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Patent Searching and Data


Title:
PLATINUM COMPLEX COMPOUND AND UTILIZATION OF THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/090903
Kind Code:
A1
Abstract:
A novel platinum (II) binuclear complex compound capable of binding to DNA in a manner different from cisplatin preparations, a method of producing this compound, and an anticancer agent containing this compound as the active ingredient are provided. The above-described compound is a tetrazolato-crosslinked platinum complex compound represented by the following general formula (I) wherein A represents an optionally substituted tetrazolato, B represents an inorganic or organic anion, and m and n are integers that are determined depending respectively on the charge number of the platinum complex ion and the charge number of the anion.

Inventors:
KOMEDA SEIJI (JP)
CHIKUMA MASAHIKO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/050084
Publication Date:
July 23, 2009
Filing Date:
January 07, 2009
Export Citation:
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Assignee:
TENSHINDO PHARMACEUTICAL CO LT (JP)
KOMEDA SEIJI (JP)
CHIKUMA MASAHIKO (JP)
International Classes:
C07D257/04; A61K31/41; A61P35/00; C07F15/00
Domestic Patent References:
WO2008070136A12008-06-12
WO1996016068A11996-05-30
Other References:
KOMEDA, S. ET AL.: "New Antitumor-Active Azole-Bridged Dinuclear Platinum(II) Complexes: Synthesis, Characterization, Crystal Structures, and Cytotoxic Studies", INORGANIC CHEMISTRY, vol. 39, no. 19, 2000, pages 4230 - 4236, XP008139128
KALAYDA, G. V. ET AL.: "Synthesis, structure, and biological activity of new azine-bridged dinuclear platinum(II) complexes - a new class of anticancer compounds", EUROPEAN JOURNAL OF INORGANIC CHEMISTRY, 2003, pages 4347 - 4355, XP008139129
JAMIESON, E. R.; LIPPERD, S. J.: "Structure, Recognition, and Processing of Cisplatin-DNA Adducts", CHEM. REV., vol. 99, 1999, pages 2467 - 2498
KASPARKOVA, J.; ZEHNULOVA, J.; FARRELL, N.; BRABEC, V.: "DNA interstrand cross-links of the novel antitumor trinuclear platinum complex BBR3464. Conformation, recognition by high mobility group domain proteins, and nucleotide excision repair", J. BIOL. CHEM., vol. 277, no. 50, 2002, pages 48076 - 48086
KOMEDA, S.; LUTZ, M.; SPEK, A. L.; CHIKUMA, M.; REEDIJK, J.: "New antitumor-active azole-bridged dinuclear platinum(II) complexes: synthesis, characterization, crystal structures, and cytotoxic studies", INORG. CHEM., vol. 39, no. 19, 2000, pages 4230 - 4236
R. FAGGIANI, R; B. LIPPERT, B.; LOCK, C. J. L.; ROSENBERG, B.: "Hydroxo- bridged platinum(II) complexes. 1. Di-µ-hydroxo-bis[diammineplatinum(II)] nitrate, [(NH3)2Pt(OH)2Pt(NH3)2](N03)2. Crystalline structure and vibrational spectra", J. AM. CHEM. SOC., vol. 99, no. 3, 1977, pages 777 - 781
See also references of EP 2243773A4
Attorney, Agent or Firm:
ABE, Makoto (CRD Marunouchi 5th Floor3-17-13 Marunouchi, Naka-ku,Nagoya-sh, Aichi 02, JP)
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Claims:
 次式(I):
(式中、Aは置換基を有するまたは有しないテトラゾラトであり、Bは有機または無機のアニオンであり、mおよびnは白金錯体部の電荷数および前記Bの電荷数に対応して決まる整数である。);
 によって表される白金錯体化合物。
 前記白金錯体部は、前記Aを構成するテトラゾール環の2位および3位のNが二つの白金イオンにそれぞれ配位したN2,N3-架橋構造を有する、請求項1に記載の白金錯体化合物。
 前記Aは置換基を有しないテトラゾラトである、請求項2に記載の白金錯体化合物。
 前記Aは置換基を有するテトラゾラトであり、該置換基は、炭素数1~6の炭化水素基、-CH 2 COO - および-CH 2 COORx(ここで、Rxは炭素数1~4のアルキル基である。)からなる群から選択されるいずれかである、請求項2に記載の白金錯体化合物。
 請求項1から4のいずれかに記載の白金錯体化合物を有効成分として含む、抗癌剤。
 請求項1から4のいずれかに記載の白金錯体化合物を製造する方法であって、
 次式(II):
(式中、Bは有機または無機のアニオンであり、nは前記Bの電荷数に対応して決まる整数である。);
 で表される化合物と、置換基を有するまたは有しない1H-テトラゾールとを、1:1~1:1.2のモル比で反応させて、N1,N2-架橋白金錯体化合物とN2,N3-架橋白金錯体化合物との混合物を得る工程と、
 該混合物に含まれるN1,N2-架橋白金錯体化合物およびN2,N3-架橋白金錯体化合物のいずれか一方から他方を分離することにより前記白金錯体化合物の少なくともいずれかを精製する工程と、
 を包含する、白金錯体化合物製造方法。
 前記白金錯体化合物を精製する工程は、移動相として過塩素酸塩溶液を用いた逆相クロマトグラフィにより行う、請求項6に記載の方法。
 前記過塩素酸が過塩素酸リチウムである、請求項7に記載の方法。
Description:
白金錯体化合物およびその利用

 本発明は、テトラゾラト架橋型の白金錯体 合物、該白金錯体化合物の製造方法および の利用に関する。
 なお、本出願は2008年1月16日に出願された日 本国特許出願第2008-007357号に基づく優先権を 張しており、その出願の全内容は本明細書 に参照として組み入れられている。

 シスプラチン(cis-diamminedichloroplatinum(II))は塩 化物イオン2基とアンミン2基とがシス型に配 した白金(II)一核錯体であり、最も効果的な 抗癌剤の一つとして化学療法に広く用いられ ている。また、シスプラチン療法における副 作用または癌細胞の耐性への対処として、カ ルボプラチン、ネダプラチンおよびオキサリ プラチンのシスプラチン類似体が臨床利用さ れている。
 シスプラチンの作用機序や体内代謝経路に 、該錯体が細胞内のDNA鎖と1,2-鎖内架橋を形 成しDNA鎖に顕著な歪みを生じさせることが関 与していると考えられている(非特許文献1)。 シスプラチンと類似した構造を有する上記の 白金製剤も同様の態様でDNAに結合すると考え られる。

 一方、これら既存の白金製剤とは異なる 剤プロファイルを有する白金製剤の開発が まれている。そのための一つの有効な手段 して、既存のシスプラチン系製剤とは作用 序や体内代謝経路において異なる白金錯体 合物を設計することが考えられる。例えば シスプラチンとは分子構造が大きく異なる とによりシスプラチンとは異なる態様でDNA 結合し得る白金錯体(例えば白金多核錯体) よれば、シスプラチン系白金製剤とは異な 薬剤プロファイルが実現されることが期待 れる。この種の技術に関する従来技術文献 して、特許文献1および非特許文献2,3が挙げ れる。

国際公開第96/16068号パンフレット Jamieson, E. R. and Lipperd, S. J. "Structure, Recognition, and Processing of Cisplatin-DNA Adducts" Chem. Rev., 1999, 99, 2467-2498. Kasparkova, J.; Zehnulova, J.; Farrell, N.; and Brabec, V. "DNA interstrand cross-links of the novel  antitumor trinuclear platinum complex BBR3464. Confor mation, recognition by high mobility group domain pro teins, and nucleotide excision repair." J Biol Chem  2002, 277, (50), 48076-48086. Komeda, S.; Lutz, M.; Spek, A. L.; Chikuma, M. ; and Reedijk, J. "New antitumor-active azole-bridged dinuclear platinum(II) complexes: synthesis, characteri zation, crystal structures, and cytotoxic studies." In org Chem 2000, 39, (19), 4230-4236.

 本発明は、シスプラチン系製剤とは異な 態様でDNAに結合し得る新規な白金(II)二核錯 体化合物および該化合物を有効成分として含 む抗癌剤を提供することを目的とする。本発 明の他の目的は、かかる錯体化合物の製造方 法を提供することである。

本発明によると、次式(I):
 によって表される白金錯体化合物が提供さ る。ここで、Aは置換されていてもよいテト ラゾラトであり、Bは有機または無機のアニ ンであり、mおよびnは白金錯体部(角括弧内 錯イオン)の電荷数およびアニオンの電荷数 対応して決まる整数である。

 なお、本明細書において「テトラゾラト とは、1H-テトラゾール系化合物(C5位に置換 を有するまたは有しない1H-テトラゾール)の 脱プロトン化(N1位のプロトンの引き抜き)に って得られるアニオン一般を指す用語であ 。すなわち、1H-テトラゾール系化合物のN1位 のプロトンが解離してなるアニオン一般を意 味する。

 上記式(I)により表される化合物は、配位 心をなす2つの白金(II)イオンに対するAの架 態様によって、Aを構成するテトラゾール環 のN1およびN2が2つの白金イオンにそれぞれ配 したN1,N2-架橋構造の白金錯体化合物と、該 トラゾール環のN2およびN3が2つの白金イオ にそれぞれ配位したN2,N3-架橋構造の白金錯 化合物とに大別される。ここに開示される 合物の好ましい一態様は、N2,N3-架橋構造の 金錯体化合物である。かかる架橋構造の白 錯体化合物は、抗癌剤その他の薬剤の有効 分としてより有用な(例えば、より高い細胞 性を発揮する)ものであり得る。なかでも、 式(I)におけるAが置換基を有しないテトラゾ トであるN2,N3-架橋白金錯体化合物が特に好 しい。

 本発明によると、また、上記式(I)中のAが置 換基(すなわち、テトラゾール環の5位のCに結 合した置換基)を有するテトラゾラトであるN2 ,N3-架橋白金錯体化合物が提供される。該置 基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれで ってもよく、該置換期中に更に置換基を備 ていてもよい。例えば、炭素数1~6の炭化水 基、-CH 2 COO - および-CH 2 COORx(ここで、Rxは炭素数1~4のアルキル基であ 。)からなる群から選択されるいずれかであ り得る。このような置換基を有するN2,N3-架橋 白金錯体化合物は、高純度のものが得られや すいので好ましい。

 また、ここに開示されるいずれかの白金 体化合物は、シスプラチンの病理学上の利 態様に準じて利用することができる。例え 、上記白金錯体化合物の少なくとも1つを抗 癌剤の有効成分の1つとして用いることがで る。この場合、上記式(I)中のBは薬理学上許 されるアニオンであることが好ましい。

 本発明によると、上記式(I)により表される 金錯体化合物は、次式(II):
 で表される化合物と、置換基を有するまた 有しない1H-テトラゾール系化合物とを、1:1~ 1:1.2のモル比で反応させることを含む製造方 によって好ましく製造することができる。 の工程で、N1,N2-架橋白金錯体化合物とN2,N3- 橋白金錯体化合物との混合物が生じた場合 本発明によると、該混合物に含まれる上記2 つの化合物のいずれか一方から他方を分離す ることにより、上記化合物の少なくともいず れかを精製することができる。

 上記製造方法の好ましい一つの態様では 上記混合物から上記化合物の少なくとも一 を分離する工程において、移動相として過 素酸塩水溶液を用いた逆相クロマトグラフ を用いる。また、該水溶液中の過塩素酸塩 過塩素酸リチウムであることが好ましい。

図1は、例1で得られた混合物の 1 H-NMRスペクトルである。 図2は、例3で得られた5-H-N1,N2の 1 H-NMRスペクトルである。 図3は、例3で得られた5-H-N2,N3の 1 H-NMRスペクトルである。 図4は、例4で得られた混合物の 1 H-NMRスペクトルである。 図5は、例3で得られた5-H-N1,N2の質量ス クトルである。 図6は、例3で得られた5-H-N2,N3の質量ス クトルである。 図7は、例5で得られた5-メチル-N2,N3の質 量スペクトルである。 図8は、例6で得られた5-エチルアセテー ト-N2,N3の質量スペクトルである。 図9は、例7で得られた5-アセテート-N2,N3 の質量スペクトルである。 図10は、例8で得られた5-フェニル-N2,N3 質量スペクトルである。 図11は、X線解析によって得られた上記 5-メチルの結晶構造である。 図12は、X線解析によって得られた上記 5-アセテートの結晶構造である。

 以下、本発明の好適な実施形態を説明す 。なお、本明細書において特に言及してい 事項(例えば化合物の合成方法や分離精製方 法)以外の事柄であって本発明の実施に必要 事柄(例えば白金化合物を有効成分とする抗 剤(薬剤組成物)の調製に関するような一般 事項)は、有機化学、無機化学、薬学、医学 病理学、衛生学等の分野における従来技術 基づく当業者の設計事項として把握され得 。本発明は、本明細書に開示されている内 と当該分野における技術常識とに基づいて 施することができる。

 ここに開示される白金錯体化合物は、上記 中のAが1H-テトラゾール系化合物の脱プロト ン化(N1位のプロトンの引き抜き)によって得 れるテトラゾラトである。Aは、好ましくはC 5位に水素原子または低級炭化水素基を有す テトラゾラトである。
また、上記式中のBは特に制限されず、例え 無機酸イオンおよび有機酸イオンから選択 れる一種または二種以上であり得る。無機 イオンとしては、例えば、クロリド、ブロ ド、ニトラート、ホスファート、スルファ ト、ペルクロラート等が挙げられる。有機 イオンとしては、例えば、アセタート、シ ラート、ラクタート、マレアート、タルト ート、ベジラート等が挙げられる。なお、 記式(I)により表される錯体化合物は水和物 して存在し得る。したがって、本発明によ 提供される白金錯体化合物には、上記式(I) 表される化合物の水和物が包含され得る。

 上記式中のmおよびnは白金錯体部(角括弧 の錯イオン)の電荷数およびBのアニオンの 荷数に対応して決まる整数である。ここで 各白金(II)イオンの電荷は+2であり、水酸基 電荷は-1である。従って、例えば、Aが置換 を持たない或いは電荷を持たない置換基を するテトラゾラトである場合、テトラゾラ 環上の電荷は-1であるため、白金錯体部の電 荷数は+2となる。従って、Bの電荷が-2であれ 、mおよびnは共に1であり、Bの電荷が-1であ ば、mは1、nは2である。

 ここに開示されるいずれかの白金錯体化 物は、シスプラチンの病理学上の利用態様 準じて利用することができる。この場合、 (I)中のBは薬理学上許容されるアニオンであ ることが好ましい。かかる白金錯体化合物は 、例えば、シスプラチンと同様に抗癌剤とし て利用することができる。本発明に基づく抗 癌剤の調製については、本発明による白金錯 体化合物の少なくとも1種を有効成分として 有すること以外に特に制限はない。有効成 として、上記白金錯体化合物のいずれか1種 みを含んでもよいし、2種以上を含んでもよ い。また、その他の有効成分として、別の抗 癌剤、副作用を緩和するような薬剤、および /または抗癌作用を向上させるような薬剤等 含んでもよい。投与方法についても薬理効 が得られる範囲内において特に制限はない 例えば、他の白金製剤同様、該白金錯体化 物を生理食塩水等に溶解させたものを静脈 射により患者に投与することができる。

 本発明による白金錯体化合物は、適当な 媒中で式(II)で表される化合物(出発物質)と1 H-テトラゾール系化合物とを1:1~1:1.2のモル比 反応させることを含む製造方法によって好 しく製造することができる。ここで、1H-テ ラゾール系化合物の使用量が上記モル比よ も多すぎると、副生成物(式(I)で表される白 金錯体化合物以外の生成物、すなわち不純物 )が多く生じること等により、目的物の分離 製が困難となることがある。出発物質と1H- トラゾール系化合物とを上述した好ましい ル比で反応させることにより、不純物をほ んど含まず取り扱いが容易な生成物(N1,N2-架 白金錯体化合物とN2,N3-架橋白金錯体化合物 の混合物であり得る。)が、典型的には白色 粉末状として得られる。特に、式(I)における Aが置換基を有しないテトラゾラトである白 錯体化合物の製造においては、上記出発物 と1H-テトラゾール系化合物とを上記範囲の ル比で反応させることにより、目的物の収 や分離精製の容易性等の点で顕著な効果が られる。

 出発物質と1H-テトラゾール系化合物とを 応させる際には、典型的には、出発物質を 当な溶媒に溶解させた溶液に1H-テトラゾー 系化合物を添加する。使用できる溶媒とし は該出発物質を溶解し得るもので所望の白 錯体化合物の生成を阻害しないものであれ 特に制限はないが、好適には水(蒸留水)で る。1H-テトラゾール系化合物は、一度にま は何度かに分割して添加することができる 該化合物を適当な溶媒(好ましくは出発物質 溶解に用いた溶媒と同様の溶媒)に溶解させ た溶液を一度にまたは何度かに分割して添加 してもよいし、或いは徐々に滴下してもよい 。例えば、上記1H-テトラゾール系化合物溶液 を一度に添加する態様を好ましく採用するこ とができる。

 得られた反応液は、好ましくは遮光下で攪 する。この際の温度は該反応を損なわない り特に制限されないが、好ましくは25~55℃ 度であり、より好ましくは35~45℃であり、更 に好ましくは約40℃である。また、反応時間 収率を著しく減少させない範囲で特に制限 れないが、好ましくは24時間~64時間であり より好ましくは36時間~52時間であり、更に好 ましくは40時間~48時間である。なお、上記式( II)で表される出発物質(例えば、式[{cis-Pt(NH 3 ) 2 }(μ-OH)] 2 (NO 3 ) 2 で表される化合物)については公知の合成方 に従って合成することができる。例えば、R.  Faggiani. R.; B. Lippert. B; Lock, C. J. L.; and Rosenberg, B. "Hydroxo-bridged platinum(II) complexes. 1. Di-μ-hydroxo-bis[diammineplatinum(II)] nitrate, [(NH 3 ) 2 Pt(OH) 2 Pt(NH 3 ) 2 ](NO 3 ) 2 . Crystalline structure and vibrational spectra." J A m Chem Soc 1977, 99, (3), 777-781(以下、「非特 文献4」という。)に記載の合成方法を好まし く採用することができる。

 上記反応において、1H-テトラゾール系化 物としては、好ましくはC5位に水素原子ま は低級炭化水素基を有する1H-テトラゾール 、特に好ましくはC5位に水素原子を有する1H- テトラゾールを用いることができる。C5位が 素原子の1H-テトラゾールを用いた場合、上 反応によってN1,N2-架橋白金錯体化合物とN2,N 3-架橋白金錯体化合物との混合物(2つの構造 性体の混合物)が生じ得る。しかし、ここに 示される製造方法に従えば、該混合物はこ らの構造異性体以外に副生成物(不純物)を とんど含まない。そのため、上記不純物を く含む混合物に比べて吸湿性が極めて低い の特性により、取り扱いが容易である。

 また、一般的に、上記のように構造上非常 類似した異性体の混合物は高度に分離精製 ることが困難であるところ、本発明による 、該混合物から少なくともいずれか一方の 造異性体を分離することにより、上記混合 に含まれる異性体を効率よく高純度に精製 ることができる。この分離精製には、例え 、逆相クロマトグラフを用いる。使用する ロマトグラフとしては市販のものを用いる とが可能であり、例えば高速液体クロマト ラフまたは中圧分取クロマトグラフ等を好 しく用いることができる。特に好ましくは 圧分取クロマトグラフを用いる。
 使用するカラムとしては、目的物の分離精 を可能にするものであれば特に制限はない 、好適にはODS(C 18 )カラムを用いる。該ODSカラムとしては、例 ば、山善株式会社の商品名「ウルトラパッ 」を好ましく採用することができる。

 移動相としては、混合物から少なくとも 方の構造異性体を分離できれば特に制限は いが、好ましくは過塩素酸塩溶液(典型的に は水溶液)を用いる。該過塩素酸塩は、得ら た白金錯体化合物を損なわなければ特に制 されないが、好ましくはリチウム塩、ナト ウム塩等であり、リチウム塩の使用が特に ましい。これにより、精製後の白金錯体化 物の脱塩を簡便に行うことができる。すな ち、分取した溶液を凍結乾燥して得られた 金錯体化合物を少量のアルコール類(メタノ ル、エタノール、プロパノール等)により洗 浄することにより、過塩素酸塩を容易に除去 することができる。過塩素酸塩溶液の濃度は 、該溶液のpHが凡そ2.5~3.5(例えば凡そ3.0)とな ように設定するとよい。過塩素酸塩溶液と て例えば過塩素酸リチウム溶液を用いる場 、該溶液中の過塩素酸リチウム濃度が約0.1M になるように調製すると、pHが上記範囲内と り好適である。その他の事項(カラムのサイ ズ、流速等)については注入するサンプル量 応じて適宜設定すればよい。

 また、本発明の製造方法によれば、C5位 置換基を有するテトラゾラト架橋白金錯体 合物を製造することもできる。該置換基に に制限はなく、直鎖状、分岐鎖状、環式の ずれであってもよい。特に好ましくは低級 化水素基である。例えば、炭素数1~6の低級 ルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プ ピル基、イソプロピル基等)またはアリール 基等(例えばフェニル基)である。また該置換 はさらに置換されていてもよい。例えば、 セテート基やエチルアセテート基等によっ 置換された低級アルキル基であってもよい C5位の置換基の他の例としては、アミノ基(N が+1の電荷を帯びている又は帯びていないア ノ基であり得る。)、メチルチオ基、カルボ キサミド基等が挙げられる。

 なお、上記製造方法においてC5位に置換 を有する1H-テトラゾールを反応させる場合 は、N2,N3架橋による構造異性体が主として生 成し得る。この場合には、上述した混合物の 分離精製工程を省略した製造方法によっても 当該異性体を高純度に得ることができ得る。 したがって、本明細書により開示される技術 には、上記式(I)におけるAが置換基を有する トラゾラトである白金錯体化合物を製造す 方法であって、上記式(II)で表される化合物 置換基を有する1H-テトラゾール系化合物と 1:1~1:1.2のモル比で反応させることを特徴と る、白金錯体化合物の製造方法が含まれる ここで使用する1H-テトラゾール系化合物の する置換基は、式(I)中のAの有する置換基と 同一の基であってもよく、式(I)に示す化合物 と1H-テトラゾール系化合物とを反応させた後 に簡単な工程によって上記Aの有する置換基 変換可能な基であってもよい。

 以下、本発明に関するいくつかの実施例を 明するが、本発明をかかる実施例に示すも に限定することを意図したものではない。
 なお、以下に示す例1、例4~6、例8の出発物 である[{cis-Pt(NH 3 ) 2 }(μ-OH)] 2 (NO 3 ) 2 としては、上記非特許文献4に従って合成し ものを用いた。

 <例1>
 本例は、式(II)で表される化合物と1H-テトラ ゾール(すなわち、置換基を有しない1H-テト ゾール系化合物)とを1:1.1のモル比で反応さ ることにより、式(I)におけるAが置換基を有 ないテトラゾラトである白金錯体化合物を 成した例である。
 すなわち、[{cis-Pt(NH 3 ) 2 }(μ-OH)] 2 (NO 3 ) 2 2.0gを蒸留水75mLに溶解させた溶液に1H-テトラ ール(同仁化学)0.252g(1.1当量)を加え、得られ た反応液を遮光下40℃で約40時間攪拌した。 の反応液を、ロータリーエバポレーターを いて、得られた白金錯体のポリマー化反応 避けるため30℃以下で減圧濃縮し、残った粗 生成物をメタノールおよびジエチルエーテル で洗浄・濾取した後、真空デシケータで乾燥 させて白色粉末1.9gを得た。この白色粉末の 1 H-NMRスペクトル(VarianMercury300NMR)を図1に示す。 このNMRスペクトルからわかるように、上記白 色粉末は、N1,N2架橋型の白金錯体化合物[{cis-P t(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-N1,N2)](NO 3 ) 2 と、N2,N3架橋型の白金錯体化合物[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-N2,N3)](NO 3 ) 2 とを約6.5:3.5のモル比で含む混合物であり、 の不純物はほとんど含まれていなかった。 た、上記白色粉末は取扱い容易であった。

 <例2>
 例1により得られた混合物(サンプル1)を繰り 返し水から再結晶することにより、N1,N2架橋 とN1,N2架橋型とのモル比が4:6程度となるま N2,N3-架橋白金錯体化合物を精製した(サンプ 2)。

 サンプル1、サンプル2および比較例として スプラチン(サンプル3)の細胞毒性を以下の 法により評価した。
 <H460非小肺癌細胞に対するインヴィトロ 胞毒性(癌細胞増殖抑制活性)の検討>
 薬物を添加する日の前日に、24ウェル平底 イクロプレート上にH460非小肺癌細胞を12,000~ 20,000個/ウェルとなるようにプレートした。 サンプル(表1中のサンプル番号参照)のそれ れを濃度が100μMとなるようにQ-H 2 O水に溶解して各水溶液を用意した。これら 水溶液を希釈して得られた様々な濃度の溶 1mLを各ウェルに注入した。このマイクロプ ートを37℃で24時間培養した後、200μLの臭化2 ,5-ジフェニル-3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イ )テトラゾリウム(MTT)溶液(5mg/mL)を各ウェル 加え、37℃でさらに4時間培養した。MTTの還 により生成・析出したフォルマザンを溶解 るため、各ウェルにジメチルスルフォキシ (DMSO)200μLを加えた。マイクロプレートレー ーを用いて各ウェルの550nmにおける吸光度を 測定した。
 各ウェルの吸光度を3回測定し、各実験を少 なくとも3回繰り返した。IC 50 値は薬剤を添加しなかったコントロールと比 較して、フォルマザン生成量が50%となる濃度 として算出した。
 その結果を表1に示す。N2,N3-架橋白金錯体化 合物を粗精製してなるサンプル2はより高い 胞毒性を示すことがわかった。

 <例3>
 本例では、例1で得られた混合物をN1,N2架橋 とN1,N2架橋型とに高度に分離精製した。
 すなわち、上記混合物を中圧分取クロマト ラフィーにより分離した。当該分離は、山 株式会社の中圧分取クロマトグラフ装置「Y FLC-prep」を使用して、以下の条件により行っ 。
  移動相:0.1M過塩素酸リチウム(pH3.0)
  カラム:φ26mm×300mmウルトラパックODSカラム (山善株式会社)
  検出波長:254nm
  流速:20mL/min
  サンプル注入量:1回5mL
 それぞれの溶離液を凍結乾燥して得られた 色粉末をジエチルエーテルで洗浄して、N1,N 2架橋型の白金錯体化合物[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-N1,N2)](ClO 4 ) 2 (以下、5-H-N1,N2という。)0.86g、および、N2,N3架 橋型の白金錯体化合物[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-N2,N3)](ClO 4 ) 2 (以下、5-H-N2,N3という。)0.47gを得た。この5-H-N 1,N2は、上記式(I)における置換基Aが下記式(III )で表される基である白金錯体化合物に該当 る。また、5-H-N2,N3は、上記式(I)における置 基Aが下記式(IV)で表される基である白金錯体 化合物に該当する。
 分離精製後の5-H-N1,N2および5-H-N2,N3の収量の を理論収量で除して算出した最終収率は56.5 %であった。また、分離精製後の5-H-N1,N2(サン ル4)および5-H-N2,N3(サンプル5)の収率は、そ ぞれ36.5%および20.0%であった。

 5-H-N1,N2および5-H-N2,N3の同定に用いた構造 析データ(分離精製後)を以下に記す(NMRスペ トロスコピー:Varian INOVA 500、質量分析装置 :JOEL JMX-700)。また、5-H-N1,N2および5-H-N2,N3のNMR スペクトルをそれぞれ図2および図3に、これ の質量スペクトルをそれぞれ図5および図6 示す。

[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-N1,N2)](ClO 4 ) 2 (5-H-N1,N2)
NMR分析
   1 H-NMR(D 2 O,TSP-d 4 ):δ(ppm)8.84(s,1H,NH)
   13 C-NMR(D 2 O,TSP-d 4 ):δ(ppm)152.6
   195 Pt-NMR(D 2 O,Na 2 PtCl 6 ):δ(ppm)-2127,-2177
質量分析(ESI)
  [M-H + ]:542.2(理論値543.1)
  [M+ClO 4 - ]:642.8(理論値643.0)
  (M=[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-N1,N2)] 2+ )

[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-N2,N3)](ClO 4 ) 2 (5-H-N2,N3)
NMR分析
   1 H-NMR(D 2 O,TSP-d 4 ):δ(ppm)8.66(s,1H,NH)
   13 C-NMR(D 2 O,TSP-d 4 ):δ(ppm)152.6
   195 Pt-NMR(D 2 O,Na 2 PtCl 6 ):δ(ppm)-2192
質量分析(ESI)
  [M-H + ]:542.2(理論値543.1)
  [M+ClO 4 - ]:642.8(理論値643.0)
  (M=[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-N2,N3)] 2+ )

 <例4>
 本例では、式(II)で表される化合物と1H-テト ラゾール(すなわち、置換基を有しない1H-テ ラゾール系化合物)とを1:4のモル比で反応さ た。すなわち、[{cis-Pt(NH 3 ) 2 }(μ-OH)] 2 (NO 3 ) 2 に対する1H-テトラゾールの使用量を4当量と た。その他の点は例1と同様にして生成物を た。この生成物は、図4のNMRスペクトルから 明らかなように、N1,N2架橋型の白金錯体化合 [{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-N1,N2)](NO 3 ) 2 およびN2,N3架橋型の白金錯体化合物[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-N2,N3)](NO 3 ) 2 の他に、少なくとも1種の副生成物(不純物)を 含み、吸湿性が非常に高く取り扱いが困難で あった。また、不純物を含む該混合物(粗生 物)の収率は10%以下であった。仮に実施例1の 方法に従って該混合物の分離精製を行うと、 構造異性体の総収率はさらにその半分近くま で下がることになる。これは本発明による製 造方法に従った場合の約9分の1以下である。

 <例5>
 本例では、式(I)におけるAがC5位にメチル基 有するテトラゾラトである白金錯体化合物 合成した。
 すなわち、[{cis-Pt(NH 3 ) 2 }(μ-OH)] 2 (NO 3 ) 2  1.0gを蒸留水30mLに溶解させた溶液に1H-5-メチ ルテトラゾール(アルドリッチ)0.150g(1.1等量) 加え、得られた反応液を遮光下40℃で約40時 攪拌した。この反応液をロータリーエバポ ーターを用いて30℃以下で減圧濃縮し、残 た粗生成物を再結晶(50%(v/v)2-メチル-2,4-ペン ンジオール水溶液)により精製し、[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-5-methyltetrazolato-N2,N3)](NO 3 ) 2  0.15gを得た。この化合物は、式(I)におけるA 下記式(V)で表される基である白金錯体化合 である。以下、当該化合物を5-メチル-N2,N3( ンプル6)という。

 この5-メチル-N2,N3の同定に用いた構造分 データ(例3と同じ分析機器により測定した) 以下に記す。また、5-メチル-N2,N3の質量スペ クトルを図7に、X線解析による結晶構造を図1 1に示す。

NMR分析
   1 H-NMR(D 2 O,TSP-d 4 ):δ(ppm)2.64(s,3H,CH 3 )
   13 C-NMR(D 2 O,TSP-d 4 ):δ(ppm)10.1,162.2
   195 Pt-NMR(D 2 O,Na 2 PtCl 6 ):δ(ppm)-2179
質量分析(ESI)
  [M-H + ]:556.3(理論値557.1)
  (M=[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-5-methyltetrazolato-N2,N3)] 2+ )

 <例6>
 本例では、式(I)におけるAがC5位にエチルア テート基を有するテトラゾラトである白金 体化合物を合成した。
 すなわち、[{cis-Pt(NH 3 ) 2 }(μ-OH)] 2 (NO 3 ) 2  1.0gを蒸留水38mLに溶解させた溶液にエチル-1 H-テトラゾール-5-アセテート(アルドリッチ)0. 279g(1.1等量)を加え、得られた反応液を遮光下 40℃で約48時間攪拌した。この反応液をロー リーエバポレーターを用いて40℃で減圧濃縮 し、得られた白色粉末を2-プロパノールおよ ジエチルエーテルで洗浄・濾取した後、真 デシケータで乾燥させ、[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-5-ethylacetate-N2,N3)](NO 3 ) 2  0.8gを得た。この化合物は、式(I)におけるA 下記式(VI)で表される基である白金錯体化合 である。以下、当該化合物を5-エチルアセ ート-N2,N3(サンプル7)という。

 この5-エチルアセテート-N2,N3の同定に用 た構造分析データ(例3と同じ分析機器により 測定した)を以下に記す。また、5-エチルアセ テート-N2,N3の質量スペクトルを図8に示す。

NMR分析
   1 H-NMR(D 2 O,TSP-d 4 ):δ(ppm)1.28(t,3H,CH 3 ),4.11(s,2H,CH 2 ),
                   4.24(q,2H,CH 2 )
   13 C-NMR(D 2 O,TSP-d 4 ):δ(ppm)16.1,34.2,65.7,174.0
   195 Pt-NMR(D 2 O,Na 2 PtCl 6 ):δ(ppm)-2182
質量分析(ESI)
[M-H + ]:628.7(理論値629.4)
(M=[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-5-ethylacetate-N2,N3)] 2+ )

 <例7>
 本例では、例6で得られた化合物の置換基を 簡単な工程により変換することで、式(I)にお けるAがC5位にアセテート基を有するテトラゾ ラトである白金錯体化合物を合成した。
 すなわち、例6で得られた[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-5-ethylacetate-N2,N3)](NO 3 ) 2  0.2gを蒸留水5mLに溶解させた溶液に1Mの水酸 リチウム溶液300μLを加え、得られた反応液 室温で約10分間攪拌した。この反応液を0.1M 酸水溶液でpH7に調節し、ロータリーエバポ ータを用いて減圧濃縮した。得られた白色 末を2-プロパノールおよびジエチルエーテ で洗浄・濾取した後、真空デシケータで乾 させ、[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-5-acetate-N2,N3)](NO 3 ) 2  0.15gを得た。この化合物は、式(I)におけるA 下記式(VII)で表される基である白金錯体化 物である。以下、当該化合物を5-アセテート -N2,N3という。

 この5-アセテート-N2,N3の同定に用いた構 分析データ(例3と同じ分析機器により測定し た)を以下に記す。また、5-アセテート-N2,N3の 質量スペクトルを図9にX線解析による結晶構 を図12に示す。

NMR分析
   1 H-NMR(D 2 O,TSP-d 4 ):δ(ppm)3.84(s,2H,CH 2 )
   13 C-NMR(D 2 O,TSP-d 4 ):δ(ppm)37.0,164.1,179.2
   195 Pt-NMR(D 2 O,Na 2 PtCl 6 ):δ(ppm)-2181

質量分析(ESI)
  [M-H + ]:600.5(理論値600.4)
  (M=[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-tetrazolato-5-acetate-N2,N3)] + )

 <例8>
 本例では、式(I)におけるAがC5位にフェニル を有するテトラゾラトである白金錯体化合 を合成した。
 すなわち、[{cis-Pt(NH 3 ) 2 }(μ-OH)] 2 (NO 3 ) 2  1.0gを蒸留水40mLに溶解させた溶液と、1H-5-フ ェニルテトラゾール(アルドリッチ)0.273g(1.1等 量)をメタノール10mLに溶解した溶液とを混合 、得られた反応液を遮光下40℃で約48時間攪 拌した。得られた白色の懸濁液をロータリー エバポレーターを用いて30℃以下で減圧濃縮 、残った粗生成物にメタノール200mLを加え メタノール不溶分を濾過により除去した。 液を減圧濃縮し、残った白色粉末をジエチ エーテルで洗浄・濾取し、真空デシケータ で乾燥させた後、再結晶(60%(v/v)メタノール 溶液)により精製し、[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-5-phenyltetrazolato-N2,N3)](NO 3 ) 2  0.55gを得た。この化合物は、式(I)におけるA 下記式(VIII)で表される基である白金錯体化 物である。以下、当該化合物を5-フェニル-N 2,N3という。

 この5-フェニル-N2,N3の同定に用いた構造 析データ(例3と同じ分析機器により測定した )を以下に記す。また、5-フェニル-N2,N3の質量 スペクトルを図10に示す。

NMR分析
   1 H-NMR(D 2 O,TSP-d 4 ):δ(ppm)7.60(1H,p-CH),7.62(2H,CH),
                   8.06(2H,CH)
   13 C-NMR(D 2 O,TSP-d 4 ):δ(ppm)129.4,129.4,132.1,133.7,166.3
   195 Pt-NMR(D 2 O,Na 2 PtCl 6 ):δ(ppm)-2185
質量分析(ESI)
  [M-H + ]:618.6(理論値619.4)
  (M=[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-5-phenyltetrazolato-N2,N3)] 2+ )

 サンプル4~7の細胞毒性を比較対象の白金錯 化合物(サンプル3,8,9)と併せて上述の手法に より評価した。その結果を表2に示す。
 ここで、表2中のAMPZ(サンプル8)は式[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-pyrazolato)](NO 3 ) 2 で表されるピラゾラト架橋白金(II)二核錯体 あり、AMTA(サンプル9)は式[{cis-Pt(NH 3 ) 2 } 2 (μ-OH)(μ-1,2,3-triazolato-N1,N2)](NO 3 ) 2 で表される1,2,3-トリアゾラト架橋白金(II)二 錯体である。これらAMPZおよびAMTAは、シスプ ラチンとは異なる抗癌活性スペクトルを示す ことが知られており(非特許文献3)、またDNA鎖 と結合して1,2-鎖内架橋を形成するが結合部 のDNA鎖に上記のような顕著な歪みを及ぼさ いことが観察されている。すなわち、これ のアゾラト架橋白金(II)二核錯体は、上記シ プラチン系製剤のいずれとも異なる態様でD NAに結合すると考えられる。

 表2に示す結果から明らかなように、サン プル4~7のいずれもH460非小肺癌細胞に対して スプラチンと同程度以上の細胞毒性を示し 。また、上記の癌細胞に対する細胞毒性はAM PZおよびAMTAと比べ著しく優れていた。本発明 による白金化合物は構造上シスプラチン系製 剤とは異なる態様でDNAに結合し得る(すなわ 、異なる作用機序および体内代謝経路をた り得る)。さらに、上記の測定結果は、本発 による白金錯体化合物がAMPZおよびAMTAとは なる薬剤プロファイルを有し得ることを示 するものである。