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Title:
PROCESS FOR PRODUCING α-HYDROXY ACID
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/153886
Kind Code:
A1
Abstract:
A process for producing an α-hydroxy acid that is economically advantageous without the secondary production of a large volume of waste, having satisfactory quality as a polymer raw material. The process for producing an α-hydroxy acid comprises the steps of adding a basic metal to an ammonium salt of α-hydroxy acid to thereby obtain a metal salt of α-hydroxy acid and converting the metal salt of α-hydroxy acid to an α-hydroxy acid.

Inventors:
OKAMOTO MAKOTO (JP)
DATE HIDEKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/061365
Publication Date:
December 23, 2009
Filing Date:
June 20, 2008
Export Citation:
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Assignee:
ASAHI KASEI CHEMICALS CORP (JP)
OKAMOTO MAKOTO (JP)
DATE HIDEKI (JP)
International Classes:
C07C51/02; C07C51/08; C07C51/47; C07C59/06; C07C59/08; C07D319/12; C08G63/06; C12P7/42
Foreign References:
JP2007295820A2007-11-15
JP2005132836A2005-05-26
JP2004532855A2004-10-28
JPH09328481A1997-12-22
Attorney, Agent or Firm:
INABA, Yoshiyuki et al. (JP)
Yoshiyuki Inaba (JP)
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Claims:
 α-ヒドロキシ酸アンモニウム塩水溶液に塩基性金属類を接触させてα-ヒドロキシ酸金属塩を製造する工程であって、溶液中に残存するα-ヒドロキシ酸アミドを500[重量ppm/α-ヒドロキシ酸]以下にする工程(1)と、
 前記α-ヒドロキシ酸金属塩を脱塩してα-ヒドロキシ酸を製造する工程(2)と、
を含むα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記工程(1)において、溶液中に残存するアンモニア濃度を3[重量%/α-ヒドロキシ酸]以下にする、請求項1に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記工程(1)において、発生したアンモニアを気相部に回収する、請求項1または2に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記アンモニアを気相部に回収するときの温度を、60℃以上とする、請求項3に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記α-ヒドロキシ酸アンモニウム塩水溶液がα-ヒドロキシニトリルの加水分解反応によって得られたものである、請求項1から4のいずれか1項に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記α-ヒドロキシニトリルの加水分解を、ニトリラーゼ、及び/又はニトリルヒドラターゼとアミダーゼの組み合わせによって酵素触媒的に行う、請求項5に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記α-ヒドロキシニトリルの加水分解が、ニトリラーゼによって行われる、請求項5に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記ニトリラーゼが、Acinetobacter属由来である、請求項6または7に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記ニトリラーゼが、Acinetobacter sp.AK226由来である、請求項8に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記塩基性金属類が、アルカリ金属類、ベリリウムまたはマグネシウムの水酸化物、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択される一種以上であって、前記工程(2)において、前記α-ヒドロキシ酸金属塩をイオン交換法によって脱塩する、請求項1から9のいずれか1項に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記塩基性金属類が、アルカリ金属類、ベリリウム、またはマグネシウムの水酸化物、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択される一種以上であって、且つ、前記工程(2)において、前記α-ヒドロキシ酸金属塩を電気透析法によって脱塩する、請求項1から9のいずれか1項に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記塩基性金属類が、カルシウム、ストロンチウム、バリウムまたはラジウムの水酸化物、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択される一種以上であって、前記工程(2)において、前記α-ヒドロキシ酸金属塩を、硫酸を添加することによって脱塩する、請求項1から9のいずれか1項に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
前記工程(1)の後、固液分離により固体のα-ヒドロキシ酸金属塩を回収、洗浄し、前記工程(2)において、該固体のα-ヒドロキシ酸金属塩又はこれに水を加えたα-ヒドロキシ酸金属塩スラリーに硫酸を添加する、請求項12に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記塩基性金属類が、水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムからなる群から選択される一種以上である、請求項12又は13に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記工程(2)の後、アニオン交換樹脂によって不純物アニオンを除去する工程と、カチオン交換樹脂によって不純物カチオンを除去する工程と、をさらに含む、請求項1から14のいずれか1項に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記不純物カチオンが、副生α-アミノ酸またはイミノジアルキル酸を含む、請求項15に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記α-ヒドロキシ酸が、乳酸またはグリコール酸である、請求項1から16のいずれか1項に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 前記α-ヒドロキシ酸が、グリコール酸である、請求項17に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法。
 請求項1から18のいずれか1項に記載の方法で得られたα-ヒドロキシ酸の水溶液を原料としてα-ヒドロキシ酸オリゴマーを合成する工程と、前記α-ヒドロキシ酸オリゴマーを解重合させてその環状二量体エステルを得る工程と、を含む、環状二量体エステルの製造方法。
 請求項19に記載の方法で得られた環状二量体エステルを原料として開環重合反応でポリα-ヒドロキシ酸を得る工程を含む、ポリα-ヒドロキシ酸の製造方法。
Description:
α-ヒドロキシ酸の製造方法

 本発明は、α-ヒドロキシ酸アンモニウム からα-ヒドロキシ酸を製造する実用的な工 的方法に関するものであり、とりわけα-ヒ ロキシニトリルの加水分解によって得られ α-ヒドロキシ酸アンモニウム塩からα-ヒド キシ酸を製造する方法に関する。当該方法 得られるα-ヒドロキシ酸は、ポリα-ヒドロ シ酸を製造するための原料として好適な品 を有するものである。

 ポリα-ヒドロキシ酸は、生分解性ポリマ であって、生体内で加水分解され、自然環 下では微生物によって水と炭酸ガスに代謝 分解される。このため、近年ポリα-ヒドロ シ酸は環境に優しいポリマー材料として注 されている。その中でも、ポリ乳酸やポリ リコール酸は、医療用材料や汎用樹脂に代 する環境に優しいポリマー材料として、更 ポリグリコール酸については、その大きな 性であるガスバリヤー性からガスバリヤー 途のポリマー材料として注目されている。

 高分子量のポリα-ヒドロキシ酸は、α-ヒ ロキシ酸の脱水縮合によって直接得ること 困難であるため、環状二量体エステルを経 して、開環重合で高分子量ポリα-ヒドロキ 酸を得る方法が知られている。例えば、ポ 乳酸やポリグリコール酸の場合、環状二量 エステルであるラクチドまたはグリコリド 合成し、このラクチドまたはグリコリドを 媒の存在下に開環重合して製造する方法が られている。但し、ラクチドまたはグリコ ドの開環重合で高分子量のポリ乳酸または リグリコール酸を得るには、高純度のラク ドまたはグリコリドを用いることが必要で る。乳酸またはグリコール酸から高純度の クチドまたはグリコリドを得る方法として 一旦、乳酸またはグリコール酸オリゴマー 合成し、高沸点の極性有機溶媒中で解重合 る方法が開示されている(特許文献1)。

 また、グリコール酸オリゴマーを解重合 てグリコリドを製造する方法において、オ ゴマーに含まれている微量アルカリ金属イ ンが解重合反応系を不安定にする原因とな が、この反応系に二価以上のカチオンの硫 塩もしくは有機酸塩を添加することで、ア カリ金属イオンが存在していても解重合反 の長期安定性が得られることが開示されて る(特許文献2)。

 このようにポリα-ヒドロキシ酸の原料と るα-ヒドロキシ酸は、α-ヒドロキシ酸アン ニウム塩をα-ヒドロキシ酸に変換すること よって得ることができる。

 カルボン酸アンモニウム塩をカルボン酸 変換するための最も一般的な方法として、 酸等の強酸を添加して、副生硫安と共に遊 酸を得る方法が考えられる。しかしながら 昨今の環境問題を考えると硫安のような大 の廃棄物を生成するプロセスは望ましくな 。

 また、カルボン酸アンモニウム塩をカル ン酸に変換する方法として、アンモニウム の加熱加水分解を行い、イナートガスと共 生成物であるアンモニアをガスとして系外 抜くことで、加熱加水分解反応生成物側へ 衡をずらし、α-ヒドロキシカルボン酸を製 する方法(特許文献3)や、加圧加熱すること 加熱加水分解反応生成物側へ平衡のずれを 長し、アンモニアを水と共に蒸発させるこ で2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタン酸アン ニウムから2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタン 酸を製造する方法(特許文献4)等が開示されて いる。

 しかしながら、カルボン酸アンモニウム 加熱加水分解には多大なエネルギーを要し しかも100%遊離酸に転化するためには時間も かかるため、実用的な方法とは言えない。そ もそも、カルボン酸アンモニウムから、加熱 加水分解のみでアンモニアを取り除こうとす ると、カルボン酸アニオンとアンモニウムカ チオンの結合を引き離すだけのエネルギーが 必要とされるところ、アンモニウムカチオン が不足すればするほどそのエネルギーは大き くなるので、ますます困難となる。さらに、 カルボン酸アンモニウムを加熱処理すると、 カルボン酸アミドが生成するという問題があ り、最終製品の品質上、大きな問題となる。

 そこで、単なる加熱加水分解ではなく、 らかの反応物を使用する方法が提案されて る。例えば、コハク酸アンモニウムをアル ール又は水と反応させてアンモニアを脱離 せ、コハク酸又はその誘導体を得るととも 脱離したアンモニアを回収する方法が開示 れている(特許文献5)。しかしながら、アル ールと反応すると、コハク酸のエステルが 成するため、再び加水分解を行う必要があ 、工程が複雑となる。

 また、水に不混和性である有機アミンの 在下で乳酸アンモニウムを加熱して分解さ 、乳酸と有機アミンを含む反応生成物を生 させる方法が開示されている(特許文献6)。 の方法によれば、確かにアンモニウム塩か アンモニアを除去することはできる。しか ながら、得られた有機アミンとの混合物か 遊離酸を高純度で取得するには、さらなる 製が必要であり、工程が複雑になることが 易に予想される。

 また、α-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロ トリルを生物学的に加水分解した後濃縮し 得たα-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸アンモ ウム塩を、エーテル結合を2つ以上有するエ ーテル溶媒中で加熱し、アンモニアを遊離さ せて留出除去することで、α-ヒドロキシ-4-メ チルチオ酪酸を製造する方法が開示されてい る(特許文献7)。この方法によれば、アンモニ アの残存率が0.12%程度となるまでアンモニウ 塩からアンモニアが除去されているが、カ ボン酸アミドが生成するという問題があり 最終製品の品質上、大きな問題となる。

 その他にも、外来の反応物を添加するこ なく、ヒドロキシカルボン酸自身の脱水縮 反応を利用してアンモニアを除去する方法 提案されている。例えば、第1工程でα-ヒド ロキシ-4-メチルチオ酪酸アンモニウム塩を加 熱することにより低分子量ポリα-ヒドロキシ -4-メチルチオ酪酸としつつ水とアンモニアを 除去し、第2工程で水を添加して加熱するこ により低分子量ポリマーを加水分解して遊 酸を得る方法が開示されている(特許文献8) しかしながら、第1工程におけるアミドの副 は避けようがなく、第2工程における加水分 解でその一部が再びα-ヒドロキシ-4-メチルチ オ酪酸アンモニウム塩となるため、純度よく アンモニアを除去することはできない。また 、第2工程における加水分解反応転化率が100% 到達せず、一部低分子量ポリα-ヒドロキシ- 4-メチルチオ酪酸が残存することとなり、品 上問題である。事実、特許文献8においても 、純度は80%程度で、更に純度の高いα-ヒドロ キシ酸を得るには、抽出等の精製が必要との 記述がある。

 更に別法として、イオン交換樹脂を利用 る方法が提案されている。例えば、メタク ル酸アンモニウム水溶液から陽イオン交換 脂を用いてアンモニウムカチオンを吸着さ 、次いで有機溶媒を用いて吸着したアンモ ウムカチオンをアンモニアとして回収しカ ボン酸を得る方法が開示されている(特許文 献9)。しかしながら、アンモニア分解率は満 できるレベルではなく、とても実用的な方 とは言えない。

 更に別法として、バイポーラ膜-アニオン 膜-バイポーラ膜のシステムを用いた電気透 法によるカルボン酸アンモニウムからのカ ボン酸とアンモニアの回収方法が開示され いる(特許文献10)。しかしながら、不純物と てカルボン酸アミドが含まれていると、電 透析によって精製されない、或いは、精製 きたとしてもリサイクル液に蓄積されると う問題があった。

 その他、ジカルボン酸、トリカルボン酸 はアミノ酸等のカルボン酸のアンモニウム から、それらの酸より酸電離指数の低い揮 性のカルボン酸を使用する反応晶析によっ 目的の遊離酸を得て、母液に含まれる揮発 酸のアンモニウム塩から該揮発性酸を回収 ることを含む方法が開示されている(特許文 献11)。しかしながら、得られる遊離酸の結晶 中のアンモニアを完全に除去することは困難 で、2~3%程度は残存してしまうことが品質上 題である。

 一方、α-ヒドロキシ酸アンモニウム塩は 例えば、α-ヒドロキシニトリル化合物から 成することができる。α-ヒドロキシニトリ 化合物からのカルボン酸化合物の合成は、 トリル加水分解活性を有する生体触媒を利 して行うことができる。ニトリル加水分解 性を有し、ニトリル化合物をカルボン酸化 物に変換できる生体触媒の例としては、ニ リラーゼや、ニトリルヒドラターゼとアミ ーゼとの組み合わせを挙げることができる

 この方法は、反応条件が穏和であるため 応プロセスが簡略化できること、副生成物 比較的少なく高純度の反応生成物を取得で ること等の利点があるため、近年、様々な ルボン酸化合物の製造への適用が検討され いる。しかしながら、少ないとはいえ、α- ドロキシニトリル化合物の加水分解におい 、α-アミノニトリルやイミノジアルキルニ リル等のニトリル類、それらの加水分解物 あるアミド類、カルボン酸類などの不純物 生じる。

 また、いずれの生体触媒を用いても反応 成物はカルボン酸アンモニウム塩として得 れるため、これを上述の方法でカルボン酸 変換する必要があり、当該工程でもα-ヒド キシ酸アミド等の不純物が残存する。

 ニトリル化合物を利用する例として、α- ドロキシニトリルから生体触媒を用いて調 されたα-ヒドロキシカルボン酸アンモニウ 塩からα-ヒドロキシカルボン酸カルシウム 製造する方法が提案されている。具体的に 、2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロニトリ を生物学的に加水分解して得られる2-ヒドロ キシ-4-メチルチオブタン酸アンモニウム塩に カルシウム源を接触させることで2-ヒドロキ -4-メチルチオブタン酸カルシウム塩を製造 る方法が開示されている(特許文献12)。しか しながら、この文献では、2-ヒドロキシ-4-メ ルチオブタン酸カルシウム塩をそのまま飼 添加剤として使用することが想定されてお 、2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタン酸カル ウム塩を脱塩して2-ヒドロキシ-4-メチルチオ ブタン酸を得ることや、2-ヒドロキシ-4-メチ チオブタン酸を原料としてポリα-ヒドロキ 酸を製造することについては開示されてい い。従って、当然のことながら、α-ヒドロ シ酸中の不純物がポリα-ヒドロキシ酸にど ように影響するかについても触れられてお ず、どのような条件とすればポリマー原料 して最適なα-ヒドロキシ酸を得られるかに いても記載されていない。

 また、ニトリルを水和する能力を有する 生物またはその処理物をα-ヒドロキシニト ルに作用させて対応するα-ヒドロキシ酸ア ド及びまたはα-ヒドロキシ酸アンモニウム を生成させ、生成したα-ヒドロキシ酸アミ を塩基の存在下で加水分解すると共に、α- ドロキシ酸アンモニウム塩を塩交換して、 応するα-ヒドロキシ酸の塩とアンモニアを 成させ、アンモニアを除いた後、電気透析 α-ヒドロキシ酸と塩基を生成する方法(特許 文献13)が開示されている。しかしながら、こ の文献でも、実施例ではそのまま飼料等に用 いられる2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタン酸 製造例が示されているのみであり、得られ 2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタン酸カルシ ム塩からポリα-ヒドロキシ酸を製造するこ については、まったく記載されていない。 って、ポリマー原料として最適なα-ヒドロ シ酸を得るための条件についても記載され いない。

 特許文献12又は13の方法を用いても、最終 的に得られるα-ヒドロキシ酸に、α-ヒドロキ シ酸アミド、α-ヒドロキシニトリルの加水分 解における副生成物と考えられるα-アミノニ トリルやイミノジアルキルニトリル等のニト リル類、それらの加水分解物であるアミド類 、カルボン酸類などの不純物が残存すること が十分に考えられる。これらの不純物は、ポ リマー原料としての品質に多大な影響を及ぼ すところ、いずれの文献にも、これらの不純 物を十分に除去する条件については触れられ ていない。

特開平9-328481号公報

特開2004-519485号公報

WO200059847 A1

特開2000-119214号公報

特開2005-132836号公報

特開2004-532855号公報

WO199900350 A1

WO199730962 A1

特開昭62-23823号公報

US581449 A1

特開2004-196768号公報

特開平11-75885号公報

特開平10-179183号公報

 そこで、本発明は、廃棄物を大量に副生 ることなく、経済性があり、ポリマー原料 して十分な品質を有する、α-ヒドロキシ酸 製造方法を提供することを目的とする。よ 具体的には、本発明の課題は、α-ヒドロキ 酸アンモニウム塩を原料としてα-ヒドロキ 酸を製造する方法であって、残存アンモニ が非常に少なく、副生α-ヒドロキシ酸アミ 等の不純物を極限的に低減でき、ポリα-ヒ ロキシ酸の原料として理想的なα-ヒドロキ 酸を得る工業的な方法を提供することにあ 。

 本発明者らは、鋭意検討を行ったところ α-ヒドロキシ酸中にα-ヒドロキシ酸アミド 残存していると、このα-ヒドロキシ酸を原 としてポリα-ヒドロキシ酸を製造した場合 着色等の悪影響が生じることを見出した。 して、α-ヒドロキシ酸アミドは、α-ヒドロ シ酸アンモニウム塩水溶液に塩基性金属類 接触させてα-ヒドロキシ酸金属塩を得る工 で加水分解される一方で、条件によっては 該加水分解の逆反応が起こり副生されるこ を見出した。

 さらに、α-ヒドロキシ酸アンモニウム塩 α-ヒドロキシニトリルの加水分解によって る場合、塩基性金属による加水分解工程を っても、α-ヒドロキシニトリルの加水分解 おける副生成物と考えられるα-アミノニト ルやイミノジアルキルニトリル等のニトリ 類、それらの加水分解物であるアミド類、 ルボン酸類などの不純物が残存することが るが、これらの不純物も、α-ヒドロキシ酸 ポリマー原料としての品質に重大な影響を ぼすことを確認した。

 そして、塩基性金属による加水分解反応 十分に進行させれば、上記不純物を十分に 少させ、ポリマー原料として十分な品質を するα-ヒドロキシ酸を製造できること;塩基 性金属類添加による不純物の加水分解反応の 進行の程度は、α-ヒドロキシ酸アミドの残存 量を指標として定量することが最適であるこ と;特に、α-ヒドロキシ酸アンモニウム塩水 液に塩基性金属類を接触させてα-ヒドロキ 酸金属塩を得る工程において、溶液中に残 するα-ヒドロキシ酸アミドを500[重量ppm/α-ヒ ドロキシ酸]以下にすると、ポリマー原料と て十分に高品質なα-ヒドロキシ酸を得られ こと;こうして得られたα-ヒドロキシ酸を原 にすると、α-ヒドロキシ酸オリゴマーを合 する工程と該α-ヒドロキシ酸オリゴマーの 重合で環状二量体エステルを合成する工程 おいて着色することなく高品質の環状二量 エステルを合成できること等を見出し、本 明を完成するに至った。

 即ち、本発明は、
〔1〕α-ヒドロキシ酸アンモニウム塩水溶液 塩基性金属類を接触させてα-ヒドロキシ酸 属塩を製造する工程であって、溶液中に残 するα-ヒドロキシ酸アミドを500[重量ppm/α-ヒ ドロキシ酸]以下にする工程(1)と、前記α-ヒ ロキシ酸金属塩を脱塩してα-ヒドロキシ酸 製造する工程(2)と、を含むα-ヒドロキシ酸 製造方法;
〔2〕前記工程(1)において、溶液中に残存す アンモニア濃度を3[重量%/α-ヒドロキシ酸]以 下にする、上記〔1〕に記載のα-ヒドロキシ の製造方法;
〔3〕前記工程(1)において、発生したアンモ アを気相部に回収する、上記〔1〕または〔2 〕に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法;
〔4〕前記アンモニアを気相部に回収すると の温度を、60℃以上とする、上記〔3〕に記 のα-ヒドロキシ酸の製造方法;
〔5〕前記α-ヒドロキシ酸アンモニウム塩水 液がα-ヒドロキシニトリルの加水分解反応 よって得られたものである、上記〔1〕から 4〕のいずれか1項に記載のα-ヒドロキシ酸 製造方法;
〔6〕前記α-ヒドロキシニトリルの加水分解 、ニトリラーゼ、及び/又はニトリルヒドラ ーゼとアミダーゼの組み合わせによって酵 触媒的に行う、上記〔5〕に記載のα-ヒドロ キシ酸の製造方法;
〔7〕前記α-ヒドロキシニトリルの加水分解 、ニトリラーゼによって行われる、上記〔5 に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法;
〔8〕前記ニトリラーゼが、Acinetobacter属由来 ある、上記〔6〕または〔7〕に記載のα-ヒ ロキシ酸の製造方法;
〔9〕前記ニトリラーゼが、Acinetobacter sp.AK226 由来である、上記〔8〕に記載のα-ヒドロキ 酸の製造方法;
〔10〕前記塩基性金属類が、アルカリ金属類 ベリリウムまたはマグネシウムの水酸化物 酸化物及び炭酸塩からなる群から選択され 一種以上であって、前記工程(2)において、 記α-ヒドロキシ酸金属塩をイオン交換法に って脱塩する、上記〔1〕から〔9〕のいず か1項に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法;
〔11〕前記塩基性金属類が、アルカリ金属類 ベリリウム、またはマグネシウムの水酸化 、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択さ る一種以上であって、且つ、前記工程(2)に いて、前記α-ヒドロキシ酸金属塩を電気透 法によって脱塩する、上記〔1〕から〔9〕 いずれか1項に記載のα-ヒドロキシ酸の製造 法;
〔12〕前記塩基性金属類が、カルシウム、ス ロンチウム、バリウムまたはラジウムの水 化物、酸化物及び炭酸塩からなる群から選 される一種以上であって、前記工程(2)にお て、前記α-ヒドロキシ酸金属塩を、硫酸を 加することによって脱塩する、上記〔1〕か ら〔9〕のいずれか1項に記載のα-ヒドロキシ の製造方法;
〔13〕前記工程(1)の後、固液分離により固体 α-ヒドロキシ酸金属塩を回収、洗浄し、前 工程(2)において、該固体のα-ヒドロキシ酸 属塩又はこれに水を加えたα-ヒドロキシ酸 属塩スラリーに硫酸を添加する、上記〔12 に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法;
〔14〕前記塩基性金属類が、水酸化カルシウ 、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムから る群から選択される一種以上である、上記 12〕又は〔13〕に記載のα-ヒドロキシ酸の製 造方法;
〔15〕前記工程(2)の後、アニオン交換樹脂に って不純物アニオンを除去する工程と、カ オン交換樹脂によって不純物カチオンを除 する工程と、をさらに含む、上記〔1〕から 〔14〕のいずれか1項に記載のα-ヒドロキシ酸 の製造方法;
〔16〕前記不純物カチオンが、副生α-アミノ またはイミノジアルキル酸を含む、上記〔1 5〕に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法;
〔17〕前記α-ヒドロキシ酸が、乳酸またはグ コール酸である、上記〔1〕から〔16〕のい れか1項に記載のα-ヒドロキシ酸の製造方法 ;
〔18〕前記α-ヒドロキシ酸が、グリコール酸 ある、上記〔17〕に記載のα-ヒドロキシ酸 製造方法;
〔19〕上記〔1〕から〔18〕のいずれか1項に記 載の方法で得られたα-ヒドロキシ酸の水溶液 を原料としてα-ヒドロキシ酸オリゴマーを合 成する工程と、前記α-ヒドロキシ酸オリゴマ ーを解重合させてその環状二量体エステルを 得る工程と、を含む、環状二量体エステルの 製造方法;及び
〔20〕上記〔19〕に記載の方法で得られた環 二量体エステルを原料として開環重合反応 ポリα-ヒドロキシ酸を得る工程を含む、ポ α-ヒドロキシ酸の製造方法、に関する。

 本発明に係るα-ヒドロキシ酸の製造方法 よれば、α-ヒドロキシ酸アンモニウム塩水 液に塩基性金属類を接触させてα-ヒドロキ 酸金属塩を製造する工程で、溶液中に残存 るα-ヒドロキシ酸アミドを500[重量ppm/α-ヒ ロキシ酸]以下にすることによって、不純物 十分に低減され、ポリα-ヒドロキシ酸の原 として十分に高品質なα-ヒドロキシ酸を得 ことができる。本発明の方法で得られたα- ドロキシ酸を原料にすると、α-ヒドロキシ オリゴマーを合成する工程とα-ヒドロキシ オリゴマーの解重合で環状二量体エステル 合成する工程において、着色することなく 品質の環状二量体エステルを合成すること できる。

 本発明に係るα-ヒドロキシ酸の製造方法 用いられるα-ヒドロキシ酸アンモニウム塩 、いかなる製法によって得られたものでも わないが、例えば、青酸とアルデヒド類或 はケトン類から合成されたα--ヒドロキシニ トリルを酵素触媒的に加水分解して製造され たものが有用である。

 α-ヒドロキシニトリルの加水分解に使用 る酵素触媒は、ニトリルを加水分解する能 を持っていれば如何なる形態ものでも構わ いが、ニトリラーゼを単独で用いたり、ニ リルヒドラターゼとアミダーゼを組み合わ て用いたり、ニトリラーゼとニトリルヒド ターゼとアミダーゼとを組み合わせて用い ことが好ましい。

 ニトリラーゼ、ニトリルヒドラターゼ、 たはアミダーゼ酵素は、微生物・動植物細 等に由来するものを用いることができるが 重量当たりの酵素発現量や取り扱いの容易 から、微生物菌体に由来するものを使用す ことが好ましい。微生物種としては、多く ものが知られているが、例えばニトリラー 高活性を有するものとして、Rhodococcus属、Ac inetobacter属、Alcaligenes属、Pseudomonas属、Corynebac terium属等が挙げられる。また、ニトリルヒド ラターゼ及びアミダーゼ高活性を有するもの として、Rhodococcus属、Pseudomonas属等が挙げら る。本発明に係るα-ヒドロキシ酸アンモニ ム塩の製造には、特にニトリラーゼ高活性 有するものが好ましく、特にグラム陰性菌 あるAcinetobacter属、Alcaligenes属が好ましく、 に好ましくはAcinetobacter属が好ましい。具体 には、 Acinetobacter sp.AK226 (FERM BP-08590)、Aci netobacter sp.AK227(FERM BP-08591)である。

[寄託された生物材料への言及1]
1)寄託機関の名称及びあて名
 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生 寄託センター
 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6 (郵便番号305-8566)
2)寄託日
 2004年1月7日(原寄託日)
3)受託番号
 FERM BP-08590

 また例えば、天然の或いは人為的に改良 たニトリラーゼ遺伝子を遺伝子工学的手法 よって組み込んだ微生物、あるいはそこか 取り出したニトリラーゼ酵素であっても構 ない。尚、ニトリラーゼの発現量が少ない 生物或いはニトリル化合物からカルボン酸 ンモニウム塩への変換活性の低いニトリラ ゼを発現した微生物を少量用いてα-ヒドロ シ酸アンモニウム塩を製造するには、より くの反応時間を要する。そのため、可能な りニトリラーゼを高発現した微生物や、変 活性の高いニトリラーゼを発現した微生物 或いはそこから取り出したニトリラーゼ酵 を用いることが望ましい。

 酵素触媒の形態としては、微生物・動植 細胞等をそのまま用いてもよく、微生物・ 植物細胞等を破砕等の処理をしたものや、 生物・動植物細胞等から必要なニトリラー 酵素を取り出したものを用いてもよい。こ らの酵素触媒は、そのまま用いてもよく、 般的な包括法、架橋法、担体結合法等で固 化して用いてもよい。尚、固定化する際の 定化担体の例としては、ガラスビーズ、シ カゲル、ポリウレタン、ポリアクリルアミ 、ポリビニルアルコール、カラギーナン、 ルギン酸、光架橋樹脂等が挙げられるが、 れらに限定されるものではない。

 微生物・動植物細胞等をそのまま用いる 合、水(蒸留水及び又はイオン交換水)のみ 懸濁させても構わないが、通常、浸透圧の 係からバッファー液に懸濁させて使用する この場合のバッファーとしてはリン酸バッ ァー等の一般的な無機塩でも構わないが、 純物の混入を極力低減するには、反応生成 であるα-ヒドロキシ酸アンモニウム塩を用 たバッファーが最も好ましい。また、酵素 媒は、固定化する場合にも、通常、浸透圧 関係からバッファー液に懸濁させて使用す 。この時のバッファー液濃度は、反応液中 不純物低減の観点からは低ければ低いほど いが、酵素の安定性、活性の維持という観 からは、通常0.1M未満であり、好ましくは0.01 ~0.08M、より好ましくは0.02~0.06Mである。

 α-ヒドロキシニトリルの加水分解反応は pH6~8で行うことが好ましく、さらに好まし はpH6.5~7である。α-ヒドロキシニトリルは非 に不安定な物質であるため、通常、安定剤 して硫酸、リン酸、有機酸などの酸成分を える。そのため、反応系中のpHを調整する は反応系へのアルカリの添加が必須となる その場合使用するアルカリは、反応に影響 及ぼさなければ特に限定されないが、生成 の一つであるアンモニアを使用するのが望 しい。アンモニアの形態はガスであっても アンモニア水であってもよいが、通常、取 扱いの容易さからアンモニア水が望ましい また、反応温度は、30~60℃が好ましく、さら に好ましくは40~50℃である。反応温度が低す ると反応活性が低くなり、高濃度のα-ヒド キシ酸アンモニウム塩を製造する場合によ 多くの反応時間を要する。一方、反応温度 高すぎると酵素が熱劣化し、目的とするα- ドロキシ酸アンモニウム塩の濃度が高い場 、該濃度まで到達させることが困難となり 結果として新たな酵素の追添等の処置が必 となり触媒コストが高くなる。また、温度 高すぎると、基質α-ヒドロキシニトリルの 酸とアルデヒド類或いはケトン類への分解 進にも繋がり、それらによる反応阻害や失 等、ますますの反応活性低下を引き起こす

 α-ヒドロキシニトリルの加水分解反応は 固定床、移動層、流動層、撹拌槽等いずれ 行ってもよく、また連続反応でも半回分反 でもよいが、固定化されていない微生物菌 を用いる場合、反応の容易性から攪拌槽を いた半回分反応が好ましい。その場合、反 効率の観点から、適切な攪拌を行うことが ましい。半回分反応を行う場合、酵素触媒 1バッチ使い捨てでもよいし、繰り返し反応 を行ってもよい。繰り返し反応を行う場合、 酵素触媒をα-ヒドロキシ酸アンモニウム高濃 度から低濃度へ急激に変化させるため、浸透 圧の影響等で比活性が低下する場合があるの で注意を要する。

 反応基質であるα-ヒドロキシニトリルの 常濃度については、2重量%以下が好ましく より好ましくは0.1~1.5重量%、更に好ましくは 0.1~1.0重量%、最も好ましくは0.2~0.5重量%にコ トロールする。α-ヒドロキシニトリルの濃 が高すぎると、生成物であるグリコール酸 ンモニウム塩から遊離したアンモニアとの で起こる副反応が顕著となり、高生成物蓄 濃度で初めて顕著となる基質阻害や酵素失 の影響が急激に大きくなり、それまで進行 ていた反応が停止してしまう場合がある。 た、α-ヒドロキシニトリルの濃度が低すぎ と反応速度を低下させることとなり、効率 にα-ヒドロキシ酸アンモニウム塩を製造で ないので不利である。以上の理由から、反 中のα-ヒドロキシニトリル定常濃度を管理 ることは非常に重要である。

 製造されるα-ヒドロキシ酸アンモニウム に対する使用乾燥酵素触媒重量は1/100以下 よく、好ましくは1/100~1/500、より好ましくは 1/200~1/500、更に好ましくは1/300~1/500である。 造されるα-ヒドロキシ酸アンモニウム塩に する使用乾燥酵素触媒重量が多すぎると酵 触媒懸濁液由来の不純物が反応液中に多く 伴されるため精製コストが上がり、製品品 が低下するので好ましくない。逆に、製造 れるα-ヒドロキシ酸アンモニウム塩に対す 使用乾燥酵素触媒重量が少なすぎるとリア ターボリューム当たりの生産性が低下し、 きなリアクターサイズが必要となり経済的 不利となる。

 以上のような方法で得られたα-ヒドロキ ニトリルの加水分解反応物から、菌体或い その処理物を濾過、遠心分離、MF処理等の 法で除去し、α-ヒドロキシ酸アンモニウム 水溶液を得る。更に、着色物質及び/又は着 原因物質を除去する目的で適時活性炭処理 行っても良い。使用する活性炭としては、 般的な椰子殻活性炭、合成活性炭が挙げら るが、これらに限定されない。活性炭使用 は、着色物質及び/又は着色原因物質を目的 スペックまで低減できる量であればよい。

 α-ヒドロキシ酸アンモニウム塩としては グリコール酸、乳酸、マンデル酸、α-ヒド キシ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、α-ヒド キシ-4-メチルチオ酪酸、α-ヒドロキシ-2-メ ルプロピオン酸、α-ヒドロキシ-2-フェニル ロピオン酸、α,β-ジヒドロキシ-3,3-ジメチ 酪酸、α-ヒドロキシ-3-ブテン酸、α-ヒドロ シ-3-メチル-3-ブテン酸、2-ピリジニル-α-ヒ ロキシ酢酸等のアンモニウム塩を具体的に げることができる。

 次に、α-ヒドロキシ酸アンモニウム塩水 液に塩基性金属塩を添加して、α-ヒドロキ 酸金属塩を製造する工程(1)について説明す 。

 本発明で用いる塩基性金属類は、アンモ アよりも塩基性の強い金属であって、α-ヒ ロキシ酸アンモニウム塩水溶液と接触させ ときに、効率よく、好ましくない副生成物 生じることなくα-ヒドロキシ酸金属塩が得 れ、また加熱処理によりアンモニアを気相 に除くことができるものであれば如何なる のでも構わないが、例えば、酸化リチウム 水酸化リチウム、炭酸リチウム、酸化ナト ウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム 酸化カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリ ム、酸化ルビジウム、水酸化ルビジウム、 酸ルビジウム、酸化セシウム、水酸化セシ ム、炭酸セシウム、酸化フランシウム、水 化フランシウム、炭酸フランシウム、酸化 リリウム、水酸化ベリリウム、炭酸ベリリ ム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウ 、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、水 化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化スト ンチウム、水酸化ストロンチウム、炭酸ス ロンチウム、酸化バリウム、水酸化バリウ 、炭酸バリウム、酸化ラジウム、水酸化ラ ウム、炭酸ラジウム等を具体的に挙げるこ ができる。

 上記α-ヒドロキシ酸アンモニウム塩水溶 に対し、塩基性金属類を固体のまま、また 水溶液として、または水と混ぜたスラリー 態で混合することができる。取り扱いの容 さから、室温における該塩基性金属類の水 対する溶解度が十分高い場合は水溶液とし 使用するのが望ましく、溶解度が低い場合 スラリー状態で使用するのが望ましい。ス リー状態で使用する場合は、その流動性か 、或いは攪拌しながら均一な状態で扱える とから、固形分重量濃度を10~50重量%にする とが好ましく、より好ましくは20~40重量%、 に好ましくは25~35重量%である。

 塩基性金属類の添加量はα-ヒドロキシ酸 ンモニウム塩に対して0.8~1.5当量の範囲から 任意に選択され、好ましくは1.0~1.2当量の範 である。本発明においては製品品質上、生 するアンモニアを出来る限り除くことが望 れるが、アンモニアの水に対する溶解度が いため、アンモニアを除くための工夫が必 となる。その場合、反応液のpHをアルカリ領 域に持っていった方がアンモニアの溶解度が 下がるため、塩基性金属類の添加量をα-ヒド ロキシ酸アンモニウムと当量よりも多く使用 したほうがよい。しかしながら、塩基性金属 類を過剰に添加すると、得られるα-ヒドロキ シ酸金属塩中の不純物が多くなる。これらの 観点から塩基性金属類の添加量の適正値は決 まってくる。

 尚、工程(1)に用いるα-ヒドロキシ酸アン ニウム塩水溶液の濃度は特に限定されない 、後述するとおり、工程(2)において、イオ 交換法または電気透析法で脱塩する場合は 工程(1)で得られるα-ヒドロキシ酸金属塩が 出せず完全に溶解している必要がある。そ ため、α-ヒドロキシ酸アンモニウム塩水溶 の濃度をα-ヒドロキシ金属塩が析出しない 度に予め低めにしておくことも好ましい。

 その他にも、アンモニアの溶解度を下げ ためには、反応液の温度を上げることも有 である。一方、開放系において反応液の温 を上げていくと、やがて水の蒸発も起こり 蒸発する水に同伴されてアンモニアも抜け すくなる。

 本発明で言うアンモニアを気相部に回収 るときの温度とは、α-ヒドロキシ酸アンモ ウム塩に塩基性金属類を添加する時、ある は添加した後の反応液の温度を意味するが 以上より、当該温度は60℃を超え約100℃ま の範囲、好ましくは約70~約100℃、より好ま くは約80~約100℃である。この範囲であれば 水と共にアンモニアを気相部に回収するこ ができる。また、アンモニア除去及びα-ヒ ロキシ酸アミドの低減に掛かる時間の短縮 の観点からは、100℃程度が望ましい。

 また、工程(1)は、大気圧で行うこともで るし、減圧条件下で行うこともできる。減 条件下で行う場合は、各設定減圧度におけ 水の沸騰温度で行うことが望ましい。また 工程(1)では、液中に窒素やヘリウムガス等 不活性ガスを導入することでアンモニアを 相部に抜けやすくすることができる。この うにして、品質上問題の無い程度までアン ニアが除去されたα-ヒドロキシ酸金属塩の 溶液或いはスラリーを得ることができる。

 工程(1)では、α-ヒドロキシ酸アンモニウ 塩からの熱分解によって副生するα-ヒドロ シ酸アミド(α-ヒドロキシ酸アミド加水分解 の逆反応であり両者は平衡反応である)或い 、前工程(α-ヒドロキシニトリル加水分解反 )の不純物として含まれるα-ヒドロキシ酸ア ミドを加水分解し、α-ヒドロキシ酸アンモニ ウム塩を経由してα-ヒドロキシ酸金属塩と遊 離アンモニアに変換できる。工程(1)でα-ヒド ロキシ酸アミドを十分に除去できない場合、 後工程のオリゴマー化工程まで該α-ヒドロキ シ酸アミドが残存し、オリゴマー化工程での 熱分解によって、再び逆反応によってアンモ ニアが生成し、着色の原因となり大きな問題 を引き起こす。

 また、工程(1)では、原料として用いるα- ドロキシ酸アンモニウム塩がα-ヒドロキシ トリルの加水分解反応で得られたものであ 場合、該加水分解の副生成物として含まれ α-アミノニトリルやイミノジアルキルニト ル等のニトリル類、それらの加水分解物で るアミド類、カルボン酸類等を、塩基性金 類による加水分解でカルボン酸へと変換で る。これらのニトリル類、アミド類、カル ン酸類もα-ヒドロキシ酸のポリマー原料と ての品質を低下させる。

 しかしながら、工程(1)において、溶液中 残存α-ヒドロキシ酸アミド濃度が500[重量ppm /α-ヒドロキシ酸]以下になるまで加水分解反 を行うことにより、α-ヒドロキシ酸アミド 含むアミド類のほか、ニトリル類、カルボ 酸類といった不純物を十分に分解させるこ ができる。溶液中の残存α-ヒドロキシ酸ア ド濃度は、200[重量ppm/α-ヒドロキシ酸]以下 することが好ましく、100[重量ppm/α-ヒドロ シ酸]以下とすることがさらに好ましく、1[ 量ppm/α-ヒドロキシ酸]以下とすることが最も 好ましい。

 溶液中のα-ヒドロキシ酸アミド濃度[重量 ppm/α-ヒドロキシ酸]は、当業者であれば公知 方法に従って測定することができるが、例 ば、液体クロマトグラフィーによってα-ヒ ロキシ酸アミド濃度とα-ヒドロキシ酸濃度 測定し、前者を後者で除すことによって求 ることができる。

 また、本発明では、塩基性金属類による 水分解反応の進行の指標として、溶液中に 存するアンモニア濃度を測定することも好 しい。十分に高品質なα-ヒドロキシ酸を得 ためには、工程(1)において溶液中の残存ア モニア濃度を3[重量%/α-ヒドロキシ酸]以下 することが好ましく、さらに好ましくは1[重 量%/α-ヒドロキシ酸]以下、より好ましくは0.1 [重量%/α-ヒドロキシ酸]以下である。 次に、 工程(1)で得られたα-ヒドロキシ酸アンモニウ ム塩を脱塩してα-ヒドロキシ酸を得る工程(2) について説明する。工程(2)におけるα-ヒドロ キシ酸金属塩の脱塩方法は特に限定されるこ とは・BR>ネく、如何なる方法であっても構 わないが、好ましくは、得られるα-ヒドロキ シ酸金属塩の状態によって、(I)イオン交換法 、(II)電気透析法、(III)固液分離法の中から選 ばれる。

 使用する塩基性金属類がベリリウム、マ ネシウムおよびアルカリ金属類の中から選 される一種以上の金属の水酸化物、酸化物 び炭酸塩からなる群から選択される一種以 である場合、脱塩方法としては、(i)イオン 換法或いは(ii)電気透析法が選択される。こ の場合の塩基性金属類としては、例えば、酸 化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム 、酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸 ナトリウム、酸化カリウム、水酸化カリウム 、炭酸カリウム、酸化ルビジウム、水酸化ル ビジウム、炭酸ルビジウム、酸化セシウム、 水酸化セシウム、炭酸セシウム、酸化フラン シウム、水酸化フランシウム、炭酸フランシ ウム、酸化ベリリウム、水酸化ベリリウム、 炭酸ベリリウム、酸化マグネシウム、水酸化 マグネシウム、炭酸マグネシウム等が具体的 には挙げることができるが、水酸化ナトリウ ムや水酸化カリウムが好ましい。

 なお、(i)イオン交換法及び(ii)電気透析法 によって脱塩する場合には、α-ヒドロキシ酸 金属塩が水溶液であることが必須である。工 程(1)において固体が析出する場合は、完全に 溶解するまで水を加えて希釈する必要がある 。

 α-ヒドロキシ酸金属塩水溶液をイオン交 法によって脱塩する方法は大きく分けて2つ ある。一つはカチオン交換樹脂を用いる方法 であり、もう一つはアニオン交換樹脂を用い る方法である。カチオン交換樹脂を用いる方 法の場合、使用する樹脂は強酸性カチオン交 換樹脂であっても、弱酸性カチオン交換樹脂 であっても構わないが、強酸性カチオン交換 樹脂が好ましい。具体的には、例えば、ダイ ヤイオンSK1B、同SK104、同SK110、同SK112、同SK116 、同PK208、同PK212、同PK216、同PK220、同PK228、 UBK530、同UBK550、同UBK535、同UBK555(以上三菱化 社製)、レバチットS100、同S109、同、SP112、 STV40、同MSD1368(以上バイエル社製)、アンバー ライトIR120B、同120BN、同IR124、同1006F、同200CT 同252(以上オルガノ社製)、ダウエックス モ ノスフィア650C、同マラソンC、同HCR-S、同マ ソンMSC(以上ダウケミカル・カンパニー社製) 等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定さ れるものではない。これらのカチオン交換樹 脂は、通常の方法で、予めプロトン(H+)型に 生処理してから使用する。

 本発明におけるカチオン交換樹脂の使用 法としては、通常の方法が採用される。即 、α-ヒドロキシ酸金属塩水溶液に所定量の チオン交換樹脂を添加するバッチ式でもよ し、或いは、カチオン交換樹脂を樹脂塔に 填して、α-ヒドロキシ酸金属塩水溶液を通 するカラム法を採用することもできる。バ チ式の場合、金属カチオンがカチオン交換 脂への平衡吸着に達するのに十分な時間の 拌を行った後、上澄みを回収すればα-ヒド キシ酸水溶液を得ることができる。また、 ラム法の場合は、カラム下部より金属カチ ンの漏れ出しが起こるまでの樹脂通過液が α-ヒドロキシ酸水溶液となる。

 カチオン交換樹脂の使用量としては、樹脂 総交換容量が金属カチオンと当量以上に相 する量が必須であり、更に確実に金属カチ ンを除去するためには、通常1.2倍当量以上 樹脂を使用するのがよい。また、カラム法 場合、樹脂の破過、樹脂の再生を行うまで 時間を長くとるために、より過剰の樹脂を 用することは通常行われることである。

 樹脂処理時の温度は常温でもよいが、必要 あれば樹脂の耐熱性が保証される範囲で加 しても構わない。通常は70℃以下で行われ 。また、カラム法の場合、通液速度は空間 度(L/L-樹脂/Hr)で1~20の範囲、好ましくは2~10の 範囲がよい。

 カラム法の場合、樹脂通過液に金属カチオ がスペック以上に混入することが確認され 点を破過点とし、そこから通常の洗浄、再 操作(例えば希塩酸、希硫酸等の鉱酸による 再生)を行えば、樹脂は繰り返し使用が可能 ある。

 また、アニオン交換樹脂を用いる方法の 合、使用する樹脂は強塩基性アニオン交換 脂であっても、中塩基性アニオン交換樹脂 あっても、弱塩基性アニオン交換樹脂であ ても構わないが、好ましくは弱塩基性或い 中塩基性アニオン交換樹脂がよい。具体的 は、例えば、アンバーライトIRA-93(オルガノ 社製)、ダイヤイオンWA20、同WA30(以上三菱化 社製)、レバチットMP64(バイエル社製)等が挙 られる。

 本発明におけるアニオン交換樹脂の使用方 としては、通常の方法が採用される。即ち 上記α-ヒドロキシ酸金属塩水溶液に所定量 アニオン交換樹脂を添加するバッチ式でも いし、或いはまた、アニオン交換樹脂を樹 塔に充填して、α-ヒドロキシ酸金属塩水溶 を通液するカラム法を採用することもでき 。バッチ式の場合は、α-ヒドロキシ酸アニ ンが該アニオン交換樹脂への平衡吸着に達 るのに十分な時間の撹拌を行った後、該樹 を回収・洗浄した後、鉱酸(塩酸、硫酸、硝 酸等)で処理すればα-ヒドロキシ酸水溶液を ることができる。また、カラム法の場合は カラム下部よりα-ヒドロキシ酸アニオンの れ出しが起こった後、更に十分量のα-ヒド キシ金属塩水溶液を通液し、出口液が入口 と同組成になるまで通液を継続することで 最大量のα-ヒドロキシ酸アニオンを樹脂に 着させる。その後、十分な洗浄を行った後 鉱酸(塩酸、硫酸、硝酸等)を通液することで α-ヒドロキシ酸アニオンを脱着させα-ヒドロ キシ酸水溶液を得ることができる。

 樹脂処理時の温度は常温でもよいが、必要 あれば樹脂の耐熱性が保証される範囲で加 しても構わない。通常は70℃以下で行われ 。また、カラム法の場合、通液速度は空間 度(L/L-樹脂/Hr)で1~20の範囲、好ましくは2~10の 範囲がよい。

 カラム法の場合、鉱酸によるα-ヒドロキ 酸アニオンの脱着操作時の樹脂通過液に鉱 アニオンがスペック以上に混入することが 認される点を破過点とし、更に出口液が入 液と同組成になるまで通液を継続した後、 こから通常の洗浄、再生操作 (例えば水酸 ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液 の強アルカリ水溶液による再生)を行えば、 樹脂は繰り返し使用が可能である。

 次に、得られたα-ヒドロキシ酸金属塩水 液を電気透析法によって脱塩する方法は大 く分けて3つある。一つはバイポーラ膜と陽 イオン交換膜とを交互に配列し、酸室と塩基 室を形成させた二室式水分解電気透析装置を 用いてα-ヒドロキシ金属塩水溶液中の金属カ チオンに陽イオン交換膜中を移動させる方法 である。もう一つはバイポーラ膜と陰イオン 交換膜とを交互に配列し、酸室と塩基室を形 成させた二室式水分解電気透析装置を用いて α-ヒドロキシ金属塩水溶液中のα-ヒドロキシ 酸アニオンに陰イオン交換膜中を移動させる 方法である。更にもう一つはバイポーラ膜と 陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを順番に 配列し、原料室と酸室と塩基室を形成させた 三室式水分解電気透析装置を用いて、α-ヒド ロキシ酸金属塩水溶液中の金属カチオンに陽 イオン交換膜中を、α-ヒドロキシ酸アニオン に陰イオン交換膜中を移動させる方法である 。これらのどの方法でも構わないが、得られ るα-ヒドロキシ酸水溶液の品質と電気効率の 観点から、バイポーラ膜と陽イオン交換膜と を交互に配列し、酸室と塩基室を形成させた 二室式水分解電気透析装置を用いて、α-ヒド ロキシ金属塩水溶液中の金属カチオンに陽イ オン交換膜中を移動させる方法が好ましい。

 本発明におけるバイポーラ膜としては、 来公知のバイポーラ膜、すなわち陽イオン 換膜と陰イオン交換膜とを貼り合わせた構 を有するバイポーラ膜を使用できる。具体 には、例えば、ネオセプタBP-1(株式会社ア トム製)を挙げることができる。陽イオン交 膜としてはネオセプタCMB(株式会社アストム 製)、陰イオン交換膜としてはネオセプタAHA( 式会社アストム製)を挙げることができる。

 本発明における電気透析工程の一例とし バイポーラ膜と陽イオン交換膜からなる二 法について説明する。本法においては、α- ドロキシ酸水溶液を酸室より回収し、塩基 金属水溶液を塩基室より回収する。

 図1に、本法において使用される水分解電 気透析装置の代表的な様態の概略図を示す。 図1において、水分解電気透析装置は、陽電 1および陰電極2の間に、膜としてバイポーラ 膜(B)3、陽イオン交換膜(C)4の2種類が交互に配 列され、酸室7および塩基室8の二室が形成さ ている。バイポーラ膜(B)3と陽電極1との空 5、およびバイポーラ膜(B)3と陰電極2の空隙6 は電極液が満たされている。ここで、バイ ーラ膜(B)3の陰イオン交換体側と陽イオン交 換膜(C)4の間の室が塩基室8、バイポーラ膜(B)3 の陽イオン交換体側と陽イオン交換膜(C)4の の室が酸室7となる。

 本発明において、上記公知の水分解電気 析装置を使用した水分解電気透析工程は、 室7、塩基室8のそれぞれの室に供給する液 外部タンクを設けて、それぞれの室と外部 ンクとの間で液を循環させながら電気透析 行う方法が好ましく用いられる。

 原料であるα-ヒドロキシ酸金属塩水溶液 酸室7に供給し、通電を行うことで金属カチ オンは、陽イオン交換膜(C)4を通過して塩基 8に移動し、このときバイポーラ膜(B)3から生 成したOH-イオンと結合して塩基性金属水溶液 となる。また、酸室7ではバイポーラ膜から 成したプロトンとα-ヒドロキシ酸アニオン 結合して非解離性のα-ヒドロキシ酸となり そのまま酸室7に留まり回収することができ 。水分解電気透析時の温度は、通常5~70℃、 好ましくは20~50℃で行われる。尚、分離した 基性金属塩水溶液は、濃縮してまたはしな で、前工程のα-ヒドロキシ酸アンモニウム 水溶液のアルカリ処理に利用できる。

 一方、α-ヒドロキシ酸アンモニウム塩の 水分解に使用する塩基性金属類がカルシウ 、ストロンチウム、バリウムおよびラジウ からなる群から選択される一種以上の水酸 物、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択 れる一種以上である場合、脱塩方法として 、固液分離法が選択される。この場合の塩 性金属類としては、例えば、酸化カルシウ 、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸 ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、 酸ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化 リウム、炭酸バリウム、酸化ラジウム、水 化ラジウム、炭酸ラジウム等を挙げること できるが、水酸化カルシウムや酸化カルシ ムが好ましい。

 この場合、得られるα-ヒドロキシ酸金属 はスラリーであり、このα-ヒドロキシ酸金 塩スラリーに直接硫酸を添加して、α-ヒド キシ酸水溶液と硫酸金属塩を生成すること できるし、一旦、α-ヒドロキシ酸金属塩を 心分離等の方法で固液分離した後、水或い α-ヒドロキシ酸金属塩飽和水溶液を用いて α-ヒドロキシ酸金属塩結晶を洗浄し、不純 の除去を行った上で硫酸を添加することも きる。洗浄することによって、製品への混 が懸念される様々な不純物を低減すること でき、α-ヒドロキシ酸の品質を向上させる とができる。

 本工程に使用する硫酸の濃度は任意の範 でよいが、最終的に得られるα-ヒドロキシ 水溶液の濃度を低くしないという観点から5 0重量%以上がよい。また、硫酸が接液する部 の腐食を防止するという観点から、希硫酸 りも濃硫酸の方が望ましく、一般的に市販 れている濃硫酸の濃度である95~98重量%程度 望ましい。

 また、硫酸を添加する時の温度は任意の 度とすることができるが、通常、α-ヒドロ シ酸金属塩スラリーの流動状態がよく、α- ドロキシ酸金属塩と硫酸との反応を効率よ 行う温度を下限とし、また該反応による反 熱によって突沸現象がおこらない温度を上 と考えると、50~80℃程度が望ましい。また 硫酸の添加量はα-ヒドロキシ酸金属塩に対 0.8~1.2当量の範囲から任意に選択され、好ま くは0.9~1.1当量で、限りなく1当量に近いほ 好ましい。

 硫酸を添加すると、硫酸金属塩のα-ヒド キシ酸水溶液への溶解度が低いことから、 体の硫酸金属塩とα-ヒドロキシ酸水溶液が られる。本工程で得られる硫酸金属塩には 々な水和物の形態が考えられるが、如何な 形態の結晶であってもよい。

 このようにして得られたα-ヒドロキシ酸 溶液と硫酸金属塩の混合物から、遠心分離 の固液分離を行うことでα-ヒドロキシ酸水 液を得ることができる。α-ヒドロキシ酸の 部は硫酸金属塩結晶中に付着水の形で存在 るが、硫酸金属塩結晶を洗浄することによ て、このα-ヒドロキシ酸を回収することが きる。硫酸金属塩の洗浄には通常、水を用 る。洗浄水の温度は特に限定されないが、 常は常温で行えばよい。但し、結晶中にα- ドロキシ酸金属塩が存在する場合は、得ら る硫酸金属塩結晶の品質向上の観点から温 を用いる方がよい。硫酸金属塩の水への溶 度に対する温度依存性がほとんどないのに し、α-ヒドロキシ酸金属塩の水への溶解度 対する温度依存性が高いので、温水による 晶洗浄で、選択的にα-ヒドロキシ酸金属塩 洗浄除去することが可能となる。この場合 温水の温度は50~100℃がよく、好ましくは50~8 0℃がよい。

 洗浄方法は、遠心分離機中でのノズル洗 や、スラリーの向流接触洗浄等が挙げられ 。得られるα-ヒドロキシ酸水溶液濃度を低 させないためには、より少ない洗浄水量で 率よく洗浄するのがよい。

 本発明に係るα-ヒドロキシ酸の製造方法 よれば、α-ヒドロキシ酸は水溶液として得 ことができるが、当該α-ヒドロキシ酸水溶 中には様々な不純物が含まれる。例えば、 塩方法がイオン交換の場合、カチオン交換 は一部漏出した金属カチオン、アンモニウ カチオンや全く吸着されないアニオン成分 が不純物として含まれ、また、アニオン交 では洗浄しきれていない金属カチオン、ア モニウムカチオンやα-ヒドロキシ酸と同様 挙動を示すアニオン成分等が不純物として まれる。

 一方、脱塩方法が電気透析の場合、脱塩 100%を達成することは困難で、一部金属カチ オン、アンモニウムカチオンが混入し、α-ヒ ドロキシ酸と同様の挙動を示すアニオン成分 等が不純物として含まれる。

 また、脱塩方法が固液分離法の場合、硫酸 属塩の溶解度分の金属カチオンと硫酸アニ ン、前工程で使用した塩基性金属類由来の その他金属カチオン、脱NH 3 工程での残存アンモニウムカチオン、酵素反 応副生成物であるアミノ酸類、菌体由来の培 地成分である微量成分、或いは硫酸アニオン が不純物として含まれる。

 得られるα-ヒドロキシ酸水溶液中に金属 チオン類や不純物アニオン成分が多く含ま る場合、次工程における環状二量体エステ 合成反応を回分反応の繰り返し反応で行う 合、これらカチオン類やアニオン類が蓄積 れることによる影響を避けるため適度な濃 に低減する必要がある。また、アンモニウ カチオンやアミノ酸類は着色の原因となり 製品ポリマーの物性に悪影響を与えるため 出来る限り低減することが望ましい。

 溶液中の金属カチオン類、アンモニウム チオン等のカチオン性不純物は一般的なカ オン交換法の操作によって精製・除去する とができる。また、中性のアミノ酸類であ ても、高濃度のグリコール酸水溶液中では 衡状態がカチオン性のものに偏っており、 じくカチオン交換によって精製・除去する とが可能である。また、硫酸アニオンのよ なアニオン性不純物も、一般的なアニオン 換法の操作によって精製・除去することが 能である。

 本発明はまた、上述した本発明に係るα- ドロキシ酸の製造方法によって得られたα- ドロキシ酸の水溶液を原料としてα-ヒドロ シ酸オリゴマーを合成する工程と、α-ヒド キシ酸オリゴマーを解重合させて環状二量 エステルを得る工程と、を含む環状二量体 ステルの製造法も含む。さらに、該環状二 体エステルを開環重合してポリα-ヒドロキ 酸を得る工程を含むポリα-ヒドロキシ酸の 造方法をも含む。本発明の方法で得られた -ヒドロキシ酸を原料として用いれば、着色 生じることなく、高品質の環状二量体エス ルを得ることができる。

 以下、α-ヒドロキシ酸の例として、グリ ール酸の場合を取り上げ、ポリマー合成ま の製造方法を説明するが、α-ヒドロキシ酸 グリコール酸に限定されるものではない。

 グリコール酸オリゴマーを合成する工程 は、原料グリコール酸を必要に応じて脱水 合触媒の存在下に、減圧もしくは加圧下、 常100~250℃、好ましくは140~230℃の温度に加 し、水の留出が実質的に無くなるまで縮合 応を行う。縮合反応終了後、生成したグリ ール酸オリゴマーは、そのまま次工程の原 として使用することができる。また、得ら たグリコール酸オリゴマーを反応系から取 出して、ベンゼンやトルエンなどの非水溶 で洗浄して、未反応物や低重合物または触 などを除去してから使用することもできる グリコール酸オリゴマーは、環状でも直鎖 でもよい。重合度は、特に限定されないが 解重合反応を行う際の、グリコリド収率の から、融点(Tm)が通常140℃以上、好ましくは1 60℃以上、より好ましくは180℃以上のもので ることが望ましい。ここで、Tmは示差走査 量計(DSC)を用いて、不活性ガス雰囲気下、10 /分の速度で昇温して検出されるグリコール 酸オリゴマーの融点である。

 グリコール酸オリゴマーを解重合させて リコリドを得る工程では、解重合方法は、 に限定されず、一般的な溶融解重合法や固 解重合法などを採用することができる。そ 場合の解重合反応系は、採用する解重合法 対応して、実質的にグリコール酸オリゴマ のみからなる系と、グリコール酸オリゴマ と極性有機溶媒とを含有する系の二つに大 される。

 実質的にグリコール酸オリゴマーのみか なる解重合反応系を常圧下または減圧下に いて加熱すると、解重合反応により生成し グリコリドが昇華または蒸発する。よって 不活性ガスを吹き込む等の方法により、該 リコリドを解重合反応系外に排出すること よりグリコリドを得ることができる。

 また、グリコール酸オリゴマーと極性有 溶媒とを含有する混合物からなる解重合反 系を加熱すると、解重合反応により生成し グリコリドが極性有機溶媒と共留出する。 出物からグリコリドを晶析等の方法により 離して、グリコリドを回収することができ 。この場合も、常圧下または減圧下に解重 反応系を加熱して解重合反応を行う。

解重合法としては、原料として使用するグリ コール酸オリゴマーの重質物化防止やグリコ リドの生成効率の観点から、グリコール酸オ リゴマーを溶液相の状態で解重合させる溶液 解重合法が好ましい。

さらに、本発明で得られたグリコリドは、開 環重合法によりポリグリコール酸にすること ができる。開環重合は、触媒の存在下、通常 100℃以上の温度で行われるが、好ましくは160 ~180℃程度がよい。触媒としては、各種環状 ステルの開環重合触媒として使用されてい ものであればよく、特に限定されないが、 体的な例としては、例えば、スズ(Sn)、チタ (Ti)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ジ コニウム(Zr)、亜鉛(Zn)など金属化合物の酸 物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコ シドなどが挙げられる。触媒の使用量は、 般的に、環状エステルに対して少量でよく 環状エステルを基準として、通常0.0001~0.5重 %、好ましくは0.001~0.1重量%の範囲内であれ よい。

 以下実施例の中で、α-ヒドロキシ酸とし グリコール酸および乳酸を例に挙げて、よ 具体的に本発明内容を説明するが、必ずし これらに限定されるものではない。

<乾燥菌体触媒重量測定法>
 菌体懸濁液中の乾燥菌体触媒重量の測定は 以下のごとく実施した。まず、適当な濃度 菌体触媒懸濁液を適量取り、-80℃まで冷却 た後、凍結乾燥機を用いて完全に乾燥し、 の重量値から前記菌体触媒懸濁液の濃度を 出した。既知濃度となった菌体触媒懸濁液 適当な複数の濃度に希釈し、分光光度計を いて室温において透過光度(600nm)を測定し、 該分光光度計での該菌体触媒の検量線を作成 した。以後、該分光光度計の指示値から任意 の該菌体触媒懸濁液の乾燥菌体触媒濃度を算 出した。

<反応液分析法>
 反応液及び処理液の分析は、以下のごとく 施した。基質であるグリコロニトリル及び 成物であるグリコール酸(アンモニウム)と 酸(アンモニウム)及び副生成物であるグリコ ロアミドと乳酸アミドは、高速液体クロマト グラフィーで測定した。カラムはイオン排除 カラム(島津Shim-pack SCR-101H)、カラム温度は40 、移動相はリン酸水溶液(pH=2.3)、流速は0.7cc /min、検出器はUV(島津SPD-10AV vp、210nm)及びRI( 津RID-6A)で実施した。

その他副生成物である、グリシン、イミノジ 酢酸、アラニン、イミノジイソプロピオン酸 については、イオンペアー剤を用いたイオン ペアークロマトシステム(日立D-7000)で測定し 。カラムはODS-80TS(東ソー)、カラム温度は40 、移動相は50mMリン酸水溶液+10mMペンタスル ン酸ナトリウム溶液、流速は0.5cc/min、検出 はRI(島津RID-6A)、注入量は10μLで実施した。

 また、反応液及び処理液中のナトリウム オン、カルシウムイオン及びアンモニウム オンの分析はイオンクロマトグラフィーで 施した。カラムはカチオン交換カラム(東ソ ー Tsk gel IC-Cation )、カラム温度は40℃、移 相は2mM硝酸水溶液、流速は0.5cc/min、検出器 電導度計(東ソーCM-8020)で実施した。

 さらに、反応液及び処理液中の硫酸イオ の分析はイオンクロマトグラフィーで実施 た。カラムはアニオン交換カラム(東ソー T sk gel IC-AnionSW )、カラム温度は40℃、移動相 はアニオン分析用溶離液(東ソー製)、流速は1 .2cc/min、検出器は電導度計(東ソーCM-8020)で実 した。

 合成グリコリド及びラクチドの分析は、 スクロマトグラフィーで実施した。検出器 FID、カラムは中極性キャピラリーカラム(J&a mp;W SCIENTIFIC製 DB-1701、長さ:60m、内径:0.25mm、 膜厚:1μm)、キャリアー:ヘリウム(300kPa)、イン ジェクション温度:200℃、検出器温度:200℃、 作温度:100℃×5分、20℃/分、270℃×10分で行 た。

<酵素触媒の調製>
 塩化ナトリウム0.1重量%、リン酸二水素カリ ウム0.1重量%、硫酸マグネシウム七水和物0.05 量%、硫酸第一鉄七水和物0.005重量%、硫酸ア ンモニウム0.1重量%、硝酸カリウム0.1重量%硫 マンガン五水和物0.005重量%を含む培養液250m lを三角フラスコに仕込み、pH7になるように 酸化ナトリウムで調整し、121℃で20分間滅菌 した後、アセトニトリル0.5重量%を添加した これにAcinetobacter sp.AK226を接種して30℃で振 う培養した(前培養)。ミーストパウダー0.3 量%、グルタミン酸ナトリウム0.5重量%、硫酸 アンモニウム0.5重量%、リン酸水素二カリウ 0.2重量%、リン酸ニ水素カリウム0.15重量%、 化ナトリウム0.1重量%、硫酸マグネシウム七 和物0.18重量%、塩化マンガン4水和物0.02重量 %、塩化カルシウム二水和物0.01重量%、硫酸鉄 7水和物0.003重量%、硫酸亜鉛7水和物0.002重量% 硫酸銅5水和物0.002重量%、大豆油2重量%を含 培養液3Lを5Lジャーファーメンターに仕込み 、121℃で20分間滅菌した後、前記の前培養液 接種して30℃で通気攪拌を行った。培養開 10時間後から大豆油のフィードを開始した。 pH7になるようにリン酸及びアンモニア水でコ ントロールし、最終的に約5重量%のAcinetobacter  sp.AK226懸濁液を得た。更に0.06Mリン酸バッフ ァーを用いて2回洗浄を行い、最終的にリン バッファーに懸濁されたAcinetobacter sp.AK226懸 濁液(乾燥菌体濃度5重量%)を得た。

<グリコール酸アンモニウム塩水溶液の調 >
 前記のように得られたAcinetobacter sp.AK226懸 液(5.1重量%)1.8gと蒸留水225gを1L四ツ口フラス に仕込み懸濁させた。該フラスコにpH計と 度計を設置し反応液のpHと温度をモニタリン グできるようにして、50℃恒温水槽に入れて ターラー攪拌を実施し、内温が50℃になる でしばらく保持した。次に原料の55重量%グ コロニトリル水溶液(東京化成製)を、液体ク ロマトグラフィー用ポンプを用いて0.33g/minで フィードした。原料グリコロニトリル中に安 定剤として含まれる硫酸を中和するため、チ ューブポンプで1.5重量%アンモニア水をフィ ドした。尚、アンモニア水フィードポンプ pH計による制御で内液pHが6.9±0.1になるよう セットした。反応中は定期的にサンプリン を行い、高速液体クロマトグラフィーでグ コロニトリルとグリコール酸アンモニウム 度を測定し、定常グリコロニトリル濃度が2 量%以下になるように原料の添加量を調節し た。最終的なグリコール酸アンモニウム蓄積 濃度は52重量%、基質のグリコロニトリルは検 出されなかった。次に得られたグリコール酸 アンモニウム塩水溶液を、遠心分離機(クボ 製:高速遠心機7700)を用いて、回転数:10000pm、 処理時間:20min、処理温度:4℃で処理し、上澄 を回収後、MF(旭化成ケミカルズ製:PSP-003)を いて、流速2ml/min、処理温度:30℃で処理して 52重量%のグリコール酸アンモニウム塩水溶液 を1065g得た。本液は若干の着色を生じていた め、0.83gの市販活性炭(白鷺A:日本エンバイ ケミカルズ製)を加えて、室温で45分攪拌し 後、デカンテーションで処理液を回収し、 色成分を除去した。グリコール酸アンモニ ム濃度52重量%、副生グリコロアミド濃度0.33 量%であった。

<乳酸アンモニウム塩水溶液の調製>
 本実施例で使用した乳酸アンモニウム塩水 液は、市販の40%乳酸アンモニウム(和光純薬 製)に市販の97%乳酸アミド(和光純薬製)を添加 して調製した。乳酸アンモニウム濃度40重量% 、乳酸アミド濃度は0.35重量%であった。

[実施例1]
 52重量%グリコール酸アンモニウム塩水溶液4 00gを1L四ツ口フラスコに仕込み、側管に温度 と還流器とN 2 バブリング用キャピラリーを取り付け、中央 にスリーワンモーターの撹拌羽根を取り付け 、恒温水槽に全体を浸した。N 2 バブリングを行いながら、内液を70℃に昇温 せ、40重量%水酸化ナトリウム水溶液225gを徐 々に滴下した。20分間常圧での操作を行った 、徐々に真空ポンプで減圧操作を行い、最 的に140mmHgまで減圧した。その間、N 2 バブリングは継続し、内温は63℃となった。

 本条件で2時間脱アンモニア操作を継続し 、36.9重量%粗グリコール酸ナトリウム水溶液5 82gを得た。最終的なアンモニア濃度は0.241[重 量%/グリコール酸]以下、グリシン濃度は1.78[ 量%/グリコール酸]、イミノジ酢酸濃度は0.08 0[重量%/グリコール酸]となり、脱アンモニア は98.8%以上となった。また、グリコロアミ は検出されなかった。

 引き続き、市販の強酸性カチオン交換樹 (アンバーライトIR120B)を予めプロトン型に 生処理したもの70mLを純水で懸濁させ、直径1 .4cmのガラス製カラムに充填し、十分洗浄し 後、前記脱アンモニア操作後液(グリコール ナトリウム水溶液)を4.7mL/minの流速で流通し た。回収液はフラクションコレクターで10mL/ ずつ回収し、分析結果よりナトリウムカチ ンの漏れ出しが起こる直前のフラクション での液を混合して回収液とした。回収液中 アンモニウムカチオン、ナトリウムカチオ 、グリシン、イミノジ酢酸は検出されなか た。

 引き続き、市販の弱塩基性アニオン交換 脂(アンバーライトIRA96SB)を予めOH型に再生 理したもの70mLを純水で懸濁させ、直径1.4cm ガラス製カラムに充填し、十分洗浄した後 前記カチオン交換処理したグリコール酸水 液を4.7mL/minの流速で流通した。回収液はフ クションコレクターで10mL/本ずつ回収し、分 析結果より不純物アニオン成分(培地由来の 酸アニオン、リン酸アニオン等)の漏れ出し 起こる直前のフラクションまでの液を混合 て回収液とした。回収液中に硫酸アニオン びリン酸アニオンは検出されなかった。

 得られたグリコール酸水溶液の一部を50mL ナスフラスコに仕込み、窒素置換後、窒素フ ロー下において加熱を開始し、常圧でスター ラー攪拌を行いながら170℃から200℃まで昇温 加熱し、生成水を留去しながら縮合反応させ た。次いで真空ポンプで40mmHgまで減圧し、200 ℃で2時間加熱して未反応グリコール酸等の 沸物を留去した。得られたプレポリマーは ほぼ無色透明であった。

 さらに、260℃まで昇温し、減圧度を3~5mmHg に上げて解重合反応を行った。留出液を氷水 で冷却トラップ回収し、ガスクロマトグラフ ィー分析の結果、グリコリド以外のピークは 認められなかった。フラスコ内の残液は薄く 着色していたが、トラップされたグリコリド はほぼ無色であった。

[実施例2]
 実施例1と同様にグリコール酸アンモニウム の脱アンモニア操作を行い、アンモニア濃度 0.225[重量%/グリコール酸]、グリコロアミドが 検出限界(1重量ppm)以下の37.2重量%粗グリコー 酸ナトリウム水溶液583gを得た。

 引き続き、電気透析装置としてアシライザ EX3B(アストム社製)を用いて、陽イオン交換 ネオセプタCMB(図1の4)(アストム社製)とバイ ーラ膜ネオセプタBP-1(図1の3)(アストム社製) が交互に10対配置(有効膜面積550cm 2 )し、酸室(図1の7)、塩基室(図1の8)、電極室( 1の5,6)を形成させた。酸室には前記粗グリコ ール酸ナトリウム水溶液を、塩基室には0.4重 量%水酸化ナトリウム水溶液を、電極室には2. 0重量%水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ対 するタンクを設け、供給、循環した。原料 には冷却用ジャケットを設け、処理温度40 以下で、一定電圧30V(電流は成り行き)で2時 電気透析を行った。その結果、酸室からは リコール酸濃度33.1重量%、アンモニア濃度12 量ppm、ナトリウム濃度480重量ppmのグリコー 酸水溶液439gが得られた。

 引き続き、市販の弱塩基性アニオン交換 脂(アンバーライトIRA96SB)を予めOH型に再生 理したもの70mLを純水で懸濁させ、直径1.4cm ガラス製カラムに充填し、十分洗浄した後 前記電気透析処理したグリコール酸水溶液 4.7mL/minの流速で流通した。回収液はフラク ョンコレクターで10mL/本ずつ回収し、分析結 果より不純物アニオン成分(培地由来の硫酸 ニオン、リン酸アニオン等)の漏れ出しが起 る直前のフラクションまでの液を混合して 収液とした。回収液中に硫酸アニオン及び ン酸アニオンは検出されなかった。

 引き続き、市販の強酸性カチオン交換樹 (アンバーライトIR120B)を予めプロトン型に 生処理したもの70mLを純水で懸濁させ、直径1 .4cmのガラス製カラムに充填し、十分洗浄し 後、前記アニオン交換処理したグリコール 水溶液を4.7mL/minの流速で流通した。回収液 フラクションコレクターで10mL/本ずつ回収し 、分析結果よりナトリウムカチオンの漏れ出 しが起こる直前のフラクションまでの液を混 合して回収液とした。回収液中にアンモニウ ムカチオン、ナトリウムカチオン、グリシン 、イミノジ酢酸は検出されなかった。

 得られたグリコール酸水溶液の一部を50mL ナスフラスコに仕込み、窒素置換後、窒素フ ロー下において加熱を開始し、常圧でスター ラー攪拌を行いながら170℃から200℃まで昇温 加熱し、生成水を留去しながら縮合反応させ た。次いで真空ポンプで40mmHgまで減圧し、200 ℃で2時間加熱して未反応グリコール酸等の 沸物を留去した。得られたプレポリマーは ほぼ無色透明であった。さらに、260℃まで 温し、減圧度を3~5mmHgに上げて解重合反応を った。留出液を氷水で冷却トラップ回収し ガスクロ分析の結果、グリコリド以外のピ クは認められなかった。フラスコ内の残液 薄く着色していたが、トラップされたグリ リドはほぼ無色であった。

[比較例1~2、実施例3~4]
 52重量%グリコール酸アンモニウム塩水溶液5 0gを100mL四ツ口フラスコに仕込み、側管に温 計と還流器を取り付け、中央にスリーワン ーターの撹拌羽根を取り付け、恒温水槽に 体を入れ、内液を40℃、60℃、80℃または100 まで上昇させ、30重量%の水酸化カルシウム ラリー37.9gを15minかけて滴下した。これによ 、グリコール酸アンモニウム塩1molに対して 0.55molの水酸化カルシウムを用いたことにな 。

 表1に示す時間処理した後、得られたグリ コール酸カルシウムスラリーをサンプリング し、適当な濃度まで蒸留水で希釈し、高速液 体クロマトグラフィーでグリコール酸濃度及 びグリコロアミド濃度を、イオンクロマトグ ラフィーでアンモニア濃度を測定し、グリコ ール酸重量当たりのアンモニア重量%とグリ ロアミド濃度を求めた。結果を表1及び図2に 示す。

 実施例3で得られたグリコール酸カルシウ ムスラリーの一部を、ガラスフィルター付漏 斗で濾過した。得られたグリコール酸カルシ ウムの湿潤結晶に対し、同重量の50℃に加温 た蒸留水を加えてスパチュラで撹拌した後 ガラスフィルター付漏斗で濾過する操作を3 回繰り返した。得られたグリコール酸カルシ ウムの湿潤結晶の一部に、グリコール酸カル シウム1molに対し1.03molのモル比になるように 50重量%硫酸を60℃の温度を保ちながら添加 て、1時間程熟成した。得られた硫酸カルシ ムの結晶をガラスフィルター付漏斗で濾過 離した濾液として、54.1重量%のグリコール 水溶液を得た。

 該グリコール酸水溶液中のその他不純物 度を測定したところ、カルシウムカチオン 3400重量ppm/GA、硫酸アニオンが6500重量ppm/GA アンモニアが2重量ppm/GA以下、グリコロアミ は検出されなかった。

 引き続き、市販の弱塩基性アニオン交換 脂(アンバーライトIRA96SB)を予めOH型に再生 理したもの70mLを純水で懸濁させ、直径1.4cm ガラス製カラムに充填し、十分洗浄した後 前記固液分離処理したグリコール酸水溶液 4.7mL/minの流速で流通した。回収液はフラク ョンコレクターで10mL/本ずつ回収し、分析結 果より不純物アニオン成分(硫酸アニオン)の れ出しが起こる直前のフラクションまでの を混合して回収液とした。回収液中に硫酸 ニオンは検出されなかった。

 引き続き、市販の強酸性カチオン交換樹 (アンバーライトIR120B)を予めプロトン型に 生処理したもの70mLを純水で懸濁させ、直径1 .4cmのガラス製カラムに充填し、十分洗浄し 後、前記アニオン交換処理したグリコール 水溶液を4.7mL/minの流速で流通した。回収液 フラクションコレクターで10mL/本ずつ回収し 、分析結果よりカルシウムカチオンの漏れ出 しが起こる直前のフラクションまでの液を混 合して回収液とした。回収液中にアンモニウ ムカチオン、カルシウムカチオン、グリシン 、イミノジ酢酸は検出されなかった。

 得られたグリコール酸水溶液の一部を50mL ナスフラスコに仕込み、窒素置換後、窒素フ ロー下において加熱を開始し、常圧でスター ラー攪拌を行いながら170℃から200℃まで昇温 加熱し、生成水を留去しながら縮合反応させ た。次いで真空ポンプで40mmHgまで減圧し、200 ℃で2時間加熱して未反応グリコール酸等の 沸物を留去した。得られたプレポリマーは ほぼ無色透明であった。

 さらに、260℃まで昇温し、減圧度を3~5mmHg に上げて解重合反応を行った。留出液を氷水 で冷却トラップ回収し、ガスクロマトグラフ ィー分析の結果、グリコリド以外のピークは 認められなかった。フラスコ内の残液は薄く 着色していたが、トラップされたグリコリド はほぼ無色であった。

 次に、比較例1で得られたグリコール酸カ ルシウムスラリーをガラスフィルター付漏斗 で濾過し、グリコール酸カルシウムの湿潤結 晶32.4gを得た。この結晶の一部を採り、適当 濃度まで水に希釈して、液体高速クロマト ラフィーでグリコール酸濃度を、イオンク マトグラフィーでアンモニア濃度を測定し 、本サンプルを洗浄前サンプルとした。次 残ったグリコール酸カルシウム湿潤結晶に し、同重量の50℃に加温した蒸留水を加え スパチュラで撹拌した後、ガラスフィルタ 付漏斗で濾過し、グリコール酸カルシウム 湿潤結晶を得た(1回目洗浄)。該結晶の一部 洗浄前サンプルと同様に分析した後、該結 の一部を前出と同様の洗浄操作と分析を行 た(2回目洗浄)。更に同様にして3回目洗浄操 と分析を行った。結果は表2に示す。

[規則26に基づく補充 22.08.2008] 

 引き続き、3回洗浄したグリコール酸カル シウムスラリーの一部を実施例3と同様の操 で硫酸処理し、52.8重量%のグリコール酸水溶 液を得た後、アニオン交換、カチオン交換精 製工程を経て精製グリコール酸水溶液を回収 した。回収液中にアンモニウムカチオン、カ ルシウムカチオン、グリシン、イミノジ酢酸 は検出されなかった。

 続いて実施例3と同様に、グリコール酸水 溶液の一部を50mLナスフラスコに仕込み、窒 置換後、窒素フロー下において加熱を開始 、常圧でスターラー攪拌を行いながら170℃ ら200℃まで昇温加熱し、生成水を留去しな ら縮合反応させた。次いで真空ポンプで40mmH gまで減圧し、200℃で2時間加熱して未反応グ コール酸等の低沸物を留去した。得られた レポリマーは、やや黄色に着色していた。

 さらに、260℃まで昇温させ、減圧度を3~5m mHgに上げて解重合反応を行った。留出液を氷 水で冷却トラップ回収し、ガスクロ分析の結 果、グリコリド以外のピークは認められなか った。フラスコ内の残液は茶色く着色し、ト ラップされたグリコリドも黄色く着色してい た。

[比較例3]
 比較例として、α-ヒドロキシ酸アンモニウ 塩の加熱加水分解により、アンモニアを除 した。

 52重量%グリコール酸アンモニウム塩水溶 50gを100mL四ツ口フラスコに仕込み、側管に 液温度測定用の温度計とトップ温度測定用 温度計を付けたトの字管を挟んでリービッ 冷却管を取り付け、中央にスリーワンモー ーの撹拌羽根を取り付け、オイルバスに全 を浸して、内液を表3に示す温度に昇温させ 水と共にアンモニアを除去した。最終的な 去重量は23.3gであった。表2に示す各時間で 分析値を基に、アンモニア及びグリコロア ドの経時変化を求めた。最終的に得られた リコール酸は着色が激しく、粘性の高い液 となった。処理条件を表3に、アンモニア濃 度とグリコロアミドの測定結果を図3に示す

 

[実施例5]
 40重量%乳酸アンモニウム塩水溶液50gを100mL ツ口フラスコに仕込み、側管に温度計と還 器を取り付け、中央にスリーワンモーター 撹拌羽根を取り付け、恒温水槽に全体を浸 て、内液を80℃まで昇温させ、30重量%の水酸 化カルシウムスラリー25.1gを15minかけて滴下 た。これにより、乳酸アンモニウム塩1molに して0.55molの水酸化カルシウムを用いたこと になる。

 80℃で3時間処理した後、得られた乳酸カ シウムスラリーをサンプリングし、適当な 度まで蒸留水で希釈し、高速液体クロマト ラフィーで乳酸濃度及び乳酸アミド濃度を イオンクロマトグラフィーでアンモニア濃 を測定したころ、乳酸重量当たりのアンモ ア濃度は0.027[重量%/乳酸]で、乳酸アミドは 出されなかった。

 引き続き、得られた乳酸カルシウムスラ ーの一部を実施例4と同様に、ガラスフィル ター付漏斗で濾過した。得られた乳酸カルシ ウムの湿潤結晶に対し、同重量の50℃に加温 た蒸留水を加えてスパチュラで撹拌した後 ガラスフィルター付漏斗で濾過する操作を3 回繰り返した。得られた乳酸カルシウムの湿 潤結晶の一部に対し、乳酸カルシウム1molに し1.03molのモル比になるように、50重量%硫酸 60℃の温度を保ちながら添加して1時間程熟 した。得られた硫酸カルシウムの結晶をガ スフィルター付漏斗で濾過分離した濾液と て、52.2重量%の乳酸水溶液を得た。該乳酸 溶液中には、アンモニア及び乳酸アミドは 出されなかった。

 得られた乳酸水溶液の一部を50mLナスフラ スコに仕込み、窒素置換後、窒素フロー下に おいて加熱を開始し、常圧でスターラー攪拌 を行いながら130℃から150℃まで昇温加熱し、 生成水を留去しながら縮合反応させた。次い で真空ポンプで40mmHgまで減圧し、160℃で2時 加熱して未反応乳酸等の低沸物を留去した 得られたプレポリマーは、ほぼ無色透明で った。さらに、220℃まで昇温し、減圧度を3~ 5mmHgに上げて解重合反応を行った。留出液を 水で冷却トラップ回収し、ガスクロ分析の 果、ラクチド以外のピークは認められなか た。フラスコ内の残液は薄く着色していた 、トラップされたラクチドはほぼ無色であ た。

本発明に使用する二室式水分解電気透 装置の概略図である。 グリコール酸アンモニウム塩に水酸化 ルシウムを加えてグリコール酸カルシウム 得る反応の反応時間と、グリコロアミド濃 との関係を示す。 従来の方法でグリコール酸アンモニウ からアンモニアを除去した場合のアンモニ 及びグリコロアミドの経時変化を示す。