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Title:
PROCESS FOR PRODUCTION OF NdFeB SINTERED MAGNETS AND NDFEB SINTERED MAGNETS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/087975
Kind Code:
A1
Abstract:
The invention provides a process for the production of NdFeB sintered magnets which have higher coercive force and higher rectangularity of magnetization curve than those of conventional magnets. A process for the production of NdFeB sintered magnets which comprises forming a layer containing Dy and/or Tb on the surface of an NdFeB sintered magnet base and heating the obtained magnet precursor to a temperature not exceeding the sintering temperature of the magnet base to diffuse the Dy and/or Tb contained in the layer to the inside of the magnet base through grain boundaries of the base, characterized in that: (a) the content of metallic rare earth elements in the magnet base is 12.7at% or above, (b) the layer is a powder layer formed by the accumulation of a powder, and (c) the powder layer contains metallic Dy and/or Tb in an amount of 50mass% or above.

Inventors:
SAGAWA MASATO (JP)
FUJIMOTO NAOKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/000068
Publication Date:
July 16, 2009
Filing Date:
January 09, 2009
Export Citation:
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Assignee:
INTERMETALLICS CO LTD (JP)
SAGAWA MASATO (JP)
FUJIMOTO NAOKI (JP)
International Classes:
H01F41/02; B22F3/24; C22C38/00; H01F1/053; H01F1/08
Domestic Patent References:
WO2008139690A12008-11-20
WO2008032426A12008-03-20
WO2006043348A12006-04-27
Foreign References:
JP2007258455A2007-10-04
JPS6274048A1987-04-04
JPH01117303A1989-05-10
JP2007287875A2007-11-01
JP2007287874A2007-11-01
JP2004359873A2004-12-24
Other References:
K. T. PARK ET AL.: "Effect of Metal-Coating and Consecutive Heat Treatment on Coercivity of Thin Nd-Fe-B Sintered Magnets", PROCEEDING OF THE SIXTEENTH INTERNATIONAL WORKSHOP ON RARE-EARTH MAGNETS AND THEIR APPLICATIONS, 2000, pages 257 - 264, XP008130311
NAOYUKI ISHIGAKI ET AL.: ""Ncojimu Kei Bishou Shouketsu Jishaku No Hyoumen Kaishitsu To Tokusei Koujou (Surface Improvements on Magnetic Properties for Small-Sized Nd-Fe-B Sintered Magnets)", vol. 15, 2005, KABUSHIKI KAISHA NEOMAX,, pages: 15 - 19
KEN-ICHI MACHIDA ET AL.,: ""Nd-Fe-B Kei Shouketsu Jishaku No Ryuukai Kaishitsu To Jiki Tokusei (Grain Boundary Modification and Magnetic Characteristics of NdFeB Sintered Magnet)"", JAPAN SOCIETY OF POWDER AND POWDER METALLURGY,, pages: 1 - 47A
KOUICHI HIROTA ET AL.,: ""Ryuukai Kakusan Hou Ni Yoru Nd-Fe-B Kei Shouketsu Jishaku No Kou Hojiryoku-ka (Enhancement of NeFeB Sintered Magnet by Grain Boundary Diffusion)"", JAPAN SOCIETY OF POWDER AND POWDER METALLURGY,, pages: 143
KEN-ICHI MACHIDA ET AL.,: ""Ryuukai Kaishitsu Gata NdFeB Sintered Magnet No Jiki Tokusei (Magnetic Characteristics of NdFeB Sintered Magnet with Modified Grain Boundary)",", JAPAN SOCIETY OF POWDER AND POWDER METALLURGY,, pages: 144
See also references of EP 2239747A4
Attorney, Agent or Firm:
KOBAYASI, Ryohei (7th Floor Hougen-Sizyokarasuma Building,37, Motoakuozi-tyo, Higasinotouin Sizyo-sagaru,Simogyo-ku, Kyoto-s, Kyoto 91, JP)
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Claims:
 NdFeB焼結磁石基材の表面にDy及び/又はTbを含む層を形成した後に前記磁石基材の焼結温度以下の温度に加熱することにより前記層中のDy及び/又はTbを前記磁石基材の結晶粒界を通じて前記磁石基材内部に拡散させる粒界拡散処理を行うNdFeB焼結磁石の製造方法において、
 a) 前記磁石基材中に含まれる金属状態の希土類量が12.7at%以上であり、
 b) 前記層が粉末の堆積により形成される粉体層であり、
 c) 前記粉体層が50mass%以上の金属状態のDy及び/又はTbを含有する、
ことを特徴とするNdFeB焼結磁石の製造方法。
 前記粉体層の量が、前記磁石基材の表面1cm 2 あたり7mg以上であることを特徴とする請求項1に記載のNdFeB焼結磁石の製造方法。
 前記粉体層がAlを1mass%以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のNdFeB焼結磁石の製造方法。
 前記粉体層がCo及び/又はNiを合計10mass%以上含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のNdFeB焼結磁石の製造方法。
 前記粉体層を粒界拡散処理中に溶融させることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のNdFeB焼結磁石の製造方法。
 粒界拡散法を用いた処理によりDy及び/又はTbを粒界拡散させたNdFeB焼結磁石において、
 磁石基材が3.5mm以上の厚さを持つ板状磁石基材であり、
 前記板状磁石基材に含まれる金属状態の希土類が12.7at%以上であり、
 磁化曲線の角型性を示すSQ値が90%以上である、
ことを特徴とするNdFeB焼結磁石。
 前記粒界付近及び前記表面付近にAlが含まれることを特徴とする請求項6に記載のNdFeB焼結磁石。
 前記粒界付近及び前記表面付近にCo及び/又はNiが含まれることを特徴とする請求項6又は7に記載のNdFeB焼結磁石。
Description:
NdFeB焼結磁石の製造方法及びNdFeB 焼結磁石

 本発明は高い保磁力を有するNdFeB焼結磁 の製造方法及びそのNdFeB焼結磁石に関する。

 NdFeB焼結磁石は、ハイブリッドカーなどの ータ用として今後ますます需要が拡大する とが予測され、その保磁力H cJ を一段と大きくすることが要望されている。 NdFeB焼結磁石の保磁力H cJ を増大させるためにはNdの一部をDyやTbで置換 する方法が知られているが、DyやTbの資源は 界的に乏しくかつ偏在しており、またこれ の元素の置換によりNdFeB焼結磁石の残留磁束 密度B r や最大エネルギー積(BH) max が低下することが問題である。

 特許文献1には、薄膜化等を目的としてNdF eB焼結磁石の表面を加工した際に生じる保磁 の低下を防ぐために、NdFeB焼結磁石の表面 Nd、Pr、Dy、Ho、Tbのうち少なくとも1種を被着 させることが記載されている。また、特許文 献2には、NdFeB焼結磁石の表面にTb、Dy、Al、Ga うち少なくとも1種類を拡散させることによ り、高温時に生じる不可逆減磁を抑制するこ とが記載されている。

 また、最近、スパッタリングによりNdFeB焼 磁石の表面にDyやTbを付着させ、700~1000℃で 熱すると、磁石のB r をほとんど低下させることなくH cJ を大きくできることが見出された(非特許文 1~3)。磁石表面に付着させたDyやTbは、焼結体 の粒界を通じて焼結体内部に送り込まれ、粒 界から主相R 2 Fe 14 B(Rは希土類元素)の各粒子の内部に拡散して く(粒界拡散)。この時、粒界のRリッチ相は 熱により液化するので、粒界中のDyやTbの拡 速度は、粒界から主相粒子内部への拡散速 よりもずっと速い。この拡散速度の差を利 して、熱処理温度と時間を調整することに り、焼結体全体にわたって、焼結体中の主 粒子の粒界にごく近い領域(表面領域)にお てのみDyやTbの濃度が高い状態を実現するこ ができる。NdFeB焼結磁石の保磁力H cJ は主相粒子の表面領域の状態によって決定さ れるので、表面領域のDyやTbの濃度が高い結 粒を持つNdFeB焼結磁石は高保磁力を持つこと になる。またDyやTbの濃度が高くなると磁石 B r が低下するが、そのような領域は各主相粒子 の表面領域だけであるため、主相粒子全体と してはB r は殆ど低下しない。こうして、H cJ が大きく、B r はDyやTbを置換しないNdFeB焼結磁石とあまり変 わらない高性能磁石が製造できる。この手法 は粒界拡散法と呼ばれている。

 粒界拡散法によるNdFeB焼結磁石の工業的 造方法として、DyやTbのフッ化物や酸化物微 末層をNdFeB焼結磁石の表面に形成して加熱 る方法や、DyやTbのフッ化物の粉末と水素化C aの粉末の混合粉末の中にNdFeB焼結磁石を埋め こんで加熱する方法がすでに発表されている (非特許文献4、5、特許文献3)。

 さらに最近DyやTbとその他の金属との合金 粉末をNdFeB焼結磁石体表面に堆積させたり(特 許文献4)、DyやTbのフッ化物粉末とAl、Cu、Znか ら選ばれる1種以上の粉末との混合粉末を堆 させて(特許文献5)、その後熱処理を行うこ により高保磁力化を実現する方法が見出さ た。

特開昭62-074048号公報

特開平01-117303号公報

国際公開WO2006/043348号パンフレット

特開2007-287875号公報

特開2007-287874号公報 K. T. Park他、「Nd-Fe-B薄膜焼結磁石の保 力への金属被覆と加熱の効果」、第16回希土 類磁石とその応用に関する国際会議会議録、 社団法人日本金属学会発表、2000年、第257-264 (K. T. Park et al., "Effect of Metal-Coating and  Consecutive Heat Treatment on Coercivity of Thin Nd-F e-B Sintered Magnets", Proceeding of the Sixteenth In ternational Workshop on Rare-Earth Magnets and their  Applications (2000), pp. 257-264.) 石垣尚幸 他、「ネオジム系微小焼結磁 の表面改質と特性向上」、NEOMAX技報、株式 社NEOMAX発行、2005年、第15巻、第15-19頁 町田憲一 他、「Nd-Fe-B系焼結磁石の粒界 改質と磁気特性」、粉体粉末冶金協会平成16 春季大会講演概要集、粉体粉末冶金協会発 、1-47A 廣田晃一 他、「粒界拡散法によるNd-Fe-B 系焼結磁石の高保磁力化」、粉体粉末冶金協 会平成17年春季大会講演概要集、粉体粉末冶 協会発行、第143頁 町田憲一 他、「粒界改質型Nd-Fe-B系焼結 磁石の磁気特性」、粉体粉末冶金協会平成17 春季大会講演概要集、粉体粉末冶金協会発 、第144頁

 上述した従来法技術には次のような問題が った。
 (1) 特許文献1及び2に記載の方法は保磁力向 上の効果が低い。
 (2) スパッタリング法やイオンプレーティ グ法により磁石表面にDyやTbを含む成分を付 させる方法は、処理費が高価であり実用的 ない。
 (3) DyF 3 やDy 2 O 3 あるいはTbF 3 やTb 2 O 3 の粉末を磁石表面に塗布することによりDyやT bを含む成分を付着させる方法(特許文献3)は 処理費が安価である点では有利であるがこ 方法により到達できる保磁力の値があまり きくない。
 (4) さらに特許文献4及び5の方法は、特許文 献3や非特許文献4の方法に比べて特に利点が く、やはり得られる保磁力の値が小さい。

 すなわち(3)と(4)に示す従来技術では、資 的にTbに比べてはるかに豊富なDyを使って、 厚さ3mm以上で十分に磁極面積の大きいサイズ の実用的な用途に対して、粒界拡散処理によ り、DyやTbを含有しない基材(粒界拡散処理前 NdFeB焼結磁石)を使用して、保磁力1.6MA/m以上 を得ることは不可能であった。

 粒界拡散法に関して、これまでに公表され 文献において、厚さ3mm以上でかつ十分に大 い磁極面積を持つ大きさのNdFeB焼結磁石に して、基材にDyやTbを含まない場合、H cJ が1.5MA/mに達する例は報告されていない。特 文献3の実施例2では、厚さ3mmの磁石に対して Dyの酸フッ化物粉末による粒界拡散によりH cJ =1.47MA/mの例が示されているが、この例では基 材にTbが1at%含まれている。

 非特許文献4では、その中のグラフから、厚 さ3mmのとき、TbF 3 による粒界拡散処理によりHcJ≒1.2MA/mである とが読取れる。DyF 3 はTbF 3 に比べて粒界拡散による高保磁力化の効果は 格段に小さいので、DyF 3 により粒界拡散処理を同じ3mmのNdFeB焼結磁石 施したときには、得られるH cJ は1.2MA/mよりずっと小さいことが推察される 特許文献4では、厚さ2mmのDyやTbを含まないNdF eB焼結磁石に対して、Dyを15at%(約30mass%)含む、 Nd, Dy, Al, Cu, B, Fe, Coからなる合金粉末に る粒界拡散処理を施すことにより、H cJ =1.178MA/mが得られることが示されている。Dyを 15at%(約30mass%)含み、各種添加元素が添加され 合金粉末による実施例でも、厚さ2.5mmのNdFeB 焼結磁石に対して、到達できるH cJ は最大1.290MA/mである。

 特許文献5では厚さ2mmのDyを含まないNdFeB焼 磁石に対して、DyF 3 粉末とAlの粉末の混合粉による粒界拡散処理 より得られるH cJ は1.003~1.082MA/mである。厚さ4mmのDyやTbを含ま いNdFeB焼結体に対してZn粉末とDyF 3 粉末の混合粉による粒界拡散法により最高1.4 72MA/mのH cJ が得られるとされている。

 またこれまでのどの文献でも、厚さが5mm 上、あるいは6mm以上の比較的厚いNdFeB焼結 石に対しては、粒界拡散法による保磁力増 効果はきわめて小さい。そこで、例えば特 文献6では、厚い磁石の表面にスリットを設 て粒界拡散の効果を磁石深部に及ぼすアイ アや、特許文献7では粒界拡散法により、厚 い磁石の表面付近のみを高保磁力して、磁石 の耐熱性を上げる試みが提案されている。し かし、特許文献6のアイデアは加工費や表面 理費の増大あるいは機械的強度の低下など 使用上の不利益をきたす。また特許文献7の 案は高度の信頼性を要求される用途には使 ない。NdFeB焼結磁石の高保磁力化は比較的 型のモータや発電機への応用の拡大に伴い 要性を増してきた。これらの応用では、厚 が5mm以上あるいは6mm以上の磁石の需要は大 く、そのニーズに応えることはきわめて重 な課題である。

 さらに粒界拡散法に関する課題として、 較的厚い磁石に対して磁化曲線の角型性が いNdFeB焼結磁石の作製ができなかったこと ある。角型性が悪いのは粒界拡散の効果が 石全体に均一に行き渡っていないためであ 。すなわちDyやTbの粒界拡散が基材の表面付 で多く、内部に行くにしたがって少なくな ているためである。高い角型性を持つこと 、高品質な磁石としてぜひ必要な条件であ 。

 本発明が解決しようとする課題は、NdFeB焼 磁石において、粒界拡散法により、これま の技術では達成されなかった高保磁力を得 ことができ、厚さが4mm以上の比較的厚い磁 に対して、高角型性が達成され、厚さが5mm 上あるいは6mm以上の厚いNdFeB焼結磁石に対し ても高保磁力化が可能な手段を得ることであ る。保磁力の目安となる目標は、希土類成分 としてNdあるいはPrのみからなり、DyやTbを含 しないNdFeB焼結磁石基材を使用して、Dyを含 む粉末による粒界拡散法によりH cJ >1.6MA/mさらには1.7MA/mを達成することである 。

 DyはTbより資源的にはるかに豊富に存在する ので、本発明により高保磁力NdFeB焼結磁石が 定して生産できるようになる。本発明の成 はTbに対しても適用できるので、Tbを使って 本発明を実施すればさらに高いH cJ が要求される特殊な用途に対して本発明は有 用な技術になる。また、基材にDyやTbを入れ ものを使用することにより、用途に応じてH cJ の値をさらに大きくすることができる。本発 明の方法を適用することにより、これまで不 可能であった高B r 、高H cJ の組合せを持つNdFeB焼結磁石の生産が可能に り、かつDyやTbの資源的な問題が解消される ことになる。

 (5) もうひとつ付加的な問題として、粒 拡散法を実施するために形成される表面層 、粒界拡散処理後に除去する費用がかかる とである。DyやTbのフッ化物や酸化物、ある は粒界拡散処理中に溶融しない高融点のDy Tbの合金を使用して粒界拡散処理を実施する と、粒界拡散処理後、基材表面に残渣が浮遊 層を形成する。この残渣は、その後の表面処 理形成に有害なため、除去しなくてはならな い。粒界拡散前に精密な加工をして、粒界拡 散処理後再度浮遊層除去のために機械加工す ることは、余分な費用を要し好ましくない。

 上記課題を解決するために成された本発明 係るNdFeB焼結磁石の製造方法の第1の態様は NdFeB焼結磁石体基材の表面にDy及び/又はTbを 含む層を形成した後に前記磁石基材の焼結温 度以下の温度に加熱することにより前記層中 のDy及び/又はTbを前記磁石基材の結晶粒界を じて前記磁石基材内部に拡散させる粒界拡 処理を行うNdFeB焼結磁石の製造方法におい 、
 a) 前記磁石基材中に含まれる金属状態の希 土類量が12.7at%以上であり、
 b) 前記層が粉末の堆積により形成される粉 体層であり、
 c) 前記粉体層が50mass%以上の金属状態のDy及 び/又はTbを含有する、
ことを特徴とする。

 本発明において「金属状態の希土類」は、N dFeB焼結磁石の中で金属を構成している希土 元素を意味する。ここで金属とは、純金属 合金、及び母相であるNd 2 Fe 14 B相を含む金属間化合物を指す。希土類の酸 物、フッ化物、炭化物、窒化物などのイオ 結合性あるいは共有結合性を持つ化合物は まない。
 「粉体層が50mass%以上の金属状態のDy及び/又 はTb」は、粉体層が全て金属状態のDy及び/又 Tbである場合、即ち粉体層が100mass%、Dy及び/ 又はTbから成る場合を含む。
 「金属状態のDy及び/又はTb」とは、粒界拡 処理のために基材に塗布された粉体層のな で、金属を構成しているDy及び/あるいはTbと いう意味である。ここにおいても金属は純金 属、合金及び金属間化合物を含み、これらの 希土類のフッ化物、炭化物、酸化物、窒化物 は含まない。これらの希土類の水素化物、あ るいはこれらの希土類を含む金属間化合物の 水素化物は、金属間化合物の一種であり、こ れを構成する希土類は金属状態であるとみな す。これらの水素化物に含まれる水素はほと んど、DyやTbが基材に粒界拡散し始める前に 粉体層から離脱していく。したがって、粉 層の組成の計算には、水素化物中の水素は 算に入れないものとする。なお、組成を質 %で表現すると希土類と水素の原子量の差は わめて大きいので、実際には組成計算に水 を入れるか入れないかによって計算値はほ んど変わらない。

 a)の「金属状態の希土類量が12.7at%以上であ 」ことの技術的意義を説明する。NdFeB磁石 主相はNd 2 Fe 14 B化合物であり、Nd:Fe:B=2:14:1の化学量論組成で は、希土類量は原子比で2/17=11.76at%である。Nd FeB焼結磁石では主相Nd 2 Fe 14 B相以外にNdリッチ相とBリッチ相が存在する 本発明者はNdFeB焼結磁石の粒界拡散法が有効 に働くためには十分な量の金属状態のNdリッ 相が結晶粒界に存在する必要があることを 出した。粒界拡散処理においては、表面に 成したDyやTbを多く含む層からDyやTbが粒界 通じて、焼結体基材の内部に送りこまれる この粒界を通路とするDyやTbの拡散の速度を げ、基材深部への拡散を加速するために、 のa)の条件が不可欠である。主相の化学量 組成より過剰の金属状態の希土類量がある 定量以上存在すると、粒界拡散処理中に粒 に太い溶融したNdリッチ相の通路が形成され 、表面付近からのDyやTbの基材深部への速い 散が可能になる。本発明において、1.6MA/mあ いは1.7MA/m以上の高保磁力を得るために基材 として必要な金属状態の希土類の量は、焼結 体基材に含まれる全希土類量から、酸化、炭 化及び窒化されて希土類の酸化物、炭化物及 び窒化物に変化している希土類量を減じた量 である。本発明者は粒界拡散処理が有効に働 くためには、この金属状態の希土類量が、Nd 2 Fe 14 B相の化学量論組成としての希土類量11.76at%よ り約1at%過剰な12.7at%以上であることが必要で ることを見出した。基材中に十分な量の金 状態の希土類が含まれていると、粒界に多 のNdリッチ相が形成され、粒界拡散が効果 に行われる。その結果、従来の粒界拡散法 は不可能であった、高保磁力が達成でき、 い基材についても粒界拡散法が有効になる

 NdFeB焼結磁石基材の低酸素化により、基 自体の保磁力が増大することが知られてい が、この基材の低酸素化による保磁力増大 は、本発明の効果に比べるとかなり小さい 本発明において、粒界拡散法により、きわ 大きい保磁力を持つNdFeB焼結磁石が作製でき ること、粒界拡散処理による保磁力増大効果 が厚い磁石でも起こることと、比較的厚い磁 石についても高い角型性が得られることは、 使用するNdFeB焼結磁石基材中において、金属 態の希土類が多量に含まれ、粒界に多量のN dリッチ相が形成されることにより、基材表 に塗布したDyやTbの粒界拡散が起こりやすく り、これらの元素による保磁力増大効果が 材内部深くまで浸透するためである。

 ここで金属状態の希土類量は次のようにし 分析し、算出される。まずNdFeB焼結磁石中 含まれる全希土類量、酸素量、炭素量、窒 量が化学分析される。これらの酸素、炭素 び窒素がそれぞれR 2 O 3 、RC、RNを形成するとして(Rは希土類元素)、 希土類量から酸素、炭素、窒素によって金 状態ではなくなる希土類量を差し引いて求 られる。その差が金属状態の希土類量であ とする。本発明者はこのようにして求めた 材中の希土類量が上述したように12.7at%以上 とき、DyやTbを含まない基材に対して、広い 磁極面積をもち、厚さが3mm以上と比較的厚い ときでも、Dyによる粒界拡散処理により1.6MA/m 、さらには1.7MA/mの高保磁力が得られること 見出した。

 次に、b)の条件の技術的意義を説明する この条件は、NdFeB焼結磁石の粒界拡散法を工 業的に実施するために必要である。従来から 知られているスパッタリング法は生産性が低 く、処理費用が高価になりすぎて工業的価値 がない。粉末を基材表面に塗布する方法はバ レルペインティング法(特開2004-359873号公報参 照)が最適である。その他にスプレー法など 媒を使って塗布する方法も可能である。

 次に、c)の条件の技術的意義を説明する これまでの粒界拡散法に関する文献におい 見逃されていたことは、基材表面に塗布す DyあるいはTbの量が重要であるということで る。本発明者は、a)の条件が満たされ、基 中に十分な量の金属状態の希土類が存在し 、粒界に多量の希土類リッチ相が存在すれ 、基材表面に多量の金属状態のDyやTbを含む を堆積させると、多量のこれらの金属が粒 を通じて基材深部に拡散し、その結果、こ まで達成できなかった高保磁力を持つNdFeB 結磁石ができ、また厚い磁石の高保磁力化 可能になる。多量の金属状態のDyやTbを基材 面に堆積させるために、c)の条件が必要で る。ここでa)の条件が満たされない基材の表 面にDyやTbを多量に堆積させても、これらの 属の粒界拡散は、きわめて遅いか、表面近 のみに限定され、粒界拡散による高保磁力 は小さく、また厚い磁石には有効ではない 従来技術としての特許文献4において、実施 のすべてについて、基材にDyやTbを含まない とき、粒界拡散処理によって達成される保磁 力は1.290MA/m以下であるのは、使用されている 粉体中に含まれるDy量が15~20at%(約30~38mass%)と いことが一因であると推定される。

 本発明に係るNdFeB焼結磁石の製造方法の第2 態様は、第1の態様の製造方法において、前 記粉体層が、前記磁石基材の表面1cm 2 あたり7mg以上であることを特徴とする。これ により、多量の金属状態のDyやTbを基材表面 堆積させることができるため、さらに高保 力化が可能になる。

 本発明に係るNdFeB焼結磁石の製造方法の 3の態様は、第1又は第2の態様の製造方法に いて、前記粉体層がAlを1mass%以上含むことを 特徴とする。これにより、NdFeB磁石の一層の 保磁力化が図られる。

 本発明に係るNdFeB焼結磁石の製造方法の 4の態様は、第1~第3のいずれかの態様の製造 法において、前記粉体層がCo及び/又はNiを 計10mass%以上含むことを特徴とする。これに り、粒界拡散後に基材表面に形成される表 層に耐食性を与えることができる。即ち、 4の態様によって製造されるNdFeB焼結磁石は 粒界拡散後、基材に密着した表面層が形成 れるのが特徴であり、この表面層にCoやNiが 一定以上含まれていると、表面層が基材の防 食効果を発揮する。

 本発明に係るNdFeB焼結磁石の製造方法の 5の態様は、第1~第4のいずれかの態様の製造 法において、前記粉体層を粒界拡散処理中 溶融させることを特徴とする。

 第5の態様のNdFeB焼結磁石製造方法の技術 意義について説明する。本発明の各態様で 用する粉体は希土類の組成比が高い(50%以上 であって、希土類100%の場合を含む)ことが特 の1つである(第1の態様のc))。NdやDyなどの希 土類元素に、Fe、Co、Ni、Mn、Crなどの遷移元 、その他AlやCuなどの金属元素の添加量を増 させていくと融点が急速に低下し、ある組 において共晶を形成し(共晶点)、この共晶 の組成を越えて上記元素の添加量を増加さ ていくと融点は上昇する。本発明者は、NdFeB 焼結磁石の粒界拡散法において、DyやTbを含 ない基材に対してDyのみを使用した粒界拡散 法を行った場合に1.6MA/mあるいは1.7MA/mの高保 力を得るためには、塗布したDyを含む粉体 が、純Dyを含む高希土類組成で、共晶現象に より粉体層の全部又は少なくとも半分以上を 溶融させることが望ましいことを発見した。 即ち、粒界拡散処理の際に、基材に塗布した 粉体層がそれ自身あるいは基材の成分と反応 し、共晶点周辺の組成に達して溶融するので ある。粒界拡散処理時に、塗布したDyを含む がこのような溶融状態にあると、塗布した と、基材内部から表面に達している結晶粒 に存在するNdリッチ相とが、液体状態のま 連結されて、塗布層中のDyが高効率で基材内 部に輸送される。上述した現象が起こるため には、塗布する粉体層は高希土類組成である 必要がある。ここで、粉体層が50mass%以上と う高い濃度で金属状態のDy及び/又はTbを含有 していることにより、粒界拡散処理における 通常の処理温度では粉体層が溶融した液体は 粘性が十分高いため基材の表面から流れ落ち ない。

 粉体層の組成は純Dyでもよい。純Dyの融点 は1412℃でありNdFeB焼結磁石の焼結温度よりも 高温であるが、塗布したDyは、基材のFeなど 反応して融点が低下し、粒界拡散処理のた の加熱温度800~1000℃で、Feなどとの共晶を形 して溶融する。

 塗布する粉体の組成として、純Dyに、Fe、 Ni、Co、Mn、Cr、Al、Cuなどが添加されると、粉 体層としての融点が低下していき、添加量の 増加と共に共晶点に達し、その後さらに添加 量を増加していくと粉体層としての融点は上 昇していく。粉体層の組成の好ましい範囲は 、状態図上において共晶点の前後で融点が100 0℃以下になる組成範囲である。

 共晶点よりも高Dy側の組成で融点が1000℃ 上であっても、上述のように、粉体層と基 に含まれるFeなどの成分元素とが共晶を形 して融点が低下するので、塗布した粉体層 粒界拡散処理中(通常は1000℃以下)に溶融し 効率的なDyの拡散が起こる。Dyへの添加元素 増量してゆき、共晶点を過ぎて、粉体層と ての融点が1000℃以上の組成になると粉体層 は粒界拡散処理のための加熱中、粒界拡散温 度がほぼ上限の1000℃でも、粉体層は全部溶 することなく、固体成分を含んだまま粒界 散工程が進む。

 粒界拡散法により目標とする高保磁力を るためには、粒界拡散処理工程中に、塗布 た粉体層が溶けずに粉体層のまま残留する 態はあまり好ましくない。DyやTbを含む粉体 層の組成や加熱条件などを適切に調整して、 粒界拡散処理中に粉体層を溶融させるように することにより、NdFeB焼結磁石の高保磁力化 達成でき、さらに、粒界拡散処理後にNdFeB 結磁石基材表面に形成される表面層を基材 密着させるようにすることができる。表面 が基材から脱落しやすいと実用上除去する 要があるが、表面層が基材に密着していれ そのまま使用したり、表面層の上に表面処 を施したりすることができるので、機械加 の費用を削減できる。また粉体層にNiやCoを ませておくと、粒界拡散処理後に形成され 表面層が基材の防食効果を持つようになり 表面処理費用を削減できるようになる。

 本発明に係るNdFeB焼結磁石の第1の態様は、 界拡散法を用いた処理によりDy及び/又はTb 粒界拡散させたNdFeB焼結磁石において、
 磁石基材が3.5mm以上の厚さを持つ板状磁石 材であり、
 前記板状磁石基材に含まれる金属状態の希 類量が12.7at%以上であり、
 磁化曲線の角型性を示すSQ値が90%以上であ 、
ことを特徴とする。
 ここでSQ値は、磁化曲線で磁化が最大値か 10%低下したときの磁界の絶対値H k を保磁力H cJ で除した値H k /H cJ で定義される。SQ値が90%以上であるというこ は、磁石基材の中心付近にまでDy及び/又はT bが粒界拡散していることを意味している。 のように3.5mm以上という厚い板状磁石基材を 用いて90%以上という高いSQ値を得ることがで たのは、磁石基材に含まれる金属状態の希 類の量を12.7at%以上にしたことで粒界拡散処 理時にDy及び/又はTbが粒界に拡散しやすくな たことによる。

 本発明に係るNdFeB焼結磁石の第2の態様は 第1の態様のNdFeB焼結磁石において、粒界付 及び表面付近にAlが含まれていることを特 とする。

 本発明に係るNdFeB焼結磁石の第3の態様は 第1又は第2の態様のNdFeB焼結磁石において、 粒界付近及び表面付近にCo及び/又はNiが含ま ていることを特徴とする。

 第1の態様のNdFeB焼結磁石製造方法及び第1 の態様のNdFeB焼結磁石により、これまでの粒 拡散法では達成できなかった、高保磁力で つ、高残留磁化のNdFeB焼結磁石が得られ、 らに、これまで粒界拡散法では不可能であ た厚いNdFeB焼結磁石についても、高角型性を 持ち、高保磁力のNdFeB焼結磁石の生産が可能 なる。また第2~5の態様のNdFeB焼結磁石製造 法及び第2~3の態様のNdFeB焼結磁石により、さ らに特性の改良が可能である。

本発明に係るNdFeB焼結磁石の実施例1~3 び比較例において粒界拡散処理に用いた粉 の組成を示す表。 実施例1~4及び比較例において使用したN dFeB焼結磁石基材の組成を示す表。 実施例1及び比較例のNdFeB焼結磁石につ 、保磁力を測定した結果を示す表。 実施例2及び比較例のNdFeB焼結磁石につ 、比較的厚い(厚さ5~6mm)基材について保磁力 及び磁化曲線の角型性の指標SQ値を測定した 果を示す表。 Alを含まない粉体を用いて粒界拡散処 を行った(実施例3)NdFeB焼結磁石の保磁力を測 定した結果を示す表。 実施例4において粒界拡散処理に用いた 粉末の組成を示す表。 実施例4のNdFeB焼結磁石について保磁力 びSQ値を測定した結果を示す表。

 本発明に使用するNdFeB焼結磁石基材は従 のNdFeB焼結磁石と同様の方法で作製される。 すなわち、合金の溶解、素粉砕、微粉砕、磁 界中配向、成形、焼結の工程によって作製さ れる。ただし焼結後の焼結体中において、金 属状態の希土類量が12.7at%以上になるように 合金組成の調整、及び工程中に生じる希土 の優先的な減少や不純物混入の防止などの 慮をしなければならない。ここで希土類の 先的な減少とは、合金を溶解するとき金属 態の希土類成分の蒸発や酸化あるいは坩堝 の反応による減少、又は粉砕中にNdリッチ相 があまり微細に粉砕され過ぎることで捕集容 器に捕集されないことによる減少が考えられ る。粉砕前後で金属状態の希土類量が大きく 減少することはよく知られている。また金属 状態の希土類量は合金を粉砕後、粉末中の希 土類の、不純物との化学反応によっても減少 する。ここで不純物とは主に、酸素、炭素、 窒素である。酸素は主として合金粉砕中及び 粉砕後における粉末の酸化により、炭素は粉 末の潤滑のために添加される潤滑剤が残留す ることにより、窒素は粉末が空気中の窒素と 反応することにより、製品中に取り込まれる 。本発明に使用する焼結磁石基材を作製する ためには、工程中の金属状態の希土類量の減 少を極力抑え、また不純物元素による汚染を 極力抑制する必要がある。それができない場 合は、合金中の希土類量をあらかじめ増量し ておかなくてはならない。後述の実施例1に ける番号6の基材は希土類量が低いため酸素 炭素による汚染を極力抑えて作製した例で り、番号5の基材は工程中の炭素による汚染 が低くできないため合金中の希土類量を増量 することで金属状態の希土類量を本発明の範 囲内に調整した例である。

 合金中の希土類量の下限は、粉砕中の希 類量の減少分と、粉砕中あるいは粉砕後に 素、炭素、窒素により消費される希土類量 12.7at%を加えたものである。合金中の希土類 量が多ければ、これらの元素による汚染があ る程度多くても、本発明を実施できるが、あ まり多すぎると、NdFeB焼結磁石として、磁化 最大エネルギー積が低下して、価値が低下 てしまう。実用的には合金中の希土類量上 は16at%である。また合金中の希土類の種類 しては、Ndが主成分であるが、原料の事情に よりNdの一部がPrによって置換されてもよい 要求される最終製品の保磁力に従って、Ndの 一部をDyやTbによって置換することができる

 このように作製されたNdFeB焼結体は機械 工により最終製品として要求される形状と 法に加工される。その後、粒界拡散処理前 、化学的にあるいは機械的に、表面の清浄 が行われる。このようにして作製されたNdFeB 焼結磁石が、最終的に本発明に使用される基 材である。

 次に、粒界拡散処理のために基材表面に 布する粉体について説明する。本発明で使 する粉体は金属状態のDyあるいは/及びTbを50 mass%以上含む必要がある。粉体は合金粉ある は混合粉が用いられる。合金粉はあらかじ DyやTbと他の金属との合金を作製して、その 後粉砕したものである。混合粉はDyやTbの純 属粉末あるいは、これらの純金属粉末と他 金属粉末との混合物である。これらの合金 あるいは混合粉は粉砕のために水素化され いてもよい。希土類あるいは希土類を含む 金は水素化すると脆くなり粉砕しやすくな ことはよく知られている。これらの金属あ いは合金中に含まれる水素は、粒界拡散処 前のために基材に粉体を塗布する前に、粉 を加熱することにより除去することができ 。しかし、粉体中に水素が一部残留してい も、粒界拡散処理のために基材に粉体を塗 した後、加熱していくと、粒界拡散が始ま 前に、水素は粉体から離脱していく。粉体 組成として、このように粒界拡散前に離脱 ていく水素や、粉体に吸着している気体成 あるいは粉体塗布のため使用される樹脂成 は計算に入れないことにする。

 基材表面に塗布する粉体のDyやTb以外の成 分としては、DyやTb以外の希土類元素、Fe, Co,  Niなどの3d遷移元素、AlやCuなど合金の基材 の濡れ性を改善すると考えられる元素、NdFeB 磁石中にも含まれているBなどが適宜選ばれ 。これらの元素の添加量は、粉体塗布後、 界拡散処理中に粉体層が少なくとも半分以 溶融するように調整する。このような組成 持つ粉体を選ぶことにより、本発明の目的 達成できる。好ましい粉体の粒径は0.1~100μm ある。

 次に、粉体塗布方法について説明する。本 明を実施するための最適の粉体塗布方法は レルペインティング法(特開2004-359873号公報 照)である。まず清浄な表面を持つNdFeB焼結 石基材に粘着層を形成する。粘着層の厚さ 1~5μmが最適である。粘着層形成物質は粘着 を持つ物質で、基材表面を腐食するような のでなければ何でもよい。最も一般的には ポキシやパラフィンなどの液状の有機物が いられる。エポキシなどを使用するときは 硬化剤は不要である。この粘着層塗布方法 は、直径0.5~1mmのセラミックあるいは金属製 の球(インパクトメディアと呼ぶ)を満たした 器に少量の液状有機物質を添加して攪拌し 後、上述した基材を投入して、容器全体を 動させることにより、基材表面に粘着層が 成される。次に、同様のインパクトメディ を満たした容器に塗布したい粉体を添加し 攪拌した後、粘着層を形成した基材を容器 投入して、容器全体を振動させて、基材表 に粉体層を形成する。このようにして塗布 れる粉体の量は、基材表面1cm 2 あたり2mg程度から30mg程度までである。本発 では粘着層形成時にインパクトメディアに 加される液状物質の量、及び粉体塗布時に ンパクトメディアに添加される粉体の量を 整することにより、粉体量がある一定量以 になるように調整される。塗布する粉体の の好ましい範囲は基材表面1cm 2 あたり5mg以上25mg以下である。粉体塗布工程 、粉末の酸化を防止するために、不活性ガ 中で行うことが望ましい。

 粉体はできるだけ高密度で基材に塗布す ことが好ましい。塗布した粉体が低密度で ると、粒界拡散処理の際に、塗布した粉体 すべてが基材に吸収されるとは限らない。 のような時、塗布された粉体のうち、基材 接しているわずかの粉体だけが粒界拡散に 加するだけで、粉体層の表面付近に存在す 粉体は役目を果たすことなく取り残される とが考えられる。本発明において実施され 粉体塗布方法は粉体層形成時に、インパク メディア(セラミックや金属製の小球)で粉 層をたたきながら、粉体層を成長させて行 ので、このようにして形成された粉体層は 較的高密度になる。高密度粉体層形成方法 して他に、例えば特許文献4で実施された方 で形成された粉体層の上からゴム板などで 体層を基材に押し付ける方法が考えられる

 次に、DyやTbを含む粉体を塗布した基材を 加熱炉に入れて加熱する。加熱炉の雰囲気は 真空あるいは高純度の不活性ガス雰囲気とす る。炉の温度上昇にしたがって、粉体に吸着 しているガスや、バレルペインティングで使 用した液状物質成分が粉体から離脱する。さ らに温度を上げていくと粉体中の水素が離脱 する。その後700℃を越える頃から、粉体が基 材表面と反応して粒界拡散が起こり始める。 効果的な粒界拡散が起こるためには、塗布し た粉体は溶けて基材と密着することが望まし い。このような状態にするためには800℃以上 の加熱が必要である。温度が1000℃を越える 、粒界拡散だけでなく粒内拡散も速くなり ぎて、粒界近傍だけDyやTbを高濃度にすると う微細構造の形成ができなくなる。したが て、粒界拡散のための加熱温度は1000℃以下 が望ましい。標準的な加熱条件は800℃で10時 、あるいは900℃で3時間である。このような 条件で加熱した後、通常の焼結後熱処理ある いは時効処理として知られる熱処理が施され る。

 上述した工程により作製されたNdFeB焼結 石は、従来の粒界拡散法により作製されたNd FeB焼結磁石の特性の限界を超えて高保磁力、 高残留磁化を持つ。また比較的厚い磁石に対 しても粒界拡散処理により、磁化曲線の角型 性の高い、高品質のNdFeB焼結磁石が作製でき 。さらに、従来の粒界拡散法は厚い磁石に して適用できなかったが、上述の工程によ 5~6mmもの厚い磁石に対して高保磁力が達成 きる。すなわち、従来の方法では厚い磁石 対しては、基材の表面付近だけが高保磁力 されて、内部は粒界拡散の効果が及ばなか たので、磁化曲線の角型性が悪かった。こ は高保磁力部分と低保磁力部分が混ざった 石の典型的な症状であり、品質の低い製品 見られるものであった。本発明により、NdFeB 焼結磁石は比較的厚い製品でも磁化曲線の角 型性が高く、高品質の製品が作製できる。ま た本発明の方法により作製されるNdFeB焼結磁 は粒界拡散処理のために塗布された粉体層 粒界拡散中に溶けて基材に密着しており、 界拡散処理後表面層を除去する必要性がな 。粒界拡散処理のためにNiやCoを粉体に添加 した場合には、表面に形成される表面層は基 材に対して防食効果を持つ。

 ストリップキャスティング法を用いた合金 製、水素解砕、潤滑剤混合及び窒素ガスを 用したジェットミルを用いた微粉砕によりN dFeB焼結磁石の粉末を作製し、この粉末に潤 剤を混合したうえで磁界中配向、成形及び 結の各工程を行い、組成が異なる10種類のNdF eB焼結磁石ブロック(基材)を作製した(図1)。 のうち図1の「基材番号」の欄に「(比)」と したものは比較例の基材であり、それ以外( 材番号1~6)は本実施例で使用する基材である 。図1に示す組成は、焼結後の焼結体の化学 析値である。焼結体の組成は、ストリップ ャスト合金の組成、ジェットミル粉砕時に 用する窒素ガスの純度あるいは添加する酸 の量、ジェットミル粉砕前後に添加する潤 剤の種類と量を変えて、変化させた。ジェ トミル粉砕後の微粉末の粒径は、どの場合 、レーザ回折法で測定した粒度分布の中央 (D 50 )が5μmになるように調整した。これら10種類 焼結磁石は、いずれも希土類はNdのみからな り、最大磁気エネルギー積がもっとも大きい 材質として各磁石メーカで大量に生産されて いるNdFeB焼結磁石に近い組成である。しかし これらの磁石のうち基材番号1~6のものは不 物による汚染を最小限にする工夫をして作 したものである。一方、基材番号「(比)1~( )4」のものは市販されている製品に近い組成 を持っている。図1において、MR値は金属状態 の希土類量を示し、焼結磁石の化学分析値か ら算出される。すなわちMR値は分析値の全希 類量から、酸素、炭素、窒素によって消費 れる(非金属化される)希土類量を差し引い 値である。ここで、これらの不純物元素は 希土類と、それぞれR 2 O 3 、RC、及びRNの化合物を作るものとして算出 る(Rは希土類元素を示す。)。

 次に、粒界拡散法を実施するためにNdFeB焼 磁石基材の表面に塗布する粉体について述 る。図2に、実験に使用した粉体の組成を示 。なお、粉体番号に「(比)」と付したもの 比較例の粉体である。粉体番号1~6及び13~15は 各成分元素の粉末を混合して作製した。ただ しDyについては、水素化物DyH 3 の粉末を使用した。DyH 3 の水素は粒界拡散処理のための加熱時に、粒 界拡散が開始される温度よりも低温で系外に 排出されるので、水素は粉体に含まれないも のとして各粉体の調合を行った。DyH 3 の粒径は約30μm、他の成分元素粉末の粒径は5 ~10μmである。粉体番号7~12及び「(比)1~(比)3」 、ストリップキャスティング法によって厚 80μmの薄い薄帯合金を作製して、水素解砕 ずに薄帯をそのままジェットミルに投入し 微粉砕することによって得た。微粉末の粒 中央値D 50 を5μmとした。

 図1の10種類の焼結体ブロックから、縦7mm× 7mm×厚さ3.5mmで、厚さ方向が磁化方向となる うに直方体試料を切り出して、粒界拡散の 験を行った。粉体塗布は次のようにして行 た。200cm 3 のプラスティック製ビーカに直径1mmのジルコ ニア製小球を100cm 3 入れ、その中に流動パラフィンを0.1~0.5g加え 攪拌した。この中にNdFeB焼結磁石直方体試 を投入し ビーカを振動機に接触させること により、直方体試料の表面に粘着層(流動パ フィン)を塗布した。次に10cm 3 のガラスびんに、直径1mmのステンレス製小球 を8cm 3 入れ、図2に示す粉末を1~5g加えて、先に粘着 を塗布した焼結体直方体試料をこの中に投 した。ただし、このとき直方体試料の側面( 磁極面以外の面)にプラスティック板製のマ キングを施して、磁石側面に粉体が付着し いようにした。このマスキングされ粘着層 形成された直方体試料を入れたガラスびん 前記振動機に接触させて、Dyを含む粉体が磁 極面のみに塗布されたNdFeB焼結磁石を作製し 。粉体塗布量は、上述の工程で、添加する 動パラフィン及び粉体の量によって変化さ た。

 粉体塗布を磁極面のみに限定した理由は のとおりである。本発明は比較的大型のモ タへの応用を目指しているので、ある程度 きい磁極面積を持つ磁石に対して有効な技 でなくてはならない。ところが磁化曲線測 器の都合で磁極面積に制限がある。そこで 7mm角という比較的小さい磁極面積の試料を 用するが、側面に粉体を塗布しないことに り、大きい磁極面積の試料について粒界拡 法の実験をするときの状況と同じになるよ にした。

 粉体を塗布した試料を、側面のうちの1面を 下側にしてモリブデンの板の上に乗せ、10 -4 Paの真空中で加熱した。加熱温度は900℃で3時 間とした。その後室温付近まで急冷して、500 ~550℃で2時間加熱して、再度室温まで急冷し 。このようにして作製した、基材、粉体、 体塗布量の各種組み合わせの試料について 保磁力の測定結果を図3に示す。

 図3の結果から、本発明の範囲内の試料(試 番号1~19)は、Dyによる粒界拡散法で、1.6MA/m以 上、塗布量が7mg/cm 2 以上の試料については、1.7MA/m以上の高保磁 を持つことが分かる。NdFeB焼結磁石基材にDy Tbも含まれず、しかも3.5mmという比較的厚い 、かつ大きい磁極面積を持つ試料で、Dyによ 粒界拡散法によりこれほど大きい保磁力が られたことは従来はなかった。塗布する粉 に金属状態のTbが含まれていると、さらに きい保磁力が得られることも確認された(試 番号15)。基材に含まれる金属状態の希土類 が12.7at/%以下であると、1.6MA/m以上の高い保 力は得られないことが、試料番号「(比)1~( )4」に対する実験結果から分かる。

 比較的厚い基材について、実施例1と同様の 実験を行った。試料は、磁極面が一辺7mm の 方形、厚さが5mm又は6mm(図4中に記載)の直方 であり、磁化方向は厚さ方向である。実施 1のときと同様に、Dyを含む粉体を磁極面だ に塗布するように、磁極面以外の面にマス ングをして、実施例1と同じ条件でバレルペ インティング法により、粉体塗布を行った。 粒界拡散処理条件、及び時効処理条件は実施 例1と同じである。図4に本発明の範囲内の条 で作製した試料と、本発明の範囲外の条件 作製した試料について、磁気特性の測定結 を示す。この図では、保磁力H cJ 以外に、残留磁束密度B r 、磁化が10%低下するときの減磁界H k 、及び磁化曲線の角型性の指標としてよく使 われるH k /H cJ の値を示した。H k /H cJ はSQ(Squerness)の記号で表す。

 図4の結果から、本発明の方法で作製され たNdFeB焼結磁石(試料番号20~25)は、厚さが5mmの ときでも、6mmのときでも1.6MA/m以上の高保磁 を持つことが分かる。さらに、これらの試 のSQ値が90%を越えていることは画期的なこと である。SQ値が大きいということは、粒界拡 が試料の中心部までいきわたっていること 示している。厚さが6mmの試料で、磁極面に けDyを含む粉体を塗布して、SQ値が大きい試 料が作製できたということは、表面に塗布し た粉体中のDyが、900℃の加熱により、両側か 3mm浸透したことを表している。これは従来 粒界拡散法についての常識を超えるもので る。このことは、本発明の条件が満たされ ば、DyやTbの粒界拡散は従来の常識を超えて 、深くまで達するものであることを示してい る。

 比較例として示した、試料番号「(比)5~( )8」は、基材に塗布する粉体が本発明の条件 を満たさない場合であり、試料番号「(比)9~( )11」は、NdFeB焼結磁石基材が本発明の条件 満足しない場合についての実験結果を示し 。すなわち、試料番号「(比)5~(比)8」は基材 塗布する粉体中のDy又は/及びTbの含有量が い場合で、粒界拡散処理によって達成され 保磁力及びSQ値が低い。また、試料番号「( )9~(比)11」は、使用したNdFeB磁石基材中に含 れる金属状態の希土類量が12.7at%よりも低い 合であり、粒界拡散処理された試料は、本 明の条件で作製された試料に比べて低い保 力及びSQ値を持っている。これらの結果は 基材に塗布した粉体層中のDyやTbを基材深く で浸透させて、高保磁力、かつ大きいSQ値 持つNdFeB焼結磁石を、比較的厚い磁石につい て実現するためには、本発明の条件を満たす ことが必須であることを示している。

 Alを含まない粉体(粉体番号13~15)を、実施 1の場合と同様の基材に塗布して、実施例1 同じ条件で、粒界拡散の実験を行った。結 を図5に示す。実施例1と実施例3の結果と比 すると、本発明において、塗布する粉体にAl が含まれていた方が高い保磁力が得られるこ とが分かる。Alは塗布する粉体が溶融するの 有効に働いているものと推定される。

 実施例1~3では、基材中にDyやTbを含まない 場合について本発明の有効性を示した。本実 施例では、図6に示す組成のNdFeB焼結磁石を使 用して、基材中にDyを含む場合について、試 の厚さを3.5mmとし、粉体塗布条件、粒界拡 処理条件などは、実施例1と同じ条件で試料 作製して、実験を行った結果を示す。図7に 、基材にDyを含まない場合と比較して、本実 例の結果を示した。図7より、本発明におい てDyを含有する基材を使用すると、基材にDy 含有させることによる基材自体の保磁力上 分が粒界拡散処理による保磁力上昇分と加 されて、きわめて高い特性のNdFeB焼結磁石が 得られることを示している。基材にDyを含む 合でも、金属状態の希土類量が十分に高く いと大きい粒界拡散の効果が得られないの 、基材にDyやTbを含まない場合と同じである 。図7の試料番号32~35のものにおいて、きわめ て高い保磁力、大きいSQ値が得られたのは、 6に示すように、Dyを含む基材11及び12が両方 、大きいMR値を持っているためである。

 実施例1の実験で作製した試料の一部につ いて、耐食性のテストを行った。第1のグル プとして試料番号3, 5, 6の試料、第2のグル プとして試料番号1, 13 及び粒界拡散処理 しないNdFeB焼結磁石試料を、70℃の水蒸気飽 空気中に放置する実験を行った。1時間経過 後、第2のグループの磁石にはさびが観察さ たが、第1のグループの磁石にはさびが観察 れなかった。3時間経過後にはすべての磁石 にさびの発生が見られたが、腐食の程度は第 1のグループの磁石のほうが、第2のグループ 磁石に比べて軽度であった。第1のグループ の磁石は、粒界拡散のために塗布した粉体に Niあるいは/及びCoが合計10%以上含まれている 、第2のグループの磁石は粒界拡散処理をし ていないか、粒界拡散のために塗布した粉体 にNiもCoも含まれていない。本実施例の結果 ら、本発明の試料で、粒界拡散のために塗 する粉体にNiあるいは/及びCoが10%以上含まれ ていると、粒界拡散処理後表面層が防食膜と して働くことが分かる。この防食効果はあま り厳しい腐食環境に対して有効ではないが、 磁石を加工後、保存中あるいは表面処理前に 輸送するとき、輸送中に磁石表面にさびが発 生して、製品として使い物にならなくなるこ とを防止する働きをする。

 また、本発明の条件を満たす方法で作製 れたすべての試料について、粒界拡散後の 料表面はなめらかで、表面層は基材に強く 着しており、基材に塗布した粉体層は、粒 拡散のための加熱中に溶けたことが確認さ た。

 なお、すべての実施例において、粒界拡 処理の温度及び時間を900℃及び3時間とした が、800~1000℃の間の温度で、時間を調整する とにより良い結果が得られることを確認し 。

 上記各実施例の大半はDyを用いた実験結 を示したものであるが、DyとTbの保磁力への 果の違いはDy2Fe14B相とTb2Fe14B相の結晶磁気異 方性の差に基づくものであり、Dyにより実験 結果はTbを用いた場合にも適用できる。両 の差は保磁力の絶対値に反映されるだけで り、本実施例と比較例の効果の差はDy,Tbのい ずれを用いた場合にも同様に得ることができ る(もちろん、Tbを使用した方が更に良い結果 が得られる。)。従って、Dyを用いた実験結果 から、本発明の効果を十分に実証することが できると考えてよい。




 
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