Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
LOW NOISE AIRCRAFT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/093447
Kind Code:
A1
Abstract:
A low noise air craft which can reduce engine noise on the ground sharply at the time of take-off and landing by utilizing a well-known mechanism. By utilizing a thrust deflection means constituted of a well-known mechanism for making the direction of thrust variable, exhaust direction of an engine is deflected to the upper side (upward) of the course direction (flight direction) of the aircraft so that the maximum propagation direction of the engine jet exhaust noise is kept away from the ground, thus reducing the engine noise level on the ground at the time of aircraft take-off and landing. In particular, when the thrust deflection type exhaust nozzle (20) is constituted of an upper deflection nozzle (21) and a lower deflection nozzle (22), the engine can generate reverse thrust during a landing run.

Inventors:
HORINOUCHI SHIGERU (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/066761
Publication Date:
August 07, 2008
Filing Date:
August 29, 2007
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
JAPAN AEROSPACE EXPLORATION (JP)
HORINOUCHI SHIGERU (JP)
International Classes:
B64D33/00; F02K1/78; F02C7/20; F02K1/44
Foreign References:
JP2004530078A2004-09-30
JPS50135416A1975-10-27
JPS5177712A1976-07-06
JP2000205045A2000-07-25
JPH08135505A1996-05-28
JPH07208263A1995-08-08
Other References:
See also references of EP 2116714A4
Attorney, Agent or Firm:
OSHIRO, Shigenobu et al. (1-18-14 Nishi-shimbash, Minato-ku Tokyo 03, JP)
Download PDF:
Claims:
 推力の方向を可変にする推力偏向手段を備えた航空機であって、エンジンのジェット排気騒音の最大伝播方向を地上から遠ざけるように該エンジンの排気方向を該航空機の経路方向(飛行方向)に関して上側(上方)に前記推力偏向手段によって推力を偏向することにより離着陸時の地上におけるエンジン騒音レベルを低減することを特徴とする低騒音航空機。
 前記推力偏向手段は、前記エンジンの出口部に取り付けられたノズルであって該ノズルの開口面の法線ベクトルの方向を変えることにより排気の噴射方向を任意の方向に変えることが可能な推力偏向式排気ノズルである請求項1に記載の低騒音航空機。
 前記推力偏向式排気ノズルは略対称な上部偏向ノズルと下部偏向ノズルとから成り、且つ該2つの偏向ノズルは円筒を、その中心軸を含む中心面で切断し、更に該中心面に関し対称な2つの平面によって該中心面からの角度±θ(0<θ<90°)でV切断した時の上流側半部分(+(180°-θ),-(180°-θ))に各々相当する請求項2に記載の低騒音航空機。
 前記下部偏向ノズルの最外軸長が前記上部偏向ノズルの最外軸長よりも長くなるように、排気ジェットが流入する前記推力偏向式排気ノズルの前方開口部がテーパー形状を成している請求項3に記載の低騒音航空機。
 前記推力偏向手段は、回転機構を備え前記エンジンの取り付け角度を変えることにより排気の噴射方向を任意の方向に変えることが可能な回転式エンジンである請求項1に記載の低騒音航空機。
 前記推力偏向手段は、前記エンジンの出口部後方の位置にあり且つ該エンジン排気と交差する角度を変えることにより排気の噴射方向を任意の方向に変えることが可能な推力偏向板である請求項1に記載の低騒音航空機。
Description:
低騒音航空機

 本発明は、低騒音航空機に関し、特に公 の機構で構成された推力偏向手段を利用す ことにより航空機の離着陸時の地上におけ エンジン騒音を大幅に低減することが可能 低騒音航空機に関するものである。

 一般に、航空機は環境適合性の基準を満た ために、離着陸時のエンジン騒音を抑制す ことが求められる。
 ところで、エンジン騒音の発生源は、イン ーク側から前方に向けて発生するファンノ ズと排気ノズル側から後方に向けて発生す ジェットミキシングノイズが主要な発生源 ある。航空機の後方へのエンジン騒音を低 する基本的な考え方としては、先ずジェッ 排気速度を下げることが効果的である。そ ためにはエンジンのバイパス比を大きくす ことや、吸音ダクトや低騒音化ノズルをエ ジン後部に装着することが研究あるいは実 化されている(例えば、特許文献1および特 文献2を参照。)。しかし、それぞれの技術に は機体の空気抵抗の増大やエンジン重量の増 大などの課題があり、ペナルティを負うとと もに、騒音低減の効果も充分とは言えない。 特に、超音速航空機においてエンジンのバイ パス比を大きくすることは超音速飛行性能と 相反する設計上の妥協が大きい。また、上述 の吸音ダクトや低騒音化ノズルも現在の技術 では重量増加が大きく、その結果、超音速航 空機に有効なエンジン騒音低減装置の開発は 遅れている。例えば、約30年前に欧州で開発 れた超音速輸送機コンコルドが大きくは成 しなかった理由の一つには、この離着陸騒 が極めて大きかった事が挙げられている。 た、超音速航空機に限らず、亜音速航空機 も離着陸騒音の低減は大きな課題であり、 音基準値は年々強化されていく傾向にある

特開平8-135505号公報

特開平7-208263号公報

 上述した通り、航空機の離着陸時のエンジ 騒音を低減することは重要な技術課題であ 、従来はエンジンの排気ノズル部分に吸音 クトやエジェクターを追加することにより 空機の離着陸時のエンジン騒音を低減する とに対応していた。
 しかしながら、これら従来の騒音低減装置 は、機体の空気抵抗の増大やエンジン重量 増大等の問題点を有し、騒音低減の効果も 分なものではなかった。
 そこで、本発明は、上記実情に鑑み創案さ たものであって、公知の機構で構成された 力偏向手段を利用することにより航空機の 着陸時の地上におけるエンジン騒音を大幅 低減することが可能な低騒音航空機を提供 ることを目的とする。

 前記目的を達成するために請求項1に記載の 低騒音航空機では、推力の方向を可変にする 推力偏向手段を備えた航空機であって、エン ジンのジェット排気騒音の最大伝播方向を地 上から遠ざけるように該エンジンの排気方向 を該航空機の経路方向(飛行方向)に関して上 (上方)に前記推力偏向手段によって推力を 向することにより離着陸時の地上における ンジン騒音レベルを低減することを特徴と る。
 上記低騒音航空機では、航空機のエンジン 排気方向を可変にする推力偏向手段を具備 、なお且つエンジン排気の方向を飛行方向 関して上側になるように偏向することによ 、騒音の強い成分を上空に発散させ、騒音 弱い成分を地上に向けて放射させるように た。ところで、エンジンの排気方向を飛行 向に関して上側に偏向することにより、逆 航空機の地上との距離が近づき、これによ 騒音レベルの増大効果が発生するが、後述 るように、本発明による騒音低減のレベル 、この距離近接による騒音レベルの増大効 を差し引いてもなお余りある大きなレベル なる。また、推力偏向手段は公知の機構を 用するため、従来の騒音低減装置に見られ 機体の空気抵抗の増大やエンジン重量の増 等の問題は発生せず、また、これらと組み わせる事も可能である。

 請求項2に記載の低騒音航空機では、前記推 力偏向手段は、前記エンジンの出口部に取り 付けられたノズルであって該ノズルの開口面 の法線ベクトルの方向を変えることにより排 気の噴射方向を任意の方向に変えることが可 能な推力偏向式排気ノズルであることとした 。
 上記低騒音航空機では、上記構成とするこ により、公知の機構でエンジンの排気方向 変えることができ、その結果、好適に騒音 強い成分を上空に発散させ、騒音の弱い成 を地上に向けて放射させることが出来るよ になる。

 請求項3に記載の低騒音航空機では、前記推 力偏向式排気ノズルは略対称な上部偏向ノズ ルと下部偏向ノズルとから成り、且つ該2つ 偏向ノズルは円筒を、その中心軸を含む中 面で切断し、更に該中心面に関し対称な2つ 平面によって該中心面からの角度±θ(0<θ& lt;90°)でV切断した時の上流側半部分(+(180°-θ) ,-(180°-θ))に各々相当することとした。
 上記低騒音航空機では、推力偏向式排気ノ ルを上部偏向ノズルおよび下部偏向ノズル よって上記構成とすることにより、公知の 構で上部偏向ノズルと下部偏向ノズルの各 の出口端面を接合させることが出来るよう なる。その結果、エンジンの排気方向を逆 向に(±90°以上に)偏向させることができ、 の結果、着陸滑走時において、エンジンに 推力を発生させることが出来るようになる 従ってこの推力偏向式排気ノズルをエンジ 後方部に取り付けることによって、航空機 離着陸時のエンジンの排気騒音を大幅に低 すると共に着陸滑走時における航空機の制 機能(減速能力)を高めることが出来るように なる。

 請求項4に記載の低騒音航空機では、前記下 部偏向ノズルの最外軸長が前記上部偏向ノズ ルの最外軸長よりも長くなるように、排気ジ ェットが流入する前記推力偏向式排気ノズル の前方開口部がテーパー形状を成しているこ ととした。
 上記低騒音航空機では、推力偏向式排気ノ ルの排気ジェットが流入する前方開口部を 記テーパー形状とすることにより、特に航 機の離着陸時における推力偏向モードにお て、エンジンの排気管から噴出する排気ジ ットを剥離させることなく好適に偏向する とが出来るようになる。

 請求項5に記載の低騒音航空機では、前記推 力偏向手段は、回転機構を備え前記エンジン の取り付け角度を変えることにより排気の噴 射方向を任意の方向に変えることが可能な回 転式エンジンであることとした。
 上記低騒音航空機では、上記構成とするこ により、公知の機構でエンジンの排気方向 変えることができ、その結果、好適に騒音 強い成分を上空に発散させ、騒音の弱い成 を地上に向けて放射させることが出来るよ になる。

 請求項6に記載の低騒音航空機では、前記推 力偏向手段は、前記エンジンの出口部後方の 位置にあり且つ該エンジン排気と交差する角 度を変えることにより排気の噴射方向を任意 の方向に変えることが可能な推力偏向板であ ることとした。
 上記低騒音航空機では、上記構成とするこ により、公知の機構でエンジンの排気方向 変えることができ、その結果、好適に騒音 強い成分を上空に発散させ、騒音の弱い成 を地上に向けて放射させることが出来るよ になる。

 本発明の低騒音航空機によれば、離着陸時 エンジンの排気方向を飛行方向に関して上 に偏向することにより、騒音レベルの最大 播方向を地上から遠ざけ騒音低減をはかる とが出来る。一般的に、離着陸時の推力偏 は、飛行方向に関して下側にエンジンの排 方向を偏向することにより揚力を高め離着 性能を向上することが目的である。しかし 本発明の低騒音航空機は、これとは逆方向 なる飛行方向に関して上側にエンジンの排 方向を偏向することにより、騒音低減を図 。その際、離陸時の上昇性能が若干低下し 従って飛行経路が低くなり地上との距離が づき、従って騒音の距離減衰効果が小さく り、結果として騒音が高くなるマイナス要 がある。しかしながら、エンジン排気の方 を飛行方向に関し上方に変えることによる 音低減効果は、その騒音が高くなるマイナ 要因を差し引いてもなお大きく、全体とし 地上における離着陸時のエンジン排気の騒 を大きく減少させることが出来る。
 また、エンジンの排気方向を偏向させる推 偏向式排気ノズルが、円筒を、その中心軸 含む中心面で切断し、更に該中心面に関し 称な2つの平面によって該中心面からの角度 ±θ(0<θ<90°)でV切断した時の上流側半部 (+(180°-θ),-(180°-θ))に各々相当する上部偏向 ズルと下部偏向ノズルによって構成されて る場合は、排気ジェット方向を逆方向に偏 させることが可能となり、着陸滑走時にお て、エンジンに逆推力を発生させることが 来るようになる。従ってこの推力偏向式排 ノズルをエンジン後方部に取り付けること よって、航空機の離着陸時のエンジンの排 騒音を大幅に低減すると共に着陸滑走時に ける航空機の制動機能(減速能力)を高める とが出来るようになる。

本発明の低騒音航空機の騒音低減のメ ニズムを示す説明図である。 本発明の実施例1に係る低騒音航空機を 示す説明図である。 本発明の実施例2に係る低騒音航空機を 示す説明図である。 本発明に係る推力偏向式排気ノズルを す説明図である。 本発明に係る推力偏向式排気ノズルを す要部断面説明図である。 推力偏向式排気ノズルの巡航モードで 動作を示す説明図である。 図6のA矢視を示す説明図である。 ガイドレールの他の例を示す説明図で る。 推力偏向式排気ノズルの推力偏向モー での動作を示す説明図である。 推力偏向式排気ノズルの逆推力モード での動作を示す説明図である。 本発明の実施例3に係る低騒音航空機 示す説明図である。 本発明の実施例4に係る低騒音航空機 示す説明図である。 航空機のジェット排気騒音の指向性を 示すグラフである。本図はいくつかの例に基 づき作成した騒音指向性の概念図である。 航空法施行規則付属書第2「航空機の 音の基準」に規定されている騒音基準計測 を示す説明図である。 離陸上昇における騒音基準計測点を通 過する機体の相対的位置と騒音の指向性を示 す説明図である。 推力偏向角と上昇経路角との関係を示 すグラフである。 推力偏向による飛行高度の低下を示す グラフである。 離陸上昇後の騒音基準計測点における 騒音伝播方向の計算結果を示すグラフである 。 航空機が滑走路から浮揚した時点を時 間の基準として、騒音基準計測点における騒 音の変化を推算した結果を示すグラフである 。 離陸上昇における騒音低減の内訳を示 す棒グラフである。 離陸側方における騒音低減の内訳を示 す棒グラフである。 着陸進入における騒音低減の内訳を示 す棒グラフである。

符号の説明

 100,200,300,400  低騒音航空機

 以下、図に示す実施の形態により本発明 さらに詳細に説明する。

 図1は、本発明の低騒音航空機の騒音低減の メカニズムを示す説明図である。なお、図1 (a)は、本発明の低騒音航空機の離陸時のジ ット排気騒音分布等を示し、同(b)は通常の 空機のジェット排気騒音分布等を示してい 。
 航空機のジェットミキシングノイズは騒音 強さに対し指向性を有しており、図1の(b)に 示すように、通常は排気ジェットの方向から 10~30度外側(飛行方向に関して下側(下方))に最 も騒音の大きな分布を有している(詳細につ ては、図13を参照。)。例えば、離陸上昇時 は航空機が環境基準(文献1)に定められた騒 計測点(図14の(1)の場合)を通過する時の計測 と機体の相対的位置は、ちょうどこの指向 による騒音の最大伝播方向を計測点に向け がら機体が通り過ぎていく時期(位置)に相 する(図15の破線矢印AZ)。

 しかし、図1の(a)に示すように、何らかの 推力偏向手段(装置)によって、排気ジェット 噴射方向を飛行方向に関して上側(上方)に 力偏向を行うことが可能ならば、騒音の強 成分を上空に発散させ、騒音の弱い成分を 上に向けて放射させるようになり、その結 、地上におけるエンジンのジェット排気騒 を大きく減少させることが出来る。

 図2は、本発明の実施例1に係る低騒音航空 100を示す説明図である。
 この低騒音航空機100は、推力偏向手段とし 、推力偏向式排気ノズルを備えている。こ 推力偏向式排気ノズルは、エンジン構造の 端部を構成する排気ノズルに取り付けられ また、例えば特開平7-4312号公報の図3に見ら れるオフセット回転機構または特開2003-307156 公報の図6および図7に見られる延伸機構を し、排気ジェットの方向を偏向する。従っ 、低騒音航空機100は、この公知の機構で構 された推力偏向式排気ノズルにより、容易 排気ジェットの方向を飛行方向に関して上 に偏向させることができ、その結果、地上 おけるエンジン排気騒音を大幅に低減する とが出来るようになる。

 図3は、本発明の実施例2に係る低騒音航空 200を示す説明図である。
 この低騒音航空機200は、推力偏向手段とし 、実施例1と同様に排気ジェットの方向を変 えることが可能な推力偏向式排気ノズル20を えている。この推力偏向式排気ノズル20は 図4に示すように、ほぼ対称な上部偏向ノズ 21と下部偏向ノズル22とから成り、後述する 駆動機構によって排気ジェットの噴射方向を 各モードに応じて適切に偏向させる。なお、 上部偏向ノズル21と下部偏向ノズル22の構造 特徴については、図5を参照しながら後述す 。また、巡航モードとは推力偏向式排気ノ ル20が排気ジェットの噴射方向を偏向させ い状態をいい(主として、航空機が一定高度 一定の速度で飛行する時に採用する形態で る。)、推力偏向モードとは推力偏向式排気 ノズル20が排気ジェットの噴射方向を飛行方 に関して上側に偏向させる状態をいい(主と して、航空機が離着陸時に採用する形態であ る。)、逆推力モードとは上部偏向ノズル21と 下部偏向ノズル22が各々のV切断部(後方開口 )を接合し、排気ジェットを逆方向に排気す 状態をいう(主として、航空機が着陸滑走時 に採用する形態である。これにより、航空機 の減速能力を高める。)。

 図5は、本発明に係る推力偏向式排気ノズル 20を示す要部断面説明図である。なお、図5(a) は正面図である。また、図5(b)は、そのB-B断 図である。
 この推力偏向式排気ノズル20は、上述した り上部偏向ノズル21と下部偏向ノズル22とか 成り、上部偏向ノズル21および下部偏向ノ ル22は、円筒をその中心軸を含む仮想中心面 CPによって切断し、更に該仮想中心面CPに関 対称な2つの仮想平面UP,LPによって該仮想中 面CPから角度±θ(0<θ<90°)でV切断した時 上流側(図5(b)の実線部分、すなわち仮想平面 UP,LPの左側部分)の半分に各々相当する。また 、V切断した側とは反対の端面(前方開口部)は テーパー形状を成している。なお、テーパー の方向については、下部偏向ノズル22の最外 長L2が上部偏向ノズル21の最外軸長L1よりも くなる(すなわち、L2>L1となる)方向である 。推力偏向式排気ノズル20をこのような上部 向ノズル21と下部偏向ノズル22によって構成 することにより、排気ジェットの噴射方向を 好適に偏向させることが可能となる。その結 果、航空機が離着陸する際に排気ジェットの 噴射方向を飛行方向に関し上側に偏向させる ことにより地上におけるエンジン排気騒音を 大幅に低減することが可能となる。また、上 部偏向ノズル21と下部偏向ノズル22の互いのV 断部を接合させ後方開口を閉じることによ 、排気ジェットの噴射方向を逆方向に偏向 せることが可能となる。これにより、航空 の着陸滑走時に、エンジンに逆推力を発生 せ航空機の制動機能(減速能力)を高めるこ が可能となる。

 図6から10は、実施例2に係る推力偏向式排気 ノズル20を駆動する機構を示す説明図である なお、上部偏向ノズル21と下部偏向ノズル22 はほぼ対称な関係にあるため、ここでは主と して上部偏向ノズル21の駆動機構について説 する。
 上部偏向ノズル21の駆動機構は、上部偏向 ズル21を偏向させるアクチュエータ23と、そ アクチュエータ23と上部偏向ノズル21との結 合部となるアクチュエータ取付部24と、その クチュエータ取付部24が移動するための上 方ガイドレール25と上後方ガイドレール26と ら成る。アクチュエータ23は、例えば回転 構付き油圧シリンダで構成されている。ま 、アクチュエータ取付部24の詳細については 、図7を参照しながら後述するが、前後にロ ラ対(従って、1つのアクチュエータ取付部24 対しローラの数は全部で4個備える。)を有 、その中で、前方ローラは上前方ガイドレ ル25上を移動し、一方、後方ローラは上後方 ガイドレール26上を移動する。また、上前方 イドレール25、上後方ガイドレール26及びア クチュエータ23の前方取付部はナセル構造ま はエンジン排気管に固定されている。本実 例では、これらのガイドレール25,26は一端 エンジン排気管に固定されていることとし 。

 ところで、上前方ガイドレール25および 後方ガイドレール26は、互いに異なる軌跡( ール特性)を有している。つまり、上部偏向 ズル21がこれらのガイドレール25,26を滑走す ると、回転移動(平行+回転)し、「巡航モード 」→「推力偏向モード」→「逆推力モード」 の各モードにおいて求められる各ノズル形態 を成すようにこれらのガイドレール25,26は作 れている。また、このことは、下前方ガイ レール27および下後方ガイドレール28に対し ても同様に当てはまる。

 図6は、推力偏向式排気ノズル20の巡航モー での動作を示す説明図である。
 この巡航モードでは、推力偏向式排気ノズ 20は排気ジェットの噴射方向を偏向させな ため、アクチュエータ23は、縮んだ状態にあ り、同時に、アクチュエータ取付部24,24は、 下前方ガイドレール25,27と上下後方ガイド ール26,28の各始点に位置している。

 図7は、図6のA矢視を示す説明図である。
 アクチュエータ取付部24は上部偏向ノズル21 に固定され、アクチュエータ取付部24には、 後に各2個から成る前方ローラ対24a,24aと後 ローラ対24b,24bとが各々取り付けられている 前方ローラ対24a,24aは上前方ガイドレール25, 25上にあり、一方後方ローラ対24b,24bは上後方 ガイドレール26,26上にある。

 また、これらのガイドレール25,26は、図8 示すように、断面形状が略C形状のガイドレ ールであっても良い。

 図9は、推力偏向式排気ノズル20の推力偏向 ードでの動作を示す説明図である。
 アクチュエータ23のロッドが伸びてアクチ エータ取付部24を押し、前方ローラ対24a,24a 上前方ガイドレール25,25に沿って移動し、一 方後方ローラ対24b,24bは上後方ガイドレール26 ,26に沿って移動し、上部偏向ノズル21を上方 偏向させ、排気ジェットの噴射方向を上方 偏向させる。下部偏向ノズル22についても 様に、アクチュエータ23のロッドが伸びてア クチュエータ取付部24を押し、前方ローラ対2 4a,24aおよび後方ローラ対24b,24bが下前方ガイ レール27,27および下後方ガイドレール28,28に って各々移動し、下部偏向ノズル22を上方 偏向させ、排気ジェットの噴射方向を上方 偏向させる。

 図10は、推力偏向式排気ノズル20の逆推力モ ードでの動作を示す説明図である。
 アクチュエータ23が更にアクチュエータ取 部24を押すと、アクチュエータ取付部24は、 前方ガイドレール25と上後方ガイドレール26 の各終点に到達し、上部偏向ノズル21は、V切 断した側の端面(後方開口)が下向きになるよ に回転する。一方、下部偏向ノズル22につ ても、アクチュエータ取付部24が下前方ガイ ドレール27と下後方ガイドレール28の各終点 到達し、下部偏向ノズル22はV切断した側の 面(後方開口)が上向きになるように回転し上 部偏向ノズル21のV切断した端面に接合する。 そして、排気ジェットは上部偏向ノズル21の 央開口へ流入し内周面で反射して前方開口 ら外部に流出する。同様に、下部偏向ノズ 22の中央開口へ流入した排気ジェットは、 周面で反射して前方開口から外部へ流出す 。このように、排気ジェットは逆方向に偏 しエンジンは逆推力を発生する。

 図11は、本発明の実施例3に係る低騒音航空 300を示す説明図である。
 この低騒音航空機300は、推力偏向手段とし 、回転式エンジンを備えている。この回転 エンジンは、エンジンを航空機の主翼や胴 に取り付ける構造において、エンジンが回 自由になるようにエンジンに対して公知の 転機構を取り付けたものである。従って、 騒音航空機300は、この公知の機構で構成さ た回転式エンジンにより、容易に排気ジェ トの方向を飛行方向に関して上側に偏向さ ることができ、その結果、地上におけるエ ジン排気騒音を大幅に低減することが出来 ようになる。

 図12は、本発明の実施例4に係る低騒音航空 400を示す説明図である。
 この低騒音航空機400は、推力偏向手段とし 、推力偏向板を備えている。この推力偏向 は、搭載されたエンジン後方の機体構造、 えば主翼や胴体の上面にエンジンの排気を 方に偏向できる偏向板を可動式に搭載した のである。従って、低騒音航空機400は、こ 簡素な機構で構成された推力偏向板により 容易に排気ジェットの方向を飛行方向に関 て上側に偏向させることができ、その結果 地上におけるエンジン排気騒音を大幅に低 することが出来るようになる。

 上記推力偏向装置により推力を飛行経路の 方に変更して騒音低減を図る場合に以下の2 点について配慮が必要である。
 一つは、航空機の耐空性に関する安全基準( 「耐空性審査要領」、以下「文献2」という )により、離陸滑走を開始し、離陸が完了す までは脚上げ操作以外の飛行形態の変更は されないこと、二つ目は、推力偏向により 陸性能が低下するため、離陸が完了するま は推力偏向を行わないか、または、一般的 推力偏向である飛行経路下方への偏向が必 である事である。この結果、騒音低減のた の上方への推力偏向は、離陸が完了した時 において、実施されることが必要となる。 陸完了は、上記文献2の安全基準によれば、 通常の離陸操作において、航空機が滑走路か ら浮揚した後、脚上げ操作が完了し高度400フ ィートに達する時点までを言うとされている 。文献2に定められている離陸騒音計測点は 通常は、この離陸完了時点よりさらに飛行 継続し滑走開始点から6.5km前方の飛行場の領 域から出た時点であるので、離陸完了後、速 やかに推力偏向を行うことにより、騒音計測 点付近、及びそれ以降の空港周辺への騒音を 低減させることができる。

 以下に、離陸及び、その後の上昇過程に ける飛行状態と騒音基準計測点における騒 値の時間経過を、推力偏向をしない場合と 推力偏向をした場合との計算例を示す。計 を単純化するために、離陸滑走中は推力偏 を行わず、航空機が滑走路から空中に浮揚( Lift Off)するまでの離陸滑走距離は同じとし 浮揚した時点で瞬時に推力偏向を行った場 を計算する。この結果、浮揚後の上昇経路 は推力偏向を行った方が小さくなり、騒音 準計測点上空を通過するときの高度が下が 、計測点との距離が近くなる結果、騒音は きくなる。実際の推力偏向を行う点は文献2 規定されている通り、脚上げ操作が完了し 高度400フィート以上の点であり、推力偏向 よる上昇経路の低下はより少なくなるので この単純化は推力偏向効果を推算する上で 安全側の計算をすることになる。

 この上昇経路の計算をする計算式は以下に すように、経路にそった質点の運動方程式 用いた。
Wcosγ=L+Tsin(α+δ)  W:重量 L:揚力 D:抵抗 T:推
Tcos(α+δ)-D=Wsinγ  α:迎え角 γ:経路角 δ:推 偏向角

 推力偏向角δを横軸にとって上昇経路角γ の変化を計算した結果を図16に示す。上昇経 角γは推力偏向角δを上下どちらにとっても 低下する。これは前述の計算式の推力Tのコ イン成分が減少し、それに釣り合う上昇経 角γのサイン成分が減少する結果である。

 図17は、横軸を、浮揚時の時間を基準と て、その後の時間経過における航空機の飛 高度を示したものである。推力偏向をした 合は騒音基準計測点、及び騒音最大となる 点での高度が低下し、騒音が増大する可能 を示している。

 図18は、騒音基準計測点から見た排気ジ ットの方向(図15の騒音伝播方向:AZに相当)を したものであるが、推力偏向をした方がこ 角度が大きくなり、騒音の指向性(図13)から 予測されるように騒音が低下する可能性を示 している。

 図19は、これら二つの効果、即ち、推力 向により高度が下がることによる騒音増大 果と、排気ジェットの方向が変わることに る騒音低減効果を総合して騒音計算を行っ 結果を示す。計算例は超音速ビジネスジェ ト機を想定したものである。この結果から 力偏向を行った方が、騒音が低下している がわかる。

 図20は、騒音基準計測点において騒音最 となる離陸開始から約100秒後におけるこれ 二つの効果の割合を棒グラフで示したもの ある。高度が下がることによる騒音増大は 0.9dB、排気ジェットの方向が変わる事による 騒音低下は約-7.6dB、合計値としての騒音低下 は約-6.7dBであり、推力偏向が騒音低下に効果 的であることを示している。すなわち、図20 、環境基準に定められている三つの測定条 である、離陸上昇(図14の(1))、離陸側方(図14 の(2))、及び着陸進入(図14の(3))のうちの離陸 昇における推力偏向の効果を示したもので る。

 他方、離陸側方(図14の(2))においては、推 力偏向の方向が航空機の上下方向であるため 推力偏向角の側方への成分のみが騒音低減に 効くことになり、その効果は小さい。図21は の条件での騒音低減効果を示す棒グラフで るが、約-3.4dBの効果が得られる。

 また、着陸進入(図14の(3))においては、一般 的に電波着陸進入管制が行われている空港で は、航空機は降下角3°の統一された飛行経路 で着陸進入を行っている。この場合、航空機 はその降下角を維持するために、航空機の種 類によって幅はあるが、離陸出力のおよそ50% 程度のエンジン出力を保って降下してくる。 従って音源としてのエンジン騒音は離陸より 小さいが、文献1の環境基準に定められてい 騒音基準計測点が空港に近いところに設定 れており、この基準点上空を通過する航空 の高度は離陸時より低くなり、従って地上 計測される騒音は離陸時より大きくなるこ が多い。
 このような状況で、推力を上方に偏向する 、降下角3°を維持するためのエンジン出力 増大してしまうが、前述の離陸の場合と同 に騒音の指向性により地上での騒音低減が られる。この状況を棒グラフで図22に示す 、推力偏向を行うことで約-8.7dBの騒音低減 得られる。

 環境基準は年々強化されており、2006年1 から新しく製造される航空機は、文献1に示 れる騒音基準値に対して、前述の3つの計測 条件での騒音値の合計がさらに-10dB強化され いる。本発明による騒音低減効果は前述の 算で合計約-19dBであり、その効果は大きい

 上述した通り、推力偏向を行うためには、 下の3つの方法がある。
 エンジン本体に推力偏向機構を組み込ませ 方法(実施例1および2)は、エンジン構造の後 端部を構成する排気ノズルに排気方向を偏向 できる機構を持たせる方法である。

 エンジン本体を回転させる方法(実施例3) 、エンジンを航空機の主翼や胴体に取り付 る構造において、エンジンが回転自由にな 取付方法とその操作機構を持たせる方法で る。

 エンジン後方に偏向装置を取り付ける方 (実施例4)は、搭載されたエンジン後方の機 構造、例えば主翼や胴体の上面にエンジン 排気を上方に偏向できる偏向板を可動式に 載する方法である。

 唯一の実用SSTであるコンコルドが平成15 10月に退役し民間航空輸送機としての超音速 機は存在しない。コンコルドの後継となる250 ~300席の本格的な次世代超音速輸送機は開発 見通しが立っていないが、その前段階とし 8~10席程度の超音速ビジネスジェット機(SSBJ) 20~30席程度の小型SSTの研究が米国のNASAやビ ネス機メーカーの間で進められており、超 速時の巡航性能と離着陸時の騒音低減を両 させうる機体の研究が盛んである。この両 の目処が得られればSSBJあるいはSSTの開発が 現実のものとなってくる可能性が高い。また 、通常の亜音速機の場合でも一般的な騒音低 減機構の他に、本発明を適用することにより さらなる騒音低減が期待され、年々強化され る騒音基準に適合できることが可能となる。