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Patent Searching and Data


Title:
METHOD FOR PRODUCING CELLULOSE ETHER DERIVATIVE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/054373
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a commercially efficient and simple method for producing a cellulose ether derivative, wherein a low crystalline powder cellulose is reacted with an epoxy compound in the presence of a catalyst.

Inventors:
OKUTSU MUNEHISA (JP)
TAKAI MASANORI (JP)
NISHIOKA TORU (JP)
IHARA TAKESHI (JP)
NOJIRI NAOKI (JP)
UMEHARA MASAHIRO (JP)
NAKANISHI KOHEI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/069036
Publication Date:
April 30, 2009
Filing Date:
October 21, 2008
Export Citation:
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Assignee:
KAO CORP (JP)
OKUTSU MUNEHISA (JP)
TAKAI MASANORI (JP)
NISHIOKA TORU (JP)
IHARA TAKESHI (JP)
NOJIRI NAOKI (JP)
UMEHARA MASAHIRO (JP)
NAKANISHI KOHEI (JP)
International Classes:
C08B11/08; C08B11/145
Foreign References:
JP2000513042A2000-10-03
JP2002512271A2002-04-23
JPS62236801A1987-10-16
JP2001086957A2001-04-03
JPS61241337A1986-10-27
JPS6020901A1985-02-02
Other References:
See also references of EP 2204386A4
None
Attorney, Agent or Firm:
OHTANI, Tamotsu et al. (Bridgestone Toranomon Bldg.,6F., 25-2, Toranomon 3-chom, Minato-ku Tokyo 01, JP)
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Claims:
 低結晶性の粉末セルロースを、触媒の存在下、エポキシ化合物と反応させる、セルロースエーテル誘導体の製造方法。
 エポキシ化合物が、下記一般式(1)で表されるグリシジルトリアルキルアンモニウム塩、グリシドール、酸化エチレン及び酸化プロピレンからなる群より選ばれる1種である、請求項1に記載のセルロースエーテル誘導体の製造方法。
(式中、R 1 ~R 3 は同一又は異なった炭素数1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
 セルロースエーテル誘導体が、下記一般式(2)で示されるセルロースエーテル誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、又はヒドロキシプロピルセルロースである、請求項1又は2に記載のセルロースエーテル誘導体の製造方法。
(式中、R 4 は、水素原子、下記一般式(3)で示される置換基、又は下記一般式(4)若しくは(5)で示される置換基を示す。ただし、R 4 すべてが水素原子となることはなく、下記一般式(3)で示される置換基と、下記一般式(4)若しくは(5)で示される置換基とは同時に存在することはない。nは100~2000の数を示す。)
(式中、R 1 ~R 3 及びXは、前記に同じである。)
 触媒量の触媒の存在下で反応させる、請求項1~3のいずれかに記載のセルロースエーテル誘導体の製造方法。
 低結晶性の粉末セルロースの結晶化度が50%以下である、請求項1~4のいずれかに記載のセルロースエーテル誘導体の製造方法。
 低結晶性の粉末セルロースに対する水分含有量が100質量%以下である、請求項1~5のいずれかに記載のセルロースエーテル誘導体の製造方法。
 低結晶性の粉末セルロースに対して、20質量倍以下の非水溶媒を用いて反応させる、請求項1~6のいずれかに記載のセルロースエーテル誘導体の製造方法。
 触媒としてアルカリ金属水酸化物を用いる請求項1~7のいずれかに記載のセルロースエーテル誘導体の製造方法。
 ニーダー型反応装置を用いる、請求項1~8のいずれかに記載のセルロースエーテル誘導体の製造方法。
Description:
セルロースエーテル誘導体の製 方法

 本発明はセルロースエーテル誘導体の製 方法に関する。

 セルロースエーテル誘導体は、多岐にわた 用途に用いられる。例えば、ヒドロキシエ ルセルロースは、塗料、化粧品、建材、増 剤、接着剤、医薬品等における分散剤、安 化剤等の配合組成物として、また他のセル ースエーテル誘導体の出発原料に用いられ 。また、ヒドロキシプロピルセルロースは 医薬用製剤における添加剤、コーティング 組成物等に用いられる。
 また、カチオン化ヒドロキシアルキルセル ース等のカチオン性セルロースエーテル誘 体は、シャンプーやリンス、トリートメン 、コンディショナー等の洗浄剤組成物の配 成分や分散剤、改質剤、凝集剤等に用いら る。

 ヒドロキシエチルセルロースに代表される ルロースエーテル誘導体の製造方法として 、酸化エチレンなどのエポキシ化合物をエ テル化剤として用いる方法が報告されてい (例えば特許文献1及び2参照)。一般には、セ ルロースにエーテル化剤を直接作用させるの ではなく、まずセルロースに大量の水および 大過剰の水酸化ナトリウム等のアルカリ金属 水酸化物をスラリー状態で混合してアルカリ セルロースとする、いわゆるアルセル化また はマーセル化と呼ばれるセルロースの活性化 処理を必要とし、この活性化したセルロース にエーテル化剤を作用させることでセルロー スエーテルが得られる。
 アルセル化工程では、調製したアルカリセ ロースから過剰のアルカリや水を除くため ろ過や圧搾といった操作が行われる。しか ながら、このろ過や圧搾操作を行っても、 常はアルカリセルロース中に、これと同質 以上の水が残存している。またこのアルカ セルロースは、セルロース分子中の大部分 水酸基がアルコラートとなっていると考え れており、実際にセルロース分子中のグル ース単位当たり通常1~3モル量程度、少なく も1モル量以上のアルカリが含有されている 。
 このアルセル化処理したアルカリセルロー に酸化エチレンを添加することで、アルセ 化処理後に残存する同質量以上の水もまた 化エチレンと反応(水和)するため、エチレ グリコール等の副生物が大量に生じること なる。
 また、この酸化エチレンとの反応も通常は ラリー状態で行われるが、このスラリー状 での反応をより効率良く行うため、水だけ なく、種々の極性溶媒が添加されることも る。例えば上記特許文献1及び2には、tert-ブ タノールやメチルイソブチルケトン等の、水 と容易には相溶しない極性溶媒を添加し、反 応後に溶媒を水相と分離・回収する方法が開 示されている。しかしながら、アルカリ量お よび水量を大幅に減らすことが出来ない限り 、大量の中和塩とともに、エチレングリコー ル等の副生物を大幅に低減することは、実質 的には困難である。

 また、ヒドロキシプロピルセルロースは アルカリセルロースとエーテル化剤である 化プロピレンとの反応によって得られ、一 的には大量の溶媒を用いたスラリー法が利 されている(例えば、特許文献3~6参照)。溶 としては、例えば、特許文献3には、ベンゼ 、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタ 等の炭化水素溶媒と、イソプロパノール、t ert-ブタノール等の極性溶媒との混合溶媒を いる方法が開示され、特許文献4には、イソ ロパノール、tert-ブタノール、アセトン、 トラヒドロフラン、ジオキサン等の親水性 性溶媒を用いる方法が開示され、特許文献5 は、メチルイソブチルケトン等の炭素数6~10 の脂肪族ケトンを用いる方法が開示され、特 許文献6には、脂肪族ケトン、低級アルコー の他、エチレングリコールジメチルエーテ 、ジエチレングリコールジメチルエーテル の(ポリ)エチレングリコールジアルキルエー テル類を用いる方法が開示されている。しか しながら、これらいずれの方法においても、 アルカリセルロースを用いる必要があること から、プロピレングリコール等の副生を抑制 することは難しく、また反応後にはアルセル 化処理に用いた過剰のアルカリに由来する大 量の中和塩の除去操作も必要となるなど前述 と同様の課題がある。

 一方、セルロースエーテル誘導体におけ 置換基としてヒドロキシエチル基よりも高 親水性を有するグリセリル基の導入、すな ち親水性エーテル化剤として酸化エチレン 代わりにグリシドールを用いる液相反応も 案されている(例えば非特許文献1及び特許 献7参照)。非特許文献1には、塩化リチウム 含むジメチルアセトアミドを溶媒として用 、更に塩基触媒を添加してセルロースにグ シドールを付加する均一系反応方法が開示 れている。しかしながら、この方法では、 ルロースの溶解に脱水等の前処理が必要で り、またグリシドールのセルロースへの反 効率が低いという問題がある。

 また、特許文献7には、テトラブチルアン モニウムフロリドのような第4級アンモニウ ハライドを含むジメチルアセトアミドを溶 として用い、更に塩基触媒を添加してセル ースにグリシドールを付加する均一系反応 法が開示されている。しかしながら、この 法では、用いる第4級アンモニウムハライド 極めて高価であり、また前述した方法と同 、セルロースの溶解度が十分でないために 量の溶媒が必要であり、生産性といった工 的な観点からの課題も多い。

 また、カチオン化ヒドロキシアルキルセル ース、特にカチオン化ヒドロキシエチルセ ロースの製造方法としては、セルロースを 接カチオン化するのではなく、セルロース 酸化エチレン等のエーテル化剤と反応させ セルロースエーテル化した後、グリシジル リアルキルアンモニウムクロリド等のカチ ン化剤と反応させる方法が一般的である。 の方法は、セルロースエーテル化において アルセル化処理を必要とするため、エチレ グリコール等の副生を抑制することは難し 、また反応後にはアルセル化処理に用いた 剰のアルカリに由来する大量の中和塩の除 操作も必要となるなど前述と同様の課題が る。
 一方、セルロースエーテルを経ずにセルロ スに直接カチオン化剤を反応させるカチオ 性セルロースエーテル誘導体の製造方法と て、例えば、特許文献8には、塩化リチウム を含むジメチルアセトアミドを溶媒として用 い、更にアミン類や3級アルコラート触媒を 加して反応される方法が開示されている。 かしながら、この方法では、ジメチルアセ アミド溶媒中の水分量にも留意する必要が るだけでなく、溶媒に対するセルロースの 解度が十分でないため、溶媒量としては極 て多量に、少なくともセルロースの10質量倍 以上は必要になり、更には添加剤である塩化 リチウムもセルロースとほぼ同量が必要とな るなど、前述した方法と同様に工業的には負 荷の大きい製造法となっていた。

 したがって、簡便でかつ効率の良い廃棄 の少ないセルロースエーテル誘導体の製造 法を開発、特に触媒反応による効率的な製 方法を開発することは、工業的な観点から 極めて有用な課題であった。

特開平8-245701号公報

特開平6-199902号公報

特公昭45-4754号公報

特公昭60-9521号公報

特開平11-21301号公報

特開2000-186101号公報

特開2007-238656号公報

特開昭60-177002号公報 Makromol.Chem.,193(3),647(1992)

 本発明は、低結晶性の粉末セルロースを 触媒の存在下、エポキシ化合物と反応させ 、セルロースエーテル誘導体の製造方法に する。

ニーダー型反応装置の全体を示す概略 であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である 実施例3-5で用いたニーダー型反応装置 反応容器の概略図である。図2は、回分式反 応装置を示すが、抜き出し口8から反応生成 を抜き出すようにした連続式とすることも きる。

符号の説明

  1;反応容器
  2;反応容器支持部
  3;反応容器角度制御部
  4;攪拌翼
  5;攪拌翼の駆動軸
  6;原料仕込み口
  7;酸化エチレン仕込み口
  8;酸化エチレン抜き出し口
  9;熱媒入口
  10;熱媒出口
  11;モーター

 本発明は、工業的にも簡便でかつ効率的な ルロースエーテル誘導体の製造方法に関す 。本発明者らは、アルセル化による活性化 理を必要とせず、セルロースとエポキシ化 物との反応が、触媒の存在下、良好かつ選 的に進行することを見出した。
 すなわち、本発明は低結晶性の粉末セルロ スを、触媒の存在下、エポキシ化合物と反 させる、セルロースエーテル誘導体の製造 法に関する。
 本発明は、工業的にも簡便かつ効率的であ 、中和塩等の副生物が極めて少ないセルロ スエーテル誘導体の製造方法を提供するこ ができる。

〔低結晶性の粉末セルロースの調製〕
 一般にセルロースは幾つかの結晶構造が知 れており、また一部に存在するアモルファ 部と結晶部との割合から結晶化度として定 されるが、本発明における「結晶化度」と 、天然セルロースの結晶構造に由来するI型 の結晶化度を示し、粉末X線結晶回折スペク ルから求められる下記計算式(1)で表される 晶化度によって定義される。

  結晶化度(%)=〔(I 22.6 -I 18.5 )/I 22.6 〕×100   (1)
〔I 22.6 は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=2 2.6°)の回折強度、及びI 18.5 は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強 度を示す〕

 本発明における低結晶性の粉末セルロース 「低結晶性」とは、上記のセルロースの結 構造においてアモルファス部の割合が多い 態を示し、上記計算式(1)から得られる結晶 度が0%である場合を含む。好ましくは上記 算式(1)から得られる結晶化度が50%以下0%以上 となることが望ましい。
 一般的に知られている粉末セルロースにも めて少量のアモルファス部が存在するため それらの結晶化度は、本発明で用いる上記 算式(1)によれば、概ね60~80%の範囲に含まれ 。これらはいわゆる結晶性のセルロースで り、ヒドロキシエチルセルロース等のセル ースエーテル誘導体合成における化学的反 性は極めて低い。

 本発明で用いる低結晶性の粉末セルロー は、汎用原料として得られるシート状やロ ル状のセルロース純度の高いパルプから極 て簡便に調製することができる。低結晶性 粉末セルロースを調製する方法としては、 に限定されるものではないが、例えば、特 昭62-236801号公報、特開2003-64184号公報、特開 2004-331918号公報等に記載の調製方法を挙げる とができる。

 また、例えば、シート状パルプを粗粉砕し 得られるチップ状パルプを、押出機で処理 て、更にボールミルで処理することにより 製するような方法も挙げることができる。
 この方法に用いられる押出機としては、単 又は二軸の押出機を用いることができ、強 圧縮せん断力を加える観点から、スクリュ のいずれかの部分に、いわゆるニーディン ディスク部を備えるものであってもよい。 出機を用いる処理方法としては、特に制限 ないが、チップ状パルプを押出機に投入し 連続的に処理する方法が好ましい。
 また、ボールミルとしては、公知の振動ボ ルミル、媒体攪拌ミル、転動ボールミル、 星ボールミル等を用いることができる。媒 として用いるボールの材質には特に制限は く、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、 ルコニア等が挙げられる。ボールの外径は 効率的にセルロースを非晶化させる観点か 、好ましくは0.1~100mmである。媒体としては ボール以外にもロッド状のものやチューブ のものも用いることが可能である。
 また、セルロースの結晶化度を効率的に低 させることができることから、ボールミル 処理時間としては、5分~72時間が好ましい。 またこの処理の際には、発生する熱による変 性や劣化を最小限に抑えるためにも、250℃以 下、好ましくは5~200℃の範囲で処理を行うこ が好ましい。更に必要に応じて、窒素等の 活性ガス雰囲気下で処理を行うことが好ま い。
 前述のような方法を用いれば、分子量の制 も可能である。すなわち一般には入手困難 、重合度が高く、かつ低結晶性の粉末セル ースを容易に調製することも可能である。 結晶性の粉末セルロースの重合度としては 好ましくは100~2000であり、より好ましくは10 0~1000である。

 本発明に用いる低結晶性の粉末セルロー の結晶化度は、前記計算式(1)から求められ 結晶化度として好ましくは50%以下である。 の結晶化度が50%以下であれば、エポキシ化 物の付加反応は極めて良好に進行する。こ 観点から40%以下がより好ましく、30%以下が に好ましい。特に本発明において、完全に 晶質化した、すなわち前記計算式(1)から求 られる結晶化度がほぼ0%となる、いわゆる 晶化セルロースを用いることが最も好まし 。

 この低結晶性の粉末セルロースの平均粒 は、粉体として流動性の良い状態が保てる らば特に限定はされないが、300μm以下が好 しく、150μm以下がより好ましく、更には、5 0μm以下が特に好ましい。ただし、工業的に 施する際の操作性の観点からは、20μm以上が 好ましく、25μm以上がより好ましい。

〔セルロースエーテル誘導体の製造〕
 本発明において、低結晶性の粉末セルロー を、触媒の存在下、エポキシ化合物と反応 せて、セルロースエーテル誘導体を得るこ ができる。
 本発明において、エポキシ化合物としては 下記一般式(1)で表されるグリシジルトリア キルアンモニウム塩、グリシドール、酸化 チレン、及び酸化プロピレンからなる群よ 選ばれる1種を使用することが好ましい。

(式中、R 1 ~R 3 は同一又は異なった炭素数1~4の炭化水素基を 示し、Xはハロゲン原子を示す。)
 なお、本発明において、エポキシ化合物と て上記一般式(1)で表されるグリシジルトリ ルキルアンモニウム塩を用いる態様を「本 明の第1態様」、グリシドールを用いる態様 を「本発明の第2態様」、酸化エチレンを用 る態様を「本発明の第3態様」、及び酸化プ ピレンを用いる態様を「本発明の第4態様」 ということがある。

 本発明で用いる触媒としては、特に制限は いが、塩基又は酸触媒を用いることができ 。塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、 酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカ 金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸 カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物 トリメチルアミン、トリエチルアミン、ト エチレンジアミン等の3級アミン類が挙げら れる。酸触媒としては、ランタニドトリフラ ート等のルイス酸触媒等が挙げられる。これ らの中で、塩基触媒が好ましく、特にアルカ リ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウ ム、水酸化カリウムがより好ましい。これら の触媒は、1種又は2種以上を組み合わせて用 ることもできる。
 本発明では反応が触媒的に進行することか 、触媒の使用量としては、セルロースやエ キシ化合物に対して触媒量を用いるだけで 分であり、具体的にはセルロース分子中の ルコース単位当たり、0.1~50モル%(0.001~0.5モ 倍)に相当する量を用いるのが好ましい。

 本発明における低結晶性の粉末セルロー とエポキシ化合物との反応状態としては、 潤をともなうスラリー状態や粘度の高い状 あるいは凝集状態とはならずに、流動性の る粉末状態で十分に分散されている状態を つことが好ましい。このような観点から、 応系内の低結晶性の粉末セルロースに対す 水分含有量としては100質量%以下であること が好ましく、80質量%以下であることがより好 ましく、5~50質量%であることがさらに好まし 。

 本発明における低結晶性の粉末セルロース エポキシ化合物との反応は、前述したよう 粉末が分散されている状態を保ちながら行 ことが好ましいが、水以外の分散媒として 水溶媒を用いた分散状態で行うことも可能 ある。このうち非水極性溶媒としては、一 にアルセル化処理の際に用いられるような ソプロパノール、tert-ブタノール等の2級又 3級の低級アルコール、1,4-ジオキサン、エ レングリコールジメチルエーテル、ジエチ ングリコールジメチルエーテル、ジエチレ グリコールジエチルエーテル、ジエチレン リコールジブチルエーテル、トリエチレン リコールジメチルエーテルといったジグラ ムやトリグライム、ポリエチレングリコー ジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、あ いはジメチルスルホキシド等の親水性極性 媒が挙げられる。一方、トルエンやキシレ 、ベンゼン、あるいはヘキサン、シクロヘ サンや他の炭化水素油といった非水低極性 たは非極性溶媒を用いた分散状態で反応を うことも可能である。
 これらの溶媒を用いて分散状態で反応させ 際には、溶媒中でも凝集を起こさずに良好 分散できるだけの量を用いる必要がある。 かしながら多量に用いると、触媒が必要以 に希釈されるために、反応速度が著しく低 する。したがって、これらの非水溶媒の使 量としては、低結晶性の粉末セルロースに して20質量倍以下とするのが好ましく、10質 量倍以下にするのがより好ましい。

 また本発明で使用できる反応装置としては 低結晶性の粉末セルロース、触媒、及びエ キシ化合物をできる限り均一に混合できる のが好ましく、ミキサー等の混合機の他、 開2002-114801号公報明細書段落〔0016〕で開示 ているような、樹脂等の混錬に用いられる いわゆるニーダー等の混合機が最も好まし 。
 ここで、本発明で使用できるニーダー型反 装置としては、攪拌が十分できるものであ ば、特に限定されないが、例えば化学工学 会編「化学工学便覧」改訂五版(丸善株式会 社発行)、917~919頁に記載されているように、 軸型ニーダーとしてはリボンミキサー、コ ーダー、ボテーター、スクリュー型ニーダ 等が挙げられ、二軸型ニーダーとしては、 腕型ニーダー等が挙げられる。

 本発明の製造方法において、反応は粉末状 で進行するが、粉末状態ではスラリー状態 りも流動性が乏しいために、ニーダー内壁 に付着し、十分な攪拌を受けないため反応 率が悪い部分が存在する場合がある。この を改善するために、ニーダー型反応装置の 応容器の駆動軸と水平との成す角度を変え ことで、反応容器の内壁面に付着している 容物を落下させ、内容物が隈なく攪拌され ようにすることが望ましい。このような角 可変式のニーダー型反応装置の好適例とし は、角度可変式のリボンミキサー、コニー ー、単軸スクリュー型ニーダー、双腕型ニ ダーが挙げられる。角度可変式のリボンミ サー型反応装置の具体例を図1及び図2に示 が、本発明における反応に用いられる装置 、図1及び図2に示す装置に限られるものでは ない。
 双腕型ニーダー型反応装置に用いて粉末状 の反応を行う場合には、リボン型、パドル 、ブレード型の攪拌翼を用いることが好ま い。ニーダー型反応装置は回分式でも連続 でもよい。
 以下、本発明の第1~第4態様についてそれぞ 説明する。

〔カチオン化セルロースエーテルの製造〕
 本発明の第1態様において、低結晶性の粉末 セルロースを、触媒存在下、下記一般式(1)で 表されるグリシジルトリアルキルアンモニウ ム塩と反応させて、下記一般式(2-1)で表され カチオン化セルロースエーテル誘導体(以下 、単に「カチオン化セルロースエーテル」と いうことがある)を得ることができる。

 前記一般式(2-1)において、R 4 は、水素原子または前記一般式(3)で示される カチオン基を示し、R 4 すべてが水素原子となることはない。また、 nは100~2000の範囲、好ましくは100~1000である。
 低結晶性の粉末セルロースに導入される前 一般式(3)で示されるカチオン基における、 ルロース分子中のグルコース単位当たりの 換度として、所望の置換度とすることが可 であるが、好ましくは0.01~3であり、より好 しくは0.2~2である。なお、前記の置換度は 施例に示す方法により測定される。

 本発明の第1態様において、エポキシ化合物 として前記一般式(1)で表されるグリシジルト リアルキルアンモニウム塩(以下、「カチオ 化剤」ともいう)を用いる。
 前記一般式(1)、(3)において、R 1 ~R 3 は同一又は異なった炭素数1~4の炭化水素基を 示し、具体的に、メチル基、エチル基、n-プ ピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イ ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられるが、 これらの中では、メチル基が好ましい。また 、Xは、ハロゲン原子を示し、塩素原子、臭 原子、ヨウ素原子が挙げられるが、塩素原 が好ましい。
 前記一般式(1)で表されるグリシジルトリア キルアンモニウム塩は、エピクロロヒドリ やエピブロモヒドリン等のエピハロヒドリ にトリメチルアミンやトリエチルアミン、 リプロピルアミン、トリブチルアミン等の3 級アミンを反応させることで得られるが、最 も一般的に用いられるのは、エピクロロヒド リンとトリメチルアミンの組み合わせであり 、したがってR 1 ~R 3 とXとの組み合わせとしては、メチル基およ 塩素原子が好ましい。

 カチオン化剤は、本発明を実施する際には セルロースの流動性を保持して粉末状態で 応させる観点から、必要に応じて反応時又 反応前に脱水して、反応系内のセルロース 対する水分含有量を前述した範囲となるよ に調整することが好ましい。
 また、カチオン化剤の使用量としては、セ ロースに対するカチオン化剤の反応効率が めて高いために、所望の置換度でセルロー にカチオン基を導入するのに必要となる化 量論量とほぼ同量を用いることが可能であ 。すなわち、カチオン化剤の使用量として 、好ましくはセルロース分子中のグルコー 単位当たり0.01~3モル倍であり、カチオン化 ルロースエーテルとしての性能や反応後の 水効率の観点から、0.2~2モル倍となるのが り好ましい。

 本発明の第1態様で用いる触媒としては、塩 基又は酸触媒を用いることができ、これらの 中では、塩基触媒が好ましく、特にアルカリ 金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム 、水酸化カリウムがより好ましい。
 触媒の添加方法としては、水溶液を添加す か、希薄溶液を添加し、余分な水分量を除 してから反応させることが可能であるが、 応状態としてはスラリー状や粘度の高い状 にならずに流動性のある粉末状態を保つこ が好ましく、そのため希薄水溶液で添加す 際の水分量としても、セルロースに対して1 00質量%以下となるのが好ましい。
 触媒の使用量としては、セルロースおよび チオン化剤の双方に対して、触媒量で十分 あり、具体的には、セルロース分子中のグ コース単位当たり0.1~50モル%に相当する量が 好ましく、更には1~30モル%に相当する量がよ 好ましく、5~25モル%に相当する量が最も好 しい。
 なお、本発明の第1態様に用いるカチオン化 剤には、通常その工業的製法上、少量のハロ ヒドリン体が含まれており、例えばグリシジ ルトリメチルアンモニウムクロリドの場合、 3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルア モニウムクロリドが1~2%程度含まれているこ とがある。本発明で用いる低結晶性あるいは 非晶性のセルロースは、アルカリによるこれ らハロヒドリン体との反応を、完全な量論反 応で進行させることが可能であるが、その量 論反応によってアルカリは反応性の無い塩へ と変わるため、グリシジルトリメチルアンモ ニウムクロリド等のカチオン化剤との反応を 良好に進行させるためには、アルカリは少な くともこのハロヒドリン体で消費されるより も多くの触媒量が必要となる。

 本発明の第1態様におけるカチオン化剤の添 加方法としては、特に制限はないが、例えば (a)初めにセルロースに触媒を添加した後にカ チオン化剤を滴下する方法、(b)セルロースに カチオン化剤を添加した後に触媒を加えて反 応させる方法が挙げられる。
 方法(a)においては、カチオン化剤の滴下に り反応を進行させながら同時に脱水を行い 反応系内の水分含有量を前述した範囲に調 することが可能である。また方法(b)におい は、セルロースにカチオン化剤を一括で仕 み、減圧下脱水を行ってセルロースに対す 水分含有量を前述した範囲に調整した後、 媒を加えて反応させることが可能である。

 本発明の第1態様ではカチオン化剤のセル ロースへの反応選択率が高いことから、主た る副生成物である下記一般式(6)で表されるカ チオン化剤の水和体(ジオール体)の副生を低 させることができる。

 (式中、R 1 ~R 3 は、それぞれ同一又は異なった炭素数1~4の炭 化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
 したがって、本発明の第1態様においては、 所望の置換度でカチオン化を行うことが可能 になるだけでなく、従来は極めて困難であっ た高置換度でのカチオン化、具体的には、セ ルロース分子中のグルコース単位当り1以上 置換度でのカチオン化も可能となる。
 また、従来のカチオン化反応では、反応に いたアルカリ等の塩基は反応終了後に中和 として除去されるが、本発明は触媒反応で ることから、その中和塩の量も低減させる とが可能である。つまり、カチオン化剤や 媒に由来する副生成物や廃棄物が極めて少 いために、反応終了後の(洗浄等の)精製も 易となり、工業的な有用性も極めて高い。

 本発明の第1態様においては、低結晶性の粉 末セルロース、触媒及びカチオン化剤の混合 物を流動性のある粉末状態で反応させること が好ましいが、予めセルロース粉末と触媒又 はカチオン化剤をミキサー等の混合機や振と う機で必要に応じて均一に混合分散させた後 に反応させることも可能である。
 本発明の第1態様における反応温度としては 、0~100℃の範囲が好ましいが、10~90℃の範囲 より好ましく、20~80℃の範囲が特に好ましい 。
 また、本発明の第1態様における反応は、常 圧下または減圧下で行われるが、減圧下で行 う場合には1~100kPaの範囲が好ましく、2~20kPaの 範囲がより好ましい。また、反応時の着色を 避ける観点から、必要に応じて窒素等の不活 性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
 反応終了後は、触媒を酸またはアルカリを いて中和し、必要に応じて、含水イソプロ ノール、含水アセトン溶媒等で洗浄等を行 た後、乾燥することにより、前記一般式(2-1 )で表されるカチオン化セルロースエーテル 得ることができる。

 本発明の第1態様において、前記一般式(3) で表されるカチオン基はセルロース分子中の グルコース単位におけるいかなる位置の水酸 基に結合していてもよいが、所望の置換度に 調整することが可能である。このことから、 本発明の第1態様で得られるカチオン化セル ースエーテルは、シャンプーやリンス、ト ートメント、コンディショナー等の洗浄剤 成物の配合成分や分散剤、改質剤、凝集剤 の用途にも利用することができる。

〔グリセリル基含有セルロースエーテル誘導 体の製造〕
 本発明の第2態様において、上記で得られた 低結晶性の粉末セルロースを、触媒存在下、 グリシドールと反応させて、下記一般式(2-2) 表されるセルロースエーテル誘導体を得る とができる。

 前記一般式(2-2)において、R 4 は、水素原子又は前記一般式(4)若しくは(5)で 示される置換基(グリセリル基)を示し、R 4 すべてが水素原子となることはない。また、 nは100~2000の範囲、好ましくは100~1000である。
 前記一般式(2-2)で表されるセルロース誘導 において、導入される一般式(4)若しくは(5) 示される置換基のセルロース中のグルコー 単位当たりの置換度として、所望の置換度 することが可能であるが、前記置換度とし は、好ましくは0.01~3であり、より好ましく 0.2~2である。なお、前記の置換度は実施例に 示す方法により測定される。

 本発明の第2態様で用いるグリシドールの使 用量としては、好ましくはセルロース分子中 のグルコース単位当たり0.01~3モル倍の範囲、 より好ましくは0.2~2モル倍の範囲である。グ シドールの使用量がこの範囲であれば、グ シドールのセルロースに対する反応効率が めて高いために、所望の置換度のセルロー 誘導体を得ることができ、導入されたグリ リル基の水酸基への更なる付加も抑えるこ ができる。
 なお、グリシドールをセルロース分子中の ルコース単位当たり3モル倍より多く用いる と、グリシドールがグリセリル基へ付加する ため、セルロース上にポリグリセリル基を導 入することも可能となる。

 本発明の第2態様で用いる触媒としては、特 に制限なく、塩基触媒又は酸触媒を用いるこ とができ、これら中では、塩基触媒が好まし く、特にアルカリ金属水酸化物が好ましく、 水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが最も好 ましい。
 触媒の添加方法としては、水溶液を添加す か、希薄溶液を添加し、余分な水分量を除 してから反応させることが可能であるが、 応状態としてはスラリー状や粘度の高い状 にならずに流動性のある粉末状態を保つこ が好ましく、そのため希薄水溶液で添加す 際の水分量としても、セルロースに対して1 00質量%以下となるのが好ましい。
 触媒の使用量としては、セルロースおよび リシドールの双方に対して、触媒量で十分 あり、具体的には、セルロース分子中のグ コース単位当たり0.1~50モル%に相当する量が 好ましく、更には1~30モル%に相当する量がよ 好ましく、5~25モル%に相当する量が最も好 しい。

 本発明の第2態様におけるグリシドールの添 加方法としては、特に制限はないが、例えば (a)セルロースに触媒を添加した後にグリシド ールを徐々に滴下して反応させる方法、(b)セ ルロースにグリシドールを一括で添加した後 に触媒を加えて反応させる方法が挙げられる 。この中で、グリシドール自身の重合を避け る観点から、(a)の方法がより好ましい。
 触媒を水溶液で添加する場合には、例えば 方法(a)においては、グリシドールの滴下に り反応を進行させながら同時に脱水を行い 反応系内の水分含有量を前述した範囲に調 することも可能である。

 本発明の第2態様ではグリシドールのセルロ ースへの反応選択率が極めて高いことから、 所望の置換度に対してグリシドールを過剰に 用いる必要がない。すなわちグリシドール由 来の副生成物として得られるグリセリンやポ リグリセリン等の水和物や重合物の副生が極 めて少ない。したがって、所望の置換度でグ リセリル化を行うことが可能になる。
 また、通常のグリセリル化反応では、反応 用いたアルカリ等の塩基は反応終了後に中 塩として除去されるが、本発明における反 は、触媒反応であることから、その触媒に 来する中和塩の量も低減することが可能で る。つまり、グリシドールや触媒に由来す 副生成物や廃棄物が極めて少ないために、 応終了後の(洗浄等の)精製も容易となり、 業的な有用性も極めて高い。

 本発明の第2態様においては、低結晶性のセ ルロース、触媒及びグリシドールの混合物を 流動性のある粉末状態で反応させることが好 ましいが、セルロース粉末と触媒又はグリシ ドールを予めミキサー等の混合機や振とう機 で必要に応じて均一に混合分散させた後に反 応させることも可能である。
 本発明の第2態様における反応温度としては 、グリシドール自身の重合を避ける観点から 、0~150℃の範囲が好ましく、10~100℃の範囲が り好ましく、20~80℃の範囲が特に好ましい
 また、本発明の第2態様における反応は、常 圧下で行われることが好ましい。また、反応 時の着色を避ける観点から、必要に応じて窒 素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好まし い。
 反応終了後は、酸またはアルカリを用いて 和し、必要に応じて、含水イソプロパノー 、含水アセトン溶媒等で洗浄等を行った後 乾燥することにより、前記一般式(2-2)で表 れるセルロース誘導体を得ることができる

 本発明の第2態様において、前記一般式(4) 又は(5)で表される置換基は、セルロース分子 中のグルコース単位におけるいかなる位置の 水酸基に結合していてもよいが、グルコース 単位当たり所望の置換度に調整することが可 能である。このことから、本発明の第2態様 得られるセルロースエーテル誘導体は、水 組成物の分散安定化剤、増粘剤、保水剤、 ャンプー、リンス、コンディショナー等の 合成分等の用途に利用することができる。

〔ヒドロキシエチルセルロースの製造〕
 本発明の第3態様において、上記で得られた 低結晶性の粉末セルロースを、触媒量の触媒 の存在下、酸化エチレンと反応させて、ヒド ロキシエチルセルロースを得ることができる 。
 本発明の第3態様では、酸化エチレンとの反 応は触媒的に進行するが、セルロースへの反 応選択率が極めて高いことから、セルロース 分子中のグルコース単位当たりのヒドロキシ エチル基としての置換度は、酸化エチレンの 反応量により所望の置換度とすることが可能 である。しかしながら、ヒドロキシエチルセ ルロースを前述した分散剤やセルロースエー テル誘導体の出発原料として用いる場合の好 ましい置換度は0.01~3.0であり、より好ましい 換度は0.1~2.6である。

 本発明の第3態様で用いる酸化エチレンの使 用量としては、好ましくはセルロース分子中 のグルコース単位当たり0.001~20モル倍の範囲 より好ましくは0.005~10モル倍の範囲、特に ましくは0.01~5モル倍である。酸化エチレン 使用量がこの範囲であると、酸化エチレン セルロースに対する反応効率が極めて高い めに、所望の置換度のヒドロキシエチルセ ロースを得ることができる。
 なお、酸化エチレンをセルロース分子中の ルコース単位当たり3モル倍以上反応させれ ば、セルロース分子上に効率良くポリオキシ エチレン基を導入することも可能である。

 本発明の第3態様で使用する触媒としては、 塩基触媒が好ましく、アルカリ金属水酸化物 がより好ましく、更には水酸化ナトリウム、 水酸化カリウムが特に好ましい。
 これら触媒の添加方法としては、特に塩基 媒がアルカリ金属水酸化物の場合は、その 濃度水溶液を添加するか、あるいは希薄溶 を添加した後に余分な水分量を除去してか 反応させることも可能である。また更には 例えばボールミル等を混合機として用いて 体状態で添加することも可能である。
 本発明では反応が触媒的に進行することか 、前記触媒の使用量としては、セルロース 酸化エチレンに対して触媒量を用いるだけ 十分であるが、具体的にはセルロース分子 のグルコース単位当たり、0.01~0.5モル倍(1~50 モル%)に相当する量を用いるのが好ましく、 には 0.05~0.3モル倍に相当する量を用いるの がより好ましい。
 本発明におけるセルロースと酸化エチレン の反応状態としては、膨潤をともなうスラ ー状態や粘度の高い状態あるいは凝集状態 はならずに、流動性のある粉末状態で十分 分散されている状態を保つことが好ましい このような観点から、前述した希薄水溶液 塩基触媒を添加する際には、その水分含有 としては、セルロースに対して100質量%以下 となるように調整するのが好ましい。

 本発明の第3態様では、オートクレーブ等 の酸化エチレンの反応が可能な反応容器中に 、低結晶性の粉末セルロースおよび触媒を前 述した溶媒を用いて分散させ、窒素等の不活 性ガスで反応容器内を十分に置換した後、所 定量の酸化エチレンを加えて反応させること により行うことができる。さらに、ミキサー 等の混合機の他、特開2002-114801号公報で記載 ているような樹脂等の混錬に用いられるニ ダー型混合機、上記した化学工学協会編「 学工学便覧」改訂五版(丸善株式会社発行) 917~919頁に記載されたニーダー型反応装置や 記の角度可変式ニーダー型反応装置に圧力 等を接続し、さらに、気密性、耐圧性を改 して、加圧下反応を行えるニーダー型反応 置を用いれば、必ずしも溶媒は必要とせず 、セルロースを均一で流動性のある粉末状 で酸化エチレンとの混合・反応をさせるこ ができ、好ましい。

 本発明の第3態様における反応温度は、0~100 の範囲が好ましいが、10~80℃の範囲がより ましい。また反応圧力としては、特に限定 れるものでないが、酸化エチレンの使用量 応じて0.001~1.0MPaの圧力範囲で行われること 望ましいが、必要に応じて窒素等の不活性 スで希釈した混合ガスを、少量ずつ流通さ ながら微加圧下で行うことも可能である。
 本発明の第3態様において、反応終了後は、 未反応の酸化エチレンを除去した後、酸を用 いて触媒を中和し、また必要に応じて、含水 イソプロパノール、含水アセトン溶媒等で洗 浄等を行った後、乾燥することにより、ヒド ロキシエチルセルロースを得ることができる 。

 また本発明の第3態様は、酸化エチレンから の反応選択性が極めて良好なことから、反応 終了後に中和塩として触媒の除去する操作を 行わずに、そのままカチオン化剤、例えば、 グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド を反応させてカチオン化ヒドロキシエチルセ ルロースを合成する等の、更なる誘導体化が 可能である。
 すなわち、本発明の第3態様を利用すれば、 ヒドロキシエチルセルロースを出発原料とす る種々のセルロースエーテル誘導体が、セル ロースからワンポットで合成することが可能 となる。

 本発明の第3態様において、生成するヒド ロキシエチル基は、セルロース分子中のグル コース単位におけるいかなる位置の水酸基に 結合していてもよいが、グルコース単位当た り、所望の置換度に調整することが可能であ る。このことからヒドロキシエチルセルロー スは、塗料、化粧品、建材、増粘剤、接着剤 、医薬品等における分散剤、安定化剤等の配 合成分として、また他のセルロースエーテル 誘導体の出発原料として広範に利用すること ができる。

〔ヒドロキシプロピルセルロースの製造〕
 本発明の第4態様において、上記で得られた 低結晶性の粉末セルロースを、酸化プロピレ ンと反応させて、ヒドロキシプロピルセルロ ースを得ることができる。

 本発明の第4態様で得られるヒドロキシプ ロピルセルロースにおけるヒドロキシプロピ ル基のグルコース単位当たりの置換度として は、所望の置換度とすることが可能であるが 、好ましくは0.01~3であり、より好ましくは0.1 ~2である。

 本発明の第4態様で用いる酸化プロピレン の使用量としては、好ましくはセルロース分 子中のグルコース単位当たり0.01~3モル倍の範 囲であり、0.1~2モル倍の範囲がより好ましい 酸化プロピレンの使用量がこの範囲である 、酸化プロピレンのセルロースに対する反 効率が極めて高いために、所望の置換度の ドロキシプロピルセルロースを得ることが きる。

 本発明の第4態様で用いる触媒としては、塩 基触媒又は酸触媒を用いることができ、これ らの中では、塩基触媒が好ましく、特にアル カリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリ ウム、水酸化カリウムが最も好ましい。
 触媒の添加方法としては、高濃度水溶液を 加するか、希薄溶液を添加し余分な水分量 除去してから反応させることが可能である 、反応状態としてはスラリー状や粘度の高 状態にならずに流動性のある粉末状態を保 ことが好ましく、そのため希薄水溶液で添 する際の水分量としても、セルロースに対 て100質量%以下となるのが好ましい。
 触媒の使用量としては、セルロースおよび 化プロピレンの双方に対して、触媒量で十 であり、具体的にはセルロース分子中のグ コース単位当たり0.1~50モル%に相当する量が 好ましく、更には1~30モル%に相当する量がよ 好ましく、5~25モル%に相当する量が最も好 しい。

 本発明の第4態様における酸化プロピレン の添加方法としては、特に制限はないが、例 えば(a)セルロースに触媒を添加した後に酸化 プロピレンを滴下する方法、(b)セルロースに 酸化プロピレンを一括で添加し、その後に触 媒を徐々に加えて反応させる方法が挙げられ る。この中で、酸化プロピレン自身の重合を 避ける観点から、(a)の方法がより好ましい。 また、酸化プロピレンの沸点以上の温度で反 応させる場合には、還流管を備えた反応装置 を用い、酸化プロピレンを徐々に滴下させな がら行うのが好ましい。

 本発明の第4態様では酸化プロピレンのセル ロースへの反応選択率が極めて高いことから 、酸化プロピレンを過剰に用いる必要がなく 、酸化プロピレン由来の副生成物として得ら れるプロピレングリコール等の副生が極めて 少ない。また触媒反応であることから、触媒 に由来する中和塩の量も低減することが可能 である。この副生成物や廃棄物が極めて少な いために、反応終了後の(洗浄等の)精製が容 となり、工業的な有用性も極めて高い。
 本発明の第4態様においては、低結晶性の粉 末セルロース、触媒及び酸化プロピレンを流 動性のある粉末状態で反応させることが好ま しいが、セルロース粉末と触媒とを予めミキ サー等の混合機や振とう機、あるいは混合ミ ル等で必要に応じて均一に混合分散させた後 に、酸化プロピレンを添加して反応させるこ とも可能である。

 本発明の第4態様における反応温度は、0~150 の範囲が好ましいが、酸化プロピレン同士 重合するのを避け、かつ急激に反応が起こ のを避ける観点から、10~100℃の範囲がより ましく、20~80℃の範囲が特に好ましい。
 また、本発明の第4態様における反応は、常 圧下で行うことが好ましいが、反応時の着色 を避ける観点から、必要に応じて窒素等の不 活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
 反応終了後は、微量の未反応酸化プロピレ を留去した後、触媒を酸またはアルカリを いて中和し、必要に応じて、含水イソプロ ノール、含水アセトン溶媒等で洗浄等を行 た後、乾燥することにより、ヒドロキシプ ピルセルロースを得ることができる。また 例えば反応終了後に触媒除去を行わずに、 リシジルトリメチルアンモニウムクロリド 反応させてカチオン化ヒドロキシプロピル ルロースを合成する等の、更なる誘導体化 可能である。

 本発明の第4態様において、ヒドロキシプ ロピル基は、セルロース分子中のグルコース 単位におけるいかなる位置の水酸基に結合し ていてもよいが、グルコース単位当たり所望 の置換度に調整することが可能である。この ことから、本発明で得られるヒドロキシプロ ピルセルロースは、医薬用製剤やコーティン グ剤組成物に配合される成分として極めて広 範に利用することができる。

(1)セルロースに対する水分含有量
 セルロースに対する水分含有量の測定は、 式会社ケット科学研究所製の赤外線水分計 FD-610」を使用し、150℃にて行った。
 本発明におけるエポキシ化合物との反応を うにあたり本発明における最適なセルロー の水分含有量を確認するため、後述する製 例1で得られた非晶化粉末セルロースに所定 量の水を添加した後、激しく攪拌・振とうさ せ、目視によりその凝集状態を繰り返し観察 した。
 その結果、製造した非晶化粉末セルロース は少なくとも5質量%の水分が含まれている 、セルロースを流動性のある粉末状態で反 させるためには、セルロースに対する水分 有量として100質量%以下とするのが好適であ 、80質量%以下とするのがより好ましく、50 量%以下とするのが最も好ましく、更には30 量%以下とするのが特に好ましいと判断した 結果を表1に示す。

(2)結晶化度の算出
 セルロースの結晶化度の算出は、株式会社 ガク製「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」 を用いて以下の条件で測定した回折スペクト ルのピーク強度から前記計算式に従って行っ た。
 X線源:Cu/Kα-radiation,管電圧:40kv,管電流:120mA, 定範囲:2θ=5~45°,測定用サンプル:面積320mm 2 ×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製,X線のスキ ンスピード:10°/min
(3)粉末セルロースの重合度の測定
 粉末セルロースの重合度は、ISO-4312法に記 の銅アンモニア法により測定した。

(4)置換度の算出
(a)カチオン基としての置換度の算出
 カチオン基としての置換度は、セルロース のグルコース単位当たりのカチオン基の平 導入モル数を示し、コロイド滴定用ポリア オン試薬を用いた常法(コロイド滴定法)に り算出した。尚、測定には、京都電子株式 社製自動滴定装置AT-150を使用した。また、 素分析による塩素量及び窒素量の測定値か の確認も行った。
(b)グリセリル基としての置換度の算出
 置換度は、セルロース中のグルコース単位 たりのグリセリル基の平均導入モル数を示 、生成物の分析(置換度等)は、無水酢酸/ピ ジンを用いた常法でのアセチル化を行い、 のアセチル化体での各種NMR分析(装置;Varian 製、Unity Inova 300)から行った。
(c)ヒドロキシエチル基としての置換度の算出
 ヒドロキシエチル基としての置換度は、セ ロース中のグルコース単位当たりのヒドロ シエチル基の平均導入モル数を示し、Macromo l.Biosci., 5, 58(2005)に記載されている方法を利 用し、生成物への常法によるアセチル化を行 い、このアセチル体の各種NMRスペクトル分析 (装置;Varian社製、Unity Inova 300)から算出した
(d)ヒドロキシプロピル基としての置換度の算 出
 ヒドロキシプロピル基としての置換度は、 ルロース中のグルコース単位当たりのヒド キシプロピル基の平均導入モル数を示し、 記(c)ヒドロキシエチル基としての置換度と じ方法で算出した。

(5)粉末セルロースの平均粒径の測定
 粉末セルロースの平均粒径は、株式会社堀 製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定 装置「LA-920」を用いて測定した。なお、用い た屈折率は、1.2である。

製造例1(非晶化粉末セルロースの製造)
 木材パルプシート(ボレガード社製パルプシ ート、結晶化度74%)をシュレッダー(株式会社 光商会製、「MSX2000-IVP440F」)にかけてチップ 状にした。
 次に、得られたチップ状パルプを二軸押出 (株式会社スエヒロEPM製、「EA-20」)に2kg/hrで 投入し、せん断速度660sec -1 、スクリュー回転数300rpm、外部から冷却水を 流しながら、1パス処理して粉末状にした。
 次に、得られた粉末セルロースを、バッチ 媒体攪拌ミル(五十嵐機械社製「サンドグラ インダー」:容器容積800mL、5mmφジルコニアビ ズを720g充填、充填率25%、攪拌翼径70mm)に投 した。容器ジャケットに冷却水を通しなが 、攪拌回転数2000rpm、温度30~70℃の範囲で、2 .5時間粉砕処理を行い、粉末セルロース(結晶 化度0%、重合度600、平均粒径40μm)を得た。こ 粉末セルロースの反応には更に32μm目開き 篩をかけた篩下品(投入量の90%)を使用した。
 なお、各結晶化度の異なる低結晶性粉末セ ロースは,ボールミル処理における処理時間 を変えることで調製した。

製造例2(非晶化粉末セルロースの製造)
 前記製造例1と同じ方法で、シュレッダー処 理及び押出機処理を行って、粉末状のセルロ ース得た。次に、バッチ式媒体攪拌型ボール ミル(三井鉱山株式会社製「アトライタ」:容 容積800mL、6mmφ鋼球を1400g充填、攪拌翼の直 65mm)に前記粉末状のセルロース100gを投入し 。容器ジャケットに冷却水を通しながら、 拌回転数600rpmで3時間粉砕処理を行い、粉末 セルロース(結晶化度0%、重合度600、平均粒径 40μm)を得た。この粉末セルロースの反応には 更に32μm目開きの篩をかけた篩下品(投入量の 90%)を使用した。

実施例1-1
 1Lニーダー(株式会社入江商会製、PNV―1型) 、前記製造例1で得られた非晶化セルロース( 結晶化度0%、重合度600)100gを仕込み、48質量% 酸化ナトリウム水溶液5g(セルロースに対し 2質量%)を加え、窒素雰囲気下3時間攪拌した その後、ニーダーを温水により50℃に加温 、カチオン化剤としてグリシジルトリメチ アンモニウムクロリド(坂本薬品工業株式会 製、含水量20質量%、純度90%以上)95g(セルロ ス分子中のグルコース単位当たり0.73モル倍) を2時間で滴下した。その後、更に50℃で3時 攪拌したところ、高速液体クロマトグラフ ー(HPLC)分析によりカチオン化剤は全て消費 れていた。その後、酢酸で中和し、生成物 ニーダーから取り出し、含水イソプロパノ ル(含水量15質量%)及びアセトンで洗浄後、減 圧下乾燥して、カチオン化セルロースエーテ ルを140gの白色固体として得た。元素分析お びコロイド滴定により、塩素元素含有量は9. 4%、窒素元素含有量は3.7%、セルロース上のカ チオン基としての置換度はグルコース単位当 たり0.71となり、セルロースへの反応選択性 96%(カチオン化剤基準)であった。

比較例1-1
 セルロースとして結晶性の粉末セルロース( 日本製紙ケミカル株式会社製セルロースパウ ダーKCフロック W-50(S)、結晶化度74%、重合度5 00)を用いる以外は、実施例1-1と同様にして反 応を行った。その結果、HPLC分析により未反 グリシジルトリメチルアンモニウムクロリ の残存は認められなかったが、セルロース におけるカチオン基としての置換度はグル ース単位当たり0.097であり、セルロースへの 反応選択性は13%であった。

比較例1-2
 2Lフラスコ中に、比較例1-1で用いた結晶性 粉末セルロース100gを入れ、窒素雰囲気下、2 0質量%水酸化ナトリウム水溶液1500mlを加えて1 日間浸漬した。更に室温でスターラーにより 5時間攪拌した後、余分な水酸化ナトリウム 溶液をろ過により除き、圧搾して約200gのア カリセルロースを得た。
 得られたアルカリセルロースを前記1Lニー ーに入れ、非水溶媒としてジメチルスルホ シド500mlを加えて分散させた。次いで、前記 グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド 95gを加え、50℃で5時間反応させたところ、原 料グリシジルトリメチルアンモニウムクロリ ドは全て消費されていた。酢酸で中和し、溶 媒を留去後、含水イソプロパノール(含水量15 質量%)およびアセトンで洗浄、減圧下乾燥し 、カチオン化セルロースエーテルを105gの白 色固体として得た。セルロース上のカチオン 基としての置換度はグルコース単位当たり0.0 15であり、セルロースへの反応選択性はわず 2%であった。

実施例1-2
 低結晶性の粉末セルロースとして、前記製 例1に準じて得られた粉末セルロース(結晶 度37%、重合度600)100gと、48質量%水酸化ナトリ ウム水溶液10g(セルロースに対して5質量%)を いる以外は、実施例1-1と同様に行った結果 原料グリシジルトリメチルアンモニウムク リドは全て消費されており、セルロース上 カチオン基としての置換度はグルコース単 当たり0.70、セルロースへの反応選択性は94% あった。

 実施例1-3
 前記1Lニーダー中に、前記製造例1に準じて られた非晶化セルロース(結晶化度0%、重合 400)100g、及び前記グリシジルトリメチルア モニウムクロリド135g(セルロース分子中のグ ルコース単位当たり1.04モル倍)を一括で仕込 、室温で2時間攪拌した。その後50℃に加温 、2~10kPaの減圧下で脱水を行ったところ、系 内のセルロースに対する水分含有量は9.6質量 %となった。
 次に、48質量%水酸化ナトリウム水溶液5g(セ ロースに対して2質量%)を噴霧しながら加え そのまま5時間攪拌したところ、HPLC分析に り原料グリシジルトリメチルアンモニウム ロリドは全て消費されていた。その後、1N塩 酸で中和した後、生成物をニーダーから取り 出し、含水イソプロパノール(15質量%含水)及 アセトンで洗浄し、減圧下乾燥して、カチ ン化セルロースエーテルを188gの白色固体と して得た。元素分析およびコロイド滴定によ り、塩素元素含量は11%、窒素元素含量は4.4% セルロース上のカチオン基としての置換度 グルコース単位当たり1.00となり、セルロー への反応選択性は95%であった。

実施例1-4
 前記1Lニーダー中に、前記製造例1に準じて られた非晶化セルロース(結晶化度0%、重合 400)100gを仕込み、48%水酸化ナトリウム水溶 5g(セルロースに対して2質量%)を加え、窒素 囲気下3時間攪拌した。その後ニーダーを温 により60℃に加温し、5~10kPaの圧力範囲で脱 しながら、前記グリシジルトリメチルアン ニウムクロリド230g(セルロース分子中のグ コース単位当たり1.77モル倍)を3時間かけて 下した。その後更に3時間攪拌したところ、 応系から約15gの水が留出した。HPLC分析に原 料グリシジルトリメチルアンモニウムクロリ ドは92%が消費されていた。そのまま酢酸で中 和し、生成物をニーダーから取り出した後、 含水イソプロパノール(15質量%含水)およびア トンで洗浄して中和塩、未反応物を除き、 圧下乾燥して、カチオン化セルロースエー ルを270gの淡茶白色固体として得た。元素分 析およびコロイド滴定により、塩素元素含量 は16%、窒素元素含量は6.4%、セルロース上の チオン基としての置換度はグルコース単位 たり1.49となり、セルロースへの反応選択性 91%であった。

実施例1-5
 ジメチルスルホキシド500mlを溶媒として添 する以外は、実施例1-1と同様にして5時間反 を行ったところ、原料グリシジルトリメチ アンモニウムクロリドの消費量は90%であっ ため、更に2時間反応を行った。その結果、 前記原料は全て消費されており、セルロース 上のカチオン基としての置換度はグルコース 単位当たり0.69であり、セルロースへの反応 択性は94%であった。

実施例1-6
 溶媒として含水イソプロパノール(15質量%含 水)500mlを用いる以外は、実施例1-5と同様にし て反応を行ったところ、原料グリシジルトリ メチルアンモニウムクロリドは全て消費され 、セルロース上のカチオン基としての置換度 はグルコース単位当たり0.35であり、セルロ スへの反応選択性は50%であった。

実施例1-7
 前記製造例1で得られた非晶化セルロース( 晶化度0%、重合度600)600g及び水酸化ナトリウ 10.9g(セルロースに対して2質量%)を撹拌型ボ ルミル(三井鉱山株式会社製 アトライタ)に 加え、窒素雰囲気下、鋼球(充填率30%)を用い 混合した。これを5Lニーダー(株式会社入江 会製、PNV―5型)に加え、70℃に加温し、10~20k Paの減圧下脱水しながら、含水グリシジルト メチルアンモニウムクロリド(含水量20質量% 、純度90%以上)777.7g(セルロース分子中のグル ース単位当たり1.0モル倍)を10時間かけて滴 し、更に2時間撹拌した。その結果、HPLC分 によりグリシジルトリメチルアンモニウム ロリドは全て消費されていた。その後酢酸 中和し、生成物をニーダーから取り出し、 水イソプロパノール(含水量15質量%)およびア セトンで洗浄後、減圧下乾燥して、カチオン 化セルロースエーテルを1.14kgの淡茶白色固体 として得た。コロイド滴定により、セルロー ス上のカチオン基としての置換度はグルコー ス単位当たり0.96となり、セルロースへの反 選択性は96%(カチオン化剤基準)であった。

 以上の結果から、実施例1-1~1-7は、比較例 1-1及び1-2に比べてカチオン化剤の反応選択性 が向上し、所望の置換度を有するカチオン化 セルロースエーテルを効率的に得ることがで きる。

実施例2-1
 1Lニーダー(株式会社入江商会製、PNV―1型) に、前記製造例1に準じて得られた低結晶性 ルロース(結晶化度 37%、重合度500)100gおよ グリシドール37g(0.50mol)を加え、窒素雰囲気 室温で2時間攪拌した。次いで攪拌しながら4 8質量%水酸化ナトリウム水溶液5.8gを噴霧して 加えて50℃に昇温し、そのまま6時間反応させ た。反応中、セルロースは流動性のある粉末 状態を保っていた。その後、酢酸で中和し、 生成物をニーダーから取り出した後、含水イ ソプロパノール(含水量15質量%)およびアセト で洗浄し、減圧下乾燥して、セルロース誘 体を130gの白色固体として得た。セルロース へのグリセリル基としての置換度は0.72、グ シドールのセルロースへの反応率は90%であ た。

比較例2-1
 セルロースとして結晶性の粉末セルロース( 日本製紙ケミカル株式会社製セルロースパウ ダー KCフロック W-50(S);結晶化度 74%、重合  500)を用いる以外は、実施例2-1と同様にし 反応を行ったが、生成物の質量増加は全く られず、セルロースへのグリセリル基とし の置換度は0.02、グリシドールのセルロース の反応率はわずか2%であった。

実施例2-2
 溶媒としてポリエチレングリコールジメチ エーテル(メルク製試薬、ポリエチレングリ コールジメチルエーテル500)を400ml添加し、更 に反応時間を20時間とする以外は実施例2-1と 様にして反応を行ったところ、凝集するこ なく極めて分散性の良好な状態を保持して た。セルロースへのグリセリル基としての 換度は0.74、グリシドールのセルロースへの 反応率は91%であった。

比較例2-2
 セルロースとして結晶性の粉末セルロース( 日本製紙ケミカル株式会社製セルロースパウ ダー KCフロック W-50(S);結晶化度 74%、重合  500)を用いる以外は、実施例2-2と同様にし 反応を行ったが、グリシドールのセルロー への反応は全く確認されなかった。

 実施例2-1及び2-2は、比較例2-1及び2-2に比 てグリシドールのセルロースへの反応率が 上し、所望の置換度を有するセルロース誘 体を効率的に得ることができる。

実施例3-1
 酸化エチレンの計量槽を備えた反応装置(日 東高圧株式会社製1.5Lオートクレーブ)中に、 記製造例2で得られた非晶化セルロース(結 化度 0%、重合度 600)50g及び20質量%水酸化ナ リウム水溶液10g(NaOH量 0.06mol)を加え、分散 媒としてジエチレングリコールジブチルエ テル450g(510ml)を加えて、窒素で反応容器内 置換し、そのまま1時間攪拌した。次いで、 化エチレン50g(1.14mol)を仕込み、攪拌しなが 70℃に昇温した。容器内は初期に0.17MPaを示 た。そのまま70℃で12時間攪拌したところ、 容器内の圧力は0.10MPaまで減少した。その後 未反応の酸化エチレンを系外へ除去し、反 容器から生成物を取り出した。酢酸で中和 、含水イソプロパノール(含水量15質量%)及び アセトンで洗浄し、減圧下乾燥して、ヒドロ キシエチルセルロースを75gの白色固体として 得た。ヒドロキシエチル基としての置換度は 、セルロース分子中のグルコース単位当たり 2.0となり、酸化エチレンのセルロースへの反 応選択性は96%であった。

実施例3-2
 容器内の圧力が0.01MPa以下となるまで攪拌を 続ける以外は実施例3-1と同様にして反応を行 ったところ、反応時間として24時間を要した 、酸化エチレンは完全に消費されており、 ドロキシエチルセルロースを98g(理論量100g) 白色固体として得た。ヒドロキシエチル基 しての置換度はグルコース単位当たり3.8と り、酸化エチレンのセルロースへの反応選 性は96%であった。

実施例3-3
 分散溶媒としてtert-ブタノール-水混合溶媒( 混合比率9:1)450gを用いる以外は実施例3-1と同 にして反応を行った結果、ヒドロキシエチ セルロースを73gの白色固体として得た。ヒ ロキシエチル基としての置換度はグルコー 単位当たり1.9となり、酸化エチレンのセル ースへの反応選択性は78%であった。

実施例3-4
 実施例3-1記載の1.5Lオートクレーブ中に、前 記製造例2で得られた非晶化セルロース(結晶 度 0%、重合度 600)150g及び粉末水酸化ナト ウム7.4gを加え、窒素で反応容器内を置換後 攪拌しながら70℃に昇温した。次いで、容 内の圧力を0.10MPaに維持しながら、酸化エチ ン100gを4時間かけて容器内に注入した。仕 み後、そのまま70℃で1時間攪拌したところ 容器内の圧力は0.06MPaまで減少した。その後 未反応の酸化エチレンを系外へ除去し、反 容器から生成物を取り出した。酢酸で中和 、含水イソプロパノール(含水量15質量%)及 アセトンで洗浄し、減圧下乾燥して、ヒド キシエチルセルロースを209gの黄白色固体と て得た。ヒドロキシエチル基としての置換 は、セルロース分子中のグルコース単位当 り1.5となり、酸化エチレンのセルロースへ 反応選択性は75%であった。

実施例3-5
 図2に示す1.1Lの耐圧性を備えた角度可変式 ボンミキサー型反応装置中に、前記製造例2 得られた非晶化セルロース(結晶化度 0%、 合度 600)100g及び粉末水酸化ナトリウム5.0gを 加え、窒素で反応容器内を置換した後、攪拌 しながら50℃に昇温した。次いで、容器内の 力を0.10MPaに維持しながら、酸化エチレン71g を4時間かけて容器内に注入した。その後50℃ で1時間攪拌・熟成した。仕込み開始から熟 終了までの間、30分に一度、反応容器の駆動 軸(図2における線(a))と水平が成す角度を、45 →0°→-45°→0°→45°と変化させた。その後 未反応の酸化エチレンを系外へ除去し、反 容器から生成物を取り出した。酢酸で中和 、含水イソプロパノール(含水量15質量%)及び アセトンで洗浄し、減圧下乾燥して、ヒドロ キシエチルセルロースを170gの白色固体とし 得た。ヒドロキシエチル基としての置換度 、セルロース分子中のグルコース単位当た 2.6となり、酸化エチレンのセルロースへの 応選択性は95%であった。

比較例3-1
 1Lフラスコ中に結晶性の粉末セルロース(日 製紙ケミカル株式会社製セルロースパウダ  KCフロック W-400G;結晶化度 74%、重合度 50 0)50gを入れ、窒素雰囲気下、20質量%水酸化ナ リウム水溶液1000mlを加えて1日間浸漬した。 更に室温でスターラーにより5時間攪拌した 、余分な水酸化ナトリウム水溶液をろ過に り除き、圧搾して約100gのアルカリセルロー を得た。得られたアルカリセルロース中に NaOH量として18g(0.45mol)のアルカリを含有して いた。
 得られたアルカリセルロース全量を前記実 例3で使用したオートクレーブに移し、更に tert-ブタノールおよび水を加えて、実施例3-3 同じ溶媒比率(tert-ブタノール-水混合比率=9: 1、全質量450g)に調製した。その後、酸化エチ レン50g(1.14mol)を仕込み,攪拌しながら70℃に昇 温した。そのまま70℃で12時間反応を行った ころ、酸化エチレンは全て消費されていた その後、生成物を反応容器から取り出し、 酸で中和後、含水イソプロパノール(含水量1 5質量%)及びアセトンで洗浄し、減圧下乾燥し て、ヒドロキシエチルセルロースを68gの淡茶 白色固体として得た。ヒドロキシエチル基と しての置換度はグルコース単位当たり1.45、 化エチレンのセルロースへの反応選択性は39 %であった。

 実施例3-1~3-5は、比較例3-1と比べて、反応 選択性が高く、所望の置換度を有するヒドロ キシエチルセルロースを効率的に得ることが できる。

実施例4-1
 1Lニーダー(株式会社入江商会製、PNV―1型) 、前記製造例1で得られた非晶化セルロース( 結晶化度0%、重合度600)100gを仕込み、次に、24 質量%水酸化ナトリウム水溶液16g(NaOH量0.10mol) 噴霧しながら加え、窒素雰囲気下4時間攪拌 した。その後、酸化プロピレン35g(0.62mol、関 化学株式会社製、特級試薬)を3時間で滴下 た後、そのまま室温で22時間攪拌した。反応 中、セルロースは流動性のある粉末状態を保 っていた。未反応の酸化プロピレン(原料の6m ol%残留)を留去後、酢酸で中和し、生成物を ーダーから取り出し、含水イソプロパノー (含水量15質量%)及びアセトンで洗浄後、減圧 下乾燥して、ヒドロキシプロピルセルロース を117gの白色固体として得た。ピリジン中、 水酢酸を用いた常法によるアセチル化後のNM R分析から、ヒドロキシプロピル基としての 換度はグルコース単位当たり0.71となり、反 は良好に進行していた。

実施例4-2
 冷却管を接続した1Lニーダー(株式会社入江 会製、PNV―1型)に、前記製造例1で得られた 晶化セルロース(結晶化度0%、重合度600)90.0g 仕込み、溶媒としてジメチルスルホキシド7 00ml(非晶化セルロースに対して8質量倍)を加 、攪拌しながら、24質量%水酸化ナトリウム 溶液16.0g(NaOH量0.10mol)を加えた後、窒素雰囲 下、室温で3時間攪拌した。その後50℃に昇 し、酸化プロピレン30g(0.52mol、関東化学株式 会社製、特級試薬)を3時間かけて滴下した後 そのまま5時間攪拌した。その後、未反応の 酸化プロピレンを留去後、酢酸で中和し、生 成物をニーダーから取り出した。含水イソプ ロパノール(含水量15質量%)及びアセトンで洗 後、減圧下乾燥して、ヒドロキシプロピル ルロースを108gの白色固体として得た。ヒド ロキシプロピル基としての置換度はグルコー ス単位当たり0.65となり、反応は良好に進行 ていた。

実施例4-3
 前記製造例1で得られた非晶化セルロース( 晶化度0%、重合度600)100g及び水酸化ナトリウ 4.0g(NaOH量0.10mol)を撹拌型ボールミル(三井鉱 株式会社製 アトライタ)に加え、窒素雰囲 下、鋼球(充填率30%)を用いて混合した。こ を、冷却管を備えた1Lニーダーに移し、70℃ 加温後、窒素流通下、酸化プロピレン35g(0.6 2mol、関東化学株式会社製、特級試薬)を5時間 かけて滴下した後、更にそのまま5時間攪拌 たところ、原料である酸化プロピレンの残 は見られなかった。反応中、セルロースは 動性のある粉末状態を保っていた。酢酸で 和し、生成物をボールミルから取り出し、 水イソプロパノール(含水量15質量%)及びアセ トンで洗浄後、減圧下乾燥して、ヒドロキシ プロピルセルロースを115gの白色固体として た。ヒドロキシプロピル基としての置換度 グルコース単位当たり0.69となり、反応は良 に進行していた。

実施例4-4
 冷却管を接続した1Lフラスコ中に、前記製 例1で得られた非晶化セルロース(結晶化度0% 重合度600)60.0g、トリエチレングリコールジ チルエーテル360g(非晶化セルロースに対し 6質量倍)を仕込み、48質量%水酸化ナトリウム 水溶液10.0g(NaOH量0.120mol)を加え、窒素雰囲気 、室温で30分間攪拌した後、攪拌しながら50 に昇温した。次いで酸化プロピレン30g(0.52mo l、関東化学株式会社製、特級試薬)を3時間か けて滴下し、そのまま50℃で5時間攪拌した。 未反応の酸化プロピレンを留去後、酢酸で中 和し、生成物を含水イソプロパノール(含水 15質量%)及びアセトンで洗浄後、減圧下乾燥 て、ヒドロキシプロピルセルロースを70gの 色固体として得た。ヒドロキシプロピル基 しての置換度はグルコース単位当たり0.63と なり、反応は良好に進行していた。

比較例4-1
 3L四つ口フラスコ中に、結晶性粉末セルロ ス(日本製紙ケミカル株式会社製、セルロー パウダー KCフロック W-50(S);結晶化度 74%、 重合度 500)100gを入れ、ジメチルスルホキシ 2Lを加えて分散させた。次いで48質量%水酸化 ナトリウム水溶液32g(NaOH量0.38mol)を、窒素雰 下攪拌しながら加えた。室温で1時間攪拌後 酸化プロピレン40g(0.69mol)を1時間かけて滴下 し、そのまま室温で22時間攪拌した。酢酸で 和し、未反応の酸化プロピレン及び溶媒を 去後、生成物をフラスコから取り出し、含 イソプロパノール(含水量15質量%)及びアセ ンで洗浄後、減圧下乾燥して、ヒドロキシ ロピルセルロースを102gの淡茶白色固体とし 得た。ヒドロキシプロピル基としての置換 はセルロース分子中のグルコース単位当た わずか0.06であった。

 実施例4-1~4-4は、比較例4-1と比べて、所望 の置換度を有するヒドロキシプロピルセルロ ースを効率的に得ることができる。

 本発明の製造方法によれば、工業的にも 便でかつ効率的な方法でセルロースエーテ 誘導体を製造することができ、得られたセ ロースエーテル誘導体は、洗浄剤組成物の 合成分、分散剤、改質剤、凝集剤、医薬用 剤における添加剤、コーティング剤組成物 、また他のセルロースエーテル誘導体の出 原料として広範な用途に利用することが可 である。