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Title:
NITRIC OXIDE SYNTHASE ACTIVATOR
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/129851
Kind Code:
A1
Abstract:
The object is to find a nitric oxide synthase activator, a method for the administration of the activator, and the amount of the activator to be administered. Disclosed is a nitric oxide synthase activator comprising a midkine family protein or a midkine derivative as an active ingredient. Specifically disclosed is a nitric oxide synthase activator which is intended to be administered through the blood, a coronary artery or a vein and which comprises a midkine family protein or a midkine derivative as an active ingredient.

Inventors:
HORIBA MITSURU (JP)
KADOMATSU KENJI (JP)
KODAMA ITSUO (JP)
MURAMATSU TAKASHI (JP)
ISHIGURO HISAAKI (JP)
TAKENAKA HIROHARU (JP)
SUMIDA ARIHIRO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/000815
Publication Date:
October 30, 2008
Filing Date:
March 28, 2008
Export Citation:
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Assignee:
CELL SIGNALS INC (JP)
UNIV NAGOYA NAT UNIV CORP (JP)
HORIBA MITSURU (JP)
KADOMATSU KENJI (JP)
KODAMA ITSUO (JP)
MURAMATSU TAKASHI (JP)
ISHIGURO HISAAKI (JP)
TAKENAKA HIROHARU (JP)
SUMIDA ARIHIRO (JP)
International Classes:
A61K45/00; A61K38/00; A61K38/22; A61P9/10; A61P9/12; C07K14/52
Domestic Patent References:
WO1999016463A11999-04-08
WO2000002578A12000-01-20
WO2007055397A12007-05-18
Foreign References:
JPH0827021A1996-01-30
JP2006188483A2006-07-20
JP2005068122A2005-03-17
Other References:
HORIBA M. ET AL.: "Midkine Plays a Protective Role Against Cardiac Ischemia/Reperfusion Injury Through a Reduction of Apoptotic Reaction", CIRCULATIONS, vol. 114, no. 16, 2006, pages 1713 - 1720, XP003009673
TRAN Q.K. ET AL.: "Midkine Inhibits Bradykinin-Stimulated Ca2+ Signaling and Nitric Oxide Production in Endothelial Cells", BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS, vol. 276, 2000, pages 830 - 836
Attorney, Agent or Firm:
HASEGAWA, Tomoko (Yokohama Yusen Building 2nd Floor3-9, Kaigan-dori, Naka-ku,Yokohama-sh, Kanagawa 02, JP)
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Claims:
 ミッドカインファミリータンパク質若しくはミッドカイン誘導体を有効成分として含有する一酸化窒素合成酵素活性化剤。
 ミッドカインファミリータンパク質若しくはミッドカイン誘導体を有効成分として含有する血管拡張剤。
 虚血又は虚血/再灌流による障害を治療又は予防するための、請求項2に記載の血管拡張剤。
 冠動脈拡張剤である、請求項2又は請求項3に記載の血管拡張剤。
 ミッドカインファミリータンパク質若しくはミッドカイン誘導体を有効成分として含有する血圧低下剤。
 血液中に投与されることを特徴とする、ミッドカインファミリータンパク質若しくはミッドカイン誘導体を有効成分として含有する虚血性疾患又は虚血/再灌流後の筋細胞障害の治療薬又は予防薬。
 静脈内又は冠動脈内に投与されることを特徴とする、ミッドカインファミリータンパク質若しくはミッドカイン誘導体を有効成分として含有する虚血性疾患又は虚血/再灌流後の筋細胞障害の治療薬又は予防薬。
 虚血性疾患又は虚血/再灌流後の筋細胞障害が、虚血性心疾患又は虚血/再灌流後の心筋細胞障害である、請求項6又は請求項7に記載の治療薬又は予防薬。
 50ng/kg~100μg/kgの量で投与されることを特徴とする、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の治療薬又は予防薬。
 
Description:
一酸化窒素合成酵素活性化剤

 本発明は、ミッドカインファミリータン ク質若しくはミッドカイン誘導体を有効成 として含有する一酸化窒素合成酵素活性化 に関する。

 虚血性疾患は動脈硬化、臓器移植、循環 害、外科手術時の止血等により、臓器や組 に供給される血流が著しく停滞することに り生じる疾患である。また、虚血状態の臓 や組織は、血流を再開する(再灌流)ことに り再酸素化に曝されると、炎症反応を惹起 、虚血再灌流障害を引き起こすことが知ら ている。特に、心筋組織は、主に好気性代 に依存しており、その酸素需要は冠動脈か 供給を受けている。心筋組織は、他の組織 比較して酸素消費量が多く、心臓における 動脈血からの酸素摂取率は、安静時におい もほぼ最大の約75%程度といわれている。こ ため、冠循環において心筋酸素需要が増加 た場合には、酸素摂取率の増加により調節 ることが難しく、主に冠血流量の増加によ 調節されている。

 このように、心筋は虚血に対して脆弱で ることから、血管攣縮、血栓、動脈硬化等 より冠動脈が閉塞されると、心筋細胞が障 を受けることが知られている。その結果、 筋は一時的な虚血状態から狭心症の発作を こし、また、長期間にわたる血流障害によ 心筋梗塞を引き起こす。このように心筋の 血に由来して生じる心臓疾患を虚血性心疾 と呼んでいる。

 虚血性心疾患の治療においては、心臓負 を軽減するβ遮断薬や持続性硝酸薬、及び 冠血管拡張作用を有するカルシウム拮抗薬 硝酸薬等の治療薬等による薬物療法が行わ ている。また、死亡率が30%前後にもなる急 心筋梗塞等においては、血栓溶解剤の投与 、経皮的冠動脈形成術(PTCAまたはPOBA)、ロー ブレータ、方向性冠動脈粥腫切除術(direction al coronary atherectomy:DCA)、ステント等の冠動脈 インターベンションによる再灌流療法が有効 であると考えられている(例えば、非特許文 1、非特許文献2、及び、非特許文献3参照)。 かし、これらの治療により虚血状態は改善 れるものの、一時的な虚血状態に陥ったこ による細胞障害等により、虚血状態が改善 た後も心臓の機能が完全に回復しないとい 問題があった。依然として心疾患は世界中 主要な死因となっており、より効果的な治 薬が求められている。

 また、冠動脈インターベンション等の再 流療法により太い冠動脈の狭窄が解除され 後も、再疎通により強い炎症反応やアポト シス等が生じて心筋が障害を受け(再灌流障 害)、又は、致死性不整脈が出現することに り突然死が起き、治療施行後も病院内死亡 は約10%と高いことが知られている。また、 とえ再灌流治療が成功しても広範な心筋障 が残存した場合は重篤な心機能不全により 心不全に陥りやすく、致死性不整脈による 然死の危険性が常に付きまとっている。こ ように、急性期の初期治療による再灌流障 や障害面積拡大の予防は、きわめて重要と えられている。これまで再灌流障害を引き こす原因として、好中球等の炎症性細胞の 性化や血管内皮細胞によるサイトカインや 着分子等の一過性の亢進等が考えられてい が、再灌流障害を予防又は治療するための のターゲットは見出されていなかった。

 一酸化窒素合成酵素(nitric oxide synthase:NOS )は、L-アルギニンを基質として一酸化窒素(NO )を産生する酵素であり、神経型(neuronal NOS:n- NOS)、誘導型(inducibleNOS:i-NOS)、血管内皮型(endot helial NOS:eNOS)が知られている。eNOSにより産生 されたNOは、血管内皮細胞に主に分布してお 、血管平滑筋細胞の可溶性グアニル酸シク ーゼを活性化してcGMPの増加を促すことによ り血管を弛緩させる。虚血性疾患及び虚血再 灌流障害においては、eNOS由来のNOが、血小板 凝集抑制作用、白血球の血管内皮への接着・ 浸潤抑制作用(接着因子発現抑制作用)、NF-κB 性抑制作用、血管平滑筋細胞の増殖抑制作 、スーパーオキシド消去作用等、血管系に する保護作用を有することが報告されてい 。再灌流後は血管内皮細胞が障害を受ける とにより、eNOSを介したNO産生が低下するこ が知られており、虚血(再灌流)時における 適量のNOの供給は、局所の虚血と正常の境界 域の血流維持や、再灌流後の炎症細胞浸潤を 調節して細胞傷害を抑制するため、虚血(再 流)の治療方法として注目されている。

 ミッドカイン(midkine:以下、「MK」という) 、胚性癌細胞のレチノイン酸による分化誘 の過程で一過性に発現する遺伝子の産物と て発見された細胞増殖因子又は細胞分化因 で、塩基性アミノ酸とシステインに富む分 量13kDaのポリペプチドである(例えば、非特 文献4及び非特許文献5参照)。MKのアミノ酸 列は、プレイオトロフィン(PTN)と50%の相同性 を示し、これらはヘパリン結合性のファミリ ータンパク質であると考えられている。本発 明者らはこれまで、MKが上述の虚血性細胞障 及び虚血/再灌流後の心筋細胞障害を予防及 び治療する効果があること(特許文献1参照)、 並びに、MKの虚血性細胞障害及び虚血/再灌流 後の心筋細胞障害の予防及び治療効果の一部 がアポトーシス抑制作用に基づくこと(特許 献2、特許文献3、特許文献4及び非特許文献6 照)を見出した。また、MKのファミリータン ク質であるPTNは血管新生作用を有すること 報告されており、MKは、ファミリータンパ 質であるPTN同様に血管新生作用を有すると えられている(特許文献5参照)。

 これまで本発明者らは、MKのアポトーシ 抑制作用を利用した虚血/再灌流後の心筋細 障害の治療効果を検証する方法として、モ ルマウスに対し浸透圧ポンプを用いてMK投 を行ってきた(特許文献4参照)。しかし、浸 圧ポンプによる投与は薬剤の効果をin vivoで 評価する場合には利用しやすい方法であるが 、実際のヒトの治療においては用いることが できないことから、ヒトの治療又は予防に応 用するための最適な投与方法を確立する必要 があった。

 更に、細胞増殖因子による虚血性心疾患の 療においては、冠動脈内又は静脈内等の血 内への投与では心筋に薬物が届きにくいこ から十分な効果が得られないことが報告さ ていた(非特許文献7及び非特許文献8参照)。 このため、心筋への薬剤の取り込み効率を上 げるため、心筋への直接注射、高圧逆行性冠 静脈投与(非特許文献9参照)、及び、冠動脈内 への急速注入(非特許文献10及び非特許文献11) 等、各種投与方法が工夫され検証されている 。しかし、これらの投与方法は、複雑である ため実用化が困難であり、効果も十分ではな いことから、未だ効率的な投与方法が見出さ れておらず、より簡便で治療効果の高い投与 方法が求められていた。

国際公開第1999/16463号パンフレット

国際公開第2000/02578号パンフレット

特開2005-68122号公報

国際公開第2006/062087号パンフレット

国際公開第1999/053943号パンフレット TheNew England Journal of Medicine (2007); 356: 47-54 J.Am. Coll Cardio. (2000); 36: 2056-63 Am.Heart J. (2004); 148: S29-33 Kadomatsu,K. et al.: (1988) Biochem. Biophys. Re s. Commun., 151:p.1312-1318 Tomokura, M. etal.: (1999) J.Biol. Chem, 265: p .10765-10770 Mitsuru Horiba,et al.: (2006) Circulation, 114:  p.1713-1720 MRoger J. Laham,et al.: (2003) Catheterization a nd Cardiovascular Interventions, 58: p.375-381 Timothy D.Henry, et al.: (2003) Circulation, 107 : p.1359-1365) William F. Fearon,et al.: (2004) Catheterization and Cardiovascular Interventions, 61: p.422-428 Michael Simons,et al.: (2002) Circulation, 105:  p.788-793) John J. Lopez,et al.: (1998) Cardiovascular Rese arch, 40: p.272-281)

 本発明は、eNOS活性化剤、並びに、その投 与方法及び投与量を見出すことを課題とする 。

 本発明者らは、MKを低酸素状態に曝した 管内皮細胞に作用させることにより、eNOSを 性化させる作用があることを見出した。ま 、本発明者らは、MKにより活性化されたeNOS 来のNOにより血管拡張が引き起こされるこ を確認した。更に、本発明者らは、MKを投与 することにより血圧が低下することを確認し た。これらの知見から、本発明者らは、MKが 虚血及び虚血/再灌流における血管拡張や血 流維持に利用できること、及び、虚血/再灌 における障害の予防及び/又は治療に利用で ることを見出し、本発明を完成させた。

 また、本発明者らは、MKを局部的に投与 ることにより、虚血性心疾患及び虚血/再灌 障害が劇的に改善することを見出した。特 、本発明者らは、虚血性心筋細胞障害モデ 動物の冠動脈内にMKを投与した場合におい 、虚血細胞障害領域特異的にMKが集積するこ とを見出し、MKが虚血障害部位への集積能力 有することを見出した。本発明者らは更に 討を進めた結果、驚くべきことにMKの虚血 害部位への集積は、虚血領域への局部的に 与された場合に限らず、虚血領域から離れ 部位において血中に投与された場合にも観 されることを見出した。即ち、本発明者ら 、虚血性細胞障害を誘発したモデル動物の 脈に投与されたMKが、虚血障害部位特異的に 集積することを見出した。特に、本発明者ら は、虚血性心筋細胞障害を誘発したモデル動 物の静脈内にMKを投与すると、心臓の虚血障 部位特異的にMKの集積が認められること、 びに、心臓の非障害部位及び他の臓器にはMK の集積が認められないことを見出し、MKの優 た虚血障害部位への集積能力を見出し、本 明を完成させた。

 本発明は、ミッドカインファミリータンパ 質若しくはミッドカイン誘導体を有効成分 して含有する一酸化窒素合成酵素活性化剤 及び、血液中へ投与されることを特徴とす ミッドカインファミリータンパク質若しく ミッドカイン誘導体を有効成分として含有 る虚血性疾患治療剤に関する。本発明は、 り詳細には、以下の発明に関する。
(1) ミッドカインファミリータンパク質若し はミッドカイン誘導体を有効成分として含 する一酸化窒素合成酵素活性化剤、
(2) 虚血又は虚血/再灌流による細胞障害を治 療又は予防するための、請求項1に記載の一 化窒素合成酵素活性化剤、
(3) 虚血又は虚血/再灌流による細胞障害が、 心筋の虚血又は虚血/再灌流による細胞障害 ある、請求項2に記載の一酸化窒素合成酵素 性化剤、
(4) ミッドカインファミリータンパク質若し はミッドカイン誘導体がミッドカイン又は レイオトロフィンである、(1)~(3)のいずれか 1項に記載の一酸化窒素合成酵素活性化剤、
(5) ミッドカインファミリータンパク質若し はミッドカイン誘導体を有効成分として含 する血管拡張剤、
(6) 虚血又は虚血/再灌流による細胞障害を治 療又は予防するための、(5)に記載の血管拡張 剤、
(7) 冠動脈拡張剤である、(5)又は(6)に記載の 管拡張剤、
(8) ミッドカインファミリータンパク質若し はミッドカイン誘導体がミッドカイン又は レイオトロフィンである、(5)~(7)のいずれか 1項に記載の血管拡張剤、
(9) ミッドカインファミリータンパク質若し はミッドカイン誘導体を有効成分として含 する血圧低下剤。
(10) 虚血又は虚血/再灌流による細胞障害を 療又は予防するための、請求項8に記載の血 低下剤、
(11) ミッドカインファミリータンパク質若し くはミッドカイン誘導体がミッドカイン又は プレイオトロフィンである、(9)又は(10)に記 の血管拡張剤、
(12) 一酸化窒素合成酵素を活性化することを 特徴とする、ミッドカインファミリータンパ ク質若しくはミッドカイン誘導体を有効成分 として含有する、虚血性疾患又は虚血/再灌 障害の治療薬又は予防薬、
(13) 虚血性疾患又は虚血/再灌流障害が、虚 性心疾患又は心筋虚血/再灌流障害である、( 12)に記載の治療薬又は予防薬、
(14) 虚血性疾患又は虚血/再灌流障害が、心 全、心筋梗塞、又は、狭心症である、(12)に 載の治療薬又は予防薬、
(15) 血液中に投与されることを特徴とする、 (12)~(14)のいずれか1項に記載の治療薬又は予 薬、
(16) 静脈内又は冠動脈内に投与されることを 特徴とする、(12)~(14)のいずれか1項に記載の 療薬又は予防薬、
(17) ミッドカインファミリータンパク質若し くはミッドカイン誘導体がミッドカイン又は プレイオトロフィンである、(12)~(16)のいずれ か1項に記載の治療薬又は予防薬、
(18) 血液中に投与されることを特徴とする、 ミッドカインファミリータンパク質若しくは ミッドカイン誘導体を有効成分として含有す る虚血性疾患又は虚血/再灌流後の細胞障害 治療薬又は予防薬、
(19) 静脈内又は冠動脈内に投与されることを 特徴とする、ミッドカインファミリータンパ ク質若しくはミッドカイン誘導体を有効成分 として含有する虚血性疾患又は虚血/再灌流 の細胞障害の治療薬又は予防薬、
(20) 虚血性疾患又は虚血/再灌流後の筋細胞 害が、虚血性心疾患又は虚血/再灌流後の心 細胞障害である、(18)又は(19)に記載の治療 又は予防薬、
(21)ミッドカインファミリータンパク質若し はミッドカイン誘導体がミッドカイン又は レイオトロフィンである、(18)~(19)のいずれ 1項に記載の治療薬又は予防薬、及び、
(22) 50ng/kg~100μg/kgの量で投与されることを特 とする、(1)~(21)のいずれか1項に記載の治療 又は予防薬。

 本発明において、「ミッドカインファミ ータンパク質」とは、MK、又は、MKの機能を 発現している部位の配列が近似しておりかつ MKの機能と類似した機能を有するタンパク質 はペプチドのことである。進化的に近いタ パク質同士であっても必ずしもアミノ酸配 全体のホモロジー高いとは限らないことか 、アミノ酸配列のホモロジーが低いタンパ 質であっても、MKの機能と類似した機能を するタンパク質は、MKファミリータンパク質 に含まれる。また、アミノ酸配列全体の長さ がMKと異なるタンパク質又はペプチドも、MK ァミリータンパク質に含まれる。MKファミリ ータンパク質としては、例えば、MK、MK様タ パク質(国際公開2004/052928号公報参照)、及び PTN(MKとのホモロジー50%)を挙げることができ る。また、MKファミリータンパク質としては MKとのホモロジーが高くかつMKの1以上の機 を有するタンパク質又はペプチド、及び、MK とストリンジェントな条件でハイブリダイズ しかつMKの1以上の機能を有するタンパク質又 はペプチドを挙げることができる。

 上記において、「MKとのホモロジーが高い とは、MKと構造上近いことを意味する。ここ で、構造とは、一次構造(アミノ酸配列)、二 構造、又は、三次構造のことである。MKと 次構造(アミノ酸配列)のホモロジーが高くか つMKの1以上の機能を有するタンパク質又はペ プチドとして、好ましくは、MKとのアミノ酸 列のホモロジーが、20%以上であり、より好 しくは30%以上であり、更に好ましくは40%以 であり、より更に好ましくは50%以上であり より更に好ましくは60%以上、70%以上、80%以 、90%以上、95%以上、又は、98%以上である。 ミノ酸配列のホモロジーは、例えば、BLAST FASTA等の公知のプログラムを用いて決定する ことができる。また、MKの立体構造は既に報 されている(Iwasaki, W. et
al.: (1997) EMBO J. 16, p.6936-6946)ことから、二 構造又は三次構造におけるMKとのホモロジ は、PSI-BLAST、HMMER、3D-1D、スレッディング等 ホモロジーモデリングを利用することによ 決定することができる。MKと二次構造又は 次構造のホモロジーが高くかつMKの1以上の 能を有するタンパク質又はペプチドの配列 似率は、好ましくは40%以上であり、より好 しくは50%以上であり、より更に好ましくは 60%以上、70%以上、80%以上、又は、90%以上で る。

 また、上記において、「MKとハイブリダイ する」とは、当業者に通常用いられるハイ リダイゼーション条件でMKとハイブリダイズ することを意味する。例えば、Molecular Cloning ,ALaboratory
Mannual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Pr ess(1989)記載の方法を挙げることができる。

 本発明において、「ミッドカイン誘導体 とは、人工的に又は天然により生じたMK由 の物質であって、MKの機能を示す物質又は生 体内において分解されてMKの機能を示す物質 ことであり、例えば、MKのアミノ酸配列を 換、欠失若しくは付加したMKの変異体若しく は改変体、MKを化学的に修飾したMKの誘導体 又は、MKのプロドラッグを挙げることができ る。このうち、MKのアミノ酸配列を置換、欠 若しくは付加したMKの変異体若しくは改変 において、置換、欠失若しくは付加するア ノ酸の数は、好ましくは、1~30個、より好ま くは、1~20個、更に好ましくは、1~10個、よ 更に好ましくは1~5個、最も好ましくは1~3個 ある。このようなMK誘導体としては、例えば 、糖修飾MK(例えば、日本特許公開2000-184891号 報参照)、非糖修飾MK、MKの数個のアミノ酸 列を置換、欠失若しくは付加したMKの変異体 若しくは改変体、化学修飾MK、短縮型MK(米国 許公開2004/0219614号公報参照)、MKのC-フラグ ント(MKの62~121番目のアミノ酸よりなるC末端 のペプチド)、MKのN-フラグメント(MKの1~52番 のアミノ酸よりなるN末端側のペプチド)、MK のC-ドメイン(MKの62~104番目のアミノ酸からな ペプチド)、及び、MKのN-ドメイン(MKの15~52番 目のアミノ酸からなるペプチド)、MKのN-テイ (MKの1~14番目のアミノ酸からなるペプチド) MKのC-テイル(MKの105~121番目のアミノ酸からな るペプチド)を挙げることができる。

 上記において、「MKの機能」とは、ミッ カインが有する機能であれば特に限定は無 、例えば、細胞増殖機能、アポトーシス抑 機能、ヘパリン結合能、細胞遊走能、分化 導能、又は、eNOS活性化機能を挙げることが きる。MKの機能として、好ましくは、アポ ーシス抑制機能又はeNOS活性化機能であり、 り好ましくは、eNOS活性化能である。

 本発明において、「一酸化窒素合成酵素 性化剤」とは、NOSを活性化させる目的で使 する薬剤であれば特に限定はない。本発明 おける、「一酸化窒素合成酵素活性化剤」 して、好ましくは、血管内皮型一酸化窒素 成酵素(eNOS)活性化剤である。また、本発明 一酸化窒素合成酵素活性化剤は、明示され いるか否かを問わずNOSを活性化させる目的 使用するものであれば、全て包含するもの ある。例えば、本発明の一酸化窒素合成酵 活性化剤は、活性化された一酸化窒素合成 素により産生されるNOの作用を利用する薬 を包含する。このような薬剤としては、例 ば、血小板凝集抑制剤、接着因子発現抑制 、NF-κB活性抑制剤、血管平滑筋細胞の増殖 制剤、スーパーオキシド消去剤、血管保護 、血管拡張剤、虚血若しくは虚血/再灌流に る細胞障害、及び、虚血性疾患を挙げるこ ができ、好ましくは、血管拡張剤、心筋の 血若しくは虚血/再灌流による細胞障害、又 は、虚血性心疾患である。

 本発明において、「虚血又は虚血/再灌流 による細胞障害」とは、動脈硬化、血管攣縮 、血栓、臓器移植、循環障害、外科手術時の 止血等により血流が滞ることにより、血管内 皮細胞や臓器を構成する細胞が受ける障害の ことであり、例えば、細胞膜損傷、ミトコン ドリア浮腫、細胞浮腫、細胞壊死、アポトー シス等を挙げることができる。また、虚血/ 灌流による細胞障害は、虚血領域に限らず 隔臓器にも障害を与えることが知られてい が、本発明における、虚血/再灌流による細 障害は、虚血を生じた臓器に限定されるも ではない。

 本発明において、「心筋の虚血又は虚血/ 再灌流による細胞障害」とは、虚血又は虚血 /再灌流による細胞障害であって、冠動脈が 脈硬化、血管攣縮、血栓、臓器移植、循環 害、外科手術時の止血等により閉塞若しく 遮断されることで心筋が虚血状態に陥るこ 、又は、虚血に陥った心筋の血流が回復す ことにより引き起こされる細胞障害である 本発明における、「心筋の虚血/再灌流によ 細胞障害」は、心筋の虚血/再灌流を原因と して引き起こされる細胞障害であれば、心筋 における細胞障害に限定されず、全身の細胞 障害をも包含するものである。

 本発明において、「虚血性疾患」とは、 管が血管攣縮、血栓、動脈硬化等により閉 又は遮断されることにより虚血を生じる疾 のことであり、虚血を生じる臓器としては 例えば、脳、心臓、末梢、脊髄、腎臓、肝 、及び、腸管(大腸)等を挙げることができ 。虚血性疾患としては、例えば、脳梗塞、 卒中等の虚血性脳疾患、心筋梗塞等の虚血 心疾患、閉塞性動脈硬化症、虚血後急性腎 全、肝温虚血再灌流障害、虚血性腸疾患、 び、虚血性大腸炎等を挙げることができ、 ましくは、虚血性心疾患である。

 本発明において、「虚血性心疾患」とは 血管攣縮、血栓、動脈硬化等により冠動脈 虚血を生じる疾患のことであり、例えば、 心症(不安定狭心症、安定狭心症、冠攣縮性 狭心症)、心筋梗塞(ST上昇型心筋梗塞、非ST上 昇型心筋梗塞)、無症候性心筋虚血、虚血性 筋症、及び、虚血性心不全を挙げることが きる。また、虚血状態の解除による再灌流 に生じる血管再狭窄も、冠動脈の虚血を生 る疾患であり、本発明の虚血性心疾患に含 れる。更に、本発明の虚血性心疾患とは、 動脈の高度狭窄又は閉塞による高度虚血時 不可逆性心筋障害及び当該障害に起因する 患を含む。

 本発明において、「心筋虚血/再灌流障害 」とは、心臓が一過性の虚血状態を経た後に 血流が再開した場合に生じる障害のことであ る。虚血の原因としては、例えば、心臓外科 手術における大動脈遮断、狭心症、心筋梗塞 、心移植時のドナー心の保存等による一過性 の心筋虚血を挙げることができる。また、障 害としては、例えば、細胞膜損傷、ミトコン ドリア浮腫、細胞浮腫、細胞壊死、アポトー シス、心筋細胞死、心筋収縮能低下、不整脈 、no-reflow現象、心不全を挙げることができる 。

 本発明において、「血中に投与される」 は、本発明の治療薬又は予防薬が血液中に 与されることを目的とした薬剤であること 意味する。血液中への投与方法は、血液中 の投与が可能な方法であれば、特に限定は く、例えば、注射、翼状針又は留置針によ 点滴、カテーテル等により投与することが きる。また、投与される部位は静脈でも動 でもよく、このような静脈又は動脈として 、冠動脈、腕静脈等の末梢静脈、上大静脈 は下大静脈等の中心静脈を挙げることがで る。

 本発明のMKファミリータンパク質若しく MK誘導体を有効成分として含有する一酸化窒 素合成酵素活性化剤は、NOS(特にeNOS)を活性化 する作用があることから、NOの産生により改 する疾患及び症状(特に、虚血性疾患)の治 又は予防に有用である。特に、本発明のミ ドカインファミリータンパク質若しくはミ ドカイン誘導体を有効成分として含有する 酸化窒素合成酵素活性化剤は、血中に投与 れた場合には、虚血障害部位に集積するこ から、NOに起因する偏頭痛等の副作用が少な い治療薬又は予防薬として有用である。

バルーンカテーテルによる冠動脈の閉 部位を表す写真である。 心臓超音波検査の結果を示す写真であ 。 左室造影の結果を表す写真である。赤 線で示された部分は拡張期左心室を示し、 い線で示された部分は収縮期左心室を示す 開胸時の心臓の状態を写した写真を示 。白い部分は細胞障害部位を示す。 左心室切片のエバンスブルー及びTTC染 の結果を示す。エバンスブルー染色による い染色領域は正常領域を示し、TTC染色によ 赤い染色領域は虚血領域にありながらも梗 ・壊死には陥っていない部分を示す。 梗塞領域/虚血リスク領域(IS/AAR)の割合 表すグラフを示す。図中、縦軸は梗塞領域/ 虚血リスク領域を表す。横軸においてPREは閉 塞前、24HRは閉塞解除24時間後を表す。 左室駆出率(LVG EF)を表すグラフを示す 図中、縦軸は左室駆出率を表す。横軸にお てPREは閉塞前、POSTは閉塞直後、24HRは閉塞 除24時間後を表す。 異常収縮領域率(%ACS)を表すグラフを示 。図中、縦軸は異常収縮領域率を表す。横 においてPREは閉塞前、POSTは閉塞直後、24HR 閉塞解除24時間後を表す。 左室拡張末期圧(LVEDp)を表すグラフを示 す。図中、縦軸は左室拡張末期圧を表す。横 軸においてPREは閉塞前、POSTは閉塞直後、24HR 閉塞解除24時間後を表す。 収縮期中隔壁厚増加率(%IVST)を表すグ フを示す。図中、縦軸は収縮期中隔壁厚増 率を表す。横軸においてPREは閉塞前、POSTは 塞直後、24HRは閉塞解除24時間後を表す。 圧微分最大値(dP/dT max、peak dP/dT)を表 グラフを示す。図中、縦軸は圧微分最大値 表す。横軸においてPREは閉塞前、POSTは閉塞 直後、24HRは閉塞解除24時間後を表す。 超音波検査の結果から算出したE/e’を 表すグラフを示す。図中、縦軸は算出したE/e ’を表す。横軸においてPREは閉塞前、POSTは 塞直後、24HRは閉塞解除24時間後を表す。 血液中のトロポニンTの濃度を表すグ フを示す。図中、縦軸はトロポニンTの血中 度を表す。横軸においてPREは閉塞前、POSTは 閉塞直後、24HRは閉塞解除24時間後を表す。 閉塞解除24時間後のブタ心臓虚血領域 片の写真である。左上は蛍光標識MKの発色( 色)を示し、右上は同視野の心筋組織を示す 。左下はそれらを重ね合わせた画像である。 虚血領域心筋にて冠動脈注射した蛍光標識MK 強い発色が認められる。 同じブタ心臓の非虚血領域の写真であ る。左上は蛍光標識MKの発色を示し、右上は 視野の心筋組織を示す。左下はそれらを重 合わせた画像である。非虚血領域において 蛍光標識MKの発色がほとんど認められない 閉塞解除24時間後のマウス心臓切片の 光標識MKを検出した写真である。 閉塞解除24時間後のマウス肝臓(左)及 腎臓(右)切片の蛍光標識MKを検出した写真で る。 低酸素/再酸素化したHUVECをウェスタン ブロット解析した際のeNOS及びリン酸化eNOS(peN OS)のバンドを示す。 低酸素/再酸素化したHUVECをウェスタン ブロット解析した際のeNOS及びリン酸化eNOS(peN OS)のバンドを示す。 MK投与前及び投与後のブタ冠動脈造影 真を示す。PREはMK投与前、POSTはMK投与後の 真を表す。 MK投与による血圧変化のグラフである 縦軸は血圧、横軸は時間を表す。Low doseは5 μg/kg投与を、Middle doseは50μg/kg投与を、High d oseは500μg/kg投与の時間帯を表す。

 本発明における、MKファミリータンパク 若しくはMK誘導体は、当該物質をコードする cDNAを含む発現ベクターを大腸菌、酵母、昆 細胞、動物細胞等に導入し、発現させるこ により得ることができる。例えば、細胞増 因子又はアポトーシス抑制因子としてMKを用 いる場合、MKをコードするDNAを発現ベクター 組み込み、当該ベクターをピキア酵母に導 して発現させ、その培養上清から採取する とにより、組み換えMKとして調製すること できる(特開平9-95454号公報参照)。

 本発明の薬剤を医薬として使用する場合 単独で投与しても良いし、他の薬剤と共に 与してもよい。本発明の薬剤と共に使用す ことができる他の薬剤としては、本発明の 療薬又は予防薬の効果を失わせることの無 薬剤であれば特に限定は無く、好ましくは 心疾患の治療薬若しくは予防薬又は血栓の 成を阻害する治療薬又は予防薬であり、例 ば、β遮断薬、持続性硝酸薬、カルシウム 抗薬、硝酸薬、ウロキナーゼ、ストレプト ナーゼ、組織プラスミノゲン活性化因子(t-PA )等を挙げることができる。

 本発明の薬剤の製剤は、患者に投与する とができる製剤であれば特に限定は無く、 ましくは、注射剤である。本発明の薬剤の 形は、例えば、液剤又は凍結乾燥製剤を挙 ることができる。本発明の薬剤を注射剤と て使用する場合、必要に応じて、プロピレ グリコール、エチレンジアミン等の溶解補 剤、リン酸塩等の緩衝材、塩化ナトリウム グリセリン等の等張化剤、亜硫酸塩等の安 剤、フェノール等の保存剤、リドカイン等 無痛化剤等の添加物(「医薬品添加物事典」 薬事日報社、「Handbook of Pharmaceutical Excipient s Fifth Edition」APhA Publications社参照)を加える ことができる。また、本発明の治療薬又は予 防薬を注射剤として使用する場合、保存容器 としては、アンプル、バイアル、プレフィル ドシリンジ、ペン型注射器用カートリッジ、 及び、点滴用バッグ等を挙げることができる 。

 本発明の薬剤の投与方法は、所望の治療 果又は予防効果が得られる方法であれば特 限定はなく、好ましくは、血中又は心筋に 与する。具体的には、血管内(例えば、静脈 内、冠動脈内)又は虚血領域の心筋に投与す ことができる。本発明の薬剤の投与方法と ては、注射又は静脈点滴注射による静脈内 与、カテーテルによる静脈内又は動脈内投 、及び、カテーテル筋肉注射による心筋内 与を挙げることができる。本発明の薬剤は 再灌流術前、再灌流術前から術後にかけて 又は、再灌流術後に投与することができる 本発明の薬剤を予防薬として使用する場合 は、再灌流術前、又は、再灌流術前から術 にかけて投与することが好ましい。また、 発明の薬剤は、一時的に投与してもよいし 持続的又は断続的に投与してもよい。例え 、本発明の薬剤の投与は、1分間~2週間の持 投与することもできる。本発明の薬剤の投 方法として、好ましくは、再灌流術前から 後にかけて5分間~1時間の持続投与、又は、 灌流術後に5分間~1時間の持続投与であり、 り好ましくは、再灌流術前から術後にかけ 5分間~15分間の持続投与、又は、再灌流術後 5分間~15分間の持続投与である。

 本発明の薬剤の投与量は、所望の治療効 又は予防効果が得られる投与量であれば特 限定は無く、症状、性別、年齢等により適 決定することができる。本発明の治療薬又 予防薬の投与量は、例えば、虚血性疾患又 虚血/再灌流障害の治療効果又は予防効果を 指標として決定することができる。本発明の 治療薬又は予防薬の投与量として、好ましく は、1ng/kg~10mg/kgであり、より好ましくは、10ng /kg~1mg/kgであり、更に好ましくは、50ng/kg~500μg /kgであり、より更に好ましくは、50ng/kg~100μg/ kgであり、より更に好ましくは、50ng/kg~50μg/kg であり、最も好ましくは、50ng/kg~5μg/kgである 。

 実施例1.MKの冠動脈内投与による虚血/再灌 後の心筋細胞障害治療効果(閉塞前後に亘る 与)
(1)MKの調製
 ヒトMKmRNAを、ウイルムス腫瘍由来の培養株 胞G-401より調製した(Tsutsui, J. ら、Biochem. B iophys. Res. Commun.
176, 792-797, 1991)。プライマーとして、制限酵 素EcoRIに認識される配列(5'-GAATTC-3')を含むよ に設計した、センスPCRプライマー:5'-GCGGAATTCA TGCAGCACCGAGGCTTCCTC-3'、及び、アンチセンスPCRプ イマー:5'-GCGGAATTCCTAGTCCTTTCCCTTCCCTTT-3'を用い、 ヒトMKmRNAを鋳型として、93℃→37℃→72℃の温 度変化を1サイクルとする30サイクルのPCRを行 い、MKコーディング領域の両端にEcoRI認識部 をもつヒトMKcDNAを調製した。

 MKcDNA及び酵母ピキア・パトリスGS115(Pichia pastoris GS115、以下、「ピキア酵母GS115」とい う)用発現ベクターpHIL301(ヒスチジン及びネオ マイシン耐性遺伝子含有、特開平2-104292号、 州特許公開0339568号公報参照)を、制限酵素Ec oRIで消化した後、ライゲーションキット(タ ラバイオ社製)を用いて結合させ、組み換え 現ベクターを作製した。

 エレクトロポレーション法を用いて、上 で調製した組み換え発現ベクターをピキア 母GS115(インビトロジェン社製)へ導入した。 ベクターを導入したピキア酵母GS115を、ヒス ジンを含まない、G418含有培地で培養するこ とにより、目的のMK遺伝子を持つ複数のクロ ンを得た。得られた当該クローンを、メタ ールで誘導しながら培養を行った。培養上 を採取し、ウサギ抗マウスMKポリクローナ 抗体を使用したウェスタンブロット解析を うことにより、当該クローンがMKを分泌する かどうか確認した。

 誘導により、当該クローンの培養上清中 MKを分泌するクローンの1つをT3L-50-4Pと名付 、このクローンを培養した(特開平7-39889号 報参照)。培養上清を回収し、イオン交換ク マトグラフィー、ヘパリンカラムを使用し アフィニティクロマトグラフィーによって 製し、高純度MKを得た。

(2)虚血モデル動物の作成及びMKの投与
 食肉用ブタ(オス、約40kg)に気管内挿管後、 ソフルラン(Isoflurane)を吸入させて麻酔管理 た。心臓超音波(心エコー)にてMモード画像 記録後、Pig tailカテーテルを左室内に留置 て左室拡張末期圧(Left ventricular end diastolic  pressure:LVEDp)測定を行った。更に、冠動脈造 、左室造影(Left Ventriculo Graphy:LVG)、左室内 測定後、PTCA用バルーンカテーテルにて左冠 動脈D1-D2間を45分間閉塞した(図1)。閉塞40分後 にPTCAワイヤー用内腔を通じて冠動脈内へのMK (50ng/kg、5μg/kg)投与を開始し、閉塞解除5分後 で10分間持続投与を行った。対象群は同量 生理食塩水を同様に連続投与した。投与終 後、心エコー検査を行った。また、Pig tail テーテルによりLVEDp測定を行った。更に、冠 動脈造影、LVG、左室内圧測定を行った。更に 、血液検査を2時間おきに行った。

 翌日、再び、気管内挿管後、イソフルラ を吸入させて麻酔管理した。心エコーにてM モード画像を記録後、Pig tailカテーテルによ りLVEDp測定を行った。更に、冠動脈造影、LVG 左室内圧測定、血液検査を行った。その後 開胸手術を行い、写真を撮影後、塩化カリ ムにて心停止させ、心臓を摘出した。摘出 た心臓の冠動脈閉塞部を結紮後、大動脈弓 隙部から5%エバンスブルーを逆行性に5ml注 することにより、非虚血部を染色した。そ 後左心室を5つの薄片にスライスし、左心室 虚血性リスク領域を、トリフェニルテトラ リウムクロライド(TTC)を用いて染色した。

(3)結果
 5μg/kg投与の結果を図2~図13に示す。なお、 下の結果において、対象群と比較してp<0.0 5である場合に有意差があると判定した。ま 、50ng/kg投与においても、症状の悪化を防ぐ 果が得られた(非図示)。

 心臓超音波検査の結果を図2に示す。心臓 超音波検査において、MK治療群は非治療群と 較して有意な心機能の改善を認めた。また 左室造影の結果を図3に示す。左室造影にお いても、MK治療群は非治療群と比較し、心室 運動が良好であった。更に、左室拡張末期 、収縮期最大圧増加率、心拍出量等におい 、MK治療群は非治療群よりも有意な治療効 を示した。このことから、MKの血中投与は虚 血及び再灌流による心筋細胞障害による心機 能低下を抑制していることが示された。

 開胸時の心臓の写真を図4に示す。図中、 白い部分は細胞障害部位を示す。対象群にお いては、虚血領域全体にわたって白い細胞障 害部位が認められるのに対し、MK投与群にお ては、霜降り状に正常心筋の残存が認めら た。このことから、MKの血中投与は虚血及 再灌流による心筋細胞障害を抑制している とが示された。

 左心室虚血性リスク領域の、エバンスブ ー染色及びTTC染色の結果を図5に示す。図5 おいて、エバンスブルーによる青い染色領 は正常領域を示し、それ以外の領域は虚血 スク領域を示す。虚血リスク領域のうち、TT C染色により赤く染まらない白い領域は梗塞 域(細胞障害領域)を示す。図5より、対象群 おいて白い梗塞領域が非常に大きな比率を めているのと比較して、MK投与群においては 、白い梗塞領域が少ないことから、病理標本 において、心筋障害面積がMK治療群にて有意 縮小されている事を確認した。

 また、虚血リスク領域に対する梗塞領域 割合(梗塞領域(Infarct Size)/虚血リスク領域(A rea At Risk):IS/AAR)を図6に示す。図6に示すとお り、冠動脈閉塞解除から約24時間後において MK投与群のIS/AARは対象群と比較して有意に 善していた。このことから、MKの血中投与に より、虚血による細胞障害が有意に抑制され ることが示された。

 左室造影及び一回拍出量(SV)の結果から左 室駆出率(一回拍出量/拡張終期容量の比率)(Ej ection fraction:EF)、及び、異常収縮領域率(percen tage of abnormally contracting segment:%ACS)を計算し たものを、それぞれ図7及び図8に示す。これ の図に示すとおり、冠動脈閉塞解除から約2 4時間後において、MK投与群のEF及び%ACSは対象 群と比較して有意に改善していた。

 Pig tailカテーテルによる、左室拡張末期 (Left ventricular end diastolic pressure:LVEDp)測定 結果を図9に示す。図9に示すとおり、MK投与 群は対象群と比較して有意に左室拡張末期圧 が低下していた。

 また、超音波検査により収縮期中隔壁厚 加率(percentage of interventricular septum thicking: %IVST)を測定した結果を図10に示す。図10に示 とおり、MK投与群は対象群と比較して有意に 収縮期壁厚増大率が回復していた。

 更に、左室収縮速度を表す圧微分(dP/dT)の 最大値(dP/dT max又はpeak dP/dT)を計算したもの 図11に示す。図11に示すとおり、MK投与群は 象群と比較して、有意にdP/dTの低下が抑制 れていた。

 左室の拡張能を評価するため、心臓超音 検査において組織ドプラ法により僧帽弁輪 移動速度を測定し、計測したE波及びe’波 波高値から、E/e’の値を算出した。結果を 12に示す。左室流入血流速波形のE波は心不 が進むと大きくなり、E/e’の増大は、左室 張末期圧の上昇した心不全と診断できると ろ、図11に示すとおり、MK投与群は対象群と 較して有意に左室拡張末期圧の上昇が抑制 れていた。

 血液検査において測定したトロポニンTの 濃度を図13に示す。トロポニンTは、心筋に含 まれる収縮調節タンパク質のひとつであり、 心筋が障害を受けると細胞質から血中に遊出 して血液検査により検出される。本実験の結 果、図13に示すとおり、狭窄から24時間後に いて、MK治療群のトロポニンT値は有意に低 を示した。

 また、実験中のブタの生存率は、対象群 生存率55.6%(9匹中4匹が死亡)であるのに対し MK投与群では生存率85.7%(7匹中1匹が死亡)で り、生存率においても、MK投与群が優れてい ることが示された。

 実施例2.MKの冠動脈内投与による虚血/再灌 後の心筋細胞障害治療効果(閉塞後投与)
(1)MKの作成、虚血モデル動物の作成及びMKの 与
 ヒトMKは、実施例1と同様の方法により調製 た。実施例1に従い作成したモデル動物に、 5μg/kgのMK又は生食を閉塞解放5分後から10分間 の持続投与し、その他は実施例1と同様の方 により実験を行った。

(2)結果
 閉塞中からの投与開始と閉塞解放後からの 与開始ではMK投与群、生食投与群ともその 果において著明な差は認めず、閉塞解放後 投与によってもMKの細胞障害治療効果が得ら れることが示された(非図示)。

 実施例3.MKの冠動脈内投与による集積部位の 検出
(1)蛍光標識MKの調製及び投与
 ヒトMKは、実施例1と同様の方法により調製 た。調製後のMKに蛍光色素ローダミンを結 させて蛍光標識MKを調製した。蛍光標識MKを 5μg/kgとなるように、実施例1と同様の方法 食肉用ブタ(オス、約40kg)に投与した。投与 ら24時間後、心臓を取り出し、心筋組織を蛍 光顕微鏡により観察して蛍光標識MKの集積を 出した。

(2)結果
 結果を、図14及び図15に示す。図14に示すと りブタ心臓の障害心筋部位に蛍光標識MKの 積を認めるのに対し、図15に示すとおりブタ 心臓の正常部位では蛍光標識MKの集積は認め れなかった。このことから、心臓障害時に 動脈投与したMKは、心筋の障害部分に特異 に集積することが示された。

 実施例4.MKの静脈内投与による集積部位の検 出
(1)蛍光標識MKの調製及び投与
 ヒトMKは、実施例1と同様の方法により調製 た。調製後のMKに蛍光色素ローダミンを結 させて蛍光標識MKを調製した。C57BL/6の遺伝 景を持つマウスにペントバルビタール(100mg/k g)を腹腔内投与して麻酔をかけ、人工呼吸用 置(モデルSN-480-7)で維持した。開胸手術の後 、左前降下冠状動脈(LAD)をPE-10チューブで結 した。結紮1時間後に結紮を取り除いて血流 回復させ、モデル動物とした。血流回復後 ぐに蛍光標識MKを静脈内投与し、投与から24 時間後、臓器を取り出して蛍光顕微鏡で各組 織の蛍光標識MKの集積を検出した。

(2)結果
 結果を図16及び図17に示す。図16に示すとお 、心臓の障害心筋部位に蛍光標識MKの集積 認められる一方、心臓の正常部位では蛍光 識MKの集積は認められなかった。また、図17 示すとおり、肝臓や腎臓等の心臓以外の臓 においても蛍光標識MKの集積は認められな った。このことから、MKを静脈内投与した場 合にも心臓の障害心筋部位特異的にMKが集積 ることが示され、静脈内投与によっても心 細胞障害を予防又は治療できることが示さ た。

 実施例5.ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の低酸 /再酸素化モデルにおけるMKのeNOS活性化能の 測定
(1)HUVECの低酸素/再酸素化及びMKの投与
 タカラバイオ株式会社から入手したHUVEC(HUVE C
Pooled Cambrex CCS 2519)を、6.0×10 5 細胞/ウェルで、35×10mm ディッシュ(BD
Falcon 351008 )に播種した。EBM-2(Cambrex社)の完 培地を2.5ml加え、20%O 2 、5%CO 2 、37℃の条件下で4時間培養した。その後、EBM -2培地を成長因子非含有培地に交換し、、20%O 2 、5%CO 2 、37℃の条件下で9時間培養後、95%N 2 、5%CO 2 、37℃の低酸素条件下で3時間培養した。その 後、MK投与群においては、実施例1と同様の方 法により調整したMKをEBM-2倍地で100ng/mlに希釈 した後、2.5ml/ウェル加え、対象群においては 、(コントロールで投与した物質)を2.5ml/ウェ 加えた後、再び20%O 2 、5%CO 2 、37℃の条件下で3時間培養した。培養終了後 の細胞を回収してホモジナイズした後、イム ノブロッティングを行うことにより、細胞内 のeNOS及びリン酸化されたeNOS(1177番目のセリ のリン酸化)のバンドを調べた。

(2)結果
 結果を図18及び図19に示す。これらの図に示 すとおり、本実験では、対象群と比較してMK 与群において、顕著なeNOSのリン酸化が見ら れた。本実験で用いた低酸素条件は虚血状態 の実験的なモデルであることから、本実験の 結果により、虚血状態においてMKがeNOSのリン 酸化を引き起こすことが示された。また、eNO Sのリン酸化は、血管拡張を引き起こすこと 知られていることから、MKは虚血性疾患にお いてeNOSをリン酸化することにより細胞保護 用を発揮すると考えられる。

 実施例6.ブタ冠動脈拡張試験
 (1)ブタ冠動脈測定
 ブタ冠動脈造影後、冠動脈内にMK(5μg/kg)を 施例1と同様、PTCAワイヤー用内腔を通じて10 間持続投与した。投与後に再度冠動脈造影 行いMK投与前、投与後のブタ冠動脈の状態 比較検討した。
 (2)結果
 結果を図20に示す。PREはMKの冠動脈内注入前 の冠動脈造影を、POSTはMKの冠動脈内注入後の 冠動脈造影を示す。これらの冠動脈造影の結 果から、MK投与後に血管造影上、肉眼的に明 かな冠動脈と毛細血管の拡張が認められた

 実施例7.ラット血圧試験
 (1)MK投与及び血圧測定方法
 ラット(Wister、SLC社)に気管内挿管後、人工 吸管理下で開胸した。心臓を露出後、心尖 より心内圧測定カテーテル(Millar社)を挿入し た。下大静脈に点滴ルートを確保した後、MK( 5μg/kg、50μg/kg、500μg/kg)を持続注射してミラ カテーテルにより血圧の変動をリアルタイ で測定した。
 (2)結果
 結果を図21に示す。本実験によって、ラッ の静脈内へMKを500μg/kg投与することにより血 圧が低下することが確認された。

 本発明の治療薬又は予防薬は、虚血性心 患又は虚血/再灌流後の心筋細胞障害を予防 又は治療するための薬剤として有用である。