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Patent Searching and Data


Title:
METHOD OF PREVENTING HAIR LOSS AND METHOD OF PREVENTING HAIR DEPIGMENTATION
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/016855
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide a hair loss-preventing agent and a hair depigmentation-preventing agent. Hair loss or hair depigmentation can be prevented by type XVII collagen.

Inventors:
NISHIMURA EMI (JP)
SHIMIZU HIROSHI
TANIMURA SHINTARO
TADOKORO YUKO (JP)
SAWAMURA DAISUKE
NISHIE WATARU
Application Number:
PCT/JP2008/053210
Publication Date:
February 05, 2009
Filing Date:
February 25, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV KANAZAWA NAT UNIV CORP (JP)
UNIV HOKKAIDO NAT UNIV CORP (JP)
NISHIMURA EMI (JP)
SHIMIZU HIROSHI
TANIMURA SHINTARO
TADOKORO YUKO (JP)
SAWAMURA DAISUKE
NISHIE WATARU
International Classes:
A61K38/17; A61K8/64; A61K31/7088; A61K48/00; A61P17/00; A61P17/14; A61P43/00; A61Q7/00; C07K14/78; C12N15/09
Domestic Patent References:
WO2007004325A12007-01-11
Foreign References:
JP2007129938A2007-05-31
JP2005281277A2005-10-13
Other References:
SHINTARO TANIMURA ET AL.: "Shikiso Kansaibo Iji ni Okeru XVII Gata Collagen no Yakuwari", INFLAMMATION AND REGENERATION, vol. 27, no. 4, July 2007 (2007-07-01), pages 428
NISHIE, W. ET AL.: "Humanization of autoantigen", NATURE MEDICINE, vol. 13, no. 3, March 2007 (2007-03-01), pages 378 - 383, XP055037249
NISHIMURA, E.K. ET AL.: "Mechanisms of hair graying: incomplete melanocyte stem cell maintenance in the niche", SCIENCE, vol. 307, 2005, pages 720 - 724, XP002456150
Attorney, Agent or Firm:
SONODA, Yoshitaka et al. (53rd Floor Shinjuku Mitsui Building,1-1, Nishi-Shinjuku 2-chom, Shinjuku-ku Tokyo 53, JP)
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Claims:
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
 (ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を含む、脱毛抑制剤。
 前記脱毛が、毛包幹細胞の消失による脱毛である、請求項1に記載の脱毛抑制剤。
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
 (ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を含む、毛髪の脱色素化抑制剤。
 前記毛髪の脱色素化が、色素幹細胞の消失による脱色素化である、請求項3に記載の毛髪の脱色素化抑制剤。
 XVII型コラーゲン又はその変異体が毛包幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは
 (ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、
を有するベクター
を含む、脱毛抑制のための組成物。
 前記プロモーターが、表皮基底層で発現するように制御するプロモーターである、請求項5に記載の組成物。
 前記プロモーターが、配列番号:3に示すヌクレオチド配列を有するケラチン14プロモーターである、請求項6に記載の組成物。
 XVII型コラーゲン又はその変異体が毛包幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは、
 (ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、
を有するベクター、
を含む、毛髪の脱色素化抑制のための組成物。
 前記プロモーターが、表皮基底層で発現するように制御するプロモーターである、請求項8に記載の組成物。
 前記プロモーターが、配列番号:3に示すヌクレオチド配列を有するケラチン14プロモーターである、請求項9に記載の組成物。
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
 (ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の異所性分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
 (iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の異所性分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体
を含む、色素幹細胞の異所性分化抑制剤。
 前記色素幹細胞の異所性分化が、バルジ領域での成熟色素細胞への分化である、請求項11に記載の異所性分化抑制剤。
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
 (ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
 (iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を含む、色素幹細胞の消失抑制剤。
 前記色素幹細胞の消失が、バルジ領域での成熟色素細胞への分化に引き続いて起こる消失である、請求項13に記載の消失抑制剤。
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
 (ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の異常分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
 (iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の異常分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を含む、毛包幹細胞の異常分化抑制剤。
 前記毛包幹細胞は、未分化角化細胞としてバルジ領域を構成しており、
 前記毛包幹細胞の異常分化は、バルジ領域を構成する未分化角化細胞から表皮や脂腺等への異常な成熟分化である、請求項15に記載の異常分化抑制剤。
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は
 (ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
 (iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を含む、毛包幹細胞の消失抑制剤。
 前記毛包幹細胞は、未分化角化細胞としてバルジ領域を構成しており、
 前記毛包幹細胞の消失は、バルジ領域を構成する未分化角化細胞から表皮や脂腺等への成熟分化による消失である、請求項17に記載の消失抑制剤。
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
 (ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を哺乳動物に有効量投与する、脱毛の抑制方法。
 前記脱毛が、毛包幹細胞の消失による脱毛である、請求項19に記載の脱毛の抑制方法。
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
 (ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を哺乳動物に有効量投与する、毛髪の脱色素化の抑制方法。
 前記毛髪の脱色素化が、色素幹細胞の消失による脱色素化である、請求項21に記載の毛髪の脱色素化の抑制方法。
 XVII型コラーゲン又はその変異体が毛包幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは
 (ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、
を有するベクター
を哺乳動物に有効量投与する、脱毛の抑制方法。
 前記プロモーターが、表皮基底層で発現するように制御するプロモーターである、請求項23に記載の脱毛の抑制方法。
 前記プロモーターが、配列番号:3に示すヌクレオチド配列を有するケラチン14プロモーターである、請求項24に記載の脱毛の抑制方法。
 XVII型コラーゲン又はその変異体が毛包幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列、及び該プロモーター配列の下流に
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、若しくは、
 (ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配列、
を有するベクター、
を哺乳動物に有効量投与する、毛髪の脱色素化の抑制方法。
 前記プロモーターが、表皮基底層で発現するように制御するプロモーターである、請求項26に記載の毛髪の脱色素化の抑制方法。
 前記プロモーターが、配列番号:3に示すヌクレオチド配列を有するケラチン14プロモーターである、請求項27に記載の毛髪の脱色素化の抑制方法。
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
 (ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の異所性分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
 (iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の異所性分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体
を哺乳動物に有効量投与する、色素幹細胞の異所性分化の抑制方法。
 前記色素幹細胞の異所性分化が、バルジ領域での成熟色素細胞への分化である、請求項29に記載の色素幹細胞の異所性分化の抑制方法。
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
 (ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
 (iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を哺乳動物に有効量投与する、色素幹細胞の消失の抑制方法。
 前記色素幹細胞の消失が、バルジ領域での成熟色素細胞への分化に引き続いて起こる消失である、請求項31に記載の色素幹細胞の消失の抑制方法。
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、
 (ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の異常分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
 (iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の異常分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を哺乳動物に有効量投与する、毛包幹細胞の異常分化の抑制方法。
 前記毛包幹細胞は、未分化角化細胞としてバルジ領域を構成しており、
 前記毛包幹細胞の異常分化は、バルジ領域を構成する未分化角化細胞から表皮や脂腺等への異常な成熟分化である、請求項33に記載の毛包幹細胞の異常分化の抑制方法。
 (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は
 (ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
 (iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は
 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、
を哺乳動物に有効量投与する、毛包幹細胞の消失の抑制方法。
 前記毛包幹細胞は、未分化角化細胞としてバルジ領域を構成しており、
 前記毛包幹細胞の消失は、バルジ領域を構成する未分化角化細胞から表皮や脂腺等への成熟分化による消失である、請求項35に記載の毛包幹細胞の消失の抑制方法。
Description:
脱毛の抑制方法および毛髪の脱 素化の抑制方法

 本発明は、XVII型コラーゲンに関する脱毛 の抑制方法、毛髪の脱色素化の抑制方法、色 素幹細胞の異所性分化の抑制方法、色素幹細 胞の消失の抑制方法、毛包幹細胞の異常分化 の抑制方法、毛包幹細胞の消失の抑制方法、 脱毛抑制剤、毛髪の脱色素化抑制剤、色素幹 細胞の異所性分化抑制剤、色素幹細胞の消失 抑制剤、毛包幹細胞の異常分化抑制剤、毛包 幹細胞の消失抑制剤、脱毛抑制のための組成 物、および毛髪の脱色素化抑制のための組成 物に関する。

 皮膚は、外界から個体を護るほかに、毛 や皮膚の色調やパターンにより個体の識別 防御においても重要な役割を果たしている 皮膚は、外側から表皮、真皮、皮下脂肪組 の3層から成り、毛包が表皮から連続して皮 下脂肪組織に向かって伸長する。毛包の恒常 部は毛周期を通じて維持されるのに対し、一 過性部は毛周期に同調してその成長と退縮を 周期的に繰り返している。また、色素細胞は 、皮膚において分化するとメラニン色素を産 生し、周囲の角化細胞へと受け渡すことで、 皮膚や毛に色素を供給しており、紫外線から 皮膚を護ると同時に個体間の識別や防御等の 役割を担っている。

 また、白髪は、我々の誰もが経験する最 目立つ老化現象である。白毛を生やす毛包 は色素を産生する色素細胞の数が減少して ることは現象として知られていたが、その カニズムについてはほとんど知られていな った。1990年、Cotsarelis等は、毛包の幹細胞 バルジ領域に局在して多く認められること ら、毛包の幹細胞がバルジ領域に存在する とを提唱した(Cotsarelis G.等、Cell 61: 1329-1337 .1990)。本発明者は、これまでに色素幹細胞を 見いだし(Nishimura EK et al. Nature. 416(6883):854- 60, 2002)、白髪のメカニズムとして色素幹細 の維持が必須であることを明らかとしてき (Nishimura EK et al. Science. 307(5710):720-724. 2005 )。

 一方、毛髪は皮膚から派生しており、皮 の変化や欠陥に大きく影響される。さらに 皮膚疾患による脱毛を含めない場合であっ も、男性だけでなく女性においても加齢に い脱毛現象が増加する傾向にあることが知 れている。特に、男性型脱毛症では、前頭 や頭頂部の毛包が退行し脱毛に至るが、こ ような毛包の退行は、テストステロン(男性 ホルモン)の影響によるものであることが知 れており、男性ホルモンを標的とした育毛 が開発されている(特開2004-248632号公報)。そ 他、毛包退行の要因として、毛包を含む皮 の結合組織における形態学的変化も、脱毛 象の一因となっている。

 脱毛や毛髪の脱色素化の抑制を目的とし 、これまでにも血管拡張剤や植物抽出物等 様々な方法が講じられて来たが、何れも上 問題を解決するには至っておらず、脱毛抑 剤や毛髪の脱色素化抑制剤の開発は、医薬 およびバイオ関連製品開発の分野で望まれ いる。

 また、加齢に伴う毛髪の脱色素化(白毛化 )と脱毛がどのようなメカニズムで起こって るかは明らかとなっていない。

 しかしながら、これらのメカニズムの解 は、脱毛治療や皮膚や毛髪再生老化制御、 髪治療、あるいは皮膚恒常性維持を目的と た医薬品およびバイオ関連製品開発の分野 望まれている。

 本発明は上記事情に鑑みてなされたもの あり、脱毛の抑制方法又は毛髪の脱色素化 抑制方法の提供を目的とする。

 また、本発明の別の目的は、上記メカニ ムを解明し、脱毛治療、白髪治療、皮膚や 髪の再生老化制御、あるいは皮膚恒常性維 等へ役立つ技術を提供することである。

 本発明に至る過程では、本発明者は、XVII 型コラーゲン遺伝子欠損(COL17KO)マウスにおい て加齢に伴って見られる白毛化と脱毛に先立 ち、色素幹細胞及び毛包幹細胞が消失するこ とを見いだした。そこで、COL17KOマウスにお て毛包幹細胞を含む領域で特異的にヒトXVII コラーゲンを発現させたところ、色素幹細 および毛包幹細胞の異常分化が抑制され、 態・分布にも異常が見られず、脱毛及び白 化は認められなかったことを確認した。以 から、XVII型コラーゲンにより脱毛及び白毛 化が抑制されることが明らかとなり、本発明 を完成した。

 一部繰り返しになるが、脱毛及び白毛化 メカニズムに着目して説明すれば、本発明 至る過程では、本発明者は、まず、XVII型コ ラーゲンの皮膚での発現を詳細に解析し、特 異的に発現する領域を見いだした。さらに、 COL17KOマウスを、色素幹細胞に着目して観察 たところ、白毛化と脱毛に先立ち、色素幹 胞がバルジ領域において成熟色素細胞へと 所性分化し、それに引き続いて、色素幹細 の消失を認めた。さらに、毛包幹細胞につ て調べたところ、毛包幹細胞は未分化角化 胞としてバルジ領域を構成していることに えて、そのバルジ領域を構成する未分化角 細胞が異常な成熟分化をすることにより毛 幹細胞が消失することも観察された。以上 ら、XVII型コラーゲンが色素幹細胞及び毛包 細胞の維持に必須であり、その維持不全に り白毛化および脱毛を発症することが判明 た。以上の結果より、XVII型コラーゲンの欠 損は白毛化を来たし、その白毛化は色素幹細 胞の消失に起因することが明らかとなり、XVI I型コラーゲンにより色素幹細胞及び毛包幹 胞の異常分化が抑制され、その消失が抑制 れることによって色素幹細胞及び毛包幹細 が維持されることが証明され、本発明を完 した。

 すなわち、本発明によれば、(i)配列番号: 1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲ 、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80% 上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ脱毛 抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異 体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列 コードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番 号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にス リンジェントな条件下でハイブリダイズす 核酸がコードし、かつ脱毛を抑制する活性 有するXVII型コラーゲン変異体を哺乳動物に 有効量投与する脱毛の抑制方法が提供される 。本発明は、後述の実施例に示すように、XVI I型コラーゲンにより、脱毛を抑制する。

 さらに、本発明によれば、(i)配列番号:1 示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン (ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以 のアミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の 色素化を抑制する活性を有するXVII型コラー ゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオ ド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は( iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相 鎖にストリンジェントな条件下でハイブリ イズする核酸がコードし、かつ毛髪の脱色 化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン 変異体を哺乳動物に有効量投与する毛髪の脱 色素化の抑制方法が提供される。本発明は、 後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲ により、毛髪の脱色素化を抑制する。

 また、本発明によれば、XVII型コラーゲン 又はその変異体が毛包幹細胞を含む領域にお いて発現するように制御するプロモーター配 列、及び該プロモーター配列の下流に(i)配列 番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラ ーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少 くとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、か 脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲ ン変異体をコードするヌクレオチド配列、若 しくは(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列 、若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又 その相補鎖にストリンジェントな条件下で イブリダイズし、かつ脱毛を抑制する活性 有するXVII型コラーゲン変異体をコードする ヌクレオチド配列を有するベクターを哺乳動 物に有効量投与する脱毛の抑制方法が提供さ れる。本発明は、後述の実施例に示すように 、XVII型コラーゲンにより、脱毛を抑制する

 また、本発明によれば、XVII型コラーゲン 又はその変異体が毛包幹細胞を含む領域にお いて発現するように制御するプロモーター配 列、及び該プロモーター配列の下流に(i)配列 番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラ ーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少 くとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、か 毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII 型コラーゲン変異体をコードするヌクレオチ ド配列、若しくは(ii)配列番号:2に示すヌクレ オチド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオ ド配列又はその相補鎖にストリンジェント 条件下でハイブリダイズし、かつ毛髪の脱 素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲ ン変異体をコードするヌクレオチド配列を有 するベクターを哺乳動物に有効量投与する毛 髪の脱色素化の抑制方法が提供される。本発 明は、後述の実施例に示すように、XVII型コ ーゲンにより、毛髪の脱色素化を抑制する

 また、本発明によれば、(i)配列番号:1に すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、( ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上 アミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細 の異所性分化を抑制する活性を有するXVII型 コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌ レオチド配列がコードするXVII型コラーゲン 又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又は の相補鎖にストリンジェントな条件下でハ ブリダイズする核酸がコードし、かつ色素 細胞の異所性分化を抑制する活性を有するX VII型コラーゲン変異体を哺乳動物に有効量投 与する色素幹細胞の異所性分化の抑制方法が 提供される。本発明は、後述の実施例に示す ように、XVII型コラーゲンまたはその変異体 より、色素幹細胞の異所性分化を抑制する

 さらに、本発明によれば、(i)配列番号:1 示すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン (ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以 のアミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹 胞の消失を抑制する活性を有するXVII型コラ ーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレ チド配列がコードするXVII型コラーゲン、又 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその 補鎖にストリンジェントな条件下でハイブ ダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細 の消失を抑制する活性を有するXVII型コラー ゲン変異体を哺乳動物に有効量投与する色素 幹細胞の消失の抑制方法が提供される。本発 明は、後述の実施例に示すように、XVII型コ ーゲンまたはその変異体により、色素幹細 の消失を抑制する。

 また、本発明によれば、(i)配列番号:1に すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、( ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上 アミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細 の異常分化を抑制する活性を有するXVII型コ ラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌク オチド配列がコードするXVII型コラーゲン、 は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はそ 相補鎖にストリンジェントな条件下でハイ リダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹 胞の異常分化を抑制する活性を有するXVII型 コラーゲン変異体を哺乳動物に有効量投与す る毛包幹細胞の異常分化の抑制方法が提供さ れる。本発明は、後述の実施例に示すように 、XVII型コラーゲンまたはその変異体により 毛包幹細胞の異常分化を抑制する。

 また、本発明によれば、(i)配列番号:1に すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、( ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上 アミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細 の消失を抑制する活性を有するXVII型コラー ゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオ ド配列がコードするXVII型コラーゲン、又は( iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相 鎖にストリンジェントな条件下でハイブリ イズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞 消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲ ン変異体を哺乳動物に有効量投与する毛包幹 細胞の消失の抑制方法が提供される。本発明 は、後述の実施例に示すように、XVII型コラ ゲンまたはその変異体により、毛包幹細胞 消失を抑制する。

 なお、上記のXVII型コラーゲンに関する脱 毛の抑制方法、毛髪の脱色素化の抑制方法、 色素幹細胞の異所性分化の抑制方法、色素幹 細胞の消失の抑制方法、毛包幹細胞の異常分 化の抑制方法、毛包幹細胞の消失の抑制方法 は本発明の一態様であり、本発明は、以上の 構成要素の任意の組合せであってもよい。ま た、本発明の脱毛抑制剤、毛髪の脱色素化抑 制剤、色素幹細胞の異所性分化抑制剤、色素 幹細胞の消失抑制剤、毛包幹細胞の異常分化 抑制剤、毛包幹細胞の消失抑制剤、脱毛抑制 のための組成物、毛髪の脱色素化抑制のため の組成物、脱毛治療薬および毛髪の脱色素化 治療薬なども、同様の構成を有し、同様の作 用効果を奏する。

 本発明によれば、後述の実施例に示すよ に、ヒトXVII型コラーゲンまたはその変異体 により、脱毛、毛髪の脱色素化、色素幹細胞 の異所性分化、色素幹細胞の消失、毛包幹細 胞の異常分化、又は毛包幹細胞の消失を抑制 する。

図1は、COL17KOマウスでみられる白毛化 よび脱毛、コントロールマウスにおけるXVII コラーゲン発現を示す図である。(a)COL17KOマ ウスの写真。上から生後2週・6週・2ヵ月・3 月・6ヵ月・10ヵ月のマウスを示す。進行性 脱毛及び白毛化がみられた。(b)10ヵ月のコン トロールの写真。 (c) 左:XVII型コラーゲンは バルジ領域及び表皮の基底細胞で強く発現し ている。右:色素幹細胞は毛包幹細胞に囲ま ている。(d)出生後6日、3ヵ月、5ヵ月のコン ロールのLacZ染色像。(e)ノックアウトマウス( KOマウス)のLacZ染色像。KOマウスではコントロ ールマウスに比べてLacZ陽性色素幹細胞は徐 に減少し、分化した像が目立つようになる 5ヵ月以降では陽性細胞はほぼ全て消失する (f) RT-PCR。GFP陽性色素細胞ではXVII型コラー ンの発現は認めない。 図2は、色素幹細胞のニッチである毛包 幹細胞の消失を示す図である。(a)生後3ヵ月 より、表皮の肥厚、脂腺の増大がみられた (b)生後6ヵ月頃より、毛包が嚢胞化する像も られた。(c)生後10ヵ月では、毛包など皮膚 属器は消失する。(d)α6インテグリンとCD34二 陽性の毛包幹細胞は、COL17KOマウスでは著し く減少した。 (e)コントロール組織の毛包幹 胞マーカーでの染色。(f)COL17KOマウス組織の 毛包幹細胞マーカーでの染色。COL17KOマウス はケラチン15・CD34・α6インテグリン・S100a6 性細胞を認めなかった。 図3は、表皮基底層におけるCOL17発現の組換遺 伝子による回復によって、MSCが回復し、COL17 m-/- マウスにおけるc-Mycの調整および皮膚の構造 正常化したことを示す図である。具体的に 、COL17 m-/- マウスにK14-hCOL17組換遺伝子が導入された。(a )(c)は、6月齢のCOL17 m-/- マウス(a)およびK14-hCOL17組換遺伝子が導入さ たCOL17 m-/- マウス(c)の肉眼観察による表現型を示す。(b) (d)は、皮膚におけるヒトCOL17の発現を示す。( d)に示すように、ヒトCOL17は、COL17発現が回復 したマウスの毛包幹のバルジ領域(矢印)およ IFE(三角)において同様に局在している。(e)~( h)は、バルジ領域(MSCs)(矢印)における Dct-lacZ 素幹細胞の形態・分布がCOL17 m-/- マウスにおいてK14-hCOL17組換遺伝子が導入さ ることによって(h)に示すように正常化する とを示す図である。

符号の説明

 Sg sebaceous gland
 IFE interfolliculr epidermis
 Bg  bulge area 
 de dermis
 su subcutis

 (発明の経緯)
 一般的に「脱毛」とは当初充分な量の毛髪 有していたのが徐々に毛髪が減少していく 象を意味し、「白髪」とは当初黒い毛髪を していたのが徐々に白い毛髪が増えていく 象を意味する。

 そこで、本発明者は、まず経時的にマウ の毛の観察を行い、生下時から毛に異常が るのか、いつから毛の異常がはじまるのか 細に観察を行い、加齢に伴ってまず白毛化 はじまり、ついで脱毛化もみられるように り、進行性に進むことを明らかにした。さ に、加齢に伴う毛髪の脱色素化と脱毛がど ようなメカニズムで起こっているかを明ら とするため、XVII型コラーゲンの皮膚での発 現を詳細に解析したところ、毛包間表皮に加 えて毛包バルジ領域(毛包幹細胞に相当する 胞群)にその発現を特異的に認めた。さらに 加齢に伴い脱毛及び白毛化が起こるCOL17KOマ ウスを、色素幹細胞に着目して調べた。する と、白毛化と脱毛に先立ち、色素幹細胞がバ ルジ領域において成熟色素細胞へと異所性分 化し、それに引き続いて消失することから、 さらに、色素幹細胞の維持に重要となる周囲 の毛包幹細胞について調べたところ、毛包幹 細胞が未分化角化細胞としてバルジ領域を構 成していることに加えて、そのバルジ領域を 構成する未分化角化細胞が、表皮や脂腺等な どの通常は抑制されている分化方向に対して 異常な成熟分化を示すことにより、毛包幹細 胞が消失することを認めた。また、COL17KOマ スにおいて毛包幹細胞を含む領域で特異的 発現するプロモーター(ケラチン14プロモー ー)を用いてヒトXVII型コラーゲンを発現させ たところ、色素幹細胞および毛包幹細胞の異 常分化が抑制され、形態・分布にも異常が見 られず、脱毛及び白毛化は認められなかった ことを確認した。以上の知見は、脱毛治療や 白髪治療を目的として、皮膚のXVII型コラー ンを標的とした医薬品およびバイオ関連製 開発に応用できることを強く示唆する。

 以上の結果より、ヒトXVII型コラーゲンの 欠損により色素幹細胞及び毛包幹細胞の消失 が起こり、その結果、脱毛及び白毛化を来た すことが明らかとなった。さらに、XVII型コ ーゲンにより毛包幹細胞及び色素幹細胞の 失を抑制し、脱毛及び白毛化を抑制するこ が可能であることが明らかとなった。また XVII型コラーゲンにより毛包幹細胞及び色素 細胞の異常分化及び消失が抑制されること よって色素幹細胞及び毛包幹細胞を維持す ことが可能であることが明らかとなり、本 明を完成した。

 以下、本発明の実施の形態について、詳細 説明する。
 (概要)
 本実施形態は、(i)配列番号:1に示すアミノ 配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号 :1のアミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸 列同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性 有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番 :2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオ ド配列又はその相補鎖にストリンジェント 条件下でハイブリダイズする核酸がコード 、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コ ラーゲン変異体を哺乳動物に有効量投与する 脱毛の抑制方法である。後述の実施例に示す ように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲ 変異体は、脱毛を抑制するという機能を有 る。

 さらに、本実施形態は、(i)配列番号:1に すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、( ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上 アミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱 素化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲ ン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチ 配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv) 配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補 にストリンジェントな条件下でハイブリダ ズする核酸がコードし、かつ毛髪の脱色素 を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変 異体を哺乳動物に有効量投与する毛髪の脱色 素化の抑制方法である。後述の実施例に示す ように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲ 変異体は、毛髪の脱色素化を抑制するとい 機能を有する。

 また、本実施形態は、XVII型コラーゲン又 はその変異体が毛包幹細胞を含む領域におい て発現するように制御するプロモーター配列 、及び該プロモーター配列の下流に(i)配列番 号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラー ゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少な とも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ 毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン 変異体をコードするヌクレオチド配列、若し くは(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、 若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又は の相補鎖にストリンジェントな条件下でハ ブリダイズし、かつ脱毛を抑制する活性を するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌ クレオチド配列を有するベクターを哺乳動物 に有効量投与する脱毛の抑制方法である。後 述の実施例に示すように、XVII型コラーゲン はXVII型コラーゲン変異体は、脱毛を抑制す という機能を有するため、XVII型コラーゲン 又はXVII型コラーゲン変異体を毛包幹細胞を む領域で発現させるベクター自体も脱毛を 制する。

 また、本実施形態は、XVII型コラーゲン又 はその変異体が毛包幹細胞を含む領域におい て発現するように制御するプロモーター配列 、及び該プロモーター配列の下流に(i)配列番 号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラー ゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配列と少な とも80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ 髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII型 コラーゲン変異体をコードするヌクレオチド 配列、若しくは(ii)配列番号:2に示すヌクレオ チド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチ 配列又はその相補鎖にストリンジェントな 件下でハイブリダイズし、かつ毛髪の脱色 化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン 変異体をコードするヌクレオチド配列を有す るベクターを哺乳動物に有効量投与する毛髪 の脱色素化の抑制方法である。後述の実施例 に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コ ーゲン変異体は、脱毛を抑制するという機 を有するため、XVII型コラーゲン又はXVII型 ラーゲン変異体を毛包幹細胞を含む領域で 現させるベクター自体も毛髪の脱色素化を 制する。

 また、本実施形態は、(i)配列番号:1に示 アミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii) 配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上の ミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞 異所性分化を抑制する活性を有するXVII型コ ラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌク オチド配列がコードするXVII型コラーゲン、 は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はそ 相補鎖にストリンジェントな条件下でハイ リダイズする核酸がコードし、かつ色素幹 胞の異所性分化を抑制する活性を有するXVII 型コラーゲン変異体を哺乳動物に有効量投与 する色素幹細胞の異所性分化の抑制方法であ る。後述の実施例に示すように、XVII型コラ ゲンまたはその変異体は、色素幹細胞の異 性分化を抑制するという機能を有する。

 さらに、本実施形態は、(i)配列番号:1に すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、( ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上 アミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細 のバルジ領域での成熟色素細胞への分化を 制する活性を有するXVII型コラーゲン変異体 、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列が ードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号 :2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にスト ンジェントな条件下でハイブリダイズする 酸がコードし、かつ色素幹細胞のバルジ領 での成熟色素細胞への分化を抑制する活性 有するXVII型コラーゲン変異体を哺乳動物に 有効量投与する、色素幹細胞のバルジ領域で の成熟色素細胞への分化の抑制方法である。 後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲ またはその変異体は、色素幹細胞のバルジ 域での成熟色素細胞への分化や引き続いて こる細胞消失を抑制して幹細胞維持を促進 るという機能を有する。その結果、バルジ 域における色素幹細胞の成熟色素細胞への 所性分化が抑制され、色素幹細胞の消失が 制される。

 また、本実施形態は、(i)配列番号:1に示 アミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii) 配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上の ミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞 消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲ ン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチ 配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv) 配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補 にストリンジェントな条件下でハイブリダ ズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の 失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン 変異体を哺乳動物に有効量投与する色素幹細 胞の消失の抑制方法である。後述の実施例に 示すように、XVII型コラーゲンまたはその変 体は、色素幹細胞の消失を抑制するという 能を有する。

 さらに、本実施形態は、(i)配列番号:1に すアミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、( ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上 アミノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細 のバルジ領域での成熟色素細胞への分化に き続いて起こる消失を抑制する活性を有す XVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に すヌクレオチド配列がコードするXVII型コラ ゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配 又はその相補鎖にストリンジェントな条件 でハイブリダイズする核酸がコードし、か 色素幹細胞のバルジ領域での成熟色素細胞 の分化に引き続いて起こる消失を抑制する 性を有するXVII型コラーゲン変異体を哺乳動 物に有効量投与する、色素幹細胞のバルジ領 域での成熟色素細胞への分化に引き続いて起 こる消失の抑制方法である。後述の実施例に 示すように、XVII型コラーゲンまたはその変 体は、色素幹細胞のバルジ領域での成熟色 細胞への分化に引き続いておこる消失を抑 して幹細胞維持を促進するという機能を有 る。その結果、バルジ領域における色素幹 胞の成熟色素細胞への分化に引き続いて起 る消失が抑制され、色素幹細胞の維持が促 される。

 また、本実施形態は、(i)配列番号:1に示 アミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii) 配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上の ミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞 異常分化を抑制する活性を有するXVII型コラ ーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレ チド配列がコードするXVII型コラーゲン、又 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその 補鎖にストリンジェントな条件下でハイブ ダイズする核酸がコードし、かつ毛包幹細 の異常分化を抑制する活性を有するXVII型コ ラーゲン変異体を哺乳動物に有効量投与する 、毛包幹細胞の異常分化の抑制方法である。 後述の実施例に示すように、XVII型コラーゲ またはその変異体は、毛包幹細胞の異常分 抑制及び/又は維持促進するという機能を有 る。

 また、本実施形態は、(i)配列番号:1に示 アミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii) 配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上の ミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞 成熟した表皮毛包脂腺系細胞への分化を抑 する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、 (iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコ ドするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2 ヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリ ジェントな条件下でハイブリダイズする核 がコードし、かつ毛包幹細胞の成熟した表 毛包脂腺系細胞への分化を抑制する活性を するXVII型コラーゲン変異体を哺乳動物に有 効量投与する、毛包幹細胞の成熟した表皮毛 包脂腺系細胞への分化の抑制方法である。後 述の実施例に示すように、毛包幹細胞はバル ジ領域を構成しており、XVII型コラーゲンま はその変異体は、その毛包幹細胞が未分化 化細胞から異常な方向へ成熟分化すること 抑制するという機能を有する。その結果、 ルジ領域における毛包幹細胞の成熟した細 への異常分化が抑制され、毛包幹細胞の消 が抑制される。

 また、本実施形態は、(i)配列番号:1に示 アミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii) 配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上の ミノ酸配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞 消失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲ ン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチ 配列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv) 配列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補 にストリンジェントな条件下でハイブリダ ズする核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の 失を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン 変異体を哺乳動物に有効量投与する、毛包幹 細胞の消失の抑制方法である。後述の実施例 に示すように、XVII型コラーゲンまたはその 異体は、毛包幹細胞の消失抑制及び/又は維 促進するという機能を有する。

 また、本実施形態は、(i)配列番号:1に示 アミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii) 配列番号:1のアミノ酸配列に対して80%以上の ミノ酸配列同一性を有し、かつ包幹細胞の ルジ領域を構成する未分化角化細胞からの 常な成熟分化による毛包幹細胞消失を抑制 る活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(ii i)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコー するXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2の クレオチド配列又はその相補鎖にストリン ェントな条件下でハイブリダイズする核酸 コードし、かつ包幹細胞のバルジ領域を構 する未分化角化細胞からの異常な成熟分化 よる毛包幹細胞消失を抑制する活性を有す XVII型コラーゲン変異体を哺乳動物に有効量 投与する、毛包幹細胞のバルジ領域を構成す る未分化角化細胞からの異常な成熟分化によ る毛包幹細胞消失の抑制方法である。後述の 実施例に示すように、XVII型コラーゲンまた その変異体は、毛包幹細胞のバルジ領域を 成する未分化角化細胞から表皮や脂腺等へ 成熟分化による消失を抑制するという機能 有する。その結果、バルジ領域における毛 幹細胞のバルジ領域を構成する未分化角化 胞からの成熟分化による消失が抑制され、 包幹細胞の維持が促進される。

 (XVII型コラーゲン)
 ここで使用される「XVII型コラーゲン」とい う用語は、天然配列XVII型コラーゲンを含む ここに記載されるXVII型コラーゲンは、組換 又は合成方法により調製しても種々の供給 から単離してもよい。

 「天然配列XVII型コラーゲン」は、天然由 来のXVII型コラーゲンのアミノ酸配列を有す ポリペプチドである。このような天然配列XV II型コラーゲンは、組換え又は合成手段によ 生産することもでき、種々の供給源から単 することもできる。

 (XVII型コラーゲン変異体ポリペプチド)
 「XVII型コラーゲン変異体」とは、ここに開 示される全長天然配列XVII型コラーゲンと80% 上のアミノ酸配列同一性を有するXVII型コラ ゲンを意味する。このようなXVII型コラーゲ ン変異体には、全長天然アミノ酸配列のN-又 C-末端において一又は複数(例えば、2、3・ ・)のアミノ酸残基が付加、置換若しくは欠 されたXVII型コラーゲンが含まれる。通常、 XVII型コラーゲン変異体は、ここに開示され 全長天然アミノ酸配列、ここに開示された 長天然配列XVII型コラーゲン配列と80%以上の ミノ酸配列同一性、好ましくは90%以上のア ノ酸配列同一性、より好ましくは95%以上の ミノ酸配列同一性を有している。なお、以 に示す配列番号:1には、全長天然配列XVII型 ラーゲンのアミノ酸配列が示されている。

 ここに定義される「パーセント(%)アミノ 配列同一性」は、配列を整列させ、最大の ーセント配列同一性が得られるように間隙 導入してもよく、保存的置換を配列同一性 一部と考えないとした、XVII型コラーゲン配 列のアミノ酸残基と同一である候補配列中の アミノ酸残基のパーセントとして定義される 。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する 目的のためのアラインメントの選択は、当業 者によく知られた方法、例えばBLAST、BLAST-2、 ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような に入手可能なコンピュータソフトウエアを 用することにより可能である。当業者であ ば、比較される配列の全長に対して最大の ラインメントを達成するために必要な任意 アルゴリズムを含むアラインメントを測定 るために、適切なパラメータを決定するこ ができる。

 (XVII型コラーゲン変異体ポリヌクレオチド)
 「変異体ポリヌクレオチド」とは、ポリペ チドが本来持っている活性を有するポリペ チドをコードする核酸分子であり、ここに 示する全長天然配列XVII型コラーゲンポリペ プチド配列をコードするヌクレオチド配列に 対して80%以上の配列同一性を有する。通常は 、XVII型コラーゲン変異体ポリペプチドヌク オチドは、ここに開示する全長天然配列XVII コラーゲンポリペプチド配列をコードする 酸配列に対して80%以上の核酸配列同一性、 ましくは90%の核酸配列同一性、より好まし は95%の核酸配列同一性を有している。変異 は、天然ヌクレオチド配列を含まない。な 、以下に示す配列番号:2には、ヒトXVII型コ ーゲンをコードする完全長配列が含まれて る。

 ここで同定されるXVII型コラーゲンコード 化核酸配列に対する「パーセント(%)核酸配列 同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセ ント配列同一性が得られるように間隙を導入 してもよく、XVII型コラーゲンポリペプチド ード化核酸配列のヌクレオチドと同一であ 候補配列中のヌクレオチドのパーセントと て定義される。パーセント核酸配列同一性 決定する目的のためのアラインメントの選 は、当業者にはよく知られた方法、例えばBL AST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエ のような公に入手可能なコンピュータソフ ウエアを使用することにより可能である。 業者であれば、比較される配列の全長に対 て最大のアラインメントを達成するために 要な任意のアルゴリズムを含むアラインメ トを測定するために、適切なパラメータを 定することができる。

 他の実施態様では、XVII型コラーゲン変異 体ポリヌクレオチドは、XVII型コラーゲン変 体ポリペプチドをコードし、好ましくはス リンジェントなハイブリダイゼーション及 洗浄条件下で、配列番号:1に示すポリペプチ ドをコードするヌクレオチド配列にハイブリ ダイゼーションする核酸分子である。XVII型 ラーゲン変異体ポリペプチドは、XVII型コラ ゲン変異体ポリヌクレオチドにコードされ ものであってもよい。

 (毛髪)
 ここでいう毛髪とは、ケラチンを主成分と る毛幹及び毛根からなる皮膚の付属器官の とをいい、例えば、頭髪や体毛等がこれに まれる。

 (脱毛)
 ここでいう脱毛とは、例えば加齢や病気に り、毛髪の一部若しくは全部が抜け落ちる とをいう。その原因として様々な要因が考 られるが、男性ホルモンの上昇や毛包を含 皮膚の結合組織における形態学的変化が原 となるほか、毛包幹細胞の消失もその一因 なりうる。

 (脱毛の抑制)
 ここでいう脱毛の抑制とは、除毛した毛等 くなった毛の伸長を促進することとは異な 、例えば皮膚の結合組織における形態学的 化等の要因により起こる脱毛を抑制するこ 等をいう。

 (毛髪の脱色素化)
 ここでいう毛髪の脱色素化とは、本来メラ ン色素を有する毛髪が、色素細胞からのメ ニン色素の供給が減少することにより、毛 の色が白色に近づいていくことをいう。例 ば、頭髪の白髪への変化や体毛の白毛化が れに含まれる。

 (皮膚の構造)
 皮膚は表面から順番に表皮、真皮、皮下組 の3つの層に分かれており、身体の全表面を 覆って、外界との境をなし、内臓などの内部 諸器官を外部の刺激や衝撃から保護している 。また、表皮は、角質層、顆粒層、有棘層及 び基底層で構成されている。基底層は、表皮 の最下層にあり、真皮とは波形になって接し ている。基底層を構成する基底細胞は、立方 体又は円柱状をした細胞が一列に並ぶ単層構 造からなり、数個おきに色素細胞が点在する 。紫外線があたる等の刺激により色素細胞か らメラニン色素が生成される。基底層では、 真皮の毛乳頭の毛細血管から栄養を補給され 常に細胞分裂を行い細胞の新生、増殖を繰り 返している。

 (幹細胞)
 幹細胞とは、高い自己維持能(自己複製能) 示し、分化した子孫細胞を供給できる未分 な細胞のことをいう。例えば、色素細胞を 孫細胞として供給する色素幹細胞や、未分 角化細胞としてバルジ領域を構成し、表皮 汗腺及び皮脂腺等の皮膚付属器官へと分化 る能力を有する毛包幹細胞等が挙げられる

 (ニッチ)
 ニッチとは、幹細胞にとっての生態的適所 いう。通常、組織幹細胞の局在部位をニッ と呼んでいる。ニッチ環境において、幹細 は未分化な状態に維持される。例えば、色 幹細胞や毛包幹細胞のニッチはバルジ領域 存在する。通常、バルジ領域において色素 細胞から増殖した子孫細胞の一部は、バル 領域から毛母へ移動し、そこで色素細胞に 化・成熟してメラニン色素を毛に供給する

 (色素幹細胞の異常分化)
 色素幹細胞の異常分化とは、本来野生型マ スでは未分化な状態で維持されるバルジ領 (ニッチ)において、異所性に(場違いに)色素 幹細胞がメラニン顆粒を持ち樹状の形態を獲 得するなど成熟分化してしまうことをいう。 通常、この異所性分化した細胞は維持されな いで消失する。例えば、バルジ領域において 色素幹細胞が未分化性を喪失し、成熟した色 素細胞に分化すること等をいう。

 (毛包幹細胞の異常分化)
 毛包幹細胞の異常分化とは、毛包幹細胞が 己維持することなく異常な分化方向へと分 していくことをいう。例えば、バルジ領域 おいて毛包幹細胞が幹細胞性を維持できな なり、毛包、表皮、脂腺などへと分化して まうなど正常の制御を逸した分化をいう。

 (剤形)
ここで、本実施形態の脱毛抑制剤又は毛髪の 脱色素化抑制剤は、経口投与や経皮投与によ りその効果を奏する可能性が考えられ、その 剤形として、例えば散剤、丸剤、錠剤、カプ セル剤、クリーム剤、内用液剤、注射剤であ ってもよく、また、ヘアトニック、ヘアロー ション、ヘアクリーム、エアゾール、軟膏、 シャンプーやリンス等へ添加することも考え られる。

 (ベクター)
ベクターは、組換えDNA手順に都合よく付すこ とのできるいずれのベクターであってもよく 、またベクターの選択は該ベクターを導入し ようとする宿主細胞に依存することが多い。 従って、ベクターは、自己複製ベクター、す なわちその複製が染色体複製から独立してい る染色体外物質として存在するベクターであ ってもよい。そのようなベクターとしては例 えばプラスミド、ファージ、コスミド、ミニ 、クロモゾーム、またはウイルスが挙げられ る。あるいはまた、ベクターは、宿主細胞に 導入されると宿主細胞ゲノムに一体化されそ してその中に一体化された一つまたは複数の クロモゾームと共に複製されるものであって よい。適切なベクターの例は細菌発現ベクタ ーおよび酵母発現ベクターである。前記ウイ ルスベクターの例として、アデノウイルス、 レトロウイルス、SV40のようなパポバウイル 、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、仮 狂犬病ウイルス等のウイルス由来のベクタ 等が挙げられるがこれらに限定されるもの はない。本発明において構築した発現ベク ーにより、XVII型コラーゲンを任意の場所で 現させることができる。

 (プロモーター)
 ここでいうプロモーターとは、プロモータ 配列の下流に存在するポリペプチドの発現 制御する配列のことをいい、ここでは特に 包幹細胞を含む領域において発現させるこ が可能なプロモーターが望ましい。例えば K14プロモーターやK5プロモーター等が挙げ れるが、後述する実施例では、毛包幹細胞 含む表皮基底層における特異的な発現を制 するプロモーターとして、ケラチン14プロモ ーターを用いている。

 (投与方法)
 ここでいう投与方法は、上記剤又は組成物 投与する方法であり、ここで、本実施形態 脱毛抑制剤又は毛髪の脱色素化抑制剤は、 口投与や経皮投与によりその効果を奏する 能性が考えられ、例えば散剤、丸剤、錠剤 カプセル剤、クリーム剤、内用液剤やヘア ニック、ヘアローション、ヘアクリーム、 アゾール、軟膏、シャンプーやリンス等へ 加し投与する方法が考えられる。また、注 剤として、医師や看護師による皮下等への 射により投与する方法も考えられる。

 コラーゲンXII又はその変異体は、経口、 皮又は皮下投与による有効な投与量として 体重1kgあたり0.0005mg以上投与されることが ましい。例えば、コラーゲンXII又はその変 体は、所定の投与単位の薬剤中において5,10, 15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,又は100 mg含有されていても良い。これらの下限値以 のコラーゲンXII又はその変異体が経口、経 又は皮下投与により投与されれば、これら 下限値よりも少ない量しか投与しない場合 比べて、ヒトを含む哺乳動物における上述 各種抑制作用が向上するためである。

 (作用効果)
 以下に本実施形態の作用効果について説明 る。
 本実施形態は、加齢に伴う白毛化と脱毛の カニズムを解明し、脱毛治療や白髪治療等 役立つ技術の提供を目的として実験を行っ 結果得られた知見に基づいている。すなわ 、後述の実施例に示すように、色素幹細胞 び毛包幹細胞について詳細に調べたところ 加齢に伴う白毛化と脱毛に先立ち、色素幹 胞及び毛包幹細胞の消失が認められること 明らかとなり、さらに、毛包幹細胞におい 本来発現するヒトXVII型コラーゲンが欠損す ると、毛包幹細胞によって維持されている色 素幹細胞の消失がおこり、これに続いて毛包 幹細胞も消失し始めることが明らかとなった 。これにより、幹細胞が分化細胞を供給でき なくなるため、白髪と脱毛が同時進行するこ とが明らかとなった。

 本実施形態の脱毛の抑制方法は、(i)配列 号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII型コラ ゲン、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列に対し 80%以上のアミノ酸配列同一性を有し、かつ 毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン 変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド 列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配 列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖 ストリンジェントな条件下でハイブリダイ する核酸がコードし、かつ脱毛を抑制する 性を有するXVII型コラーゲン変異体を哺乳動 物に有効量投与する。XVII型コラーゲン又はXV II型コラーゲン変異体は、後述の実施例に示 ように脱毛を抑制するという作用を有する

 さらに、本実施形態の脱毛の抑制方法で 、上記(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミ 酸配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一 を有し、かつ毛包幹細胞の消失による脱毛 抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異 体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列 コードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番 号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖にス リンジェントな条件下でハイブリダイズす 核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の消失に る脱毛を抑制する活性を有するXVII型コラー ゲン変異体を哺乳動物に有効量投与すること による、毛包幹細胞の消失による脱毛の抑制 方法であってもよい。この場合にも、後述の 実施例に示すように、XVII型コラーゲン又はXV II型コラーゲン変異体が毛包幹細胞の消失を 制するという機能を有し、その結果、脱毛 抑制するという効果を奏する。

 また、本実施形態の脱色素化の抑制方法 は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有 るXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1のアミノ 配列に対して80%以上のアミノ酸配列同一性 有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性 有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列番 :2に示すヌクレオチド配列がコードするXVII コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレオ ド配列又はその相補鎖にストリンジェント 条件下でハイブリダイズする核酸がコード 、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有 るXVII型コラーゲン変異体を哺乳動物に有効 量投与する。本実施形態の毛髪の脱色素化の 抑制方法では、後述の実施例に示すように、 XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体 毛髪の脱色素化を抑制する。

 さらに、本実施形態の毛髪の脱色素化の 制方法では、(i)配列番号:1に示すアミノ酸 列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1 アミノ酸配列に対して80%以上のアミノ酸配 同一性を有し、かつ色素幹細胞の消失によ 毛髪の脱色素化を抑制する活性を有するXVII 型コラーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示す クレオチド配列がコードするXVII型コラーゲ 、又は(iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又 その相補鎖にストリンジェントな条件下で イブリダイズする核酸がコードし、かつ色 幹細胞の消失による毛髪の脱色素化を抑制 る活性を有するXVII型コラーゲン変異体を哺 乳動物に有効量投与することによる、色素幹 細胞の消失による毛髪の脱色素化の抑制方法 であってもよい。この場合にも、後述の実施 例に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型 ラーゲン変異体が色素幹細胞の消失を抑制 るという機能を有し、その結果、毛髪の脱 素化を抑制するという効果を奏する。

 また、本実施形態の脱毛の抑制方法では XVII型コラーゲン又はその変異体が毛包幹細 胞を含む領域において発現するように制御す るプロモーター配列、及び該プロモーター配 列の下流に(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列 有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1の ミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列 一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を有 るXVII型コラーゲン変異体をコードするヌク レオチド配列、若しくは(ii)配列番号:2に示す ヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2のヌ レオチド配列又はその相補鎖にストリンジ ントな条件下でハイブリダイズし、かつ脱 を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変 異体をコードするヌクレオチド配列を有する ベクターを哺乳動物に有効量投与する。本実 施形態の脱毛の抑制方法では、後述の実施例 に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コ ーゲン変異体が脱毛を抑制するという作用 有するため、その様な機能を有するXVII型コ ラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体を毛包 細胞を含む領域特異的に発現させるベクタ 自体も脱毛を抑制するという効果を奏する

 また、本実施形態の脱毛の抑制方法では XVII型コラーゲン又はその変異体が表皮基底 層において発現するように制御するプロモー ター配列、及び該プロモーター配列の下流に (i)配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するXVII 型コラーゲン、又は配列番号:1のアミノ酸配 と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有 、かつ脱毛を抑制する活性を有するXVII型コ ラーゲン変異体をコードするヌクレオチド配 列、若しくは(ii)配列番号:2に示すヌクレオチ ド配列、若しくは配列番号:2のヌクレオチド 列又はその相補鎖にストリンジェントな条 下でハイブリダイズし、かつ脱毛を抑制す 活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコー ドするヌクレオチド配列を有するベクターを 哺乳動物に有効量投与する。本実施形態の脱 毛の抑制方法では、後述の実施例に示すよう に、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変 体が脱毛を抑制するという作用を有するた 、そのような機能を有するXVII型コラーゲン 又はXVII型コラーゲン変異体を表皮基底層に 現させるベクター自体も脱毛を抑制すると う効果を奏する。

 また、本実施形態の脱毛の抑制方法では XVII型コラーゲン又はその変異体が表皮基底 細胞特異的に発現するように制御するケラチ ン14プロモーター配列、及び該プロモーター 列の下流に(i)配列番号:1に示すアミノ酸配 を有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1 アミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配 同一性を有し、かつ脱毛を抑制する活性を するXVII型コラーゲン変異体をコードするヌ レオチド配列、若しくは(ii)配列番号:2に示 ヌクレオチド配列、若しくは配列番号:2の クレオチド配列又はその相補鎖にストリン ェントな条件下でハイブリダイズし、かつ 毛を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン 異体をコードするヌクレオチド配列を有す ベクターを哺乳動物に有効量投与する。こ 場合にも、本実施形態の脱毛の抑制方法で 、後述の実施例に示すように、XVII型コラー ゲン又はXVII型コラーゲン変異体が脱毛を抑 するという機能を有するため、そのような 能を有するXVII型コラーゲン又はXVII型コラー ゲン変異体を表皮基底細胞特異的に発現させ ることができるベクター自体も脱毛を抑制す るという効果を奏する。

 また、本実施形態の毛髪の脱色素化の抑 方法では、XVII型コラーゲン又はその変異体 が毛包幹細胞を含む領域において発現するよ うに制御するプロモーター配列、及び該プロ モーター配列の下流に(i)配列番号:1に示すア ノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は配 列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のア ノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色素 を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変 異体をコードするヌクレオチド配列、若しく は(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、若 しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又はそ 相補鎖にストリンジェントな条件下でハイ リダイズし、かつ毛髪の脱色素化を抑制す 活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコー ドするヌクレオチド配列を有するベクターを 哺乳動物に有効量投与する。本実施形態の毛 髪の脱色素化の抑制方法では、後述の実施例 に示すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コ ーゲン変異体が毛髪の脱色素化を抑制する いう作用を有するため、そのような機能を するXVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン 異体を毛包幹細胞を含む領域特異的に発現 せるベクター自体も毛髪の脱色素化を抑制 るという効果を奏する。

 また、本実施形態の毛髪の脱色素化の抑 方法では、XVII型コラーゲン又はその変異体 が表皮基底層において発現するように制御す るプロモーター配列、及び該プロモーター配 列の下流に(i)配列番号:1に示すアミノ酸配列 有するXVII型コラーゲン、又は配列番号:1の ミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列 一性を有し、かつ毛髪の脱色素化を抑制す 活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコー ドするヌクレオチド配列、若しくは(ii)配列 号:2に示すヌクレオチド配列、若しくは配列 番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖に トリンジェントな条件下でハイブリダイズ 、かつ毛髪の脱色素化を抑制する活性を有 るXVII型コラーゲン変異体をコードするヌク レオチド配列を有するベクターを哺乳動物に 有効量投与する。本実施形態の毛髪の脱色素 化の抑制方法では、後述の実施例に示すよう に、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン変 体が毛髪の脱色素化を抑制するという作用 有するため、そのような機能を有するXVII型 コラーゲン又はXVII型コラーゲン変異体を表 基底層に発現させるベクター自体も毛髪の 色素化を抑制するという効果を奏する。

 また、本実施形態の毛髪の脱色素化の抑 方法では、XVII型コラーゲン又はその変異体 が表皮基底細胞特異的に発現するように制御 するケラチン14プロモーター配列、及び該プ モーター配列の下流に(i)配列番号:1に示す ミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、又は 列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%の ミノ酸配列同一性を有し、かつ毛髪の脱色 化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン 異体をコードするヌクレオチド配列、若し は(ii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列、 しくは配列番号:2のヌクレオチド配列又は の相補鎖にストリンジェントな条件下でハ ブリダイズし、かつ毛髪の脱色素化を抑制 る活性を有するXVII型コラーゲン変異体をコ ドするヌクレオチド配列を有するベクター 哺乳動物に有効量投与する。この場合にも 本実施形態の毛髪の脱色素化の抑制方法で 、後述の実施例に示すように、XVII型コラー ゲン又はXVII型コラーゲン変異体が毛髪の脱 素化を抑制するという機能を有するため、 のような機能を有するXVII型コラーゲン又はX VII型コラーゲン変異体を表皮基底細胞特異的 に発現させることができるベクター自体も毛 髪の脱色素化を抑制するという効果を奏する 。

 さらに、本実施形態の色素幹細胞の異所 分化の抑制方法では、(i)配列番号:1に示す ミノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配 列番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のア ノ酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の 所性分化を抑制する活性を有するXVII型コラ ーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレ チド配列がコードするXVII型コラーゲン、又 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその 補鎖にストリンジェントな条件下でハイブ ダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細 の異所性分化を抑制する活性を有するXVII型 コラーゲン変異体を哺乳動物に有効量投与す る。本実施形態の色素幹細胞の異所性分化の 抑制方法では、後述の実施例に示すように、 XVII型コラーゲンが色素幹細胞の異所性分化 抑制するという作用を有するため、色素幹 胞の消失を抑制するという効果を奏する。

 さらに、本実施形態の色素幹細胞の異所 分化の抑制方法は、(i)配列番号:1に示すア ノ酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列 番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミ 酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞のバ ジ領域での成熟色素細胞への分化を抑制す 活性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii) 列番号:2に示すヌクレオチド配列がコード るXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌ レオチド配列又はその相補鎖にストリンジ ントな条件下でハイブリダイズする核酸が ードし、かつ色素幹細胞のバルジ領域での 熟色素細胞への分化を抑制する活性を有す XVII型コラーゲン変異体を哺乳動物に有効量 投与する、色素幹細胞のバルジ領域での成熟 色素細胞への分化の抑制方法であってもよい 。この場合にも、本実施形態の色素幹細胞の 異所性分化の抑制方法は、後述の実施例に示 すように、XVII型コラーゲン又はXVII型コラー ン変異体が色素幹細胞のバルジ領域での成 色素細胞への分化を抑制するという機能を するため、色素幹細胞の消失を抑制すると う効果を奏する。

 また、本実施形態の色素幹細胞の細胞死 抑制方法では、(i)配列番号:1に示すアミノ 配列を有するXVII型コラーゲン、又は(ii)配列 番号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミ 酸配列同一性を有し、かつ色素幹細胞の消 を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変 異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配 がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列 番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖に トリンジェントな条件下でハイブリダイズ る核酸がコードし、かつ色素幹細胞の消失 抑制する活性を有するXVII型コラーゲン変異 体を哺乳動物に有効量投与する。本実施形態 の色素幹細胞の細胞死の抑制方法では、後述 の実施例に示すように、XVII型コラーゲン又 XVII型コラーゲン変異体が色素幹細胞の消失 抑制するという作用を有するため、色素幹 胞の維持を促進するという効果を奏する。

 さらに、本実施形態の色素幹細胞の細胞 の抑制方法は、(i)配列番号:1に示すアミノ 配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号 :1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸 列同一性を有し、かつ色素幹細胞のバルジ 域での成熟色素細胞への分化に引き続いて こる消失を抑制する活性を有するXVII型コラ ーゲン変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレ チド配列がコードするXVII型コラーゲン、又 (iv)配列番号:2のヌクレオチド配列又はその 補鎖にストリンジェントな条件下でハイブ ダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細 のバルジ領域での成熟色素細胞への分化に き続いて起こる消失を抑制する活性を有す XVII型コラーゲン変異体を哺乳動物に有効量 投与する、色素幹細胞のバルジ領域での成熟 色素細胞への分化に引き続いて起こる消失の 抑制方法であってもよい。この場合にも、本 実施形態の色素幹細胞の細胞死の抑制方法で は、後述の実施例に示すように、XVII型コラ ゲン又はXVII型コラーゲン変異体が色素幹細 のバルジ領域での成熟色素細胞への分化に き続いて起こる消失を抑制するという機能 有するため、色素幹細胞の消失を抑制する いう効果を奏する。

 また、本実施形態の毛包幹細胞の異常分 の抑制方法では、(i)配列番号:1に示すアミ 酸配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番 号:1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ 配列同一性を有し、かつ毛包幹細胞の異常 化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲン 変異体、(iii)配列番号:2に示すヌクレオチド 列がコードするXVII型コラーゲン、又は(iv)配 列番号:2のヌクレオチド配列又はその相補鎖 ストリンジェントな条件下でハイブリダイ する核酸がコードし、かつ毛包幹細胞の異 分化を抑制する活性を有するXVII型コラーゲ ン変異体を哺乳動物に有効量投与する。本実 施形態の毛包幹細胞の異常分化の抑制方法で は、後述の実施例に示すように、XVII型コラ ゲンが毛包幹細胞の異常分化を抑制し、毛 幹細胞の維持を促進するという作用を有す ため、毛包幹細胞の消失を抑制するという 果を奏する。

 また、本実施形態の毛包幹細胞の異常分 の抑制方法は、(i)配列番号:1に示すアミノ 配列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号 :1のアミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸 列同一性を有し、かつ、毛包幹細胞のバル 領域での成熟した細胞への分化を抑制する 性を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配 番号:2に示すヌクレオチド配列がコードす XVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌク オチド配列又はその相補鎖にストリンジェ トな条件下でハイブリダイズする核酸がコ ドし、かつ、毛包幹細胞のバルジ領域での 熟した細胞への分化を抑制する活性を有す XVII型コラーゲン変異体を哺乳動物に有効量 投与する、毛包幹細胞のバルジ領域での成熟 した細胞への分化の抑制方法であってもよい 。後述の実施例に示すように、毛包幹細胞は バルジ領域を構成しており、XVII型コラーゲ 又はXVII型コラーゲン変異体は、毛包幹細胞 未分化角化細胞から異常な方向へ成熟分化 ることを抑制するという機能を有するため この場合にも、同様に毛包幹細胞の異常分 を抑制し、その結果、毛包幹細胞の消失を 制するという効果を奏する。

 また、本実施形態の毛包幹細胞の消失の 制方法では、(i)配列番号:1に示すアミノ酸 列を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1 アミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配 同一性を有し、かつ毛包幹細胞の消失を抑 する活性を有するXVII型コラーゲン変異体、 (iii)配列番号:2に示すヌクレオチド配列がコ ドするXVII型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2 ヌクレオチド配列又はその相補鎖にストリ ジェントな条件下でハイブリダイズする核 がコードし、かつ、毛包幹細胞の消失を抑 する活性を有するXVII型コラーゲン変異体を 哺乳動物に有効量投与する。本実施形態の毛 包幹細胞の消失の抑制方法では、後述の実施 例に示すように、XVII型コラーゲンが毛包幹 胞の消失を抑制し毛包幹細胞の維持を促進 るという作用を有するため、毛包幹細胞の 持を促進するという効果を奏する。

 また、本実施形態の毛包幹細胞の消失の 制方法は、(i)配列番号:1に示すアミノ酸配 を有するXVII型コラーゲン、(ii)配列番号:1の ミノ酸配列と少なくとも80%のアミノ酸配列 一性を有し、かつ毛包幹細胞のバルジ領域 構成する未分化角化細胞から表皮や脂腺等 の異常な成熟分化による消失を抑制する活 を有するXVII型コラーゲン変異体、(iii)配列 号:2に示すヌクレオチド配列がコードするXV II型コラーゲン、又は(iv)配列番号:2のヌクレ チド配列又はその相補鎖にストリンジェン な条件下でハイブリダイズする核酸がコー し、かつ、毛包幹細胞のバルジ領域を構成 る未分化角化細胞から表皮や脂腺等への異 な成熟分化による消失を抑制する活性を有 るXVII型コラーゲン変異体を哺乳動物に有効 量投与する、毛包幹細胞のバルジ領域を構成 する未分化角化細胞から表皮や脂腺等への異 常な成熟分化による消失の抑制方法であって もよい。この場合には、後述の実施例に示す ように、毛包幹細胞はバルジ領域を構成して おり、XVII型コラーゲン又はXVII型コラーゲン 異体は毛包幹細胞が未分化角化細胞から異 な方向へ成熟分化することによる消失を抑 するため、毛包幹細胞の維持を促進すると う効果を奏する。

 以上、配列番号:1に示すアミノ酸配列お び配列番号2に示すヌクレオチド配列を参照 て本発明の実施形態について述べたが、こ らは本発明の例示であり、上記以外の様々 構成を採用することもできる。

 例えば、本実施形態の脱毛の抑制方法ま は毛髪の脱色素化の抑制方法は、XVII型コラ ーゲンまたはその変異体のみを用いる必要は なく、他にも脱毛抑制作用または毛髪の脱色 素化作用が知られている各種成分、あるいは 皮膚、特に頭皮、および体毛、特に毛髪に有 益な活性を有することが知られている各種成 分を好適に併せて用いることができる。その 場合には、それらの各種成分との相加効果ま たは相乗効果によって、さらに優れた脱毛抑 制効果または毛髪の脱色素化効果が得られる ことが期待される。

 例えば、UVブロック剤、たとえばサンス リーン剤; ビタミン(A,C,またはE)およびその 導体(レチニルパルミテート、トコフェリル アセテート、またはトコフェリルパルミテー ト)、;セラミド、;タンパク質およびタンパク 質加水分解物、ペプチド、およびアミノ酸( 然); 尿素およびアラントイン; 糖および糖 導体、たとえば還元または酸化糖; 植物由 の抽出物(アヤメ科植物由来のもの、または ダイズ由来のもの)または微生物由来の抽出 ; ヒドロキシ酸、特にヒドロキシカルボン またはケトカルボン酸(フルーツ酸、サリチ 酸)およびそのエステル(5-n-オクタノイルサ チル酸); ジアゾキシド、スピロオキサゾン またはリン脂質(レシチン、特に脱脂レシチ ); ニコチン酸誘導体(ニコチン酸エステル、 特に、ニコチン酸トコフェリル、ニコチン酸 ベンジルおよびニコチン酸C1~C22アルキル、例 えばニコチン酸メチルもしくはニコチン酸ヘ キシル);ピリミジン誘導体(2,4-ジアミノ-6-ピ リジノピリミジン3-オキシド、ピリミジン3- キシド誘導体、2,4-ジアミノピリミジン3-N- キシド);抗アンドロゲン(ステロイド系もし は非ステロイド系5α-還元酵素阻害剤、酢酸 プロステロン、アゼライン酸とその塩およ 誘導体、フルタミド、プロスタグランジン たとえば塩またはエステル形態のPGF-2αまた はPGE2、並びにこれらの類似体、たとえばラ ノプロスト; 殺菌剤、抗かび剤、または抗 ケ剤(セレン誘導体、ケトコナゾール、オク ピロックス、トリクロカルバン、トリクロ ン、ピリチオン亜鉛、イトラコナゾール、 ジア酸、ヒノキチオール、ミピロシン、テ ラサイクリン、特にエリスロマイシン、塩 クリニシン、ベンゾイルパーオキサイドも くはベンジルパーオキサイド、ミノサイク ン); カルシウムチャネルアンタゴニスト、 およびカリウムチャネルアゴニスト; ホルモ ン; ステロイド系抗炎症剤(グルココルチコ ド、コルチコステロイド)、ならびに非ステ イド系抗炎症剤(グリシルレチン酸およびα- ビサボロール、ベンジダミン); レチノイドRX Rレセプターアゴニストおよびレチノイドア タゴニスト; フリーラジカルスカベンジャ および抗酸化剤(ブチルヒドロキシアニソー またはブチルヒドロキシトルエン); 抗脂漏 剤; 抗寄生虫剤;抗ウイルス剤; 抗痒疹剤;  ロテノイド(β-カロテン); ラクトンおよびそ の相当する塩; 必須脂肪酸(リノレイン酸、 イコサテトラエン酸、リノレン酸、および イコサトリエン酸)またはそれらのエステル よびアミド; 必須オイル; フェノールおよ ポリフェノール、たとえばフラボノイド;な どをXVII型コラーゲンまたはその変異体と一 に好適に用いることができる。

 また、本実施形態の脱毛又は毛髪の脱色 化の抑制方法では、上記の各種の剤あるい 組成物を投与するが、これらの投与対象は 哺乳動物であれば性別・年齢を問わず種も に限定されないが、特に脱毛または毛髪の 色素化の進行が懸念される場合に予防的に るいは治療的に投与されるのが望ましい。 お、親族に脱毛または毛髪の脱色素化が進 する傾向の見られる場合に、遺伝的にXVII型 コラーゲンまたはその変異体の遺伝子を欠損 しているか、その遺伝子の発現が不良である 可能性があるため、特に投与の対象として好 ましい。さらに、これらの投与対象に対して は、事前に周知の種々の手法を用いて遺伝子 を検査を行った結果、実際にXVII型コラーゲ またはその変異体の遺伝子を欠損している 、その遺伝子の発現が不良であることが確 されている雄のヒトを対象とすることがよ 好ましい。

 以下、本発明を実施例によりさらに説明 るが、本発明はこれらに限定されるもので ない。

 実施例1 COL17KOマウスの解析
 1.試験方法
 (1)実験動物
 本研究で用いたDct-lacZトランスジェニック ウスは、英国MRC、Ian Jackson博士のご提供、CA G-CAT-EGFPマウスは大阪大学、宮崎純一教授の 提供、Dcttml(Cre)BeeマウスはFreedrich Beerman博士 のご提供、K14-hCOL17トランスジェニックマウ はウィスコンシン医科大学のKim Yancey教授の 提供、COL17KOマウスは北海道大学大学院医学 究科皮膚科学分野清水宏教授の提供による

 (2)免疫組織化学
 マウスの背部皮膚を4%パラホルムアルデヒ 固定、またはそのままで、OCTcompound (Sakura F inetechnical)で凍結包埋した後、8μmの切片にし 3%スキムミルクを用いて常温で30分間ブロッ キングした。その後、一次抗体を適当に希釈 し4℃で一晩反応させ、PBSで洗浄した後に二 抗体を反応させた。

 免疫染色に使用した一次抗体は、抗ヒトX VII型コラーゲン抗体(N18、Santa Cruz)、抗マウ XVII型コラーゲン抗体(滋賀医科大学田中俊広 教授より提供して頂いた)、抗βガラクトシダ ーゼ抗体 (Cappel)、抗ケラチン15抗体(Covance)、 抗CD34抗体(eBioscience)、抗α6インテグリン抗体( BD Pharmingen)、抗S100a6抗体(LAB VISION)である。 次抗体はAlexaFlour488、568、594(Molecular Probes)を 用いた。

 (3)H.E.染色
 マウスの背部皮膚をブアン固定後にパラフ ン包埋した後、4μmの切片を作製し、ヘマト キシリン及びエオジンを用いて定法により染 色した。

 (4)色素細胞の分離
 生後6日の色素幹細胞を含む色素細胞がGFP陽 性となっているCAG-CAT-EGFP; Dcttml(Cre)Beeマウス 背部皮膚を採取し、1000U/mlのディスパーゼ(S ANKO JUNYAKU)/PBSの中にて4℃で一晩反応させた 、実体顕微鏡下で真皮を取り除いた。その 、0.25%トリプシンを加え、37℃で10分反応さ 、ウシ胎仔血清で中和した後、フローサイ メトリー(FACS)法を用いてGFP陽性の色素細胞 分離した。

 (5)フローサイトメトリー(FACS)分析
 色素細胞の分離には、上記の方法でGFP陽性 胞分画を採取した。また角化細胞について 同様に酵素処理にて用意した皮膚懸濁液を 記のCD34、α6インテグリンの抗体と反応させ た。FACS分析にはBay Bioscience JSANまたはBecton  Dickinson FACS caliberを使用した。

 (6)RT-PCRによるマウスXVII型コラーゲンmRNA発 の解析
 マウス背部皮膚およびGFP陽性の色素細胞か TRIzol(GIBCO)を用いてRNAを抽出した。3μgのRNA THERMOSCRIPT RT-PCR System(GIBCO)を用いて逆転写を 行いcDNAを合成した。以下のプライマーを用 てマウスXVII型コラーゲンmRNA発現の解析を行 った。また、内部標準としてGAPDHmRNAの発現を 測定した。
 ・マウスXVII型コラーゲンのプライマー配列
forward primer:5’-actcgcctcttcttcaacca(配列番号:4)
reverse primer:5’-gagcaggacgccatgttatt(配列番号:5)
・GAPDH
forward primer:5’-accacagtccatgccatcac(配列番号:6)
reverse primer:5’-tccaccaccctgttgctgta(配列番号:7)

 (結果及び考察)
 COL17KOマウスは多くが生後2週間以内に死亡 るが、生存する個体は、生後4週頃までは外 上は正常で、黒色の体毛に覆われていた(図 1a)。しかしその後、徐々に白毛化がみられ、 生後3ヵ月頃には、白毛化・脱毛がかなり目 つようになるとともに、体毛が通常よりも くなってくる現象がみられた。生後6ヵ月頃 は全身がほぼ完全に白毛化し、最終的に10 月頃には全身で脱毛が起こった(図1b)。

 我々は以前に色素幹細胞の維持不全が白 化の原因となりうることを明らかにした。 こで、COL17KOマウスの白毛化の原因が、色素 幹細胞の維持不全にあるのかどうかを調べる ため、色素幹細胞をマーキングできるDct-LacZ ランスジーンをCOL17KOマウスに導入し、COL17K Oマウスの色素幹細胞の分布及び形態を観察 た。その結果、XVII型コラーゲンは、バルジ 域及び表皮の基底細胞で強く発現している と及び色素幹細胞が毛包幹細胞に囲まれた 態で存在していることが明らかとなった(図 1c)。また、COL17KOマウスにおける色素幹細胞 分布・形態は、出生直後において異常は認 なかったが、生後3ヵ月頃より、色素幹細胞 数が徐々に少なくなってくると同時に、メ ニン顆粒をもち胞体がやや大きく複数の突 をもつ分化した形態の成熟した色素細胞が られるようになった(図1d、e)。全身が白毛 を来す5ヵ月頃では、色素幹細胞は完全に消 した。以上の結果から、COL17KOマウスにおけ る白毛化の原因は色素幹細胞の維持不全によ るものと結論づけられた。

 一般的にXVII型コラーゲンは、ヘミデスモ ソームを形成する上皮系の細胞で発現する事 が知られている。色素幹細胞を含む皮膚の色 素細胞においてXVII型コラーゲン発現の有無 調べるため、色素細胞でGFPを発現するマウ (CAG-CAT-EGFP; Dcttml(Cre)Beeマウス)で、GFP陽性の 素細胞のRNAを回収し、RT-PCRを用いて、マウ XVII型コラーゲンmRNAの発現を解析したとこ 、色素幹細胞を含む色素細胞においてXVII型 ラーゲンmRNAの発現がないことを確認した( 1f)。以上の結果より、色素幹細胞ではXVII型 ラーゲンの発現はなく、COL17KOマウスでみら れる色素幹細胞の消失の原因として、色素幹 細胞の周囲の細胞におけるXVII型コラーゲン 現の異常が原因である可能性が示唆された

 毛包幹細胞の異常の有無を調べるため、 初にCOL17KOマウス及びコントロールの背部皮 膚を各週齢で調べた。 H.E.染色組織像の所見 上、生後3ヵ月頃より、表皮の肥厚と脂腺の 大がみられた(図2a)。さらに6ヵ月頃では、毛 包の嚢胞化や、萎縮した毛包が多くみられた (図2b)。最終的に10ヵ月頃では、毛包など皮膚 付属器はほぼ消失した(図2c)。これらの所見 り、毛包の維持にはXVII型コラーゲンが必要 あることが示唆された。また、これらのH.E. 染色組織像の所見は表皮における幹細胞が枯 渇するマウスとして報告されたc-Mycが基底細 で活性化されたマウスや、Rac1が皮膚でノッ クアウトされたマウスのH.E.染色組織像の所 と非常に似ていることがわかった。そこで COL17KOマウスでも、同様に毛包幹細胞が枯渇 ている可能性を考え、毛包幹細胞マーカー ある抗ケラチン15抗体、抗CD34抗体、抗α6イ テグリン抗体、抗S100a6抗体での染色、及びF ACS分析を行い、毛包幹細胞の枯渇が確認でき た(図2d-f)。

 以上の結果より、本実施例において初め 、XVII型コラーゲンの欠損は白毛化を来たし 、色素幹細胞の消失に起因することが明確に 実証された。つまり、毛包幹細胞におけるXVI I型コラーゲンは毛包幹細胞の維持において みならず、色素幹細胞の維持において必須 あることが明らかになった。

 なお、一部繰り返しにはなるが、上記の 特許文献4では、COL17KOマウスにおいて体毛 少なく白毛の割合の多いマウスが見られる とが報告されているが、非特許文献4は、そ そも脱毛・毛髪の脱色素化等に関する研究 告ではない。そのため、COL17KOマウスの体毛 の状態に関しても、何日齢の時点でどのよう な状態であったか等具体的な記載はされてい ない。すなわち、COL17KOマウスが出生当初か 毛髪の量が少なく白い毛髪の割合が多かっ のか、出生当初より充分な量の黒い毛髪を していたのに徐々に毛髪の量が減少し白い 髪の割合が増えていったのかは説明されて ない。その一つの原因は、COL17KOマウスは多 が生後2週間以内に死亡するため、十分な経 過観察が困難だったからでもある。

 これに対して、本実施例では、COL17KOマウ スは多くが生後2週間以内に死亡するが、生 する個体は、生後4週頃までは外見上は正常 、黒色の体毛に覆われていることを十分な 過観察によって明らかにした(図1a)。そして 、その後、さらなる経過観察によって、徐々 に白毛化がみられ、生後3ヵ月頃には、白毛 ・脱毛がかなり目立つようになるとともに 体毛が通常よりも長くなってくる現象がみ れることを明らかにした。そして、約1年の きにわたる経過観察によって、ついに生後6 ヵ月頃には全身がほぼ完全に白毛化し、最終 的に10ヵ月頃には全身で脱毛が起こることを らかにし、コラーゲンXVIIの欠損が哺乳動物 の白毛化・脱毛の原因であることを初めて明 確に実証することに成功した。これまでは、 このようなCOL17KOマウスの体毛状態の長期に たる十分な経過観察が行われていなかった め、本実施例によって、初めてコラーゲンXV IIの欠損が哺乳動物の白毛化・脱毛の原因で ることが明らかになったのである。

 実施例2 COL17KO, K14-hCOL17トランスジェニッ マウスの解析
 (1)実験動物
 COL17KOは、北海道大学大学院医学研究科皮膚 科学分野清水宏教授より提供して頂いた。

 (COL17KO, K14-hCOL17トランスジェニックマウス 作製)
 マウス129Sv/Evゲノムライブラリー(Stratagne社) から、14.7kbのマウスXVII型コラーゲン遺伝子 クローニングし、さらにそこから11.5kbの制 酵素NheI-NotIフラグメントをサブクローニン した。このフラグメント中にあるエクソン2 らイントロン3の部位へPGK/Neoカセットを組 込んでターゲッティングベクター(Stratagne社) を作製し、129Sv/Evマウスの胚性肝細胞に組み えベクターを導入し、正確にターゲット化 れた胚細胞をC57BL/6Jマウスのblastcyteに注入 てキメラマウスを作製した。このキメラマ スとC57BL/6Jマウスとをさらに交配させ、F1ヘ ロ動物を4世代以上にわたってクロスさせて ヘテロマウス(COL17m-/-)を作製した。

 K14プロモーターの下流へXVII型コラーゲン cDNAを組み込むことによって、表皮下層のみ 特異的にヒトXVII型コラーゲンを発現するC57B L/6Jをバックグラウンドとするトランスジェ ックマウス(COL17m+/+、h+マウス)とヘテロマウ (COL17m+/-マウス)を交配した。その結果得ら たヘテロかつヒトXVII型コラーゲントランス ーンを有するマウス(COL17m+/-、h+マウス)同士 を交配し、COL17KO, K14-hCOL17トランスジェニッ マウス(COL17m-/-、h+マウス)を作製した。

 (2)免疫組織化学
 マウスの背部皮膚を実施例1と同様の方法で 免疫染色した。免疫染色に使用した一次抗体 は、抗マウスXVII型コラーゲン抗体(滋賀医科 学田中俊広教授より提供して頂いた)及び抗 βガラクトシダーゼ抗体 (Cappel) である。Dct 染色は、Dct-lacZ transgeneを持つマウスを抗β ラクトシダーゼ抗体で染色した。

 (結果及び考察)
 COL17KOマウスにおいて毛包幹細胞の異常が色 素幹細胞の異常を引き起こすことを確認する ため、ケラチン14プロモーターでヒトXVII型コ ラーゲンが発現するトランスジーンを導入し たCOL17KOマウス(COL17m-/-、h+マウス)を調べた。 のマウスではバルジを含む角化細胞ではヒ XVII型コラーゲンが発現しているが、色素細 胞を含むその他の細胞ではヒト・マウスどち らのXVII型コラーゲンも発現していないこと 確認した(図3a~d(一部データ未掲載))。このマ ウスでは生後5ヵ月を経過しても脱毛及び白 化はみられず(図3a~d)、またDct陽性の色素幹 胞の形態・分布にも異常はみられなかった( 3e~h)。以上の結果より、XVII型コラーゲンの 損は脱毛及び白毛化を来たし、その脱毛及 白毛化は毛包幹細胞及び/又は色素幹細胞の 消失に起因すること、毛包幹細胞でXVII型コ ーゲンを発現させることで毛包幹細胞及び 素幹細胞の消失を防げることが示された。 まり、毛包幹細胞におけるXVII型コラーゲン 、毛包幹細胞の維持においてのみならず、 素幹細胞を維持し、脱毛及び毛髪の脱色素 の抑制において必須であることが明らかに った。

 すなわち、本実施例によって、遺伝的にX VII型コラーゲンを欠損する哺乳動物の毛包幹 細胞においてXVII型コラーゲンを発現させて ることにより、毛包幹細胞に十分な量のXVII コラーゲンを供給してやると、マウスでは 後5ヵ月を経過しても脱毛及び白毛化はみら れず、色素幹細胞の形態・分布にも異常はみ られなかったことが初めて明らかになった。 これまでは、このようなケラチン14プロモー ーでヒトXVII型コラーゲンが発現するトラン スジーンを導入したCOL17KOマウスの体毛状態 よび色素幹細胞の形態・分布の長期にわた 十分な経過観察が行われていなかったため 本実施例によって、初めて毛包幹細胞に十 な量のXVII型コラーゲンを供給してやると、 包幹細胞及び色素幹細胞の消失を防げるた に、脱毛及び白毛化を抑制することができ ことが明らかとなった。

 以上、本発明を実施例に基づいて説明し 。この実施例はあくまで例示であり、種々 変形例が可能なこと、またそうした変形例 本発明の範囲にあることは当業者に理解さ るところである。