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Patent Searching and Data


Title:
HIGHLY SATURATED COPOLYMER RUBBER HAVING NITRILE GROUP
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/082004
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a highly saturated copolymer rubber having a nitrile group, which has an iodine value of 80 or less and contains a capric acid salt in an amount of 0.01 to 0.4 wt%. Preferably, the capric acid salt is an alkali earth metal salt of capric acid or a Group-13 metal salt of capric acid. It becomes possible to provide highly saturated copolymer rubber having a nitrile group which has improved mold contamination properties while keeping its physical properties under ordinary conditions and heat resistance when the rubber is crosslinked.

Inventors:
HOSOTANI DAIZO (JP)
NAGAMORI HIROYASU (JP)
IKEDA SHINYA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/073762
Publication Date:
July 02, 2009
Filing Date:
December 26, 2008
Export Citation:
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Assignee:
ZEON CORP (JP)
HOSOTANI DAIZO (JP)
NAGAMORI HIROYASU (JP)
IKEDA SHINYA (JP)
International Classes:
C08F220/42; C08K5/098; C08L9/02; C08L15/00; C08F2/26
Foreign References:
JP2002179873A2002-06-26
JPH07316211A1995-12-05
JPS61207409A1986-09-13
JPH0797507A1995-04-11
JP2007161792A2007-06-28
JP2003226780A2003-08-12
Other References:
See also references of EP 2226340A4
Attorney, Agent or Firm:
TOKOSHIE PATENT FIRM (8-3 Nishishinjuku 8-chome, Shinjuku-k, Tokyo 23, JP)
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Claims:
 ヨウ素価が80以下であり、カプリン酸塩を0.01~0.4重量%含有するニトリル基含有高飽和共重合体ゴム。
 前記カプリン酸塩が、カプリン酸アルカリ土類金属塩またはカプリン酸第13族金属塩である請求項1に記載のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム。
 前記カプリン酸塩が、カプリン酸マグネシウムまたはカプリン酸アルミニウムである請求項2に記載のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム。
 前記ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムは、カプリン酸塩を用いた乳化重合により得られたニトリル基含有共重合体ゴムのラテックスを凝固させた後に、水素添加反応を行うことによって製造したものである請求項1~3のいずれかに記載のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム。
 前記ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムは、カプリン酸塩を用いた乳化重合により得られたニトリル基含有共重合体ゴムのラテックスを、アルカリ土類金属塩または第13族金属塩を用いて凝固させた後に、水素添加反応を行うことによって製造したものである請求項4に記載のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム。
 請求項1~5のいずれかに記載のニトリル基含有高飽和共重合体ゴムと、架橋剤と、を含有してなる架橋性ゴム組成物。
 請求項6に記載の架橋性ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
 シール材である請求項7に記載のゴム架橋物。
 カプリン酸塩を用いた乳化重合によりニトリル基含有共重合体ゴムのラテックスを得る工程と、
 アルカリ土類金属塩または第13族金属塩を用いて、前記ニトリル基含有共重合体ゴムのラテックスを凝固させて、ニトリル基含有共重合体ゴムを得る工程と、
 前記ニトリル基含有共重合体ゴムの水素添加反応を行う工程と、
 を有するニトリル基含有高飽和共重合体ゴムの製造方法。
Description:
ニトリル基含有高飽和共重合体 ム

 本発明は、ニトリル基含有高飽和共重合 ゴムに係り、さらに詳しくは、架橋物とし 場合における常態物性や耐熱性を良好に保 ながら、金型汚染性に優れたニトリル基含 高飽和共重合体ゴムに関する。

 水素化アクリロニトリル-ブタジエン共重 合体ゴムによって代表されるニトリル基含有 高飽和共重合体ゴムは、耐熱性、耐圧縮永久 ひずみ性、耐燃料油性に優れるため、Oリン 、ガスケット、パッキンなどのシール材と て、エンジン周りに多く使用されている。

 一方で、このようなニトリル基含有高飽 共重合体ゴムは、成形工程において金型を いて架橋する際に、いわゆる金型汚染が発 してしまうという問題がある。すなわち、 出成形などの成形工程において金型を用い 架橋する際に、繰り返して使用する金型に 第に汚染物質が付着堆積し、その結果、得 れる成形品自体まで汚染され、表面状態の れた成形品が得られなくなるという問題が る。そのため、一定の周期で金型の清掃を なわなければならず、この清掃には多大な 間と経費がかかり、生産性を低下させる大 な原因となっている。また、その対策とし 、離型剤を使用すると、離型剤の使用量の 御が難しいことに加え、ウェルドなどの不 の原因となってしまう。

 これに対して、たとえば、特許文献1では、 金型離型性および金型汚染性を改善するため に、ムーニー粘度(ML 1+4 ,100℃)が57.5~150である水素化ニトリルブタジ ンゴムに対して、脂肪酸金属塩としてのス アリン酸亜鉛やラウリン酸亜鉛、および架 剤としての有機過酸化物を添加してなる水 化ニトリルブタジエンゴム組成物が提案さ ている。しかしながら、この文献の方法で 、新たにステアリン酸亜鉛やラウリン酸亜 を後添加する必要があるとともに、金型汚 性の改善効果が十分ではないという不具合 あった。

特開2003-226780号公報

 本発明は、架橋物とした場合における常 物性や耐熱性を良好に保ちながら、金型汚 性が改善されたニトリル基含有高飽和共重 体ゴムを提供することを目的とする。また 本発明は、このようなニトリル基含有高飽 共重合体ゴムに架橋剤を添加してなる架橋 ゴム組成物、およびこの架橋性ゴム組成物 架橋してなるゴム架橋物を提供することも 的とする。

 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意 究した結果、所定量のカプリン酸塩が含有 れてなるニトリル基含有高飽和共重合体ゴ により、上記目的を達成できることを見出 、本発明を完成させるに至った。

 すなわち、本発明によれば、ヨウ素価が80 下であり、カプリン酸塩を0.01~0.4重量%含有 るニトリル基含有高飽和共重合体ゴムが提 される。
 好ましくは、前記カプリン酸塩が、カプリ 酸アルカリ土類金属塩またはカプリン酸第1 3族金属塩であり、より好ましくは、カプリ 酸マグネシウムまたはカプリン酸アルミニ ムである。
 好ましくは、前記ニトリル基含有高飽和共 合体ゴムは、カプリン酸塩を用いた乳化重 により得られたニトリル基含有共重合体ゴ のラテックスを凝固させた後に、水素添加 応を行うことによって製造したものである また、前記ニトリル基含有共重合体ゴムの テックスの凝固は、アルカリ土類金属塩ま は第13族金属塩を用いて行われたものであ ことが、より好ましい。

 また、本発明によれば、上記いずれかのニ リル基含有高飽和共重合体ゴムと、架橋剤 、を含有してなる架橋性ゴム組成物が提供 れる。
 本発明によれば、上記架橋性ゴム組成物を 橋してなるゴム架橋物が提供される。なお 上記ゴム架橋物は、シール材として好適に いられる。
 さらに、本発明によれば、カプリン酸塩を いた乳化重合によりニトリル基含有共重合 ゴムのラテックスを得る工程と、アルカリ 類金属塩または第13族金属塩を用いて、前 ニトリル基含有共重合体ゴムのラテックス 凝固させて、ニトリル基含有共重合体ゴム 得る工程と、前記ニトリル基含有共重合体 ムの水素添加反応を行う工程と、を有する トリル基含有高飽和共重合体ゴムの製造方 が提供される。

 本発明によれば、架橋物とした場合にお る常態物性や耐熱性を良好に保ちながら、 型汚染性が改善されたニトリル基含有高飽 共重合体ゴムを提供することができる。

  ニトリル基含有高飽和共重合体ゴ ム
 本発明のニトリル基含有高飽和共重合体ゴ は、ヨウ素価が80以下であり、カプリン酸 を0.01~0.4重量%の範囲で含有するものである

 本発明のニトリル基含有高飽和共重合体 ム(以下、「高飽和ニトリルゴム(A)」と記す ことがある。)は、特定のニトリル基含有共 合体ゴム(以下、「ニトリルゴム(a)」と記す とがある。)に水素添加(「水素化」とも言 。)反応を行い、炭素-炭素不飽和結合部を水 素化することにより形成されたゴムに、上記 所定量のカプリン酸塩を添加されて形成され る。なお、カプリン酸塩は、乳化剤としても 作用するため、ニトリルゴム(a)を乳化重合に て製造する場合には、乳化剤としてカプリン 酸塩を含有させることで、ゴム中に添加する ことができ、カプリン酸塩の後添加工程を省 略できるため好ましい。

 ニトリルゴム(a)および高飽和ニトリルゴ (A)におけるα,β-エチレン性不飽和ニトリル 量体単位の含有量は、全単量体単位中に、 ましくは10~60重量%、より好ましくは15~55重 %、特に好ましくは20~50重量%の量である。α, -エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含 量が少なすぎると得られるゴム架橋物の耐 性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎ と耐寒性が低下する可能性がある。

 α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単 を形成する単量体としては、ニトリル基を するα,β-エチレン性不飽和化合物であれば 定されず、アクリロニトリル;α-クロロアク リロニトリル、α-ブロモアクリロニトリルな どのα-ハロゲノアクリロニトリル;メタクリ ニトリルなどのα-アルキルアクリロニトリ ;などが挙げられ、アクリロニトリルおよび タクリロニトリルが好ましい。α,β-エチレ 性不飽和ニトリル単量体として、これらの 数種を併用してもよい。

 ニトリルゴム(a)には、上記のα,β-エチレ 性不飽和ニトリル単量体単位の他に、得ら るゴム架橋物がゴム弾性を保有するために 通常、ジエン単量体単位および/またはα-オ レフィン単量体単位をも有する。

 ジエン単量体単位を形成するジエン単量 としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3 -ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン どの炭素数が4以上の共役ジエン;1,4-ペンタ エン、1,4-ヘキサジエンなどの好ましくは炭 数が5~12の非共役ジエンが挙げられる。これ らの中では共役ジエンが好ましく、1,3-ブタ エンがより好ましい。

 α-オレフィン単量体単位を形成するα-オ フィン単量体としては、好ましくは炭素数 2~12のものであり、エチレン、プロピレン、 1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、 1-オクテンなどが例示される。

 ニトリルゴム(a)におけるジエン単量体単 および/またはα-オレフィン単量体単位の含 有量は、全単量体単位中に、好ましくは20~90 量%、より好ましくは30~85重量%、特に好まし くは40~80重量%の量である。ニトリルゴム(a)中 におけるこれらの単量体単位の含有量が少な すぎると得られるゴム架橋物の弾性が低下す るおそれがあり、多すぎるとゴム架橋物の耐 油性、耐熱老化性、耐化学的安定性などが損 なわれる可能性がある。

 ニトリルゴム(a)は、また、α,β-エチレン 不飽和ニトリル単量体、並びに、ジエン単 体および/またはα-オレフィン単量体、と共 重合可能なその他の単量体の単位を含有する ことができる。その他の単量体単位を形成す る単量体としては、α,β-エチレン性不飽和カ ルボン酸エステル単量体、α,β-エチレン性不 飽和カルボン酸単量体、α,β-エチレン性不飽 和多価カルボン酸無水物単量体、芳香族ビニ ル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合 性老化防止剤などが例示される。

 α,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステ 単量体としては、例えば、アクリル酸メチ 、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル アクリル酸ブチル、アクリル酸n-ドデシル メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル どの、アクリル酸アルキルエステルおよび タクリル酸アルキルエステルであって、ア キル基の炭素数が1~18のもの;アクリル酸メト キシメチル、メタクリル酸メトキシエチルな どのアクリル酸アルコキシアルキルエステル およびメタクリル酸アルコキシアルキルエス テルであって、アルコキシアルキル基の炭素 数が2~12のもの;アクリル酸α-シアノエチル、 クリル酸β-シアノエチル、メタクリル酸シ ノブチルなどのアクリル酸シアノアルキル ステルおよびメタクリル酸シアノアルキル ステルであって、シアノアルキル基の炭素 が2~12のもの;アクリル酸2-ヒドロキシエチル 、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリ 酸3-ヒドロキシプロピルなどのアクリル酸 ドロキシアルキルエステルおよびメタクリ 酸ヒドロキシアルキルエステルであって、 ドロキシアルキル基の炭素数が1~12のもの;ア クリル酸フルオロベンジル、メタクリル酸フ ルオロベンジルなどのフッ素置換ベンジル基 含有アクリル酸エステルおよびフッ素置換ベ ンジル基含有メタクリル酸エステル;アクリ 酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テト フルオロプロピルなどのフルオロアルキル 含有アクリル酸エステルおよびフルオロア キル基含有メタクリル酸エステル;マレイン ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸 メチル、イタコン酸ジエチルなどの不飽和 価カルボン酸ポリアルキルエステル;アクリ ル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジエ チルアミノエチルなどのアミノ基含有α,β-エ チレン性不飽和カルボン酸エステル;などが げられる。

 α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体 しては、例えば、アクリル酸、メタクリル などのα,β-エチレン性不飽和モノカルボン ;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸;マレ ン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、 レイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn-ブ チルなどのマレイン酸モノアルキルエステル 、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン 酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシク ロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアル キルエステル、マレイン酸モノメチルシクロ ペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキ シルなどのマレイン酸モノアルキルシクロア ルキルエステル、フマル酸モノメチル、フマ ル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フ マル酸モノn-ブチルなどのフマル酸モノアル ルエステル、フマル酸モノシクロペンチル フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モ シクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロ ルキルエステル、フマル酸モノメチルシク ペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキ ルなどのフマル酸モノアルキルシクロアル ルエステル、シトラコン酸モノメチル、シ ラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプ ピル、シトラコン酸モノn-ブチルなどのシ ラコン酸モノアルキルエステル、シトラコ 酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノ クロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘ チルなどのシトラコン酸モノシクロアルキ エステル、シトラコン酸モノメチルシクロ ンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘ シルなどのシトラコン酸モノアルキルシク アルキルエステル、イタコン酸モノメチル イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプ ピル、イタコン酸モノn-ブチルなどのイタコ ン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノ シクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキ シル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどの イタコン酸モノシクロアルキルエステル、イ タコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコ ン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコ ン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、 などのα,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸 の部分エステル;などが挙げられる。

 α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸無 物単量体としては、例えば、無水マレイン などが挙げられる。

 芳香族ビニル単量体としては、スチレン α-メチルスチレン、ビニルピリジンなどが げられる。

 フッ素含有ビニル単量体としては、フル ロエチルビニルエーテル、フルオロプロピ ビニルエーテル、o-トリフルオロメチルス レン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジ ルオロエチレン、テトラフルオロエチレン どが挙げられる。

 共重合性老化防止剤としては、N-(4-アニ ノフェニル)アクリルアミド、N-(4-アニリノ ェニル)メタクリルアミド、N-(4-アニリノフ ニル)シンナムアミド、N-(4-アニリノフェニ )クロトンアミド、N-フェニル-4-(3-ビニルベ ジルオキシ)アニリン、N-フェニル-4-(4-ビニ ベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる

 これらの共重合可能なその他の単量体と て、複数種類を併用してもよい。ニトリル ム(a)に含有される、これらの他の単量体単 の含有量は、全単量体単位100重量%中に、好 ましくは70重量%以下、より好ましくは55重量% 以下、さらに好ましくは40重量%以下、特に好 ましくは10重量%以下の量である。

 本発明の高飽和ニトリルゴム(A)のヨウ素 は80以下であり、好ましくは60以下、より好 ましくは40以下、特に好ましくは30以下であ 。高飽和ニトリルゴム(A)のヨウ素価が高す ると、得られるゴム架橋物の耐熱老化性や オゾン性が低下するおそれがある。

 高飽和ニトリルゴム(A)中における、カプ ン酸塩の含有量は、高飽和ニトリルゴム(A) 体の重量に対して、0.01~0.4重量%であり、好 しくは0.03~0.3重量%、より好ましくは0.05~0.2 量%である。カプリン酸塩の含有量が上記範 より少ないと金型汚染性が悪化する。また カプリン酸塩の含有量が多過ぎると、金型 染性が悪化したり、ブリードが発生したり アルコール含有溶液のシール材として用い 場合にカプリン酸塩由来の析出物が発生し まりの原因となったりする。カプリン酸塩 しては、カプリン酸(「デカン酸」ともいう )ナトリウム、カプリン酸カリウムなどのカ リン酸アルカリ金属塩;カプリン酸マグネシ ム、カプリン酸カルシウムなどのカプリン アルカリ土類金属塩;カプリン酸アルミニウ ムなどのカプリン酸第13族金属塩(カプリン酸 と、長周期型周期律表の第13族に属する金属 の塩);およびカプリン酸アンモニウムなど 挙げられる。これらのなかでも本発明の効 がより一層顕著になることから、カプリン アルカリ金属塩、カプリン酸アルカリ土類 属塩およびカプリン酸第13族金属塩が好まし く、カプリン酸アルカリ土類金属塩およびカ プリン酸第13族金属塩がより好ましく、カプ ン酸アルカリ土類金属塩が特に好ましい。 お、カプリン酸アルカリ金属塩としてはカ リン酸カリウムが好ましく、カプリン酸ア カリ土類金属塩としてはカプリン酸マグネ ウムが好ましく、カプリン酸第13族金属塩 してはカプリン酸アルミニウムが好ましい

 ニトリルゴム(a)のムーニー粘度〔ML 1+4 (100℃)〕は、好ましくは10~100、より好ましく 15~80、特に好ましくは20~75である。この範囲 を外れると、水素添加により得られる高飽和 ニトリゴム(A)のムーニー粘度が不適切になる おそれがある。ニトリルゴム(a)のムーニー粘 度は、分子量調整剤の量、重合反応温度、重 合開始剤濃度などの条件を適宜選定すること により調整することができる。

 また、高飽和ニトリルゴム(A)のムーニー粘 〔ML 1+4 (100℃)〕は、好ましくは15~200、より好ましく 30~150、特に好ましくは45~120である。高飽和 トリルゴム(A)のムーニー粘度が低すぎると 得られる架橋物の機械的特性が低下するお れがあり、逆に、高すぎると、架橋剤を添 し、架橋性ゴム組成物とした場合における 工性が低下する可能性がある。

 高飽和ニトリルゴム(A)は、乳化剤を用い 乳化重合により上述の単量体を共重合して トリルゴム(a)のラテックスを調製し、これ 水素化することにより製造することが好ま い。

 本発明においては、乳化剤として、カプ ン酸アルカリ金属塩を用いることが好まし 。特に、高飽和ニトリルゴム(A)中にカプリ 酸塩を含有させる際に、カプリン酸アルカ 金属塩を乳化剤として含有させ、カプリン アルカリ金属塩を乳化剤として用いた乳化 合を行って、ニトリルゴム(a)のラテックス 調製することにより、本発明の作用効果を り高めることができる。すなわち、得られ 高飽和ニトリルゴム(A)を、金型汚染性によ 優れたものとすることができる。

  乳化剤の使用量は、全単量体100重量部 対して、好ましくは1~10重量部、より好まし は1~5重量部、特に好ましくは1.5~3重量部で る。乳化剤の使用量が少なすぎるとラテッ スの安定性が低下して乳化重合反応を行う とができなくなる場合がある。一方、乳化 の使用量が多すぎると、水素添加後の高飽 ニトリルゴム(A)中における乳化剤の含有量 多くなり、乳化剤除去のための新たな工程 追加しなければなるなくなる場合がある。 た、乳化剤として、カプリン酸アルカリ金 塩を用いる場合には、後述する乳化重合の の工程において、最終的に得られる飽和ニ リルゴム(A)中におけるカプリン酸塩の量が 記範囲となるように調製すればよい。なお 例えばカプリン酸アルカリ金属塩(乳化剤)と してカプリン酸カリウムを用いた場合であっ ても、凝固に用いる硫酸マグネシウム等の凝 固剤由来の金属とアルカリ金属としてのカリ ウムとが置き換わり、飽和ニトリルゴム(A)中 におけるカプリン酸アルカリ金属塩は、必ず しもカプリン酸カリウムなどのカプリン酸ア ルカリ金属塩の形態で存在しているわけでは ない。たとえば、凝固剤として、硫酸マグネ シウムを用いた場合には、通常、カプリン酸 アルカリ金属塩の形態ではなく、カプリン酸 アルカリ土類金属塩としてのカプリン酸マグ ネシウムの形態で存在することとなる。

 乳化重合においては、乳化剤以外の重合 始剤、分子量調整剤等の従来公知の重合副 材を使用することができる。これら重合副 材の添加方法は特に限定されず、重合初期 一括添加する方法、分割して添加する方法 連続して添加する方法などいずれの方法で 採用することができる。

 重合開始剤としては、ラジカル開始剤であ ば特に限定されないが、過硫酸カリウム、 硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過 ン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化 ;t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロ ーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオ サイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチ ルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキ サイド、イソブチリルパーオキサイド、オク タノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパー オキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパ ーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチ ート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロ ニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニト ル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリ 、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物 を挙げることができる。これらの重合開始 は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて 使用することができる。重合開始剤としては 、無機または有機の過酸化物が好ましい。
 重合開始剤として過酸化物を用いる場合に 、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の還 剤と組み合わせて、レドックス系重合開始 として使用することもできる。
 重合開始剤の使用量は、全単量体100重量部 対して、好ましくは0.01~2重量部、より好ま くは0.05~1.5重量部である。

 分子量調整剤としては、特に限定されない 、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメル カプタン、オクチルメルカプタン等のメルカ プタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化 チレン等のハロゲン化炭化水素;α-メチルス レンダイマー;テトラエチルチウラムダイサ ルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイ サルファイド、ジイソプロピルキサントゲン ダイサルファイド等の含硫黄化合物等が挙げ られる。これらは単独で、または2種類以上 組み合わせて使用することができる。なか も、メルカプタン類が好ましく、t-ドデシル メルカプタンがより好ましい。
 分子量調整剤の使用量は、全単量体100重量 に対して、好ましくは0.1~0.8重量部、より好 ましくは0.2~0.7重量部の範囲である。

 乳化重合の媒体は、通常、水が使用され 。水の量は、全単量体100重量部に対して、 ましくは80~500重量部、より好ましくは100~300 重量部である。

  乳化重合に際しては、さらに、必要に じてキレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素 剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いるこ とができる。これらを用いる場合においては 、その種類、使用量とも特に限定されない。

  本発明の高飽和ニトリルゴム(A)は、上記 化重合により得られたニトリルゴム(a)に水 添加反応を行うことによって製造される。 の水素添加反応に際し、ニトリル基まで水 化すると得られるゴム架橋物の耐油性が低 してしまうので、炭素-炭素不飽和結合のみ 選択的に水素化する必要がある。
 このような選択的水素化としては公知の方 によればよく、油層水素化法、水層水素化 のいずれも可能であるが、高飽和ニトリル ム(A)中における乳化剤の含有量を低くでき ことから、油層水素化法が好ましい。

 高飽和ニトリルゴム(A)の製造を油層水素化 で行う場合には、次の方法により行うこと 好ましい。
 すなわち、まず、乳化重合により調製した トリルゴム(a)のラテックスを塩析により凝 させ、濾別および乾燥を経て、有機溶媒に 解する。次いで、有機溶媒に溶解させたニ リルゴム(a)について水素添加反応(油層水素 化法)を行い、水素化物とし、得られた水素 物溶液を凝固、濾別および乾燥を行うこと より高飽和ニトリルゴム(A)を得る。

 なお、乳化剤として、カプリン酸アルカ 金属塩を用いる場合には、ニトリルゴム(a) ラテックスの塩析による凝固、濾別および 燥の各工程において、最終的に得られる飽 ニトリルゴム(A)中におけるカプリン酸塩の が上記範囲となるように調製することが好 しい。たとえば、ラテックスの塩析による 固において、硫酸マグネシウム、塩化ナト ウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウム ど公知の凝固剤を使用することができるが 好適には、硫酸マグネシウム、塩化マグネ ウム、硝酸マグネシウムなどのアルカリ土 金属塩;または、硫酸アルミニウムなどの第 13族金属塩;を用いることにより、ニトリルゴ ム(a)中に含有されるカプリン酸塩の量を低減 させることができる。そのため、凝固剤とし て、アルカリ土類金属塩または第13族金属塩 用いることが好ましく、アルカリ土類金属 を用いることがより好ましく、その使用量 凝固温度を制御することにより、最終的に られる飽和ニトリルゴム(A)中におけるカプ ン酸塩の量を上記範囲とすることができる 凝固剤の使用量は、水素化するニトリルゴ (a)の量を100重量部とした場合に、好ましく 1~100重量部、より好ましくは5~50重量部、特 好ましくは10~50重量部である。凝固温度は10 ~80℃が好ましい。

 油層水素化法の溶媒としては、ニトリル ム(a)を溶解する液状有機化合物であれば特 限定されないが、ベンゼン、トルエン、キ レン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラ ドロフラン、メチルエチルケトン、酢酸エ ル、シクロヘキサノンおよびアセトンなど 好ましく使用される。

 油層水素化法の触媒としては、公知の選 的水素化触媒であれば限定なく使用でき、 ラジウム系触媒およびロジウム系触媒が好 しく、パラジウム系触媒(酢酸パラジウム、 塩化パラジウムおよび水酸化パラジウムなど )がより好ましい。これらは2種以上併用して よいが、ロジウム系触媒とパラジウム系触 とを組み合わせて用いる場合には、パラジ ム系触媒を主たる活性成分とすることが好 しい。これらの触媒は、通常、担体に担持 せて使用される。担体としては、シリカ、 リカ-アルミナ、アルミナ、珪藻土、活性炭 などが例示される。触媒使用量は、水素化す るニトリルゴム(a)の量に対して、水素化触媒 の金属量換算で、好ましくは10~5000重量ppm、 り好ましくは100~3000重量ppmである。

 油層水素化法の水素化反応温度は、好ま くは0~200℃、より好ましくは10~100℃であり 水素圧力は、好ましくは0.1~30MPa、より好ま くは0.2~20MPaであり、反応時間は、好ましく 1~50時間、より好ましくは2~25時間である。

 あるいは、高飽和ニトリルゴム(A)の製造を 層水素化法で行う場合には、乳化重合によ 調製したニトリルゴム(a)のラテックスに、 要に応じて水を加えて希釈し、水素添加反 を行うことが好ましい。
 ここで、水層水素化法には、水素化触媒存 下の反応系に水素を供給して水素化する(I) 層直接水素化法と、酸化剤、還元剤および 性剤の存在下で還元して水素化する(II)水層 間接水素化法とがある。

 (I)水層直接水素化法においては、水層のニ リルゴム(a)の濃度(ラテックス状態での濃度 )は、凝集を防止するために40重量%以下とす ことが好ましい。
 また、用いる水素化触媒としては、水で分 しにくい化合物であれば特に限定されない 水素化触媒の具体例として、パラジウム触 では、ギ酸、プロピオン酸、ラウリン酸、 ハク酸、オレイン酸、フタル酸などのカル ン酸のパラジウム塩;塩化パラジウム、ジク ロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジク ロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ヘキサ ロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどのパ ジウム塩素化物;ヨウ化パラジウムなどのヨ ウ素化物;硫酸パラジウム・二水和物などが げられる。これらの中でもカルボン酸のパ ジウム塩、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラ ジウムおよびヘキサクロロパラジウム(IV)酸 ンモニウムが特に好ましい。水素化触媒の 用量は、適宜定めればよいが、水素化する トリルゴム(a)の量に対して、水素化触媒の 属量換算で、好ましくは5~6000重量ppm、より ましくは10~4000重量ppmである。

 水層直接水素化法における反応温度は、 ましくは0~300℃、より好ましくは20~150℃、 に好ましくは30~100℃である。反応温度が低 ぎると反応速度が低下するおそれがあり、 に、高すぎるとニトリル基の水素添加など 副反応が起こる可能性がある。水素圧力は 好ましくは0.1~30MPa、より好ましくは0.5~20MPa ある。反応時間は反応温度、水素圧、目標 水素化率などを勘案して選定される。

  水層直接水素化法においては、反応終 後、ラテックス中の水素化触媒を除去する その方法として、例えば、活性炭、イオン 換樹脂などの吸着剤を添加して攪拌下で水 化触媒を吸着させ、次いでラテックスをろ または遠心分離する方法を採ることができ 。あるいは、水素化触媒を除去せずにラテ クス中に残存させることも可能である。

 (II)一方、水層間接水素化法では、水層の ニトリルゴム(a)の濃度(ラテックス状態での 度)は、好ましくは1~50重量%、より好ましく 1~40重量%とする。

 水層間接水素化法で用いる酸化剤としては 酸素、空気、過酸化水素などが挙げられる これら酸化剤の使用量は、炭素-炭素二重結 合に対するモル比(酸化剤:炭素-炭素二重結合 )で、好ましくは0.1:1~100:1、より好ましくは0.8 :1~5:1の範囲である。
 水層間接水素化法で用いる還元剤としては ヒドラジン、ヒドラジン水和物、酢酸ヒド ジン、ヒドラジン硫酸塩、ヒドラジン塩酸 などのヒドラジン類またはヒドラジンを遊 する化合物が用いられる。これらの還元剤 使用量は、炭素-炭素二重結合に対するモル 比(還元剤:炭素-炭素二重結合)で、好ましく 0.1:1~100:1、より好ましくは0.8:1~5:1の範囲であ る。
 水層間接水素化法で用いる活性剤としては 銅、鉄、コバルト、鉛、ニッケル、鉄、ス などの金属のイオンが用いられる。これら 活性剤の使用量は、炭素-炭素二重結合に対 するモル比(活性剤:炭素-炭素二重結合)で、 ましくは1:1000~10:1、より好ましくは1:50~1:2で る。

  水層間接水素化法における反応は、0℃ ら還流温度までの範囲内で加熱することに り行い、これにより水素化反応が行われる この際における加熱範囲は、好ましくは0~25 0℃、より好ましくは20~100℃、特に好ましく 40~80℃である。

 水層での直接水素化法、間接水素化法の ずれにおいても、水素化に続いて、塩析に る凝固、濾別、乾燥を行うことが好ましい 塩析は、前記油層水素化法におけるニトリ ゴム(a)のラテックスの塩析と同様に、水素 加後の高飽和ニトリルゴム(A)中におけるカ リン酸塩の量を制御するために、上述した ルカリ土類金属塩または第13族金属塩を用 ることが好ましく、アルカリ土類金属塩を いることが特に好ましい。また、凝固に続 濾別および乾燥の工程はそれぞれ公知の方 により行うことができる。

  架橋性ゴム組成物
 本発明の架橋性ゴム組成物は、上記した高 和ニトリルゴム(A)に、架橋剤を配合してな ものである。

 架橋剤としては、公知のゴムの架橋剤であ ば使用できるが、硫黄系架橋剤、有機過酸 物系架橋剤、およびポリアミン系架橋剤が ましい。なお、ポリアミン系架橋剤は、カ ボキシル基を含有する高飽和ニトリルゴム( A)に対して、好適である。
 硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫 などの硫黄;4,4’-ジチオモルホリンやテト メチルチウラムジスルフィド、テトラエチ チウラムジスルフィド、高分子多硫化物な の有機硫黄化合物;などが挙げられる。
 有機過酸化物系架橋剤としては、α,α -ビ [t-ブチルペルオキシ]ジイソプロピルベンゼ 、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパ オキサイドなどのジアルキルパーオキサイ 類;ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリ ルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサ イド類;2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパー キシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプ ピルカーボネートなどのパーオキシエステ 類;などが挙げられる。
 ポリアミン系架橋剤としては、2つ以上のア ミノ基を有する化合物であって、脂肪族炭化 水素や芳香族炭化水素の複数の水素がアミノ 基またはヒドラジド構造、すなわち-CONHNH 2 (「CO」は、カルボニル基である)で表される 造で置換された化合物である。その具体例 して、例えば、ヘキサメチレンジアミン、 キサメチレンジアミンカルバメート、テト メチレンペンタミン、ヘキサメチレンジア ン-シンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチ ンジアミン-ジベンゾエート塩などの脂肪族 多価アミン類;4,4’-メチレンジアニリン、4,4 -オキシジフェニルアミン、m-フェニレンジ ミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレ ビス(o-クロロアニリン)などの芳香族多価ア ミン類;イソフタル酸ジヒドラジド、アジピ 酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド どのヒドラジド構造を2つ以上有する化合物; などが挙げられる。
 架橋剤の配合量は、高飽和ニトリルゴム(A)1 00重量部に対して、好ましくは0.2~20重量部、 り好ましくは0.5~15重量部である。

 また、本発明の架橋性ゴム組成物は、架 剤以外に、ゴム加工分野において通常使用 れるその他の配合剤、例えば、カーボンブ ック、アクリル酸亜鉛およびメタクリル酸 鉛などの補強性充填剤;炭酸カルシウムやク レーなどの非補強性充填材、酸化防止剤、光 安定剤、一級アミンなどのスコーチ防止剤、 可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、 難燃剤、受酸剤、防黴剤、帯電防止剤、着色 剤、シランカップリング剤、架橋促進剤、架 橋助剤、架橋遅延剤などを配合することがで きる。これらの配合剤の配合量は、配合目的 に応じた量を適宜採用することができる。

 架橋剤およびその他の配合剤と、高飽和 トリルゴム(A)との混合は、非水系で行うこ が好ましい。混合方法としては、特に限定 ないが、通常、架橋剤および熱に不安定な 橋助剤などを除いた成分を、バンバリーミ サ、インターミキサ、ニーダなどの混合機 一次混練した後、ロールなどに移して架橋 などを加えて二次混練する。

  本発明の架橋性ゴム組成物のムーニー粘 〔ML 1+4 (100℃)〕(コンパウンドムーニー)は、好まし は15~150、より好ましくは40~120である。

  ゴム架橋物
 本発明のゴム架橋物は、上記架橋性ゴム組 物を架橋して得ることができるものである
 本発明のゴム架橋物を得るにあたっては、 望の形状に対応した成形機、例えば押出機 射出成形機、圧縮機を用いて、成形と同時 架橋を行うことが好ましい。特に、本発明 架橋性ゴム組成物は、本発明の高飽和ニト ルゴム(A)から構成されるものであるため、 出成形機や圧縮機などを用いて高温短時間 、成形と同時に架橋を行った場合において 、金型離型性に優れるため、金型に汚染物 が付着堆積し難い。そして、結果として、 型を繰り返し使用した場合においても、汚 物質による金型の汚染を有効に防止するこ ができる。そのため、本発明においては、 とえば、射出成形機や圧縮機などを用いて 高温短時間の条件で、成形と同時に架橋を うことができ、この場合においても金型の 染が発生し難いため、生産効率の向上が可 となる。なお、この際における、成形およ 架橋温度は、好ましくは100~210℃、より好ま しくは130~200℃であり、成形および架橋時間 、好ましくは30秒~30分、より好ましくは1分~1 0分である。

 また、ゴム架橋物の形状、大きさなどに っては、表面が架橋していても内部まで十 に架橋していない場合があるので、さらに 熱して二次架橋を行ってもよい。

 このようにして製造される本発明のゴム架 物は、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム 特性である耐油性および耐オゾン性に優れ ことに加え、常態物性および耐熱性を良好 保ちながら、成形工程における金型離型性 よび金型汚染性が改善され、生産性に優れ いるという特性を有する。そのため、本発 のゴム架橋物は、ベルト、シール材、ロー 、ホース、チューブなどに好適に使用でき シール材として特に好適に使用できる。
 なお、シール材としては、アルコールを含 する溶液を封止するために用いられるシー 材、特に、インクジェット式記録装置に用 られる、インクカートリッジ用のパッキン( たとえば、インク取り出し口に装着され、イ ンク取り出し口に、インクジェット式記録装 置本体のインク供給流路に形成された中空針 が挿入された際に、インク取り出し口と中空 針との気密性を確保するために装着されるパ ッキン)として好適に用いられる。
 また、ベルトとしては、平ベルト、Vベルト 、Vリブドベルト、丸ベルト、角ベルト、歯 ベルトなどが挙げられる。ホースとしては 単管ゴムホース、多層ゴムホース、編上式 強ホース、布巻式補強ホースなどが挙げ挙 られる。ダイアフラムとしては、平形ダイ フラム、転動形ダイアフラムなどが挙げら る。
 シール材としては、回転用、揺動用、往復 用などの運動用シールと固定用シールが挙 られる。運動用シールとしては、オイルシ ル、ピストンシール、メカニカルシール、 ーツ、ダストカバー、ダイアフラム、アキ ムレータプラダなどが挙げられる。固定用 ールとしては、Oリング、各種ガスケットな どが挙げられる。
 ロールとしては、印刷機器、コピー機器な のOA機器の部品であるロール;紡糸用延伸ロ ル、紡績用ドラフトロールなどの繊維加工 ロール;ブライドルロール、スナバロール、 ステアリングロールなどの製鉄用ロール;な が挙げられる。
 その他にもバルブおよびバルブシート、BOP( Blow Out Preventar)、プラターなどの油田用ゴム 部品、クッション材、防振材などの減衰材ゴ ム部品や、自動車内装部材、靴底など幅広い 用途に使用することができる。

 以下、本発明を、さらに詳細な実施例に づき説明するが、本発明は、これら実施例 限定されない。本実施例における「部」は 特記しない限り重量基準である。なお、試 、評価は下記によった。

  カプリン酸塩量(牛脂の塩量)
 高飽和ニトリルゴム中のカプリン酸塩量(実 施例1~3)および牛脂の塩量(比較例1)は、次の 法により測定した。
 すなわち、エタノールとトルエンとの混合 (エタノール70容量%、トルエン30容量%)を抽 液として用い、JIS K6237と同様の方法(指示薬 を用いた、水酸化ナトリウムおよび塩酸によ る中和滴定)で、カプリン酸塩量または牛脂 塩量を求め、抽出前の高飽和ニトリルゴム 重量に対する、抽出されたカプリン酸塩量 たは牛脂の塩量の重量割合(単位は、重量%) して求めた。なお、原子吸光分析結果から 実施例1および2では、カプリン酸マグネシウ ム塩として計算し、実施例3では、カプリン アルミニウム塩として計算し、比較例1では 脂のマグネシウム塩として計算した。
 また、牛脂、カプリン酸の存在、およびそ 存在比はガスクロマトグラフィーで確認し 。

  ヨウ素価
 ヨウ素価はJIS  K6235に従って測定した。

  ムーニー粘度〔ML 1+4 (100℃)〕
 高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度(ポリマ ームーニー)および架橋性ゴム組成物のムー ー粘度(コンパウンドムーニー)は、JIS  K6300 に従って測定した。

  金型汚染性
 得られた未架橋の架橋性ゴム組成物を、直 12mmの穴の開いた厚さ2mmの金属板に詰め、こ の未架橋の架橋性ゴム組成物を穴に詰めた金 属板の上下を、表面を磨いた厚さ1mmの金属板 (JIS G3141軟鋼板)2枚で挟み、195℃、55kg/cm 2 、2.5分間の条件で架橋を行った。次いで、架 橋により得られたゴム片を除去し、再び未架 橋の架橋性ゴム組成物を、直径12mmの穴に詰 て、同様の操作を行った。そして、この操 を繰り返し行った後における、上下の軟鋼 の表面の汚染を評価した。なお、軟鋼板表 の汚染の評価は、それぞれ、繰り返し操作1 目、5回目、10回目および20回目の終了時点 おいて行った。また、評価基準は、以下に った。
  1:軟鋼板の表面に汚れが確認できない。
  3:軟鋼板の表面に汚れが明確に確認できる 。
  5:軟鋼板の表面に汚染物質が成長しており 、汚染物質が堆積している。

  常態物性(引張強さ、伸び)
 まず、架橋性ゴム組成物を、縦15cm、横15cm 深さ0.2cmの金型に入れ、架橋し、ギヤー式オ ーブンにて二次架橋を行うことにより、ゴム 架橋物の試験片を作製した。なお、試験片を 作製する際における架橋条件は、実施例1、 施例3、比較例1では、160℃、20分間、プレス 10MPaとし、実施例2では、170℃、20分間、プ ス圧10MPaとした。次いで、得られた試験片を 用いて、JIS  K6251に従って引張強さ、および 伸びを測定した。

  実施例1
 金属製ボトル内でイオン交換水200部に、炭 ナトリウム0.2部を溶解し、それにカプリン カリウムを2.5部添加して石けん水溶液を調 し、さらに分散剤として、ナフタリンスル ン酸ホルムアルデヒド重縮合物を1.0部添加 た。これにアクリロニトリル37部、t-ドデシ ルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部の順に仕 み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3 -ブタジエン63部を仕込んだ。そして、金属製 ボトルを5℃に保ち、クメンハイドロパーオ サイド(重合開始剤)0.1部、還元剤およびキレ ート剤を適量仕込み、温度を5℃に保ちなが 16時間重合反応を行った。次いで、濃度10重 %のハイドロキノン(重合停止剤)水溶液0.1部 加えて重合反応を停止し、水温60℃のロー リーエバポレータを用いて残留単量体を除 してニトリルゴムのラテックスを得た。得 れたニトリルゴムの組成は、アクリロニト ル単量体単位37重量%、ブタジエン単量体単 63重量%(H 1 -NMRによる分析結果)であり、ラテックス中の 形分濃度は25重量%であった。

 そして、上記にて得られたラテックスを ラテックス中のニトリルゴム分の量を100重 部とした場合に、12重量部となる量の硫酸 グネシウムの水溶液に加え、撹拌してラテ クスを凝固させ、次いで、水で洗浄しつつ 別した後、60℃で12時間真空乾燥することに りニトリルゴム(a1)を得た。

 次いで、得られたニトリルゴム(a1)を、濃度 12重量%となるようにアセトンで溶解し、オー トクレーブに入れ、ニトリルゴム(a1)の量に してPd金属量が1000重量ppmとなる量のパラジ ム・シリカ触媒を加え、3.0MPaで水素添加反 を行った。水素化反応終了後、大量の水中 注ぐことにより凝固させ、濾別、乾燥を行 ことにより高飽和ニトリルゴム(A1)を得た(H 1 -NMRによる分析結果:アクリロニトリル単量体 位37重量%、ブタジエン単量体単位63重量%、 おブタジエン単量体単位は、水素添加物お び未水素添加物の合計量である)。

 上記方法により得られた高飽和ニトリル ム(A1)100重量部に、SRFカーボンブラック(旭#5 0、旭カーボン社製)60重量部、可塑剤(アデカ イザーC-8、ADEKA社製)8部、ステアリン酸1部 亜鉛華1号5部、アミン-ケトン系老化防止剤( クラック224、大内新興化学社製)1.5部、ベン ゾイミダゾール系老化防止剤(ノクラックMBZ 大内新興化学社製)1.5部、325メッシュ篩通過 粉末硫黄(S#325、細井化学工業社製)0.8部、チ ウラム系架橋促進剤(TMTD(ノクセラーTT、大内 興化学社製))1.5部、および、スルフェンア ド系架橋促進剤(CBS(ノクセラーCZ、大内新興 学社製))0.5部を配合し、ロールを用いて、50 ℃で混合、混練することにより、架橋性ゴム 組成物を得た。

 そして、上記方法にしたがい、上記にて 製した高飽和ニトリルゴム(A1)のカプリン酸 マグネシウム塩量、ヨウ素価、およびムーニ ー粘度(ポリマームーニー)、架橋性ゴム組成 のムーニー粘度(コンパウンドムーニー)、 らびに、ゴム架橋物の常態物性(引張強さ、 び)の各評価、さらには架橋性ゴム組成物を 用いた金型汚染性の評価を行った。結果を表 1に示す。

  実施例2
 実施例1において、水添時間を延ばした以外 は、実施例1と同様にして高飽和ニトリルゴ (A2)を得た(H 1 -NMRによる分析結果:アクリロニトリル単量体 位37重量%、ブタジエン単量体単位63重量%、 おブタジエン単量体単位は、水素添加物お び未水素添加物の合計量である)。

 次いで、得られた高飽和ニトリルゴム(A2) を用いて、架橋性ゴム組成物を調製した。実 施例2においては、アミン-ケトン系老化防止 (ノクラック224)1.5部の代わりに、置換ジフ ニルアミン系老化防止剤(Naugard445、Crompton社 )1.5部を使用するとともに、325メッシュ篩通 過の粉末硫黄(S#325、細井化学工業社製)0.8部 チウラム系架橋促進剤(TMTD(ノクセラーTT、大 内新興化学社製))1.5部、およびスルフェンア ド系架橋促進剤(CBS(ノクセラーCZ、大内新興 化学社製))0.5部の代わりに、有機過酸化物系 橋剤としてα,α-ビス[t-ブチルペルオキシ]ジ イソプロピルベンゼン(Vul-Cup40KE、GEO Specialty Chemicals Inc社製)7部を使用した以外は、実施 1と同様にして、架橋性ゴム組成物を調製し た。

 そして、高飽和ニトリルゴム(A2)、架橋性 ゴム組成物、およびゴム架橋物について、実 施例1と同様にして各評価を行った。結果を 1に示す。

  実施例3
 実施例1において、凝固剤を硫酸アルミニウ ムに変更した以外は、実施例1と同様にして 飽和ニトリルゴム(A3)を得た(H 1 -NMRによる分析結果:アクリロニトリル単量体 位37重量%、ブタジエン単量体単位63重量%、 おブタジエン単量体単位は、水素添加物お び未水素添加物の合計量である)。そして、 高飽和ニトリルゴム(A3)、架橋性ゴム組成物 およびゴム架橋物について、実施例1と同様 して各評価を行った。結果を表1に示す。

  比較例1
 実施例1において、2.5部のカプリン酸カリウ ムの代わりに、同量の牛脂のケン化物を用い た以外は、実施例1と同様にしてニトリルゴ (a4)のラテックスを得た。得られたニトリル ム(a4)の組成は、アクリロニトリル単量体単 位37重量%およびブタジエン単量体単位63重量% であり、ラテックス中の固形分濃度は25重量% であった。なお、牛脂の塩量は、牛脂(ルナ クTH、花王社製、飽和脂肪酸のC 14 =4%、C 16 =27%、C 18 =24%、不飽和脂肪酸のC 16 ’=5%、C 18 ’=40%)をKOHでケン化することにより調製した

 次いで、得られたニトリルゴム(a4)を実施例 1と同様にして水素添加反応を行って、高飽 ニトリルゴム(A4)を得て(H 1 -NMRによる分析結果:アクリロニトリル単量体 位37重量%、ブタジエン単量体単位63重量%、 おブタジエン単量体単位は、水素添加物お び未水素添加物の合計量である)、実施例1 同様にして各評価を行った。結果を表1に示 。

 なお、表1中、それぞれ、「旭#50」はSRFカー ボンブラック、「アデカサイザーC-8」は可塑 剤、「ノクラック224」はアミン-ケトン系老 防止剤、「Naugard445」は置換ジフェニルアミ 系老化防止剤、「ノクラックMBZ」はベンゾ ミダゾール系老化防止剤、「TMTD(TT)」はチ ラム系架橋促進剤、「CBS(CZ)」はスルフェン ミド系架橋促進剤、「S#325」は325メッシュ 通過の粉末硫黄、「VulCup40KE」はα,α-ビス[t- チルペルオキシ]ジイソプロピルベンゼンで ある。

 表1に示すように、高飽和ニトリルゴム中の カプリン酸塩の量を0.01~0.4重量%とした実施例 1~3においては、成形工程における金型汚染を 有効に防止でき、しかも、得られるゴム架橋 物についても常態物性を良好なものとできる 結果となった。
 これに対して、カプリン酸塩の代わりに、 脂のケン化物を用いた比較例1においては、 成形工程において金型汚染が発生する結果と なった。