時的な対策時に採用される 。即ち、ディーゼルエンジン起動時によく観 られる煤塵に起因する黒煙対策には有機バリ ウム塩(Ba濃度30%)1000ppm以上が有効であり、ま 潤滑油に起因すると思われる白煙対策には 機硝酸塩2000ppm以上が有効である。

 以下、本発明を実施例及び比較例により更 詳細に説明するが、本発明はこれら実施例 限定されるものではない。
 なお、各種特性の評価は下記の要領で行っ 。

[フェロセンの溶解性試験による評価]
(参考例1~4(固体状成分)及び比較例1)
 燃料油としてのA重油(硫黄分=0.09%、粘度=2.8c st(50℃))200gに対し、20℃、60rpmで攪拌しながら フェロセンを添加し、フェロセン濃度が3%に るまでの溶解速度を秒数で評価した。
 次いで、更にフェロセンを添加して安定な 解液を最大濃度で作製し、室温に静置して1 週間後の状態で安定性を評価した。各例の配 合とともに、得られた結果を表2に示す。

 表2より、参考例1~4の固体状成分は、比較例 1と比較して、フェロセン濃度が3%に至るまで の溶解速度が極めて速いことが分かる。
 また、安定な溶解液の濃度について、比較 1が3%で不溶物が多い状態であるのに対し、 考例1~4では3.5~5.0%の濃度が可能となった。 に、参考例1~4の1週間後の安定性評価は○~◎ の結果となった。このように本発明の燃料添 加剤に用いる固体状成分は、フェロセンの溶 解速度、溶解濃度及び安定性評価の全ての面 において優れていることが分かる。

(実施例1~8及び比較例2)
 表3に示すように、実施例1~4については、有 機塩系成分を含む液体状成分を25~60%と、参考 例1又は参考例4の固体状成分を0.65~5%と、A重 を39~72%とを混合溶解させて、試料を調製し 。
 また、実施例5~8(液体状燃料添加剤)につい は、A重油を28.5~66%と、有機塩系成分を含む 体状成分を25~70%と、液状レシチンを1~20%混合 し、更にフェロセンを0.5~5%加え、試料を調製 した。
 20℃、60rpmで攪拌しながら、A重油にフェロ ンが完全に溶解するまでの溶解速度を秒数 評価した。得られた溶解液を室温にて静置 て1週間後の状態で安定性を評価した。試験 200gスケールで行った。得られた結果を表3 併記する。

 表3より、本発明に属する実施例1~8は、比 較例2と比較して、燃料添加剤の調製時にお て、A重油に対し所定量のフェロセンが完全 解に至るまでの溶解速度が極めて速いこと 分かる。また、1週間後の安定性評価は○~ の結果となった。このように本発明の燃料 加剤は、フェロセンの溶解速度、溶解濃度 び安定性評価の全ての面において極めて優 ていることが認められた。

[スラッジ分散効果]
 表2及び表3に記載の参考例、実施例及び比 例の試料を用いてスラッジ分散試験を行っ 。
 試験は日本船主協会法に準じて行った。試 結果を表4に示す。

 操作手順
(1)C重油0.1gを試験管に採り、これにノルマル プタン20mlを加えた。これに実施例1~8及び比 較例2の液体燃料添加剤を0.02ml(1/1000)添加した 。固体状成分の参考例1~4及び比較例1は0.02g添 加した。
(2)試験管に栓をして完全に混ざるまで20回以 強く振盪した。
(3)これを室温で静置し、経過時間毎の分散状 態を、次の基準によって判定した。

 判定基準
 A…完全に分散し沈殿のないもの。
 B…分散はしているが沈殿のあるもの。
   沈殿量の少ないものから順に、B1、B2、B3 とする。
 C…分散しないもの(ほとんど沈殿している の)。

 表4より、本発明の燃料添加剤に用いる固体 状成分(参考例1~4)、及び本発明に属する燃料 加剤(実施例1~8)は、比較例1、2及び無添加の 場合と比較して極めて優れたスラッジ分散効 果を有することが分かる。
 レシチンを含有しない比較例1、2では全く 果が見られず、無添加のC重油と同じであっ 。なお、レシチンの効果は、概ね添加量に 例した結果であった。

[燃焼速度の測定]
 本発明の範囲に属する燃料添加剤(実施例1~8 )及び比較例2の燃料添加剤を添加した燃料油( C重油…上記スラッジ分散効果の評価に用い ものと同じ)10mgを示差熱天秤TG/DTA6300(セイコ インスツメンツ株式会社製)を用いて、昇温 速度100℃/分にて500℃まで加熱燃焼させ(残炭 成終了点での質量をm1とする)、500℃で保持 た時の生成残炭(95%燃えきり点の質量をm2と る)の質量減少曲線から、TG(熱重量分析)残 燃焼速度定数を算出した。供給空気量は100ml /分とした。算出方法には次式(I)を用いた。 1、※2
  TG残炭燃焼速度定数=A×T×In(m1/m2)/τ・・・(I )
   A :定数
   T :温度
   m1:残炭生成終了点での質量
   m2:95%燃えきり点の質量
   τ :(m2-m1)時間
 ※1 柴山ら、日本機械学会論文集、34(260)、 769(1968)
 ※2 候ら、日本機械学会論文集、54(507)3301(1 988)
 試験結果を表5に示す。

 表5より、本発明に属する燃料添加剤(実施 1~8)の1000ppm添加は、比較例2の燃料添加剤の10 00ppm添加と比較して高いTG残炭燃焼速度定数( 対速度定数)を実現することが分かる。
 また、実施例1~8の添加剤を1000ppm添加すると 、比較例2の添加剤を2000ppm添加するよりも高 TG残炭燃焼速度定数(相対速度定数)が得られ た。
 これは、レシチンのフェロセンに対する溶 度の向上とスラッジ分散効果との相乗効果 、更に有機硝酸塩、有機バリウム塩による 焼促進の相乗効果であると推察できる。

 レシチンを含有しない比較例2では、フェロ センは添加剤液中で不安定であるので燃料油 中でも溶解が不十分と考えられる。
 また、比較例2では、スラッジ分散効果、有 機硝酸塩、有機バリウム塩による燃焼促進の 相乗効果もないため、フェロセンの相対含有 量が同じ実施例1と比較(実施例1と比較例2と フェロセン濃度が2.4%、2.5%とほぼ同じ)や、 施例2~8と比較しても効果が劣ったと思われ 。

[可視化燃焼試験装置(OCA:Optic Combustion Analyzer )による燃焼試験]
(実施例1a~8a、及び比較例2a)
 OCA燃焼試験装置において、燃焼室内に気体 料と酸素、窒素の混合ガスを充填して燃焼 せ容器内を高温、高圧の雰囲気とする。次 、内部の温度が下って行き内部圧力も下っ 所定の圧力になった時点で、燃料を噴霧し 燃焼させる。
 その時点の酸素濃度は空気に近いように21vo l%の設定になっている。その燃焼火炎の観察 、高速ビデオカメラで(2000コマ/秒)による可 視化撮影、光センサーによる工学測定、容器 内の圧力履歴から熱発生率などから多角的、 総合的に燃焼性が評価される。
 その中で光センサーによる工学測定では、 火遅れの時間(燃料を噴射し始めてから着火 するまでの時間)と、後燃えの時間(燃料を噴 し終わってから燃え終わるまでの時間)の合 計タイムの短い方が燃焼性が良好であると言 える。

 なお、OCA燃焼試験装置は、岡山大学工学部 (株)栄和技研及び(株)商船三井技術研究所の 3者共同開発に係るもので、これを使用した
 また、試験時の容器内圧力は1.8MPaとし、燃 油としては、A:380cStのC重油と、B:超低粘度 硫黄燃料油を使用した。燃料油の性状を表6 示す。
 なお、実施例1a~8a及び比較例2aは、表3に示 た実施例1~8、比較例2の燃料添加剤を燃料油 対し、全て1/200(0.5%)で用いて試験を実施し ものである。この試験における燃料油中の 料添加剤の各有効成分の配合割合を表7に示 。

 表8より、比較例2aのフェロセンのみでも、2 種類の燃料油のみに対して着火遅れ及び後燃 えの時間が短縮されており、無添加油に対す る優位差が認められた。しかし、フェロセン にレシチン及び有機硝酸塩(硝酸第一ヘキシ )を添加した実施例1a及び5aでは、比較例2aに べ顕著な燃焼促進効果が得られた。また、 ェロセンにレシチン及び有機バリウム塩を 加した実施例2aも同様に燃焼促進効果が得 れた。
 更に、上記4成分を添加した実施例3a、4a及 6aはフェロセンの含有量が少ないが、フェロ セン濃度が比較的高い実施例1a及び2aに匹敵 る効果が得られた。これは、有機硝酸塩(硝 第一ヘキシル)と有機バリウム塩の相乗効果 で燃焼促進効果が増進されたものである。実 施例7a及び8aはフェロセン及びレシチンの濃 が高く、また、有機硝酸塩(硝酸第一ヘキシ )、有機バリウム塩を適量添加しているので 極めて良好な燃焼促進効果が得られた。

 総合的に勘案すると、有機硝酸塩の添加は 火遅れ時間の向上に、一方、有機バリウム の添加は後燃えの向上に寄与しているよう も窺えるが、4成分の混合によって、総合的 且つ相乗的に燃焼効率が向上したものである と推測される。
 以上の結果は、2種類の燃料油での燃焼試験 であるが、高密度の高粘度油(燃料油A)及びデ イ―ゼルエンジンの燃焼不良を生じやすい高 密度の低粘度低硫黄燃料油(燃料油B)とも十分 な燃焼促進効果の改善が得られている。

[ディーゼルエンジンによる実機試験]
 実施例1の固体状成分と液体状成分(有機塩 成分)との組み合わせに係る燃料添加剤、実 例6の液体状燃料添加剤、及び比較例2の燃 添加剤を用いて、ディーゼルエンジンを備 た下記の仕様の貨物船で実機試験を行った

 実機試験は、実施例1に記載の混合割合にな るよう攪拌機付溶解タンク内で、固体状成分 9kgと有機塩系成分75kgをA重油216Kgに溶解させ 行った。
 実施例6と比較例2は、予め表3の配合でA重油 に溶解させた液体状燃料添加剤であるため、 攪拌機付溶解タンク内にそのまま投入した。 更に、実施例1と実施例6と比較例2の添加剤を 、該溶解タンクから注入ポンプで燃料(C重油) ラインに1/1000添加で注入した。
 各添加剤について1ヶ月(30日)ごと交互に6ヶ に亘って上記の方法で添加を行い(各燃料添 加剤について、1ヶ月間×2回)、燃料消費量及 熱交換機の汚れ具合を目視観察して比較し 。その後、水洗浄を行い汚れの除去性を比 した。得られた結果を表9に示す。なお、試 験に供した貨物船と燃料油の性状は下記の通 りである。

 貨物船の仕様
  総トン数       :160,000トン
  載貨重量トン数    :300,500トン
  連続最大出力     :21,300KW×74rpm
  シリンダー数     :10個
  ターボ過給機の回転数 :10,000rpm
  燃料消費量      :90,000L/day(無添加時)

 燃料油(C重油)の一般性状
  密度(15℃):0.984
  粘度(50℃):401cst     
  硫黄分(%):3.61
  残留炭素分(%):13.4
  アスファルテン(%):8.98

 表9に示した結果は、実船での試験結果であ り、燃料消費量は風、潮の流れ、出力の相違 等によって影響を受けるが、それぞれの項目 について2回の試験とも同様の結果となった で、本評価は正しいものと判断できる。
 本発明に属する固体状成分と液体状成分(有 機塩系成分)との組み合わせに係る燃料添加 (実施例1)、及び液体状燃料添加剤(実施例6) は、比較例2と比較して燃料消費量が少ない 果となった。
 これは、レシチンがフェロセンの溶解性及 溶解度を向上させ、更にレシチン自体のス ッジ分散効果により、微細で安定した燃料 霧が実現され、また、有機硝酸塩と有機バ ウム塩を加えることで燃焼促進作用が向上 たため、総合的且つ相乗的に燃焼効率が向 したものである。熱交換機の汚れも比較例2 の場合に比べて清浄であり、簡単な水洗で除 去できるという優位性がみられた。

 その裏付けとして、実施例1の燃料添加剤 を溶解タンク内に溶解させた場合、投入後、 速やかに崩壊分散して約10分で完全に溶解し また試験中も溶解タンク内には全く沈殿物 浮遊物は観られないことが確認された。ま 、実施例6と比較例2の燃料添加剤は予め溶 してあったが、実施例6の試験終了後の溶解 ンク内は全く沈殿・浮遊物が観られないの 対して、比較例2では溶解タンク内で再度攪 拌中も一部浮遊物が観られ、試験終了後の溶 解タンク内にはフェロセン不溶解分の沈殿・ 浮遊物が観られた。

 本発明によれば、フェロセン及び/又はフ ェロセン誘導体をレシチンと併用するととも に、有機硝酸塩や有機バリウム塩などを加え ることとしたため、フェロセン及び/又はフ ロセン誘導体が添加剤や燃料中で容易に安 溶解することができ、燃焼促進効果を有意 発揮し得る高機能化燃料添加剤を提供する とができる。




 
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