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Patent Searching and Data


Title:
GENE RELATED TO LIFE EXTENSION AND USE THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/111520
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is an enhancer of an action of an insulin/IGF-1 signaling system, which comprises a substance capable of inhibiting the expression or activity of WDR6, preferably a substance selected from items (a) to (c): (a) an antisense nucleic acid to a nucleic acid encoding WDR6; (b) a neutralizing antibody directed against WDR6; and (c) a lower-molecular-weight compound having an antagonistic activity on WDR6. Also disclosed is a method for the screening of a substance capable or modulating an activity of an insulin/IGF-1 signaling system, which comprises the steps of: contacting WDR6, a partial peptide thereof or a cell capable of expressing WDR6 with any one of compounds of interest; and selecting a compound which can change the expression or activity of WDR6 or the partial peptide thereof.

Inventors:
CHIBA TAKUYA (JP)
SHIMOKAWA ISAO (JP)
HIGAMI YOSHIKAZU (JP)
YAMAZA HARUYOSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/054183
Publication Date:
September 18, 2008
Filing Date:
March 07, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV NAGASAKI (JP)
CHIBA TAKUYA (JP)
SHIMOKAWA ISAO (JP)
HIGAMI YOSHIKAZU (JP)
YAMAZA HARUYOSHI (JP)
International Classes:
A61K45/00; A23K1/16; A23L1/30; A61K31/7088; A61K38/00; A61K39/395; A61K48/00; A61P3/04; A61P3/06; A61P3/10; A61P25/00; A61P25/28; A61P35/00; A61P37/06; A61P43/00; G01N33/50
Domestic Patent References:
WO2001005970A22001-01-25
Foreign References:
US20020025569A12002-02-28
Other References:
HERMANTO U. ET AL.: "RACK1, an insulin-like growth factor I (IGF-I) receptor-interacting protein, modulates IGF-I-dependent, integrin signaling and promotes cell spreading and contact with extracellular matrix", MOLECULAR AND CELLULAR BIOLOGY, vol. 22, no. 7, 2002, pages 2345 - 2365
RODGERS B.D. ET AL.: "Insulin regulation of a novel WD-40 repeat protein in adipocyte", JOURNAL OF ENDOCRINOLOGY, vol. 168, no. 2, 2001, pages 325 - 332
DUANXIANG LI ET AL.: "Molecular cloning, expression analysis and chromosome mapping of WDR6, a novel human WD-repeat gene", BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS, vol. 274, 2000, pages 117 - 123
Attorney, Agent or Firm:
TAKASHIMA, Hajime (1-1 Fushimimachi 4-chome,Chuo-ku, Osaka-sh, Osaka 44, JP)
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Claims:
 WDR6の発現もしくは活性を抑制する物質を含有してなる医薬または動物薬。
 WDR6の発現もしくは活性を抑制する物質が下記(a)~(c)から選ばれる、請求項1記載の医薬または動物薬。
(a) WDR6をコードする核酸に対するアンチセンス核酸
(b) WDR6に対する中和抗体
(c) WDR6に対してアンタゴニスト活性を示す低分子化合物
 インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用増強剤である、請求項1または2記載の医薬または動物薬。
 インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用がIRS-4の介在するものである、請求項3記載の医薬または動物薬。
 インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用が、神経細胞保護、摂食抑制、糖代謝促進、脂肪酸合成促進、脂肪分解抑制、糖の細胞内取り込み、アポトーシス抑制、細胞増殖促進および細胞分化促進からなる群より選択される1以上である、請求項3記載の医薬または動物薬。
 老化、神経変性疾患、摂食障害、および代謝疾患からなる群より選択される病態または疾患の予防または改善/治療剤である、請求項1~5のいずれかに記載の医薬または動物薬。
 WDR6の発現もしくは活性を抑制する物質を含有してなる食品または飼料。
 WDR6の発現もしくは活性を抑制する物質が下記(a)~(c)から選ばれる、請求項7記載の食品または飼料。
(a) WDR6をコードする核酸に対するアンチセンス核酸
(b) WDR6に対する中和抗体
(c) WDR6に対してアンタゴニスト活性を示す低分子化合物
 WDR6の発現もしくは活性を増強する物質を含有してなる医薬または動物薬。
 WDR6の発現もしくは活性を増強する物質が下記(a)~(d)から選ばれる、請求項9記載の医薬または動物薬。
(a) WDR6またはその部分ペプチド
(b) WDR6またはその部分ペプチドをコードする核酸
(c) WDR6に対するアゴニスト抗体
(c) WDR6に対してアゴニスト活性を示す低分子化合物
 インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用抑制剤である、請求項9または10記載の医薬または動物薬。
 インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用が、摂食抑制、糖代謝促進、脂肪酸合成促進、脂肪分解抑制、アポトーシス抑制、細胞増殖促進および細胞分化促進からなる群より選択される1以上である、請求項11記載の医薬または動物薬。
 摂食障害、代謝疾患、癌および自己免疫疾患からなる群より選択される疾患の予防または治療剤である、請求項9~12のいずれかに記載の医薬または動物薬。
 WDR6に対する抗体またはWDR6をコードする塩基配列もしくはその一部を含む核酸を含有してなる、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の異常の診断剤。
 WDR6もしくはその部分ペプチドを用いることを特徴とする、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用を調節する物質のスクリーニング方法。
 インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用がIRS-4の介在するものである、請求項15記載の方法。
 インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用が、神経細胞保護、摂食抑制、糖代謝促進、脂肪酸合成促進、脂肪分解抑制、糖の細胞内取り込み、アポトーシス抑制、細胞増殖促進および細胞分化促進からなる群より選択される、請求項15記載の方法。
 老化、神経変性疾患、摂食障害、代謝疾患、癌および自己免疫疾患からなる群より選択される病態または疾患の予防または改善/治療活性を有する物質を選択するための、請求項15~17のいずれかに記載の方法。
 WDR6もしくはその部分ペプチドがそれを産生する細胞の形態で提供されることを特徴とする、請求項15~18のいずれかに記載の方法。
 WDR6を産生する細胞がそれを含む動物組織、臓器または個体の形態で提供されることを特徴とする、請求項19記載の方法。
 下記(a)~(d)の工程を含む、請求項15~20のいずれかに記載の方法。
(a) WDR6もしくはその部分ペプチドまたはそれを発現する細胞を被験物質と接触させる工程
(b) WDR6もしくはその部分ペプチドの発現もしくは活性を測定する工程
(c) 被験物質の非存在下におけるWDR6もしくはその部分ペプチドの発現もしくは活性と比較する工程
(d) 被験物質の存在下でのWDR6もしくはその部分ペプチドの発現もしくは活性が、被験物質の非存在下と比較して有意に変化した場合に、該被験物質をインスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用を調節する物質として選択する工程
 WDR6をコードする塩基配列もしくはその一部を含む核酸、あるいはWDR6に対する抗体をさらに用いることを特徴とする、請求項19または20記載の方法。
 IRS-4もしくはその部分ペプチドをさらに用いることを特徴とする、請求項15~22のいずれかに記載の方法。
 WDR6もしくはその部分ペプチドの活性が、IRS-4もしくはその部分ペプチドとの結合性またはIRS-4もしくはその部分ペプチドのリン酸化の程度を指標として測定される、請求項23記載の方法。
 WDR6の発現もしくは活性を抑制する物質の有効量を動物に投与することを含む、該動物におけるインスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用を増強する方法。
 WDR6の発現もしくは活性を増強する物質の有効量を動物に投与することを含む、該動物におけるインスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用を抑制する方法。
 投与が中枢もしくは末梢への局所投与である、請求項25または26記載の方法。
 被験物質を動物に投与し、該動物の視床下部における、E2D3、PKCβ、EAAC1、Fth1およびASSからなる群より選択される1以上の遺伝子、並びに/あるいは配列番号:13で表される塩基配列を含む核酸および/または配列番号:14で表される塩基配列を含む核酸の発現を調べることを含む、該物質の神経細胞保護作用の評価方法。
Description:
寿命延長関連遺伝子およびその 途

 本発明は、寿命延長に関連する遺伝子お びその創薬ターゲットとしての用途に関す 。より詳細には、本発明は、寿命延長モデ の視床下部で低発現するWDR6をターゲットと する抗老化薬および生活習慣病、癌、神経変 性疾患等の予防・治療薬、並びに該薬剤のス クリーニングに関する。本発明はまた、摂食 後と比較して絶食後に視床下部での発現が増 加する遺伝子および絶食後に脳の他の部位と 比較して視床下部での発現が増加する遺伝子 、並びにそれらの用途に関する。

 不老長寿は人類にとって永遠のテーマで る。老化のメカニズム解明のための分子生 学的アプローチとして、長寿命変異動物を いた寿命延長メカニズムの解析が精力的に われている。例えば、線虫やショウジョウ エの長寿命変異種の解析から、インスリン/ インスリン様成長因子 (IGF-1) シグナル伝達 が寿命延長に関連することが明らかとなっ 。哺乳動物でも、IGF-1受容体ノックアウト ウスで寿命が延長することが報告されてい  (非特許文献1)。また、下垂体成長ホルモン  (GH) 欠損マウスやGH受容体ノックアウトマ スでも寿命の延長が認められるが (非特許 献2、3)、これらのマウスでは血中IGF-1レベル が低下している。本発明者らは以前、GHのア チセンス遺伝子を導入したトランスジェニ クラット (GH-IGF-1抑制ラット) のヘテロ接 体において、やはり寿命が延長することを 告している (非特許文献4)。

 一方、ヒトを含む種々の動物において、 活習慣病、癌、アルツハイマー病等の神経 性疾患などの老化に伴う疾患の発症遅延や 命延長を引き起こす、最も確実な介入方法 して、カロリー制限 (CR) が以前から知ら ていた。CRモデルにおいても血中のインスリ ンおよびIGF-1レベルが低下することから、CR 効果の一部は、インスリンおよびGH-IGF-1シグ ナル伝達系を介して発揮されることが示唆さ れているが、その詳細な分子メカニズムは未 だ不明である。本発明者らは、前記GH-IGF-1抑 ラットに対するCRの解析から、CRの寿命延長 効果は、部分的にはGH-IGF-1軸の抑制以外のメ ニズムを介して発揮されていることを示し (非特許文献4)。

 ヒトにCRを行うことは忍耐を要することか 困難であるが、糖尿病患者やメタボリック ンドローム等の代謝疾患をもつ患者におい は症状の抑制やQOL改善のためにCRは必須であ る。従って、精神的苦痛を伴うことなくCRと 様の効果をもたらし得るCR模倣物(CR mimetics)  を開発することは病気を未然に防ぐことや 行を抑制させる点から、産業的に非常に大 なインパクトを有していると考えられる。 かしながら、これまでそのような物質の手 かりは限られていた。
ホルツェンベルガー (Holzenerger, M.) ら, 「ネイチャー (Nature)」, (英国), 2003年, 第4 21巻, p. 182-187 ブラウン-ボーグ (Brown-Borg, H.M.) ら, 「 ネイチャー (Nature)」, (英国), 1996年, 第384 , p. 33 コシガノ (Coschigano, K.T.) ら, 「エンド リノロジー (Endocrinology)」, (米国), 2000年, 第141巻, p. 2608-2613 下川 (Shimokawa, I.) ら, 「ザ・ファセブ ジャーナル (FASEB J.)」, (米国), 2003年, 第 17巻, p. 1108-1109

 したがって、本発明の目的は、CRと同様 効果をもたらし得るCR模倣物のターゲット分 子を同定し、それを用いてCR模倣物、ひいて 抗老化薬および生活習慣病、癌、神経変性 患等の予防・治療薬を提供することである

 上記の課題を解決するために、本発明者 はまず、摂食や代謝に重要な役割を持つい つかの神経核が集合して組織化されている 床下部に着目し、食餌制限による該組織に ける遺伝子発現の変動を調べた。即ち、ラ ト脳の各部位のcDNAライブラリーを調製し、 遺伝子サブトラクション法を用いて、摂食後 と比較して絶食後に視床下部での発現が増加 する遺伝子 (以下、単に「絶食誘導性遺伝子 」という場合もある)と、絶食後に脳の他の 位 (大脳皮質、小脳および海馬) と比較し 視床下部での発現が増加する遺伝子 (以下 単に「視床下部特異的遺伝子」という場合 ある) とを探索した。その結果、ラット視 下部における絶食誘導性遺伝子として4つの 伝子 (E2D3、PKAb、EAAC1、Fth1) を、また、絶 後における視床下部特異的遺伝子として4つ 遺伝子 (WDR6、ASS、BF396681、BF394337) をそれ れ同定することに成功した。これらの遺伝 の大部分は、神経細胞障害を誘導する種々 ストレスに対する防御反応に重要な遺伝子 あった。

 これまで配列のみが報告されていたWD repeat  protein 6 (WDR6) について、さらに解析を進 た結果、この分子は視床下部において遺伝 およびタンパク質の発現が高く、ラット脳 おいてインスリン受容体基質-4 (IRS-4) と結 することを明らかにした。さらに、本発明 らは、長寿命を示すCRラットおよび前記GH-IG F-I抑制ラットのヘテロ接合体(tg/-) の視床下 弓状核において、WDR6の遺伝子発現が減少し ていることを見出した。また、インスリン/IG F-1の投与により、マウス視床下部由来細胞株 においてWDR6の発現は上昇した。
 一方、肥満・糖尿病モデルであるZucker obese ラットでは、正常のleanラットと比較して肝 におけるWDR6の発現が低下しており、CRを実 することによりobese、leanとも肝臓でのWDR6の 現が上昇した。また、視床下部球状核にお てもZucker obeseラットは、正常のleanラット 比較してWDR6の発現が低下していた。
 これらの知見は、WDR6が、インスリン/IGF-1シ グナル伝達系において、IRS-4のリン酸化調節 介してインスリンシグナルを負に制御する 子であることを支持している。本発明者ら 、上記の知見に基づいてさらに研究を重ね 結果、本発明を完成するに至った。

 即ち、本発明は、
[1]WDR6の発現もしくは活性を抑制する物質を 有してなる医薬または動物薬、
[2]WDR6の発現もしくは活性を抑制する物質が 記(a)~(c)から選ばれる、上記[1]記載の医薬ま は動物薬、
(a) WDR6をコードする核酸に対するアンチセン ス核酸
(b) WDR6に対する中和抗体
(c) WDR6に対してアンタゴニスト活性を示す低 分子化合物
[3]インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用増強 剤である、上記[1]または[2]記載の医薬または 動物薬、
[4]インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用がIRS -4の介在するものである、上記[3]記載の医薬 たは動物薬、
[5]インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用が、 神経細胞保護、摂食抑制、糖代謝促進、脂肪 酸合成促進、脂肪分解抑制、糖の細胞内取り 込み、アポトーシス抑制、細胞増殖促進およ び細胞分化促進からなる群より選択される1 上である、上記[3]記載の医薬または動物薬
[6]老化、神経変性疾患、摂食障害および代謝 疾患からなる群より選択される病態または疾 患の予防または改善/治療剤である、上記[1]~[ 5]のいずれかに記載の医薬または動物薬、
[7]WDR6の発現もしくは活性を抑制する物質を 有してなる食品または飼料、
[8]WDR6の発現もしくは活性を抑制する物質が 記(a)~(c)から選ばれる、上記[7]記載の食品ま は飼料、
(a) WDR6をコードする核酸に対するアンチセン ス核酸
(b) WDR6に対する中和抗体
(c) WDR6に対してアンタゴニスト活性を示す低 分子化合物
[9]WDR6の発現もしくは活性を増強する物質を 有してなる医薬または動物薬、
[10]WDR6の発現もしくは活性を増強する物質が 記(a)~(d)から選ばれる、上記[9]記載の医薬ま たは動物薬、
(a) WDR6またはその部分ペプチド
(b) WDR6またはその部分ペプチドをコードする 核酸
(c) WDR6に対するアゴニスト抗体
(c) WDR6に対してアゴニスト活性を示す低分子 化合物
[11]インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用抑 剤である、上記[9]または[10]記載の医薬また 動物薬、
[12]インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用が 摂食抑制、糖代謝促進、脂肪酸合成促進、 肪分解抑制、アポトーシス抑制、細胞増殖 進および細胞分化促進からなる群より選択 れる1以上である、上記[11]記載の医薬または 動物薬、
[13]摂食障害、代謝疾患、癌および自己免疫 患からなる群より選択される疾患の予防ま は治療剤である、上記[9]~[12]のいずれかに記 載の医薬または動物薬、
[14]WDR6に対する抗体またはWDR6をコードする塩 基配列もしくはその一部を含む核酸を含有し てなる、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の異 常の診断剤、
[15]WDR6もしくはその部分ペプチドを用いるこ を特徴とする、インスリン/IGF-1シグナル伝 系の作用を調節する物質のスクリーニング 法、
[16]インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用がIR S-4の介在するものである、上記[15]記載の方 、
[17]インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用が 神経細胞保護、摂食抑制、糖代謝促進、脂 酸合成促進、脂肪分解抑制、糖の細胞内取 込み、アポトーシス抑制、細胞増殖促進お び細胞分化促進からなる群より選択される 上記[15]記載の方法、
[18]老化、神経変性疾患、摂食障害、代謝疾 、癌および自己免疫疾患からなる群より選 される病態または疾患の予防または改善/治 活性を有する物質を選択するための、上記[ 15]~[17]のいずれかに記載の方法、
[19]WDR6もしくはその部分ペプチドがそれを産 する細胞の形態で提供されることを特徴と る、上記[15]~[18]のいずれかに記載の方法、
[20]WDR6を産生する細胞がそれを含む動物組織 臓器または個体の形態で提供されることを 徴とする、上記[19]記載の方法、
[21]下記(a)~(d)の工程を含む、上記[15]~[20]のい れかに記載の方法、
(a) WDR6もしくはその部分ペプチドまたはそれ を発現する細胞を被験物質と接触させる工程
(b) WDR6もしくはその部分ペプチドの発現もし くは活性を測定する工程
(c) 被験物質の非存在下におけるWDR6もしくは その部分ペプチドの発現もしくは活性と比較 する工程
(d) 被験物質の存在下でのWDR6もしくはその部 分ペプチドの発現もしくは活性が、被験物質 の非存在下と比較して有意に変化した場合に 、該被験物質をインスリン/IGF-1シグナル伝達 系の作用を調節する物質として選択する工程
[22]WDR6をコードする塩基配列もしくはその一 を含む核酸、あるいはWDR6に対する抗体をさ らに用いることを特徴とする、上記[19]また [20]記載の方法、
[23]IRS-4もしくはその部分ペプチドをさらに用 いることを特徴とする、上記[15]~[22]のいずれ かに記載の方法、
[24]WDR6もしくはその部分ペプチドの活性が、I RS-4もしくはその部分ペプチドとの結合性ま はIRS-4もしくはその部分ペプチドのリン酸化 の程度を指標として測定される、上記[23]記 の方法、
[25]WDR6の発現もしくは活性を抑制する物質の 効量を動物に投与することを含む、該動物 おけるインスリン/IGF-1シグナル伝達系の作 を増強する方法、
[26]WDR6の発現もしくは活性を増強する物質の 効量を動物に投与することを含む、該動物 おけるインスリン/IGF-1シグナル伝達系の作 を抑制する方法、
[27]投与が中枢もしくは末梢への局所投与で る、上記[25]または[26]記載の方法、および
[28]被験物質を動物に投与し、該動物の視床 部における、E2D3、PKCβ、EAAC1、Fth1およびASS らなる群より選択される1以上の遺伝子、並 に/あるいは配列番号:13で表される塩基配列 を含む核酸および/または配列番号:14で表さ る塩基配列を含む核酸の発現を調べること 含む、該物質の神経細胞保護作用の評価方 、
などを提供する。

 WDR6はIRS-4との相互作用を介してインスリン/ IGF-1シグナルを負に調節しているので、中枢 おけるWDR6の発現および/または活性を抑制 ることにより、摂食を抑制したり、神経保 作用を増強したりすることができ、老化を 止し、肥満、糖尿病などの代謝疾患をはじ とする生活習慣病、摂食障害あるいは神経 性疾患を予防・治療等することができる。 た、肝臓などの末梢におけるWDR6の発現およ /または活性を抑制することにより、糖新生 抑制、脂肪酸合成亢進などの効果を得ること ができ、インスリン抵抗性を改善したりする ことができる。一方、WDR6の発現および/また 活性を増強することにより、食欲を増進し り、脂肪酸合成を抑制したり、あるいはア トーシスを促進、細胞増殖・分化を抑制す ことができるので、摂食障害や脂肪代謝異 が関与する代謝疾患、癌、自己免疫疾患な を予防・治療することができる。さらに、W DR6および必要に応じてIRS-4を用いることによ 、インスリン/IGF-1シグナルの作用を調節し る物質、ひいては上記疾患の予防・治療薬 探索することができる。
 本発明で得られた他の視床下部特異的遺伝 および絶食誘導性遺伝子は、神経細胞死に する保護作用があることが考えられる。こ らの遺伝子の発現変化をマーカーとした神 変性疾患に対する治療薬等の評価を行うこ ができる。

48時間絶食後にラット視床下部におい 発現が上昇した遺伝子群を示す図である。β -actinは内部標準。 48時間絶食後の視床下部において大脳 質、海馬、小脳と比較して発現が高い遺伝 群を示す図である。β-actinは内部標準。 ラット脳由来タンパク質をもちいた免 沈降法によるIRS-4とWDR6の結合解析の結果を す図である。lys:粗抽出物、IgG:免疫グロブ ン(ネガティブコントロール)、IP:免疫沈降、 IB:免疫ブロット。 IRS-4とWDR6の結合とIRS-4のリン酸化の関 を示す図である。*、**はリン酸化により移 度が変化したIRS-4のバンドを示す。lys:粗抽 物、WDR6:IP:WDR6による免疫沈降。 CRおよびGH/IGF-I抑制ラット視床下部弓状 核におけるWDR6遺伝子発現変化を示す図であ 。-/-:対照Wistar rat、tg/-:成長ホルモンアンチ センストランスジェニックラット(ヘテロ接 体)。CR1は給餌後、CR2は給餌前に屠殺しサン ルを調整した。 レプチン脳室内投与によるWDR6の遺伝子 発現変化を示す図である。 マウス視床下部由来GT1-7細胞株におけ IGF-I(10ng/ml)およびinsulin(50μg/ml)投与によるWDR6 遺伝子発現変化を示す図である。左から投与 後0、0.5、1および2時間。 Zuckerラット肝臓におけるWDR6遺伝子発現 とCRの影響を示す図である。Zucker lean ラッ :+/+、Zucker obeseラット:fa/fa。CR1は給餌後、CR2 は給餌前に屠殺しサンプルを調整した。 Zuckerラット視床下部弓状核におけるWRD6 遺伝子発現を示す図である。Zucker lean ラッ :+/+、Zucker obeseラット:fa/fa。摂食後ラット しては、自由摂食ラット、絶食後ラットと ては、絶食後24時間のラットを用いた。

 本発明におけるWDR6蛋白質は、配列番号:2で されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的 同一のアミノ酸配列を含む蛋白質である。
 WDR6は、例えば、温血動物(例えば、ヒト、 ウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウ 、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー トリなど)の細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、 神経細胞、グリア細胞、膵β細胞、骨髄細胞 メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、 皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平 筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、 肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T 胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細 、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核 球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞 、破骨細胞、乳腺細胞もしくは間質細胞、ま たはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは 癌細胞など]、あるいはそれらの細胞が存在 るあらゆる組織もしくは臓器[例えば、脳、 の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、 海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小 脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓 生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚 肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、 胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸 、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織( 、褐色脂肪組織、白色脂肪組織)、骨格筋な ]等から単離・精製される蛋白質であっても よい。また、化学合成もしくは無細胞翻訳系 で生化学的に合成された蛋白質であってもよ いし、あるいは上記アミノ酸配列をコードす る塩基配列を有する核酸を導入された形質転 換体から産生される組換え蛋白質であっても よい。

 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と実質 に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:2 で表されるアミノ酸配列と約60%以上、好まし くは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、 特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約 95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが 挙げられる。ここで「相同性」とは、当該技 術分野において公知の数学的アルゴリズムを 用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた 合の、最適なアラインメント(好ましくは、 アルゴリズムは最適なアラインメントのた に配列の一方もしくは両方へのギャップの 入を考慮し得るものである)における、オー バーラップする全アミノ酸残基に対する同一 アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を 意味する。「類似アミノ酸」とは物理化学的 性質において類似したアミノ酸を意味し、例 えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族 ミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性ア ノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Th r、Met)などの同じグループに分類されるアミ 酸が挙げられる。このような類似アミノ酸 よる置換は蛋白質の表現型に変化をもたら ない(即ち、保存的アミノ酸置換である)こ が予測される。保存的アミノ酸置換の具体 は当該技術分野で周知であり、種々の文献 記載されている(例えば、Bowieら,Science, 247:13 06-1310 (1990)を参照)。
 本明細書におけるアミノ酸配列の相同性は 相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Cen ter for Biotechnology Information Basic Local Alignmen t Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギ ャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリ グ=OFF)にて計算することができる。アミノ 配列の相同性を決定するための他のアルゴ ズムとしては、例えば、Karlinら, Proc. Natl.  Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877 (1993)に記載のアル リズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプ ログラム(version 2.0)に組み込まれている(Altsch ulら, Nucleic Acids Res., 25: 3389-3402 (1997))]、Ne edlemanら, J. Mol. Biol., 48: 444-453 (1970)に記載 のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフト ェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込 れている]、MyersおよびMiller, CABIOS, 4: 11-17  (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズム CGC配列アラインメントソフトウェアパッケ ジの一部であるALIGNプログラム(version 2.0)に み込まれている]、Pearsonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448 (1988)に記載のアルゴリ ム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケ ージ中のFASTAプログラムに組み込まれている] 等が挙げられ、それらも同様に好ましく用い られ得る。
 より好ましくは、配列番号:2で表されるア ノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列と 、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と約60% 以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましく は約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も 好ましくは約95%以上の同一性を有するアミノ 酸配列である。

 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と実質 に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質と ては、例えば、前記の配列番号:2で表される アミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列 を含み、配列番号:2で表されるアミノ酸配列 含む蛋白質と実質的に同質の活性を有する 白質などが好ましい。ここで「活性」とは IRS-4との結合活性および該分子のリン酸化 御活性などをいう。「実質的に同質」とは それらの活性が定性的(例えば、生理学的ま は薬理学的)に同じであることを示す。した がって、IRS-4との結合活性および該分子のリ 酸化制御活性などの活性は同等であること 好ましいが、これらの活性の程度(例えば、 約0.1~約10培、好ましくは約0.5~約2倍)や蛋白質 の分子量などの量的要素は異なっていてもよ い。
 IRS-4との結合活性および該分子のリン酸化 御活性の測定は、自体公知の方法に準じて なうことができるが、例えば、後述する方 等に従って行うことができる。

 また、本発明のWDR6には、例えば、(1)配列番 号:2で表されるアミノ酸配列のうち1または2 以上(好ましくは、1~100個程度、好ましくは1~ 50個程度、さらに好ましくは1~10個程度、特に 好ましくは1~数(2、3、4もしくは5)個)のアミノ 酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:2で されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ま くは、1~100個程度、好ましくは1~50個程度、 らに好ましくは1~10個程度、特に好ましくは 1~数(2、3、4もしくは5)個)のアミノ酸が付加し たアミノ酸配列、(3)配列番号:2で表されるア ノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1~50 個程度、好ましくは1~10個程度、さらに好ま くは1~数(2、3、4もしくは5)個)のアミノ酸が 入されたアミノ酸配列、(4)配列番号:2で表さ れるアミノ酸配列のうち1または2個以上(好ま しくは、1~50個程度、好ましくは1~10個程度、 らに好ましくは1~数(2、3、4もしくは5)個)の ミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ 配列、または(5)それらを組み合わせたアミ 酸配列を含有する蛋白質なども含まれる。
 上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失ま は置換されている場合、その挿入、欠失ま は置換の位置は、蛋白質の活性が保持され 限り特に限定されない。

 本発明のWDR6は、好ましくは、配列番号:2 表されるアミノ酸配列を有するヒトWDR6蛋白 質(GenBankアクセッション番号:AAF80244)、あるい は他の哺乳動物におけるそのホモログ[例え 、GenBankにそれぞれアクセッション番号AAK3116 6およびXP_516448として登録されているマウス よびチンパンジーホモログ等]である。

 本明細書において、蛋白質およびペプチド 、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端 (アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末 )で記載される。配列番号:2で表されるアミ 酸配列を含有する蛋白質をはじめとする、 発明のWDR6は、C末端がカルボキシル基(-COOH) カルボキシレート(-COO - )、アミド(-CONH 2 )またはエステル(-COOR)の何れであってもよい
 ここでエステルにおけるRとしては、例えば 、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピ 、n-ブチルなどのC 1-6 アルキル基;例えば、シクロペンチル、シク ヘキシルなどのC 3-8 シクロアルキル基;例えば、フェニル、α-ナ チルなどのC 6-12 アリール基;例えば、ベンジル、フェネチル どのフェニル-C 1-2 アルキル基;α-ナフチルメチルなどのα-ナフ ル-C 1-2 アルキル基などのC 7-14 アラルキル基;ピバロイルオキシメチル基な が用いられる。
 本発明のWDR6がC末端以外にカルボキシル基( たはカルボキシレート)を有している場合、 カルボキシル基がアミド化またはエステル化 されているものも本発明の蛋白質に含まれる 。この場合のエステルとしては、例えば上記 したC末端のエステルなどが用いられる。
 さらに、本発明のWDR6には、N末端のアミノ 残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル 、アセチル基などのC 1-6 アルカノイルなどのC 1-6 アシル基など)で保護されているもの、生体 で切断されて生成し得るN末端のグルタミン 基がピログルタミン酸化したもの、分子内 アミノ酸の側鎖上の置換基(例えば-OH、-SH、 アミノ基、イミダゾール基、インドール基、 グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、 ルミル基、アセチル基などのC 1-6 アルカノイル基などのC 1-6 アシル基など)で保護されているもの、ある は糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの 合蛋白質なども含まれる。

 WDR6の部分ペプチド(以下、単に「本発明の 分ペプチド」と略称する場合もある)は、上 したWDR6の部分アミノ酸配列を有するペプチ ドであり、且つWDR6と実質的に同質の活性を する限り、何れのものであってもよい。こ で「実質的に同質の活性」とは上記と同意 を示す。また、「実質的に同質の活性」の 定はWDR6の場合と同様に行なうことができる
 具体的には、本発明の部分ペプチドとして 例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配 のうち、IRS-4との結合に関わる領域(例えば トWDR6の場合、例えば配列番号:2で表される ミノ酸配列中アミノ酸番号114-142、155-188、207 -237、256-284、296-326、611-641、772-815、857-892、908 -945、978-1011、1043-1072で示される、いわゆるWD- repeatsの全部または一部など)およびIRS-4のリ 酸化制御に関わる領域(例えばヒトWDR6の場合 、例えば配列番号:2で表されるアミノ酸配列 アミノ酸番号498-518、729-756で示される、Prote in phosphatase 2A regulatory subunit PR55 signatureと 相同性を有する領域など)を含む部分アミノ 配列を有するものなどが用いられる。本発 の部分ペプチドは、上記のIRS-4との結合に関 与する領域とIRS-4のリン酸化制御に関与する 域を含む限りそのサイズに特に制限はない 、好ましくは300個以上の部分アミノ酸配列 含むもの、より好ましくは500個以上の部分 ミノ酸配列を含むものが挙げられる。該部 アミノ酸配列は一個の連続した部分アミノ 配列であってもよく、あるいは不連続な複 の部分アミノ酸配列が連結されたものであ てもよい。

 一方、WDR6の部分アミノ酸配列を含むがWDR 6と実質的に同質の活性を有しないペプチド 例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配列 のうち、IRS-4との結合に関与する領域を含む 、リン酸化制御に関与する領域を含まない 分アミノ酸配列を有するものなどは、「本 明の部分ペプチド」には含まれない。しか ながら、かかるペプチドは、IRS-4と結合す ことによりWDR6を介したインスリン/IGF-1シグ ル伝達作用の抑制を遮断することができる で、該シグナル伝達作用を促進したい場合 に有用であり得る。

 また、本発明の部分ペプチドはC末端がカル ボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO - )、アミド(-CONH 2 )またはエステル(-COOR)の何れであってもよい ここでエステルにおけるRとしては、WDR6に いて前記したと同様のものが挙げられる。 発明の部分ペプチドがC末端以外にカルボキ ル基(またはカルボキシレート)を有してい 場合、カルボキシル基がアミド化またはエ テル化されているものも本発明の部分ペプ ドに含まれる。この場合のエステルとして 、例えば、C末端のエステルと同様のものな が用いられる。
 さらに、本発明の部分ペプチドには、上記 たWDR6と同様に、N末端のアミノ酸残基のア ノ基が保護基で保護されているもの、N末端 グルタミン残基がピログルタミン酸化した の、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が 当な保護基で保護されているもの、あるい 糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの 合ペプチドなども含まれる。

 本発明で用いられるWDR6またはその部分ペ プチドは塩の形態であってもよい。例えば、 生理学的に許容される酸(例:無機酸、有機酸) や塩基(例:アルカリ金属塩)などとの塩が用い られ、とりわけ生理学的に許容される酸付加 塩が好ましい。この様な塩としては、例えば 、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素 、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢 酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイ ン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ 酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベ ンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる

 WDR6は、前述した哺乳動物の細胞または組 織から自体公知の蛋白質の精製方法によって 製造することができる。具体的には、哺乳動 物の組織または細胞をホモジナイズし、低速 遠心により細胞デブリスを除去した後、上清 を高速遠心して細胞膜含有画分を沈澱させ( 要に応じて密度勾配遠心などにより細胞膜 分を精製し)、該画分を逆相クロマトグラフ ー、イオン交換クロマトグラフィー、アフ ニティークロマトグラフィーなどのクロマ グラフィー等に付すことによりWDR6またはそ の塩を調製することができる。

 WDR6またはその部分ペプチドは、公知のペプ チド合成法に従って製造することもできる( 下、これらの化学合成の説明においては、 にことわらない限り、WDR6およびその部分ペ チドを包括して、単にWDR6という)。
 ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、 相合成法のいずれであってもよい。WDR6を構 成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残 余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する 場合は保護基を脱離することにより目的とす る蛋白質を製造することができる。
 ここで、縮合や保護基の脱離は、自体公知 方法、例えば、以下の(1)および(2)に記載さ た方法に従って行われる。
(1) M. BodanszkyおよびM.A. Ondetti, Peptide Synthesi s, Interscience Publishers, New York (1966年)
(2) SchroederおよびLuebke, The Peptide, Academic Pre ss, New York (1965年)

 このようにして得られたWDR6は、公知の精製 法により精製単離することができる。ここで 、精製法としては、例えば、溶媒抽出、蒸留 、カラムクロマトグラフィー、液体クロマト グラフィー、再結晶、これらの組み合わせな どが挙げられる。
 上記方法で得られるWDR6が遊離体である場合 には、該遊離体を公知の方法あるいはそれに 準じる方法によって適当な塩に変換すること ができるし、逆にWDR6が塩として得られた場 には、該塩を公知の方法あるいはそれに準 る方法によって遊離体または他の塩に変換 ることができる。

 WDR6の合成には、通常市販の蛋白質合成用 樹脂を用いることができる。そのような樹脂 としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒド ロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹 脂、アミノメチル樹脂、4-ベンジルオキシベ ジルアルコール樹脂、4-メチルベンズヒド ルアミン樹脂、PAM樹脂、4-ヒドロキシメチル メチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポ リアクリルアミド樹脂、4-(2’,4’-ジメトキ フェニル-ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂 、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmocアミノエ チル)フェノキシ樹脂などを挙げることがで る。このような樹脂を用い、α-アミノ基と 鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目 とするWDR6の配列通りに、自体公知の各種縮 方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の 後に樹脂から蛋白質等を切り出すと同時に 種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で 子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、 的のWDR6またはそのアミド体を取得する。

 上記した保護アミノ酸の縮合に関しては 蛋白質合成に使用できる各種活性化試薬を いることができるが、特に、カルボジイミ 類がよい。カルボジイミド類としては、DCC N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N-エ ル-N’-(3-ジメチルアミノプロリル)カルボジ イミドなどが用いられる。これらによる活性 化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOB t)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加す か、または、対称酸無水物またはHOBtエステ ルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保 アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添 することができる。

 保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に いられる溶媒は、蛋白質縮合反応に使用し ることが知られている溶媒から適宜選択さ うる。例えば、N,N-ジメチルホルムアミド,N, N-ジメチルアセトアミド,N-メチルピロリドン どの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホル ムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオ ロエタノールなどのアルコール類、ジメチル スルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジ ンなどのアミン類,ジオキサン,テトラヒドロ ランなどのエーテル類、アセトニトリル,プ ロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチ ル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこ らの適宜の混合物などが用いられる。反応 度は蛋白質結合形成反応に使用され得るこ が知られている範囲から適宜選択され、通 約-20℃~50℃の範囲から適宜選択される。活 化されたアミノ酸誘導体は通常1.5~4倍過剰で 用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテス トの結果、縮合が不十分な場合には保護基の 脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すこと により十分な縮合を行なうことができる。反 応を繰り返しても十分な縮合が得られないと きには、無水酢酸またはアセチルイミダゾー ルを用いて未反応アミノ酸をアセチル化する ことができる。

 原料の反応に関与すべきでない官能基の保 ならびに保護基、およびその保護基の脱離 反応に関与する官能基の活性化などは公知 基または公知の手段から適宜選択しうる。
 原料のアミノ基の保護基としては、例えば Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボ ニル、イソボルニルオキシカルボニル、4-メ キシベンジルオキシカルボニル、Cl-Z、Br-Z アダマンチルオキシカルボニル、トリフル ロアセチル、フタロイル、ホルミル、2-ニト ロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフ ィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
 カルボキシル基は、例えば、アルキルエス ル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、 ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチ ル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シク ロオクチル、2-アダマンチルなどの直鎖状、 枝状もしくは環状アルキルエステル化)、ア ラルキルエステル化(例えば、ベンジルエス ル、4-ニトロベンジルエステル、4-メトキシ ンジルエステル、4-クロロベンジルエステ 、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシル ステル化、ベンジルオキシカルボニルヒド ジド化、ターシャリーブトキシカルボニル ドラジド化、トリチルヒドラジド化などに って保護することができる。
 セリンの水酸基は、例えば、エステル化ま はエーテル化によって保護することができ 。このエステル化に適する基としては、例 ば、アセチル基などの低級アルカノイル基 ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジル キシカルボニル基、エトキシカルボニル基 どの炭酸から誘導される基などが用いられ 。また、エーテル化に適する基としては、 えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル 、t-ブチル基などである。
 チロシンのフェノール性水酸基の保護基と ては、例えば、Bzl、Cl 2 -Bzl、2-ニトロベンジル、Br-Z、ターシャリー チルなどが用いられる。
 ヒスチジンのイミダゾールの保護基として 、例えば、Tos、4-メトキシ-2,3,6-トリメチル ンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメ ル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。

 保護基の除去(脱離)方法としては、例え 、Pd-黒あるいはPd-炭素などの触媒の存在下 の水素気流中での接触還元や、また、無水 ッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオ メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸ある はこれらの混合液などによる酸処理や、ジ ソプロピルエチルアミン、トリエチルアミ 、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基 理、また液体アンモニア中ナトリウムによ 還元なども用いられる。上記酸処理による 離反応は、一般に約-20℃~40℃の温度で行な れるが、酸処理においては、例えば、アニ ール、フェノール、チオアニソール、メタ レゾール、パラクレゾール、ジメチルスル ィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチ オールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が 有効である。また、ヒスチジンのイミダゾー ル保護基として用いられる2,4-ジニトロフェ ル基はチオフェノール処理により除去され トリプトファンのインドール保護基として いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチ ール、1,4-ブタンジチオールなどの存在下の 酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリ ウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ 処理によっても除去される。

 原料のカルボキシル基の活性化されたも としては、例えば、対応する酸無水物、ア ド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペ ンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェ ノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメ ルアルコール、パラニトロフェノール、HONB N-ヒドロキシスクシミド、N-ヒドロキシフタ ルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いら る。原料のアミノ基の活性化されたものと ては、例えば、対応するリン酸アミドが用 られる。

 WDR6のアミド体を得る別の方法としては、例 えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα-カ ルボキシル基をアミド化して保護した後、ア ミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ば した後、該ペプチド鎖のN末端のα-アミノ基 保護基のみを除いた蛋白質(ペプチド)とC末 のカルボキシル基の保護基のみを除去した 白質(ペプチド)とを製造し、この両蛋白質( プチド)を上記したような混合溶媒中で縮合 せる。縮合反応の詳細については上記と同 である。縮合により得られた保護蛋白質(保 護ペプチド)を精製した後、上記方法により べての保護基を除去し、所望の粗蛋白質(粗 プチド)を得ることができる。この粗蛋白質 (粗ペプチド)は既知の各種精製手段を駆使し 精製し、主要画分を凍結乾燥することで所 のWDR6のアミド体を得ることができる。
 WDR6のエステル体は、例えば、カルボキシ末 端アミノ酸のα-カルボキシル基を所望のアル コール類と縮合しアミノ酸エステルとした後 、上記WDR6のアミド体の場合と同様にして得 ことができる。

 本発明の部分ペプチドは、WDR6の全長蛋白 質を適当なペプチダーゼで切断することによ っても製造することができる。

 さらに、WDR6は、それをコードする核酸を含 有する形質転換体を培養し、得られる培養物 からWDR6を分離精製することによって製造す こともできる。WDR6またはその部分ペプチド コードする核酸はDNAであってもRNAであって よく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい 。好ましくはDNAが挙げられる。また、該核酸 は二本鎖であっても、一本鎖であってもよい 。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまた はDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の 合は、センス鎖(即ち、コード鎖)であっても 、アンチセンス鎖(即ち、非コード鎖)であっ もよい。
 WDR6またはその部分ペプチドをコードするDNA としては、ゲノムDNA、温血動物(例えば、ヒ 、ウシ、サル、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス ウサギ、ハムスター、トリなど)のあらゆる 胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グ リア細胞、膵β細胞、骨髄細胞、メサンギウ 細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上 細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線 芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免 細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、 チュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、 塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞 、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、 乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、または これら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン 細胞など]もしくはそれらの細胞が存在する らゆる組織[例えば、脳、脳の各部位(例、嗅 球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床 下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂 、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺 胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例、 腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下 腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子 宮、骨、関節、脂肪組織(例、褐色脂肪組織 白色脂肪組織)、骨格筋など]由来のcDNA、合 DNAなどが挙げられる。WDR6またはその部分ペ チドをコードするゲノムDNAおよびcDNAは、上 記した細胞・組織より調製したゲノムDNA画分 および全RNAもしくはmRNA画分をそれぞれ鋳型 して用い、Polymerase Chain Reaction(以下、「PCR 」と略称する)およびReverse Transcriptase-PCR(以 下、「RT-PCR法」と略称する)によって直接増 することもできる。あるいは、WDR6またはそ 部分ペプチドをコードするゲノムDNAおよびc DNAは、上記した細胞・組織より調製したゲノ ムDNAおよび全RNAもしくはmRNAの断片を適当な クター中に挿入して調製されるゲノムDNAラ ブラリーおよびcDNAライブラリーから、コロ ーもしくはプラークハイブリダイゼーショ 法またはPCR法などにより、それぞれクロー ングすることもできる。ライブラリーに使 するベクターは、バクテリオファージ、プ スミド、コスミド、ファージミドなどいず であってもよい。

 WDR6をコードするDNAとしては、例えば、配列 番号:1で表される塩基配列を含有するDNA、ま は配列番号:1で表される塩基配列とストリ ジェントな条件下でハイブリダイズする塩 配列を含有し、前記したWDR6と実質的に同質 活性(例:IRS-4への結合活性、IRS-4のリン酸化 御活性など)を有する蛋白質をコードするDNA などが挙げられる。
 配列番号:1で表される塩基配列とストリン ェントな条件下でハイブリダイズできるDNA しては、例えば、配列番号:1で表される塩基 配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、さら に好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90% 以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNA などが用いられる。
 本明細書における塩基配列の相同性は、相 性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center f or Biotechnology Information Basic Local Alignment Sea rch Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャッ プを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1; スマッチスコア=-3)にて計算することができ る。塩基配列の相同性を決定するための他の アルゴリズムとしては、上記したアミノ酸配 列の相同性計算アルゴリズムが同様に好まし く例示される。

 ハイブリダイゼーションは、自体公知の方 あるいはそれに準じる方法、例えば、モレ ュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版( J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press,  1989)に記載の方法などに従って行なうことが きる。また、市販のライブラリーを使用す 場合、ハイブリダイゼーションは、添付の 用説明書に記載の方法に従って行なうこと できる。ハイブリダイゼーションは、好ま くは、ストリンジェントな条件に従って行 うことができる。
 ハイストリンジェントな条件としては、例 ば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)中45℃で ハイブリダイゼーション反応の後、0.2×SSC/0 .1% SDS中65℃での一回以上の洗浄などが挙げ れる。当業者は、ハイブリダイゼーション 液の塩濃度、ハイブリダゼーション反応の 度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミス ッチの数、ハイブリダイゼーション反応の 間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜 更することにより、所望のストリンジェン ーに容易に調節することができる。

 WDR6をコードするDNAは、好ましくは配列番 号:1で表される塩基配列で示されるヒトWDR6蛋 白質をコードする塩基配列を含有するDNA(GenBa nkアクセッション番号:AF099100)、あるいは他の 哺乳動物におけるそのホモログ[例えば、GenBa nkにそれぞれアクセッション番号AF348591およ XM_516448として登録されているマウスおよび ンパンジーホモログ等]である。

 本発明の部分ペプチドをコードするDNAは 配列番号:2で表されるアミノ酸配列の一部 同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列 有するペプチドをコードする塩基配列を含 ものであればいかなるものであってもよい 具体的には、本発明の部分ペプチドをコー するDNAとしては、例えば、(1)配列番号:1で表 される塩基配列の部分塩基配列を有するDNA、 または(2)配列番号:1で表される塩基配列を有 るDNAとストリンジェントな条件下でハイブ ダイズする塩基配列を有し、前記したWDR6と 実質的に同質の活性(例:IRS-4への結合活性、IR S-4のリン酸化制御活性など)を有するペプチ をコードするDNAなどが用いられる。

 WDR6またはその部分ペプチドをコードする DNAは、該WDR6またはその部分ペプチドをコー する塩基配列の一部分を有する合成DNAプラ マーを用いてPCR法によって増幅するか、ま は適当な発現ベクターに組み込んだDNAを、WD R6蛋白質の一部あるいは全領域をコードするD NA断片もしくは合成DNAを標識したものとハイ リダイゼーションすることによってクロー ングすることができる。ハイブリダイゼー ョンは、例えば、モレキュラー・クローニ グ(Molecular Cloning)第2版(前述)に記載の方法 どに従って行なうことができる。また、市 のライブラリーを使用する場合、ハイブリ イゼーションは、該ライブラリーに添付さ た使用説明書に記載の方法に従って行なう とができる。

 DNAの塩基配列は、公知のキット、例えば、M utan TM -super Express Km(宝酒造(株))、Mutan TM -K(宝酒造(株))等を用いて、ODA-LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるい それらに準じる方法に従って変換すること できる。

 クローン化されたDNAは、目的によりその ま、または所望により制限酵素で消化する 、リンカーを付加した後に、使用すること できる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コ ドンとしてのATGを有し、また3’末端側には 訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有 ていてもよい。これらの翻訳開始コドンや 訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプター 用いて付加することができる。

 WDR6またはその部分ペプチドをコードするDNA を含む発現ベクターは、例えば、WDR6をコー するDNAから目的とするDNA断片を切り出し、 DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモー ーの下流に連結することにより製造するこ ができる。
 発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラ ミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13);枯草菌由来の プラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194);酵母由来プラ ミド(例、pSH19,pSH15);昆虫細胞発現プラスミ (例:pFast-Bac);動物細胞発現プラスミド(例:pA1-1 1、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo);λファージな どのバクテリオファージ;バキュロウイルス どの昆虫ウイルスベクター(例:BmNPV、AcNPV);レ トロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ ウイルスなどの動物ウイルスベクターなどが 用いられる。
 プロモーターとしては、遺伝子の発現に用 る宿主に対応して適切なプロモーターであ ばいかなるものでもよい。
 例えば、宿主が動物細胞である場合、SRαプ ロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモー ー、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター 、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMu LV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK( 純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロ モーターなどが用いられる。なかでも、CMVプ ロモーター、SRαプロモーターなどが好まし 。
 宿主がエシェリヒア属菌である場合、trpプ モーター、lacプロモーター、recAプロモータ ー、λP L プロモーター、lppプロモーター、T7プロモー ーなどが好ましい。
 宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモ ーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター どが好ましい。
 宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、 PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモ ーターなどが好ましい。
 宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリン ロモーター、P10プロモーターなどが好まし 。

 発現ベクターとしては、上記の他に、所望 よりエンハンサー、スプライシングシグナ 、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40 製起点(以下、SV40 oriと略称する場合がある) などを含有しているものを用いることができ る。選択マーカーとしては、例えば、ジヒド ロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、dhfrと略称する 合がある、メソトレキセート(MTX)耐性)、ア ピシリン耐性遺伝子(以下、amp r と略称する場合がある)、ネオマイシン耐性 伝子(以下、neo r と略称する場合がある、G418耐性)等が挙げら る。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハム スター細胞を用い、dhfr遺伝子を選択マーカ として使用する場合、チミジンを含まない 地によって目的遺伝子を選択することもで る。
 また、必要に応じて、宿主に合ったシグナ 配列をコードする塩基配列(シグナルコドン )を、WDR6またはその部分ペプチドをコードす DNAの5’末端側に付加(またはネイティブな グナルコドンと置換)してもよい。例えば、 主がエシェリヒア属菌である場合、PhoA・シ グナル配列、OmpA・シグナル配列などが;宿主 バチルス属菌である場合、α-アミラーゼ・ グナル配列、サブチリシン・シグナル配列 どが;宿主が酵母である場合、MFα・シグナ 配列、SUC2・シグナル配列などが;宿主が動物 細胞である場合、インスリン・シグナル配列 、α-インターフェロン・シグナル配列、抗体 分子・シグナル配列などがそれぞれ用いられ る。

 上記したWDR6またはその部分ペプチドをコー ドするDNAを含む発現ベクターで宿主を形質転 換し、得られる形質転換体を培養することに よって、WDR6またはその部分ペプチドを製造 ることができる。
 宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌 バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動 細胞などが用いられる。
 エシェリヒア属菌としては、例えば、エシ リヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシ ージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデ ミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユ ーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160 ( 1968)〕,エシェリヒア・コリJM103〔ヌクレイッ ・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research),9 巻,309 (1981)〕,エシェリヒア・コリJA221〔ジャ ーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー (Journal of Molecular Biology),120巻,517 (1978)〕,エ ェリヒア・コリHB101〔ジャーナル・オブ・ レキュラー・バイオロジー,41巻,459 (1969)〕, シェリヒア・コリC600〔ジェネティックス(Ge netics),39巻,440 (1954)〕などが用いられる。
 バチルス属菌としては、例えば、バチルス サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン (Gen e),24巻,255 (1983)〕,バチルス・サブチルス207-21 〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Jo urnal of Biochemistry),95巻,87 (1984)〕などが用い れる。
 酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R - ,NA87-11A,DKD-5D,20B-12、シゾサッカロマイセス・ ンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピ ア・パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用い られる。

 昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNP Vの場合、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera  frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由 のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh Five TM 細胞、Mamestra brassicae由来の細胞、Estigmena acr ea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがB mNPVの場合、昆虫細胞としては、蚕由来株化 胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられ る。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC  CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ ィボ(In Vivo),13, 213-217,(1977))などが用いられ る。
 昆虫としては、例えば、カイコの幼虫など 用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315 ,592 (1985)〕。

 動物細胞としては、例えば、サルCOS-7細胞 サルVero細胞、チャイニーズハムスター卵巣 胞(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損CHO 胞(以下、CHO(dhfr - )細胞と略記)、マウスL細胞,マウスAtT-20細胞 マウスミエローマ細胞,ラットGH3細胞、ヒトF L細胞などが用いられる。

 形質転換は、宿主の種類に応じ、公知の方 に従って実施することができる。
 エシェリヒア属菌は、例えば、プロシージ グズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエ エー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110 (1972) ジーン(Gene),17巻,107 (1982)などに記載の方法 従って形質転換することができる。
 バチルス属菌は、例えば、モレキュラー・ ンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecu lar & General Genetics),168巻,111 (1979)などに 載の方法に従って形質転換することができ 。
 酵母は、例えば、メソッズ・イン・エンザ モロジー(Methods in Enzymology),194巻,182-187 (199 1)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナ ・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オ ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA ),75巻,1929 (1978)などに記載の方法に従って形 転換することができる。
 昆虫細胞および昆虫は、例えば、バイオ/テ クノロジー(Bio/Technology),6巻,47-55 (1988)などに 載の方法に従って形質転換することができ 。
 動物細胞は、例えば、細胞工学別冊8 新細 工学実験プロトコール,263-267 (1995)(秀潤社 行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456 (1973)に記 載の方法に従って形質転換することができる 。

 形質転換体の培養は、宿主の種類に応じ、 知の方法に従って実施することができる。
 例えば、宿主がエシェリヒア属菌またはバ ルス属菌である形質転換体を培養する場合 培養に使用される培地としては液体培地が ましい。また、培地は、形質転換体の生育 必要な炭素源、窒素源、無機物などを含有 ることが好ましい。ここで、炭素源として 、例えば、グルコース、デキストリン、可 性澱粉、ショ糖などが;窒素源としては、例 えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーン スチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉 エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無 機または有機物質が;無機物としては、例え 、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウ 、塩化マグネシウムなどがそれぞれ挙げら る。また、培地には、酵母エキス、ビタミ 類、生長促進因子などを添加してもよい。 地のpHは、好ましくは約5~約8である。
 宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体 培養する場合の培地としては、例えば、グ コース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(M iller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ イン・モレキュラー・ジェネティックス (Jo urnal of Experiments in Molecular Genetics), 431-433, Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好 ましい。必要により、プロモーターを効率よ く働かせるために、例えば、3β-インドリル クリル酸のような薬剤を培地に添加しても い。
 宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体 培養は、通常約15~約43℃で、約3~約24時間行 われる。必要により、通気や撹拌を行って よい。
 宿主がバチルス属菌である形質転換体の培 は、通常約30~約40℃で、約6~約24時間行なわ る。必要により、通気や撹拌を行ってもよ 。
 宿主が酵母である形質転換体を培養する場 の培地としては、例えば、バークホールダ (Burkholder)最小培地〔Bostian, K.L.ら,プロシー ングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミ ・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユー スエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505 (198 0)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter,  G.A.ら,プロシージングズ・オブ・ザ・ナシ ナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci.  USA),81巻,5330 (1984)〕などが挙げられる。培 のpHは、好ましくは約5~約8である。培養は、 通常約20℃~約35℃で、約24~約72時間行なわれ 。必要に応じて、通気や撹拌を行ってもよ 。
 宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換 を培養する場合の培地としては、例えばGrac e's Insect Medium〔Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature) ,195巻,788 (1962)〕に非働化した10%ウシ血清等 添加物を適宜加えたものなどが用いられる 培地のpHは、好ましくは約6.2~約6.4である。 養は、通常約27℃で、約3~約5日間行なわれる 。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
 宿主が動物細胞である形質転換体を培養す 場合の培地としては、例えば、約5~約20%の 児ウシ血清を含む最小必須培地(MEM)〔サイエ ンス(Science),122巻,501 (1952)〕,ダルベッコ改変 ーグル培地(DMEM)〔ヴィロロジー(Virology),8巻, 396 (1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ ザ・アメリカン・メディカル・アソシエー ョン(The Journal of the American Medical Associatio n),199巻,519 (1967)〕,199培地〔プロシージング オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バ オロジカル・メディスン(Proceeding of the Soci ety for the Biological Medicine),73巻,1 (1950)〕な が用いられる。培地のpHは、好ましくは約6~ 8である。培養は、通常約30℃~約40℃で、約1 5~約60時間行なわれる。必要に応じて通気や 拌を行ってもよい。
 以上のようにして、形質転換体の細胞内ま は細胞外にWDR6(またはRAIG3)類を製造せしめ ことができる。

 前記形質転換体を培養して得られる培養物 らWDR6またはその部分ペプチドを自体公知の 方法に従って分離精製することができる。
 例えば、WDR6またはその部分ペプチドを培養 菌体あるいは細胞の細胞質から抽出する場合 、培養物から公知の方法で集めた菌体あるい は細胞を適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リ ゾチームおよび/または凍結融解などによっ 菌体あるいは細胞を破壊した後、遠心分離 ろ過により可溶性蛋白質の粗抽出液を得る 法などが適宜用いられる。該緩衝液は、尿 や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、 リトンX-100 TM などの界面活性剤を含んでいてもよい。一方 、膜画分からWDR6またはその部分ペプチドを 出する場合は、上記と同様に菌体あるいは 胞を破壊した後、低速遠心で細胞デブリス 沈澱除去し、上清を高速遠心して細胞膜含 画分を沈澱させる(必要に応じて密度勾配遠 などにより細胞膜画分を精製する)などの方 法が用いられる。また、WDR6またはその部分 プチドが菌体(細胞)外に分泌される場合には 、培養物から遠心分離またはろ過等により培 養上清を分取するなどの方法が用いられる。
 このようにして得られた可溶性画分、膜画 あるいは培養上清中に含まれるWDR6またはそ の部分ペプチドの単離精製は、自体公知の方 法に従って行うことができる。このような方 法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度 を利用する方法;透析法、限外ろ過法、ゲル 過法、およびSDS-ポリアクリルアミドゲル電 泳動法などの主として分子量の差を利用す 方法;イオン交換クロマトグラフィーなどの 荷電の差を利用する方法;アフィニティーク マトグラフィーなどの特異的親和性を利用 る方法;逆相高速液体クロマトグラフィーな の疎水性の差を利用する方法;等電点電気泳 動法などの等電点の差を利用する方法;など 用いられる。これらの方法は、適宜組み合 せることもできる。

 かくして得られる蛋白質またはペプチドが 離体である場合には、自体公知の方法ある はそれに準じる方法によって、該遊離体を に変換することができ、蛋白質またはペプ ドが塩として得られた場合には、自体公知 方法あるいはそれに準じる方法により、該 を遊離体または他の塩に変換することがで る。
 なお、形質転換体が産生するWDR6またはその 部分ペプチドを、精製前または精製後に適当 な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任 意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的 に除去することもできる。該蛋白修飾酵素と しては、例えば、トリプシン、キモトリプシ ン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテ インキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いら れる。
 かくして得られるWDR6またはその部分ペプチ ドの存在は、WDR6に対する抗体を用いたエン イムイムノアッセイやウエスタンブロッテ ングなどにより確認することができる。

 さらに、WDR6またはその部分ペプチドは、上 記のWDR6またはその部分ペプチドをコードす DNAに対応するRNAを鋳型として、ウサギ網状 血球ライセート、コムギ胚芽ライセート、 腸菌ライセートなどからなる無細胞蛋白質 訳系を用いてインビトロ合成することがで る。あるいは、さらにRNAポリメラーゼを含 無細胞転写/翻訳系を用いて、WDR6またはその 部分ペプチドをコードするDNAを鋳型としても 合成することができる。無細胞蛋白質転写/ 訳系は市販のものを用いることもできるし それ自体既知の方法、具体的には大腸菌抽 液はPratt J.M.ら, “Transcription and Tranlation” , Hames B.D.およびHiggins S.J.編, IRL Press, Oxfor d 179-209 (1984) に記載の方法等に準じて調製 ることもできる。市販の細胞ライセートと ては、大腸菌由来のものはE.coli S30 extract  system (Promega社製) やRTS 500 Rapid Tranlation Sys tem (Roche社製) 等が挙げられ、ウサギ網状赤 球由来のものはRabbit Reticulocyte Lysate System (Promega社製) 等、さらにコムギ胚芽由来のも のはPROTEIOS TM  (TOYOBO社製) 等が挙げられる。このうちコム ギ胚芽ライセートを用いたものが好適である 。コムギ胚芽ライセートの作製法としては、 例えばJohnston F.B.ら, Nature, 179, 160-161 (1957) あるいはErickson A.H.ら, Meth. Enzymol., 96, 38-5 0 (1996) 等に記載の方法を用いることができ 。
 蛋白質合成のためのシステムまたは装置と ては、バッチ法(Pratt,J.M.ら (1984) 前述)や、 アミノ酸、エネルギー源等を連続的に反応系 に供給する連続式無細胞蛋白質合成システム (Spirin A.S.ら, Science, 242, 1162-1164 (1988))、透 法(木川ら、第21回日本分子生物学会、WID6) あるいは重層法(PROTEIOS TM Wheat germ cell-free protein synthesis core kit取扱 明書:TOYOBO社製)等が挙げられる。さらには 合成反応系に、鋳型のRNA、アミノ酸、エネ ギー源等を必要時に供給し、合成物や分解 を必要時に排出する方法(特開2000-333673)等を いることができる。

 本発明において「WDR6の発現を抑制する物 質」とは、WDR6遺伝子の転写レベル、転写後 節のレベル、蛋白質への翻訳レベル、翻訳 修飾のレベル等のいかなる段階で作用する のであってもよい。従って、WDR6の発現を抑 する物質としては、例えば、該遺伝子の転 を阻害する物質、初期転写産物からmRNAへの プロセッシングを阻害する物質、mRNAの細胞 への輸送を阻害する物質、mRNAの分解を促進 る物質、mRNAから蛋白質への翻訳を阻害する 物質、WDR6ポリペプチドの翻訳後修飾を阻害 る物質などが含まれる。いずれの段階で作 するものであっても好ましく用いることが きるが、WDR6蛋白質の産生を直接的に阻害す という意味では、mRNAから蛋白質への翻訳を 阻害する物質が好ましい。

 WDR6のmRNAから蛋白質への翻訳を特異的に 害する物質として、好ましくは、該mRNAの塩 配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩 配列またはその一部を含む核酸が挙げられ 。

 WDR6蛋白質、即ち配列番号:2で表されるアミ 酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ 酸配列を含有する蛋白質、をコードする塩 配列またはその一部、あるいは該塩基配列 相補的な塩基配列またはその一部を含有す 核酸とは、前述のWDR6またはその部分ペプチ ドをコードする核酸だけではなく、フレーム の合わない塩基配列をも含む意味で用いられ る。
 目的核酸の標的領域と相補的もしくは実質 に相補的な塩基配列を含む核酸、即ち、目 核酸とハイブリダイズすることができる核 は、該目的核酸に対して「アンチセンス」 あるということができる。一方、目的核酸 標的領域と相同性を有する塩基配列を含む 酸は、該目的核酸に対して「センス」であ ということができる。ここで「相同性を有 る」とは、塩基配列間で約70%以上、好まし は約80%以上、より好ましくは約90%以上、最 好ましくは約95%以上の同一性または相補性 有することをいい、「実質的に相補的であ 」とは、塩基配列間で約70%以上、好ましく 約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も ましくは約95%以上の相補性を有することを う。

 好ましくは、WDR6蛋白質をコードする塩基配 列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配 列としては、(a)配列番号:1で表される塩基配 または(b)該塩基配列の相補鎖配列とハイス リンジェントな条件下でハイブリダイズす 塩基配列であって、配列番号:2で表される ミノ酸配列からなる蛋白質と実質的に同質 活性を有する蛋白質をコードする配列と、 補的もしくは実質的に相補的な塩基配列が げられる。ここで「実質的に同質の活性」 は前記と同義である。
 ハイストリンジェントな条件としては、例 ば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)中45℃で ハイブリダイゼーション反応の後、0.2×SSC/0 .1% SDS中65℃での一回以上の洗浄などが挙げ れる。

 より好ましくは、WDR6蛋白質をコードする 塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な 塩基配列としては、(a)配列番号:1で表される トWDR6 mRNAの塩基配列、または他の哺乳動物 におけるそのホモログ、さらにはそれらの天 然のアレル変異体のmRNA配列と、相補的もし は実質的に相補的な塩基配列が挙げられる

 「WDR6のmRNAの塩基配列と相補的もしくは 質的に相補的な塩基配列の一部」とは、WDR6 mRNAに特異的に結合することができ、且つ該 mRNAからのタンパク質の翻訳を阻害し得るも であれば、その長さや位置に特に制限はな が、配列特異性の面から、標的配列に相補 もしくは実質的に相補的な部分を少なくと 10塩基以上、好ましくは約15塩基以上、より ましくは約20塩基以上含むものである。

 具体的には、WDR6のmRNAの塩基配列と相補的 しくは実質的に相補的な塩基配列またはそ 一部を含む核酸(以下、「WDR6に対するアンチ センス核酸」、「本発明のアンチセンス核酸 」ともいう)として、以下の(i)~(iii)のいずれ のものが好ましく例示される。
(i) WDR6のmRNAに対するアンチセンス核酸(=狭義 のアンチセンス核酸)
(ii) WDR6のmRNAに対するsiRNA
(iii) WDR6のmRNAに対するsiRNAを生成し得る核酸

(i) WDR6のmRNAに対する(狭義の)アンチセンス核 酸
 本発明における、WDR6のmRNAに対する「狭義 」アンチセンス核酸とは、該mRNAの塩基配列 相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列 たはその一部を含む核酸であって、標的mRNA と特異的かつ安定した二重鎖を形成して結合 することにより、タンパク質合成を抑制する 機能を有するものである(以下、本項目(i)に いて「本発明のアンチセンス核酸」という 合は、狭義のWDR6に対するアンチセンス核酸 意味し、それ以外の部分で「本発明のアン センス核酸」という場合は、特に断らない り、WDR6のmRNAの塩基配列と相補的もしくは 質的に相補的な塩基配列またはその一部を む核酸を包括的に指す用語として用いられ )。
 アンチセンス核酸は、2-デオキシ-D-リボー を含有しているポリデオキシリボヌクレオ ド、D-リボースを含有しているポリリボヌク レオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN- リコシドであるその他のタイプのポリヌク オチド、非ヌクレオチド骨格を有するその のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸 および合成配列特異的な核酸ポリマー)また 特殊な結合を含有するその他のポリマー(但 、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるよう 塩基のペアリングや塩基の付着を許容する 置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙 げられる。それらは、二本鎖DNA、一本鎖DNA、 二本鎖RNA、一本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドで ってもよく、さらに非修飾ポリヌクレオチ (または非修飾オリゴヌクレオチド)、公知の 修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知 られた標識のあるもの、キャップの付いたも の、メチル化されたもの、1個以上の天然の クレオチドを類縁物で置換したもの、分子 ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非 電結合(例えば、メチルホスホネート、ホス トリエステル、ホスホルアミデート、カル メートなど)を持つもの、電荷を有する結合 または硫黄含有結合(例、ホスホロチオエー 、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、 えばタンパク質(例、ヌクレアーゼ、ヌクレ アーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シ グナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)や糖(例 モノサッカライドなど)などの側鎖基を有し ているもの、インターカレント化合物(例、 クリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレ ト化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金 属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有する の、アルキル化剤を含有するもの、修飾さ た結合を持つもの(例えば、α-アノマー型の 酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオ シド」、「ヌクレオチド」および「核酸」と は、プリンおよびピリミジン塩基を含有する のみでなく、修飾されたその他の複素環型塩 基をもつようなものを含んでいて良い。この ような修飾物は、メチル化されたプリンおよ びピリミジン、アシル化されたプリンおよび ピリミジン、あるいはその他の複素環を含む ものであってよい。修飾されたヌクレオシド および修飾されたヌクレオチドはまた糖部分 が修飾されていてよく、例えば、1個以上の 酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換 れていたり、またはエーテル、アミンなど 官能基に変換されていてよい。

 上記の通り、アンチセンス核酸はDNAであ てもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメ ラであってもよい。アンチセンス核酸がDNAの 場合、標的RNAとアンチセンスDNAとによって形 成されるRNA:DNAハイブリッドは、内在性RNase H に認識されて標的RNAの選択的な分解を引き起 こすことができる。したがって、RNase Hによ 分解を指向するアンチセンスDNAの場合、標 配列は、mRNA中の配列だけでなく、WDR6遺伝 の初期翻訳産物におけるイントロン領域の 列であってもよい。例えば、ヒトの場合、WD R6遺伝子は第3番染色体の3p21.31領域に存在す ので、この領域のゲノム配列と、配列番号:1 で表されるヒトWDR6 cDNA塩基配列とをBLAST、FAS TA等のホモロジー検索プログラムを用いて比 して、イントロン配列を決定することがで る。

 本発明のアンチセンス核酸の標的領域は 該アンチセンス核酸がハイブリダイズする とにより、結果としてWDR6タンパク質への翻 訳が阻害されるものであればその長さに特に 制限はなく、これらタンパク質をコードする mRNAの全配列であっても部分配列であっても く、短いもので約10塩基程度、長いものでmRN Aもしくは初期転写産物の全配列が挙げられ 。合成の容易さや抗原性、細胞内移行性の 題等を考慮すれば、約10~約40塩基、特に約15~ 約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ま いが、それに限定されない。具体的には、W DR6遺伝子の5'端ヘアピンループ、5'端6-ベース ペア・リピート、5'端非翻訳領域、翻訳開始 ドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳終止 ドン、3'端非翻訳領域、3'端パリンドローム 領域または3'端ヘアピンループなどが、アン センス核酸の好ましい標的領域として選択 うるが、それらに限定されない。

 さらに、本発明のアンチセンス核酸は、W DR6のmRNAや初期転写産物とハイブリダイズし タンパク質への翻訳を阻害するだけでなく 二本鎖DNAであるこれらの遺伝子と結合して 重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAへの転写 を阻害し得るもの(アンチジーン)であっても い。

 アンチセンス核酸を構成するヌクレオチド 子は、天然型のDNAもしくはRNAでもよいが、 定性(化学的および/または対酵素)や比活性( RNAとの親和性)を向上させるために、種々の 学修飾を含むことができる。例えば、ヌク アーゼなどの加水分解酵素による分解を防 ために、アンチセンス核酸を構成する各ヌ レオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例 えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホス ネート、ホスホロジチオネートなどの化学 飾リン酸残基に置換することができる。ま 、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2'位の水 基を、-OR(Rは、例えばCH 3 (2'-O-Me)、CH 2 CH 2 OCH 3 (2'-O-MOE)、CH 2 CH 2 NHC(NH)NH 2 、CH 2 CONHCH 3 、CH 2 CH 2 CN等を示す)に置換してもよい。さらに、塩基 部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施し もよく、例えば、ピリミジン塩基の5位への メチル基やカチオン性官能基の導入、あるい は2位のカルボニル基のチオカルボニルへの 換などが挙げられる。

 RNAの糖部のコンフォーメーションはC2'-end o(S型)とC3'-endo(N型)の2つが支配的であり、一 鎖RNAではこの両者の平衡として存在するが 二本鎖を形成するとN型に固定される。した って、標的RNAに対して強い結合能を付与す ために、2'酸素と4’炭素を架橋することに り、糖部のコンフォーメーションをN型に固 定したRNA誘導体であるBNA(LNA)(Imanishi, T. et al ., Chem. Commun., 1653-9, 2002; Jepsen, J.S. et al.,  Oligonucleotides, 14, 130-46, 2004)やENA(Morita, K.  et al., Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids, 22, 16 19-21, 2003)もまた、好ましく用いられ得る。

 本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチ は、WDR6のcDNA配列もしくはゲノミックDNA配 に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的 列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプ イド・バイオシステムズ社、ベックマン社 )を用いて、これに相補的な配列を合成する とにより調製することができる。また、上 した各種修飾を含むアンチセンス核酸も、 ずれも自体公知の手法により、化学的に合 することができる。

(ii) WDR6のmRNAに対するsiRNA
 本明細書においては、WDR6のmRNAに相補的な リゴRNAとその相補鎖とからなる二本鎖RNA、 わゆるsiRNAもまた、WDR6のmRNAの塩基配列と相 的もしくは実質的に相補的な塩基配列また その一部を含む核酸に包含されるものとし 定義される。短い二本鎖RNAを細胞内に導入 るとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、い わゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前か ら線虫、昆虫、植物等で知られていたが、こ の現象が動物細胞でも広く起こることが確認 されて以来[Nature, 411(6836): 494-498 (2001)]、リ ザイムの代替技術として汎用されている。s iRNAは標的となるmRNAの塩基配列情報に基づい 、市販のソフトウェア(例:RNAi Designer; Invitr ogen)を用いて適宜設計することができる。

 siRNAを構成するリボヌクレオシド分子も た、安定性、比活性などを向上させるため 、上記のアンチセンス核酸の場合と同様の 飾を受けていてもよい。但し、siRNAの場合、 天然型RNA中のすべてのリボヌクレオシド分子 を修飾型で置換すると、RNAi活性が失われる 合があるので、RISC複合体が機能できる最小 の修飾ヌクレオシドの導入が必要である。

 siRNAは、mRNA上の標的配列のセンス鎖及び ンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ 合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90~ 約95℃で約1分程度変性させた後、約30~約70℃ 約1~約8時間アニーリングさせることにより 製することができる。また、siRNAの前駆体 なるショートヘアピンRNA(shRNA)を合成し、こ をダイサー(dicer)を用いて切断することによ り調製することもできる。

(iii) WDR6のmRNAに対するsiRNAを生成し得る核酸
 本明細書においては、生体内で上記のWDR6の mRNAに対するsiRNAを生成し得るようにデザイン された核酸もまた、WDR6のmRNAの塩基配列と相 的もしくは実質的に相補的な塩基配列また その一部を含む核酸に包含されるものとし 定義される。そのような核酸としては、上 したshRNAやそれを発現するように構築され 発現ベクターなどが挙げられる。shRNAは、mRN A上の標的配列のセンス鎖およびアンチセン 鎖を適当なループ構造を形成しうる長さ(例 ば15から25塩基程度)のスペーサー配列を間 挿入して連結した塩基配列を含むオリゴRNA デザインし、これをDNA/RNA自動合成機で合成 ることにより調製することができる。shRNA 発現カセットを含む発現ベクターは、上記sh RNAをコードする二本鎖DNAを常法により作製し た後、適当な発現ベクター中に挿入すること により調製することができる。shRNAの発現ベ ターとしては、U6やH1などのPol III系プロモ ターを有するものが用いられ得る。この場 、該発現ベクターを導入された動物細胞内 転写されたshRNAは、自身でループを形成し 後に、内在の酵素ダイサー(dicer)などによっ プロセシングされることにより成熟siRNAが 成される。

 WDR6のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実 的に相補的な塩基配列またはその一部を含 核酸の他の好ましい例としては、該mRNAをコ ド領域の内部で特異的に切断し得るリボザ ムが挙げられる。「リボザイム」とは、狭 には、核酸を切断する酵素活性を有するRNA いうが、本明細書では配列特異的な核酸切 活性を有する限りDNAをも包含する概念とし 用いるものとする。リボザイムとして最も 用性の高いものとしては、ウイロイドやウ ルソイド等の感染性RNAに見られるセルフス ライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型や アピン型等が知られている。ハンマーヘッ 型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハ マーヘッド構造をとる部分に隣接する両端 数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所 望の切断部位と相補的な配列にすることによ り、標的mRNAのみを特異的に切断することが 能である。このタイプのリボザイムは、RNA みを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃する とがないというさらなる利点を有する。WDR6 mRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNA リカーゼと特異的に結合し得るウイルス核 由来のRNAモチーフを連結したハイブリッド ボザイムを用いることにより、標的配列を 本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci . USA, 98(10): 5572-5577 (2001)]。さらに、リボザ イムを、それをコードするDNAを含む発現ベク ターの形態で使用する場合には、転写産物の 細胞質への移行を促進するために、tRNAを改 した配列をさらに連結したハイブリッドリ ザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001)]。

 WDR6のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実 的に相補的な塩基配列またはその一部を含 核酸は、リポソーム、ミクロスフェアのよ な特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療 適用されたり、付加された形態で与えられ ことができうる。こうして付加形態で用い れるものとしては、リン酸基骨格の電荷を 和するように働くポリリジンのようなポリ チオン体、細胞膜との相互作用を高めたり 核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例 ホスホリピド、コレステロールなど)などの 疎水性のものが挙げられる。付加するに好ま しい脂質としては、コレステロールやその誘 導体(例、コレステリルクロロホルメート、 ール酸など)が挙げられる。こうしたものは 核酸の3'端または5'端に付着させることがで き、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介 して付着させることができうる。その他の基 としては、核酸の3'端または5'端に特異的に 置されたキャップ用の基で、エキソヌクレ ーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を 阻止するためのものが挙げられる。こうした キャップ用の基としては、ポリエチレングリ コール、テトラエチレングリコールなどのグ リコールをはじめとした当該分野で知られた 水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定 されるものではない。

 これらの核酸のWDR6タンパク質発現阻害活 性は、WDR6遺伝子を導入した形質転換体、生 内や生体外のWDR6遺伝子発現系、または生体 や生体外のWDR6タンパク質翻訳系を用いて調 べることができる。

 本発明におけるWDR6の発現を抑制する物質 は、上記のようなWDR6のmRNAの塩基配列と相補 もしくは実質的に相補的な塩基配列または の一部を含む核酸に限定されず、WDR6タンパ ク質の産生を直接的または間接的に阻害する 限り、低分子化合物などの他の物質であって もよい。そのような物質は、例えば、後述す る本発明のスクリーニング方法により取得す ることができる。

 本発明において「WDR6の活性を抑制する物 質」とは、いったん機能的に産生されたWDR6 ンパク質が、IRS-4と相互作用して該分子のリ ン酸化を制御する作用を抑制する限り、いか なるものであってもよく、例えば、WDR6とIRS-4 との複合体形成を阻害する物質や、WDR6のIRS-4 に対するリン酸化制御活性を阻害する物質等 が挙げられる。

 具体的には、WDR6の活性を抑制する物質とし て、例えば、WDR6に対する中和抗体が挙げら る。該抗体はポリクローナル抗体、モノク ーナル抗体の何れであってもよい。これら 抗体は、自体公知の抗体または抗血清の製 法に従って製造することができる。抗体の イソタイプは特に限定されないが、好まし はIgG、IgMまたはIgA、特に好ましくはIgGが挙 られる。また、該抗体は、標的抗原を特異 に認識し結合するための相補性決定領域(CDR) を少なくとも有するものであれば特に制限は なく、完全抗体分子の他、例えばFab、Fab'、F( ab’) 2 等のフラグメント、scFv、scFv-Fc、ミニボディ 、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製 れたコンジュゲート分子、あるいはポリエ レングリコール(PEG)等のタンパク質安定化 用を有する分子等で修飾されたそれらの誘 体などであってもよい。
 以下に、本発明の抗体の免疫原調製法、お び該抗体の製造法について説明する。

(1)抗原の調製
 本発明の抗体を調製するために使用される 原としては、上記したWDR6蛋白質またはその 部分ペプチド(以下、抗体の説明においては 特にことわらない限り、これらを包括して に「WDR6」という)、あるいはそれと同一の抗 原決定基を1種あるいは2種以上有する(合成) プチドなど、何れのものも使用することが きる(以下、これらを単に本発明の抗原と称 ることもある)。
 WDR6は、上記した通り、例えば、(a)哺乳動物 の組織または細胞から公知の方法あるいはそ れに準ずる方法を用いて調製、(b)ペプチド・ シンセサイザー等を使用する公知のペプチド 合成方法で化学的に合成、(c)WDR6をコードす DNAを含有する形質転換体を培養、あるいは(d )WDR6をコードする核酸を鋳型として無細胞転 /翻訳系を用いて生化学的に合成することに よって製造される。
(a)哺乳動物の組織または細胞からWDR6を調製 る場合、その組織または細胞をホモジナイ した後、粗分画物(例、膜画分、可溶性画分) をそのまま抗原として用いることもできる。 あるいは酸、界面活性剤またはアルコールな どで抽出を行い、該抽出液を、塩析、透析、 ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、イオン 交換クロマトグラフィー、アフィニティーク ロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー を組み合わせることにより精製単離すること もできる。得られたWDR6をそのまま免疫原と ることもできるし、ペプチダーゼ等を用い 限定分解により部分ペプチドを調製してそ を免疫原とすることもできる。
(b)化学的に本発明の抗原を調製する場合、該 合成ペプチドとしては、例えば上述の(a)の方 法を用いて天然材料より精製したWDR6と同一 構造を有するもの、具体的には、WDR6のアミ 酸配列において少なくとも3個以上、好まし くは6個以上のアミノ酸からなる任意の箇所 アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を1種あ いは2種以上含有するペプチドなどが用いら れる。
(c)DNAを含有する形質転換体を用いて本発明の 抗原を製造する場合、該DNAは、公知のクロー ニング方法〔例えば、Molecular Cloning 2nd ed.(J . Sambrook et al., Cold Spring HarborLab. Press, 198 9)に記載の方法など〕に従って作製すること できる。該クローニング方法とは、(1)WDR6を コードする遺伝子配列に基づきデザインした DNAプローブを用い、ヒトcDNAライブラリーか ハイブリダイゼーション法により該抗原を ードするDNAを単離するか、(2)WDR6をコードす 遺伝子配列に基づきデザインしたDNAプライ ーを用い、哺乳動物由来のcDNAを鋳型として PCR法により該抗原をコードするDNAを調製し、 該DNAを宿主に適合する発現ベクターに挿入す る方法などが挙げられる。該発現ベクターで 宿主を形質転換して得られる形質転換体を適 当な培地中で培養することにより、所望の抗 原を得ることができる。
(d)無細胞転写/翻訳系を利用する場合、上記(c )と同様の方法により調製した抗原をコード るDNAを挿入した発現ベクター(例えば、該DNA T7、SP6プロモーター等の制御下におかれた 現ベクターなど)を鋳型とし、該プロモータ に適合するRNAポリメラーゼおよび基質(NTPs) 含む転写反応液を用いてmRNAを合成した後、 該mRNAを鋳型として公知の無細胞翻訳系(例:大 腸菌、ウサギ網状赤血球、コムギ胚芽等の抽 出液)を用いて翻訳反応を行わせる方法など 挙げられる。塩濃度等を適当に調整するこ により、転写反応と翻訳反応を同一反応液 で一括して行うこともできる。

 免疫原としては完全なWDR6蛋白質分子やそ の部分アミノ酸配列を有するペプチドを用い ることができる。部分アミノ酸配列としては 、例えば3個以上の連続するアミノ酸残基か なるもの、好ましくは4個以上、より好まし は5個以上、いっそう好ましくは6個以上の 続するアミノ酸残基からなるものが挙げら る。あるいは、該アミノ酸配列としては、 えば20個以下の連続するアミノ酸残基からな るもの、好ましくは18個以下、より好ましく 15個以下、いっそう好ましくは12個以下の連 続するアミノ酸残基からなるものが挙げられ る。これらのアミノ酸残基の一部(例:1ないし 数個)は置換可能な基(例:Cys、水酸基等)によ て置換されていていもよい。免疫原として いられるペプチドは、このような部分アミ 酸配列を1ないし数個含むアミノ酸配列を有 る。

 あるいは、WDR6を発現する哺乳動物細胞自 体を、本発明の抗原として直接用いることも できる。哺乳動物細胞としては、上記(a)項で 述べたような天然の細胞、上記(c)項で述べた ような方法で形質転換した細胞などを用いる ことができる。形質転換に用いる宿主として は、ヒト、サル、ラット、マウス、ハムスタ ー、ニワトリなどから採取した細胞であれば 何れのものでも良く、HEK293、COS7、CHO-K1、NIH3T 3、Balb3T3、FM3A、L929、SP2/0、P3U1、B16、またはP3 88などが好ましく用いられる。WDR6を発現する 天然の哺乳動物細胞または形質転換した温血 動物細胞は、組織培養に用いられる培地(例 RPMI1640)または緩衝液(例、Hanks’ Balanced Salt Solution)に懸濁された状態で免疫動物に注射 ることができる。免疫方法としては、抗体 生を促すことのできる方法であれば何れの 法でも良く、静脈内注射、腹腔内注射、筋 内注射または皮下注射などが好ましく用い れる。

 本発明の抗原は、免疫原性を有していれ 不溶化したものを直接免疫することもでき が、分子内に1ないし数個の抗原決定基しか 有しない低分子量(例えば、分子量約3,000以下 )の抗原(即ち、WDR6の部分ペプチド)を用いる 合には、これらの抗原は通常免疫原性の低 ハプテン分子なので、適当な担体(キャリア )に結合または吸着させた複合体として免疫 することができる。担体としては天然もしく は合成の高分子を用いることができる。天然 高分子としては、例えばウシ、ウサギ、ヒト などの哺乳動物の血清アルブミンや例えばウ シ、ウサギなどの哺乳動物のサイログロブリ ン、例えばニワトリのオボアルブミン、例え ばウシ、ウサギ、ヒト、ヒツジなどの哺乳動 物のヘモグロビン、キーホールリンペットヘ モシアニン(KLH)などが用いられる。合成高分 としては、例えばポリアミノ酸類、ポリス レン類、ポリアクリル類、ポリビニル類、 リプロピレン類などの重合物または共重合 などの各種ラテックスなどが挙げられる。

 該キャリアーとハプテンとの混合比は、 体に結合あるいは吸着させた抗原に対する 体が効率よく産生されれば、どのようなも をどのような比率で結合あるいは吸着させ もよく、通常ハプテンに対する抗体の作製 あたり常用されている上記の天然もしくは 成の高分子キャリアーを、重量比でハプテ 1に対し0.1~100の割合で結合あるいは吸着さ たものを使用することができる。

 また、ハプテンとキャリアーのカプリン には、種々の縮合剤を用いることができる 例えば、チロシン、ヒスチジン、トリプト ァンを架橋するビスジアゾ化ベンジジンな のジアゾニウム化合物、アミノ基同士を架 するグルタルアルデビトなどのジアルデヒ 化合物、トルエン-2,4-ジイソシアネートな のジイソシアネート化合物、チオール基同 を架橋するN,N’-o-フェニレンジマレイミド どのジマレイミド化合物、アミノ基とチオ ル基を架橋するマレイミド活性エステル化 物、アミノ基とカルボキシル基とを架橋す カルボジイミド化合物などが好都合に用い れる。また、アミノ基同志士を架橋する際 も、一方のアミノ基にジチオピリジル基を する活性エステル試薬(例えば、3-(2-ピリジ ジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジル(SPDP )など)を反応させた後還元することによりチ ール基を導入し、他方のアミノ基にマレイ ド活性エステル試薬によりマレイミド基を 入後、両者を反応させることもできる。

(2)モノクローナル抗体の作製
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
 本発明の抗原は、温血動物に対して、例え 腹腔内注入、静脈注入,皮下注射、皮内注射 などの投与方法によって、抗体産生が可能な 部位にそれ自体単独で、あるいは担体、希釈 剤とともに投与される。投与に際して抗体産 生能を高めるため、完全フロイントアジュバ ントや不完全フロイントアジュバントを投与 してもよい。投与は通常1~6週毎に1回ずつ、 2~10回程度行われる。用いられる温血動物と ては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モル ット、マウス、ラット、ハムスター、ヒツ 、ヤギ、ロバ、ニワトリが挙げられる。抗I g抗体産生の問題を回避するためには投与対 と同一種の哺乳動物を用いることが好まし が、モノクローナル抗体作製には一般にマ スおよびラットが好ましく用いられる。

 ヒトに対する人為的免疫感作は倫理的に 難であることから、本発明の抗体がヒトを 与対象とする場合には、(i)後述する方法に って作製されるヒト抗体産生動物(例:マウ )を免疫してヒト抗体を得る、(ii)後述する方 法に従ってキメラ抗体、ヒト化抗体もしくは 完全ヒト抗体を作製する、あるいは(iii)体外 疫法とウイルスによる細胞不死化、ヒト-ヒ ト(もしくはマウス)ハイブリドーマ作製技術 ファージディスプレイ法等とを組み合わせ ヒト抗体を得ることが好ましい。尚、体外 疫法は、通常の免疫では抗体産生が抑制さ る抗原に対する抗原を取得できる可能性が ることの他、ng~μgオーダーの抗原量で抗体 得ることが可能であること、免疫が数日間 終了することなどから、不安定で大量調製 困難な抗原に対する抗体を得る方法として 非ヒト動物由来の抗体を調製する場合にも ましく用いられ得る。

 体外免疫法に用いられる動物細胞としては ヒトおよび上記した温血動物(好ましくはマ ウス、ラット)の末梢血、脾臓、リンパ節な から単離されるリンパ球、好ましくはBリン 球等が挙げられる。例えば、マウスやラッ 細胞の場合、4~12週齢程度の動物から脾臓を 摘出・脾細胞を分離し、適当な培地(例:ダル ッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI1640培地、 ムF12培地等))で洗浄した後、抗原を含む胎仔 ウシ血清(FCS;5~20%程度)添加培地に浮遊させて4 ~10日間程度CO 2 インキュベーターなどを用いて培養する。抗 原濃度としては、例えば0.05~5μgが挙げられる がこれに限定されない。同一系統の動物(1~2 齢程度が好ましい)の胸腺細胞培養上清を常 に従って調製し、培地に添加することが好 しい。

 ヒト細胞の体外免疫では、胸腺細胞培養 清を得ることは困難なので、IL-2、IL-4、IL-5 IL-6等数種のサイトカインおよび必要に応じ てアジュバント物質(例:ムラミルジペプチド )を抗原とともに培地に添加して免疫感作を 行うことが好ましい。

 モノクローナル抗体の作製に際しては、 原を免疫された温血動物(例:マウス、ラッ )もしくは動物細胞(例:ヒト、マウス、ラッ )から抗体価の上昇が認められた個体もしく 細胞集団を選択し、最終免疫の2~5日後に脾 またはリンパ節を採取もしくは体外免疫後4 ~10日間培養した後に細胞を回収して抗体産生 細胞を単離し、これと骨髄腫細胞とを融合さ せることにより抗体産生ハイブリドーマを調 製することができる。血清中の抗体価の測定 は、例えば標識化抗原と抗血清とを反応させ た後、抗体に結合した標識剤の活性を測定す ることにより行うことができる。

 骨髄腫細胞は多量の抗体を分泌するハイ リドーマを産生し得るものであれば特に制 はないが、自身は抗体を産生もしくは分泌 ないものが好ましく、また、細胞融合効率 高いものがより好ましい。また、ハイブリ ーマの選択を容易にするために、HAT(ヒポキ サンチン、アミノプテリン、チミジン)感受 の株を用いることが好ましい。例えばマウ 骨髄腫細胞としてはNS-1、P3U1、SP2/0、AP-1等が 、ラット骨髄腫細胞としてはR210.RCY3、Y3-Ag 1. 2.3等が、ヒト骨髄腫細胞としてはSKO-007、GM 1 500-6TG-2、LICR-LON-HMy2、UC729-6等が挙げられる。

 融合操作は既知の方法、例えばケーラーと ルスタインの方法[ネイチャー(Nature)、256巻 495頁(1975年)]に従って実施することができる 。融合促進剤としては、ポリエチレングリコ ール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられ が、好ましくはPEGなどが用いられる。PEGの 子量は特に制限はないが、低毒性で且つ粘 が比較的低いPEG1000~PEG6000が好ましい。PEG濃 としては例えば10~80%程度、好ましくは30~50% 度が例示される。PEGの希釈用溶液としては 血清培地(例:RPMI1640)、5~20%程度の血清を含む 完全培地、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリ 緩衝液等の各種緩衝液を用いることができ 。所望によりDMSO(例:10~20%程度)を添加するこ ともできる。融合液のpHとしては、例えば4~10 程度、好ましくは6~8程度が挙げられる。
 抗体産生細胞(脾細胞)数と骨髄細胞数との ましい比率は、通常1:1~20:1程度であり、通常 20~40℃、好ましくは30~37℃で通常1~10分間イン ュベートすることにより効率よく細胞融合 実施できる。

 抗体産生細胞株はまた、リンパ球をトラ スフォームし得るウイルスに抗体産生細胞 感染させて該細胞を不死化することによっ も得ることができる。そのようなウイルス しては、例えばエプスタイン-バー(EB)ウイ ス等が挙げれらる。大多数の人は伝染性単 球症の無症状感染としてこのウイルスに感 した経験があるので免疫を有しているが、 常のEBウイルスを用いた場合にはウイルス粒 子も産生されるので、適切な精製を行うべき である。ウイルス混入の可能性のないEBシス ムとして、Bリンパ球を不死化する能力を保 持するがウイルス粒子の複製能力を欠損した 組換えEBウイルス(例えば、潜伏感染状態から 溶解感染状態への移行のスイッチ遺伝子にお ける欠損など)を用いることもまた好ましい

 マーモセット由来のB95-8細胞はEBウイルスを 分泌しているので、その培養上清を用いれば 容易にBリンパ球をトランスフォームするこ ができる。この細胞を例えば血清及びペニ リン/ストレプトマイシン(P/S)添加培地(例:RPM I1640)もしくは細胞増殖因子を添加した無血清 培地で培養した後、濾過もしくは遠心分離等 により培養上清を分離し、これに抗体産生B ンパ球を適当な濃度(例:約10 7 細胞/mL)で浮遊させて、通常20~40℃、好ましく は30~37℃で通常0.5~2時間程度インキュベート ることにより抗体産生B細胞株を得ることが きる。ヒトの抗体産生細胞が混合リンパ球 して提供される場合、大部分の人はEBウイ ス感染細胞に対して傷害性を示すTリンパ球 有しているので、トランスフォーメーショ 頻度を高めるためには、例えばヒツジ赤血 等とEロゼットを形成させることによってT ンパ球を予め除去しておくことが好ましい また、可溶性抗原を結合したヒツジ赤血球 抗体産生Bリンパ球と混合し、パーコール等 密度勾配を用いてロゼットを分離すること より標的抗原に特異的なリンパ球を選別す ことができる。さらに、大過剰の抗原を添 することにより抗原特異的なBリンパ球はキ ャップされて表面にIgGを提示しなくなるので 、抗IgG抗体を結合したヒツジ赤血球と混合す ると抗原非特異的なBリンパ球のみがロゼッ を形成する。従って、この混合物からパー ール等の密度勾配を用いてロゼット非形成 を採取することにより、抗原特異的Bリンパ を選別することができる。

 トランスフォーメーションによって無限 殖能を獲得したヒト抗体分泌細胞は、抗体 泌能を安定に持続させるためにマウスもし はヒトの骨髄腫細胞と戻し融合させること できる。骨髄腫細胞としては上記と同様の のが用いられ得る。

 ハイブリドーマのスクリーニング、育種は 常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チ ミジン)を添加して、5~20% FCSを含む動物細胞 培地(例:RPMI1640)もしくは細胞増殖因子を添 した無血清培地で行われる。ヒポキサンチ 、アミノプテリンおよびチミジンの濃度と ては、例えばそれぞれ約0.1mM、約0.4μMおよび 約0.016mM等が挙げられる。ヒト-マウスハイブ ドーマの選択にはウワバイン耐性を用いる とができる。ヒト細胞株はマウス細胞株に べてウワバインに対する感受性が高いので 10 -7 ~10 -3 M程度で培地に添加することにより未融合の ト細胞を排除することができる。

 ハイブリドーマの選択にはフィーダー細胞 ある種の細胞培養上清を用いることが好ま い。フィーダー細胞としては、ハイブリド マの出現を助けて自身は死滅するように生 期間が限られた異系の細胞種、ハイブリド マの出現に有用な増殖因子を大量に産生し る細胞を放射線照射等して増殖力を低減さ たもの等が用いられる。例えば、マウスの ィーダー細胞としては、脾細胞、マクロフ ージ、血液、胸腺細胞等が、ヒトのフィー ー細胞としては、末梢血単核細胞等が挙げ れる。細胞培養上清としては、例えば上記 各種細胞の初代培養上清や種々の株化細胞 培養上清が挙げられる。
 また、ハイブリドーマは、抗原を蛍光標識 て融合細胞と反応させた後、蛍光活性化セ ソータ(FACS)を用いて抗原と結合する細胞を 離することによっても選択することができ 。この場合、標的抗原に対する抗体を産生 るハイブリドーマを直接選択することがで るので、クローニングの労力を大いに軽減 ることが可能である。

 標的抗原に対するモノクローナル抗体を産 するハイブリドーマのクローニングには種 の方法が使用できる。
 アミノプテリンは多くの細胞機能を阻害す ので、できるだけ早く培地から除去するこ が好ましい。マウスやラットの場合、ほと どの骨髄腫細胞は10~14日以内に死滅するの 、融合2週間後からはアミノプテリンを除去 ることができる。但し、ヒトハイブリドー については通常融合後4~6週間程度はアミノ テリン添加培地で維持される。ヒポキサン ン、チミジンはアミノプテリン除去後1週間 以上後に除去するのが望ましい。即ち、マウ ス細胞の場合、例えば融合7~10日後にヒポキ ンチンおよびチミジン(HT)添加完全培地(例:10 % FCS添加RPMI1640)の添加または交換を行う。融 合後8~14日程度で目視可能なクローンが出現 る。クローンの直径が1mm程度になれば培養 清中の抗体量の測定が可能となる。

 抗体量の測定は、例えば標的抗原またはそ 誘導体あるいはその部分ペプチド(抗原決定 基として用いた部分アミノ酸配列を含む)を 接あるいは担体とともに吸着させた固相(例 マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上 清を添加し、次に放射性物質(例: 125 I, 131 I, 3 H, 14 C)、酵素(例:β-ガラクトシダーゼ、β-グルコ ダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パー キシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素)、蛍光物 (例:フルオレスカミン、フルオレッセンイ チオシアネート)、発光物質(例:ルミノール ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲ ン)などで標識した抗免疫グロブリン(IgG)抗 (もとの抗体産生細胞が由来する動物と同一 の動物由来のIgGに対する抗体が用いられる) またはプロテインAを加え、固相に結合した 的抗原(抗原決定基)に対する抗体を検出する 方法、抗IgG抗体またはプロテインAを吸着さ た固相にハイブリドーマ培養上清を添加し 上記と同様の標識剤で標識した標的抗原ま はその誘導体あるいはその部分ペプチドを え、固相に結合した標的抗原(抗原決定基)に 対する抗体を検出する方法などによって行う ことができる。

 クローニング方法としては限界希釈法が通 用いられるが、軟寒天を用いたクローニン やFACSを用いたクローニング(上述)も可能で る。限界希釈法によるクローニングは、例 ば以下の手順で行うことができるがこれに 定されない。
 上記のようにして抗体量を測定して陽性ウ ルを選択する。適当なフィーダー細胞を選 して96ウェルプレートに添加しておく。抗 陽性ウェルから細胞を吸い出し、完全培地( :10% FCSおよびP/S添加RMPI1640)中に30細胞/mLの 度となるように浮遊させ、フィーダー細胞 添加したウェルプレートに0.1mL(3細胞/ウェル )加え、残りの細胞懸濁液を10細胞/mLに希釈し て別のウェルに同様にまき(1細胞/ウェル)、 らに残りの細胞懸濁液を3細胞/mLに希釈して のウェルにまく(0.3細胞/ウェル)。目視可能 クローンが出現するまで2~3週間程度培養し 抗体量を測定・陽性ウェルを選択し、再度 ローニングする。ヒト細胞の場合はクロー ングが比較的困難なので、10細胞/ウェルの レートも調製しておく。通常2回のサブクロ ーニングでモノクローナル抗体産生ハイブリ ドーマを得ることができるが、その安定性を 確認するためにさらに数ヶ月間定期的に再ク ローニングを行うことが望ましい。

 ハイブリドーマはインビトロまたはインビ で培養することができる。
 インビトロでの培養法としては、上記のよ にして得られるモノクローナル抗体産生ハ ブリドーマを、細胞密度を例えば10 5 ~10 6 細胞/mL程度に保ちながら、また、FCS濃度を徐 々に減らしながら、ウェルプレートから徐々 にスケールアップしていく方法が挙げられる 。
 インビボでの培養法としては、例えば、腹 内にミネラルオイルを注入して形質細胞腫( MOPC)を誘導したマウス(ハイブリドーマの親株 と組織適合性のマウス)に、5~10日後に10 6 ~10 7 細胞程度のハイブリドーマを腹腔内注射し、 2~5週間後に麻酔下に腹水を採取する方法が挙 げられる。

(b)モノクローナル抗体の精製
 モノクローナル抗体の分離精製は、自体公 の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精 法[例:塩析法、アルコール沈殿法、等電点 殿法、電気泳動法、イオン交換体(例:DEAE、QE AE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、 抗原結合固相あるいはプロテインAあるいは ロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみ 採取し、結合を解離させて抗体を得る特異 精製法など]に従って行うことができる。

 以上のようにして、ハイブリドーマを温 動物の生体内又は生体外で培養し、その体 または培養物から抗体を採取することによ て、モノクローナル抗体を製造することが きる。

 WDR6の活性を阻害するためには、WDR6に対 る抗体はWDR6の機能を中和するものでなけれ ならないので、得られたモノクローナル抗 の中和活性について調べる必要がある。中 活性は、抗体の存在下および非存在下にお るWDR6とIRS-4との結合性や、IRS-4のリン酸化 程度を比較することにより測定することが きる。

 好ましい一実施態様において、本発明の 体はヒトを投与対象とする医薬品として使 されることから、本発明の抗体(好ましくは モノクローナル抗体)はヒトに投与した場合 抗原性を示す危険性が低減された抗体、具 的には、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウ -ヒトキメラ抗体などであり、特に好ましく 完全ヒト抗体である。ヒト化抗体およびキ ラ抗体は、後述する方法に従って遺伝子工 的に作製することができる。また、完全ヒ 抗体は、上記したヒト-ヒト(もしくはマウ )ハイブリドーマより製造することも可能で あるが、大量の抗体を安定に且つ低コスト 提供するためには、後述するヒト抗体産生 物(例:マウス)またはファージディスプレイ を用いて製造することが望ましい。

(i)キメラ抗体の作製
 本明細書において「キメラ抗体」とは、H鎖 およびL鎖の可変領域(V H およびV L )の配列がある哺乳動物種に由来し、定常領 (C H およびC L )の配列が他の哺乳動物種に由来する抗体を 味する。可変領域の配列は、例えばマウス の容易にハイブリドーマを作製することが きる動物種由来であることが好ましく、定 領域の配列は投与対象となる哺乳動物種由 であることが好ましい。

 キメラ抗体の作製法としては、例えば米国 許第6,331,415号に記載される方法あるいはそ を一部改変した方法などが挙げられる。具 的には、まず、上述のようにして得られる ノクローナル抗体産生ハイブリドーマ(例え ば、マウス-マウスハイブリドーマ)から、常 に従ってmRNAもしくは全RNAを調製し、cDNAを 成する。該cDNAを鋳型として、適当なプライ ー(例えば、センスプライマーとしてV H およびV L の各N末端配列をコードする塩基配列を含む リゴDNA、アンチセンスプライマーとしてC H およびC L のN末端配列をコードする塩基配列とハイブ ダイズするオリゴDNA(例えばBio/Technology, 9: 8 8-89, 1991参照))を用い、常法に従ってPCRでV H およびV L をコードするDNAを増幅・精製する。同様の方 法により、他の哺乳動物(例:ヒト)のリンパ球 等より調製したRNAからRT-PCRによりC H およびC L をコードするDNAを増幅・精製する。常法を用 いてV H とC H 、V L とC L をそれぞれ連結し、得られたキメラH鎖DNAお びキメラL鎖DNAを、それぞれ適当な発現ベク ー(例えば、CHO細胞、COS細胞、マウス骨髄腫 細胞等で転写活性を有するプロモーター(例:C MVプロモーター、SV40プロモーター等)を含む クターなど)に挿入する。両鎖をコードするD NAは別個のベクターに挿入してもよいし、1個 のベクターにタンデムに挿入してもよい。得 られたキメラH鎖およびキメラL鎖発現ベクタ で宿主細胞を形質転換する。宿主細胞とし は、動物細胞、例えば上記したマウス骨髄 細胞の他、チャイニーズハムスター卵巣(CHO )細胞、サル由来のCOS-7細胞、Vero細胞、ラッ 由来のGHS細胞などが挙げられる。形質転換 動物細胞に適用可能ないかなる方法を用い もよいが、好ましくはエレクトロポレーシ ン法などが挙げられる。宿主細胞に適した 地中で一定期間培養後、培養上清を回収し 上記と同様の方法で精製することにより、 メラモノクローナル抗体を単離することが きる。あるいは、宿主細胞としてウシ、ヤ 、ニワトリ等のトランスジェニック技術が 立し、且つ家畜(家禽)として大量繁殖のノウ ハウが蓄積されている動物の生殖系列細胞を 用い、常法によってトランスジェニック動物 を作製することにより、得られる動物の乳汁 もしくは卵から容易に且つ大量にキメラモノ クローナル抗体を得ることもできる。さらに 、トウモロコシ、イネ、コムギ、ダイズ、タ バコなどのトランスジェニック技術が確立し 、且つ主要作物として大量に栽培されている 植物細胞を宿主細胞として、プロトプラスト へのマイクロインジェクションやエレクトロ ポレーション、無傷細胞へのパーティクルガ ン法やTiベクター法などを用いてトランスジ ニック植物を作製し、得られる種子や葉な から大量にキメラモノクローナル抗体を得 ことも可能である。
 得られたキメラモノクローナル抗体をパパ ンで分解すればFabが、ペプシンで分解すれ F(ab’) 2 がそれぞれ得られる。

 また、マウスV H およびV L をコードするDNAを適当なリンカー、例えば1~4 0アミノ酸、好ましくは3~30アミノ酸、より好 しくは5~20アミノ酸からなるペプチド(例:[Ser -(Gly)m]nもしくは[(Gly)m-Ser]n(mは0~10の整数、nは1 ~5の整数)等)をコードするDNAを介して連結す ことによりscFvとすることができ、さらにC H3 をコードするDNAを適当なリンカーを介して連 結することによりminidodyモノマーとしたり、C H 全長をコードするDNAを適当なリンカーを介し て連結することによりscFv-Fcとすることもで る。このような遺伝子工学的に修飾(共役)さ れた抗体分子をコードするDNAは、適当なプロ モーターの制御下におくことにより大腸菌や 酵母などの微生物で発現させることができ、 大量に抗体分子を生産することができる。

 マウスV H およびV L をコードするDNAを1つのプロモーターの下流 タンデムに挿入して大腸菌に導入すると、 ノシストロニックな遺伝子発現によりFvと呼 ばれる二量体を形成する。また、分子モデリ ングを用いてV H およびV L のFR中の適当なアミノ酸をCysに置換すると、 鎖の分子間ジスルフィド結合によりdsFvと呼 ばれる二量体が形成される。

(ii)ヒト化抗体
 本明細書において「ヒト化抗体」とは、可 領域に存在する相補性決定領域(CDR)以外の べての領域(即ち、定常領域および可変領域 のフレームワーク領域(FR))の配列がヒト由 であり、CDRの配列のみが他の哺乳動物種由 である抗体を意味する。他の哺乳動物種と ては、例えばマウス等の容易にハイブリド マを作製することができる動物種が好まし 。
 ヒト化抗体の作製法としては、例えば米国 許第5,225,539号、第5,585,089号、第5,693,761号お び第5,693,762号に記載される方法あるいはそ らを一部改変した方法などが挙げられる。 体的には、上記キメラ抗体の場合と同様に て、ヒト以外の哺乳動物種(例:マウス)由来 V H およびV L をコードするDNAを単離した後、常法により自 動DNAシークエンサー(例:Applied Biosystems社製等 )を用いてシークエンスを行い、得られる塩 配列もしくはそこから推定されるアミノ酸 列を公知の抗体配列データベース[例えば、K abat database (Kabatら,「Sequences of Proteins of Im munological Interest」,US Department of Health and Hu man Services, Public Health Service, NIH編, 第5版, 1991参照) 等]を用いて解析し、両鎖のCDRおよ びFRを決定する。決定されたFR配列に類似し FR配列を有するヒト抗体のL鎖およびH鎖をコ ドする塩基配列[例:ヒトκ型L鎖サブグルー IおよびヒトH鎖サブグループIIもしくはIII(Kab atら,1991(上述)を参照)]のCDRコード領域を、決 された異種CDRをコードする塩基配列で置換 た塩基配列を設計し、該塩基配列を20~40塩 程度のフラグメントに区分し、さらに該塩 配列に相補的な配列を、前記フラグメント 交互にオーバーラップするように20~40塩基程 度のフラグメントに区分する。各フラグメン トをDNAシンセサイザーを用いて合成し、常法 に従ってこれらをハイブリダイズおよびライ ゲートさせることにより、ヒト由来のFRと他 哺乳動物種由来のCDRを有するV H およびV L をコードするDNAを構築することができる。よ り迅速かつ効率的に他の哺乳動物種由来CDRを ヒト由来V H およびV L に移植するには、PCRによる部位特異的変異誘 発を用いることが好ましい。そのような方法 としては、例えば特開平5-227970号公報に記載 逐次CDR移植法等が挙げられる。このように て得られるV H およびV L をコードするDNAを、上記キメラ抗体の場合と 同様の方法でヒト由来のC H およびC L をコードするDNAとそれぞれ連結して適当な宿 主細胞に導入することにより、ヒト化抗体を 産生する細胞あるいはトランスジェニック動 植物を得ることができる。

 ヒト化抗体もキメラ抗体と同様に遺伝子工 的手法を用いてscFv、scFv-Fc、minibody、dsFv、Fv などに改変することができ、適当なプロモー ターを用いることで大腸菌や酵母などの微生 物でも生産させることができる。
 ヒト化抗体作製技術は、例えばハイブリド マの作製技術が確立していない他の動物種 好ましく投与し得るモノクローナル抗体を 製するのにも応用することができる。例え 、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリな の家畜(家禽)として広く繁殖されている動 やイヌやネコなどのペット動物などが対象 して挙げられる。

(iii)ヒト抗体産生動物を用いた完全ヒト抗体 作製
 内因性免疫グロブリン(Ig)遺伝子をノックア ウト(KO)した非ヒト温血動物に機能的なヒトIg 遺伝子を導入し、これを抗原で免疫すれば、 該動物由来の抗体の代わりにヒト抗体が産生 される。従って、マウス等のようにハイブリ ドーマ作製技術が確立している動物を用いれ ば、従来のマウスモノクローナル抗体の作製 と同様の方法によって完全ヒトモノクローナ ル抗体を取得することが可能となる。まず、 ヒトIgのH鎖およびL鎖のミニ遺伝子を通常の ランスジェニック(Tg)技術を用いて導入した ウスと、内因性マウスIg遺伝子を通常のKO技 術を用いて不活性化したマウスとを交配して 得られたヒト抗体産生マウス(Immunol. Today, 17 : 391-397, 1996を参照)を用いて作製されたヒト モノクローナル抗体のいくつかは既に臨床段 階にあり、現在までのところ抗ヒトIgヒト抗 (HAHA)の産生は報告されていない。

 その後、Abgenix社[商品名:XenoMouose(Nat. Genet ., 15: 146-156, 1997; 米国特許第5,939,598号等を 照)]やMedarex社[商品名:Hu-Mab Mouse(Nat. Biotechno l., 14: 845-851, 1996; 米国特許第5,545,806号等を 参照)]が酵母人工染色体(YAC)ベクターを用い より大きなヒトIg遺伝子を導入したTgマウス 作製し、よりレパートリーに富んだヒト抗 を産生し得るようになった。しかしながら ヒトIg遺伝子は、例えばH鎖の場合、約80種 V断片、約30種のD断片および6種のJ断片が様 に組み合わされたVDJエクソンが抗原結合部 をコードすることによりその多様性を実現 ているため、その全長はH鎖が約1.5Mb(14番染 体)、κL鎖が約2Mb(2番染色体)、λL鎖が約1Mb(22 染色体)に達する。ヒトにおけるのと同様の 多様な抗体レパートリーを他の動物種で再現 するためには、各Ig遺伝子の全長を導入する とが望ましいが、従来の遺伝子導入ベクタ (プラスミド、コスミド、BAC、YAC等)に挿入 能なDNAは通常数kb~数百kbであり、クローニン グしたDNAを受精卵に注入する従来のトランス ジェニック動物作製技術では全長の導入は困 難であった。

 Tomizukaら(Nat. Genet., 16: 133-143, 1997)は、Ig遺 伝子を担持するヒト染色体の自然断片(hCF)を ウスに導入して(染色体導入(TC)マウス)、完 長ヒトIg遺伝子を有するマウスを作製した 即ち、まず、H鎖遺伝子を含む14番染色体お びκL鎖遺伝子を含む2番染色体を例えば薬剤 性マーカー等で標識したヒト染色体を有す ヒト-マウスハイブリッド細胞を48時間程度 錘糸形成阻害剤(例:コルセミド)で処理して 1~数本の染色体もしくはその断片が核膜に 包されたミクロセルを調製し、微小核融合 によりマウスES細胞に染色体を導入する。薬 剤を含む培地を用いてヒトIg遺伝子を有する 色体もしくはその断片を保持するハイブリ ドES細胞を選択し、通常のKOマウス作製の場 合と同様の方法によりマウス胚へ顕微注入す る。得られるキメラマウスからコートカラー を指標にする等して生殖系列キメラを選択し 、ヒト14番染色体断片を伝達するTCマウス系 (TC(hCF14))およびヒト2番染色体断片を伝達す TCマウス系統(TC(hCF2))を樹立する。常法によ 内因性H鎖遺伝子およびκL鎖遺伝子をKOされ マウス(KO(IgH)およびKO(Igκ))を作製し、これら 4系統の交配を繰り返すことにより、4種の遺 子改変をすべて有するマウス系統(ダブルTC/ KO)を樹立することができる。
 上記のようにして作製されるダブルTC/KOマ スに、通常のマウスモノクローナル抗体を 製する場合と同様の方法を適用すれば、抗 特異的ヒトモノクローナル抗体産生ハイブ ドーマを作製することができる。しかしな ら、κL鎖遺伝子を含むhCF2がマウス細胞内で 安定なため、ハイブリドーマ取得効率は通 のマウスの場合に比べて低いという欠点が る。

 一方、前記Hu-Mab MouseはκL鎖遺伝子の約50%を 含むが、可変領域クラスターが倍加した構造 を有するため完全長を含む場合と同等のκ鎖 多様性を示し(他方、H鎖遺伝子は約10%しか まないのでH鎖の多様性は低く、抗原に対す 応答性が不十分である)、
且つYACベクター(Igκ-YAC)によりマウス染色体 に挿入されているので、マウス細胞内で安 に保持される。この利点を生かし、TC(hCF14) ウスとHu-Mab Mouseとを交配してhCF14とIgκ-YACと を安定に保持するマウス(商品名:KMマウス)を 製することにより、通常のマウスと同等の イブリドーマ取得効率および抗体の抗原親 性を得ることができる。

 さらに、より完全にヒトにおける多様な 体レパートリーを再現するために、λL鎖遺 子をさらに導入したヒト抗体産生動物を作 することもできる。かかる動物は、上記と 様の方法でλL鎖遺伝子を担持するヒト22番 色体もしくはその断片を導入したTCマウス(TC (hCF22))を作製し、これと上記ダブルTC/KOマウ やKMマウスとを交配することにより得ること もできるし、あるいは、例えばH鎖遺伝子座 λL鎖遺伝子座とを含むヒト人工染色体(HAC)を 構築してマウス細胞に導入することにより得 ることもできる(Nat. Biotechnol., 18: 1086-1090, 2 000)。

 本発明の抗体を医薬品として利用する場 はモノクローナル抗体であることが望まし が、ポリクローナル抗体であってもよい。 発明の抗体がポリクローナル抗体である場 には、ハイブリドーマの利用を要しないの 、ハイブリドーマ作製技術は確立されてい いがトランスジェニック技術は確立されて る動物種、好ましくはウシ等の有蹄動物や ワトリ等を用いて、上記と同様の方法によ ヒト抗体産生動物を作製すれば、より大量 ヒト抗体を安価に製造することも可能であ (例えば、Nat. Biotechnol., 20: 889-894,2002参照) 得られるヒトポリクローナル抗体は、ヒト 体産生動物の血液、腹水、乳汁、卵など、 ましくは乳汁、卵を採取し、上記と同様の 製技術を組み合わせることによって精製す ことができる。

(iv)ファージディスプレイヒト抗体ライブラ ーを用いた完全ヒト抗体の作製
 完全ヒト抗体を作製するもう1つのアプロー チはファージディスプレイを用いる方法であ る。この方法はPCRによる変異がCDR以外に導入 される場合があり、そのため臨床段階で少数 のHAHA産生の報告例があるが、その一方で宿 動物に由来する異種間ウイルス感染の危険 がない点や抗体の特異性が無限である(禁止 ローンや糖鎖などに対する抗体も容易に作 可能)等の利点を有している。

 ファージディスプレイヒト抗体ライブラリ の作製方法としては、例えば、以下のもの 挙げられるが、これに限定されない。
 用いられるファージは特に限定されないが 通常繊維状ファージ(Ffバクテリオファージ) が好ましく用いられる。ファージ表面に外来 蛋白質を提示する方法としては、g3p、g6p~g9p コート蛋白質のいずれかとの融合蛋白質と て該コート蛋白質上で発現・提示させる方 が挙げられるが、よく用いられるのはg3pも くはg8pのN末端側に融合させる方法である。 ァージディスプレイベクターとしては、1) ァージゲノムのコート蛋白質遺伝子に外来 伝子を融合した形で導入して、ファージ表 上に提示されるコート蛋白質をすべて外来 白質との融合蛋白質として提示させるもの 他、2)融合蛋白質をコードする遺伝子を野生 型コート蛋白質遺伝子とは別に挿入して、融 合蛋白質と野生型コート蛋白質とを同時に発 現させるものや、3)融合蛋白質をコードする 伝子を有するファージミドベクターを持つ 腸菌に野生型コート蛋白質遺伝子を有する ルパーファージを感染させて融合蛋白質と 生型コート蛋白質とを同時に発現するファ ジ粒子を産生させるものなどが挙げられる 、1)の場合は大きな外来蛋白質を融合させ と感染能力が失われるため、抗体ライブラ ーの作製のためには2)または3)のタイプが用 られる。

 具体的なベクターとしては、Holtら(Curr. Opin . Biotechnol., 11: 445-449, 2000)に記載されるも が例示される。例えば、pCES1(J. Biol. Chem., 2 74: 18218-18230, 1999参照)は、1つのラクトース ロモーターの制御下にg3pのシグナルペプチ の下流にκL鎖定常領域をコードするDNAとg3p グナルペプチドの下流にCH3をコードするDNA His-tag、c-myc tag、アンバー終止コドン(TAG)を してg3pコード配列とが配置されたFab発現型 ァージミドベクターである。アンバー変異 有する大腸菌に導入するとg3pコート蛋白質 にFabを提示するが、アンバー変異を持たな HB2151株などで発現させると可溶性Fab抗体を 生する。また、scFv発現型ファージミドベク ターとしては、例えばpHEN1(J. Mol. Biol., 222:58 1-597, 1991)等が用いられる。
 一方、ヘルパーファージとしては、例えばM 13-KO7、VCSM13等が挙げられる。
 また、別のファージディスプレイベクター して、抗体遺伝子の3’末端とコート蛋白質 遺伝子の5’末端にそれぞれシステインをコ ドするコドンを含む配列を連結し、両遺伝 を同時に別個に(融合蛋白質としてではなく) 発現させて、導入されたシステイン残基同士 によるS-S結合を介してファージ表面のコート 蛋白質上に抗体を提示し得るようにデザイン されたもの(Morphosys社のCysDisplay TM 技術)等も挙げられる。

 ヒト抗体ライブラリーの種類としては、ナ ーブ/非免疫ライブラリー、合成ライブラリ ー、免疫ライブラリー等が挙げられる。
 ナイーブ/非免疫(non-immunized)ライブラリーは 、正常なヒトが保有するV H およびV L 遺伝子をRT-PCRにより取得し、それらをランダ ムに上記のファージディスプレイベクターに クローニングして得られるライブラリーであ る。通常、正常人の末梢血、骨髄、扁桃腺な どのリンパ球由来のmRNA等が鋳型として用い れる。疾病履歴などのV遺伝子のバイアスを くすため、抗原感作によるクラススイッチ 起こっていないIgM由来のmRNAのみを増幅した ものを特にナイーブライブラリーと呼んでい る。代表的なものとしては、CAT社のライブラ リー(J. Mol. Biol., 222: 581-597, 1991; Nat. Biotec hnol., 14: 309-314, 1996参照)、MRC社のライブラ ー(Annu. Rev. Immunol., 12: 433-455, 1994参照)、Dy ax社のライブラリー(J. Biol. Chem., 1999 (上述) ; Proc. Natl. Acad. Sci. USA,14: 7969-7974, 2000参 )等が挙げられる。
 合成ライブラリーは、ヒトB細胞内の機能的 な特定の抗体遺伝子を選び、V遺伝子断片の 例えばCDR3等の抗原結合領域の部分を適当な さのランダムなアミノ酸配列をコードするD NAで置換し、ライブラリー化したものである 最初から機能的なscFvやFabを産生するV H およびV L 遺伝子の組み合わせでライブライリーを構築 できるので、抗体の発現効率や安定性に優れ ているとされる。代表的なものとしては、Mor phosys社のHuCALライブラリー(J.Mol. Biol., 296: 57 -86, 2000参照)、BioInvent社のライブラリー(Nat.  Biotechnol., 18: 852, 2000参照)、Crucell社のライ ラリー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92: 3938, 1995 ; J. Immunol. Methods, 272: 219-233, 2003参照)等が 挙げられる。
 免疫(immunized)ライブラリーは、標的抗原に する血中抗体価が上昇したヒトから採取し リンパ球、あるいは上記体外免疫法により 的抗原を人為的に免疫したヒトリンパ球等 ら、上記ナイーブ/非免疫ライブラリーの場 と同様にしてmRNAを調製し、RT-PCR法によって V H およびV L 遺伝子を増幅し、ライブラリー化したもので ある。最初から目的の抗体遺伝子がライブラ リー中に含まれるので、比較的小さなサイズ のライブラリーからでも目的の抗体を得るこ とができる。

 ライブラリーの多様性は大きいほどよいが 現実的には、以下のパンニング操作で取り えるファージ数(10 11 ~10 13 ファージ)と通常のパンニングでクローンの 離および増幅に必要なファージ数(100~1,000フ ージ/クローン)を考慮すれば、10 8 ~10 11 クローン程度が適当であり、約10 8 クローンのライブラリーで通常10 -9 オーダーのKd値を有する抗体をスクリーニン することができる。

 標的抗原に対する抗体をファージディスプ イ法で選別する工程をパンニングという。 体的には、例えば、抗原を固定化した担体 ファージライブラリーとを接触させ、非結 ファージを洗浄除去した後、結合したファ ジを担体から溶出させ、大腸菌に感染させ 該ファージを増殖させる、という一連の操 を3~5回程度繰り返すことにより抗原特異的 抗体を提示するファージを濃縮する。抗原 固定化する担体としては、通常の抗原抗体 応やアフィニティークロマトグラフィーで いられる各種担体、例えばアガロース、デ ストラン、セルロースなどの不溶性多糖類 ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリ ン等の合成樹脂、あるいはガラス、金属な からなるマイクロプレート、チューブ、メ ブレン、カラム、ビーズなど、さらには表 プラズモン共鳴(SPR)のセンサーチップなど 挙げられる。抗原の固定化には物理的吸着 用いてもよく、また、通常蛋白質あるいは 素等を不溶化、固定化するのに用いられる 学結合を用いる方法でもよい。例えばビオ ン-(ストレプト)アビジン系等が好ましく用 られる。標的抗原であるWDR6がオリゴペプチ などの小分子である場合には、抗原決定基 して用いた部分が担体との結合により被覆 れないように特に注意する必要がある。非 合ファージの洗浄には、BSA溶液などのブロ キング液(1-2回)、Tween等の界面活性剤を含む PBS(3-5回)などを順次用いることができる。ク ン酸緩衝液(pH5)などの使用が好ましいとの 告もある。特異的ファージの溶出には、通 酸(例:0.1M塩酸など)が用いられるが、特異的 ロテアーゼによる切断(例えば、抗体遺伝子 とコート蛋白質遺伝子との連結部にトリプシ ン切断部位をコードする遺伝子配列を導入す ることができる。この場合、溶出するファー ジ表面には野生型コート蛋白質が提示される ので、コート蛋白質のすべてが融合蛋白質と して発現しても大腸菌への感染・増殖が可能 となる)や可溶性抗原による競合的溶出、あ いはS-S結合の還元(例えば、前記したCysDisplay TM では、パンニングの後、適当な還元剤を用い て抗体とコート蛋白質とを解離させることに より抗原特異的ファージを回収することがで きる)による溶出も可能である。酸で溶出し 場合は、トリスなどで中和した後で溶出フ ージを大腸菌に感染させ、培養後、常法に りファージを回収する。

 パンニングにより抗原特異的抗体を提示 るファージが濃縮されると、これらを大腸 に感染させた後プレート上に播種してクロ ニングを行う。再度ファージを回収し、上 の抗体価測定法(例:ELISA、RIA、FIA等)やFACSあ いはSPRを利用した測定により抗原結合活性 確認する。

 選択された抗原特異的抗体を提示するフ ージクローンからの抗体の単離・精製は、 えば、ファージディスプレイベクターとし 抗体遺伝子とコート蛋白質遺伝子の連結部 アンバー終止コドンが導入されたベクター 用いる場合には、該ファージをアンバー変 を持たない大腸菌(例:HB2151株)に感染させる 、可溶性抗体分子が産生されペリプラズム しくは培地中に分泌されるので、細胞壁を ゾチームなどで溶解して細胞外画分を回収 、上記と同様の精製技術を用いて行うこと できる。His-tagやc-myc tagを導入しておけば IMACや抗c-myc抗体カラムなどを用いて容易に 製することができる。また、パンニングの に特異的プロテアーゼによる切断を利用す 場合には、該プロテアーゼを作用させると 体分子がファージ表面から分離されるので 同様の精製操作を実施することにより目的 抗体を精製することができる。

 ヒト抗体産生動物およびファージディス レイヒト抗体ライブラリーを用いた完全ヒ 抗体作製技術は、他の動物種のモノクロー ル抗体を作製するのにも応用することがで る。例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、 ワトリなどの家畜(家禽)として広く繁殖さ ている動物やイヌやネコなどのペット動物 どが対象として挙げられる。非ヒト動物に いては標的抗原の人為的免疫に対する倫理 問題が少ないので、免疫ライブラリーの利 がより有効である。

(3)ポリクローナル抗体の作製
 本発明のポリクローナル抗体は、それ自体 知あるいはそれに準じる方法に従って製造 ることができる。例えば、免疫抗原(蛋白質 もしくはペプチド抗原)自体、あるいはそれ キャリアー蛋白質との複合体をつくり、上 のモノクローナル抗体の製造法と同様に温 動物に免疫を行い、該免疫動物からWDR6に対 る抗体含有物を採取して、抗体の分離精製 行うことにより製造することができる。

 温血動物を免疫するために用いられる免 抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し キャリアー蛋白質の種類およびキャリアー 白質とハプテンとの混合比は、キャリアー 白質に架橋させて免疫したハプテンに対し 抗体が効率良くできれば、どのようなもの どのような比率で架橋させてもよいが、例 ば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロ リン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1 に対し、約0.1~約20、好ましくは約1~約5の割合 でカプルさせる方法が用いられる。

 また、ハプテンとキャリアー蛋白質のカプ ングには、種々の縮合剤を用いることがで るが、グルタルアルデヒドやカルボジイミ 、マレイミド活性エステル、チオール基、 チオビリジル基を含有する活性エステル試 等が用いられる。
 縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産 が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希 剤とともに投与される。投与に際して抗体 生能を高めるため、完全フロイントアジュ ントや不完全フロイントアジュバントを投 してもよい。投与は、通常約1~約6週毎に1回 ずつ、計約2~約10回程度行われる。

 ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫 れた温血動物の血液、腹水など、好ましく 血液から採取することができる。
 抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は 上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にし 測定できる。ポリクローナル抗体の分離精 は、上記のモノクローナル抗体の分離精製 同様の免疫グロブリンの分離精製法に従っ 行うことができる。

 別の好ましい態様においては、WDR6の活性 を阻害する物質は、WDR6に対してアンタゴニ ト活性を示す低分子化合物である。ここで アンタゴニスト活性」とは、WDR6に結合してW DR6とIRS-4との結合を阻害するか、WDR6のIRS-4に するリン酸化制御活性を阻害する活性を意 する。中枢におけるインスリン/IGF-1シグナ の作用を増強する目的においては、WDR6の活 性を阻害する物質は血液脳関門(BBB)を通過で るものである必要があるので、低分子化合 は、脳内移行性において抗体のような大き 分子に比べて有利である。そのような化合 は、例えば、後述する本発明のスクリーニ グ法を用いて取得することができる。

 本発明において「WDR6の発現を増強する物 質」とは、生体内でのWDR6の量を増大させる 質をいい、例えば、上記したWDR6蛋白質もし はその部分ペプチド、それをコードする核 などが挙げられる。

 本発明において「WDR6の活性を増強する物質 」とは、WDR6のIRS-4との結合性を増大させるか 、あるいはWDR6のIRS-4に対するリン酸化制御活 性を増大させる物質をいい、例えば、WDR6に するアゴニスト抗体やWDR6に対してアゴニス 活性を示す低分子化合物等が挙げられる。 こで「アゴニスト活性」とは、WDR6に結合し てWDR6とIRS-4との結合を促進するか、WDR6のIRS-4 に対するリン酸化制御活性を促進する活性を 意味する。
 WDR6に対するアゴニスト抗体は、上記したWDR 6に対する中和抗体と同様の手法を用いて取 されるモノクローナル抗体について、抗体 存在下および非存在下におけるWDR6とIRS-4と 結合性やIRS-4のリン酸化の程度を比較して、 そのアゴニスト活性を試験することにより得 ることができる。また、WDR6に対してアゴニ ト活性を示す低分子化合物は、例えば、後 する本発明のスクリーニング法を用いて取 することができる。

 WDR6はIRS-4と結合してインスリン/IGF-1シグ ル伝達系の作用を負に制御する。従って、W DR6またはその部分ペプチド、それをコードす る核酸またはその一部、WDR6に対する中和抗 またはアゴニスト抗体、WDR6をコードする核 に対するアンチセンス核酸、WDR6に対してア ゴニスト活性またはアンタゴニスト活性を示 す低分子化合物等は、以下の用途を有してい る。

(I)インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用調節 剤等
 WDR6は、IRS-4と結合してインスリン/IGF-1シグ ル伝達系の作用を負に制御する。中枢にお るインスリン/IGF-1シグナルの作用は、神経 胞の保護および分化促進、摂食抑制(摂食抑 制ホルモン前駆体(プロオピオメラノコルチ )の転写活性化および摂食促進ホルモン(神経 ペプチドY)の転写抑制、GLUT2活性化による糖 り込みの促進による神経興奮等)などであり 末梢における該シグナルの作用は、肝臓に ける糖新生抑制、グリコーゲンの合成亢進 分解抑制などによる糖代謝促進、脂肪酸合 亢進、脂肪細胞における糖取り込み促進、 肪分化抑制、筋肉におけるグリコーゲン合 亢進や糖取り込み促進などである。したが て、WDR6の発現もしくは活性を抑制する物質 、例えば、WDR6をコードする核酸に対するア チセンス核酸、WDR6に対する中和抗体、WDR6に 対してアンタゴニスト活性を示す低分子化合 物等は、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作 用を増強し、老化;神経変性疾患(例:アルツハ イマー病、ダウン症、ポリグルタミン病、パ ーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、プリオ ン病、小脳変性症等);摂食障害(例:過食症、 食症からの反転による過食等);肥満、インス リン抵抗性、糖尿病、糖尿病合併症(例:ケト シス、アシドーシス、糖尿病性神経障害、 尿病性腎症、糖尿病性網膜症)、耐糖能異常 、高脂血症等の代謝疾患;高血圧、動脈硬化 虚血性心疾患、脳血管障害等の他の生活習 病などの病態または疾患の予防および改善/ 療剤などとして使用することができる。
 さらに、IRS-4はFGFやNGFなどの下流に位置し おり、神経細胞の分化や保護に重要な役割 果たしていると考えられる。WDR6はIRS-4のリ 酸化制御を介してそのシグナルを負に調節 るので、WDR6の発現もしくは活性を阻害する 質はまた、FGFやNGFからのシグナルを介して 神経細胞保護作用を発揮し得ると考えられ 。

 本発明のアンチセンス核酸を含有する医 または動物薬は低毒性であり、そのまま液 として、または適当な剤型の医薬組成物と て、ヒトまたは他の温血動物(例、マウス、 ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ 、イヌ、サル、トリなど)に対して経口的ま は非経口的(例、血管内投与、皮下投与など) に投与することができる。

 本発明のアンチセンス核酸を上記のインス ン/IGF-1シグナル伝達系の作用増強剤、抗老 剤、神経細胞保護剤、抗肥満剤、インスリ 抵抗性改善剤、糖尿病の予防・治療剤など 医薬または動物薬として使用する場合、自 公知の方法に従って製剤化し、投与するこ ができる。即ち、本発明のアンチセンス核 を、単独あるいはレトロウイルスベクター アデノウイルスベクター、アデノウイルス ソシエーテッドウイルスベクターなどの適 な哺乳動物細胞用の発現ベクターに機能可 な態様で挿入した後、常套手段に従って製 化することができる。該核酸は、そのまま 、あるいは摂取促進のための補助剤ととも 、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのよ なカテーテルによって投与することができ 。あるいは、エアロゾル化して吸入剤とし 気管内に局所投与することもできる。
 さらに、体内動態の改良、半減期の長期化 細胞内取り込み効率の改善を目的に、前記 酸を単独またはリポソームなどの担体とと に製剤(注射剤)化し、静脈、皮下等に投与 てもよい。

 本発明のアンチセンス核酸は、それ自体 投与してもよいし、または適当な医薬また 動物薬組成物(以下、単に「医薬組成物」と 略記する)として投与してもよい。投与に用 られる医薬組成物としては、本発明のアン センス核酸と薬理学的に許容され得る担体 希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであっ よい。このような医薬組成物は、経口また 非経口投与に適する剤形として提供される

 非経口投与のための組成物としては、例 ば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は 脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉 射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良 。このような注射剤は、公知の方法に従っ 調製できる。注射剤の調製方法としては、 えば、上記本発明のアンチセンス核酸を通 注射剤に用いられる無菌の水性液、または 性液に溶解、懸濁または乳化することによ て調製できる。注射用の水性液としては、 えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補 薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解 助剤、例えば、アルコール(例、エタノール )、ポリアルコール(例、プロピレングリコー 、ポリエチレングリコール)、非イオン界面 活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO-50(polyoxyet hylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と 併用してもよい。油性液としては、例えば、 ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤と して安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール 等を併用してもよい。調製された注射液は、 適当なアンプルに充填されることが好ましい 。直腸投与に用いられる坐剤は、上記アンチ センス核酸を通常の坐薬用基剤に混合するこ とによって調製されてもよい。

 経口投与のための組成物としては、固体 たは液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、 フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆 剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げら れる。このような組成物は公知の方法によっ て製造され、製剤分野において通常用いられ る担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有してい ても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、 例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン 酸マグネシウムが用いられる。

 上記の非経口用または経口用医薬組成物 、活性成分の投与量に適合するような投薬 位の剤形に調製されることが好都合である このような投薬単位の剤形としては、例え 、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプ ル)、坐剤が挙げられる。本発明のアンチセ ス核酸は、例えば、投薬単位剤形当たり通 5~500mg、とりわけ注射剤では5~100mg、その他の 剤形では10~250mg含有されていることが好まし 。

 本発明のアンチセンス核酸を含有する上 医薬または動物薬の投与量は、投与対象、 象疾患、症状、投与ルートなどによっても なるが、例えば、成人の糖尿病の治療・予 のために使用する場合には、本発明のアン センス核酸を1回量として、通常0.01~20mg/kg体 重程度、好ましくは0.1~10mg/kg体重程度、さら 好ましくは0.1~5mg/kg体重程度を、1日1~5回程 、好ましくは1日1~3回程度、静脈注射により 与するのが好都合である。他の非経口投与 よび経口投与の場合もこれに準ずる量を投 することができる。症状が特に重い場合に 、その症状に応じて増量してもよい。

 なお、前記した各組成物は、本発明のア チセンス核酸との配合により好ましくない 互作用を生じない限り他の活性成分を含有 てもよい。

 さらに、本発明のアンチセンス核酸は、 の薬剤、例えば、インスリン抵抗性改善薬( 例、トログリタゾン、ビオグリタゾン等のチ アドリジン誘導体等)、血糖降下薬(例、トル タミド、グリコピラミド、アセトヘキサミ 等のスルホニルウレア薬、グリミジン、グ ブゾール等のスルホンアミド薬、メトフォ ミン、ブフォルミン等のビグアナイド薬等) 、アルドース還元酵素阻害薬(例、エパルレ タット等)、α-グルコシダーゼ阻害薬(例、ボ グリボース、アカルボース等)ソマトメジンC 剤(例、メカセルミン等)などの抗糖尿病薬; 枢性抗肥満薬(例、デキスフェンフルラミン 、フェンフルラミン、フェンテルミン等)、MC H受容体拮抗薬(例、SB-568849、SNAP-7941等)、ニュ ーロペプチドY拮抗薬(例、CP-422935等)、カンナ ビノイド受容体拮抗薬(例、SR-141716、SR-147778 )、グレリン拮抗薬、レプチン、β3アゴニス などの抗肥満薬;アリセプトなどのアルツハ イマー病治療薬などと併用してもよい。本発 明のアンチセンス核酸および上記薬剤は、同 時または異なった時間に患者に投与すればよ い。

 WDR6に対する中和抗体や、WDR6に対してア タゴニスト活性を示す低分子化合物を含有 る医薬または動物薬は低毒性であり、その ま液剤として、または適当な剤型の医薬組 物として、ヒトまたは他の温血動物(例、マ ス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ ネコ、イヌ、サル、トリなど)に対して経口 的または非経口的(例、血管内投与、皮下投 など)に投与することができる。

 上記の抗体や低分子化合物は、それ自体 投与してもよいし、または適当な医薬組成 として投与してもよい。投与に用いられる 薬組成物としては、上記の抗体もしくは低 子化合物またはその塩と薬理学的に許容さ 得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含む のであってもよい。このような医薬組成物 、経口または非経口投与に適する剤形とし 提供される。

 非経口投与のための組成物としては、例 ば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は 脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉 射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良 。このような注射剤は、公知の方法に従っ 調製できる。注射剤の調製方法としては、 えば、上記本発明の抗体もしくは低分子化 物またはその塩を通常注射剤に用いられる 菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁ま は乳化することによって調製できる。注射 の水性液としては、例えば、生理食塩水、 ドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アル ール(例、エタノール)、ポリアルコール(例 プロピレングリコール、ポリエチレングリ ール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソル ベート80、HCO-50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydro genated castor oil)〕等と併用してもよい。油性 液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用 いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル 、ベンジルアルコール等を併用してもよい。 調製された注射液は、適当なアンプルに充填 されることが好ましい。直腸投与に用いられ る坐剤は、上記抗体または低分子化合物を通 常の坐薬用基剤に混合することによって調製 されても良い。

 経口投与のための組成物としては、固体 たは液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、 フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆 剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げら れる。このような組成物は公知の方法によっ て製造され、製剤分野において通常用いられ る担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有してい ても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、 例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン 酸マグネシウムが用いられる。

 上記の非経口用または経口用医薬組成物 、活性成分の投与量に適合するような投薬 位の剤形に調製されることが好都合である このような投薬単位の剤形としては、例え 、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプ ル)、坐剤が挙げられる。抗体や低分子化合 は、投薬単位剤形当たり通常5~500mg、とりわ 注射剤では5~100mg、その他の剤形では10~250mg 有されていることが好ましい。

 上記の抗体または低分子化合物を含有す 上記医薬または動物薬の投与量は、投与対 、対象疾患、症状、投与ルートなどによっ も異なるが、例えば、成人の糖尿病の治療 予防のために使用する場合には、抗体また 低分子化合物を1回量として、通常0.01~20mg/kg 体重程度、好ましくは0.1~10mg/kg体重程度、さ に好ましくは0.1~5mg/kg体重程度を、1日1~5回 度、好ましくは1日1~3回程度、静脈注射によ 投与するのが好都合である。他の非経口投 および経口投与の場合もこれに準ずる量を 与することができる。症状が特に重い場合 は、その症状に応じて増量してもよい。

 なお、前記した各組成物は、上記抗体や 分子化合物との配合により好ましくない相 作用を生じない限り他の活性成分を含有し もよい。

 さらに、上記の抗体または低分子化合物 、本発明のアンチセンス核酸を含有する医 において前記したと同様の他の薬剤と併用 てもよい。上記の抗体または低分子化合物 それらの他の薬剤とは、同時または異なっ 時間に患者に投与すればよい。

 WDR6の発現もしくは活性を抑制する物質は、 中枢におけるインスリン/IGF-1シグナル伝達系 の作用を増強し、神経細胞の分化・再生・保 護や、摂食抑制などの作用を通じて、寿命延 長効果を奏することから、老化防止などの目 的で、各種の加工食品や飲料のような一般食 品や、特定保健用食品、栄養機能食品等の保 健機能食品、あるいは飼料へ添加し、あるい はサプリメントとして利用することができる 。
 本発明において「食品」とは、食品全般(飲 料を含む)を意味するが、いわゆる健康食品 含む一般食品の他、厚生労働省の保健機能 品制度に規定される特定保健用食品や栄養 能食品をも含むものであり、さらにサプリ ントも包含される。

 本発明における食品は、WDR6の発現もしく は活性を抑制する物質を、適宜の食品として 許容される担体、例えば、各種加工用食材、 調味料、香料、甘味料等とともに使用して、 自体公知の方法で製造し、また、散剤、錠剤 、カプセル剤、ドリンク剤等の製剤とするこ とができる。食品として許容される担体には 、前記の医薬組成物において薬学的に許容さ れる担体が含まれる。

 本発明の食品の製造に際しては、さらに 抗酸化剤等の老化防止に効果のある他の成 、ビタミン類、他の栄養補給用添加剤等を 宜配合することができる。

 WDR6の発現もしくは活性を抑制する物質は 、上記本発明の食品と同様の目的で、ペット 動物や家畜・家禽などの非ヒト動物用の飼料 として利用することができる。本発明におけ る飼料は、適宜の飼料として許容される担体 、例えば、通常の飼料材等を使用して自体公 知の方法で製造できる。飼料として許容され る担体には、前記の医薬組成物において薬学 的に許容される担体が含まれる。動物への投 与は、前記したヒトへの投与と同様か、ある いは通常の飼料に添加することによって行う ことができる。

 本発明の食品および飼料に含まれる、WDR6 の発現もしくは活性を抑制する物質の量は、 特に限定されないが、1日あたりの摂取量が 記した本発明の医薬または動物薬における 与量と同様の範囲となるようにするのが好 しい。

 前述の通り、インスリン/IGF-1シグナル伝達 は、中枢において、摂食抑制ホルモン前駆 の転写活性化および摂食促進ホルモンの転 抑制や、GLUT2活性化による糖取り込み促進 より神経を興奮させることで摂食抑制など 関与し、末梢においては、例えば、肝臓に ける脂肪酸合成亢進や脂肪細胞における脂 分解抑制などに関与している。したがって WDR6の発現もしくは活性を増強する物質、例 ば、WDR6またはその部分ペプチド、それをコ ードする核酸、WDR6に対するアゴニスト抗体 WDR6に対してアンタゴニスト活性を示す低分 化合物等は、インスリン/IGF-1シグナル伝達 の作用を抑制して、摂食促進、脂肪代謝促 等の効果を発揮することにより、摂食障害( 例、拒食症、過食症からの反転による拒食等 )や代謝疾患(例、血中脂質濃度を改善するこ による)等の疾患の予防・治療剤などとして 使用することができる。
 さらに、IRS-4はインスリン刺激によりPI3-キ ーゼ、PKB/Aktを活性化してアポトーシスを抑 制し、細胞生存を促進する役割を果たすと考 えられる。WDR6はIRS-4のリン酸化制御を介して インスリンからのシグナルを負に調節するの で、WDR6の発現もしくは活性を増強する物質 また、アポトーシス促進剤、細胞増殖/分化 制剤などとして、癌や自己免疫疾患(例、関 節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎等) どの疾患の予防・治療に効果を発揮し得る 考えられる。

 WDR6またはその部分ペプチド、それをコー ドする核酸、WDR6に対するアゴニスト抗体、 たはWDR6に対してアンタゴニスト活性を示す 分子化合物を含有する医薬または動物薬は 毒性であり、そのまま液剤として、または 当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは の温血動物(例、マウス、ラット、ウサギ、 ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、ト リなど)に対して経口的または非経口的(例、 管内投与、皮下投与など)に投与することが できる。

 WDR6またはその部分ペプチド、WDR6に対する ゴニスト抗体、またはWDR6に対してアンタゴ スト活性を示す低分子化合物を上記の摂食 害、代謝疾患、癌、自己免疫疾患の予防・ 療剤などの医薬または動物薬として使用す 場合、上記のWDR6に対する中和抗体やWDR6に してアンタゴニスト活性を示す低分子化合 と同様の方法により製剤化し、同様の投与 路・用量で投与することができる。また、WD R6またはその部分ペプチドをコードする核酸 上記の医薬または動物薬として使用する場 、上記の本発明のアンチセンス核酸と同様 方法により製剤化し、同様の投与経路・用 で投与することができる。
 但し、WDR6の発現もしくは活性を増強する物 質は、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用 を抑制するので、神経細胞保護作用を抑制し たり、末梢における糖代謝を変化させたりし て、投与対象にとって望ましくない副作用を 生じる可能性がある。したがって、WDR6の発 もしくは活性を増強する物質は、インスリ /IGF-1シグナル伝達系の作用もしくはIRS-4の下 流因子の活性化を抑制すべき部位(例えば、 床下部等の中枢や、肝臓、脂肪組織、骨格 などの末梢)に、局所的に投与されることが り安全であり得る。

(II)インスリン/IGF-1シグナル伝達系の異常等 診断剤
 WDR6をコードする核酸またはその一部(以下 「本発明のセンス核酸」という場合がある) よび本発明のアンチセンス核酸は、プロー やプライマーとして使用することにより、 トまたは他の温血動物(例えば、ラット、マ ウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、 イヌ、サル、トリなど)におけるWDR6をコード るDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出す ことができるので、例えば、該DNAまたはmRNA の損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNA またはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺 子診断剤として有用である。
 本発明のセンスまたはアンチセンス核酸を いる上記の遺伝子診断は、例えば、自体公 のノーザンハイブリダイゼーションやPCR-SSC P法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874~879頁(1989年 )、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナ ・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オ ・ユーエスエー(Proceedings of the National Acade my of Sciences of the United States of America),第8 6巻,2766~2770頁(1989年))などにより実施すること ができる。
 例えば、ノーザンハイブリダイゼーション によりWDR6の発現低下が検出された場合は、 例えば、WDR6の機能不全が関与する疾患に罹 している可能性が高いか、あるいは将来罹 する可能性が高いと診断することができる WDR6の機能不全が関与する疾患としては、例 ば、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用 異常亢進に関連する疾患、例えば、摂食障 、低血糖、脂肪代謝異常が関与する代謝疾 、癌、自己免疫疾患(例、関節リウマチ、ク ローン病、潰瘍性大腸炎等)などが挙げられ 。
 また、ノーザンハイブリダイゼーション等 よりWDR6の発現過多が検出された場合は、例 えば、WDR6の過剰発現が関与する疾患に罹患 ている可能性が高いか、あるいは将来罹患 る可能性が高いと診断することができる。WD R6の過剰発現が関与する疾患としては、例え 、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用の 全に関連する疾患、例えば、神経変性疾患( 例:アルツハイマー病、ダウン症、ポリグル ミン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬 症、プリオン病、小脳変性症等);摂食障害; 満、インスリン抵抗性、糖尿病、糖尿病合 症(例:ケトーシス、アシドーシス、糖尿病性 神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症) 耐糖能異常、高脂血症等の代謝疾患;高血圧 動脈硬化、虚血性心疾患、脳血管障害など 他の生活習慣病などが挙げられる。

 本発明の抗体は、WDR6を特異的に認識するこ とができるので、被験試料中のWDR6の検出に 用することができる。
 すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被験試料および標識化さ れたWDR6とを競合的に反応させ、該抗体に結 した標識化されたWDR6の割合を測定すること 特徴とする被験試料中のWDR6の定量法、およ び
(ii)被験試料と、担体上に不溶化した本発明 抗体および標識化された別の本発明の抗体 を、同時あるいは連続的に反応させた後、 溶化担体上の標識剤の量(活性)を測定するこ とを特徴とする被験試料中のWDR6の定量法を 供する。

 上記(ii)の定量法においては、2種の抗体はWD R6の異なる部分を認識するものであることが ましい。例えば、一方の抗体がWDR6のN端部 認識する抗体であれば、他方の抗体としてWD R6のC端部と反応するものを用いることができ る。
 また、WDR6に対するモノクローナル抗体を用 いてWDR6の定量を行うことができるほか、組 染色等による検出を行うこともできる。こ らの目的には、抗体分子そのものを用いて よく、また、抗体分子のF(ab') 2 、Fab'、あるいはFab画分を用いてもよい。
 本発明の抗体を用いるWDR6の定量法は、特に 制限されるべきものではなく、被験試料中の 抗原量(例えば、WDR6量)に対応した抗体、抗原 もしくは抗体-抗原複合体の量を化学的また 物理的手段により検出し、これを既知量の 原を含む標準液を用いて作製した標準曲線 り算出する測定法であれば、いずれの測定 を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー 競合法、イムノメトリック法およびサンド ッチ法が好適に用いられるが、感度、特異 の点で、後述するサンドイッチ法を用いる が特に好ましい。

 標識物質を用いる測定法に用いられる標識 としては、例えば、放射性同位元素、酵素 蛍光物質、発光物質などが用いられる。放 性同位元素としては、例えば、〔 125 I〕、〔 131 I〕、〔 3 H〕、〔 14 C〕などが用いられる。上記酵素としては、 定で比活性の大きなものが好ましく、例え 、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ アルカリフォスファターゼ、パーオキシダ ゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる 蛍光物質としては、例えば、フルオレスカ ン、フルオレッセンイソチオシアネートな が用いられる。発光物質としては、例えば ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェ ン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに 抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオ ン-(ストレプト)アビジン系を用いることも きる。

 抗原あるいは抗体の不溶化にあたっては 物理吸着を用いてもよく、また通常蛋白質 るいは酵素等を不溶化・固定化するのに用 られる化学結合を用いてもよい。担体とし は、アガロース、デキストラン、セルロー などの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリ クリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あ いはガラス等があげられる。

 サンドイッチ法においては不溶化した本発 の抗体に被験試料を反応させ(1次反応)、さ に標識化した別の本発明の抗体を反応させ( 2次反応)た後、不溶化担体上の標識剤の量(活 性)を測定することにより被験試料中のWDR6量 定量することができる。1次反応と2次反応 逆の順序で行っても、また、同時に行って よいし、時間をずらして行ってもよい。標 化剤および不溶化の方法は前記のそれらに じることができる。また、サンドイッチ法 よる免疫測定法において、固相化抗体ある は標識化抗体に用いられる抗体は必ずしも1 類である必要はなく、測定感度を向上させ 等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用い てもよい。
 サンドイッチ法によるWDR6の測定法において は、1次反応と2次反応に用いられる本発明の 体は、WDR6の結合する部位が相異なる抗体が 好ましく用いられる。例えば、上述のように 、2次反応で用いられる抗体が、WDR6のC端部を 認識する場合、1次反応で用いられる抗体と ては、好ましくはC端部以外、例えばN端部を 認識する抗体が用いられる。

 本発明の抗体は、サンドイッチ法以外の測 システム、例えば、競合法、イムノメトリ ク法あるいはネフロメトリーなどにも用い ことができる。
 競合法では、被験試料中の抗原と標識抗原 を抗体に対して競合的に反応させた後、未 応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗 (B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識 を測定し、被験試料中の抗原量を定量する 本反応法には、抗体として可溶性抗体を用 、ポリエチレングリコールや前記抗体(1次抗 体)に対する2次抗体などを用いてB/F分離を行 液相法、および、1次抗体として固相化抗体 を用いるか、あるいは1次抗体は可溶性のも を用い、2次抗体として固相化抗体を用いる 相化法とが用いられる。
 イムノメトリック法では、被験試料中の抗 と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対 て競合反応させた後固相と液相を分離する 、あるいは、被験試料中の抗原と過剰量の 識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を え未反応の標識化抗体を固相に結合させた 、固相と液相を分離する。次に、いずれか 相の標識量を測定し被験試料中の抗原量を 量する。
 また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるい 溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性 沈降物の量を測定する。被験試料中の抗原 が僅かであり、少量の沈降物しか得られな 場合にもレーザーの散乱を利用するレーザ ネフロメトリーなどが好適に用いられる。

 これら個々の免疫学的測定法を本発明の定 方法に適用するにあたっては、特別の条件 操作等の設定は必要とされない。それぞれ 方法における通常の条件、操作法に当業者 通常の技術的配慮を加えてWDR6の測定系を構 築すればよい。これらの一般的な技術手段の 詳細については、総説、成書などを参照する ことができる。
 例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセ 」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続 ジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発 )、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書 院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫 測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、 川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学 院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」  Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vo l. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol.  74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol.  84(Immunochemical Techniques(Part D : Selected Immunoas says))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E : Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Me thods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Par t I : Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies) )(以上、アカデミックプレス社発行)などを参 照することができる。
 以上のようにして、本発明の抗体を用いる とによって、WDR6を感度よく定量することが できる。

 したがって、被験温血動物由来の生体試料( 例、血液、血漿、血清、リンパ液、脳脊髄液 、関節液、精液、尿、生検サンプル等)を被 体とし、本発明の抗体を用いて該被験体中 WDR6の濃度を定量することによって、WDR6濃度 の減少が検出された場合、例えば、インスリ ン/IGF-1シグナル伝達系の作用の異常亢進に関 連する疾患、例えば、摂食障害、低血糖、脂 肪代謝異常が関与する代謝疾患、癌、自己免 疫疾患(例、関節リウマチ、クローン病、潰 性大腸炎等)などの疾患に罹患しているか、 るいは将来罹患する可能性が高いと診断す ことができる。
 一方、WDR6濃度の増加が検出された場合には 、例えば、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の 作用の不全に関連する疾患、例えば、神経変 性疾患(例:アルツハイマー病、ダウン症、ポ グルタミン病、パーキンソン病、筋萎縮性 索硬化症、プリオン病、小脳変性症等);摂 障害;肥満、インスリン抵抗性、糖尿病、糖 病合併症(例:ケトーシス、アシドーシス、 尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性 膜症)、耐糖能異常、高脂血症等の代謝疾患; 高血圧、動脈硬化、虚血性心疾患、脳血管障 害等の他の生活習慣病などの疾患に罹患して いるか、あるいは将来罹患する可能性が高い と診断することができる。

(III)インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用調 剤のスクリーニング
 本発明はまた、WDR6を産生する能力を有する 細胞における該タンパク質(遺伝子)の発現を 試験化合物の存在下と非存在下で比較する とを特徴とする、インスリン/IGF-1シグナル 達系の作用を調節する物質のスクリーニン 方法を提供する。

 WDR6の発現量は、前記した本発明のセンス核 酸または本発明のアンチセンス核酸(以下、 れらを包括して「本発明の核酸」という)を いて、WDR6のmRNAを検出することにより、RNA ベルで測定することができる。あるいは、 発現量は、前記した本発明の抗体を用いて WDR6タンパク質を検出することにより、タン ク質レベルで測定することもできる。
 従って、より具体的には、本発明は、
(a)WDR6を産生する能力を有する細胞を試験化 物の存在下および非存在下に培養し、両条 下における該タンパク質をコードするmRNAの を、本発明の核酸を用いて測定、比較する とを特徴とする、インスリン/IGF-1シグナル 達系の作用を調節する物質のスクリーニン 方法、および
(b)WDR6を産生する能力を有する細胞を試験化 物の存在下および非存在下に培養し、両条 下における該タンパク質の量を、本発明の 体を用いて測定、比較することを特徴とす 、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用を 節する物質のスクリーニング方法を提供す 。

 例えば、WDR6のmRNA量またはタンパク質量の 定は、具体的には以下のようにして行うこ ができる。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物( えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、 タ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、あるい 、肥満/糖尿病マウス(例、ob/obマウス、db/db ウス、A y マウス、KKマウス等)、肥満/糖尿病ラット(例 Zucker obeseラット、GKラット等)、高血圧ラッ ト、動脈硬化ウサギ、アルツハイマー病モデ ルマウス(例、Tg2576マウス等)など)に対して、 薬剤(例えば、抗肥満薬、抗糖尿病薬、降圧 、血管作用薬、神経細胞保護剤など)あるい 物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電 気ショック、明暗、低温など)などを与え、 定時間経過した後に、血液、あるいは特定 臓器・組織(例えば、脳、視床下部、肝臓、 肪組織、骨格筋など)、あるいは細胞(例え 、神経細胞、肝細胞、脂肪細胞、筋細胞な )を得る。
 得られた細胞等に含まれるWDR6 mRNAは、例え ば、通常の方法により該細胞等からmRNAを抽 し、例えば、TaqMan PCRなどの手法を用いるこ とにより定量することができ、自体公知の手 段によりノーザンブロットを行なうことによ り解析することもできる。一方、WDR6タンパ 質量は、ウェスタンブロット解析や以下に 述する各種イムノアッセイ法を用いて定量 ることができる。
(ii)WDR6またはその部分ペプチドを発現する形 転換体を前述の方法に従って作製し、該形 転換体に含まれるWDR6またはその部分ペプチ ドあるいはそれをコードするmRNAを同様にし 定量、解析することができる。

 試験化合物としては、例えばタンパク質 ペプチド、抗体、非ペプチド性化合物、合 化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽 液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ これらの物質は新規なものであってもよい 、公知のものであってもよい。

 WDR6の発現量を変化させる物質のスクリーニ ングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に 対して、薬剤あるいは物理的ストレスなどを 与える一定時間前(30分前ないし24時間前、好 しくは30分前ないし12時間前、より好ましく は1時間前ないし6時間前)もしくは一定時間後 (30分後ないし3日後、好ましくは1時間後ない 2日後、より好ましくは1時間後ないし24時間 後)、または薬剤あるいは物理的ストレスと 時に試験化合物を投与し、投与後一定時間 過後(30分後ないし3日後、好ましくは1時間後 ないし2日後、より好ましくは1時間後ないし2 4時間後)、該動物から単離した細胞に含まれ WDR6をコードするmRNA量、あるいはWDR6タンパ 質量を定量、解析することにより、あるい
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に試 化合物を培地中に混合させ、一定時間培養 (1日後ないし7日後、好ましくは1日後ないし3 日後、より好ましくは2日後ないし3日後)、該 形質転換体に含まれるWDR6をコードするmRNA量 あるいはWDR6タンパク質量を定量、解析する ことにより行うことができる。

 上記(b)のスクリーニング方法におけるWDR6タ ンパク質の量の測定は、具体的には、例えば 、
(i)本発明の抗体と、被験試料および標識化さ れたWDR6タンパク質とを競合的に反応させ、 抗体に結合した標識化されたタンパク質を 出することにより該試料中のWDRタンパク質 定量する方法、
(ii)被験試料と、担体上に不溶化した本発明 抗体および標識化された別の本発明の抗体 を、同時あるいは連続的に反応させた後、 溶化担体上の標識剤の量(活性)を測定するこ とにより、該試料中のWDR6タンパク質を定量 る方法等が挙げられる。
 具体的な測定は、前記した本発明の抗体を いた診断法と同様にして行うことができる

 例えば、上記のスクリーニング方法にお て、試験化合物の存在下におけるWDR6の発現 量が、試験化合物の非存在下における発現量 に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、よ り好ましくは約50%以上阻害された場合に、該 試験化合物を、WDR6の発現を抑制する物質と て選択することができる。一方、試験化合 の存在下におけるWDR6の発現量が、試験化合 の非存在下における発現量に比べて、約20% 上、好ましくは30%以上、より好ましくは約5 0%以上増大した場合に、該試験化合物を、WDR6 の発現を増強する物質として選択することが できる。

 上記スクリーニング方法を用いて得られる 合物は、WDR6の発現量を変化させることによ り、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用を 調節するための安全で低毒性な医薬として有 用である。
 前述のとおり、WDR6の発現を抑制する物質は 、WDR6とIRS-4との相互作用を抑制することによ ってインスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用を 増強するので、老化;神経変性疾患(例:アルツ ハイマー病、ダウン症、ポリグルタミン病、 パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、プリ オン病、小脳変性症等);摂食障害;肥満、イン スリン抵抗性、糖尿病、糖尿病合併症(例:ケ ーシス、アシドーシス、糖尿病性神経障害 糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症)、耐糖能異 常、高脂血症等の代謝疾患;高血圧、動脈硬 、虚血性心疾患、脳血管障害等の他の生活 慣病などの病態または疾患の予防および改 /治療剤などとして使用することができる。 た、WDR6の発現を抑制する物質は、IRS-4との 互作用を抑制することによって、FGFやNGFか のシグナルを介しても神経細胞保護作用を 揮し得る。
 一方、WDR6の発現を増強する物質は、インス リン/IGF-1シグナル伝達系の作用を抑制して、 摂食促進、脂肪代謝促進等の効果を発揮する ことにより、摂食障害や脂肪代謝異常が関与 する代謝疾患等の疾患の予防・治療剤などと して使用することができる。また、WDR6の発 を増強する物質は、インスリン刺激によるIR S-4を介したPI3-キナーゼ、PKB/Aktの活性化を阻 するので、アポトーシス促進剤、細胞増殖/ 分化抑制剤などとして、癌や自己免疫疾患( 、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸 等)などの疾患の予防・治療に効果を発揮し る。
 WDR6の発現を調節する物質を上記医薬として 使用する場合は、前記WDR6に対してアゴニス もしくはアンタゴニスト活性を示す低分子 合物等と同様にして製剤化し、同様の投与 路、用量で投与することができる。

 本発明はまた、WDR6またはその部分ペプチド 、あるいはそれを産生する細胞を用いること による、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作 用を調節する物質のスクリーニング方法を提 供する。該スクリーニング方法は、(A)WDR6とIR S-4の結合性を利用する方法、(B)IRS-4の活性化( リン酸化)の程度を指標とする方法に大別さ る。いずれの方法においても、IRS-4もしくは WDR6との結合能を保持するその部分ペプチド あるいはそれを産生する細胞がさらに用い れる。
(A)WDR6とIRS-4の結合性を利用するスクリーニン グ方法
 WDR6はIRS-4と結合してそのリン酸化を制御す ことができるので、WDR6またはその部分ペプ チドとIRS-4またはその部分ペプチドを用いた インディングアッセイ系を構築することに って、WDR6またはその部分ペプチドと同様の 作用を有する化合物のスクリーニングや、WDR 6またはその部分ペプチドの作用を阻害する 合物のスクリーニングを行うことができる すなわち、本発明は、WDR6またはその部分ペ チドとIRS-4またはその部分ペプチドを用い 、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用を 節する物質のスクリーニング方法を提供す 。
 より具体的には、本発明は、
(a)(1)IRS-4またはその部分ペプチドに、WDR6また はその部分ペプチドを接触させた場合と(2)IRS -4またはその部分ペプチドに、WDR6またはその 部分ペプチドおよび試験化合物を接触させた 場合との、IRS-4またはその部分ペプチドとWDR6 またはその部分ペプチドとの結合量の比較を 行うことを特徴とする、インスリン/IGF-1シグ ナル伝達系の作用を調節する物質のスクリー ニング方法、
(b)(1)IRS-4またはその部分ペプチドを産生する 胞に、WDR6またはその部分ペプチドを接触さ せた場合と(2)IRS-4またはその部分ペプチドを 生する細胞に、WDR6またはその部分ペプチド および試験化合物を接触させた場合との、IRS -4またはその部分ペプチドとWDR6またはその部 分ペプチドとの結合量の比較を行うことを特 徴とする、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の 作用を調節する物質のスクリーニング方法、 および
(c)IRS-4またはその部分ペプチドおよびWDR6また はその部分ペプチドを産生し、且つ両者が結 合した場合にレポーター遺伝子の転写が活性 化される細胞における該レポーター遺伝子の 発現量を、試験化合物の存在下と非存在下と で比較することを特徴とする、インスリン/IG F-1シグナル伝達系の作用を調節する物質のス クリーニング方法を提供する。

 上記(a)または(b)のスクリーニング方法にお て用いられるIRS-4は、ヒトまたは他の温血 物の細胞から自体公知の方法(例えば、WDR6に ついて上記したと同様の方法)を用いて単離 製することができる。IRS-4の部分ペプチドは 、WDR6との結合に必要なドメインのアミノ酸 列を有する限り特に制限されず、インスリ 受容体のチロシンキナーゼによりリン酸化 れるリン酸化部位などを含んでいてもよい 該部分ペプチドはIRS-4を適当な蛋白質分解酵 素を用いて消化することにより得ることがで きる。また、IRS-4およびその部分ペプチドは 自体公知の遺伝子工学的手法に従ってそれ コードするDNAをクローニングした後、前記 たWDR6の発現方法に従って組換え生産するこ ともできる。
 WDR6およびその部分ペプチド(以下、単にWDR6 いう場合がある)は、上記の方法に従って調 製することができる。
 IRS-4を産生する細胞としては、それを発現 るヒトまたは他の温血動物細胞であれば特 制限はない。また、IRS-4またはその部分ペプ チド(以下、単にIRS-4という場合がある)を産 する細胞としては、上記の遺伝子工学的手 により作製された形質転換体が例示される

 試験化合物としては、例えばタンパク質 ペプチド、抗体、非ペプチド性化合物、合 化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽 液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ これらの物質は新規なものであってもよい 、公知のものであってもよい。

 結合量の測定は、例えば、標識した抗WDR6抗 体および抗IRS-4抗体を用いたウェスタンブロ ト解析、WDR6またはIRS-4のいずれかを標識(例 えば、〔 3 H〕、〔 125 I〕、〔 14 C〕、〔 35 S〕などで)しての結合アッセイやゲルシフト ッセイ、あるいは表面プラズモン共鳴(SPR) どにより行うことができる。
 上記のスクリーニング方法において、IRS-4 結合してWDR6とIRS-4との結合を阻害する化合 を、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用 調節する物質として選択することができる

 本スクリーニング方法において、WDR6とIRS-4 の反応は、通常約37℃で数時間程度行うこ ができる。
 例えば、標識WDR6を用いた結合アッセイによ り上記のスクリーニング方法を実施するには 、まず、IRS-4またはそれを産生する細胞をス リーニングに適したバッファーに懸濁する とによりIRS-4標品を調製する。バッファー 、pH約4~10(望ましくは、pH約6~8)のリン酸バッ ァー、トリス-塩酸バッファーなどの、WDR6 IRS-4との結合を阻害しないバッファーであれ ばいずれでもよい。また、非特異的結合を低 減させる目的で、CHAPS、Tween-80 TM (花王-アトラス社)、ジギトニン、デオキシコ レートなどの界面活性剤をバッファーに加え ることもできる。さらに、プロテアーゼによ るWDR6やIRS-4の分解を抑える目的で、PMSF、ロ ペプチン、バシトラシン、アプロチニン、E- 64(タンパク質研究所製)、ペプスタチンなど プロテアーゼ阻害剤を添加することもでき 。
 一方、細胞が固定化細胞の場合、培養器に 定化させたまま、つまり細胞を生育させた 態で、あるいはグルタルアルデヒドやパラ ルムアルデヒドで固定した細胞を用いて、W DR6とIRS-4を結合させることができる。この場 、該緩衝液は培地やハンクス液などが用い れる。
 そして、0.01ml~10mlの該IRS-4標品に、一定量( えば、2000Ci/mmolの場合、約10000cpm~1000000cpm)の 識したWDR6(例えば、〔 125 I〕で標識したWDR6)を添加し、同時に10 -4 M~10 -10 Mの被検物質を共存させる。非特異的結合量(N SB)を知るために大過剰の未標識のWDR6を加え 反応チューブも用意する。反応は0℃~50℃、 ましくは4℃~37℃で20分~24時間、望ましくは3 0分~3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で 濾過(IRS-4産生細胞を用いる場合)またはB/F分 (精製IRS-4を用いる場合)し、適量の同バッフ ーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙または固 に残存する放射活性(例えば、〔 125 I〕の量)を液体シンチレーションカウンター たはγ-カウンターで測定する。拮抗する物 がない場合のカウント(B 0 )から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B 0 -NSB)を100%とした時、特異的結合量(B-NSB)が、 えばカウント(B 0 -NSB)の50%以下になる被検物質をIRS-4活性化調 物質として選択することができる。

 本発明のスクリーニング用キットは、WDR6、 好ましくはさらにIRS-4またはそれを産生する 胞を含有するものである。
 本発明のスクリーニング用キットの例とし は次のものが挙げられるが、これに限定さ るものではない。
〔スクリーニング用試薬〕
1) 測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
 Hanks' Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.0 5%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加え もの。孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し 4℃で保存するか、あるいは用時調製しても 良い。
2) IRS-4標品
 HeLa細胞またはHEK293細胞を12穴プレートに5×1 0 5 個/穴で継代し、37℃、5%CO 2 、95%airで2日間培養したもの。
3) 標識したWDR6標品
 WDR6を〔 3 H〕、〔 125 I〕、〔 14 C〕、〔 35 S〕などで標識したもの。
4) WDR6標準液
 WDR6を0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を 含むPBSで0.1mMとなるように溶解し、-20℃で保 したもの。
〔測定法〕
1) 12穴組織培養用プレートにて培養したIRS-4 生細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後 、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
2) 10 -3 ~10 -10 Mの被検物質溶液を5μl加えた後、5nMの標識し WDR6を5μl加え、室温にて1時間反応させる。 特異的結合量を知るためには被検物質のか りに10 -4 MのWDR6を5μl加えておく。
3) 反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回 浄する。細胞に結合した標識WDR6を0.5mlの0.2N  NaOH-1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーター A(和光純薬製)と混合する。
4) 液体シンチレーションカウンター(ベック ン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent  Maximum Binding(PMB)を次式(数1)で求める。なお、 〔 125 I〕で標識されている場合は、液体シンチレ ターと混合することなしに直接ガンマーカ ンターで測定できる。

 PMB: Percent Maximum Binding
 B : 検体を加えた時の結合量
 NSB: Non-specific Binding(非特異的結合量)
 B 0 : 最大結合量

 上記(c)のスクリーニング法において用いら る細胞としては、(1)IRS-4またはその部分ペ チドと転写因子(例えば、GAL4、VP16等)の結合 メインもしくは転写活性化ドメインのいず か一方との融合蛋白質をコードする、(2)WDR6 またはその部分ペプチドと転写因子の他方の ドメインとの融合蛋白質をコードするDNA、お よび(3)該転写因子により活性化されるプロモ ーターの制御下にあるレポーター遺伝子を含 有する細胞、好ましくは酵母細胞、哺乳動物 細胞等が挙げられる。レポーター遺伝子とし ては、例えば、ルシフェラーゼ遺伝子、β-ガ ラクトシダーゼ遺伝子、アルカリフォスファ ターゼ遺伝子、ペルオキシダーゼ遺伝子、ク ロラムフェニコールアセチルトランスフェラ ーゼ遺伝子、グリーンフルオレセントプロテ イン(GFP)遺伝子などが挙げられる。
 本スクリーニング方法において、上記の細 を、使用する宿主細胞に適合した培養条件 で数時間~1日程度培養した後、細胞抽出液 たは上清液を得て、常法によりレポーター 伝子の検出を行う。
 上記のスクリーニング方法において、レポ ター遺伝子の発現を調節する化合物を、イ スリン/IGF-1シグナル伝達系の作用を調節す 物質として選択することができる。

(B)IRS-4の活性化を指標とするスクリーニング 法
 WDR6とIRS-4との相互作用に及ぼす試験化合物 効果をIRS-4の活性化を測定することにより べれば、該物質がIRS-4の活性化を抑制するか 、あるいは促進するかを直接評価することが できる。すなわち、本発明は、IRS-4またはそ 部分ペプチドを産生する細胞における該蛋 質もしくは該ペプチドの活性化を、(1)WDR6ま たはその部分ペプチドの存在下と、(2)WDR6ま はその部分ペプチドおよび試験化合物の存 下とで、測定・比較することによる、イン リン/IGF-1シグナル伝達系の作用を調節する 質のスクリーニング方法を提供する。

 本スクリーニング法において、IRS-4または の部分ペプチドを産生する細胞(以下、単にI RS-4産生細胞という場合がある)としては、IRS- 4を内因的に産生する細胞や、IRS-4またはその 部分ペプチドをコードするDNAを導入された動 物細胞などが挙げられる。
 WDR6またはその部分ペプチド(以下、単にWDR6 いう場合がある)は外部から細胞に添加して もよいし、あるいはIRS-4産生細胞自体が産生 るものであってもよい。後者の場合、WDR6は 内因的に産生されてもよいし、IRS-4産生細胞 宿主として上記WDR6の発現方法に従って遺伝 子工学的に作製された形質転換体であっても よい。

 試験化合物としては、例えばタンパク質 ペプチド、抗体、非ペプチド性化合物、合 化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽 液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ これらの物質は新規なものであってもよい 、公知のものであってもよい。

 IRS-4の活性化は、IRS-4の自己リン酸化、IRS -4カスケードの下流に位置するキナーゼ(例え ば、PI3K、PKB/Akt等)やIRS-4の基質となり得る他 蛋白質もしくは合成ペプチドのリン酸化な を測定することにより評価することができ 。

 具体的には、まずIRS-4産生細胞をマルチウ ルプレート等に培養する。スクリーニング 行うにあたっては、前もって新鮮な培地あ いは細胞に毒性を示さない適当なバッファ に交換し、試験化合物(細胞がWDR6を産生しな い場合はさらにWDR6)などを添加して一定時間 ンキュベートした後、細胞を抽出あるいは 清液を回収して、生成した産物をそれぞれ 方法に従って定量する。
 IRS-4や他の蛋白質もしくはペプチドのリン 化の検出は、リン酸化蛋白質(ペプチド)特異 的抗体を用いたウェスタンブロット解析や、 基質蛋白質(ペプチド)における[ 32 P]標識ATPの取込みをゲル電気泳動およびオー ラジオグラフィーにより検出する等の方法 より行うことができる。

 上記のスクリーニング方法において、IRS-4 生細胞に試験化合物を添加した際にIRS-4の活 性が増大(IRS-4や他の蛋白質もしくはペプチド のリン酸化の程度が増大)した場合、該化合 をインスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用を 強させる物質として選択することができる 一方、試験化合物を添加した際にIRS-4の活性 が低下(IRS-4や他の蛋白質もしくはペプチドの リン酸化の程度が低減)した場合、該化合物 インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作用を抑 する物質として選択することができる。
 例えば、上記のスクリーニング方法におい 、試験化合物の存在下におけるIRS-4のリン 化の程度が、試験化合物の非存在下におけ それに比べて、約20%以上、好ましくは30%以 、より好ましくは約50%以上増大した場合に 該化合物をインスリン/IGF-1シグナル伝達系 作用を増強させる物質として選択すること できる。一方、試験化合物の存在下におけ IRS-4のリン酸化の程度が、試験化合物の非存 在下におけるそれに比べて、約20%以上、好ま しくは30%以上、より好ましくは約50%以上低下 した場合に、該化合物をインスリン/IGF-1シグ ナル伝達系の作用を抑制する物質として選択 することができる。

 上記スクリーニング方法を用いて得られる 合物は、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の 用を調節するための安全で低毒性な医薬と て有用である。
 前述のとおり、インスリン/IGF-1シグナル伝 系の作用を増強させる物質は、老化;神経変 性疾患(例:アルツハイマー病、ダウン症、ポ グルタミン病、パーキンソン病、筋萎縮性 索硬化症、プリオン病、小脳変性症等);摂 障害;肥満、インスリン抵抗性、糖尿病、糖 病合併症(例:ケトーシス、アシドーシス、 尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性 膜症)、耐糖能異常、高脂血症等の代謝疾患; 高血圧、動脈硬化、虚血性心疾患、脳血管障 害等の他の生活習慣病などの病態または疾患 の予防および改善/治療剤などとして使用す ことができる。また、WDR6とIRS-4との相互作 を抑制することによって、FGFやNGFからのシ ナルを介しても神経細胞保護作用を発揮し る。
 一方、インスリン/IGF-1シグナル伝達系の作 を抑制する物質は、摂食促進、脂肪代謝促 等の効果を発揮することにより、摂食障害 脂肪代謝が関与する代謝疾患等の疾患の予 ・治療剤などとして使用することができる また、インスリン刺激によるIRS-4を介したPI 3-キナーゼ、PKB/Aktの活性化を阻害するので、 アポトーシス促進剤、細胞増殖/分化抑制剤 どとして、癌や自己免疫疾患(例、関節リウ チ、クローン病、潰瘍性大腸炎等)などの疾 患の予防・治療に効果を発揮し得る。

 WDR6の活性を調節する物質を上記医薬とし て使用する場合は、前記WDR6に対してアゴニ トもしくはアンタゴニスト活性を示す低分 化合物等と同様にして製剤化し、同様の投 経路、用量で投与することができる。

 本発明はまた、被験物質を動物に投与し、 動物の視床下部における、E2D3、PKCβ、EAAC1 Fth1およびASSからなる群より選択される1以上 の遺伝子、並びに/あるいは配列番号:13で表 れる塩基配列を含む核酸および/または配列 号:14で表される塩基配列を含む核酸の発現 調べることを含む、該物質の神経細胞保護 用の評価方法を提供する。
 E2D3、PKCβ、EAAC1、Fth1およびASS遺伝子のcDNA配 列、およびそれらにコードされる蛋白質のア ミノ酸配列の例は、それぞれ配列番号:3およ 4、配列番号:5および6、配列番号:7および8、 配列番号:9および10、並びに配列番号:11およ 12に記載されている。また、配列番号:13で表 される塩基配列および配列番号:14で表される 塩基配列からなるESTは、GenBankにBF396681および BF394337としてそれぞれ登録されている。
 これらの遺伝子および/または核酸の発現は 、WDR6について前記したと同様の方法で、そ らをコードする核酸や、それらに対する抗 を用いて測定することができる。被験物質 投与や発現量の測定は、WDR6の発現量を変化 せる化合物のスクリーニングにおいて前記 たと同様の方法が適宜用いられる。

 被験物質の投与群において、非投与群と 較してこれらの遺伝子および/または核酸の 発現量が有意に変化した場合、該物質を神経 細胞保護作用を有する物質の候補として選択 することができる。

 本明細書および図面において、塩基やアミ 酸などを略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commi ssion on Biochemical Nomenclature による略号ある は当該分野における慣用略号に基づくもの あり、その例を下記する。またアミノ酸に し光学異性体があり得る場合は、特に明示 なければL体を示すものとする。
 DNA     :デオキシリボ核酸
 cDNA    :相補的デオキシリボ核酸
 A       :アデニン
 T       :チミン
 G       :グアニン
 C       :シトシン
 RNA     :リボ核酸
 mRNA    :メッセンジャーリボ核酸
 dATP    :デオキシアデノシン三リン酸
 dTTP    :デオキシチミジン三リン酸
 dGTP    :デオキシグアノシン三リン酸
 dCTP    :デオキシシチジン三リン酸
 ATP     :アデノシン三リン酸
 EDTA    :エチレンジアミン四酢酸
 SDS     :ドデシル硫酸ナトリウム

 Gly     :グリシン
 Ala     :アラニン
 Val     :バリン
 Leu     :ロイシン
 Ile      :イソロイシン
 Ser     :セリン
 Thr     :スレオニン
 Cys     :システイン
 Met     :メチオニン
 Glu     :グルタミン酸
 Asp     :アスパラギン酸
 Lys     :リジン
 Arg     :アルギニン
 His     :ヒスチジン
 Phe     :フェニルアラニン
 Tyr     :チロシン
 Trp     :トリプトファン
 Pro     :プロリン
 Asn     :アスパラギン
 Gln     :グルタミン
 pGlu    :ピログルタミン酸
 Me     :メチル基
 Et      :エチル基
 Bu     :ブチル基
 Ph     :フェニル基
 TC     :チアゾリジン-4(R)-カルボキサミド 基

 また、本明細書中で繁用される置換基、保 基および試薬を下記の記号で表記する。
 Tos     :p-トルエンスルフォニル
 CHO    :ホルミル
 Bzl      :ベンジル
 Cl 2 Bzl    :2,6-ジクロロベンジル
 Bom     :ベンジルオキシメチル
 Z       :ベンジルオキシカルボニル
 Cl-Z     :2-クロロベンジルオキシカルボ ル
 Br-Z     :2-ブロモベンジルオキシカルボ ル
 Boc     :t-ブトキシカルボニル
 DNP     :ジニトロフェノール
 Trt      :トリチル
 Bum     :t-ブトキシメチル
 Fmoc     :N-9-フルオレニルメトキシカルボ ニル
 HOBt     :1-ヒドロキシベンズトリアゾー
 HOOBt    :3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキ -1,2,3-ベンゾトリアジン
 HONB     :1-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3- ジカルボキシイミド
 DCC      :N,N’-ジシクロヘキシルカルボ イミド

 以下に実施例を示して、本発明をより詳 に説明するが、これらは単なる例示であっ 、本発明の範囲を何ら限定するものではな 。

実施例1 サブトラクションライブラリーの作 製
 8週齢の雄のWistarラットよりサブトラクショ ンに使用したサンプルの抽出を行った。48時 絶食後および通常摂食中のラットを断頭に り屠殺し、脳を取り出し、脳スライス作製 ルダーをもちいてPalkovitsとBrownsteinの方法に 従い、弓状核を含む脳スライスをカミソリを もちいて取り出し、さらに視床下部、大脳皮 質、海馬、そして小脳にわけて保存した。定 法に従いmRNAを抽出し、サブトラクションキ ト(クロンテック社製)をもちいて絶食によっ て発現が上昇する遺伝子を含むライブラリー (絶食後視床下部-摂食後視床下部)および視床 下部特異的遺伝子ライブラリー(視床下部-(大 脳皮質+海馬+小脳)を作製した。

実施例2 スクリーニング
 サブトラクションライブラリーからランダ にそれぞれ160個の大腸菌コロニーを単離し スクリーニングを行った。1次スクリーニン グを、サブトラクションに使用したものと同 じ2種類のcDNA(引き算するものとされるもの) もちいてハイブリダイゼーション法により った。そして、引き算されるもの由来のcDNA ハイブリダイゼーションさせた場合、引き するもの由来cDNAとのそれよりも3倍以上の のを陽性と判断し、DNAシークエンスによっ 遺伝子配列決定後、特異的プライマーを作 し、2次スクリーニングを半定量的RT-PCR法に り解析し、その結果発現量が有意に異なっ いたものを同定した。結果を図1および2に す。

 48時間絶食後、および摂食後のラット視 下部由来cDNAをもちいて半定量的RT-PCRにより 伝子の発現変化を解析したところ、図1に示 される4つの遺伝子の発現が絶食後の視床下 において上昇していた。その発現増加量は1. 3-1.6倍であった(表1参照)。

 また、48時間絶食後のラット視床下部、 馬、大脳皮質、小脳由来cDNAをもちいて半定 的RT-PCRにより遺伝子発現を解析したところ 図2に示される4つの遺伝子の発現が絶食後 視床下部において他の脳領域と比較して上 していた。その発現増加量は海馬、大脳皮 、小脳での発現量の平均の1.8-3倍であった( 2参照)。

 表1および2で示した遺伝子群の多くはス レス応答に関与し、神経細胞死に対する保 作用があることが考えられる。これらの遺 子の発現変化をマーカーとした神経変性疾 に対する治療薬等の評価を行うことができ と考えられる。

実施例3 WDR6とIRS-4との相互作用
 ラット脳由来タンパク質を用い、特異的抗 を用いた免疫沈降法により、IRS-4とWDR6が結 することがわかった。結果を図3および4に す。IRS-4は特に脳視床下部弓状核におけるイ ンスリンシグナルの重要な媒介役となってい ることが示唆されており、WDR6がこの領域に けるインスリン/IGF-1の重要な制御因子であ ことを示唆している。
 IRS-4はリン酸化の度合いによりSDSポリアク ルアミド電気泳動による移動度が変化する とが知られている。図4において**で示した ン酸化IRS-4のバンドは、粗抽出物と比較して WDR6による免疫沈降により沈降するIRS-4におい て多く見られた。データベース検索の結果、 WDR6はホスファターゼ制御領域と相同性のあ 領域を持っており、WDR6とIRS-4との結合によ 、IRS-4のリン酸化状態が変化する可能性を示 唆している。絶食後と摂食後とで、IRS-4とWDR6 の相互作用は変化していなかった(図4)。

実施例4 CRおよびGH/IGF-I抑制ラット視床下部 状核におけるWDR6遺伝子発現変化
 野生型Wistarラット(-/-)および成長ホルモン ンチセンストランスジェニック(tg/-)ラット 視床下部弓状核におけるWDR6の遺伝子発現を 自由摂食(AL)およびカロリー制限(CR)下で、 アルタイムPCR法により定量、比較した。CRは ALの摂食量の70%になるように食餌を制限して6 週齢より6ヶ月間飼育した。結果を図5に示す
 -/-ラットはCRによりその発現が低下してい 。また、-/-ラットのALと比較してtg/-ラット はその発現が低下していた。tg/-ラットではC RによるWDR6遺伝子発現の変化は見られなかっ 。これらの発現変化は、-/-およびtg/-におけ るCRでのインスリンおよびIGF-1の血中濃度の 化と似たパターンであり、インスリン/IGF-1 グナル伝達系との関連が示唆された。

実施例5 レプチン脳室内投与の効果
 6週齢のFisher 344ラットをAL(自由摂食)または CR(ALの70%の食餌量)下で飼育し、34週齢の時に 三脳室にレプチン(10ng/h)またはPBS(リン酸緩 液)を浸透圧ポンプをもちいて14日間導入し 。14日後に断頭により屠殺し、上記のよう 脳スライスを作製し、視床下部弓状核をマ クロダイセクションして切り出し、RNA抽出 、cDNAを合成してリアルタイムPCRによりWDR6遺 伝子発現を解析した。PCRのプライマーおよび プローブはアプライドバイオシステムズ社の PrimerExpressソフトウエアをもちいて設計した 結果を図6に示す。CRはWDR6の遺伝子発現を減 させたが、レプチン投与による影響は見ら なかった。このことから、CRおよびGH/IGF-I抑 制ラットにおけるWDR6の発現低下はインスリ /IGF-1シグナル伝達系によるものであること 示唆された。

実施例6 GT1-7細胞株におけるIGF-1およびイン リン投与によるWDR6遺伝子発現変化
 マウス視床下部由来GT1-7細胞株に対するIGF-1 およびインスリン投与によるWDR6遺伝子の発 をリアルタイムPCRによって定量した。GT1-7細 胞株においてIGF-1投与はWDR6遺伝子発現を投与 後30分、1時間後において有意に上昇させた。 インスリン投与もまた、2時間後にWDR6の遺伝 発現を有意に上昇させた(図7)。このことか も中枢におけるWDR6の発現低下と血中インス リン/IGF-1濃度との関連が示唆される。

実施例7 Zuckerラット肝臓におけるWDR6遺伝子 現とCRの影響
 Zucker lean(+/+)およびobese(fa/fa)ラットに対す CRは肝臓におけるWDR6遺伝子発現を上昇させ (図8)。CRはALの摂食量の70%になるように食餌 制限して6週齢より6ヶ月間飼育した。+/+はfa /faと比較してWDR6の発現が高かった。

実施例8 Zuckerラット視床下部弓状核における WRD6遺伝子発現
 Zucker lean(+/+)およびobese(fa/fa)ラットの視床 部弓状核におけるWDR6の遺伝子発現を、摂食 および絶食後で、定量的PCR法により定量、 較した。obese(fa/fa)ラットでは、lean(+/+)ラッ に比べて、視床下部弓状核におけるWRD6遺伝 子発現が減少していた(図9)。

 本発明によれば、WDR6の発現および/または 性を抑制する物質は、抗老化剤、神経保護 、抗肥満剤、抗糖尿病剤、インスリン抵抗 改善剤などとして有用である。一方、WDR6の 現および/または活性を増強する物質は、摂 食障害、代謝疾患、低血糖症、癌、自己免疫 疾患等の予防・治療剤として有用である。ま た、本発明のスクリーニング法は、上記疾患 の予防・治療薬の探索に有用である。さらに 、本発明で得られた他の視床下部特異的遺伝 子および絶食誘導性遺伝子を用いた薬剤の評 価方法は、神経変性疾患に対する薬効評価等 に有用である。
 本出願は、日本で出願された特願2007-061075( 願日:平成19年3月9日)を基礎としており、そ に開示される内容は本明細書にすべて包含 れるものである。また、ここで述べられた 許および特許出願明細書を含む全ての刊行 に記載された内容は、ここに引用されたこ によって、その全てが明示されたと同程度 本明細書に組み込まれるものである。