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Title:
NEW COMPOUND DERIVED FROM GERMINATED BROWN RICE, AND AGENT CONTAINING SAID COMPOUND AS AN ACTIVE INGREDIENT FOR PREVENTION OR AMELIORATION OF NEUROPATHY
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/110612
Kind Code:
A1
Abstract:
The purpose of the present invention is to find a new function for a component contained in germinated brown rice, and to provide an effective agent for preventing or ameliorating neuropathy or diabetic neuropathy, or a functional food product, that is highly safe, can be taken continually, can be produced in large quantities, and can be easily added to food products and the like. Provided is an agent for preventing or ameliorating neuropathy or diabetic neuropathy, or a functional food product, that contains as an active ingredient a steryl glucoside (acylated steryl-β-glucoside (ASG)) derived from germinated brown rice.

Inventors:
USUKI SEIGO (US)
YU ROBERT K (US)
MORIKAWA KEIKO (JP)
KISE MITSUO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/054333
Publication Date:
September 11, 2009
Filing Date:
March 06, 2009
Export Citation:
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Assignee:
FANCL CORP (JP)
USUKI SEIGO (US)
YU ROBERT K (US)
MORIKAWA KEIKO (JP)
KISE MITSUO (JP)
International Classes:
C07J9/00; A61K31/704; A61P3/10; A61P25/00; A61P43/00
Domestic Patent References:
WO2007069758A12007-06-21
Foreign References:
JP2008266326A2008-11-06
Other References:
USUKI, S. ET AL.: "Effect of pre-germinated brown rice intake on diabetic neuropathy in streptozotocin-induced diabetic rats", NUTR METAB (LOND), vol. 4, no. L, 2007, pages 25 - 36
FUJINO, Y. ET AL.: "Glycolipids in rice grain", AGRICULTURAL AND BIOLOGICAL CHEMISTRY, vol. 36, no. 13, 1972, pages 2583 - 2584
USUKI, S. ET AL.: "Structural analysis of novel bioactive acylated steryl glucosides in pre-germinated brown rice bran", J LIPID RES, vol. 49, no. 9, October 2008 (2008-10-01), pages 2188 - 2196
VOGLER, O. ET AL.: "Structure-effect relation of C18 long-chain fatty acids in the reduction of body weight in ratsStructure-effect relation of C18 long-chain fatty acids in the reduction of body weight in rats", INT J OBES (LOND), vol. 32, no. 3, 2008, pages 464 - 473
Attorney, Agent or Firm:
MOEGI PATENT OFFICE (JP)
Patent business corporation It burns and is ぎ特許事務所. (JP)
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Claims:
2-ヒドロキシ-オクタデカン酸を含むステロール配糖体を有効成分とする神経障害予防及び改善組成物。
請求項1記載のステロール配糖体のステロール骨格が5α-cholest-8(14)-en-3β-olであることを特徴とする神経障害予防及び改善組成物。
脂肪酸部分として2-ヒドロキシ-オクタデカン酸を含むステロール配糖体を有効成分とする神経障害の予防又は改善剤。
ステロール骨格として5α-cholest-8(14)-en-3β-olを含むステロール配糖体を有効成分とする神経障害の予防又は改善剤。
脂肪酸部分として2-ヒドロキシ-オクタデカン酸を含み、かつ、ステロール骨格として5α-cholest-8(14)-en-3β-olを含む、ステロール配糖体を有効成分とする神経障害の予防又は改善剤。
脂肪酸部分として2-ヒドロキシ-オクタデカン酸を含むステロール配糖体を有効成分とするホモシステインチオラクトナーゼ活性化組成物。
請求項6記載のステロール配糖体のステロール骨格が5α-cholest-8(14)-en-3β-olであることを特徴とするホモシステインチオラクトナーゼ活性化組成物。
以下の(i)又は(ii)のいずれかの条件を満たす、一般式(A)で表されるステロール配糖体。

 ・・・・・・・・・・・(A)
 
  (i) 一般式(A)中のXは以下の群から選択され、かつ、Yは5α-cholest-8(14)-en-3β-olである
   パルミチン酸(16:0)、
   ステアリン酸(18:0)、
   2-ヒドロキシ-オクタデカン酸(18:0(2h))、
   オレイン酸(18:1)、
   リノール酸(18:2)、又は、
   リグノセリン酸(24:0)
  (ii) 一般式(A)中のXは2-ヒドロキシ-オクタデカン酸(18:0(2h))であり、かつ、Yは以下の群から選択される
   Campesterol、
   Stigmasterol、
   5α-cholest-8(14)-en-3β-ol、又は、
   β-Sitosterol
Description:
発芽玄米由来の新規化合物及び れを有効成分とする神経障害の予防又は改 剤

 本発明は発芽玄米に含まれる新規化合物 関し、当該新規化合物の利用に関する。さ に詳しくは、当該新規化合物の糖尿病性神 障害を予防又は改善する用途に関するもの ある。

 糖尿病患者数は、2000年の統計ではアジア では8,450万人、世界では1億5,100万人である。2 002年の厚生労働省糖尿病実態調査によると日 本では、糖尿病患者とその予備軍が1,620万人 のぼり、実に成人の6.3人に1人にあたる。ま た、患者数は2015年にはアジアでは1億3,230万 、世界では2億2,100万人に達すると予測され いる(非特許文献1参照)。

 糖尿病(とうにょうびょう、DiabetesMellitus: DM)は、糖代謝の異常によって起こるとされ 血液中のグルコース濃度が病的に高まるこ によって、様々な特徴的な合併症をきたす 、きたす危険性のある病気である。ここで 合併症とはその病気がもとになって起こる 気や症状のことをいう。糖尿病自体には重 な自覚症状がなく、合併症を引き起こすま 治療を受けず病態を悪化させる場合が多い

 糖尿病の合併症としては、脳梗塞、脳卒 、心筋梗塞、糖尿病腎症、下肢閉塞性動脈 化症、糖尿病網膜症、皮膚疾患、感染症、 尿病性神経障害、高脂血症、脳血管性痴呆 などがあり、中でも糖尿病腎症、糖尿病網 症、糖尿病性神経障害は三大合併症と呼ば る。

 糖尿病の原因としては、遺伝的な要因に るものもあるが、食事などの生活習慣に起 するものが大半を占め、健康食品・機能性 品に対する期待は高まっている。近年、発 玄米の糖尿病の合併症に対する有用性が注 され、高脂血症の改善効果、心臓血管系疾 の予防(血栓形成抑制)、糖尿病腎症の予防 果などが報告されている。

 ここで、発芽玄米は玄米を発芽させたも で、出芽の状態がおよそ1mm未満のものをい 。発芽の過程で、降圧作用や抗ストレス作 が知られているγ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric a cid(GABA))が産生されることが特徴的である。 らに、発芽玄米は豊富な食物繊維、ビタミ 、ミネラル、未知の脂質をぬかの層や芽に んでおり、日本では新しい全粒穀物として さらには、主食とするための研究対象とし 一般的である。発芽玄米では様々な健康に する有用性が研究されており、動物実験に いては、ストレプトゾトシン(Streptozotocin(STZ) )により誘導された糖尿病ラットの血中グル ース濃度を低下させる作用があることが報 されている(非特許文献2参照)。また、白米 比較して発芽玄米の食事は健常者(非特許文 3参照)及び高血糖の患者(非特許文献4参照) おいて食後の血中グルコース濃度及びイン リンを低下させることが知られており、糖 病の予防のための主食としての意義が高い 評価されている。

 発芽玄米は、従来から健康食品として利 されてきているため、安全性も高く長期運 が可能な製剤や食品を提供できる可能性を つ。近年、発芽玄米の高脂血症に対する改 効果、心臓血管系疾患の予防(血栓形成抑制 )、糖尿病腎症の予防効果などが注目されて る。

 さらに、発芽玄米の糖尿病性神経障害に する改善効果が調べられているが(非特許文 献5)、その有効成分については全く知られて なかった。そこで、本発明者らは、発芽玄 に含まれる糖尿病性神経障害に対する改善 果を有する有効成分を同定し、それによっ 新規な化合物を見出し、本発明を完成させ 。

特開2001-352916公報

特開2002-136263公報

特開2002-360192公報 Zimmet P, AlbertiKG, Shaw J. Global and societa l implications of the diabetes epidemic. Nature.2001  Dec 13;414(6865):782-7. Review Hagiwara H, Seki T,Ariga T. The effect of pre- germinated brown rice intake on blood glucose andPAI- 1 levels in streptozotocin-induced diabetic rats. Bios ci Biotechnol Biochem. 2004 Feb;68(2):444-7. Ito Y, Mizukuchi A, Kise M, Aoto H, Yamamoto  S, Yoshihara R, Yokoyama J. Postprandial blood glucos e and insulin responses to pre-germinated brown ricei n healthy subjects. J Med Invest. 2005 Aug;52(3-4):15 9-64. Ito Y, Shen M, Kise M, Hayamizu K, Yoshino G,  Yoshihara R, Yokoyama J. Effectof pre-germinated bro wn rice on postprandial blood glucose and insulin le vel insubjects with hyperglycemia. Jpn J Food Chem 2 005;12(2):80-4. Usuki S, Ito Y, Morikawa K, Kise M, Ariga T, Rivner M, Yu RK. Effect ofpre-germinated brown rice intake on diabetic neuropathy instreptozotocin-induced diabetic rats. Nutr Metab (Lond). 2007 Nov 23;4(1):2 5 Abbott CA, Mackness MI, Kumar S, Boulton AJ, D urrington PN.  Serumparaoxonase activity, concentration , and phenotype distribution in diabetesmellitus and  its relationship to serum lipids and lipoproteins. Ar terioscler Thromb Vasc Biol. 1995 Nov;15(11):1812-8. Silva IV, Caruso-Neves C, Azeredo IM, Carvalho  TL, Lara LS, de Mello MC, LopesAG. Urea inhibition  of renal (NA+ + K+)ATPase activity is reversed by c AMP.Arch Biochem Biophys. 2002 Oct 15;406(2):183-9. Chung BH, Wilkinson T, Geer JC, Segrest JP. Pr eparative and quantitativeisolation of plasma lipoprote ins: rapid, single discontinuous density gradientultrac entrifugation in a vertical rotor. J Lipid Res. 1980  Mar;21(3):284-91. Coste T, Pierlovisi M, Leonardi J, Dufayet D,  Gerbi A, Lafont H, Vague P,Raccah D. Beneficial effe cts of gamma linolenic acid supplementation on nervec onduction velocity, Na+, K+ ATPase activity, and memb rane fatty acidcomposition in sciatic nerve of diabet ic rats. J Nutr Biochem. 1999Jul;10(7):411-20. Shaheen Faizi, Muhammad Ali, Rubeena Saleem, Irf anullah, Sarah Bibi, Complete1H and 13C NMR assignmen ts of stigma-5-en-3-O-β-glucoside and its acetylderiva tive. Magnetic Resonance in Chemistry, 39(7):399-405 ( 2001)

 発芽玄米は従来から健康食品として利用 れてきているため、安全性も高く長期運用 可能な製剤や食品を提供できる可能性を持 。すなわち、本発明の糖尿病神経障害の改 効果を得るためには、単離した有効成分を 取するまでもなく発芽玄米のまま全体とし 摂取することにより一定の効果が得られる また、当該改善効果は複数の因子が協同的 働くことによりもたらされている可能性が る。

 一方で、もし当該効果を有する有効成分 同定に成功すれば、発芽玄米そのままでは 可能な大量又は高濃度の投与が可能になる けでなく、糖尿病性神経障害の発症メカニ ムの解明につながることさえ期待される。

 そこで、本発明は発芽玄米に含まれ糖尿 性神経障害を改善する機能を有する有効成 の同定を課題とする。

 本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭 検討を行った結果、発芽玄米又は発芽玄米 糠(ぬか)の層に含まれるステロール配糖体(A cylated steryl-β-glucoside(ASG)。本出願においては 、ステロール配糖体、Acylatedsteryl-β-glucoside、 ASGの用語を同義に用いる。)に糖尿病性神経 害を改善することを見出し本発明に至った

 すなわち、本発明は以下の構成を有する。
 (1)2-ヒドロキシ-オクタデカン酸を含むステ ール配糖体を有効成分とする神経障害予防 び改善組成物。
 (2)(1)記載のステロール配糖体のステロール 格が5α-cholest-8(14)-en-3β-olであることを特徴 する神経障害予防及び改善組成物。
 (3)脂肪酸部分として2-ヒドロキシ-オクタデ ン酸を含むステロール配糖体を有効成分と る神経障害の予防又は改善剤。
 (4)ステロール骨格として5α-cholest-8(14)-en-3β- olを含むステロール配糖体を有効成分とする 経障害の予防又は改善剤。
 (5)脂肪酸部分として2-ヒドロキシ-オクタデ ン酸を含み、かつ、ステロール骨格として5 α-cholest-8(14)-en-3β-olを含む、ステロール配糖 を有効成分とする神経障害の予防又は改善 。
 (6)脂肪酸部分として2-ヒドロキシ-オクタデ ン酸を含むステロール配糖体を有効成分と るホモシステインチオラクトナーゼ活性化 成物。
 (7)(6)記載のステロール配糖体のステロール 格が5α-cholest-8(14)-en-3β-olであることを特徴 するホモシステインチオラクトナーゼ活性 組成物。
 (8)以下の(i)又は(ii)のいずれかの条件を満た す、一般式(A)で表されるステロール配糖体。


 ・・・・・・・・・・・(A)
 
  (i) 一般式(A)中のXは以下の群から選択さ 、かつ、Yは5α-cholest-8(14)-en-3β-olである
   パルミチン酸(16:0)、
   ステアリン酸(18:0)、
   2-ヒドロキシ-オクタデカン酸(18:0(2h))、
   オレイン酸(18:1)、
   リノール酸(18:2)、又は、
   リグノセリン酸(24:0)
  (ii) 一般式(A)中のXは2-ヒドロキシ-オクタ カン酸(18:0(2h))であり、かつ、Yは以下の群 ら選択される
   Campesterol、
   Stigmasterol、
   5α-cholest-8(14)-en-3β-ol、又は、
   β-Sitosterol

 本発明の発芽玄米又は発芽玄米の糠(ぬか) 層を原料とした(Acylated steryl-β-glucoside, ASG) 、糖尿病性神経障害改善効果を有する。
 したがって、本発明によれば糖尿病性神経 害の予防剤又は改善剤として利用すること できる。
 そして、安全性が高く、継続的な摂取も可 であり、かつ精製あるいは合成して大量に 造することもでき、食品等への添加が可能 あることからも、人又は動物の健康増進や 病予防などとして貢献できる可能性が大き 。

Acylatedsteryl-β-glucoside(ASG)の構造 Campesterol及びStigmasterolの構造 5α-cholest-8(14)-en-3β-ol及びβ-sitosterolの 造 ホモシステイン・チオラクトン修飾LDL( HT-modifiedLDL)存在下において、発芽玄米由来ASG が神経軸索膜由来ナトリウム/カリウムATPase(N a/KATPase)活性に与える影響 発芽玄米脂質画分の各フラクションを に薄層クロマトグラフィー(thinlayer chromatogr aphy, TLC)を用いて分画し、オルシノール(Orcino l)染色した結果 A2をヘリコバクター菌(Helicobacterpylori)由 来の脂質H4(Acylated steryl-β-glucoside)と比較した 結果 発芽玄米由来ASG(A2画分)を核磁気共鳴 析法(NMR)で解析したスペクトル(1) 発芽玄米由来ASG(A2画分)を核磁気共鳴 析法(NMR)で解析したスペクトル(2) 発芽玄米由来ASG(A2画分)を核磁気共鳴分 析法(NMR)で解析した結果 ガスクロマト質量分析法(GCMS)による解 の結果 ASGがHTase活性に与える影響 各フラクションのHPTLC展開像-1 各フラクションのHPTLC展開像-2

符号の説明

A2     発芽玄米の糠の抽出分離画分Fr.2に まれ、TLC-オルシノール発色で検出される糖 質成分。
A3     糠の抽出分離画分Fr.2に含まれ、TLC- ルシノール発色で検出される糖脂質成分。
A4     発芽玄米の糠の抽出分離画分Fr.2に まれ、TLC-オルシノール発色で検出される糖 質成分。
A5     糠の抽出分離画分Fr.2に含まれ、TLC- ルシノール発色で検出される糖脂質成分。
B1     糠の抽出分離画分Fr.3に含まれ、TLC- ルシノール発色で検出される糖脂質成分。
B2     糠の抽出分離画分Fr.3に含まれ、TLC- ルシノール発色で検出される糖脂質成分。
B3     糠の抽出分離画分Fr.3に含まれ、TLC- ルシノール発色で検出される糖脂質成分。

B4     糠の抽出分離画分Fr.3に含まれ、TLC- ルシノール発色で検出される糖脂質成分。
B5     糠の抽出分離画分Fr.3に含まれ、TLC- ルシノール発色で検出される糖脂質成分。
A2(alkaline)      精製したA2をアルカリ処理 たもの

Fr     発芽玄米あるいは玄米の糠の粗脂質 抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ ーでさらに分画したもの。
GSL St      Standardglycosphingolipid
Cer     Ceramide
GlcCer     Glucosylceramide
GalCer     Galactosylceramide
LacCer     Lactosylceramide
Gb3     Globotriaosylceramide
Gb4     Golbotetraosylceramide
C/M/W     クロロホルム/メタノール/水
C:M:W     クロロホルム:メタノール:水

Glc     Glucose
Lac     Lactose
Suc     Sucrose
BBG     Bovine brain ganglioside mixture
ASG     Acylated steryl-β-glucoside、ステロール 配糖体
H4(helicobacter)      Acylated steryl-β-glucosideder ived from Helicobacter pylori
H6(helicobacter)      Steryl-β-glucoside derived fr omHelicobacter pylori
ASG-matreya     Commercial standard of ASG derived from soybean

16:0     パルミチン酸(palmitic acid)
18:0     ステアリン酸(stearic acid)
18:0(2h)       2-ヒドロキシ-オクタデカン (2-hydroxy-octadecanoicacid)
18:1     オレイン酸(oleic acid)
18:2     リノール酸(linoleic acid)
22:0     ベヘン酸(behenic acid)
24:0     リグノセリン酸(lignoceric acid)

HTase     ホモシステイン・チオラクトン(ho mocysteine thiolactone)の加水分解酵素
HT     ホモシステイン・チオラクトン(homoc ysteine thiolactone)
LDL     低密度リポタンパク質
HT-modifiedLDL      ホモシステイン・チオラ トン修飾LDL
HT-LDL     ホモシステイン・チオラクトン 飾LDL
Na/KATPase      ナトリウム/カリウムATPase
SG     発芽玄米由来ASGから脂肪酸を除去し たもの
S-ASG     大豆より精製したASG

[定義]
 糖尿病性神経障害とは、糖尿病がもとにな て起こる合併症の一つであり、末梢神経障 と自律神経障害のことである。臨床的には 期には手足などのしびれや痛み、慢性期に 感覚麻痺、運動神経失調を引き起こす障害 ある。病理学的には、神経組織のミエリン と軸索の変性と損傷が挙げられる。これら 神経障害は、末梢神経伝導速度の低下、神 軸索膜由来ナトリウム/カリウムATPase(Na, K-A TPase)活性の低下として観察、定量することが できる。

 糖尿病性神経障害の改善効果とは、発芽 米由来ASG又は発芽玄米由来ASGの有効成分が する効果であって、人又は動物の個体、組 又は細胞において、糖尿病性神経障害を原 として低下したナトリウム/カリウムATPase活 性又はHTase活性を正常値に近づけるべく上昇 せる効果あるいは運動神経伝導速度の低下 防止する効果をいう。

 本発明でいう神経障害とは、糖尿病性神 障害と同一又は類似の生理学的、細胞組織 的、又は生化学的所見を示す病態をいうが 糖尿病を原因とするものに限られない。す わち、中枢および末梢神経において、病理 織学的には、特に、神経軸索の損傷、ミエ ン鞘脱髄、神経生理学的には、運動神経伝 速度の低下、生化学的には、神経膜由来ナ リウム/カリウムATPase活性の低下、又は血清 中の高密度リポ蛋白(HDL)分画に含まれているH Tase活性の低下として観察、定量することが きる全ての神経障害をいう。

 HTaseとは、動脈硬化の危険因子であるホ システイン・チオラクトン(homocysteinethiolacton e)の加水分解酵素のことであり、パラオキソ ーゼ(paraoxonase)ファミリーに分類される。神 経障害を伴った患者ではパラオキソナーゼ活 性が低下することが報告されていることから (非特許文献6参照)、HTase活性の低下は動脈硬 の危険因子となるだけではなく、神経障害 進行程度にも関連すると考えられている。

[実験材料及び方法]
<発芽玄米>
 公知の方法(特許文献1-3参照)により調整し 。

<分画-脂質画分の抽出>
 脂質画分は5gの発芽玄米あるいは玄米の糠 ら、30ml及び20mlのクロロホルム・メタノール (1:1及び2:1、容積比)を用いて2回抽出して脂質 画分とした。

<分画-シリカゲルクロマトグラフィー>
 糖脂質の組成分析と各成分の精製
 発芽玄米および玄米の脂質画分をさらにシ カゲルカラムクロマトグラフィー(1x15 cm)に かけ、溶媒クロロホルム:ヘキサン(1:1) 40 ml クロロホルム:ヘキサン(9:1) 70 ml を通液し て得た分画をFr.1とする。引き続き、溶媒ク ロホルム:メタノール(9:1)80 mlを通液して得 分画をFr.2とする。さらに溶媒クロロホルム: メタノール:水(7:3:0.1) 80 ml、溶媒クロロホル ム:メタノール:水(3:6:0.8)120 mlを通液して得た それぞれの分画をFr.3とFr.4とする。各分画を ータリーエバポレーターで濃縮乾固した。 分画1 μgをシリカゲルはく層(TLC)プレート スポットして、溶媒クロロホルム:メタノー :水(70:30:0.1)にて展開する。展開後、TLCプレ トにオルシノール試薬をスプレーする。TLC レートをホットプレートに載せ110℃で5分間 加熱する。オルシノール発色で検出された各 糖脂質成分をデンシトメータで定量して組成 を求めた。

 A2画分の精製
 発芽玄米および玄米の糠の抽出分離画分Fr.2 およびFr.3に含まれる各糖脂質成分(A2, A4, B1,  B2, B3, B4, B5)をさらにシリカゲルカラムク マトグラフィー(1x15cm)にかけ、溶媒(クロロ ルム:メタノール:水(70:30:0.1)、流速0.2ml/min) 用いてフラクションコレクターで単離精製 した。

<アルカリ分解>
 A2 (0.1mg)に0.5 mlの0.5 M NaOH /メタノール:水 (4:1)を加えて溶解して室温で20時間撹拌する 撹拌後に、2.5 mlのクロロホルム:メタノール (2:1)を加えてフォルチ分配をおこなう。
下層を集めて、濃縮する。分配した下層を少 量のクロロホルムTLCプレートにスポットして 、溶媒 クロロホルム:メタノール:水(70:30:0.1) にて展開する。展開後、TLCプレートにオルシ ノール試薬をスプレーする。TLCプレートをホ ットプレートに載せ110℃で5分間加熱する。 ルシノール発色させ、アルカリ処理前後のA2 およびA4のTLC展開移動度を比較した。

<分画-薄層クロマトグラフィー>
 シリカゲルをコートした市販の縦10 cm のTL Cプレート(Silica gel 60, Merck)の下より1.5cmの 置にマイクロシリンジでサンプルを塗布す 。展開溶媒クロロホルム:メタノール:水(70:30 :0.1)にて展開した。展開後風乾した。

<オルシノール(orcinol)染色>
 0.2%オルシノール/2N硫酸をスプレーによりTLC プレートに均一にスプレーする。スプレーを 受けたTLCプレートを110℃に熱されたホットプ レート上で加熱する。TLCプレート上で分離し た糖を含む各成分は特異的な小豆色の発色を 呈することで同定された。

<ガスクロマト質量分析法(GCMS)>
 A2(50μg)を1.0mlの1 N 塩酸/メタノールに溶か 、86℃で16から24時間、加水分解した。反応 、室温まで冷却した後に、1.0 mlのヘキサン を加えて撹拌、遠心して2層に分離した。下
に再び1.0 mlのヘキサンを加えて2層分離を行 た。さらに下層に対してもう一回2層分離を おこなった。ヘキサンを多く含む上層のみを 集めて窒素ガスで乾燥させて脂肪酸分画とし た。ヘキサン層は脂肪酸のGCMS分析に用いら た。一方、残った塩酸メタノール層に等量 エチルエーテルを加えて2層分配をおこなっ 。エーテル層は窒素ガスで乾燥させてステ ール分画としてステロールのGCMS分析に用い られた。GCMS分析はHewlett-PackardGC-MS (5972 MS &a mp; 5890 GC)に装着したキャピラリーカラム DB -1 (50 m X0.25 mm)によって実施された。脂肪 の分析は初期温度70℃(5分), 10℃/分(18分),  温度250℃(15分)の10℃/分のグラデイエント昇 プログラムで実施された。ステロールの分 は初期温度70℃ (1分),10℃/分(18分), 終温度2 50℃(21分)のグラデイエント昇温プログラムで 実施された。

<核磁気共鳴分析法(NMR)>
 A2(1.0 mg)を0.5 mlのCD 2 Cl 2 に溶解して予備的なNMRデータを取った後に、 CD 2 Cl 2 を窒素ガスで乾燥除去した。再び0.5mlのCDCl 3 に溶解して本格的な測定をおこなった。デー タは25℃で800 MHzと900MHzでおこなった。デー の収集は 1 HNMRのスペクトラムに加えて、2次元スペクト [COSY、HSQC(carbon-proton one-bond correlated data)、 HMBC(carbon-proton multiple bond correlated data)]でも 収集された。

<リポタンパク質の分離>
 リポタンパク質は以前に報告された手順(非 特許文献8参照)で準備した。簡単に述べると 正常ラットから採取した新鮮な血清を集め 固体KBrを用いて密度を1.3g/mlに合わせた。上 記の調製した血清(1.5ml、1.3g/ml)の上に通常の 理食塩水(3.5ml、1.006g/ml)を重層し、超遠心に より遠心管の中に不連続の密度勾配を作製し た。リポタンパク質はTV865ローターで369548g、 4℃、45分間の超遠心により分離した。3種の なリポタンパク質画分(VLDL、LDL、HDL)を回収 、PBSに対して4℃で一晩透析した。本明細書 おいてはLDLは当該方法で得られた画分を意 する。

<HTase活性測定>
 ラット血清HDL中のHTase活性は市販の測定キ トを用いて測定した(AlfresaAuto HTLase; Alfresa  Pharma Corp., Osaka, Japan)。このキットはγ-チオ ブチロラクトン(thiobutyrolactone)を基質として 用する。HTaseはラクトン環を加水分解し、遊 離チオール(thiol)基を生成する。チオール基 5,5'-ジチオビス(5,5'-dithiobis(2-netrobenzoic acid)) 反応することにより、450nmの吸収で測定さ る5-チオ-2-ニトロベンゾイック酸(5-thio-2-netro benzoicacid)を生成した。450 nmの吸収を測定し 酵素活性を算出した。

<ナトリウム/カリウムATPase活性のための粗 製坐骨神経膜の調製>
 粗精製膜は以前に報告された手順(非特許文 献7参照)により調製した。簡単に述べると、 ットの坐骨神経を、冷却等浸透圧溶液(250mM スクロース、10mMHEPES-Tris緩衝液(pH7.6)、2mM EDT A、1mM PMSF)中で破砕均質化した。当該均質化 た液を10分間4℃で3000rpmで遠心分離し、上澄 み液を回収し、さらに45分間45000rpmで遠心分 した。上澄み液を捨てた後に、沈殿を100μl 250mMスクロース溶液(10mMHEPES-Tris緩衝液(pH7.6) 溶解)に懸濁した。

<ホモシステイン・チオラクトン修飾LDLの 整>
 試験管内でのLDLのホモシシテイン・チオラ トン化は以前に報告された実験条件で行っ (非特許文献5)。簡単に述べると、適量のLDL 液(LDLタンパク質、100μg)を10 mM PBS (pH8.2)に 懸濁し、全体を37℃で優しく掻き混ぜながら モシシテイン・チオラクトン(100μmol/L)及び 示した量の全脂質画分(TLp)あるいはASG(0.01か ら10.0μg)と2時間インキュベートした。インキ ュベート後に、未反応のホモシシテイン・チ オラクトンを除去するために、10mM PBS (pH8.2) で平衡させたBio-gelP-2カラムに当該混合液を 過した。

<Na/K ATPase活性測定>
 ナトリウム/カリウムATPase活性は以前の報告 (非特許文献7参照)のように測定した。簡単に 述べると、ナトリウム/カリウム依存的活性 測定するためのナトリウム/カリウムATPase活 測定溶液(0.2ml)の組成は10mMMgCl 2 、20mM HEPES-Tris(pH7.0)、120mM NaCl、30mM KCl、0.5mg /mlの粗精製膜タンパク質、及び25mM[γ- 32 P]ATP(10,000cpm)であった。測定溶液を37度で15分 ンキュベートした後、0.1mg/mlの活性炭を加 、15,000rpmで15分間遠心分離した。上澄み液を 回収し、無機の 32 P放射活性をシンチレーションカウンターで 定した。

[結果及び考察]
<発芽玄米由来の有効成分の分画>
 発芽玄米の糠の層に含まれる脂質画分をフ クション1、2、3及び4に分画し、さらに薄層 クロマトグラフィーを用いて分画することに より、非特許文献5で示された糖尿病性神経 害の改善機能を有する有効成分はAcylatedsteryl -β-glucoside(ASG)であることが判明した。

 有効成分が単一の画分A2(以下、A-2と表記 る場合もあるが、特に区別しない)にのみ含 まれていたことは特筆すべきことである。す なわち、発芽玄米のような天然の食品に特定 の薬学的効果が認められた場合に、複数の因 子が協同的に働いて効果を発揮していたとし ても不思議は無いからである。なお、単一の 画分A2は複数種類のASGを含んでいたが、薄層 ロマトグラフィーを用いた分画ではそれぞ を分離することは出来なかった。これは、 れぞれのASGの構造及び化学的性質が互いに 似しているからと考えられる。

 本明細書で「ASG」というときは、一般名称 してのASGを表す。「発芽玄米由来(の)ASG」 いうときは、A2画分に相当する複数種類のASG の集合を表す。ただし、文脈上明らかな場合 には「ASG」がA2画分に相当する複数種類のASG 集合を表すこともある。
 本発明は当該発芽玄米由来のASGに関するも であり、また、当該発芽玄米由来のASGを用 た糖尿病性神経障害の改善又は予防剤に関 るものである。

<発芽玄米由来の有効成分の同定>
 A2画分についてNMRを用いて解析を行った結 、予想通り、A2画分はASGで構成されることが 確認され、A2を構成するASGのステロールはCamp esterol、Stigmasterol、5α-cholest-8(14)-en-3β-ol及びβ -Sitosterolであることが判明した。また、A2を 成するASGの脂肪酸はパルミチン酸(16:0、以下 略号で示すことがある。他の脂肪酸について も同じ。)、ステアリン酸(18:0)、2-ヒドロキシ -オクタデカン酸(18:0(2h))、オレイン酸(18:1)、 ノール酸(18:2)及びリグノセリン酸(24:0)であ ことが判明した。ASGの一般構造及びA2を構 するASGのステロールの構造を図1に示す。

 図1から分かるように、A2画分のASGは、糖( Sugar)の骨格に上記4種類のステロールの何れ が結合し、かつ、上記6種類の脂肪酸の何れ が結合している。理論的には24種類の組み わせがあり、したがって、24種類のASGが含ま れうるが、現実のA2画分のASGはより少ない種 に限定されている可能性がある。なお、糖 ステロールの結合様式にはα結合とβ結合が あるが、発芽玄米由来ASGの場合にはβ結合の であることが判明した(下記を参照)。

<発芽玄米由来ASGのHTase活性に対する効果> ;
 HTaseとは、動脈硬化の危険因子であるホモ ステイン・チオラクトン(homocysteinethiolactone) 加水分解酵素のことであり、パラオキソナ ゼ(paraoxonase)ファミリーに分類される。神経 障害を伴った患者ではパラオキソナーゼ活性 が低下することが報告されていることから( 特許文献5参照)、HTase活性の低下は動脈硬化 危険因子となるだけではなく、神経障害の 行程度にも関連すると考えられている。本 発明のASGはラット血清LDL中のHTase活性を上 させることから、神経障害の改善又は予防 としての機能を有することを示唆する。

<発芽玄米由来ASGに特異的なHTase活性に対す る効果>
 発芽玄米由来ASG(ASG)を加えた場合には量依 的なHTaseの活性上昇が見られるのに対して、 SG(発芽玄米由来ASGから脂肪酸を除去したもの )及び大豆由来ASG(S-ASG)を加えた場合にはHTase 活性上昇は見られなかった(表6)。このこと 、量依存的にHTaseの活性を上昇させる効果は 、発芽玄米由来ASGに特異的なものであること を示している。

<発芽玄米由来ASGの神経障害の改善効果>
 神経障害は、末梢神経伝導速度の低下又は 経軸索膜由来ナトリウム/カリウムATPase(Na,  K-ATPase)活性の低下として観察、定量できるこ とが知られているが(非特許文献5及び9)、本 究においては、多数のサンプルを処理する めの利便性等の観点から、ナトリウム/カリ ムATPase活性を神経障害の指標として用いた 即ち、ナトリウム/カリウムATPase活性がより 低い方が、神経障害の程度が重篤であること を示す。

 神経軸索膜由来ナトリウム/カリウムATPase活 性の低下は、ホモシステイン・チオラクトン によってLDLが修飾されLDLの機能が阻害される ことが原因であると考えられている。本研究 においては、神経障害を再現するために、健 常ラットから調整した粗精製坐骨神経膜のナ トリウム/カリウムATPase活性をホモシステイ ・チオラクトン修飾LDL(HT-modifiedLDL)存在下で 定した。
 ホモシステイン・チオラクトン修飾LDL(HT-mod ified LDL)存在下において、発芽玄米由来ASGは 経軸索膜由来ナトリウム/カリウムATPase(Na/KA TPase)活性を量依存的に上昇させた(図2)。この ことから、発芽玄米由来ASGが神経障害を改善 させる機能を有することが示された。

<発芽玄米由来ASGに特異的な神経障害の改 効果>
 発芽玄米由来ASG(ASG)を加えた場合には量依 的なナトリウム/カリウムATPaseの活性上昇が られるのに対して、SG及び大豆由来ASG(S-ASG) 加えた場合にはナトリウム/カリウムATPaseの 活性上昇は見られなかった(表7)。このことは 、量依存的にナトリウム/カリウムATPaseの活 を上昇させる効果は、発芽玄米由来ASGに特 的なものであることを示している。

<発芽玄米由来ASGの有効成分(S-ASGとの比較)& gt;
 前述のように、発芽玄米由来ASGは単一のASG はなく、複数種類のASGの混合物である(表4 び表5)。発芽玄米由来ASGには、ステロール部 分としてCampesterol、Stigmasterol、β-Sitosterol又は 5α-cholest-8(14)-en-3β-olを有するものが含まれて いる。一方、大豆由来ASGにはステロール部分 としてCampesterol、Stigmasterol又はβ-Sitosterolを有 するものしか含まれていない。これは、発芽 玄米由来ASGの真の有効成分が、ステロール部 分として5α-cholest-8(14)-en-3β-olを有するASGであ る可能性を強く示唆する。理論的には、弱い 作用を有する複数の因子が協働的に作用して 強い効果を生み出すこともあり得るが、現実 的には考えにくい。

 また、発芽玄米由来ASGには、脂肪酸部分 して16:0、18:0、18:0 (2h)、18:1、18:2又は24:0を するものが含まれている。一方、大豆由来A SGには脂肪酸部分として16:0、18:0、18:1、18:2、 22:0(ベヘン酸)又は24:0を有するものしか含ま ていない。これは、発芽玄米由来ASGの真の 効成分が、脂肪酸部分として18:0(2h) を有す ASGである可能性を強く示唆する。やはり、 論的には、弱い作用を有する複数の因子が 働的に作用して強い効果を生み出すことも り得るが、現実的には考えにくい。

 したがって、発芽玄米由来ASGに含まれる の有効成分は、ステロール部分として5α-cho lest-8(14)-en-3β-olを有するか又は脂肪酸部分と て18:0(2h) を有するASGである可能性が極めて 高い。理論的には、発芽玄米由来ASGには4×6=2 4種類のASGが含まれうるが、本研究によれば 発芽玄米由来ASGに含まれる真の有効成分の 補は、6+4-1=9種類のASGに限定される。即ち、 テロール部分として5α-cholest-8(14)-en-3β-olを しかつ脂肪酸部分として16:0、18:0、18:0(2h)、 18:1、18:2又は24:0を有する6種類のASG、又は、 テロール部分としてCampesterol、Stigmasterol、β- Sitosterol又は5α-cholest-8(14)-en-3β-olを有しかつ 肪酸部分として18:0(2h)を有する4種類のASGで る(1種類は重複してカウントされている)。

 本願発明は、この発芽玄米由来ASGの真の 効成分に関するものであり、真の有効成分 含む発芽玄米由来ASGに関するものである。

<発芽玄米由来ASGの有効成分(SGとの比較)>
 本研究では、発芽玄米由来ASGを加水分解し 脂肪酸部分を除去することにより調整したS Gとの比較も行った。脂肪酸部分を失ったSGは 神経障害の改善作用を有さず(表6及び表7)、 肪酸部分の存在は必須であることが分かっ 。

<産業上の応用>
 本発明の発芽玄米由来ASG(単一又は複数種類 )は、上記の方法により得られた画分をその ま直接使用してもよいが、一般的には適当 液体に溶解するかもしくは分散させ、また 、適当な粉末担体と混合するかもしくはこ に吸着させ、場合によっては、さらにこれ に乳化剤、分散剤、懸濁剤、展着剤、浸透 、湿潤剤、安定剤等を添加し、乳剤、油剤 水和剤、散剤、錠剤、カプセル剤、液剤等 製剤として使用する。

 製剤として使用する場合における、画分の 用量は製剤の形態によっても異なるが、有 な投与量であれば良く、安全性に問題がな ので特に上限は規定しない。
 また、本発明でいう機能性食品とは、発芽 米由来ASGを有効成分とし、神経障害を予防 る機能又は改善する機能を有する食品、あ いは食品の摂取によりこれらの機能の発揮 期待される食品をいい、健康食品、特定保 用食品、栄養機能食品のいずれをも含む。

 食品としては、チューインガム、キャン ィ、錠菓、グミゼリー、チョコレート、ビ ケットまたはスナック等の菓子、アイスク ーム、シャーベットまたは氷菓等の冷菓、 料、プリン、ジャム、乳製品、調味料等が げられ、これらの食品を目常的に摂取する とが可能である。これらの食品に対する本 明の脂質画分の添加量としては、食品の形 によっても異なるが、安全性に問題がない でその濃度に上限を設ける必要はない。

[参考例1]
[発芽玄米由来の有効成分の分画]
 実験材料及び方法に記載の方法で発芽玄米 質画分をフラクション1、2、3及び4(Fr1, Fr2, Fr3 Fr4)に分画した。各フラクションについ HTase活性測定を行ったところ、Fr2が活性を有 し(表1)、糖尿病性神経障害を改善する機能を 有する有効成分は当該Fr2に含まれることが分 かった。即ち、添加物(Additive)として1.0μgのFr .2を添加した場合にのみ、何も添加しない場 (None)と比較してHTaseの活性の上昇が観察さ た。


 

 各フラクションを更に薄層クロマトグラ ィー(thin layer chromatography, TLC)を用いて分 し、オルシノール(Orcinol)染色した結果を図3A に示す。Fr1、Fr2、Fr3の順に、TLC展開の上から 下へ向かって極性の異なる成分が移動度の順 に溶出されていることが観察される。GSLStを ーカーとして用いた。Fr2及びFr3の主要なバ ドを上から順に、それぞれ、A1-A5及びB1-B5と 名づけた。各バンドについてHTase活性測定を ったところ、A2が活性を有し(表2)、糖尿病 神経障害を改善する機能を有する有効成分 当該A2に含まれることが分かった。即ち、添 加物(Additive)として0.1μgのA2(発芽玄米の脂質(T Lp)由来)を添加した場合にのみ、何も添加し い場合(None)と比較して顕著なHTaseの活性の上 昇が観察された。なお、通常の玄米の脂質(TL b)を分画した場合にはA2に相当するバンドは られなかった(ND、notdeterminedの略)。


 

 精製したA2、A4及びアルカリ処理したA2に いて、TLC展開した結果を図3Bに示す。A2をア ルカリ処理するとA4と同じ移動度を示す。A4 アルカリ処理によって移動度が変化しなか た。Matreya社から市販されている大豆由来のA SGがA2と同じ移動度を示し、アルカリ処理す ことでA4と同一の移動度を示すようになった 。さらに、図4に示すようにヘリコバクター (Helicobacterpylori)由来の脂質H4(Acylated steryl-β-g lucoside)と同じ移動度を示すことが分かった。 H4もアルカリ処理によってヘリコバクター菌 来のH6と同じ移動度を示すようになった。A4 とH6とを比較した場合には、僅かに移動度が なっていたが、ほぼ同じ移動度を示した。 のことからA2もH4もA4とH6がアシル化した構 であるということが判明した。移動度のわ かな相違はSteryl-β-glucosideとSteryl-β-glucosideの 相違点、β結合かα結合であるかという立体 性体の特性によって起こったと考えられる 即ち、A2はAcylatedsteryl-β-glucosideであることが 分かった。ASGは図1の一般式で示され、中心 なる糖にステロールと脂肪酸(図中Rで表す) 結合した構造を有する。

[発芽玄米由来の有効成分の同定]
<NMRによる構造解析>
 発芽玄米由来ASGを構成するステロール及び 肪酸の構造並びに上記結合様式(α結合又は 結合)を明らかにするために、本発明者らは 磁気共鳴分析法(NMR)を行った。その結果を 5及び表3に示す。

 A2のアルカリ分解前後のTLCプレート上の移 度の変化、その他のサンプル(A4,H6, A4, S2な )とのTLCプレート上での移動度(挙動)の比較 ら、A2がASGであることが予想されたが、A2が どのようなASGであるかをNMR解析で明らかにし た。NMRデータの解析方法は非特許文献10を参 のこと。NMRで明らかになったのは以下の4点 である:(1)A2にはグルコースと脂肪酸とステロ ールが1分子含まれている(2)グルコースの6位 脂肪酸がエステルとして結合している(3)グ コースはステロールにβ結合している(4)主 なステロールはSitosterolである。
  1 H- 13 C NMRの2次元スペクトラムのシグナルをグル ース、Sitosterol、脂肪酸に含まれる個々のプ トンのシグナルに割り当てることができた( 表3)。

 グルコースのプロトン(Glucose 1 ~Glucose 6) 、Sitosterol(Sitosterol C, Sitosterol CH,Sitosterol CH2 , Sitosterol CH3)、脂肪酸(Acylgroup CH2, Acylgroup  H1)として表3にシグナル値が記されている。 号は図6に示すとおりである。


 

 Glucose1のH1は4.359 ppmであり、H2へのスカラ ーカップリング(7.7 Hz)していることからグル コースはβ結合であることが判明した。グル ースに関してはGlucose6のH6とH6'が低磁場へシ フトしていることから6位にアシル化がされ いることが判明した。6位のアシル化は2.32お よび1.59 ppmのシグナルが同じカルボニル基に 結合したCH2プロトンであることから6位には 鎖の脂肪酸が結合していることが判明した ステロール骨格に特徴的なシグナルも表3に るように見出され、主要成分としてSitosterol をほぼ検証できる結果を示した。

<GCMSによる構造解析>
 NMR構造解析ではステロールおよび脂肪酸に まれる成分すべてを同定できないためにA2 構成するステロール成分および脂肪酸成分 しての組成比をGCMS構造解析で求めた。
 A2を構成するASGのステロールの組成及び大 由来ASGのステロールの組成を表4に示す。


 

 Campesterol、Stigmasterol及びβ-Sitosterolは大豆 来ASGにも含まれ、既によく知られている。 目すべき点は、A2には新規のステロールで る「5α-cholest-8(14)-en-3β-ol」が比較的高い割 で含まれていることである。5α-cholest-8(14)-en -3β-olの構造を同定したGCMSのデータを図7Aに し、その構造を図1に示した。

 次に、NMRを用いた解析により明らかとな た、A2を構成するASGの脂肪酸の組成及び大 由来ASGの脂肪酸の組成を表5に示す。


 

 16:0、18:0、18:1、18:2、22:0及び24:0は大豆由 ASGにも含まれ、既によく知られている。注 すべき点は、A2には新規の脂肪酸である「18 :0(2h)」が含まれていることである。18:0 (2h) 同定したGCMSスペクトラムを図7Bに示す。

[発芽玄米由来ASGの血清HDL由来HTase活性に対す る効果]
 発芽玄米由来ASGがHTase活性に与える効果を べた。実験方法を簡単に述べる。正常ラッ のプール血清よりHDLを調製し、それをHTaseの 酵素源としてASGを添加してHTaseの活性化を調 た。
 この結果を図8に示す。添加するASGの量が0 ら0.1μgの間で、量依存的なHTase活性の上昇が 見られた。このHTaseの活性上昇は、添加するA SGの量が0.5μgで飽和し、それ以上加えた場合 大きな変化は無かった。

[発芽玄米由来ASGに特異的なHTase活性に対する 効果]
 上記発芽玄米由来ASGのHTase活性に対する効 が、発芽玄米由来ASGに特異的なものか否か 明らかにするために、本発明者らは図8と同 試験を繰り返した。発芽玄米由来ASG(ASG)、 芽玄米由来ASGから脂肪酸を除去したもの(SG) び大豆由来ASG(S-ASG)について、HTase活性の変 を調べた結果を表6に示す。ASG、SG又はS-ASG 何れも加えない場合のHTase活性を100として相 対値で表す。


 

 発芽玄米由来ASG(ASG)を加えた場合には、 8と同様の結果が得られたのに対し、SG及び 豆由来ASG(S-ASG)を加えた場合には、量依存的 HTaseの活性上昇は見られなかった。

[発芽玄米由来ASGの神経障害の改善効果]
 発芽玄米由来ASGが発芽玄米と同様の糖尿病 神経障害の改善効果(非特許文献5)を有する 否かを確認するために、ホモシステイン・ オラクトン修飾LDL(HT-modifiedLDL)存在下におい て、発芽玄米由来ASGがナトリウム/カリウムAT Pase(Na/K ATPase)活性に与える影響を調べた。実 験方法を簡単に述べる。正常ラットの坐骨神 経よりNa/KATPase粗分画を調製した。正常ラッ 血清より調製したLDLをホモシステイン化し 、ASGと一緒に加えてNa/K ATPaseの活性に及ぼ 影響を調べた。

 この結果を図2に示す。添加するASGの量が 0から1.0μgの間で、量依存的なNa/KATPase活性の 昇が見られた。このNa/K ATPaseの活性上昇は 添加するASGの量が1.0μgで飽和し、それ以上 えた場合も大きな変化は無かった。

[発芽玄米由来ASGに特異的な神経障害の改善 果]
 上記発芽玄米由来ASGのナトリウム/カリウム ATPase活性に対する効果が、発芽玄米由来ASGに 特異的なものか否かを明らかにするために、 本発明者らは図2と同じ試験を繰り返した。 芽玄米由来ASG(ASG)、発芽玄米由来ASGから脂肪 酸を除去したもの(SG)及び大豆由来ASG(S-ASG)に いて、ナトリウム/カリウムATPase活性の変化 を調べた結果を表7に示す。ASG、SG又はS-ASGの れも加えない場合のナトリウム/カリウムATP ase活性を100として相対値で表す。


 

 発芽玄米由来ASG(ASG)を加えた場合には、 2と同様の結果が得られたのに対し、SG及び 豆由来ASG(S-ASG)を加えた場合には、量依存的 ナトリウム/カリウムATPaseの活性上昇は見ら れなかった。

[溶媒抽出法によるASGの抽出方法]
 発芽玄米の糠5gを秤量し、30mLのヘキサンで1 5分間攪拌、洗浄した後、ブフナーロート(Buec hnerfunnel)で濾過し、残留物を得た。濾液は廃 した。残留物を上記の条件でさらに2回洗浄 した後、残留物にエタノール又は、エタノー ルと蒸留水の混合液(エタノール:水=2:1又は1:1 。以下それぞれ、エタ水(2:1)又はエタ水(1:1) 略す場合がある。)又はクロロホルムとメタ ールの混合液(クロロホルム:メタノール=2:1 以下、クロメタ(2:1)と略す場合がある。)30mL を加え、30分間攪拌、抽出しブフナーロート 濾過し、濾液を得た。残留物は廃棄した。 タノール、エタ水(2:1)、エタ水(1:1)又はクロ メタ(2:1)の濾液は全量をナス形フラスコに移 、エバポレーターを用いて濃縮乾固し、発 玄米由来のASG濃縮物E(エタノール抽出)、F( タ水(2:1)抽出)、G(エタ水(1:1)抽出)、H(クロメ (2:1)抽出)を得た。

 上記ASG濃縮物E、F、Gは、クロメタ(2:1)30mL 加え、15分間再度溶解させた後、クロメタ(2 :1)を用いて500mLにメスアップした。上記ASG濃 物Hは、クロメタ(2:1)30mLを加え、15分間再度 解させた後、クロメタ(2:1)を用いて1500mLに スアップした。メスアップした各濃縮物E、F 、G、H2mLを1500g×10分の条件で遠心し、上澄み 測定サンプルとした。なお、各回収物中のA SGは高速液体クロマト(HPLC)を用いて、ASGの含 率を求めた。ASGの分析方法の詳細は以下の りである。

[ASGの分析方法]
 ASGのHPLC分析は、表8の分析条件を用いて行 た。


 

移動相及びグラジエント条件は、表9に示 。


 

[分析結果]
 各抽出画分中のASG含有率の分析結果は、表1 0に示す。


 

[イアトロビーズ(粒状多孔性微粒子シリカゲ )クロマトグラフィーによるASGの精製]
 高純度のASGを得る目的で上記実施例6の分析 結果に基づいてイアトロビーズクロマトグラ フィー法により抽出精製を行った。
 発芽玄米の糠25gを秤量し、イアトロビーズ ロマトグラフィー(Iatrobeadschromatography)によ 分画を回収し、Fraction 2を得た。さらにFracti on 2を濃縮乾固させ、イアトロビーズクロマ グラフィーによりFraction8~12を分取、これら 乾固させ濃縮乾固I(アルファベットのI)を得 た。

<カラム>
 φ2cm×30cm(シリカゲル(イアトロビーズ6RS-8060 株式会社三菱化学ヤトロン製)に充填)

<方法>
1. 発芽玄米の糠25gをヘキサンで洗浄した後 クロロホルム:ヘキサン=1:1で総脂質画分(TL) 抽出する。
2. TLをロータリーエバポレーターで完全に乾 固する。
3. 乾固したTLを30mlのクロロホルム:ヘキサン( C:H)=1:1に溶解する。
4. C:H=9:1を200mlずつ通液し通過液を回収する(F raction1)。
5. クロロホルム:メタノール=9:1を200ml通液し 過液を回収する(Fraction2)。
6. クロロホルム:メタノール:水(C:M:W)=7:3:0.1を 通液し通過液を回収する(Fraction3)。
7. C:M:W=30:60:0.8を200ml通液し通過液を回収する (Fraction4)。
8. 各フラクションをHPTLC(シリカゲル60、メル ク社製)に供し、ASG溶出フラクションを確認 た。
 各フラクション5μLをシリカゲルコートした 市販の縦10cmのHPTLCプレート(Silicagel 60,Merck)の 下より1.5cmの位置にマイクロシリンジでサン ル塗布し、展開溶媒クロロホルムにて展開 た後風乾燥し、再度クロロホルム:メタノー ル(95:5)で2次展開を行い風乾した。

<結果>
 各フラクションを上記条件で薄層クロマト ラフィーに供し、ASGの存在を確認したとこ 、TLに含まれているASGは、すべてFraction 2に 溶出されていた。この結果を図9に示す。

[イアトロビーズクロマトグラフィーによるAS Gの精製つづき]
<カラム>
 φ1cm×40cm(イアトロビーズ20cm充填)

<方法>
1. 上記のFraction2をエバポレーターで乾固さ た後、10mlのクロロホルム:ヘキサン=1:1に溶 する。
2. 溶解液をカラムにアプライする。
3. クロロホルム:ヘキサン(C:H)=1:1を75ml通液す る。
4. クロロホルム(C)を75ml通液する。
5. C:M=95:5を通液し、2ml/fractionずつ分取する。
6. FractionNo.30まで分取を行い、上記と同様の 件でHPTLCにてASGの溶出を確認する。

<結果>
 FractionNo.10~12周辺にASGのバンドが確認できた 。また、1 fraction当たりの溶出時間は5分であ った。この結果を図10に示す。

[ASGの分析方法]
 ASG含有率の分析は、実施例6と同様に行った 。即ち、表8の分析条件及び表9の移動相及び ラジエント条件を用いて行った。

[分析結果]
 ASGの分析結果は、表11に示す。


 

 本発明の発芽玄米由来ASGは糖尿病性神経障 を予防又は改善する効果を有する。
 したがって、本発明によれば糖尿病性神経 害の予防又は改善剤として利用することが きる。
 そして、発芽玄米は、従来から健康食品と て利用されてきているため、発芽玄米由来A SGは安全性が高く、継続的な摂取も可能であ 、かつ大量に製造することもでき、食品等 の添加が容易であることからも、人又は動 の健康増進や疾病予防などとして貢献でき 可能性が大きい。