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Patent Searching and Data


Title:
POLYAMIDE 56 FILAMENT, AND FIBER STRUCTURE AND AIR-BAG BASE CLOTH EACH COMPRISING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/119302
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a polyamide filament which can form an excellent air-bag base cloth having superior flexibility and impact-absorbing properties to those of air-bag base cloths comprising conventional polyamide 66 filaments and also having a good balance among low air permeability, high strength, heat resistance and durability. Also disclosed are a fiber structure and an air-bag base cloth each comprising the filament. The polyamide 56 filament has a sulfuric acid relative viscosity of 3 to 8, a Mw/Mn ratio of 1.5 to 3, a single fiber fineness of 0.1 to 5 dtex, a strength of 7 to 12 cN/dtex, a shrinkage rate of 5 to 20% as measured after the treatment in boiled water at 98°C for 30 minutes, a strength of 5 to 11 cN/dtex as measured after the treatment in boiling water, and a stress at 10% elongation of 0.3 to 1.5 cN/dtex as measured after the treatment in boiling water.

Inventors:
FUKUDOME KOUSUKE (JP)
MOCHIZUKI KATSUHIKO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/054478
Publication Date:
October 01, 2009
Filing Date:
March 10, 2009
Export Citation:
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Assignee:
TORAY INDUSTRIES (JP)
FUKUDOME KOUSUKE (JP)
MOCHIZUKI KATSUHIKO (JP)
International Classes:
D01F6/60; B60R21/16; C08G69/26; D02G3/02; D02J1/22; D03D1/02; D03D15/00
Foreign References:
JP2003292612A2003-10-15
JP2004075932A2004-03-11
JP2006144163A2006-06-08
JP2004208646A2004-07-29
JP2002194079A2002-07-10
JP2009068132A2009-04-02
JP2950954B21999-09-20
JP3180524B22001-06-25
JP2003292612A2003-10-15
JP2004075932A2004-03-11
JP2006144163A2006-06-08
JP2002223771A2002-08-13
JP2004000114A2004-01-08
JP2004208646A2004-07-29
JP2004290091A2004-10-21
JP2004298034A2004-10-28
JP2002223770A2002-08-13
JP2004222569A2004-08-12
Other References:
See also references of EP 2256237A4
J. POLYM. SCI., vol. 2, 1947, pages 306
J. POLYM. SCI., vol. 50, 1961, pages 87
MACROMOLECULES, vol. 30, 1998, pages 8540
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Claims:
硫酸相対粘度が3~8、Mw/Mnが1.5~3、単繊維繊度が0.1~7dtex、強度が7~12cN/dtex、98℃30分間の沸水処理による収縮率が5~20%、沸水処理後の強度が5~11cN/dtex、沸水処理後の10%伸長時応力が0.3~1.5cN/dtexであることを特徴とするポリアミド56フィラメント。
総繊度が200~600dtexであることを特徴とする請求項1記載のポリアミド56フィラメント。
請求項1または請求項2に記載のポリアミド56フィラメントを含有することを特徴とする繊維構造体。
ポリアミド56フィラメントを含有するエアバッグ用基布であって、98℃30分間の沸水処理による基布の収縮率が0~3%であり、基布の分解糸の総繊度が200~600dtex、基布の分解糸の単繊維繊度が0.1~7dtex、基布の分解糸の強度が5~10cN/dtex、基布の分解糸の10%伸長時応力が0.3~2cN/dtexであることを特徴とするエアバッグ用基布。
硫酸相対粘度3~8、Mw/Mn1.5~3である紡出糸を形成し、該紡出糸を冷却風にて固化した後、非含水油剤を付与し、300~2000m/分で引取った後、得られるフィラメントの伸度が10~50%となる延伸倍率で延伸し、最終熱処理ロールの温度を210~250℃として熱処理した後、リラックス倍率0.8~0.95としてリラックスせしめた後、巻き取ることを特徴とするポリアミド56フィラメントの製造方法。
 請求項2に記載のポリアミド56フィラメントを含有する織物に湿熱処理を施し、熱収縮せしめることを特徴とするエアバッグ用基布の製造方法。
硫酸相対粘度が3~8、Mw/Mnが1.5~3であることを特徴とするポリアミド56樹脂。
硫酸相対粘度が3~8、Mw/Mnが1.5~3であり、粒度が2~70mg/個であるポリアミド56樹脂ペレット。
請求項7に記載のポリアミド56樹脂からなることを特徴とするポリアミド56フィラメント。
単繊維繊度が0.1~7dtex、98℃30分間の沸水処理による収縮率が5~20%、 沸水処理後の強度が5~11cN/dtexであることを特徴とする請求項9に記載のポリアミド56フィラメント
請求項9または10に記載のポリアミド56フィラメントを含有することを特徴とするエアバッグ用基布。
1,5-ペンタメチレンジアミンとアジピン酸から構成されるポリアミド56樹脂の製造方法であって、1,5-ペンタメチレンジアミンのモル数と、アジピン酸のモル数との比を0.95~1.05の範囲で調整せしめた原料を、水の共存下で加圧加熱重合して下記(1)~(3)の特性を有する樹脂からなるペレットを製造した後、該ペレットを缶内温度130~200℃において攪拌しながら、133Pa以下まで減圧し、1~48時間、固相重合して製造することを特徴とするポリアミド56樹脂の製造方法。
(1)硫酸相対粘度:2.9以下
(2)0.3≦[NH 2 ]/([NH 2 ]+[COOH])≦0.7
[NH 2 ]:固相重合に供するポリアミド56樹脂中のアミノ末端基濃度(eq/ton)
[COOH]:固相重合に供するポリアミド56樹脂中のカルボキシル末端基濃度(eq/ton)
(3)ペレットの粒度:2~70mg/個
1,5-ペンタメチレンジアミンがバイオマス由来の化合物から、酵素反応、酵母反応および発酵反応から選ばれる1つ以上の反応によって合成されたものであることを特徴とする請求項12に記載のポリアミド56樹脂の製造方法。
バイオマス由来の化合物がグルコースおよび/またはリジンであることを特徴とする請求項13に記載のポリアミド56樹脂の製造方法。
Description:
ポリアミド56フィラメント、お びそれを含有する繊維構造体、ならびにエ バッグ用基布

 本発明は、単繊維繊度が小さいポリアミ 56フィラメントに関する。そして常態での 度が高いだけでなく、沸水処理後において 高強度でありながら、低弾性率で柔軟性に れる特徴を有しており、耐熱性、耐久性に れるポリアミド56フィラメントに関するもの である。さらに該フィラメントを含有する繊 維構造体、ならびにエアバッグ用基布、該フ ィラメントを製造するのに好適な樹脂ペレッ トに関するものである。

 自動車の乗員保護用安全装置として、エ バッグ装着が急速に普及している。従来か 用いられている運転席用、助手席用のエア ッグ装置に加え、最近ではサイドエアバッ 装置、ニーエアバッグ装置、カーテンエア ッグ装置なども開発・搭載されている。

 エアバッグは通常袋状に縫製されており ステアリングホイール等の自動車部品内部 折り畳まれて収納されている。そして自動 に衝撃が加わった際に、そのショックをセ サーが感知し、インフレーターから爆発的 高温ガスが発生することで該エアバッグが 時に膨張展開され、衝突による乗員の移動 阻止し、乗員の安全を確保する役割を果た ものである。

 よって、エアバッグに用いられる基布(以 下、単にエアバッグ用基布と称することがあ る)の要求特性としては、低通気度(バッグを 間的に膨張させるために基布の通気性が小 いことが要求される)、高強度(瞬間的な膨 に耐えられるよう基布の引張強度、引裂き 度、破裂強度等が高いことが要求される)、 撃吸収能(膨張したエアバッグが乗員に当っ た際に乗員が傷つかないために高いエネルギ ー吸収能が要求される)、耐熱性(インフレー ーから発生する高温ガスに耐えることが要 される)、耐久性(砂漠地帯などの高温多湿 環境下においても強度など特性が低下しな 耐久性が要求される)、柔軟性(エアバッグは 通常ステアリングホイールやインストルメン トパネルなどの狭い場所に収納されるため、 収納容積を小さくするため基布の柔軟性が要 求される)であり、これらのすべてが満足さ る点で、ポリアミド66フィラメントからなる 高密度織物が用いられている。

 そして該高密度織物をそのまま用いたノ コート基布や、該織物にシリコーン樹脂等 エラストマーを塗布したコート基布が知ら ているが、前者は後者と比べて通気度の点 は不利であるが、基布の柔軟性が高く収納 に優れる特徴を有する。一方で後者は前者 対して収納性には劣るが、低通気度である め展開速度を高め易いメリットがある。こ ため適用する部位に応じてこれらの基布が 択されて使用されている。

 特に最近ではエアバッグ装置をより多く 部位に設置するようになってきており、よ 狭いスペースに装置しうる収納性が要求さ る傾向にある。よって、従来よりもさらに 軟性が高い基布が求められている。またイ フレーターの高性能化が進むにつれ、エア ッグの展開速度が飛躍的に向上した反面、 張したエアバッグに乗員が当った際に、過 な衝撃力や、摩擦力を受けるのを防ぐべく 従来以上に高いエネルギー吸収能を有する アバッグ基布が要求されるようになった。

 例えば特許文献1において、総繊度が特定 の範囲にある合成フィラメントで構成され、 経緯の織物組織が対称であり、熱収縮されて なる未塗布織物が開示されている。具体例と して高強度ポリアミド66フィラメントからな 織物が開示されており、フィラメントの総 度を特定の範囲とし、対称性の高い織組織 した効果により、薄地でありながら強度も い織物を形成できる。しかしながら高強度 リアミド66フィラメントは熱収縮せしめた であっても弾性率が高いため、基布を構成 る繊維の曲げ剛性が高く、基布の柔軟性の で、十分ではない。また織物を熱収縮せし た際の繊維の収縮力で糸同士が過度に拘束 れることも基布が硬くなる原因となり、基 の柔軟性が不十分であると、収納性はもち ん、エアバッグの衝撃吸収能も悪化し、酷 場合には展開時の衝撃で乗員が怪我をして まう場合があった。

 このためエアバッグ用基布の柔軟性、衝 吸収能を高める手段としてポリアミド66フ ラメントの単繊維繊度を極限まで小さくし フィラメントの見掛けの曲げ剛性を下げる みがなされているが、単繊維繊度が小さい ィラメントは製糸工程(紡糸、延伸工程)や製 織工程で毛羽が発生し易く、毛羽がエアバッ グの欠点となってしまうため、操業性や収率 が大きな課題となっている。

 一方、高強度かつ低弾性率であるマルチ ィラメントを用いて構成したエアバッグ用 布が開示されている(特許文献2参照)。特許 献2において、具体例としてポリブチレンテ レフタレートからなる低弾性率のフィラメン トを用いることで、ポリアミド66フィラメン からなる場合と比べて、柔軟性が高いエア ッグ用基布を構成できることが提案されて る。しかしながらポリブチレンテレフタレ ト等のポリエステルは融点が低いため、イ フレーターの高温ガスによって基布に穴あ が生じる場合があった。また穴あきは生じ くとも、高性能インフレーターでの高速展 で基布が破裂してしまう場合があった。こ は上記ポリエステル系ポリマーではポリア ド66よりも相対的に強度が低いこと、さら は耐衝撃性、すなわち高速変形に対する追 性が低いポリマーであることが原因であっ 。

 このように、ポリブチレンテレフタレー 等の低弾性率ポリエステルフィラメントに り基布を柔軟化することは可能であるが、 熱性や破裂強度といった特性を含めた総合 観点から、エアバッグ用基布としては実用 されていない。これまで、合成繊維の強度 弾性率との関係はポリマーの分子構造的な 徴によって概ね決まってしまうため、ポリ ミド66フィラメントでは特許文献2のごとく 弾性率化することは技術的に困難であった もちろんポリアミド66に他のモノマーを共 合せしめるなどの改質手段も考えられるが この手段では繊維の融点が低下してしまう め、エアバッグ用基布の耐熱性を満足でき いという問題が生じてしまう。

 すなわち、従来のポリアミド66フィラメ トからなるエアバッグ用基布においては基 の柔軟性や衝撃吸収能の点で十分に満足で るものではない。

 ところで、最近、地球的規模での環境に する意識向上に伴い、非石油由来の繊維素 の開発が切望されている。従来のポリアミ 等の合成繊維は石油資源を主原料としてい ことから、石油資源が将来枯渇すること、 た石油資源の大量消費により生じる地球温 化が大きな問題として採り上げられている

 二酸化炭素を大気中から取り込み成長す 植物資源を原料とすることで、二酸化炭素 循環により地球温暖化の抑制が期待できる ともに、資源枯渇の問題も解決できる可能 がある。よって近年では、植物資源を出発 とするプラスチック、すなわちバイオマス 来のプラスチック(以下、バイオマスプラと 記載)に注目が集まっている。

 バイオマスプラの代表的なものとして、 リ乳酸等の脂肪族ポリエステルが挙げられ 研究・開発が本格化しているが、強度、耐 性、耐摩耗性、耐加水分解性などの諸特性 、ポリアミド繊維と比べて低いため、エア ッグ用基布のような安全性に対する要求特 のレベルが高い用途への適用はできないも であった。

 新規なバイオマスプラとして、バイオマ 利用により製造した1,5-ペンタメチレンジア ミンと、アジピン酸とを加熱重合して得られ るポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミ 56)が開示されている(特許文献3、特許文献4 照)。従来から加熱重合で製造されたポリア ド56(非特許文献1)が知られていたが、加熱 合で得られたポリアミド56は、界面重合法で 製造されたポリアミド56(非特許文献2、3)と比 べて融点が低く、耐熱性に劣るものしか報告 されていなかった。一方で界面重合法は、工 程が複雑であり、工業的な製造プロセスとし て実現することは困難である。そこで特許文 献3の如く、リジン脱炭酸酵素を用いた酵素 応等で得られた高純度の1,5-ペンタメチレン アミンを用いることや、特許文献4の如く特 定の重合方法を採用するなどの工夫により、 加熱重合法により初めて融点が高く、実用的 な重合度を有するポリアミド56樹脂を製造す ことに成功している。該ポリアミド56樹脂 優れた溶融貯留安定性に加え、紡糸、延伸 も良好であることから、繊維材料としても 適であり、該ポリアミド56樹脂を用い、溶融 紡糸、延伸して得たポリアミド56フィラメン は、力学特性、耐熱性などに優れたもので る。しかしながら、エアバッグ用基布に用 られるフィラメントに要求されるような、 繊度および単繊維繊度が小さいフィラメン を構成した場合、繊維の強度の点で課題が されていた。

 また、ポリアミド56からなるフィラメン については透明性に優れ、高強度であるフ ラメントが得られる(特許文献5)ことから、 体例として釣り糸等に好適な太繊度のモノ ィラメントを製造しうることが開示されて る。しかしながら、エアバッグ用基布に求 られる総繊度および単繊維繊度が小さいフ ラメントを製造しようとすると、紡糸工程 延伸工程で糸切れが頻発し、得られる繊維 毛羽が多く、強度が低いものとなり易かっ 。また得られた繊維は沸水処理などの熱処 によって収縮し易く、収縮後においてはさ に強度が低下してしまうものであった。

 よって、織物を製織しても毛羽が欠点とな てしまい通気度の高いものとなり易く、ま 製織直後の基布の強度が低く、さらに精錬 ファイナルセットにおける熱履歴により強 はさらに低下してしまうため、通気度、力 特性の点でエアバッグ用基布としての要求 性を満足するものは得られていなかった。

特許第2950954号(特許請求の範囲)

特許第3180524号(特許請求の範囲)

特開2003-292612号公報(特許請求の範囲、[00 45])

特開2004-075932号公報(特許請求の範囲、[00 34])

特開2006-144163号公報(特許請求の範囲) J.Polym.Sci.2,306(1947) J.Polym.Sci.50,87(1961) Macromolecules,30,8540(1998)

 本発明の課題は、従来のポリアミド66フ ラメントからなるエアバッグ用基布に勝る 軟性、衝撃吸収能を有し、かつ低通気度、 強度、耐熱性、耐久性にもバランス良く優 たエアバッグ用基布を形成しうるポリアミ 56フィラメント、および該フィラメントを含 有する繊維構造体、ならびにエアバッグ用基 布を提供することである。

 本発明者らが細繊度のポリアミド56フィ メントにおける、毛羽の抑制、力学特性や 収縮特性の改善について鋭意検討した結果 硫酸相対粘度が高く、かつ分子量分布(Mw/Mn) 小さいポリアミド56フィラメントを形成す ことで、これらの相乗効果によって製糸工 におけるポリアミド56分子鎖の配向度、結晶 化度が十分に高まり、細繊度でありながら毛 羽が少なく、力学特性や、熱収縮特性に優れ たポリアミド56フィラメントを製造すること 成功した。

 そして本発明者らがさらに詳細に検討し 結果、驚くべきことに、ポリアミド56を含 するフィラメントは沸水処理などの湿熱処 で熱収縮せしめることで、弾性率を飛躍的 低減させたフィラメントにすることを可能 した。そしてフィラメントの熱収縮特性を 定の範囲とすることで、収縮処理後でも高 度でありながら、低弾性率であるフィラメ トとなることを見出した。そのため該ポリ ミド56フィラメントを用いてなる織物を、精 錬やファイナルセット等の工程で熱収縮せし めることで、従来のポリアミド66フィラメン からなるエアバッグ用基布に勝る柔軟性、 撃吸収能を有し、かつ低通気度、高強度、 熱性、耐久性にも優れたエアバッグ用基布 得られることを見出し、本発明を完成する 至った。

 すなわち本発明は、硫酸相対粘度が3~8、M w/Mnが1.5~3、単繊維繊度が0.1~7dtex、強度が7~12cN /dtex、98℃30分間の沸水処理による収縮率が5~2 0%、沸水処理後の強度が5~11cN/dtex、沸水処理 の10%伸長時応力が0.3~1.5cN/dtexであることを特 徴とするポリアミド56フィラメントによって 成されるものである。

 本発明のポリアミド56フィラメントはバ オマスプラであるポリアミド56を含有するた め環境配慮型素材である。また、力学特性、 耐熱性、耐摩耗性、耐久性に優れるため、衣 料用途や、産業資材用途に幅広く利用可能な フィラメント、およびこれを含んでなる繊維 構造体を提供することができる。

 そして該フィラメントは湿熱処理などの 段で熱収縮せしめることで、高強度かつ低 性率のフィラメントとすることで、該フィ メントを用いて製織した後、精錬やファイ ルセット等の熱処理を施した織物は、従来 ポリアミド66フィラメントからなる織物に る、柔軟性、衝撃吸収能を有するとともに 低通気度、高強度、耐熱性、耐久性に優れ 基布としてエアバッグに好適に用いること できる。

1軸混練機を備えた直接紡糸、延伸、熱 処理装置の模式図である。 エアバッグの1態様を示す模式図である 。 衝撃吸収能の測定装置の模式図である

符号の説明

 1:ホッパー
 2:1軸エクストルーダー
 3:ポリマー配管
 4:ギヤポンプ
 5:スピンブロック
 6:紡糸パック
 7:紡糸口金
 8:加熱筒
 9:冷却装置(環状タイプ)
 10:糸条
 11:給油装置
 12:第1ロール
 13:第2ロール
 14:第3ロール
 15:第4ロール
 16:第5ロール(最終加熱ロール)
 17:第6ロール 
 18:交絡ノズル 
 19:巻取機
 20:チーズパッケージ
 21:乗員側の布帛
 22:インフレーター側の布帛
 23:開口部
 24:ベントホール
 25:エアバッグ
 26:ゴム風船
 27:鉄球

 本発明のポリアミド56フィラメントは、 り返し単位の90モル%以上がペンタメチレン ジパミド単位で構成されたポリアミド56を含 有することが好ましい。ペンタメチレンアジ パミド単位とは、1,5-ペンタメチレンジアミ とアジピン酸とから構成される構造単位で る。本発明の効果を損なわない範囲におい 、10モル%未満の他の共重合成分を含んでも いが、よりペンタメチレンアジパミド単位 多く含んでなることで分子鎖の規則性が高 り、製糸工程で配向結晶化し易くなるため 学特性、耐熱性に優れたフィラメントとな 好ましい。またシリコーンゴム等のエラス マーを塗布したコートエアバッグとして用 る場合、エラストマーと織物との接着性が 期に渡って維持される、すなわち接着耐久 に優れたものとなるため好ましい。これは ンタメチレンアジパミド単位が、従来のポ アミド66等に含まれるヘキサメチレンアジパ ミド単位よりも繰り返し単位の分子量が小さ く、単位重量当たりのアミド結合の濃度が高 いため、繊維とエラストマーとの間で形成さ れる結合(水素結合や共有結合など)が多くな ことによるものと推定している。これらの とからペンタメチレンアジパミド単位が94 ル%以上であることがより好ましく、96モル% 上であることがさらに好ましく、98モル%以 であることが最も好ましい。また本発明の リアミド56フィラメントは10重量%未満の範 で、後述する他の成分を含んでもよい。

 本発明のフィラメントは、分子量の指標 ある硫酸相対粘度が3~8であることが必要で る。硫酸相対粘度が高い、すなわち分子量 高いほど、フィラメントの強度が高まるた 好ましい。これは高分子量であることで単 体積当たりに存在する分子鎖の末端(フィラ メントの構造欠陥となり易い)の量が少なく るだけでなく、分子鎖長が長いことで1本の 子鎖がより多くの分子鎖と相互作用(物理的 絡み合い、水素結合、ファンデルワールス力 など)することとなり、紡糸応力や延伸応力 均一に伝達されるため、フィラメントの製 工程において分子鎖が均一に配向されるた と考えられる。一方で硫酸相対粘度が適度 範囲であることで、適正な紡糸温度での溶 紡糸が可能となり、紡糸機内でのポリマー 熱分解が抑えられるため、製糸性が良好と り、繊維の着色も抑えられるため好ましい また熱分解が抑えられることで後述する分 度(Mw/Mn)も小さくなりうるため好ましい。よ 好ましくは3.1~7であり、さらに好ましくは3. 2~6、特に好ましくは3.3~5であり、3.4~4が最良 ある。

 さらに本発明のフィラメントは分子量分 が狭いことが極めて重要であり、分子量分 の指標である分散度(Mw/Mn)が1.5~3であること 必要である。ここでMwとは重量平均分子量 あり、Mnは数平均分子量であり、両者の比で あるMw/Mnが小さいほど、分子量分布が狭いこ を示している。上述のごとく硫酸相対粘度 高いことに加えて、Mw/Mnも3以下と分子量分 が狭いフィラメントであることで、初めて 強度で、沸水処理における収縮率も小さく 沸水処理後においても高い強度が維持され フィラメントとなるため好ましい。これはM w/Mnが小さい、すなわち分子鎖長の分布が小 いことで、それぞれの分子鎖における、相 作用を及ぼしあう分子鎖の本数や、相互作 力(物理的絡み合い力、水素結合力、ファン ルワールス力など)が概ね等しくなるため、 製糸工程において、それぞれの分子鎖に均等 に紡糸応力、延伸応力が掛かり、結果として 非晶相の分子鎖が均一に配向され、緻密性の 高い配向結晶相が多く形成されるためと推定 される。さらに分子鎖が均一に配向された効 果によって、非晶相には結晶相同士を連結す る非晶鎖(タイ分子)が多く存在しており、該 イ分子の分子鎖長も比較的等しいため、そ 多くは緊張状態で存在している(結晶相によ って運動を拘束されている)ものと推定され 。すなわち、緻密性の高い配向結晶相を多 含み、該結晶相は多くの緊張タイ分子によ て連結されているため、これらが相乗効果 に作用するため高強度で、沸水処理などの 処理においても収縮率が小さく、熱処理後 おいても強度の高いポリアミド56フィラメン トとなる。Mw/Mnは2.8以下がより好ましく、2.6 下がさらに好ましく、2.4以下が特に好まし 。Mw/Mnは小さいほど好ましく、1.5以上であ ば製造可能なレベルである。

 本発明のフィラメントは、エアバッグ基 用として総繊度が200~600dtexであることが好 しい。総繊度が600dtex以下であることにより 高密度織物としても薄地で柔軟性の高い織 となるため、エアバッグ用基布に用いた場 には、収納性が高く、衝撃吸収能にも優れ 基布のとなるため好ましい。また一方で、 繊度が200dtex以上であることで引張強度が十 分に高い織物が得られ、エアバッグ用基布な どに要求される強度を満たす基布を形成でき るため好ましい。250~550dtexであることがより ましく、300~500dtexであることがさらに好ま い。

 また、本発明のフィラメントは単繊維繊 が0.1~7dtexであることが好ましい。単繊維繊 が7dtex以下であることで、単繊維の曲げ剛 が下がるためマルチフィラメントとしても げ剛性を低減せしめ、結果として織物の柔 性が高まるため好ましい。また単繊維繊度 低いほど繊維の比表面積が大きくなるため 織組織を構成するマルチフィラメント同士 拘束力が高まり、外力(引張力、摩擦力、衝 力など)によって目ズレしにくい織物となる ため、エアバッグ用基布として用いた場合に は、インフレーターで展開した際に縫製部の 周りの織組織に乱れ(目ズレ)が生じてガス漏 するといった不具合を回避でき、通気度の いエアバッグを歩留まりよく形成できるた 好ましい。一方で単繊維繊度が0.1dtex以上で あることにより、製糸工程において毛羽の発 生を抑えて高倍率延伸を施すことが可能とな るため、高強度であり、かつ沸水処理等の熱 処理においても収縮し難いフィラメントとな るため好ましい。1~6dtexであることがより好 しく、1.5~4dtexがさらに好ましい。

 なお本発明のフィラメントのフィラメン 数は、上記の総繊度、単繊維繊度となる範 で目的用途に応じて選択すればよいが、10~1 000の範囲であることが好ましい。

 また本発明のフィラメントは強度が7cN/dte xであることが好ましい。強度が7cN/dtex以上で あることにより、製織工程における織張力を 高めても毛羽が発生し難く、高密度な織物を 製造工程通過性良く得ることができるため好 ましい。よって7.5cN/dtex以上であることがよ 好ましく、8cN/dtex以上であることがさらに好 ましい。なお強度は高いほど好ましいが、あ まりに高強度なフィラメントを製造しようと すると、製糸工程(延伸工程)での高い延伸張 に起因した糸切れ、毛羽が発生し易くなる 向にある。よって11.5cN/dtex以下であること より好ましく、11cN/dtex以下がさらに好まし 。

 本発明のポリアミド56はこのように高強 なフィラメントであるが、従来技術におい 、総繊度、単繊維繊度が共に小さいポリア ド56フィラメントを製造しようとすると、延 伸工程において毛羽や糸切れが発生し易いた め延伸倍率を下げざるを得ず、強度7cN/dtex以 のフィラメントを製造することは困難であ た。そして本発明者らが鋭意検討した結果 ポリアミド56の原料である1,5-ペンタメチレ ジアミンが重合工程で揮発や環化し易いこ 、ポリアミド56があまり溶融貯留安定性の いポリマーではないこと、また結晶性も従 のポリアミド66と比べて低いなどの特徴から 、重合工程、製糸工程において分子量分布が 広がり易く、特に高分子量であるポリアミド 56フィラメントにおいては、Mw/Mnが3を超えて まうため、紡糸工程や延伸工程において分 鎖を均一に配向させることが難しくなり、 羽や糸切れを誘発することがわかった。そ て後述するような特定の製造方法を採用す ことで、初めて高分子量でありながら、分 量分布の狭いポリアミド56フィラメントを 成せしめることができた。これにより細繊 でありながら高強度なフィラメントを得る とに成功したのである。そして驚くべきこ に、Mw/Mnが3以下であるポリアミド56フィラメ ントは、従来のポリアミド66よりも高強度と りうることがわかった。これはポリアミド5 6の結晶性が低いことにより、製糸工程で球 が形成され難くなり、構造欠陥を含みにく フィラメントになったためと推定している

 また本発明のポリアミド56フィラメント 98℃30分間の沸水処理による収縮率(以下、単 に沸収と記載することがある)が5~20%であるこ とが好ましい。沸収が20%以下であることで、 沸水処理中において分子鎖の配向度が極端に 低下することがなく、後述の如く沸水処理後 においても強度の高いフィラメントとなるた め好ましい。また織物を熱収縮させる加工で フィラメントを十分に収縮せしめることがで きるため、柔軟な織物が得られる。前述した ようにポリアミド56はポリアミド66などの従 のポリアミドと比べて、単位体積当たりに くのアミド結合を含むため、分子構造とし 親水性が高いポリマーである。そのため従 のポリアミド56フィラメントは特に水共存下 で熱処理(沸水処理やスチーム処理など)を施 と、多くの水が緻密性の低い非晶相へ進入 て分子鎖間相互作用を低下せしめるため、 晶鎖の配向度の低下が大きく沸収が20%を超 るものとなり易かった。しかしながら本発 のフィラメントは分子量分布が狭い効果に って分子配向を容易に高くすることが可能 なり、緻密性の高い配向結晶相を多く含み かつ非晶相には結晶相によって分子運動が 束された緊張タイ分子を多く含むことから これらの相乗効果として沸収の小さいフィ メントとすることを可能にしたのである。

 一方で、沸収が5%以上であることにより 織物を熱収縮せしめることによって織り密 を高めることができ、製織工程における織 張力を適度な範囲に抑えて高密度な織物を 造できるため好ましい。これにより高密度 物の製造において必ずしも高張力下で製織 る必要が無くなるため、製織工程での毛羽 ヒケの発生が抑えられ、欠点の少ない織物 工程通過性良く製造することができる。ま 一般的にはあまり高収縮なフィラメントを いて熱収縮によって織り密度を高めると、 組織を構成するフィラメント同士が熱収縮 によって過度に拘束を受けるため、織物が 化してしまう傾向にあるが、本発明のポリ ミド56フィラメントは後述するように沸水処 理後においては10%伸長応力が低い、すなわち 弾性率の低いフィラメントにすることが可能 であるため、フィラメント同士の拘束性が高 くとも、織物の柔軟性は確保され易いことも わかった。そのため、従来のポリアミド66フ ラメントからなる織物よりも、織組織を構 するマルチフィラメント同士の拘束力を高 ることも可能となり、エアバッグの展開時 おける衝撃力によっても縫製部近傍で織り 織が乱れる(目ズレが生じる)ことが無いた 好ましい。これらのことから、沸収は7~18%で あることがより好ましく、8~15%がさらに好ま い。

 そして本発明のフィラメントは、沸水処 後の強度が5~11cN/dtexであることが好ましい 沸水処理後の強度が5cN/dtex以上であることに より、精錬やファイナルセットにおいて十分 に熱収縮させた後であっても、十分な強度を 有する織物となるため好ましい。沸水処理後 の強度は高いほど好ましいが、11cN/dtex以下で あることで、織物にした後の強度を適度な範 囲に抑えられるため好ましい。より好ましく は5.5~10cN/dtexであり、さらに好ましくは6~9cN/dt exであり、特に好ましくは6.5~8.5cN/dtexである

 また、本発明のポリアミド56フィラメン は沸水処理後の10%伸長時応力が0.3~1.5cN/dtexで あることが好ましい。10%伸長時応力とはフィ ラメントの弾性率の指標であり、これが低い ほど柔軟なフィラメントであると解釈される 。沸水処理後の10%伸長時応力が1.5cN/dtex以下 あることで、織物を構成した後、該織物の 水処理後の収縮率が3%以下となるように熱収 縮せしめると、柔軟性、衝撃吸収能が優れた 織物となるため好ましい。沸水処理後の10%伸 長時応力は1.3cN/dtex以下であることがより好 しく、1.1cN/dtex以下であることがさらに好ま い。一方で沸水処理後の10%伸長時応力が0.3c N/dtex以上であることで、熱収縮せしめた後の 織物が、外力で変形し難いものとなるため好 ましい。0.4cN/dtex以上であることがより好ま く、0.5cN/dtex以上がさらに好ましい。本発明 ポリアミド56フィラメントは、常態(沸水処 を施していない)における10%伸長時応力は、 従来のポリアミド66フィラメントとさほど変 らなくとも、沸水処理後においては10%伸長 応力が1.5cN/dtex以下と非常に柔軟性に富んだ フィラメントとなる。これはポリアミド66フ ラメントでは実現が難しいレベルであり、 リアミド56の分子構造的特徴により達成さ るものである。ポリアミド66を構成するヘキ サメチレンアジパミド単位は、ジアミン単位 とジカルボン酸単位の炭素数が共に6と、非 に規則性の高い分子構造を有しているため 隣接する分子鎖間でアミド結合の位置が揃 易い。そのため沸水処理を行うと分子間の 素結合力が一端は弱まるものの、収縮後に が系外へ排除されると、大半の分子鎖は再 強固な水素結合を形成する。一方で、本発 のポリアミド56フィラメントを構成するペン タメチレンアジパミド単位は、単位体積当た りのアミド結合の数が多いため親水性が非常 に高く、ジアミン単位が炭素数5、ジカルボ 酸単位が炭素数6と、ポリアミド66よりも分 鎖の規則性が低い特徴を有している。親水 が高いことから、沸水処理により非晶相に 較的多くの水が取り込まれ、分子鎖間の水 結合力が低下または水素結合が切断され易 、さらに分子鎖の規則性が低い特徴を有す ことから、収縮後に水が排除されても、一 の分子鎖においては沸水処理前の分子間水 結合力が復元せずに、結合力が弱い状態で 定化するものと考えられる。これらのこと ら、ポリアミド56フィラメントは沸水処理後 においては分子鎖間水素結合力が適度に低く なるため、極めて弾性率の低いフィラメント になる。

 一方でポリアミド56フィラメントの10%伸 時応力、すなわち沸水処理を施す前の10%伸 時応力が高いほど、製経工程や製織工程で 経糸張力、緯糸張力を高く設定することが 能となり、高密度な織物を製造し易く好ま い。ただしあまりに10%伸長応力が高いフィ メントを得ようとすると、製糸工程で糸切 や毛羽が発生し易くなる。よってポリアミ 56フィラメントの10%伸長応力は1.8~4.5cN/dtexで ることが好ましく、1.9~4.2cN/dtexであること より好ましく、2~4cN/dtexであることがより好 しい。

 本発明のフィラメントは耐熱性の指標と る融点が高いことが好ましい。融点は240℃ 上であることが好ましく、250℃以上である とがより好ましい。また繊維の溶融に要す 熱量の指標である、融解熱量も高いことが ましく、60J/g以上であることが好ましく、70 J/g以上であることがより好ましい。融点およ び融解熱量が高いことで、例えばインフレー ターの高温ガス等の高温物に晒されても、溶 融、穿孔することがない。

 また、本発明のフィラメントの伸度は10~5 0%であると、繊維製品にする際の工程通過性 良好であり好ましい。下限としては12%以上 あることがより好ましく、15%以上であるこ がさらに好ましく、18%以上であることがい そう好ましい。上限としては40%以下である とがより好ましく、30%以下であることがさ に好ましく、25%以下であることがいっそう ましく、23%以下であることがよりいっそう ましい。

 本発明のフィラメントの糸斑が小さいほ 、製経工程、製織工程での経糸張力、緯糸 力の変動を抑えることができるため、製縦 製織工程で毛羽が発生することがなく、経 方向での物性差も小さい織物が得られるた 好ましい。このため糸斑の指標であるU%(Norm alモード)は3%以下が好ましく、2%以下がより ましく、1.5以下がさらに好ましく、0.5~1が特 に好ましい。

 本発明のフィラメントは必要に応じて交 処理が施されてもよく、CF値(Coherence Factor) 3~30の範囲で選択できる。

 本発明のフィラメントは単繊維の横断面 状が、丸型、Y型、多葉型、多角形型、扁平 型、中空型、田型などの多種多様の断面形状 を取ることができるが、より強度が高く、通 気度の低い織物が安定して得られる点で、丸 型または扁平型が好ましく、丸型が最も好ま しい。またそれぞれの単繊維の断面形状は同 一であっても異なっていてもよいが、同一で あることが好ましい。

 本発明のフィラメントは、本発明の目的 果を損なわない範囲で、芯鞘複合糸(単芯、 多芯、芯成分部分露出)、バイメタル複合糸 どの単繊維内複合糸であったり、他のポリ ーとアロイ化したアロイ繊維であったりし もよいが、より強度が高いフィラメントと る点で、ポリアミド56単独成分を含有するフ ィラメントであることが好ましい。以下に複 合、アロイ化することができる他のポリマー を例示する。

 例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレ フタレート、ポリトリメチレンテレフタレー ト、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチ レンナフタレート、ポリ乳酸など)、ポリア ド(ポリアミド6等のポリアミドmであり繰返 位の炭素数mが4~12のもの、ポリアミド66等の リアミドmnであり繰返単位の炭素数mが4~12、 炭素数nが4~12のものなど)、ポリカーボネート 、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチ レン、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタ クリレート、ポリエチレングリコールなどを 挙げることができ、ホモポリマーや共重合ポ リマー(下記に共重合成分として例示した成 を含む上記ポリマー)など適宜選択できる。

 また、本発明のフィラメントは他の繊維 混繊、混紡、混撚等を施して使用すること でき、例えば他の繊維としては、木綿、麻 羊毛、絹などの天然繊維や、レーヨン、キ プラなどの再生繊維、アセテートなどの半 成繊維や、ポリアミド(ポリアミド6等のポ アミドmであり繰返単位の炭素数mが4~12のも 、ポリアミド66等のポリアミドmnであり繰返 位の炭素数mが4~12、炭素数nが4~12のものなど )、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレー 、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ チレンテレフタレート、ポリ乳酸等)、ポリ アクリロニトル、ポリプロピレン、ポリ塩化 ビニルなどのホモポリマーや共重合ポリマー (下記に共重合成分として例示した成分を含 上記ポリマー)を含有する合成繊維が採用で る。

 また本発明のフィラメントは、例えば酸 防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール 系化合物、ヒドロキノン系化合物、チアゾー ル系化合物や、フェニルホスホン酸などのリ ン系化合物、2-メルカプトベンズイミダゾー などのイミダゾール系化合物、およびこれ の置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物、 )、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレー 系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノ 系、ヒンダードアミン系等)、顔料(硫化カド ミウム、フタロシアニン、カーボンブラック 等)、光沢改善剤(酸化チタン、炭酸カルシウ 等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック )、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、ク レー等)、可塑剤(p-オキシ安息香酸オクチル N-ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電 止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯 防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯 電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモ ノステアレートのような非イオン系帯電防止 剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤( ラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム 水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリ 酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭 化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカ ボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこ らの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの み合わせ等)を少量含んでもよい。

 また本発明のポリアミド56は、1,5-ペンタ チレンジアミンや、アジピン酸以外に、本 明の目的を損なわない範囲で他の化合物が 重合されたものであってもよく、例えば下 の成分から誘導される構造単位を含んでい もよい。

 例えば脂肪族カルボン酸(シュウ酸、マロ ン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、 スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウ ンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸 、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オ クタデカン二酸など)、脂環式ジカルボン酸( クロヘキサンジカルボン酸など)、芳香族ジ カルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、 フタレンジカルボン酸、ジフェニルジカル ン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナ トレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル カルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボ 酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、1,4-シ ロヘキサンジカルボン酸、5ーナトリウムス ルホイソフタル酸、5-テトラブチルホスホニ ムイソフタル酸、など)から誘導される構造 単位を含むことができる。

 またエチレンジアミン、1,3-ジアミノプロ パン、1,4-ジアミノブタン、1,7-ジアミノヘプ ン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノ ン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウン カン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノ トリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15 -ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサ デカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジ ミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン 、1,20-ジアミノエイコサン、2-メチル-1,5-ペン タメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、 シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノヘ シル)メタンのような脂環式ジアミン、キシ レンジアミンのような芳香族ジアミンなど から誘導される構造単位を含むことができ 。

 ジオール化合物としては、エチレングリ ール、プロピレングリコール、ブチレング コール、ペンタンジオール、ヘキサンジオ ル、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオ ペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾ ルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレ ンジオール、アントラセンジオール、フェナ ントレンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフ ニル)プロパン、4,4´-ジヒドロキシジフェニ エーテル、ビスフェノールS、といった芳香 族、脂肪族、脂環族ジオール化合物から誘導 される構造単位を含むことができる。

 また、1つの化合物に水酸基とカルボン酸 とを有するヒドロキシカルボン酸も挙げられ 、例えば乳酸、3-ヒドロキシプロピオネート 3-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシブチ レートバリレート、ヒドロキシ安息香酸、ヒ ドロキシナフトエ酸、ヒドロキシアントラセ ンカルボン酸、ヒドロキシフェナントレンカ ルボン酸、(ヒドロキシフェニル)ビニルカル ン酸といった芳香族、脂肪族、脂環族のヒ ロキシカルボン酸から誘導される構造単位 含むことができる。

 また6-アミノカプロン酸、11-アミノウン カン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノ チル安息香酸などのアミノ酸、ε-カプロラ タム、ω-ラウロラクタムなどのラクタムか 誘導される構造単位を含むことができる。

 本発明のポリアミド56フィラメントは、 繊度、単繊維繊度が小さいながら、優れた 学特性、耐熱性、耐摩耗性、耐久性を有す ため多種多様な繊維構造体として用いるこ ができ、例えば布帛(織物、編物、不織布、 イル布帛など)や、紐状物(ディップコード ロープ、テープ、漁網、組紐、など)とする とができ、産業用途や衣料用途に幅広く好 に用いられる。例えば、自動車、航空機等 車両内外装材や安全部品を構成する繊維構 体として好適に用いられ、エアバッグ、ゴ 補強繊維、シートベルト、シート、マット が挙げられる。また漁網、ロープ、安全ベ ト、スリング、ターポリン、テント、鞄地 組紐、養生シート、帆布、縫糸等、農業用 防草シート、建築資材用の防水シート等、 業用途に好適である。また、例えばアウト アウェア、スポーツウェアなどの強度や耐 耗性が要求される衣料用途においても好適 用いられる。該繊維構造体はポリアミド56 ィラメント以外の繊維を含んでいてもよい 、本発明のポリアミド56フィラメントの優れ た特性を活かすためには、50重量%以上が本発 明のポリアミド56フィラメントを含んでなる とが好ましく、70重量%以上がより好ましく 90重量%以上がさらに好ましい。

 本発明のフィラメントは上述の特性に加 、適度な沸収を有し、沸水処理後において 高強度かつ低弾性率のフィラメントとなる め、いずれかの段階でフィラメントを熱収 させることで、高強度でありながら柔軟性 富んだ繊維構造体とすることができる。そ て繊維構造体とした後に熱収縮させた場合 さらに繊維構造体を高密度化できるため好 しい。かかる特徴を活かし、例えば本発明 フィラメントを製経、製織して織物とした 、精錬やファイナルセットなどの熱処理に って熱収縮させることで、柔軟性、衝撃吸 性、力学特性、耐熱性、耐久性に優れた高 度織物を得ることができ、エアバッグ用基 として最適な織物を形成することができる もちろん該織物をエアバッグ用基布以外の 業用途、衣料用途として用いてもよい。

 次に本発明のフィラメントを用いてなる アバッグ用基布について説明する。

 エアバッグ用基布とはエアバッグの縫製 として用いられる基布であり、本発明のエ バッグ用基布は本発明のポリアミド56フィ メントを含有する織物を含んでなることを 徴とする。そしてノンコート基布、コート 布のいずれであっても、本発明のポリアミ 56フィラメントの特徴である高強度かつ低弾 性率が要求されるため好ましい。

 例えばノンコート基布として用いた場合 高強度で低弾性率である本発明のフィラメ トの特徴が最大現に発揮され、収納性およ 衝撃吸収能に優れたエアバッグ用基布が得 れるため好ましい。後述する好ましい織組 とせしめることで、通気度が低く、力学特 、耐熱性、耐久性にも優れたノンコート基 となるため好ましい。

 一方でコート基布とした場合には、ポリア ド56フィラメントの優れた接着性も活かさ 、従来のポリアミド66フィラメントからなる コート基布よりもエラストマーの単位面積当 たりの含有量を小さくしても、十分な接着耐 久性が発現するため好ましい。より柔軟な基 布となる点で、エラストマーの含有量は少な いことが好ましく、20g/m 2 以下であることが好ましく、15g/m 2 以下がより好ましく、5~10g/m 2 がさらに好ましい。ここで、コートするエラ ストマーとしては従来公知のクロロプレン樹 脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などを用 いることができる。

 織組織は平織、綾織、朱子織、斜織など 選択できるが、より通気性が低い高密度な 物を工程通過性良く得られる点で平織であ ことが好ましい。

 織物の経糸、緯糸の本数は、それぞれ30~1 00本/2.54cmの範囲で、後述するカバーファクタ ーが好ましい範囲となるように選択すること が好ましい。経糸と緯糸の本数は同一であっ ても異なってもよいが、経緯の対称性が高い 方が、経緯方向での強度や柔軟性などの諸物 性に差が生じ難いため好ましい。また、より 通気度が低く、製織工程の通過性も高まるた め好ましい。よって経糸、緯糸の本数差は0~1 5本/2.54cmであることが好ましく、0~10本/2.54cm あることがより好ましく、0~5本/2.54cmである とがさらに好ましい。

 また経糸、緯糸に用いるポリアミド56フ ラメントの総繊度や単繊維繊度は同一であ ても異なっていてもよいが、上述のごとく 称性の高い織物である方が諸特性の異方性 生じにくいことから、同一の繊度構成であ ことが好ましい。

 本発明のエアバッグ用基布は、基布の分 糸の総繊度が200~600dtexであることが好まし 。基布の分解糸の総繊度が600dtex以下である 、高密度な織物であっても薄地で柔軟性の い織物となるため、収納性が高く、衝撃吸 能にも優れたものとなるため好ましい。ま 一方で、基布の分解糸の総繊度が200dtex以上 であることで、引張強度や引裂強度といった 基布の力学特性が実用品として遜色ないレベ ルに達するため好ましい。より好ましくは、 250~550dtexであり、300~500dtexであることがさら 好ましい。

 また基布の分解糸の単繊維繊度が0.1~7dtex あることが好ましい。基布の分解糸の単繊 繊度が7dtex以下であることで、単繊維の曲 剛性が下がるため基布の柔軟性の高まり、 納性に優れた基布となるため好ましい。ま 繊維の比表面積が大きくなることで基布を 成するフィラメント同士の拘束力が高まり インフレーターで展開した際に縫製部の周 の織組織に乱れ(目ズレ)が生じてガス漏れす るといった不具合を回避でき、通気度の低い エアバッグを得ることができるため好ましい 。一方で単繊維繊度が0.1dtex以上であること より、引張強度や引裂強度といった基布の 学特性が高くできるため好ましい。以上の とから基布の分解糸の単繊維繊度は1~6dtexで ることがより好ましく、1.5~4dtexがさらに好 しい。そして高密度織物であるほど通気度 低く、強度の高い織物となるため好ましく 織り密度の指標であるカバーファクター(K) 1500以上であることが好ましく、1700以上で ることがより好ましく、1900~2700であること さらに好ましい。

 また、本発明のエアバッグ用基布の目付は1 50~250g/m 2 であると、基布の力学特性、柔軟性、軽量性 にバランスに優れるため好ましい。

 本発明のエアバッグ用基布は、98℃30分間 の沸水処理による基布の収縮率が0~3%である とが好ましい。織機にて製造した基布を熱 縮せしめ、沸水処理による基布の収縮率が0~ 3%となるように加工することで、ポリアミド5 6フィラメントの高強度かつ低弾性率である 徴が活かされ、柔軟な基布となるため好ま い。同時に高温多湿な環境下に長時間晒さ ても寸法変化が起こりにくくなるため、縫 目に皺が寄ることなく展開時にガス漏れす 事がないため好ましい。より好ましくは0~2% さらに好ましくは0~1%である。このように沸 水処理後の収縮率の低い基布は、後述する好 ましい製造方法を採用することによって得ら れる。ここで、沸水処理による基布の収縮率 は織物の経緯方向においてそれぞれ定義され るものであるが、それぞれの収縮率が上記範 囲にあることが好ましい。そして経緯方向の 物性差が小さいことが袋状のエアバッグを縫 製する際には好ましく、経緯方向の収縮率の 差は1.5%以下であることが好ましく、1%以下で あることがより好ましく、0~0.5%であることが さらに好ましい。

 また基布の分解糸強度が高いことで、基 の引張強度および引裂強力が高くなるため ましく、5~10cN/dtexであることが好ましい。 発明のポリアミド56フィラメントは、沸水処 理後においても強度低下が小さいフィラメン トであるため、上述の如く沸水処理における 収縮率が0~3%と低い基布であっても、分解糸 強度は5cN/dtex以上になるため好ましい。より 好ましくは5.5~10cN/dtexであり、さらに好まし は6~10cN/dtexである。ここで基布の経糸、緯糸 それぞれの分解糸が存在するが、いずれから 分解した繊維も上記範囲の強度を有すること が好ましい。そして経糸、緯糸における分解 糸の強度の差が小さいほど、経緯における基 布の引張強度、および引裂強力の差が小さく なるため、袋状のエアバッグを縫製しても物 性の偏りが生じ難いため好ましい。よって経 緯方向の分解糸の強度の差は1cN/dtex以下であ ことが好ましく、0~0.5cN/dtexであることがよ 好ましい。

 さらに本発明のエアバッグ用基布は、基 の分解糸の10%伸長時応力が0.3~2cN/dtexである とが好ましい。分解糸の10%伸長時応力が2cN/ dtex以下であることで、柔軟性、衝撃吸収能 優れたエアバッグ用基布となるため好まし 。また分解糸の10%伸長時応力が0.3cN/dtex以上 あることで、外力によって変形し難い織物 なるため好ましい。より好ましくは0.4~1.8cN/ dtexであり、さらに好ましくは0.5~1.3cN/dtexであ る。本発明のポリアミド56フィラメントは、 述したように沸水処理を施すことによって1 0%伸長時応力が非常に低いフィラメントとな 。そのため該フィラメントで織物を構成し 後、沸水処理による基布の収縮率を0~3%まで 低減させることで、分解糸の10%伸長時応力を 上記の範囲とすることができる。ここで、織 物の経緯方向での物性差が小さいことが好ま しいから、経糸、緯糸の分解糸のいずれも10% 伸長時応力が上記範囲にあることが好ましく 、それぞれの分解糸における10%伸長時応力の 差は0.3cN/dtex以下であることが好ましく、0~0.2 cN/dtexであることがより好ましい。

 本発明のエアバッグ用基布は引張強度が5 00N/cm以上が好ましく、より好ましくは600N/cm 上、さらに好ましくは650N/cm以上である。引 強度は高いほど好ましいが、1000N/cm以下に ることで織物の目付を低減でき、薄地で柔 な基布となるため好ましい。

 また、基布の引裂き強力が高いほどイン レーターから噴射されるガスの衝撃によっ も破裂しにくい基布となるため好ましく、 裂き強力は180N以上が好ましく、より好まし くは220N以上であり、さらに好ましくは250N以 である。一方で引裂き強力が適度な範囲に ることで、エアバッグ展開時の衝撃力によ ても縫製部の周りの織組織が乱れ難くなる( 目ズレが生じ難くなる)ため、低い通気度の アバッグとなり好ましい。よって、引裂き 力は500N以下であることが好ましく、400N以下 であることがより好ましい。

 本発明のエアバッグ用基布の厚みは0.2~0.4 mmであることが好ましい。かかる範囲の厚み 有するエアバッグ用基布は、インフレータ から噴射される高温ガスに対し十分な耐熱 を有すると同時に、基布の柔軟性も優れた のとなり、収納性の要求が厳しい小型車へ 適用も可能となるため好ましい。

 本発明のエアバッグ用基布の通気度は低い とが好ましく、40cc/cm 2 /secであることが好ましく、30cc/cm 2 /secがより好ましく、20cc/cm 2 /secがさらに好ましく、0~10cc/cm 2 /secが特に好ましい。通気度が40cc/cm 2 /sec以下であると、エアバッグが衝突等によ 膨張した際にエアバッグ内部の空気が外部 漏れ難くなり、エアバッグの展開速度が高 るため好ましい。また高温ガスが乗員側に 出し難いため、乗員の安全性が確保され好 しい。

 本発明のエアバッグ用基布は、JIS L1096(19 99)(8.19.1.A法、45°カンチレバー法)にて測定し 剛軟性が低いほど収納性に優れた基布とな ため好ましく、70mm以下であることが好まし く、65mm以下であることがより好ましく、20~60 mm以下であることがさらに好ましい。分解糸 10%伸長応力、分解糸の総繊度、分解糸の単 維繊度が小さいほど、剛軟性の低い基布と しめることができる。また基布のカバーフ クター、厚みが小さく、エラストマーの塗 量が少ないほど剛軟性は小さくなる。

 本発明のエアバッグ用基布は、引張強度 引裂き強力に優れることに加え、柔軟性、 撃吸収能、耐熱性、耐久性にも優れるため 例えば運転席用エアバッグ、助手席用エア ッグ、サイドエアバッグ、ニーエアバッグ インフレータブルカーテン用エアバッグな 、あらゆる種類のエアバッグに適用するこ ができる。

 次に、本発明のポリアミド56フィラメン の好ましい製造方法について以下に説明す 。

 本発明のポリアミド56フィラメントの製 工程は、モノマー合成工程、重合工程、製 工程(紡糸工程、延伸工程)に分類され、それ ぞれの工程で特定の製造方法を採用すること が好ましい。本発明の構成要件である硫酸相 対粘度が3~8、Mw/Mnが1.5~3の両要件を満たすフ ラメントを製造するためには、重合工程で 製造方法が最も重要である。特定の重合方 で得たポリアミド56樹脂を溶融紡糸に供する ことで、硫酸相対粘度が3以上であり、かつMw /Mnが3以下と小さいポリアミド56フィラメント を紡出することができる。その結果、製糸工 程において分子鎖の配向形成が均一に起こり 、本発明の優れた特性を有するフィラメント を工程通過性良く製造することが可能となる 。以下にモノマー合成工程から順に、好まし い態様について説明する。

 モノマー合成工程において、1,5-ペンタメ チレンジアミンは、グルコースやリジンなど のバイオマス由来の化合物から、酵素反応や 、酵母反応、発酵反応などによって合成され ることが好ましい。上記の方法によれば、2,3 ,4,5-テトラヒドロピリジンやピペリジンとい た化合物の含有量が少なく、高純度の1,5-ペ ンタメチレンジアミンを調製できるため、溶 融貯留安定性の高いポリアミド56樹脂となる め、溶融紡糸工程で分子量が低下してMw/Mn 増加し難いため好ましい。また、バイオマ 由来の材料であるから、環境適応性にも優 るというメリットもある。具体的には、特 2002-223771号公報、特開2004-000114号公報、特開2 004-208646号公報、特開2004-290091号公報や、特開 2004-298034号公報、特開2002-223770号公報、特開20 04-222569号公報、等に開示された1,5-ペンタメ レンジアミン、あるいは1,5-ペンタンジアミ ・塩酸塩、1,5-ペンタメチレンジアミン・ア ジピン酸塩を用いて重合されたポリアミド56 あることが好ましく、より純度の高い原料 得やすいことから、1,5-ペンタメチレンジア ミン・アジピン酸塩を用いて重合されること が好ましい。また、アジピン酸や他のジアミ ン成分、ジカルボン酸成分については従来公 知の方法で製造されたものを用いればよい。

 なお、本発明のポリアミド56フィラメント およびそれを含有する繊維構造体、エアバ グ用基布、樹脂ペレットがバイオマス由来 化合物から合成されたものか否かを判定す 方法として、C14(放射性炭素)年代測定の原理 に基づいたASTM D6866がある。具体的には、試 (ポリマー)を乾燥して水分を除去した後、 量し、該試料を燃焼させて発生したCO 2 を化学操作を経て吸着剤に吸着させ、液体シ ンチレーションカウンターにて測定する方法 、燃焼させて発生したCO 2 をカーボングラファイトにした後、加速器質 量分析計で測定する方法、燃焼させて発生し たCO 2 からベンゼンを合成し、液体シンチレーショ ンカウンターにて測定する方法、等によって 試料中のバイオマス比率の濃度を特定するこ とができる。

 次に、本発明のフィラメントの製造に用 られるポリアミド56樹脂の重合方法につい 説明する。

 本発明のポリアミド56フィラメントは硫 相対粘度が3以上と高く、かつ分子量分布の 標であるMw/Mnが3以下と極めて狭い。このよ に高分子量のポリアミド56を加熱重合法の で製造しようとすると、重合反応が遅延し しまい、重合缶内を高温状態(240℃以上)で長 時間保持せざるを得ず、従来のポリアミド66 加熱重合と比較しても重合時間が長時間化 てしまう傾向にあった。これはポリアミド5 6樹脂の原料である1,5-ペンタメチレンジアミ の沸点が低いため、高温下では揮発して系 へ流出し易いことや、分子内脱アンモニア 応によって、2,3,4,5-テトラヒドロピリジン ピペリジン、アンモニア等の塩基性アミン 変化してしまうことが原因であり、重合缶 のジアミンとジカルボン酸とのモルバラン が崩れ易いためと推定される。そして加熱 合法のみで製造した硫酸相対粘度3以上のポ アミド56樹脂を用いて溶融紡糸を行うと、 出したポリアミド56フィラメントのMw/Mnが3を 超えるものとなってしまい、本発明の如く総 繊度、単繊維繊度が共に小さく、かつ高強度 のフィラメントを製造することは極めて困難 となる。

 これは重合遅延によって重合後期に熱分 が起こり、Mw/Mnが3を超えるポリアミド56樹 となってしまったり、Mw/Mnが3以下の樹脂が られたとしても、多くの塩基性アミンを含 ためにポリマーの耐熱性が低く、溶融紡糸 程における熱分解によって分子量分布が大 くなることが原因であった。

 よって、本発明の如く硫酸相対粘度が3以 上であり、Mw/Mnが3以下であるポリアミド56フ ラメントを製造するためには、原料である リアミド56樹脂の製造において、硫酸相対 度が2.9以下のポリアミド56樹脂を予め加熱重 合法で製造しておき、ペレット化した後、該 ポリアミド56樹脂を固相重合法によって高重 度化することが肝要である。さらにポリア ド56は従来のポリアミド66と比較して耐熱性 が低いポリマーであり、結晶性も低いことか ら、固相重合における重合条件を緻密に制御 することが要求される。特に固相重合におい て重合反応を均一に進行させるためには、ア ミノ末端基とカルボ末端基の濃度バランスを 特定範囲内にすることが重要であり、加熱重 合法にて該末端基量を制御、調整したポリア ミド56樹脂を製造した後、これを固相重合す 2段階での重合法が好ましい。

 このように本発明のポリアミド56フィラ ントの製造においては、まずはポリアミド56 樹脂の製造条件を厳密に制御してアミノ末端 基とカルボ末端基の濃度バランスを特定範囲 内にすることが重要である。以下に好ましい 加熱重合法、及び固相重合法について説明す る。

 本発明の加熱重合法とは、水の共存下で 圧加熱重合する方法であり、原料となるジ ミンとアジピン酸とを含む水溶液を加熱し 脱水縮合せしめることで、ポリアミド56樹 を得る重合方法であり、原料調製工程(原料 含む水溶液を調製して重合缶内に投入する) 、濃縮工程(重合系内を微加圧状態に維持し がら加熱し、水溶液中の水を揮発させて原 を濃縮する)、昇圧工程(重合系内を密閉系と し、原料を含む水溶液を加熱して水蒸気を発 生させることで、制圧工程での所望圧力へ昇 圧する)、制圧工程(重合系内を一定の加圧状 に維持しながら加熱し、プレポリマーを生 させる)、放圧工程(放圧して常圧に戻す、 合系内の温度をプレポリマーの融点以上に 昇させる)、減圧工程(生成ポリマーの融点以 上に加熱し、減圧下に保持して重縮合を進行 させる)、吐出工程(不活性ガスを重合缶内に 入して生成ポリマーを吐出させてペレタイ する)を含む。

 上述したように、ポリアミド56樹脂の原料 ある1,5-ペンタメチレンジアミン(沸点:約180 )は、従来のポリアミド66の原料である1,6-ヘ サメチレンジアミン(沸点:約200℃)と比べて 点が低く、加熱重合の温度で揮発し易いた 、重合後期において重合缶内のアミノ末端 とカルボキシル末端基のモルバランスが崩 て重合遅延を招き易い。そして重合時間が 時間化すると、1,5-ペンタメチレンジアミン の分子内脱アンモニア反応による塩基性アミ ンの形成を誘発する傾向にあるため、加熱重 合法においては重合後期において1,5-ペンタ チレンジアミンと、アジピン酸とのモルバ ンスを保つ工夫を施すことが好ましい。そ てアミノ末端基とカルボ末端基をバランス く有するポリアミド56樹脂を加熱重合法にて 製造し、その後の固相重合に供することが好 ましい。より具体的には、加熱重合法にてア ミノ末端基濃度とカルボキシル末端基濃度が 以下の関係にあるポリアミド56樹脂を製造し 固相重合に供することが好ましい。
0.3≦[NH 2 ]/([NH 2 ]+[COOH])≦0.7
[NH 2 ]:固相重合に供するポリアミド56樹脂中のア ノ末端基濃度(eq/ton)
[COOH]:固相重合に供するポリアミド56樹脂中の カルボキシル末端基濃度(eq/ton)
 ここで、固相重合に供するポリアミド56樹 は0.4≦[NH 2 ]/([NH 2 ]+[COOH])≦0.6であることがより好ましい。

 また、水の共存下にて加圧加熱重合法で 造したポリアミド56樹脂は、硫酸相対粘度 2~2.9であることが好ましい。硫酸相対粘度が 2.9以下であることで、重合遅延による熱分解 や、塩基性アミンの形成を抑えられるため好 ましい。一方で、硫酸相対粘度が2以上であ ことで、吐出工程におけるポリマーの吐出 態が安定し、ペレット粒度が均一なポリア ド56樹脂を製造できるため好ましい。より好 ましくは2.1~2.85であり、2.2~2.8がさらに好まし い。

 重合後期における1,5-ペンタメチレンジア ミンと、アジピン酸とのモルバランスを保つ ために、重合開始時にアジピン酸に対して、 1,5-ペンタメチレンジアミンを過剰に仕込ん 加熱重合で揮発する1,5-ペンタメチレンジア ンを補うことや、加熱重合の到達温度、重 時間等を特定の範囲とし、加熱重合におけ 1,5-ペンタメチレンジアミンの揮発を抑える 手法も取り得るが、本発明者らが詳細に検討 した結果、これらの手法のみでは、アミノ末 端基とカルボキシル末端基がバランスよく存 在するポリアミド56樹脂を製造することは困 であることがわかった。

 そしてさらに鋭意検討した結果、1,5-ペン タメチレンジアミンは特に親水性が高いため 、水の蒸発に付随して揮発され易い特徴を有 するため、重合反応が殆ど進行していない重 合初期段階から原料を含む水溶液を高温にせ しめて水を蒸発させると、1,5-ペンタメチレ ジアミンの揮発量が非常に多くなってしま 傾向にあることがわかった。具体的には、 合初期段階から液温が150℃を超える状態に てしまうと、水の蒸発に付随して1,5-ペンタ チレンジアミンが特に揮発し易いことが判 した。

 そこで、加熱重合法にてポリアミド56樹 を製造する方法において、原料調製工程に 原料モノマーから原料水溶液を調製する際 モノマー濃度を55~80重量%とした後、濃縮工 での該水溶液の温度を100~150℃とし、原料モ マーの濃度が80~95重量%まで濃縮することが ましい。そして、昇圧工程、制圧工程、放 工程、減圧工程、吐出工程を経て、ポリア ド56樹脂を製造する。

 原料水溶液の濃度を55重量%以上にするこ で、後の濃縮工程で蒸発する水が少なくな 、1,5-ペンタンジアミンの揮発量を低減でき るため好ましい。ここで、原料モノマーとは 、本発明のポリアミド56を構成するモノマー 指し、1,5-ペンタメチレンジアミン、アジピ ン酸、およびそれ以外の上述した共重合成分 を含むものである。そして原料モノマー濃度 とは、原料モノマーの総重量を、水溶液の重 量で除して100倍した値である。一方で、原料 水溶液の濃度を80重量%以下にすることで水溶 液が流れる配管の保温温度を適度な範囲に抑 えることができ、配管の耐熱性、エネルギー 消費の観点から好ましい。より好ましくは60~ 80重量%、さらに好ましくは65~80重量%である。

 ところで、一般的なポリアミド66の原料 ある1,6-ヘキサメチレンジアミンとアジピン からなる塩は、水への溶解度があまり高く いため、あまり高濃度にすると塩が再結晶 して析出する問題を抱えていた。よって水 液中の塩の濃度は50重量%程度に調整する必 があり、50重量%以下であっても水溶液の温 が低いと再結晶化し易いため、配管ライン 保温するなどの対策が必要であった。この め原料調製工程において、塩の水溶液を高 ることは技術的に困難とされてきた。それ 対し、ポリアミド56の原料である1,5-ペンタ チレンジアミンとアジピン酸との塩は、水 対する溶解度が極めて高い塩であることが かった。例えば、ポリアミド66樹脂の原料 ある1,6-ヘキサメチレンジアミンとアジピン との等モル塩の50重量%水溶液は、液温が40 を下ると再結晶化が開始してしまうのに対 、1,5-ペンタメチレンジアミンとアジピン酸 の等モル塩の50重量%水溶液は、液温5℃でも 再結晶化は起こらず、均一な溶解状態が保た れることを発見した。この新たな特徴により 、予め高濃度の原料水溶液を調製することが でき、1,5-ペンタメチレンジアミンを殆ど揮 させずに高濃度化することを見出したので る。

 原料調製工程での水溶液の温度が10~70℃ 範囲であると、1,5-ペンタメチレンジアミン アジピン酸との塩の水への溶解度が高まり かつ配管ラインの保温に要するエネルギー 費量が抑えられるため好ましい。より好ま くは20~60℃である。 

 本発明の加熱重合法においては、原料調 工程後に、原料を含む水溶液を濃縮する工 (濃縮工程)を含むことが好ましく、濃縮工 において水溶液の濃度を80~95重量%に濃縮し から昇圧工程へ供することが好ましい。水 液の濃度を80重量%以上とすることで、重合 程における1,5-ペンタンジアミンの揮発量が えられるため好ましい。一方で、水溶液の 度を95重量%以下にすることで、制圧工程に いてプレポリマーが生成され易くなるため ましい。よって濃縮工程終了時の水溶液の 度は83~93重量%であることがより好ましく、8 5~90重量%であることがさらに好ましい。この き水溶液の温度を150℃以下に保つことが好 しく、該温度範囲で濃縮することで、1,5-ペ ンタメチレンジアミンの揮発を抑えながら、 水を積極的に蒸発させることが可能となる。 より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは 130℃以下、特に好ましくは100~120℃である。 た同様の理由により、重合缶内の圧力(ゲー 圧)を0.05~0.5MPaに保持するように、重合缶の ルブを調整することが好ましく、0.1~0.4MPaに 保つことがより好ましい。濃縮時間は水溶液 の濃度が上記範囲になるように選択すればよ いが、0.5~5時間であることが好ましい。

 上述した本発明の好ましい加熱重合方法 おいては、重合缶に仕込む塩の水溶液の濃 が高いため揮発する水の絶対量が少なく、 つ濃縮工程において比較的低温、かつ微加 で水溶液を濃縮しているため、重合工程で 発する1,5-ペンタメチレンジアミンの量を大 幅に低減できる。よって上記の要件を満たす 加熱重合方法にて、原料調製工程で原料水溶 液中に存在する、1,5-ペンタメチレンジアミ のモル数と、アジピン酸のモル数との比を 0.95~1.05の範囲で調整することや、制圧工程 放圧工程、減圧工程における缶内温度、缶 圧力、処理時間等の条件を調整することで 上述の如くアミノ末端基とカルボキシル末 基とがバランスよく存在したポリアミド56樹 脂を製造できるため好ましい。また、上述に て例示したポリアミド56に共重合可能なアミ 化合物や、カルボン酸化合物などを併用す ことで重合反応を制御して末端基を調整す こともできる。

 そして重合反応を促進することが、1,5-ペ ンタメチレンジアミンの揮発を抑制するため には好ましいことから、重合促進剤をポリア ミド56樹脂の製造工程におけるいずれかの段 で含有せしめることが好ましい。重合促進 としては、促進効果が高く、かつ耐熱安定 としての作用を有するリン系化合物が好ま く、フェニルホスホン酸が好適に用いられ 。

 重合工程における上記以外の工程につい は、例えば特開2003-292612号公報、特開2004-075 932号公報、等の公知の方法を採用することが できるが、より具体的に好ましい製造方法を 以下に説明する。

 昇圧工程では重合系内を密閉系とし、原 を含む水溶液を加熱して水蒸気を発生させ ことで、後述する制圧工程での所望の圧力 昇圧することが好ましい。昇圧に要する時 は0.1~2時間の範囲とすることが好ましい。 れにより重合缶内の温度を均一に高められ 1,5-ペンタメチレンジアミンの環化反応も抑 られるため好ましい。

 制圧工程では重合系内を一定の加圧状態 維持しながら加熱し、プレポリマーを生成 せることが好ましい。このとき缶内圧力(ゲ ージ圧)を1~2MPaとすることで、1,5-ペンタメチ ンジアミンの揮発が抑えられるとともに、 レポリマーが形成され易くなるため好まし 。缶内圧力は外界と繋がるバルブの開閉度 いを調整する等によって調整すればよい。 た缶内温度は180~280℃とすることが好ましく 、200~270℃とすることがより好ましい。

 放圧工程では重合缶内の圧力を放圧して 圧に戻し、重合缶内の温度をプレポリマー 融点以上にすることが好ましい。放圧に要 る時間を0.1~3時間の範囲で調整することで 未反応で残存する1,5-ペンタメチレンジジア ンが揮発し難くなるため好ましい。より好 しくは0.2~2時間であり、さらに好ましくは0. 3~1時間である。そして上記の時間をかけて、 重合缶内の温度をプレポリマーの融点以上ま で上昇させることが好ましく、具体的には220 ~270℃とすることが好ましい。より好ましく 230~260℃とすることが好ましい。

 減圧工程では、重合缶内の温度を生成ポ マーの融点以上に加熱することで重縮合が 行し易くなるため好ましい。一方で適度な 度に抑えることでポリマーの熱分解が抑え れるため好ましい。よって重合缶内の温度 240~300℃とすることが好ましい。

 また重合缶内の圧力を低くすると重縮合 発生した水を系外へ除去でき反応を進行さ 易くなり、適度な減圧下とすることで反応 均一性も維持されるため好ましい。よって 合缶内の圧力(ゲージ圧)は-5~-50kPaの範囲で 整することが好ましい。減圧工程での重合 間は所望の硫酸相対粘度のポリアミド56樹脂 となる範囲で選択すればよいが、0.1~2時間に ることで、重合缶内での熱分解が抑えられ ため好ましい。

 吐出工程においては、窒素等の不活性ガ を重合缶内に注入して重合缶内の圧力(ゲー ジ圧)を0.1~2MPaに加圧し、ポリマーを吐出させ ればよい。吐出されたポリマーを水冷し、後 述のごとく固相重合せしめるのに好ましいペ レット粒度となるようにカットすることが好 ましい。

 次に好ましい固相重合法について説明す 。

 ポリアミド56樹脂は、従来のポリアミド66 樹脂と比べて結晶化速度が遅く、急速に高温 まで昇温してしまうとペレット同士が部分融 着したり、酷い場合には塊状になったりして 固相重合が均一に進行しない場合がある。よ って、加熱重合法で得られたポリアミド56樹 のペレットを、まず缶内温度80~120℃、減圧 たは窒素フロー下で、ペレットを攪拌しな ら、1~10時間かけて乾燥および予備結晶化さ せることが好ましい。

 その後、缶内温度130~200℃にて、ペレット を攪拌しながら減圧下で、1~48時間、固相重 することで、所望の硫酸相対粘度のポリア ド56樹脂を製造することが好ましい。このと き、ペレットの外層と内層で固相重合を均一 に進行させるために、缶内圧力を399Pa以下ま 減圧することが好ましく、133Pa以下まで減 することがより好ましい。また缶内温度を 階的に高めながら徐々に固相重合を進行さ ることが好ましく、缶内温度が130℃に到達 てからの昇温速度は1~20℃/hrであることが好 しく、2~10℃/hrとすることがより好ましい。 そして缶内の最高到達温度が低いほど、固相 重合工程における熱分解が抑えられ、結果と して分子量分布の狭いポリアミド56フィラメ トを製造できる。よって、固相重合におけ 缶内温度は195℃以下であることがより好ま く、190℃以下であることがさらに好ましく 185℃以下であることが特に好ましい。

 固相重合に供するポリアミド56樹脂のペ ットの形状は角型、丸形などを選択できる 、ペレット粒度(mg/個)が小さいほど、固相重 合でのペレットの内外層で重合度の斑が生じ にくいため好ましい。一方で適度な粒度であ ることで高温に晒されてもペレット同士の融 着が起こり難いため好ましい。よってペレッ トの粒度は2~70mg/個であることが好ましい。 限としては5mg/個以上であることがより好ま く、8mg/個以上であることがさらに好ましく 。10mg/個以上であることがいっそう好ましい 上限としては50mg/個以下であることがより ましく、30mg/個であることがさらに好ましい 。また、ペレット粒度が揃っているほど、固 相重合反応がペレット間で均一に進行するた め好ましく、ペレット粒度のCV%は20%以下であ ることが好ましく、0~10%がより好ましい。

 また本発明のフィラメントを製造する際 は固相重合後のポリアミド56樹脂ペレット 用いるが、固相重合後のポリアミド56樹脂ペ レットの粒度は2~70mg/個であることが好まし 。該粒度の範囲にすることで、上記の硫酸 対粘度3~8と、分子量分布の指標である分散 (Mw/Mn)1.5~3を達成できる。すなわち、ポリア ド56樹脂のペレット粒度(mg/個)が小さいほど 固相重合でのペレットの内外層で重合度の が生じにくく、一方で、ある一定のサイズ 上にすることで、高温に晒されてもペレッ 同士の融着が起こり難いためペレットのハ ドリングが向上して好ましい。下限として 5mg/個以上であることがより好ましく、8mg/ 以上であることがさらに好ましく、10mg/個以 上であることがいっそう好ましい。上限とし ては50mg/個以下であることがより好ましく、3 0mg/個であることがさらに好ましい。

 次に、本発明の製糸方法について説明す 。

 上記の如く加熱重合方法および固相重合 によって製造したポリアミド56樹脂を用い 、硫酸相対粘度3~8、Mw/Mn1.5~3である紡出糸を 成し、該紡出糸を冷却風にて固化した後、 含水油剤を付与し、300~2000m/分で引取った後 、得られるフィラメントの伸度が10~50%となる 延伸倍率で延伸し、最終熱処理ロールの温度 を210~250℃として熱処理した後、リラックス 率0.8~0.95としてリラックスせしめた後、巻き 取ることで本発明のポリアミド56フィラメン を製造することができる。

 ここではまず、ポリアミド56樹脂を溶融 て紡出するまでの工程で熱分解を抑え、Mw/Mn が3以下のポリアミド56フィラメントを紡出す ることが肝要である。そのためポリアミド56 脂を加熱乾燥して水分率を1000ppm以下にして から溶融紡糸に供することが好ましい。とこ ろで、通常のポリアミド66では過度に水分率 低いと溶融貯留におけるゲル化が誘発され 、糸切れを招く傾向にあるが、ポリアミド5 6ではゲル化は起こり難く、溶融貯留での熱 化を抑えるためには水分率は低いほど好ま い。水分率は600ppm以下がより好ましく、10~40 0ppmがさらに好ましい。ポリアミド56がポリア ミド66と比べて溶融貯留時にゲル化し難い理 は定かではないが、アミノ末端基が結合す メチレン鎖の炭素数が短いことが原因と考 られる。つまり、ポリアミド66においては ミノ末端基が炭素数6のメチレン鎖に結合し いるため、アミノ末端近傍の分子鎖が還化 易く、熱分解すると還化物が遊離してゲル を誘発するのに対し、ポリアミド56樹脂で 、メチレン鎖の炭素数が5であるため、立体 害によって還化し難く、ゲル化が殆ど起こ ないものと推定している。

 次に、溶融紡糸における紡糸温度は260~310 ℃であることが好ましい。紡糸温度が310℃以 下に設定することで、ポリアミド56の熱分解 抑えられるため好ましい。より好ましくは3 00℃以下であり、さらに好ましくは295℃以下 ある。一方で紡糸温度が260℃以上であるこ でポリアミド56が十分な溶融流動性を示し 吐出孔間の吐出量が均一化され、高倍率延 が可能となるため好ましい。270℃以上がよ 好ましく、275℃以上がさらに好ましい。

 また、ポリアミド56はポリアミド66に対比 で耐熱性が低いポリマーであるため、熱分解 による分子量低下、Mw/Mnの増加を抑えるため 、溶融紡糸工程における滞留時間(ポリアミ ド56樹脂が溶融され、紡糸口金から吐出され までの時間)は短いほど好ましい。滞留時間 は30分以下であることが好ましく、15分以下 あることがより好ましく、0.5~7分であること がさらに好ましい。

 また、溶融紡糸工程において、溶融部に 1軸および/または2軸のエクストルーダーが 帯されていることが好ましい。上記のエク トルーダーによってポリアミド56樹脂に適 な圧力を加えながらポリマー配管、ギヤポ プ、紡糸パックへ導くことができるため、 れら流路において異常滞留を起こすことが く、ポリアミド56の熱分解が抑えられるため 好ましい。

 また、紡糸口金から吐出される前の段階 、SUS不織布フィルターや、サンド等によっ ポリアミド56樹脂を濾過することで、紡糸 業が安定化するため好ましい。

 紡糸口金における口金孔の形状は製造す フィラメントを構成する単繊維の断面形状 応じて選択すればよいが、本発明の好まし 態様である丸断面の単繊維で構成されるフ ラメントにおいて、単繊維間で均一にポリ ーを吐出するには孔径は0.1~0.4mm、孔長は0.1~ 5mmの範囲で選択することが好ましい。また口 金を複数枚の構成として、1枚目の口金でポ マーの計量性を高めるなどの手段を講じる ともできる。

 このようにして硫酸相対粘度が3~8、Mw/Mn 1.5~3の紡出糸を形成した後、該紡出糸を冷却 風にて固化し、引取った後、延伸し、熱処理 することで本発明のフィラメントを得るが、 このとき製糸工程におけるポリアミド56フィ メントの吸湿を抑えることが好ましい。こ は、ポリアミド56が主として親水性の高い ンタメチレンアジパミド単位で構成される め繊維が吸湿し易く、延伸に供する未延伸 に多くの水が担持され易いためであり、水 含まれるとポリアミド56分子鎖間の相互作用 力が低減したり、相互作用力に分布が生じた りして、紡糸、延伸工程で分子鎖を均一に配 向させることが難しくなる傾向にあるためで ある。フィラメントの吸湿を抑える点で、溶 融紡糸、延伸、熱処理は連続して行うことが 好ましい。

 また、紡出糸を冷却する方法としては、 般に水冷により固化させる方法、冷却風に 固化させる方法があるが、吸湿を抑えるこ が好ましいことから冷却風にて固化させる とが好ましい。そして冷却風は、風速0.3~1m/ 秒、風温15~25℃、相対湿度20~70%の気体で冷却 せることがより好ましい。同様に溶融紡糸 延伸を行う室内の温湿度環境は、温度20~30 であることが好ましく、相対湿度は20~65%の 囲で出来るだけ低いことが好ましい。また その時の温湿度変化は±3℃以内、湿度は±5% 内で調整されていることが好ましい。また 却風の発生装置としては、ユニフロータイ 、環状タイプが挙げられるが、単繊維間で 一な冷却が行える点で環状タイプが好まし 。

 そして冷却風開始点が口金面から鉛直下 に離れているほど、フィラメントの強度が くなるため好ましい。一方で、過度に離れ とフィラメントの冷却が不十分となって糸 を招く場合がある。よって冷却開始点は0.05 ~0.5mの地点とすることが好ましい。より好ま くは0.1~0.4m、さらに好ましくは0.12~0.3mであ 。

 ここで口金面から冷却開始点までの間に 熱筒を配して紡出糸を再加熱した後、冷却 にて冷却することが好ましい。加熱筒で再 熱することで高温域での細化が誘発され、 り均一な配向形成が起こるため好ましく、 熱筒の温度が紡糸温度+20~100℃であれば紡出 糸の再加熱が効率的に行え、かつ紡出糸の熱 分解も抑えられるため好ましい。

 また引取ロールやガイド等での擦過が大 いと、得られるフィラメント中の強度低下 、毛羽の発生を招く傾向にあるため、紡出 を引き取る前の段階にて紡糸油剤を付着さ ることが好ましい。さらにポリアミド56の 湿を抑えるために、水を含まない非含水油 であることが好ましい。非含水紡糸油剤と 、平滑剤、帯電防止剤、乳化剤等の油剤有 成分を、炭素数が12~20である鉱物油にて希釈 したものであり、従来公知のものを用いるこ とができる。付着量は油剤有効成分が得られ る捲縮糸に対して0.1~2重量%となるように調整 することが好ましい。

 そして非含水油剤を付着せしめた紡出糸 引き取ることで未延伸糸を形成するが、こ ときの引取速度を300~2000m/分とすることが好 ましい。引取速度が300m/分以上であることで 糸張力が適度に高まって紡出糸の糸揺れが 減されるため好ましい。一方で引取速度を 度な範囲とすることで高倍率延伸が可能と り、強度の高いフィラメントとなるため好 しい。引取速度は500~1500m/分がより好ましく 、700~1200m/分がさらに好ましい。

 引き続いて未延伸糸に、得られるフィラ ントの伸度が10~50%となるように延伸を施す とが好ましい。下限としては12%以上である とがより好ましく、15%以上であることがさ に好ましく、18%以上であることがいっそう ましい。上限としては40%以下であることが り好ましく、30%以下であることがさらに好 しく、25%以下であることがいっそう好まし 、23%以下であることがよりいっそう好まし 。

 延伸倍率(=巻取速度/引取速度)は上記の伸 度になるように2~7倍の範囲で選択すればよく 、まず特定の延伸倍率でフィラメントを製造 し、得られたフィラメントの伸度を測定し、 該伸度から逆算して延伸倍率を再調整するこ とを繰り返して上述の伸度のフィラメントと なるように延伸倍率を決定する。

 延伸工程における熱源としてはフィラメ トの吸湿を抑えることが重要であることか 、延伸、熱処理の熱源としては、加熱ロー 、熱板、乾熱炉、レーザー等の乾式の熱源 採用することが好ましく、より加熱効率に れることから、加熱ロールを熱源とするこ が好ましい。温水やスチーム等の湿式の熱 では、ポリアミド56フィラメントが延伸工 で吸湿してしまって、分子間相互作用が弱 り、均一に配向化させ難くなる傾向にある

 延伸は2段以上の多段で延伸することで、 分子間の相互作用を高めながら高配向化させ 、分子鎖を均一に配向せしめて緻密な配向結 晶相を形成できるため好ましい。より好まし くは3段以上、さらに好ましくは4段以上、特 好ましくは5段以上である。

 そして吸湿性の高いポリアミド56フィラ ントの分子鎖を、延伸工程で均一に配向さ るためには、延伸温度100~245℃で、延伸倍率 1.3倍以上であることが好ましい。多段延伸 施す場合は、100℃未満の低温域(1段目延伸) 施す延伸倍率を低く設定し、100℃以上の高 域(2段目以降の延伸)で施す延伸倍率を高く ることを意味する。そして引取速度が高い 合には、未延伸糸中に微結晶が形成されて る効果によってロール上での糸揺れが抑え れるため、第1ロール(1段目延伸)から延伸温 度を100℃以上とすることも可能である。100℃ 以上の温度に繊維を加熱した後に延伸するこ とにより、水の沸点以上に繊維が加熱された 後に延伸されるため、それまでに繊維が吸湿 していた水が系外へ排除され、分子間相互作 用が高まるため、非晶鎖に均一に延伸応力が 伝わって配向の均一性が高まるため好ましい 。一方で延伸温度を245℃以下とすることで、 非晶鎖の運動性が適度な範囲に抑えられ、非 晶鎖が配向緩和を起こすことなく高配向化す るため好ましい。延伸温度のより好ましい範 囲は120~235℃であり、さらに好ましい範囲は14 0~225℃である。従来のポリアミド66繊維にお ては、高強度で高品位な繊維が工程通過性 く得るために、延伸温度100℃以上の高温域(2 段目以降の延伸)での延伸倍率を低く設定し 100℃未満の低温度域(1段目延伸)で出来る限 高倍率で延伸を施すことが好ましい方法で った。これはポリアミド66の高結晶性に起因 するものであり、延伸温度100℃以上の加熱ロ ールではフィラメント中に球晶が形成され、 延伸性を阻害するためである。一方で、ポリ アミド56フィラメントは、その低結晶性に由 し、延伸温度100℃以上の加熱ロール上にお ても球晶は形成され難い。よって高吸湿性 よる悪影響を排除する方が優先されるため 100℃未満の低温度域(1段目延伸)で施す延伸 率を低く設定し、100℃以上の高温度域(2段 以降延伸)で施す延伸倍率を高くすることが ましい。延伸温度100~245℃での延伸倍率は高 いほど好ましく、また上記の延伸温度で施さ れる延伸倍率は1.5倍以上であることがより好 ましく、1.7倍以上であることがさらに好まし く、2倍以上であることが特に好ましく、2.3 以上が最良である。

 ここで、延伸温度とは以下のように定義 れるものである。例えば加熱ロールを熱源 して2つの加熱ロール間で延伸を施す場合、 延伸温度は上流側のロールの温度と定義する 。ロール間に熱板を配置して延伸を施す場合 、延伸温度は熱板の温度と定義する。ロール 間に加熱炉を配置して延伸を施す場合、延伸 温度は加熱炉の温度と定義する。また炭酸ガ スレーザー等の熱源を用いて延伸を施す場合 、赤外線放射温度計等の温度計で測定した糸 温度を延伸温度とする。

 例えば非加熱ロール、加熱ロールを併用し 複数のロール間で多段延伸を施す場合の、 伸温度100~245℃の延伸倍率の算出方法につい て以下に例示する。第1ロールから第6ロール 介して巻き取られる5段延伸を施す場合であ って、第1ロール温度25℃、第2ロール温度60℃ 、第3ロール温度145℃、第4ロール210℃、第5ロ ール230℃、第6ロール25℃とし、第1ロールと 2ロールとの速度比によって延伸倍率r 1 で延伸し、第2ロールと第3ロールとの速度比 よって延伸倍率r 2 で延伸し、第3ロールと第4ロールとの速度比 よって延伸倍率r 3 で延伸し、第4ロールと第5ロールとの速度比 よって延伸倍率r 4 で延伸し、第5ロールと第6ロールとの速度比 よってリラックス倍率r 5 でリラックス処理される場合、延伸温度100~24 5℃の延伸倍率とは、第3ロールから第5ロール 間で施される延伸倍率の積算値として求めら れる。そして第5ロールから第6ロール間のリ ックス処理で施されるリラックス倍率r 5 のような1未満の倍率は延伸倍率に計上しな ものとする。すなわち上述の場合、延伸温 100~245℃での延伸倍率は、r 3 ×r 4 となる。

 そして245℃以下の範囲で、延伸温度を段 的に高めて多段延伸することで、配向した 晶鎖を部分的に配向結晶化させながら延伸 ることができるため、結晶相からの分子鎖 引き抜きが起こって結晶相同士をつなぐ緊 タイ分子が多く形成され、高強度で沸収の いフィラメントが得られる。

 特に最高熱処理温度が210~250℃であること が極めて重要であり、上述の溶融紡糸、延伸 方法によって高配向化させたポリアミド56分 を210℃以上の温度で熱セットすることで、 向非晶が効率的に結晶化し、伸びきり鎖状 で緻密性の高い結晶相が多く形成され、高 度かつ低沸収のフィラメントとなるため好 しい。但し、Mw/Mnが3を超えるポリアミド56 ィラメントの場合、熱処理に供する延伸糸 分子配向が不均一になり易く、最高熱処理 度を210℃以上とすると、糸揺れ、糸割れが しくなって連続サンプリングが難しくなる また硫酸相対粘度が3未満のポリアミド56フ ラメントの場合、分子1本当たりに作用する 互作用力が不十分のため、最高熱処理温度 210℃以上とすると、高配向化した非晶鎖の 向状態が維持できずに緩和してしまい、強 が低下する傾向にある。よって、ポリアミ 56フィラメントの硫酸相対粘度が3以上で、M w/Mnが3以下である場合に初めて、最高熱処理 度210℃以上で安定して延伸することが可能 なり、本発明の目的とする機械的特性に優 たポリアミド56フィラメントを製造するこ が可能になる。

 一方で、最高熱処理温度の温度が250℃を える温度であると、ロールに糸が融着して 切れを招き、工程通過性が悪化する場合が ったり、結晶化は促進されるものの、非晶 の配向状態が乱れて、フィラメントの強度 低下してしまう場合がある。

 これらのことから最高熱処理温度の温度 215~245℃であることがより好ましく、220~240 であることがさらに好ましい。

 ここで最高熱処理温度とは、延伸糸を巻 取る前の段階において施される熱処理にお て、最も高温度で施される熱処理の温度で る。例えば上述の第1ロールから第6ロール 延伸を施す手法の場合であれば、第5ロール 施す熱処理の温度が、最高熱処理温度に該 する。また、延伸温度は段階的に高めるこ が好ましいことから、該最高熱処理は最終 熱ロール(上述の例であれば第5ロール)で施 ことが好ましい。

 上記のとおり延伸を施した後、連続して 終加熱ロールと最終ロールとの間の速度比 よって、リラックス処理されることが好ま い。リラックス処理とは最終ロール速度/最 終加熱ロール速度で定義される倍率が1未満 場合を指し、リラックス倍率は0.8~0.95倍であ ることが好ましい。リラックス倍率が0.95倍 下であることで、延伸工程で非晶鎖に加わ た不均一な歪みが平均化され非晶鎖が安定 するため、得られるフィラメントの沸収が くなり好ましい。より好ましくは0.93倍以下 さらに好ましくは0.91倍以下である。リラッ クス倍率は低いほど好ましいが、リラックス 倍率を0.8以上とすることで、ロール間で適度 な糸張力が発現し、工程通過性も良好となる ため好ましい。より好ましくは0.83以上、さ に好ましくは0.86以上である。

 また、ポリアミド56フィラメントをリラ クス処理後に巻取機にて巻き取る際の張力 0.05~0.15cN/dtexで行うことが好ましい。巻取張 を0.15cN/dtex以下とすることでパッケージの 締まりを回避でき、巻取張力を0.05cN/dtex以上 とすることにより、パッケージフォームが良 好となるため好ましい。より好ましい巻取張 力は0.07~0.13cN/dtexであり、さらに好ましくは0. 09~0.11cN/dtexである。

 また、フィラメントは巻き取る前の任意 段階で、交絡処理を施してもよい。交絡処 の回数、処理圧力は、捲縮糸のCF値が3~30と るように調整すればよい。

 以上の製造方法によって総繊度、単繊維 度が小さいながら、高強度であり、適度な 収を有するポリアミド56フィラメントを製 することができる。そして該フィラメント 沸水処理後も高強度かつ低弾性率なフィラ ントとなるため、エアバッグ用基布などの 密度織物に最適である。

 次に、本発明のエアバッグ用基布の製造 法について説明する。本発明のエアバッグ 基布の製造方法としては、従来公知の製造 法を採用することができるが、より好まし 製造方法を以下に例示する。

 本発明のポリアミド56フィラメントを整 、製織する際の織機は、ウォータージェッ ルーム、エアージェットルーム、レピアル ムなどが採用でき、生産性よく高密度な織 を形成できる点で、ウォータージェットル ム、またはエアージェットルームであるこ が好ましい。織構造については、上述の如 平織、綾織、斜織、朱子織、これらの組み わせなどを採用できるが、平織が最も好ま く、袋織り製織されることが好ましい。経 、緯糸の打ち込み本数は、得られるエアバ グ用基布のカバーファクターが上記範囲と るように選択すればよい。

 整経工程および製織工程においては、経 張力および緯糸張力が高いほど、高密度織 を工程通過性よく製造することができるた 好ましく、一方で経糸張力を適度な範囲に えることでフィラメントが伸ばされて変形 たり、毛羽が発生したりする問題が無く、 品位な高密度織物を形成することができる め好ましい。よって、経糸張力および緯糸 力は0.05~0.6cN/dtexの範囲で調整することが好 しく、0.1~0.5cN/dtexの範囲で調整することが り好ましい。

 このようにして製織された織物を湿熱処 により熱収縮せしめることが好ましく、こ により最終的に得られる基布の分解糸の10% 長時応力を2cN/dtex以下にすることができる め好ましい。湿熱処理の方法は、温水や加 熱水、スチームなどを選択でき、湿熱処理 1段階でも、2段階以上の他段階処理でもよい 。また湿熱処理と同時に従来公知の精錬剤を 付与して同時に精錬を施すことも好ましい手 法である。湿熱処理の温度は60~150℃の範囲、 処理時間0.01~90分、緊張処理および/または弛 処理を施すことが好ましい。この範囲で処 することにより、最終的に得られる基布の 水処理における収縮率や分解糸の強度、10% 長時応力が本発明の好ましい範囲となるよ に調整する。上記範囲において処理温度が く、処理時間が長い弛緩状態で処理すると 基布の沸水処理後の収縮率が低く、分解糸 強度が低く、かつ10%伸長時応力が低い基布 なり易い。一方で処理温度が低く、処理時 が短い条件で緊張状態で処理すると、基布 沸水処理後の収縮率が高く、分解糸の強度 高く、10%伸長時応力が高い基布となり易い 向にある。

 湿熱処理は、製織工程の後に連続して行 てもよく、一旦製織した後、別工程で行っ もよい。また、バッチ方式、連続方式のい れも採用することができるが、湿熱処理ゾ ンに基布を供給、排出させながら連続的に 熱処理を行うことが生産性に優れるため好 しい。この場合、上述の如く処理温度、処 時間を調整することに加え、経方向および 方向の収縮度合いを制御しながら湿熱処理 ることが好ましい。経方向の収縮度合いは 熱処理の際の織物の供給量と排出量を変更 ることでコントロールでき、緯方向に関し は湿熱処理の際に織物の両端の距離を固定 ながら行うことにより達成できる。そして 湿熱処理前の緯方向の織り幅に対する両端 織物固定部の距離を調整することで収縮度 いをコントロールできる。

 また、織物はファイナルセット工程で熱 定することが好ましい。ファイナルセット 度は80~200℃が好ましく、より好ましくは120~ 180℃であり、ファイナルセット時間は0.1~30分 の範囲で適宜選択すればよい。そして前記湿 熱処理時の寸法が保持される様に緊張させな がら乾燥することが好ましい。

 なお、湿熱処理後の織物はファイナルセッ 工程の前に、必要に応じて乾燥処理を施し もよい。乾燥温度は80~200℃の範囲であるこ が好ましく、100~170℃であることがより好ま しい。また処理時間は0.1~30分で適宜選択する ことが好ましい。乾燥は織物を弛緩状態で行 ってもよいし、緊張状態で行ってもよい。
また、より低い通気度の基布とするためには 、得られた織物にカレンダ-加工処理を施す ともできる。カレンダ-加工の温度は180~220℃ 、圧力は3000~10000N/cm、速度は4~50m/分が好まし 。カレンダ-加工を片面または両面に施すこ とで、通気度を制御することもできる。

 以上の製法によって、本発明の一態様で るエアバッグ用ノンコ-ト基布が得られる。

 次に、別の態様であるエアバッグ用コ-ト 基布を製造する場合について説明する。コー ト基布の場合は、ノンコート基布にエラスト マーをコーティングし、ヒートセット加工し てエアバッグ用コ-ト基布とする。織物表面 エラストマーをコーティングする方法とし は、織物を樹脂溶液槽に浸漬させた後、余 な樹脂をマングル、バキューム、さらには ーティングナイフ等を用いて除去・均一化 る方法、スプレー装置やフォーミング装置 用いて樹脂を吹き付ける方法などが採用で る。これらの内、樹脂を均一かつ、少なく 布するという観点からはコーティングナイ を用いたナイフコーティング法が好ましい

 また、塗布するエラストマーは難燃性、 熱性、空気遮断性等に優れているものが好 しく、例えば、シリコーン樹脂、クロロプ ン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド系 脂などが好適であり、より少ない塗布量で 均一なコーティングがし易い点で、シリコ ン樹脂であることが好ましい。

 なお、上記の高次加工の工程順序は、本 明の効果を損なわない範囲で適宜入れ替え ことができる。

 以上、本発明のエアバッグ用織物の製造 によって、本発明のエアバッグ用基布、す わちノンコ-ト基布もしくはコ-ト基布が得 ことができ、これらの基布を用いて従来公 の方法により、エアバッグ装置を構成する とができる。

 以下、本発明を、実施例を用いて詳細に 明する。なお、実施例中の測定方法は以下 方法を用いた。

 A.硫酸相対粘度
 試料(樹脂、フィラメント、分解糸)0.25gを濃 度98重量%の硫酸100mlに対して1gになるように 解し、オストワルド型粘度計を用いて25℃で の流下時間(T1)を測定した。引き続き、濃度98 重量%の硫酸のみの流下時間(T2)を測定した。T 2に対するT1の比、すなわちT1/T2を硫酸相対粘 とした。

 B.Mw/Mn
 試料(樹脂、フィラメント、分解糸)を90℃の 熱水で30分間洗浄した後、90℃で真空乾燥し 水分率を1000ppmとし、ヘキサフルオロイソプ パノールに溶解して測定溶液とした。これ ゲルパーミエーションクロマトグラフィー( GPC)で測定し、PMMA換算で重量平均分子量(Mw)、 数平均分子量(Mn)を求め、Mw/Mnを求めた。測定 条件は下記の通りである。
・GPC装置:Waters510
・カラム:Shodex  GPC  HFIP-806Mを2本連結して 用
・溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール
・温度:30℃
・流速:0.5ml/分
・試料濃度:2mg/4ml
・濾過:0.45μm-DISMIC 13HP(東洋濾紙)
・注入量:100μl
・検出器:示差屈折計RI(Waters  410)
・スタンダード:PMMA(濃度:サンプル0.25mg/溶媒1 ml)
・測定時間:62分

 C.アミノ末端基濃度
 試料(樹脂、フィラメント、分解糸)1gを50mL フェノール/エタノール混合溶液(フェノール /エタノール=80/20)に、30℃で振とう溶解させ 溶液とし、この溶液を0.02Nの塩酸で中和滴定 し要した0.02N塩酸量を求めた。また、上記フ ノール/エタノール混合溶媒(上記と同量)の を0.02N塩酸で中和滴定し要した0.02N塩酸の量 を求める。そしてその差から試料1tonあたり アミノ末端基量を求めた。

 D.カルボキシル末端基濃度
 試料(樹脂、フィラメント、分解糸)0.5gを196 1℃のベンジルアルコール20mlに溶解し、この 溶液を0.02Nの水酸化カリウムエタノール溶液 中和滴定し、要した0.02N水酸化カリウムエ ノール溶液の量を求める。また、上記ベン ルアルコール20mlのみを0.02Nの水酸化カリウ エタノール溶液で中和滴定し、要した0.02N水 酸化カリウムエタノール溶液の量を求める。 そしてその差から試料1tonあたりのカルボキ ル末端基量を求めた。

 E.融点、融解熱量
 パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC- 7型を用い、試料(樹脂、フィラメント、分解 )10mgを昇温速度16℃/分にて測定して得た示 熱量曲線において吸熱側に極値を示すピー を融解ピークと判断し、極値を与える温度 融点(℃)とした。なお、複数の極値が存在す る場合は高温側の極値を融点とした。また融 解ピークの面積から求められる熱容量の積算 し(複数の融解ピークを有する場合には合算 )を融解熱量とした。

 F.水分率
 カールフィッシャー電量滴定法水分計(平沼 産業株式会社製微量水分測定装置AQ-2000、お び同社製水分気化装置EV-200)を用い、水分気 温度180℃にて乾燥窒素ガスを流して測定し 。

 G.ペレット粒度、ペレット粒度のCV%
 ランダムに選択したペレットの重量を測定 1個当たりのペレット重量(mg/個)を測定した 30個のペレットについて測定を行いそれぞ をx i とした(i=1~30)。そして下記の式に基づき、ペ ット粒度(記号:x ave 、単位:mg/個)、ペレット粒度のCV%(%)を求めた

 H.総繊度、単繊維繊度
 試料がフィラメントである場合、1m/周の検 機を用いて全長10mのかせを採取し、該かせ 重量を測定して1000倍することで総繊度を求 めた。そして総繊度をフィラメント数で除す ることで単繊維繊度を求めた。

 試料が繊維構造体から採取した分解糸で る場合、分解糸の糸端同士を結んで、ほど ないようにした周長60cmのループ状かせを作 成した。そして室温25℃、相対湿度55%の雰囲 中に該かせを無荷重で24時間放置して調湿 た。その後、同環境下において、結び目が 端なるようにしてかせをフックにかけ、か の下端に0.08cN/dtexの荷重を掛け、かせ長25cm( 長50cm)の位置にマーキングした。そして荷 を取り除き、マーキングの位置でカセを切 することで50cmの分解糸を得た(結び目含まず )。そして50cmの分解糸の重量を測定し、20000 することで分解糸の総繊度を求めた。測定 10回行い平均値をとった。このとき初めの測 定では分解糸の総繊度が分からないため、測 定に用いる荷重を決定するために予め暫定的 な総繊度(暫定総繊度)を求めた。すなわち上 の測定における荷重を50g(1周のかせに対し )として暫定総繊度を求め、該暫定総繊度か 荷重(0.08cN/dtex)を決定した。暫定総繊度の測 定は10回行い、平均値をとった。その後、分 糸を構成するフィラメントの数を数えて、 解糸の総繊度をフィラメント数で除するこ で単糸繊度を求めた。

 I.強度、伸度、10%伸長応力
 JIS L1017 (1995)、7.5項の引張強さ及び伸び率 (1)標準時試験の測定方法に準じ、オリエン ック(株)社製テンシロン(TENSILON)UCT-100を用い て、試料(フィラメントまたは分解糸)のS-S曲 を測定した。測定に先立ち、試料を室温25 、相対湿度55%の環境下、無荷重の状態で48時 間放置して調湿した。そして該試料を同環境 下において、初荷重0.08cN/dtex、試料長250mm、 張速度300m/分として、S-S曲線を測定した。

 強度はS-S曲線における最大強力を示した での強力を、総繊度で除することにより求 た。伸度はS-S曲線において最大強力を示し 点の伸びを、試料長で除し、100倍すること 求めた。10%伸長応力は伸度10%の強力を、総 度で除することにより求めた。測定は10回 い平均値を取った。

 J.98℃30分間の沸水処理による収縮率(沸収)
 室温25℃、相対湿度55%の雰囲気中に24時間放 置されていたパッケージから、1m/周の検尺機 で10回転させて、該かせの糸端同士を結んで ほどけないようにしたループ状かせを作成 た。該ループ状かせを室温25℃、相対湿度55 %の雰囲気中に、無荷重の状態で24時間放置し たものと試料とした。同環境下にて、ループ 状かせをフックにかけ、ループ状かせに0.08cN /dtexの荷重をかけてかせ長を測定し、元長L1 した。その後、該ループ状かせを無荷重な 態で沸騰水(98℃)に30分間浸積し、取り出し 沸水処理後のかせを室温25℃、相対湿度55%で 24時間乾燥する。乾燥後のループ状かせをフ クにかけ、ループ状かせの下端に0.08cN/dtex 荷重をかけてかせ長を測定し、処理後長L2と した。そしてL1、L2を用い、次式により沸収 求めた。
沸収(%)=[(L1-L2)/L1]×100

 K.沸水処理後の強度、10%伸長応力
 室温25℃、相対湿度55%の雰囲気中に24時間放 置したパッケージから解舒したフィラメント を切り出し、糸端同士を結んで、解けないよ うにした周長1メートルのループ状かせを作 した。該ループ状かせを室温25℃、相対湿度 55%の雰囲気中に、無荷重の状態で24時間放置 た後、無荷重な状態で沸騰水(98℃)に30分間 積し、取り出した沸水処理後のかせを室温2 5℃、相対湿度55%で24時間乾燥した。該沸騰水 処理後のフィラメントを試料とし、I項に記 の方法に準じて沸水処理後の強度、沸水処 後の10%伸長応力を求めた。このとき沸水処 後のフィラメントの総繊度としては下記の を用いた。
沸水処理後のフィラメントの総繊度=フィラ ントの総繊度×(1+沸収/100)

 L.乾収
 JIS L1017 (1995)、7.10項の 乾熱収縮率、(2)加 後乾熱収縮率(B法)の測定方法に準じ、試料( フィラメント)の乾収を測定した。まず1m/周 検尺機で10回転させて、該かせの糸端同士を 結んで、解けないようにしたループ状かせを 作成した。そして該ループ状かせを室温25℃ 相対湿度55%の環境下、無荷重の状態で48時 放置して調湿した。その後同環境下にて、 料長測定用のループ状かせをフックにかけ ループ状かせに0.08cN/dtexの荷重をかけてかせ 長を測定し、元長L3とした。そして荷重を取 除き、ループ状カセを、タバイエスペック 製ギヤーオーブンGPHH-200に投入し、荷重フ ーの状態で、雰囲気温度150℃、処理時間30分 間の乾熱処理を施した。そして乾熱処理後の ループ状かせをオーブンから取り出した後、 再度室温25℃、相対湿度55%の環境下、無荷重 状態で、48時間放置して調湿した。その後 同環境下で乾熱処理後のループ状かせをフ クにかけ、0.08cN/dtexの荷重をかけてかせ長を 測定し、処理後長L4とした。L3、L4を用いて、 下記の式により乾収を求めた。測定は5回行 、平均値を求めた。
乾収=(L3-L4)/L3×100

 M.U%
Zellweger uster社製UT4-CX/Mを用い、糸速度200m/分 測定時間1分間でU%(Normal)を測定した。

 N.毛羽数
 東レ(株)製毛羽 テスター(DT-104型)を使用し 10万m当たりの毛羽数を測定した。F形検出部 を用い、測定糸速300m/分、張力0.08cN/dtex、測 時間180分間の条件で測定した。10本のパーケ ージについて測定を行い、検知された総毛羽 数を総測定長54万m(5.4万m×10本)で除して10倍す ることにより、10万m当たりの毛羽数を求めた 。本発明の目標レベルは10万m当たりの毛羽数 が5個以下であり、0個以下が最良である。

 O.糸切れ回数
 100kgのフィラメントを製糸する際に発生し 糸切れ回数をカウントした。糸切れ回数が ないほど製糸性が良好と判断した。

 P.98℃30分間の沸水処理による基布の収縮率
 JIS L1096(1999)8.64.4、織物の寸法変化、B法(沸 水浸漬法)に準じ、沸水処理による基布の収 縮率を測定した。

 まず室温25℃、相対湿度55%の環境下にてエ バッグ用基布を24時間放置した。そして25cm× 25cmのエアバッグ用基布を切り出して試料し 。そしてJIS L1096(1999)8.64.4の図58のごとく、 定区間を20cmとして該試料にマーキングを施 たのち、弛緩状態で98℃の水に30分間浸漬し て取り出した。取り出した試料を軽く押さえ て水を切り、室温25℃、相対湿度55%の環境下 おいて24時間自然乾燥した。沸水処理後の 料における測定区間の長さを測定した(L5:経 向、L6:緯方向)。そして下記の式を用いて、 沸水処理による基布の収縮率を求めた。
沸水処理による経方向の基布の収縮率(%)=(20-L 5)/20×100
沸水処理による緯方向の基布の収縮率(%)=(20-L 6)/20×100

 Q.基布の引張強度
 JIS L1096(1999)8.12.1、引張り強さ及び伸び率、 標準時、A法(ストリップ法)に準じ、オリエン テック(株)社製テンシロン(TENSILON)UCT-100を用 て、エアバッグ用基布の引張強度を測定し 。

 室温25℃、相対湿度55%の環境下にてエア ッグ用基布を24時間放置した後、試験片を切 り出し、同環境下において、試験片の幅3cm、 つかみ間隔20cm、引張速度20cm/分の条件で、切 断時の強さ(N)を測定した。経方向、緯方向そ れぞれ5回測定を行い、平均値をそれぞれの 向の引張強度とした。

 R.基布の引裂強力
 JIS L1096(1999)8.15.1、引裂強さ、A-1法(シング タング法)に準じ、エアバッグ用基布の引裂 力を測定した。

 室温25℃、相対湿度55%の環境下にてエア ッグ用基布を24時間放置した後、10cm×25cmの 験片を切り出し、短辺の中央に辺と直角に10 cmの切れ目を入れた後、オリエンテック(株) 製テンシロン(TENSILON)UCT-100を用いて、同温湿 度境下において、つかみ間隔10cm、引張速度10 cm/分の条件で引き裂くときの最大荷重(N)を測 定した。経方向(経糸を切断する方向)、緯方 (緯糸を切断する方向)それぞれ5回測定を行 、平均値をそれぞれの方向の引裂強力とし 。

 S.経糸、緯糸の本数
 JIS L1096(1999)8.6.1、織物の密度の測定方法に じて、経糸の本数(本/2.54cm)、緯糸の本数(本 /2.54cm)を測定した。室温25℃、相対湿度55%の 境下に24時間放置した試料(エアバッグ用基 )を、同温湿度環境下にて10cm区間の経糸の本 数、10cm区間の緯糸の本数を数え、2.54cm当た の経糸の本数、緯糸の本数に換算した。測 は5回行い平均値をとった。

 T.厚さ
 JIS L1096(1999)8.5.1、織物の厚さの測定方法に じてエアバッグ用基布の厚さを測定した。 温25℃、相対湿度55%の環境下に24時間放置し た試料(エアバッグ用基布)を、同温湿度環境 にて、厚さ測定器(株式会社安田精機製作所 、ショッパー形厚さ測定器)を用い、圧力23.5k Paで、異なる5箇所について厚さを測定して、 平均値を求めた。

 U.通気度
 JIS L1096(1999)、8.27.1、A法に準じてエアバッ 用基布の通気度を測定した。室温25℃、相対 湿度55%の環境下に24時間放置したエアバッグ 基布から、縦20cm、横15cmに切り出して試料 した。同温湿度環境下にて、通気度測定機( クステスト社製、FX3300-III)を用い、測定面 38cm 2 、テスト圧力19.6kPaの条件において、試料を 過する空気量(cc/cm 2 /sec)を測定した。異なる20個の試料について 定を行って平均値を基布の通気度とした。

 V.剛軟性
 JIS L1096(1999)、8.19.1、A法(45°カンチレバー法 )に準じてエアバッグ用基布の剛軟性を測定 た。室温25℃、相対湿度55%の環境下に24時間 置したエアバッグ用基布から、2cm×15cmの試 片を切り出して試料とし、同温湿度環境下 てカンチレバー形試験機を用いて剛軟性を 定した。測定は経方向(経糸が試料の長辺と なる場合)、緯方向(緯糸が試料の長辺となる 合)についてそれぞれ5回行い、平均値をと た。

 W.収納性
 50cm×50cmのエアバッグ用基布を経方向、緯方 向の順で折り返し、4つ折りにした試料を5つ 意し、水平な台の上に5つの試料を重ね合わ せておいた後、30cm×30cm、重さ300gの鉄板を乗 た。そして5分間放置して安定させた後、エ アバッグ用基布5枚分の高さを測定し、参考 1のエアバッグ用基布を用いて測定した値で して100倍した値を用いて、収納性を評価し 。小さいほど収納性の高いエアバッグ用基 と判断した。測定は異なる試料を用いて5回 行い、平均値で評価した。

 X.膨張展開性
 エアバッグ用基布から直径725mmの円状布帛2 を打抜き法にて裁断し、一方の円状布帛の 央に、同一布帛からなる直径200mmの円状補 布を3枚積層して、直径110mm、145mm、175mm線上 、上下糸ともポリアミド66繊維の470dtex/1×3 ら構成される縫糸で本縫いによるミシン縫 し、直径90mmの孔を設け、インフレーター取 け口とした。さらに中心部よりバイアス方 に255mmの位置に相反して同一布帛からなる 径75mmの円状補強布を一枚当て直径50mm、60mm 線上を上下糸ともポリアミド66繊維の470dtex/1 ×3から構成される縫糸で本縫いによるミシン 縫製し、直径40mmの孔を設けたベントホール 2カ所設置した。次いで、本円状布帛の補強 帛側を外にし、他方の円状布帛と経軸を45° ずらして重ね合わせ、直径700mm、710mmの円周 を上下糸ともポリアミド66繊維の1400dtex/1か 構成される縫糸で二重環縫いによるミシン 製した後、袋体を裏返し、図2の如く、60L容 の運転席用エアバッグを作製した。

 該運転席用エアバッグを、電気着火式イ フレーターにて膨張展開テストを行った。 張展開によってバッグが破裂せず、バラン 良く膨らみ、基布の破れ、溶融が無く、縫 目におけるエアー漏れも無いものを良品と 断した。また上記のいずれか1つでも満たさ れないものは不良品と判断した。100回の膨張 展開テストを行い、良品が得られた数を膨張 展開性の指標とした。本発明の目標レベルは 95以上である。

 Y.衝撃吸収能
 X項にて作成したエアバッグの内部に、極薄 のゴム風船を入れ、内圧19.6kPaで、容量60Lに らませ、エアバッグを展開させた状態にし 。その後、図3の如く鉄球(1kg)からなる振り を、45°の角度から放してエアバッグに衝突 せ、反発によって跳ね返された角度a(°)を 定した。そして得られた角度を、参考例1の アバッグにおける跳ね返りの角度で除した 、100倍した値を衝撃吸収能の指標とした。 衝撃吸収能の値が小さいほど、優れた衝撃 収性を有していると判断した。

 Z.カバーファクター
 カバーファクター(K)は下記の式で表される
K=N W ×(0.9×D W ) 0.5 +N F ×(0.9×D F ) 0.5
N W :経糸の本数(本/2.54cm)
D W :経糸の総繊度(dtex)
N F :緯糸の本数(本/2.54cm)
D F :緯糸の総繊度(dtex)。

 またD W 、D F は分解糸の値を用いた。さらにN W 、N F はS項にて記載の方法で測定した。

 [調製例1](リジン脱炭酸酵素の調製)
 まずE.coli JM109株の培養を以下のように行っ た。まず、この菌株をLB培地5mlに1白金耳植菌 し、30℃で24時間振とうして前培養を行った 次に、LB培地50mlを500mlの三角フラスコに入れ 、予め115℃、10分間蒸気滅菌した。この培地 前培養した上記菌株を植え継ぎ、振幅30cmで 、180rpmの条件下で、1N塩酸水溶液でpHを6.0に 整しながら、24時間培養した。こうして得ら れた菌体を集め、超音波破砕および遠心分離 により無細胞抽出液を調製した。これらのリ ジン脱炭酸酵素活性の測定を定法に従って行 った(左右田健次、味園春雄、生化学実験講 、vol.11上、P.179~191(1976))。

 リジンを基質とした場合、本来の主経路 考えられるリジンモノオキシゲナーゼ、リ ンオキシダーゼおよびリジンムターゼによ 転換が起こり得るので、この反応系を遮断 る目的で、75℃で5分間、E.coli JM109株の無細 胞抽出液を加熱した。さらにこの無細胞抽出 液を40%飽和および55%飽和硫酸アンモニウムに より分画した。この粗精製リジン脱炭酸酵素 溶液を用い、リジンから1,5-ペンタメチレン アミンの生成を行った。

 [調製例2](1,5-ペンタメチレンジアミンの調 )
 50mM リジン塩酸塩(和光純薬工業製)、0.1mM  リドキサルリン酸(和光純薬工業製)、40mg/L- 精製リジン脱炭酸酵素(参考例1で調製)とな ように調製した水溶液を、0.1N塩酸水溶液で pHを5.5~6.5に維持しながら、45℃で48時間反応 せ、1,5-ペンタメチレンジアミン塩酸塩を得 。この水溶液に水酸化ナトリウムを添加す ことによって1,5-ペンタメチレンジアミン塩 酸塩を1,5-ペンタメチレンジアミンに変換し クロロホルムで抽出して、減圧蒸留(1.33kPa、 60℃)することにより、1,5-ペンタメチレンジ ミンを得た。

 [調製例3](1,5-ペンタメチレンジアミンとア ピン酸の塩の50重量%水溶液の調製)
 製造例2で製造した1,5-ペンタメチレンジア ン102gを、水248g中に溶解した水溶液を、50℃ ウォーターバスに浸して撹拌しているとこ に、アジピン酸(カーク製)を約1gずつ、中和 点付近では約0.2gずつ添加していき、アジピ 酸添加量に対する水溶液のpH変化を調べ、中 和点を求めると、pH8.32であった。中和点での アジピン酸添加量は146gであった。pHが8.32に るように、1,5-ペンタメチレンジアミンとア ピン酸の等モル塩の50重量%水溶液(496g)を調 した。

 [調製例4](1,5-ペンタメチレンジアミンとア ピン酸の塩の70重量%水溶液の調製)
 製造例3において、水の量を104.3gとした以外 は、製造例3と同様にして1,5-ペンタメチレン アミンとアジピン酸との等モル塩の70重量% 溶液(354.3g)を調製した。

 [調製例5](1,5-ペンタメチレンジアミンとア ピン酸の塩の57重量%水溶液の調製)
 製造例3において、水の量を187.1gとした以外 は、製造例3と同様にして1,5-ペンタメチレン アミンとアジピン酸との等モル塩の57重量% 溶液(435.1g)を調製した。

 (実施例1)
 調製例4の1,5-ペンタメチレンジアミンとア ピン酸の等モル塩の70重量%水溶液を、水温50 ℃に温調しながら、該水溶液に1,5-ペンタメ レンジアミンおよび水を加え、水溶液中に 在する1,5-ペンタメチレンジアミンのモル数 アジピン酸のモル数の比(1,5-ペンタメチレ ジアミンのモル数/アジピン酸のモル数)を1.0 07、水溶液中の原料モノマーの濃度を70重量% 調整した。さらに原料水溶液にフェニルホ ホン酸を、得られるポリアミド56樹脂中に ン原子が100ppm含まれるように添加した後、 め窒素置換された熱媒加熱式の重合釜に仕 んだ(原料調製工程)。

 次に缶内を窒素パージしながら熱媒を加 して水溶液を濃縮した(濃縮工程)。このと 缶内温度を125℃、缶内圧力(ゲージ圧)を0.2MPa に制圧しながら、水溶液中の原料の濃度が90 量%となるまで濃縮した。缶内の水溶液の濃 度は留出水量から判断した。

 そして重合釜を密閉して熱媒温度を270℃ で上昇させ、缶内圧力(ゲージ圧)1.7MPaに到 するまで昇圧した(昇圧工程)。この後缶内圧 力(ゲージ圧)を1.7MPaで制圧し、缶内温度が250 となるまで維持した(制圧工程)。さらに熱 温度を285℃に変更し、60分間かけて大気圧ま で放圧した(放圧工程)。さらに缶内圧力(ゲー ジ圧)を-13.3kPaまで減圧し、所定の攪拌動力と なったところで重合反応を停止した(減圧工 )。最後に重合缶内を窒素で微加圧としてポ マーを吐出せしめ、水冷してカットした(吐 出工程)。所定の攪拌動力となるには減圧工 において、缶内圧力(ゲージ圧)が-13.3kPaにな てから0.5時間保持する必要があった。

 得られたポリアミド56樹脂の硫酸相対粘度 2.75、アミノ末端基濃度とカルボ末端基濃度 バランスの指標である[NH 2 ]/([NH 2 ]+[COOH])は0.48、ペレット粒度は35g/個、ペレッ 粒度のCV%は8%であった。

 得られたポリアミド56樹脂を、バキュー ドライヤー型の真空乾燥機に仕込み、酢酸 5重量%水溶液を銅原子としてポリアミド56樹 に対して100ppmとなるように添加し、ドライ ーを回転させて約1時間ブレンドした。そし てヨウ化カリウム50重量%水溶液をカリウム原 子としてポリアミド56樹脂に対して600ppmとな ように添加し、再びドライヤーを回転させ 約1時間ブレンドした。その後ドライヤーの 回転により、缶内の樹脂を攪拌しながら、窒 素フロー下で缶内温度90℃まで昇温し、缶内 度を90℃で5時間維持して予備結晶化を行っ 。

 そして窒素の供給を止めて缶内の減圧を 始した後、再度缶内の温度を昇温し、缶内 度が130℃に達してから、昇温速度が5℃/時 となるようにヒーター出力をコントロール ながら缶内温度を170℃に昇温した。そして 内温度170℃、缶内圧力133Pa以下の条件下で所 定時間保持した後、ポリアミド56樹脂を抜き した。このとき缶内圧力133Pa以下の条件下 の保持時間は、得られるポリアミド56樹脂の 硫酸相対粘度が3.85となるように調整した。 なわち保持時間を変更したポリアミド56樹脂 を製造し、得られたポリアミド56樹脂の硫酸 対粘度と保持時間との相関曲線を求め、硫 相対粘度が3.85となる保持時間を決定した。

 得られたポリアミド56樹脂の硫酸相対粘 は3.85、Mw/Mnは2.17、水分率は300ppmであった。

 得られたポリアミド56樹脂を、図1に示す1 軸混練機を備えた紡糸延伸熱処理装置を用い 、溶融紡糸、延伸、熱処理、を連続的に施し てポリアミド56フィラメントを得た。

 まずホッパーに樹脂を投入し、1軸押出混 練機にて溶融および混練して紡糸ブロックに 導き、ギヤポンプにてポリマーを計量、排出 し、内蔵された紡糸パックに導き、丸断面用 の細孔を136ホール有する、紡糸口金から紡出 した。

 そして紡糸ブロックの下に配した加熱筒に フィラメントを再加熱した後、環状型冷却 発生装置で糸条を冷却固化し、給油装置に り給油した。その後、第1ロールで引き取っ た後、第2ロールの速度を第1ロールの速度の1 .02倍の速度として未延伸糸にストレッチを加 えた後、第2ロールと第3ロールの速度比によ 延伸を施し、第3ロールで熱処理を施し、第 3ロールと第4ロールの速度比により再度延伸 施し、第4ロールで再度熱処理を施し、第4 ールと第5ロール(最終加熱ロール)の速度比 より再度延伸を施し、第5ロールで再度熱処 を施した後、第5ロールと第6ロール(最終ロ ル)との間でリラックス処理を施した後、第 6ロールと巻取機の間に廃した交絡ノズル(0.2M Pa圧力)にてフィラメントに交絡を施し、巻取 張力0.08cN/dtex(繊度は巻取ったフィラメントの 繊度を用いる)にて巻き取り、紡糸、延伸、 処理、捲縮処理を1段階で施した350デシテッ ス136フィラメントのポリアミド56フィラメ トを得た。溶融紡糸、延伸、熱処理の条件 以下のとおりである。
・混練機温度:275℃
・紡糸温度:285℃
・滞留時間:6分
・濾層:φ2mmガラスビーズ充填
・フィルター:10μm不織布フィルター
・紡糸口金:孔径0.18mm、孔深度0.4mm、孔数136
・吐出量:75.25g/分(1パック1糸条、136フィラメ ト)
・加熱筒:温度310℃、加熱筒長さ0.15m
・冷却:環状型冷却風発生装置使用(冷却風発 方向内向き)、温度20℃、相対湿度55%、風速0 .45m/秒、冷却開始位置は口金面下0.30m
・油剤:油剤有効成分として脂肪酸エステル ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤 変性シリコーンの混合物を25重量部含み、炭 素数14の鉱物油75重量部で希釈したもの。鉱 油以外の成分が繊維重量に対して1重量%付着 するように付着量を調整。
・溶融紡糸、延伸環境:25℃RH55%
・第1ロール温度:25℃
・第2ロール温度:50℃
・第3ロール温度:140℃
・第4ロール温度:180℃
・第5ロール温度:230℃
・第6ロール温度:25℃
・第1ロール速度:450m/分
・第2ロール速度:459m/分
・第3ロール速度:1285m/分
・第4ロール速度:1671m/分
・第5ロール速度:2339m/分
・第6ロール速度:2152m/分
・巻取速度:2150m/分
・延伸倍率:4.78倍(延伸温度100~245℃での延伸 率:1.82倍)

 実施例1のポリアミド56フィラメントは、 酸相対粘度が3.82、Mw/Mnが2.21、融点255℃、融 解熱量80J/g、強度9cN/dtex、伸度23%、10%伸長応 3.3cN/dtex、沸収12%、乾収4%、U%は0.9であった。 そして沸水処理後のフィラメントは、強度7.9 cN/dtex、10%伸長応力0.8cN/dtexと高強度、低弾性 なフィラメントであった。実施例1は製糸性 が良好であり、また得られたフィラメントは 毛羽もなく(0個/10万m)、高品位なものであっ 。

 実施例1のポリアミド56フィラメントを用 て製経し、次いでウォータージェットルー (津田駒社製、ZW303)を用いて製織して平織物 (生機)を製造した。このとき生機の経糸、緯 の本数が53本/2.54cmとなるように織機を調整 た。生機のカバーファクターは1881であった 。製経、製織工程における工程通過性は良好 であった。

 得られた織物をドデシルベンゼンスルホ 酸ソーダ0.5g/Lおよびソーダ灰0.5g/Lを含んだ 水に投入して弛緩状態で精錬処理を施して 物を熱収縮させた後(温水温度90℃、処理時 1分)弛緩状態で130℃、1分間乾燥処理した。 して得られるエアバッグ用基布の沸水処理 よる収縮率(経方向および緯方向)が0.3%とな ように、織物の経方向、緯方向の収縮を制 しながら180℃で1分間のファイナルセットを 施し、実施例1のエアバッグ用基布を得た。 られたエアバッグ用基布は経糸、緯糸の本 がともに59本/2.54cmであり、カバーファクタ が2213であり、厚みは0.32mmであった。実施例1 の結果を表1に示す。

 実施例1のエアバッグ用基布は分解糸の強 度が高いことから、優れた引張強度、引裂強 力を有しており、加えて通気度も低い織物で あったことから膨張展開性に優れていた。さ らに分解糸の10%伸長応力が低いことから、剛 軟性が低い柔軟な基布であり、収納性、衝撃 吸収能にも優れたエアバッグ用基布であった 。

 (参考例1)
 予め窒素置換した熱媒加熱式の重合釜に、1 ,6-ヘキサメチレンジアミンのモル数とアジピ ン酸のモル数の比(1,6-ヘキサメチレンジアミ のモル数/アジピン酸のモル数)が1.007であり 、水溶液中の原料モノマーの濃度が50重量%で あり、水温が50℃である水溶液を仕込み、熱 温度を280℃に設定して加熱を開始した。重 缶内の圧力を1.47MPaに調整し内容物を270℃ま で昇温し、次に缶内の圧力を除々に放圧し、 更に減圧圧力にした後に所定の攪拌動力とな ったところで重合反応を停止し、吐出したス トランドを水冷し、カットすることでポリア ミド66樹脂を得た。

 得られたポリアミド66樹脂の硫酸相対粘度 2.85、アミノ末端基濃度とカルボ末端基濃度 バランスの指標である[NH 2 ]/([NH 2 ]+[COOH])は0.42、ペレット粒度は39g/個、ペレッ 粒度のCV%は9%であった。

 得られたポリアミド66樹脂を、バキュー ドライヤー型の真空乾燥機に仕込み、酢酸 5重量%水溶液を銅原子としてポリアミド56樹 に対して100ppmとなるように添加し、ドライ ーを回転させて約1時間ブレンドした。そし てヨウ化カリウム50重量%水溶液をカリウム原 子としてポリアミド56樹脂に対して600ppmとな ように添加し、再びドライヤーを回転させ 約1時間ブレンドした。

 その後ドライヤーの回転により、缶内の 脂を攪拌しながら、缶内の減圧を開始した 、再度缶内の温度を昇温し、缶内温度を170 に昇温した。そして170℃に到達後、缶内圧 133Pa以下として所定時間保持した後、ポリ ミド66樹脂を抜き出した。このとき缶内圧力 133Pa以下での保持時間は、得られるポリアミ 66樹脂の硫酸相対粘度が3.85となるように調 した。すなわち維持時間を変更したポリア ド66樹脂を製造し、得られたポリアミド66樹 脂の硫酸相対粘度、保持時間との相関曲線を 求め、硫酸相対粘度が3.85となる維持時間を 定した。得られたポリアミド66樹脂の硫酸相 対粘度は3.85、Mw/Mnは2.2であった。

 その後、得られたポリアミド66樹脂の水 率を600ppmとなるように調湿し、実施例1と同 にしてフィラメントを製造した。このとき 混練機温度を285℃、紡糸温度を295℃、加熱 温度を320℃、第2ロールの温度を60℃に変更 た。また得られるフィラメントの伸度が23% なるように、第1ロールと第2ロールの速度 調整した。このとき第2ロールの速度は第1ロ ールの速度の1.02倍とした。

 参考例1のポリアミド66フィラメントは、 酸相対粘度が3.81、Mw/Mnが2.26、強度8.6cN/dtex 伸度23%、10%伸長応力3.4cN/dtex、沸収5.7%であっ た。そして沸水処理後のフィラメントは、強 度8cN/dtex、10%伸長応力1.9cN/dtexであった。また 実施例1と同様に製糸性は良好であったが、 ィラメントは若干の毛羽を有していた(0.2個/ 10万m)。

 得られたポリアミド66フィラメントを用 、実施例1と同様にてエアバッグ用基布を製 するに際し、ファイナルセット後に得られ エアバッグ用基布の経糸、緯糸の本数が共 59本/2.54cmとなるように、ウォータージェッ ルームの経糸、緯糸の本数を調整した以外 、実施例1と同様にしてエアバッグ用基布を 製造した。参考例1の結果を表1に示す。調整 のウォータージェットルームの経糸、緯糸 本数はともに56本/2.54cmであった。参考例1の 結果を表1に示す。

 参考例1のフィラメントは、ポリアミド66 らなるため、実施例1と比べて沸水処理後の 10%伸長応力が高いフィラメントであった。そ のため織物を製織した後、精錬、乾燥、ファ イナルセット工程において、得られるエアバ ッグ用基布の沸水処理による収縮率が十分に 低いものとなるように熱収縮せしめても、基 布を構成するフィラメント(分解糸)の10%伸長 力は実施例1と比べて高いものであった。よ って実施例1の方が剛軟性が低く、柔軟で収 性に優れ、衝撃吸収能にも優れたエアバッ 用基布であった。

 (比較例1)
 予め窒素置換した熱媒加熱式の重合釜に、 製例3で得た1,5-ペンタメチレンジアミンと ジピン酸の等モル塩の50重量%水溶液を仕込 、熱媒温度を280℃に設定して加熱を開始し 。重合缶内の圧力を1.47MPaに調整し内容物を2 70℃まで昇温し、次に缶内の圧力を除々に放 し、更に重合缶内の圧力(ゲージ圧)を-13.3kPa まで減圧した後、所定の攪拌動力となったと ころで重合反応を停止し、吐出したストラン ドを水冷し、カットすることで硫酸相対粘度 3.72のポリアミド56樹脂を得た。比較例1では 熱重合法のみで硫酸相対粘度が3以上のポリ ミド56樹脂を製造したため、所定の攪拌動 に達するには、重合缶内の圧力(ゲージ圧)が -13.3kPaに達してから3時間と、保持時間を長く する必要があった。得られたポリアミド56樹 のMw/Mnは3.2と分子量分布の広いものであり アミノ末端基濃度とカルボ末端基濃度のバ ンスの指標である[NH 2 ]/([NH 2 ]+[COOH])が0.15と低く、重合缶内でのモルバラ スが崩れてしまっていた。なおポリアミド56 樹脂のペレット粒度は35g/個、ペレット粒度 CV%は8%であった。

 得られたポリアミド56樹脂を、バキュー ドライヤー型乾燥機にて、缶内温度90℃で真 空乾燥を行い、乾燥後のポリマーの水分率が 300ppmとなるまで乾燥した。

 該ポリマーを用い、実施例1と同様にしてポ リアミド56フィラメントを製造しようと試み が、第3ロール以降で糸切れが多発したため サンプリングすることができなかった。そこ で、第3ロール以降のロール速度を変更し、 5ロールの温度を下げることで糸条走向が安 化し、フィラメントの連続サンプリングが 能となった。このとき巻取速度は、第6ロー ルと巻取機間の糸条張力が0.08cN/dtexとなるよ に補正し、得られるフィラメントの総繊度 350dtexとなるように吐出量を補正した。比較 例1のロール速度を下記に、結果を表1に示す
・第1ロール速度:450m/分
・第2ロール速度:459m/分
・第3ロール速度:1377m/分
・第4ロール速度:1584m/分
・第5ロール速度:1773m/分
・第6ロール速度:1632m/分
・巻取速度:1640m/分
・延伸倍率:3.63倍(延伸温度100~245℃での延伸 率:1.29倍)
・第5ロール温度:200℃

 比較例1の製糸性は悪く、得られたフィラ メントは32個/10万mと多くの毛羽を有し、品位 も悪いものであった。

 そして比較例1のポリアミド56フィラメン を用いて実施例1と同様にしてエアバッグ用 基布を製造するに際し、精錬、乾燥、ファイ ナルセット後に得られるエアバッグ用基布の 、経糸、緯糸の本数が共に59本/2.54cmとなるよ うに、ウォータージェットルームの経糸、緯 糸の本数を調整した以外は、実施例1と同様 してエアバッグ用基布を製造した。調整後 ウォータージェットルームの縦糸、緯糸の 数は49本/2.54cmであった。比較例1のフィラメ トは毛羽を多く有するものであったため製 工程における通過性が悪かった。比較例1の 結果を表1に示す。

 実施例1と比較例1を比較するとわかるよ に、本発明にて好ましい重合方法を採用す ことで、加熱重合における1,5ペンタメチレ ジアミンの揮発や環化を抑えられ、重合缶 でのモルバランスが保たれるため、Mw/Mnが3 下のポリアミド56フィラメントを得ることが 可能となる。そしてこれにより、総繊度、単 繊維繊度が共に小さいながら、高強度であり 、沸収も20%以下であるフィラメントを安定的 に製造することができる。そして沸水処理後 においても高強度であるフィラメントとなる ことがわかる。これはMw/Mnが3以下と低いこと により、紡糸、延伸工程においてフィラメン ト中のポリアミド56分子鎖を均一に配向され 最終ロールでの熱処理において速やかに結 化が進行するため、フィラメント中に緻密 配向結晶相や結晶相を連結する緊張タイ分 が多く形成されたためと考えられる。

 よって得られたエアバッグ用基布におい 、実施例1の方が分解糸の強度が高いものと なり、引張強度、引裂強力が高いエアバッグ 用基布となった。比較例1のエアバッグ用基 は、分解糸の強度不足により引張強度、引 強力が不十分であり、膨張展開性テストに いて基布の穴あきが多く発生した。また用 たフィラメント中の毛羽が欠点となり、基 の通気度が高くなってしまい、やはり膨張 開性に劣るものであった。

 (比較例2)
 比較例1のポリアミド56フィラメントを用い 、エアバッグ用基布を製造するに際し、ウ ータージェットルームで製織する織物の経 、緯糸の本数を51本/2.54cmに調整し、精錬を す温水の温度を50℃とし、得られるエアバ グ用基布の沸水処理による収縮率(経方向、 方向)が5%となるように精錬工程、乾燥工程 ファイナルセット工程における織物の収縮 制限した以外は、比較例1と同様にしてエア バッグ用基布を製造した。比較例2の結果を 1に示す。

 比較例2のエアバッグ用基布は、沸水処理 による基布の収縮率が3%を超えるものであり 基布の製造工程における織物の熱収縮が不 分であったため、分解糸の10%伸長応力が高 状態で保たれ、2cN/dtexを超えるものとなっ 。そのため基布の剛軟性、収納性、衝撃吸 能の点で、実施例1と比べて劣るものであっ 。また実施例1の方が分解糸の強度も高く、 基布の引張強度、引裂強力も高いものであっ たため、膨張展開性も実施例1の方が優れて た。

 (実施例2)
 実施例1において、濃縮工程における缶内温 度を145℃とした以外は実施例1と同様にして 熱重合を行い、ポリアミド56樹脂を得た。得 られたポリアミド56樹脂の硫酸相対粘度は2.75 、アミノ末端基濃度とカルボ末端基濃度のバ ランスの指標である[NH 2 ]/([NH 2 ]+[COOH])は0.41、ペレット粒度は35g/個、ペレッ 粒度のCV%は8%であった。

 該ポリアミド56樹脂について、実施例1と 様に固相重合を施したのち、実施例1と同様 にしてポリアミド56フィラメントを製造した 製糸性は優れており、得られたフィラメン の毛羽は0個/10万mと高品位なものであった

 そして実施例2のフィラメントを用いて実 施例1と同様にしてエアバッグ用基布を製造 るに際し、精錬、乾燥、ファイナルセット に得られるエアバッグ用基布の、経糸、緯 の本数が共に59本/2.54cmとなるように、ウォ タージェットルームの経糸、緯糸の本数を 整した以外は、実施例1と同様にしてエアバ グ用基布を製造した。調整後のウォーター ェットルームの経糸、緯糸の本数はともに5 2本/2.54cmであった。実施例2の結果を表2に示 。

 (実施例3)
 実施例1において、調製例5で調製した1,5-ペ タメチレンジアミンとアジピン酸の等モル の57重量%水溶液を水温50℃に温調しながら 該水溶液に1,5-ペンタメチレンジアミンおよ 水を加え、水溶液中に存在する1,5-ペンタメ チレンジアミンのモル数とアジピン酸のモル 数の比(1,5-ペンタメチレンジアミンのモル数/ アジピン酸のモル数)を1.007、水溶液中の原料 モノマーの濃度を57重量%に調整して用いた以 外は、実施例1と同様にして加熱重合を行っ ポリアミド56樹脂を得た。

 得られたポリアミド56樹脂の硫酸相対粘度 2.75、アミノ末端基濃度とカルボ末端基濃度 バランスの指標である[NH 2 ]/([NH 2 ]+[COOH])は0.33、ペレット粒度は35g/個、ペレッ 粒度のCV%は8%であった。

 該ポリアミド56樹脂について、実施例1と 様に固相重合を施したのち、実施例1と同様 にしてポリアミド56フィラメントを製造した 製糸性は優れており、得られたフィラメン の毛羽は0個/10万mと高品位なものであった

 そして実施例3のフィラメントを用いて実 施例1と同様にしてエアバッグ用基布を製造 るに際し、精錬、乾燥、ファイナルセット に得られるエアバッグ用基布の、経糸、緯 の本数が共に59本/2.54cmとなるように、ウォ タージェットルームの経糸、緯糸の本数を 整した以外は、実施例1と同様にしてエアバ グ用基布を製造した。調整後のウォーター ェットルームの経糸、緯糸の本数はともに5 2本/2.54cmであった。実施例3の結果を表2に示 。

 (実施例4)
 実施例3において、固相重合における昇温速 度を19℃/hrとした以外は実施例3と同様にして ポリアミド56フィラメントを製造しようと試 たが、紡糸、延伸、熱処理工程において第5 ロール上で糸揺れが発生して糸条走向が不安 定となったため、第5ロールの温度を225℃に 更した。これにより安定製糸が可能となり 製糸性は良好となった。また得られたフィ メントの毛羽は0個/10万mであり、高品位なも のであった。

 そして実施例4のフィラメントを用いて実 施例1と同様にしてエアバッグ用基布を製造 るに際し、精錬、乾燥、ファイナルセット に得られるエアバッグ用基布の、経糸、緯 の本数が共に59本/2.54cmとなるように、ウォ タージェットルームの経糸、緯糸の本数を 整した以外は、実施例1と同様にしてエアバ グ用基布を製造した。調整後のウォーター ェットルームの経糸、緯糸の本数はともに5 1本/2.54cmであった。実施例4の結果を表2に示 。

 (実施例5、6)
 実施例3において、加熱重合で得られたポリ アミド56樹脂をカットしてペレット化する際 、実施例5ではペレット粒度が68mg/個、ペレ ト粒度のCV%が8%、実施例6ではペレット粒度 8mg/個、ペレット粒度のCV%が8%、に調整して 相重合に供した以外は、実施例3と同様にし てポリアミド56樹脂を製造した。

 そして該ポリアミド56樹脂から、実施例3 同様にしてフィラメントを製造しようと試 たが、実施例5、6ともに、紡糸、延伸、熱 理工程において第5ロール上で糸揺れが発生 て糸条走向が不安定となったため、第5ロー ルの温度を225℃に変更した。これにより製糸 性は良好となった。また得られたフィラメン トの毛羽は、実施例5は0.2個/10万mであり、実 例6は0個/10万mであり、いずれも高品位なも であった。

 そして実施例5、6のフィラメントを用い 実施例1と同様にしてエアバッグ用基布を製 するに際し、精錬、乾燥、ファイナルセッ 後に得られるエアバッグ用基布の、経糸、 糸の本数が共に59本/2.54cmとなるように、ウ ータージェットルームの経糸、緯糸の本数 調整した以外は、実施例1と同様にしてエア バッグ用基布を製造した。調整後のウォータ ージェットルームの経糸、緯糸の本数は、実 施例5、6ともに51本/2.54cmであった。実施例5、 6の結果を表2に示す。

 (比較例3)
 予め窒素置換した熱媒加熱式の重合釜に、 製例3で得た1,5-ペンタメチレンジアミンと ジピン酸の等モル塩の50重量%水溶液を仕込 、熱媒温度を280℃に設定して加熱を開始し 。重合缶内の圧力を1.47MPaに調整し内容物を2 70℃まで昇温し、次に缶内の圧力を除々に放 し、更に重合缶内の圧力(ゲージ圧)を-13.3kPa まで減圧した後、所定の攪拌動力となったと ころで重合反応を停止し、吐出したストラン ドを水冷し、カットすることで硫酸相対粘度 2.75のポリアミド56樹脂を得た。

 得られたポリアミド56樹脂のアミノ末端基 度とカルボ末端基濃度のバランスの指標で る[NH 2 ]/([NH 2 ]+[COOH])は0.18、ペレット粒度は35g/個、ペレッ 粒度のCV%は8%であった。

 得られたポリアミド56樹脂を用い、実施例1 同様にして固相重合を行った後、実施例1と 同様にしてポリアミド56フィラメントを製造 ようと試みたが、第3ロール以降で糸切れが 多発したためサンプリングすることができな かった。そこで、第3ロール以降のロール速 を変更するとともに、第5ロールの温度を下 ることで糸条走向が安定化し、フィラメン の連続サンプリングが可能となった。この き巻取速度は、第6ロールと巻取機間の糸条 張力が0.08cN/dtexとなるように補正し、得られ フィラメントの総繊度が350dtexとなるように 吐出量を補正した。比較例3のロール速度を 記に、結果を表2に示す。
・第1ロール速度:450m/分
・第2ロール速度:459m/分
・第3ロール速度:1469m/分
・第4ロール速度:1689m/分
・第5ロール速度:1892m/分
・第6ロール速度:1740m/分
・巻取速度:1749m/分
・延伸倍率:3.89倍(延伸温度100~245℃での延伸 率:1.29倍)
・第5ロール温度:200℃

 比較例3の製糸性は悪く、得られたフィラ メントは24個/10万mと多くの毛羽を有し、品位 も悪いものであった。

 そして比較例3のポリアミド56フィラメン を用いて実施例1と同様にしてエアバッグ用 基布を製造するに際し、精錬、乾燥、ファイ ナルセット後に得られるエアバッグ用基布の 、経糸、緯糸の本数が共に59本/2.54cmとなるよ うに、ウォータージェットルームの経糸、緯 糸の本数を調整した以外は、実施例1と同様 してエアバッグ用基布を製造した。調整後 ウォータージェットルームの縦糸、緯糸の 数は49本/2.54cmであった。比較例3のフィラメ トは毛羽を多く有するものであったため製 工程における通過性が悪かった。比較例3の 結果を表2に示す。

 実施例1~6、比較例3を比較するとわかるよう に、加熱重合において好ましい方法を採用す ることで、[NH 2 ]/([NH 2 ]+[COOH])が好ましい範囲のポリアミド56樹脂を 造することができ、該ポリアミド56樹脂を ましい方法で固相重合したポリアミド56樹脂 でフィラメントを形成することで、初めてMw/ Mnが小さいポリアミド56フィラメントとなる とがわかる。

 そしてMw/Mnが小さいフィラメントである とで、より高強度で低沸収なポリアミド56フ ィラメントとなり、沸水処理後の強度も高い フィラメントとなった。これはMw/Mnが小さい ど紡糸、延伸工程においてポリアミド56分 鎖を均一かつ十分に配向せしめることが可 となり、最終ロールでの熱処理において効 的な結晶形成が起こるためと考えられる。Mw /Mnが小さいフィラメントほど沸水処理後にお いても高強度なフィラメントとなり、エアバ ッグ用基布の分解糸においても強度が高いた め、引張強度、引裂強力が高く、膨張展開性 に優れたエアバッグ基布となることがわかる 。

 そして実施例1~6のエアバッグ用基布は十 な力学特性を有すると同時に、参考例1と比 べて剛軟性が低い基布であり、収納性、衝撃 吸収能に優れたものであった。

 (実施例7)
 実施例1と同様にしてポリアミド56フィラメ トを製造するに際し、固相重合において缶 温度が160℃に達した時点でポリアミド56樹 を抜き出した。そして該ポリアミド56樹脂を 用いて実施例1と同様にしてポリアミド56フィ ラメントを製造するに際し、得られるフィラ メントの伸度が23%となるように、第1ロール 第2ロールの速度を調整した以外は、実施例1 と同様にしてポリアミド56フィラメントを製 した。このとき第2ロールの速度は第1ロー の速度の1.02倍とした。製糸性は優れており 毛羽も0.2個/10万mと少なく高品位なフィラメ ントであった。

 そして実施例7のフィラメントを用いて実 施例1と同様にしてエアバッグ用基布を製造 るに際し、精錬、乾燥、ファイナルセット に得られるエアバッグ用基布の、経糸、緯 の本数が共に59本/2.54cmとなるように、ウォ タージェットルームの経糸、緯糸の本数を 整した以外は、実施例1と同様にしてエアバ グ用基布を製造した。調整後のウォーター ェットルームの経糸、緯糸の本数は、53本/2 .54cmであった。製織工程の通過性は良好であ た。実施例7の結果を表3に示す。

 (比較例4)
 実施例1において、加熱重合で得られたポリ アミド56樹脂に固相重合を施さず、バキュー ドライヤー型乾燥機にて、缶内温度90℃で 空乾燥を行い、乾燥後のポリマーの水分率 300ppmとなるまで乾燥した。

 そして該ポリマーを用い、実施例1と同様 にしてポリアミド56フィラメントを製造した 比較例4の製糸性は実施例と比べると見劣り するものの問題無いレベルであり、フィラメ ントの毛羽も0.6個/10万mとまずまずのもので った。

 そして比較例4のポリアミド56フィラメン を用いて実施例1と同様にしてエアバッグ用 基布を製造するに際し、精錬、乾燥、ファイ ナルセット後に得られるエアバッグ用基布の 、経糸、緯糸の本数が共に59本/2.54cmとなるよ うに、ウォータージェットルームの経糸、緯 糸の本数を調整した以外は、実施例1と同様 してエアバッグ用基布を製造した。調整後 ウォータージェットルームの縦糸、緯糸の 数は53本/2.54cmであった。比較例4のフィラメ トは強度が低く、製織工程で糸切れが発生 て通過性が悪かった。比較例4の結果を表3 示す。

 実施例1、7、比較例4を比較するとわかる うに、本発明のフィラメントの硫酸相対粘 が3以上であることで高強度なフィラメント となることがわかる。これは硫酸相対粘度が 高いことで分子鎖間の相互作用が高まり、紡 糸、延伸工程で分子鎖が均一に高配向化され 、最終加熱ロールにて配向緩和を起こすこと 無く、結晶化せしめることができた効果と考 えられる。

 実施例1、7のフィラメントは高強度であ ため製織工程での通過性に優れ、また沸水 理後においても十分な強度を有するフィラ ントであるため、製造工程において熱収縮 しめたエアバッグ用基布は、力学特性に優 、柔軟性、衝撃吸収能にも優れたエアバッ 用基布となることがわかる。比較例4のフィ メントは強度が低いため製織工程での通過 が悪く、また沸水処理後の強度も低いため エアバッグ用基布の分解糸の強度が低いも であり、力学特性が不十分な基布であるた 、膨張展開性に劣るものであった。

 (実施例8、9、比較例5)
 実施例1において第5ロールの温度を変更し 以外は、実施例1と同様にして実施例8、9、 較例5のポリアミド56フィラメントを製造し 。実施例8、9、比較例5の第5ロール温度を下 に示す。いずれも製糸性は良好であり、毛 も0.2個/10万mと問題ないレベルであった。
実施例8:235℃
実施例9:218℃
比較例5:200℃

 そして実施例8、9、比較例5のフィラメン を用いて実施例1と同様にしてエアバッグ用 基布を製造するに際し、精錬、乾燥、ファイ ナルセット後に得られるエアバッグ用基布の 、経糸、緯糸の本数が共に59本/2.54cmとなるよ うに、ウォータージェットルームの経糸、緯 糸の本数を調整した以外は、実施例1と同様 してエアバッグ用基布を製造した。調整後 ウォータージェットルームの経糸、緯糸の 数は、実施例8では55本/2.54cmであり、実施例9 では52本/2.54cm、比較例5では49本/2.54cmであっ 。実施例8、9はいずれも製織工程の通過性は 良好であった。実施例8、9の結果を表4に示す 。

 実施例1、8、9、比較例5を比較するとわかる ように、ポリアミド56フィラメントの沸収が2 0%以下であることにより、沸水処理後におい も高強度であるフィラメントとなることが かる。これはフィラメント中に存在する非 鎖が結晶相によって拘束されており、沸水 理後においても非晶鎖の配向度が高く維持 きたためと考えられる。
実施例1、8、9のフィラメントから得られたエ アバッグ用基布は、分解糸の強度が高く十分 な力学特性を有するため膨張展開性に優れた ものであった。また分解糸の10%伸長応力も低 いため柔軟性、衝撃吸収能にも優れたエアバ ッグ用基布となった。

 比較例4のフィラメントは沸収が高いため 、沸水処理後における強度が低く、熱処理せ しめたエアバッグ用基布の分解糸の強度も低 くなってしまうため、力学特性が不十分で、 膨張展開性に劣る基布であった。

 (実施例10、11)
 実施例1で得られた経糸、緯糸の本数が53本/ 2.54cmであり、カバーファクターが1881である 物に、精錬、乾燥、ファイナルセットを施 て、実施例10、11のエアバッグ用基布を得た このとき織物をドデシルベンゼンスルホン ソーダ0.5g/Lおよびソーダ灰0.5g/Lを含んだ温 に投入して弛緩状態で精錬処理を施して織 を熱収縮させた後(温水温度70℃、処理時間1 分)、弛緩状態で130℃で1分間乾燥処理し、織 の経方向、緯方向の収縮を制限しながら180 で1分間のファイナルセットを施した。実施 例10のエアバッグ用基布の経糸、緯糸の本数 ともに58本/2.54cmであり、98℃30分間の沸水処 理による基布の収縮率(経方向および緯方向) 1.5%であった。

 実施例11では、精錬処理の温水温度を60℃ 、処理時間を1分とし、弛緩状態で130℃で1分 乾燥処理した後、織物の経方向、緯方向の 縮を制限しながら150℃で1分間のファイナル セットを施した。実施例11のエアバッグ用基 の経糸、緯糸の本数はともに57本/2.54cmであ 、98℃30分間の沸水処理による基布の収縮率 (経方向および緯方向)は2.7%であった。実施例 10、11の結果を表5に示す。

 実施例1、10、11を比較すると分かるよう 、本発明のエアバッグ用基布の沸水処理に る収縮率が低いほど、分解糸の10%伸長応力 低いものであり、より柔軟で、衝撃吸収能 優れたエアバッグ用基布となることがわか 。これは基布を構成する分解糸が、製造工 において湿熱処理される過程でフィラメン 中への多くの水が進入し、分子間水素結合 が適度に弱まった効果と考えられる。

 (実施例12、13、比較例6)
 実施例1において、用いる紡糸口金を変更し た以外は実施例1と同様にして、実施例12、13 比較例6のポリアミド56フィラメントを製造 た。そして実施例1と同様にして実施例12、1 3、比較例6のエアバッグ用基布を製造した。 施例12、13、比較例6で用いた紡糸口金を下 に、実施例12、13、比較例6の結果を表6に示 。
・実施例12の紡糸口金:孔径0.15mm、孔深度0.3mm 孔数256
・実施例13の紡糸口金:孔径0.23mm、孔深度0.45mm 、孔数80
・比較例6の紡糸口金:孔径0.3mm、孔深度0.6mm、 孔数48

 実施例1、12、13、比較例6を比較するとわ るように、ポリアミド56フィラメントの単 維繊度が本発明の範囲にあることで、力学 性、柔軟性、衝撃吸収能にバランス良く優 たエアバッグ基布が得られることがわかる 比較例6の基布は高強度ではあったが、実施 と比べて柔軟性が不足しており、収納性や 撃吸収に劣るものであった。

 (実施例14、15)
 実施例1において、得られるフィラメントの 総繊度を変更した以外は実施例1と同様にし 、実施例14,15のポリアミド56フィラメントを 造した。このときフィラメントの総繊度は 出量を調整することにより変更した。また ィラメントの単繊維繊度が、実施例1と同一 となるように紡糸口金の孔数を変更した。実 施例14,15の総繊度、および紡糸口金の孔数下 に示す。
・実施例14の総繊度:170dtex
・実施例14の紡糸口金の孔数:65
・実施例15の総繊度:605dtex
・実施例15の紡糸口金の孔数:236

 実施例14,15のフィラメントを用いて実施 1と同様にしてエアバッグ用基布を製造する 際し、精錬、乾燥、ファイナルセット後に られるエアバッグ用基布の、経糸、緯糸の 数が、実施例14では共に85本/2.54cmとなるよ に、実施例15では共に45本/2.54cmとなるように 、ウォータージェットルームの経糸、緯糸の 本数を調整した以外は、実施例1と同様にし エアバッグ用基布を製造した。調整後のウ ータージェットルームの経糸、緯糸の本数 、実施例14では77本/2.54cmであり、実施例15で 41本/2.54cmであった。また実施例14の基布の みは0.18mmであり、実施例15の基布の厚みは0.4 3mmであった。実施例14、15の結果を表7に示す

 実施例1、実施例14、15を比較するとわか ように、ポリアミド56フィラメントの総繊度 が本発明の範囲にあることで、力学特性、柔 軟性、衝撃吸収能にバランス良く優れたエア バッグ基布が得られることがわかる。実施例 14のエアバッグ用基布は厚みが小さく、柔軟 、収納性が良好なものであり、カーテンエ バッグ等に適した特性であった。一方で実 例15のエアバッグ用基布は厚みが大きく、 施例と比べて柔軟性が不足しており収納性 劣るものであったが、ニーエアバッグ等に 用可能なレベルであった。

 本発明のポリアミド56フィラメントは、 イオマスプラであるポリアミド56を含有する ため環境配慮型素材である。また、力学特性 、耐熱性、耐摩耗性、耐久性に優れるため、 衣料用途や、産業資材用途に幅広く利用可能 なフィラメント、およびこれを含んでなる繊 維構造体を提供することができる。

 そして該フィラメントは湿熱処理などの 段で熱収縮せしめ、高強度かつ低弾性率の ィラメントとすることで、該フィラメント 用いて製織した後、精錬やファイナルセッ 等の熱処理を施した織物は、従来のポリア ド66フィラメントからなる織物に勝る、柔 性、衝撃吸収能を有するとともに、低通気 、高強度、耐熱性、耐久性に優れた基布と てエアバッグに好適に用いることができる