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Patent Searching and Data


Title:
METHOD FOR DEFORMATION OF POLYMER FILM OR FIBER, AND POLYMER ACTUATOR
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/114810
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a polymer film or fiber which can be extended, shrunk and deformed quickly and repeatedly in a (dried) gas such as air, and which has a rate of deformation of 4% or greater. Also disclosed is a polymer actuator using a polymer film which can be extended upon receiving an external stimulus, wherein the polymer film is placed under the condition where the humidity and/or the temperature is controlled. In the polymer actuator, it is preferred to use a polymer film which can be extended by the adsorption/desorption of a water molecule caused by an external stimulus, and the polymer film is preferably placed under the condition where the relative humidity is adjusted to 80 to 100%.

Inventors:
OKUZAKI HIDENORI (JP)
TAMAKI AKIO (JP)
KASUGA HISAO (JP)
SAIKI HISAMASA (JP)
ITO TAKAMICHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/055041
Publication Date:
September 25, 2008
Filing Date:
March 19, 2008
Export Citation:
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Assignee:
YAMANASHI TLO CO LTD (JP)
OKUZAKI HIDENORI (JP)
TAMAKI AKIO (JP)
KASUGA HISAO (JP)
SAIKI HISAMASA (JP)
ITO TAKAMICHI (JP)
International Classes:
H02N11/00; C08J5/18; H01L41/08; H01L41/193; H02N2/00
Foreign References:
JPH08275564A1996-10-18
JPH08280186A1996-10-22
JP2004197069A2004-07-15
JPH09297544A1997-11-18
JPH086493A1996-01-12
JP2003170400A2003-06-17
Attorney, Agent or Firm:
ISHIKAWA, Hidetake (Higashi-yurigaoka 3-chomeAsao-ku, Kawasaki-shi, Kanagawa 12, JP)
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Claims:
 外部刺激により伸縮する高分子フィルムを用いた高分子アクチュエータにおいて、
 前記高分子フィルムは湿度および/又は温度が調節された環境下に設けられていることを特徴とする高分子アクチュエータ。
 前記高分子フィルムは、外部刺激による水分子の吸脱着で伸縮することを特徴とする請求項1に記載の高分子アクチュエータ。
 相対湿度が80%から100%の範囲内で調節されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子アクチュエータ。
 前記温度が室温から50℃の範囲内で調節されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の高分子アクチュエータ。
 前記外部刺激が電圧であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の高分子アクチュエータ。
 印加する電圧が、1Vから18Vの範囲内であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の高分子アクチュエータ。
 前記高分子フィルムは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸)であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の高分子アクチュエータ。
 前記(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸)には、エチレングリコールが1%から10%の範囲内で添加されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の高分子アクチュエータ。
 請求項1から8のいずれかに記載の高分子アクチュエータを備えた点字ディスプレイ、又は現金自動支払機。
 外部刺激による水分子の吸脱着で伸縮する高分子フィルムにおいて、
 前記高分子フィルムは湿度および/又は温度の調節された環境下に設けられ、前記外部刺激により前記高分子フィルムの弾性率を変化せしめることを特徴とする高分子フィルムの弾性率の制御方法。
 前記外部刺激が電圧であることを特徴とする請求項10に記載の高分子フィルムの弾性率の制御方法。
Description:
高分子フィルム又は繊維の変形 法及び高分子アクチュエータ

 本発明は、高分子フィルム又は繊維に外 刺激を与え、これにより分子の吸脱着を発 させ高分子フィルム又は繊維を変形せしめ 方法及びこの方法を利用した高分子アクチ エータに関する。

 高分子フィルム又は繊維の外部刺激によ 変形方法は、本発明の発明者である奥崎秀 氏等により、下記の特許文献として開示さ ている。下記の特許文献においては、高分 フィルム又は繊維を用い、電気刺激による 子の吸脱着によって、気体中でピロール系 分子フィルム又は繊維を伸縮または屈曲せ める方法が開示されている。

 下記の特許で開示されている高分子フィ ム又は繊維の伸縮率は、特許文献1(特許第31 31180号公報)の図3又は図4、あるいは特許文献2 (特許第3102773号公報)の図4、図5から、概ね1.5% ~2%程度である。即ち、下記の特許により提供 される高分子フィルム又は繊維の変形率は、 最大でも2%程度である。一方、特許文献4に開 示される高分子フィルムは最大で40%もの伸縮 率を示すが、40%の伸縮率を実現するためには 、高分子フィルムを紙バネ形状、板バネ形状 等に変形させる必要がある。また、40%の伸縮 率を使って、例えば点字ピンのような負荷を 動かす力はなく、あくまでもその形状が変化 することにより伸縮するのみであり、これを アクチュエータとして利用することは難しい という問題がある。

特許第3131180号公報

特許第3102773号公報

特許第3039994号公報

国際公開第2006-025399号パンフレット

 上述したように、2%程度の変形率では、 分子フィルムを点字装置等のアクチュエー として利用することは難しい。これは、そ 程度の伸縮では視覚障害者がその変化を指 で十分に認識できないためである。また、 閉装置への応用の場合にあっては、十分な 閉度が確保できないという問題がある。即 、特許文献1~特許文献4で開示された技術を 際の製品に適用するには、開示されている 術では、必ずしも十分な伸縮率が確保でき いという問題がある。

 そこで、本発明は、従来技術の問題点で る2%以下の変形率しか実現できないといっ 課題を解決する目的でなされたものである 即ち、本発明の目的は、従来の外部刺激に り空気中などの気体中(乾式)で、素早く、繰 り返し伸張、収縮、変形することができる高 分子フィルム又は繊維であって4%以上の変形 を実現することのできる高分子フィルム又 繊維の変形方法、及びそれを用いた高分子 クチュエータを提供することにある。

 本発明は、外部刺激により伸縮する高分 フィルムを用いた高分子アクチュエータに いて、前記高分子フィルムは湿度および/又 は温度が調節された環境下に設けられている ことを特徴とする。ここで、前記高分子フィ ルムは、外部刺激による水分子の吸脱着で伸 縮することを特徴とする。このため、相対湿 度が80%から100%の範囲内で調節されているこ は好ましい。また、前記温度が室温から50℃ の範囲内で調節されていることは好ましい。 50℃前後であれば高分子フィルムが焼損する ともなく、また温度の制御が比較的容易な めである。

 前記外部刺激が電圧であることは好適で る。また、印加する電圧が、1Vから18Vの範 内であることは好ましい。電圧は簡便に制 可能な外部刺激だからである。

 前記高分子フィルムは、ポリ(3,4-エチレ ジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホ ン酸)であることは好ましい。また、前記(3,4- エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレ スルホン酸)には、エチレングリコールが1% ら10%の範囲内で添加されていることは好ま い。エチレングリコールの添加により導電 が向上し、これが高分子フィルムの伸縮率 向上に貢献するためである。

 本発明は、前記高分子アクチュエータを えた点字ディスプレイ、又は現金自動支払 であることを特徴とする。

 本発明は、外部刺激による水分子の吸脱 で伸縮する高分子フィルムにおいて、前記 分子フィルムは湿度および/又は温度の調節 された環境下に設けられ、前記外部刺激によ り前記高分子フィルムの弾性率を変化せしめ ることを特徴とする。また、前記外部刺激が 電圧であることは好ましい。

 この発明によれば、従来の外部刺激によ 分子の吸脱着によって高分子フィルム又は 維を4%以上変形させることができる。この 果、高分子フィルム又は繊維を使った変位 大きなアクチュエータを作成することがで る。

ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)の構造式 種々の相対湿度(30,50,70,90%RH)におけるPED OT/PSSフィルムの電気収縮挙動を示したグラフ 。 各相対湿度おけるPEDOT/PSSフィルムの電 収縮長と応答速度を示したグラフ。 PEDOT/PSSフィルムの吸着等温線(25℃)を示 したグラフ。 PEDOT/PSSフィルムの湿度応答特性を示し グラフ。 電圧印加によるヤング率の湿度による 果を示したグラフ。 種々の温度(5,25,45℃)におけるPEDOT/PSSフ ルムの電気収縮挙動を示したグラフ。 各温度におけるPEDOT/PSSフィルムの電気 縮挙動と応答速度を示したグラフ。 45℃,90%RHにおけるPEDOT/PSSフィルムの電 収縮挙動を示したグラフ。 PEDOT/PSSフィルムの電気収縮挙動におけ る温湿度の相乗効果を示したグラフ。 PEDOT/PSSフィルムの応答速度における温 湿度の相乗効果を示したグラフ。 PEDOT/PSSフィルムの電気収縮挙動におけ る繰り返し性と耐久性を示したグラフ。

 本発明は、最も原理的に表現すれば、高 子フィルム又は繊維を設置する環境を制御 ることにより、高分子フィルム又は繊維の 縮を増大させるものである。特に、高分子 ィルム又は繊維が設けられている環境の相 湿度を制御することで大きな伸縮を実現す ことを見いだしたものである。また、高分 フィルム又は繊維の設けられている環境温 を湿度との関係で制御することで、伸縮速 の高速化を可能とすることを見いだしたも である。

 ここで高分子フィルムおよび繊維とは、 性高分子、高分子電解質、導電性高分子を う。中性高分子としては、セルロース、セ ファン、ナイロン、ポリビニルアルコール ビニロン、ポリオキシメチレン、ポリエチ ングリコール、ポリプロピレングリコール ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノ ル、ポリ2-ヒドロキシエチルメタクリレー およびこれらの誘導体から選択される少な とも1つが挙げられる。

 高分子電解質としては、ポリアクリル酸 ポリメタクリル酸などのポリカルボン酸、 リスチレンスルホン酸、ポリ2-アクリルア ド-2-メチルプロパンスルホン酸、ナフィオ などのポリスルホン酸、ポリアリルアミン ポリジメチルプロピルアクリルアミドなど リアミンとその四級化塩およびこれらの誘 体から選択される少なくとも1つが挙げられ 。

 導電性高分子としては、ポリチオフェン ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチ ン、ポリジアセチレン、ポリフェニレン、 リフラン、ポリセレノフェン、ポリテルロ ェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニ ンスルフィド、ポリフェニレンビニレン、 リチエニレンビニレン、ポリナフタレン、 リアントラセン、ポリピレン、ポリアズレ 、ポリフルオレン、ポリピリジン、ポリキ リン、ポリキノキサリン、ポリエチレンジ キシチオフェンおよびこれらの誘導体から 択された少なくとも1つが挙げられる。

 これらの高分子フィルムおよび繊維は、 ャスト法、バーコーティング法、スピンコ ティング法、スプレー法、電解重合法、化 的酸化重合法、溶融紡糸法、湿式紡糸法、 相押出法、エレクトロスピニング法から選 された少なくとも1つの手法を用いて作製す ることができる。

 これら高分子の吸湿性や電導度を上げる めに、ドーパントをドープすることは好適 ある。ドーパントとしては、例えば、硫酸 塩酸、硝酸、リン酸、ヨウ素、臭素、フッ ヒ素、過塩素酸、テトラフルオロホウ酸、 キサフルオロリン酸、アルキルベンゼンス ホン酸、アルキルスルホン酸、パーフルオ スルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ト フルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ タンスルホン酸イミド、シュウ酸、酢酸、 レイン酸、フタル酸、ポリアクリル酸、ポ メタクリル酸及びこれらの誘導体、カーボ ブラック、カーボンファイバー、カーボン ノチューブ、フラーレン等の炭素系添加物 鉄、銅、金、銀等の金属から選択された少 くとも1つが挙げられる。中でも、高い電導 度と安定性、再現性に優れている、ポリ(4-ス チレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチ レンジオキシチオフェン)のキャストフィル が好適である。

 外部刺激による高分子フィルム又は繊維 分子吸脱着法としては、ニクロム線やトー 、バーナー、赤外線照射やレーザー照射、 イクロ波照射による加熱、真空ポンプやア ピレーターによる減圧、直流波や交流波、 角波、矩形波およびパルス波などの電圧印 によるジュール加熱から選択される少なく も1つが挙げられる。中でも、簡便であり制 御性に優れた直流電圧が好ましい。以下、実 施例について詳細に説明する。

 高分子フィルムの材料として、ポリ(3,4- チレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレン スルホン酸)(以下、PEDOT/PSS)を用いた。その構 造式を図1に示す。PEDOT/PSS水溶液(Baytron P AG,H .C.Starck)に対してドデシルベンゼンスルホン (ソフト型)(東京化成工業)を0.01wt%ビーカーに 秤量し、それにエチレングリコール(東京化 工業)を3wt%加え、マグネティックスターラー でよく撹拌した。これにPEDOT/PSS水溶液を加え て、マグネティックスターラーで約10分間均 に混ざるまで撹拌した。混合溶液をピペッ で取り、気泡を生じさせないように静かに フロン(登録商標)シャーレ(直径φ105)にPEDOT/P SSが9.00gになるように計り取った。PEDOT/PSS水 液の溶媒である水と、加えたEGを蒸発させる ため、乾燥と熱処理を行った。乾燥オーブン (NDO-400W,EYELA)で60℃、6時間乾燥させ、真空オ ブン(ADP200,ヤマト科学工業)で160℃、1時間熱 理し、キャストフィルムを作製した。

 [電導度の測定]
 作製したキャストフィルムの電導度測定を のようにして測定した。プローブ間隔1.5mm 四探針プローブ(MCP-TP06P,三菱化学)をスタン にクランプで固定し、デジタルマルチメー (Model No.2000,KEITHLEY)に接続させた。ラボジャ キを用いて作製したPEDOT/PSSフィルムを持ち げ、四探針プローブに直接押し当て、その きの抵抗を四探針法にて測定した。このと 、測定するフィルムは十分大きな面積のも を用いた。四探針法で得られた抵抗値を用 、数1に示す近似式によって電導度σ(S/cm)を 出したところ、175S/cmであった。

                σ:電導度(S/cm)
                R:抵抗値(ω)
                d:試料の膜厚(cm)

 [引張試験]
 次に、引張試験を次のようにして行った。 張試験機EZ-TEST(島津製作所)及び解析ソフトT rapezium2(島津製作所)を使用し、作製したPEDOT/P SSフィルムの引張試験を行った。カッターナ フの刃を直接押し当てハンマーを用いて打 抜くことで、フィルムを幅2mmに切り出した 切り出したフィルムをチャック間20mmにあわ せた台紙に張り付け、両側をセロファンテー プで固定させて測定サンプルを作製した。台 紙に貼付けたフィルムの膜厚をマイクロメー タ(IP56,ミツトヨ)で測定し、フィルム幅をカ ットメータ(TM-500,ミツトヨ)で正確に測定し 。キャリブレーションをかけた引張試験機 チャックに測定サンプルを取付け、台紙の 中をはさみで切った。試験条件を解析ソフ に入力してロードセルの位置を調節し、フ ルムが引っ張られた状態でゼロ点合わせを て、試料幅2mm、チャック間隔20mm、歪み速度1 0%/min、サンプリングタイム0.05secの条件で引 試験を行った。測定は30℃,50%RHの雰囲気下で 行った。PEDOT/PSSフィルムのヤング率は2GPa、 断強度は57MPa、切断伸度は6%であった。

 [相対湿度の効果]
 次に、相対湿度の効果をみるため、次のよ にして伸縮率の測定を行った。作製したキ ストフィルム(膜厚10μm)を長さ50mm、幅2mmに り出した。切り出したPEDOT/PSSフィルムを、 縮率を測定する測定装置の金メッキを施し チャックにはさみ、チャック間が50mmになる うに固定した。直流安定化電源(MSAZ36,日本 タビライザー工業)を用いてチャック間に直 電圧を印加し、恒温恒湿槽(KCL-2000W,EYELA)を いて周囲湿度を変化させ、フィルムの伸縮 動を測定した。伸縮挙動は変位センサー(EX-4 16V,KEYENCE)で測定し、データ収集システム(NR-50 0,KEYENCE)を用いてコンピュータ上で解析した

 図2は、OFF(0~60s),ON(60~360s),OFF(360~500s)のサイ クルで直流電圧(2~18V)をそれぞれ印加し、温 は25℃に固定して、湿度を4段階(30,50,70,90%RH) 変え、PEDOT/PSSフィルムの電気収縮挙動を測 した結果である。電圧を印加するとフィル は収縮して平衡値に達し、電圧を切るとフ ルムは伸長して元の長さまで回復した。い れの湿度においても、フィルムの収縮長は 加電圧とともに増加するが、ある電圧以上 は逆に低下した。これは、水分子の脱着に る収縮に対してジュール熱による熱膨張が り顕著に現れたためと考えられる。

 図3(a)に、各湿度における収縮長の電圧依 存性を示す。いずれの湿度においても、最大 の収縮長は印加電圧10Vの時に得られることが わかった。90%RHでは、最大2.25mmの変位量(収縮 率4.5%)に達することが明らかになった。

 次に、伸縮速度について次のようにして 定を行った。電圧ON時、電圧OFF時のPEDOT/PSS ィルム伸縮挙動より、最大の収縮速度vON(mm/s )と伸長速度vOFF(mm/s)を算出した。収縮速度は 加電圧の増加とともに速くなり、湿度には とんど依存しないことがわかった(図3(b))。 れは、電圧印加により強制的に水分子が脱 されるためと考えられ、電圧印加がフィル の脱水・収縮に極めて有効であることが明 かになった。一方、伸長速度は湿度ととも 増加した(図3(d))。高湿度側ではより多くの 分子が空気中に存在し、吸着・拡散量が増 するため伸長速度が速くなると考えられる 10V以上の高電圧側では伸長速度が低下して るが、これは熱膨張の影響と考えられる。

 電気収縮長が最大となる印加電圧約10Vにつ て、電気収縮挙動の湿度依存性を図3(c)に示 す。収縮長は湿度とともに増加して90%RHで2.25 mm(収縮率4.5%)に達し、50%RHから約2倍近く向上 た。さらに98%RHにおいては、最大で2.4mm(収 率4.8%)の収縮長を確認した。これは、低湿度 では含水量が少なくフィルムの収縮長も小さ いが、高湿度では含水量も増し、より大きく 収縮できるためと考
えられる。

 また、速度解析の結果から、収縮速度は 度にあまり依存しないが、伸長速度は湿度 増加に伴って速くなり、50%RHで0.089mm/sであ たが90%RHでは0.251mm/sと3倍近く向上すること わかった。これは、高湿度側で水分子の吸 ・拡散量が増大したためと考えられる。以 の結果より、フィルムのアクチュエータ特 が周囲の湿度環境に大きく依存し、高湿度 件下で伸縮率、伸長速度ともに向上するこ が明らかになった。

 [含水量] 
 次に、含水量について測定を行った。PEDOT/P SSフィルムの吸着等温線を高精度ガス/蒸気吸 着装置(BELSORP-aqua3,日本ベル)を用いて測定し 。まず、フィルムをハサミで細かく切り刻 。あらかじめ専用のサンプル管とゴム栓の 量を精密天秤で計っておき、サンプル管に んだフィルムを約70mg入れる。フィルムを入 たサンプル管を前処理装置(Belprep flow,日本 ル)に入れ、窒素を50mL/minでフローさせなが 160℃で6時間前処理を行うことで、元々フィ ルム内部に吸着している水を完全に取り除く 。前処理後、サンプル管中のフィルムの重量 を精密天秤で正確に計り、サンプル管中にガ ラス棒を挿入後、飛散防止フィルターをつけ た。さらに、サンプル管固定用ナット、スリ ーブ、Oリングを用いて、吸着装置の各ポー に取り付けた。ここで、フィルムの重量、 気恒温槽温度80℃、吸着温度25℃、水分子の 対圧0~0.999を測定用ソフトに入力し測定を行 った。測定終了後、解析ソフト(BEL Master,日 ベル)を用い吸着等温線を作成した。

 PEDOT/PSSフィルムの25℃における吸着等温 を図4に示す。相対水蒸気圧が高くなるにつ て含水量も増大し、相対水蒸気圧0.9におい 最大600mg/g(含水率約38%)程度吸着することが かった。PEDOT/PSSフィルムはIUPACでII型の吸着 等温線に分類され、無孔性で水分子との相互 作用は比較的強いことがわかる。また、高い 相対水蒸気圧側では曲線が急激に上昇してい ることから、水分子の凝集が起こっていると 考えられる。

 [湿度応答性]
 2台の恒温槽(C25P,HAAKEY)及び調湿ジャケット 取り付けた熱応力歪測定装置(TMA)(6000 TMA/SS, スアイアイ・ナノテクノロジー)を使用した 。PEDOT/PSSキャストフィルムを幅2mm、 長さ20mm に切り出しチャック間にはさんだ。ただし、 チャックの掴みしろを考慮して4mm程度長めに 切り出した。切り出す際、フィルムの切り口 にクラックが生じないようにカッターナイフ の刃を直接切り口に押し当て、上からハンマ ーで叩き一気に切断した。1台の恒温槽でプ ーブ周辺を30℃に保ち、もう1台の恒温槽で 対湿度を20%RH~90%RHに変化させた。初期湿度を 20%RHに設定し、このときのフィルム長を基準 した。キャリブレーション後に試料を取り け、サンプル測長を行なった。サンプル長 測定条件を専用ソフトに入力して測定を開 した。同時に恒温槽の調湿プログラム、温 度読込みプログラムをスタートさせた。な 、湿度は20~90%RH,90~20%RHを160分間で1サイクル して設定し、荷重49mN、サンプリングタイム 5sec、温度30℃、湿度20~90%RH、サイクル数6回の 条件で6サイクル繰り返し測定を行った。

 図5にPEDOT/PSSフィルムの湿度応答特性を示 す。フィルムは周囲の相対湿度に対して敏感 に伸縮応答し、20%RH~90%RHに変化させることで 長さが4%程度可逆的に伸縮することがわか た。これは、フィルムが周囲の水分子を吸 することで膨張し、一方脱着することで収 したためである。また、1回目の湿度上昇で 大きく伸長するが、2回目以降の湿度変化サ イクルでほぼ安定化した。

 [弾性率変化]
 次に、電圧印加による弾性率変化について 定を行った。湿度30,50,70%RHの条件下で、そ ぞれPEDOT/PSSフィルムに印加電圧を0~6Vと変化 せて引張試験を行った。作製したキャスト ィルム(膜厚17μm)を長さ50mm、幅2mmに切り出 た。切り出したPEDOT/PSSフィルムを測定セル 金メッキを施したチャックにはさみ、チャ ク間が50mmになるように固定した。直流安定 電源(MSAZ36,日本スタビライザー工業)を用い チャック間に直流電圧を印加し、恒温恒湿 (KCL-2000W,EYELA)を用いて湿度を30,50,70%RHと変化 させ、フィルムのヤング率変化を引張試験に より求めた。引張試験は、測定セルに固定し たXステージ(PR40B-20X,COMS)を用い、フィルム長 対して10%/minの速度で行なった。また、応力 はストレインゲージ(LTS-500GA,KYOWA)で測定し、 ータ収集システム(NR-500,KEYENCE)を用いてコン ピュータ上で解析を行った。

 いずれの湿度においても、フィルムのヤ グ率は印加電圧とともに増大し、湿度30%RH おいて6V印加すると最大2.5GPaに達した(図6)。 これは、可塑剤として働いていたフィルム内 部の水分子が電圧印加により脱着されること で、高分子鎖が凝集しより硬くなるためと考 えられる。また、フィルムのヤング率は相対 湿度に大きく依存することがわかった。すな わち、より高湿度側ではフィルムに多くの水 分子が吸着しているのでヤング率は小さくな り、湿度が下がると逆に吸着量が下がること でヤング率が大きくなりフィルムが硬くなる と考えられる。

 [温度の効果]
 次に、温度の効果について測定を行った。 製したキャストフィルム(膜厚10μm)を長さ50m m、幅2mmに切り出した。ただし、チャックの みしろを考慮して4mm程度長めに切り出した 切り出す際、フィルムの切り口にクラック 生じないようにカッターナイフの刃を直接 り口に押し当て、上からハンマーで叩き一 に切断した。切り出したPEDOT/PSSフィルムを 定装置の金メッキを施したチャックにはさ 、チャック間が50mmになるように固定した。 流安定化電源(MSAZ36,日本スタビライザー工 )を用いてチャック間に直流電圧を印加し、 温恒湿槽(KCL-2000W,EYELA)を用いて周囲温度を 化させ、フィルムの伸縮挙動を測定した。 縮挙動は変位センサー(EX-416V,KEYENCE)で測定し 、データ収集システム(NR-500,KEYENCE)を用いて ンピュータ上で解析した。

 OFF(0~60s),ON(60~360s),OFF (360~500s)のサイクル 直流電圧(2~18V)をそれぞれ印加し、湿度は50%R Hに固定して、温度を3段階(5,25,45℃)に変えた きのPEDOT/PSSフィルムの電気収縮挙動を図7に 示す。電圧を印加するとフィルムは収縮して 平衡値に達し、電圧を切るとフィルムは伸長 して元の長さまで回復した。いずれの温度に おいても、フィルムの収縮長は印加電圧とと もに増加するが、ある電圧以上では逆に低下 した。

 図8(a)に、各温度における収縮長の電圧依 存性を示す。いずれの温度においても、最大 の収縮長は印加電圧10Vの時に得られることが わかった。また、電圧ON時、電圧OFF時のPEDOT/P SSフィルム伸縮挙動より、最大の収縮速度vON( mm/s)と伸長速度vOFF(mm/s)を算出した。収縮速度 は印加電圧の増加とともに速くなり、温度に はほとんど依存しないことがわかった(図8(b)) 。これは、電圧印加により強制的に水分子が 脱着されるためと考えられる。一方、伸長速 度は温度とともに増加した(図8(d))。これは、 フィルムの伸長が水分子の拡散に起因し、高 温側では高分子鎖の運動性が高まることで水 分子の拡散速度が増加するためと考えられる 。

 電気収縮長が最大となる印加電圧10Vにつ て、電気収縮挙動の温度依存性を図8(c)に示 す。収縮長は温度の上昇に伴い、平衡かやや 減少する傾向にあることがわかった。速度解 析の結果から、収縮速度は温度にあまり依存 しないが、伸長速度は温度の増加に伴って速 くなり、25℃で0.089mm/sであったが、45℃では0. 150mm/sと2倍近く向上することがわかった。こ は、高温側では高分子鎖の運動性が高まる とで水分子の拡散速度が増加するためと考 られる。以上の結果より、フィルムのアク ュエータ特性が周囲の温度環境に大きく依 するとともに、高温度条件下で伸長速度は 上することが明らかになった。

 [温度と湿度の相乗効果]
 次に、温度と湿度の相乗効果について次の うにして測定を行った。作製したキャスト ィルム(膜厚10μm)を長さ50mm、幅2mmに切り出 た。ただし、チャックの掴みしろを考慮し 4mm程度長めに切り出した。切り出す際、フ ルムの切り口にクラックが生じないように ッターナイフの刃を直接切り口に押し当て 上からハンマーで叩き一気に切断した。切 出したPEDOT/PSSフィルムを測定セルの金メッ を施したチャックにはさみ、チャック間が50 mmになるように固定した。直流安定化電源(MSA Z36,日本スタビライザー工業)を用いてチャッ 間に直流電圧を印加し、恒温恒湿槽(KCL-2000W ,EYELA)を用いて周囲温度を45℃、相対湿度を90% RHに保ちフィルムの伸縮挙動を測定した。伸 挙動は変位センサー(EX-416V,KEYENCE)で測定し データ収集システム(NR-500,KEYENCE)を用いてコ ピュータ上で解析した。

 OFF(0~60s),ON(60~360s),OFF (360~500s)のサイクル 直流電圧(2~18V)をそれぞれ印加し、温度45℃ 湿度90%RHの条件下でPEDOT/PSSフィルムの電気収 縮挙動を測定した(図9)。電圧を印加するとフ ィルムは収縮して平衡値に達し、電圧を切る とフィルムは伸長して元の長さまで回復した 。フィルムの収縮長は印加電圧とともに増加 するが、ある電圧以上では逆に低下した。

 次に、温度25℃、湿度50%RHの条件下と温度45 、湿度90%RHの条件下で、収縮長の電圧依存 と最大の収縮速度vON(mm/s)、伸長速度vOFF(mm/s) 比較を行った。最大の収縮長は、25℃,50%RH とき1.2mm(収縮率2.4%)であったのに対し、45℃, 90%RHでは1.8mm(収縮率3.6%)と1.5倍向上した(図10(a ))。また、フィルムの形状や電導度によって 大収縮長を示す電圧は異なるが、電力密度0 .1~2kW/cm 3 の間で最大収縮長を示すことがわかる(図10(b) )。好ましくは、0.2~1kW/cm 3 である。これは、フィルムの収縮がジュール 加熱による水分子の脱着に基づくためである 。一方、ある電力密度以上で収縮が低下する のは、フィルムの熱膨張が顕著に現れるため と考えられる。

 次に、収縮速度は印加電圧の増加ととも 速くなり、周囲環境にはほとんど依存しな ことがわかった(図11(a))。これは、電圧印加 により強制的に水分子が脱着されるためと考 えられる。一方、伸長速度は温度、湿度の上 昇とともに増加して、25℃,50%RHのとき0.089mm/s あったのに対し、45℃,90%RHでは0.574mm/sと約6 向上した(図11(b))。これは、高分子鎖の運動 性が高まることで水分子の拡散速度が増加す ると考えられる高温側の要因と、より多くの 水分子が空気中に存在し、吸着・拡散量が増 大すると考えられる高湿度側の要因が相乗効 果を成すためと考えられる。以上の結果より 、高温と高湿度を組み合わせることで伸長速 度は相乗的に向上することが明らかになった 。

 [耐久性]
 最後に、耐久性評価を次のようにしておこ った。PEDOT/PSSフィルム(長さ10mm、幅2mm、膜 15μm)について、恒温恒湿槽(KCL-2000W,EYELA)を用 い、温度25℃、湿度50%の測定条件のもとフィ ムの電気収縮挙動の耐久性を調べた。PEDOT/P SSフィルムを測定装置の金メッキを施したチ ックにはさみ固定し、ファンクションジェ レータ(DF1905,エヌエフ回路設計ブロック)、 テンショスタット(HA-301,北斗電工)を用いて 1.5Vの電圧を5秒間ON、15秒間OFFを1サイクルと し繰り返し印加した。伸縮挙動は変位センサ ー(EX-416V,KEYENCE)で測定し、データ収集システ (NR-500,KEYENCE)を用いてコンピュータ上で解析 を行った。

 始め、10 3 回あたりまでフィルムは伸び、それに伴い流 れる電流が若干低下することで変位は下がる が、やがて定常状態に達した(図12)。約8万回 フィルムは破断したが、フィルムの変位お び電流値が安定していることから、PEDOT/PSS 劣化していないことが明らかになった。

 本発明によれば、高分子フィルム又は繊 の伸縮を利用した高分子アクチュエータを 製することができ、かかるアクチュエータ 点字ディスプレイ、人工弁、ケミカルバル 、スイッチ等の電子工学素子として応用す ことができる。

 本明細書は、2007年3月20日出願の特願2007-0 72348に基づく。この内容はすべてここに含め おく。




 
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