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Patent Searching and Data


Title:
SKIN-MOISTURIZING EFFECT EVALUATION METHOD, AND SCREENING METHOD FOR MOISTURIZING SUBSTANCE BY USING THE EVALUATION METHOD
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/143145
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a method for evaluating the skin-moisturizing effect of a substance of interest. Also disclosed is a method for searching and obtaining (a method for the screening of) a novel moisturizing substance by using the above-mentioned method. Further disclosed is use of a moisturizing substance obtained by the screening method as a moisturizing agent. The evaluation method is characterized by evaluating the skin-moisturizing effect of a substance of interest through a process comprising the following steps (1) and (2): (1) administering the substance to a non-human animal and measuring the activity of a dermal arterial sympathetic nerve in the non-human animal; and optionally (2) determining the substance as having a skin-moisturizing effect when the activity of the dermal arterial sympathetic nerve in the non-human animal receiving the administration with the substance is lower than that in the non-human animal without receiving the administration with the substance.

Inventors:
NAGAI KATSUYA (JP)
TANIDA MAMORU (JP)
SHEN JIAO (JP)
HORII YUKO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/058974
Publication Date:
November 27, 2008
Filing Date:
May 15, 2008
Export Citation:
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Assignee:
ANBAS CORP (JP)
NAGAI KATSUYA (JP)
TANIDA MAMORU (JP)
SHEN JIAO (JP)
HORII YUKO (JP)
International Classes:
G01N33/50; A61K8/33; A61K8/34; A61K8/35; A61K8/64; A61K31/045; A61K31/08; A61K31/121; A61P17/16; A61Q19/00; G01N33/15; G01N27/00
Foreign References:
JP2004205522A2004-07-22
Attorney, Agent or Firm:
Saegusa & Partners et al. (1-7-1 Doshomachi, Chuo-k, Osaka-shi Osaka 45, JP)
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Claims:
 下記の工程を有することを特徴とする、被験物質の皮膚に対する保湿作用を評価する方法:
(1)被験物質を非ヒト動物に投与し、当該非ヒト動物の皮膚動脈交感神経の活動を測定する工程。
 さらに下記の工程を有する、請求項1に記載する皮膚保湿作用の評価方法:
(2)被験物質を投与した非ヒト動物の皮膚動脈交感神経の活動が、被験物質を投与しない非ヒト動物の皮膚動脈交感神経の活動よりも低下する場合に、当該被験物質について皮膚保湿作用があると判断する工程。
 皮膚動脈交感神経活動の測定を、皮膚動脈交感神経の遠心枝の電気活動を測定することによって行う、請求項1または2に記載する皮膚保湿作用の評価方法。
 投与形態が、経皮投与、経口投与または経腸投与のいずれかである、請求項1に記載する評価方法。
 工程(1)および(2)を有する請求項2乃至4のいずれかに一項に記載する方法を行うことを特徴とする、被験物質の中から皮膚保湿作用を有する物質をスクリーニングする方法。
 工程(2)で皮膚保湿作用があると判断された被験物質を、保湿物質として取得する、請求項5に記載するスクリーニング方法。
 請求項1乃至4のいずれかに記載する評価方法によって皮膚保湿作用があると判断される化合物であるカルノシンを有効成分とする皮膚保湿剤。
 経口または経腸的に投与または摂取される形態を有する請求項7に記載する皮膚保湿剤。
 請求項1乃至4のいずれかに記載する方法によって皮膚保湿作用があると判断される化合物であって、リナロール、ゲラニオール、シトラール、ゲラニアール、ネラール、シトラールジメチルアセタール、ゲラニアールジメチルアセタール、ネラールジメチルアセタール、α-テルピネオール、テルピネン-4-オール、並びにこれらのエステルおよび塩からなる群から選択される少なくとも一つのモノテルペン化合物を有効成分とする、皮膚保湿剤。
 経皮的に投与される形態を有する請求項9に記載する皮膚保湿剤。
 カルノシンの皮膚保湿剤としての使用。
 リナロール、ゲラニオール、シトラール、ゲラニアール、ネラール、シトラールジメチルアセタール、ゲラニアールジメチルアセタール、ネラールジメチルアセタール、α-テルピネオール、テルピネン-4-オール、並びにこれらのエステルおよび塩からなる群から選択される少なくとも一つのモノテルペン化合物の皮膚保湿剤としての使用。
Description:
皮膚保湿作用の評価方法、およ これを用いた保湿物質のスクリーニング方

 本発明は、被験物質について皮膚に対す 保湿作用を評価する方法に関する。また本 明は、当該方法を用いて新規な保湿物質を 索し取得する方法(スクリーニング方法)に する。さらに本発明は、当該方法によって 得された保湿物質を有効成分とする保湿剤 およびこれを含有する保湿用皮膚外用剤に する。

 皮膚角質層の水分量は、肌の状態と密接 関連し、健康な素肌を保つためには、角質 に適度な水分が保持されていることが必要 ある。角質層の水分保持には、天然保湿因 (NMF:Natural Moisturizing Factor)の寄与が大きい とが知られており(非特許文献1)、特にNMFの 成分であるアミノ酸が角質層の水分保持に く関わっているとされている。しかし、角 層内のアミノ酸量は、加齢や外部環境によ て減少し、これに伴って角質層の水分保持 能が低下することが報告されている(非特許 献2および3参照)。加齢に伴って肌の潤いや 軟性が低下して、シワが形成されるのも、 の角質層の水分保持機能の低下が一因とな ている。

 従来から、かかる水分保持機能を改善し 皮膚の保湿を高めるために、各種の保湿剤( 例えば、グリセリン、プロピレングリコール 、ソルビット、トレハロース、1,3-ブチレン リコール、ヒアルロン酸やそのナトリウム など)が開発され、提供されている。これら 保湿剤は、皮膚に塗布することにより経皮 散逸水分量(TEWL)を抑制し、結果として皮膚 水分を維持して肌に潤いをもたらす効果を している。また尿素も、NMFの構成成分の一 であり、保湿剤として汎用されている成分 ある。尿素の角質層内での保湿機構として 「水素結合」が挙げられ、水素結合によっ 角質層内で水分が保持され、皮膚の乾燥が 止されると考えられている。

 ところで、保湿剤や外用組成物の保湿作 を評価する方法としては、例えば化粧膜を 膚に形成し、かかる化粧膜の表面の自由エ ルギーを計測し、それを指標として保湿作 を評価する方法(特許文献1および2)、ヘアレ スマウスの皮膚を損傷させ、経皮的水分散逸 量を増大させて、被験外用剤によるその改善 効果を指標として、保湿作用を評価する方法 (特許文献3)、および皮膚に被験外用剤を塗布 し、次いでそれを拭き取り、当該部位の水分 量またはその代替値を皮膚コンダクタンスに より測定する方法(特許文献4)などを挙げるこ とができる。

 このような評価方法によれば、各種保湿 や外用組成物の保湿作用を比較評価するこ ができ、また新しい保湿成分を探索し、取 することができると考えられる。

 しかしながら、この目的を達成するために 、より一層簡単に実施でき、しかも精度の い評価方法を確立することが好ましい。ま 、皮膚に塗布するといった経皮投与による 湿効果だけでなく、経口摂取による保湿効 をも評価できる方法が確立できれば、保湿 用のある可食性成分を探索することも可能 なる。
平尾哲二「NMFの最新研究」、Fragrance J., 17 (2000) 河野義行「保湿・肌荒れ防止用化粧品の 有用性と製品開発」、J. Soc. Cosmet. Chem. Japa n 36(4) (2002) 正木仁ら「角質水分と老化」、Fragrance J ., 8 (1993)

特開2002-14022号公報

特開2002-12515号公報

特開2000-275243号公報

特開2005-10090号公報

 本発明は、被験物質の皮膚に対する保湿 用を評価する方法を提供することを目的と る。また、本発明は、かかる評価方法を利 して、新規な保湿物質を探索し取得するた の方法、すなわち新しい保湿物質をスクリ ニングする方法を提供することを目的とす 。

 さらに本発明は、当該スクリーニング方 を用いて取得された保湿物質を保湿有効成 とする保湿剤、ならびに当該保湿剤を含有 る保湿用皮膚外用剤を提供することを目的 する。

 上記課題を解決するために、本発明者は 非ヒト動物の皮膚に保湿成分として周知の 素を塗布し、皮膚の経皮的水分蒸散量を測 すると同時に、皮膚動脈を支配する交感神 (皮膚動脈交感神経)の遠心枝の電気活動の 化を測定したところ、当該経皮的水分蒸散 の低下(すなわち皮膚保湿作用)と皮膚動脈交 感神経の電気活動との間に良好な相関関係が あること、すなわち、経皮的水分蒸散量の低 下(皮膚保湿作用)に応じて皮膚動脈交感神経 活動も低下することを見出した。また、本 明者は、被験物質を経腸または経口投与し 後に皮膚動脈交感神経の活動を測定するこ によって、当該被験物質の経腸または経口 与による皮膚保湿効果が評価できることを 出した。

 かかる知見に基づいて、本発明者は、皮 動脈交感神経の活動の低下を指標とするこ によって、被験物質の皮膚に対する保湿作 を評価することができ、かかる評価系を用 ることで、保湿剤として有効に利用できる 湿物質を簡便に探索し見出すことができる とを確認し、本発明を完成するに至った。

 すなわち、本発明は、下記の態様を備える のである。
     (I)被験物質についてその皮膚保湿 作用を評価する方法
 (I-1)下記の工程を有することを特徴とする 被験物質の皮膚に対する保湿作用を評価す 方法:
(1)被験物質を非ヒト動物に投与し、当該非ヒ ト動物の皮膚動脈交感神経の活動を測定する 工程
 (I-2)さらに下記の工程を有する、(I-1)に記載 する皮膚保湿作用の評価方法:
(2)被験物質を投与した非ヒト動物の皮膚動脈 交感神経の活動が、被験物質を投与しない非 ヒト動物の皮膚動脈交感神経の活動よりも低 下する場合に、当該被験物質について皮膚保 湿作用があると判断する工程。
 (I-3)皮膚動脈交感神経活動の測定を、皮膚 脈交感神経の遠心枝の電気活動を測定する とによって行う(I-1)または(I-2)に記載する皮 保湿作用の評価方法。
 (I-4)投与形態が、経皮投与、経口投与また 経腸投与のいずれかである、(I-1)乃至(I-3)の ずれかに記載する皮膚保湿作用の評価方法

  (II)皮膚保湿作用を有する物質(保 物質)のスクリーニング方法
 (II-1)工程(1)または(2)を有する上記(I-2)乃至(I -4)のいずれかに記載する方法を行うことを特 徴とする、被験物質のなかから皮膚保湿作用 を有する物質をスクリーニングする方法。
 (II-2)工程(2)で、皮膚保湿作用があると判断 れた被験物質を、保湿物質として取得する (II-1)に記載するスクリーニング方法。

  (III)皮膚保湿剤およびこれを含有 る外用剤
 (III-1)上記(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載す 評価方法によって皮膚保湿作用があると評 される化合物であるカルノシンを有効成分 する皮膚保湿剤。
 (III-2)経口または経腸的に投与または摂取さ れる形態を有する(III-1)記載の皮膚保湿剤。
 (III-3)(III-1)に記載する皮膚保湿剤を含有す 経口または経腸投与用組成物。
 (III-4)上記(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載す 評価方法によって皮膚保湿作用があると評 される非環式モノテルペン、単環式モノテ ペン、並びにこれらのエステルおよび塩か なる群から選択される少なくとも一つのテ ペン化合物を有効成分とする皮膚保湿剤。
 (III-5)上記非環式モノテルペンが、リナロー ル、ゲラニオール、シトラール、ゲラニアー ル、ネラール、シトラールジメチルアセター ル、ゲラニアールジメチルアセタール、およ びネラールジメチルアセタールであり、上記 単環式モノテルペンが、αテルピネオール、 よびテルピネン-4-オールである、(III-4)に記 載する皮膚保湿剤。
 (III-6)経皮的に投与される形態を有する(III-4 )または(III-5)記載の皮膚保湿剤。
 (III-7)(III-4)または(III-5)に記載する皮膚保湿 を含有する保湿用皮膚外用剤。

  (IV)皮膚保湿剤としての使用
 (IV-1)カルノシンの皮膚保湿剤としての使用
 (IV-2)リナロール、ゲラニオール、シトラー 、ゲラニアール、ネラール、シトラールジ チルアセタール、ゲラニアールジメチルア タール、ネラールジメチルアセタール、α- ルピネオール、テルピネン-4-オール、並び これらのエステルおよび塩からなる群から 択される少なくとも一つのモノテルペン化 物の皮膚保湿剤としての使用。

 本発明の評価方法によれば、被験物質を 皮、経口または経腸的に投与して、皮膚動 を支配する交感神経の電気活動の低下の有 を観察することによって、簡単に被験物質 保湿作用の有無を判断することができる。 なわち、本発明によれば、簡単に被験物質 皮膚への保湿作用を評価することができる

 このため、本発明の評価方法は、従来公 の保湿剤や外用組成物の保湿作用を評価す 方法として有用であるほか、いままで保湿 用が知られていなかった物質(可食性物質を 含む)について新たに保湿作用を見出すため 方法として、さらに、多くの物質の中から 規な保湿物質を探索し取得するための方法 して、また、複数の成分からなる組成物の から保湿作用を有する有効成分を同定する 法として、有効に使用することができる。

 そしてかかる方法によって新たに取得さ た保湿物質は、保湿を効果・効能とする外 組成物(化粧料や外用医薬品を含む)、また 経口組成物(食品や経口医薬品を含む)の有効 成分として有効に使用することができる。

(I)皮膚保湿作用の評価方法
 本発明の皮膚保湿作用の評価方法は、評価 象とする被験物質を非ヒト動物に投与して 当該非ヒト動物の皮膚動脈交感神経の活動 測定することによって実施することができ 。

 測定に使用する非ヒト動物は、ヒト以外 哺乳動物または鳥類などの恒温動物であれ 特に制限されず、例えば、ラット、マウス モルモット、ウサギ、サル、イヌおよびネ などを挙げることができる。

 なお、測定に使用する非ヒト動物は、被 物質の匂い刺激によって生じる皮膚動脈交 神経への影響を消失しておくために、予め 臭症処理しておくことが好ましい。無臭症 理は、特に制限されず定法に従って行うこ ができるが、例えば、鼻粘膜をキシロカイ で局所麻酔する方法、または鼻粘膜に硫酸 鉛の1%水溶液を塗布する方法(Kolunie JM et al ., Horm. Behav. 1995, 29: 492-518)等を例示するこ とができる。好ましくは1%硫酸亜鉛水溶液に る無臭症処理である。

 被験物質の投与方法としては、経皮投与 経口投与および経腸投与を挙げることがで る。かかる投与方法は、被験物質の使用目 や使用形態に応じて適宜選択することがで る。例えば、被験物質が、外用組成物(化粧 料や外用医薬品を含む)やその成分である場 またはその用途で使用する場合は、当該被 物質を非ヒト動物に経皮投与することによ て、皮膚に対する保湿作用を評価すること 好ましい。また、被験物質が、経腸投与剤( 口投与や坐薬などその物質が腸を通過する のを含む)やその成分である場合またはその 用途で使用する場合は、当該被験物質を非ヒ ト動物に経腸投与(直腸投与を含む)すること よって、皮膚に対する保湿作用を評価する とが好ましい。

 また、被験物質が、経口組成物(食品や経 口医薬品を含む)やその成分である場合また その用途で使用する場合は、当該被験物質 非ヒト動物に経口投与することによって、 膚に対する保湿作用を評価することが好ま い。なお、この場合、被験物質を経口投与 てから、体内吸収されるか、或は、腸内に 効果を発揮して皮膚動脈交感神経の活動に 映されるまでに、多少の時間を要する。こ ため、まず被験物質を非ヒト動物に経腸投 (経小腸投与)して、予め皮膚に対する保湿作 用を評価し(一次評価)、次いで、当該一次評 で皮膚保湿作用が確認された被験物質を非 ト動物に経口投与して、経口投与による皮 保湿作用を評価することもできる(二次評価 )。

 非ヒト動物に経皮投与する方法としては 被験物質を非ヒト動物の皮膚に塗布する方 、および被験物質を含浸または担持させた ートを貼付する方法などを挙げることがで 、投与する被験物質の調製形態(例えば、ロ ーション、エアゾール剤、フォーム剤、乳液 、クリーム、軟膏、ゲル剤、貼付剤など)に じて適宜設定することができる。

 経皮投与する非ヒト動物の部位は、制限 されないが、好ましくは体毛の影響が少な 領域、具体的には毛がないか若しくは毛の ない皮膚領域(例えば腹部、太ももの内側、 尻尾など)である。但し、試験領域を剃毛す ことによって体毛の影響を回避することが きるため、上記部位に特に拘泥はされない また、体毛の影響を回避するために、遺伝 に毛のない動物(例えばヘアレスマウス、ヘ レスラットなど)を使用することもできる。

 非ヒト動物に経腸投与する方法としては 非ヒト動物を麻酔下で開腹し、腸内にカニ ーレを設置して被験物質を投与する方法、 たは肛門を介して直腸内に被験物質を投与 る方法を挙げることができる。また非ヒト 物に経口投与する方法としては、口腔内に ニューレを設置して被験物質を強制摂取さ る方法、または被験動物を食餌または水に ぜて、非ヒト動物に食餌や水と一緒に飲食 せる方法を挙げることができる。

 斯くして被験物質を投与した非ヒト動物 ついて、その皮膚動脈を支配する交感神経( 皮膚動脈交感神経)の活動を測定する。当該 経活動の測定は、皮膚動脈交感神経の遠心 の電気活動を測定することによって行うこ ができる。なお、経皮投与の場合、経皮投 した皮膚領域の動脈を支配する交感神経の 動を測定することが好ましい。

 皮膚動脈交感神経(遠心枝)の電気活動の 定は、具体的には、麻酔下で、非ヒト動物 皮膚動脈交感神経の遠心枝を、実体顕微鏡 で剥離し、それを銀電極にのせて活動電位 記録することによって行うことができる。 お、銀電極は、乾燥を防ぐために、予め液 パラフィンとワセリンの混合物に十分浸し おくことが好ましい。得られた神経の電気 動は、差動増幅器にて増幅し、オシロスコ プにてモニターする。ここでノイズ信号は ィンドウ・ディスクリミネーターにより分 する。信号をスパイク変換し、得られたス イクをレイトメーターにより5秒間のスパイ 数としてカウントする。これをA/D(アナログ /デジタル)変換した後、パソコンに記録する( 図1参照)。

 かかる方法により皮膚動脈交感神経の遠 枝の電気活動を、スパイク数として測定す ことができる。すなわち、被験物質投与前 測定したスパイク数が、被験物質投与によ て減少した場合には、被験物質投与によっ 皮膚動脈交感神経の電気活動が低下したと 断することができる。

 かかる皮膚動脈交感神経の電気活動の低 は、実験例1に示すように皮膚からの水分蒸 散量の低下、すなわち皮膚保湿効果と精度良 く相関する。このため、被験物質投与前に測 定した上記スパイク数が、被験物質の投与に よって減少した場合には、被験物質の投与に よって皮膚動脈交感神経の電気活動が低下し たと判断することができ、この場合、当該被 験物質に皮膚に対する保湿作用があると評価 することができる。一方、逆に、被験物質投 与前に測定した上記スパイク数が、被験物質 の投与によって変動しないか増加した場合に は、被験物質の投与によって皮膚動脈交感神 経の電気活動が変動しないか上昇したと判断 することができ、この場合、当該被験物質に は皮膚に対する保湿作用がないと評価するこ とができる。

 以上のことを総合するに、本発明の皮膚保 作用の評価方法は、下記の工程(1)を行うこ によって実施することができる:
(1)被験物質を非ヒト動物に投与し、当該非ヒ ト動物の皮膚動脈交感神経の活動を測定する 工程。

 好ましくは本発明の皮膚保湿作用の評価方 は、上記工程(1)に続いて、下記の工程(2)を うことによって実施することができる:
(2)上記工程(1)において、被験物質を投与した 非ヒト動物の皮膚動脈交感神経の活動が、被 験物質を投与しない非ヒト動物(対照非ヒト 物)の皮膚交感神経の活動(対照活動)よりも 下する場合に、当該被験物質について皮膚 湿作用があると判断する工程。

 なお、工程(2)において対照とする非ヒト 物は、工程(1)で被験物質を投与した非ヒト 物と同一の動物であっても、また異なる動 であってもよい。前者の場合は、被験物質 投与する前に当該非ヒト動物について測定 れた皮膚動脈交感神経の活動が比較の対象 され、上記でいう対照活動となる。また、 者において、対照非ヒト動物として被験物 を投与した非ヒト動物と異なる動物を使用 る場合、当該動物は、被験物質を投与した ヒト動物と同種の動物を用いることが好ま い。

 斯くして本発明によれば、被験物質につ て、経皮投与、経口投与または経腸投与に る皮膚保湿効果を評価することができる。 お、皮膚保湿効果を評価する対象の被験物 は、測定者が任意に選択することができ、 えば既に皮膚保湿作用が知られている保湿 質や組成物(化粧料や外用医薬品などの外用 組成物、食品や経口医薬品などの経口組成物 を含む)であってもよいし、また皮膚保湿作 が知られていない物質や組成物(化粧料や外 医薬品などの外用組成物、食品や経口医薬 などの経口組成物を含む)であってもよい。 前者の場合は、本発明の評価方法により、皮 膚保湿作用を再確認することができ、またそ の皮膚保湿作用を、他の物質の保湿作用と比 較評価をすることができる。また、後者の場 合は、本発明の評価方法により、今まで皮膚 保湿作用が知られていない物質や組成物につ いて新たに保湿作用を見出すことができる。

  (II)保湿物質のスクリーニング方
 本発明はまた、皮膚保湿作用を有する物質( 保湿物質)をスクリーニングする方法を提供 る。当該方法は、多くの被験物質のなかか 、非ヒト動物に投与した場合に、当該非ヒ 動物の皮膚動脈交感神経の活動を低下させ 作用を有する物質を選別することによって 施することができる。

 具体的には、保湿物質のスクリーニングは 前述する被験物質の保湿作用の評価方法に って、下記の工程(1) を行うことによって 施することができる。
(1)被験物質を非ヒト動物に投与して、当該非 ヒト動物の皮膚動脈交感神経の活動を測定す る工程。

 好ましくは本発明のスクリーニング方法は 上記工程(1)に続いて、下記の工程(2)を行う とによって実施することができる:
(2)上記工程(1)において、被験物質を投与した 非ヒト動物の皮膚動脈交感神経の活動が、被 験物質を投与しない非ヒト動物の皮膚動脈交 感神経の活動よりも低下する場合に、当該被 験物質について皮膚保湿作用があると判断す る工程。

 ここで使用する非ヒト動物の種類や皮膚 脈交感神経の活動の測定方法は、いずれも 述する本発明の評価方法で採用するものを 様に用いることができる。

 斯くして、非ヒト動物に投与した場合に 該動物の皮膚動脈交感神経の活動が低下す ことが確認された被験物質は、皮膚保湿作 を有する物質(保湿物質)として判断取得す ことができる。

 なお、非ヒト動物への投与方法としては 前述する本発明の評価方法と同様に、経皮 与、経口投与および経腸投与を挙げること できる。皮膚投与(塗布および貼付を含む) よって皮膚保湿作用を発揮する被験物質を クリーニングするためには、被験物質を経 投与することが好ましい。経腸投与(小腸投 および直腸投与を含む)によって皮膚保湿作 用を発揮する被験物質をスクリーニングする ためには、被験物質を経腸投与することが好 ましく、また経口的に摂取させることによっ て皮膚保湿作用を発揮する被験物質をスクリ ーニングするためには、被験物質を経口投与 することが好ましい。なお、経口によって皮 膚保湿作用を発揮する被験物質を選別する場 合は、まず経腸投与を用いて第一次スクリー ニングすることで、予め経腸投与によって皮 膚保湿作用を発揮する被験物質を選別し、次 いで、ここで選別された被験物質について経 口投与を用いた第二次スクリーニングを行っ て、経口投与によって皮膚保湿作用を発揮す る被験物質を選別する方法を採用してもよい 。

 斯くして本発明のスクリーニング方法に って選別された保湿物質は、さらに水分蒸 計や角質水分量測定装置などを用いた有効 試験、安全性試験、さらにヒトを対象とし 試験に供してもよく、これらの試験を実施 ることによって、より実用的な保湿物質を 別取得することができる。

 またこのようにして選別された物質は、 要に応じて構造解析を行った後、その物質 種類に応じて、化学的合成、生物学的合成( 発酵を含む)または遺伝子学的操作によって 工業的に製造することができ、保湿剤、保 効果を有する外用組成物(化粧料および外用 薬品を含む)や経口組成物(食品および医薬 )の有効成分として使用することができる。

  (III)皮膚保湿剤
 本発明はまた、上記本発明の評価方法で皮 保湿作用があると判断される保湿物質を保 の有効成分とする皮膚保湿剤を提供する。

 かかる保湿物質として、実験例4で示すよ うに、カルノシンを挙げることができる。当 該カルノシンは、非ヒト動物に投与(好まし は経口投与または経腸投与)して、当該動物 皮膚動脈交感神経活動の低下を指標に選別 得された物質である。当該カルノシンは、 時に、非ヒト動物への投与(好ましくは経口 投与または経腸投与)によって皮膚水分蒸散 の低下(皮膚保湿作用)も確認されている。

 しかして当該カルノシンは、皮膚保湿有 成分、特に経口投与または経腸投与するこ で皮膚保湿作用を発揮する保湿有効成分と て、有効に用いることができる。このため ルノシンは、皮膚保湿を効果・効能とする 膚保湿剤、特に経口または経腸投与用の保 剤の有効成分として使用することができる すなわち、本発明によれば、カルノシンを 効成分とし、皮膚保湿を効能・効果とする 口または経腸投与形態を有する保湿剤を提 することができる。

 当該保湿剤に含まれるカルノシンの配合 は、保湿剤が皮膚保湿効果を備える限り、 に制限されず、通常1~100重量%の範囲から適 選択して用いることができる。好ましくは5 0~100重量%を挙げることができる。当該保湿剤 の形態は、経口または経腸投与形態であれば 特に制限されず、例えば飲料形態(ドリンク 態)、ゲルまたはシロップ形態、錠剤形態、 剤形態、カプセル形態、粉末または顆粒状 態などの経口投与形態、ならびにクリーム 固形、またはカプセルなどの汎用の坐剤形 を有する経腸投与形態を挙げることができ 。

 また上記保湿物質として、実験例2および 3で示すように、非環式モノテルペンおよび 式モノテルペンを挙げることができる。こ らのモノテルペン化合物は、非ヒト動物に 皮投与して、当該動物の皮膚動脈交感神経 動の低下を指標に選別取得された物質であ 。当該テルペン化合物は、同時に、非ヒト 物への経皮投与による皮膚水分蒸散量の低 (皮膚保湿作用)も確認されている。

 しかして、これらの非環式モノテルペン よび環式モノテルペンは、皮膚保湿有効成 、特に経皮投与することで皮膚保湿作用を 揮する保湿有効成分として、有効に用いる とができる。このため当該非環式モノテル ンおよび環式モノテルペンは、皮膚保湿を 果・効能とする皮膚保湿剤、特に経皮投与 態を有する皮膚保湿剤の有効成分として使 することができる。すなわち、本発明によ ば、非環式モノテルペンおよび環式モノテ ペンからなる群から選択される少なくとも 種のテルペン化合物を有効成分とし、皮膚 湿を効果・効能とする経皮投与形態の皮膚 湿剤を提供することができる。

 本発明が対象とする上記非環式モノテル ンとしては、リナロール(Linalool)、ゲラニオ ール(Geraniol)、シトラール(Citral)、ゲラニアー ル(Geranial)、ネラール(Neral)、シトラールジメ ルアセタール(Citral Dimethyl Acetal)、ゲラニ ールジメチルアセタール(Geranial DimethylAcetal) 、ネラールジメチルアセタール(NeralDimethyl Ac etal)並びにこれらのエステルおよび塩を挙げ ことができる。ここでエステルには、上記 ノテルペンと酢酸や蟻酸などのカルボン酸 のエステル(カルボン酸エステル)が含まれ 。制限はされないが、具体的には、酢酸ゲ ニオール、蟻酸ゲラニオール、酢酸リナリ ル、および酢酸ネリルを例示することがで る。好ましくは、リナロール、ゲラニオー 、シトラール、ゲラニアール、ネラール、 トラールジメチルアセタール、ゲラニアー ジメチルアセタール、およびネラールジメ ルアセタールを挙げることができ、より好 しくはリナロール、ゲラニオール、シトラ ル、およびシトラールジメチルアセタール 挙げることができる。なお、シトラールはtr ans体としてゲラニアール、およびcis体として ネラールを含有する混合物であり、シトラー ルジメチルアセタールはtrans体としてゲラニ ールジメチルアセタール、およびcis体とし ネラールジメチルアセタールを含有する混 物である。これらの非環式モノテルペンは1 種単独で、本発明の皮膚保湿剤の有効成分と して使用してもよいし、また2種以上を任意 組み合わせて使用してもよい。

 また本発明が対象とする単環式モノテル ンとしては、テルピネン-4-オール(Terpinen-4-o l)、α-テルピネオール(α-Terpineol)、並びにこ らのエステルおよび塩を挙げることができ 。これらの単環式モノテルペンは1種単独で 本発明の皮膚保湿剤の有効成分として使用 てもよいし、また2種以上を任意に組み合わ せて使用してもよい。

 また本発明の皮膚保湿剤は、上記の非環 モノテルペンと単環式モノテルペンの両方 保湿有効成分とするものであってもよい。 発明の皮膚保湿剤に含まれるこれらのモノ ルペン化合物の配合割合としては、皮膚保 剤が保湿作用を有するかぎり特に制限され 、通常これらのモノテルペン化合物の総量 して0.001~100重量%の範囲から適宜選択するこ とができる。好ましくは0.05~50重量%を例示す ことができる。

 当該皮膚保湿剤の形態は、経皮投与形態 あれば特に制限されず、例えば、ローショ (液剤、分散液)形態、乳液形態、クリーム 態、軟膏形態、ゲル形態、フォーム形態、 アゾール形態、およびパップやパックなど 含む貼付剤形態などを挙げることができる また、その使用態様としては、外用医薬品 皮膚化粧料、頭皮化粧料、毛髪化粧料(養毛 やトリートメント剤を含む)、および洗浄剤 (ボディー洗浄剤、毛髪洗浄剤、洗顔料を含 )を挙げることができる。

 なお、本発明の皮膚保湿剤は、その皮膚 湿作用が損なわれないことを限度として、 須成分である上記保湿物質(モノテルペン化 合物)に加えて、通常皮膚外用剤(例えば、医 品、医薬部外品、皮膚化粧料、毛髪化粧料 および洗浄料を含む)に配合される成分、例 えば界面活性剤(乳化剤を含む)、油性成分、 ルコール類、可溶化剤、増粘剤、酸化防止 、キレート剤、pH調整剤、香料、色素、紫 線吸収または散乱剤、ビタミン類、アミノ 類、および防腐剤を、必要に応じて配合す ことができる。

 また、本発明の効果を損なわない範囲に いて、他の皮膚保湿剤を配合してもよい。 かる皮膚保湿剤としては、制限されないが 例えばグリセリン、プロピレングリコール 1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、ポ リグリセリン、ポリエチレングリコール、ジ プロピレングリコール等の多価アルコール類 ;アミノ酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカ ボン酸ナトリウムなどのNMF成分;ヒアルロン 、コラーゲン、ムコ多糖類、コンドロイチ 硫酸等の水溶性高分子物質を挙げることが きる。

 以下、本発明を実験例によって更に詳細 説明する。但し、これらの実験例は本発明 何ら限定するものではない。なお、下記の 験例において、特に言及しない限り、%は重 量%を意味するものとする。

  実験例1
(I)皮膚動脈交感神経(遠心枝)の電 活動の測定
(1)実験方法
(1-1)被験試料の調製
 尿素を同量の水に溶解し、これを基材クリ ム(組成:ジプロピレングリコール、セタノ ル、1,3-ブチレングリコール、ステアリルア コール、ステアリン酸グリセリル、ステア ン酸、ポリエチレングルコール-75、ステア ス-20、セテス-20、ホホバ油、水添ポリイソ テン、ベヘン酸エトキシジグリコール、フ ノキシエタノール、エチルパラベン、およ メチルパラベン)に混合して、10%の尿素を含 むクリーム(尿素含有クリーム)を調製した。

 (1-2)被験動物
 予め1週間、24±1℃、12時間周期の明期(照明8 0lx、7:00-19:00)及び暗期(19:00-7:00)の環境下で飼 したラット(雄、Wistar rat、250~300g)を被験動 (非ヒト動物)として用いた。なお、実験前 ラットには飼料(MF type; Oriental Yeast)と水を 由に摂取させた。

 匂い刺激による交感神経に対する影響が じないように、実験開始の5日前から毎日ペ ントバルビタール(30mg/kg)麻酔下で、被験動物 の鼻粘膜に、1%の硫酸亜鉛水溶液を塗布して1 0分間放置する処置を行うことによって、無 症処理を行った(Kolunie JM. Stern JM: Horm. Beha v 1995, 29:492-518)。

 上記ラットを6時間絶食させた後、ウレタ ン麻酔下(1g/kgのウレタン水溶液を腹腔内投与 内)で、上記で調製した尿素含有クリーム、 たはコントロールとして基材クリームのみ 、それぞれ2gずつ尻尾に塗布して、塗布直後 から60分間、皮膚動脈交感神経の遠心枝の神 活動(電気活動)の変化を測定した。

 皮膚動脈交感神経(遠心枝)の電気活動の 定は、具体的には、ラットの皮膚動脈交感 経の遠心枝を、実体顕微鏡下で、銀電極に り上げて行った。乾燥を防ぐ為に電極は予 液体パラフィンとワセリンの混合物に十分 しておいた。得られた神経の電気活動は、 動増幅器にて増幅し、オシロスコープにて ニターした。皮膚動脈交感神経の神経活動 検出するために、ノイズ信号をウィンドウ ディスクリミネーターにより分離し、スパ ク信号に変換した。得られたスパイク信号 レイトメーターにより5秒間のスパイク数と てカウントし、A/D(アナログ/デジタル)変換 、パソコンに記録した(図1参照)。電気活動 記録は60分間行った(図2B参照)。

 (2)実験結果
 結果を図2に示す。なお、図2の(A)は実測デ タであり、(B)はこの実測データを、塗布前 実測データ(スパイク数)を100%として、グラ 化したものである。なお、図2(A)の上段は基 クリーム(コントロール)を塗布したラット 実測データ〔図(B)では、―■―で示す〕、 段は尿素含有クリームを塗布したラットの 測データ〔図(B)では、―●―で示す〕を示 。

 図2(A)および(B)からわかるように、基材ク リームのみ(コントロール)を尻尾に塗布した ットの皮膚動脈交感神経の活動(電気活動) 、基材クリーム塗布前と殆ど変わらなかっ のに対して、尿素含有クリームを尻尾に塗 したラットの皮膚動脈交感神経の活動は有 に低下した。

 この結果からわかるように、10%尿素含有 リームを皮膚に塗布することによって、皮 の動脈を支配する交感神経の活動が低下し 。一方、基材クリームのみを尻尾に塗布し ラット(比較群)の皮膚交感神経の神経活動( 気活動)は、クリーム塗布前と変わらず、実 験群のような低下は認められなかった。

  (II)皮膚水分蒸散量の測定
 無麻酔下で、体重約250gのヘアレスHWY雄ラッ トの背中の皮膚の左側2×6cm(12cm 2 )に、実験例1(I)(1)(1-1)で調製した尿素含有ク ーム160mgを、また背中の皮膚の右側2×6cm(12cm 2 )に、コントロールとして基材クリーム160mgを 塗布した。塗布から18時間後および24時間後 、上記処置した各皮膚にポータブル水分蒸 計(VapoMeter Delfin Technologies Ltd製)を押しつけ て、皮膚水分蒸散量(Transepidermal water loss, TE WL)を測定した。

  (III)実験結果
 結果を図3に示す。なお、結果は、塗布前の 皮膚水分蒸散量を100%とした場合、塗布から18 時間後および24時間後の皮膚水分蒸散量の相 量(%)を示す。

 <考察>
 上記の実験結果から、保湿剤として周知の 素を10%含有するクリーム(尿素含有クリーム )を皮膚に塗布することによって、皮膚水分 散量が低下し(実験(II))、また同時に皮膚動 交感神経の活動(電気活動)が低下することが 確認された。このことから、皮膚に対する保 湿作用と皮膚動脈交感神経の活動(電気活動) の間には相関関係があり、皮膚動脈交感神 の活動(電気活動)を測定しその低下を指標 することによって、被験物質の皮膚に対す 保湿作用を評価することができると考えら る。

  実験例2  非環式モノテルペンの保湿作用の評価
 実験例1(I)および(II)に記載する方法に従っ 、非環式モノテルペンの皮膚動脈交感神経( 心枝)の電気活動および皮膚水分蒸散量を測 定した。なお、非環式モノテルペンとしてシ トラール、ゲラニオール、リナロール、およ びシトラールジメチルアセタールを被験試料 として用いた。

 (1)被験試料の調製
 上記各非環式モノテルペンに、基材クリー (組成:ジプロピレングリコール、セタノー 、1,3-ブチレングリコール、ステアリルアル ール、ステアリン酸グリセリル、ステアリ 酸、ポリエチレングルコール-75、ステアレ -20、セテス-20、ホホバ油、水添ポリイソブ ン、ベヘン酸エトキシジグリコール、フェ キシエタノール、エチルパラベン、および チルパラベン)に混合して、被験試料として 非環式モノテルペンを含むクリーム(非環式 ノテルペン含有クリーム)を調製した。

 (2)実験結果
 シトラール含有クリーム(5μl/2g)に関する皮 動脈交感神経の電気活動および皮膚水分蒸 量の測定結果を図4および5に、ゲラニオー 含有クリーム(5μl/2g)に関する皮膚動脈交感 経の電気活動および皮膚水分蒸散量の測定 果を図6および7に、リナロール含有クリーム (50μl/2g)に関する皮膚動脈交感神経の電気活 および皮膚水分蒸散量の測定結果を図8およ 9に、シトラールジメチルアセタール含有ク リーム(5μl/2g)に関する皮膚動脈交感神経の電 気活動の測定結果を図10に示す。

 また、基材クリーム2g中にシトラール5μl よびゲラニオール5μl配合したクリームに関 する皮膚動脈交感神経の電気活動の結果を図 11に示す。なお、図4、6、8、10および11の左図 は実測データであり、右図はこの実測データ を、塗布前の実測値を100%として、グラフ化 たものである。なお、図5、7および9におい 、実線(―●―)は基材クリーム(コントロー )を皮膚に塗布した場合の皮膚水分蒸発量の 化を、また破線(--□--)は各非環式モノテル ン含有クリーム基材クリームを皮膚に塗布 た場合の皮膚水分蒸発量の変化を示す。

 これらの結果からわかるように、基材ク ーム(コントロール)を尻尾に塗布したラッ の皮膚動脈交感神経の活動(電気活動)は、基 材クリーム塗布前と殆ど変わらなかったのに 対して、前述する非環式モノテルペン含有ク リームを尻尾に塗布したラットの皮膚動脈交 感神経の活動は有意に低下した。また、非環 式モノテルペン含有クリームを皮膚に塗布す ることによって、皮膚の動脈を支配する交感 神経活動の低下に連動して皮膚水分蒸散量が 低下した。一方、基材クリームを皮膚に塗布 した場合は、皮膚水分蒸散量の抑制も認めら れなかった。

  実験例3  単環式モノテルペンの保湿作用の評価
 実験例1(I)および(II)に記載する方法に従っ 、単環式モノテルペンの皮膚動脈交感神経( 心枝)の電気活動および皮膚水分蒸散量に対 する影響を測定した。なお、単環式モノテル ペンとしてαテルピネオール、およびテルピ ン-4-オールを被験試料として用いた。

 (1)被験試料の調製
 上記各単環式モノテルペンに、基材クリー (組成:ジプロピレングリコール、セタノー 、1,3-ブチレングリコール、ステアリルアル ール、ステアリン酸グリセリル、ステアリ 酸、ポリエチレングルコール-75、ステアレ -20、セテス-20、ホホバ油、水添ポリイソブ ン、ベヘン酸エトキシジグリコール、フェ キシエタノール、エチルパラベン、および チルパラベン)に混合して、被験試料として 単環式モノテルペンを含むクリーム(単環式 ノテルペン含有クリーム)を調製した。

 (2)実験結果
 αテルピネオール含有クリーム(5μl/2g)に関 る皮膚動脈交感神経の電気活動および皮膚 分蒸散量の測定結果を図12および13に、テル ネン-4-オール含有クリーム(50μl/2g)に関する 皮膚動脈交感神経の電気活動および皮膚水分 蒸散量の測定結果を図14および15に示す。な 、図12、14、および図15の左図は実測データ あり、右図はこの実測データを、塗布前の 測値を100%として、グラフ化したものである なお、図13および15において、実線(―●―) 基材クリーム(コントロール)を皮膚に塗布 た場合の皮膚水分蒸発量の変化を、また破 (--□--)は単環式モノテルペン含有クリーム 材クリームを皮膚に塗布した場合の皮膚水 蒸発量の変化を示す。

 これらの結果からわかるように、基材ク ーム(コントロール)を尻尾に塗布したラッ の皮膚動脈交感神経の活動(電気活動)は、基 材クリーム塗布前と殆ど変わらないか、やや 上昇傾向であったのに対して、単環式モノテ ルペン含有クリームを尻尾に塗布したラット の皮膚動脈交感神経の活動は有意に低下した 。また、単環式モノテルペン含有クリームを 皮膚に塗布することによって、皮膚の動脈を 支配する交感神経活動の低下に連動して皮膚 水分蒸散量が低下した。一方、基材クリーム を皮膚に塗布した場合は、皮膚水分蒸散量の 抑制も認められなかった。

 以上の実験例2および3の結果から、上記 非環式テルペン(シトラール、ゲラニオール リナロール、およびシトラールジメチルア タール)および単環式テルペン(αテルピネオ ール、およびテルピネン-4-オール)にそれぞ 、皮膚からの水分蒸散を抑制して皮膚の保 性を維持向上する作用(保湿作用)があること が判明した。

  実験例4  カルノシンの保湿作用の評価
(I)皮膚動脈交感神経(遠心枝)の電 活動の測定
(I-1)被験試料の調製
 経腸投与実験ではカルノシン5mgまたは50mgを 1mlの水に溶解し、これを被験試料とした。ま た、経口投与実験ではカルノシン200mgを1mlの に溶解し、これを被験試料とした。

 (I-2)被験動物の調製
 予め1週間、24±1℃、12時間周期の明期(照明8 0lx、7:00-19:00)及び暗期(19:00-7:00)の環境下で飼 したラット(雄、Wistar rat、250~300g)を被験動 (非ヒト動物)として用いた。なお、実験前 ラットには飼料(MF type; Oriental Yeast)と水を 由に摂取させた。

 匂い刺激による交感神経に対する影響が じないように、実験開始の5日間前から毎日 ペントバルビタール(30mg/kg)麻酔下で、被験動 物の鼻粘膜に、1%の硫酸亜鉛水溶液を塗布し 10分間放置する処置を行うことによって、 臭症処理を行った(Kolunie JM. Stern JM: Horm. B ehav 1995, 29:492-518)。

 (I-3)実験方法
(a)経腸投与による保湿作用の評価
 上記被験ラットを6時間絶食させた後、ウレ タン麻酔下(1g/kgのウレタン水溶液を腹腔内投 与内)で開腹して、十二指腸内にカニューレ 挿入し、カニューレを介して上記で経腸投 実験用に調製したカルノシン含有水1ml(5mg/1ml 、50mg/1ml)を投与する。対照実験としては水1ml を腸内に投与する。そして投与直後から30分 、実験例1の方法と同様にして、ラットの尻 尾の皮膚動脈交感神経の遠心枝の神経活動( 気活動)の変化を測定する。

 (b)経口投与による保湿作用の評価
 上記被験ラットを6時間絶食させた後、ウレ タン麻酔下(1g/kgのウレタン水溶液を腹腔内投 与内)で、口腔内にカニューレを挿入し、カ ューレを介して上記で経口投与実験用に調 したカルノシン含有水(200mg/1ml)、またはコン トロールとして水を、それぞれ1mlずつ経口投 与する。そして投与直後から40分間、実験例1 の方法と同様にして、ラットの尻尾の皮膚動 脈交感神経の遠心枝の神経活動(電気活動)の 化を測定する。

  (II)皮膚水分蒸散量の測定
 無麻酔下で、体重約250gのヘアレスHWY雄ラッ トに、上記経口投与実験用に調製したカルノ シン含有水(200mg/1ml)、またはコントロールと て水を自由摂取させる。投与開始前及び投 開始3日後にカルノシン投与ラットおよび水 投与ラット(コントロール)の背中の皮膚の部 にポータブル水分蒸散計(VapoMeter Delfin Techn ologies Ltd製)を押しつけて、皮膚水分蒸散量(T ransepidermal water loss, TEWL)(g/m 2 )を測定する。

  (III)実験結果
 カルノシンを経腸および経口投与した後に 皮膚動脈交感神経の遠心枝の神経活動(電気 活動)を経時的に測定した結果を、それぞれ 16および図17に示す。また、カルノシンの経 投与前および経口投与後3日めに皮膚水分蒸 散量を測定した結果を図18に示す。

 <考察>
 図17および図18に示すように、カルノシンを 経口投与することによって、皮膚動脈交感神 経の活動(電気活動)が低下し、また皮膚水分 散量も低下することが確認された。またカ ノシンを経腸投与することによって、皮膚 脈交感神経の活動(電気活動)が低下するこ も確認された(図16)。このことから、皮膚動 交感神経の活動(電気活動)を測定し、その 下の有無を指標とすることによって、被験 質の経口または経腸投与による皮膚に対す 保湿作用を評価することができるものと考 られる。また、この結果から、カルノシン 皮膚保湿作用を有する物質であり、これを 口投与または経腸投与することによって、 膚保湿効果が得られることが確認できた。

  製剤処方例
 以下に、上記の結果から皮膚保湿作用があ と認められるモノテルペン(リナロール、ゲ ラニオール、シトラール、ゲラニアール、ネ ラール、シトラールジメチルアセタール、ゲ ラニアールジメチルアセタール、ネラールジ メチルアセタール、α-テルピネオール、また はテルピネン-4-オール)を配合した保湿用皮 外用剤(皮膚保湿剤)の製剤例を記載する。な お、下記に記載するモノテルペンは、リナロ ール、ゲラニオール、シトラール、ゲラニア ール、ネラール、シトラールジメチルアセタ ール、ゲラニアールジメチルアセタール、ネ ラールジメチルアセタール、α-テルピネオー ル、およびテルピネン-4-オールのそれぞれを 意味する。

  1.ローション剤

  2.クリーム剤

  3.エアゾール剤

本発明で使用する皮膚動脈交感神経の 気活動の測定方法を示す概略図である。こ では、投与方法として尻尾への経皮投与を とし、また電気活動の測定部位として、当 尻尾の皮膚動脈交感神経の遠心枝を例とし 記載する。 (A)は基材クリーム(上欄)または10%尿素 有クリーム(下欄)を皮膚に塗布した場合の皮 膚動脈交感神経の遠心枝の活動(電気活動)(Ski n-SNA)の経時的変化(実測データ)を示す図であ 。(B)はそれをグラフ化したものである(実験 例1)。なお、(B)の縦軸は皮膚動脈交感神経の 気活動を意味し、各クリームを塗布する前 電気活動を100%とした相対値である(以下、 4、6、8,10~12、14および16~17において同じ)。 ヘアレスラットの背中に、基材クリー (--○--)または10%尿素含有クリーム(―▲―) 塗布した場合の、各皮膚水分蒸散量(%)を示 。なお、水分蒸散量(%)は、各クリームを塗 する前の水分蒸散量を100%とした百分率で表 た。 (A)は基材クリーム(上欄)およびシトラ ル含有クリーム(5μl/2g:分子および分母はそ ぞれシトラール配合量及びシトラールを配 する基材クリームの量を示す。以下同様)(下 欄)に関する皮膚動脈交感神経の電気活動(Skin -SNA)の測定結果を示す。(B)はそれをグラフ化 たものである。 ヘアレスラットの背中に、基材クリーム(― ―)またはシトラール含有クリーム(5μl/2g)(-- --)を1回塗布した場合の、各皮膚水分蒸散量 (g/m 2 )を示す。 (A)は基材クリーム(上欄)およびゲラニ ール含有クリーム(5μl/2g)(下欄)に関する皮膚 動脈交感神経の電気活動(Skin-SNA)の測定結果 示す。(B)はそれをグラフ化したものである ヘアレスラットの背中に、基材クリーム(― ―)またはゲラニオール含有クリーム(5μl/2g)( --□--)を1回塗布した場合の、各皮膚水分蒸散 量(g/m 2 )を示す。 (A)は基材クリーム(上欄)およびリナロ ル含有クリーム(50μl/2g)(下欄)に関する皮膚 脈交感神経の電気活動(Skin-SNA)の測定結果を す。(B)はそれをグラフ化したものである。 ヘアレスラットの背中に、基材クリーム(― ―)またはリナロール含有クリーム(50μl/2g)(-- □--)を1回塗布した場合の、各皮膚水分蒸散 (g/m 2 )を示す。 (A)は基材クリーム(上欄)およびシトラ ルジメチルアセタール含有クリーム(5μl/2g)( 下欄)に関する皮膚動脈交感神経の電気活動(S kin-SNA)の測定結果を示す。(B)はそれをグラフ したものである。 (A)は基材クリーム(上欄)およびシトラ ル+ゲラニオール含有クリーム([5μl+5μl]/2g)( 欄)に関する皮膚動脈交感神経の電気活動(Sk in-SNA)の測定結果を示す。(B)はそれをグラフ したものである。 (A)は基材クリーム(上欄)およびα-テル ネオール含有クリーム(5μl/2g)(下欄)に関す 皮膚動脈交感神経の電気活動(Skin-SNA)の測定 果を示す。(B)はそれをグラフ化したもので る。 ヘアレスラットの背中に、基材クリーム(― ―)またはα-テルピネオール含有クリーム(5μ l/2g)(--□--)を1回塗布した場合の、各皮膚水分 蒸散量(g/m 2 )を示す。 (A)は基材クリーム(上欄)およびテルピ ン-4-オール含有クリーム(50μl/2g)(下欄)に関 る皮膚動脈交感神経の電気活動(Skin-SNA)の測 定結果を示す。(B)はそれをグラフ化したもの である。 ヘアレスラットの背中に、基材クリーム(― ―)またはテルピネン-4-オール含有クリーム( 50μl/2g)(--□--)を1回塗布した場合の、各皮膚 分蒸散量(g/m 2 )を示す。 (A)は水(上欄)およびカルノシン含有水( 下欄)(5mg/1ml、50mg/ml)を十二指腸内に投与した 合の皮膚動脈交感神経の遠心枝の活動(電気 活動)(Skin-SNA)の経時的変化(実測データ)を示 図である。(B)はそれをグラフ化したもので る(実験例2(II))。なお、(B)の縦軸は皮膚動脈 感神経の電気活動を意味し、各被験水を経 投与するまえの電気活動を100%としてグラフ 化した。 水またはカルノシン含有水(200mg/1ml)を 口投与した場合の皮膚動脈交感神経の遠心 の活動(電気活動)(Skin-SNA)の経時的変化をグ フ化したものである(実験例2(II))。なお、縦 軸は皮膚動脈交感神経の電気活動を意味し、 各被験水を経口投与するまえの電気活動を100 %としてグラフ化した。 ヘアレスラットに、水(―◆―)またはカルノ ン含有水(200mg/1ml)(―△―)をそれぞれ唯一の 飲料水として3日間経口的に自由摂取させた 合の、各皮膚水分蒸散量(g/m 2 )を示す。