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Title:
HYDROGEN STORAGE MATERIAL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/154200
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a hydrogen storage material containing metal fine particles having hydrogen storage ability and an organic compound having two or more characteristic groups bondable to the metal fine particles and bonded to the metal fine particles through the characteristic groups.

Inventors:
NISHIHARA HIROSHI (JP)
YONEZAWA TETSU (JP)
YAMANOI YOSHINORI (JP)
YAMAMOTO YUKI (JP)
KOBORI YOSHIHIRO (JP)
OSHIMA SHINJI (JP)
KOBAYASHI YUKIO (JP)
MAEKAWA SHUNSUKE (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/060948
Publication Date:
December 23, 2009
Filing Date:
June 16, 2009
Export Citation:
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Assignee:
NIPPON OIL CORP (JP)
UNIV TOKYO (JP)
NISHIHARA HIROSHI (JP)
YONEZAWA TETSU (JP)
YAMANOI YOSHINORI (JP)
YAMAMOTO YUKI (JP)
KOBORI YOSHIHIRO (JP)
OSHIMA SHINJI (JP)
KOBAYASHI YUKIO (JP)
MAEKAWA SHUNSUKE (JP)
International Classes:
B01J20/02; B22F1/02; C01B3/00; C22C5/04; C22C14/00; C22C27/02; F17C11/00
Foreign References:
JP2006218346A2006-08-24
JP2007167820A2007-07-05
JP2009096723A2009-05-07
JP2008266269A2008-11-06
Other References:
BEMIS J M ET AL.: "12 Ko no Hydride Genshi o Fukumu Takakusei Pd28Pt13 Cluster no H12Pd28 (PtPMe3)(PtPPh3)12(CO)27 Pd Kinzoku ni Oite Kano na Bunshi Suiso Kyuzo Model", J AM CHEM SOC, vol. 119, no. 19, 14 May 1997 (1997-05-14), pages 4545 - 4546
CULP JEFFREY T. ET AL.: "Katai Sanjigen Hofmann Clathrate Yudotai no Suiso Chozo Tokusei: Saiko Size Koka", J PHYS CHEM C, vol. 112, no. 17, 1 May 2008 (2008-05-01), pages 7079 - 7083
Attorney, Agent or Firm:
HASEGAWA Yoshiki et al. (JP)
Yoshiki Hasegawa (JP)
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Claims:
 水素吸蔵能を有する金属微粒子と、
 前記金属微粒子と結合可能な特性基を2以上有し、且つ、該特性基により前記金属微粒子と結合している有機化合物と、
を含有する水素吸蔵材料。
 前記金属微粒子がPd、V及びTiからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む粒子である、請求項1記載の水素吸蔵材料。
 前記有機化合物が芳香環を有する化合物である、請求項1又は2記載の水素吸蔵材料。
 前記有機化合物がイソシアノ基、ピリジル基及びホスフィノ基からなる群より選択される少なくとも1種の前記特性基を有する化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水素吸蔵材料。
 2以上の前記金属微粒子が前記有機化合物を介して結合した構造を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水素吸蔵材料。
Description:
水素吸蔵材料

 本発明は、水素吸蔵材料に関し、より詳 くは、燃料電池自動車、水素輸送トレーラ 、水素内燃機関などに利用が期待されてい 水素ガスを貯蔵するための水素吸蔵材料に する。

 従来、水素吸蔵材料としてゼオライトや 性炭を代表とする細孔を有する構造に物理 に水素を吸蔵する研究や、水素吸蔵合金に する研究が精力的に行われている。

 例えば、下記特許文献1では、細孔を有す る化合物として多孔性金属錯体の使用が検討 されている。特許文献1には、金属と有機物 ら構成されるガス吸着用の多孔質材料とし 均一なミクロ孔を設計、制御し、ガス吸蔵 を向上させている技術が開示されている。

 また、下記非特許文献1には、水素吸蔵能 を有する金属を合金化させることで水素吸蔵 温度及び放出温度を低下させる方法が開示さ れている。

特開2006-342249号公報

田村英雄監修、「水素吸蔵合金-基礎か 最先端技術まで-」、NTS inc.(1998)

 しかしながら、上記特許文献1に記載され た発明は、水素吸蔵量については十分ではな いという問題がある。

 また、上記非特許文献1に記載された技術 でも、水素吸蔵量は必ずしも十分ではないと いう問題がある。

 本発明は、上記従来技術の有する課題に みてなされたものであり、水素吸蔵量に優 た水素吸蔵材料を提供することを目的とす 。

 上記目的を達成するために、本発明は、 素吸蔵能を有する金属微粒子と、上記金属 粒子と結合可能な特性基を2以上有し、且つ 、該特性基により上記金属微粒子と結合して いる有機化合物と、を含有する水素吸蔵材料 を提供する。

 かかる水素吸蔵材料は、金属微粒子をそ まま使用した場合と比較して、水素吸蔵量 向上させることができる。水素吸蔵量を向 できる理由は必ずしも明らかではないが、 発明者らは以下のように推察する。すなわ 、上記本発明の水素吸蔵材料は、金属微粒 に有機化合物が結合した構造を有している め、金属微粒子同士の密着が有機化合物に り抑制され、金属微粒子の水素原子に接触 能な表面積が向上し、水素吸蔵量が向上す と考えられる。更に、有機化合物の存在に り金属微粒子同士間に空隙が形成され、そ 空隙に水素原子を物理的に吸蔵することが 能となると考えられる。なお、有機化合物 上記特性基を2以上有することで、金属微粒 子と有機化合物とが交互に結合した2次元又 3次元網目構造が形成されやすく、水素原子 物理的に吸蔵可能な空隙が形成されやすい 考えられる。そのため、上記本発明の水素 蔵材料において、水素原子は、金属微粒子 化学的に吸蔵されるとともに、金属微粒子 士間の空隙にも物理的に吸蔵されることと り、水素吸蔵量を向上させることができる 考えられる。

 本発明の水素吸蔵材料において、上記金 微粒子はPd、V及びTiからなる群より選択さ る少なくとも1種の金属を含む粒子であるこ が好ましい。金属微粒子が上記金属を含む とにより、金属微粒子による水素原子の優 た化学的吸蔵量を得ることができる。その め、水素吸蔵材料の水素吸蔵量をより向上 せることができる。

 本発明の水素吸蔵材料において、上記有 化合物は芳香環を有する化合物であること 好ましい。芳香環を有することで有機化合 の分子の剛直性が増し、金属微粒子同士の 着をより十分に抑制することができるとと に、金属微粒子同士間の空隙をより十分に 成することができる。その結果、水素吸蔵 料は、金属微粒子による水素原子の化学的 蔵量、及び、金属微粒子同士間の空隙によ 水素原子の物理的吸蔵量の双方をより向上 せることができ、水素吸蔵量をより向上さ ることができる。

 また、本発明の水素吸蔵材料において、 記有機化合物はイソシアノ基、ピリジル基 びホスフィノ基からなる群より選択される なくとも1種の上記特性基を有する化合物で あることが好ましい。これらの特性基は、金 属微粒子と配位結合により結合しやすく、安 定した結合状態が得られるため、水素吸蔵材 料において金属微粒子同士の密着を抑制する 効果、及び、金属微粒子同士間に空隙を形成 する効果がより安定して奏される。そのため 、水素吸蔵材料の水素吸蔵量をより安定して 向上させることができる。

 本発明の水素吸蔵材料は、2以上の上記金 属微粒子が上記有機化合物を介して結合した 構造を有することが好ましい。このように、 有機化合物によって2以上の金属微粒子が連 されていることで、金属微粒子同士が密着 ることをより十分に抑制することができる ともに、金属微粒子同士間の空隙をより十 に形成することができる。その結果、水素 蔵材料において、金属微粒子による水素原 の化学的吸蔵量、及び、金属微粒子同士間 空隙による水素原子の物理的吸蔵量の双方 より向上させることができ、水素吸蔵量を り向上させることができる。なお、かかる 果は、有機化合物が適度な剛直性を有して ることで、より有効に奏される。

 更に、水素吸蔵材料において、金属微粒 には上記特性基を2以上有する有機化合物が 複数結合しており、それら複数の有機化合物 が更に他の金属微粒子に結合していることが 好ましい。これにより、金属微粒子と有機化 合物とが交互に結合した2次元又は3次元網目 造が形成され、水素原子の物理的吸蔵量が 躍的に向上し、水素吸蔵材料の水素吸蔵量 大幅に向上することができる。

 本発明によれば、水素吸蔵量に優れた水 吸蔵材料を提供することができる。

実施例1で得られた水素吸蔵材料のXPSス ペクトルを示すグラフである。 実施例1で得られた水素吸蔵材料のIRス クトルを示すグラフである。 実施例1で得られた水素吸蔵材料の透過 型電子顕微鏡写真(倍率:20万倍)である。 実施例1で得られた水素吸蔵材料の透過 型電子顕微鏡写真(倍率:30万倍)である。 実施例1で得られた水素吸蔵材料におけ るパラジウム微粒子の粒度分布を示すグラフ である。 実施例1及び比較例1~2で得られた水素吸 蔵材料の温度303Kにおける平衡圧力と水素吸 量との関係を示すグラフである。 実施例2における配位子交換反応を説明 するための図である。 実施例2で得られた水素吸蔵材料の透過 型電子顕微鏡写真(倍率:15万倍)である。 実施例3で得られた水素吸蔵材料の透過 型電子顕微鏡写真(倍率:15万倍)である。 実施例1~3及び比較例1~2で得られた水素 吸蔵材料の温度303Kにおける平衡圧力とPdあた りの水素吸蔵量との関係を示すグラフである 。

 以下、本発明をその好適な実施形態に即 て詳細に説明する。

 本発明の水素吸蔵材料は、水素吸蔵能を する金属微粒子と、上記金属微粒子と結合 能な特性基を2以上有し、且つ、該特性基に より上記金属微粒子と結合している有機化合 物と、を含有するものである。以下、各構成 要素について説明する。

 金属微粒子は、水素吸蔵能を有するもの あれば特に制限されない。金属微粒子は、 えば、水素吸蔵能を有する金属により構成 れる。金属微粒子を構成する金属としては 例えば、Pd、V、Ti、Mg、Ni、Pt等が挙げられ 。なお、金属微粒子は、Pd、V及びTiからなる 群より選択される少なくとも1種の金属を含 ことが好ましい。金属微粒子を構成する金 としては、1種類を単独で用いてもよく、2種 類以上を組み合わせて用いてもよい。2種類 上の金属を用いる場合は合金として用いて よい。

 金属微粒子の平均粒径は、0.1~100nmである とが好ましく、1~10nmであることがより好ま く、2~8nmであることが特に好ましい。金属 粒子の平均粒径が0.1nm未満であると、金属微 粒子における水素原子の化学的吸蔵量が低下 する傾向があり、100nmを超えると、金属微粒 同士間の空隙における水素原子の物理的吸 量が低下する傾向がある。特に、金属微粒 の平均粒径が1~10nmの範囲内であると、金属 粒子による水素原子の化学的吸蔵量、及び 金属微粒子同士間の空隙による水素原子の 理的吸蔵量の双方が非常に良好となり、水 吸蔵材料は、より優れた水素吸蔵量を得る とができる傾向がある。更に、金属微粒子 平均粒径が1~10nmの範囲内であると、金属微 子と有機化合物とが交互に結合した2次元又 は3次元網目構造を形成しやすくなり、水素 蔵材料の水素吸蔵量を大幅に向上すること できる傾向がある。

 ここで、金属微粒子の平均粒径は、水素 蔵材料を透過型電子顕微鏡で観察すること 金属微粒子の粒径を測定し、それら測定し 粒径の平均値として求められる。

 有機化合物は、上記金属微粒子と結合可 な特性基を2以上有し、且つ、水素吸蔵材料 において該特性基により金属微粒子と結合し ているものである。この有機化合物は、特に 制限されないが、金属微粒子同士の密着を抑 制し、金属微粒子同士間に十分な空隙を形成 するために有利なことから、適度な剛直性を 有する化合物であることが好ましい。そして 、適度な剛直性が得られることから、有機化 合物は芳香環を有する化合物であることが好 ましい。芳香環としては、芳香族炭化水素環 及び芳香族複素環のいずれであってもよいが 、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環 が特に好ましい。なお、有機化合物は、芳香 環を1つ有するものであってもよく、2つ以上 するものであってもよい。有機化合物が2つ 以上の芳香環を有する場合、それらの芳香環 は同一でも異なっていてもよい。

 有機化合物における特性基は、配位結合 共有結合、イオン結合等により金属微粒子 結合可能な基であれば特に制限されない。 の特性基として具体的には、イソシアノ基 ピリジル基、ホスフィノ基、スルホニル基 カルボキシル基、ヒドロキシル基等が挙げ れる。これらの中でも、金属微粒子との結 性が良好であることから、イソシアノ基、 リジル基及びホスフィノ基が好ましい。な 、有機化合物中の2以上の特性基は、それぞ れ同一でも異なっていてもよい。

 また、水素吸蔵材料は、上記特性基を2以 上有する有機化合物を介して、2以上の金属 粒子が結合した構造を有することが好まし 。これにより、金属微粒子同士の密着をよ 十分に抑制することができるとともに、金 微粒子同士間の空隙をより十分に形成でき 水素吸蔵材料の水素吸蔵量をより向上させ ことができる。

 更に、有機化合物は、分子の両末端に上 特性基を有することが好ましい。これによ 、上記のように当該有機化合物を介して2以 上の金属微粒子が結合した場合に、有機化合 物の両末端に金属微粒子が結合するため、金 属微粒子同士の密着をより十分に抑制するこ とができるとともに、金属微粒子同士間の空 隙をより十分に形成でき、水素吸蔵材料の水 素吸蔵量をより向上させることができる。

 また、有機化合物の分子の長さは、0.5~20n mであることが好ましく、0.7~10nmであることが より好ましい。ここで、有機化合物の分子の 長さは、金属微粒子に結合している一端と、 該一端から最も遠い上記特性基を有する他端 との距離を意味する。この分子の長さは、使 用する有機化合物の構造から求めることがで きる。分子の長さが0.5nm未満であると、金属 粒子同士間の空隙による水素原子の物理的 蔵量が低下する傾向があり、20nmを超えると 、水素吸蔵量が低下する傾向がある。

 有機化合物の分子量は特に制限されない 、水素吸蔵材料の水素吸蔵量を効率的に向 させる観点から、50~2000であることが好まし く、100~1800であることがより好ましい。

 上述した有機化合物の具体例としては、 えば、1,4-フェニレンジイソシアニド、4,4’ -ジイソシアノビフェニル、4,4’-ジイソシア -p-ターフェニル、4,4’-(ジフェニルホスフ ノ)ビフェニル、4,4’-ビフェニルジチオール 、4’,4’’’’-(1,4-フェニレン)ビス(2,2’:6 ,2’’-ターピリジン)等が挙げられる。

 水素吸蔵材料において、有機化合物と金 微粒子との含有割合は特に制限されないが 水素吸蔵材の全量に占める金属微粒子の含 量が10~90質量%であることが好ましく、30~70 量%であることがより好ましい。この含有量 10質量%未満であると、金属微粒子による水 原子の化学的吸蔵量が低下する傾向があり 90質量%を超えると、金属微粒子同士間の空 による水素原子の物理的吸蔵量が低下する 向がある。

 以上説明した水素吸蔵材料は、例えば、 属塩化物等の金属含有化合物を原料として 液中に溶かし、界面活性剤で金属分子を保 しながら還元剤で還元することで金属微粒 を合成させた後、配位性を持つ有機化合物 加えて金属微粒子と結合させることにより 造することができる。なお、水素吸蔵材料 製造方法は、上記の方法に限定されるもの はない。

 以下、実施例及び比較例に基づいて本発 をより具体的に説明するが、本発明は以下 実施例に限定されるものではない。

 [実施例1]
 (ジクロロビスアセトニトリルパラジウム(II )の合成)
 大気下で、塩化パラジウム(田中貴金属社製 )24.8gを脱水アセトニトリル(和光純薬工業製 試薬特級)625mLに溶解し、3日間室温で激しく 拌した。反応終了後、この溶液を吸引濾過 て固体を濾取し、その固体を室温で一晩真 乾燥して橙色のジクロロビスアセトニトリ パラジウム(II)を30.3g(収率83%)得た。

 (1,4-フェニレンジイソシアニド-パラジウム 粒子複合体の合成)
 窒素雰囲気下、合成したジクロロビスアセ ニトリルパラジウム(II)2.59gと、テトラ-n-オ チルアンモニウムブロミド(Alfa Aesar社製)21. 87gとを脱水テトラヒドロフラン(和光純薬工 社製、試薬特級)320mLに溶解し、ジクロロビ アセトニトリルパラジウム(II)溶液を調製し 。この溶液に還元剤である水素化トリエチ ホウ素リチウム・テトラヒドロフラン1M溶 (関東化学社製)30mLを一気に加えて室温で一 間攪拌した。攪拌終了後、1,4-フェニレンジ ソシアニド(ALDRICH社製)1.0gを加え、室温で一 晩攪拌した。その後、窒素雰囲気に保ったま ま減圧してテトラヒドロフランを留去し、溶 媒量が数mL程度になるまで濃縮した。得られ 濃縮液に脱水メタノール(和光純薬工業製、 試薬特級)100mLを加えて洗浄し、ブリッジ濾過 にて洗浄液を濾別した。この洗浄を2回行っ 後、生成物を大気下でアセトニトリル及び タノールで洗浄した。洗浄後、減圧乾燥を い、水素吸蔵材料として、2.43gの1,4-フェニ ンジイソシアニド-パラジウム微粒子複合体 得た。

 (1,4-フェニレンジイソシアニド-パラジウム 粒子複合体の分析)
 得られた1,4-フェニレンジイソシアニド-パ ジウム微粒子複合体について、X線光電子分 (XPS、Rigaku XPS-7000)測定、赤外吸収分光(IR、J asco FT/IR-620 spectrometer)測定、及び、透過型電 子顕微鏡(FE-TEM、Hitachi HF-2000)分析を行った。 得られたXPSスペクトルを図1に、IRスペクトル を図2に、TEM像を図3(倍率:20万倍)及び図4(倍率 :30万倍)にそれぞれ示した。なお、図3及び図4 に示したTEM像は、1,4-フェニレンジイソシア ド-パラジウム微粒子複合体をクロロホルム 分散させたパラジウム微粒子分散液を、TEM 支持膜などの基板上に滴下し、大気中、室 で乾燥させた試料を観察したものであり、 中の「Pd」がパラジウム微粒子である。ま 、TEM像から任意の150個のパラジウム微粒子 粒径を測定した結果、パラジウム微粒子の 均粒径は2.43nmであった。パラジウム微粒子 粒径分布を図5に示した。図5中の横軸(粒径) おいて、「1.5」は1.0nm超1.5nm以下、「2」は1. 5nm超2.0nm以下、「2.5」は2.0nm超2.5nm以下、「3 は2.5nm超3.0nm以下、「3.5」は3.0nm超3.5nm以下、 「4」は3.5nm超4.0nm以下、「4.5」は4.0nm超4.5nm以 下、の粒径範囲をそれぞれ意味する。

 XPS測定の結果で340.9eVと335.4eVにピークが 出された。これらのピーク位置は、金属パ ジウムのピーク位置に相当するため、パラ ウムが金属状態(0価)であることが示唆され 。

 また、IR測定の結果で2000cm -1 付近にピークが検出されたことから、1,4-フ ニレンジイソシアニドがパラジウム微粒子 結合していることが示唆された。1,4-フェニ ンジイソシアニド単独の物質では2100cm -1 付近にピークが検出されるが、1,4-フェニレ ジイソシアニドが金属に配位することで上 のピークがシフトし、2000cm -1 付近に検出されたものと考えられる。

 [比較例1]
 パラジウムブラック(株式会社ニラコ製、パ ラジウム粉末99.9%、100mesh(約140μm))を用意し、 これを比較例1の水素吸蔵材料とした。

 [比較例2]
 (ペンチルイソシアニド-パラジウム微粒子 合体の合成)
 窒素雰囲気下、実施例1と同様の方法で合成 したジクロロビスアセトニトリルパラジウム (II)1.30gと、テトラ-n-オクチルアンモニウムブ ロミド(Alfa Aesar社製)10.94gとを脱水テトラヒ ロフラン(和光純薬工業社製、試薬特級)160mL 溶解し、ジクロロビスアセトニトリルパラ ウム(II)溶液を調製した。この溶液に還元剤 である水素化トリエチルホウ素リチウム・テ トラヒドロフラン1M溶液(関東化学社製)15mLを 気に加えて室温で一時間攪拌した。攪拌終 後、ペンチルイソシアニド(ALDRICH社製)1.5mL 加え、室温で一時間攪拌した。その後、窒 雰囲気に保ったまま減圧してテトラヒドロ ランを留去し、溶媒量が数mL程度になるまで 濃縮した。得られた濃縮液に脱水メタノール (和光純薬工業製、試薬特級)60mLを加えて洗浄 し、ブリッジ濾過にて洗浄液を濾別した。こ の洗浄を2回行った後、生成物を大気下でア トニトリル及びメタノールで洗浄した。洗 後、減圧乾燥を行い、水素吸蔵材料として 0.72gのペンチルイソシアニド-パラジウム微 子複合体(パラジウム微粒子の平均粒径2.43nm) を得た。

 <水素吸蔵量の測定>
 実施例1及び比較例1~2で得られた水素吸蔵材 料について、温度303Kにおける水素吸蔵量を 定した。水素吸蔵量は(株)レスカ製の水素吸 蔵量測定装置を用い、水素吸蔵材料の入った サンプル管部分を303Kの水槽に浸した状態で 定を行った。303Kにおける平衡圧力と水素吸 量との関係を図6に示す。なお、図6に示し 水素吸蔵量は、水素吸蔵材料あたりの水素 蔵量である。

 実施例1の1,4-フェニレンジイソシアニド- ラジウム微粒子複合体の場合、温度303K、水 素圧力10MPaでの水素吸蔵量は0.94質量%であっ 。なお、実施例1で得られた水素吸蔵材料に いて、水素吸蔵前と吸蔵後のIRスペクトル 測定して比較したところ、有意な変化は見 れなかった。このことから、1,4-フェニレン イソシアニド自体は水素を吸蔵していない とが示唆された。一方、比較例1のパラジウ ムブラック(Pd-black)の場合、温度303K、水素圧 11MPaでの水素吸蔵量は0.67質量%であった。更 に、比較例2のペンチルイソシアニド-パラジ ム微粒子複合体の場合、温度303K、水素圧力 11MPaでの水素吸蔵量は0.10質量%であった。

 [実施例2]
 (ホスフィン配位子の合成)
 窒素雰囲気下、三口フラスコに4,4’-ジヨー ドビフェニル(東京化成工業社製)を1.22g(3mmol) 、ヨウ化銅(I)(和光純薬工業社製)を0.11g(0.6mm ol)と、炭酸セシウム(和光純薬工業社製)を3.26 g(12mmol)とを入れた。次いで、フラスコ内に脱 水トルエン(和光純薬工業社製)50mLと、ジフェ ニルホスフィンのヘキサン溶液(ジフェニル スフィン含有量10質量%、Sterm社製)を25mL(9mmol) とを追加し、24時間加熱還流した。その後、 応溶液を室温まで冷却し、セライトろ過し 。ろ液から溶媒を減圧下で留去し、シリカ ルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、 ヘキサン:ジクロロメタン=2:1)で精製すること で、ホスフィン配位子として下記式(1)で表さ れる4,4’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェ ニルを650mg(1.2mmol、収率42%)得た。

 

 (ホスフィン配位子-パラジウム微粒子複合 の合成)
 窒素雰囲気下、合成した4,4’-ビス(ジフェ ルホスフィノ)ビフェニル105.3mg(0.2mmol)と、比 較例2で得られたペンチルイソシアニド-パラ ウム微粒子複合体1.22gとを脱水クロロホル (関東化学社製)50mLに懸濁させ、9日間室温で 拌した。その後、さらに4,4’-ビス(ジフェ ルホスフィノ)ビフェニルを7.4mg加え、7日間 拌した。これにより、図7に示すように、ペ ンチルイソシアニド-パラジウム微粒子複合 (a)の配位子交換反応を進行させ、ホスフィ 配位子-パラジウム微粒子複合体(b)を合成し 。その後、遠心分離により目的物を単離し エタノール(関東化学社製)40mLを加えてさら 遠心分離することで、水素吸蔵材料として ホスフィン配位子-パラジウム微粒子複合体 を得た。

 (ホスフィン配位子-パラジウム微粒子複合 の分析)
 得られたホスフィン配位子-パラジウム微粒 子複合体について、透過型電子顕微鏡(FE-TEM Hitachi HF-2000)分析を行った。得られたTEM像を 図8(倍率:15万倍)に示す。なお、図8に示したTE M像は、ホスフィン配位子-パラジウム微粒子 合体をクロロホルムに分散させたパラジウ 微粒子分散液を、TEMの支持膜などの基板上 滴下し、大気中、室温で乾燥させた試料を 察したものであり、図中の「Pd」がパラジ ム微粒子である。また、TEM像から任意の150 のパラジウム微粒子の粒径を測定した結果 パラジウム微粒子の平均粒径は2.43nmであっ 。

 [実施例3]
 (ターピリジン配位子-パラジウム微粒子複 体の合成)
 窒素雰囲気下、下記式(2)で表される4’,4’ ’’-(1,4-フェニレン)ビス(2,2’:6’,2’’-タ ーピリジン)(ALDRICH社製)56.9mg(0.11mmol)と、比較 2で得られたペンチルイソシアニド-パラジ ム微粒子複合体1.20gとを脱水クロロホルム( 東化学社製)100mLに懸濁させ、8日間室温で撹 した。これにより、実施例2と同様に配位子 交換反応を進行させ、ターピリジン配位子- ラジウム微粒子複合体を合成した。その後 遠心分離により目的物を単離し、エタノー (関東化学社製)40mLを加えてさらに遠心分離 ることで、水素吸蔵材料としてのターピリ ン配位子-パラジウム微粒子複合体を得た。

 

 (ターピリジン配位子-パラジウム微粒子複 体の分析)
 得られたターピリジン配位子-パラジウム微 粒子複合体について、透過型電子顕微鏡(FE-TE M、Hitachi HF-2000)分析を行った。得られたTEM像 を図9(倍率:15万倍)に示す。なお、図9に示し TEM像は、ターピリジン配位子-パラジウム微 子複合体をクロロホルムに分散させたパラ ウム微粒子分散液を、TEMの支持膜などの基 上に滴下し、大気中、室温で乾燥させた試 を観察したものであり、図中の「Pd」がパ ジウム微粒子である。また、TEM像から任意 150個のパラジウム微粒子の粒径を測定した 果、パラジウム微粒子の平均粒径は2.43nmで った。

 <水素吸蔵量の測定>
 実施例2~3で得られた水素吸蔵材料について 温度303Kにおける水素吸蔵量を測定した。水 素吸蔵量は(株)レスカ製の水素吸蔵量測定装 を用い、水素吸蔵材料の入ったサンプル管 分を303Kの水槽に浸した状態で測定を行った 。303Kにおける平衡圧力と水素吸蔵量との関 を図10に示す。なお、図10に示した水素吸蔵 は、Pdあたりに換算した水素吸蔵量である また、実施例1及び比較例1~2で得られた水素 蔵材料の水素吸蔵量についても、同様にPd たりに換算して図10に示した。

 実施例1~3及び比較例1~2で得られた水素吸 材料の、温度303K、平衡圧力10MPaにおける、P dあたりに換算した水素吸蔵量を表1に示す。

 

 Pdあたりに換算した水素吸蔵量では、1,4- ェニレンジイソシアニド-パラジウム微粒子 複合体(実施例1)、及び、ターピリジン配位子 -パラジウム微粒子複合体(実施例3)は、比較 1~2の水素吸蔵材料よりも優位性が見られた

 ホスフィン配位子-パラジウム微粒子複合 体(実施例2)は、パラジウムブラック(比較例1) よりもPdあたりの水素吸蔵量が低かったが、 素の出し入れのしやすさという点で優位性 認められた。すなわち、ホスフィン配位子- パラジウム微粒子複合体(実施例2)は、圧力上 昇に従って水素吸蔵量が上昇しており、物理 吸着的な挙動が明確に見られる。それに対し てパラジウムブラック(比較例1)は、低圧で一 気に水素吸蔵量が上がった後、水素吸蔵量の 伸びがなく、化学吸着が主体であることが確 認できる。

 また、ホスフィン配位子-パラジウム微粒 子複合体(実施例2)及びターピリジン配位子- ラジウム微粒子複合体(実施例3)は、配位子 換する前のペンチルイソシアニド-パラジウ 微粒子複合体(比較例2)と比較すると、同一 パラジウム微粒子との複合体でありながら Pdあたりの水素吸蔵量が大幅に向上してい ことが確認された。このことから、実施例2 び3の水素吸蔵材料は、その構造に起因して 水素原子を物理的に吸蔵可能であることが示 唆された。

 以上説明した通り、本発明によれば、水 吸蔵量に優れた水素吸蔵材料を提供するこ ができる。




 
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