Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
SELECTIVE EXPRESSION INHIBITOR FOR AURORA KINASE A AND AURORA KINASE B GENES
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/066774
Kind Code:
A1
Abstract:
A drug containing a pyrrole-imidazole polyamide comprising an N-methylpyrrole unit (hereinafter sometimes referred to as Py), an N-methylimidazole unit (hereinafter sometimes referred to as Im) and a γ-aminobutyric acid unit which can be folded at the γ-aminobutyric acid unit to form a U-shape conformation within the minor groove in the double strand region (hereinafter referred to as the target region) containing a part of the -100 to -70 positions (SEQ ID NO:2) in the base sequence of human aurora kinase A (hereinafter sometimes referred to as hAURKA) promoter or the whole thereof and a chain that is complementary thereto, and in which the C-G base pair corresponds to the Py/Im pair, the G-C base pair corresponds to the Im/Py pair and the A-T and T-A base pairs correspond each to the Py/Py pair.

Inventors:
NAGASE HIROKI (JP)
TAKAHASHI TERUYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/071258
Publication Date:
May 28, 2009
Filing Date:
November 21, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
UNIV NIHON (JP)
NAGASE HIROKI (JP)
TAKAHASHI TERUYUKI (JP)
International Classes:
C07D403/14; A61K31/4178; A61K31/787; A61P35/00; C12N15/09
Domestic Patent References:
WO2007060860A12007-05-31
WO2006018967A12006-02-23
WO2007034784A12007-03-29
Foreign References:
JP2006022063A2006-01-26
Other References:
TANAKA, M. ET AL.: "Cell-cycle-dependent regulation of human aurora A transcription is mediated by periodic repression of E4TF1", J BIOL CHEM, vol. 277, no. 12, 2002, pages 10719 - 10726
KIMURA, M. ET AL.: "Cell cycle-dependent regulation of the human aurora B promoter", BIOCHEM BIOPHYS RES COMMUN, vol. 316, no. 3, 2004, pages 930 - 936
TAKAHASHI, T. ET AL.: "Development of pyrrole- imidazole polyamide for specific regulation of human aurora kinase-A and -B gene expression", CHEM BIOL, vol. 15, no. 8, August 2008 (2008-08-01), pages 829 - 841
Attorney, Agent or Firm:
ASAMURA, Kiyoshi et al. (New Ohtemachi Bldg. 2-1, Ohtemachi 2-chome, Chiyoda-k, Tokyo 04, JP)
Download PDF:
Claims:
 N-メチルピロール単位(以下Pyとも言う)、N-メチルイミダゾール単位(以下Imとも言う)及びγ-アミノ酪酸単位を含むピロールイミダゾールポリアミドであって、ヒトオーロラカイネースA(以下hAURKAとも言う)プロモーターの塩基配列-100~-70(配列番号2)の一部又は全部とこれに対する相補鎖を含む二重らせん領域(以下標的領域と言う)の副溝内において、前記γ-アミノ酪酸単位の部位で折りたたまれてU字型のコンフォメーションをとることができ、C-G塩基対に対してはPy/Im対が、G-C塩基対に対してはIm/Py対が、A-T塩基対及びT-A塩基対に対してはいずれもPy/Py対がそれぞれ対応する、上記ピロールイミダゾールポリアミドを含んでなる薬剤。
 更にβアラニン単位を含む請求項1に記載の薬剤。
 ヒトオーロラカイネースA遺伝子発現抑制のための請求項1又は2に記載の薬剤。
 ヒトオーロラカイネースA関連疾患の治療のための請求項1又は2に記載の薬剤。
 制癌剤として用いるための請求項4に記載の薬剤。
 前記標的領域がヒトオーロラカイネースAプロモーターの塩基配列-89~-79(配列番号3)の一部又は全部とこれに対する相補鎖を含む二重らせん領域である請求項1~5のいずれか一項に記載の薬剤。
 前記標的領域がヒトオーロラカイネースAプロモーターの塩基配列-89~-83(配列番号4)の一部又は全部とこれに対する相補鎖を含む二重らせん領域である請求項1~6のいずれか一項に記載の薬剤。
 前記ピロールイミダゾールポリアミドが下式で表される請求項1~7のいずれか一項記載の薬剤。
 下式で表されるピロールイミダゾールポリアミド。
 N-メチルピロール単位(以下Pyとも言う)、N-メチルイミダゾール単位(以下Imとも言う)及びγ-アミノ酪酸単位を含むピロールイミダゾールポリアミドであって、ヒトオーロラカイネースB(以下hAURKBとも言う)プロモーターの塩基配列-44~-17(配列番号6)の一部又は全部とこれに対する相補鎖を含む二重らせん領域(以下標的領域と言う)の副溝内において、前記γ-アミノ酪酸単位の部位で折りたたまれてU字型のコンフォメーションをとることができ、C-G塩基対に対してはPy/Im対が、G-C塩基対に対してはIm/Py対が、A-T塩基対及びT-A塩基対に対してはいずれもPy/Py対がそれぞれ対応する、上記ピロールイミダゾールポリアミドを含んでなる薬剤。
 更にβアラニン単位を含む請求項10に記載の薬剤。
 ヒトオーロラカイネースB遺伝子発現抑制のための請求項10又は11に記載の薬剤。
 ヒトオーロラカイネースB遺伝子関連疾患の治療のための請求項10又は11に記載の薬剤。
 制癌剤として用いるための請求項13に記載の薬剤。
 前記標的領域がヒトオーロラカイネースBプロモーターの塩基配列-31~-17(配列番号7)の一部又は全部とこれに対する相補鎖を含む二重らせん領域である請求項10~14のいずれか一項に記載の薬剤。
 前記標的領域がヒトオーロラカイネースBプロモーターの塩基配列-25~-18(配列番号8)の一部又は全部とこれに対する相補鎖を含む二重らせん領域である請求項10~15のいずれか一項に記載の薬剤。
 前記ピロールイミダゾールポリアミドが下式で表される請求項10~16のいずれか一項記載の薬剤。
 下式で表されるピロールイミダゾールポリアミド。
 請求項1~8のいずれか一項に記載の薬剤及び請求項10~17のいずれか一項に記載の薬剤、並びに薬剤として許容される担体を含む医薬組成物。
 請求項9及び請求項18に記載のピロールイミダゾールポリアミド、並びに薬剤として許容される担体を含む薬剤。
Description:
オーロラカイネースA及びオーロ ラカイネースB遺伝子選択的発現抑制剤

 本発明はオーロラカイネースA及びオーロ ラカイネースB(以下、それぞれAURKA及びAURKBと も言う)遺伝子発現抑制剤、オーラカイネー A及びオーロラカイネースB関連疾患の治療薬 及び制癌剤に関する。より詳細には特定の構 造を有するピロールイミダゾールポリアミド (以下、PIPとも言う)を含んでなる薬剤に関す 。

 細胞分裂は多くのタンパク質のリン酸化 よって進行し、サイクリンB-CDK1をはじめと る“分裂期キナーゼ”と総称される、一群 セリン/スレオニンキナーゼがその主要な役 割を担っている。オーロラカイネースは分裂 期キナーゼの一つであり、これまでにA、B、C 3つのサブタイプが存在することが明らかに れている。このうちのAとBは酵母からヒト等 の高等真核生物まで高度に保存されており、 分裂期の様々なイベントの分子制御に関連し て極めて重要な役割を担っている。加えて、 近年、ヒトの多くの悪性腫瘍でオーロラキナ ーゼの過剰発現が報告されており、発癌ある いは腫瘍性増殖・悪性形質の維持に対する密 接な関与が指摘されている。

 ヒトオーロラキナーゼA(以下hAURKAとも言 )及びヒトオーロラキナーゼB(以下hAURKBとも う)は細胞周期依存的にその発現量が調節さ 、分裂期にそれぞれ双極中心体と染色体上 局在し、紡錘糸の形成、相同染色体の中心 への整列、紡錘糸のセントロメアとの付着 の、細胞分裂の主要なイベントの制御に極 て重要な役割を担っている。従って、PIPのD NA結合を介してhAURKA及びhAURKBの発現量を制御 れば、特異的にヒト癌細胞の腫瘍性増殖を 制できる可能性が大きく、分子標的抗癌剤 しての効果と臨床応用が期待できる。

 また、AURKAのRNA干渉(以下RNAiとも言う)に る阻害作用により、G2/Mでの細胞周期停止がH eLa癌細胞で報告され(非特許文献1)、AURKBの阻 作用によって細胞死の誘導が報告されてい (非特許文献2)。

 これまで、オーロラ遺伝子産物のリン酸 阻害剤として主にAURKBを阻害するAZD1152、MK04 57、主にAURKAを阻害するVX-680等が開発され、 患者を対象とする臨床試験が開始されてい 。しかし、これらの化合物は、タンパク質 物におけるリン酸化酵素活性を示すATP結合 位への競争阻害剤であり、転写翻訳には影 しない。低分子干渉RNA(以下「siRNA」とも言 )による治療法の開発も転写後の翻訳を阻害 るものであり、転写を調節するオーロラ遺 子発現抑制剤の開発は報告されていない(非 特許文献3)。

 オーロラ遺伝子ファミリーは、その酵素 性部位の化学構造がファミリー間で類似し いるため、それぞれの遺伝子産物を特異的 標的とする酵素活性阻害剤の開発が困難で る。一方、オーロラ遺伝子自体を阻害する とができればこの様な問題は解決できる。 に、癌腫には、AURKAを主に高発現する癌腫 AURKBを高発現する癌腫等がある。従って、こ のような当該オーロラ遺伝子の発現様式の特 性を考慮して、種々の癌において癌腫に応じ たオーロラ遺伝子を阻害することにより、よ り高い抗癌効果を生むことが期待される。ま た、AURKAの発現によりp53の活性が減少したり スピンドルチェックポイントの活性化がお る。このことにより、細胞死が誘導されに い状態もしくは、Paclitaxel(Taxol)やnocodazoleな の薬剤が効きにくい状態が生じると考えら ている。AURKAの発現抑制により、AURKB阻害に よる細胞死(アポトーシス)の導入や他の細胞 を誘導する薬剤の効果を増強させることが えられる。また、AURKAの発現抑制は、Paclitax el(Taxol)やnocodazole等の薬剤効果の増強を促す とも容易に考えられる。

 なお、SiRNAによる治療法は、上記の酵素 害剤の欠点を補うものであるが、核酸分解 素の影響を受けやすく生体外および生体内 不安定である。また、薬剤を膜などで包ん 患部に到達するまで吸収・分解されないよ にする技術、即ち、ドラッグデリバリーシ テム(DDS)の開発が必須であり、標的細胞への 薬剤移行にも問題がある。更に、マイクロRNA などの他の生体制御機構への影響も懸念され る。

 ピロールイミダゾールポリアミドは抗生 質であるduocarmycin-Aとdistamycin-AがDNAを塩基特 異的に認識する事を基に、Dervanらにより見出 された化学合成物質である(特許文献4、非特 文献4、非特許文献5)。PIPは二本鎖DNAを塩基 列特異的に認識し、DNA二重螺旋構造のマイ ーグルーブに結合する事から、標的遺伝子 発現を特異的に制御する事が可能である(非 特許文献6)。また、PIPは、これまでの遺伝子 現制御薬であるアンチセンス・リボザイム siRNA等と異なり、生体内において核酸分解 素によって分解されず、核酸への結合能が い事から、新規の分子標的治療薬として、 癌剤等への臨床応用が期待されるところで る。

 逆遺伝学による遺伝子機能の不活性化の 法は、ある特定の遺伝子の機能を解析する めに用いられるものであるが、一方でウイ ス感染、癌、及び遺伝子の異常発現に基づ その他の疾病の治療にも大きな可能性を開 ている。すなわち、遺伝子機能の不活性化 、相同的組換えによりDNAレベルで、又はア チセンスオリゴデオキシヌクレオチドやリ ザイムによりRNAレベルで実施することがで ることが知られている。しかし、アンチセ スオリゴデオキシヌクレオチドやリボザイ の手法は、ターゲットとする配列に制約が り、組織、細胞への移行が悪く、リボヌク アーゼにより分解されやすいという課題が った。

 一方、アンチセンス試薬やリボザイムの うな(デオキシ)リボヌクレオチド試薬とは なり、ピロールイミダゾールポリアミド類 、DNAの塩基配列を特異的に認識し、特定遺 子の発現を細胞外からコントロールするこ ができることが報告されている。

 ピロールイミダゾールポリアミドは一群 合成小分子であり、芳香族環であるN-メチ ピロール単位(以下Pyとも言う)及びN-メチル ミダゾール単位(以下Imとも言う)から構成さ ている(特許文献4、非特許文献4)。Py及びIm 連続してカップリングし折りたたむことに りγ-アミノ酪酸の存在下でU字型のコンフォ ーションを採ることができる。本発明に係 ピロールイミダゾールポリアミドにおいて N-メチルピロール単位(Py)、N-メチルイミダ ール単位(Im)及びγ-アミノ酪酸単位(γリンカ とも言う)は互いにアミド結合(-C(=O)-NH-)で連 結されており、その一般構造及び製造方法は 公知である(特許文献1~3)。

 このような合成ポリアミドは二重らせんD NAの副溝(マイナーグルーブ)中の特定の塩基 に高い親和性と特異性を以って結合するこ ができる。塩基対の特異的認識はPyとImとの1 対1の対形成に依存している。即ち、DNAの副 内でのU字型コンフォメーションにおいて、P y/Im対はC-G塩基対を標的とし、Im/PyはG-C塩基対 を標的とし、そしてPy/PyはA-T塩基対及びT-A塩 対の両方を標的とする(非特許文献4)。最近 研究によればA-T縮合はPy/Py対の一つのピロ ル環を3-ヒドロキシピロール(Hp)で置換した 果としてHp/Pyが優先的にT/A対に結合すること によって克服することができることがわかっ ている。

 一般的には転写の開始が遺伝子制御の重 なポイントであると考えられている。転写 開始には遺伝子プロモーター領域において 異的な認識配列に結合する転写因子をいく か必要とする。副溝中のポリアミドは、も 転写因子が遺伝子発現において重要であれ 、転写因子の結合を遮断して遺伝子の調節 干渉する可能性がある。この仮説はin vitro びin vivoの実験で証明されている。ジンク ィンガーの認識部位(TFIIIAの結合部位)の内部 に結合した8員環Py-Imポリアミドは5SRNA遺伝子 転写を阻害した。ヒト免疫不全ウイルス1型 (HIV-1)プロモーター中の転写因子配列に隣接 る塩基対に結合するポリアミド類は、ヒト 胞におけるHIV-1複製を阻害する。これらの配 列にはTATAボックス、リンパ系エンハンサー 子LEF-1配列、及びETS-1配列が包含される。こ とは対照的に、ポリアミドはまた、リプレ サー因子を遮断することによって、又は生 の転写因子を置換することによって、遺伝 発現を活性化する。ヒトサイトメガロウイ ス(CMV)UL122仲介初期タンパク質2(IE86)は、プ モーターにRNAポリメラーゼIIを補充すること を遮断し、その関連遺伝子の転写を抑制する 。合成ポリアミドはIE86の抑制を遮断しその 応遺伝子の発現を開放することができる。Ma ppらにより設計されたポリアミドは人工転写 子として作用し、遺伝子転写反応を仲介す 。

特許第3045706号

特開2001-136974

WO03/000683 A1

WO98/49142 A1 Du et al: Proc Natl Acad Sci U S A.2004;101(2 4):8975-8980. Kallio et al: Curr Biol. 2002;12(11):900-905. Malumbres et al: Curr Opin Genet Dev. 2007;17(1 ):60-65. Sugiyama et al: Proc Natl Acad Sci U S A. 19 96;93:14405-14410. Dervan: Bioorg Med Chem.2001;9:2215-35.

 先に述べたアンチセンスオリゴデオキシ クレオチドやリボザイムの手法は、ターゲ トとする配列に制約があり、組織、細胞へ 移行が悪く、リボヌクレアーゼにより分解 れやすいという課題があった。これまでに オーロラカイネースA及びBの遺伝子塩基配 に結合するピロール-イミダゾールポリアミ を用いたオーロラカイネースA及びB遺伝子 現抑制剤又はオーロラカイネースA及びB関連 疾患の治療薬についての報告はない。

 本発明者らは、ヒトオーロラカイネースA 及びヒトオーロラカイネースB(hAURKA及びhAURKB) のプロモーターの特定の領域に特異的に結合 してヒトオーロラカイネースA及びB遺伝子の 現を阻害することができるピロールイミダ ールポリアミドの開発とその薬理効果につ て鋭意研究した。そこで、本発明者らは、 トオーロラカイネースA及びB遺伝子の発現 阻害することができ、且つ治療薬として役 ち得る化合物を得るべく、オーロラカイネ スA及びBプロモーターの様々な断片を標的と するポリアミド類のうち、オーロラカイネー スAについては、プロモーター領域の-100~-70の 領域のうち、E4TF1結合領域を含む領域、好ま くは、-89~-79の領域、より好ましくは-89~-83 領域に結合する化合物が、ヒトオーロラカ ネースA遺伝子プロモーターの活性を有意に 害し、オーロラカイネースBについては、プ ロモーター領域の-44~-17の領域のうち、CCAATボ ックス及びE2F/DPファミリータンパク質結合領 域を含む領域、好ましくは-31~-17の領域、よ 好ましくは、-25~-18の領域に結合する化合物 、ヒトオーロラカイネースB遺伝子プロモー ターの活性を有意に阻害し、ヒト子宮頸癌由 来細胞であるHeLa細胞においてヒトオーロラ イネースA及びB遺伝子の発現をダウンレギュ レートすることを見出し、本発明をなすに至 った。

 即ち、本発明は以下の通りである。
 (1)N-メチルピロール単位、N-メチルイミダゾ ール単位及びγ-アミノ酪酸単位を含むピロー ルイミダゾールポリアミドであって、ヒトオ ーロラカイネースAプロモーターの塩基配列-1 00~-70(配列番号2)の一部又は全部とこれに対す る相補鎖を含む二重らせん領域(以下標的領 と言う)の副溝内において、前記γ-アミノ酪 単位の部位で折りたたまれてU字型のコンフ ォメーションをとることができ、C-G塩基対に 対してはPy/Im対が、G-C塩基対に対してはIm/Py が、A-T塩基対及びT-A塩基対に対してはいず もPy/Py対がそれぞれ対応する、上記ピロール イミダゾールポリアミドを含んでなる薬剤。
 (2)更にβアラニン単位を含む上記(1)に記載 薬剤。
 (3)ヒトオーロラカイネースA遺伝子発現抑制 のための上記(1)又は(2)に記載の薬剤。
 (4)ヒトオーロラカイネースA関連疾患の治療 のための上記(1)又は(2)に記載の薬剤。
 (5)制癌剤として用いるための上記(4)に記載 薬剤。
 (6)前記標的領域がヒトオーロラカイネースA プロモーターの塩基配列-89~-79(配列番号3)の 部又は全部とこれに対する相補鎖を含む二 らせん領域である上記(1)~(5)のいずれか一項 記載の薬剤。
 (7)前記標的領域がヒトオーロラカイネースA プロモーターの塩基配列-89~-83(配列番号4)の 部又は全部とこれに対する相補鎖を含む二 らせん領域である上記(1)~(6)のいずれか一項 記載の薬剤。
 (8)前記ピロールイミダゾールポリアミドが 式で表される上記(1)~(7)のいずれか一項記載 の薬剤。

(9)下式で表されるピロールイミダゾールポリ アミド。

 (10)N-メチルピロール単位、N-メチルイミダ ール単位及びγ-アミノ酪酸単位を含むピロ ルイミダゾールポリアミドであって、ヒト ーロラカイネースBプロモーターの塩基配列- 44~-17(配列番号6)の一部又は全部とこれに対す る相補鎖を含む二重らせん領域(以下標的領 と言う)の副溝内において、前記γ-アミノ酪 単位の部位で折りたたまれてU字型のコンフ ォメーションをとることができ、C-G塩基対に 対してはPy/Im対が、G-C塩基対に対してはIm/Py が、A-T塩基対及びT-A塩基対に対してはいず もPy/Py対がそれぞれ対応する、上記ピロール イミダゾールポリアミドを含んでなる薬剤。
 (11)更にβアラニン単位を含む上記(10)に記載 の薬剤。
 (12)ヒトオーロラカイネースB遺伝子発現抑 のための上記(10)又は(11)に記載の薬剤。
 (13)ヒトオーロラカイネースB遺伝子関連疾 の治療のための上記(10)又は(11)に記載の薬剤 。
 (14)制癌剤として用いるための上記(13)に記 の薬剤。
 (15)前記標的領域がヒトオーロラカイネース Bプロモーターの塩基配列-31~-17(配列番号7)の 部又は全部とこれに対する相補鎖を含む二 らせん領域である上記(10)~(14)のいずれか一 に記載の薬剤。
 (16)前記標的領域がヒトオーロラカイネース Bプロモーターの塩基配列-25~-18(配列番号8)の 部又は全部とこれに対する相補鎖を含む二 らせん領域である上記
(10)~(15)のいずれか一項に記載の薬剤。
 (17)前記ピロールイミダゾールポリアミドが 下式で表される上記(10)~(16)のいずれか一項記 載の薬剤。

 (18)下式で表されるピロールイミダゾールポ リアミド。

 (19)上記(1)~(8)のいずれか一項に記載の薬剤 び上記(10)~(17)のいずれか一項に記載の薬剤 並びに薬剤として許容される担体を含む、 薬組成物。
 (20)上記(9)及び上記(18)に記載のピロールイ ダゾールポリアミド、並びに薬剤として許 される担体を含む薬剤。
 (21)前記ピロールイミダゾールポリアミドの 末端のカルボキシル基がアミドを形成してい る上記(1)~(7)のいずれか一項記載の薬剤。
 (22)前記アミドがメチルアミノプロピルアミ ン又はN、N-ジメチルアミノプロピルアミンと のアミドである上記(21)に記載の薬剤。
 (23)前記ピロールイミダゾールポリアミドの 末端のカルボキシル基がアミドを形成してい る上記(10)~(16)のいずれか一項記載の薬剤。
 (24)前記アミドがメチルアミノプロピルアミ ン又はN、N-ジメチルアミノプロピルアミンと のアミドである上記(23)に記載のオーロラカ ネースB遺伝子発現抑制剤。

 本発明によれば、遺伝子発現を特異的に 制することができるので化学療法剤のよう 副作用がなく、また化合物であるのでリボ クレアーゼにより分解されるという欠点も い、オーロラカイネースA及びオーロラカイ ネースB遺伝子発現抑制のための薬剤、オー ラカイネースA及びオーロラカイネースB遺伝 子関連疾患の治療のための薬剤及び制癌剤を 得ることができる。さらに、本発明によれば 、この遺伝子を用いた基礎実験の試薬を得る ことができる。

ヒトオーロラカイネースAプロモーター の構造を示す。 本発明のピロールイミダゾールポリア ド-A(PIP-A:No.47)とその結合部位を示す。 ヒトオーロラカイネースBプロモーター の構造を示す。 細胞周期依存性因子(CDR)及び細胞周期 伝子相同領域(CHR)の構造を示す。CDR及びCHRと もに他の酵素に同じ塩基配列を有することが わかる。 本発明のピロールイミダゾールポリア ド-B(PIP-B:No.48)とその結合部位を示す。 PIP-AのHPLCの結果を示す。 PIP-BのHPLCの結果を示す。 PIP-Aのゲルシフトアッセイ(EMSA)の結果 示す。レーン-1:一本鎖オリゴDNA、レーン-2: マッチ」二本鎖オリゴDNA(AURKAオリゴDNA)、レ ン-3:「ミスマッチ-1」二本鎖オリゴDNA(2塩基 変異AURKAオリゴDNA)、レーン-4:「マッチ」二本 鎖オリゴDNAとPIP-A、レーン-5:「ミスマッチ-1 二本鎖オリゴDNAとPIP-A、レーン-6:「ミスマッ チ-2」二本鎖オリゴDNA(AURKBオリゴDNA)とPIP-Aの 果を示す。 PIP-Bのゲルシフトアッセイの結果を示 。レーン1:一本鎖オリゴDNA、レーン-2:「マッ チ」二本鎖オリゴDNA(AURKBオリゴDNA)、レーン-3 :「ミスマッチ-1」二本鎖オリゴDNA(2塩基変異A URKBオリゴDNA)、レーン4:「マッチ」二本鎖オ ゴDNAとPIP-B、レーン-5:「ミスマッチ-1」二本 オリゴDNAとPIP-B、レーン-6:「ミスマッチ-2」 二本鎖オリゴDNA(AURKAオリゴDNA)とPIP-Bの結果を 示す。PIP-A及びPIP-Bともに特異的に標的塩基 列と結合することを示す。 ビアコアアッセイの結果を示す。PIP-A 特異的にAURKA標的オリゴDNA(マッチオリゴ)と 結合したことを示す。 ビアコアアッセイの結果を示す。PIP-A 2塩基変異を有するミスマッチ-1オリゴDNAと 、AURKA標的オリゴDNA(マッチオリゴDNA)との結 合と比べて結合が有意に低下したことを示す 。 ビアコアアッセイの結果を示す。PIP-A 互い違いのAURKB標的オリゴDNA=ミスマッチ-2 リゴDNAとは、AURKA標的オリゴDNA(マッチオリ DNA)及びミスマッチ-1オリゴDNAとの結合と比 て結合が更に低下したことを示す。 ビアコアアッセイの結果を示す。PIP-B 特異的にAURKB標的オリゴDNA(マッチオリゴDNA) と結合することを示す。 ビアコアアッセイの結果を示す。PIP-B 2塩基変異を有するミスマッチ-1オリゴDNAと 、AURKB標的オリゴDNA(マッチオリゴDNA)との結 合と比べて結合が有意に低下したことを示す 。 ビアコアアッセイの結果を示す。PIP-B 互い違いのAURKA標的オリゴDNA=ミスマッチ-2 リゴDNAとは、AURKB標的オリゴDNA(マッチオリ DNA)及びミスマッチ-1オリゴDNAとの結合と比 て結合が更に低下したことを示す。 FITC-標識PIPの分布を示す。FITC-PIP-Aを10 M添加し、6時間培養した際の細胞内での分布 を図に示す。それぞれ、(a)明視野(b)FITC、(c)Ho echst33342、(d)Merge(重ね合わせ)の結果を示す。 FITC-標識PIPの分布を示す。FITC-PIP-Bを10 M添加し、6時間培養した際の細胞内での分布 を図に示す。それぞれ、(a)明視野(b)FITC、(c)Ho echst33342、(d)Merge(重ね合わせ)の結果を示す。 FITC-標識PIPの分布を示す。FITC-PIP-A及び FITC-PIP-Bを各々5μM添加し、6時間培養した際の 細胞内での分布を図に示す。それぞれ、(a)明 視野(b)FITC、(c)Hoechst33342、(d)Merge(重ね合わせ) 結果を示す。 FITC-標識PIPの分布を示す。FITC-PIP-Aを10 M添加し、12時間培養した際の細胞内での分 を図に示す。それぞれ、(a)明視野(b)FITC、(c)H oechst33342、(d)Merge(重ね合わせ)の結果を示す。 FITC-標識PIPの分布を示す。FITC-PIP-Bを10 M添加し、12時間培養した際の細胞内での分 を図に示す。それぞれ、(a)明視野(b)FITC、(c)H oechst33342、(d)Merge(重ね合わせ)の結果を示す。 FITC-標識PIPの分布を示す。FITC-PIP-A及び FITC-PIP-Bを各々5μM添加し、12時間培養した際 細胞内での分布を図に示す。それぞれ、(a) 視野(b)FITC、(c)Hoechst33342、(d)Merge(重ね合わせ) の結果を示す。 FITC-標識PIPの分布を示す。FITC-PIP-Aを10 M添加し、24時間培養した際の細胞内での分 を図に示す。それぞれ、(a)明視野(b)FITC、(c)H oechst33342、(d)Merge(重ね合わせ)の結果を示す。 FITC-標識PIPの分布を示す。FITC-PIP-Bを10 M添加し、24時間培養した際の細胞内での分 を図に示す。それぞれ、(a)明視野(b)FITC、(c)H oechst33342、(d)Merge(重ね合わせ)の結果を示す。 FITC-標識PIPの分布を示す。FITC-PIP-A及び FITC-PIP-Bを各々5μM添加し、24時間培養した際 細胞内での分布を図に示す。それぞれ、(a) 視野(b)FITC、(c)Hoechst33342、(d)Merge(重ね合わせ) の結果を示す。 リアルタイムPCRアッセイによって測定 した相対的AURKAmRNA発現量を示す。通常の12時 培養時のAURKAmRNA発現量に比べて、PIP-Aは濃 依存性にその発現量を抑制する事が示され 。各相対的mRNA値は、内部標準として用いたG APDHのmRNA発現量で補正した値であり、平均値 標準偏差(SD):n=6で表現した。また、Turkey-Krame r法にて多重比較解析を行った。 リアルタイムPCRアッセイによって測定 した相対的AURKBmRNA発現量を示す。通常の12時 培養時のAURKBmRNA発現量に比べて、PIP-Bは濃 依存性にその発現量を抑制する事が示され 。各相対的mRNA値は、内部標準として用いたG APDHのmRNA発現量で補正した値であり、平均値 標準偏差(SD):n=6で表現した。また、Turkey-Krame r法にて多重比較解析を行った。 ルシフェラーゼアッセイによって測定 した相対的AURKAプロモーター活性を示す。通 の12時間培養時のAURKAプロモーター活性に比 べて、PIP-Aは濃度依存性にその活性を抑制す 事が示された。各相対的プロモーター活性 は、内部標準として用いたTKvectorの発光量 補正した値であり、平均値±標準偏差(SD):n=6 表現した。また、Turkey-Kramer法にて多重比較 解析を行った。 ルシフェラーゼアッセイによって測定 した相対的AURKBプロモーター活性を示す。通 の12時間培養時のAURKBプロモーター活性に比 べて、PIP-Bは濃度依存性にその活性を抑制す 事が示された。各相対的プロモーター活性 は、内部標準として用いたTKvectorの発光量 補正した値であり、平均値±標準偏差(SD):n=6 表現した。また、Turkey-Kramer法にて多重比較 解析を行った。 AURKA抗体によるウエスタンブロッティ グの結果を示す。HeLa細胞(100000個/ウェル)に おけるPIP-A(10μM、1μM及び0.1μM)がAURKAタンパク 質発現に及ぼす効果を観察した結果である。 PIP-Aの添加によりAURKAタンパク質の発現は濃 依存性に低下した。PIP-A及びPIP-B各々5μlずつ を同時に添加した場合にも、AURKAタンパク質 発現は低下した。AURKB抗体によるウエスタ ブロッティングの結果を示す。HeLa細胞(100000 個/ウェル)におけるPIP-B(10μM、1μM及び0.1μM)が AURKBタンパク質発現に及ぼす効果を観察した 果である。PIP-Bの添加によりAURKBタンパク質 の発現は濃度依存性に低下した。PIP-A及びPIP- B各々5μlずつを同時に添加した場合にも、AURK Bタンパク質の発現は低下した。 HeLa細胞を用いた細胞増殖阻害アッセ の結果を示す。PIP-A、PIP-B並びにPIP-AとPIP-B等 量混合物はHeLa細胞の増殖をそれぞれ濃度依 性に阻害した。特にPIP-AとPIP-Bの等量併用処 は、単独処理よりも強い増殖抑制効果を示 た。 種々の細胞におけるPIP-AとPIP-B等量併 処理の効果についての細胞増殖アッセイの 果を示す。PIP-AとPIP-B等量併用処理は、広い ペクトラムで多種類のヒト腫瘍細胞由来の ルラインの増殖を抑制した。一方、この併 処理に対して、ヒト正常細胞由来のセルラ ンは著明な抵抗性を示した。この結果はPIP- AとPIP-Bの併用処理の腫瘍細胞株に対する選択 性を示唆する結果と考えられる。 アポトーシス検出アッセイの結果を す。PIP-A(10μM)、PIP-B(10μM)PIP-A及びPIP-B(各5μM) の添加により細胞は様々な程度でアポトーシ スを起こした。特にPIP-AとPIP-Bの等量混合物 処理した細胞群にて、著明な早期アポトー スの惹起が認められた。 アポトーシス検出アッセイの結果を す。PIP-A(10μM)、PIP-B(10μM)PIP-A及びPIP-B(各5μM) の添加により細胞は様々な程度でアポトーシ スを起こした。特にPIP-AとPIP-Bの等量混合物 処理した細胞群にて、著明な早期アポトー スの惹起が認められた。

 本発明に係るピロールイミダゾールポリア ドにおいて、N-メチルピロール単位、N-メチ ルイミダゾール単位及びγ-アミノ酪酸単位(γ リンカーとも言う)は互いにアミド結合(-C(=O)- NH-)で連結されており、その一般構造及び製 方法は公知である(例えば、特許文献1~3参照) 。
 例えば、ピロールイミダゾールポリアミド Fmoc(9-フルオレニルメトキシカルボニル)を いた固相法(固相Fmoc法)による自動合成法に って製造することができる(特許文献3)。固 Fmoc法によれば、ピロールイミダゾールポリ ミドの末端をカルボン酸残基として固体担 から切り出すことができるので、種々の官 基を分子末端に導入してピロールイミダゾ ルポリアミドの誘導体を作成することもで る。例えば、デュオカルマイシン、ピロロ ンゾジアゼピン、ブレオマイシン、エンジ ン化合物、ナイトロジェンマスタード、こ らの誘導体等、DNAに対してアルキル化能を する化合物を必要に応じて導入することも きる。固相Fmoc法は市販のタンパク(ペプチ )合成機を用いる自動合成法であるため、天 に存在するタンパク質や非天然タンパク質 ピロールイミダゾールポリアミドとの共役 (コンジュゲート)を合成することもできる また、Fmoc法はt-BOC法に比べて反応条件が緩 であるため、タンパク質以外の有機化合物( 性条件下で不安定な官能基を有する化合物 も含む)の導入も可能である。例えば、ピロ ールイミダゾールポリアミドとDNAやRNA(又は れらの誘導体)との共役体を自動的に合成す ことも可能である。

 上記公知のFmoc法等によれば、末端にカル ボキシル基を有するピロールイミダゾールポ リアミドを合成することができる。その具体 例としては、例えば、末端にβ-アラニン残基 (β-アミノプロピオン酸残基)やγ-アミノ酪酸 基を有するピロールイミダゾールポリアミ 等が挙げられる。末端にβ-アラニン残基又 γ-アミノ酪酸残基を有するピロールイミダ ールポリアミドは、例えば、それぞれFmocで アミノ基を保護した、アミノピロールカルボ ン酸、アミノイミダゾールカルボン酸、β-ア ラニン又はγ-アミノ酪酸を担持した固相担体 を用い、ペプチド合成機を使用して固相Fmoc により合成することができる。

 アミノピロールカルボン酸の具体例とし は、例えば、4-アミノ-2-ピロールカルボン 、4-アミノ-1-メチル-2-ピロールカルボン酸、 4-アミノ-1-エチル-2-ピロールカルボン酸、4- ミノ-1-プロピル-2-ピロールカルボン酸、4-ア ミノ-1-ブチル-2-ピロールカルボン酸等が挙げ られる。アミノイミダゾールカルボン酸の具 体例としては、例えば、4-アミノ-2-イミダゾ ルカルボン酸、4-アミノ-1-メチル-2-イミダ ールカルボン酸、4-アミノ-1-エチル-2-イミダ ゾールカルボン酸、4-アミノ-1-プロピル-2-イ ダゾールカルボン酸、4-アミノ-1-ブチル-2- ミダゾールカルボン酸等が挙げられる。

 固相Fmoc法によれば、例えば、ピロールイ ミダゾールポリアミドとFITC(フルオレセイン ソチオシアネート)との共役体を合成するこ ともできる。FITCは従来から抗体の蛍光標識 薬として知られているので、得られる共役 は、当該ピロールイミダゾールポリアミド 特定のDNA配列を認識することを証明するた に用いることができる。

 本発明のオーロラカイネースA遺伝子発現抑 制剤は、N-メチルピロール単位(Py)、N-メチル ミダゾール単位(Im)及びγ-アミノ酪酸単位を 含むピロールイミダゾールポリアミドであっ て、ヒトオーロラカイネースAプロモーター 塩基配列-100~-70(配列番号2)の一部又は全部と これに対する相補鎖を含む二重らせん領域( 下標的領域と言う)の副溝内において、前記 -アミノ酪酸単位の部位で折りたたまれてU字 型のコンフォメーションをとることができ、 C-G塩基対に対してはPy/Im対が、G-C塩基対に対 てはIm/Py対が、A-T塩基対及びT-A塩基対に対 てはいずれもPy/Py対がそれぞれ対応する、上 記ピロールイミダゾールポリアミドを含む。
 本発明のオーロラカイネースB遺伝子発現抑 制剤は、N-メチルピロール単位(Py)、N-メチル ミダゾール単位(Im)及びγ-アミノ酪酸単位を 含むピロールイミダゾールポリアミドであっ て、ヒトオーロラカイネースBプロモーター 塩基配列-44~-17(配列番号6)の一部又は全部と れに対する相補鎖を含む二重らせん領域(以 下標的領域と言う)の副溝内において、前記γ -アミノ酪酸単位の部位で折りたたまれてU字 のコンフォメーションをとることができ、C -G塩基対に対してはPy/Im対が、G-C塩基対に対 てはIm/Py対が、A-T塩基対及びT-A塩基対に対し てはいずれもPy/Py対がそれぞれ対応する、上 ピロールイミダゾールポリアミドを含む。

 通常DNAの螺旋の骨格は2種類の溝をつくり 、広くて深い溝を主溝(メジャーグルーブ)、 くて浅い溝を副溝(マイナーグルーブ)と呼 でいる。ここで上記ピロールイミダゾール リアミドは、特定の塩基対がつくる副溝(マ ナーグルーブ)に高い親和性と特異性を以っ て非共役結合的に結合することができる。こ の時の結合は、副溝のC-G塩基対に対してはピ ロールイミダゾールポリアミドのPy/Im対が、G -C塩基対に対してはIm/Py対が、A-T塩基対及びT- A塩基対に対してはいずれもPy/Py対がそれぞれ 対応している。そして、ピロールイミダゾー ルポリアミド分子中のγ-アミノ酪酸単位の部 位で分子が折りたたまれてU字型のコンフォ ーションをとる。

 副溝の塩基対とピロールイミダゾールポ アミドのPyとImの対が上述のように対応して いないと、副溝とピロールイミダゾールポリ アミドとの結合が不十分となる。このように 、副溝の塩基対とPy-Im対が上述のように対応 ていないピロールイミダゾールポリアミド 本願ではミスマッチ又はミスマッチポリア ドと呼ぶ。

 ヒトオーロラカイネースA及びヒトオーロラ カイネースB遺伝子調節領域の塩基配列は図1 3及び配列番号1、5に示す通りである(Journal  of Biological Chemistry,2002;277:10719-10726;及びBiochem istry Biophysics Research Communication 2004;316:930-936 )。
 本発明のピロールイミダゾールポリアミドP IP-A:No.47及びPIP-B:No.48(以下それぞれPIP-A及びPIP -Bとも言う)は下記に示す通りである。
PIP-A:No.47

PIP-B:No.48


 PIP-A:No.47は、分子式C 65 H 84 N 25 O 13 、分子量1422.66を有し、その標的配列はヒト ーロラカイネースA調節領域の-100~-70(配列番 2)の領域のうち、E4TF1結合領域を含む-89~-79( 列番号3)の領域であり、より具体的にはaccac tt(-89~-83)(配列番号4)の7塩基に結合することに より、ヒトオーロラカイネースA遺伝子の発 を抑制する。

 PIP-B:No.48は、分子式C 78 H 97 N 28 O 15 、分子量1665.76を有し、その標的配列はヒト ーロラカイネースB遺伝子調節領域の-44~-17( 列番号6)の領域のうち、E2F/DPファミリー結合 領域を含む-31~-17(配列番号7)の領域であり、 り具体的にはagatttga(-25~-18)(配列番号8)の8塩 に結合することにより、ヒトオーロラカイ ースB遺伝子の発現を抑制する。

 本発明者らはヒトオーロラカイネースA遺 伝子及びヒトオーロラカイネースB遺伝子プ モーターの特定の領域を標的とするPy-Imポリ アミド類を合成した。これらのポリアミドは 核内に48時間以上特に消失することもなく安 に滞留した。アンチセンスオリゴヌクレオ ド及びリボザイムと比較して、ポリアミド よりすぐれた透過性(低濃度、トランスフェ クション媒体不要)とより高い安定性を培養He La細胞において示した。ポリアミドの高い透 性と安定性は遺伝子治療法のための真核細 の核への理想的な薬剤アプローチを提供す ものである。

 最近までPy-Imポリアミドの開発はプロモー ー配列における転写因子-DNA複合体の構造的 性に基づいていた。TATAボックス含有プロモ ーター中の配列を標的とする効率的な方法は 、TATAボックスに隣接する塩基対に結合する う設計することであろう。TATAボックスはほ んどのタンパク質コード遺伝子において転 開始部位の上流25~35塩基対に位置している 転写介在因子D(TAF II D)はTATAボックスに特異的に結合するTATAボッ ス結合タンパク質(TBP)を含んでおり、コアプ ロモーターにおける他の転写関与因子を採用 してプレ開始コンプレックス(PIC)を形成する PICは遺伝子転写を開始してアクチベータ又 サプレッサと相互作用して遺伝子発現を調 する。TBPも二重らせんDNAの副溝(マイナーグ ルーブ)に結合するので(Lee et al:Cell.1991 Dec  20;67(6):1241-50、Starr et al:Cell.1991;67:1231-40、Cour ey et al:Cell.1988;55:887-98)、合成ポリアミドはTA TA結合タンパク質の結合部位を競合的に占有 、遺伝子転写に干渉する。様々なプロモー ーで設計したポリアミドの成功例のうちで TATAボックスを標的とするものが常に機能す ることが知られている。ところが、AURKAおよ AURKBのプロモータ領域にはTATAボックスの特 的配列が無く、その代わりにCCAATボックス cell cycle dependent element(CDE)とcell cycle-gene ho mology region(CHR)と呼ばれる細胞周期調節蛋白 にG2期特異的に発現する遺伝子に共通の配列 を有する。このCDE-CHR領域を有することは、 胞周期G2期に特異的な発現をすることが予測 されたが、この領域に変異を導入する実験に より、G1-S期の発現抑制をこの領域特にCHR領 が担当していることが示唆された。この領 においてDP-1、DP-2、E2F-1やE2F-4といった転写 子は二重らせんDNAの副溝(マイナーグルーブ) に結合することが解っており、これらの転写 因子との結合により細胞周期特異的にAurora遺 伝子の発現が制御されている。このことより TATA結合たんぱく質の結合阻害と同様にCDE-CHR 域への転写因子蛋白の結合部位を競合的に 有するPy-Imポリアミドの開発により、遺伝 転写を干渉する化合物の合成が可能と考え れる。(Liu et al.1996 NucleicAcidRes 24:2905-10,Kimu ra et al.2004 BBRC 316:930-36)

 hAURKAプロモーター領域にある転写開始部位 上流には、配列cttccgg(配列番号9からなる正 調節エレメント(PRE)が存在する。このエレ ントに、E4TF1タンパク質が結合することによ り、hAURKAの転写を正に制御することが分かっ ている(Tanaka et al:J.Biol.Chem.2002;277(12):10719-26)
 一方、hAURKBプロモーター領域にある転写開 部位の上流には、細胞周期依存性因子(cell  cycle dependent element;以下、「CDR」とも言う)及 び細胞周期遺伝子相同領域(cell cycle gene homo logy element;以下「CHR」とも言う)が存在し、CDR 及びCHRは、細胞周期依存性のプロモーター活 性を制御することが分かっている。CDEには、 E2F/DFファミリータンパク質が結合する。オー ロラBタンパク質のmRNAの発現は、CDR/CHRによっ て制御されている(Kimura M et al:Biochem.Biophys.R es.Commun.2004;319(3):930-936)。

 E4TF1遺伝子は、転写因子であるGA結合タン パク質のβサブユニットを指令する。従って 本発明のPIP-Aが二本鎖DNAを塩基配列特異的 認識し、DNA二重螺旋構造の副溝(マイナーグ ーブ)に結合することにより、E4TF1タンパク のhAURKA遺伝子への結合が阻害されると、結 としてhAURKA遺伝子の転写が阻害される。本 明のPIP-Aは、当該標的二本鎖DNAに特異的に 合した。さらに、G2/M期において顕著にAURKAmR NAの発現量は減少した。

 CDR/CHR配列は、AURKBのmRNAレベルを調節する 調節配列であり、当該配列には、E2F/DFファミ リータンパク質が結合する。E2Fタンパク質は 、細胞周期と腫瘍抑制タンパク質の活動抑制 において決定的な役割を果たし、小DNA腫瘍ウ イルスの形質転換タンパク質の標的でもある 。E2Fタンパク質は、このファミリーのほとん どのタンパク質で見られる進化的に保存され た領域をいくつか含んでいる。従って、本発 明のPIP-Bは、この様な保存領域に非特異的に 合することを防ぐため、CDE配列から上流に4 塩基ずらしてPIP-Bを設計した。

 PIP-Aも、非特異結合を防ぐために上流に4 基ずらして設計した。4塩基ずらしても上述 の通りPIP-Aは二本鎖DNAの標的部位への結合及 AURKAmRNAの発現量の減少が見られた。

 本発明のPIP-Bは、PIP-Aと同様に二本鎖DNAを 塩基配列特異的に認識し、DNA二重螺旋構造の 副溝(マイナーグルーブ)に結合することによ 、E2F/DFファミリータンパク質のhAURKB遺伝子 結合を阻害し、結果としてhAURKB遺伝子の転 が阻害される。本発明のPIP-Bは、当該標的 本鎖DNAに特異的に結合した。さらに、G2/M期 おいて顕著にAURKBmRNAの発現量は減少した。

 プロモーター領域における転写因子の調節 外に、他の因子も遺伝子発現に影響を与え いる可能性もある。これらの因子はクロマ ンパッキング、ポリアデニレーション、ス ライシング、mRNA安定性、翻訳開始等を包含 するものである(Berger et al:Mol Cell.2001;5:263-8 McKeown Annu Rev Cell Biol.1992;8:133-55、Decker et al:Trends Biochem Sci.1994;19:336-40、Kozak Annu Rev  Cell Biol.1992;8:197-225)。合成ポリアミドはヌク オソームの位置関係から標的部位に接近す ことができ、特異的配列を標的とすること よりクロマチンの縮合・脱縮合構造に影響 与えている可能性がある(Gottesfeld et al:J Mo l Biol.2002;321:249-63;Gottesfeld et al:J Mol Biol.2001 ;309:615-29。)。ピロールイミダゾールポリアミ ドがヘテロクロマチン褐色サテライトを開き 、GAFの結合を可能とし、その結果drosophila mel anogasterにおける表現型の変化を引き起こして いるということが証明されている。ピロール イミダゾールポリアミドは容易に合成し、興 味のある配列を標的とするように設計するこ とができるので、ゲノムの機能研究や最終的 にはhAURKA及びhAURKB遺伝子阻害や活性化のよう な遺伝子治療に有用である。
 本発明に係るPy-Imポリアミドは転写開始領 からは遠位の上流において設計することが き、これがhAURKA及びhAURKB遺伝子の発現に対 る阻害効果を示す。従って、本発明のPIP-A及 びPIP-BはヒトオーロラカイネースA及びヒトオ ーロラカイネースB遺伝子発現抑制のための 剤として使用することができる。

 本発明のPIP-A及びPIP-Bを同時に用いた場合 に互いに干渉作用は示さず、hAURKAmRNA及びhAURK BmRNAの両方の発現阻害を示した。従って、hAUR KA及びhAURKB遺伝子選択的発現抑制剤である本 明の化合物を同時に使用することによって hAURKA及びhAURKB遺伝子の両方を阻害すること できる点で有利である。

 本発明のPIP-A及びPIP-Bは、各々HeLa細胞のmR NAの発現を顕著に抑制した。また、PIP-A及びPI P-Bの細胞の核内への移動が観察された。従っ て、ドラックデリバリーシステム等の手法を 用いなくても、本発明のPIP-A及びPIP-Bは細胞 核内に移行するため薬剤として有利である 当該有利な効果は、本発明のPIP-A及びPIP-Bを トオーロラカイネースA及びヒトオーロラカ イネースB関連疾患の治療に用いるために有 である。

 また、本発明のPIP-A及びPIP-Bは、それぞれ 細胞増殖に影響を及ぼす。本発明のPIP-A及びP IP-Bは、各々HeLa細胞の細胞増殖を抑制し、少 くとも周知の抗癌剤であるシスプラチンと 程度又はそれ以上の細胞増殖抑制効果が観 された。また、PIP-A及びPIP-Bを併用すること によってPIP-A及びPIP-Bを別々に用いる場合と べて更に顕著に相乗的に細胞増殖抑制効果 発揮した。

 本発明のPIP-A及びPIP-Bは、HeLa細胞だけで く、T98G細胞を含む種々の癌細胞の増殖を阻 した。また、正常細胞の増殖阻害はより高 濃度のPIP-A及びPIP-Bで処理しなければ阻害さ れなかった。従って、本発明のPIP-A及びPIP-B れぞれによる処理により、正常細胞増殖阻 を導くことなく、癌細胞のみの増殖を阻害 ることができる。従って、本発明のPIP-A及び PIP-Bは、癌に対する治療薬として、正常細胞 影響を与えることなく、癌細胞の増殖を阻 できる点で有利である。

 本発明のPIP-A及びPIP-Bは、各々アポトーシ スを誘導した。

 また、癌、非限定的に挙げると、特に甲 腺癌、前立腺癌、乳癌、甲状腺肉腫、上皮 巣癌、精巣性胚細胞腫瘍、膀胱癌、神経膠 、結腸癌、肺癌、小細胞肺癌、骨髄性白血 、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、大腸 等を始めとするヒトの癌種でAuroraA及びAurora Bタンパク質の過剰発現が報告されている。 って、本発明のhAURKA及びhAURKB遺伝子発現抑 剤は、種々の癌に対する治療薬として有効 あると合理的に考えることができる。

 更に、本発明のhAURKA及びhAURKB遺伝子発現 制剤は、同時に使用した場合であっても、 いに干渉作用は示さず、両遺伝子を同時に 制することができるという相乗効果を示す このような効果は、上述したような種々の に対する治療薬として更に有効であると合 的に考えることができる。

1.ヒトオーロラカイネースA及びヒトオーロ ラカイネースBプロモーターに対応するPy-Imポ リアミドの合成

(1)ヒトオーロラカイネースA及びヒトオーロ カイネースBプロモーターに対応するPy-Imポ アミドの設計
I.材料及び方法
 Py-Imポリアミドとして、ヒトオーロラカイ ースAプロモーターの-89~-83又はヒトオーロラ カイネースBプロモーターの-25~-18の塩基対に 合するように、上記のようなPIP-A:No.47及びPI P-B:No.48を設計した。

(2)Fmoc法を用いたPy-Imポリアミドのマシンアシ スト(機械補助)自動合成
 ピロールイミダゾールポリアミドのマシン シスト自動合成を、連続フローペプチド合 機Pioneer(商標)(アプライドバイオシステムズ )を用いて0.1mmolスケール(200mgのFmoc-β-アラニ -CLEAR酸レジン、0.50meq/g、Peptide Institute、Inc.) で実施した。自動固相合成はDMF洗浄、Fmoc基 20%ピペリジン/DMFによる除去、メタノール洗 、HATU及びDIEA(それぞれ4当量)の存在下での ノマーとの60分間のカップリング、メタノー ル洗浄、必要に応じて無水酢酸/ピリジンに る保護、及び最終的なDMF洗浄からなってい 。Py-Imポリアミドは一般に中程度の収率(10-30 %)で得られた。

 FITCカップリング:4倍過剰のフルオレセイン( 0.40mmol)及びDIEA(HATUなし)をDMFに溶解したもの カラムを通して60分間フラッシュした。
 一般的手順:Fmoc-β-アラニン-Wang樹脂のFmoc基 除去した後、樹脂をメタノールで連続的に 浄した。カップリング工程をFmocアミノ酸で 実施し、次いでメタノールでの洗浄を行った 。これらの工程を全配列が導入されるまで何 度も繰返した。カップリング工程を終えた後 、必要に応じてN末端アミノ基を保護するか はFITCでカップリングし、DMFで洗浄し、反応 器を取りはずした。

 カルボン酸としての分解:合成ポリアミドを 冷エチルエーテル沈澱により分解工程(91%TFA-3 %/TIS-3%DMS-3%水の混合物5ml/樹脂0.1mmol)の後に単 した。
 アミンとしての分解:合成ポリアミドを冷エ チルエーテル沈澱により分解工程(N、N-ジメ ルアミノプロピルアミン5mL/樹脂0.1mmol、50℃ 一晩)の後に単離した。
 精製:最終精製は、10mL/minの流速の分析用RP-H PLCで、緩衝液A(0.1%TFA/水又は0.1%AcOH/水)中B(ア トニトリル)の直線勾配を用いて、350nmのUV検 出により行った。PIP-A:No.47及びPIP-B:No.48のRP-HP LCのチャートを図6及び7にそれぞれ示す。

2.PIP-A及びPIP-BのIn vitroでの生物学的機能解 析

(1)ゲルシフトアッセイ(Electromobility Shift Assay  (EMSA))
I.材料及び方法
 オリゴヌクレオチドを合成し、アニーリン して、hAURKA及びhAURKBプロモーターの塩基対 対応する4種の二本鎖オリゴヌクレオチドと した。一方の一本鎖オリゴヌクレオチドをFIT Cで標識し、相補的配列の一本鎖オリゴヌク オチドとハイブリダイゼーションして二本 DNA作成した。具体的な二本鎖ヌクレオチド 塩基配列は、AURKAオリゴDNA(マッチ)のセンス ライマー(5’-FITC-GTTGGCTCCACCACTTCCGGGT-3’)(配列 番号9)及びアンチセンスプライマー(5’-ACCCGGA AGTGGTGGAGCCAAC-3’)(配列番号10)、2塩基変異を有 るAURKAオリゴDNA(ミスマッチ-1)のセンスプラ マー(5’-FITC-GTTGGCTCCACCGATTCCGGGT-3’)(配列番号 11)及びアンチセンスプライマー(5’-ACCCGGAATCGG TGGAGCCAAC-3’)(配列番号12)、AURKBオリゴDNA(マッ )のセンスプライマー(5’-FITC-GGCGGGAGATTTGAAAAGT CCT-3’)(配列番号13)及びアンチセンスプライ ー(5’-AGGACTTTTCAAATCTCCCGCC-3’)(配列番号14)、2 基変異を有するAURKBオリゴDNA(ミスマッチ-1) センスプライマー(5’-FITC-GGCGGGAGACCTGAAAAGTCCT-3 ’)(配列番号15)及びアンチセンスプライマー( 5’-AGGACTTTTCAGGTCTCCCGCC-3’)(配列番号16)を作成 た。また、AURKAオリゴDNA(ミスマッチ-2)とし は、AURKBオリゴDNAである配列番号13及び配列 号14のオリゴDNAを使用し、AURKBオリゴDNA(ミ マッチ-2)としては、AURKAオリゴDNAである配列 番号9及び配列番号13を使用した。37℃で15分 、結合緩衝液(40mM Tris、pH7。9、250mM NaCl、25m M EDTA、25mM DTT、100mM KCl)中でポリアミド又は ミスマッチポリアミドとともにインキュベー トした。得られた複合体を20%ポリアクリルア ミドゲルにより電気泳動し、蛍光標識二本鎖 オリゴヌクレオチドの移動度を蛍光イメージ 解析機(Fuji LAS 3000等)で解析した。

II.結果
 合成ポリアミドの二本鎖オリゴヌクレオチ への結合
 ゲルシフトアッセイによりPIP-A:No.47及びPIP-B :No.48の標的配列への結合を検討した。それぞ れのピロールイミダゾールポリアミドの標的 配列を含む22塩基のセンス、アンチセンスの リゴヌクレオチドを作成し、これをアニー ングさせて標的部位の二本鎖DNAを作成し、 れとそれぞれのピロールイミダゾールポリ ミドとをインキュベートした。これらをポ アクリルアミドゲルで電気泳動してピロー イミダゾールと標的配列との結合性を検討 た。PIP-A及びPIP-Bとともに二本鎖DNA(DS)にピ ールイミダゾールポリアミド(Py-Im)を加える 、DSのみのレーンと比べ泳動度が低下し、 分子化したことが示唆され、DSとPy-Imとの結 が証明された。結果を図8及び9に示す。

(2)ビアコアアッセイ
I.材料及び方法
 Biacore2000(GEヘルスケア)は、表面プラズモン 鳴(Surface Plasmon Resonance、SPR)を測定原理と ており、生体内でのタンパク質、核酸、糖 など分子間の相互作用を、ラジオアイソト プや蛍光物質などによる標識無しにin vitro 再構成し、リアルタイムで観察できる装置 あり、本装置を用いて分子間の相互作用を 値化して評価することが可能である。

 ストレプトアビジンを予め固定化したセ サーチップ(Sensor Chip SA,BR-1000-31)を使用し ヘアピンビオチン化DNAプローブ(1本鎖DNAが相 補配列を含み、ハイブリダイゼーションする ことで2本鎖部分を含むパリンドロームDNAを 成)1μMを固定した後、ピロールイミダゾール ポリアミド(Py-Im)を添加して、2本鎖DNAとの結 性の変化を2分子間の結合・解離に伴うセン サーチップ表面での微量な質量変化をSPRシグ ナルとして検出し、経時的に測定した。なお 、具体的なヘアピンビオチン化DNAプローブの 塩基配列は、AURKAオリゴDNA(マッチ)(5’-Biotin-G TTGGCTCCACCACTTCCGGGT-TTTT-ACCCGGAAGTGGTGGAGCCAAC-3’)(配 番号17)、2塩基変異を有するAURKAオリゴDNA(ミ スマッチ-1)(5’-Biotin-GTTGGCTCCACCGATTCCGGGT-TTTT-ACCC GGAATCGGTGGAGCCAAC-3’)(配列番号18)である。また AURKBオリゴDNA(マッチ)(5’-Biotin-GTTGGCTCCACCGATTCC GGGT-TTTT-ACCCGGAATCGGTGGAGCCAAC-3’)(配列番号19)、2 基変異を有するAURKBオリゴDNA(ミスマッチ-1)5 -Biotin-GGCGGGAGACCTGAAAAGTCCT-TTTT-AGGACTTTTCAGGTCTCCCGCC -3’)(配列番号20)である。AURKAオリゴDNA(ミス ッチ-2)は、AURKBオリゴDNA(マッチ)(配列番号19) を、AURKBオリゴDNA(ミスマッチ-2)は、AURKAオリ DNA(マッチ)(配列番号17)を用いた。0nMから1μM の濃度のPy-Imを添加し、20μl/secの流量でセン ーグラムと呼ぶグラフとして表示し、レス ンス(RU)値を経時的に測定することで、平衡 状態における2分子間の親和性(解離定数:KDあ いは親和定数:KA)および結合・解離反応の速 さに関する情報、すなわち結合速度定数(ka) および解離速度定数(kd)を測定し分子間結合 解析した。得られた濃度依存性センサーグ ムをLangmuir double molecular interaction model wit h mass transportを使用して、解析しセンサーチ ップに固定されたDNAプローブと添加したピロ ールイミダゾールポリアミドの結合能、乖離 能をKD、KA、kd、ka値として算定した。

II.結果
 本発明のPIP-A:No.47は、AURKAオリゴDNA(マッチ) 結合速度定数ka(1/Ms)3.84E+05、解離速度定数kd( 1/s)5.11E-04、親和定数KA(1/M)7.51E+08解離定数KD(M)1 .33E-09、2塩基変異を有するAURKAオリゴDNA(ミス ッチ-1)と結合速度定数ka(1/Ms)4.42E+03、解離速 度定数kd(1/s)3.17E-03、親和定数KA(1/M)1.39E+06解離 定数KD(M)7.17E-07が得られ結合特異性に539倍の を認めた。PIP-B:No.48は、AURKBオリゴDNA(マッチ )と結合速度定数ka(1/Ms)5.47E+05、解離速度定数k d(1/s)2.68E-04、親和定数KA(1/M)2.04E+09解離定数KD(M )4.90E-10、2塩基変異を有するAURKBオリゴDNA(ミ マッチ-1)と結合速度定数ka(1/Ms)5.41E+03、解離 度定数kd(1/s)2.19E-03、親和定数KA(1・M)2.47E+06 離定数KD(M)4.05E-07が得られ結合特異性に826倍 差を認めた。以上よりPIP-AおよびPIP-Bは、結 合部位と同様の配列を有するオリゴDNAに特異 的に結合することが分かった。また、本発明 のPIP-A:No.47は、AURKAオリゴDNA(ミスマッチ-2)と 合速度定数ka(1/Ms)1.72E+03、解離速度定数kd(1/s )3.59E-03、親和定数KA(1/M)4.79E+05解離定数KD(M)2.09 E-06であった。PIP-B:No.48は、AURKBオリゴDNA(ミス マッチ-2)と結合速度定数ka(1/Ms)3.40E+03、解離 度定数kd(1/s)4.64E-03、親和定数KA(1/M)7.33E+05解 定数KD(M)1.36E-06であった。結果を図10~15に示 。

3.In vitroにおけるFITC-標識PIPの分布

I.材料及び方法
 イ)外来刺激に対する細胞死の誘導が遅いア ポトーシス低感受性のHeLa細胞(ヒト子宮頸が 細胞)を、6ウェルプレートの各ウェルに30000 細胞となるよう播種し、2mlの10%子牛血清(Invit rogen)及び1%PSGを含むDulbecco変性Eagle培地(DMEM)に て培養した。
 ロ)培養HeLaにおけるFITC-標識ポリアミド類の インキュベーション
 HeLa細胞を24時間培養後、FITC標識PIP(PIP-A 及  PIP-B)を10μMの濃度で培地に直接添加した。 経時的に観察し、6時間、12時間、24時間で核 FITC及びHoechst33342によって30分間染色し、HeLa 細胞を蛍光顕微鏡を用いて、×200の倍率で観 した。

II.結果
 FITC標識をしたPIPは、HeLa細胞の核に特異的 取り込まれた。FITC標識をしたPIP添加後6時間 でほぼ全ての細胞の核が、蛍光強度は不均一 であるがFITCの蛍光を示し、細胞質での蛍光 、培地同様でバックグランドレベルであっ 。添加後6時間でFITCの蛍光強度はほぼ全ての 細胞で均一化していた。また、添加後12時間 、全ての細胞の核内にFITCの蛍光が認められ 、その強度の濃縮が認められた。さらに、24 間でFITCの蛍光強度が減弱しない事より、PIP -A及びPIP-Bが細胞核内で非常に安定であるこ が示唆された。結果を図16~24に示す。

4.PIP-A及びPIP-Bによるプロモーターに対する ノックダウン効果の同定及びランダム培養細 胞におけるmRNA発現とAURKA及びAURKBタンパク質 発現の同定

(1)リアルタイムPCRアッセイ(mRNA発現の測定)
I.材料及び方法
 HeLa細胞(ヒト子宮頸がん細胞)を、100000細胞 なるよう播種し、10%子牛血清(Invitrogen)下で1 %PSGを含むDulbecco変性Eagle培地(DMEM)にて6時間培 養後、培地を交換し、10μMのPIP-A、PIP-Bおよび 5μMずつのPIP-AとPIP-B両方を含む10%子牛血清添 培地もしくはPIPを含まない同様の培地で6時 間培養し、細胞を回収し、RNAをRNeasy Mini Kit( Quiagen)を使用し抽出、リアルタイムPCRアッセ に供した。
 リアルタイムPCRアッセイは、TAKARA DICE real time systemを利用し、PrimeScript TM  RT Enzyme Mix Iにより逆転写反応を行い、SYBR  Premix Ex Taqを使用し、TAKARA Perfect Real Time Primerより購入したAURKA、AURKBおよびGAPDHプラ マーを利用し、(初期変性)95℃、10秒(PCR反応: 40サイクル)95℃、5秒 60℃、30秒(融解曲線分 )の反応系によって行った。具体的なプライ ーの塩基配列は、AURKAセンスプライマー(5’ -GGATCTCTGGAGCCTTGGAGTTC-3’)(配列番号21;タカラバ オ、HA038310-F)、AURKAアンチセンスプライマー( 5’-TGGCTGGGATTATGCTTCAACA-3’)(配列番号22;タカラ イオ、HA038310-R)、AURKBセンスプライマー(5’-T CATGAGCCGCTCCAATGTC-3’)(配列番号23;タカラバイオ HA089596-F)、AURKBアンチセンスプライマー(5’- AAGATGTCGGGTGTCCCACTG-3’)(配列番号24;タカラバイ 、HA089596-R)、GAPDHセンスプライマー(5’-GCACCGT CAAGGCTGAGAAC-3)(配列番号25;HA067812-F)及びGAPDHアン チセンスプライマー(5’-TGGTGAAGACGCCAGTGGA-3’)( 列番号26;HA06812-R)を用いた。増幅産物の生成 量モニターは、インターカレーター法により 蛍光強度として検出され、指数関数的にシグ ナルが上昇する閾値と増幅曲線が交わる点Ct を算出した。AURKAとAURKBのCt値をGAPDHのCt値と 比較することで相対的なAURKA及びAURKBのmRNAの 現量を算定した。

II.結果
 相対的AURKAmRNA発現量は、通常の12時間の培 では1.9であったが、PIP-A10μM添加で0.9に低下 、PIP-AとPIP-Bをそれぞれ5μM添加すると0.8、 スマッチとしてのPIP-B10μM添加では1.7であっ 。相対的AURKBmRNA発現量は、通常の12時間の 養で2.1であったが、PIP-B10μM添加で1.0に低下 、PIP-AとPIP-Bをそれぞれ5μM添加すると1.1、 スマッチとしてのPIP-A10μM添加では1.9であっ 。このことより、PIP-Aは単独でもPIP-Bと同時 に投与してもAURKA遺伝子のmRNA発現量を抑制し たが、PIP-BはAURKA遺伝子のmRNA発現量に影響を ぼさなかった。同様にPIP-Bは単独でもPIP-Aと 同時に投与してもAURKB遺伝子のmRNA発現量を抑 制したが、PIP-AはAURKB遺伝子のmRNA発現量に影 を及ぼさなかった。PIP-AとPIP-BがそれぞれAUR KAとAURKBのmRNA発現量を特異的に且つ独立して 制することが示された。また、PIP-AとPIP-Bの 併用投与によっても発現抑制効果が保たれる 事が示された。各群においてTurkey-Kramer法に る多重比較検定の結果は、危険率P<0.05で 意差ありと判定した。結果を図25及び26に示 。

(2)ルシフェラーゼアッセイ(プロモーター活 の測定)
I.材料及び方法

 ヒトAURKA遺伝子上流のプロモータ領域1.8Kb( 列番号27)とヒトAURKB遺伝子上流のプロモータ 領域約2.4Kb(配列番号28)を含むDNAフラグメント をpGL3ベクター(プロメガ)にそれぞれ挿入した 。それぞれのpGL3挿入ベクターをHeLa細胞にト ンスフェクションし、プロモータアクティ ティを相対的ルシフェラーゼによる発光強 として検出した、測定はTK vectorとのデュア ルルシフェラーゼアッセイシステム(プロメ )を利用し、データの補正を行った。それぞ のアッセイを6回測定し、平均値とSD値で示 た。通常の培養系での発光とPIP-A、PIP-Bを10 m 1μM添加後の発光強度を比較した。各群に いてTurkey-Kramer法による多重比較検定を行っ た。
II.結果
 ヒトAURKA遺伝子上流のプロモータ領域1.8Kb( 列番号27)を含むDNAフラグメントを挿入したpG L3ベクターによるHeLa細胞での発光活性は、PIP -Aの添加により濃度依存性に有意に低下した このことによりPIP-Aの添加により、AURKAプロ モーターの調整下での発現ベクターからのル シフェラーゼ発現が抑制され、発光強度の低 下が起こったと確認された。
ヒトAURKAB遺伝子上流のプロモータ領域2.4Kb(配 列番号28)を含むDNAフラグメントを挿入したpGL 3ベクターによるHeLa細胞での発光活性は、PIP- Bの添加により濃度依存性に有意に低下した このことによりPIP-Bの添加により、AURKBプロ ーターの調整下での発現ベクターからのル フェラーゼ発現が抑制され、発光強度の低 が起こったと確認された。
 各群においてTurkey-Kramer法による多重比較検 定の結果は、危険率P<0.05で有意差ありと判 定した。結果を図27及び28に示す。

(3)ウエスタンブロッティング(タンパク質の 定)
I.材料及び方法
 HeLa細胞(ヒト子宮頸がん細胞)を、100000細胞 なるよう播種し、10%子牛血清(Invitrogen)下で1 %PSGを含むDulbecco変性Eagle培地(DMEM)にて6時間培 養後、培地を交換し、10μMのPIP-A、PIP-Bおよび 5μMずつのPIP-AとPIP-B両方を含む10%子牛血清添 培地もしくはPIPを含まない同様の培地(1%DMSO 含有)で12時間培養し、細胞を蛋白分解酵素阻 害剤を含む、細胞溶解液内に回収した。SDS-PA GE法により、質量で分離後、通常のウェスタ ブロットを行った。抗AURKA、抗AURKBマウスモ ノクローナル抗体(ABCAM社)を使用した。
コントロールとしてAnti beta-Actin(Rabbit)ELISA/WB( Rockland,Inc.)ベータアクチンに対する抗体を用 た。ウェスタン・ブロッティングでのバン の濃淡をLAS4000にて測定し、各Polyamideのノッ クダウン効果を評価した。

II.結果
 AURKA及びAURKBの蛋白合成を、トータル12時間 ランダム(非同調)培養にて検討した。PIP-A及 びPIP-Bで処理した細胞群では、PIP化合物で非 理の対照細胞群(1% DMSO含有)に比べて、PIP化 合物の濃度依存性に、AURKA或いはAURKBの蛋白 成が有意に低下している事が示された。ま 、両PIP化合物のAURKA或いはAURKBの蛋白合成に するノックダウン効果は、特に(終濃度で)10 μMのPIP化合物で処理した際に最も著しい事が 示された。加えて、PIP-AとPIP-Bを合計10μMで併 用処理(各5μM)した際には、何れもAURKA及びAURK Bの蛋白合成の有意な低下を認めた。一方、 スマッチとしてのPIP-B及びPIP-Aは、それぞれA URKA或いはAURKBの蛋白合成量に何らの影響を及 ぼさなかった。
 また、コントロールとして用いたbeta-Actinの 蛋白合成量は、PIP非処理群/処理群で変化が く、常に一定していた。これらの結果は、 量的real-time PCR assayによるmRNAの発現量解析 結果と完全に一致している。また、以上の 果は、両PIP化合物が、AURKA或いはAURKBのプロ モーター活性を抑制し、その結果、それぞれ のmRNAの発現量と蛋白合成量を、特異的に且 互いに独立して抑制する事を示している。 果を図29に示す。

5.細胞増殖阻害アッセイ

(1)HeLa細胞(ヒト子宮頸がん細胞)を用いた増殖 阻害アッセイ
I.材料及び方法
 細胞を用いて細胞増殖抑制試験を行った。H eLa細胞を、3000細胞となるよう96穴マイクロタ イタープレートに播種し、100μlの培地、10%子 牛血清(Invitrogen)下で1%PSGを含むDulbecco変性Eagle 培地(DMEM)にて6時間培養後、培地を交換し、0 Mから20μM(0μM、0.01μM、0.1μM、0.5μM、1μM、10μ M、20μM)のPIP-A、PIP-Bおよび等量のPIP-AとPIP-B混 合物を含む10%子牛血清添加培地で48時間培養 、生細胞数測定試薬SF(Nacalai Tesque,Inc.)を10μ lずつ添加し、1時間呈色反応を行い、ARVOマイ クロタイタープレートリーダーで450nmの吸光 を測定した。なお、当該実験は水溶性ホル ザンを用いたmodified MTT assay(WST-8 TM :Nacalai Tesque,Inc.)で施行した。

II.結果
 PIP-A単独では、濃度依存性に生細胞数の減 が見られた。20μMではIC-50に達しなかったが 生細胞数は60%以下であった。PIP-B単独では 濃度依存性に生細胞数の減少が見られ、そ IC-50値は12.41μMであった。PIP-AとPIP-Bの等量混 合物でも、同様に濃度依存性の生細胞数の減 少が認められ、そのIC-50値は6.45μMであった。 このことより、PIP-AとPIP-Bの等量混合物、PIP-B 単独、PIP-A単独の順に細胞増殖抑制が強く、P IP-AとPIP-Bの両方を同時に発現抑制することが 相乗的に腫瘍細胞増殖を抑制することが示唆 された。結果を図30に示す。
 PIP-A及びPIP-Bを単独もしくは併用で用いた際 の細胞増殖抑制効果については、両PIPを併用 した際に相乗効果が見られるかをMedian-effect  algorithm(CalcuSynversion 2.0 software(Biosoft,Ferguson,MO ))を用いて解析した。両PIPの等量(1:1)併用に 有意な相乗効果[CI(ED50)=0.256]を認めた。

(2)種々の細胞を用いた細胞増殖アッセイ
I.材料及び方法

 上記5.(1)HeLa細胞(ヒト子宮頸がん細胞)を いた増殖阻害アッセイに記載されている実 方法によって、HeLa、T98G、A549、A2780、HCT116、 MCF7、T47D、MRC5、HUVEC細胞を用いて、増殖抑制 果が最も高かったPIP-AとPIP-Bの等量混合物、 0μMから100μM(0μM、0.01μM、0.1μM、0.5μM、1μM、1 0μM、20μM、100μM)を用いて実施した。

II.結果
 全ての細胞でPIP-AとPIP-Bの等量混合物の添加 により、濃度依存性に増殖抑制効果が得られ た。A2780、HeLa、A549、T98G、HCT116、MCF7、T47D、MR C5、HUVECの順で、増殖抑制効果が高くみとめ れ、IC-50値は、A2780、HeLa、A549では5~10μMの間 T98G、HCT116、MCF7では10~20μMの間、T47D、MRC5は 20~100μMの間、HUVECは100μM以上であった。こ ことより、癌細胞由来の腫瘍細胞株A2780、HeL a、A549、T98G、HCT116、MCF7、T47Dで強い増殖抑制 認められ、正常細胞由来のMRC5、HUVECでは増 抑制が弱い傾向が認められた。結果を図31 示す。

6.アポトーシス検出アッセイ

 アポトーシスの初期段階では、細胞膜の完 性は保たれているが、膜のリン脂質の非対 性が失われる。それに伴い、細胞膜の内側 局在する陰性荷電リン脂質のフォスファチ ルセリン(PS)が細胞表面に露出し、Ca 2+ 依存性のリン脂質結合タンパクであるAnnexinV PSに選択的に結合する。このことより、蛍 標識したAnnexinVを用いることでアポトーシス に陥った細胞を検出することができる。この 際、細胞をヨウ化プロピジウム(PI)または7-ア ミノ-アクチノマイシンD(7-AAD)などのDNA特異的 な細胞生死判定用の色素で染色すると、細胞 膜構造が破壊される後期のアポトーシス細胞 に取り込まれ、この色素がDNAと結合すること より、前期および後期のアポトーシスを区別 して検出することが出来る。PIP-AとPIP-B、PIP-A とPIP-Bの等量混合物を培地に添加し、HeLa細胞 を用いてアポトーシスの誘導の有無をAnnexinV- FITCおよびPIによるアポトーシスの検出キット (Calbiochem)を用い確認した。AnnexinV-FITCによる ポトーシスの検出は蛍光顕微鏡による形態 評価とフローサイトメトリー(FACScan(登録商 ):Becton-Dickinson(BD))を用いた定量的評価の両方 を行った.

I.材料及び方法
(1)AnnexinV-FITC
 HeLa細胞を用い、非処理群として1%DMSO、PIP-A( 10μM)、PIP-B(10μM)およびPIP-A(5μM)とPIP-B(5μM)の 量混合物を添加後48時間の培養細胞をAnnexinV- FITCおよびPIで処理し、蛍光顕微鏡で観察した 。
(2)フローサイトメトリーによるアポトーシス 検出アッセイ投与後
 HeLa細胞を用い、非処理群として1%DMSO、PIP-A( 10μM)、PIP-B(10μM)およびPIP-A(5μM)とPIP-B(5μM)の 量混合物を添加後48時間の培養細胞をAnnexinV- FITCおよびPIで処理し、40000個の細胞をフロー イトメトリーにより解析した。

II.結果
(1)AnnexinV-FITC
 視野中に、非処理群では、FITCおよびPIの蛍 色を発する細胞はほとんど認められなかっ 。PIP-A(10μM)、PIP-B(10μM)およびPIP-A(5μM)とPIP-B (5μM)の等量混合物でFITCおよびPIの発色が認め られたことより、PIP-AとPIP-Bの等量混合物、PI P-B、PIP-Aの順でアポトーシスが強く誘導され と考えられた。(2)にフローサイトメトリー よる定量的解析を示す。
(2)フローサイトメトリーによるアポトーシス 検出アッセイ投与後
 非処理群では前期アポトーシス1.40%、後期 ポトーシス4.76%が認められた。PIP-Aでは、前 アポトーシス3.83%、後期アポトーシス4.91%が 認められた。PIP-Bでは、前期アポトーシス14.3 2%、後期アポトーシス9.07%が認められた。PIP-A とPIP-Bの等量混合物(5μM)では、前期アポトー ス33.66%、後期アポトーシス5.65%が認められ 。前記アポトーシスの誘導は、PIP-AとPIP-Bの 量混合物、PIP-B、PIP-Aの順で強く誘導された 。前記アポトーシスの誘導は、PIP-B、PIP-AとPI P-Bの等量混合物、PIP-Aの順で強く誘導された 、PIP-A、PIP-AとPIP-Bの等量混合物と非処理群 差は認めず、PIP-Bで誘導が亢進する傾向が られた。
 このことより、PIP-Bによるものに比べPIP-A単 独でのアポトーシス誘導は顕著でなかった。 このことは、AURKAの阻害ではアポトーシスの 導は見られずAURKB阻害では強くアポトーシ が認められるとする複数の報告と合致した また、PIP-AとPIP-Bの等量混合物でアポトーシ の誘導が、AURKB単独より、より強く誘導さ たことより、AURKAの阻害によるアポトーシス の誘導増強の現象と同様の所見が得られた。 つまり、本発明のAURKAおよびAURKBの併用によ 抗癌効果の増強および本発明の化合物を使 することで他の薬剤との併用による抗腫瘍 果の増強、もしくはその判定に使用できる のと考えられた。結果を図32に示す。

7.統計解析
 結果は平均値±標準偏差(SD)で表現した。平 値間の差の有意性は、ANOVA 及びTurkey-Kramer による多重比較検定により評価した。少な とも0.05未満のp値を有意であると判定した。

 本発明のhAURKA遺伝子発現抑制剤及びhAURKB 伝子発現抑制剤はそれぞれhAURKA及びhAURKB遺 子関連疾患の治療薬及び制癌剤として利用 能である。またこの遺伝子を用いた基礎実 の試薬としての利用も可能である。

配列番号9  センスプライマー
配列番号10 アンチセンスプライマー
配列番号11 センスプライマー
配列番号12 アンチセンスプライマー
配列番号13 センスプライマー
配列番号14 アンチセンスプライマー
配列番号15 センスプライマー
配列番号16 アンチセンスプライマー
配列番号17 プライマー
配列番号18 プライマー
配列番号19 プライマー
配列番号20 プライマー
配列番号21 プライマー
配列番号22 プライマー
配列番号23 プライマー
配列番号24 プライマー
配列番号25 プライマー
配列番号26 プライマー