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Patent Searching and Data


Title:
SOY PROTEIN GEL AND METHOD OF PRODUCING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/060678
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide a soy protein gel which has such gel properties that have never been obtained hitherto and is excellent in taste and color tone, and a soy protein food taking advantage of the gel properties. It has been found out that gel properties can be modified at an extremely elevated level and thus the desired soy protein gel can be obtained by preparing a gel by using a soy protein material in which the lipophilic protein content is reduced and conducting the gelation with the utilization of not only heat but also the action of a protein crosslinking enzyme.

Inventors:
KUGITANI HIROFUMI (JP)
SAMOTO MASAHIKO (JP)
NISHIURA MOTOAKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/068146
Publication Date:
May 14, 2009
Filing Date:
October 06, 2008
Export Citation:
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Assignee:
FUJI OIL CO LTD (JP)
KUGITANI HIROFUMI (JP)
SAMOTO MASAHIKO (JP)
NISHIURA MOTOAKI (JP)
International Classes:
A23J3/16; A23L1/00
Domestic Patent References:
WO2002028198A12002-04-11
WO2005094608A12005-10-13
Foreign References:
JPS58149645A1983-09-06
JPH1056976A1998-03-03
JPS6427471A1989-01-30
Other References:
SAMOTO M. ET AL.: "Improvement of the off-flavor of soy protein isolate by removing oil-body associated proteins and polar lipids.", BIOSCI. BIOTECHNOL. BIOCHEM., vol. 62, no. 5, 1998, pages 935 - 940
CHANYONGVORAKUL Y. ET AL.: "Physical properties of soy bean and broad bean 11S globulin gels formed by transglutaminase reaction.", JOURNAL OF FOOD SCIENCE, vol. 60, no. 3, 1995, pages 483 - 488, 493
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Claims:
大豆蛋白素材を含む材料を加熱して得られるゲルであって、該大豆蛋白素材は脂質親和性蛋白質が低減されたものであり、かつ、該ゲルは蛋白質架橋酵素が作用したものであることを特徴とする大豆蛋白ゲル。
大豆蛋白素材が全脂豆乳、脱脂豆乳、分離大豆蛋白、7S大豆蛋白、11S大豆蛋白である請求項1記載の大豆蛋白ゲル。
破断応力が50~1000(×1000N/m 2 )であって、かつ破断歪率が50~100%である請求項1記載の大豆蛋白ゲル。
破断応力が5~50(×1000N/m 2 )であって、かつ破断歪率が40~80%である請求項1記載の大豆蛋白ゲル。
請求項1記載の大豆蛋白ゲルを利用した食品。
脂質親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材を原料とし、該大豆蛋白素材を含む材料に蛋白質架橋酵素を作用させた後、加熱することを特徴とする大豆蛋白ゲルの製造法。
蛋白質架橋酵素を作用させるときの該大豆蛋白素材を含む材料のpHが6~9である請求項6記載の大豆蛋白ゲルの製造法。
蛋白質架橋酵素を作用させるときの該大豆蛋白素材への食塩添加量が大豆蛋白を含む材料中1重量%以下である請求項6記載の大豆蛋白ゲルの製造法。
脂質親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材が予め変性温度以上の予備加熱を施されておらず、該大豆蛋白素材を含む材料に蛋白架橋酵素を作用させた後、該大豆蛋白素材の変性温度以上で加熱を施すことを特徴とする請求項6記載の方法。
脂質親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材が予め変性温度以上の予備加熱を施されていて、該大豆蛋白素材を含む材料に蛋白架橋酵素を作用させた後、該酵素が失活するに充分な加熱を施す加熱である請求項6記載の方法。
脂質親和性蛋白質が低減されており、蛋白質架橋酵素が作用したものであって、かつ、大豆蛋白ゲル調製用であることを特徴とする大豆蛋白素材。
脂質親和性蛋白質が低減されており、蛋白質架橋酵素を作用させて使用するものであって、かつ、大豆蛋白ゲル調製用であることを特徴とする大豆蛋白素材。
大豆蛋白ゲルを予め調製し、これを混合してなるものである請求項5記載の食品。
食品原料中に脂質親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材及び蛋白質架橋酵素が配合され、製造過程で大豆蛋白ゲルが形成されてなるものである請求項5記載の食品。
Description:
大豆蛋白ゲル及びその製造法

 本発明は、大豆蛋白ゲル及びその製造法 関する。

 大豆は重要な食糧資源であり、古くから 煮豆、豆乳、豆腐、がんも、油揚げ、凍り 腐、納豆、テンペ、味噌、醤油などの大豆 品として利用されてきた。その蛋白質は良 の食用蛋白質であって、ゲル物性、乳化性 保水性などをはじめとする様々な物理特性 有しており、従来より大豆から大豆蛋白質 分離して食品への利用が推し進められてき 。更に近年においては、大豆蛋白を主体と た組立食品のような新しいソイ・フードも 案され定着してきている。

 特に最近では健康志向の高まりから、大 を主体とした食品のニーズの高まりがあり 美味しさと栄養健康といった価値に加えて 携帯性、簡便性、ゲルテクスチャー改良に る食べやすさ・飲み込みやすさといったよ な価値の創出が求められているところであ 。

 大豆の貯蔵蛋白はpH4.5付近で等電点沈澱 せることにより、比較的簡単に沈殿画分と て回収することができ、食品工業において くはこの画分、すなわち「分離大豆蛋白」 形態で利用されている。例えば、この分離 豆蛋白は、そのまま、あるいは必要により らに加工して他の食材に添加するなどして 大豆蛋白主体食品や畜肉製品や水産練り製 などの惣菜をはじめ、スナック・栄養バー 菓子類・飲料などの嗜好品、純植物性食材 乳・卵アレルギー患者用食品、嚥下・咀嚼 難者用食品、高蛋白食品、栄養バランス食 などの特殊用途食品などへ利用されている

 この大豆の貯蔵蛋白質は超遠心分析による 降定数から、2S、7S、11S、15Sの各グロブリン に分類され、このうち、7Sグロブリンと11Sグ ブリンはグロブリン画分の主要な構成蛋白 成分である。一方、大豆由来の蛋白質には 細胞膜をはじめプロテインボディーやオイ ボディー等の膜を構成する極性脂質との親 力の高い蛋白質群(脂質親和性蛋白質)が存 し、工業的に生産する分離大豆蛋白の約35% も占めていることが佐本らにより報告され いる(非特許文献1)。
 この脂質親和性蛋白質は膜蛋白質を主体と る蛋白群の総称で、特にSDS-ポリアクリルア ミド電気泳動による推定分子量において主に 34kDa、24kDa、18kDaを示す蛋白質を含み、クロロ ホルム:エタノール=2:1の極性溶媒により抽出 れる極性脂質を10~12重量%程度含有すること 知られている。

 このように、広く利用されてきた分離大豆 白を構成する蛋白質には、7Sグロブリンと11 Sグロブリンの他にも脂質親和性蛋白質が存 することがわかってきた。そして各々の蛋 質は大豆から食品工業的に分画できるよう なってきた(特許文献1、特許文献2、非特許 献2)。
 しかしながら、個々の蛋白質の物理特性、 に脂質親和性蛋白質の物理特性は未だ充分 明らかにはなっていなかった。

 一方、トランスグルタミナーゼを利用し 食用蛋白質を架橋して改質するなどの方法 知られている。この酵素は、ペプチド鎖内 あるグルタミン残基のγ-カルボキシアミド のアシル転移反応を触媒する酵素である。 のトランスグルタミナーゼは、アシル受容 としてのタンパク質中のリジン残基のε-ア ノ基に作用し、タンパク質分子の分子内に いて及び分子間においてε-(γ-Glu)-Lys架橋結 を形成する。また、水がアシル受容体とし 機能するときは、グルタミン残基が脱アミ 化されてグルタミン酸残基になる反応を進 させる。トランスグルタミナーゼを大豆蛋 に作用させる例に関しては、特許文献3~5に られるように、大豆蛋白含有スラリーにト ンスグルタミナーゼを添加してゲル化させ 手法が開示されている。

(参考文献)

国際公開WO2002/028198号公報

国際公開WO2006/129647号公報

特開昭58-149645号号公報

特開昭64-27471号公報

国際公開WO2005-94608号公報 M Samoto etc, Biosci. Biotechnol. Biochem., 62(5 ), 935-940, 1998. M Samoto etc, Food Chemistry, 102, 317-322, 200 7.

 大豆蛋白素材を加熱しゲル化させた大豆蛋 ゲルの場合、ゲルの硬さや崩れやすさなど 物性の相違は食品への適性や嗜好性に大き 影響する。
 例えば比較的柔い食感の大豆蛋白ゲルにす 場合、つるりと飲み込みやすくて豆腐のよ に崩れすぎない物性を求めるニーズがある( ちなみに寒天などの多糖類やゼラチンなどの 他の原料が主体のゲルは大豆蛋白ゲルではな い)。一方、比較的硬い食感の大豆蛋白ゲル する場合、子供や老人にも好まれる食感の ンニャクのような、たわみのある硬い食感 物性を求めるニーズがある。
 上記の文献では、従来の分離大豆蛋白を構 している分画大豆蛋白の画分の違いや加熱 性の有無によって、発現するゲル物性が異 ることが明らかとなってきた。また沈殿大 蛋白(分離大豆蛋白)、7Sグロブリン、11Sグロ ブリンのトランスグルタミナーゼによるゲル 化の状態には差がないということなどが教示 されている。
 しかしながら大豆蛋白ゲルでいかにして上 の物性を得るかについて、従来の研究だけ は有効な知見が得られていなかった。
 そこで本発明は、従来は得ることができな ったゲル物性を有する大豆蛋白ゲルであっ さらに風味や色調にも優れたものを提供す こと、そしてこのゲル物性を利用した大豆 白食品を提供することを課題とする。具体 には、硬くたわみのあるコンニャク様の食 、或いは、柔くつるりとして飲み込みやす 豆腐のように崩れすぎない食感を有する大 蛋白ゲルを提供し、これらのゲルの食品へ 利用用途を提供することを課題とする。

 本発明者らは上記課題に鑑み、分画大豆蛋 の物性挙動や、各種酵素や各種金属塩によ 物性改変効果を鋭意研究する中で、意外に 、脂質親和性蛋白を低減した大豆蛋白素材 使用してゲルを調製すること、さらにゲル には加熱のほか、蛋白質架橋酵素の作用を 与させることによって、ゲルの物性改変の 度が著しく増大し、目的とする大豆蛋白ゲ が得られることを見出した。
 さらに、上記知見を応用し、脂質親和性蛋 質が低減された大豆蛋白素材を含む材料に 白質架橋酵素を作用させることによって引 出されるゲル化能を利用することで、食品 どの物理特性を望ましい方向へと改変した 、食品などの物理特性を殆ど変化させるこ なく他素材から大豆蛋白へ代替できること 見出した。

 すなわち、本発明は、
1.大豆蛋白素材を含む材料を加熱して得られ ゲルであって、該大豆蛋白素材は脂質親和 蛋白質が低減されたものであり、かつ、該 ルは蛋白質架橋酵素が作用したものである とを特徴とする大豆蛋白ゲル、
2.大豆蛋白素材が全脂豆乳、脱脂豆乳、分離 豆蛋白、7S大豆蛋白、11S大豆蛋白である前 1.記載の大豆蛋白ゲル、
3.破断応力が50~1000(×1000N/m 2 )であって、かつ破断歪率が50~100%である前記1 .記載の大豆蛋白ゲル、
4.破断応力が5~50(×1000N/m 2 )であって、かつ破断歪率が40~80%である前記1. 記載の大豆蛋白ゲル、
5.前記1.記載の大豆蛋白ゲルを利用した食品
6.脂質親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材 原料とし、該大豆蛋白素材を含む材料に蛋 質架橋酵素を作用させた後、加熱すること 特徴とする大豆蛋白ゲルの製造法、
7.蛋白質架橋酵素を作用させるときの該大豆 白素材を含む材料のpHが6~9である前記6.記載 の大豆蛋白ゲルの製造法、
8.蛋白質架橋酵素を作用させるときの該大豆 白素材への食塩添加量が大豆蛋白を含む材 中1重量%以下である前記6.記載の大豆蛋白ゲ ルの製造法、
9.脂質親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材 予め変性温度以上の予備加熱を施されてお ず、該大豆蛋白素材を含む材料に蛋白架橋 素を作用させた後、該大豆蛋白素材の変性 度以上で加熱を施すことを特徴とする前記6 .記載の方法、
10.脂質親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材 が予め変性温度以上の予備加熱を施されてい て、該大豆蛋白素材を含む材料に蛋白架橋酵 素を作用させた後、該酵素が失活するに充分 な加熱を施す加熱である前記6.記載の方法、
11.脂質親和性蛋白質が低減されており、蛋白 質架橋酵素が作用したものであって、かつ、 大豆蛋白ゲル調製用であることを特徴とする 大豆蛋白素材、
12.脂質親和性蛋白質が低減されており、蛋白 質架橋酵素を作用させて使用するものであっ て、かつ、大豆蛋白ゲル調製用であることを 特徴とする大豆蛋白素材、
13.大豆蛋白ゲルを予め調製し、これを混合し てなるものである前記5.記載の食品、
14.食品原料中に脂質親和性蛋白質を低減した 大豆蛋白素材及び蛋白質架橋酵素が配合され 、製造過程で大豆蛋白ゲルが形成されてなる ものである前記5.記載の食品、
である。

 本発明により、従来の大豆蛋白ゲルでは体 しえなかった、つるりとした柔い食感や、 わみのある硬い食感などの新規な物性を有 る大豆蛋白ゲルを得ることができる。これ より、新規な大豆蛋白ゲル化食品を創出す ことが可能である。
 また本発明の大豆蛋白ゲルは大豆由来の雑 を感じにくく風味にも優れたものであるの 、従来にはない薄い味付けや、爽やかなデ ート風味のような大豆食品とは異なる風味 けを行うことができ、新しい大豆食品(ニュ ーソイフード)のバリエーションを増やすこ ができる。
 さらに、本発明による大豆蛋白ゲルを利用 ることにより、食品の物理特性を望ましい 向へと改良したり、既存食品の物理特性を ど変化させることなくその主原料を大豆蛋 へ代替することが可能となる。

 以下、本発明の実施形態について詳細に説 する。
 本発明の大豆蛋白ゲルは、大豆蛋白素材を む材料を加熱して得られるゲルであって、 大豆蛋白素材は脂質親和性蛋白質が低減さ たものであり、かつ、該ゲルは蛋白質架橋 素が作用したものであることを特徴とする また本発明の大豆蛋白ゲルの製造法は、脂 親和性蛋白質を低減した大豆蛋白素材を原 とし、該大豆蛋白素材を含む材料に蛋白質 橋酵素を作用させた後、加熱することを特 とする。

(大豆蛋白素材)
 本発明において「大豆蛋白素材」は、大豆 来の蛋白質が抽出された素材を意味し、具 的には丸大豆や脱脂大豆などから蛋白質を 出して必要により精製して得られる抽出大 蛋白素材である。例えば、全脂豆乳、脱脂 乳、分離大豆蛋白、7S大豆蛋白、11S大豆蛋 などが該当し、これらの混合物も含まれる ただし、蛋白質が抽出されている限り、不 性のオカラ分が含まれることを除外するも ではない。

 なお、特許文献2に記載の通り、11S大豆蛋白 とは、11Sグロブリン(グリシニンとも呼ばれ )の純度を高めた大豆蛋白素材であり、大豆 白質あたりの含量が少なくとも45%以上のも をいう。特に75%以上、さらには85%以上、さ には90%以上であるのが好ましい。
 また7S大豆蛋白は7Sグロブリン(β-コングリ ニンとも呼ばれる)の純度を高めた大豆蛋白 材であり、大豆蛋白質あたりの含量が少な とも25%以上であるのが好ましい。特に40%以 、さらには50%以上、さらには60%以上である が好ましい。
 一方、7Sと11Sの分画を行っていない一般の 離大豆蛋白の大豆蛋白質中の11S蛋白質含量 およそ30~40%程度であり、7S蛋白質含量はおよ そ13~22%程度である。

 大豆蛋白素材中の7Sグロブリンと11Sグロ リンの大豆蛋白質あたりの含量はSDS-ポリア リルアミド電気泳動法(SDS-PAGE)により測定す ることができる。Laemmli( Nature, 227, 680, 1970 )の方法に基づき、ゲル濃度10~20%のグラジエ トゲルで分析し、クマシーブリリアントブ ー(CBB)にて染色した後、得られた泳動パタ ンをデンシトメー ターで測定し、その全体 に対する該当蛋白質の面積比率を純度とする 。7Sグロブリンはα,α’,βサブユニットの総 とし、11S蛋白質の含量は酸性ポリ ペプチド (A)と塩基性ポリペプチド(B)の総量とする。

 上記に例示される大豆蛋白素材は、いず も公知の方法によって得ることができる。1 1S大豆蛋白や7S大豆蛋白の場合、例えば、一 的な組成を有する大豆から調製した豆乳や 離大豆蛋白などから7S蛋白質と11S蛋白質を分 画する技術を用いて上記の組成に調製した大 豆蛋白質素材を得ることができる。11S蛋白質 を分画除去する技術としては、従来公知の方 法を用いることができる。例えば、工業的規 模での製造を可能とする国際公開WO2000/58492号 、国際公開 WO2002/028198号、国際公開WO2004/04316 0号、国際公開WO2006/129647号等に開示されるよ な技術を利用することができる。また、予 7S蛋白質や11S蛋白質の一部もしくは全部を 伝子操作や育種技術により欠失させた大豆(B reeding Science, 46, 11, 1996など)から通常の方 を用いて、上記の組成に調製した大豆蛋白 素材を得ることもできる。また上記の分画 術と欠失大豆を使用する技術の両方を用い こともできる。

(大豆蛋白素材における脂質親和性蛋白質の 減)
 本発明の大豆蛋白ゲルに使用される大豆蛋 素材は、特に「脂質親和性蛋白質」(Lipophili c Proteins、以下「LP」と称することがある。) 低減したもの、ないしは除去したものであ ことが必須である。

 LPは大豆の酸沈殿性大豆蛋白質の内、7Sグ ロブリンと11Sグロブリン以外のマイナーな酸 沈殿性大豆蛋白質群をいい、レシチンや糖脂 質などの極性脂質を多く随伴するものである 。以下、単に「LP」と略記することがある。 のLP中にはSDS-PAGEによる推定分子量において 主に34kDa、24kDa、18kDaを示す蛋白質、リポキシ ゲナーゼ、γ-コングリシニンや、その他多く の雑多な蛋白質が含まれる。

 LPの低減化は7S大豆蛋白や11S大豆蛋白の場 合、これらを上記の方法、特に国際公開WO2002 /028198号や国際公開WO2004/043160号や国際公開WO20 06/129647号の方法により調製することによって 達成される。またこれらの分画蛋白質や豆乳 や分離大豆蛋白は、蛋白質の水溶液を比較的 強力な遠心力によって遠心分離し、沈殿物を 除去することによっても達成される。LPの低 の程度はLP推定含量(Lipophilic proteins Content  Index、以下LCIと略する。)を算出することによ って確認できる。これは7S、11S、LPの各蛋白 中の主要な蛋白質を選択し、それらのSDS-PAGE でのCBB染色比率を求め、これらの比率からLP 量を簡易的に推定したものである。LCI値の 出方法は、本出願人による特許文献2(WO2006/1 29647号公報)に記載の[LP含量の推定方法](a)~(d) び(表1)に記載の方法に従い、(数1)の計算式 より算出するものとする。詳細の方法は以 に説明する。本発明の大豆蛋白素材のLCI値 38%以下、好ましくは35%以下、より好ましく 30%以下、さらに好ましくは25%以下である。

〔LP含量の推定方法〕
(a) 各蛋白質中の主要な蛋白質として、7Sはα サブユニット及びα'サブユニット(α+α')、11S 酸性サブユニット(AS)、LPは34kDa蛋白質及び ポキシゲナーゼ(P34+Lx)を選択し、SDS-PAGEによ 選択された各蛋白質の染色比率を求める。 気泳動は下表の条件で行うことが出来る。
(b) X(%)=(P34+Lx)/{(P34+Lx)+(α+α’)+AS}×100(%)を求め る。
(c) 低変性脱脂大豆から調製された分離大豆 白のLP含量を加熱殺菌前に上記方法1,2の分 法により測定すると凡そ38%となることから X=38(%)となるよう(P34+Lx)に補正係数k*=6を掛け 。
(d) すなわち、以下の(式1)によりLP推定含量(L ipophilic Proteins Content Index、以下「LCI」と略 る。)を算出する。

〈電気泳動条件〉

(式1)

 LPが低減されていない大豆蛋白素材は低 された大豆蛋白素材と比較すると大豆の雑 を感じ、風味の面で劣る。また、後述のト ンスグルタミナーゼを作用させたときのゲ 物性は破断応力が低下し不十分なものとな てしまう。

 本発明の大豆蛋白素材は粉末状のものを 用することができるが、液状のものもその ま使用することができる。ただしゲル化さ る工程がかなり離れている場合やゲル化さ る前に一旦大豆蛋白素材を含む材料として 存しておきたい場合などは、後述するトラ スグルタミナーゼを添加する前又は後にお て、濃縮、冷凍又は粉末化しておくことが きる。

(大豆蛋白素材を含む材料)
 この大豆蛋白素材を適当な濃度に水と必要 より他の原料に分散させ、大豆蛋白ゲルの 製に供する。この大豆蛋白素材を含む材料 粘土状、ペースト状、スラリー状、液状な の所望の性状のものとすることができる。
 大豆蛋白素材を含む材料に必要により含ま る他の材料としては、動物・植物・微生物 鉱物・有機物・無機物などを由来とする、 然物又はその抽出物もしくは加工物、ある はそれらの混合物からなる群から選択する とができる。例えば、畜肉の薄切り・ミン ・ペースト、魚肉のフィレ・ミンチ・すり 、卵類・乳類の加工品などの動物由来のも や、とうもろこし・小麦等の穀物、大豆・ 豆等の豆類、大根・人参等の根菜類などの 物由来のものや、油脂・炭水化物・糖類・ ミノ酸・ペプチドなどの有機物や、塩類な の無機物などが挙げられる。

(蛋白質架橋酵素の作用)
 本発明の大豆蛋白ゲルは、上記の大豆蛋白 材が使用されることに加え、蛋白質架橋酵 が作用したものであることが重要である。 白質架橋酵素を作用させることによって大 蛋白ゲルはつるりとした柔い食感のゲルや たわみのある硬い食感のゲルに改質するこ が可能となる。蛋白質架橋酵素は蛋白質分 同士の架橋を触媒する酵素であり、例えば ミノ基が関与するグルタミン残基[-(CH2)2-CO-N H2]とリジン残基[NH2-(CH2)4-]の縮合反応、アス ラギン残基[-CH2-CO-NH2]とリジン残基の縮合反 などのε-アミ ノ基が関与する反応を触媒 るものが挙げられる。代表的にはグルタミ 残基とリジン残基の縮合を触媒するトラン グルタミナーゼ(EC2.3.2.13)を例示することが きる。トランスグルタミナーゼの起源は特 限定されず、動物由来、微生物由来、植物 来のものをいずれも使用できる。また精製 た酵素を使用しても良いし、市販の「アク ィバ」シリーズ(味の素(株))などの酵素製剤 使用することができる。
 トランスグルタミナーゼの添加量は使用す 大豆蛋白素材やこれを含む材料の固形分に っても変動するが、酵素反応後に大豆蛋白 材を含む材料がサクい寒天様のゲルを形成 る程度が好ましく、この量は当業者がゲル 状態を見つつ適宜設定することができる。 体的には該材料中の大豆蛋白素材の粗蛋白 1gあたり、トランスグルタミナーゼ製剤は0. 1~5ユニット程度添加すればよい。該材料の固 形分が低いほどユニット量の下限は大きくす るのが好ましく、0.75ユニット以上、さらに1. 5ユニット以上とすることができる。また、 材料の固形分が高いほどユニット量の上限 小さくすることができ、3.2ユニット以下、 らに1.6ユニット以下とすることができる。

 蛋白質架橋酵素を作用させるpHや温度は当 者が適宜選択でき、その酵素の基質に対す 至適pHや至適温度を参考にすることができ、 さらに大豆蛋白のゲル物性の側面から作用pH 選択することが好ましい。例えば、市販の ランスグルタミナーゼ剤の至適pHはpH5~8で、 好ましくはpH6~7であって、そのようなpH域で 橋反応による高分子化は進みやすい。
 ただし、大豆蛋白のゲル形成(特に11S大豆蛋 白)にとっては、必ずしもそのようなpH域が望 ましいわけではない。例えば、11S大豆蛋白を 12%濃度含む材料にトランスグルタミナーゼを 作用させて加熱し、大豆蛋白ゲルを得ようと した場合、pH5.5程度ではボソボソして離水の いゲルとなり、pH6.5程度ではたわんで途中 シャキっと切れるゲルとなり、pH7.5~8.5程度 はたわんで最後にプチっと切れるコンニャ 的な好ましいゲルとなる。このように、架 させるための酵素化学的な反応至適pHと、好 ましい物性となることを考慮した反応至適pH は、若干のずれがある。すなわち、物性向 のための反応pHは、大豆蛋白質の等電点で る4.5からより遠いpH域であって、かつトラン スグルタミナーゼが作用し得るpH域から選択 る必要があり、pH6~9が好ましい。

(食塩の添加による影響)
 大豆蛋白ゲルに食塩を添加する場合には、 豆蛋白を含む材料中の食塩添加量はゲル物 に影響を与えるので重要である。特に大豆 白の溶解性が低くなる食塩添加量域では、 ルネットワークが水を保持しにくくなるた か、好ましい物性には至らない。例えば、1 2%程度濃度の11S大豆蛋白を含む材料(pH7.5)に、 食塩を添加しない場合には、たわんで最後に プチっと切れるコンニャク的な好ましいゲル となる。これに対して、該材料に食塩を添加 して、大豆蛋白ゲルを得ようとした場合、該 材料中の食塩添加量が0.6重量%程度では、や ボソボソしてやや離水を伴うゲルとなり、 材料中の食塩添加量が1.2重量%程度では、ボ ボソして離水の多いゲルとなる。更に該材 中の食塩添加量を1.8重量%程度まで高めて溶 解性を向上させた場合は、塩味が生じてくる ものの物性的には再びゲル化能を発揮してた わんで途中でシャキっと切れるゲルとなる。 このように、大豆蛋白を含む材料への食塩添 加量は、求める味や物性に応じて選択するこ とができ、食塩添加量は、該材料あたり1重 %以下、又は1.6重量%以上が好ましい。

(加熱による大豆蛋白ゲルの改質)
 本発明の大豆蛋白ゲルを得るには上述の大 蛋白素材を含む材料を加熱することが必須 ある。加熱によって酵素を失活させると共 、蛋白質架橋酵素を作用させて得られるゲ を本発明が目的とする物性に改質すること できる。例えば、LPを低減した大豆蛋白素 を12%含有する材料に蛋白質架橋酵素を作用 せるのみでは、ゲルは形成されるものの寒 のような脆くてたわみにくいゲルにしかな ない。そして酵素反応後に加熱を行うこと よって、たわみがあって最後にプチンと切 る、コンニャク様の特徴的な食感のゲルを ることができる。

 加熱の方式は、公知の方法を用いることが き、具体的な加熱条件の例を挙げると、LP 低減された大豆蛋白素材がその固有の変性 度域以上の加熱変性を予め受けていない場 は、蛋白質架橋酵素を作用させた後に、そ 固有の変性温度域又はそれを超える温度域 の加熱を施すことで、そのゲルの破断応力 極大となる。
 なお、示唆熱熱量計による11Sグロブリンの 熱ピークは80~92℃の間に、7Sグロブリンの吸 熱ピークは67~78℃の間に現れる。
 したがって例えば、破断応力を高める目的 おいては、未変性の11S大豆蛋白に蛋白質架 酵素を作用させた後に加熱する場合、80~120 、好ましくは85~100℃で、1~60分、好ましくは 10~40分の範囲での加熱を行うことが適当であ 、90℃30分の加熱でゲルの破断応力は極大と なる。
 また未変性の7S大豆蛋白に蛋白質架橋酵素 作用させた後に加熱する場合、70~120℃、好 しくは75~100℃で、1~60分、好ましくは10~40分 範囲での加熱を行うことが適当であり、80℃ 30分の加熱でゲルの破断応力は極大となる。 お、加熱なしでは破断応力が低く、120℃10 の加熱を行う場合も過度の加熱履歴となる めか破断応力が低くなる傾向にある。その の7Sグロブリンと11Sグロブリンを両方含む大 豆蛋白素材については、吸熱ピークの高い11S グロブリンの条件に準ずれは良い。

 一方、LPを低下させた大豆蛋白素材が直 蒸気吹込方式や間接加熱やジュール加熱や イクロ波加熱等の加熱手段によって、予め 有する蛋白質に固有の変性温度域又はそれ 上の加熱変性を受けている場合は、蛋白質 橋酵素を作用させることで、冷却ゲル形成 が顕著に引き出され、上述のレベルの加熱 行わなくとも破断応力が高いものとするこ が可能である。そして、蛋白質架橋酵素を 活させるに足る加熱を施すことで、本発明 大豆蛋白ゲルを得ることができる。酵素を 活させるに足る加熱条件としては、酵素剤 性質にもよるが例えば80℃以上で30分程度で る。ただし120℃を超える加熱を行うと過度 加熱履歴によるためか破断応力は低下する 向となるため、120℃以下が好ましい。

(大豆蛋白ゲルの物性)
 以上述べたように、本発明の大豆蛋白ゲル 、大豆蛋白素材、加熱条件、酵素反応条件 どの選択によって、使用用途に合わせて多 な物性を有するゲルに適宜調製することが きる。そして、本発明の大豆蛋白ゲルの物 は、数値的には破断応力と破断歪率の組合 によって表現することができる。
 例えば、たわみのある硬い物性のゲルを調 したい場合、破断応力が50~1000(×1000N/m 2 )、好ましくは100~800(×1000N/m 2 )であって、かつ破断歪率が50~100%となるよう することが好ましい。特に、コンニャク的 ゲルを調製したい場合、破断応力が150~250(× 1000N/m 2 )となるようにすることが好ましい。また、 鉾的なゲルを調製したい場合、破断応力が25 0~600(×1000N/m 2 )となるようにすることが好ましい。この際 大豆蛋白を含む材料中の大豆蛋白素材の濃 は1~50重量%、好ましくは11~30重量%、より好ま しくは11~20重量%の範囲から選ぶことができる 。
 また、つるりとした柔い物性のゲルを調製 たい場合、破断応力が5~50(×1000N/m 2 )であって、かつ破断歪率が40~80%となるよう することが好ましい。この際の大豆蛋白素 を含む材料中の大豆蛋白素材の濃度は1~10重 %、好ましくは5~10重量%、より好ましくは7~10 重量%の範囲から選ぶことができる。

 なお、これらの物性値は室温において大 蛋白ゲルをレオメーター(山電(株)製など)を 用いて破断強度解析を行うことによって求め る。測定条件として、サンプル高は20mm、進 速度は1mm/秒とし、プランジャーは硬い物性 ゲルの場合はφ5mm球を用い、柔い物性のゲ の場合はφ15mm球を用いることとする。破断 度解析にて得られた破断荷重に(式2)を適用 て破断応力を求める。また、破断強度解析 て得られた破断変形に(式3)を適用して破断 率を求める。

(式2)破断応力Y=F×9.8í(r×r×3.14)×1000
 式中、F:破断荷重(g)、r:プランジャー半径

(式3)破断歪率X=Tíh×100
 式中、T:破断変形(mm)、h:サンプル高さ(mm)と た。

 なお、ゲルの硬さの程度は破断応力Yでほ ぼ表現することができ、ゲルのたわみの程度 は破断歪率Xでほぼ表現することができるが 更にゲルのしなやかさの程度を客観的に表 できる指標として、「破断指標Z」を用いる とができる。破断指標Zは、破断強度解析で 得られた波形データを、縦軸が破断応力Yで 軸が破断歪率Xで表した座標上に描いて、そ 破断点と原点を通る完全弾性体を仮想し、 点O(0,0)から破断点P(a,ma)までの曲線の軌跡が どの程度その仮想曲線に沿っているかを表し たもので、(式4)を用いて求める。

(式4)

 破断指標Zの値が正の値や0%に近い値である 合、そのゲルはしなやかではなく、破断指 Zが負の値であってZ=-40%のように低い数値で あれば、そのゲルは非常にしなやかなゲルで あることが、市販ゲル食品の物性評価結果か らわかっている。
 例えば、コンニャクや蒲鉾などのようにた んでしなやかなゲルを調製したい場合、破 指標Zが-10%~-80%、好ましくは-15%~-60%、更に好 ましくは-20%~-40%となるように調製することが 適当である。

(大豆蛋白ゲルの風味・色調)
 本発明で得られる大豆蛋白ゲルは従来の大 蛋白ゲルよりも風味と色調に優れることも 徴である。
 LPが低減化されていない大豆蛋白ゲルでは 豆の雑味を感じやすくて風味が劣る。また 豆蛋白素材の中でも11S大豆蛋白を使用した ルが最も大豆の雑味を感じにくく風味が優 ている。また、11S大豆蛋白のゲルが最もく みや黄色みが少なく、そのような色調が求 られる用途において有利である。
 一方、7S大豆蛋白のゲルは黄色みがあって 明感のあるゲルである。また、7S大豆蛋白及 び11S大豆蛋白の両方からなるゲルも、くすみ や黄色みが少ないゲルである。このようにLP 除去することで、物性・風味以外にも色調 においても改善効果がある。

(大豆蛋白ゲルの食品への応用)
 本発明の大豆蛋白ゲルはその特徴的な物性 色調を利点として様々なゲルが利用される 品へ応用することが可能である。大豆蛋白 ルを食品へ利用する態様としては、予め大 蛋白ゲルを調製しておき、これをそのまま 品へ加工したり、食品中に混合する場合は 論、食品の製造過程においてLPを低減した 豆蛋白素材と蛋白質架橋酵素を他の原料と に配合しておき、ゲルを形成させる場合を む。後者においては公知の食品の物理特性 改良したり、逆に食品の物理特性を殆ど変 させることなくその原料である他素材を大 蛋白に代替させたりすることができる。

 予め大豆蛋白ゲルを調製し、これを利用 る例として、新食感の大豆食品などや低糖 低脂質で高蛋白質のニーズを満たす食品な に利用できる他、大豆由来の栄養分を摂取 きるたわむ食感のグミ菓子・栄養バーや栄 ゼリーなどに利用でき、おでんの具材や炊 込みご飯などの惣菜用途として利用するコ ニャク代替物などとしても利用できる。

 また、豚のゼラチン質や牛筋肉のような ルプルした食感を楽しむような用途の代替 などとして使用したり、すり身などの魚肉 ミンチなどの畜肉を使用しない純植物性の 品に使用したり、必要に応じてゲルに切れ を入れるなどしてアワビ風・貝柱風のよう 魚介類風のゲルなどとしたり、刻んでハン ーグ・ソーセージ・餃子・しゅうまいなど 混ぜ込んでヘテロな食感を与えたり、適当 大きさにカットしてグラタンやシチューな の具材として利用したり、薄くスライスす などしてピザトッピングなどにしたりする とができる。

 また、ゲルを形成させる際に、薄く膜状 成型するなどして、生春巻のたわむ皮など 代替や、寿司の海苔などの代わりとして具 巻く用途に用いたり、湯葉の代替としたり 刻んで海藻の代替としたり、サラダトッピ グなどとしたりすることができる。

 また、シート状に成型して細長く切れ目 入れて束ねるなどして蟹足風などに加工し り、麺帯のような形状に成型してたわみあ 栄養麺などとして使用したり、餃子の皮や ザニアなどのようにして利用したり、サラ や寿司などを包むための薄焼き卵のフィル などの代替として用いたりすることができ 。

 また、球状に成型して魚卵代替などとし 用いたり、栄養ドリンク中に球状ゲルを浮 させるなど、視覚に訴えるような製品にも いることもできる。また、甘みと鮮やかな を付けるなどして、和菓子や洋菓子のトッ ングなどに用いることもでき、プラスチッ 成型を参考にして金型を選択することで、 魚などのような形に成型して食を楽しむこ もできる。また、ゲルを味噌や醤油やタレ ダシなどに付けて、味噌漬や佃煮などとい た惣菜として利用することもできる他、味 汁やスープの具材などや、咀嚼・嚥下困難 の食事用などに使用することができる。

 次に、食品の製造過程においてLPを低減し 大豆蛋白素材と蛋白質架橋酵素を配合して き、ゲルを形成させる例を挙げると、畜肉 品(ハンバーグ、ソーセージ、ハムなど),魚 製品(カニ、ホタテ、アワビ風等のイミテー ョン蒲鉾・揚蒲鉾、蒸蒲鉾、焼蒲鉾などの 鉾類・ちくわ類・フィッシュボールなど), 製品(チーズ・ヨーグルトなど),卵製品(玉子 き・茶碗蒸しなど),穀物製品(餅・麺など), や魚介などのイミテーションフード,低炭水 物食・高蛋白食・嚥下食・大豆たん白主体 品などの機能性食品などの製造過程におい 原料中にLPを低減した大豆蛋白素材と蛋白 架橋酵素を配合しておき、酵素を作用させ ゲルを形成させることができる。
 また、LPが低減された大豆蛋白素材に蛋白 架橋酵素を作用できる水系であれば、非食 であってもそのゲルを利用することができ (例えばペットフード、飼料、肥料などの他 砂漠の緑化を行う為の保水剤や水系塗料な )。
 より具体的には、本発明の大豆蛋白ゲルと 品原料から生成するゲルの物理特性を踏ま つつ、大豆蛋白素材の配合量、蛋白質架橋 素の添加量、生地のpH、塩濃度、油脂添加 、糖添加量、ミネラル(Ca、Mg等)添加量など ファクターを適宜変更することで上記の食 等に利用することができる。
 例えば、ミンチ肉の一部をLPの低減された 豆蛋白に置換し、これに蛋白質架橋酵素を 用させることで、やや脆いソーセージの物 をたわみある物性へと改変することができ 。また、すり身の一部をLPの低減された大豆 蛋白に置換し、これに架橋酵素を作用させる ことで、たわみある物理特性が特徴である蒲 鉾の物性を殆ど損うことなく、すり身と大豆 蛋白のハイブリッド蒲鉾を製造できる。

(大豆蛋白ゲル調製用大豆蛋白素材)
 以上の知見から、本発明は特徴的な大豆蛋 ゲル及びそれを利用した食品を提供するほ 、このような大豆蛋白ゲルを消費者や製造 ーカーにおいても容易に調製でき、種々の 品へ利用されることを可能とするため、大 蛋白ゲル調製用大豆蛋白素材を提供する。 の大豆蛋白素材はLPが低減され、かつ、蛋 質架橋酵素が作用したものであることを特 とするものである。
 また本発明は製造メーカー自身が蛋白質架 酵素を作用させて本発明の大豆蛋白ゲルを 易に調製することを可能とする大豆蛋白素 も提供する。この大豆蛋白素材はLPが低減 れていることを特徴し、食品の製造におい 蛋白質架橋酵素を作用させて使用するもの ある。

 これらの大豆蛋白素材は、求められる用 ・粘度・色調・物性などに応じて、7S大豆 白や11S大豆蛋白、分離大豆蛋白など前述し 種々のタイプの大豆蛋白素材とすることが 能である。これらの素材は凍結品・乾燥品 どの形態で流通させることが可能である。

(LPが低減された大豆蛋白素材の調製)
 非特許文献2(M Samoto etc, Food Chemistry, 102,  317-322, 2007.)に記載の方法に準じて以下の通 、LPが低減されたタイプの大豆蛋白素材を調 製した。
1)低変性脱脂大豆に加熱処理を施してNSI(水溶 性窒素指数)を低下させた脱脂大豆(NSI70%)の温 水抽出スラリーを遠心分離機にてオカラ画分 を除き脱脂豆乳とした。
2)脱脂豆乳を更に遠心分離機にかけ、沈殿し くる難溶性の画分を除いた。この画分は比 的親水性の低い脂質親和性蛋白であり、以 「難溶性LP」と称する。次に残りの上清のpH を5.8に調整して遠心分離機にて沈殿カード画 分を回収した。この画分が11S大豆蛋白であり 、これを「11S蛋白」と称することとする。
3)次に、残りの上清のpHを5.0に調整し、55℃で 10分間放置後、次いでpH5.5に調整後、遠心分 機にて沈殿カード画分を回収した。この画 も上記難溶性LP画分と同様に、脂質親和性蛋 白であり、これを「LP」と称することとする
4)次に、残りの上清のpHを4.5に調整し、遠心 離機にて沈殿カード画分を回収した。この 分が7S大豆蛋白であり、これを「7S蛋白」と することとする。
5)得られた各画分(11S蛋白,7S蛋白,LP)より、中 後加熱処理を行わずに噴霧乾燥した未変性 豆蛋白素材(A)と、中和後140℃×10秒の加熱変 処理後、噴霧乾燥した変性大豆蛋白素材(B) 2タイプを調製した。
6)本操作による乾物収率比は、11S蛋白:LP:7S蛋 の比はおよそ2:2:1であった。この11S蛋白(A) LP(A)及び7S蛋白(A)を2:2:1の比率で混合したタ プの大豆蛋白素材を得た。これは上記の難 性LP画分のみを除去したものであるので、「 脱難溶性LP蛋白」と称することとする。
7)11S蛋白(A)及び7S蛋白(A)を2:1の比率で混合し タイプの大豆蛋白素材を得た。これは上記 難溶性LP画分と3)のLP画分を両方とも除去し ものであり、「脱LP蛋白」と称することとす る。

(LPが低減されていない大豆蛋白素材の調製)
 別途、特許文献5に準じて以下の通り、LPが 減されていないタイプの大豆蛋白素材、す わち分離大豆蛋白を調製した。
1)低変性脱脂大豆の温水抽出スラリーを遠心 離機にてオカラ画分を除き脱脂豆乳とした
2)得られた脱脂豆乳をpHを4.5に調整して等電 沈殿せしめ、遠心分離機にて酸沈殿カード 得て中和した。
3)次にこの中和液を140℃10秒の予備加熱を行 た上で、噴霧乾燥して分離大豆蛋白(SPI)とし て調製した。一方で、この中和液を140℃10秒 予備加熱を行った上で、トランスグルタミ ーゼ製剤「アクティバ」(味の素(株)製、以 「TGase」と称する。)を粗蛋白質1gあたり0.5 ニット添加し、50℃で30分反応させて、140℃1 0秒の加熱を施し噴霧乾燥させたものをTGase処 理分離大豆蛋白「TG-SPI」として調製した。

 表1に、得られた各種大豆蛋白素材のリス トと、各素材のLPの推定含量であるLCI値の測 結果を示した。LCI値の測定方法は前述の通 である。

(表1)

(試験例1)硬い大豆蛋白ゲルの調製とゲル物性 ・風味の評価
 表1の各種大豆蛋白素材を12%濃度となるよう 水に溶解してpH7.5に調整し、遠心脱泡してス リー状とした。TGaseを添加するものについ は、大豆蛋白素材の粗蛋白質1gあたり3.2ユニ ットとなるよう添加後、ケーシングチューブ に充填し、55℃×30分の酵素反応を行った。引 き続き90℃×30分の加熱を行った後、一晩冷蔵 し、室温に戻して、物性評価用の大豆蛋白ゲ ルとした。大豆蛋白ゲルはケーシング剥離し 、山電(株)製レオメーターにて測定を行い、 断強度と破断変形の解析を行った(測定条件 :サンプル高20mm、φ5mm球プランジャー、1mm/秒) 。得られた破断荷重及び破断変形に(式2)及び (式3)を適用して破断応力(×1000N/m 2 )及び破断歪率(%)を求めた。また、ゲルを試 し、風味の評価を10点満点で点数で表し、食 感について評価を行った。結果を表2及び表3 示した。

(表2)変性大豆蛋白素材のゲルに対するTGaseの 性への効果

 表2の結果の通り、大豆蛋白素材が変性タ イプの場合、TGase無添加区と比較して、TGase 加区では、破断応力と破断歪率が大きくな 、いずれもたわみのある硬い食感の方向へ 改質されていた。同じ濃度での比較におい 、7S(B)、11S(B)が最もたわみのある硬い食感と なり風味も良好であった。一方、LP(B)はたわ と硬さが不十分で風味が悪く、SPI(B)は、た みがあって硬い食感であったものの、風味 では7S(B)や11S(B)の方が顕著に優れていた。

 本発明の課題の一つである「たわみのある い食感の大豆蛋白ゲル」について、我々は この評価法において満足できる目標レベル して、風味8~10点、破断応力50~1000(×1000N/m 2 )、破断歪率50~100%と設定した。従い、本実験 において、課題を解決しうるものとしては T-1の11S蛋白(B)(TGase処理)及びT-2の7S蛋白(B)(TGa se処理)であった。すなわち、従来の分離大豆 蛋白から、LP画分を低減させることが重要で った。

(表3)未変性大豆蛋白素材のゲルに対するTGase 物性への効果

 表3の結果の通り、大豆蛋白素材が未変性 タイプの場合でも、TGase無添加区と比較し、T Gase添加区では、破断応力と破断歪率が大き なり、いずれもたわみのある硬い食感の方 へと改質されていた。しかし、LP(A)について はTGaseの添加によっても殆ど改質されなかっ 。したがって、風味がよくてたわみのある い食感の大豆蛋白ゲルを得るには、LP画分 低減化する工程が必須であることが示され 。

(試験例2)柔い大豆蛋白ゲルの調製とゲル物性 の評価
 表4に示したように各種大豆蛋白素材を材料 中の濃度が所定の濃度(重量%)となるよう水に 溶解してpH7.5に調整し遠心脱泡してスラリー の材料とした。TGaseを大豆蛋白素材の粗蛋 質1gあたり3.2ユニットとなるよう添加後、亀 甲容器に充填して蓋をし、55℃×30分の酵素反 応を行った。引き続き90℃×30分の加熱を行っ た後、一晩冷蔵し、室温に戻して、物性評価 用の大豆蛋白ゲルとした。大豆蛋白ゲルにつ いて試験例1と同様にして物性、風味、食感 評価を行った。ただし柔い食感のゲル物性 評価できるように、レオメーターのプラン ャーは大きなプランジャー(φ15mm円柱プラン ャー)を用いた。

(表4)各大豆蛋白素材濃度におけるTGase作用ゲ の物性

 本発明の課題の一つである「つるりとした い食感の大豆蛋白ゲル」について、我々は この評価法において満足できる目標レベル して、風味8~10点、破断応力5~50(×1000N/m 2 )、破断歪率40~80%と設定した。従い、表4にお て課題を解決しうる条件はT-18、T-20、T-21、T -24であった。すなわち、従来型の分離大豆蛋 白から、LP画分を低減することによって、初 て課題を解決しうるものである。

(試験例3)大豆蛋白ゲルの物性に与える油脂・ 塩・pHの影響
 11S蛋白(A)の濃度が12%となるよう水に溶解し パーム油「パームエース10」(不二製油(株) )、食塩、砂糖を溶解・分散させ、表5の所定 のpH(pH5.5~8.5)に調整して遠心脱泡してスラリ 状の材料とした。TGaseを大豆蛋白素材の粗蛋 白質1gあたり3.2ユニットとなるよう添加後、 ーシングチューブに充填し、55℃×30分の酵 反応を行った。引き続き95℃×30分の加熱を った後、一晩冷蔵し、室温に戻して、物性 価用のゲルとした。大豆蛋白ゲルについて 験例1と同様にして物性、風味、食感の評価 を行った。風味は点数が10点満点中8点以上で あったものに○を付した。

(表5)大豆蛋白素材を含む材料に加える他の原 料による物性への影響

 大豆蛋白素材を含む材料に加える他の原 やpHによって、大豆蛋白ゲルの風味・物性 影響を受ける場合があった。具体的には、pH 5.5(T-32)では酸味が強くてボソボソした食感と なり、大豆蛋白素材を含む材料への食塩添加 量が1.2重量%(T-30)ではボソボソした食感とな ていた。なお、各々のゲルをSDS-PAGE(電気泳 )に供し、TGaseによって生じた分子間架橋の 度(高分子の量)を調べたところ、いずれのゲ ルも同程度に分子間架橋を生じていたことか ら、これらの現象は、TGaseが反応しにくくな 生じた結果ではなく、各々の条件下での大 蛋白の溶解性や保水性やゲル形成能と関連 ていると考えられた。従い、ある程度の食 量が必要になってくるような惣菜用途に応 したい場合は、大豆蛋白素材濃度を少し高 にして、pHをやや高めにするなどの工夫を すことができそうであると期待でき、実際 以降の実施例にて工夫できることを実証す 。

 なお、油脂によって破断応力はやや低下 るが破断歪率は低下せず、たわみのある食 を維持した。この理由としては、LPを低減 ることによって、油脂が、大豆蛋白素材の に対して相分離しやすくなっているからで ないかと考えられる。また、データには示 ていないが、大豆蛋白素材を含む材料中に 糖を5%添加しても物性の変化はさほど大きく はなかったことから、甘味系のデザート的な ものへの応用が可能であると示唆され、以降 の応用例にて説明する。

(応用例1)大豆蛋白ゲルを利用した食品(生貝 風の大豆蛋白ゲル)
 グルタミン酸Na:0.05重量部、グリシン:0.5重 部、アラニン:0.2重量部、食塩:0.1重量部、コ ハク酸Na:0.3重量部、砂糖:0.2重量部、ホタテ キス「TC-F2」(焼津水産化学工業(株)製):0.05重 量部を、冷水:8.6重量部に溶解して調味液(H) した。
 11S蛋白(A)の粉末12.9重量部を73.3重量部の冷 に溶解し、上記の調味液(H)を10重量部添加し 、pH8.0に調整して遠心脱泡してスラリー状の 料とした。TGaseを10重量%となるよう冷水に 解させた液を、TGase1.6重量%(対大豆蛋白素材 形分重量)となるようスラリー状の材料に添 加後、折径6.4cmのケーシングチューブに充填( 大豆蛋白素材の濃度は12重量%)し、55℃×30分 酵素反応を行った。引き続き95℃×30分の加 を行った後、一晩冷蔵し、室温に戻して、 豆蛋白ゲルとした。大豆蛋白ゲルは試験例1 同様にして物性について評価した。一方で 大豆蛋白ゲルを厚さ1.5cmの輪切りにし、得 れた円柱ゲルの両面について、幅1mm前後の の子模様(細かい斜めの格子状の模様)となる よう深さ5mmの切り込みを入れて、貝柱の繊維 風に調理し、風味を確認した。

(表6)

 T-35では生貝柱的食感にはならなかったが 、切り込みを適度に入れることで、ゲルの束 からなる繊維感を舌で感じうるものとなった 。このゲルは比較的つるりとした食感を有し ていた。加熱済の貝柱は繊維感が目立ちすぎ 、一方、生貝柱は繊維感が少ないが、このゲ ルは比較的つるりとした食感であって適度な 繊維感も有していた。すなわち、本発明で得 られる大豆蛋白ゲルに切り込みなどの公知の 調理加工を施すことで、更にテクスチャーの 幅が広がるものとなる。なお、鹿の子状に切 り込みを入れたT-36の「生貝柱風の大豆蛋白 ル」を寿司の具とし、甘しょうゆダレをつ ると、鹿の子状の切れ目が美しく映え、食 をそそるものとなり、更に美味しく食せる のであった。

(応用例2)大豆蛋白ゲルを利用した食品2(杏仁 味の大豆蛋白ゲル)
 市販の甜杏仁粉20重量部を60重量部の温水に 分散後、遠心分離して得た上清から40重量部 採取して冷却し、砂糖5重量部を加えて調味 液(N)とした。なお、表7のT-40では、砂糖5重量 部の代わりに、ステビア甘味料製剤(大日本 ンキ化学工業製)を0.05重量部加えて調味液(N) の代わりとした。
 先に調製した脱難溶性LP蛋白、脱LP蛋白、11S 蛋白(A)の粉末24重量部を、各々136重量部の冷 に溶解し、上記の調味液(N)を40重量部添加 、pH7.5に調整して遠心脱泡してスラリー状の 材料とした。TGaseを10重量%となるよう冷水に 解させた液を、TGaseの添加量が大豆蛋白素 の粗蛋白質1gあたり3.2ユニットとなるよう該 材料に添加後、蓋のできるプラスチック容器 に60重量部充填し(大豆蛋白素材の濃度9.9%)、5 5℃の温浴中にセットして、毎分2℃上昇する うに徐々に90℃まで湯温を昇温させた後、90 ℃20分の加熱を行った後、一晩冷蔵し、室温 戻して大豆蛋白ゲルとした。これらの大豆 白ゲルは容器の蓋を外し、試験例1と同様に して物性、風味、食感を評価した。

(表7)

 脱難溶LP蛋白を使用したT-37のゲルで感じ れた大豆由来の雑味が、脱LP蛋白を使用し T-38や11S(A)を使用したT-39のゲルでは感じられ ず、雑味のない杏仁味となった。食感はT-38 ゲルの方がT-39のゲルよりもつるりとしてい 好ましく、砂糖の代わりにステビア甘味料 剤を用いたT-40のゲルは爽やかな甘みを呈し 好ましかった。T-40の「大豆でできた杏仁ゼ ー」を角切りにしてシロップ漬し、レトル 袋に充填して加熱殺菌後、冷蔵して食して 、型崩れなく、美味しく食せるものであっ 。

(応用例3)大豆蛋白ゲルを利用した食品3(蒲鉾 の大豆蛋白ゲル)
 グルタミン酸Na:0.02重量部、食塩:0.7重量部 砂糖:0.7重量部、「サカナエキスHN-55」(仙味 キス(株)製):1.5重量部を、冷水:7.1重量部に 解して調味液(T)とした。
 先に調製した11S蛋白(A)の粉末15.7重量部を、 69.6重量部の冷水に溶解し、上記の調味液(T) 10重量部添加し、pH8.0に調整してスラリー状 材料とした。TGaseを10重量%となるよう冷水 溶解させた液を、TGaseの添加量が大豆蛋白素 材の粗蛋白質1gあたり3.2ユニットとなるよう 添加後、逆さ蒲鉾型の容器に充填(大豆蛋白 素材の濃度15重量%)し、蒲鉾板を容器上に浮 せ、55℃のコンビオーブン中にセットして30 後、90℃まで昇温させ30分の加熱を行った後 、容器から外して蒲鉾板ごとラッピングし、 一晩冷蔵し、室温に戻して大豆蛋白ゲルとし た。得られたゲルはラッピングを外し、試験 例1と同様にして物性、風味、食感について 価した。

(表8)

 該材料中に食塩が1%程度存在すると、表5のT -30のように、大豆蛋白素材濃度が12%程度(pH7.5 )では、保水力のあるゲルネットワークを構 しにくく、ボソついた食感になってしまう そこでT-41のように大豆蛋白素材の濃度を15% 高くすると、食塩濃度が0.7%以上であっても 、蒲鉾的なたわみのある食感にすることが可 能であった。おそらく、大豆蛋白素材濃度を 高めにすることでネットワークの材料が増え 、該材料のpHを8.0とやや高めにして大豆蛋白 材の等電点から遠ざけることでゲルネット ークの保水力が高まったと考えられる。
 このように、本発明の大豆蛋白ゲルは惣菜 途においても利用することができ、例えば 近年高騰している魚肉のすり身を使用しな とも、蒲鉾的な食感・風味の「蒲鉾風の大 蛋白ゲル」を製造することができる。
 なお、塩の存在下で11S蛋白を含有するスラ ー状の材料を加熱した場合、そのゲルは明 い白色に白濁する傾向にあるので、色調の からも蒲鉾に近くなった。また、T-41で得ら れた大豆蛋白ゲルを、おでんの煮込み液にて 煮込むことで、おでんの煮込み液がゲルの内 部へ速やかに浸透するため味浸みが良く、型 崩れもなく、美味しく食せるものであった。

(応用例4)大豆蛋白ゲルを利用した食品4(他素 代替)
 冷凍すり身(スケソウFA:水分75%)67重量部、食 塩2.1重量部を塩擂りし、冷水33重量部を加え T-42のゲル調製用の生地を調製した。
 冷凍すり身45重量部、LPが低減された大豆蛋 白素材液(11S蛋白(A)ペースト(水分80%))を55重量 部、食塩2.1重量部、TGaseを生地中蛋白1gあた 8ユニットとなるよう加えて塩ズリし、T-43の ゲル調製用の生地を調整した。
 各生地は、真空脱泡してケーシングチュー に充填し、30℃×30分加温後、90℃×30分で加 し、一晩冷蔵後、室温に戻した後、ケーシ グ剥離し、試験例1と同様にして物性の評価 を行った。ただし、プランジャーはφ3mm円柱 ランジャーを用いた。φ3mm円柱プランジャ での測定は、T-41のゲルについても実施し(T-4 4)、市販の蒲鉾についても実施した(T-45、46) 表9の結果は、φ3mm円柱プランジャーで測定 たためφ5mm球プランジャーの場合よりもT-41 破断応力が高い数値となっているが、表9の ータにおける相対比較は可能である。なお ゲルのたわみの程度は破断歪率Xでほぼ表現 することができるが、更にゲルのしなやかさ の程度を客観的に表現できる指標として、破 断指標Z(式4)を用いて物性を評価した。

(表9)

 すり身100%品や市販板付蒲鉾や市販成型蒲鉾 (T-42、T-45、T-46)では、破断変形XがX>50%で、 断指標ZはZ<-20%であって、食感はたわみあ る蒲鉾的でしなやかさを有するものあった。 なお、T-45は、硬さとたわみとしなやかさに れた比較的高級な蒲鉾であり、T-46は、硬さ たわみとしなやかさを有した中級の蒲鉾で った。T-42は、硬さとたわみに優れしなやか さにやや欠けるものであったが、蒲鉾的食感 の範疇であった。従い、T-42、T-45、T-46の各々 の食感は、硬さやたわみやしなやかさの程度 は異なってはいたが、いずれも蒲鉾的な食感 として認識できるものであった。
 本応用例における測定値によれば、破断応 Yが250~600(×1000N/m 2 )、破断歪率Xが50%以上、破断指標Zが-20%以下 あれば、蒲鉾的食感の範疇にあることが期 できた。

 そこでT-43を評価すると、大豆蛋白をすり身 と半量置換してもなお、蒲鉾的食感の範疇に あって、たわみのある蒲鉾の物性を殆ど損う ことなくすり身と大豆蛋白素材のハイブリッ ド蒲鉾にすることができた。これはすり身が 不足したり、高騰した場合などに有効に利用 することができるものであった。更にT-44で 、すり身を全く使用しなくても蒲鉾的食感 することができるものであった。
 すなわち、LPを低減させた大豆たん白素材 用いることにより、風味・色調は良好なも となっており、蒲鉾のような薄味の食品へ 利用にも適していることが示された。
 また、LPが低減された大豆蛋白素材液100重 部に、なたね油を10重量部加えて乳化させて おくことで、破断応力Yが0.8倍となったが、 断歪率Xや破断指標Zは殆ど変化させることな く、蒲鉾的なたわむ食感を作り上げることが でき、T-42よりも白っぽい食品に仕上げるこ も可能であった。