Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
MICROSCOPE SYSTEM
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/093530
Kind Code:
A1
Abstract:
A microscope system comprises a transmission illumination optical system having a light source (11) and a condenser lens (13), a first dry objective lens (15a) having a magnification of 20 or above but not above 40 required for any one of differential interference observation method and modulation contrast observation method; and a second dry objective lens (15b) having a magnification of 60 or above but not above 100 required for differential interference observation method. The first objective lens (15a) and the second objective lens (15b) are exchangeable.

Inventors:
MATSUI KUMIKO (JP)
WATANABE KATSUYA (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/050555
Publication Date:
July 30, 2009
Filing Date:
January 16, 2009
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
NIKON CORP (JP)
MATSUI KUMIKO (JP)
WATANABE KATSUYA (JP)
International Classes:
G02B21/00; A61B19/00; G02B19/00; G02B21/02; G02B21/06
Foreign References:
JP2003131139A2003-05-08
JP2000155266A2000-06-06
JPH08136816A1996-05-31
JP2000241710A2000-09-08
JP2003075724A2003-03-12
JP2001356278A2001-12-26
JPH0915504A1997-01-17
JP2006184929A2006-07-13
JPH09236753A1997-09-09
JPS51128548A1976-11-09
JP3456252B22003-10-14
JP3415294B22003-06-09
Other References:
See also references of EP 2241920A4
Attorney, Agent or Firm:
OHNISHI, Shogo (HIGASHI-IKEBUKURO SS BUILDING 1F 3-20-3, Higashi-Ikebukuro, Toshima-k, Tokyo 13, JP)
Download PDF:
Claims:
 光源と、コンデンサレンズとを有する透過照明光学系と、
 微分干渉観察法および変調コントラスト観察法の少なくともいずれか一方による観察が可能である20倍以上40倍以下の第1の乾燥系対物レンズと、
 微分干渉観察法による観察が可能である60倍以上100倍以下の第2の乾燥系対物レンズとを備え、
 前記第1の対物レンズと前記第2の対物レンズとは切り替え使用可能であることを特徴とする顕微授精用の顕微鏡システム。
 前記第2の対物レンズの開口数をNAとし、焦点距離をfとし、作動距離をWDとしたとき、次式
 0.78≦NA<1.0
 f/3 ≦WD<2f
の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の顕微授精用の顕微鏡システム。
 前記第2の対物レンズを用いて微分干渉観察法による観察を行う場合に、物体面におけるシア量をSとし、前記第2の対物レンズの開口数をNAとし、観察する光の波長をλとしたとき、次式
 0.3≦S≦0.61λ/NA
の条件を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の顕微授精用の顕微鏡システム。
 前記第2の対物レンズは、カバーガラスの厚さや温度等の変化による収差変動を補正する補正環を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の顕微授精用の顕微鏡システム。
Description:
顕微鏡システム

 本発明は、微分干渉観察法および変調コ トラスト観察法による観察を可能にした顕 授精用の顕微鏡システムに関する。

 現在、顕微授精法の一つとして、ICSI(Intra -cytoplasmic Sperm Injection:卵細胞質内精子注入 )が普及している。これは、変調コントラス 観察法(例えば、特許文献1を参照)を用いて 子の選別を行い、良好な運動性と形態とを ちあわせた精子を卵子に注入する顕微授精 である。しかしながら、近年、IVF(In Vitro F ertilization:体外受精)研究の進歩により、精子 部内の空胞の有無、大きさや数等がIVF成功 に大きく関係していることが統計的に分か てきたが、この精子頭部内の空胞は従来のI CSIを行うための変調コントラスト観察法では 観察が困難である。そこで、従来のICSIに加 て、精子頭部内を詳細に観察して選別した で顕微授精を行うIMSI(Intra-cytoplasmic Morphologic ally Selected Sperm Injection:高倍率下で精子を選 んで顕微授精を行う方法)を行える顕微鏡シ テムが提案されており、例えば、ICSIに用い 変調コントラスト観察法と、IMSIに用いる高 倍対物レンズによる微分干渉観察法(例えば 特許文献2および3を参照)を併用して構成さ ている。

特開昭51-128548号公報

特許第3456252号公報

特許第3415294号公報

 ところで、上記のような顕微授精など、 物顕微鏡分野における微分干渉観察法では できるだけ微細な構造が観察できることが められてきたため、一般に高倍レンズでは 口数(NA)の高い、液浸系の対物レンズが用い られてきた。その結果、従来の顕微鏡システ ムでは、高倍対物レンズには液浸系が、中低 倍対物レンズには乾燥系が用いられることと なり、液浸系の高倍対物レンズでIMSI観察を った後、ICSI観察を行う乾燥系の中低倍対物 ンズに切り換える際に、浸液が妨げとなっ しまい、IVFの作業性を著しく損なうという 題があった。そこで、この問題を解決する め、ICSI観察を行う中低倍対物レンズにも、 高倍対物レンズと同様に、液浸系対物レンズ を用いるシステムが提案されている。しかし ながら、このシステムでは、液浸系対物レン ズ同士を切り替えて使用する際に浸液の粘度 に起因してサンプル(一般にはディッシュ)が 動してしまい、高倍対物レンズで選別した 子を見失ったり、浸液中に気泡等が混入し りしやすいため、対物レンズの切り替え後 ICSI観察に著しく困難をきたすおそれがあっ た。

 本発明は、このような問題に鑑みてなさ たものであり、乾燥系の高倍対物レンズに る微分干渉観察法で精子の観察および選別 行った後、切り替えた同じく乾燥系の低倍 物レンズによる微分干渉観察法もしくは変 コントラスト観察法で卵子内への前記選別 た精子の注入を行うことにより、分解能を 保しつつ顕微授精の一連の作業を的確かつ 速に行うことができる、IMSI/ICSIに好適な顕 鏡システムを提供することを目的とする。

 このような目的を達成するため、本発明 、顕微授精用に好適な顕微鏡システムであ 、光源と、コンデンサレンズとを有する透 照明光学系と、微分干渉観察法および変調 ントラスト観察法の少なくともいずれか一 による観察が可能である20倍以上40倍以下の 第1の乾燥系対物レンズと、微分干渉観察法 よる観察が可能である60倍以上100倍以下の第 2の乾燥系対物レンズとを備え、前記第1の対 レンズと前記第2の対物レンズとは切り替え 使用可能であることを特徴とする。

 以上説明したように、本発明によれば、 切な分解能を確保しつつ、顕微受精におけ 一連の作業を迅速かつ的確に、作業性良く うことができる、顕微授精用に好適な顕微 システムを提供することができる。

本実施形態に係る微分干渉観察法を用 た顕微鏡システムの概略断面図である。 本実施形態の顕微鏡システムに用いる の観察法である、変調コントラスト観察法 原理を説明するための図である。 本実施形態に係る変調コントラスト観 法において、開口像と変調器との位置関係 説明するための図であり、(a),(b),(c)は図2の( a),(b),(c)にそれぞれ対応している。 本実施形態に係る変調コントラスト観 法において、(a)は試料の一形状例を、(b)は の試料に対応して現れる濃淡をそれぞれ示 たものである。 本実施形態に係るインコヒーレント光 系のMTFカーブを示す図である。 本実施形態に係る微分干渉観察法にお る位相試料のコントラストMTFカーブを示す である。 第1実施例に係る第2の対物レンズ(乾燥 高倍対物レンズ)の構成を示す断面図である 。 第1実施例に係る第2の対物レンズの諸 差図であり、(a)は球面収差図、(b)は非点収 図、(c)は歪曲収差図である。

符号の説明

 11  光源(透過照明光学系)
 12  コレクタレンズ
 13  コンデンサレンズ(透過照明光学系)
 14  試料
 15  対物レンズ
 15a (微分干渉観察法による観察が可能な)中 倍対物レンズ(第1の対物レンズ)
 15b 高倍対物レンズ(第2の対物レンズ)
 16 ターレット
 BP1 照明側複屈折光学部材 
 BP2 結像側複屈折光学部材
  P  偏光子
  A  検光子
 22  (変調コントラスト観察法による観察が 可能な)中倍対物レンズ(第1の対物レンズ)
 23  開口板
 23a 矩形状開口
 24 変調器

 以下、好ましい実施形態について、図面 参照しながら説明する。図1は、本実施形態 に係る、主として顕微授精用に好適な顕微鏡 システムの概略断面図を示す。本実施形態に 係る顕微鏡システムは、IMSI(Intra-cytoplasmic Mor phologically Selected Sperm Injection:高倍率下で精 を選んで顕微授精を行う方法)およびICSI(Intr a-cytoplasmic Sperm Injection:卵細胞質内精子注入 )に好適であり、図1に示すように、光源11お よびコンデンサレンズ13とからなる透過照明 学系と、コレクタレンズ12と、試料14と、対 物レンズ15と、ターレット16と、照明側複屈 光学部材BP1と、結像側複屈折光学部材BP2と 偏光子Pと、検光子Aとを有する。

 図1において、光源11からの照明光はコレ タレンズ12によって集光された後、偏光子P 入射して直線偏光に変換される。偏光子Pと 試料14との間の光路中には光源11側から順に 照明側複屈折光学部材BP1と、試料14に照明光 を照射するコンデンサレンズ13とが配置され おり、偏光子Pを射出された直線偏光は照明 側複屈折光学部材BP1に入射して複屈折作用に より振動方向が互いに直交する2つの直線偏 成分に分離され、コンデンサレンズ13に入射 する。照明側複屈折光学部材BP1で分離された 2光線はわずかな分離角αを持って進行し、コ ンデンサレンズ13の集光作用によって互いに ずかなシア量Sだけ離れた平行光線となって 試料14を照明する。試料14上のわずかに離れ 位置を透過した2光線は、対物レンズ15を介 て結像側複屈折光学部材BP2に入射し、結像 複屈折光学部材BP2の複屈折作用により合成 れて同一光路上を進行する。合成された光 は検光子Aに入射し、検光子Aによって互いに 直交する直線偏光中の同一方向振動成分だけ が取り出されて干渉する。その結果、試料14 のわずかに異なる位置を透過する際に2光線 間に付与された位相差に応じた干渉縞が、像 面上で拡大像(干渉像)17を形成する。観察者 図示しない接眼光学系を介して、この拡大 17を観察することができる。

 試料14が平面で均質の場合には、(分離し 2光線の間には位相の差がないため、)拡大 17は強度分布が一様なコントラストのない像 になる。一方、試料14が不均質で、かつ勾配 段差がある場合、(分離した2光線の間に位 差が生じるため、)拡大像17には屈折率変化 ある部分や勾配、段差に相当する部分にコ トラストが生じる。よって、屈折率の変化 勾配、段差が可視化され、試料14を拡大観察 することが可能となる。

 なお、対物レンズ15は、20倍以上40倍以下 第1の対物レンズ(以下、乾燥系中倍対物レ ズや中倍対物レンズと称することもある)15a 、微分干渉観察法によるコントラスト観察 可能である60倍以上100倍以下の第2の対物レ ズ(以下、乾燥系高倍対物レンズや高倍対物 レンズと称することもある)15bとからなり、 れら中倍対物レンズ15aと高倍対物レンズ15b はターレット16等により切り替え使用可能に 構成されている。

 また、第1の対物レンズ15aは、上記の微分 干渉観察法、もしくは変調コントラスト観察 法の少なくともいずれか一方による観察が可 能であることが好ましい。ここで、変調コン トラスト観察法について、図2~図4を用いてそ の原理を簡単に説明する。図中、21はコンデ サレンズ、Sは試料、22は対物レンズ、23は 口板、24は円盤状の変調器である。なお、開 口板23は、コンデンサレンズ21の光源側焦点 置で、中心部から離れた位置に矩形状開口23 aを有している。また、変調器24は、開口板23 略共役な位置に配置され、開口23aの像を含 得る透過率100%の領域24aと、例えば透過率15% の領域24bと、透過率0%の領域24cとが順に隣接 て配置形成されている。

 この光学系では、矩形状開口23aが光軸か 偏心した位置に配置されているので、コン ンサレンズ21に入射した光は試料Sを斜め方 から照明するように射出する。このとき、 明な試料Sが図2(a)に示すように扁平である 、試料Sを透過した光束は対物レンズ22によ 変調器24の領域24b内に結像し、図3(a)に示す うに領域24b内に開口像23a´が形成される。ま た、試料Sの表面が図2(b)に示すように右肩上 りの斜面となっていると、試料Sを透過する とき光束は右方へ屈折して変調器24の領域24c に結像し、図3(b)に示すように領域14c内に開 口像23a´が形成される。また、試料Sの表面が 図2(c)に示すように左肩上がりの斜面となっ いると、試料Sを透過するとき光束は左方へ 折して変調器24の領域24a内に結像し、図3(c) 示すように領域24a内に開口像23a´が形成さ る。

 この説明で明らかなように、試料Sが図4(a )に示すような平坦面と斜面とを有する無色 明体である場合、その観察像は図4(b)に示す うに平坦面部分は灰色に、斜面部分は黒ま は白く見える。このように、変調コントラ ト観察法では、変調器24に設けた異なる透 率領域と偏斜照明の効果とにより、無色透 な試料でも陰影を持つ立体感のある像とし 観察することが可能となる。

 なお、本顕微鏡システムにおいて、変調 ントラスト観察法によるコントラスト観察 可能な中倍対物レンズ15aを採用する場合は 上記した微分干渉観察法による観察のため 用いた部材である、照明側複屈折光学部材B P1、結像側複屈折光学部材BP2、偏光子Pおよび 検光子Aに換えて、光源11とコンデンサレンズ 13との間に(光源11側から順に)開口板23と変調 24を配置すればよい。

 本実施形態に係る顕微鏡システムにおい 、乾燥系の第2の対物レンズ(高倍対物レン )の開口数をNAとし、焦点距離をfとし、作動 離をWDとしたとき、次式(1)および(2)の条件 を満足することが好ましい。

 0.78≦NA<1.0 …(1)
 f/3 ≦WD<2f  …(2)

 また、前記第2の対物レンズを用いて微分 干渉観察法による観察を行う場合に、物体面 におけるシア量をSとし、前記第2の対物レン の開口数をNAとし、観察する光の波長をλと したとき、次式(3)の条件式を満足することが 好ましい。

 0.3≦S≦0.61λ/NA …(3)

 従来、生物顕微鏡の分野における、高倍( 60倍以上100倍以下)で高開口数の液浸対物レン ズによる微分干渉観察法による観察では、重 要視されるのは分解性能の良さについてであ り、ビデオエハンス等の画像処理手法を介在 することが前提となっていた。ところが、IMS I等の顕微授精を行う際には、精子を高倍観 して広範囲の(多くの)精子からより良好なも のを選別した後に、この選別した精子を中倍 観察下で卵子に注入するという一連の作業を 迅速かつ的確に行うため、あくまで目視観察 が基本である。このため、目視において十分 なコントラストが得られることが望まれてい たが、これを満足するような微分干渉観察法 による観察可能な対物レンズの最適条件の提 示は今までなかった。そこで、本顕微鏡シス テムでは、微分干渉観察法による観察が可能 な第2の対物レンズ(高倍対物レンズ)の最適な 条件式(1)~(3)を導き出した。以下、これら条 式(1)~(3)について順に説明する。

 まず、高倍対物レンズの適切な開口数NA 範囲を規定する、条件式(1)について説明す 。本顕微鏡システムにおいて、観察対象で る精子の頭部の大きさは4~5μm程度であり、 つのピント面に頭部の空胞は1個乃至10個程 の大小様々な大きさのものが散らばってい ことが確認されている。従って、0.4~0.5μm程 の大きさがコントラスト良く可視化・識別 きれば、IMSI用途として十分使えるレベルで あることが分かる。

 図5に、顕微鏡光学系で一般に用いられる インコヒーレント光学系のMTFカーブ(すなわ 、縦軸に示すコントラストと横軸に示す光 系の分解能との関係)を示す。なお、図5の横 軸f/f0は、空間周波数をfとし、対物レンズの 口数をNAとし、観察する光の波長をλとした とき、空間周波数fをf0=NA/λで規格化したもの である。顕微鏡光学系の横分解能をRESとする と、前記空間周波数fに対応する横分解能RES の関係は次式(4)で示される。

 RES=1/f={1/(f/f0)}×{λ/NA} …(4)

 ここで、図5に示す横軸f/f0の最大値=2.0が 顕微鏡光学系における限界分解能RES(max)と 応している。そこで、上記の式(4)にf/f0=2.0を 代入することにより、顕微鏡光学系における 限界分解能RES(max)を示す、次式(5)が得られる この条件式(5)で規定される限界分解能RES(max )に相当する開口数NAよりもさらに余裕を持た ないと、目視で像を視認することが難しい。

 RES(max)={1/2.0}×{λ/NA}=0.5λ/NA …(5)

 また、一般に、人間の眼は、コントラス の値が0.1以下であれば見分けることが困難 あることと、コントラストの値が0.2以上で れば視感度が良いことが知られている。図5 において、コントラストの値が0.1となる空間 周波数f/f0は1.6付近であることから、横分解 RESが0.4μm(観察対象である精子頭部の空胞の きさ)となるためには、式(4)にこれらの値を 代入して、次式(6)を満足する必要がある。

 RES={1/1.6}×{λ/NA}=0.4 …(6)

 なお、本顕微鏡システムの使用目的であ IMSIやICSIでは目視観察が前提となるため、 の視感度を考えると、観察時の中心波長λは 500nm~550nm近傍であることが望ましい。これは 500nmは暗所、550nmは明所における眼の視感度 のピークだからである。よって、観察の中心 波長λ=500nm=0.5μmとして式(6)に代入すると、高 倍対物レンズに必要な開口数NAの最下限値と て、次式(7)が得られる。

 NA={1/1.6}×0.5[μm]/0.4[μm]=0.78 …(7)

 また、視感度が良いとされるコントラス の値が0.2となる空間周波数f/f0は図5より1.4 近であることから、上記と同様に式(6)に代 すると、より好ましい開口数NAの最下限値と して、次式(8)が得られる。

 NA={1/1.4}×0.5[μm]/0.4[μm]=0.89 …(8)

 また、開口数NAは、対物レンズと試料間 媒質の屈折率nと対物レンズの開口角φを用 るとNA=n・sin(φ/2)で表され、本実施形態にお ては媒質が空気(屈折率n=1)である。ゆえに 開口数NAの上限値は1となる。

 以上まとめると、本実施形態の顕微鏡シ テムにおいて、コントラスト良く目視観察 能に構成するための好ましい高倍対物レン の開口数NAの範囲は、条件式(1)すなわち0.78 NA<1.0となる。さらに、より好ましくは、 件式(8)より、高倍対物レンズの開口数NAの 囲は、0.89≦NA<1.0となる。

 次に、高倍対物レンズにおける作動距離W Dの適切な範囲を規定する、上記条件式(2)に いて説明する。従来の顕微鏡システムにお て、高倍対物レンズとして用いられていた 開口数の液浸系対物レンズは、一般に作動 離が大きく取ることが難しかった。このた 、操作時のサンプルを保温装置等により37℃ に保温することが絶対条件であるICSI観察やIM SI観察で用いようとすると、高倍から中倍へ 対物レンズ切り替え時に対物レンズの先端 と保温装置が干渉しやすいという問題があ た。また、作動距離が大きく取れないこと ら、高開口数の液浸系対物レンズではカバ ガラス直下近傍しか観察することができず カバーガラスから離れた位置にある精子を 別対象にすることができないという問題が った。そこで、本顕微鏡システムは、高倍 対物レンズを乾燥系レンズで構成すること 、条件式(1)で示される開口数NAの条件に加 て、条件式(2)で示される作動距離WDが大きい という条件も兼ね備える。

 作動距離を決定する一つの要素として、 物レンズの倍率がある。対物レンズの倍率 、無限遠補正光学系の場合、結像レンズと 物レンズの焦点距離との比によって決定さ るものであり(本実施形態のように60倍以上1 00倍以下の高倍対物レンズでは、例えば、結 レンズの焦点距離を200mmとすると、対物レ ズの焦点距離は2.00~3.33mとなる)、高倍になる ほど焦点距離は短くなる。一般に、作動距離 は対物レンズの焦点距離に比例するため、対 物レンズの倍率が高倍になるほど作動距離は 減少する。また、作動距離を決定する他の要 素として、開口数がある。開口数の大きさが 同じであれば、作動距離が長くなるほど、対 物レンズの第1レンズ面(物体側レンズ面)にお ける光線高さが高くなり、収差補正をより困 難にする。

 つまり、対物レンズの長作動距離化と高 率化・高開口数化とは相反する関係にある め、従来の顕微鏡システムにおける高倍対 レンズでは、作動距離を重視したものと、 率・開口数を重視したものとに二極化して た。具体的には、前者では倍率60倍/開口数0 .7/作動距離2mm前後が、後者では倍率100倍/開 数1.4/作動距離0.1mm前後が、代表的なスペッ である。しかしながら、IMSIの観察を用途と るならば、上記条件式(1)に示すように必ず も開口数NAが1を超える必要はなく、その分 動距離を長くするほうが作業効率の向上に ながる。

 そこで、高倍対物レンズ(第2の対物レン )の開口数をNAとし、焦点距離をfとし、作動 離をWDとしたとき、本実施形態では条件式(2 )すなわちf/3≦WD<2fを満足することが好まし い。この条件式(2)が下限値を下回ると、対物 レンズの切り替え時に対物レンズの先端部が 保温装置と干渉する等の不具合を引き起こす 可能性が高くなる。一方、条件式(2)が上限値 を上回ると、対物レンズの第1レンズ面にお る光線高さが高くなり過ぎて、条件式(1)で 定された開口数NAを確保するのが困難となる 。

 続いて、微分干渉観察法におけるシア量S の最適な範囲を規定する、上記条件式(3)につ いて説明する。図6に、シア量Sを1.5λ/NAから0. 15λ/NAまで変化させたときの位相コントラス MTFカーブを示す(なお、微分干渉観察法にお る位相コントラストMTFの算出方法について 、特許文献3に詳しい)。図6において、横軸f /f0は空間周波数fを対物レンズの開口数NAで規 定される基準周波数f0=NA/λで規格化したもの 、縦軸は各周波数における位相物体のコン ラストMTFを示す。

 図6から、微分干渉観察法における位相コ ントラストMTFは、インコヒーレントMTFカーブ よりも大きなコントラストの値を取らないこ とが分かる。また、図6から、(例えば1.5λ/NA ように)シア量Sが大きいと位相コントラスト MTFが負値を取ることが分かるが、これは偽解 像と呼ばれる白黒が反転した状態である。一 般に、微分干渉観察法による観察では、上記 のような偽解像が起こらない、すなわち位相 コントラストMTFが負値を取らない状態が好ま しいとされている。

 そこで、位相コントラストMTFが負値を取 ない条件を満たす、低空間周波数帯域(横軸 f/f0の値が小さい領域)の限界についてまず考 る。図6より、低空間周波数帯域の最大のシ ア量Sは、約0.61λ/NA乃至0.5λ/NAであることが分 かり、これらの値はちょうど顕微鏡光学系の 点分解能や線分解能に相当している。図6に いてシア量Sが0.61λ/NAのカーブを見ると、低 間周波数帯域のコントラストの値は高いが 高空間周波数帯域の横軸f/f0=1.4付近でのコ トラストの値が0.1程度となり、ちょうど視 度の限界に当たることが分かる。よって、 実施形態における対物レンズのシア量Sの上 値は、点分解能を維持できる0.61λ/NAとなる また、より好ましいシア量Sの上限値は、( 記0.61λ/NAのカーブよりインコヒーレントMTF ーブにより近くであり、)線分解能を維持で る0.5λ/NAとなる。

 次に、位相コントラストMTFが負値を取ら い条件を満たす、高空間周波数帯域(横軸f/f 0の値が大きい領域)の限界を考える。図6より 、高空間周波数帯域の最大のシア量Sは、横 f/f0=1.6付近で最大コントラストを取るカーブ 、すなわち0.3λ/NAのカーブであることが分か 。このとき、低空間周波数帯域のコントラ トをある程度犠牲にする代わりに、高空間 波数帯域での視認度を、インコヒーレントM TFのコントラストの値とほぼ同等の0.1に保つ とができる。また、これによりもシア量Sを 小さくすると、低空間周波数帯域でも高空間 周波数帯域でもそれぞれコントラストが低下 するため、本実施形態の使途には好ましくな い。よって、本実施形態における対物レンズ のシア量Sの下限値は0.3λ/NAとなる。

 以上まとめると、上記条件式(3)すなわち0 .3λ/NA≦S≦0.61λ/NAを満足する、より好ましく 0.3λ/NA≦S≦0.5λ/NAを満足するシア量Sを設定 ることにより、微分干渉観察法において対 レンズの分解能を殆ど損なわず、且つ目視 て精子頭部内の空胞を高いコントラストで 察することが可能となる。

 なお、本実施形態に係る第2の対物レンズ (高倍対物レンズ)は、カバーガラスの厚さや 度等の変化による収差変動を補正する補正 を有することが好ましい。これは、補正環 用いることによって、カバーガラスの厚み 差や温度等により発生した収差を打ち消し 対物レンズの解像度およびコントラストを に最良となるところで調整をすることがで るからである。

 以下、本実施形態に係る第2の対物レンズ (乾燥系高倍対物レンズ)の実施例について説 する。

(第1実施例)
 第1実施例について、図7、図8及び表1を用い て説明する。図7は、本実施例に係る第2の対 レンズ(乾燥系高倍レンズ)のレンズ構成を す断面図である。図7に示すように、本実施 に係る顕微鏡用対物レンズは、物体側より に並んだ、物体側に凹面を向けた正メニス スレンズL1と、物体側に凹面を向けた正メ スカスレンズL2と、両凹レンズL3と両凸レン L4とからなる接合レンズと、両凹レンズL5と 両凸レンズL6とからなる接合レンズと、平凹 ンズL7と両凸レンズL8とからなる接合レンズ と、両凸レンズL9と、像側に凹面を向けた負 ニスカスレンズL10と両凸レンズL11と物体側 凹面を向けた負メニスカスレンズL12とから る接合レンズと、両凸レンズL13と両凹レン L14とからなる接合レンズと、両凹レンズL15 両凸レンズL16とからなる接合レンズとを有 て構成されている。なお、正メニスカスレ ズL1の物体側には、カバーガラスCが配置さ ている。

 表1は、本実施例に係る第2の対物レンズ 構成する各レンズの諸元値を示している。 1に示す諸元の表において、mは光線の進行す る方向に沿った物体側からのレンズ面の順序 (以下、面番号と称する)を、rは各レンズの曲 率半径を、dは各光学面から次の光学面(又は 面)までの光軸上の距離を、ndはd線(波長587.6 nm)に対する屈折率を、νdはd線を基準とした ッベ数を示している。なお、表1における面 号1~25は、図7に示す面1~25に対応している。 た、表中において、βは倍率を、WDは作動距 離を、NAは開口数を表している。

 なお、表中において、曲率半径r、面間隔 d、その他の長さの単位は、一般に「mm」が使 われている。但し、光学系は、比例拡大また は比例縮小しても同等の光学性能が得られる ので、単位は「mm」に限定されることなく、 の適当な単位を用いることが可能である。 た、表中において、曲率半径の「∞」は平 を示し、空気の屈折率「1.00000」の記載は省 略している。

(表1)
[レンズ諸元]
 β=100、WD=1.4、NA=0.85
  m     r      d     nd    νd
        ∞     0.17000   1.52216   58.80  (カバーガラスC)
        ∞     2.50462
  1   -6.47161    2.37000   1.81600   46.621
  2   -4.72849    0.10000
  3   -83.0402    2.83000   1.49782   82.557
  4   -10.6607    0.15000
  5   -46.5266    1.00000   1.61340   44.266
  6   24.27074    4.95000   1.43385   95.247
  7   -14.7782    0.20000
  8   -174.834    1.00000   1.61340   44.266
  9   24.11495    4.95000   1.43385   95.247
  10  -14.5394    0.20000
  11    ∞     1.00000   1.61340   44.266
  12  28.67355    4.20000   1.43385   95.247
  13  -23.0153    0.20000
  14  48.93548    3.00000   1.49782   82.557
  15  -65.8669    1.52002
  16  21.78198    1.00000   1.72916   54.660
  17  11.99437    6.30000   1.49782   82.557
  18  -12.5334    1.20000   1.75500   52.318
  19  -59.9845    7.75003
  20  27.89895    3.35000   1.59240   68.328
  21  -7.03528    8.40000   1.65412   39.682
  22   5.87805    1.40000
  23  -4.44814    1.00000   1.80440   39.567
  24   11.0118    1.90000   1.92286   18.896
  25  -11.4804

 図8は、本実施例に係る顕微鏡用対物レン ズの諸収差図であり、(a)は球面収差図、(b)は 非点収差図、(c)は歪曲収差図を示す。また、 図8において、NAは開口数を、yは像高(mm)を、 線はd線(波長587.6nm)を、破線はC線(波長656.3nm )を、一点鎖線はF線(波長486.1nm)を、二点鎖線 g線(波長435.8nm)をそれぞれ示している。また 、非点収差図において、実線はサジタル像面 、破線はメリディオナル像面をそれぞれ示し ている。

 図8に示す各収差図から明らかであるよう に、本実施例に係る第2の対物レンズ(乾燥系 倍対物レンズ)は、諸収差が良好に補正され 、優れた結像性能が確保されていることが分 かる。

 以上説明したように、本発明によれば、 燥系の高倍(60倍以上100倍以下)対物レンズに よる微分干渉観察法により、精子頭部内の空 胞の有無など精子の観察および選別を行った 後、ターレット16等により対物レンズの切り えを行い、選別した精子を同じく乾燥系の 倍(20倍以上40倍以下)対物レンズによる微分 渉観察法もしくは変調コントラスト観察法 卵子に注入するという一連の作業を、的確 つ迅速に作業性良く行うことができる、IMSI /ICSIに好適な顕微鏡システムを提供すること できる。

 なお、本発明を分かりやすくするために 実施形態の構成要件を付して説明したが、 発明がこれに限定されるものではないこと 言うまでもない。