Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
HAIR GROWTH PROMOTER
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/054361
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a hair growth promoter which can induce more efficient hair growth when applied externally, and which has little adverse side effects. Specifically disclosed is a hair growth promoter which comprises, as an active ingredient, a peptide compound containing 9 to 13 arginine residues and the amino acid sequence depicted in SEQ ID NO:1, wherein the peptide compound is a CaN/NFAT pathway-specific inhibitor having a cell membrane permeability.

Inventors:
MATSUI HIDEKI (JP)
TOMIZAWA KAZUHITO (JP)
FUJIMURA ATSUSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/069004
Publication Date:
April 30, 2009
Filing Date:
October 21, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
UNIV OKAYAMA NAT UNIV CORP (JP)
MATSUI HIDEKI (JP)
TOMIZAWA KAZUHITO (JP)
FUJIMURA ATSUSHI (JP)
International Classes:
A61K38/00; A61K8/64; A61P17/14; A61P43/00; A61Q7/00
Foreign References:
JP2003252898A2003-09-10
Other References:
GAFTER-GVILI, A. ET AL.: "Cyclosporin A-induced hair growth in mice is associated with inhibition of calcineurin-dependent activation of NFAT in follicular keratinocytes", AM J PHYSIOL CELL PHYSIOL, vol. 284, no. 6, 2003, pages C1593 - C1603
Attorney, Agent or Firm:
ASAHINA, Sohta et al. (2-22 Tanimachi 2-chome,Chuo-k, Osaka-shi Osaka 12, JP)
Download PDF:
Claims:
 アルギニン9残基~13残基および配列番号1のアミノ酸配列を含有するペプチド化合物を有効成分として含有する発毛促進剤。
 前記ペプチド化合物中の連続したアルギニンが11残基である請求の範囲第1項記載の発毛促進剤。
 剤形が軟膏であり、かつ前記ペプチド化合物の濃度が5~20mg/gである請求の範囲第1項記載の発毛促進剤。
Description:
発毛促進剤

 本発明は、副作用の少ない発毛促進剤に する。詳細には、アルギニン9残基~13残基お よび配列番号1のアミノ酸配列を含有するペ チド化合物を含む発毛促進剤に関する。

 発毛効果を謳う製品は現在多く見受けら るが、アメリカ食品医薬品局(FDA)が認めた 性型脱毛症に有効な薬品はミノキシジルと ィナステリドの2つのみである。ミノキシジ に関してはMessenger AGらが血管拡張作用をも とに発毛現象を説明している(British Journal of  Dermatology、2004年、第150巻、p.186-194参照)。ま たフィナステリドに関しては、Diani ARらが初 めて報告しており(Journal of Clinical Endocrinolog y and Metabolism、1992年、第74巻、p.345-350参照) テストステロンから頭髪の成長を阻害する ヒドロテストステロンへと変換させる酵素 阻害することで、頭髪の成長を促すとされ 。

 しかしながら、これら従来の2つの薬剤は いずれも低分子化合物であるが、それぞれに 決定的な問題点が散在する。まずミノキシジ ルは、もとは血管拡張剤として開発された経 緯があるように、毛根周囲における血液循環 量を増加させることが発毛の誘導に関与する という見解が一般的である。しかし毛根での 血流増加と発毛促進を直接関係付ける証拠は 乏しく、いまだ発毛のメカニズムの詳細な解 明がなされていない。また副作用についても 、循環動態の変化とくに致死的な不整脈の存 在も示唆されている。

 次にフィナステリドは、特に男性型脱毛 に対して現在もっとも有効とされる経口治 薬として認識されているが、厚生労働省の 意喚起によるとその作用機序から女性には 用できず(男性専用)、本薬剤が有する胎児 の催奇形性から女性に対しては厳格な接触 止が推奨されている。また、副作用として1~ 5%にリビドー減退がみられ、頻度不明である 女性化乳房も生じている。

 頭髪における発毛メカニズムはその研究 従事するもののみならず、広く一般の人々 間においても絶えず関心の尽きない話題で る。発毛メカニズムはこれまで多岐に亘っ 研究されており、様々な関連因子が同定さ てきたが、そのうちの1つにカルシニューリ ン・NFAT経路(以下、CaN/NFAT経路と略称する)が る。

 NFATは活性化T細胞核因子の略語であり、 の名が示すとおり、もとは免疫応答に関連 る重要な転写因子として発見された。しか その後の研究によりCaN/NFAT経路は免疫系のみ ならず、心筋や神経、膵臓などの多くの臓器 で重要な役割を果たしていることがわかった 。発毛メカニズムとこの経路の関連性につい ては、Gafter-Gviliらにより、免疫抑制剤シクロ スポリンA(以下、CsAと略称する)の副作用とし て全身の毛が濃くなる多毛症が有名であるこ とを端緒に、毛包内ケラチノサイトにおいて 脱リン酸化酵素であるカルシニューリン(以 、CaNと略称する)の酵素活性がCsAにより抑制 れることで、NFATの脱リン酸化と核内移行さ らに細胞周期に係る種々の転写調節が後続し て制御され、結果的に発毛を誘導したとの報 告がなされている(たとえば、American Journal o f Physiology、2003年、第284巻、p.1593-1603参照)。 毛とCaN/NFAT経路の関連は、その後他のグル プによる研究でも検証され、多くの研究者 によって広く受け入れられている。

 一方で、CsAはCaNの酵素活性そのものを抑 するため、CaN/NFAT経路のみならずCaNが関わ 多くの反応が阻害されている可能性があり CsAの全身投与によって生じる副作用である 障害および神経症状はこのためであると推 されている。また、CsAは、皮膚において局 的な塗布で発毛を誘導したという報告はあ が、経口摂取時と同様に多くの副作用が予 される。本発明者らは、先にCaNの酵素活性 抑制することなくNFAT核移行を特異的に阻害 るペプチド性薬剤を開発し、免疫抑制効果 らびに心肥大抑制効果について立証した(特 開2003-252898号公報参照)。

 本発明の目的は、外用塗布により効率の い発毛を誘導でき、かつ副作用の少ない発 剤を提供することにある。

 本発明者らが先に開示した細胞膜透過性 CaN/NFAT経路特異的阻害ペプチドである、11R-V IVIT(連続したアルギニン11残基およびグリシ 3残基を付加したVIVIT(配列番号1)からなるペ チド:配列番号2)が、発毛促進において優れ 効果を示すことを見出し、本発明を完成し 。

 すなわち、本発明は、アルギニン9残基~13 残基および配列番号1のアミノ酸配列を含有 るペプチド化合物を有効成分として含有す 発毛促進剤に関する。

 前記発毛促進剤において、ペプチド化合 中の連続したアルギニンが11残基であるこ が好ましい。

 前記発毛促進剤において、剤形が軟膏の 合、ペプチド化合物の濃度は5~20mg/gである とが好ましい。

本発明の発毛促進剤、11R-VIVITを塗布し 7日後のヌードマウスの耳間の頭頂部の写真 である(b)。(a)はコントロール群のヌードマウ スの同部位の写真である。(a)と比較して、(b) では耳間の頭頂部に明らかな発毛が観察され た。 本発明の発毛促進剤、11R-VIVIT投与群((c) および(d))ならびにコントロール群((a)および( b))のH.-E.染色した組織片の顕微鏡写真((a)およ び(c))および複屈折顕微鏡写真((b)および(d))を 示す。11R-VIVIT投与群では、機能分化した毛髪 1が白く光って観察された。 皮膚切片20mm 2 当たりの複屈折を示す毛髪を有する毛包の数 を示す(11R-VIVIT投与群:n=6、コントロール群:n=8 、*:p<0.0005)。 WST-1アッセイにおけるケラチノサイト 吸光度を示す(各群:n=7、*:p<0.01、†:p<0.05 )。コントロール群と比較して、11R-VIVIT含有 地で培養したケラチノサイトが有意に増殖 た。 11R-VIVITによるNFATの核外移行を示す、共 焦点レーザー顕微鏡の写真を示す。(a)は11R-VI VIT投与前のケラチノサイトの写真であり、(b) は(a)と同一細胞の11R-VIVIT投与6時間後の写真 ある。コントラスト強調のため、GFPの蛍光 白黒で表した。コントロールのケラチノサ ト(a)では内ではNFATが幾分核2内に存在するの に対して、11R-VIVIT含有培地下で培養したケラ チノサイト(b)内では、NFATは完全に核2外に移 されたことが観察された。 11R-VIVITおよびCsA投与により転写が2倍以 上低下した遺伝子を示す図である。11R-VIVITに より転写が2倍以上低下した遺伝子群は74個あ り、CsAにより転写が2倍以上低下した遺伝子 は173個であった。双方に共通して転写が2倍 上低下した遺伝子は24個あった。 ウエスタンブロッティング法によるサ クリンG2の経時変化を示すグラフである。 間ごとにサイクリンG2の発現量をアクチンの 量で補正した相対量を示す(4回計測)。 ウエスタンブロッティング法によるp21 現量の経時変化を示すグラフである。時間 とにp21の発現量をアクチンの量で補正した 対量を示す(3回計測)。

符号の説明

 1 機能分化した毛髪
 2 核

 以下、本発明の発毛促進剤について詳細 説明する。

 本発明の発毛促進剤は、9~13個のアルギニ ンが連続するアミノ酸配列および配列番号1 アミノ酸配列を含有するペプチド化合物を 効成分とする。

 連続するアルギニンの残基数としては、1 1残基が最も好ましい。連続したアルギニン 8残基以下または14残基以上であると、本発 の発毛促進剤の皮膚からの導入効率が悪く る傾向がある。

 配列番号1のアミノ酸配列は、MAGPHPVIVITGPHE Eであり、NFATの活性阻害ペプチド(VIVITと略称 る)である。VIVITはカルシニューリンのホス ァターゼ活性に影響することなく、NFATファ ミリーに属するタンパク質(NFAT1、NFAT2、NFAT3 よびNFAT4など)とカルシニューリンとの相互 用を選択的に阻害する。配列番号1に示すア ノ酸配列において、各アミノ酸残基は、NFAT を阻害するものであれば生物学的に同等のア ミノ酸配列に置換してもよく、VIVITと同等の 物学的活性を有するものであれば、数個、 とえば1~3個のアミノ酸残基が付加、欠失さ ていてもよい。

 また、本発明において、有効成分である プチド化合物は、同等の生物学的活性を有 る限り、前記の9~13個のアルギニンが連続す るアミノ酸配列および配列番号1のアミノ酸 列に加え、数個、たとえば1~3個のアミノ酸 基が付加、欠失または置換されていてもよ 。たとえば、連続するアルギニン残基と配 番号1のアミノ酸配列との間にリンカーとし グリシンを数残基、たとえば1~3残基挿入し ものが好ましい。

 さらに、本発明において、有効成分であ ペプチド化合物は、発毛研究のモデルに使 する場合など、細胞内に導入されたことを 認するためのマーカーを含有してもよい。 ーカーはとくに限定されるものではなく、 とえばフルオレセインイソチオシアネート( 以下、FITCと略称する)、ローダミンなどの蛍 色素、およびGFPなどの蛍光タンパク質を使 することができる。

 本発明において、有効成分であるペプチ 化合物は、通常の人工合成法によって、ま は一般に市販されている人工合成機によっ 製造することができる。あるいは、このペ チド化合物は、遺伝子工学的手法を用いて 造することができる。たとえば、数個のア ギニンが連続する配列およびVIVITからなる 列を含むペプチド配列をコードするDNAを挿 した組換えベクターを作製し、適当な宿主 胞に組換えベクターを導入後、その宿主細 を培養する。ついで、培養物を回収するこ により、ペプチド化合物を得ることができ 。製造後、得られたペプチド化合物は公知 方法で精製することもできる。これらのペ チド化合物の製造法および精製法は、本分 において一般的な手法であり、当業者によ 容易に実施されるものである。

 本発明の発毛促進剤は、全身性の副作用 回避するという点などから外用塗布により 与することが最も好ましい。

 本発明の発毛促進剤の剤形は投与方法に って適宜設定することができる。具体的に 、水溶液および乳液などの液剤および軟膏 例示することができる。

 本発明の発毛促進剤において、有効成分 あるペプチド化合物の濃度は、剤形、使用 る基材などにあわせて適宜設定することが きる。たとえば、親水性軟膏の場合、ペプ ド化合物の濃度は、5~20mg/gが好ましく、約10 mg/gがより好ましい。有効成分であるペプチ 化合物の濃度が5mg/gより低いと有意な発毛が 見られにくく、20mg/gより高いと発毛誘導され た毛髪が早期に脱毛する傾向がある。同様に 、水溶液とする場合、ペプチド化合物の濃度 は、5~20mg/mlが好ましく、約10mg/mlが好ましい さらに、乳液とする場合には、ペプチド化 物の濃度は、5~20mg/mlが好ましく、約10mg/mlが ましい。なお、本発明の発毛促進剤は、親 性軟膏1gに対して11R-VIVITを10mg含むものが最 好ましい。

  本発明の発毛促進剤の有効成分であるペ チド化合物は、塗布面積当たり、一回塗布 として1.25~5.00μg/mm 2 が好ましく、約2.5μg/mm 2 がより好ましい。たとえば、塗布面積100mm 2 当たり11R-VIVIT量として250μgが最も好ましい。

 本発明の発毛促進剤は、有効成分である 記ペプチド化合物の他に、適当な薬学的賦 剤、適当な担体、溶媒、ゲル形成剤、酸化 止剤、希釈剤、等張化剤、担体、pH安定剤 ど本技術分野で通常用いられるほかの成分 添加してもよい。これらの添加剤は、通常 業者により適宜選択され得る。

 以下、実施例によって、本発明の発毛促 剤をさらに詳細に説明するが、本発明はそ 趣旨と適用範囲に逸脱しない限りこれらに 定されるものではない。

実施例1:ヌードマウスにおいて11R-VIVIT塗布が たらす発毛誘導
 まず、11R-VIVITが発毛を誘導できるかを調べ 。11R-VIVIT(シグマ ジェノシス ジャパン社(S igma Genosis Japan,Inc.)に製造依頼)を含有する親 水性軟膏を表1に示す組成で調製した。

 1回につき11R-VIVIT量として250μgの親水性軟膏 を全身体毛の欠失したヌードマウス(n=10、BALB /c Slc-nu、雄、5週齢、平均体重30g、清水実験 料株式会社より購入)のうち特に毛のない箇 所である耳間の頭頂部(約100mm 2 )に塗布した。これを1日1回、7日間連続塗布 た。コントロールとして、親水性軟膏のみ 同量塗布した。塗布後7日目に11R-VIVIT塗布群 おいて、明らかな発毛効果が認められた(図 1)。さらに発毛効果を顕微鏡下で詳細に検討 るために光学顕微鏡と複屈折顕微鏡による 毛評価を行った(図2)。11R-VIVIT塗布により発 の誘導された皮膚切片を複屈折顕微鏡で観 すると、機能的に分化した(つまり完全に成 長した)毛髪1が白く光って見える(図2(d))。こ 評価方法はすでに確立された手法である(Ame rican Journal of Physiology、2003年、第284巻、p.159 3-1603参照)。11R-VIVIT投与群ならびにコントロ ル群各10匹ずつの組織切片を作製し、各切片 中の複屈折を示す毛髪を有する毛包の数を測 定した。

 結果を図3に示す。複屈折顕微鏡にて観察 すると、11R-VIVIT投与群においてコントロール 群と比較して有意な発毛効果が認められた。 (図2および3)。

実施例2:11R-VIVITが発毛を誘導するメカニズム
 ケラチノサイトの基本培地としては、EpiLife (登録商標)(M-EPI-500-CA;カスケードバイオロジ ス(Cascade Biologics)社製)500mlに、正常ヒト表皮 角化細胞用添加剤(カスケードバイオロジク 社製、EDGS(S-012-5))5mlおよび、ゲンタマイシン およびアンフォテリシンBを含む混合抗菌剤 ある抗菌剤GA溶液(カスケードバイオロジク 社製、R-015-10)1mlを添加した培地を使用した

(1)毛包内ケラチノサイトの増殖
 毛髪の成長には、毛包内ケラチノサイト(角 化細胞)の増殖が重要であることは、前述のGa fter-Gviliらの論文で指摘されている。そこで 発明者らは、11R-VIVIT投与によってケラチノ イトの増殖が誘導されるかどうかを、WST-1ア ッセイにより評価した。培養には株化ケラチ ノサイトのPHK細胞(細胞バンク、Health Science  Research Resources Bank:HSRRBより入手、資源名:PHK1 6-0b、資源番号:JCRB0141)を用いた。96ウェルプ ートで60%コンフルエントにまでPHK細胞を基 培地中で培養し、その後、11R-VIVIT(3μM)、CsA(1 μM)またはネガティブコントロールとしてカ シウム(1mM)を添加した基本培地中で24時間培 した。コントロールは基本培地のみで同様 24時間培養した。各薬剤の添加前(0時間)お び添加後24時間の細胞の生存率を測定した。

 その結果を図4に示す。コントロールに比 べて11R-VIVIT含有培地で培養したケラチノサイ トが有意に増殖した。

(2)ケラチノサイト内のNFATの局在
 さらにCaN/NFAT経路阻害剤である11R-VIVITの投 に応答してケラチノサイト内のNFATの局在が のように変化しているのかを見るために、 光タンパク質GFPをN末端につけたNFATをリポ ェクタミン法でケラチノサイト内に導入し 24時間培養し、共焦点レーザー顕微鏡で観察 した(図5(a))。その後、同一細胞を11R-VIVITを3μ Mの濃度で含む基本培地にて6時間培養した。1 1R-VIVIT投与前のコントロールのケラチノサイ 内ではNFATが幾分核内に存在していた(図5(a)) のに対して、11R-VIVIT含有培地下で培養した後 のケラチノサイト内ではNFATは完全に核外に 在していた(図5(b))。

 11R-VIVITによりNFATの核内移行が阻害された ことから、ケラチノサイト内でNFATによって 写調節を受ける何らかの遺伝子の存在を予 した上で、全遺伝子発現の増減を数値化し 示すマイクロアレイ法を行った。11R-VIVIT(3μM )またはCsA(1μM)を含む基本培地で12時間培養し 、その後PHK細胞の全mRNAを抽出し、マイクロ レイ法にて解析した。CaN/NFAT経路とPHK細胞増 殖の関係を評価するため、両薬剤で変動した 細胞周期に関する遺伝子を表2に示す。

 また、図6に示すように、11R-VIVITにより転 写が2倍以上低下した遺伝子群は74個あり、CsA により転写が2倍以上低下した遺伝子群は173 あった。双方に共通して転写が2倍以上低下 た遺伝子は24個あり、そのうち細胞周期に するものは、サイクリンG2のみで、11R-VIVITで は3.30倍、CsAでは2.79倍転写量が低下した。

 PHK細胞内での新しいNFATの標的として同定 したサイクリンG2は、Horne MCらがJournal of Bio logical Chemistry(272巻、12650~12661頁、1997年)で報 したとおり、一般的に細胞周期の停止に関 していると考えられており、11R-VIVITの投与 よってサイクリンG2の発現が低下すること 、細胞周期の停止が抑制され、ケラチノサ トの増殖につながったものと考えられる。11 R-VIVIT投与後のサイクリンG2の発現量低下は細 胞周期のマーカーであるp21とともにウェスタ ンブロッティング法により確かめられた(図7) 。

 本発明の発毛促進剤は、既存の免疫抑制 と異なり、CaNの酵素活性そのものを抑制す ことなくCaN/NFAT経路を特異的に阻害するた 、副作用が少ない。また、細胞膜透過性を するペプチドであるため皮膚から直接作用 せることができ、薬剤を塗布した部位のみ 局所的に強力な発毛を誘導することができ 。

 本発明の発毛促進剤は、発毛サイクルの カニズムそのものに基づく発毛作用が確認 れたため、従来の他剤にはない、根拠に基 いた医療(EBM)に即した発毛剤として応用す ことが可能である。

 また、本発明の発毛促進剤による局所的 毛誘導は、その基礎研究的興味のみならず 広く発毛研究のモデルとして臨床的にある は一般治療薬として使用することができる

 さらに、本発明の発毛促進剤は、毛包内 ラチノサイトに対して直接増殖させる作用 有するため、毛周期を成長期に移行させる けでなく、細く弱った毛髪も強い毛髪へと 化させることができる。