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Patent Searching and Data


Title:
METHOD FOR PRODUCTION OF PURIFIED ANTHOCYANIN
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/111589
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a method for producing a anthocyanin in the purified form readily from a crude dye fraction containing contaminants and the anthocyanin. The method comprises the steps of: providing a flavone capable of forming a metal complex with the anthocyanin and at least one metal ion selected from an alkali earth metal ion and a heavy metal ion; contacting a crude dye fraction containing the contaminants and the anthocyanin with the flavone in the solution in the presence of the at least one metal ion to form a metal complex comprising the anthocyanin, the flavone and the metal ion; removing the contaminants contained in the crude dye fraction from the solution and collecting the metal complex; and treating the metal complex with an acid or the like to dissociate the anthocyanin from the metal complex. The method enables to produce an anthocyanin having a high purity.

Inventors:
TAMURA HIROTOSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/054411
Publication Date:
September 18, 2008
Filing Date:
March 11, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV KAGAWA NAT UNIV CORP (JP)
TAMURA HIROTOSHI (JP)
International Classes:
C09B61/00; C09B67/54
Foreign References:
JPS6185477A1986-05-01
US4500556A1985-02-19
Attorney, Agent or Firm:
TSUJIMARU, Koichiro et al. (Kyoto Research Park134, Chudoji Minami-machi,Shimogyo-ku, Kyoto-sh, Kyoto 13, JP)
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Claims:
 アントシアニンを含む粗色素画分から精製アントシアニンを精製する精製アントシアニンの製造方法であって、
 下記工程(A)~(D)を含むことを特徴とする製造方法。
(A) アントシアニンとアルカリ土類金属および重金属の少なくとも一方の金属イオンと共に金属錯体を形成するフラボノイドを準備する工程
(B) アルカリ土類金属および重金属の少なくとも一方の金属イオンの存在下、液体中で、前記粗色素画分と前記フラボノイドとを接触させ、前記アントシアニンと前記フラボノイドと前記金属イオンとを含む金属錯体を形成させる工程
(C) 前記液体から前記金属錯体を回収する工程
(D) 前記金属錯体からアントシアニンを解離させる工程
 前記フラボノイドが、ツユクサ由来フラボン、ヤグルマギク由来フラボン、ヒマラヤケシ由来フラボノールおよび青色サルビア由来のフラボンからなる群から選択された少なくとも一つのフラボン類である、請求の範囲1記載の製造方法。
 前記フラボノイドが、フラボコンメリン、apigenin 7,4’-diglucoside、apigenin 4’-(6-O-malonylglucoside)-7-glucuronide、flavonol 3-getiobioseおよびflavonol 3-(6-O-glucosyl-b-O-galactoside)からなる群から選択された少なくとも一つである、請求の範囲1記載の製造方法。
 前記粗色素に含まれるアントシアニンが、2種類以上のアントシアニンである、請求の範囲1記載の製造方法。
 前記アントシアニンが、B環に2つ以上のOH基を有する、ペオニジン系配糖体アントシアニン、デルフィニジン系配糖体アントシアニン、ペチュニジン系配糖体アントシアニンおよびデルフィニジン系配糖体アントシアニンからなる群から選択された少なくとも一つのアントシアニンである、請求の範囲1記載の製造方法。
 前記粗色素画分が、植物から抽出したアントシアニンを含む粗色素画分であり、前記植物が、シソ、赤キャベツ、ブドウ、黒トウモロコシ、赤大根、ベリー類、豆類、いも類、米類、紫玉ねぎ、オリーブ、およびリンゴからなる群から選択された少なくとも一つの植物である、請求の範囲1記載の製造方法。
 前記アルカリ土類金属イオンが、マグネシウムイオンである、請求の範囲1記載の製造方法。
 前記重金属イオンが、亜鉛、ニッケル、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、銅、マンガン、クロムおよび錫からなる群から選択された少なくとも一つの金属イオンである、請求の範囲1記載の製造方法。
 前記(B)工程に先立って、前記粗色素画分をアルカリ処理し、前記粗色素画分に含まれるアントシアニンをアンヒドロベースまたはアンヒドロベースアニオンに変換する工程を含む、請求の範囲1記載の製造方法。
 前記(C)工程において、エタノール沈殿法または分子量分画法により、前記液体から前記金属錯体を回収する、請求の範囲1記載の製造方法。
 前記(C)工程において、前記分子量分画法がゲル濾過法である、請求の範囲10記載の製造方法。
 前記(D)工程において、前記金属錯体に、酸性処理、加熱処理および超音波処理からなる群から選択された少なくとも一つの処理を施して、前記金属錯体からアントシアニンを解離させる、請求の範囲1記載の製造方法。
 前記(D)工程において、前記金属錯体に酸性処理を施して、前記金属錯体からアントシアニンを解離させ、前記(D)工程の後、前記(D)工程の酸性処理によって得られたプラス荷電のアントシアニンと電気的に中性のフラボノイドと前記金属イオンとを含む混合物を陽イオン交換樹脂に供して、前記アントシアニンを吸着させ、前記フラボノイドを除去した後、前記吸着したアントシアニンを溶出する、請求の範囲1記載の製造方法。
 請求の範囲1記載の製造方法により得られる精製アントシアニン。
Description:
精製アントシアニンの製造方法

 本発明は、夾雑物とアントシアニンとを む粗色素画分から精製アントシアニンを製 する方法に関する。

 石油化学の進歩により、着色料として、 彩や耐久性に優れた低価格の合成色素(ター ル系色素)が開発され、広く使用されてきた しかしながら、合成色素は、前述のような 質には優れるものの、その安全性が疑問視 れている。実際に、合成色素は、毒性の再 討により、現在では、限られた種類しか使 が許可されていない状態である。そして、 年、食や環境の問題が盛んに議論され、安 性が非常に重要なウエイトを占めているこ もあり、再度、天然物由来の色素が注目さ ている。

 このような天然物由来の色素として、昔 らアントシアニンが知られている。アント アニンは、アントシアニジンをアグリコン する色素であり、例えば、食品添加物、カ ーインク等の色素、医薬品等への着色料と て有用な物質である。また、ポリフェノー の1種であることからも、機能性色素として の効果も期待されている。このようなアント シアニンは、例えば、植物の花、葉、果皮、 実等に広く存在しており、例えば、赤キャベ ツ色素、紅花色素、コチニール色素、クチナ シ色素、ブドウ果皮色素等の天然着色料が実 際に使用されている。しかし、これらの天然 着色料は、アントシアニンの精製品ではなく 、夾雑物が含まれた未精製品であるため、純 度の高い天然物由来アントシアニンの提供が 望まれている。

 しかしながら、天然物からアントシアニン 精製する場合、天然物には様々な夾雑物が まれている。中には、アントシアニンと同 度の分子量、同程度の電荷等を示す夾雑物 存在し、純度の高いアントシアニンを得る は、例えば、HPLC等で精製するしかない。こ のような方法は、非常に手間がかかり、大量 精製も現実的ではない。さらに、アントシア ニンは弱酸性水溶液中で不安定なことからも 、非常に精製が困難であった(非特許文献1)。 このため、精製した天然物由来アントシアニ ンは、安全性に優れるものの、非常に高価で あり、入手が困難という問題がある。例えば 、赤シソの葉に含まれるシソニンについては 、グラムあたり数万円オーダーとなることか ら、容易に購入できないという現状である。
Goto,T.,Kondo,T.,Tamura,H.,Imagawa,H.,Iino,A.andTakeda ,K.:Structure of Gentiodelphin,an acylated anthocyanin  isolated from Gentiana makinoi,that is stable in dilu te aqueous solution,Tetrahedron Letters 23(36),3695-3698 (1982). Tadao Kondo,Kumi Yoshida、Atsushi Nagasawa,Takatos hi Kawai,Hirotoshi Tamura&Toshio Goto;Nature,Vol.358, No6386,1992 Kondo,T.,Ueda,M.,Tamura,H.,Yoshida,K.,Isobe,M.,and Go to,T.:Composition of Protocyanin,a self-assembled supram olecular pigment,from blue cornflower of Centaurea cya nus,Angewandte Chemie,Int.Ed English 33(9),978-979(1994). Yoshida,K.,Kitahara,S.,Ito,D.,and Kondo,T.,Phytochemi stry,67,992(2006) Takeda,K.,Yanagisawa,M.,Kifune,T.,Kinoshita,T.,Timberl ake,C.F.,Phytochemistry 35(5)1167-1169,1994

 そこで、本発明は、夾雑物とアントシアニ とを含む粗色素画分から、容易に精製アン シアニンを製造できる方法の提供を目的と る。前記目的を達成するために、本発明の 製アントシアニンの製造方法は、アントシ ニンを含む粗色素画分から精製アントシア ンを製造する方法であって、下記工程(A)~(D) を含むことを特徴とする。
(A) アントシアニンとアルカリ土類金属およ 重金属の少なくとも一方の金属イオンと共 金属錯体を形成するフラボノイドを準備す 工程
(B) アルカリ土類金属および重金属の少なく も一方の金属イオンの存在下、液体中で、 記粗色素画分と前記フラボノイドとを接触 せ、前記アントシアニンと前記フラボノイ と前記金属イオンとを含む金属錯体を形成 せる工程
(C) 前記液体から前記金属錯体を回収する工
(D) 前記金属錯体からアントシアニンを解離 せる工程

 また、本発明の精製アントシアニンは、 発明の製造方法により得られる精製アント アニンである。

 植物の中でも、例えば、ツユクサにおい は、デルフィニジン型アントシアニンとフ ボノイド(例えば、フラボコンメリン)と金 イオン(例えば、マグネシウムイオン)とから 形成された金属錯体(例えば、コンメリニン) 、色素として存在することが報告されてい (非特許文献2)。この他にも、ヤグルマソウ おいては、シアニジン型アントシアニンと ラボノイドと金属イオンとが金属錯体を形 し(非特許文献3)、ヒマラヤケシや青色サル アにおいても同様の金属錯体を形成してい ことが報告されている(非特許文献4および 特許文献5)。そこで、本発明者らは、アント シアニンがフラボノイドと金属イオンととも に金属錯体を自己的に形成する性質を利用し て、夾雑物が混在する粗色素画分からアント シアニンを精製する方法の確立を試みた。前 述の論文で報告されている金属錯体は、植物 中で形成された金属錯体であるか、もしくは 、金属錯体の構成成分である特定のアントシ アニンと特定のフラボノイドとを単一に精製 し、これらの単一精製品を用いて金属イオン の存在下で再構築した金属錯体である。つま り、当該技術分野においては、アントシアニ ンとフラボノイドと金属イオンとから金属錯 体が形成されることは報告されていたものの 、夾雑物を含む条件下であっても、アントシ アニンを特異的に取り込んだ金属錯体が形成 できること、また、複数種類のアントシアニ ンが存在する場合であっても、金属錯体が形 成されること、さらに、論文で記載されたフ ラボノイドとアントシアニンとの組合せ以外 であっても金属錯体が形成されることについ ては、全く知られていなかった。そこで、本 発明者らは、鋭意研究の結果、夾雑物が混在 するアントシアニンを含む粗色素画分であっ ても、金属イオンの存在下、前述のようなフ ラボノイドと前記粗色素画分中のアントシア ニンとを接触させることによって、金属錯体 を形成できることを見出した。そして、さら に、アントシアニンを含む金属錯体であれば 、共存する夾雑物との分離が可能であること を見出した。アントシアニンと夾雑物とを含 む粗色素画分では、前記両者を分離すること が極めて困難であるが、アントシアニンを含 む金属錯体であれば、共存する夾雑物を容易 に除去できることは、本発明者らがはじめて 見出した事実である。また、アントシアニン を含む金属錯体から容易にアントシアニンを 解離できるため、容易に精製アントシアニン を調製でき、且つ、前記金属錯体は、すでに 夾雑物を除去した純度の高い金属錯体である ことから、解離によって得られる精製アント シアニンも高い純度となる。

 したがって、本発明によれば、簡便且つ 易に前記粗色素画分からアントシアニンを 製でき、これによって、低コストで高純度 精製アントシアニンを提供することが可能 なる。したがって、本発明は、例えば、食 分野等を含む、天然色素を利用するあらゆ 分野において、極めて有用な技術であると える。

図1は、粗色素画分のHPLCのクロマトグ ムである。 図2は、本発明の実施例における複合体 (金属錯体)のHPLCのクロマトグラムである。 図3は、本発明のさらにその他の実施例にお て、アントシアニンに対するMg 2+ のモル比(物質量比)と、マロニルシソニンの 後比とをプロットしたグラフである。

 本発明の精製アントシアニンの製造方法は 前述のように、アントシアニンを含む粗色 画分から精製アントシアニンを製造する方 であって、下記工程(A)~(D)を含むことを特徴 とする。
(A) アントシアニンとアルカリ土類金属およ 重金属の少なくとも一方の金属イオンと共 金属錯体を形成するフラボノイドを準備す 工程
(B) アルカリ土類金属および重金属の少なく も一方の金属イオンの存在下、液体中で、 記粗色素画分と前記フラボノイドとを接触 せ、前記アントシアニンと前記フラボノイ と前記金属イオンとを含む金属錯体を形成 せる工程
(C) 前記液体から前記金属錯体を回収する工
(D) 前記金属錯体からアントシアニンを解離 せる工程

 本発明において、前記アントシアニンと ラボノイドと金属イオンとを含む金属錯体 、以下、「複合体」ともいう。なお、本発 の製造方法は、アントシアニンの精製方法 もいえる。

 <フラボノイド>
 本発明におけるフラボノイドとしては、ア トシアニンと前記金属イオンと共に金属錯 を形成するフラボノイドであればよい。こ ようなフラボノイドとしては、例えば、以 に示すフラボン(2-フェニルクロモン)やその 誘導体等があげられる。前記誘導体としては 、例えば、水酸基を含むフラボノール、メト キシ基を含む誘導体等があげられる。前記フ ラボノイドとしては、例えば、植物由来のフ ラボンがあげられ、具体例としては、ツユク サ由来のフラボンであるフラボコンメリン( 特許文献2)、ヤグルマソウ由来のフラボンで あるapigenin 4’-(6-O-malonylglucoside)-7-glucuronide( 特許文献3)、ヒマラヤケシ由来のフラボノー ルであるflavonol 3-getiobioseあるいはflavonol 3-(6 -O-glucosyl-b-O-galactoside)(非特許文献4)、青サル ア由来のフラボンであるapigenin 7,4’-diglucosi de(非特許文献5)、柑橘由来のフラボンであるh esperidin、diosmin、柑橘由来のフラボンであるna ringenin 7-glucoside、そば由来のフラボンである rutin、apigenin、フラボンであるapigenin 7-glucosid e、apigenin 7-o-neohesperidoside、silymarin、オリー 由来のフラボンであるluteolin 7-glucoside等が げられる。

 これらのフラボノイドは、例えば、植物 ら調製することができる。通常、前記フラ ノイドは、アントシアニンの局在箇所に存 することから、植物のアントシアニンが局 する部位より抽出できる。具体例として、 ユクサから前記フラボコンメリンを調製す 方法の一例を以下に示す。

 まず、ツユクサの花弁を圧搾する。そし 、得られた搾汁にエタノールを添加してエ ノール沈殿を行い、上清を回収する。エタ ールの添加割合は、特に制限されないが、 搾汁の4~20倍(体積)であることが好ましい。 お、エタノールの上清にはフラボコンメリ が含まれ、エタノール沈殿の沈殿物には、 ユクサ由来フラボコンメリンとツユクサ由 アントシアニン(例えば、アオバニンやマロ ニルアオバニン)と金属イオンとから構成さ る金属錯体(コンメリニン)が含まれる。つぎ に、前記上清を吸着剤に供給して、前記吸着 剤にフラボコンメリンを吸着させ、メタノー ルの濃度交配によって、吸着したフラボコン メリンを溶出させる。この際、前記上清に含 まれるフラボコンメリンがツユクサ由来アン トシアニンおよび金属イオンと金属錯体を形 成している可能性を考慮し、メタノールの濃 度交配による溶出に先だって、酸性水溶液を 供給し、吸着したフラボコンメリンからツユ クサ由来アントシアニンを解離させておくこ とが好ましい。前記吸着剤としては、例えば 、商品名Amberlite XAD(合成吸着剤、オレガノ社 製)があげられる。前記酸性水溶液としては 特に制限されないが、例えば、塩酸等の水 液があげられる。そして、メタノール濃度 配により溶出したフラボコンメリン画分を 収する。このフラボコンメリン画分は、そ まま使用してもよいし、例えば、濃縮した 、有機溶媒と水との混合液に添加し、加熱 よって結晶化させ、さらに乾燥させたもの 使用してもよい。なお、フラボノイドは、 述する粗色素画分中のアントシアニンと金 錯体を形成できればよく、例えば、植物か 抽出した粗フラボノイド画分をそのまま使 してもよい。

 他のフラボノイドも、例えば、前述と同 の方法により調製することができる。例え 、ヤグルマソウやヒマラヤケシから目的の ラボノイドを調製する場合も、例えば、花 から抽出することができる。なお、これら フラボノイドは、例えば、合成品を使用し もよい。

 <金属イオン>
 本発明において、前記金属イオンは、アル リ土類金属および重金属の少なくとも一方 金属イオンであればよい。前記アルカリ土 金属イオンとしては、例えば、マグネシウ イオンがあげられ、前記重金属イオンとし は、例えば、亜鉛、ニッケル、カドミウム 鉄、コバルト、アルミニウム、銅、マンガ 、クロム、錫等のイオンがあげられる。中 も、マグネシウムが好ましい。

 本発明においては、金属イオン存在下、 体中で前記金属錯体を形成させるため、イ ン化する金属化合物を、前記液体に添加す ことが好ましい。このような金属化合物と ては、制限されないが、具体例としては、 ルカリ土類金属または重金属の酢酸塩、塩 塩、硫酸塩、炭酸塩等があげられる。

 <粗色素画分>
 前記粗色素画分は、アントシアニンを含ん いればよいが、本発明は、アントシアニン 夾雑物と共存する場合に、特に有効なアン シアニンの精製方法であることからも、夾 物を含む粗色素画分が好ましい。このよう 粗色素画分としては、例えば、精製処理を していない植物の抽出物があげられる。植 の抽出液としては、例えば、植物において 的のアントシアニンが含まれる部位の圧搾 があげられる。例えば、花弁に含まれるア トシアニンを精製するのであれば、花弁の 搾汁、果実に含まれるアントシアニンを精 するのであれば、果実の圧搾汁、果実や種 の皮に含まれるアントシアニンを精製する であれば、前記皮の圧搾汁等が使用できる また、圧搾のみでアントシアニンが抽出で ない場合には、例えば、目的のアントシア ンが含まれる部位を溶媒に浸漬した後、圧 すればよい。前記溶媒は、制限されないが 例えば、水、メタノール等の有機溶媒、こ らの混合溶媒があげられ、さらに、トリフ オロ酢酸等を含んでもよい。前記植物とし は、例えば、シソ、赤キャベツ、ブドウ、 トウモロコシ、赤大根、イチゴ、カシスお びブルーベリーをはじめとするベリー類、 豆、小豆等の豆類、紫いも等のいも類、赤 など米類、紫玉ねぎ、オリーブ、リンゴ、 時豆、黒豆等の豆類等があげられる。この うな植物の圧搾汁には、通常、タンパク質 糖、ビタミン、ミネラル、脂質、アントシ ニン以外のフラボノイド類、高分子化した リフェノール類等の夾雑物が含まれる。

 このようにして抽出した粗色素画分は、 えば、金属錯体を形成させる前に、予め、 やタンパク質等の極性成分を除去してもよ 。これによって、より効率良く、粗色素画 からアントシアニンを精製することができ 。前記極性成分の除去方法としては、制限 れないが、例えば、前述のような吸着剤が げられ、具体的に、商品名Amberlite XAD(合成 着剤、オレガノ社製)等が使用できる。なお 、従来、問題となっていたのは、前述のよう に、例えば、アントシアニンと分子量や電荷 が類似している夾雑物(特に、アントシアニ 以外のフラボノイド類や高分子化したポリ ェノール類等)であることから、例えば、粗 素画分の準備において、糖やタンパク質を め除去することは、本発明の効果を否定す ものではない。

 <アントシアニン>
 本発明において、前記粗色素画分に含まれ アントシアニンは、一種類でもよいし、二 類以上であってもよい。そして、本発明の 造方法により最終的に得られる精製アント アニン画分に含まれるアントシアニンも、 種類でもよいし、二種類以上であってもよ 。アントシアニンは、前述のようにアント アニジンをアグリコンとする配糖体の総称 あり、複数の化合物が存在している。従来 おいては、前述のように、これらの個々の ントシアニンを分離することではなく、そ 以前に、植物由来の粗色素画分に含まれる ントシアニンと夾雑物とを分離すること自 が困難であった。本発明においては、金属 体を形成することにより、夾雑物とアント アニンとの分離を簡便に行うことを可能と ているのであって、最終的に得られる精製 ントシアニン画分に2種類以上のアントシア ニンが含まれていてもよい。また、従来、個 々のアントシアニンを分離する技術が存在し ても、その原料となるアントシアニン画分の 純度に問題があったが、本発明によれば、夾 雑物を減少させた精製アントシアニン画分を 提供できるため、このような問題を解消でき る。この点からも、本発明により得られる精 製アントシアニン画分は、二種類以上のアン トシアニンを含んでいてもよい。さらに、天 然由来のアントシアニンは、単品のアントシ アニンではなく、複数のアントシアニンの混 合物であっても、十分な商品価値を有するこ とは、当該技術分野において周知である。

 このように粗色素画分に含まれるアントシ ニンの種類は、制限されないが、例えば、 記式に示すアントシアニンが好ましい。下 式において、R 1 ~R 7 は、特に制限されないが、それぞれ、例えば 、水素原子、水酸基、またはメトキシ基など の官能基を有するものであり、水酸基はグル コースなどが結合したいわゆる配糖体となっ ている。先の官能基は同一でも異なっていて も良く、少なくとも一つは水酸基である。ま た、フラボノイドとの金属錯体を形成しやす いことから、下記式に示すアントシアニジン のB環に、2個以上の水酸基を有するアントシ ニンであることが好ましい。つまり、下記 において、R 1 、R 2 およびR 3 における少なくとも2つが水酸基であること 好ましい。このようなアントシアニンとし は、例えば、ペオニジン系配糖体アントシ ニン、デルフィニジン系配糖体アントシア ン、ペチュニジン系配糖体アントシアニン デルフィニジン系配糖体アントシアニン等 あげられる。アントシアニンの具体例とし は、例えば、マロニルシソニン、(メチルマ ニル)シソニン、シソニン、シアニン、マロ ニルアオバニン、アオバニン、シアニジン、 デルフィニジン、ルテオリニジン、ペチュニ ジン、ヨーロピニジン等があげられるがこれ には制限されない。なお、「アントシアニジ ン」および「アントシアニン」とは、狭義に は、下記式で表される化合物およびその配糖 体のうち特定のもののみをさす場合があるが 、本発明では、さらに広く、例えば、植物の 花、葉、果皮、実等に存在する色素全般をさ す。

 下記式に、アントシアニンの一例を列挙す 。

 つぎに、本発明の製造方法について、フ ボノイドとしてツユクサ由来フラボコンメ ンを使用した例をあげて説明する。なお、 発明は、これには制限されない。

 まず、前述のようにして、植物から抽出し 粗色素画分を準備する。前記粗色素画分は そのまま使用してもよいが、金属錯体の形 に先立って、前記粗色素画分をアルカリ処 することが好ましい。このようなアルカリ 理によって、前記粗色素画分に含まれるア トシアニンが、アンヒドロ塩基またはアン ヒドロ塩基アニオンとなる。これによって より効率良く金属錯体を形成することがで る。アントシアニンをアンヒドロ塩基に変 する場合は、前記粗色素画分のpHを、例え 、5~9に設定することが好ましく、より好ま くは、7~9である。また、アントシアニンを ンヒドロ塩基アニオンに変換する場合は、 記粗色素のpHを、例えば、9以上に設定する とが好ましく、より好ましくは、9~12である なお、アントシアニンの構造変化の一例を 下記式に示す。

 つぎに、前述のようにして、フラボコン リンを準備し、溶媒中に、フラボコンメリ 、前記粗色素画分および金属イオンを添加 て混合する。この際、フラボコンメリン、 色素画分および金属イオンの添加順序は、 限されない。前記溶媒は、制限されないが 例えば、水(例えば、純水)等が使用でき、 の他に、アントシアニンを含む植物の抽出 そのものであってもよい。フラボコンメリ および粗色素画分は、それぞれ固体でも液 でもよい。前記金属イオンは、例えば、前 溶媒に、直接、前述のような液体中でイオ 化する金属化合物を添加してもよいし、金 がすでにイオン化した金属化合物溶液(例え 、酢酸マグネシウム水溶液)を添加してもよ い。フラボコンメリンと粗色素画分と金属イ オンとを添加した混合液のpHは、例えば、6~9 あることが好ましい。温度条件は、制限さ ず、通常、フラボノイドやアントシアニン 分解を十分に回避できることから、50℃未 であることが好ましく、例えば、20~30℃であ る。これらを液体中で混合することによって 、フラボコンメリンとアントシアニンと金属 イオンからなる金属錯体が瞬時に形成される 。

 前記液体中において、各成分の割合は適 決定でき、制限されないが、粗色素画分に まれるアントシアニンに対して、フラボコ メリンと金属イオンとが十分量添加されて ることが好ましい。なお、ツユクサにおい 形成される金属錯体コンメリニンは通常、 ントシアニンとフラボノイド(フラボコンメ リン)と金属イオンのモル比が6:6:2である(前 非特許文献2)。前記フラボコンメリンは、前 記粗色素画分のアントシアニン1molに対して 例えば、1~20molであることが好ましく、より ましくは1~5molである。また、前記金属イオ は、前記粗色素画分のアントシアニン1molに 対して、例えば、10~50molであることが好まし 、より好ましくは10~20molである。アントシ ニン(A)とフラボコンメリン(F)と金属イオン(M )の割合(A:F:M)は、例えば、(A)1:(F)1~5:(M)5~20であ ることが好ましく、より好ましくは、(A)1:(F)1 ~2:(M)5~20である。なお、他のフラボノイドを 用する際も、同様の割合に設定できる。

 このような方法により金属錯体が形成で ることは、後述する実施例で証明されてい ため、本発明の製造方法において、複合体 成の有無を確認することは必須ではない。 お、金属錯体の形成は、例えば、非特許文 2に記載する方法により確認することが可能 である。すなわち、前記金属錯体は、可視部 吸収スペクトルの長波長シフト、580nm(θ;+615,0 00)および668nm(θ;-480,000)におけるCDの励起子型( exiton-type)の負のコットン効果が観察されるこ と、分子篩カラムクロマトグラフィーでの高 分子青色複合体の溶出によって判断できる。

 つぎに、前記液体から前記金属錯体を回 する。これによって、前記粗色素画分に含 れる夾雑物を除去する。前述の工程におい 金属錯体が形成されるが、この金属錯体は 特定の成分(すなわち、フラボノイド、アン トシアニンおよび金属イオン)から形成され 複合体であり、前記粗色素画分に様々な夾 物が含まれる場合であっても、これらの夾 物とフラボコンメリンと金属イオンとが金 錯体を形成する可能性は極めて低い。そこ 、この金属錯体を回収することによって、 の他の成分が除去され、アントシアニンを む金属錯体を高い純度で回収できる。そし 、目的のアントシアニンを含む金属錯体を 収できれば、後述するように前記金属錯体 らアントシアニンを解離させたり、解離し アントシアニンとフラボコンメリンと金属 オンとを分離することは、容易である。こ ため、非常に優れた効率で粗色素画分に含 れる夾雑物を除去して、純度の高い精製ア トシアニンを得ることができる。また、本 明は、粗色素画分における夾雑物を除去す ことが目的であり、前述のように、最終的 得られる精製アントシアニン画分に含まれ アントシアニンは、一種類でもよいし、二 類以上が含まれていてもよい。

 前記液体から金属錯体と夾雑物とを分離 る方法は、特に制限されず、例えば、エタ ール沈殿法があげられる。前述のように、 ユクサにおけるコンメリニンは、例えば、 タノール沈殿の沈殿画分に含まれる。した って、本発明における、フラボコンメリン アントシアニンと金属イオンとから形成さ た金属錯体も同様にエタノール沈殿を行う とによって、その沈殿画分から回収できる エタノールの添加割合は、制限されない。 記工程において複合体を形成させた液体(以 下、「反応液」ともいう)に対しては、例え 、水分含量に応じて適宜決定できるが、例 ば、エタノール3~10倍量(体積)であり、好ま くは3~6倍量(体積)である。

 この他に、例えば、ゲル濾過等の分子量 画法により前記金属錯体と夾雑物とを分離 ることもできる。ゲル濾過法は、例えば、 ル濾過カラムクロマトグラフィーが利用で 、従来公知の各種カラムが使用できる。具 例としては、商品名Sephadex(amersham社製)等が げられる。

 このようにして回収した金属錯体からア トシアニンを解離させることによって、純 の高い精製アントシアニンを得ることがで る。アントシアニンを解離させる方法とし は、制限されないが、例えば、金属錯体を 酸性処理する方法、加熱処理する方法、超 波処理する方法等があげられる。また、金 錯体をEDTA等のキレート剤で処理し、前記金 属錯体から金属イオンを除くことによって、 アントシアニンを解離させる方法でもよい。 この中でも酸性処理を一例として以下に説明 する。前記金属錯体に酸性処理を施しても、 フラボコンメリンは電気的に中性であり、ア ントシアニンはプラスに荷電している。した がって、例えば、陽イオン交換樹脂(酸性イ ン交換樹脂)を利用すれば、プラスに荷電し アントシアニンは、イオン交換樹脂に吸着 、中性のフラボノイドは非吸着となる。こ ため、非吸着のフラボノイドを分離した後 アントシアニンが吸着した陽イオン交換樹 に酸を接触させることで、アントシアニン 溶出され、結果的に金属錯体から解離する ととなる。このようにして、粗色素画分に まれる夾雑物を除去して、純度の高い精製 ントシアニンを回収することができる。こ ような方法であれば、酸処理するのみでア トシアニンを解離できることから、容易に 製アントシアニンを調製できる。

 なお、酸性処理後のフラボコンメリンと ントシアニンと金属イオンは、例えば、以 のようにして分離することができる。

 前述のように、金属錯体からアントシア ンを解離させるために酸性処理を行った結 、フラボコンメリンは電気的に中性な状態 維持し、アントシアニンはプラスに荷電し 状態となる。このため、両者ならびに金属 オンが含まれる混合液を、例えば、陽イオ 交換樹脂に供することによって、アントシ ニンのみを回収することが可能となる。す わち、前記混合液を陽イオン交換樹脂に供 ると、プラス荷電のアントシアニンが陽イ ン交換樹脂に吸着され、電気的に中性なフ ボコンメリンは、吸着されない。そこで、 吸着のフラボコンメリンを除去した後に、 えば、塩濃度交配により吸着したアントシ ニンを溶出し、その溶出画分を回収する。 のようにして、さらに、フラボコンメリン アントシアニンとを分離することができる

[実施例]
 つぎに、本発明の実施例について、比較例 併せて説明する。ただし、本発明は下記の 施例により制限されない。

 (1)シソからの粗色素の抽出
 赤シソの葉2600gをミキサーで粉砕し、0.5%TFA( トリフルオロ酢酸)含有50%MeOH 8.85Lに、4℃で 晩浸漬した。次に、浸漬した葉を取り出し これを0.5%TFA含有50%MeOH 2.55Lを用いてハンド クリュー圧搾機で圧搾し、抽出液を回収し 。圧搾後の残渣を、再度0.5%TFA含有50%MeOH 3L 、4℃で一晩浸漬し、同様にして圧縮抽出処 を行った。得られた抽出液を先の抽出液と 合し(約15L程度)、エバポレーターと真空ポ プとを用いて、減圧下で濃縮乾固を行った(1 15.9g)。得られた乾固物49.58gを、1%HCl含有MeOH水 溶液で溶解し、濾過した後、溶液中の色素を イオン交換カラムクロマトグラフィー(商品 Amberlite(登録商標)XAD-7、カラムφ25mm×450mm)に 着させた。そして、糖やタンパク質等の極 成分を除去するため、0.5%TFA水溶液1Lを流し 後、さらに、0.5%TFA含有80%MeOH水溶液1.5Lを流 て吸着した色素を溶出した。回収した溶出 を、エバポレーターを用いて減圧下で濃縮 固し、さらに、微量水分と揮発性酸であるTF Aとを除去するため、真空ポンプを用いて乾 した。これにより粗色素12.3gを得た。

 (2)ツユクサからのフラボコンメリンの単離
 (2-1)粗コンメリニンの単離
 ツユクサの青色花弁の凍結物4.4kgをハンド クリュー圧搾機で圧搾し、3.64Lの青色の搾汁 を得た。これに21Lのエタノールを加えて-20℃ で一晩放置し、色素画分を沈殿させた。これ を遠心分離に供し(商品名SCR20B、HITACHI社製、5 000ppm、10分間)、上清と沈殿とに分離し、沈殿 を回収した。この回収した沈殿を、減圧下、 塩化カルシウム上で乾燥した。これにより、 青色固形物として14.5gの粗コンメリニンを得 。なお、粗コンメリニンの吸収スペクトル ータならびにその測定条件を以下に示す。

・UVスペクトル測定条件
   装置:日本分光社製。商品名V-520-SR型分光 光度計
   溶媒:0.05M酢酸緩衝液(pH5.6)
   セル長:1mm
・コンメリニン吸収スペクトルデータ
   UV-visλnm(ε):645(66000)、590(140200)

 (2-2)フラボコンメリンの単離精製
 前記(2-1)のエタノール沈殿後に分離した上 を、エバポレーターと真空ポンプとを用い 、減圧下で濃縮乾固した。これにより、フ ボコンメリンの多く含まれる紺色の油状物 黄色の固形物とを得た。黄色の固形物をジ チルスルホキシドに溶解させ、その溶液をHP LC分析した結果、フラボンの1種「フラボコン メリン」であることが確認できた。この溶液 と、超純水で希釈した前記紺色の油状物とを 混合して濾過した後、溶液中のフラボコンメ リンをイオン交換カラムクロマトグラフィー (商品名Amberlite(登録商標)XAD-7、カラムφ25mm×45 0mm)に吸着させた。まず、前記カラムに、1%塩 酸水溶液0.72Lを流した。これにより、イオン 換樹脂に吸着したフラボコンメリンがツユ サ由来アントシアニンと複合体を形成して る場合でも、前記ツユクサ由来アントシア ンをフラボコンメリンから解離させること できる。続いて、前記カラムに、超純水7.5L 、20%MeOH水溶液6L、30%MeOH水溶液6L、40%MeOH水溶 9L、60%MeOH水溶液3Lをこの順序で流して、吸着 したフラボコンメリンを溶出した。フラボコ ンメリンは、20%MeOH水溶液を2L流した時点から 溶出が確認された。そこで、この時点から40% MeOH水溶液を5L流した時点までをフラクション Iとして回収し、さらに、40%MeOH水溶液5L流し 時点から60%MeOH水溶液を1L流した時点までを ラクションIIとして回収し、さらに、60%MeOH 溶液を1L流した時点から60%MeOH水溶液を3L流し た時点までをフラクションIIIとして回収した 。フラクションIを減圧下で濃縮して、乾固 6.98gを得た。フラクションIIおよびIIIからは 固物が得られなかった。前記フラクションI から得られた乾固物に超純水50mLおよびアセ ニトリル100mLを加え、加熱することによって 、フラボコンメリンを析出させた。析出した フラボコンメリンを減圧下で乾燥することに よって、5.28g(純度90%)のフラボコンメリンを た。なお、得られたフラボコンメリンの吸 スペクトルデータならびにその測定条件を 下に示す。コンメリニンは、前記非特許文 2に示すように、可視部吸収スペクトルの長 長シフト、可視部の強い励起子型の負のコ トン効果により判断できる。

・UVスペクトル測定条件
   装置:日本分光社製。商品名V-520-SR型分光 光度計
   溶媒:超純水
   セル長:1mm
・フラボコンメリン吸収スペクトルデータ
   UV-visλnm(ε):326(19800)、271(22260)

 (2-3)ツユクサ残渣からの粗色素およびフラ コンメリンの単離
 前記(2-1)で得られた圧搾後の残渣を、0.5%TFA 有50%MeOH 3Lに、4℃で1ヶ月浸漬した後、抽出 液と残渣とに分離した。この残渣を、再度、 0.5%TFA含有50%MeOH 3Lに浸漬し、同様にして抽出 を行い、抽出液を回収した。この抽出液をと 先の抽出液とを混合し、エバポレーターと真 空ポンプとを用いて、減圧下で濃縮乾固した (10.18g)。この乾固物10.18gを超純水で溶解し、 過した後、溶液中の色素画分およびフラボ ンメリンをイオン交換カラムクロマトグラ ィー(商品名Amberlite(登録商標)XAD-7、カラムφ 25mm×450mm)に吸着させた。そして、糖やタンパ ク質等の極性成分を除去するため、0.5%TFA水 液4Lを流した後、さらに、10%MeOH水溶液2L、30% MeOH水溶液4L、40%MeOH水溶液2Lをこの順序で流し て、吸着したフラボコンメリンを溶出した。 フラボコンメリンは、30%MeOH水溶液を流した 点から溶出が確認されたので、この時点か の溶出液を回収した。回収したフラクショ を減圧下で濃縮し、乾固物を得た。この乾 物に超純水20mLおよびアセトニトリル150mLを え、加熱することにより、フラボコンメリ を析出させた。析出したフラボコンメリン 減圧下で乾燥することによって、0.61gのフラ ボコンメリンを得た。続いて、フラボコンメ リンを溶出した後、前記イオン交換カラムに 、0.5%TFA含有80%MeOH水溶液1.5Lを流し、吸着した 色素画分を溶出させた。回収した溶出液を、 エバポレーターを用いて減圧下で濃縮乾固し 、さらに、微量水分と揮発性酸であるTFAとを 除くため、真空ポンプによって乾固した。こ れにより、ツユクサの粗色素0.82gを得た。

 (3)シソ由来アントシアニンとツユクサ由来 ラボコンメリンとの複合体形成
 前記(1)で調製したシソ由来の粗色素(乾固物 )3mgに超純水1mLを加え、0.5Nアンモニア水1mLで 和した後、減圧下で濃縮乾固した。なお、 和により、シソ由来粗色素に含まれるアン シアニンは、アンヒドロベース型に変換さ る。この乾固物に、超純水50μLと、前記(2-2) で調製したフラボコンメリン3mgを水50μLに溶 したフラボコンメリン溶液を加え、さらに 0.5M酢酸マグネシウム水溶液25μLを加えた。 の混合液は、混合によって瞬時に青色とな た。この混合液を減圧下で濃縮し、混合液 の複合体をゲル濾過カラムクトマトグラフ ー(商品名sephadexG-10、カラムφ10mm×150mm)に吸 させ、水で溶出することにより精製した。 して、濃い青色の溶出画分を、複合体含有 分として回収した。なお、シソ由来アント アニンとツユクサ由来フラボコンメリンと 含む複合体の形成は、前述のコンメリニン 同様に、可視部吸収スペクトルの長波長シ ト、可視部の強い励起子型の負のコットン 果により判断した。

 シソ由来アントシアニンとツユクサ由来 ラボコンメリンとの複合体の収率を確認し 。まず、複合体形成に使用した粗色素を1%TF A含有MeOHに溶解して、吸光度測定を行った。 方、形成した複合体には、前記粗色素と同 希釈倍率となるように1%TFA含有MeOHを添加し 。そして、この溶液を10分間超音波処理し 、前記複合体からシソ由来アントシアニン 解離した後、吸光度測定を行った。そして 複合体の吸光度(C)を粗色素の吸光度(P)で割 た値の百分率(100×C/P)を、複合体の収率(%)と た。その結果、粗色素の吸光度(P)が0.514、 合体の吸光度(C)が0.144であったことから、収 率(100×C/P)は、「約28.02%」となった。

・UVスペクトル測定条件
   装置:日本分光社製。商品名V-520-SR型分光 光度計
   溶媒:1%TFA含有MeOH
   セル長:1mm
   波長:529nm(粗色素)、529nm(複合体)

 以上のように、複合体の形成が確認され ことから、夾雑物が含まれる粗色素を用い も、アントシアニンとフラボコンメリンと 複合体を形成でき、アントシアニンを解離 ることによって、アントシアニンを精製で ることがわかった。また、赤シソの葉には 少なくとも4種類のアントシアニンが含まれ ることが知られている。このように2種類以 のアントシアニンが含まれる粗色素を使用 ても、アントシアニンとフラボコンメリン の複合体を形成できることがわかった。こ 結果から、本発明によれば、例えば、赤シ の葉を原料とする場合、複合体(金属錯体)を 形成するのみで、アントシアニンを精製する ことができる。

 なお、シソ由来アントシアニンとツユク 由来フラボコンメリンとの複合体は、ツユ サ由来アントシアニンとツユクサ由来フラ コンメリンとの複合体よりも、紫がかった 色を呈していた。前者の複合体が、後者の 合体に比べ、可視における極大吸収波長が 波長側にシフトしたためと考えられる。こ は、シソ由来アントシアニンは、母核がシ ニジンであるのに対し、ツユクサ由来フラ コンメリンに元来含まれるツユクサ由来ア トシアニンは、母核がデルフィニジンであ ことに起因すると推測される。

 (4)複合体の構成成分の分析
 つぎに、フラボコンメリンが、各種アント アニンと複合体を形成しているか否かを確 した。前述のように赤シソの葉には、少な ともシソニン(S)、マロニルシソニン(MS)、( チルマロニル)シソニン(MMS)およびシアニン(C )が含まれている。そこで、どのような組成 で各種アントシアニンとフラボコンメリン が複合体を形成しているのかを確認した。

 前記(3)で使用した粗色素と前記(3)で形成 た複合体とについて、下記条件によりHPLC分 析を行った。この結果を、図1および図2に示 。図1は、粗色素のHPLCクロマトグラム、図2 、複合体のHPLCクロマトグラムを示す。なお 、下記HPLC条件に示すように移動相AおよびBは 、酸性溶媒であることから、複合体をHPLCに することによって、前記複合体からアント アニンが解離する。したがって、図2のピー は、直接的には、解離したアントシアニン ピークであるが、間接的には、それぞれの ントシアニンを含む複合体のピークである つまり、図2のピークから、各アントシアニ ンを取り込んだ複合体の量や、各複合体の比 率等を求めることができる(以下、同様)。

 図1の上段に示すように、粗色素のクロマ トグラムでは、紫外部(280nm)において夾雑物( えば、タンパク質や有機酸、アントシアニ 以外のフラボノイド類、高分子化したポリ ェノール類等)のピークが見られるが、図2 上段に示すように、複合体のクロマトグラ では、フラボコンメリンと微量の不純物の ークが検出されただけであった。このこと ら、粗色素に含まれるほとんどの夾雑物、 に、従来問題となっていた、アントシアニ 以外のフラボノイド類や高分子化したポリ ェノール類は、複合体形成には適さない物 であって、複合体形成に使用されず、前述 カラムクロマトグラフィーによって除去さ たことがわかる。

・HPLC分析条件
   送液ポンプ:JASCO社製、商品名PU-980×2
   検出器:JASCO社製、商品名MD2010Plusフォト イオードアレー検出器
   カラム:商品名Develosil ODS-HG-5 250mm×4.6mm
   移動相A: 酢酸:アセトニトリル:水:リン =2:2.5:94:1.5
   移動相B: 酢酸:アセトニトリル:水:リン =20:25:53.5:1.5
   サンプル注入量:10μL
   流速:1mL/min
   カラム温度:40℃

 そして、粗色素については、540nmクロマ グラムから、各アントシアニン(S、MS、MMSお びC)のピーク面積の割合(%)を求め、これを 色素における各アントシアニンの組成割合(% )とした。また、シアニン(S)のピーク面積の 合(%)を1として、他のアントシアニンのピー 面積の比率をそれぞれ求めた。他方、前記( 3)で形成した複合体についても、540nmクロマ グラムから、複合体に含まれていた各アン シアニンのピーク面積の割合(%)を求め、こ を各アントシアニンが含まれている複合体 組成割合(%)とした。また、複合体について 、Sのピーク面積の割合(%)を1として、他のア ントシアニンのピーク面積の比率を求めた。 この結果を下記表に示す。なお、複合体の形 成は、3回行い、平均値ならびに標準偏差を めた。

 前記表3に示すように、粗色素には、主成 分としてS、MS、MMSおよびCのアントシアニン 上記の比率で含まれていることが確認され 。そして、複合体についても、S、MS,MMSおよ Cのアントシアニンを含む複合体がそれぞれ 上記比率で形成されていることが確認された 。この結果から、前記粗色素のように複数の アントシアニンが存在する場合であっても、 アントシアニンとフラボコンメリンとの複合 体が形成できること、また、フラボコンメリ ンは、各種アントシアニンとの複合体を形成 できることがわかった。なお、この実施例で は、赤シソの葉からの抽出物からタンパク質 等の極性成分を除去するためにAmberliteで処理 を行っているが、この処理を行っていない粗 色素であっても、同様に複合体が形成され、 複合体の形成によってアントシアニンが精製 できることは確認済みである。

 前記実施例1に示すように、複数のアント シアニンが存在する場合であっても、各種ア ントシアニンとフラボコンメリンとの複合体 を形成できることがわかった。そこで、粗色 素中のアントシアニンの組成比を変化させる ことによって、複合体形成時における各種ア ントシアニンの選択性を確認した。

 (1)粗色素の調製
 (1-1)粗色素の酸加水分解
 前記実施例1で調製したシソ粗色素20.6gを1%HC l含有MeOH水溶液に溶解し、HPLCによって加水分 解反応を観察しながら、室温で2日間放置し 前記粗色素に含まれるマロニルシソニンか マロン酸を除去して、シソニンに変換した この反応液を減圧下で濃縮乾固し、さらに 微量水分と揮発性酸であるHClとを除くため 真空ポンプにより乾固した。これにより、 ソニンを主成分とした粗色素13.45gを得た。 れを粗色素Aという。また、前記実施例で調 したシソ粗色素2.0gを3%HCl含有MeOH水溶液に溶 解し、HPLCによって加水分解反応を観察しな ら、室温で1日放置し、前記粗色素に含まれ マロニルシソニンからマロン酸を除去して シソニンに変換した。この反応液を減圧下 濃縮乾固し、さらに、微量水分と揮発性酸 あるHClとを除くため、真空ポンプにより乾 した。これにより、シソニンを主成分とし 粗色素1.7gを得た。これを粗色素Bという。

 (1-2)粗色素の配合調整
 前記酸加水分解処理で得られた前記粗色素A および前記粗色素Bと、前記実施例1で調製し 粗色素とを混合し、組成の異なる粗色素を 製した。前記組成比は、シソニン(S)とマロ ルシソニン(MS)の比(物質量比S:MS)が、所定比 (1:0.25、1:0.4、1:0.49、1:2.42、1:3.71、1:4.31)とな ようにした。なお、組成比は、HPLC分析を行 、MSとSとのピーク面積比から確認した。

 (2)複合体の構成成分の分析
 前記実施例1の(3)と同様にして、複合体を形 成し、カラムクロマトグラフィーにより精製 を行った。そして、前記実施例1の(4)と同様 して、複合体含有画分のHPLC分析を行い、各 成の粗色素ならびに複合体について、ピー 面積の割合(%)と、シアニン(S)のピーク面積 割合(%)を1としたピーク面積の比率とを求め た。さらに、各アントシアニンについて、複 合体形成前の粗色素のピーク面積比(B)と、複 合体形成後の複合体のピーク面積(A)との比( 後比A/B)を求めた。前後比A/Bは、相対的に大 い程、そのアントシアニンが、選択的に複 体に取り込まれていることを意味する。な 、複合体の形成は、3回行い、平均値及び標 準偏差を求めた。これらの結果を下記表に示 す。

 前記表4~9に示すように、マロニルシソニ (MS)の前後比(A/B)は、シソニン(S)の前後比(1) りも大きい値を示した。例えば、表4(S:MS=1:0 .25)では、粗色素において、MSがSの0.25倍量で るのに対して、複合体においては、MSがSの2 .08倍量にまで増加している。同様に、表5(S:MS =1:0.4)では、粗色素において、MSがSの0.4倍量 あるのに対して、複合体においては、2.25倍 増加し、表6(S:MS=1:0.49)では、粗色素におい 、MSがSの0.49倍量であるのに対して、複合体 おいては、2.20倍に増加した。このことから 、マロニルシソニンは、シソニンよりも、選 択的に複合体形成において取り込まれている ことがわかる。このような結果から、複合体 形成時、周囲に存在するアントシアニンが非 選択的に複合体に取り込まれるのではなく、 選択性をもって、アントシアニンが取り込ま れているといえる。さらに詳しく説明すると 、アントシアニンの構造により、複合体に取 り込まれる速度が異なり、MSとSとでは、MSの が、選択的に取り込まれていることがわか た。

 前記実施例2において、アントシアニンの 選択性が確認されたが、前記実施例2におい は、各種アントシアニンを含む粗色素とツ クサ由来フラボコンメリンとを等量(重量比1 :1)で使用している。アントシアニンまたはフ ラボコンメリンが過剰に存在した場合、アン トシアニンとフラボコンメリンとの衝突確率 が異なるため、選択性に影響がある可能性が 考えられる。そこで、アントシアニンまたは フラボコンメリンが過剰量存在する条件にお ける、アントシアニンの選択性を確認した。

 粗色素とフラボコンメリンの使用量を以 のように変更した以外は、前記実施例2と同 様にして、複合体の形成、ならびに、HPLC分 による構成成分の分析を行った。アントシ ニンとフラボコンメリンが重量比1:1の等量 件として、粗色素3mg、フラボコンメリン3mg 使用した。フラボコンメリン過剰の条件と て、粗色素2mg、フラボコンメリン8mgを使用 た。アントシアニン過剰の条件として、粗 素8mg、フラボコンメリン2.7mgを使用した。な お、粗色素ならびにフラボコンメリンは、前 記実施例1と同じものを使用した。これらの 果を下記表に示す。

 フラボコンメリン過剰の条件(表11)では、 マロニルシソニン(MS)とシアニン(C)の前後比 、それぞれ1.07と1.12であった、この結果は、 等量条件(表10)におけるマロニルシソニン(MS) シアニン(C)の前後比1.37および1.3と比較して 低い値であり、すなわち、複合体の形成前後 で、構成成分の変化が少ないことを示した。 フラボコンメリン過剰の条件では、等量条件 と比較すると、フラボコンメリンがアントシ アニンより過剰に存在するため、両者の衝突 確率が上がり、マロニルシソニン(MS)とシソ ン(C)の選択性の差が小さくなったと考えら る。一方、アントシアニン過剰の条件(表12) は、マロニルシソニン(MS)とシアニン(C)の前 後比は、それぞれ1.29と1.25であった。この結 は、等量条件(表10)におけるマロニルシソニ ン(MS)とシアニン(C)の前後比1.37および1.3と同 の値であり、大きな差は見られなかった。 の条件は、アントシアニンがフラボコンメ ンの3倍存在する条件であるが、等量条件と 同程度の結果であることから、アントシアニ ンの量は、アントシアニンの選択性には影響 を与えないことがわかった。

 粗色素に含まれる4種のアントシアニンを 分離し、任意の2成分間における複合体への り込みの選択性を確認した。

 (1)アントシアニンの単離
 中圧液体クロマトグラフィーによって、実 例1で調製した粗色素から、マロニルシソニ ン(MS)、シソニン(S)、シアニン(C)、(メチルマ ニル)シソニン(MMS)をそれぞれ単離した。ま 、アントシアニンの分離を良くするために 予め、前記カラム内に、以下に示す100%原液 (移動相溶液)100mL、20%原液(100%原液を0.5%TFA水 液で希釈、以下同様)100mLを、この順序で流 2mL/minの条件下30分間以上流した。実施例1で 製した粗色素1gを20%原液に溶解し、前記ガ スカラムの先端に粗色素を吸着させた。そ て、そのまま20%原液を流し続け、前記ガラ カラムの2/3の所まで色素が移動した時点で 30%原液(100%原液を0.5%TFA水溶液で希釈)に変え 。以後、30%原液を流しながら溶出液を分取 、目視確認により、色素濃度の高いフラク ョン(200mL/フラクション)を回収した。引き き、溶媒を、60%原液、80%原液、100%原液の順 流し、同様にして溶出液の分取、ならびに 色素濃度の高いフラクションの回収を行っ 。その結果、40%原液で5フラクション、60%原 液で3フラクション、80%原液で1フラクション 計9フラクションを回収した。この操作を繰 り返し、合計7gの粗色素の分取を行った。
・MPLC条件
   送液ポンプ:日本分光社製、商品名PU-980
   カラム:商品名ODS Develosil 10~20μm ガラス カラム300×25mm i.d.
   移動相溶液:酢酸:アセトニトリル:水:ト フルオロ酢酸=20:2.5:54.5:0.5を100%原液とする。

 MPLC分取の結果、シアニン(Cy3,5-diglc)72mg、 ソニン(Cy3-pc・glc-5-glc)76mg、マロニルシソニ (Cy3-pc・glc-5-Ma・glc)90mg、(メチルマロニル)シ ソニン(Cy3-pc・glc-5-Methoxy Ma・glc)44mgを得た。 お、マロニルシソニンの純度は20%、シソニ の純度は65%であった。

・UVスペクトル測定条件
   装置:日本分光社製、商品名V-520-SR型分光 光度計
   溶媒:0.1%HCl含有MeOH
   セル長:1mm
・マロニルシソニン吸収スペクトルデータ
   UV-visλnm(ε):529(5640)、313.4(3200)、292.5(3580)
・シソニン吸収スペクトルデータ
   UV-visλnm(ε):527(13360)、313.4(9560)、292.5(10760)

 (2)アントシアニンの2成分の組合せ
 下記の組合せで、2成分の物質量が当量とな るように混合し、アントシアニン混合物1お び2を調製した。
 アントシアニン混合物1: MS/MMS
 アントシアニン混合物2: S/MMS

 (3)複合体の構成成分の分析
 粗色素に代えて、2種類のアントシアニン混 合物(1~2)を使用した以外は、前記実施例2と同 様にして、複合体の形成、ならびに、HPLC分 による構成成分の分析を行った。これらの 果を下記表に示す。

 前記表13に示すように、アントシアニン 合物1(MS/MMS)を使用した系では、前後比が、MS 1.4倍、MMS0.76倍の結果であることから、MSの方 がMMSよりも選択性が高いといえる(MS>>MMS) 。前記表14に示すように、アントシアニン混 物2(S/MMS)を使用した系では、前後比が、S1.10 倍、MMS0.92倍の結果であることから、Sの方が ずかにMMSよりも選択性が高いといえる(S>M MS)。

 以上の結果から、複合体形成におけるア トシアニンの選択性については、SとMMS間で は顕著な差はなく、特にMSの選択性が高いこ が示唆された(MS>>S≒MMS)。なお、マロニ ルシソニン(MS)とシソニン(S)では、その構造 ら、マロニルシソニンの方が構造安定性に れると考えられる。したがって、本実施例 結果によれば、複合体形成において、複合 の安定性とアントシアニンの選択性とに相 関係があると推測される。

 自然界におけるツユクサ由来コンメリニ は、アントシアニン(マロニルアオバリン) フラボン(フラボコンメリン)およびマグネシ ウム(マグネシウムイオン)が6:6:2の比率で構 される金属錯体である。そこで、複合体の 成において、アントシアニンに対するマグ シウムの量を変化させ、これがアントシア ンの選択性に与える影響を確認した。

 前記実施例4で単離したマロニルシソニン(MS )とシソニン(S)とを用いて、下記に示すよう アントシアニン混合物を調製した。なお、MS とSとは、100%の精製物ではないため、両者の 率を物質量比で表す。
・アントシアニン混合物
   組成 MS:S=0.4:1(物質量比)
      MS=1mg
      S=1mg

 そして、粗色素に代えて、前記アントシ ニン混合物を使用し、アントシアニン混合 とフラボコンメリンの添加量(3mg:3mg)を下記 に変更し、さらに、酢酸マグネシウム水溶 の添加量を下記所定量に変更した以外は、 記実施例1と同様にして、複合体の形成を行 った。

・アントシアニン混合物の物質量
   1.1μmol(S=1mg、MS=1mg)
・フラボコンメリンの物質量
   1.1μmol(1.5mg)
・0.5酢酸マグネシウム水溶液の添加量
 0.72μL(0.36μmol)、
    5μL(2.5μmol)
   25μL(12.5μmol)
  100μL(50μmol)
  125μL(62.5μmol)

 そして、アントシアニン混合物と、形成 た複合体について、それぞれ前記実施例1と 同様にして吸光度測定を行い、収率(100×C/P) 求めた。さらに、実施例2と同様にして、複 体のHPLC分析を行った。この結果を下記表に 示す。

*1 アントシアニン混合物の物質量を1とした 合のMg 2+ の物質量比
*2 アントシアニン混合物におけるシソニン ピーク面積(%)を1として、アントシアニン混 物におけるMS、ならびに、各複合体のMSのピ ーク面積の比率を、ピーク面積比として求め た。
*3 MSについて、複合体形成前のアントシアニ ン混合物におけるMSピーク面積比(B)と、複合 形成後の複合体(MS)のピーク面積(A)との比を 、前後比(A/B)として求めた。

 また、混合アントシアニンに対するMg 2+ のモル比(物質量比)と、マロニルシソニンの 後比とをプロットしたグラフを図3に示す。

 前記表および図3に示すように、マグネシ ウムがアントシアニン(アントシアニン混合 )の1/3当量(対アントシアニン物質量比0.33)の 件では、MSが複合体形成前後で3.18倍(前後比 A/B)に増加した。そして、アントシアニンに するマグネシウムの量が増加するにしたが て、複合体形成前後におけるMSの比率(A/B)は 少していき、具体的には、マグネシウムが ンパク質の56.82当量(対アントシアニン物質 比56.82)の条件で、MSが複合体形成前後で1.43 にまで減少した。この結果から、アントシ ニンに対するマグネシウムの物質量が少な 程、MSが取り込まれた複合体の増加率が高 なり、アントシアニンに対するマグネシウ の物質量が多い程、前記増加率は低くなる とがわかった。したがって、複合体形成に いてマグネシウム量を調整すれば、例えば シソニンとマロニルシソニンの組成をコン ロールすることが可能となるため、アント アニンの精製において、複合体に含まれる ソアントシアニンを選択的に抽出できると うさらなる効果が得られる。特に、マロニ 基は酸に不安定であることから、マロニル ソニンよりもシソニンを選択的に単離する に有用である。

 複合体の形成において、アントシアニン 対するフラボコンメリンの量を変化させ、 れがアントシアニンの選択性に与える影響 確認した。なお、マグネシウムイオンは過 量とした。

 以下に示す条件に変更した以外は、前記実 例1と同様には、以下と同様にして、複合体 の形成を行った。

 そして、アントシアニン混合物と、形成 た複合体について、それぞれ前記実施例1と 同様にして吸光度測定を行い、収率(100×C/P) 求めた。さらに、実施例2と同様にして、複 体のHPLC分析を行った。この結果を下記表17 よび18に示す。表17は、前記条件1の複合体 結果であり、表18は、前記条件2の複合体の 果である。

*1 アントシアニン混合物の物質量を1とした 合のフラボコンメリンの物質量比
*2 アントシアニン混合物におけるシソニン ピーク面積(%)を1として、アントシアニン混 物におけるMS、ならびに、各複合体のMSのピ ーク面積の比率を、ピーク面積比として求め た。
*3 MSについて、複合体形成前のアントシアニ ン混合物におけるMSピーク面積比(B)と、複合 形成後の複合体(MS)のピーク面積(A)との比を 、前後比(A/B)として求めた。
*4 フラボコンメリン
 

*1 アントシアニン混合物の物質量を1とした 合のフラボコンメリンの物質量比
*2 アントシアニン混合物におけるシソニン ピーク面積(%)を1として、アントシアニン混 物におけるMS、ならびに、各複合体のMSのピ ーク面積の比率を、ピーク面積比として求め た。
*3 MSについて、複合体形成前のアントシアニ ン混合物におけるMSピーク面積比(B)と、複合 形成後の複合体(MS)のピーク面積(A)との比を 、前後比(A/B)として求めた。
*4 フラボコンメリン

 前記表17に示すように、アントシアニン 合物(MS:S=0.40:1)を使用して、フラボコンメリ 量を変化させた場合、フラボコンメリン量 かかわらず、MSの複合体形成前後の増加率(A /B)は、1.5前後であった。また、前記表18に示 ように、アントシアニン混合物(MS:S=5.44:1)を 使用して、フラボコンメリン量を変化させた 場合、フラボコンメリン量にかかわらず、MS 複合体形成前後の増加率(A/B)は約1倍と、組 の変化はほとんど見られなかった。これら 結果から、マグネシウム過剰の条件下にお ては、フラボコンメリンの量は、アントシ ニンの選択性に特に影響を与えていないこ がわかった。

 なお、本実施例では、アントシアニン混 物に対してマグネシウムを45当量使用する グネシウム過剰条件であり、フラボコンメ ンもアントシアニンに対して1当量から10当 の過剰量を使用した。このため、理論上、 てのアントシアニンが複合体形成に使用可 な条件といえる。しかしながら、条件1(MS:S=0 .40:1)では、全てのアントシアニンが取り込ま れることはなく、前述のように、複合体形成 後、MSの組成比は1.5倍前後増加している。一 、条件2(MS:S=5.44:1)では、アントシアニン混 物と複合体とでMSの組成比はほとんど変化し ていない。また、条件1(MS:S=0.40:1)では、複合 の最大収率が57.01%であるのに対して、条件2 (MS:S=5.44:1)では、複合体の最大収率が43.28%で り、前記条件1と比較して約14%低下している 以上の点から、複合体形成においては、条 1のようにMSの組成比が低い粗色素原料(アン トシアニン混合物)であっても、選択性の高 MSがSよりも先に取り込まれるため、複合体 成後のMSの比は増加し、反対に、複合体の収 率は低下すると考えられる。

 実施例1~6ではフラボコンメリンを用いた 、以下では、他のフラボンを用いて複合体 形成を確認した。

 まず、シソ粗色素のTFA塩を準備した。シ 粗色素のTFA塩は、実施例1(1)の方法で抽出し た赤シソ葉の色素抽出液を乾固したものであ り、カラムクロマトグラフィーによる精製は 行っていない。一方、フラボンとして、apigen in 7-glucoside(フナコシ社製)を使用した。

 次に、前記シソ粗色素TFA塩約9mgを超純水1 50μLに溶解させ、この溶液に0.5Mアンモニア水 溶液を1mL加え、直ちに減圧下濃縮乾固させた 。ここへ、測り取った前記apigenin 7-glucoside 1 0μmolを、固体のまま加えた。さらに、0.5M酢 マグネシウムを含む50%エタノール水溶液600μ L(300μmol)を加えた。これを適宜超音波で溶解 せ、濃縮乾固し、分析時まで冷凍保存した 次に、冷凍保存しておいたサンプルを最小 の超純水に溶解させ、sephadexG-10(商品名)ゲ 濾過カラムクロマトグラフィー(0.8~1.0cm×10.5~ 11.5cm)に吸着させ、超純水を流した。そして sephadexG-10で最も早く溶出し、最も色素濃度 高い2つのフラクションを分取した。その結 、Shephadexにて溶出時間が早いフラクション 、色素とapigenin 7-glucosideとが溶出するフラ ションがあった。これは、エタノールを加 ることにより、色素とこのフラボンとが共 殿したことを示す。すなわち、apigenin 7-gluc osideによりシソ由来アントシアニンを精製で ることが確認された。

 さらに、apigenin 7-glucosideに代えて、フラ コンメリン、柑橘由来のフラボンであるhesp eridin、diosmin、柑橘由来のフラボンであるnarin genin 7-glucoside、そば由来のフラボンであるrut in、apigenin、apigenin 7-o-neohesperidoside、silymarin オリーブ由来のフラボンであるluteolin 7-gluco side(全てフナコシ社製)をそれぞれ用いる以外 は、実施例7と同様の操作を行った。この結 、各フラボンとシソ由来アントシアニンと 共沈殿が確認された。

 本発明の精製アントシアニン製造方法に れば、簡便且つ容易に前記粗色素画分から ントシアニンを精製でき、さらに、低コス で高純度の精製アントシアニンを提供する とが可能となる。したがって、本発明は、 えば、食品分野等を含む、天然色素を利用 るあらゆる分野において、極めて有用な技 であるといえる。