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Patent Searching and Data


Title:
METHOD OF BONDING STEEL MEMBERS, METHOD OF ENHANCING BOND STRENGTH OF BONDED OBJECT COMPRISING STEEL MEMBERS, AND STEEL PRODUCT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/129622
Kind Code:
A1
Abstract:
A method of bonding steel members which comprises the following steps in the following order: a steel member preparation step (S110) in which two steel members each containing chromium are prepared; a bonded-object formation step (S120) in which the two steel members are bonded to each other to form a bonded object; and a bond strength enhancement step (S140) in which the bonded object is heated to a second temperature in the range of 800-1,150°C and then gradually cooled to a third temperature not higher than 600°C to thereby heighten the bond strength of the bonded object. The method is characterized in that in the steel member preparation step (S110), two sintered steel members are prepared as the two steel members, and that in the bonded-object formation step (S120), the two sintered steel members are bonded to each other to form a bonded object.

Inventors:
KITAZAWA TOSHIAKI (JP)
FUJIMORI TAKAYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/057857
Publication Date:
October 30, 2008
Filing Date:
April 09, 2007
Export Citation:
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Assignee:
KITAZAWA TOSHIAKI (JP)
FUJIMORI TAKAYUKI (JP)
International Classes:
B23K20/00; B22D17/22; B23K20/22
Foreign References:
JPS62227597A1987-10-06
JP2006159212A2006-06-22
JPH08281768A1996-10-29
JPH0577063A1993-03-30
JPH071011A1995-01-06
Attorney, Agent or Firm:
MATSUO, Nobutaka et al. (9862-60 Ochiai, Fujimi-machi, Suwa-gu, Nagano 14, JP)
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Claims:
 Crを含有する2つの鉄鋼部材を準備する鉄鋼部材準備工程と、
 前記2つの鉄鋼部材における接合予定面を突き合わせた状態で、前記2つの鉄鋼部材を所定の圧力条件で押圧しながら前記2つの鉄鋼部材を接合可能な第1温度に加熱することにより、前記2つの鉄鋼部材を互いに接合して接合体を形成する接合体形成工程と、
 前記接合体を800℃~1150℃の範囲内にある第2温度に加熱した後、前記接合体を600℃以下の第3温度まで徐冷することにより、前記接合体における接合力を強化する接合力強化工程とをこの順序で含む鉄鋼部材の接合方法であって、
 前記鉄鋼部材準備工程においては、前記2つの鉄鋼部材として、2つの焼結鉄鋼部材を準備し、
 前記接合体形成工程においては、前記2つの焼結鉄鋼部材を互いに接合して接合体を形成することを特徴とする鉄鋼部材の接合方法。
 Crを含有する2つの鉄鋼部材を準備する鉄鋼部材準備工程と、
 前記2つの鉄鋼部材における接合予定面を突き合わせた状態で、前記2つの鉄鋼部材を所定の圧力条件で押圧しながら前記2つの鉄鋼部材を接合可能な第1温度に加熱することにより、前記2つの鉄鋼部材を互いに接合して接合体を形成する接合体形成工程と、
 前記接合体を800℃~1150℃の範囲内にある第2温度に加熱した後、前記接合体を600℃以下の第3温度まで徐冷することにより、前記接合体における接合力を強化する接合力強化工程とをこの順序で含む鉄鋼部材の接合方法であって、
 前記鉄鋼部材準備工程においては、前記2つの鉄鋼部材として、焼結鉄鋼部材と溶製鉄鋼部材とを準備し、
 前記接合体形成工程においては、前記焼結鉄鋼部材と前記溶製鉄鋼部材とを互いに接合して接合体を形成することを特徴とする鉄鋼部材の接合方法。
 Crを含有する2つの鉄鋼部材を準備する鉄鋼部材準備工程と、
 前記2つの鉄鋼部材における接合予定面を突き合わせた状態で、前記2つの鉄鋼部材を所定の圧力条件で押圧しながら前記2つの鉄鋼部材を接合可能な第1温度に加熱することにより、前記2つの鉄鋼部材を互いに接合して接合体を形成する接合体形成工程と、
 前記接合体を800℃~1150℃の範囲内にある第2温度に加熱した後、前記接合体を600℃以下の第3温度まで徐冷することにより、前記接合体における接合力を強化する接合力強化工程とをこの順序で含む鉄鋼部材の接合方法であって、
 前記鉄鋼部材準備工程においては、前記2つの鉄鋼部材として、2つの溶製鉄鋼部材を準備するとともに、介在用の焼結鉄鋼部材をさらに準備し、
 前記接合体形成工程においては、前記2つの溶製鉄鋼部材の間に前記介在用の焼結鉄鋼部材を介在させて前記2つの溶製鉄鋼部材における接合予定面を突き合わせた状態で、前記2つの溶製鉄鋼部材を互いに接合して接合体を形成することを特徴とする鉄鋼部材の接合方法。
 請求項1~3のいずれかに記載の鉄鋼部材の接合方法において、
 前記接合力強化工程においては、前記接合体を前記第2温度に加熱した後、前記第2温度又は前記焼結鉄鋼部材におけるA 1 変態点のうち低い方の温度から600℃に降温するのに5時間以上かける条件で前記第3温度に徐冷することを特徴とする鉄鋼部材の接合方法。
 請求項1~3のいずれかに記載の鉄鋼部材の接合方法において、
 前記接合力強化工程においては、前記接合体を前記第2温度に加熱した後、前記第2温度又は850℃のうち低い方の温度から600℃に降温するのに5時間以上かける条件で前記第3温度に徐冷することを特徴とする鉄鋼部材の接合方法。
 請求項1~3のいずれかに記載の鉄鋼部材の接合方法において、
 前記焼結鉄鋼部材は、冷間金型用鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼又は高速度工具鋼からなる鉄鋼部材であることを特徴とする鉄鋼部材の接合方法。
 請求項2に記載の鉄鋼部材の接合方法において、
 前記焼結鉄鋼部材の600℃における熱膨張率と、前記溶製鉄鋼部材の600℃における熱膨張率との差は、2×10 -6 m/K以下であることを特徴とする鉄鋼部材の接合方法。
 請求項2に記載の鉄鋼部材の接合方法において、
 前記焼結鉄鋼部材におけるCの含有比と、前記溶製鉄鋼部材におけるCの含有比との差は、0.5at%以下であることを特徴とする鉄鋼部材の接合方法。
 Crを含有する2つの鉄鋼部材を準備する鉄鋼部材準備工程と、
 前記2つの鉄鋼部材における接合予定面を突き合わせた状態で、前記2つの鉄鋼部材を所定の圧力条件で押圧しながら前記2つの鉄鋼部材を接合可能な第1温度に加熱することにより、前記2つの鉄鋼部材を互いに接合して接合体を形成する接合体形成工程とをこの順序で含む鉄鋼部材の接合方法であって、
 前記鉄鋼部材準備工程においては、前記2つの鉄鋼部材として、2つの溶製鉄鋼部材を準備するとともに、Ni又はCuを含有する介在用の鉄鋼部材をさらに準備し、
 前記接合体形成工程においては、前記2つの溶製鉄鋼部材の間に前記介在用の鉄鋼部材を介在させて前記2つの溶製鉄鋼部材における接合予定面を突き合わせた状態で、前記介在用の鉄鋼部材が溶融しない温度条件下で前記2つの溶製鉄鋼部材を互いに接合して接合体を形成することを特徴とする鉄鋼部材の接合方法。
 請求項2、3又は9のいずれかに記載の鉄鋼部材の接合方法において、
 前記溶製鉄鋼部材は、熱間金型用鋼、冷間金型用鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、機械構造用合金鋼又は高速度工具鋼からなる鉄鋼部材であることを特徴とする鉄鋼部材の接合方法。
 請求項1~10のいずれかに記載の鉄鋼部材の接合方法において、
 前記接合体形成工程の後に、前記接合体を、前記接合体の金属組織をより均一にすることが可能な第4温度に加熱する金属組織均一化工程をさらに含むことを特徴とする鉄鋼部材の接合方法。
 請求項1~11のいずれかに記載の鉄鋼部材の接合方法において、
 前記2つの鉄鋼部材における前記接合予定面は、平面であることを特徴とする鉄鋼部材の接合方法。
 請求項12に記載の鉄鋼部材の接合方法において、
 前記接合予定面における算術平均粗さRaは、0.2μm以下であることを特徴とする鉄鋼部材の接合方法。
 Crを含有する2つの鉄鋼部材が互いに接合された接合体の接合力を強化する、鉄鋼部材からなる接合体における接合力強化方法であって、
 前記接合体として、2つの焼結鉄鋼部材が互いに接合された接合体を準備する接合体準備工程と、
 前記接合体を800℃~1150℃の範囲内にある第2温度に加熱した後、前記接合体を600℃以下の第3温度まで徐冷することにより、前記接合体における接合力を強化する接合力強化工程とをこの順序で含むことを特徴とする、鉄鋼部材からなる接合体における接合力強化方法。
 Crを含有する2つの鉄鋼部材が互いに接合された接合体の接合力を強化する、鉄鋼部材からなる接合体における接合力強化方法であって、
 前記接合体として、焼結鉄鋼部材と溶製鉄鋼部材とが互いに接合された接合体を準備する接合体準備工程と、
 前記接合体を800℃~1150℃の範囲内にある第2温度に加熱した後、前記接合体を600℃以下の第3温度まで徐冷することにより、前記接合体における接合力を強化する接合力強化工程とをこの順序で含むことを特徴とする、鉄鋼部材からなる接合体における接合力強化方法。
 Crを含有する2つの鉄鋼部材が互いに接合された接合体の接合力を強化する、鉄鋼部材からなる接合体における接合力強化方法であって、
 前記接合体として、2つの溶製鉄鋼部材の間に介在用の焼結鉄鋼部材を介在させた状態で前記2つの溶製鉄鋼部材が互いに接合された接合体を準備する接合体準備工程と、
 前記接合体を800℃~1150℃の範囲内にある第2温度に加熱した後、前記接合体を600℃以下の第3温度まで徐冷することにより、前記接合体における接合力を強化する接合力強化工程とをこの順序で含むことを特徴とする、鉄鋼部材からなる接合体における接合力強化方法。
 請求項1~13のいずれかに記載の鉄鋼部材の接合方法により接合された接合体又は請求項14~16のいずれかに記載の鉄鋼部材からなる接合体における接合力強化方法により接合力が強化された接合体を用いて製造された鉄鋼製品。
 請求項17に記載の鉄鋼製品において、
 前記鉄鋼製品は、成形金型であることを特徴とする鉄鋼製品。
Description:
鉄鋼部材の接合方法、鉄鋼部材 らなる接合体における接合力強化方法及び 鋼製品

 本発明は、鉄鋼部材の接合方法、鉄鋼部 からなる接合体における接合力強化方法及 鉄鋼製品に関する。

 図18は、従来の鉄鋼部材の接合方法を説 するために示すフローチャートである。図19 は、従来の鉄鋼部材の接合方法を説明するた めに示す図である。

 従来の鉄鋼部材の接合方法は、図18及び 19に示すように、2つの鉄鋼部材を準備する 鋼部材準備工程S1010と、2つの鉄鋼部材にお る接合予定面を突き合わせた状態で、2つの 鋼部材を所定の圧力条件で押圧しながら2つ の鉄鋼部材を接合可能な第1温度に加熱する とにより、2つの鉄鋼部材を互いに接合して 合体を形成する接合体形成工程S1020と、接 体を所定の温度条件の下で熱処理すること より接合体における接合力を強化する接合 強化工程S1030とを含む(例えば、特許文献1参 。)。

 このため、従来の鉄鋼部材の接合方法によ ば、溶接補助材を全く使用せずに2つの鉄鋼 部材を接合して接合体を製造することが可能 となる。また、従来の鉄鋼部材の接合方法に よれば、接合体を形成した後に接合力強化工 程S1030を行うことにより、接合体における接 力を強化することが可能となる。
 その結果、従来の鉄鋼部材の接合方法によ ば、プラスチックギアなどの樹脂金型に適 た接合体を製造することが可能となる。

特開2002-59270号公報

 しかしながら、従来の鉄鋼部材の接合方 においては、Crを含有する2つの鉄鋼部材を いに接合して接合体を製造する場合に、十 に高い接合力を得ることができないという 題があることがわかった。

 そこで、本発明は、上記した問題を解決 るためになされたもので、Crを含有する2つ 鉄鋼部材を互いに接合して接合体を製造す 場合にも十分に高い接合力を得ることが可 な鉄鋼部材の接合方法を提供することを目 とする。また、Crを含有する2つの鉄鋼部材 互いに接合された接合体の接合力を十分に くすることが可能な、鉄鋼部材からなる接 体における接合力強化方法を提供すること 目的とする。さらにまた、このような鉄鋼 材の接合方法により形成された接合体又は 鋼部材からなる接合体における接合力強化 法により接合力が強化された接合体を用い 製造された鉄鋼製品を提供することを目的 する。

 なお、本発明の鉄鋼部材の接合方法は、2 つの鉄鋼部材を接合する場合のみに限定され るものではなく、3つ以上の鉄鋼部材を接合 る場合にも適用することが可能である。3つ 上の鉄鋼部材を接合する場合には、3つ以上 の鉄鋼部材のうち互いに接合される2つの鉄 部材に着目すれば、本発明の鉄鋼部材の接 方法を実施することとなる。本発明の鉄鋼 材からなる接合体における接合力強化方法 ついても同様である。

 本発明の発明者らは、上記目的を達成す ため、従来の鉄鋼部材の接合方法において Crを含有する2つの鉄鋼部材を互いに接合し 接合体を製造する場合に十分に高い接合力 得ることができない原因を調査した結果、 の原因は、接合面にCr含有不動態層や空隙 存在することにあるという知見を得た。そ で、本発明の発明者らは、これらの知見に づき、接合面に存在するCr含有不動態層や空 隙を消散させることができれば、接合体の接 合力を十分に高くすることが可能となり上記 問題を解決することができることに想到し、 本発明を完成させるに至った。

(1)すなわち、本発明の鉄鋼部材の接合方法 は、Crを含有する2つの鉄鋼部材を準備する鉄 鋼部材準備工程と、前記2つの鉄鋼部材にお る接合予定面を突き合わせた状態で、前記2 の鉄鋼部材を所定の圧力条件で押圧しなが 前記2つの鉄鋼部材を接合可能な第1温度に 熱することにより、前記2つの鉄鋼部材を互 に接合して接合体を形成する接合体形成工 と、前記接合体を800℃~1150℃の範囲内にあ 第2温度に加熱した後、前記接合体を600℃以 の第3温度まで徐冷することにより、前記接 合体における接合力を強化する接合力強化工 程とをこの順序で含む鉄鋼部材の接合方法で あって、前記鉄鋼部材準備工程においては、 前記2つの鉄鋼部材として、2つの焼結鉄鋼部 を準備し、前記接合体形成工程においては 前記2つの焼結鉄鋼部材を互いに接合して接 合体を形成することを特徴とする。

(2)本発明の鉄鋼部材の接合方法は、Crを含 する2つの鉄鋼部材を準備する鉄鋼部材準備 工程と、前記2つの鉄鋼部材における接合予 面を突き合わせた状態で、前記2つの鉄鋼部 を所定の圧力条件で押圧しながら前記2つの 鉄鋼部材を接合可能な第1温度に加熱するこ により、前記2つの鉄鋼部材を互いに接合し 接合体を形成する接合体形成工程と、前記 合体を800℃~1150℃の範囲内にある第2温度に 熱した後、前記接合体を600℃以下の第3温度 まで徐冷することにより、前記接合体におけ る接合力を強化する接合力強化工程とをこの 順序で含む鉄鋼部材の接合方法であって、前 記鉄鋼部材準備工程においては、前記2つの 鋼部材として、焼結鉄鋼部材と溶製鉄鋼部 とを準備し、前記接合体形成工程において 、前記焼結鉄鋼部材と前記溶製鉄鋼部材と 互いに接合して接合体を形成することを特 とする。

(3)本発明の鉄鋼部材の接合方法は、Crを含 する2つの鉄鋼部材を準備する鉄鋼部材準備 工程と、前記2つの鉄鋼部材における接合予 面を突き合わせた状態で、前記2つの鉄鋼部 を所定の圧力条件で押圧しながら前記2つの 鉄鋼部材を接合可能な第1温度に加熱するこ により、前記2つの鉄鋼部材を互いに接合し 接合体を形成する接合体形成工程と、前記 合体を800℃~1150℃の範囲内にある第2温度に 熱した後、前記接合体を600℃以下の第3温度 まで徐冷することにより、前記接合体におけ る接合力を強化する接合力強化工程とをこの 順序で含む鉄鋼部材の接合方法であって、前 記鉄鋼部材準備工程においては、前記2つの 鋼部材として、2つの溶製鉄鋼部材を準備す とともに、介在用の焼結鉄鋼部材をさらに 備し、前記接合体形成工程においては、前 2つの溶製鉄鋼部材の間に前記介在用の焼結 鉄鋼部材を介在させて前記2つの溶製鉄鋼部 における接合予定面を突き合わせた状態で 前記2つの溶製鉄鋼部材を互いに接合して接 体を形成することを特徴とする。

 このため、上記(1)~(3)のいずれかに記載の 鉄鋼部材の接合方法によれば、接合体形成工 程により形成した接合体を第2温度に加熱し 後、当該接合体を600℃以下の第3温度まで徐 することとしているため、接合面に存在す Cr含有不動態層や空隙は、徐冷に伴って接 体の金属組織が変態する過程で母相の鉄鋼 料中に溶け込んでいき、最終的には接合面 存在するCr含有不動態層や空隙を消散させる ことが可能となる。

 また、上記(1)~(3)のいずれかに記載の鉄鋼 部材の接合方法によれば、2つの鉄鋼部材の ち少なくとも一方の鉄鋼部材に焼結鉄鋼部 を用いて形成した接合体又は2つの溶製鉄鋼 材の間に介在用の焼結鉄鋼部材を介在させ 形成した接合体に対して接合力強化工程を 施することとしているため、後述する実施 からもわかるように、接合体形成工程実施 に接合面に残存することのある空隙を接合 強化工程実施中に消散させることが可能と る。このメカニズムの詳細は不明であるが 接合力強化工程における比較的低い温度範 においても焼結鉄鋼部材に含まれる結晶粒 サブミクロン単位では移動可能であり、そ 結果、焼結鉄鋼部材の結晶粒は、接合力強 工程中に接合面の空隙を埋めるように移動 るためであると推測される。

 その結果、上記(1)~(3)のいずれかに記載の 鉄鋼部材の接合方法は、Crを含有する2つの鉄 鋼部材を互いに接合して接合体を製造する場 合にも十分に高い接合力を得ることが可能な 鉄鋼部材の接合方法となる。

 なお、本明細書において、焼結鉄鋼部材 は、焼結法により得られる鉄鋼材料からな 鉄鋼部材をいう。また、本明細書において 溶製鉄鋼部材とは、溶製法により得られる 鋼材料からなる鉄鋼部材をいう。

(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の鉄鋼部材の 合方法において、前記接合力強化工程にお ては、前記接合体を前記第2温度に加熱した 、前記第2温度又は前記焼結鉄鋼部材におけ るA 1 変態点のうち低い方の温度から600℃に降温す るのに5時間以上かける条件で前記第3温度に 冷することが好ましい。

 このような方法とすることにより、第2温度 又は焼結鉄鋼部材におけるA 1 変態点のうち低い方の温度から600℃の範囲に おいて接合体を極めてゆっくりした条件で徐 冷することとなるため、接合面に存在するCr 有不動態層や空隙は、徐冷に伴って接合体 金属組織が変態する過程で母相の鉄鋼材料 に十分に溶け込んでいき、接合面に存在す Cr含有不動態層や空隙を十分に消散させる とが可能となる。

 この観点から言えば、第2温度又は焼結鉄鋼 部材におけるA 1 変態点のうち低い方の温度から600℃に降温す るのに10時間以上かける条件で第3温度に徐冷 することがより好ましく、第2温度又は焼結 鋼部材におけるA 1 変態点のうち低い方の温度から600℃に降温す るのに15時間以上かける条件で第3温度に徐冷 することがさらに好ましい。

(5)上記(1)~(3)のいずれかに記載の鉄鋼部材 接合方法においては、前記接合力強化工程 おいては、前記接合体を前記第2温度に加熱 た後、前記第2温度又は850℃のうち低い方の 温度から600℃に降温するのに5時間以上かけ 条件で前記第3温度に徐冷することが好まし 。

 このような方法とすることによっても、 2温度又は850℃のうち低い方の温度から600℃ の範囲において接合体を極めてゆっくりした 条件で徐冷することとなるため、接合面に存 在するCr含有不動態層や空隙は、徐冷に伴っ 接合体の金属組織が変態する過程で母相の 鋼材料中に十分に溶け込んでいき、接合面 存在するCr含有不動態層や空隙を十分に消 させることが可能となる。

 この観点から言えば、第2温度又は850℃の うち低い方の温度から600℃に降温するのに10 間以上かける条件で第3温度に徐冷すること がより好ましく、第2温度又は850℃のうち低 方の温度から600℃に降温するのに15時間以上 かける条件で第3温度に徐冷することがさら 好ましい。

 なお、上記(1)~(3)のいずれかに記載の鉄鋼 部材の接合方法において、接合力強化工程に おいては、接合体を前記第2温度に加熱した 、第3温度まで徐冷する間に、800℃~900℃の範 囲内にある第5温度で少なくとも30分間保持す ることが好ましい。

 このような方法とすることにより、接合 を第5温度で保持する間に、接合面に存在す るCr含有不動態層や空隙は接合体の金属組織 変態する過程で母相の鉄鋼材料中に十分に け込んでいき、接合面に存在するCr含有不 態層や空隙を十分に消散させることが可能 なる。

 また、このような方法とすることにより 焼きなまし効果により接合体の硬度を低く て、接合体を機械加工する際の加工性を高 ることが可能となる。

 また、上記(1)~(3)のいずれかに記載の鉄鋼 部材の接合方法においては、第2温度は、830 ~950℃の範囲内にあることがさらに好ましい

 このような方法とすることにより、接合 に存在するCr含有不動態層を十分に消散さ ることが可能となる。

 また、上記(1)~(3)のいずれかに記載の鉄鋼 部材の接合方法においては、第3温度は、550 以下であることが好ましい。

 このような方法とすることにより、接合 の均質性を高めるとともに、接合体の硬度 低くして接合体を機械加工する際の加工性 高めることが可能となる。

 また、上記(1)~(3)のいずれかに記載の鉄鋼 部材の接合方法においては、接合体形成工程 及び接合力強化工程を、真空中又は不活性ガ ス雰囲気中において行うことが好ましい。

 このような方法とすることにより、各熱 理工程における酸素等の活性ガスの存在に 因して発生する悪影響を抑制することが可 となる。

 また、上記(1)~(3)のいずれかに記載の鉄鋼 部材の接合方法においては、接合力強化工程 実施後に、不活性ガス雰囲気下で接合体を冷 却することが好ましい。

 このような方法とすることにより、冷却 程で接合体の表面が酸化して品質が劣化す のを抑制することが可能となる。

(6)上記(1)~(3)のいずれかに記載の鉄鋼部材 接合方法においては、前記焼結鉄鋼部材は 熱間金型用鋼、冷間金型用鋼、マルテンサ ト系ステンレス鋼又は高速度工具鋼からな 鉄鋼部材であることが好ましい。

 このような方法とすることにより、さま まな用途に用いることが可能な接合体を製 することが可能となる。

(7)上記(2)に記載の鉄鋼部材の接合方法におい ては、前記焼結鉄鋼部材の600℃における熱膨 張率と、前記溶製鉄鋼部材の600℃における熱 膨張率との差は、2×10 -6 m/K以下であることが好ましい。

 このような方法とすることにより、接合 分に生じる熱応力を小さくすることが可能 なり、過酷な熱サイクルを受けても破断し くい接合体を製造することが可能となる。

(8)上記(2)に記載の鉄鋼部材の接合方法にお いては、前記焼結鉄鋼部材におけるCの含有 と、前記溶製鉄鋼部材におけるCの含有比と 差は、0.5at%以下であることが好ましい。

 このような方法とすることにより、焼結 鋼部材と溶製鉄鋼部材との間の硬度の差を さくすることで、硬度の差に起因して接合 分に発生する応力を小さくすることが可能 なり、接合部分で破断しにくい接合体を製 することが可能となる。

(9)本発明の鉄鋼部材の接合方法は、Crを含 する2つの鉄鋼部材を準備する鉄鋼部材準備 工程と、前記2つの鉄鋼部材における接合予 面を突き合わせた状態で、前記2つの鉄鋼部 を所定の圧力条件で押圧しながら前記2つの 鉄鋼部材を接合可能な第1温度に加熱するこ により、前記2つの鉄鋼部材を互いに接合し 接合体を形成する接合体形成工程とをこの 序で含む鉄鋼部材の接合方法であって、前 鉄鋼部材準備工程においては、前記2つの鉄 鋼部材として、2つの溶製鉄鋼部材を準備す とともに、Ni又はCuを含有する介在用の鉄鋼 材をさらに準備し、前記接合体形成工程に いては、前記2つの溶製鉄鋼部材の間に前記 介在用の鉄鋼部材を介在させて前記2つの溶 鉄鋼部材における接合予定面を突き合わせ 状態で、前記介在用の鉄鋼部材が溶融しな 温度条件下で前記2つの溶製鉄鋼部材を互い 接合して接合体を形成することを特徴とす 。

 このため、上記(9)に記載の鉄鋼部材の接 方法によれば、Ni又はCuを含有する介在用の 鉄鋼部材を介在させて2つの溶製鉄鋼部材を 合することとしているため、後述する実施 からもわかるように、接合体形成工程実施 に生成することのあるCr含有不動態層や空隙 は、当該接合力形成工程実施中に母相の鉄鋼 材料中に溶け込んでいき、最終的には接合面 にほぼ存在しなくなる。このメカニズムの詳 細は不明であるが、Cr含有不動態層や空隙が 相の鉄鋼材料中に溶け込んでいくのを、介 用の鉄鋼部材に含まれるNi又はCuが媒介して いるものと推測される。

 その結果、上記(9)に記載の鉄鋼部材の接 方法は、Crを含有する2つの鉄鋼部材が互い 接合された接合体の接合力を十分に高くす ことが可能な鉄鋼部材の接合方法となる。

 また、本発明の鉄鋼部材の接合方法によ ば、介在用の鉄鋼部材が溶融しない温度条 下で接合体を形成することとしているため 接合部分における金属組織がじん性の低い 属組織に変化することがなくなり、その結 、耐衝撃性に優れた接合体を製造すること 可能となる。

 なお、上記(9)に記載の鉄鋼部材の接合方 においては、介在用の鉄鋼部材におけるNi はCuの含有量は、5at%~30at%であることが好ま い。

 Ni又はCuの含有量が30at%を超えると、介在 の鉄鋼部材の機械的強度が低下するため接 部分における機械的強度も低下してしまう らである。一方、Ni又はCuの含有量が5at%未 になると、十分に高い接合力を得ることが 難となるからである。

 上記(1)~(9)のいずれかに記載の鉄鋼部材の 接合方法においては、第1温度は、850℃~1150℃ の範囲内にあることが好ましい。

 このような方法とすることにより、所定 圧力条件で押圧しながら2つの鉄鋼部材を接 合して接合体を形成することが可能となる。

 また、上記(1)~(9)のいずれかに記載の鉄鋼 部材の接合方法においては、接合体形成工程 実施後に、接合体を徐冷することが好ましい 。

 このような方法とすることにより、加圧 より生じる接合体の応力歪の発生を抑制し 均質性の高い接合体を形成することが可能 なる。

(10)上記(2)、(3)又は(9)のいずれかに記載の 鋼部材の接合方法においては、前記溶製鉄 部材は、熱間金型用鋼、冷間金型用鋼、マ テンサイト系ステンレス鋼、機械構造用合 鋼又は高速度工具鋼からなる鉄鋼部材であ ことが好ましい。

 このような方法とすることにより、さま まな用途に用いることが可能な接合体を製 することが可能となる。

(11)上記(1)~(10)のいずれかに記載の鉄鋼部材 の接合方法においては、前記接合体形成工程 の後に、前記接合体を、前記接合体の金属組 織をより均一にすることが可能な第4温度に 熱する金属組織均一化工程をさらに含むこ が好ましい。

 このような方法とすることにより、接合 形成工程を経て不均一な状態となっている 属組織をより均一にすることが可能となる め、さらに均質性の高い接合体を形成する とが可能となる。

 上記(11)に記載の鉄鋼部材の接合方法にお いては、第4温度は、1000℃~1150℃の範囲内に ることが好ましい。

 このような方法とすることにより、接合 形成工程を経て不均一な状態となっている 属組織をさらに均一にすることが可能とな 。

 また、上記(11)に記載の鉄鋼部材の接合方 法においては、金属組織均一化工程終了後に 、接合体をMs点まで急冷し、その後接合体を 冷することが好ましい。

 このような方法とすることにより、焼き れ効果により、接合体の硬度を高くするこ で、機械的強度が高く高品質の接合体を形 することが可能となる。

(12)上記(1)~(11)のいずれかに記載の鉄鋼部材 の接合方法においては、前記2つの鉄鋼部材 おける前記接合予定面は、平面であること 好ましい。

 このような方法とすることにより、接合 定面を高精度に加工することで2つの鉄鋼部 材を突き当てたときの鉄鋼部材間の密着度を 高めて、十分に高い接合力を得ることが可能 となる。

(13)上記(12)に記載の鉄鋼部材の接合方法に いては、前記接合予定面における算術平均 さRaは、0.2μm以下であることが好ましい。

 このような方法とすることにより、2つの 鉄鋼部材における接合予定面同士の間隔が平 均で0.4μm以下となる状態で接合体形成工程を 実施することとなり、また、2つの鉄鋼部材 おける接合予定面同士の間隔が平均で0.4μm 下となる状態で形成された接合体(言い換え と、接合面に残存することのある空隙が極 て小さい接合体。)に対して接合力強化工程 を実施することとなることから、十分に高い 接合力を得ることが可能となる。

(14)本発明の鉄鋼部材からなる接合体にお る接合力強化方法は、Crを含有する2つの鉄 部材が互いに接合された接合体の接合力を 化する、鉄鋼部材からなる接合体における 合力強化方法であって、前記接合体として 2つの焼結鉄鋼部材が互いに接合された接合 を準備する接合体準備工程と、前記接合体 800℃~1150℃の範囲内にある第2温度に加熱し 後、前記接合体を600℃以下の第3温度まで徐 冷することにより、前記接合体における接合 力を強化する接合力強化工程とをこの順序で 含むことを特徴とする。

(15)本発明の鉄鋼部材からなる接合体にお る接合力強化方法は、Crを含有する2つの鉄 部材が互いに接合された接合体の接合力を 化する、鉄鋼部材からなる接合体における 合力強化方法であって、前記接合体として 焼結鉄鋼部材と溶製鉄鋼部材とが互いに接 された接合体を準備する接合体準備工程と 前記接合体を800℃~1150℃の範囲内にある第2 度に加熱した後、前記接合体を600℃以下の 3温度まで徐冷することにより、前記接合体 おける接合力を強化する接合力強化工程と この順序で含むことを特徴とする。

(16)本発明の鉄鋼部材からなる接合体にお る接合力強化方法は、Crを含有する2つの鉄 部材が互いに接合された接合体の接合力を 化する、鉄鋼部材からなる接合体における 合力強化方法であって、前記接合体として 2つの溶製鉄鋼部材の間に介在用の焼結鉄鋼 材を介在させた状態で前記2つの溶製鉄鋼部 材が互いに接合された接合体を準備する接合 体準備工程と、前記接合体を800℃~1150℃の範 内にある第2温度に加熱した後、前記接合体 を600℃以下の第3温度まで徐冷することによ 、前記接合体における接合力を強化する接 力強化工程とをこの順序で含むことを特徴 する。

 このため、上記(14)~(16)のいずれかに記載 鉄鋼部材の接合方法によれば、接合体を第2 温度に加熱した後、当該接合体を600℃以下の 第3温度まで徐冷することとしているため、 合面に存在するCr含有不動態層や空隙は、徐 冷に伴って接合体の金属組織が変態する過程 で母相の鉄鋼材料中に溶け込んでいき、最終 的には接合面に存在するCr含有不動態層や空 を消散させることが可能となる。

 また、上記(14)~(16)のいずれかに記載の鉄 部材の接合方法によれば、2つの鉄鋼部材の うち少なくとも一方の鉄鋼部材に焼結鉄鋼部 材を用いて接合した接合体又は2つの溶製鉄 部材の間に介在用の焼結鉄鋼部材を介在さ て形成した接合体に対して接合力強化工程 実施することとしているため、接合体形成 程実施後に接合面に残存することのある空 を接合力強化工程実施中に消散させること 可能となる。このメカニズムの詳細は不明 あるが、接合力強化工程における比較的低 温度範囲においても焼結鉄鋼部材に含まれ 結晶粒はサブミクロン単位では移動可能で り、その結果、焼結鉄鋼部材の結晶粒は、 合力強化工程中に接合面の空隙を埋めるよ に移動するためであると推測される。

 その結果、上記(14)~(16)のいずれかに記載 鉄鋼部材からなる接合体における接合力強 方法は、Crを含有する2つの鉄鋼部材が互い 接合された接合体の接合力を十分に高くす ことが可能な、鉄鋼部材からなる接合体に ける接合力強化方法となる。

(17)本発明の鉄鋼製品は、上記(1)~(13)のいず れかに記載の鉄鋼部材の接合方法により形成 された接合体又は上記(14)~(16)のいずれかに記 載の鉄鋼部材からなる接合体における接合力 強化方法により接合力が強化された接合体を 用いて製造された鉄鋼製品である。

 このため、本発明の鉄鋼製品は、十分に い機械的強度を有する鉄鋼製品となるため さまざまな用途に用いることが可能な鉄鋼 品となる。

 鉄鋼製品としては、各種成形金型、各種 具、各種構造部材等を例示することができ 。

(18)本発明の鉄鋼製品は、成形金型である 合に特に効果がある。

 ところで、例えばダイカスト金型や樹脂 型のような成形金型においては、熱交換用 体流路を内部に含む構造が要望されること あり、このよう場合に、このような成形金 を単一の鉄鋼部材を用いて製造するのは極 て困難である。これに対して、本発明の鉄 製品(成形金型)によれば、本発明の鉄鋼部 の接合方法により形成された接合体又は本 明の鉄鋼部材からなる接合体における接合 強化方法により接合力が強化された接合体 用いて製造された鉄鋼製品(成形金型)である ため、熱交換用媒体流路を内部に含む構造を 容易に実現することが可能となる。

実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方法を 説明するために示すフローチャートである。 実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方法を 説明するために示す図である。 実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方法を 説明するために示す図である。 接合部分の断面電子顕微鏡写真である 実施形態2に係る鉄鋼部材の接合方法を 説明するために示す図である。 接合部分の断面電子顕微鏡写真である 実施形態3に係る鉄鋼部材の接合方法を 説明するために示す図である。 接合部分の断面電子顕微鏡写真である 実施形態4に係る鉄鋼部材の接合方法を 説明するために示すフローチャートである。 実施形態4に係る鉄鋼部材の接合方法 説明するために示す図である。 実施形態4に係る鉄鋼部材の接合方法 説明するために示す図である。 接合部分の断面電子顕微鏡写真である 。 実施形態5に係る鉄鋼部材の接合方法 説明するために示す図である。 実施形態6に係る鉄鋼部材の接合方法 説明するために示す図である。 実施形態7に係る鉄鋼部材の接合方法 説明するために示す図である。 実施形態8に係る鉄鋼部材の接合方法 説明するために示す図である。 実施形態9に係る鉄鋼部材の接合方法 説明するために示す図である。 従来の鉄鋼部材の接合方法を説明する ために示すフローチャートである。 従来の鉄鋼部材の接合方法を説明する ために示す図である。

 以下、本発明の鉄鋼部材の接合方法、鉄 部材からなる接合体における接合力強化方 及び鉄鋼製品について、図に示す実施の形 に基づいて説明する。

[実施形態1]
 実施形態1は、本発明の鉄鋼部材の接合方法 を説明するための実施形態である。

 図1は、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合 法を説明するために示すフローチャートで る。図2は、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合 方法を説明するために示す図である。図2中 横軸は時間を示し、縦軸は温度を示す。

 図3は、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合 法を説明するために示す図である。図3(a1)は 接合体準備工程S110を説明するために示す図 あり、図3(b1)は接合体形成工程S120を説明す ために示す図であり、図3(c1)は金属組織均一 化工程S130を説明するために示す図であり、 3(d1)及び図3(e1)は接合力強化工程S140を説明す るために示す図であり、図3(a2)~図3(e2)は図3(a1 )~図3(e1)における領域Aの部分拡大図である。

 なお、Cr含有不動態層は、通常の断面電 顕微鏡写真において視認できるものではな が、理解を容易にするために、図3(b2)~図3(d2) においてはCr含有不動態層142を網掛化して示 こととする。

 実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方法は、 図1に示すように、鉄鋼部材準備工程S110と、 合体形成工程S120と、金属組織均一化工程S13 0と、接合力強化工程S140とをこの順序で含む

1.接合体準備工程
 接合体準備工程S110は、Crを含有する2つの鉄 鋼部材を準備する工程である(図3(a1)参照。)

 Crを含有する2つの鉄鋼部材としては、焼 法により得られる鉄鋼材料(ウッデホルム株 式会社製、ELMAX。)からなる2つの焼結鉄鋼部 110,120を用いる。2つの焼結鉄鋼部材110,120の 状は、それぞれ円柱形状(20mmφ×20mmL)である 2つの焼結鉄鋼部材110,120における接合予定面 112,122は、平面であり、接合予定面112,122の算 平均粗さRaは、0.1μmである。

2.接合体形成工程
 接合体形成工程S120は、2つの焼結鉄鋼部材11 0,120における接合予定面112,122を突き合わせた 状態で、2つの焼結鉄鋼部材110,120を所定の圧 条件で押圧しながら、2つの焼結鉄鋼部材110 ,120を接合可能な第1温度T 1 (例えば、850℃~1150℃(図2においては1070℃))に 熱することにより、2つの焼結鉄鋼部材110,12 0を互いに接合して接合体100を形成する工程 ある(図3(b1)参照。)。

 接合体形成工程S120においては、複数の接合 対象部材にパルス電流を流して当該複数の接 合対象部材を接合するパルス通電接合装置( えば、特許第3548509号公報参照。)を用いて接 合体100の形成を行う。2つの焼結鉄鋼部材110,1 20の押圧は、油圧を用いて例えば10MPaの圧力 件で行う。2つの焼結鉄鋼部材110,120の加熱は 、2つの焼結鉄鋼部材110,120にパルス通電する とにより行う。第1温度T 1 における保持時間(第1熱処理時間t 1 )は30分間とする(図2参照。)。接合体形成工程 S120実施後には、接合体100を室温まで徐冷す 。

3.金属組織均一化工程
 金属組織均一化工程S130は、接合体100を、接 合体100の金属組織をより均一にすることが可 能な第4温度T 4 (例えば、1000℃~1150℃(図2においては1040℃))に 加熱する工程である(図3(c1)参照。)。

 金属組織均一化工程S130においては、真空炉 を用いて接合体100の加熱を行う。第4温度T 4 における保持時間(第4熱処理時間t 4 )は1時間(図2参照。)である。金属組織均一化 程S130実施後には、接合体100をMs点まで急冷 、その後接合体100を徐冷する。

4.接合体強化工程
 接合力強化工程S140は、接合体100を800℃~1150 の範囲内にある第2温度T 2 (図2においては950℃。)に加熱した後、接合体 100を、850℃から600℃に降温するのに第3熱処 時間t 3 (図2においては10時間。)かける条件で600℃以 の第3温度T 3 (図2においては500℃。)まで徐冷することによ り、接合体100における接合力を強化する工程 である。

 接合力強化工程S140においては、真空炉を用 いて接合体100の加熱を行う。第2温度T 2 における保持時間(第2熱処理時間t 2 )は2時間とする(図2参照。)。接合力強化工程S 140実施後には、不活性ガス雰囲気下(例えば N 2 ガス雰囲気下。)で接合体100を冷却する。

 以上のような工程を含む実施形態1に係る鉄 鋼部材の接合方法によれば、接合体形成工程 S120により形成した接合体100を第2温度T 2 に加熱した後、接合体100を600℃以下の第3温 T 3 まで徐冷することとしているため、接合面140 に存在するCr含有不動態層142や空隙144は、徐 に伴って接合体100の金属組織が変態する過 で母相の鉄鋼材料中に溶け込んでいき(図3(c 2)及び図3(d2)参照。)、最終的には接合面140に 在するCr含有不動態層142や空隙144を消散さ ることが可能となる(図3(e2)参照。)。

 また、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方 法によれば、2つの焼結鉄鋼部材110,120を用い 形成した接合体100に対して接合力強化工程S 140を実施することとしているため、後述する 実施例1からもわかるように、接合体形成工 S120実施後に接合面140に残存することのある 隙144を接合力強化工程S140実施中に消散させ ることが可能となる。

 その結果、実施形態1に係る鉄鋼部材の接 合方法は、Crを含有する2つの鉄鋼部材(2つの 結鉄鋼部材110,120)を互いに接合して接合体 製造する場合にも十分に高い接合力を得る とが可能な鉄鋼部材の接合方法となる。

 また、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方法 によれば、接合力強化工程S140は、接合体100 第2温度T 2 に加熱した後、850℃から600℃に降温するのに 5時間以上かける条件で第3温度T 3 に徐冷することとしているため、接合面140に 存在するCr含有不動態層142や空隙144は、徐冷 伴って接合体100の金属組織が変態する過程 母相の鉄鋼材料中に十分に溶け込んでいき 接合面140に存在するCr含有不動態層142や空 144を十分に消散させることが可能となる。

 また、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方 法によれば、接合体形成工程S120及び接合力 化工程S140を、真空中で行うこととしている め、各熱処理工程における酸素等の活性ガ の存在に起因して発生する悪影響を抑制す ことが可能となる。

 また、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方 法においては、接合力強化工程S140実施後に 不活性ガス雰囲気下で接合体100を冷却する ととしているため、冷却過程で接合体100の 面が酸化して品質が劣化するのを抑制する とが可能となる。

 また、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方法 によれば、第1温度T 1 は、850℃~1150℃の範囲内にあるため、所定の 力条件で押圧しながら2つの焼結鉄鋼部材110 ,120を接合して接合体100を形成することが可 となる。

 また、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方 法によれば、接合体形成工程S120実施後に、 合体100を徐冷することとしているため、加 により生じる接合体100の応力歪の発生を抑 して均質性の高い接合体100を形成すること 可能となる。

 また、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方 法によれば、接合体形成工程S120の後に金属 織均一化工程S130を実施することとしている め、接合体形成工程S120を経て不均一な状態 となっている金属組織をより均一にすること が可能となり、均質性の高い接合体100を形成 することが可能となる。

 また、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方法 によれば、第4温度T 4 は、1000℃~1150℃の範囲内にあるため、接合体 形成工程S120を経て不均一な状態となってい 金属組織をさらに均一にすることが可能と る。

 また、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方 法によれば、金属組織均一化工程S130終了後 、接合体100をMs点まで急冷し、その後接合体 100を徐冷することとしているため、焼き入れ 効果により、接合体100の硬度を高くすること で、機械的強度が高く高品質の接合体を形成 することが可能となる。

 また、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方 法によれば、2つの焼結鉄鋼部材110,120におけ 接合予定面112,122は平面であるため、接合予 定面112,122を高精度に加工することで2つの焼 鉄鋼部材110,120を突き当てたときの鉄鋼部材 間の密着度を高めて、十分に高い接合力を得 ることが可能となる。

 また、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方法 によれば、接合予定面112,122における算術平 粗さRaは、0.2μm以下であるため、
 2つの焼結鉄鋼部材110,120における接合予定 112,122同士の間隔が平均で0.4μm以下となる状 で接合体形成工程S120を実施することとなり 、また、2つの焼結鉄鋼部材110,120における接 予定面112,122同士の間隔が平均で0.4μm以下と なる状態で形成された接合体100(言い換える 、接合面140に残存することのある空隙144が めて小さい接合体。)に対して接合力強化工 S140を実施することとなることから、十分に 高い接合力を得ることが可能となる。

[実施例1]
 実施例1は、実施形態1に係る鉄鋼部材の接 方法の効果を確認するための実施例である 実施例1においては、実施形態1に係る鉄鋼部 材の接合方法により形成された接合体100にお ける接合部分の断面電子顕微鏡写真を観察す ることにより、接合面140に存在する空隙144が 消散しているかどうかを確認した。

 図4は、接合部分の断面電子顕微鏡写真で ある。図4(a)は実施例1に係る鉄鋼部材の接合 法により形成された接合体100における接合 分の断面電子顕微鏡写真であり、図4(b)は比 較例1に係る鉄鋼部材の接合方法により形成 れた接合体(図示せず。)における接合部分の 断面電子顕微鏡写真である。

 実施例1に係る鉄鋼部材の接合方法は、実施 形態1に係る鉄鋼部材の接合方法と同様に、 鋼部材準備工程S110と、接合体形成工程S120と 、金属組織均一化工程S130と、接合力強化工 S140とをこの順序で含む鉄鋼部材の接合方法 ある。
 一方、比較例1に係る鉄鋼部材の接合方法は 、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方法と基 的には同じ鉄鋼部材の接合方法であるが、 合力強化工程S140を含まない点で実施例1に係 る鉄鋼部材の接合方法の場合と異なる。

 図4を参照すれば、比較例1に係る鉄鋼部材 接合方法により形成された接合体において 接合面に空隙が存在するが、実施例1に係る 鋼部材の接合方法により形成された接合体1 00においては、接合面140に空隙が存在しない とがわかる。
 このことにより、実施例1に係る鉄鋼部材の 接合方法により形成された接合体100において は、接合面140に存在する空隙140が消散してい ることが確認できた。

[実施形態2]
 実施形態2は、本発明の鉄鋼部材の接合方法 を説明するための実施形態である。

 図5は、実施形態2に係る鉄鋼部材の接合 法を説明するために示す図である。図5(a1)は 接合体準備工程S210を説明するために示す図 あり、図5(b1)は接合体形成工程S220を説明す ために示す図であり、図5(c1)は金属組織均一 化工程S230を説明するために示す図であり、 5(d1)及び図5(e1)は接合力強化工程S240を説明す るために示す図であり、図5(a2)~図5(e2)は図5(a1 )~図5(e1)における領域Aの部分拡大図である。

 実施形態2に係る鉄鋼部材の接合方法は、 基本的には実施形態1に係る鉄鋼部材の接合 法と同様の工程を含むが、Crを含有する2つ 鉄鋼部材のうち一方の鉄鋼部材が溶製鉄鋼 材である点で実施形態1に係る鉄鋼部材の接 方法とは異なる。

 すなわち、実施形態2に係る鉄鋼部材の接 合方法においては、鉄鋼部材準備工程S210に いては、図5(a1)に示すように、Crを含有する2 つの鉄鋼部材として焼結鉄鋼部材210と溶製鉄 鋼部材220とを準備し、接合体形成工程S220に いては、図5(b1)に示すように、焼結鉄鋼部材 210と溶製鉄鋼部材220とを互いに接合して接合 体200を形成することとしている。

 焼結鉄鋼部材210としては、焼結法により られる鉄鋼材料(ウッデホルム株式会社製、 ELMAX。)からなる焼結鉄鋼部材を用いる。また 、溶製鉄鋼部材220としては、溶製法により得 られる鉄鋼材料(熱間金型用鋼SKD61。)からな 溶製鉄鋼部材を用いる。

 なお、焼結鉄鋼部材210の600℃における熱膨 率は約12.5×10 -6 m/Kであり、溶製鉄鋼部材220の600℃における熱 膨張率は約13.8×10 -6 m/Kである。また、焼結鉄鋼部材210におけるC 含有比は1.7at%であり、溶製鉄鋼部材220にお るCの含有比は1.8at%である。

 このように、実施形態2に係る鉄鋼部材の接 合方法は、Crを含有する2つの鉄鋼部材のうち 一方の鉄鋼部材が溶製鉄鋼部材である点で実 施形態1に係る鉄鋼部材の接合方法の場合と 異なるが、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合 法の場合と同様に、接合体形成工程S220によ り形成した接合体200を第2温度T 2 に加熱した後、接合体200を600℃以下の第3温 T 3 まで徐冷することとしているため、接合面240 に存在するCr含有不動態層242や空隙244は、徐 に伴って接合体200の金属組織が変態する過 で母相の鉄鋼材料中に溶け込んでいき(図5(c 2)及び図5(d2)参照。)、最終的には接合面240に 在するCr含有不動態層242や空隙244を消散さ ることが可能となる(図5(e2)参照。)。

 また、実施形態2に係る鉄鋼部材の接合方 法によれば、実施形態1に係る鉄鋼部材の接 方法の場合と同様に、焼結鉄鋼部材210及び 製鉄鋼部材220を用いて形成した接合体200に して接合力強化工程S240を実施することとし いるため、後述する実施例2からもわかるよ うに、接合体形成工程S220実施後に接合面240 残存することのある空隙244を接合力強化工 S240実施中に消散させることが可能となる。

 その結果、実施形態2に係る鉄鋼部材の接 合方法は、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合 法の場合と同様に、Crを含有する2つの鉄鋼 材(焼結鉄鋼部材210及び溶製鉄鋼部材220)を互 いに接合して接合体を製造する場合にも十分 に高い接合力を得ることが可能な鉄鋼部材の 接合方法となる。

 また、実施形態2に係る鉄鋼部材の接合方法 によれば、焼結鉄鋼部材210の600℃における熱 膨張率と、溶製鉄鋼部材220の600℃における熱 膨張率との差は、2×10 -6 m/K以下であるため、接合部分に生じる熱応力 を小さくすることが可能となり、過酷な熱サ イクルを受けても破断しにくい接合体200を製 造することが可能となる。

 また、実施形態2に係る鉄鋼部材の接合方 法によれば、焼結鉄鋼部材210におけるCの含 比と、溶製鉄鋼部材220におけるCの含有比と 差は0.5at%以下であるため、焼結鉄鋼部材210 溶製鉄鋼部材220との間の硬度の差を小さく ることで、硬度の差に起因して接合部分に 生する応力を小さくすることが可能となり 接合部分で破断しにくい接合体200を製造す ことが可能となる。

 なお、実施形態2に係る鉄鋼部材の接合方 法は、Crを含有する2つの鉄鋼部材のうち一方 の鉄鋼部材が溶製鉄鋼部材である点以外は実 施形態1に係る鉄鋼部材の接合方法と同様の 程を含むため、実施形態1に係る鉄鋼部材の 合方法が有する効果のうち該当する効果を のまま有する。

[実施例2]
 実施例2は、実施形態2に係る鉄鋼部材の接 方法の効果を確認するための実施例である 実施例2においては、実施形態2に係る鉄鋼部 材の接合方法により形成された接合体200にお ける接合部分の断面電子顕微鏡写真を観察す ることにより、接合面240に存在する空隙244が 消散しているかどうかを確認した。

 図6は、接合部分の断面電子顕微鏡写真で ある。図6(a)は実施例2に係る鉄鋼部材の接合 法により形成された接合体200における接合 分の断面電子顕微鏡写真であり、図6(b)は比 較例2に係る鉄鋼部材の接合方法により形成 れた接合体(図示せず。)における接合部分の 断面電子顕微鏡写真である。

 実施例2に係る鉄鋼部材の接合方法は、実施 形態2に係る鉄鋼部材の接合方法と同様に、 鋼部材準備工程S210と、接合体形成工程S220と 、金属組織均一化工程S230と、接合力強化工 S240とをこの順序で含む鉄鋼部材の接合方法 ある。
 一方、比較例2に係る鉄鋼部材の接合方法は 、実施形態2に係る鉄鋼部材の接合方法と基 的には同じ鉄鋼部材の接合方法であるが、 合力強化工程S240を含まない点で実施例2に係 る鉄鋼部材の接合方法の場合と異なる。

 図6を参照すれば、比較例2に係る鉄鋼部材 接合方法により形成された接合体において 接合面に空隙が存在するが、実施例2に係る 鋼部材の接合方法により形成された接合体2 00においては、接合面240に空隙が存在しない とがわかる。
 このことにより、実施例2に係る鉄鋼部材の 接合方法により形成された接合体200において は、接合面240に存在する空隙244が消散してい ることが確認できた。

[実施形態3]
 実施形態3は、本発明の鉄鋼部材の接合方法 を説明するための実施形態である。

 図7は、実施形態3に係る鉄鋼部材の接合 法を説明するために示す図である。図7(a1)は 接合体準備工程S310説明するために示す図で り、図7(b1)は接合体形成工程S320を説明する めに示す図であり、図7(c1)は金属組織均一化 工程S330を説明するために示す図であり、図7( d1)及び図7(e1)は接合力強化工程S340を説明する ために示す図であり、図7(a2)~図7(e2)は図7(a1)~ 7(e1)における領域Aの部分拡大図である。

 実施形態3に係る鉄鋼部材の接合方法は、 基本的には実施形態1に係る鉄鋼部材の接合 法と同様の工程を含むが、Crを含有する2つ 鉄鋼部材に溶製鉄鋼部材を用いるとともに 2つの溶製鉄鋼部材の間に介在用の焼結鉄鋼 材を介在させて接合体形成工程を行う点で 施形態1に係る鉄鋼部材の接合方法とは異な る。

 すなわち、実施形態3に係る鉄鋼部材の接 合方法において、鉄鋼部材準備工程S310にお ては、図7(a1)に示すように、Crを含有する2つ の鉄鋼部材として2つの溶製鉄鋼部材310,320を 備するとともに介在用の焼結鉄鋼部材330を 備し、接合体形成工程S320においては、図7(b 1)に示すように、2つの溶製鉄鋼部材310,320の に介在用の焼結鉄鋼部材330を介在させて2つ 溶製鉄鋼部材310,320における接合予定面312,32 2を突き合わせた状態で、2つの溶製鉄鋼部材3 10,320を互いに接合して接合体300を形成するこ ととしている。

 実施形態3に係る鉄鋼部材の接合方法にお いては、2つの溶製鉄鋼部材310,320として、溶 法により得られる鉄鋼材料(熱間金型用鋼SKD 61。)からなる溶製鉄鋼部材を用いる。また、 介在用の焼結鉄鋼部材330として、焼結法によ り得られる鉄鋼材料(ウッデホルム株式会社 、ELMAX。)からなる焼結鉄鋼部材を用いる。

 このように、実施形態3に係る鉄鋼部材の接 合方法は、Crを含有する2つの鉄鋼部材に溶製 鉄鋼部材を用いるとともに、2つの溶製鉄鋼 材の間に介在用の焼結鉄鋼部材を介在させ 接合体形成工程を行う点で実施形態1に係る 鋼部材の接合方法の場合とは異なるが、実 形態1に係る鉄鋼部材の接合方法の場合と同 様に、接合体形成工程S320により形成した接 体300を第2温度T 2 に加熱した後、接合体300を600℃以下の第3温 T 3 まで徐冷することとしているため、接合面340 a,340bに存在するCr含有不動態層342や空隙344は 徐冷に伴って接合体300の金属組織が変態す 過程で母相の鉄鋼材料中に溶け込んでいき( 図7(b2)~図7(d2)参照。)、最終的には接合面340a,3 40bに存在するCr含有不動態層342や空隙344を消 させることが可能となる(図7(e2)参照。)。

 また、実施形態3に係る鉄鋼部材の接合方 法によれば、2つの溶製鉄鋼部材310,320の間に 在用の焼結鉄鋼部材330を介在させて形成し 接合体300に対して接合力強化工程S340を実施 することとしているため、後述する実施例3 らもわかるように、接合体形成工程S320実施 に接合面340a,340bに残存することのある空隙3 44を接合力強化工程S340実施中に消散させるこ とが可能となる。

 その結果、実施形態3に係る鉄鋼部材の接 合方法は、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合 法の場合と同様に、Crを含有する2つの鉄鋼 材(2つの溶製鉄鋼部材310,320)を互いに接合し 接合体を製造する場合にも十分に高い接合 を得ることが可能な鉄鋼部材の接合方法と る。

 なお、実施形態3に係る鉄鋼部材の接合方 法は、Crを含有する2つの鉄鋼部材に溶製鉄鋼 部材を用いるとともに、2つの溶製鉄鋼部材 間に介在用の焼結鉄鋼部材を介在させて接 体形成工程を行う点以外は実施形態1に係る 鋼部材の接合方法と同様の工程を含むため 実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方法が有す る効果のうち該当する効果をそのまま有する 。

[実施例3]
 実施例3は、実施形態3に係る鉄鋼部材の接 方法の効果を確認するための実施例である 実施例3においては、実施形態3に係る鉄鋼部 材の接合方法により形成された接合体300にお ける接合部分の断面電子顕微鏡写真を観察す ることにより、接合面340a,340bに存在する空隙 344が消散しているかどうかを確認した。

 図8は、接合部分の断面電子顕微鏡写真で ある。図8(a)は実施例3に係る鉄鋼部材の接合 法により形成された接合体300における接合 分の断面電子顕微鏡写真であり、図8(b)は比 較例3に係る鉄鋼部材の接合方法により形成 れた接合体(図示せず。)における接合部分の 断面電子顕微鏡写真である。なお、図8にお ては、2つの溶製鉄鋼部材310,320のうち一方の 溶製鉄鋼部材310と介在用の焼結鉄鋼部材330と の接合部分を図示している。

 実施例3に係る鉄鋼部材の接合方法は、実施 形態3に係る鉄鋼部材の接合方法と同様に、 鋼部材準備工程S310と、接合体形成工程S320と 、金属組織均一化工程S330と、接合力強化工 S340とをこの順序で含む鉄鋼部材の接合方法 ある。
 一方、比較例3に係る鉄鋼部材の接合方法は 、実施形態3に係る鉄鋼部材の接合方法と基 的には同じ鉄鋼部材の接合方法であるが、 合力強化工程S340を含まない点で実施例3に係 る鉄鋼部材の接合方法の場合と異なる。

 図8を参照すれば、比較例3に係る鉄鋼部材 接合方法により形成された接合体において 接合面に空隙が存在するが、実施例3に係る 鋼部材の接合方法により形成された接合体3 00においては接合面340a(図8(a)ではわからない 、接合面340bの場合も同様。)に空隙344が存 しないことがわかる。
 このことにより、実施例3に係る鉄鋼部材の 接合方法により形成された接合体300において は、接合面340a,340bに存在する空隙344が消散し ていることが確認できた。

[実施形態4]
 実施形態4は、本発明の鉄鋼部材の接合方法 を説明するための実施形態である。

 図9は、実施形態4に係る鉄鋼部材の接合 法を説明するために示すフローチャートで る。図10は、実施形態4に係る鉄鋼部材の接 方法を説明するために示す図である。図10中 、横軸は時間を示し、縦軸は温度を示す。

 図11は、実施形態4に係る鉄鋼部材の接合 法を説明するために示す図である。図11(a1) 接合体準備工程S410を説明するために示す図 であり、図11(b1)及び図11(c1)は接合体形成工程 S420を説明するために示す図であり、図11(d1) 金属組織均一化工程S430を説明するために示 図であり、図11(a2)~図11(d2)は図11(a1)~図11(d1) おける領域Aの部分拡大図である。

 実施形態4に係る鉄鋼部材の接合方法は、 図9に示すように、鉄鋼部材準備工程S410と、 合体形成工程S420と、金属組織均一化工程S43 0とをこの順序で含む。

1.接合体準備工程
 接合体準備工程S410は、Crを含有する2つの鉄 鋼部材を準備するとともに、Niを含有する介 用の鉄鋼部材をさらに準備する工程である( 図11(a)参照。)。

 Crを含有する2つの鉄鋼部材としては、溶製 により得られる鉄鋼材料(熱間金型用鋼SKD61 )からなる2つの溶製鉄鋼部材410,420を用いる 2つの溶製鉄鋼部材410,420の形状は、それぞ 円柱形状(20mmφ×20mmL)である。2つの溶製鉄鋼 材410,420における接合予定面412,422は平面で る。2つの溶製鉄鋼部材410,420における接合予 定面412,422の算術平均粗さRaは、0.1μmである。
 また、Niを含有する介在用の鉄鋼部材とし は、ステンレス鋼SUS316Lからなる鉄鋼部材430 用いる。介在用の鉄鋼部材430におけるNiの 有量は、14at%である。介在用の鉄鋼部材430の 形状は、円盤形状(20mmφ×0.3mmt)である。

2.接合体形成工程
 接合体形成工程S420は、2つの溶製鉄鋼部材41 0,420の間に介在用の鉄鋼部材430を介在させて2 つの溶製鉄鋼部材410,420における接合予定面41 2,422を突き合わせた状態で、介在用の鉄鋼部 430が溶融しない温度条件下で2つの溶製鉄鋼 部材410,420を接合可能な第1温度T 1 (例えば、1000℃~1100℃(図10においては1070℃)) 加熱することにより、2つの溶製鉄鋼部材410, 420を互いに接合して接合体400を形成する工程 である(図11(b1)参照。)。

 接合体形成工程S420においては、真空パルス 通電接合装置を用いて接合体400の形成を行う 。接合体400を形成するための押圧は、油圧を 用いて例えば10MPaの圧力条件で行う。接合体4 00を形成するための加熱は、2つの溶製鉄鋼部 材410,420の間に介在用の鉄鋼部材430を介在さ た状態で2つの溶製鉄鋼部材410,420にパルス通 電することにより行う。第1温度T 1 における保持時間(第1熱処理時間t 1 )は30分間とする(図10参照。)。接合体形成工 S420実施後には、接合体400を室温まで徐冷す 。

3.金属組織均一化工程
 金属組織均一化工程S430は、接合体400を、接 合体400の金属組織をより均一にすることが可 能な第4温度T 4 (例えば、1000℃~1150℃(図10においては1040℃)) 加熱する工程である(図11(d1)参照。)。

 金属組織均一化工程S430においては、真空炉 を用いて接合体400の加熱を行う。第4温度T 4 における保持時間(第4熱処理時間t 4 )は1時間(図10参照。)である。金属組織均一化 工程S430実施後には、接合体400をMs点まで急冷 し、その後接合体400を徐冷する。

 以上のような工程を含む実施形態4に係る 鉄鋼部材の接合方法によれば、Niを含有する 在用の鉄鋼部材430を介在させて2つの溶製鉄 鋼部材410,420を接合することとしているため 後述する実施例4からもわかるように、接合 形成工程S420実施中に生成することのあるCr 有不動態層や空隙444は、接合力形成工程S420 中に母相の鉄鋼材料中に溶け込んでいき、最 終的には接合面440a,440bにほぼ存在しなくなる (図11(b2)~図11(c2)参照。)。なお、図11(b2)~図11(c2 )においては、接合体形成工程S420実施中に生 することのあるCr含有不動態層の図示を省 している。

 その結果、実施形態4に係る鉄鋼部材の接 合方法は、Crを含有する2つの鉄鋼部材(2つの 製鉄鋼部材410,420)を互いに接合して接合体 製造する場合にも十分に高い接合力を得る とが可能な鉄鋼部材の接合方法となる。

 また、実施形態4に係る鉄鋼部材の接合方 法によれば、介在用の鉄鋼部材430が溶融しな い温度条件下で接合体400を形成することとし ているため、接合部分における金属組織がじ ん性の低い金属組織に変化することがなくな り、その結果、耐衝撃性に優れた接合体を製 造することが可能となる。

 また、実施形態4に係る鉄鋼部材の接合方 法によれば、介在用の鉄鋼部材430におけるNi 含有量は、5at%~30at%であるため、接合部分に おける機械的強度が低下するのを抑制するこ とが可能となり、また、十分に高い接合力を 得ることが可能となる。

[実施例4]
 実施例4は、実施形態4に係る鉄鋼部材の接 方法の効果を確認するための実施例である 実施例4においては、実施形態4に係る鉄鋼部 材の接合方法により形成された接合体400にお ける接合部分の断面電子顕微鏡写真を観察す ることにより、接合面440a,440bに存在する空隙 444が消散しているかどうかを確認した。

 図12は、接合部分の断面電子顕微鏡写真で る。図12(a)及び図12(b)は実施例4に係る鉄鋼部 材の接合方法により形成された接合体400にお ける接合部分の断面電子顕微鏡写真であり、 図12(c)は変形例に係る鉄鋼部材の接合方法に り形成された接合体(図示せず。)における 合部分の断面電子顕微鏡写真である。
 なお、図12(a)は低倍率による接合部分の断 電子顕微鏡写真であり、図12(b)及び図12(c)は 倍率による断面電子顕微鏡写真である。

 実施例4に係る鉄鋼部材の接合方法は、実施 形態4に係る鉄鋼部材の接合方法と同様に、 鋼部材準備工程S410と、接合体形成工程S420と 、金属組織均一化工程S430とをこの順序で含 鉄鋼部材の接合方法である。
 一方、変形例に係る鉄鋼部材の接合方法は 実施形態4に係る鉄鋼部材の接合方法と基本 的には同じ鉄鋼部材の接合方法であるが、金 属組織均一化工程S430の後に接合力強化工程S4 40(図示せず。)を含む点で実施例4に係る鉄鋼 材の接合方法の場合と異なる。

 図12を参照すれば、実施例4に係る鉄鋼部材 接合方法により形成された接合体400におい は接合面440a(図12(b)ではわからないが、接合 面440bの場合も同様。)に空隙444が存在しない とがわかる。また、変形例に係る鉄鋼部材 接合方法により形成された接合体において 接合面に空隙が存在しないことがわかる。
 このことにより、実施例4に係る鉄鋼部材の 接合方法により形成された接合体400又は変形 例に係る鉄鋼部材の接合方法により形成され た接合体のいずれにおいても、接合面に存在 する空隙が消散していることが確認できた。

[実施形態5]
 実施形態5は、本発明の鉄鋼部材の接合方法 を説明するための実施形態である。

 図13は、実施形態5に係る鉄鋼部材の接合 法を説明するために示すフローチャートで る。図13中、横軸は時間を示し、縦軸は温 を示す。

 実施形態5に係る鉄鋼部材の接合方法は、 基本的には実施形態1に係る鉄鋼部材の接合 法と同様の工程を含むが、接合力強化工程 おける徐冷の仕方が実施形態1に係る鉄鋼部 の接合方法の場合とは異なる。

 すなわち、実施形態5に係る鉄鋼部材の接合 方法において、接合力強化工程S540において 、接合体を第2温度T 2 に加熱した後、第3温度T 3 まで徐冷する間に、800℃~900℃の範囲内にあ 第5温度T 5 (図13においては、850℃。)で少なくとも時間t 5 だけ保持(図13においては、60分間。)すること としている。

 このように、実施形態5に係る鉄鋼部材の接 合方法は、接合力強化工程における徐冷の仕 方が実施形態1に係る鉄鋼部材の接合方法の 合とは異なるが、実施形態1に係る鉄鋼部材 接合方法の場合と同様に、接合体形成工程S 520により形成した接合体を第2温度T 2 に加熱した後、接合体を600℃以下の第3温度T 3 まで徐冷することとしているため、接合面に 存在するCr含有不動態層や空隙は、徐冷に伴 て接合体の金属組織が変態する過程で母相 鉄鋼材料中に溶け込んでいき、最終的には 合面に存在するCr含有不動態層や空隙を消 させることが可能となる。

 また、実施形態5に係る鉄鋼部材の接合方 法によれば、実施形態1に係る鉄鋼部材の接 方法の場合と同様に、2つの焼結鉄鋼部材を いて形成した接合体に対して接合力強化工 S540を実施することとしているため、接合体 形成工程S520実施後に接合面に残存すること ある空隙を接合力強化工程S540実施中に消散 せることが可能となる。

 その結果、実施形態5に係る鉄鋼部材の接 合方法は、実施形態1に係る鉄鋼部材の接合 法の場合と同様に、Crを含有する2つの鉄鋼 材(2つの焼結鉄鋼部材)を互いに接合して接 体を製造する場合にも十分に高い接合力を ることが可能な鉄鋼部材の接合方法となる

 また、実施形態5に係る鉄鋼部材の接合方 法によれば、焼きなまし効果により接合体500 の硬度を低くして、接合体500を機械加工する 際の加工性を高めることが可能となるという 効果も有する。

 なお、実施形態5に係る鉄鋼部材の接合方 法は、接合力強化工程における徐冷の仕方が 異なること以外は実施形態1に係る鉄鋼部材 接合方法と同様の工程を含むため、実施形 1に係る鉄鋼部材の接合方法が有する効果の ち該当する効果をそのまま有する。

[実施形態6]
 実施形態6は、本発明の鉄鋼部材の接合方法 及びそれにより製造される鉄鋼製品を説明す るための実施形態である。実施形態6におい は、鉄鋼製品として、ダイカスト金型(実施 態6に係るダイカスト金型)を例にとって説 する。

 図14は、実施形態6に係る鉄鋼部材の接合 法を説明するために示す図である。図14(a) 鉄鋼部材準備工程S610を説明するために示す であり、図14(b)は接合体形成工程S620を説明 るために示す図であり、図14(c)は金属組織 一化工程S630を説明するために示す図であり 図14(d)は接合力強化工程S640を説明するため 示す図であり、図14(e)は切削工程S650を説明 るために示す図である。

 実施形態6に係る鉄鋼部材の接合方法は、 基本的には実施形態1に係る鉄鋼部材の接合 法と同様の工程を含むが、図14(a)に示すよう に、2つの焼結鉄鋼部材として、接合予定面61 2,622に熱交換用媒体流路形成用溝614,624が形成 された2つの焼結鉄鋼部材610,620を用いる。

 このため、実施形態6に係る鉄鋼部材の接 合方法によれば、図14(e)に示すように、接合 600に対して必要な切削加工を行うことによ 、熱交換用媒体流路660を内部に含むダイカ ト金型650(実施形態6に係るダイカスト金型) 製造することが可能となる。

 このとき、実施形態6に係るダイカスト金 型650は、基本的には実施形態1に係る鉄鋼部 の接合方法と同様の工程によって製造され ものであることから、十分に高い接合力で 合され、信頼性が高くかつ寿命が長いダイ スト金型となる。

 なお、実施形態6に係る鉄鋼部材の接合方 法は、基本的には実施形態1に係る鉄鋼部材 接合方法と同様の工程を含むため、実施形 1に係る鉄鋼部材の接合方法が有する効果の ち該当する効果をそのまま有する。

[実施形態7]
 実施形態7は、本発明の鉄鋼部材の接合方法 及びそれにより製造される鉄鋼製品を説明す るための実施形態である。実施形態7におい は、鉄鋼製品として、ダイカスト金型(実施 態7に係るダイカスト金型)を例にとって説 する。

 図15は、実施形態7に係る鉄鋼部材の接合 法を説明するために示す図である。図15(a) 鉄鋼部材準備工程S710を説明するために示す であり、図15(b)は接合体形成工程S720を説明 るために示す図であり、図15(c)は金属組織 一化工程S730を説明するために示す図であり 図15(d)は接合力強化工程S740を説明するため 示す図であり、図15(e)は切削工程S750を説明 るために示す図である。

 実施形態7に係る鉄鋼部材の接合方法は、 基本的には実施形態6に係る鉄鋼部材の接合 法と同様の工程を含むが、接合する焼結鉄 部材の数及び形状が実施形態6に係る鉄鋼部 の接合方法の場合とは異なる。

 すなわち、実施形態7に係る鉄鋼部材の接 合方法においては、図15(a)に示すように、3つ の焼結鉄鋼部材710,720,730を用いる。焼結鉄鋼 材710には熱交換用媒体流路形成用溝714が形 されており、焼結鉄鋼部材720には熱交換用 体流路形成用孔726が形成されており、焼結 鋼部材730には熱交換用媒体流路形成用溝734 び熱交換用媒体流路形成用孔736が形成され いる。

 このように、実施形態7に係る鉄鋼部材の 接合方法は、接合する焼結鉄鋼部材の数及び 形状が実施形態6に係る鉄鋼部材の接合方法 場合とは異なるが、図15(e)に示すように、接 合体700に対して必要な切削加工を行うことに より、実施形態6に係る鉄鋼部材の接合方法 場合と同様に、熱交換用媒体流路760を内部 含むダイカスト金型750(実施形態7に係るダイ カスト金型)を製造することが可能となる。

 このとき、実施形態7に係るダイカスト金 型750は、基本的には実施形態6に係る鉄鋼部 の接合方法と同様の工程によって製造され ものであることから、十分に高い接合力で 合され、信頼性が高くかつ寿命が長いダイ スト金型となる。

 なお、実施形態7に係る鉄鋼部材の接合方 法は、基本的には実施形態6に係る鉄鋼部材 接合方法と同様の工程を含むため、実施形 6に係る鉄鋼部材の接合方法が有する効果の ち該当する効果をそのまま有する。

[実施形態8]
 実施形態8は、本発明の鉄鋼部材の接合方法 及びそれによって製造される鉄鋼製品を説明 するための実施形態である。実施形態8にお ては、鉄鋼製品として、ダイカスト金型に いる加圧ピン(実施形態8に係る加圧ピン)を にとって説明する。

 図16は、実施形態8に係る鉄鋼部材の接合 法を説明するために示す図である。図16(a) 鉄鋼部材準備工程S810を説明するために示す であり、図16(b)は接合体形成工程S820を説明 るために示す図であり、図16(c)は金属組織 一化工程S830を説明するために示す図であり 図16(d)は接合力強化工程S840を説明するため 示す図である。

 実施形態8に係る鉄鋼部材の接合方法は、 基本的には実施形態1に係る鉄鋼部材の接合 法と同様の工程を含むが、図16(a)に示すよう に、2つの焼結鉄鋼部材として、それぞれNC切 削加工により所定の形状に切削されている2 の焼結鉄鋼部材810,820を用いる。

 このため、実施形態8に係る鉄鋼部材の接 合方法によれば、ダイカスト金型に用いる加 圧ピン850(実施形態8に係る加圧ピン)を製造す ることが可能となる。

 このとき、実施形態8に係る加圧ピン850は 、基本的には実施形態1に係る鉄鋼部材の接 方法と同様の工程によって製造されたもの あることから、十分に高い接合力で接合さ 、信頼性が高くかつ寿命が長い加圧ピンと る。

 なお、実施形態8に係る鉄鋼部材の接合方 法は、基本的には実施形態1に係る鉄鋼部材 接合方法と同様の工程を含むため、実施形 1に係る鉄鋼部材の接合方法が有する効果の ち該当する効果をそのまま有する。

[実施形態9]
 実施形態9は、本発明の鉄鋼部材の接合方法 及びそれにより製造される鉄鋼製品を説明す るための実施形態である。実施形態9におい は、鉄鋼製品として、固定金型及び移動金 からなるダイカスト金型用の合わせ金型の ち、キャビティ用の凹部が形成された固定 型(実施形態9に係る固定金型)を例にとって 明する。

 図17は、実施形態9に係る鉄鋼部材の接合 法を説明するために示す図である。図17(a) 鉄鋼部材準備工程S910を説明するために示す であり、図17(b)及び図17(c)は接合体形成工程 S920を説明するために示す図であり、図17(d)は 金属組織均一化工程S930を説明するために示 図であり、図17(e)は切削工程S940を説明する めに示す図である。

 実施形態9に係る鉄鋼部材の接合方法は、 基本的には実施形態4に係る鉄鋼部材の接合 法と同様の工程を含むが、図17(a)に示すよう に、2つの溶製鉄鋼部材として、接合予定面91 2が平面である溶製鉄鋼部材910及び接合予定 922に熱交換用媒体流路形成用溝924が形成さ た焼結鉄鋼部材920を用いるとともに、Niを含 有する介在用の鉄鋼部材として、ステンレス 鋼S316からなる鉄鋼部材930を用いる。

 このため、実施形態9に係る鉄鋼部材の接 合方法によれば、図17(e)に示すように、接合 900に対して必要な切削加工を行うことによ 、熱交換用媒体流路960を内部に含む固定金 950(実施形態9に係る固定金型)を製造するこ が可能となる。

 このとき、実施形態9に係る固定金型950は、 基本的には実施形態4に係る鉄鋼部材の接合 法と同様の工程によって製造されたもので ることから、十分に高い接合力で接合され 信頼性が高くかつ寿命が長い固定金型とな 。
 実施形態9に係る固定金型950によれば、接合 面940a,940bがキャビティ用の凹部952に露出しな いため、接合面940a,940bがキャビティ用の凹部 952に露出することに起因してダイカスト製品 の品質が劣化したり、固定金型の寿命が短く なったりすることがない。

 なお、実施形態9に係る鉄鋼部材の接合方 法は、基本的には実施形態4に係る鉄鋼部材 接合方法と同様の工程を含むため、実施形 4に係る鉄鋼部材の接合方法が有する効果の ち該当する効果をそのまま有する。

 以上、本発明の鉄鋼部材の接合方法及び 鋼製品を上記の各実施形態に基づいて説明 たが、本発明は上記の各実施形態に限定さ るものではなく、その要旨を逸脱しない範 において種々の態様において実施すること 可能であり、例えば次のような変形も可能 ある。

(1)上記実施形態1~3又は5~8においては、鉄鋼 部材準備工程と、接合体形成工程と、金属組 織均一化工程と、接合力強化工程をこの順に 含む鉄鋼部材の接合方法について説明したが 、本発明はこれに限定されるものではない。 本発明は、接合体準備工程としてCrを含有す 2つの鉄鋼部材が予め接合された接合体を準 備しておき、当該接合体に対して接合力強化 工程を実施する、鉄鋼部材からなる接合体に おける接合力強化方法をも含むものである。

 この場合、接合体として、2つの焼結鉄鋼 部材が互いに接合された接合体、焼結鉄鋼部 材と溶製鉄鋼部材とが互いに接合された接合 体又は介在用の焼結鉄鋼部材を介在した状態 で2つの溶製鉄鋼部材が互いに接合された接 体を用いることができる。

(2)上記実施形態1~3又は5~8において、接合力 強化工程においては、850℃から600℃に降温す るのに5時間以上かける条件で徐冷すること しているが、本発明はこれに限定されるも ではない。例えば、850℃から600℃に降温す のに10時間以上又は15時間以上かける条件で 冷することとしてもよい。

(3)上記実施形態1~3又は5~8において、接合力強 化工程においては、850℃から600℃に降温する のに5時間以上かける条件で徐冷することと ているが、本発明はこれに限定されるもの はない。例えば、第2温度T 2 又は焼結鉄鋼部材におけるA 1 変態点のうち低い方の温度から600℃に降温す るのに5時間以上(又は10時間以上若しくは15時 間以上。)かける条件で徐冷することとして よい。

(4)上記実施形態1~3又は5~8においては、接合 力強化工程をパルス通電接合装置を用いて行 っているが、本発明はこれに限定されるもの ではない。例えば、通常の真空加熱炉を用い て行うこともできる。

(5)上記実施形態1~3又は5~8においては、接合体 形成工程、金属組織均一化工程及び接合力強 化工程を真空中において行っているが、本発 明はこれに限定されるものではない。例えば 、これらの工程の全部又は一部をN 2 ガス、Arガス等の不活性ガス雰囲気中におい 行うこともできる。

(6)上記実施形態1~3又は5~8においては、焼結 鉄鋼部材又は介在用の焼結鉄鋼部材としてウ ッデホルム株式会社製のELMAXからなる焼結鉄 部材を用いたが、本発明はこれに限定され ものではない。熱間金型用鋼、冷間金型用 、マルテンサイト系ステンレス鋼又は高速 工具鋼からなる各種焼結鉄鋼部材を用いる ともできる。

(7)上記実施形態2~4又は9においては、溶製 鋼部材として熱間金型用鋼(SKD61)からなる溶 鉄鋼部材を用いたが、本発明はこれに限定 れるものではない。例えば、SKD61以外の熱 金型用鋼又は熱間金型用鋼以外の鉄鋼部材( えば、冷間金型用鋼、マルテンサイト系ス ンレス鋼、機械構造用合金鋼又は高速度工 鋼からなる溶製鉄鋼部材。)を用いることも できる。

(8)上記実施形態4又は9においては、介在用 鉄鋼部材として、Niを含有する介在用の鉄 部材を用いたが、本発明はこれに限定され ものではない。たとえば、Cuを含有する介在 用の鉄鋼部材を用いることもできる。

(9)上記各実施形態においては、接合予定面 が平面である場合について説明したが、本発 明はこれに限定されるものではない。接合予 定面が互いに密着可能であれば、接合予定面 が平面でない場合(例えば、曲面形状、段差 状など。)であってもよい。

(10)上記実施形態6~9においては、鉄鋼製品 して、ダイカスト金型、加圧ピン又は固定 型を例にとって本発明を説明したが、本発 はこれに限定されるものではない。鉄鋼製 としては、ダイカスト金型、加圧ピン又は 定金型以外の各種成形金型、各種工具、各 構造部材などを例示することができる。

符号の説明

100,200,300,400,600,700,800,900…接合体、110,120,210,61 0,620,710,720,730,810,820…焼結鉄鋼部材、112,122,212 ,222,312,322,412,422,612,622,712,722a,722b,732,812,822,912,9 22…接合予定面、220,310,320,410,420,910,920…溶製 鋼部材、330…介在用の焼結鉄鋼部材、430,930 …介在用の鉄鋼部材、140,240,340a,340b,440a,440b,64 0,740a,740b,840,940a,940b…接合面、142,242,342…Cr含 不動態層、144,244,344,444…空隙、614,624,714,734, 924…熱交換用媒体流路形成用溝、726,736…熱 換用媒体流路形成用孔、650,750…ダイカスト 型、660,760,960…熱交換用媒体流路、850…加 ピン、950…固定金型、952…キャビティ用の 部、Ms…Ms点、T 1 …第1温度、T 2 …第2温度、T 3 …第3温度、T 4 …第4温度、T 5 …第5温度、t 1 ……第1熱処理時間、t 2 …第2熱処理時間、t 3 …第3熱処理時間、t 4 …第4熱処理時間、t 5 …第5熱処理時間