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Title:
ORGANIC-INORGANIC COMPLEX DISPERSION, CELL CULTURE SUBSTRATUM MANUFACTURED BY USING THE DISPERSION, AND MANUFACTURING METHODS FOR SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/150931
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed are: an organic-inorganic complex dispersion improved in film formability and adhesion to a base material.  The organic-inorganic complex dispersion comprises an aqueous medium and particles of a complex dispersed in the aqueous medium, wherein the complex has a three-dimensional network structure formed by a polymer of a monomer comprising a monomer represented by general formula (1) and at least one inorganic material selected from a water-swellable clay mineral and silica.  Also disclosed is an antifogging material manufactured by using the organic-inorganic complex dispersion.  Further disclosed is a cell culture substratum improved in the detachability of cells cultured on the substratum, which is manufactured by using the organic-inorganic complex dispersion.  Still further disclosed are manufacturing methods for same. [In the formula, R1 represents a hydrogen atom or a methyl group; R2 represents an alkylene group having 2 to 3 carbon atoms; R3 represents a hydrogen atom or an alkyl group having 1 to 2 carbon atoms; and n represents a number of 1 to 9.]

Inventors:
TAKADA TETSUO (JP)
HARAGUCHI KAZUTOSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/059507
Publication Date:
December 17, 2009
Filing Date:
May 25, 2009
Export Citation:
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Assignee:
KAWAMURA INST CHEM RES (JP)
TAKADA TETSUO (JP)
HARAGUCHI KAZUTOSHI (JP)
International Classes:
C08L33/14; C08F2/44; C08K3/34; C12M1/00
Domestic Patent References:
WO2006064810A12006-06-22
Foreign References:
JP2000212288A2000-08-02
JP2004509984A2004-04-02
JP2002053762A2002-02-19
JP2004143212A2004-05-20
JP2005232402A2005-09-02
JP2006169314A2006-06-29
JPH02211865A1990-08-23
JPH05192138A1993-08-03
JPH05192130A1993-08-03
JP2006288251A2006-10-26
JP2008237088A2008-10-09
Other References:
"Polymer-Clay Nano Composites", 2000, WILEY
MASAYUKI YAMATO; TERUO OKANO: "The forefront of Nanobiotechnology", 2003, CMC, pages: 340 - 347
AYAO KITAHARA ET AL.: "Surfactants-properties, applications and chemoecology", 1979, KODANSHA, pages: 24 - 27
See also references of EP 2292691A4
Attorney, Agent or Firm:
KONO MICHIHIRO (JP)
Michihiro Kono (JP)
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Claims:
下記一般式(1)で表されるモノマー(a)を含むモノマーの重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)とが三次元網目を形成してなる複合体(X)の粒子が、水媒体(W)中に分散していることを特徴とする有機無機複合体分散液。
(式中、R 1 は水素原子またはメチル基、R 2 は炭素原子数2~3のアルキレン基、R 3 は水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基であり、nは1~9の整数を表す。)
前記複合体(X)の粒子が、前記重合体(A)中に前記水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)が均一に分散した構造を有する粒子である請求項1に記載の有機無機複合体分散液。
前記複合体(X)の粒子が、前記重合体(A)中に前記水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)が分散したコア部分と、該コア部分よりも前記水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)の分散密度が高いシェル部分とからなるコアシェル構造を有する粒子である請求項1に記載の有機無機複合体分散液。
請求項1~3のいずれかに記載の有機無機複合体分散液を乾燥して得られる前記複合体(X)の乾燥皮膜。
支持体と、該支持体上に形成された請求項4記載の乾燥皮膜との積層構造を有する積層体。
請求項5記載の積層構造を有する細胞培養基材。
請求項5記載の積層構造を有する防曇材料。
下記一般式(1)
(式中、R 1 は水素原子またはメチル基、R 2 は炭素原子数2~3のアルキレン基、R 3 は水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基であり、nは1~9の整数を表す。)で表されるモノマー(a)を含むモノマーの重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)とが三次元網目を形成してなる複合体(X)の粒子が、水媒体(W)中に分散している有機無機複合体分散液の製造方法であって、
前記モノマー(a)、前記水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)及び重合開始剤(D)を前記水媒体(W)中に溶解または均一に分散させた後、前記モノマー(a)を重合させることにより前記複合体(X)の粒子を形成する工程を含み、
前記水媒体(W)中の前記水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)の濃度(質量%)が下記式(2)又は式(3)で表される範囲であることを特徴とする有機無機複合体分散液の製造方法。
式(2)  Ra<0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<12.4Ra+0.05
式(3)  Ra≧0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<0.87Ra+2.17
(式中、無機材料(C)の濃度(質量%)は、無機材料(C)の質量を水媒体(W)と無機材料(C)の合計質量で除して100を掛けた数値、Raは無機材料(C)と重合体(A)との質量比((C)/(A))である。)
下記一般式(1)で表されるモノマー(a)を含むモノマーの重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)とが三次元網目を形成してなる複合体(X)と、下限臨界溶解温度を有する重合体(B)とを含有する細胞培養基材。
(式中、R 1 は水素原子またはメチル基、R 2 は炭素原子数2~3のアルキレン基、R 3 は水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基を表し、nは1~9の整数を表す。)
細胞培養基材の細胞培養面に前記重合体(B)が露出している請求項9記載の細胞培養基材。
前記重合体(B)が、N-置換(メタ)アクリルアミド誘導体及びN,N-ジ置換(メタ)アクリルアミド誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種のモノマー(b)の重合体である請求項9又は10記載の細胞培養基材。
前記モノマー(b)が、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-エチル-N-メチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルピペリディン及びN-アクリロイルピロリディンからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項11記載の細胞培養基材。
下記一般式(1)
(式中、R 1 は水素原子またはメチル基、R 2 は炭素原子数2~3のアルキレン基、R 3 は水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基を表し、nは1~9の整数を表す。)で表されるモノマー(a)を含むモノマーの重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)とが三次元網目を形成してなる複合体(X)と、下限臨界溶解温度を有する重合体(B)とを含有する細胞培養基材の製造方法であって、
水媒体(W)中の前記無機材料(C)の濃度が下記式(2)又は式(3)で表される範囲となるように、前記モノマー(a)と前記無機材料(C)と重合開始剤(D)とを水媒体(W)に混合した後、前記モノマー(a)を重合させることにより重合体(A)と前記無機材料(C)との複合体(X)の分散液(L)を製造する第1工程、
前記分散液(L)を支持体に塗布し、その後乾燥することにより前記複合体(X)の薄層を形成する第2工程、
非水溶性の重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させた溶液を前記複合体(X)の薄層の表面(S)に塗布し、前記溶媒(E)を揮発させる第3工程、
前記表面(S)に重合後に前記重合体(B)となるモノマー(b)の水溶液を塗布した後、紫外線の照射により前記モノマー(b)を重合させる第4工程を順次行なうことを特徴とする細胞培養基材の製造方法。
式(2)  Ra<0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<12.4Ra+0.05
式(3)  Ra≧0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<0.87Ra+2.17
(式中、無機材料(C)の濃度(質量%)は、無機材料(C)の質量を水媒体(W)と無機材料(C)の合計質量で除して100を掛けた数値、Raは無機材料(C)と重合体(A)との質量比((C)/(A))である。)
下記一般式(1)
(式中、R 1 は水素原子またはメチル基、R 2 は炭素原子数2~3のアルキレン基、R 3 は水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基を表し、nは1~9の整数を表す。)で表されるモノマー(a)を含むモノマーの重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)とが三次元網目を形成してなる複合体(X)と、下限臨界溶解温度を有する重合体(B)とを含有する細胞培養基材の製造方法であって、
前記モノマー(a)と前記無機材料(C)と重合開始剤(D)とを混合した水媒体(W)を支持体に塗布して、
前記モノマー(a)を重合させることにより、重合体(A)と前記無機材料(C)との複合体(X)の薄層を形成する第1工程、
非水溶性の重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させた溶液を前記複合体(X)の薄層の表面(S)に塗布し、溶媒(E)を揮発させる第2工程、
重合後に前記重合体(B)となるモノマー(b)の水溶液を前記表面(S)に塗布した後、紫外線の照射により前記モノマー(b)を重合させる第3工程を順次行なうことを特徴とする細胞培養基材の製造方法。
下記一般式(1)
(式中、R 1 は水素原子またはメチル基、R 2 は炭素原子数2~3のアルキレン基、R 3 は水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基を表し、nは1~9の整数を表す。)で表されるモノマー(a)を含むモノマーの重合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1種以上の無機材料(C)とが三次元網目を形成してなる複合体(X)と、下限臨界溶解温度を有する重合体(B)とを含有する細胞培養基材の製造方法であって、
前記水媒体(W)中の前記無機材料(C)の濃度が下記式(2)又は式(3)で表される範囲となるように、前記モノマー(a)と前記無機材料(C)と重合開始剤(D)とを水媒体(W)に混合した後、前記モノマー(a)を重合させることにより、重合体(A)と前記無機材料(C)との複合体(X)の分散液(L)を製造する第1工程、
前記分散液(L)に、前記重合体(B)を添加し、混合して、支持体に塗布した後、乾燥させる第2工程を順次行なうことを特徴とする細胞培養基材の製造方法。
式(2)  Ra<0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<12.4Ra+0.05
式(3)  Ra≧0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<0.87Ra+2.17
(式中、無機材料(C)の濃度(質量%)は、無機材料(C)の質量を水媒体(W)と無機材料(C)の合計質量で除して100を掛けた数値、Raは無機材料(C)と重合体(A)との質量比((C)/(A))である。)
Description:
有機無機複合体分散液及びそれ 用いて製造される細胞培養基材、及びそれ の製造方法

 本発明は、水媒体中に(メタ)アクリル酸 ステル系モノマーの重合体と、水膨潤性粘 鉱物とを含有する複合体の粒子が分散して る有機無機複合体分散液、及びそれを用い 製造される細胞培養基材、及びそれらの製 方法に関する。

ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレ ン、ポリイミド、ポリウレタンなどの有機高 分子を粘土と複合させることによりナノコン ポジットと呼ばれる高分子複合体が調製され ている。得られた高分子複合体はアスペクト 比の大きい粘土層を微細に分散させているこ とから、弾性率、熱変形温度、ガス透過性、 および燃焼速度などが効果的に改良されるこ とが報告されている(例えば非特許文献1参照) 。

 高分子複合体中に含まれる粘土鉱物量と ては、性能強化の観点からは高い粘土鉱物 有量が望まれるが、より低い粘土鉱物量で 果的な性能強化が達成されることも重要で る。これまでの研究では通常0.2~5質量%が用 られ、0.1質量%以下の低濃度で無機化合物を 含有する高分子複合体や10質量%を超える高濃 度で無機化合物を含有する高分子複合体は用 いられていない。これは無機化合物の含有率 が低くなると性能向上の効果が無視されるほ ど小さくなり、一方、無機化合物の含有率が 高くなると製造時の粘度増加が大きく、得ら れる複合体中での、粘土鉱物のナノスケール での微細且つ均一な分散が達成できなかった り、或いは複合体が脆くなり力学物性(強度 伸び)が大きく低下したりするためである。

 このような問題に対し、優れた力学物性 示すナノコンポジット材料として、広い範 の粘土鉱物含有率において粘土鉱物が有機 分子中に均一に分散した有機無機複合ヒド ゲルが開示されており、該有機無機複合ヒ ロゲルは水媒体中で水膨潤性粘土鉱物と重 開始剤の存在下にアクリルアミドやメタク ルアミドの誘導体、(メタ)アクリル酸エス ルなどを重合させることにより、力学物性 良い高分子複合体を製造できることが開示 れている(例えば特許文献1、特許文献2参照)

 また、乾燥状態で優れた力学物性を示す ノコンポジット材料として、水溶性(メタ) クリル酸エステルから得られる重合体と水 潤性粘土鉱物とが三次元網目を形成する高 子複合体が開示されており、該複合体は、 膨潤性粘土鉱物と水溶性(メタ)アクリル酸エ ステルと重合開始剤、更に必要に応じて触媒 または/および有機架橋剤を、水または水と 機溶媒との混合溶媒中に溶解または均一に 散させた後、水溶性(メタ)アクリル酸エステ ルを重合させ、次いで乾燥させて溶媒を除去 することにより、高分子複合体を製造できる ことが開示されている(例えば特許文献3参照) 。

 更に、酸素の影響を受けにくく、短時間 有機無機複合ヒドロゲルを製造できる方法 開示されている。即ち、非水溶性の重合開 剤を水媒体中に分散させた反応液中で、水 潤性粘土鉱物の共存下において、水溶性の クリル系モノマーをエネルギー線の照射に り反応させることにより、力学物性の優れ 有機無機複合ヒドロゲルを製造できる方法 ある(例えば特許文献4参照)。

 上記に示す有機無機複合ヒドロゲル及び 分子複合体は、全てバルク体であり、製造 程においても、反応系全体がゲル化する工 を経て製造されている。

 一方、生化学や医療分野および自動車な の工業分野においては、皮膜形成能に優れ 且つ基材との接着性にも優れた皮膜を形成 ることができる有機無機複合体の分散液(塗 料)、または、細胞培養性や防曇性などの機 性を付与できる有機無機複合体の分散液が められている。しかしながら、上記の特許 献等においては、このような特性を満足す 有機無機複合体の粒子が水媒体中に分散し いる有機無機複合体分散液およびその製造 法に関する技術は開示されていない。

 一方、動物組織等の細胞培養基材として 、主にプラスチック(例えばポリスチレン) 容器が使用されてきた。これら容器は、細 培養を有効に行わせるために、その表面に ラズマ処理や、シリコンや細胞接着因子等 コーティングなどの表面処理が施されてい 。これら細胞培養容器を培養基材として用 た場合には、培養(増殖)した細胞が容器表面 に接着しており、細胞を単離・回収するため には、トリプシン等のタンパク質加水分解酵 素や化学薬品を用いて、容器表面から剥離す る必要があった。このような酵素や化学薬品 により細胞を剥離する操作は工程が煩雑であ るほか、雑菌やDNAあるいはRNA等の不純物が混 入する恐れがあった。また、細胞と基材の結 合部分が切断されるだけではなく、細胞同士 の結合も切断されるため、細胞を増殖してい る形状(例えばシート状)のままで取り出すこ ができなかったり、細胞の性質が変化して まう問題があった。

 近年、細胞培養容器の表面にポリN-イソ ロピルアクリルアミドのような下限臨界溶 温度を有するポリマーを極薄く被覆した基 を使用して、細胞培養温度ではポリマーが 水性を示すため細胞がポリマーに接着し、 養後にポリマーを低温処理して親水性にす ことにより、細胞とポリマーとの接着性を 下させ、細胞を加水分解酵素や化学薬品を 用せずに基材から細胞をシート状に剥離す 技術が報告されている(例えば特許文献5及び 6、非特許文献2参照)。

 しかし、ポリN-イソプロピルアクリルア ドのようなポリマーはポリスチレンのよう プラスチック表面との間に接着性が低く、 に触れると、塗布されたポリマー層が容易 剥離してしまう。このようなポリマー層を に触れてもプラスチック表面から剥離させ いためには、ポリマーをプラスチック表面 何らかの手段で固定する必要がある。その 法の一つとして、N-イソプロピルアクリルア ミド(モノマー)の溶液を細胞培養基材表面に 布して電子線照射によるグラフト重合を行 方法がある(例えば、特許文献7参照)。

 電子線照射によるグラフト重合は、重合 同時に、ポリマー間の架橋反応も必ず起こ 、ポリマーの温度応答速度が架橋度合の進 につれ大きく低下してしまい、ポリマーを 水性にするために低温を保持する時間を長 要する問題があり、且つ、その間、細胞も 温状態に長時間晒され、ダメージを受ける 題があった。また、この方法で製造された 胞培養基材は、放射線(例えばγ線)滅菌処理 を行うと、ポリマーの温度応答性が大きく低 下してしまい、本来の細胞の剥離しやすさが 無くなる問題があった。

 一方、水に均一に分散した水膨潤性粘土 物の存在下で、水溶性有機モノマーを放射 の照射により重合させてなる高分子ヒドロ ルからなり、水溶性有機モノマーの重合体( ポリN-イソプロピルアクリルアミドのような 限臨界溶解温度を有するポリマー)と水膨潤 性粘土鉱物とから構成される三次元網目構造 を有する細胞培養基材が開示されている(例 ば特許文献8参照)。

 生化学分野では、細胞培養操作等の点に いて、細胞培養基材がプラスチック製培養 ィッシュのような容器と一体化するものが められていた。しかしながら、上記従来文 においては、このような一体化した細胞培 容器の具体的手段は開示されていない。

 更に、水に均一に分散した水膨潤性粘土 物の存在下で、メトキシエチルアクリレー とN-イソプロピルアクリルアミドを共重合 せた高分子ヒドロゲルを用いた細胞培養基 に関する技術が知られている(例えば特許文 9参照)。

 しかしながら、この従来技術に記載され 高分子ヒドロゲルはバルク体であり、皮膜 成能に優れた有機無機複合体の粒子が水媒 中に分散している有機無機複合体分散液に するものではない。更に、細胞培養基材と て使用した場合、培養した細胞をピンセッ で剥離することは可能であるが、温度変化 により自然剥離させて培養した細胞の全部 回収することはできなかった。

特開2002-53762

特開2004-143212

特開2005-232402

特開2006-169314

特開平2-211865

特開平5-192138

特開平5-192130

特開2006-288251

特開2008-237088

ピナバイアおよびベアル編(T.J.Pinnavaia an d G. W.Beall Eds.)「ポリマークレイナノコンポ ジット」(Polymer-Clay Nano Composites ),ワイリー (wiley)、2000年出版 大和雅之、岡野光夫「ナノバイオテクノ ロジーの最前線」第6章、P.340-P.347、シーエム シー出版(2003年出版)

 したがって、本発明が解決しようとする 題は、粘土鉱物と高分子重合体とから形成 れた三次元網目構造を有する有機無機複合 粒子が水中で安定に分散した水分散液を提 することにある。

 また、本発明の他の課題は、上記水分散 であって、皮膜形成能に優れ、且つ基材と 接着性にも優れた皮膜を形成することがで る有機無機複合体粒子の水分散液を提供す ことにある。

 また、本発明の他の課題は、上記の課題 解決し、更に、環境温度に対する疎水性と 水性の変化が敏速で、培養した細胞を分離 収する際にトリプシン等のタンパク質加水 解酵素などを使用することなく、細胞への メージがなく、迅速に培養した細胞を培養 材表面から容易に剥離、回収できる細胞培 基材を提供することにある。

 特許文献1-4は、製造過程において反応系 体がゲル化する工程を経て有機無機複合ヒ ロゲルや高分子複合体を製造する技術に関 るものである。本発明者らは、これらの技 を基に、粘土鉱物の濃度や粘土鉱物と有機 分子の質量比を調整しながら、粒子状の有 無機複合体を水中で製造する方法を種々検 した。その結果、図1に示すように反応系全 体がゲル化する領域のほかに、反応系のモノ マー及び粘土鉱物の濃度が特定の範囲(図1中 式(1)及び式(2)で示す境界よりも下側の領域) になると反応系が全くゲル化せず、有機無機 複合粒子の水分散液を製造できる領域が存在 することを見出した。更に、本発明者らは、 有機無機複合粒子の水分散液を製造できる領 域の中で、有機高分子中に粘土鉱物が均一に 分散した複合体粒子と、粘土鉱物の割合が多 いシェルと有機高分子の割合が多いコア部分 とを有するコアシェル構造の有機無機複合体 粒子とが製造されるそれぞれ別の領域がある ことを見出し、本発明を完成させた。

 更に、本発明者等は、細胞培養基材に関 る上記課題を解決すべく鋭意研究した結果 (メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a)の 合体(A)と、水膨潤性粘土鉱物及びシリカか 選択される1種以上の無機材料(C)と、下限臨 溶解温度を有する重合体(B)とを含有する細 培養基材が各種細胞に対する良好な培養性 及び培養された細胞を、環境温度を低下さ ることにより容易に剥離できる特性、更に 細胞種類に応じて、その培養性と剥離性を 易に調製できることを見出し、本発明を完 するに至った。

 即ち、本発明は、下記一般式(1)で表され モノマー(a)を含むモノマーの重合体(A)と、 膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1 種以上の無機材料(C)とが三次元網目を形成し てなる複合体(X)の粒子が、水媒体(W)中に分散 していることを特徴とする有機無機複合体分 散液を提供するものである。

(式中、R 1 は水素原子またはメチル基、R 2 は炭素原子数2~3のアルキレン基、R 3 は水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基 であり、nは1~9である。)

 また、本発明は、上記の有機無機複合体分 液の製造方法であって、
前記モノマー(a)、前記水膨潤性粘土鉱物及び シリカから選択される1種以上の無機材料(C) び重合開始剤(D)を前記水媒体(W)中に溶解ま は均一に分散させた後、前記モノマー(a)を 合させることにより前記複合体(X)の粒子を 成する工程を含み、
前記水媒体(W)中の前記水膨潤性粘土鉱物及び シリカから選択される1種以上の無機材料(C) 濃度(質量%)が下記式(2)又は式(3)で表される 囲であることを特徴とする有機無機複合体 散液の製造方法を提供するものである。
式(2)  Ra<0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<12.4Ra+0.05
式(3)  Ra≧0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<0.87Ra+2.17
(式中、無機材料(C)の濃度(質量%)は、無機材 (C)の質量を水媒体(W)と無機材料(C)の合計質 で除して100を掛けた数値、Raは無機材料(C)と 重合体(A)との質量比((C)/(A))である。)

 更に、本発明は、下記一般式(1)で表され モノマー(a)を含むモノマーの重合体(A)と、 膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1 種以上の無機材料(C)とが三次元網目を形成し てなる複合体(X)と、下限臨界溶解温度を有す る重合体(B)とを含有する細胞培養基材を提供 するものである。

(式中、R 1 は水素原子またはメチル基、R 2 は炭素原子数2~3のアルキレン基、R 3 は水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基 を表し、nは1~9の整数を表す。)

 また、本発明は、上記の細胞培養基材の製 方法であって、
水媒体(W)中の前記無機材料(C)の濃度が下記式 (2)又は式(3)で表される範囲となるように、前 記モノマー(a)と前記無機材料(C)と重合開始剤 (D)とを水媒体(W)に混合した後、前記モノマー (a)を重合させることにより重合体(A)と前記無 機材料(C)との複合体(X)の分散液(L)を製造する 第1工程、
前記分散液(L)を支持体に塗布し、その後乾燥 することにより前記複合体(X)の薄層を形成す る第2工程、
非水溶性の重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させ た溶液を前記複合体(X)の薄層の表面(S)に塗布 し、前記溶媒(E)を揮発させる第3工程、
前記表面(S)に重合後に前記重合体(B)となるモ ノマー(b)の水溶液を塗布した後、紫外線の照 射により前記モノマー(b)を重合させる第4工 を順次行なうことを特徴とする細胞培養基 の製造方法を提供するものである。
式(2)  Ra<0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<12.4Ra+0.05
式(3)  Ra≧0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<0.87Ra+2.17
(式中、無機材料(C)の濃度(質量%)は、無機材 (C)の質量を水媒体(W)と無機材料(C)の合計質 で除して100を掛けた数値、Raは無機材料(C)と 重合体(A)との質量比((C)/(A))である。)
 また、本発明は、上記の細胞培養基材の製 方法であって、
前記モノマー(a)と前記無機材料(C)と重合開始 剤(D)とを混合した水媒体(W)を支持体に塗布し て、
前記モノマー(a)を重合させることにより、重 合体(A)と前記無機材料(C)との複合体(X)の薄層 を形成する第1工程、
非水溶性の重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させ た溶液を前記複合体(X)の薄層の表面(S)に塗布 し、溶媒(E)を揮発させる第2工程、
重合後に前記重合体(B)となるモノマー(b)の水 溶液を前記表面(S)に塗布した後、紫外線の照 射により前記モノマー(b)を重合させる第3工 を順次行なうことを特徴とする細胞培養基 の製造方法を提供するものである。

 また、本発明は、上記の細胞培養基材の製 方法であって、
前記水媒体(W)中の前記無機材料(C)の濃度が下 記式(2)又は式(3)で表される範囲となるように 、前記モノマー(a)と前記無機材料(C)と重合開 始剤(D)とを水媒体(W)に混合した後、前記モノ マー(a)を重合させることにより、重合体(A)と 前記無機材料(C)との複合体(X)の分散液(L)を製 造する第1工程、
前記分散液(L)に、前記重合体(B)を添加し、混 合して、支持体に塗布した後、乾燥させる第 2工程を順次行なうことを特徴とする細胞培 基材の製造方法を提供するものである。
式(2)  Ra<0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<12.4Ra+0.05
式(3)  Ra≧0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<0.87Ra+2.17
(式中、無機材料(C)の濃度(質量%)は、無機材 (C)の質量を水媒体(W)と無機材料(C)の合計質 で除して100を掛けた数値、Raは無機材料(C)と 重合体(A)との質量比((C)/(A))である。)

 本発明の細胞培養基材の最大の特徴は、 記重合体(A)と無機材料(C)の構成部分が細胞 増殖を担い、LCSTを有する重合体(B)は温度変 化による細胞の剥離を担い、この二つの部分 を細胞の種類に応じてそれぞれ単独に制御で きることにある。例えば、培養時、培養温度 (37℃)がポリ-N-イソプロピルアクリルアミド LCST(32℃)より高いため、ポリ-N-イソプロピル アクリルアミドが水不溶(疎水性)状態になり 細胞が基材の表面で増殖するが、温度を32 以下に下げると(例えば20℃)、ポリ-N-イソプ ピルアクリルアミドが水溶性になり基材表 から水溶液へと伸展し、それに伴い細胞が 材表面から脱離しながら剥離していく。

 重合体(A)及び重合体(B)は主にイオン結合 水素結合などにより無機材料(C)と相互作用 結合している。この結合力は強く、容易に リマーと無機材料(C)を引き離すことはでき い。例えば、ポリ-N-イソプロピルアクリル ミドと粘土鉱物からなる三次元網目構造を するヒドロゲル(含水率が90%)は95kPaの引っ張 り破断強度を示している((特許文献8)特開2006- 288251公報参照)。

 本発明の細胞培養基材は、無機材料(C)と 合体(A)がほぼ均一な層状構造になっている 合体(X)の薄層と、該薄層の中から表面に向 って伸び出ている重合体(B)とから構成され いる。

 重合体(B)の長さ(分子量)と密度(含有量)を 適宜調整することにより、複合体(X)の薄層表 面が重合体(B)に完全に覆われることなく適宜 露出することで、良好な細胞増殖性と細胞剥 離性を維持できる。

 なお、本明細書における「細胞培養基材 とは細胞培養用途に使用する本発明の有機 機複合体分散液の乾燥皮膜を意味し、該乾 皮膜が支持体と一体となっている形態の細 培養基材は、「積層構造を有する細胞培養 材」又は単に「積層体」と記載する。

 本発明の複合体(X)の粒子は、水膨潤性粘 鉱物をナノメーターレベルで微細且つ均一 、しかも広い濃度範囲で含有することがで 、良好な安定性と皮膜形成能を有する。

 そして、複合体(X)が粒子状に分散した分 液から得られた皮膜は、高い透明性と、良 な弾性率と柔軟性、屈曲性を有し、大気中 安定して用いられるばかりでなく、水中で 膨潤せず優れた力学物性を示す特徴を有す 。特に細胞培養性や防曇性に優れるため治 や細胞培養用材料や防曇性材料、透明性、 縮性に優れるため各種工業材料、医療用具 どの表面改質剤として有用である。

 更に、複合体(X)中に下限臨界溶解温度を する重合体(B)を混合、あるいは複合化させ 細胞培養基材は、環境温度に対する疎水性 親水性の変化速度が速く、培養した細胞を 薬剤(トリプシン等)を使用することなく、 速に基材表面から剥離、回収することがで る。

 本発明の細胞培養基材は、基材に対する 着性に優れているため電子線放射のような 法を用いる必要が無い。したがって、放射 照射を行なうことによる悪影響、例えば、 記の如く基材中に下限臨界溶解温度を有す 重合体(B)を含有させたとしても、該重合体 架橋されることがなく、より敏速な温度応 性を維持できて培養した細胞の剥離、回収 能を損なうことが無い。

 更に、本発明の製造方法によれば、培養 る細胞の種類(接着性)に応じて、下限臨界 解温度を有する重合体(B)の長さや密度を容 に調節することができる。本発明の細胞培 基材は、再生医療分野で、コロニー状細胞 や2次元のシート状細胞、3次元の立体細胞増 殖物の調製に利用できる。

一般式(1)と(2)を満足する有機無機複合 分散液の形成可能な領域、及び実施例1~7、 較例1を示した図である。 (a)は実施例1の有機無機複合体粒子のTEM 写真であり、(b)は、(a)のTEM写真中の粒子の珪 素(Si)のEDSマッピング写真であり、(c)は、(a) TEM写真中の粒子のマグネシウム(Mg)のEDSマッ ング写真である。 (a)は実施例2の有機無機複合体粒子のTEM 写真であり、(b)は、(a)のTEM写真中の粒子の珪 素(Si)のEDSマッピング写真であり、(c)は、(a) TEM写真中の粒子のマグネシウム(Mg)のEDSマッ ング写真である。 有機無機複合体分散液(13)を線形のパタ ーン状に塗布した細胞培養基材14(実施例14)の 光学顕微鏡にて撮影した写真である。 細胞培養基材14の上で、細胞を22時間培 養した時の光学顕微鏡写真である。 細胞培養基材14の上で、細胞を46時間培 養した時の光学顕微鏡写真である。 分散液(L2)を円形のパターン状に塗布し た細胞培養基材(実施例23)の光学顕微鏡にて 影した写真である。

 本発明では、有機高分子(重合体(A))中に 膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択される1 以上の無機材料(C)が均一に分散した複合体( X)の粒子と、無機材料(C)の割合が多いシェル 有機高分子の割合が多いコア部分とを有す コアシェル構造の有機無機複合体(X)の粒子 をそれぞれ製造することができる。

 また、複合体(X)の粒子は、アクリルアミ 系モノマーを主成分として製造する従来の ドロゲルとは異なり、大きな水膨潤性は有 ないが、粒子中に水を含んだヒドロゲルの 粒子として水媒体中に分散している。粒子 に含有される水の量は、一般式(1)で表され モノマー(a)の使用量により変化する。

 有機高分子と無機材料(C)が三次元網目を 成し且つ均一に複合化した構造を有する粒 は、図2(無機材料(C)として水膨潤性粘土鉱 を使用)に示すように、粒子中の粘土鉱物の 散状態が、TEM及び(粘土鉱物の主成分である 珪素、マグネシウムの)元素マッピング分析 より確認することができる。このような均 分散構造を有する粒子は、水中に単独に存 する粘土鉱物に比べ、粒子間の相互作用が く、凝集が起こりにくく、分散液の安定性 よい。また、塗布、乾燥により、粒子表面 有機高分子が互いに絡みあい、透明且つ強 な皮膜が形成でき、更に、本発明の有機高 子がガラスやプラスチック、金属などの基 との間で良好な接着性を有するため、皮膜 基材との接着性が強い。

 一方、有機高分子が主成分として構成さ たコア部分と粘土鉱物が主成分として構成 れたシェル部分とからなるコアシェル構造 有する粒子は、図3に示すように表面に粘土 鉱物の濃度が比較的高いため、形成された皮 膜はイオン性化合物やたんぱく質、細胞など に対する吸着性が強く、皮膜表面の機能化が 容易である。

 本発明で使用する有機高分子(重合体(A)) 、モノマーの重合反応が進行すると共に、 中での溶解性が低下し、ある重合体の濃度 一定値以上になると、球状に凝集する傾向 ある。従って、ある特定の無機材料(C)と有 高分子の質量比と、無機材料(C)の濃度範囲 では、先ずモノマーの重合が進行し、その 、球状に凝集した有機高分子の表面に無機 料(C)が相互作用して凝集・堆積し、コアシ ル構造を形成すると推測される。一方、上 範囲以外、即ち有機高分子の濃度が低く、 び/または無機材料(C)の濃度が低すぎる場合 は、有機高分子が凝集しにくく、たとえ凝 しても有機高分子の周囲を取り巻くための 分な量の無機材料(C)が無いため、シェルが 成されず、また無機材料(C)の濃度が高すぎ 場合は、有機高分子を主成分とする凝集体 形成する際に凝集体内部に無機材料(C)が取 込まれるためコア部分とセル部分との無機 料(C)の濃度差が明確にならないため、有機 分子中に無機材料(C)が均一に分散した粒子 形成されると推測される。

 以上のようなメカニズムで形成されると 測される本発明の複合体(X)の粒子は、球形 又は略球形の形状となる。

 本発明で用いるモノマー(a)は、下記一般 (1)で表されるモノマーを必須成分とする。

(式中、R 1 は水素原子またはメチル基、R 2 は炭素原子数2~3のアルキレン基、R 3 は水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基 であり、nは1~9である。)

 一般式(1)で表されるモノマー(a)の使用に り、得られる複合体粒子の粒径制御や、無 材料(C)と重合体の複合構造の制御が容易と る。更に、分散液の安定性や皮膜の形成能 ならびに基材との接着性がよく、皮膜厚み 制御幅が広く、より平滑な皮膜を形成可能 有機無機複合体の製造が可能となる。上記 一般式(1)で表されるモノマー(a)は、要求さ る力学物性や表面性質などにより、二種以 を混合して使用してもよい。中でも、nが1~3 である化合物が好ましく、アクリル酸2メト シエチル、アクリル酸2エトキシエチル、メ ルカルビトールアクリレート、エチルカル トールアクリレート、メトキシトリエチレ グリコールアクリレート、エトキシトリエ レングリコールアクリレートがより好まし 、アクリル酸2メトキシエチル、アクリル酸 2エトキシエチルが特に好ましい。

 また、本発明で使用する重合体(A)を製造 るためのモノマーとしては、前記一般式(1) 表されるモノマーの他に、有機無機複合体 親水性と疎水性のバランスや官能基を付与 るために、必要に応じてその他の共重合モ マーを併用することができる。例えば、ス ホン基やカルボキシル基のようなアニオン を有するアクリル系モノマー、4級アンモニ ウム基のようなカチオン基を有するアクリル 系モノマー、4級アンモニウム基と燐酸基と 持つ両性イオン基を有するアクリル系モノ ー、カルボキシル基とアミノ基とをもつア ノ酸残基を有するアクリル系モノマー、糖 基を有するアクリル系モノマー、また、水 基を有するアクリル系モノマー、ポリエチ ングリコール、ポリプロピレングリコール を有するアクリル系モノマー、更にポリエ レングリコールのような親水性鎖とノニル ェニル基のような疎水基を合わせ持つ両親 性アクリル系モノマー、ポリエチレングリ ールジアクリレート、N-置換(メタ)アクリル ミド誘導体、N,N-ジ置換(メタ)アクリルアミ 誘導体、N,N’-メチレンビスアクリルアミド などを併用することができる。

 本発明に用いる無機材料(C)は、水膨潤性 土鉱物及びシリカから選択される1種以上の 無機材料である。水膨潤性粘土鉱物としては 、層状に剥離可能な膨潤性粘土鉱物が挙げら れ、好ましくは水または水と有機溶剤との混 合溶液中で膨潤し均一に分散可能な粘土鉱物 、特に好ましくは水中で分子状(単一層)また それに近いレベルで均一分散可能な無機粘 鉱物が用いられる。具体的にはナトリウム 層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライ 、水膨潤性モンモリライト、水膨潤性サポ イト、水膨潤性合成雲母等が挙げられる。 れらの粘土鉱物を混合して用いても良い。

 本発明に用いるシリカ(SiO 2 )としては、コロイダルシリカが挙げられ、 ましくは水溶液中で均一に分散可能で、粒 が10nm~500nmのコロイダルシリカ、特に好まし は粒径が10~50nmのコロイダルシリカが用いら れる。

 本発明の複合体(X)の粒子は、重合体(A)と 膨潤性粘土鉱物(B)が三次元網目を形成し且 均一に複合化した構造を有し、この構造を することにより、分散液の安定性がよく、 り強靭な皮膜が形成でき、且つ皮膜と基材 の接着性が強く、良好な細胞培養性が得ら 、好ましい。

 また、本発明の複合体(X)の粒子は、重合 (A)が主成分として構成したコア部分と無機 料(C)が主成分として構成したシェル部分と らなるコアシェル構造を有することもでき この構造を有することにより、表面に無機 料(C)の濃度が比較的高い皮膜を形成でき、 オン性化合物やたんぱく質、ペプチド、ヘ リン、抗生物質、細胞などに対する吸着性 強く、皮膜の表面機能化が容易であり、好 しい。

 上記複合体(X)の粒子の二つの構造は、製 時反応液中のモノマー(a)と無機材料(C)の濃 を適宜調整することにより、比較的容易に り分けることができる。

 本発明の複合体(X)の粒子の粒径が、50nm~5 mであると、分散液の安定性がよく、より強 で且つ平滑性の高い皮膜が形成でき、膜厚 制御も容易で、好ましい。

 本発明の複合体(X)の粒子において、重合 (A)と無機材料(C)との質量比((C)/(A))が、0.01~10 であることが好ましく、0.03~5がより好ましく 、0.05~3が特に好ましい。質量比((C)/(A))がこの 範囲であると、得られる分散液の安定性がよ く、平滑で基材と強い接着性を有し、且つ良 好な細胞培養性を有する皮膜が得られ、好ま しい。

 本発明の有機無機複合体分散液を乾燥す ことにより、透明で良好な柔軟性と力学物 を有する乾燥皮膜を得ることができる。こ 皮膜は基材に貼り付いた状態(塗膜)であっ もよいし、基材のない独立のフィルム状で ってもよい。皮膜の厚みは用途に応じて任 に調整でき、フィルムとしての皮膜の厚み 、0.01mm~2mmであることが扱いやすく好ましい この範囲であれば皮膜の強度が十分であり 取り扱い易く、また、表面平滑性の高い皮 の製造が容易となる。また、基材に貼り付 た状態の皮膜の厚みは、0.0001mm(0.1μm)以上で あれば好適に取り扱うことができ、好ましい 。

 本発明の有機無機複合体分散液を基材(例 えばポリスチレン製容器)に塗布した後、乾 し、必要に応じて洗浄を行った後、基材に り付いた状態で乾燥させることにより、細 の接着性や増殖性が良好な細胞培養基材と て使用することができる。皮膜は支持体と 接着性が良好で、熱水や37℃の細胞培養液中 でも塗膜の剥離は起きない。

 更に、本発明の有機無機複合体分散液に その他の親水性ポリマー(例えばポリN,N-ジ チルアクリルアミド)を添加して、基材に塗 し、乾燥することにより、水滴の形成を防 防曇性材料を製造することができる。

 また、本発明の有機無機複合体分散液を 材(例えば人工血管の内表面や体内埋め込む 医療器具の表面)に塗布した後、乾燥し、必 に応じて洗浄を行った後、基材に貼り付い 状態で乾燥させることにより、該基材に細 増殖能を付与し、生体との親和性を高める とができる。

 次いで、本発明の製造方法について説明す 。
 本発明の有機無機複合体分散液は、下記の 法で製造することができる。

 即ち、前記モノマー(a)、前記水膨潤性粘土 物及びシリカから選択される1種以上の無機 材料(C)及び重合開始剤(D)を前記水媒体(W)中に 溶解または均一に分散させた後、前記モノマ ー(a)を重合させることにより前記複合体(X)の 粒子を形成する工程を含み、前記水媒体(W)中 の前記水膨潤性粘土鉱物及びシリカから選択 される1種以上の無機材料(C)の濃度(質量%)が 記式(2)又は式(3)で表される範囲であること 特徴とする有機無機複合体分散液の製造方 である。
式(2)  Ra<0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<12.4Ra+0.05
式(3)  Ra≧0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<0.87Ra+2.17
(式中、無機材料(C)の濃度(質量%)は、水膨潤 粘土鉱物(B)の質量を水媒体(W)と無機材料(C) 合計質量で除して100を掛けた数値、Raは無機 材料(C)と重合体(A)との質量比((C)/(A))である。 )

 この製造方法に用いられるモノマー(a)と無 材料(C)は、前記有機無機複合体分散液の説 で述べたのと同じものを使用できるので、 略する。
 本発明の製造方法に用いる水媒体(W)は、モ マー(a)や無機材料(C)などを含むことができ 物性のよい有機無機複合体分散液が得られ ば良く、特に限定されない。例えば水、ま は水と混和性を有する溶剤及び/またはその 他の化合物を含む水溶液であってよく、その 中には更に、防腐剤や抗菌剤、着色料、香料 、酵素、たんぱく質、糖類、アミノ酸類、細 胞、DNA類、塩類、水溶性有機溶剤類、界面活 性剤、高分子化合物、レベリング剤などを含 むことができる。

 本発明に用いられる重合開始剤(D)としては 公知のラジカル重合開始剤を適時選択して いることができる。好ましくは水分散性を し、系全体に均一に含まれるものが好まし 用いられる。具体的には、重合開始剤とし 、水溶性の過酸化物、例えばペルオキソ二 酸カリウムやペルオキソ二硫酸アンモニウ 、水溶性のアゾ化合物、例えばVA-044、V-50、 V-501(いずれも和光純薬工業株式会社製)の他 Fe 2+ と過酸化水素との混合物などが例示される。

 触媒としては、3級アミン化合物であるN,N ,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンなど 好ましく用いられる。但し、触媒は必ずし 用いなくてもよい。重合温度は、重合触媒 開始剤の種類に合わせて例えば0℃~100℃が いられる。重合時間も数十秒~数十時間の間 行うことが出来る。

 一方、光重合開始剤は、酸素阻害の影響 受けにくく、重合速度が速いため、好適に いられる。具体的には、p-tert-ブチルトリク ロロアセトフェノンなどのアセトフェノン類 、4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン どのベンゾフェノン類、2-メチルチオキサン トンなどのケトン類、ベンゾインメチルエー テルなどのベンゾインエーテル類、ヒドロキ シシクロヘキシルフェニルケトンなどのα-ヒ ドロキシケトン類、メチルベンゾイルホルメ ートなどのフェニルグリオキシレート類、メ タロセン類などが挙げられる。

 前記光重合開始剤は非水溶性のものであ 。ここで言う非水溶性とは、重合開始剤の に対する溶解量が0.5質量%以下であることを 意味する。非水溶性の重合開始剤を使用する ことにより、開始剤がより無機材料(C)の近傍 に存在しやすく、無機材料(C)近傍からの開始 反応点が多くなり、得られる有機無機複合体 の粒径分布が狭く、分散液の安定性が高く、 好ましい。

 前記光重合開始剤を水媒体(W)と相溶する 媒(E)に溶解させた溶液を前記水媒体(W)中に 加することが好ましい。この方法によって 重合開始剤がより均一に分散でき、より粒 の揃った複合体(X)の粒子が得られる。

 本発明で使用する溶媒(E)としては、光重 開始剤(D)または非水溶性重合開始剤(D)を溶 できる水溶性の溶剤、または光重合開始剤( D)と非水溶性重合開始剤(D)を溶解し且つHLB(親 水疎水バランス)値が8以上の前記一般式(1)で されるモノマー(a)やその他のアクリル系モ マー(a’)を用いることができる。ここのHLB はデービス式(「界面活性剤-物性・応用・ 学生態学」、北原文雄ら編、講談社、1979、p 24-27)に従って求められた値である。例えば、 トリプロピレングリコールジアクリレートの ようなポリプロピレングリコールジアクリレ ート類、ポリエチレングリコールジアクリレ ート類、ペンタプロピレングリコールアクリ レートのようなポリプロピレングリコールア クリレート類、ポリエチレングリコールアク リレート類、メトキシエチルアクリレート、 メトキシトリエチレングリコールアクリレー トのようなメキシポリエチレングリコールア クリレート類、ノニルフェノキシポリエチレ ングリコ-ルアクリレート類、ジメチルアク ルアミドのようなN置換アクリルアミド類、 ドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシ ロピルアクリレート、などが挙げられる。 媒(E)としてのアクリル系モノマーのHLB値が8 以上であると、水媒体(W)への溶解性または分 散性に優れるため好ましい。これらのアクリ ル系モノマーは、一種以上を混合して用いる ことができる。

 ここで言う水溶性を有する溶剤とは、水1 00gに対し50g以上溶解できる溶剤であることが 好ましい。この範囲であれば、非水溶性の光 重合開始剤(D)の水媒体(W)への分散性が良好で あり、得られる複合体(X)の粒子の粒径が揃い 易く、分散液の安定性が良好である。

 非水溶性光重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解 せた溶液中における光重合開始剤(D)と溶媒( E)の質量比(D)/(E)は、0.001~0.1であることが好ま しく、0.01~0.05が更に好ましい。0.001以上であ と、エネルギー線の照射によるラジカルの 生量が十分に得られるため好適に重合反応 進行させることができ、0.1以下であれば、 始剤による発色や、臭気を実質的に生じる とがなく、またコストの低減が可能である

 以上のアクリル系モノマー(a’)および水 性を有する溶剤のいずれの場合においても 光重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させた溶液 添加量が、モノマー(a)、無機材料(C)、水媒 (W)、重合開始剤(D)及び溶媒(E)の総質量に対 、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.2 質量%~2質量%であることが更に好ましい。該 散量が0.1質量%以上であると、重合が十分に 始され、5質量%未満であると、複合体(X)の 子中の重合開始剤の増加による臭気の発生 更には一旦分散された光重合開始剤が再び 集する等の問題を低減でき、均一な有機無 複合体分散液を得ることができるため好ま い。

 無機材料(C)の水媒体に対する濃度(質量%) 式(2)又は式(3)で表される範囲であることが 発明の有機無機複合体分散液製造の最大の 徴である。無機材料(C)の水媒体に対する濃 (質量%)が上記範囲以上になると、重合によ 反応系全体のゲル化が起きたり、分散液(L) 不均一になったりするため、良好な有機無 複合体分散液の製造ができない。

 重合体(A)と無機材料(C)が三次元網目を形 し且つ均一に複合化した構造を有する複合 (X)の粒子と、重合体(A)を主成分として構成 たコア部分と無機材料(C)を主成分として構 したシェル部分とからなるコアシェル構造 有する複合体(X)の粒子の製造においては、 媒体(W)中の無機材料(C)とモノマー(a)の濃度 適宜調整することにより、比較的容易に作 分けることができる。例えば、水媒体(W)中 無機材料(C)の濃度が1.2(質量%)を超えると、 たはモノマー(a)の濃度が6.0(質量%)未満であ と、均一複合構造を有する複合体(X)の粒子 得られるが、水媒体(W)中の無機材料(C)の濃 が1.2(質量%)以下で、且つモノマー(a)の濃度 6.0(質量%)以上であると、コアシェル複合構 を有する複合体(X)の粒子が得られる。

 本発明の製造方法で製造される有機無機 合体分散液は、そのまま塗料として使用し もよいし、水洗などによる精製工程を経て ら使用してもよい。また塗布性や乾燥皮膜 表面平滑性、細胞培養性/剥離性や防曇性な どの機能性を付与する目的に、該有機無機複 合体分散液に更にレベリング剤や界面活性剤 、高分子化合物、ペプチド、たんぱく質、コ ラーゲンなどを添加して使用してもよい。

 また、本発明の有機無機複合体分散液を 持体上に塗布して乾燥皮膜とすることによ 積層体を製造することができる。支持体上 塗布する際には、特定の形状のパターン状 塗布することが、良好な細胞培養性と優れ 細胞剥離回収性を有するため好ましい。有 無機複合体分散液を支持体にパターン状に 布する方法としては、模様のある版に分散 をつけてから支持体に転写する印刷方法、 たは支持体に塗布しない部分を予め遮蔽し 塗布後遮蔽部分を取り除くパターン状塗布 、インクジェットプリンター方式による分 液の塗布方法などが挙げられる。

 塗布するパターンの形状は、周期10 -3 ~10 1 mmの繰り返し形状であれば、特に限定されな が、好ましくは10 -3 ~10 1 mmの周期を有する線形や格子状、ドット状パ ーン及び渦巻状や同心円状或いはフラクタ パターンが好ましく用いられる。

 細胞が接着や増殖しない支持体(例えばコ ロナ放電処理をしていないポリスチレン)表 に適用した場合、例えば良好な細胞培養性 、酵素処理なしもしくは低酵素処理での細 または細胞薄膜の剥離回収や、スフェロイ の形成並びに回収が優れた効果を示す例と ては、例えば、Balb3T3細胞(株化マウス線維芽 細胞)や正常ヒト真皮線維芽細胞を用いた場 、有機無機複合体分散液を、一定周期を有 るパターン状に塗布することにより、塗布 分間の間隔が十分狭い場合、細胞が未塗布 分を乗り越えて増殖し、最終的に支持体表 全体に渡って細胞を培養することができ、 に、培養した細胞層が支持体との間の接着 が少なく、剥離がより容易に起きる細胞培 基材が得られ、好ましい。分散液の塗布部 間の間隔(未塗布部分の幅)が300μm以下である ことが好ましい、200μm以下は更に好ましい、 100μm以下は最も好ましい。300μm以下であれば 、細胞がこの未塗布幅を十分超え、増殖する ことができ、良好な細胞層を培養することが できる。

 前記光重合開始剤を用いた場合の重合方法 しては、エネルギー線照射が挙げられ、例 ば、電子線、γ線、X線、紫外線、可視光な を用いることができる。中でも装置や取り いの簡便さから紫外線を用いることが好ま い。照射する紫外線の強度は10~500mW/cm 2 が好ましく、照射時間は一般に0.1秒~200秒程 である。通常の加熱によるラジカル重合に いては、酸素が重合の阻害因子として働く 、本発明では、必ずしも酸素を遮断した雰 気で溶液の調製およびエネルギー線照射に る重合を行う必要がなく、空気雰囲気でこ らを行うことが可能である。但し、紫外線 射を不活性ガス雰囲気下で行うことによっ 、更に重合速度を速めることが可能で、望 しい場合がある。

 本発明のモノマー(a)、無機材料(C)及び非 溶性の重合開始剤(D)、及び水媒体(W)を含む 散液(L)のエネルギー線照射による重合方法 任意である。例えば、容器中で分散液(L)を 拌及び/または超音波振動を与えながら、エ ネルギー線を照射して重合させる非連続の製 造方法や、分散液(L)を透明な管(マイクロ流 を含む)の中を流しながらエネルギー線を照 して重合させる連続の製造方法が挙げられ 。

<下限臨界溶解温度を有する重合体(B)を含 する細胞培養基材>
 以下に、下限臨界溶解温度を有する重合体( B)を含有する細胞培養基材、及びその製造方 について説明する。

 重合体(B)を含有する細胞培養基材を製造 る際に使用するモノマー(a)は、前記一般式( 1)のモノマーを必須成分とする。前記一般式( 1)で表されるモノマーの使用により、細胞の 期接着性を容易に調節でき、細胞増殖性と 離性が良好な細胞培養基材が得られる。ま 、この細胞培養基材をポリスチレンなどの ラスチック製基材等の支持体の表面に積層 せる場合は、両者間の接着性が強く、製造 簡便にできる。

 前記一般式(1)で表されるモノマーは、要 される力学物性や表面の性質などにより、 種以上を混合して使用してもよい。また、 胞培養基材の培養性や物性に影響を及ぼさ い程度に、必要に応じてその他の共重合モ マーとして、前記複合体(X)の粒子を製造す 際に使用するモノマーを使用することがで る。

 本発明の細胞培養基材を製造する際に使 する無機材料(C)は、前記複合体(X)の粒子を 造する際に使用する化合物を用いることが きる。

 本発明の細胞培養基材において、重合体( A)と無機材料(C)との質量比((C)/(A))が、0.01~10で あることが好ましく、0.03~5がより好ましく、 0.05~3が特に好ましい。質量比((C)/(A))がこの範 囲であると、粘土鉱物またはシリカと重合体 (A)との複合構造(例えば粘土鉱物が主成分と て構成したシェル(殻)部分と重合体(A)が主成 分として構成したコア(内部)部分からなるコ シェル構造、粘土鉱物と重合体(A)が均一に 合した均一構造など)の設計が容易であり、 得られる塗膜の表面特性(例えば親疎水性度 いや細胞培養性)や塗膜物性が良好であり、 一な塗膜が得られ、支持体との接着性が良 で、脆さも無く好ましい。

 また、本発明の細胞培養基材において、 材全体に対する重合体(B)の含有率が0.0001質 %~40質量%であることが好ましく、0.01~30質量% であることがより好ましく、1~20質量%である とが特に好ましい。

 重合体(B)の含有率が0.0001質量%~40質量%で ると、培養基材の細胞接着性と増殖性及び 度低下時の剥離性が良好であり、培養基材 表面平滑性もよく、また、プラスチック製 材の表面に積層するときの塗布性や基材表 との接着性がよく、好ましい。

 本発明で用いられる下限臨界溶解温度(Low er Critical Solution Temperature:以下LCSTと略記す )を有する重合体(B)は、分子内にLCSTを示す部 分を有するものであれば、好適に使用できる が、中でもN-置換(メタ)アクリルアミド誘導 及びN,N-ジ置換(メタ)アクリルアミド誘導体 らなる群から選ばれる少なくとも一種のモ マー(b)の重合体であることが好ましい。こ ようなモノマー(b)の例としては、N-イソプロ ピル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メ )アクリルアミド、N-シクロプロピル(メタ)ア クリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アク ルアミド、N-テトラヒドロフルフリル(メタ) クリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミ ド、N-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル -N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル -N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(メ )アクリロイルピペリディン、N-(メタ)アク ロイルピロリディンがあげられる。

 上記のモノマーは単独で用いてもよく、 要に応じて複数のモノマーを混合して用い もよい。更に、上記モノマー(b)とそれ以外 水溶性有機モノマーまたは有機溶媒可溶性 機モノマーとの共重合体も、得られた重合 が親水性及び疎水性の両方を示すものであ ば使用することが出来る。

 上記の下限臨界溶解温度(LCST)とは、この 度以上になると、該ポリマーが水中で不溶 なり(疎水性を示す)、この温度以下になる 、水溶性になる(親水性を示す)温度のことで ある。例えば、ポリ-N-イソプロピルアクリル アミドのLCSTは32℃である。

 次いで、本発明の細胞培養基材の製造方法 ついて説明する。
下記三つの方法で製造することができる。

 即ち、第一の製造方法としては、前記水媒 (W)中の前記無機材料(C)の濃度が下記式(2)又 式(3)で表される範囲となるように、前記モ マー(a)と前記無機材料(C)と重合開始剤(D)と 水媒体(W)に混合した後、前記モノマー(a)を 合させることにより重合体(A)と前記無機材 (C)との複合体(X)の分散液(L)を製造する第1工 程、
前記分散液(L)を基材に塗布し、その後乾燥す ることにより前記複合体(X)の薄層を形成する 第2工程、
非水溶性の重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させ た溶液を前記複合体(X)の薄層の表面(S)に塗布 し、前記溶媒(E)を揮発させる第3工程、
前記表面(S)に前記モノマー(b)の水溶液を塗布 した後、紫外線の照射により前記モノマー(b) を重合させる第4工程を順次行なうことを特 とする細胞培養基材の製造方法である。
式(2)  Ra<0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<12.4Ra+0.05
式(3)  Ra≧0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<0.87Ra+2.17
(式中、無機材料(C)の濃度(質量%)は、無機材 (C)の質量を水媒体(W)と無機材料(C)の合計質 で除して100を掛けた数値、Raは無機材料(C)と 重合体(A)との質量比((C)/(A))である。)

 この製造方法に用いられるモノマー(a)と無 材料(C)及びモノマー(b)は、前記細胞培養基 の説明で述べたのと同じものを使用できる で、省略する。
 本発明の製造方法に用いる水媒体(W)は、モ マー(a)や無機材料(C)などを含むことができ 重合によって、物性のよい有機無機複合体 散液が得られれば良く、特に限定されない 例えば水、または水と混和性を有する溶剤 び/またはその他の化合物を含む水溶液であ ってよく、その中には更に、防腐剤や抗菌剤 、着色料、香料、酵素、たんぱく質、コラー ゲン、糖類、アミノ酸類、細胞、DNA類、塩類 、水溶性有機溶剤類、界面活性剤、高分子化 合物、レベリング剤などを含むことができる 。

 本発明に用いられる重合開始剤(D)として 、前記の公知のラジカル重合開始剤を適時 択して用いることができる。

 触媒としては、3級アミン化合物であるN,N ,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンなど 好ましく用いられる。但し、触媒は必ずし 用いなくてもよい。重合温度は、重合触媒 開始剤の種類に合わせて例えば0℃~100℃が いられる。重合時間も数十秒~数十時間の間 行うことが出来る。

 一方、光重合開始剤は、酸素阻害の影響 受けにくく、重合速度が速いため、重合開 剤(D)として好適に用いられる。具体的には 前記の光重合開始剤を用いることができる

 光重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させた溶 中における光重合開始剤(D)と溶媒(E)の質量 (D)/(E)は、0.001~0.1であることが好ましく、0.0 1~0.05が更に好ましい。0.001以上であると、紫 線の照射によるラジカルの発生量が十分に られるため好適に重合反応を進行させるこ ができ、0.1以下であれば、開始剤による発 や、臭気を実質的に生じることがなく、ま コストの低減が可能である。

 光重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させた溶 の添加量が、モノマー(a)、無機材料(C)、水 体(W)、重合開始剤(D)及び溶媒(E)の総質量に し、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、 0.2質量%~2質量%であることが更に好ましい。 分散量が0.1質量%以上であると、重合が十分 開始され、5質量%未満であると、複合体(X) の重合開始剤の増加による臭気の発生、更 は一旦分散された光重合開始剤が再び凝集 る等の問題を低減でき、均一な複合体(X)の 散液(L)を得ることができるため好ましい。

 非水溶性の重合開始剤(D)を使用すること より、第4工程では、モノマー(b)の水溶液を 塗布した時に、開始剤の溶出が無く、粘土鉱 物またはシリカ近傍からの開始反応点が多く なり、得られる重合体(B)と無機材料(C)間の相 互作用がより強くなり、好ましい。

 無機材料(C)の水媒体に対する濃度(質量%) 式(2)又は式(3)で表される範囲であることが 発明の細胞培養基材製造の最大の特徴であ 。無機材料(C)の水媒体に対する濃度(質量%) 上記範囲内であると、良好な複合体(X)の分 液(L)が得られ、支持体への塗布が容易で、 滑で均一な薄い塗膜が得られ、好ましい。

 本発明の製造方法で製造される分散液(L) 、そのまま使用してもよいし、水洗などに る精製工程を経てから使用してもよい。ま 該分散液(L)に更にレベリング剤や界面活性 、ペプチド、たんぱく質、コラーゲン、ア ノ酸類、高分子化合物などを添加して使用 てもよい。

 本製造方法の第2工程における、前記分散 液(L)の支持体への塗布方法は、公知慣用の方 法でよい。例えば、分散液を支持体に流延さ せる方法や、バーコーターやスピンコーター によるコーター法、または噴霧などのスプレ ー法、模様のあるゴム版に分散液をつけてか ら支持体に転写する方法、また支持体に塗布 しない部分を予め遮蔽して塗布後遮蔽部分を 取り除くパターン状塗布や、インクジェット プリンター方式による分散液の塗布方法が挙 げられる。

 細胞が接着や増殖しない支持体(例えばコ ロナ放電処理をしていないポリスチレン)表 に、分散液(L)をパターン状に塗布すること より、塗布部分間の間隔が十分狭い場合、 胞が未塗布部分を乗り越えて増殖し、最終 に支持体表面全体に渡って細胞を培養する とができ、更に、培養した細胞層が支持体 の間の接着点が少なく、剥離がより容易に き、好ましい。塗布部分境界と境界間の間 (未塗布部分の幅)が300μm以下であることが好 ましい、200μm以下は更に好ましい、100μm以下 は最も好ましい。300μm以下であれば、細胞が この未塗布幅を十分超え、増殖することがで き、良好な細胞層を培養することができる。

 乾燥方法も、分散液(L)中の揮発成分が揮 し、複合体(X)の薄層ができれば、任意の方 でよい。例えば、室温自然乾燥、室温の風 加熱または熱風による乾燥、遠赤外線乾燥 どがあげられる。或いは分散液をスピンコ ターで回転しながら熱風を当てたり加熱し りする方法も挙げられる。

 本製造方法の第3工程における、非水溶性 の重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させた溶液の 前記複合体(X)の薄層の表面(S)への塗布や溶媒 (E)の揮発方法は、第2工程に準じて公知慣用 方法を用いてよい。

 前記表面(S)に塗布された前記溶液(D+E)が 合体(X)の薄層中へ浸透し、溶媒(E)の揮発に り、開始剤が複合体(X)の薄層全体に均一に 在する状態になる。非水溶性の重合開始剤(D )としては、前記の光重合開始剤に準じたも を使用することができる。非水溶性の重合 始剤(D)を使用することにより、第4工程での モノマー(b)の水溶液塗布時に、開始剤の溶 が少なく、粘土鉱物またはシリカ近傍から 開始反応点が多くなり、得られる重合体(B) 無機材料(C)間の相互作用がより強くなり、 ましい。

 非水溶性重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解さ た溶液中における重合開始剤(D)と溶媒(E)の 量比(D)/(E)は、0.001~0.1であることが好ましく 、0.01~0.05が更に好ましい。0.001以上であると 紫外線の照射によるラジカルの発生量が十 に得られるため好適に重合反応を進行させ ことができ、0.1以下であれば、開始剤によ 発色や、臭気を実質的に生じることがなく またコストの低減が可能である。

 本発明で使用する溶媒(E)としては、前記 溶媒(E)を用いることができるが、溶媒(E)と てのアクリル系モノマーのHLB値が8以上であ ると、水媒体(W)への溶解性または分散性に優 れるため好ましい。

 本製造方法の第4工程における、前記表面 (S)への前記モノマー(b)の水溶液の塗布も第2 程に準じて公知慣用の方法を用いてよい。

 モノマー(b)の水溶液におけるモノマー(b) 濃度は、1~20質量%が好ましく、5~18質量%であ ることが更に好ましい。1質量%以上であれば 長さが十分な重合体(B)が得られ、細胞剥離 が維持でき、また、20質量%以下であれば、 分な細胞増殖性が維持でき、性能のよい細 培養基材を製造できる。

 前記表面(S)に塗布されたモノマー(b)が複 体(X)の薄層中へ浸透し、紫外線の照射によ 重合される。この製造方法で得た細胞培養 材の表面は、モノマー(b)の重合体(重合体(B) )が層を形成して細胞培養基材の表面を完全 覆っているものではなく、重合体(B)が複合 (X)の薄層の中から伸び出て、該薄層の表面 適宜露出しているような構造になっている 重合体(B)は、複合体(X)の薄層中から表面ま イオン結合や水素結合などにより粘土鉱物 結合しており、物理的な力や水中でもその 合が切れることなく、安定な構造になって る。また、培養される細胞の種類に応じて 該重合体(B)の長さ(分子量)や密度(複合体(X) 薄層中での含有量)を、モノマー(b)の水溶液 度や塗布量で適宜調整することができる。

 本工程に用いられる光としては、電子線、 線、X線、紫外線、可視光などを用いること できるが、中でも装置や取り扱いの簡便さ モノマー(b)の重合と同時に架橋を起こさせ い観点から紫外線を用いることが好ましい 照射する紫外線の強度は10~500mW/cm 2 が好ましく、照射時間は一般に0.1秒~200秒程 である。通常の加熱によるラジカル重合に いては、酸素が重合の阻害因子として働く 、本発明では、必ずしも酸素を遮断した雰 気で溶液の調製および紫外線照射による重 を行う必要がなく、空気雰囲気でこれらを うことが可能である。但し、紫外線照射を 活性ガス雰囲気下で行うことによって、更 重合速度を速めることが可能で、望ましい 合がある。

 上記第一の製造方法は、モノマー(a)と無 材料(C)の比率を調整することにより、細胞 増殖速度を幅広く調整することができ、ま 、モノマー(b)の種類や濃度、塗布量を調整 ることにより、温度変化による細胞の剥離 度を制御できるという特徴を有する。

 本発明の第二の製造方法としては、前記モ マー(a)と前記無機材料(C)と重合開始剤(D)と 混合した水媒体(W)を支持体に塗布して、前 モノマー(a)を重合させることにより、重合 (A)と前記無機材料(C)との複合体(X)の薄層を 成する第1工程、
 非水溶性の重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解さ た溶液を前記複合体(X)の薄層の表面(S)に塗 し、溶媒(E)を揮発させる第2工程、
 前記モノマー(b)の水溶液を前記表面(S)に塗 した後、紫外線の照射により前記モノマー( b)を重合させる第3工程を順次行なうことを特 徴とする細胞培養基材の製造方法である。

 本製造方法の塗布方法、紫外線、重合開 剤(D)及びモノマー(b)の濃度は、全て第1の製 造方法に準ずる。この製造方法の第1工程は 反応液から直接複合体(X)の薄層を製造する め、水媒体(W)中の無機材料(C)の濃度が式(2) は式(3)で表される範囲になる必要はない。 の製造方法で得た細胞培養基材の表面構造 、第1の製造方法で得たものとほぼ同じであ 。

 本発明の第三の製造方法としては、水媒体( W)中の前記無機材料(C)の濃度が下記式(2)又は (3)で表される範囲となるように、前記モノ ー(a)と前記無機材料(C)と重合開始剤(D)とを 媒体(W)に混合した後、モノマー(a)を重合さ ることにより、重合体(A)と前記無機材料(C) の複合体(X)の分散液(L)を製造する第1工程、
前記分散液(L)に、前記重合体(B)を添加し、均 一に混合して、支持体に塗布した後、乾燥さ せる第2工程を順次行なうことを特徴とする 胞培養基材の製造方法である。
式(2)  Ra<0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<12.4Ra+0.05
式(3)  Ra≧0.19のとき
      無機材料(C)の濃度(質量%)<0.87Ra+2.17
(式中、無機材料(C)の濃度(質量%)は、無機材 (C)の質量を水媒体(W)と無機材料(C)の合計質 で除して100を掛けた数値、Raは無機材料(C)と 重合体(A)との質量比((C)/(A))である。)
 本製造方法における重合体(B)は、その10質 %水溶液の粘度が20~2000mPa・s(山一電機株式会 製DIGITAL VISCOMATE MODEL VM-100A粘度計使用)の のであることが好ましく、100~1000mPa・sの方 更に好ましく、200~800mPa・sのポリマーの方が 最も好ましい。20mPa・s以上であれば、十分な 細胞剥離性が維持でき、また、1000mPa・s以下 あれば、十分な細胞増殖性が維持でき、性 のよい細胞培養基材を製造できる。

 また、本製造方法における重合体(B)は、そ 重量平均分子量Mwが1×10 4 ~2×10 7 であることが好ましく、1×10 5 ~5×10 6 であることが更に好ましい。1×10 4 以上であれば、十分な細胞剥離性が維持でき 、また、2×10 7 以下であれば、十分な細胞増殖性が維持でき 、性能のよい細胞培養基材を製造できる。

 この製造方法で得た細胞培養基材の表面 、重合体(B)が層を形成して細胞培養基材の 面を覆っているものではなく、複合体(X)の 層の中から重合体(B)が伸び出て、該薄層の 面も適宜露出しているような構造になって る。重合体(B)は、複合体(X)の薄層中から表 までイオン結合や水素結合などにより粘土 物またはシリカに結合しており、物理的な や水中でもその結合が切れることなく、安 な構造になっている。また、培養される細 の種類に応じて、重合体(B)の長さ(分子量) 含有量を適宜調整することができる。

 以下、実施例により本発明を具体的に説 するが、本発明の範囲がこれらの実施例に み限定されるものではない。

(実施例1)
[光重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させた溶液(G )の調整]
 溶媒(E)として、エタノール9.8g、非水溶性の 光重合開始剤(D)として1-ヒドロキシシクロヘ シルフェニルケトン「イルガキュアー184」( チバガイギー社製)0.2gを、均一に混合して溶 (G1)を調製した。

[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、非水溶 の光重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む反応液(F )の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)1.3g、粘土鉱物(B)とし てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製:水膨潤 の合成ヘクトライト)0.04g、非水溶性の光重 開始剤(D)として溶液(G1)25μl、水媒体(W)とし 水10g、を均一に混合して反応液(F1)を調製し 。

[有機無機複合体分散液の作製]
 上記反応液(F1)をマグネチックスターラーで 攪拌しながら、365nmにおける紫外線強度が40mW /cm 2 の紫外線を180秒照射し、白色を呈する有機無 機複合体分散液(MNC0.5M1)を作製した。

 上記有機無機複合体分散液(MNC0.5M1)につい て、粒度分布測定装置(Microtrac UPA150型、日機 装株式会社製)を用いて粒度分布を測定した ころ、平均粒径は180nmであった。

 上記有機無機複合体分散液(MNC0.5M1)を純水で 10倍希釈した後、同量の0.5質量%RuO 4 水溶液と混合し、複合体粒子の染色を行った 。次いで、この水溶液を支持膜付き銅製網に 滴下し、乾燥して、透過型電子顕微鏡(JEM-2200 FS型、日本電子株式会社製、加速電圧:200KV)を 用いてTEM-EDSマッピング測定を行った(複合体( X)微粒子中の粘土鉱物の分布を分析する)とこ ろ、粘土鉱物が微粒子中に均一に分散してい ることが観測された。複合体微粒子のTEM写真 及びEDSマッピング写真を図2に示す。図2の(a) 有機無機複合体粒子のTEM写真であり、(b)は (a)のTEM写真中の粒子の珪素(Si)のEDSマッピン グ写真であり、(c)は、(a)のTEM写真中の粒子の マグネシウム(Mg)のEDSマッピング写真である (b)及び(c)は、(a)と同一視野、同一倍率の写 である。なお、撮影サンプル作成工程の都 上、水媒体中に遊離している粘土鉱物も乾 によりバックグラウンドに残留するため、 子以外の部分にもSiとMgの存在が認められる

 上記有機無機複合体分散液(MNC0.5M1)をガラス 製のスクリュー管に入れ密閉した状態で室温 (約23℃)3ヶ月静置して、沈殿や粒径分布の変 はなかった。
この反応系のRa=0.03、粘土鉱物(B)の濃度(質量% )=0.40(%)<12.4Ra+0.05=0.42

(実施例2)
[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、非水溶 の光重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む反応液(F )の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)0.64g、粘土鉱物(B)と てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.12g、 水溶性の光重合開始剤(D)として溶液(G1)25μl 水媒体(W)として水10g、を均一に混合して反 液(F2)を調製した。

[有機無機複合体分散液の作製]
 上記反応液(F2)をマグネチックスターラーで 攪拌しながら、365nmにおける紫外線強度が40mW /cm 2 の紫外線を180秒照射し、やや乳白色を呈する 有機無機複合体分散液(MNC1.5M0.5)を作製した。

 上記有機無機複合体分散液(MNC1.5M0.5)につ て、粒度分布測定装置(Microtrac UPA150型、日 装株式会社製)を用いて粒度分布を測定した ところ、平均粒径は70nmであった。

 上記有機無機複合体分散液(MNC1.5M0.5)を実 例1と同様にして前処理、乾燥し、透過型電 子顕微鏡を用いてTEM-EDSマッピング測定を行 たところ、粘土鉱物が微粒子の表面部に局 したコアシェル構造が観測された。複合体 粒子のTEM写真及びEDSマッピング写真を図3に す。図3の(a)は有機無機複合体粒子のTEM写真 であり、(b)は、(a)のTEM写真中の粒子の珪素(Si )のEDSマッピング写真であり、(c)は、(a)のTEM 真中の粒子のマグネシウム(Mg)のEDSマッピン 写真である。

 この反応系のRa=0.19、粘土鉱物(B)の濃度( 量%)=1.19(%)<0.87Ra+2.17=2.34

(実施例3)
[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、非水溶 の光重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む反応液(F )の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)1.0g、粘土鉱物(B)とし てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.2g、非 溶性の光重合開始剤(D)として溶液(G1)25μl、 媒体(W)として水10gを均一に混合して反応液( F3)を調製した。

[有機無機複合体分散液の作製]
 上記反応液(F3)をマグネチックスターラーで 攪拌しながら、365nmにおける紫外線強度が40mW /cm 2 の紫外線を180秒照射し、やや乳白色を呈する 有機無機複合体分散液(MNC2.5M0.8)を作製した。

 上記有機無機複合体分散液(MNC2.5M0.8)につ て、粒度分布測定装置(Microtrac UPA150型、日 装株式会社製)を用いて粒度分布を測定した ところ、平均粒径は70nmであった。

 上記有機無機複合体分散液(MNC2.5M0.8)を実 例1と同様にして前処理、乾燥し、透過型電 子顕微鏡を用いてTEM-EDSマッピング測定を行 たところ、粘土鉱物が微粒子中に均一に分 していることが観測された。

 この反応系のRa=0.20、粘土鉱物(B)の濃度( 量%)=1.96(%)<0.87Ra+2.17=2.34

(実施例4)
[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、水溶性 重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む反応液(F)の 製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)0.32g、粘土鉱物(B)と てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.08g、 溶性の重合開始剤(D)としてペルオキソ二硫 カリウムの2質量%水溶液を50μl、触媒としてN  , N,N″,N″-テトラメチルエチレンジアミン8 μl、水媒体(W)として予め窒素でバブリングし 酸素を除去した水10gを均一に混合して反応液 (F4)を調製した。

[有機無機複合体分散液の作製]
 上記反応液(F4)を室温で15時間攪拌し、やや 白色を呈する有機無機複合体分散液(MNC1M0.25 )を作製した。
上記有機無機複合体分散液(MNC1M0.25)について 粒度分布測定装置(Microtrac UPA150型、日機装 式会社製)を用いて粒度分布を測定したとこ ろ、平均粒径は60nmであった。

 上記有機無機複合体分散液(MNC1M0.25)を実 例1と同様にして前処理、乾燥し、透過型電 顕微鏡を用いてTEM-EDSマッピング測定を行っ たところ、粘土鉱物が微粒子中に均一に分散 していることが観測された。

 この反応系のRa=0.25、粘土鉱物(B)の濃度( 量%)=0.79(%)<0.87Ra+2.17=2.39

(実施例5)
[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、非水溶 の光重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む反応液(F )の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)0.32g、粘土鉱物(B)と てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.16g、 水溶性の光重合開始剤(D)として溶液(G1)25μl 界面活性剤として20質量%のドデシルベンゼ スルホン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会 製50μl、水媒体(W)として水10gを均一に混合 て反応液(F5)を調製した。

[有機無機複合体分散液の作製]
 上記反応液(F5)をマグネチックスターラーで 攪拌しながら、365nmにおける紫外線強度が40mW /cm 2 の紫外線を180秒照射し、やや乳白色を呈する 有機無機複合体分散液(MNC2M0.25)を作製した。

 上記有機無機複合体分散液(MNC2M0.25)につ て、粒度分布測定装置(Microtrac UPA150型、日 装株式会社製)を用いて粒度分布を測定した ころ、平均粒径は80nmであった。

 上記有機無機複合体分散液(MNC2M0.25)を乾 し、透過型電子顕微鏡(JEM-2200FS型、日本電子 株式会社製)を用いてTEM-EDSマッピング測定を った(複合体(X)微粒子中の粘土鉱物の分布を 分析する)ところ、粘土鉱物が微粒子中に均 に分散していることが観測された。

 この反応系のRa=0.5、粘土鉱物(B)の濃度(質 量%)=1.57(%)<0.87Ra+2.17=2.61

[有機無機複合体分散液の乾燥皮膜を表面に する細胞培養基材の調製]
 上記有機無機複合体分散液(MNC2M0.25)を厚み 100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製フ ィルムの表面に厚み約100μmになるように塗布 し、50℃、1時間乾燥させて、50℃の滅菌水で 浄し50℃、2時間乾燥させて細胞培養基材1を 調製した。乾燥後の複合体(X)の乾燥皮膜は透 明であり、厚みは約6μmであった。

 上記乾燥皮膜にカッターナイフを用いて 1×1mm四方の碁盤目の切り傷を入れた後、碁 目を入れた所にセロハンテープを強く圧着 せ、テープの端を45°の角度で急速に引き剥 がし、碁盤目の状態を観察したところ、塗膜 は全く剥離せず、基材との接着性が良好であ ることが確認された。

[細胞培養試験]
 上記の細胞培養基材1を直径5cmのポリスチレ ン製シャーレ(Tissue Culture Dish、AGCテクノグ ス株式会社製)に入れ、培地としてMEA培地(セ ルシステムズ社製)にFBSを10%添加したものを いて、Balb3T3細胞(株化マウス線維芽細胞)の 養を5%二酸化炭素中、37℃で行った。4日目で 細胞培養基材1の表面を観察したところ、細 が十分増殖していることが観察された。

 一方、洗浄済みのPETフィルムのみを用い 、上記と同様な培養試験を行ったところ、4 日目でPETフィルムの表面を観察したところ、 細胞が見られず、細胞が全く増殖していなか った。

 この実施例より、細胞が増殖できない基 の上に本発明の複合体(X)の乾燥皮膜を貼り けることにより、細胞培養機能が付与され ことが分かる。また、温水洗浄や37℃での 養においては複合体皮膜がPETフィルムから がれることなく、十分な接着性を有するこ が理解できる。

(実施例6)
[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、非水溶 の光重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む反応液(F )の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)0.18g、粘土鉱物(B)と てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.32g、 水溶性の光重合開始剤(D)として溶液(G1)25μl 水媒体(W)として水10gを均一に混合して反応 (F6)を調製した。

[有機無機複合体分散液の作製]
 上記反応液(F6)をマグネチックスターラーで 攪拌しながら、365nmにおける紫外線強度が40mW /cm 2 の紫外線を180秒照射し、やや乳白色を呈する 有機無機複合体分散液(MNC4M0.14)を作製した。

 上記有機無機複合体分散液(MNC4M0.14)につ て、粒度分布測定装置(Microtrac UPA150型、日 装株式会社製)を用いて粒度分布を測定した ころ、平均粒径は80nmであった。

 上記有機無機複合体分散液(MNC4M0.14)を乾 し、透過型電子顕微鏡(JEM-2200FS型、日本電子 株式会社製)を用いてTEM-EDSマッピング測定を った(複合体(X)微粒子中の粘土鉱物の分布を 分析する)ところ、粘土鉱物が微粒子中に均 に分散していることが観測された。

 この反応系のRa=1.8、粘土鉱物(B)の濃度(質 量%)=3.10(%)<0.87Ra+2.17=3.74

(実施例7)
[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、非水溶 の光重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む反応液(F )の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)0.9g、粘土鉱物(B)とし てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.06g、非 水溶性の光重合開始剤(D)として溶液(G1)25μl、 水媒体(W)として水10g、を均一に混合して反応 液(F7)を調製した。
[有機無機複合体分散液の作製]
 上記反応液(F7)をマグネチックスターラーで 攪拌しながら、365nmにおける紫外線強度が40mW /cm 2 の紫外線を180秒照射し、やや乳白色を呈する 有機無機複合体分散液(MNC0.75M0.7)を作製した

 上記有機無機複合体分散液(MNC0.75M0.7)につ いて、粒度分布測定装置(Microtrac UPA150型、日 機装株式会社製)を用いて粒度分布を測定し ところ、平均粒径は80nmであった。

 上記有機無機複合体分散液(MNC0.75M0.7)を実 施例1と同様にして前処理、乾燥し、透過型 子顕微鏡を用いてTEM-EDSマッピング測定を行 たところ、粘土鉱物が微粒子の表面部に局 したコアシェル構造が観測された。

 この反応系のRa=0.067、粘土鉱物(B)の濃度( 量%)=0.60(%)<12.4Ra+0.05=0.88

(実施例8)
[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、非水溶 の光重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む反応液(F )の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)0.048g、粘土鉱物(B)と てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.48g、 水溶性の光重合開始剤(D)として溶液(G1)25μl 水媒体(W)として水10g、を均一に混合して反 液(F8)を調製した。

[有機無機複合体分散液の作製]
 上記反応液(F8)をマグネチックスターラーで 攪拌しながら、365nmにおける紫外線強度が40mW /cm 2 の紫外線を180秒照射し、やや乳白色を呈する 有機無機複合体分散液(MNC6M0.04)を作製した。

 上記有機無機複合体分散液(MNC6M0.04)につ て、粒度分布測定装置(Microtrac UPA150型、日 装株式会社製)を用いて粒度分布を測定した ころ、平均粒径は80nmと2.5μmであった。

 上記有機無機複合体分散液(MNC6M0.04)を実 例1と同様にして前処理、乾燥し、透過型電 顕微鏡を用いてTEM-EDSマッピング測定を行っ たところ、粘土鉱物が微粒子中に均一に分散 していることが観測された。

 この反応系のRa=10、粘土鉱物(B)の濃度(質 %)=4.58(%)<0.87Ra+2.17=10.87

(実施例9)
[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、水溶性 重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む反応液(F)の 製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)0.026g、粘土鉱物(B)と てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.02g、 溶性の重合開始剤(D)としてペルオキソ二硫 カリウムの2質量%水溶液を50μl、触媒として N , N,N″,N″-テトラメチルエチレンジアミン 8μl、水媒体(W)として予め窒素でバブリング 酸素を除去した水10gを均一に混合して反応 (F9)を調製した。

[有機無機複合体分散液の作製]
 上記反応液(F9)を室温で15時間攪拌し、やや 白色を呈する有機無機複合体分散液(MNC0.25M0 .02)を作製した。

 上記有機無機複合体分散液(MNC0.25M0.02)に いて、粒度分布測定装置(Microtrac UPA150型、 機装株式会社製)を用いて粒度分布を測定し ところ、平均粒径は160nmであった。

 上記有機無機複合体分散液(MNC0.25M0.02)を 施例1と同様にして前処理、乾燥し、透過型 子顕微鏡を用いてTEM-EDSマッピング測定を行 ったところ、粘土鉱物が微粒子中に均一に分 散していることが観測された。

 この反応系のRa=0.77、粘土鉱物(B)の濃度( 量%)=0.20(%)<0.87Ra+2.17=2.84

(実施例10)
 この実施例は式(1)のモノマーとその他のモ マーとの共重合体(A)と、粘土鉱物(B)とから る複合体(X)の粒子の分散液を製造したもの ある。
[モノマー(a)、その他のモノマー、水膨潤性 土鉱物(B)、非水溶性の光重合開始剤(D)、水 体(W)を含む反応液(F)の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)0.2944g、その他のモノ マーとしてメトキシポリエチレングリコール アクリレート「商品名:NKエステルAM-90G」(新 村化学工業株式会社製)0.0964g、粘土鉱物(B)と してLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.02g、 非水溶性の光重合開始剤(D)として溶液(G1)25μl 、水媒体(W)として水10g、を均一に混合して反 応液(F10)を調製した。
[有機無機複合体分散液の作製]
 上記反応液(F10)をマグネチックスターラー 攪拌しながら、365nmにおける紫外線強度が40m W/cm 2 の紫外線を180秒照射し、やや乳白色を呈する 有機無機複合体分散液(M/AM90G8NC0.25M0.25)を作製 した。

 上記有機無機複合体分散液(M/AM90G8NC0.25M0.25) ついて、粒度分布測定装置(Microtrac UPA150型 日機装株式会社製)を用いて粒度分布を測定 したところ、平均粒径は70nmであった。
上記有機無機複合体分散液(M/AM90G8NC0.25M0.25)を 実施例1と同様にして前処理、乾燥し、透過 電子顕微鏡を用いてTEM-EDSマッピング測定を ったところ、粘土鉱物が微粒子中に均一に 散していることが観測された。
この反応系のRa=0.05、粘土鉱物(B)の濃度(質量% )=0.20(%)<12.4Ra+0.05=0.67

(実施例11)
[複合体(X)の乾燥皮膜の調製]
 実施例5で調製した有機無機複合体分散液(MN C2M0.25)を液の厚みが2mmになるようポリプロピ ン性容器に入れ、50℃、5時間乾燥させて、 み約80μm、無色透明で柔軟性のあるフィル を得た。

 このフィルムを、引っ張り試験機(AGS-H型 島津製作所製)を用いて、測定したところ、 破断点応力は15MPaで、破断点歪みは36%であっ 。

(実施例12)
[防曇性を有する複合体(X)の塗膜の調製]
 上記実施例1で調製した有機無機複合体分散 液(MNC0.5M1)にポリーNーイソプロピルアクリル ミド(平均分子量約250000、創和科学株式会社 製)を1.5質量%になるように添加し均一に混合 た後、ガラス板に厚み約50μmになるように 布し、80℃、60分乾燥させて、防曇性塗膜1を 調製した。乾燥後の複合体(X)の乾燥皮膜の厚 みは約5μmであった。

 この塗膜にカッターナイフを用いて、1×1 mm四方の碁盤目の切り傷を入れた後、碁盤目 入れた所にセロハンテープを強く圧着させ テープの端を45°の角度で急速に引き剥がし 、碁盤目の状態を観察したところ、塗膜は全 く剥離せず、基材との接着性が良好であるこ とが確認された。

 また、この塗膜を50℃の水から発生した 蒸気に約1分間暴露したところ(塗膜と水面間 の距離が約5cm)、塗膜は全く曇らなかった。

 更に、この塗膜を50℃の水に24時間浸漬し た後、室温で乾燥させて、再び上記の水蒸気 に約1分間暴露させたところ、塗膜は全く曇 なかった。

 この実施例より、親水性高分子(ポリアクリ ル酸)を含有する複合体(X)の塗膜が、基材と 接着性が良好で、防曇性を有し、熱水洗浄 ても、その防曇性が維持されていることが かる。
(実施例13)
[モノマー(a)、シリカ(B)、非水溶性の光重合 始剤(D)、水媒体(W)を含む反応液(F)の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)0.32g、シリカ(B)とし スノーテックス20(20重量%のコロイダルシリ 水溶液、日産化学工業株式会社製)0.1g(固形 0.02g)、非水溶性の光重合開始剤(D)として溶 (G1)25μl、水媒体(W)として水10g、を均一に混 して反応液(F13)を調製した。

[有機無機複合体分散液の作製]
 上記反応液(F13)をマグネチックスターラー 攪拌しながら、365nmにおける紫外線強度が40m W/cm 2 の紫外線を180秒照射し、淡い乳白色を呈する 有機無機複合体分散液13を作製した。

 上記有機無機複合体分散液13について、 度分布測定装置(Microtrac UPA150型、日機装株 会社製)を用いて粒度分布を測定したところ 平均粒径は50nmであった。

 上記有機無機複合体分散液13を実施例1と 様にして前処理、乾燥し、透過型電子顕微 を用いてTEM-EDSマッピング測定を行ったとこ ろ、シリカが微粒子中に均一に分散している ことが観測された。

 この反応系のRa=0.0625、粘土鉱物(B)の濃度(質 量%)=0.20(%)<12.4Ra+0.05=0.83
(実施例14)
[パターン状乾燥皮膜及び培養基材の作製]
 実施例13の分散液(13)を、単ノズルパルスイ クジェクター(クラスターテクノロジー(株) )を用いて、厚さ1mmのポリスチレン板に、太 さ100μm、間隔が約200μmになるように、線状に 塗布し、自然乾燥させて、複合体(X)のパター ン状乾燥皮膜14を得た。

 次いで、この乾燥皮膜を、滅菌水により 浄した後、滅菌袋中で40℃、5時間乾燥して 細胞培養基材14を得た。この細胞培養基材14 を光学顕微鏡で観察したところ、ポリスチレ ン板の上に太さが約100μmの線が形成されてい るパターンが観察された。線と線の間隔は約 192μmであった(図4参照)。

 また、比較のため、適量の分散液(13)を、 ポリスチレン板の上に載せ、スピンコーター を用いて2000回転でポリスチレン板の表面に く塗布し、80℃の熱風乾燥器中で10分間乾燥 せた。次いで、滅菌水によりポリスチレン を洗浄した後、滅菌袋中で40℃、5時間乾燥 て、細胞培養基材14″を得た。

 [Balb3T3細胞(マウス腫瘍線維芽細胞)の培養]
 上記得られた細胞培養基材14を60mmポリスチ ン製シャーレ(60mm/Non-Treated Dish、旭テクノ ラス株式会社製)に入れ、Doulbecco's modified Ea gle's Medium(DMEM)培地(FBSを10%添加)(日水製薬株 会社製)を適量入れ、Balb3T3細胞を播種して( 種濃度は1.0×10 4 個/cm 2 )、5%二酸化炭素中、37℃で培養を行った。22 間増殖させた細胞を顕微鏡で確認したとこ 、細胞が線状に増殖したことが観察された( 5)。更に、46時間増殖させた細胞を顕微鏡で 確認したところ、塗布部分及び未塗布部分が ほぼ全面に細胞に覆われていることが観察さ れた(図6)。次いで4℃の培地を用いて培地交 し、スポイトで軽く培地を吸ったり出した する操作(ピペッティング操作という)を数回 繰り返したところ、細胞が細胞培養基材14か 薄膜状に剥離したことが観察された。剥離 た細胞部分の面積は剥離前の増殖した細胞 総面積の約95%であった。

 一方、前記の細胞培養基材14″を用いて 同様にBalb3T3細胞を46時間培養したところ、 布部が全面に細胞に覆われていることが観 された。次いで4℃の培地を用いて培地交換 、スポイトで軽くピペッティング操作を数 繰り返したところ、細胞は殆ど剥離しなか た。

 更に、前記のポリスチレン板(未塗布のも の)を用いて、同様にBalb3T3細胞を培養したと ろ、細胞は殆ど増殖しなかった。この結果 ら、このポリスチレン板は播種した細胞を 養することができない基材であることが分 る。

 上記実施例14より、分散液(13)を線のパター 状に塗布することにより、分散液(13)を全面 に塗布した細胞培養基材14″と同じように、 胞が非塗布面を乗り越えて、塗布面及び非 布面全体に渡って増殖することができ、更 、増殖した細胞層が支持体の塗布部分とし 接着点がなく、外部の刺激(冷却、ピペッテ ィング)により、細胞が容易に剥離できたこ が理解できる。
(実施例15)
[モノマー(a)、その他のモノマー、水膨潤性 土鉱物(B)、非水溶性の光重合開始剤(D)、水 体(W)を含む反応液(F)の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)0.27g、その他のモノ ーとしてメトキシポリエチレングリコール クリレート「商品名:NKエステルAM-90G」(新中 化学工業株式会社製:一般式(1)の化合物であ り、R 1 が水素原子H、R 2 がエチレン基、R 3 がメチル基であり、nが9である。)0.18g、粘土 物(B)としてLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社 )0.02g、非水溶性の光重合開始剤(D)として溶 (G1)25μl、水媒体(W)として水10g、を均一に混 して反応液(F15)を調製した。
[有機無機複合体分散液の作製]
 上記反応液(F15)をマグネチックスターラー 攪拌しながら、365nmにおける紫外線強度が40m W/cm 2 の紫外線を180秒照射し、やや乳白色を呈する 有機無機複合体分散液(15)を作製した。

 上記有機無機複合体分散液(15)について、 粒度分布測定装置(Microtrac UPA150型、日機装株 式会社製)を用いて粒度分布を測定したとこ 、平均粒径は70nmであった。

 上記有機無機複合体分散液(15)を実施例1と 様にして前処理、乾燥し、透過型電子顕微 を用いてTEM-EDSマッピング測定を行ったとこ 、粘度鉱物が微粒子中に均一に分散してい ことが観測された。この反応系のRa=0.074、 土鉱物(B)の濃度(質量%)=0.20(%)<12.4Ra+0.05=0.97
[細胞培養基材の作製]
 分散液(15)を、60mmポリスチレン製シャーレ(6 0mm/Non-Treated Dish、旭テクノグラス株式会社製 )に入れ、スピンコーターを用いて2000回転で ャーレの表面に薄く塗布し、80℃の熱風乾 器中で10分間乾燥させて乾燥皮膜を得た。次 いで、滅菌水によりシャーレを洗浄した後、 滅菌袋中で40℃、5時間乾燥して、細胞培養基 材15を得た。

 上記乾燥皮膜にカッターナイフを用いて、1 ×1mm四方の碁盤目の切り傷を入れた後、碁盤 を入れた所にセロハンテープを強く圧着さ 、テープの端を45°の角度で急速に引き剥が し、碁盤目の状態を観察したところ、塗膜は 全く剥離せず、基材との接着性が良好である ことが確認された。
[正常ヒト真皮線維芽細胞の培養]
 上記得られた細胞培養基材15に、CS-C complete  medium(Cell Systems社製培地)を適量入れ、正常 ト真皮線維芽細胞を播種して(播種濃度は1.2 ×10 4 個/cm 2 )、5%二酸化炭素中、37℃で培養を行った。5日 間増殖させた細胞を顕微鏡で確認したところ 、シャーレ一面に細胞に覆われていることが 観察された。次いで、シャーレ内の培地を吸 い取り、4℃の培地を入れ、一定時間静置さ 、増殖した細胞の自然剥離を行った。その 果、細胞が徐々に剥離し、約20分でほぼ全て の細胞が薄膜状に剥離した。

 上記実施例15より、分散液(15)で塗布した 面が、37℃では細胞に対する接着性を示し 細胞が増殖できるが、温度を下げることに り、細胞が塗膜表面から自然に剥離するこ が理解できる。

(比較例1)
[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、水溶性 重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む分散液(L)の 製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)1.8g、粘土鉱物(B)とし てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.018g、 溶性の重合開始剤(D)としてペルオキソ二硫 カリウムの2質量%水溶液を50μl、触媒としてN  , N,N″,N″-テトラメチルエチレンジアミン8 μl、水媒体(W)として予め窒素でバブリングし 酸素を除去した水10gを均一に混合して反応液 (F1C)を調製した。

 上記反応液(F1C)を室温で15時間攪拌したとこ ろ、部分的に大きなゲル状塊が形成した不均 一な分散液になった。この不均一な分散液を そのまま長時間攪拌しても大きなゲル状塊の 溶解や分散はしなかった。
この反応系のRa=0.01、粘土鉱物(B)の濃度(質量% )=0.18>12.4Ra+0.05=0.17

(比較例2)
[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、水溶性 重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む分散液(L)の 製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)1.7g、粘土鉱物(B)とし てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.05g、水 溶性の重合開始剤(D)としてペルオキソ二硫酸 カリウムの2質量%水溶液を50μl、触媒としてN , N,N″,N″-テトラメチルエチレンジアミン8 l、水媒体(W)として予め窒素でバブリングし 素を除去した水10gを均一に混合して反応液( F2C)を調製した。

 上記反応液(F2C)を室温で15時間攪拌したと ころ、部分的に大きなゲル状塊が形成した不 均一な分散液になった。この不均一な分散液 をそのまま長時間攪拌しても大きなゲル状塊 の溶解や分散はしなかった。

 この反応系のRa=0.03、粘土鉱物(B)の濃度( 量%)=0.50>12.4Ra+0.05=0.42

(比較例3)
[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、水溶性 重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む分散液(L)の 製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)1.28g、粘土鉱物(B)と てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.08g以 は、上記比較例2と同様にして反応液(F3C)を 製した。

 上記反応液(F3C)を室温で15時間攪拌したと ころ、ほぼ全体がゲル化した。このゲルを大 量の水に入れても溶解や分散せずゲルのまま であった。

 この反応系のRa=0.06、粘土鉱物(B)の濃度( 量%)=0.79=12.4Ra+0.05=0.79

(比較例4)
[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、水溶性 重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む分散液(L)の 製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)1.28g、粘土鉱物(B)と てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.16g以 は、上記比較例2と同様にして反応液(F4C)を 製した。

 上記反応液(F4C)を室温で15時間攪拌したと ころ、ほぼ全体がゲル化した。このゲルを大 量の水に入れても溶解や分散せずゲルのまま であった。

 この反応系のRa=0.125、粘土鉱物(B)の濃度( 量%)=1.60=12.4Ra+0.05=1.60

(比較例5)
[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、非水溶 の光重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む分散液(L )の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)1.28g、粘土鉱物(B)と てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.24g、 水溶性の重合開始剤(D)として溶液(G1)25μl、 媒体(W)として水10gを均一に混合して反応液(F 5C)を調製した。

 上記反応液(F5C)をマグネチックスターラー 攪拌しながら、365nmにおける紫外線強度が40m W/cm 2 の紫外線を180秒照射したところ、反応液(F5C) 体がゲル化した。このゲルを大量の水に入 ても溶解や分散せずゲルのままであった。

 この反応系のRa=0.19、粘土鉱物(B)の濃度( 量%)=2.34%=0.87Ra+2.17=2.34

(比較例6)
[モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(B)、非水溶 の光重合開始剤(D)、水媒体(W)を含む分散液(L )の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)0.22g、粘土鉱物(B)と てLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.40g、 水溶性の重合開始剤(D)として溶液(G1)25μl、 媒体(W)として水10gを均一に混合して反応液(F 6C)を調製した。

 上記反応液(F6C)をマグネチックスターラー 攪拌しながら、365nmにおける紫外線強度が40m W/cm 2 の紫外線を180秒照射したところ、反応液(F6C) 体がゲル化した。このゲルを大量の水に入 ても溶解や分散せずゲルのままであった。

 この反応系のRa=1.82、粘土鉱物(B)の濃度(質 %)=3.85%>0.87Ra+2.17=3.75
 上記実施例及び比較例から、本発明の有機 機複合体分散液は、粒径制御が容易で、分 液の安定性がよく、PETやガラスなど基材と 接着性が良好である。また、この複合体分 液を乾燥させて得た乾燥皮膜は、高い強度 柔軟性及び高い透明性を持ち、優れた細胞 養機能や生態適合性、防曇性を有している 更に、製造方法によれば酸素を除去するこ なく極短時間で、広い範囲の粘土鉱物含有 において、粘土鉱物と有機高分子が異なる 造で複合することができ、優れた分散安定 や皮膜形成能を示す有機無機複合体分散液 製造できることが明らかであった。

<下限臨界溶解温度を有する重合体(B)を含 する細胞培養基材の実施例と比較例>
 以下の実施例及び比較例は、下限臨界溶解 度を有する重合体(B)を含有する細胞培養基 の実施例、及びそれに対する比較例である
(実施例16)
第一の製造方法で細胞培養基材を製造する例 である。
[モノマー(a)、無機材料(C)、水媒体(W)を含む 応液の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)0.6g、無機材料(C)とし て水膨潤性粘土鉱物Laponite XLG(Rockwood Additives  Ltd.社製)0.3g、水媒体(W)として水20g、を均一 混合して反応液(F17)を調製した。
[重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させた溶液の 整]
 溶媒(E)として、2-プロパノール9.8g、重合開 剤(D)として1-ヒドロキシシクロヘキシルフ ニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイ ー社製)0.2gを、均一に混合して溶液(S1)を調 した。
[複合体(X)の分散液(L)の調製(第1工程)]
 上記反応液(F17)全量に、溶液(S1)を50μl入れ 均一に分散させた後、365nmにおける紫外線強 度が40mW/cm 2 の紫外線を180秒照射し乳白色の複合体(X)の分 散液(L1)を作製した。

 この反応系のRa=0.5、無機材料(C)の濃度(質量 %)=1.48(%)<0.87Ra+2.17=2.61
[複合体(X)の薄層の調製(第2工程)]
 直径50mmのポリスチレン製シャーレ(アドバ テック東洋株式会社製、PD-50K)に、上記複合 (X)の分散液(L1)を入れ、スピンコーターを用 いて2000回転で該分散液をシャーレの表面に く塗布した後、80℃の熱風乾燥器中で10分間 燥させ、複合体(X)の薄層を調製した。
[重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させた溶液の 布(第3工程)]
 前記溶液(S1)をシャーレに入れ、スピンコー ターにより2000回転で薄く塗布して、室温で5 間静置してエタノールを揮発させ、重合開 剤(D)を複合体(X)の薄層表面に塗布した。
[細胞培養基材の作製(第4工程)]
 10質量%のN―イソプロピルアクリルアミド( ノマー(b)、株式会社興人製)水溶液2mlをシャ レに入れ、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm 2 の紫外線を60秒照射して、N-イソプロピルア リルアミドを重合させた。次いで、滅菌水 よりシャーレを洗浄した後、滅菌袋中でシ ーレを40℃、5時間乾燥させて、細胞培養基 16を得た。

 乾燥後の乾燥皮膜にカッターナイフを用い 、1×1mm四方の碁盤目の切り傷を入れた後、 盤目を入れた所にセロハンテープを強く圧 させ、テープの端を45°の角度で急速に引き 剥がし、碁盤目の状態を観察したところ、塗 膜は全く剥離せず、基材との接着性が良好で あることが確認された。
[正常ヒト真皮線維芽細胞の培養]
 上記得られた細胞培養基材16に、CS-C complete  medium(Cell Systems社製培地)を適量入れ、正常 ト真皮線維芽細胞を播種して(播種濃度は1.2 ×10 4 個/cm 2 )、5%二酸化炭素中、37℃で培養を行った。細 が十分増殖したのを確認して、その(37℃の) 培地を吸い取り、4℃の培地を入れ、一定時 静置させ、増殖した細胞を自然剥離させた 剥離した細胞部分の面積と剥離前に増殖し 細胞の総面積との比を求めた。またこの剥 にかかった時間を記録した。(表1、細胞の剥 離回収率=93%、所要時間は18分であった)。
(実施例17)
この実施例は第一の製造方法で細胞培養基材 を製造する例である。

 第4工程のモノマー(b)として、N―イソプ ピルアクリルアミドの17質量%の水溶液を用 たこと以外は、実施例16と同様にして細胞培 養基材17を作製した。

 実施例16と同様に乾燥後の乾燥皮膜の接 性を確認したところ、塗膜は全く剥離せず 基材との接着性が良好であることが確認さ た。

 [正常ヒト真皮線維芽細胞の培養]
 実施例16と同様にして、正常ヒト真皮線維 細胞を培養した。細胞が十分増殖したのを 認して、その(37℃の)培地を4℃の培地に交換 し、一定時間静置させ、増殖した細胞を自然 剥離させた。剥離した細胞部分の面積と剥離 前に増殖した細胞の総面積との比を求めた。 またこの剥離にかかった時間を記録した。( 1、細胞の剥離回収率=98%、所要時間は10分で った)。

 上記実施例16、17より、モノマー(b)の濃度を 増加させることにより、細胞剥離性の増加が 見られた。
(実施例18)
この実施例は第二の製造方法で細胞培養基材 を製造する例である。
[モノマー(a)、無機材料(C)、水媒体(W)を含む 応液の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)1.28g、無機材料(C)と て水膨潤性粘土鉱物Laponite XLG(Rockwood Additive s Ltd.社製)0.24g、水媒体(W)として水10g、を均 に混合して反応液(F18)を調製した。
[重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させた溶液の 整]
 実施例16と同様な溶液(S1)を用いた。
[複合体(X)の薄層調製(第1工程)]
 上記反応液(F18)全量に、溶液(S1)を50μl入れ 均一に分散させた後、直径50mmのポリスチレ 製シャーレ(アドバンテック東洋株式会社製 、PD-50K)に入れ、スピンコーターを用いて2000 転でシャーレの表面に薄く塗布した後、365n mにおける紫外線強度が40mW/cm 2 の紫外線を180秒照射して、複合体(X)の薄層を 調製した。
[重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させた溶液の 布(第2工程)]
 前記溶液(S1)をシャーレに入れ、スピンコー ターにより2000回転で薄く塗布して、室温で5 間静置してエタノールを揮発させ、重合開 剤(D)を塗布した。
[細胞培養基材の作製(第3工程)]
 15質量%のN―イソプロピルアクリルアミド( ノマー(b)、株式会社興人製)水溶液2mlをシャ レに入れ、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm 2 の紫外線を60秒照射して、N-イソプロピルア リルアミドを重合させた。次いで、滅菌水 よりシャーレを洗浄した後、滅菌袋中でシ ーレを40℃、5時間乾燥して、細胞培養基材18 を得た。

 実施例16と同様に乾燥後の乾燥皮膜の接着 を確認したところ、塗膜は全く剥離せず、 材との接着性が良好であることが確認され 。
[正常ヒト真皮線維芽細胞の培養]
 上記得られた細胞培養基材18に、実施例16と 同様にして、正常ヒト真皮線維芽細胞を培養 した。細胞が十分増殖したのを確認して、そ の(37℃の)培地を4℃の培地に交換し、一定時 静置させ、増殖した細胞を自然剥離させた 剥離した細胞部分の面積と剥離前に増殖し 細胞の総面積との比を求めた。(表1、細胞 剥離回収率=100%、所要時間は12分であった)。
(実施例19)
この実施例は第二の製造方法で細胞培養基材 を製造する例である。

 第3工程のモノマー(b)として、N―イソプ ピルアクリルアミドの3質量%の水溶液を用い たこと以外は、実施例18と同様にして細胞培 基材19を作製した。

 実施例16と同様に乾燥後の乾燥皮膜の接着 を確認したところ、塗膜は全く剥離せず、 材との接着性が良好であることが確認され 。
[正常ヒト真皮線維芽細胞の培養]
 上記得られた細胞培養基材19に、実施例16と 同様にして、正常ヒト真皮線維芽細胞を培養 した。細胞が十分増殖したのを確認して、そ の(37℃の)培地を4℃の培地に交換し、一定時 静置させ、増殖した細胞を自然剥離させた 剥離した細胞部分の面積と剥離前に増殖し 細胞の総面積との比を求めた。(表1、細胞 剥離回収率=78%、所要時間は30分であった)。

 上記実施例18、19より、モノマー(b)の濃度を 変化させることにより、細胞剥離性の変化が 見られた。
(実施例20)
この実施例は第三の製造方法で細胞培養基材 を製造する例である。
[モノマー(a)、無機材料(C)、水媒体(W)を含む 応液の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)0.32g、無機材料(C)と て水膨潤性粘土鉱物Laponite XLG(Rockwood Additive s Ltd.社製)0.08g、界面活性剤として20重量%の デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(和光 薬工業株式会社製)水溶液100μl、水媒体(W)と して水10g、を均一に混合して反応液(F20)を調 した。
[重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させた溶液の 整]
 実施例16と同様な溶液(S1)を用いた。
[複合体(X)の分散液(L)の調製(第1工程)]
 上記反応液(F20)全量に、溶液(S1)を30μl入れ 均一に分散させた後、365nmにおける紫外線強 度が40mW/cm 2 の紫外線を180秒照射し乳白色の複合体(X)の分 散液(L2)を作製した。

 この反応系のRa=0.25、無機材料(C)の濃度(質 %)=0.79(%)<0.87Ra+2.17=2.39
[重合体(B)水溶液の調製]
 モノマー(b)としてN―イソプロピルアクリル アミド(株式会社興人製)1.7g、水10g、溶液(S1)14 0μl、を混合した後、該溶液を入れるガラス 器の周りを冷却しながら(約10℃)、365nmにお る紫外線強度が40mW/cm 2 の紫外線を180秒照射し、ポリN―イソプロピ アクリルアミドの水溶液を調製した。この 液に更に水を5g添加し、均一に混合した後、 DIGITAL VISCOMATE粘度計(MODEL VM-100A、山一電機株 式会社製)を用いてこの溶液の粘度を測定し 、粘度は368mPa・sであった。測定時の溶液温 は24.2℃であった。

 また、Shodex GPC System-21装置(昭和電工株式 社製)で測定した結果、このポリN―イソプロ ピルアクリルアミドの重量平均分子量Mwは3.40 ×10 6 であった。測定時の溶媒として10mmol/LのLiBrを 含有するN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を 使用した。分子量の計算に使用したポリスチ レン標準物質としては、STANDARD SH-75とSM-105キ ット(昭和電工株式会社製)を使用した。
[細胞培養基材の作製(第2工程)]
 分散液(L2)全量に、上記ポリN―イソプロピ アクリルアミドの水溶液を1.0g(固形分0.1g)入 、均一に混合した後、60mmポリスチレン製シ ャーレ(60mm/Non-Treated Dish、旭テクノグラス株 会社製)に入れ、スピンコーターを用いて200 0回転でシャーレの表面に薄く塗布し、80℃の 熱風乾燥器中で10分間乾燥させた。次いで、 菌水によりシャーレを洗浄した後、滅菌袋 でシャーレを40℃、5時間乾燥して、細胞培 基材20を得た。

 実施例16と同様に乾燥後の乾燥皮膜の接着 を確認したところ、塗膜は全く剥離せず、 材との接着性が良好であることが確認され 。
[正常ヒト真皮線維芽細胞の培養]
 上記得られた細胞培養基材20に、実施例16と 同様にして、正常ヒト真皮線維芽細胞を培養 した。細胞が十分増殖したのを確認して、そ の(37℃の)培地を4℃の培地に交換し、一定時 静置させ、増殖した細胞を自然剥離させた 剥離した細胞部分の面積と剥離前に増殖し 細胞の総面積との比を求めた。(表1、細胞 剥離回収率=100%、所要時間7分であった)。
(実施例21)
この実施例は第三の製造方法で細胞培養基材 を製造する例である。
第2工程のポリN―イソプロピルアクリルアミ の水溶液を0.7g用いたこと以外は、実施例20 同様にして細胞培養基材21を作製した。

 実施例16と同様に乾燥後の乾燥皮膜の接着 を確認したところ、塗膜は全く剥離せず、 材との接着性が良好であることが確認され 。
[正常ヒト真皮線維芽細胞の培養]
 上記得られた細胞培養基材21に、実施例16と 同様にして、正常ヒト真皮線維芽細胞を培養 した。細胞が十分増殖したのを確認して、そ の(37℃の)培地を4℃の培地に交換し、一定時 静置させ、増殖した細胞を自然剥離させた 剥離した細胞部分の面積と剥離前に増殖し 細胞の総面積との比を求めた。(表1、細胞 剥離回収率=100%、所要時間15分であった)。

 上記実施例20、21より、ポリN―イソプロピ アクリルアミド水溶液の添加量を変化させ ことにより、細胞剥離性(剥離時間)の変化が 見られた。
(実施例22)
この実施例は第三の製造方法で細胞培養基材 を製造する例である。
[重合体(B)水溶液の調製]
 モノマー(b)としてN―イソプロピルアクリル アミド(株式会社興人製)0.57g、水100g、を混合 、真空脱気により水溶液中の酸素を十分除 した後、開始剤として0.1gのK 2 S 2 O 8 (ペルオキソ二硫酸カリウム、和光純薬工業 式会社製)、触媒として80μlのN,N,N‘,N’-テト ラメチルエチレンジアミン(花王株式会社製) 添加して、20℃、20時間静置して、ポリN― ソプロピルアクリルアミドの水溶液(6)を得 。この水溶液を50℃に加熱し、ポリN―イソ ロピルアクリルアミドを沈殿させて、更に50 ℃の超純水で洗浄した後、80℃、6時間乾燥さ せて、固体状のポリN―イソプロピルアクリ アミドを作製した。

 Shodex GPC System-21装置(昭和電工株式会社製) 用いて、このポリN―イソプロピルアクリル アミドの分子量を測定した結果、重量平均分 子量Mwは6.0×10 4 であった。測定時の溶媒として10mmol/LのLiBrを 含有するN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を 使用した。分子量の計算に使用したポリスチ レン標準物質としては、STANDARD SH-75とSM-105キ ット(昭和電工株式会社製)を使用した。
[細胞培養基材の作製(第2工程)]
 実施例20の分散液(L2)全量に、上記固体状の リN―イソプロピルアクリルアミドを0.1g入 、均一に混合した後、60mmポリスチレン製シ ーレ(60mm/Non-Treated Dish、旭テクノグラス株 会社製)に入れ、スピンコーターを用いて2000 回転でシャーレの表面に薄く塗布し、80℃の 風乾燥器中で10分間乾燥させた。次いで、 菌水によりシャーレを洗浄した後、滅菌袋 でシャーレを40℃、5時間乾燥して、細胞培 基材22を得た。

 実施例16と同様に乾燥後の乾燥皮膜の接着 を確認したところ、塗膜は全く剥離せず、 材との接着性が良好であることが確認され 。
[正常ヒト真皮線維芽細胞の培養]
 上記得られた細胞培養基材22に、実施例16と 同様にして、正常ヒト真皮線維芽細胞を培養 した。細胞が十分増殖したのを確認して、そ の(37℃の)培地を4℃の培地に交換し、一定時 静置させ、増殖した細胞を自然剥離させた 剥離した細胞部分の面積と剥離前に増殖し 細胞の総面積との比を求めた。(表1、細胞 剥離回収率=79%、所要時間29分であった)。

 上記実施例20、22より、ポリN―イソプロピ アクリルアミドの添加量(0.1g)が同じく、ポ N―イソプロピルアクリルアミドの分子量を 化させることにより、細胞剥離性(剥離時間 )の変化が見られた。
(実施例23)
この実施例は第三の製造方法でパターン状の 細胞培養基材を製造する例である。

 実施例20の分散液(L2)全量に、実施例20の リN―イソプロピルアクリルアミドの水溶液 0.1g入れ、均一に混合した後、単ノズルパル スインクジェクター(クラスターテクノロジ (株)製)を用いて、厚さ1mmのポリスチレン板 、直径30μm、間隔が約20μmになるように、円 (点)状に塗布した。次いで、80℃の熱風乾燥 器中で10分間加熱処理させ、滅菌水によりこ ポリスチレン板を洗浄した後、滅菌袋中で リスチレン板を40℃、5時間乾燥して、細胞 養基材23を得た。

 この基材を光学顕微鏡で観察したところ、 リスチレン板の上に直径が約36μmの点が一 に形成されているパターンが観察された。 と点の間隔は約21μmであった(図7参照)。
[Balb3T3細胞(マウス腫瘍線維芽細胞)の培養]
 上記得られた細胞培養基材23を60mmポリスチ ン製シャーレ(60mm/Non-Treated Dish、旭テクノ ラス株式会社製)に入れ、Doulbecco's modified Ea gle's Medium(DMEM)培地(FBSを10%添加)(日水製薬株 会社製)を適量入れ、Balb3T3細胞を播種して( 種濃度は1.0×10 4 個/cm 2 )、5%二酸化炭素中、37℃で培養を行った。46 間増殖させた細胞を顕微鏡で確認したとこ 、塗布部分がほぼ全面に細胞に覆われてい ことが観察された。次いで37℃の培地を4℃ 培地に交換し、数分静置したところ、細胞 細胞培養基材23から剥離したことが観察され た。剥離した細胞部分の面積と剥離前に増殖 した細胞の総面積との比を求めた。またこの 剥離にかかった時間を記録した。(表1、細胞 剥離回収率=98%、所要時間は9分であった)。

 一方、上記ポリスチレン板を用いて、同 にBalb3T3細胞を培養したところ、細胞は殆ど 増殖しなかった。この結果から、このポリス チレン板は播種した細胞を培養することがで きない基材であることが分かる。

 上記実施例23より、少量のポリN―イソプロ ルアクリルアミドを添加した分散液(L2)を点 のパターン状に塗布することにより、全面に 塗布した細胞培養基材20と同じように塗布面 び未塗布面全体に渡って細胞を培養するこ ができ、更に、ポリN―イソプロピルアクリ ルアミドの添加量が少量でも、優れた細胞剥 離性を示したことが理解できる。
(実施例24)
この実施例は第三の製造方法で細胞培養基材 を製造する例である。
[モノマー(a)、無機材料(C)、水媒体(W)を含む 応液の調製]
 モノマー(a)としてポリオキシプロピレンモ アクリレート「ブレンマAP-400」(日本油脂株 式会社製)0.91g、シリカとしてスノーテックス 20(20重量%のコロイダルシリカ水溶液、日産化 学工業株式会社製)0.4g(固形分0.08g)、界面活性 剤として20重量%のドデシルベンゼンスルホン 酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製100μl 水媒体(W)として水10g、を均一に混合して反 液(F24)を調製した。
[重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させた溶液の 整]
 実施例16と同様な溶液(S1)を用いた。
[複合体(X)の分散液(L)の調製(第1工程)]
 上記反応液(F24)全量に、溶液(S1)を30μl入れ 均一に分散させた後、365nmにおける紫外線強 度が40mW/cm 2 の紫外線を180秒照射し淡い乳白色の複合体(X) の分散液(L3)を作製した。

 この反応系のRa=0.09、無機材料(C)の濃度(質 %)=0.79(%)<12.4Ra+0.05=1.17
[細胞培養基材の作製(第2工程)]
 分散液(L3)全量に、実施例20のポリN―イソプ ロピルアクリルアミド水溶液(5)を0.7g入れ、 一に混合した後、60mmポリスチレン製シャー (60mm/Non-Treated Dish、旭テクノグラス株式会 製)に入れ、スピンコーターを用いて2000回転 でシャーレの表面に薄く塗布し、80℃の熱風 燥器中で10分間乾燥させた。次いで、滅菌 によりシャーレを洗浄した後、滅菌袋中で ャーレを乾燥して、細胞培養基材24を得た。

 実施例16と同様に乾燥後の乾燥皮膜の接着 を確認したところ、塗膜は全く剥離せず、 材との接着性が良好であることが確認され 。
[正常ヒト真皮線維芽細胞の培養]
 上記得られた細胞培養基材24に、実施例16と 同様にして、正常ヒト真皮線維芽細胞を培養 した。細胞が十分増殖したのを確認して、そ の(37℃の)培地を4℃の培地に交換し、増殖し 細胞を自然剥離させ、剥離した細胞部分の 積と剥離前に増殖した細胞の総面積との比 求めた。(表1、細胞の剥離回収率=95%、所要 間10分であった)。
(実施例25)
放射線滅菌処理した細胞培養基材の性能を示 す例である。
[細胞培養基材の放射線滅菌処理]
 実施例21の細胞培養基材21に、吸収線量が10k Gyになるように、γ線を照射した(照射処理は 本照射サービス株式会社にて行った)。

 比較として、市販の細胞シート回収用温度 答性細胞培養器材UpCell(6cmディッシュ、株式 会社セルシード製)を用いて、同様にしてγ線 照射を施した。
[正常ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の培養]
 上記γ線処理を施した細胞培養基材21に、10% FBSを含有するHu-media-EB2培地(Cell Systems社製)を 適量入れ、正常ヒト臍帯静脈血管内皮細胞を 播種して(播種濃度は1.2×10 4 個/cm 2 )、5%二酸化炭素中、37℃で培養を行った。細 が十分増殖したのを確認して、その(37℃の) 培地を吸い取り、4℃の培地を入れ、一定時 静置させ、増殖した細胞を自然剥離させた 剥離した細胞部分の面積と剥離前に増殖し 細胞の総面積との比を求めた。またこの剥 にかかった時間を記録した。(表1、細胞の剥 離回収率=96%、所要時間は13分であった)。

 一方、実施例21の細胞培養基材21をそのま ま用いて(放射線処理せず)、同様にして正常 ト臍帯静脈血管内皮細胞を培養して、自然 離を行ったところ、細胞の剥離回収率は95% 所要時間は14であった。更に、上記γ線処理 を施した市販のUpCellを用いて、同様にして正 常ヒト臍帯静脈血管内皮細胞を培養して、自 然剥離を行ったところ、細胞の剥離回収率は 30%、所要時間は40分であった。

 一方、放射線未処理のUpCellを用いて、同 にして正常ヒト臍帯静脈血管内皮細胞を培 して、自然剥離を行ったところ、細胞の剥 回収率は100%、所要時間は15分であった。

 上記実施例25より、細胞培養基材21に放射線 滅菌処理を施しても、細胞の培養・剥性に影 響を及ぼさないことが分かる。一方、市販の UpCellの場合、放射線滅菌処理を施すことによ り、細胞の剥製性が大きく低下することが理 解できる。
(実施例26)
重合体(B)を含有しない細胞培養基材
[細胞培養基材の作製]
 実施例16の分散液(L1)を、60mmポリスチレン製 シャーレ(60mm/Non-Treated Dish、旭テクノグラス 式会社製)に入れ、スピンコーターを用いて 2000回転でシャーレの表面に薄く塗布した後 80℃の熱風乾燥器中で10分間乾燥させた。次 で、滅菌水によりシャーレを洗浄した後、 菌袋中でシャーレを乾燥して、細胞培養基 26を得た。

 実施例16と同様に乾燥後の乾燥皮膜の接着 を確認したところ、塗膜は全く剥離せず、 材との接着性が良好であることが確認され 。
[正常ヒト真皮線維芽細胞の培養]
 上記得られた細胞培養基材26に、実施例16と 同様にして、正常ヒト真皮線維芽細胞を培養 した後、その(37℃の)培地を4℃の培地に交換 、増殖した細胞を自然剥離させ、剥離した 胞部分の面積と剥離前に増殖した細胞の総 積との比を求めた。(表1、細胞の剥離回収 =10%、所要時間は30分であった)。該細胞培養 材の細胞増殖性は、細胞培養基材1とほぼ同 じであった。
(比較例7)
無機材料(C)の濃度が式(3)の範囲を超えた例で ある。
[モノマー(a)、水膨潤性無機材料(C)、水媒体(W )を含む反応液の調製]
 モノマー(a)としてアクリル酸2メトキシエチ ル(東亞合成株式会社製)1.32g、無機材料(C)と て水膨潤性粘土鉱物Laponite XLG(Rockwood Additive s Ltd.社製)0.25g、非水溶性の重合開始剤(d1)と て溶液(S1)25μl、水媒体(W)として水10gを均一 混合して反応液(F7C)を調製した。

 上記反応液(F7C)をマグネチックスターラー 攪拌しながら、365nmにおける紫外線強度が40m W/cm 2 の紫外線を180秒照射したところ、反応液(F7C) 体がゲル化した。このゲルを大量の水に入 ても溶解や分散せずゲルのままであった。

 この反応系のRa=0.19、無機材料(C)の濃度(質 %)=2.42%>0.87Ra+2.17=2.34
 この比較例から、無機材料(C)の濃度(質量%) 式(3)の範囲を超えると、反応液全体がゲル してしまい、複合体(X)の分散液(L)が得られ 、(第一、第三の製造方法の)シャーレへの ーティングによる細胞培養基材の製造がで ないことが理解できる。
(比較例8)
ポリN―イソプロピルアクリルアミドと無機 料(C)から構成した三次元網目構造を有する ドロゲルからなる細胞培養基材の製造例で る。
[モノマー、無機材料(C)、水媒体(W)を含む反 液の調製]
 モノマーとしてN―イソプロピルアクリルア ミド(株式会社興人製)1.13g、無機材料(C)とし Laponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.4g、水媒 体(W)として水10gを均一に混合して反応液(F8C) 調製した。
[重合開始剤(d 1 )を溶媒(E)に溶解させた溶液の調整]
 溶媒(E)として、ポリオキシプロピレンモノ クリレート「ブレンマAP-400」(日本油脂株式 会社製)98g、重合開始剤(d 1 )として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニル ケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー 製)2gを、均一に混合して溶液(S2)を調製した
[ヒドロゲルからなる細胞培養基材の調製]
 上記反応液(F8C)全量に、溶液(S2)を50μl入れ 超音波分散機で均一に分散させた後、60mmポ スチレン製シャーレ(60mm/Non-Treated Dish、旭 クノグラス株式会社製)に入れ、スピンコー ーを用いて2000回転でシャーレの表面に薄く 塗布し、シャーレの周りを氷で冷やしながら 、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm 2 の紫外線を180秒照射し、N―イソプロピルア リルアミドを重合させて、ヒドロゲルの薄 を作製した。

 次いで、滅菌水によりシャーレを洗浄し ところ、該ヒドロゲルの薄層がシャーレか 剥離してしまい、シャーレにヒドロゲルの 層が積層した細胞培養基材が得られなかっ 。

 上記洗浄中で剥離したヒドロゲルの薄層を のままシャーレ中で乾燥し、細胞培養に供 た。
[正常ヒト真皮線維芽細胞の培養]
 上記乾燥したヒドロゲルの薄層をシャーレ 入れ、CS-C complete medium(Cell Systems社製培地) を適量入れ、正常ヒト真皮線維芽細胞を播種 して(播種濃度は1.2×10 4 個/cm 2 )、5%二酸化炭素中、37℃で培養を行った。細 が十分増殖したのを確認して、その(37℃の) 培地を4℃の培地に交換し、増殖した細胞を 然剥離させ、剥離した細胞部分の面積と剥 前に増殖した細胞の総面積との比を求めた またこの剥離にかかった時間を記録した。( 1、細胞の剥離回収率=70%、所要時間は30分で あった)。

 この比較例から、下限臨界溶解温度を有 る重合体(B)と粘土鉱物との三次元網目構造 有するヒドロゲルからなる細胞培養基材は プラスチックなどの支持体との接着性が弱 、支持体と一体化した細胞培養基材の作製 できなかったことが理解できる。

(注)(1)細胞F:正常ヒト真皮線維芽細胞
(2)細胞T:マウス腫瘍線維芽細胞(Balb3T3)
(3)細胞H:正常ヒト臍帯静脈血管内皮細胞

上記実施例及び比較例から、本発明の細胞培 養基材は、他の材質の支持体との間、良好な 接着性を有し、優れた細胞培養と剥離機能を 有している。
また、この細胞培養基材は、酸素を除去する ことなく極短時間で、容易に製造できること が明らかであった。